「嵐の海の魔法戦士」作:水野良 出版社:富士見書房

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★はじめに

イーストエンドで神話を終焉させたリウイ一行は、様々な事情で大陸最北の国"海賊王国"バイカルへと向かいます。


前巻ではイーストエンドでの冒険を終えた直後に、バイカルの海賊船が大挙してイーストエンドに押し寄せてきた所で終了しました。

それはロドーリルの侵攻を受けていたバイカルが、これまた別のリウイの冒険ロドーリルが侵略戦争を止めた事に起因します。

すなわちロドーリルからの圧力がなくなった事で、侵略で疲弊したバイカルが海賊行為を再開する必要と機会を得てしまったのです。

ところがリウイがイーストエンドでの争いを鎮めてしまったので、彼らは荒稼ぎの機会を失ってしまいました。このままでは遠からず破綻します。


あちらを立てればこちらが立たずですね。そこで今回はそのバイカルの窮状を救うべく、舞台がバイカルとなったのです。

しかも今回は「賢者の国の魔法戦士」以来のオランの聖剣探索隊との共同調査となります。登場する毎に味のあるキャラになっていきますね。


ちなみに現在発見されている聖剣は以下の7本です。今回ので8本目ですね。できればレックスの聖剣の名前も知りたいところです。

"番兵"、"鎮めるもの"、"巨大なるもの"、"イレーサー"、"神話を終焉せしむ宝剣"、レックスの聖剣、ラムリアースの聖剣。

残る聖剣は今回のを含めて3本です。しかし08年8月現在連載中の「魔法の国の魔法戦士」では、既に「当たり」が出ています。

それじゃあ今回の冒険は無駄なのかといえば、決して無駄ではありません。何しろこれでまた大きく大陸の情勢が変わってくるのですから。


それでは毎回恒例となった冒険する国の概要です。今回は"海賊王国"バイカルです。


バイカルは平原の民海の民(バイキング)から成る部族の連合体であり、その象徴として王がいるだけなので、王権は絶対ではない。

国王は平原の民である第十一代スノーリクU世で、王城はシルバーホエールです。そして平原の民の騎士団の名は「銀鮫騎士団」です。

平原の民は"マーファの乳"の異名を持つ大河サドリル河流域の平原で農耕を営み、海の民は北のアスール湾沿岸に住んでいます。


この国の特徴といえば、何と言っても海の民の海賊船です。彼らは古くから、時に普通に海賊として略奪を行い、時には交易も行ってきました。

略奪行為は金銀財宝に留まらず、時には女を攫い、その女に子供を産ませて奴隷とし、海賊船の漕ぎ手として酷使したとも言われています。

その報復として他国から攻め込まれた時は平原の民が海の民のとなり、その代わりに海の民は平原の民のとして戦ってきたのです。

ロドーリルの侵略戦争の際も、海の民は多くの戦士を平原の民の為に差し出し、数多くの犠牲を出したと言います。両者の関係は本当に根深い。


その諸部族の族長達の中で最も高い実力を持っているのが"海賊王"ギアースです。その実権は国王スノーリクU世よりも上。

彼の部族はバイカル最大の都市アルマを拠点としていて、その港の規模は大陸でも有数。恐らくはあのエレミアにも劣らない程です。

かつてロドーリル軍によって首都ボリスが包囲された時も、ギアースはそれを打ち破りました。正に海賊王の名に相応しい豪傑なのですね。

なおその容姿ですが、私はずっと細身の髭ダンディー(ジャック・スパロー的な)を想像してたんですが、実際の彼は傷だらけのマッチョな爺でした。

いかにも悪そうな、堅気ではなさそうな顔をしていますね。パッと見「傷だらけの仁清」かと思ったぐらい。文庫では挿絵が消えたのが残念(笑)


なお今の海の民はロドーリルへの報復を考えているらしい。もし"鉄の女王"ジューネが侵略をやめなかったら、本当に滅ぼされていましたしね。

あの戦いではオラン・ミラルゴ連合軍がロドーリルに攻め込みましたが、それで国や軍事力が解体された訳ではありませんでしたから。

それで本当にバイカルがロドーリルに報復するとなると、またこの地方に一荒れくるかも。まぁ遠からずそれ以上の騒乱が起きるのですが……。


とはいえ今のバイカルは疲弊しきっています。その窮状を打開する策が海の民の偉大な先祖、"海賊王"バラックの財宝です。

かつては大陸中の海を荒らしに荒らした大海賊であり、莫大な財宝を蓄えていたと言われてます。その伝説は大陸中に響き渡っている程です。

その財宝を求めて、彼らは財宝が眠るという「嵐の海」を越える計画を練っているのです。勿論リウイ達はこれに参加する訳ですね。

これがバイカルの現状です。いつかのロドーリルとプリシスに加え、これでリウイは北東の三大王国を軒並み制覇した事になります。


なお今回のレビューも雑誌連載時に書いたものに大幅な加筆修正を加えてお送りします。


★アレクラストの船について

本編に入る前にアレクラストで使われている船について触れておきます。今回の水野先生のあとがきで詳しく書かれていたのでね。


昔からソードワールドでは(ロードスでも)船は大きく帆船ガレー船が登場しました。帆に風を受けて進むのが前者、櫂を人力で漕ぐのが後者。

しかしこれについて何処かのファンが指摘したんでしょうね、わざわざ書いてましたよ。櫂で漕ぐ船の全てがガレー船ではないんです。

櫂で漕ぐ船は手漕ぎ船(櫂船)です。ガレー船というのは、櫂船の中でも大型の軍艦の事を言うそうです。それでも作中のルビは櫂船(ガレー)ですが。


ちなみにバイカルの船は櫂船。ただしワールドガイドでは中型の櫂船という表記だけだったのに、「独特の形をした」高速の櫂船になったらしい。

いくらか横長で、波を被った時も浸水しないよう甲板もある。帆はあるがそれは順風時のみで、基本は櫂で漕ぐ事になっています。

「虹の舞う海に」では本当に大型の軍艦っぽい櫂船が出てきてましたが、まぁ色々あるんですよ。後付優先則ということで。


また「神代の島の〜」の冒頭でも触れたムディールの武装商船ですが、ワールドガイドでは中型の櫂船でしたが、今回はまた変形してます。

ワールドガイドでは船足の速さが特徴となっていますが、今回は鉄で補強した船足の遅い箱型の船として登場します。

どうも日本の安宅船をイメージしているようですが、これもまた後付優先則という事で。武装した櫂船なのに足が速い時点でおかしかったんだし。


第1章 海の民

★1〜2

「神代の国の魔法戦士」ではそのギアース率いる船団がイーストエンドに現れてエンディングとなりましたが、戦闘にはなりませんでした。

何故ならばバイカルの目的は、海賊行為を止める代償としてイーストエンドに貢物を要求する事だったのですから。

その貢物の中にはあの三神器も含まれていました。国が荒れたままだったら為す術なく従うしかなかったでしょうね。


しかしリウイ達の活躍でイーストエンドは団結し、三神器もリウイに褒賞として贈られていて、その試みは失敗に終わりました。

その代わり、これからバイカルとイーストエンドは交易を営む事になります。略奪と交易は紙一重だというソーマの言葉を思い出しますね。


まぁあの状況ではイーストエンドも断りようがなかったという気もしますが、戦で疲弊した国同士、協調するメリットはあるでしょう。

イーストエンドは大陸では珍しいもの目白押しと思われます。バイカルにとっては海賊行為よりも低いリスクで大きな利益を上げられるでしょう。

イーストエンドだってこれから強力な国家に生まれ変わると思われます。その為には世界の海を駆け巡るバイカルはいい商売相手になる筈。

実際にはイーストエンドの品物が大陸でどれだけの価値があるかは未知数ですよ。でも大当たりをするような気がするんです。


そしてリウイ達はイーストエンドの特使として、バイカルに帰還するギアースの船に同船していました。

イーストエンドの使節団もいるんですが、外交になれていないのでその補佐にあたります。もう内政干渉上等ですよね(笑)


そこにはあのシヴィルの姿もありました。今の彼女は兜や篭手やブーツに羽飾りをあしらっていて、さながらバルキリーのようです。

実はバイカルではバルキリー信仰があるのです。勇猛果敢な海の男達は、戦乙女であるバルキリーを信望してるのです。

そしてその信望はシヴィルにも注がれています。海の民にとっては、今のシヴィルは正に勇気を与えてくれる勝利の女神なのです。

こうもすんなりと彼女が認められているのは、バイカルで夜這いをかけてくる男達を叩きのめしていた経験もあっての事です。

実際今の彼女の格好はとっても扇情的です。普段の甲冑姿とは比べ物にならないぐらい露出が高い。カラー挿絵なんてけしからん(笑)。


またシヴィルはギアースのお気に入りでもある。シヴィルの方もお触りOKのようですが、それは単に年を取った彼を男として見てないから。

お気に入りであるが故にギアースにバラックの財宝を探す事を進言したのも彼女です。実はギアースもそのつもりだったようです。

例のドラゴンレーダー魔法の円盤でもバイカルの北東、すなわち「嵐の海」のあたりに聖剣がある事を示しているので、信憑性はある。


しかし「嵐の海」は海の男達にとっては恐怖の的です。そんな彼らに覚悟を決めさせる為に、シヴィルはバルキリーのコスプレをしたのです。

思い込みというのは凄いもので、これだけで海の民は覚悟を決めてしまったのです。単純なのか、勇敢なのか、多分その両方です(笑)

ちなみに今彼らの乗っている船もその為に新造した船です。かつてバラックもこの船を使って「嵐の海」を越えていけたんだとか。


★2

甲板でのシヴィルとの語らいから、船室での食事へと場面は移ります。ここでは今回のメインキャラ、ギアースラムスリッケなどが登場します。


ギアースは既に散々紹介しましたね。シヴィルに対して堂々とお触りして無傷でいられる稀有な男とだけ言っておきましょう(笑)

注釈するなら"海賊王"というのは歴代の族長の中でも特に名を馳せた者だけの呼称であるという事でしょうか。今まで何人ぐらいいたんだろう。

ちなみにいかに彼が族長と言っても、絶対の権力者という訳ではない。海の民は氏族社会、全員が家族のようなもので、タメ口も飛び交います。


次にリッケですが、彼はギアースの孫にして唯一の跡取りでもある。既にギアースは他の子供や兄弟を皆失っているのです。

リッケはまだ幼い少年ながら、いっちょまえにもバイキングヘルムなどを被っていて、シヴィルに懐いていて、とても我が強い。

子供のくせに子ども扱いされるのが嫌いという、ある意味分かりやすい少年ですね。モデルは勿論「小さなバイキング ビッケ」でしょうね。


実際泳ぎや剣の扱いもまだできないような少年で、大人達にからかわれる事も多いようだけど、とても愛されているのを感じます。

残念ながら老齢で多忙なギアースは宝探しには参加しませんが、その分跡取りのリッケを頭とした探索隊が出される事になってます。

正直荷が重過ぎると思いますが、次の族長として勇気を示さねばならないのです。海の民の間では血筋よりも勇気の方が大切でしょうからね。


ラムスは"魂の奏者"とも言われる凄腕のバードであり、海の男の中にあってちょっと浮いた上品なヒゲ美形です。

海の民の中でも結構な発言力と信頼を得ているらしい。リウイと同年代といいますが、ヒゲのせいか結構老けて見える(笑)

彼はダールという男の息子で、何かあったら族長の位は彼の一族が、つまり跡取りである彼が継ぐ事になっている。

でも彼は死を覚悟でリッケを助けるのです。リッケはギアースの最後の血縁、それに対して自分には兄弟・従兄弟がいるから大丈夫だ、とね。

これはどっちかでしょうね。本当に忠誠心篤いナイスガイなのか、あるいはリッケを亡き者にして後釜に座ろうという腹黒偽善者か。


リウイは今回は当事者ではないので、基本的にはシヴィルに任せて傍観するつもりですが、最後まで見届けるつもりです。

ミレルも心得たもので、グラスランナーばりの隠密性でリウイの隣に控え、さり気なく情報収集をしてくれるつもりでした。

流石は尽くす女です、相変わらずいい娘ですね。ちなみに彼女の隠密性は高度な技術であって、グラランのような天然モノではない。

あとメリッサですが、リウイの忠告が遅かったんでしょうね……。ギアースにお触りされて盛大にビンタを食らわしてました(流石だ)。

どんな顔でビンタされたのか見てみたいものです。多分ギアースにとってもこういう扱いをされるのは初めての事だったでしょう(笑)


★3〜4

海の民の大船団はバイカル領に入ってから部族毎にそれぞれの入り江へと散っていき、リウイ達はアルマへ逗留する事になりました。

このアルマがバイカル最大の都市にして港であり、ギアースはここの統治者であると同時に、海の民の全氏族を束ねている訳ですね。

イーストエンドの使節団はここから首都ボリスへと行くのでお別れです。またシヴィルの仲間達ともここで合流しました。


ここでリウイ達は適当に観光などをしますが、結局は暇を持て余し、ギアースに風呂に誘ってもらいました。

風呂とは言っても温泉や風呂桶ではなく、サウナです。薪を燃やし、熱気が充満した小部屋で汗をかくやつですね。

ザーンにも似たようなものがありますね。でもあれはマグマか何かを利用した大きなものでしたが、こっちは人工のものですね。

ちなみに男女別ですが、子供のリッケは女性陣と一緒。今はかなり不満そうにしてるけど、いずれそれは子供の役得だと悟る日が来る(笑)


ここでリウイはギアースと裸の付き合いをし、シヴィルがいかにして彼らと知り合ったかを教えてくれました。

なんとシヴィルがリッケとその許婚の王女ルーシア賊に襲われているのを助けたのが縁です。リッケがシヴィルを慕ってるのもそれが縁かな。

確か「虹の舞う海に」ではセリアスという王女が出てましたよね。ルーシアは第三王女なので、セリアスはそのお姉さんとかかな?


海の民と平原の民のトップの子供達ですよ。狙ったのはいずれか、あるいは両方か……。いずれにしろ只事ではありませんね。

ちなみに賊はロドーリルとの戦いで国王が雇った傭兵でした。けど彼らは襲撃前に毒を服用していて、尋問すらできなかった……。

ロドーリルとの戦いが終わった矢先にこの事件です。しかもどうやら黒幕は内部にいるらしい。シヴィルやリウイを頼りにするのもそれが理由です。

つまり全く事件と関連がなさそうな外国の人間の方が、無関係だからこそ信頼できるという事。ただの豪快スケベ親父かと思えば、実に老獪です。


勿論バラックの財宝についても勝算はあっての計画です。実は宝の地図「嵐の海」を越えた船の設計図が残ってるのです。

バラックは宝を積んだ2隻の船で「嵐の海」に挑み、内1隻が帰還しています。その船を率いていたのがバラックの息子ジードです。

ギアースの一族は彼の直系なので、そういった当時の資料が残ってるんです。その設計図で作られたのが、リウイが乗ってきた船ですね。


込み入った話をしながらサウナで水分を極限まで飛ばしたリウイは、その後目の前の海にダイブ。冷たい海水はさぞ気持ちいいでしょう。

ところがそこには幸か不幸か全裸のシヴィルがいました。彼女は悲鳴をあげ、宝探しの大冒険が始まる前からリウイピーンチ!(笑)

危うく決闘になりそうでしたが、ジーニが間に入って平謝りを続けてなんとかなったそうな。まだ冒険すら始まってないのに、先が思いやられる。


第2章 見えざる敵

★1

シヴィルとのひと揉めもどうにか無事に収まり、リウイは港で「嵐の海」へ出航する船への物資の積み込み作業を見物していました。

ここではあの聖剣探索隊のエメルとの会話もありましたよ。ファラリスの闇司祭である彼女ですが、相変わらずやたらと愛想がいい。

その自由な佇まいは「終末の邪教」にも出てきたクローゼンに通じる。ある程度の分別を備えたファラリス信者はこうなるんだろうか。


エメル「あなたほどの男なら、あんな生娘のひとり、簡単に手懐けられるんじゃないの?一度、押し倒してみたら?

そしてこのリベラルっぷりも相変わらずですね。性にも奔放な彼女なら、もう海の民相手に良い人を見つけてそうだし。

リウイ「そんなことをしてみろ。下手をしたら一生、命を狙われるし、上手くいっても一生、つきまとわれそうだ」

確かにそんな気がしますね。何処の女聖闘士だ(笑)


エメル「貞操なんて、至高神ファリスの教団が、勝手に決めただけなのにね

そしてこの薄氷の上を踏むかのごとき危険な発言も相変わらずです。間違っても彼女をアノスへ連れて行ってはいけない。


それと現場には噂のルーシア王女の姿がありました。そばかすがまだ目立つ少女で、リッケの事は婚約関係抜きで好きらしい。

物心ついた頃からロドーリルと交戦状態だったせいでしょうか、とっても活発ですね。搬入の陣頭指揮も執ってるようだし、とってもいい娘だ

先日命を狙われた身ですが、一応身辺を聖剣探索隊である密偵のスマック、戦士のダニロ、魔術師のアストラ達が守ってるようです。

中でもエメルとは一番仲が良さ気ですね。幼いとはいえ恋する乙女です、自由な恋愛を好むエメルにしても放っておけないんでしょう。


★2

出港準備を手伝おうとしたリウイでしたが、彼も一応王子様です。そんな肉体労働をさせる訳にもいかず、暇になってしまいました。

仲間達も現在それぞれの情報収集に走っているので、リウイはフラリとテイカとクリシュに会いに行ってみる事にしました。

ティカもクリシュも人が入り込まないような大自然の中に身を潜めているので、辿り着くだけでも一苦労です。魔術まで使っちゃいました。

「湖岸の国」以来、影の様に一行に同行し、事ある毎に非常要員として頼りにしてきた一人と一匹ですが、どうも転換期が近づきつつある。


まずはティカですが、かなり竜に近づきつつある。それはつまり竜司祭としてのレベルが上がってきたという事です。

しかしそれは人から遠ざかりつつあるという事でもある。既に瞳孔は縦に絞られ、人の言葉を忘れかけ、味覚も人のソレとは異なります。

リウイの持ってきた塩漬け魚や燻製肉も、香辛料などが利いていてショッパイそうです。通常竜が食べる生肉にはない味ですからね。


竜にとって食事は生きる為の手段ではない。ロードスでも触れた事ですが、竜を初めとする幻獣・魔獣の多くは空腹で死ぬ事はない。

ただ竜は空腹になると知性が衰える。だから年を取って知恵を身につけた竜は定期的に狩をし、知性を保って静かに暮らすんです。

ちなみに普通の竜は眠ってる時間が長いので、獲物の量自体はそんなでもない。やんちゃ盛りの幼竜の方がよっぽど量を食べるそうです。


私はずっと竜司祭とはいえ転生するまでは基本的に人間なのだと思っていましたが、これこそが真の竜司祭なのかもしれませんね。

クリスタニアの獣人(ビーストマスター)のように、能力を使う時だけ野性を発揮するのだと思ってたんですが、どうやら違ったらしい。

竜司祭の究極の目的が「竜になる」という事なら、それは「人間を捨てる」必要があるという事でもあったんですね。

ヘッポコーズのヤムヤルも言葉が拙いけど、それも竜に近づきつつある事が原因だったのかな。という事は生前のクリシュなんて殆ど竜そのもの。


ティカ「正直に言って……すこし怖い。だけど竜に変わってゆくことに喜びもある
    空や大地と溶け合うような。肉体から魂が解放され、時空を超えてゆくような……」

竜とは世界の根源に関わる存在。何しろ始原の巨人から生まれたという点では、神々や世界樹にも並ぶ存在なのですから。

人を捨てて竜に近づく事で、普通の人間には到底理解できない何かを感じるのかもしれない。そしてそれがある種の快感でもあるのかも……。


「人は人のまま強くなる義務がある」という言葉があります。人外のモノになって力を得ても、それは人としての敗北なのだと。

しかし竜司祭にそれは当て嵌まらないらしい。人を捨てようとも竜に近づく。それが人としての敗北でも、竜司祭としては勝利なのです。

でもそんな彼女にミレルは恐怖を覚えているのも事実だし、リウイなんて彼女が遠くに入ってしまいそうだから抱き締めたりしてました。

今後彼女が何処に行き着くのかは分かりませんが、何やら不穏なフラグが立ってしまいました。別れ際の「さよなら」なんてもう……。


あとクリシュですけど、どうやら成竜への脱皮が近いらしい。とうとうこの日が近づいてきました、思ったよりは早かったかな。

脱皮と共にリウイが竜の爪を打ち込んで仕掛けた呪縛も消える。そうなれば襲い掛かる成竜クリシュ相手にもう一度同じ事をしないといけない。

どうやら火竜山に行った事で成長が早まったらしいんですよ。やはり火竜には炎の精霊力が最大の栄養剤になるんでしょう。


それにしてもタイミングが最悪です。もし宝探しの最中に脱皮でもしたら、人の味を覚えたクリシュは付近の住民を皆殺しにする。

そうなると真っ先に食われるのはティカですね。いや既に人としての心を食われているのかもしれませんけどね。

そしてリウイを求めて飛び回り、被害は拡大。成竜は決して倒せない相手ではありませんが、街の1つや2つ壊滅させる程度簡単ですからね。


そこでリウイはいっそ脱皮を早めてしまおうとします。それにうってつけの火山があるんですよ。神の心臓という火山島がね。

神の心臓は大陸の北西方向に位置するらしい活火山?のある島で、距離的にはケイオスランドよりかは近いらしい。

存在が明かされてからおよそ20年、ずっとずっと触れられなかった、イーストエンドのような謎多き秘境なのです。

イーストエンドが明らかになった今、もう全くの未知はヤポス島と神の心臓ぐらいですね。あとロードスとクリスタニアの間の謎の大地かな。


この神の心臓にも聖剣があるんですよ。この宝探しが終わったら急行するつもりです。とうとう神の心臓の謎が解ける日が来ますね!

しかしそれは、もしかしたらティカやクリシュとのお別れが近いのかもしれない。詳しくは書き下ろしの「煙火の島の魔法戦士」です。


★3

完全に日が暮れてからリウイは街に帰還し、夕食も食べずに待っていた仲間達にティカとクリシュの件を伝えました。

それについてはそれぞれ思うところがあるようでした。クリシュの世話を彼女に任せっ放しにしたという点では皆同じなんだから。


リウイ「オレは自分が好きなように生きてるから、他人にあれこれ言うのは苦手なんだ。らしくない生き方をしていると思えば、別だけどな」

そういう点では"自由騎士"パーンとも似ていますね。ファラリス信者ではないけれど、自分なりに"自由"を満喫している。

その結果ティカにクリシュの世話を任せっきりにしてしまったんですがね。それが彼女にとっては竜司祭としての修行になると自分を納得させて。

元はといえばティカが竜司祭として修行する事を望んでこうなってるとはいえ、やっぱり気になりますよね。仲間なんだから


更に食卓に着こうとしたその時、船の積荷に毒が混入されている事が明らかになります。摘み食いをした荷役が自発的に毒見役になりました。

いよいよキナ臭くなってきましたよ。明らかに何者かがバイカルの内紛を助長しようとしています。まさかルキアルじゃないでしょうね。

一応スマッグがかなり注意していたんですが、それでも混入するとは。これは内部の者の犯行である可能性が濃厚になりました。


海の民と平原の民は支えあってきましたが、戦争で平原の民の為に多くの戦士を失ったせいで海の民は平原の民へ不満を抱いている

働き手を失って田畑は荒れ果て、漁獲量も減少。当然海賊家業や交易の収入も。だからギアースと国王はリッケとルーシアを婚約させたのです。

海の民は平原の民という盾がないと各個撃破されるだけです。だからギアースは犠牲を払ってでもロドーリルから平原の民を守ってきたのです。

しかしその協力体制をぶち壊そうとする輩がいるんですね、リッケかルーシアか、どっちかに何かがあればもう駄目でしょうから。


真っ先に気になるのはあのラムスとかいう髭美形。リッケに何かがあれば彼がギアースの跡継ぎです。動機としては十分ですね。

しかし彼もまたリッケを助けて宝探しに出るんですよね。それでリッケに何かあれば彼は疑われるけど、だからこそ無実にも見える。

ちなみに彼は船乗りとしても莫大な富を築き上げ、知略を用いてムディールの武装商船から積荷を略奪するようなやり手だそうで。

なおその情報を掴んだのはアイラです。実はアウザール商会は秘密の航路でこの国とも貿易してるのです。むしろ彼女の守備範囲外を知りたい。


第3章 出航

★1

毒物混入事件は徹底的な調査をしても犯人は分からず、各氏族の猛者達50名強が乗り込む探索船は出航の日を迎えました。

このバイカルには盗賊ギルドが存在しないので、ミレルとしても捜しようがない。雑誌では商工ギルドや魔術師ギルドもない事になってました。

盗賊ギルドは非合法な組織ではあるものの、裏社会の統制や情報網としても利用できるので、大抵の国では存在が黙認されています。

しかしバイカルはケイオスランドと同じ氏族社会であり、皆が家族のようなもの。大抵の事は自前で済むし、特定職業の組合は必要ないらしい。


探索隊の船長は一応リッケです。ギアースの挨拶の後に彼も皆の前で喋る機会がありますが、足が震えてたりして幼さは隠せません。

リウイはそんな彼にも一応礼は払いますよ。ちゃんとお辞儀をしたりして。まぁ子供をあやしているような感じもしますけどね。

また彼はルーシア王女が見送りに来ていない事に表情が曇っていました。王女としての義務もそうですが、やっぱり見送って欲しかったのかな…。


それに対してシヴィルは勇ましい限りです。相変わらずバルキリーの格好をして、すっかり海の民達の心を掴んでいます。

シヴィル「この航海は、死出の旅だと覚悟せよ!(中略)喜びの野への道、決して迷わせはしない。安心して旅立つがよい!

また随分と過激な言い方です。しかし海の民はこれで大・喝・采!。本来の荒々しさを発揮し、赤ら顔で大騒ぎです。これも民族性なのかな。


さてここでマイリー信者のメリッサは非常に不本意そうな顔をしていました。何故ならばマイリー信仰とバルキリー信仰を混同してるから。


マイリー信仰はいわずと知れた戦神マイリーを崇める信仰であり、その教えにある死後の世界とは"喜びの野"と呼ばれます。

そこでは昼間は互いに勇気と力の限りを尽くして戦い、夜になると敵味方勝者敗者が入り乱れて互いを讃え合う宴が開かれると言われます。

本当かどうかは分かりません。しかしマイリー教団はそう教えていて、それを本気にしている信者もとても多い事は確かです。


一方バルキリー信仰はこのバイカルのような辺境や蛮族の戦士の間で盛んであり、勇気の精霊である戦乙女バルキリーを崇める信仰です。

ケイオスランドでも似たような信仰があります。先進の文明とは少し相容れないかもしれないけど、正に勇ましい戦士達の信仰なのです。


戦神の懐である"喜びの野"と戦乙女バルキリー……確かに関連はありそうだけど、無関係だというのが大陸の教団の考えだそうです。

バルキリーはあくまでも勇気の精霊に過ぎず、マイリーの使者の類ではないと。ない筈なんです……多分、恐らく、メイビー(自信無さ気)。

というのも、マイリーはケイオスランドの氏族の間での主神である、"戦乙女を統べる「女王」"キュラフ同一神である可能性がある。

仮に同一神でなくても、従属神の類である可能性もある。しかしここではケイオスランドの信仰を「異端」として扱っています。


そもそもバルキリーはドイツ語では"戦死者を選ぶ者"の意のワルキューレであり(古ノルド語ではヴァルキュリア)、北欧神話の半神です。

主神オーディンの命を受け、戦死した戦士達を天上の宮殿ヴァルハラ(戦死者の広間)へと迎え入れる戦乙女です。

そしてその戦士達はラグナロク(ワーグナー曰く『神々の黄昏』)での戦いの日まで、例え死んでも生き返る戦士エインヘイヤルとなる。

彼女達を一躍有名にしたのはワーグナーの「ニーベルングの指輪」でしょうね。ジークフリートとワルキューレの長女ブリュンヒルデが共演してます。


このヴァルハラとかがそのまま"喜びの野"と被っているので、むしろ私にはバルキリーと"喜びの野"が無関係である方が不思議です。

フォーセリアに同じような話がある訳ではないと思いますが、両者を結びつけるような話が語り継がれるのは無理も無いと思う。


そして船出の歌を奏でるのはラムスです。"魂の奏者"と呼ばれるだけあって、実に見事な演奏でした。

ところでここでアイラはこのバイカルが呪歌発祥の地だと言っています。偉大な詩人がマナに影響を与える言葉と旋律を見つけたのだと。

マナは万物の根源にして万象の元。神々はそれを言と音で編み上げ、世界を創造したと言われている。故に言葉や音楽はマナを操れるのです。

この設定はこれが初出だと思いますよ。とするとこの地方には高レベルのバード技能の持ち主も多そうですね。ラムスはその筆頭かな。


そのラムスとリウイは話す機会がありました。表向きは談笑、その実は腹の探り合いです。リウイから見ても彼は結構な人物に見えました。

そりゃあラムスはちょっと怪しいかもしれないけど、これまでの経歴を考えると得たいの知れなさではリウイの方が上ですからね(笑)


今までリウイは色々な所に行ってきました。ロードスやイーストエンドといった、普通の大陸の冒険者では行かない海の向こうにまでね。

そのお陰で大分船旅にも慣れ、今では水平線の向こうに何が待っているか考えるだけでも胸が高鳴って仕方がないぐらいです。

もう冒険野郎と言えばマ●ガイバーかリウイですから。しかしそんな暮らしもそう長くは続かないと、本人も薄々感づいています。


★2

こうして戦乙女コスプレをしたシヴィルの檄が利き、勇んで海に出たリウイ達でしたが、早々にムディールの武装船と遭遇します。

箱型の黒い船で、ラムスが確認したところムディールの海軍提督"海狼"テグリの船であり、ただの武装商船ではなく軍船だと判明します。

バリスタやカタパルトで武装し、船乗りも熟練の精鋭揃い。60の櫂を使い、短時間ならどんな船よりも速く進む事ができるんだとか。


ていうか海軍の軍船でも武装「商船」なんですね。国絡みで交易をしてるならそれもアリかな。あと武装商船は船足が遅い筈ですが、これは例外?

「短時間なら」という点に注目すれば、櫂船としては異例の推進力を持つが長持ちしないという事かな。チーターのような短距離型?

それとワールドガイドによれば武装商船にバリスタやカタパルトはデフォルトみたいですが、数や性能の点で普通の武装商船に勝るという事かな?


普通の武装商船はこんな北の外れではなく、南の方の航路を通るものです。明らかに敵はこちらを挑発しているようでした。

海の民達は自分達の庭にそんなのがいる事を許せないようで、すっかり好戦ムード。しかし船長であるリッケは必死に彼らを説得しました。


リッケ「喜びの野は、いずれかならず行ける場所だ。今である必要はない。
    オレはおまえたちの誰ひとりも失うことなく、この航海を成功させたい。
    おまえたちには死ぬ覚悟とともに生き抜く勇気も持ってほしい

立派じゃないですか。自分よりも遥かに年上で熟練の荒くれ者を前にこんな事はなかなか言えるものじゃない。

実際戦いともなれば死傷者は必ず出る。今は任務の途中だし、無闇に数を減らすのは得策ではない。「嵐の海」にはベストの状態で臨みたい。


しかしそんなリッケの必死の説得も海の民には届かず、全員表情は冷たい。シヴィルの演説の時といい、良くも悪くも大味な連中です。

ところが武装商船がテグリの船である事が分かり、ラムスが呪歌の"ピース"?を奏でた事で、何とか彼らは戦いを避ける事ができました。

本来の"ピース"は戦闘意欲を削ぐ呪歌であり、攻撃力に−1というのがゲーム的処理。果たしてここまでの効果があるかどうかは疑問です。

同名のマーファの特殊神聖魔法なら本当に敵意を失わせる事も可能ですが。個人的には呪歌の方でも多少そのような効果があってもいいと思う。


しかしここでムディールの軍船と遭遇した事は偶然とは思えない。国家ぐるみでこちらの任務を妨害しようとしているとしか思えない。

実はムディールは元々イーストエンドとの交易を独占してました。「神代の島の〜」でもリウイ達はムディールから渡りましたね。

まぁあれは結局ソーマの船に乗せて貰って渡ったんですが、距離的に一番近いのは確かです。海を挟んで真向かいにありますからね。

そのイーストエンドがようやく開国したというのに、バイカルがイーストエンドと交易関係を結んだせいで折角の独占状態も水の泡。


恐らくはこれからの東の海ではムディール、バイカル、イーストエンドという3国家が入り乱れるようになるんでしょうね。

これもまたリウイが移動する事で生じた大陸の新たな情勢です。これまでスポットの当たらなかった大陸東部がこれからは熱いかも……。


そうして武装船を回避したのも束の間、なんとルーシア王女が密航している事が明らかになります。お約束通り樽の中にね。

どうしてもリッケが心配だったから、エメルにやり方を教わったそうです。ほら、彼女ってファラリス信者だから(笑)

どうやらエメルは自分が自由であるだけでなく、思い悩む人の背中を押してやる形でその欲求を叶えさせるタイプのファラリス信者のようです。


ルーシア「リッケと離れ離れになりたくなかったからよ!」

リッケ「おまえなんかがいたって、足手まといなだけだろ?」

ルーシア「な、なによ!わたしのほうがリッケより半年、お姉さんでしょ?それに、女のほうが早く育つんだから!

完全に子供の喧嘩だし、足手まといという点ではお互い様です。でも可愛いじゃないですか。最後は色々問題発言っぽいけど(笑)


シヴィル「万が一のことがあったら、どう責任をとるつもり?」

エメル「責任なんて取らないわ。だって取りようがないもの

確かに命に何かあったら取り返しはつきませんし。安易に「責任は取る!」とか言わない方が正直なのかもしれない。

それに陸にいても犯人に狙われかねない身の上です。いっそリウイ達が直で守った方がいいのかもしれない(旅自体危険だけど)。

とはいえ褒められたもんでもありませんけどね。これが王女様の可愛い我侭だからまだしも、場合によっては犯罪の教唆ですよ(苦笑)


なおルーシアの参加自体は海の民の男達は大歓迎です。「バルキリーの魂を持つ者なら誰でも大歓迎」。良くも悪くも大味な連中です。

ラムスが陽気で誰でも知ってる海の民の歌を歌い、テグリに届けとばかりに全員で合唱しつつ、船は更に北東を目指します。


★3

こうしてバイカルの船は引き続き「嵐の海」目指して航海を続けます。一方無視されたムディールの軍船"シンセン"にはテグリの姿がありました。

彼は金色の縁なし帽を被った初老の男です。私のイメージでは「不思議の海のナディア」のネモ船長みたいな感じですね。挿絵がないのが残念。

彼は一水夫から身を起こし、世界各地の海賊を討伐した功績で現在の地位に着いたムディールの英雄です。普段は穏やかな顔をしているらしい。


しかし彼がこの地位に着くまでには、それこそ1000に近い海賊の首を刎ねてきたのです。ある意味海賊以上に海賊っぽい男です。

テグリ「海の民の歌だな……勇壮で気分が高揚してくるような歌だ。わしは嫌いではない」

側近「そうなのですか?」

テグリ「その歌を聴いたあと、歌い手どもの首を刎ねるという楽しみもあるからな

そう言って残忍な笑みを浮かべるような男です。雑誌収録時にはなかったシーンですが、こんな奴だったんですね。


そしてそのラムスの奏でる演奏が、テグリの部屋にある魔法の竪琴からも聞こえてきます。……やっぱりそうなのか。

それから"シンセン"は海の民の後を追いつつ、「嵐の海」を目指します。彼らが狙うのは海の民が財宝を見つけたその後なのです。


第4章 嵐の海を越えて

★1〜3

いよいよリウイ達は財宝が眠る7つの群島の直前にまで来ましたが、その前に越えねばならない試練があります。それが「嵐の海」です。

その正体は群島をスッポリと取り囲む還流なのですが、その外見がまた壮絶。海と天を貫く巨大な柱のような竜巻と大渦なのです。

上空には暗雲が立ち込めて無数の稲妻が走り、内部に入れば横殴りの雨に打たれ、水竜の群れの如き海流に翻弄されるのです。

昔から宝探しには試練がつき物です。危険という名の滝を潜り抜けねばならないのです。要はラピュ○に入る前の竜の巣のようなもんですよ。(笑)


一説によれば、これは水の精霊王クラーケンと、風の精霊王ジンが終わらない円舞曲を踊っているんだとか。さっさと終わらせてくれ。

フォーセリアの自然環境は精霊力に左右される。精霊王の円舞はともかく、水と風の精霊力が異常なまでに渦巻いているのは確かでしょうね。

しかし気になるのはその「嵐の海」という名前です。それってあのミルリーフの領域の事ですよね。でもあれは南の海らしいし、別物?


かつてバラックはこの海を越え、その先の島に財宝を隠したと言われています。実は島の地図まで伝わってるんですよ。

その海を今度は彼らが越えるのですが、結論から言うと越えます。ここで転覆して全滅したらどうしようもないじゃないですか(言うな)。

しかしその過程が実に壮絶。ギアースの信頼篤い老船乗り"嵐を駆る者"グーセンや、多くの熟練した海の民ですら相当難儀しました。

何しろ渦を巻いてますから、直進したら真横からの海流で転覆です。そうならないよう渦に乗って螺旋を描いて中央に向かうのです。


実は若かりし頃のグーセンやギアースも一度これに挑もうとして逃げ帰ったんです。海の民である彼らだからこそ、そのヤバさを理解したのです。

しかし今のグーセンは多くの経験を積んでいる。風と波を読み取る能力はズバ抜けていて、故に彼は"嵐を駆る者"と呼ばれているのです。

きっとセイラー技能が8とか軽くあるんでしょうね。それに船は最新で他の船乗り達も熟練揃い。恐らくは世界的にも最高水準でしょう。


かくして彼らは「嵐の海」に挑みました。それは嵐と大波に揉まれる、あのジーニの方向感覚ですら狂わせられる死のメリーゴーランドでした。

メリッサは"バトルソング"を歌い、リウイは力の無いグーセンに代わって舵を取りました。セイラー技能関係なく純粋にパワー勝負でしたね。

冒険者レベル+筋力ボーナスで目標値17とかかな。せめてアイラが"フィジカル・エンチャント・ストレンクス"でも唱えてくれれば。


最後は船が激流から離れられるよう、リウイは血の泡を吐く程力を持続させねばならなかったのです。イリーナとかだったらもう少し楽かな。

これも長い冒険者家業で持久力がついたお陰ですね。恐らくは今のリウイは瞬発力重視の白筋でなく、持久力重視の赤筋が発達してるんでしょう。

思えばロドーリルではヒュードに、イーストエンドではラカンに、それぞれ持久力で粘り勝ちしたんですよね。これもリウイの隠れた長所かな。


なおミレルやアイラは、子供2人やエメルと一緒に船の中です。怯えるリッケがルーシアと口論になったりして、ちょっと可愛かった(笑)

リッケは次期族長であり、勇気を示さねばならない。なのにこうして船内に閉じこもっている自分の臆病さが憎々しい様子でした。

等身大以上に自分を大きく見せなければいけない、でも見せられない。そんな強さへの憧れと劣等感がある……男の子って大変ですね。

その2人に挟まれて子供を優しく力づけるエメルも、つくづくファラリス信者には見えません。その辺のファリス信者よりも穏やかなもんです。


★4〜5

さてそうして嵐の海を越え、彼らは南海のような雰囲気の海に出たのです。北の海の筈なのに、海は澄んで珊瑚礁とかも見えます。

繰り返しになりますが、自然環境は精霊力に左右される。周りが風と水の精霊力が強い分、ここは大地と炎の精霊力が強いのかも。

適当な島に着けて、木を切り出して自力で船を修復しちゃうのは感心しました。曲がった釘を余った木材を燃やした熱で打ち直しちゃったりね。


ここまで来れば宝は目前……かに見えた。しかし地図の場所に島は無く、他の島を巡ってみても宝は無い。海の民達にも焦りが生まれます。

しかしこの窮地を解決したのはあの天才魔術師アストラ君でした。彼は独自に測量・製図を行ってその秘密を解き明かしたのです(流石天才!)。

すると島が一つ動いているんですね。彼はそれが白鯨であると推測し、リウイやアイラを唖然とさせます。でも多分それが真実なんでしょう。

ところで、アストラ君の再登場は嬉しいんですが、なんか挿絵の彼は皮肉屋っぽい顔してますね。以前の素直な彼は何処に行ったのやら。


白鯨(ザラタン)とは、島魚(アイランド・フィッシュ)とも言われる巨大なクジラです。島ほどの大きさがあるくせに滅多に動かないから、島だと誤解される事が多々ある。

しかも何年も動かない内に背中には動植物が住み着くので、益々一見では島と間違え易い。海流に流されて動いたりもします。

だから今回のように地図と一致しない島なんてものができたりもするのです。ある時急に動き出して人々を唖然とさせたりもするとか。


その大きさからして、恐らくモンスターデータにすれば10レベル超は固いでしょうね。だって島ですよ、何10mあるんだか。

回避点は低いけど、生命点はミスリルゴーレムもかくやというほどありそうですね。マトモにやって人間が勝てる相手ではなさそうです。

水野先生曰く、その元ネタはホルヘ・ルイス・ボルヘスの「幻獣辞典」です。ちょっとした図書館になら大抵ある……と思う。

ちなみにフォーセリアにおける初出は「新ロードス島戦記」です。あっちのは白鯨はまだ子供だったけど、多分こっちは大人でしょう。


世間的には半ば伝説の存在であり、学のある人なら俄かには信じがたい存在です。しかし冒険者たるもの、そんな常識に捉われてはいけません。

伝説によれば、ある船乗りは白鯨であると気づかずにその背中で火を炊き、驚いた白鯨に飲み込まれてしまったんだとか……。

その後船乗り達は暫く体内で暮らし、無事に帰還したと言われてます。中には腹の中に財宝があって、それを持ち帰ったという説もある。

このような話は昔から数多く語り継がれており、海の民は信じています。だから彼らは白い島には決して上陸しないようにしているのです。


ちなみにこの伝説を広めたのも彼ら海の民です。グーセンはやたらこの話に詳しく、若い連中に得意げにこの伝説を話してました。

諸島をいくら探しても財宝は無い。となれば白鯨の中に財宝があるんでしょう。どうやって内部に入るかは、伝説に倣えばいい。

てっきり「宝島」か最近流行の「パイレーツ・オブ・カリビアン」かと思ってたら、このままだと「ピノキオ」になってしまいそうですね(笑)

そういえばクリスタニアのリプレイでは、"彷徨の巨鯨"オールギンの体内で幽霊退治とかしてましたっけ。あのノリでしょうか。


第5章 白鯨(ザラタン)

★1〜2

リウイ達は単独で例の怪しい島に上陸し、本当に白鯨なのか海に潜って調べました。結果尻尾やら鰭やらを確認できたので、やはり白鯨でした

「新ロードス島戦記」の子供の白鯨と違い、本当に島サイズです。島魚と言われるだけの事はある。ちなみに鯨は哺乳類であって、魚類ではない。

その白鯨の背中から全員(いつもの5人)まとめて"テレポート"するアイラも大概ですがね。本当に何処からその精神力を持ってきているのか。

仮に7〜8レベルだとすると拡大無しで5点消費、9〜10レベルで4点消費になる。すると5人だと25点か、少なくとも20点にもなるんですが。


白鯨だと分かれば、やはりその体内に財宝がある事が予想できます。話し合った結果、即席で船を建造して体内に突入する事になりました。

白鯨の中に飛び込むのは、リウイ達5人、シヴィル達5人、あとリッケとルーシアとラムス。その他漕ぎ手が8名ほど。グーゼンはお留守番。

船は20人ほどが乗り込める小型船です。ただし木材の材質は柔らかいので長い航海には耐えられませんが、どうせすぐ飲まれるので問題無し。

その準備をわずか5日で終わらせてしまったというのですから、海の民は優秀な船乗りであると同時に船大工でもあるんですね。


その余暇ではこの常夏の楽園を舞台にした恋人達のひと時がありました。ちなみにカップリングはリッケXルーシアと、リウイXアイラ。

前者は海に入って「捕まえてごらんなさい」とばかりに水のかけっこですよ。まぁ小・中学生のデートって感じで微笑ましい。

後者はすっかり忘れてるけどフィアンセ同士です。さり気なくアイラからキスとかしてるし、ミレルが傍にいなくて助かりましたね(笑)


この諸島は大地と炎の精霊力が強い為に、気温は高く湿度は低く、不快感も無い。密林には果物が自生し、海は珊瑚礁が見えるほど透明です。

そんな場所なので一見バカンスに見えますが、彼らはこれから白鯨に飲まれる運命にあり、約1名を除いて内心は不安でいっぱいだと思いますよ。

特にリッケは顕著で本当に気乗りしない様子。ギアースの跡継ぎとして行かねばならず、すっかりナーバスになってくよくよしています。


リッケ「今度は魔獣のお腹の中に飛び込もうだなんて。あの異国の人たちは、どこかおかしいんだ……

まぁ確かに良くも悪くも普通ではありませんね。実際その約1名の筋肉魔法戦士に至っては、むしろワクワクしている様子だし(笑)

そんな彼を元気付けようと発破をかけるルーシア王女は本当にいい娘。この娘の方がリッケよりもよっぽど肝が据わってるような気がするし。


あとアイラですよ。思えばマッドなマジックアイテムコレクターに過ぎなかった彼女も、リウイに連れられて色んな所に行ったもんです。

それで大分活発になったけど、今でも微妙に危険な事には尻込みしてしまいますね。それでも彼女が危険を冒すのは、リウイがいるから

第1期の頃は幼馴染にしてパトロンでミレルと恋のライバルを演じた彼女ですが、思えばその頃からリウイに関しては尽くす女でしたっけ。

リウイの為に魔剣を手に入れたり、商会を丸々買い取ったりとね。ミレルも相当尽くすタイプだけど、アイラだって負けてませんよね。

本当にこの2人はどうなるんだろう。婚約関係はまだ続行してるけど、アトンとの戦いは命懸けです。全てが終わった時、果たしてリウイは……。


★3

そして決行当日。まずは白鯨を起こして口を開かせねばなりません。これは伝説に倣って背中で火を炊いて怒らせる方法を選びました。

アストラ君はいっそ"ファイア・ボール"でも撃ち込めばいいとエキセントリックな事を言っていました。やはり天才は何処かおかしい。

でも鯨に飲まれる時悲鳴を上げる可愛い所もあるんですね。それが歳相応というものです。勿論もっと幼い子供2人は叫びっぱなしでした。


あとアストラ君も"テレポート"を使えるようですね。つまり彼は最低でも7レベル魔術師、フォルテスと同格以上です。流石は天才。

それでもアイラと2人で21人もの人間を瞬間移動させるのは厳しいですよね。やはり魔晶石を沢山支給して貰っているんでしょうか。

仮に2人とも5点で"テレポート"を使えるとしても、21人いれば必要な精神力は105点!。どんだけ魔晶石を持ってるのやら(苦笑)。

それともシャザーラの力を借りればそれぐらいの精神力も魔晶石無しで工面できるのか?。魔神王ですら精神点は100だったんですがね。


体がデカイ分やや鈍いのか、最初はなかなか目を覚ましません。しかし一度怒りだせばその迫力は圧倒的、スペクタクルです。

動き出そうとする振動が海面に小波を生んで陽光の乱反射で白く輝き、鼓膜が破れるかというほどの大音量の咆哮を上げます。

竜の咆哮のように精神に支障をきたす事はないけど、データにした際は特殊能力にしてもいいかも。聴覚を狂わせ、成功ロールに−修正とか。

それからリウイの身長の倍ほどの大波(4m近い?)が襲い掛かり、船は持ち上げられ、白鯨の背中の緑もすっかり洗い流される程でした。


これは伝説に伝えられる船乗り達もさぞ驚いたでしょうね。予備知識があってもこうなんだから、サプライズでやられたら堪ったもんじゃない。

飲み込まれる事も命懸けですよ。相手が飲み込んでくれるのならいいけど、体当たりでもかまされたら一撃で転覆しますね。

本当に恐ろしい魔獣です。この巨体の前では普通の剣は爪楊枝も同然でしょうね。クリシュを連れて来ていたら怪獣大決戦が拝めたろうに。

もし戦闘になったら水上・水中戦になるので、水圧を緩和できる程度の高レベル精霊使いが不可欠。丁度今のリウイ達には欠けた人材です。


飲み込まれた先はの中でした。横長の楕円球状で、中には体内に順応した魚なんかも泳いでいます。暗闇の中で進化?したせいか目が小さい。

ていうか消化されないんでしょうか。白鯨が幻獣の一種だとすると食事の必要はないかもしれませんが、かといって全く食べない訳でもない筈。

胃がある以上やはり消化すると思うんですが……こうして生きている以上それを免れる理由がある筈。是非天才のアストラ君に解明して貰いたい。


ちなみにアストラ君の目分量では縦の直径は20回両手を広げたぐらい。「両手を広げた長さ」=約1.8mとすると、約36mですね。

ファンタジー世界では現代の度量衡は必ずしも成立せず、「人の歩幅で○歩」とか「○回両手を広げたぐらい」といった表現を用いますね。

正直分かり難いんですけど、リアリティーを追求すると仕方ないのかな。しかし「両手を広げた長さ」なんてそれこそ個人差があるし……。

ちなみにここでいう「両手を広げた長さ」を用いた単位は実在します。尋(ひろ)という単位ですね。1尋=約1.8mで、本来深さの単位です。

あるいは独特の単位を作ってしまうんですよ。「覇王大系リューナイト」という作品では、現代の度量衡を単位の名称だけ変えて使ってたし。


驚いた事に胃の中には一隻の船がありました。型からして同じ海の民の船でしょう。やはり何故に消化されてないのか不思議です。

海の民が活躍し出したのはカストゥールが滅びてからですが、《品質保持》の魔力がかかった船を利用していたのかもしれない。

カストゥール王国では魔法だけでなく、技術までもが現在の水準を上回っています。まさか遺失技術を用いてコーティングしてるとか?


船にはシヴィルとスマック、そしてリッケが乗り込んで調べてみます。なんとシヴィルはリッケを背負って縄を上っていきましたよ。

いくら子供とはいえ40kgはあるだろうに、鍛えてますね。ジーニも目前か?。あとそんなリッケにルーシアも不満顔でした。

シヴィルにショタっ気はないと思われるのでそういう心配はいらないでしょうが、リッケは以前「シヴィルを嫁に」発言してましたからね。

年上のお姉さんに憧れるのも無理はありませんが、何だかんだでリッケはルーシアの事を気にかけてるようだし、その内本当の気持ちに気づくかも。


船に上がったのも束の間、船倉に入ろうとしたスマックを"バルキリー・ジャベリン"が襲います。幸い避けたので無傷(避けられるんだ)。

あとここでは"エネルギー・ボルト"を"エナジーボルト"と誤記してますね。「呪縛の島の〜」でも同様の誤記がありましたっけ。

実を言うとリウイはジャベリンを見た事がない。今まで知り合った精霊使いは皆女性でしたからね。判別できないんですよ(賢者のくせに)。

しかしここまでレベルが上がっておきながらジャベリンを見た事がないというのも珍しい。男のダークエルフとかと遭遇しなかったのかな?


船内から出てきたのは、驚いた事にあの"海賊王"バラックのホーントバルキリーでした。何処から突っ込んでいいやら分かりません。

何故バラックがこんな所でアンデッドになっているのか?。何故にバルキリーが持ち霊の如く彼に纏わりついているのか?

挿絵を見ると白骨化しているのでゴースト……っぽく見えるけど、どうやら幽体らしいので、スペクターかファントムのようですね。

ちなみにスペクターやファントムは生前の姿を残した幽体として現れるようですが、白骨化した姿で現れるのがいてもいいとは思います。

バルキリーの衣装はシヴィルと同じものです。これはカラー挿絵にもありますね。愛人のようにバラックにしな垂れかかってますよ。


あとアストラ君が「亡霊に精霊が支配できるとは思えない」と言っていましたが、スペクター(多分ゴーストも)ならば不可能ではありません。

「スチャラカ冒険隊、南へ」ではダークエルフのスペクターが精霊魔法を使っているし。スペクターが使えない魔法は神聖魔法だけ?です。

もしこれがファントムだったら生前の技能は使えず、当然魔法も使えない。その代わり殆どの攻撃が通用せず、非常に面倒な敵となります。


第6章 欺かれた勇気

★1

バラックに何故バルキリーが纏わりついているのかは、すっかり知恵袋となったアストラ君の推測で判明します。既に役所は雷電です(笑)

それは十聖剣の一つ"蛮勇を与えし"魔剣インビンシブルブレードの魔力です。その魔力は勇気の精霊バルキリーを使役できるというもの。

もう少し詳しく言うと、鞘から剣を抜く事で勇気が湧き、バルキリーが"バルキリー・ジャベリン"を無制限?に撃ってくれるようですね。

なおinvisible(透明)ではなく、invincible(無敵)ですね。似ているようで大違い、「KING OF BANDIT JING」に同じ言葉遊びがありました。


"イレーサー"に続いてまた今までのネーミング・パターンを離れていますね。"蛮勇を与えし魔剣(インビンシブルブレード)"という事でいいのかな?

バルキリーは勇気の精霊ですが、勇気は無謀や慢心と紙一重。そんなヴァンの揶揄(そしてバブリーズのネタ)を反映しているのでしょう。

ここではバルキリーは上位精霊となっていますが、本来は知られざる生命の精霊と同じ中位精霊に属します。ヒューリーはその上位精霊

SWアドベンチャーの"戦乙女の紋"に似ていますが、あっちは時間制限や副作用がある分、こっちの方がより高度で強力な術に見えます。


では何故にバラックがアンデッド化してバルキリーとイチャついてるのか、それはシヴィルが真面目に交渉しても分かりませんでした。

財宝の事を口にしてもノーリアクション。つまり未練の対象は財宝ではない。では魔剣はどうかというと、これがビンゴ。怒り出します。

バラックは魔剣に固執し、ポルターガイスト(つまりファントム)などを起こします。こうなると横をすり抜けて宝をパクるのも不可能です。

バルキリーの方も精霊使いがいないので精霊語が分からず、交渉不可能です。ていうか何故にこんだけの数がいて精霊使いだけいないのか(苦笑)


しかしファントムとなると厄介ですね。身動きも攻撃もできず、存在するデータといえば精神抵抗ぐらいなので、近づかなければ基本無害。

ところが《ほとんどの攻撃は無効》なので、本当に大抵の攻撃は効かない。精神点が存在しないので"シェイド"等の精神を削る魔法すら無効です。

一応ホーントの一種なので《憑依》も可能です。こいつを倒そうと思えば、未練を晴らして昇天させるか、一部の魔法で消し去るしかない。

具体的には6レベル神聖魔法の"イクソシズム"や、8レベルのファリス特殊神聖魔法"バニッシュ"等ですね。本当に対抗策が限られています。

このパーティーだとメリッサやエメルが"イクソシズム"をするしかないかな。でもそれだと魂が消滅するので、できれば未練を晴らしてやりたい。


バラックもバルキリーも狂ってるらしく、バラックはポルターガイストを起こし、バルキリーはジャベリンを撃ってくるから厄介です。

そこでリウイは自分が囮になって魔剣を封じるのです。手を出さないと言っておきながら、やはり危険な事は率先して買って出るんですね。

まぁ相手はジャベリンをつるべ打ちしてくるのは分かりきっていますから、最も頑丈なリウイが行くのが妥当なんですがね。


その間仲間達はリウイにジャベリンが行かないよう、文字通り命懸けで注意を引きつけました。結果怪我人多数、死者が出ないのが不思議。

精霊の常として、自らの司る精霊力の魔法しか使えませんが、その使用回数は無制限。どんなに耐えても弾切れはしませんからね。

このバルキリーがルールブック通りのデータならば、その魔力は8です。抵抗はできるとしても、7振って13点か。結構痛い。

当然回ろうものなら一撃で沈む可能性もある。あと敢えて"ファナティシズム"をかけて挑発する事も可能ですが、こいつはそういう事はしなかった。


ミレルは脚に食らうし、ダニロもジャベリン2発が飛んできて血達磨。ジーニは手を広げてジャベリンを受けても眉一つ動かしませんが(漢だ!)。

アイラがミレルを庇うように囮を買って出た時はライバル間に友情が芽生えたかと思ったら、実は"マジック・リフレクション"済みでした。

ミレル「あたしとリウイのために、犠牲になってくれるの?あなたのことは忘れないからね」←勝手に殺すな

これでアイラが死んだらミレルはリウイのものですが、アイラがそんな殊勝な自己犠牲になってくれる筈がありませんよね……(苦笑)


驚いた事にメリッサは"ディバイン・アーマー"で身を守り、"ディバイン・ウェポン"で光の弓を出して空飛ぶバルキリーと撃ち合いをしました。

両方とも7レベルのマイリーの特殊神聖魔法ですが、やはり彼女はもうそんなレベルなんですね。ちなみに弓術はカガリ直伝です。

あとこの鎧でジャベリンを防いでいましたが、これらは必要筋力30の武器・鎧を出すもので、魔法を防ぐ事はできないと思う。


一際異彩を放っていたのはエメルです。なんか以前よりかなり奔放に振舞ってるんですよね、こういうキャラだったのか(フリーダム・エメル)。

ダニロ「間違えて、逆魔法をかけないでくれよ」←"ウーンズ"の事ね。

エメル「もしも死んだら、屍人にしてあげるから、安心してね

もしも死んだら眠らせて欲しいものです。


同じくジャベリンを2発食らったリウイの治療をする時も嬉々として服を脱がしながら……

エメル「素敵な裸体……じゃなくって、ひどい傷だわ」

リウイ「とにかく、早く治してくれ……」

エメル「承知した」←シヴィルの真似

どんだけリベラルなんだこの人は。いやこの程度にリベラルなファラリス信者なら可愛いものか。


勿論シヴィルも囮になろうとしますが、"お気遣いの密偵"スマックによって後ろに下げられます。彼は彼女の執事兼護衛ですから。

海の男達も次々と囮になろうとしてくれましたし、皆必死ですね。多分子供2人は何処かに隠れていたと思います。食らったら死ぬし。

あとアストラ君が遺失魔法"スティール・マインド"を、エメルが"メンタル・アタック"を使うと言っていましたが、ファントムに精神点はない


ラムスは呪歌を歌いまくって支援に徹します。恐らくは気分を高揚させる"モラル"か、心身の抵抗力を上げる"レジスタンス"でしょう。

この場合「ジャベリンの的になる」訳ですから、どちらかといえば"レジスタンス"の方が有効。生命・精神両方の抵抗力に+1ですもんね。

海の民にとって音楽というのは長い航海の貴重な娯楽です。だから吟遊詩人は尊敬の的だし、自ら修行の旅に出て学んだ事を後進に教えます。

ラムスも多分そういう風に修行を積んで、仲間達に貢献してきたんでしょう。白鯨に突入する時も歌ってたし、バードとはいえ極めるとこうなるのか。


リウイはジャベリンを食らいながらも魔剣を発見して鞘に収め、危ないところで魔剣の力を抑える事に成功します。

そして正気を取り戻したバラックは、何故に自分がこんな所でアンデッドをしているのかを語るのです。彼が活躍していた500年も前の話です。

結果から言うと自滅ですね。魔剣の威力に心を奪われ、散々調子に乗って暴れまくった挙句、白鯨に喧嘩を売って飲まれたのです(アホか)。


その後岩のような白鯨の腹の中から脱出できず、蛮勇と言うしかない自分の愚かさを悟り、彼はここで首を刎ねて自害してしまったのです。

そしてバルキリーにその魂を委ねたのですが、バルキリー自身も魔剣に呪縛されているものだから、精霊界にも冥界にも行けなかった訳です。

ていうかバルキリーって本当に死者の魂を運ぶんでしょうかね。「北欧神話」では確かにそうなってるけど、これはフォーセリアだし。

フォーセリアの死後の世界は宗派によってマチマチだし、精神の精霊であるバルキリーにも還るべき精霊界があるのかは謎です。


なおこの魔剣を何処から手に入れたかというと、カストゥール王国の船から略奪したのです。略奪品の中にこれがあったんですね。

本来彼は魔剣の類は使わない主義だったそうですが、バルキリー信仰のある海の民にとってはこの魔剣はかなり魅力的だったんでしょう。

今思えばそれは彼を自滅させる為にわざと渡したように思えます。実際彼は魔剣を使うつもりが、魔剣に使われてしまった訳ですし。

カストゥール王国が滅びてからは向かう所敵無しで、大抵は逃げるか降参するかで終わってしまい、フラストレーションは堪る一方だったのです。


そんな彼が海の王者の座を賭けて白鯨に喧嘩を売ったのも当然ですね。ちなみにこの群島はあのベルーガが作った王都の保養地だったとか。

ベルーガといえばあの精霊都市フリーオンを作った男です。彼ならこの都合の良過ぎる自然環境を作る事も十分可能でしょう。

あの竜巻と大渦にしろ、南国のビーチにしろ、全ては作り物だったんです。自然の妙だったら感心ですが、ネタが割れると感動も冷めますね。

実はここにはその環境を生み出している魔法装置があるので、リウイ達はこれを止める事にしました。放っておくとその内暴走しそうだし(笑)


あと余談なのですが、「神代の国の魔法戦士」にも多少書いてあったように、ここでは付与魔術の優位性をかなり強調して書かれていました。

付与魔術の一門は従順な蛮族を保護し、才能のある者に魔術を教えて魔法の武具を授け、強力な魔法戦士の軍隊を持っていたというのです。

実は"蛮勇を与えし魔剣"を持っていた人も蛮族の青年だったといいます。結局はバラックを嵌める為の捨て駒みたいな扱いですが。

いくら保護していると言っても、やはり蛮族は蛮族。バラックを自滅させる為の陰謀説が正しかったとすると、体よく使われただけか……。


その力は他の門派と争っても大抵の場合勝り、ロードス島やイーストエンドにまでその勢力を広げてたというのです。

そういえばロードスの初代太守も付与魔術師で、カーラは太守の娘で付与魔術師です。最後のロードス太守サルバーンは死霊魔術師ですが。

そもそもマジックアイテムというものを作るのには、この付与魔術が不可欠です。他の系統でも結局は付与魔術で魔力を固定するのだし。

そういう意味でも付与魔術はちょっと特別だったのかもしれない。まぁ王国末期では、基本的に各門派は解散してたんですけどね。


全てを語ったバラックは快く財宝を子孫達に譲り、消えていきました。喜びの野には行けないと言っていましたが、真相は誰にも分からない。

これでバイカルは財政的に救われる……と思いきや、リッケが魔剣を奪い取るという事件を起こしたりもしました。すぐに収まりましたがね。

彼は勇気を欲して魔剣に手を出したのですが、結局はルーシアの決死の説得で魔剣を手放したのです。危うくウッド2号になるとこでした。


リッケ「ボクは御先祖様とは違う。本当に臆病で、お爺のように部族をまとめることはできない。
    だけど、バルキリーがいてくれれば、そんなボクでもきっと務まる。
    御先祖様はもともと勇敢だったから、勇気が過ぎて蛮勇になったのかもしれない。
    だけど、臆病なボクには、ちょうどいいはずなんだ

ルーシア「勇気なんて、他人から与えられるものじゃないわ!自分の心のなかから、一生懸命、ひっぱりだしてくるものよ
     わたしは、怖がりでも賢くて優しいリッケが好き。いつも、みんなのことを考えて、頑張っているリッケが好き。
     もし臆病すぎるって思ったときには、あんな精霊女じゃなく、わたしが叱るわ!

そしてジャベリンが顔を掠めながらも前進し、ルーシアはリッケの目を覚まさせようとビンタまでしたのです。強い……強過ぎるよこの娘


リッケは今までずっと我慢してきたんです。族長の跡継ぎとして、「嵐の海」を越えるのも白鯨に飲まれるのも、怖くて仕方なかった筈です。

そしてこれからも同じようなものを要求されるかもしれない。だからそれを恐れなくて済むようにと、つい魔が差してしまったんでしょう。

でもそれは「強くありたい」という気持ちの裏返しです。本当の強さや勇気はこれから学べばいいんです、幸いパートナーには恵まれてるし。

でもどんなに臆病でも、どんなに勇気があっても、やはり子供は子供です。全てが終わった後は2人揃って大いに泣いて全てを洗い流しました。


第7章 楽園の終焉

★1

バラックともどもバルキリーも消え去ったので、次にすべき事はバラックの船に積まれた宝を回収し、白鯨の腹から脱出する事ですね。

これもまたリプレイ版の「封印伝説クリスタニア」みたいに、くしゃみで鼻腔から吹っ飛ばされるのかな……等と思っていました。

ところが彼らはただの冒険者じゃない。美少年天才魔術師や、マッドアイテムコレクターがいるのです。その辺はかなりチョロイです。


まずアイラは秘蔵のマジックアイテムが詰まった四次元ポケット"無限のバッグ"の@とAを組み合わせたものをあさります。

"無限のバッグ"には重力を無視できる@("ウェイトレス・バッグ")と、体積を無視できるA("バルクレス・バッグ")の2種類があります。

片方だけでは四次元ポケットのように無限に出し入れはできませんが、@の中にAを入れれば正にそのような効果を期待できます。

ちなみに@は4万ガメル、Aは20万ガメルもします。ミレルは興味本位で中を覗いて、夜空を見たそうです。まぁ異空間だから(笑)


アイラはこうして取り出した"船瓶(シップボトル)"によって船ごと回収します。これは船を一隻ボトルシップ状に封印できる瓶です。

新ロードス4巻「運命の魔船」でヴェイルが魔法の船を瓶に出し入れしてましたよね。多分アレです。アレと似た、あるいは同じ品です。

船を簡単に持ち運べるので、カストゥールの人はかなり重宝したそうですよ。勿論お値段も凄いので、一つ見つけるだけで船数隻分の価値がある。

重量も体積も無視できても対象は船のみだとしたら、"無限のバッグ"の両方を合わせた24万ガメルの半額で12万ぐらいかな。

1隻だけしか入れられないなら更に下がるかもしれない。でも「吸い込む」能力を考慮すれば、やはり10万程度はするのかな。


脱出にはやはり一人ずつ"テレポート"で飛ばす方法を取ります。これはアイラとアストラ君が、恐らくは魔晶石を大量に使って解決。

21人を飛ばすには、2人が8レベル以下だと計105点も必要です。仮に魔晶石(5)のみを使うとすると、総額5万2500ガメル!

バックにオランやオーファンといった大陸有数の大国やギルドがいれば、この程度の出費は楽勝ですね。バブリーズ級の装備が普通に揃う筈。


ミレル「バイカルまでも、さっきの魔法で帰れば簡単なんじゃない?

言っちゃったよ、誰もが気になっていた事を。でもそれをやると更に膨大な精神力を要するんですよね、確か50人はいたはずだし。

「何度も休憩しないといけない」とか言ってるところを見ると、魔晶石がもう尽きてるのか。あるいは最初から自力で飛ばしてるのか……。

それに"船瓶"は1つしかない。それをやると乗ってきた方の船を放棄しないといけない。それはちょっと躊躇われるのです。

海の民にとって船は土地も同然です。ましてこの船は国家の命運をかけて造られた特別製です。流石に放棄はギアースに申し訳ないかも。


なお一連の魔法大連発には海の民達も驚きと戸惑いを隠せない様子でした。そういえば何故彼らは魔法に慣れていないんだろう?

"テレポート"で飛ばされる時なんて、注射を怖がる子供のようでしたよ。「嵐の海」を越える度胸を持ってるくせにね(苦笑)

その夜は財宝発見を祝して大宴会となりました。明日には魔法装置を止めてこの楽園も消えてしまう。色々な意味で記念すべき宴でした。


★2

宴の翌日にはリウイが天候操作の魔法装置を止めて精霊力の異常を是正し、「嵐の海」と楽園の両方を解除して簡単に脱出できました。

この装置はアストラ君の天才的推理で発見し(単に海の中心を調べただけ)、リウイが単身乗り込んで、ちゃんと装置を把握して止めました。

装置を止めると冷たい雨が降り注ぎ、強風が吹きつけ、地震まで起こりましたが、四半日もすれば諸島は本来の姿を取り戻しました。

空は灰色に曇り、海の色は暗くなり、気温も下がったようです。当然「嵐の海」も消滅。この何とも詰まらない光景が本来の姿だったんですね。


装置は海に浮かぶ球体でした。扉にかかっていた魔法の鍵は、リウイが特大魔晶石を使い潰した達成値極限拡大(+3?)"アンロック"で解除。

中に浮かんでいたのはウニ状の魔晶石でした。トゲトゲが生えていて、球体の壁を尽き抜け、海から魔力を吸い取っているような感じ。

以前は暴走していたので大変でしたが、今回は確実にシステムを把握してから余裕で止めました。……なんか順調過ぎて詰まらない(コラ)。


かと思えば最後にひと波乱ありました。ラムスが裏切ったのです。裏切ったと言うか、彼なりの信念に基づいた行動だったんでしょうが。

実は彼こそがムディールとの内通者であり、リッケやルーシアを襲わせたのも多分彼。ついでにテグリら武装船団を呼んだのも。

彼の持つ琴は魔法の琴。奏でた音や声はもう一つの琴から聞こえるのです。テグリの船にあったものがその対となる魔法の竪琴でした。


何故そんな事をしたのか、それは彼なりに海の民の生き方を求めた結果です。結論から言うと、彼は海の民をムディールに従属させるつもりです。

既に彼は足の遅い武装商船から荷を引きうけて港へ運ぶという、実にパシリ的な事をしています。海の民が生き延びる道はそれしかないと。

宝なんてあっても所詮は一時凌ぎ、遠からずムディールの勢いに飲まれる……とね。だからリッケが亡き者になる事も望んだ。

この航海に付き合ったのは、リッケが死んで計画が失敗し、尚且つ生きて帰れる可能性に期待したから。そうなれば彼が族長ですから。


そんな重要な事をいきなりリウイにベラベラ喋り、目の前に武装船団が現れると、彼は海に飛び込んで最寄の島まで逃げてしまいました。

武装船団がバラックの財宝を奪い取り、海の民が全滅したのを見計らって、琴で連絡を取って迎えに来て貰うつもりですね。

……と思わせて放置されたりして(笑)。実際仮にムディールに従属したとしても、きっとロクでもない扱いを受けるでしょうしね。

まぁ放置はされないにしても、ある程度の便宜を図らせて用なしになったらボイされる可能性もあるし。どうも彼は賭け事は苦手らしい。


★3

ラムスの裏切りが発覚し、目の前には武装船団が10隻ほど。戦っても勝ち目は薄く、囲みを突破するのも困難な状態でした。

海の民は信頼していた同胞の裏切りに激怒しつつも、折角手に入れた財宝を渡す訳にもいかず、最後の特攻を挑むつもりでした。

仮に降参しても命が助けられるとは思えない。シヴィルは悔し涙を浮かべつつ、使命の為に自分達だけでも"テレポート"で脱出するつもりでした。


しかしリウイは諦めない。別にバイカルに肩入れるつもりはないんですよ。しかしここにいる連中は共に命を賭けた仲間です、見捨てられない。

そこでリウイは毎度お馴染みの逆転アイディアを出すのです。そのアイディアとは、白鯨を武装船団と戦わせるというぶっ飛んだもの。


その為には今乗ってる船を犠牲にせねばなりません。乗組員一同は海に飛び込んで陸地まで泳ぎきりました。

さっきまでは放棄するのは忍びないとか言ってましたけど、生き残る為なんだし、ギアースも許してくれると思います。

リウイは可燃物を満載した船に1人残り、白鯨の背中の上で待機しました。そしてリウイは"海狼"テグリと対峙しました

テグリの言い分は、財宝は海の民が世界中から略奪したものだから、自分が横取りしても問題はないというものでした。

そしてその財宝を国王に献上し、総督となって海の民から徹底的に搾取するつもりでした。やはり彼は残忍な狼だったようですね。


これにはリウイも怒りが込み上げてきました。

リウイ「たとえ、そうだとしても、あんたに罰する資格はないな。
    武装商船が海上貿易を独占しているのは、他国の貿易船を海賊と決めつけて襲ってきたからじゃないのか?

そんな事をしていたのか。まぁバイカルとはお互い様なんですけどね。一方は海賊として略奪し、一方は軍事力を駆使して略奪した訳だし。

決してバイカルが無辜の民という訳ではないし、ムディールが悪の侵略者という訳でもない。どちらも海の覇権を巡って色々やった点では同等です。

ソーマが言ったように、交易と略奪は紙一重です。加害者・被害者の関係なんかじゃないんです。両国家には功罪両方がある

それでもリウイはバイカルの方に肩入れします。彼だって聖人君主じゃない、その時の立場や義理で贔屓をしたっていいと思う。


またイーストエンドとの交易問題にはこんな事を言ってます。

リウイ「ムディールではなく海の民を交易相手に選んだのは、そのほうが利益がでると分かっているからじゃないのか?

いやあれは内乱明けの混乱時に船団を率いて軍事的圧力をかけたからでは?。少なくともイーストエンドに断る余裕はなかった筈です。

とはいえ「罰を受けるならテグリも」というのは否定はできませんね。海の民に罪があるなら、それはテグリも同様の筈です。

イーストエンドは開国する、バイカルはもう昔のように略奪一辺倒ではない。ムディールもまた今まで通りではいられないと思います。


リウイは自らの船に火をかけ、更に"シンセン"の甲板に"ファイア・ボール"を撃ち込んで挑発し、敵が攻撃してくるのを誘いました。

間もなく武装商船からはカタパルトやバリスタといった超強力兵器の矢玉が飛来しますが、その前にリウイは魔法のマントで空を飛んで脱出。

両方とも城攻めに使うような兵器であり、打撃力で言えば普通に50とかいってるような代物です。人間に当たったら大変な事になるでしょうね。

実際その威力は凄まじく、船も蜂の巣ですよ。ところがそれがマズかった。実はリウイがくべた火は密室となった船内で燃え上がっていたのです。

そんな所に新鮮な空気が流れ込んだものだから、バックドラフト現象?なのか白鯨の背中で大爆発を巻き起こし、白鯨は大激怒です!


普段は生きてるんだか死んでるんだか分からないけど、今は大嫌いな炎をモロに食らった事で、凄まじい咆哮などをあげて大暴れですよ。

勿論相手は矢玉を浴びせた武装船団です。武装船団は白鯨から逃げようとしますが、足の遅い武装船では逃げ切れず、武装船団は全滅します

それからリウイ達はぶっ壊れる寸前のバラックの船を操ってどうにかこうにかバイカルへの帰還を果たし、バイカルは持ち直すのでした。




このお話の5年後にはギアースは亡くなり、ルーシアと結婚したリッケがバイカル王として即位し、海の民と平原の民は統合しました。

そのお陰でバイカルは後の聖剣戦争や混乱の時代を巧みに乗り切りました。一方テグリや武装船団を失ったムディールはその勢力を弱めます。

結果バイカルは交易においても、かつての勢いをいくらか取り戻したようです。イーストエンドとの交易もそこそこ成功したのかな?


ただしリッケは"臆病王"という、某"不幸王"のような名前で呼ばれます。それは嫁さんに一生頭が上がらなかったせいかは定かではない(笑)

ラムスの行方は杳として知れません。ただこのお話の10年後には、海の向こうから聞こえてくる琴の音色がちょっとした噂になるんだとか。


このお話の後にリウイ達は9本目の聖剣クリシュの脱皮という目的の為に神の心臓へと向かいます。詳細は「煙火の島の魔法戦士」

更に神の心臓から帰還した彼らは、世界を揺るがす大事件へと身を投じていきます。こちらの詳細は「魔法の国の魔法戦士」となります。








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