古代語魔法十の系統(ブランチ)

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四大魔術 死霊魔術 精神魔術 拡大魔術 統合魔術

★はじめに

現代のフォーセリアは一般に「剣の時代」(ソードワールド)と呼ばれますが、その一方で多種多様な魔法もまた大きな魅力となっています。

その詳細は「魔法王国カストゥール」を参照してもらうとして、ここではその一つ古代語魔法の系統についてまとめます。


古代語魔法には十の系統(ブランチ)が存在し、基本的に古代語魔法の各々の呪文もそのいずれかに属します。

しかし系統の存在が明らかになったのは「魔法王国カストゥール」が初めてであり、この作品は書籍化していません。

その上どの呪文がどの系統に属するかを公式に書籍に記載したのは「クリスタニアRPG」のみとなっています(多分)。

その為これらに触れた事がない人は稀に公式作品に登場する断片的な情報だけしか知りえず、不明瞭な点もあるかと思います。


そこでここでは各系統の漢字/英語表記と、各系統に属する呪文の名称をリストにして記載します。

呪文のラインナップを見る事でただ小説やリプレイを読むだけでは知りえない、各系統の詳細が明らかになってくるでしょう。


なお呪文のラインナップの名称は「ソードワールドRPG(以下SW)」ではなく、「クリスタニアRPG」準拠とします。

その殆どは同名でSWにも登場しますが、一部名前が違うもの存在すらルールブックに載っていないものもあります。

特に後者の例は貴重なものばかりで、SWではその存在を想像できても公式にサポートはされず、《遺失》扱いの呪文ばかりです。

キメラの創造、マジックアイテムの作成、魔神の召喚、不死の王への転生……。一歩間違えればゲームバランスを損ないます。


これらをSWでも使用するかどうかは各人の采配次第ですが、少なくとも存在だけは明らかにしたいと思います。

名称が違うものは「クリスタニアの名称(SWの名称)」と記載し、SWで明らかでない呪文は「赤字」で記載します。

なお各系統の見出しは「系統名/系統魔術師名」とし、最も一般的と思われる英語のカナ表記をルビとして割り振ります。





基本魔術(ソーサリー)基本魔術師(ソーサラー)

呪文:

カウンター・マジック

ディスペルマジック

センスマジック

マジック・プロテクション

トランスレイト

ロア
(アナライズ・エンチャントメント)

コマンドゴーレム

ディスペル・オーダー

ルーンシールド

コメント:

魔力そのものへの干渉を主とする系統で、統合魔術を除く8系統の基礎となる系統です。

Q&Aによれば各系統魔術の特殊呪文を除く全てが含まれ、基本的ながらも重要なものが数多く属しています。

実際魔力を感知したり、対抗したり、解除したり。あるいは命令を与えたりといかに基本が大切かを主張します。


カストゥールの貴族はこの系統と各専門系統を平行して学び、リウイもギルドではこの系統を専攻しました。

しかしカストゥール王国の末期になると貴族達は堕落し、この系統も疎かにされる傾向にあったそうです。

その頃には各系統魔術の研究を目的に作られた8の門派は派閥化し、権力争いの為の集団と化したといいます。


恐らくは究極の解呪魔法である"パーフェクト・キャンセレーション"もこの系統に属すると思われます。

未知の文字を読む"トランスレイト"もこの系統に属し、未知の言語を理解する拡大魔術の"タング"とは一線を画す。


四大魔術(エレメントマジック)四大魔術師(エレメントマジシャン)

呪文:

ティンダー

インクリーズ・ウェイト
(インクリース・ウェイト)

デクリーズ・ウェイト
(ディクリース・ウェイト)

フォーリング・コントロール

ファイアウェポン

レビテーション

ライトニング

ファイアボール

フライト

サプレス・エレメンタル

ブリザード

ライトニング・バインド

コントロール・グラビティ

コントロール・ウェザー

コメント:

四大精霊をはじめとする精霊力を操る魔術で、精霊魔法と違って複数の精霊力を複合できるのが特徴。

精霊力とは自然の力であり、それを自由に操るこの系統は様々な自然現象を操ることが可能となります。

例えば"ライトニング"の雷は風と光の複合精霊力だし、"ブリザード"の氷は風と水の複合精霊力です。

雷を単独で司る精霊はいませんが、氷の精霊は存在しています。しかしそれすらも複合可能ということです。


また重力を操る呪文が目立ちますが、重力も単独で司る精霊は存在せず、地・水・風の複合精霊力のようです。

上記のラインナップにある"コントロール・グラビティ"が正にそれを究めた?呪文なのかもしれません。

これは重力の大きさや方向を自由に変えられるというもので、呪文のレベルは9と非常に高位の呪文です。


更にここから派生した混沌魔術という異端の四大魔術も存在します。

これは「四大魔術を完全に究めると、すべてを産みだすことができる」いう主張が故に異端なのです。

その呪文は火+地=マグマとか、地+闇=磁力とか、光+水=生命とか、実に興味深いものばかりです。


カストゥール王国最後の王都精霊都市フリーオンも、恐らくはこの系統の魔術の産物です。

それは精霊王すら支配する事によって実現したもので、精霊王の力とは自然の力そのものだから凄い事です。

もっとも、その次元まで達すると四大魔術のみで全てを賄えるかは疑問ですがね。他の系統も利用したのかも。


創成魔術(クリエーション)創成魔術師(クリエイター)

呪文:

エネルギーボルト

ボディープロテクション
(プロテクション)

スパイダーウェブ
(スティッキング・ストリング)

ダークネス

ライト

シールド

シェイプチェンジ

ルーンロープ

キメラ

フォース・フィールド

ブレードネット

ミューテーション

ペトリフィケーション

クリエイション

ポルモリフ
ディスインテグレイト
(ディスインテグレート)

コメント:

魔獣・幻獣・魔法生物等の生物や物質を創造し、また物質の在りようを変化させる系統です。

この魔獣とはキマイラ、スフィンクス、マンティコア、グリフォン、ヒッポグリフ、メデューサ等が該当します。

またここで言う魔法生物とはホムンクルスやシーのように生命の原理を利用したものに限ります。

ゴーレムのように純粋に魔力で動くものは付与魔術に属するので、全ての魔法生物が該当する訳ではない。


魔獣の創造といえば西部諸国系の作品で数多く登場するするように、現代でもある程度使用される魔術です。

ドレックノール盗賊ギルドの《闇の庭》はその筆頭で、デルヴァの砦冷たい泥の海と関連する遺跡も複数。

更には「サーラの冒険」を読んでも分かるように、その他色々な組織や人物が魔獣というものと関わっています。


また生物を創る一方で物質のマナにも深く関与し、ある意味精霊力(力のマナ)を司る四大魔術と好一対。

光や闇や魔法の矢や盾やロープを創造し、様々に肉体を変異させる一方、分解する事までできるのですから。


しかしその魔術は基本的に遺失の扱いであり、クリスタニアでは3つもSWにない特殊な呪文が存在します。

"キメラ"は二種類以上の生物を合成する魔獣創造の呪文で、"クリエイション"は魔法生物創造の呪文。

そして"ミューテーション"とは生物の一部に突然変異を起こし、別のものへと創りかえてしまう呪文です。


死霊魔術(ネクロマンシー)死霊魔術師(ネクロマンサー)

呪文:

クリエイトアンデッド

レイス・フォーム

ビカム・ノーライフキング

コメント:

負の生命の精霊力を利用し、不死生物(アンデッド)の創造・操作に関係する系統。

創造できる不死生物はゾンビ・スケルトン・アッシュといった下等な種類がまず挙げられます。

そして幽体離脱してレイスとなったり、最高位の不死生物ノーライフキングへ転生する事もできる。

あと呪文名は存在しませんが、マスターマミーというミイラ型の不死生物への転生も可能だと思われます。


ただし系統呪文の数が少ないように、それ以外の不死生物の取り扱いについては謎が多い。

そもそも不死生物という存在自体が発生原因に謎が多いので自然と謎の多い系統となります。


例えば「魔神戦争」の魔神達はジャック・オー・ランタンやスペクター等を使役していました。

しかし彼らを創造したのか、それとも自然発生したものを召喚・支配したのかは謎です。

またウォートがデュラハンは創成魔術では創れなかったと断言している点にも注目です。

その一方で短編「帰ってきたドラゴン」では人為的にアンデッドナイトになった例もあります。


少なくとも死霊魔術とて全ての不死生物をカバーした訳ではないというのは確かです。

ちなみにSWにはアンデッドを召喚・支配する"サモン・アンデッド"という呪文があります。

しかしこれは明らかに召喚魔術を利用したものであり、死霊魔術の呪文とは認め難いものがあります。


そんな中で"ビカム・ノーライフキング"の存在が明らかになっているのは非常に興味深い。

これは文字通りノーライフキングへと転生できる10レベルの遺失魔法ですが、リスクも大きい。

転生時に精神抵抗で失敗すると魂が砕けるのです。「邪神戦争」のバグナードはこれを恐れたのでしょう。

そこで不死生物の神であるカーデイスの力を借りてそれを防ぎ、ノーリスクで転生に成功したのです。


幻覚魔術(イリュージョン)幻覚魔術師(イリュージョニスト)

呪文:

カメレオン

ディスガイズ

コンシールセルフ

クリエイトイメージ

イリュージョン
イリュージョン・ビースト
(イリュージョナリー・ビースト)

コメント:

五感を操り幻覚を作る系統。高度なものは実物と変わりなく物理的な影響もある点が特徴です。

例えばマーラ・アジャニスの都では幻覚によって衣食住を賄い、市民は普通に生活ができていました。

また"イリュージョン・ビースト"で作った魔物は、見破られない限り相手に怪我をさせる事までできる。

この事からこの系統で発生する幻覚とはただの幻ではなく、幻覚の定義そのものが現実とは異なる模様。


例えば"カメレオン"、"ディスガイズ"、"クリエイトイメージ"は視覚を欺く幻覚と言えるでしょう。

"イリュージョン"は視覚・聴覚、"コンシールセルフ"は視覚・聴覚・嗅覚を欺くと考えられます。

そして"イリュージョン・ビースト"になると視覚・聴覚・触覚は欺いていると考えられます。

マーラ・アジャニスの都に至っては五感全てを欺いている可能性もあり、それが肉体にも影響する


これは私見ですが、高度な幻覚とは創成魔術のようにある程度物質のマナにも影響を及ぼすと考えています。

というのもマーラ・アジャニスの都では、幻覚の食べ物が栄養になり、幻覚の建物が雨風も防げたからです。

ただ当事者の脳が感じる幻覚で健康を維持できる筈もないし、感覚を持たない自然現象を欺ける筈もありません。

ただしそれほどまでに高度な幻覚は現代では遺失であり、上記の呪文のような幻覚らしい幻覚が殆どです。


精神魔術(チャーム)精神魔術師(チャーマー)

呪文:

エンパシー

センス・エネミー

カウンター・センス

リード・マインド

ギアス
コントロール・マインド

コメント:

精神の働きを感知・操作する系統。幻覚魔術同様に比較的低級の呪文のみ、現在では使用されています。

クリスタニアでは記載されていませんが、"センス・ライ"や"スティール・マインド"もこの系統かもしれない。

カストゥール王国ではこの系統の門主が暗殺を行った事から、対象を殺傷する精神操作も可能かと思われます。

実際"ギアス"は命令に反する対象に激痛を与える事ができるし、そうでなくても自害や発狂に追い込めるでしょう。


使いようによっては非常に恐ろしい系統であり、実際人の尊厳を踏み躙るような呪文はSWでは遺失です。

対象の感情を感知する"エンパシー"はともかく、心を読む"リード・マインド"の前にはプライバシーもない。

"コントロール・マインド"に至っては精神を支配できる。この際自我を失い、術者の命じるがままに動きます。

クリスタニアやカストゥール王国で確認された精神改造蛮族というのも、この呪文の影響下にあった模様です。


更にSWでは"スピリチュアル・デス"という、心を破壊する恐るべき呪文も存在します。

他にも"マインドスピーチ"という、遠く離れた相手と心で会話する呪文も存在しています。

ただし"テレパシー"という呪文が拡大魔術に属する例があるように、これも拡大魔術なのかもしれません。

ある種の超能力と取るのか、それとも精神の働きを感知・操作すると取るのかで変わってくるでしょう。


召喚魔術(コンジュアレーション)召喚魔術師(コンジュアラー)

呪文:

ファミリアー

サモン・レッサーデーモン

サモン・グレーターデーモン

メテオストライク

コメント:

物体や生物を空間を超越して召喚・送還する系統。異界の探索を行う事もあります。

またリウイにはこの系統を利用した魔法の本が登場し、どうやら異空間を作成する事もできる?

「ロードス島RPG」では、正にこれを得意とする召喚魔術師というクラスが存在します。

SWでは《召喚》という種別があり、これに属する呪文は暗黒魔法や竜語魔法にも存在します。


カストゥール王国における召喚魔術の成果といえば、やはり魔神の召喚が挙げられます。

召喚した魔神を労働者・技術者・兵士として使い、魔力の塔完成前の王国の主流となりました。

後にこの魔神達は封印される訳ですが、彼らを封印した空間もまた召喚魔術の産物かもしれません。


ただしこの系統には不審な点がいくつかあります。それが「支配」「感覚共有」です。


まず召喚した対象は基本的に支配できる事になっていますが、この支配とはむしろ精神魔術のように思える。

しかし実際は召喚するだけの系統では不十分です。召喚した上で支配できてこそ意味があるとも言えます。

そういう意味では支配は召喚の付随効果だと考えるべきかもしれない。勿論私見に過ぎませんが。

実際《召喚》に属する呪文は失敗すると、召喚はできても術者に襲い掛かるというし、真実の響きを感じます。


「感覚共有」とは"ファミリアー"の現象です。これもむしろ拡大魔術に似ている。

その上SWのQ&Aでは適当な動物を捕まえて儀式を行うとあるので、本当に召喚魔術なのかは怪しい。

しかしこれもまた召喚の作用の一部なのだとしたら、"ファミリアー"もまた召喚魔術の一種だと言える。


そしてもう一つ挙げたいのが「意識の触手(探査の糸)」、これは魔獣支配の秘術で使われるものです。

この秘術でも召喚魔術を利用していて、対象をこの意識の糸というもので探し当てる事になっています。

ところが竜語魔法における召喚でもこの糸を伸ばしているらしく、もしかしたら召喚の作用の一種かもしれない。


このように様々な効果がある系統なのですが、その呪文はやはり現代では殆ど遺失です。

"サモン・グレーターデーモン"はウォートが魔神王戦で使っていましたがね。

以上は魔界からの召喚ですが、星界から隕石を召喚するのが最高の攻撃魔法"メテオストライク"ですね。

SWでは空が見える場所でないと使えない呪文ですが、ロードス島RPGでは室内でも普通に使ってたりする。

星界からの落下速度故に破壊力が出るというのは分かりますが、地上スレスレで屋内に再転送できてもいいと思う。


あと任意の人物を召喚できる"リマンド"と、アンデッドを召喚する"サモン・アンデッド"もこの系統かも。

物質を限定時間内のみ召喚する"アポート"も恐らくはこの系統。"番兵"の瞬間移動もその一種かもしれません。


このように召喚魔術はどの世界から何を召喚するかによって、実に多様な可能性が広がります。

魔界や星界に限らず異世界は無限に存在するというので、発見によっては凄まじい成果を一瞬で挙げられる筈。


拡大魔術(エンハンス)拡大魔術師(エンハンサー)

呪文:

ウィークネス
ストレンクス
(以上2つは"フィジカル・エンチャント"の一種)

スロー
(スロウ)

ヘイスト

タング

パラライズ

ロケーション

テレパシー

ビジョン

シースルー

テレキネシス

テレポート

フルポテンシャル

コメント:

身体能力の強化・弱体化に関係する系統。また超能力的な効果もこの系統に含まれます。

カストゥールではこの系統の門主が時の魔法王として、魔力の塔の研究チームを編成しました。

またリウイが研究したいと思っていた系統でもあり、ラムリアースの秘密結社"ゼム"の得意分野でもある。

物質と力の対比である創成魔術⇔四大魔術と比べると、肉体と精神の対比が拡大魔術⇔精神魔術とも取れます。


SWにおいては"フィジカル・エンチャント"がその代表的呪文と言えるでしょう。

筋力(ストレンクス・ウィークネス)、器用度(シャープネス・ダルネス)、敏捷度(クイックネス・スロウネス)。

以上3ヶ所の身体能力を強弱させる事ができ、名前は同じでも各個は個別の呪文として考えられています。

これを敏捷度のみに特化させたのが"ヘイスト"・"スロウ"で、万能にしたのが"フルポテンシャル"でしょう。


身体能力以外に超能力的効果を発揮するというのは意外ですが、この類いの呪文も複数あります。

もしかしたらSFのように脳の能力を拡大する事で、そういった超能力を発揮させているのかもしれません。

"タング"なんて言語野をイジっていると解釈できるし、瞬間移動や透視等もそういった操作があるのかもしれません。

"パラライズ"は身体能力ではなく、この超能力寄りの呪文です。生物以外のあらゆる対象にも効果があるのですから。


クリスタニアにある"テレパシー"とは文字通り一般に知られる超能力のテレパシーと同様の効果を発揮します。

恐らくはラヴェルナが本編で使用していた精神感応の呪文もこれか、これと良く似た呪文なのでしょう。

精神魔術?の"マインドスピーチ"と似ていますが、両者が同じ言語を理解する必要がない点やはり超能力なのです。


付与魔術(エンチャントメント)付与魔術師(エンチャンター)

呪文:

アンロック

エンチャント・ウェポン

スリープクラウド

ロック

クリエイト・オーク
(オーク)

ハードロック

クリエイト・ストーンサーバント
(ストーン・サーバント)

クリエイト・デバイス

ドラゴントゥースウォリアー
(スケルトン・ウォリアー)

スタンクラウド

アシッドクラウド

エンチャントメント

クリエイトゴーレム

シール・エンチャントメント

デスクラウド

コメント:

物体に魔力を付与する系統。主にマジックアイテムやゴーレムの作成に使われます。

カストゥール王国では蛮族に魔法の武具を与えて強力な兵隊とし、天空都市レックスを支配していた一門です。

原則として他系統の魔法をマジックアイテムにする際にも付与魔術が必要で、精霊魔法を付与する事も可能でした。

非常に力のある一門で、他の一門と対立しても大抵勝り、大陸の外にあるロードスやイーストエンドもその版図でした。


ただし回復や蘇生といったアイテムが存在しない事から、神聖魔法の付与やそれに類する魔術の開発は実現しなかった?

これにあたる魔力を持つ"生命の杖"や"魂の水晶球"は神の力で生み出された祭器で、付与魔術の一門とは無関係です。

もしかしたら神が祭器を作り出す際には、究めてレベルの高い付与魔術と言える力を行使しているのかもしれない。


当時の付与魔術によって作成されるマジックアイテムには、究めて重要な特徴が幾つかありました。

1つは《品質保持》の魔力。数百年の時を経ても劣化しないアイテムは、まずこの保護下にあると言えます。

1つは《形状保持》の魔力。同じく数百年の時を経ても当時の姿を留めているアイテムはこの影響下にあります。

ただしその保護レベルはまちまちで、本気で壊そうと思えば壊せる物もあれば、まず破壊できない強固なものもある。

更にその魔力は《永続》的に働き、魔力の強さ自体も現代の水準を遥かに越える(SWの達成値なら20以上はある)。

その上《非解除》の魔力で究極の解呪魔法"パーフェクト・キャンセレーション"以外では解除できないのが普通。


ただしそういった高度な付与魔術は基本的に遺失で、現代では初歩的な呪文やコモンルーン等が精々です。

もっともアイテムに魂を付与して他者の肉体を操る事で永らえた付与魔術師も少数ながら存在しています。

彼らや当時の書物と接触を果たせば、そういった遺失魔法が手に入る可能性はある。これは他系統にも言える。


クリスタニアの"エンチャントメント"はその遺失魔法そのものであり、魔力+1程度の装備を作成可能です。

恐らくはこの更に上位魔法の使用か、あるいは特別な条件を満たす事で、魔力+2以上のアイテムも作成可能でしょう。

他系統の魔力を付与する際にもこれか、これと同系統の呪文が使用されると思いますが、そのいずれもやはり遺失です。


また空気に魔力を付与する"○○クラウド"の魔法もこの系統で、魔法の施錠や開錠に類する呪文も同様です。

ゴーレムは魔法生物に分類される事がありますが、生命の原理で動く創成魔術の産物と違い、純粋に魔力で動きます。

"クリエイトゴーレム"は正にそれを実現させる遺失魔法で、その作成には莫大な費用と時間を要するのが普通です。

またオーク、ストーンサーバント、竜牙兵といった簡易的に作れるパペットゴーレムも勿論この系統に属します。


統合魔術(ウィザードリィ)統合魔術師(ウィザード)

呪文: 該当呪文なし!

コメント:

複数の系統を組み合わせる事で行使され、言わば古代語魔法の奥義とも言える究極の系統です。

カストゥール王国では勃興期にこそ用いられましたが、中間期では各門派の派閥争い故に廃れていました。

しかし王国の末期では各門派は解体され、統合魔術の門主にして魔法王であるファーラムによる集権体制へ移行。

この滅亡間近の最盛期においては、魔力の塔の供給する無限の魔力と合わせて王国をこの上なく発展させました。


残念ながらクリスタニアではこの系統に属する呪文は存在せず、例も少なく謎の多い系統です。

その中で統合魔術の産物であると判明している例を2つほど挙げます。魔法の本と、魔獣支配の秘術です。


魔法の本は「魔法戦士リウイ9」で登場した「英雄の試練」といったタイトルの本です。

これは人間を本の中に作られた異空間に誘い、体感時間にしてひと月半程の英雄譚の仮想現実を追体験できます。

異空間の作成は召喚魔術、英雄譚のバーチャルリアリティは幻覚魔術、それを本に付与するのは付与魔術

恐らくはこういった系統の複合によって、単独の系統では到底できないこのようなアイテムを作成したのでしょう。


ここで気になるのは付与魔術の扱い。基本的に他の系統の魔力をアイテムに付与する際も付与魔術が必要です。

ならば付与魔術以外の系統も利用したアイテムは全て統合魔術の産物と言えるのではないか?

例えば炎晶石や雷晶石も四大魔術による精霊力を、付与魔術で魔晶石の素材に付与したものと考える事ができる。

そもそも各門派が派閥争いを繰り広げていた時のアイテムの作成はどうしていたのか。付与魔術師に頼み込んだのか?

これは魔法装置にも言える事です。そういった統合魔術の定義と当時の慣例に謎が多く、この系統の謎も深まる。


このようなアイテムの謎がある一方、呪文として統合魔術だと判明しているのは魔獣支配の秘術です。

詳細はそちらに譲りますが、魔獣を"ファミリアー"による使い魔のように、しかも複数掌握できる恐るべき術です。

十分な魔力(無限の魔力?)があれば強大な存在を支配する事も可能で、あの五色の魔竜もこの術で支配してました。

また「傭兵伝説クリスタニア」のリプレイによると、魔力次第では神獣すらも支配可能だというからとんでもない……。


では具体的にどの部分にどの系統を使っているのかというと、それは公式の情報はなく、推測するしかない。

リンク先では基本は"ファミリアー"同様に召喚魔術で、支配に精神魔術、複数操作に拡大魔術だと推測しています。

しかしこの呪文を行使できるのは世界でも魔獣使いのエレーナのみという設定なので、遺失中の遺失魔法と言えます。


断片的ではありますが、呪文にしろアイテムにしろ、統合魔術というのは正に古代語魔法の可能性そのものと言えます。

何しろ統合魔術で操れるマナは万物万象の根源です。極端な話、神々の世界創造も究極の統合魔術だと解釈できます。

しかも無限の魔力があれば、本来人間の精神力の限界によって実現不可能な呪文やアイテムだって実現できてしまうのです。

無限の魔力と万能の魔術……それは人が擬似的に神の力を得たと言え、王国がフォーセリアを席巻したのも当然の結果です。


しかしその統合魔術が発展したところで、ある事件を完全に回避する事ができず、王国は滅びてしまったのですがね。

古代語魔法は神々も操った力であり、それそのものは万能と言える。しかし万能の力も人間が操れば何処かに限界ができる。

魔力は無限でも、魔術は万能でも、人間の力は有限。それを忘れた時、統合魔術は発展ではなく滅びとなる諸刃の刃です。





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