「ロードス島戦記3 火竜山の魔竜(上)」著:水野良 出版社:角川書店
★1〜3
英雄戦争から5年。炎の部族と風の部族の抗争こそ収まったものの、まだまだロードスでは争いと混乱が続いています。
今回のお話は分冊ということもあり、登場キャラも結構な数になって、話そのもののスケールも大きくなっています。
キーワードは五色の魔竜と太守の秘宝です。ようやくファンタジーの看板とも言うべきモンスター、ドラゴンが出てきますよ。
前回の風と炎の部族の抗争に決着をつけたパーン達は、懐かしのザクソンの村に戻ってきていました。
アラニアの内戦、アラン公ラスターの王弟派と、ノービス伯アモスンの前王派の争いは5年経っても続いています。
王弟であるラスターを倒せば、王位継承権の順で言えばアモスン伯が次の王様になることになります。
ノービスの街は代々王弟が治めてきたのですが、この世代では妾腹のラスターではなく、前ノービス公の息子のアモスンが治めていたのです。
どちらかが相手を倒して統一することも出来ず、下手したらそれぞれの領土を中心に王国を二分することにもなりかねませんね。
戦に巻き込まれることを避けて、多くの難民がザクソンの村を頼ってきています。
前回の時点(3年前)でも、スレインは彼らを救う為に、森を切り開き、焼畑によって食料をも獲得していました。
もうザクソンも結構な規模になってきています。村というか町という規模にはなってると思いますよ。千人以上も人口が増えてるらしいし。
もちろん納税なんてしてません。その滞納分を徴収しようと、ラスターは傭兵を雇ったのです。
シーリス 17歳
ファイター5、セージ1。元カノン貴族の女傭兵。王国が滅びてからは傭兵をしている、勝気で赤毛が特徴の快活な娘です。
相棒のオルソンと共に色々な経験を積んでいて、男が相手でもそうそう負けません。自分の腕に絶対の自信を持っています。
何故か魔法使い全般に妙な偏見を持ち、快く思っていません。今回の仕事も、首謀者が魔術師のスレインだから受けたまでです。
とはいえ大陸のザインやロドーリルの人間ほど頑なでもないので、気づいてみれば消えている設定ですけどね(笑)
オルソン 21歳
ファイター5、シャーマン0(!)。シーリスとコンビを組む傭兵、実は狂戦士だったりする。
狂戦士とは怒りの精霊ヒューリーにとり憑かれた存在。一度暴れだせば、圧倒的な力で全てのものを破壊します。
一度狂戦士となり、それでも死なずに生き残った場合は、"優しき狂戦士"となります。彼もその"優しき狂戦士"です。
"優しき狂戦士"はヒューリーの強い影響を受けているので、他の精神の精霊が抑えられ、感情に乏しくなります。
その他の狂戦士状態の特徴と、その沈静方法、及び"優しき狂戦士"の特徴は、必要に応じて触れていきましょう。
この二人に、アラニア軍名物ウッドレンジャー5人を加えた7人が、税の徴収の為にザクソンを尋ねてきます。
アラニア軍には森の中での戦いが得意な遊撃兵団(弓兵隊)が存在します。コンパニオンでは"蒼弓の射手"とも呼ばれてましたね。
レンジャー技能がメインの為に、装備品は基本的にハードレザーです。騎士のような甲冑なんて着れませんね。
多分ラムリアースのユニコーンの森にいる森林衛視隊と似たような部隊なんでしょう。
この時点ではスレインはレイリアさんと一緒にターバの義母ニースの所へ行ってたりするので、セシルが対応します。
実はこの頃には既に小ニースが生まれています。スレインとレイリアさんの娘、六英雄のニースから名を貰ったのですね。
小ニースは512年生まれ、今年3歳。………ということは、3年前の風と炎の砂漠の冒険の時には既に身篭ってたんですかね?
それじゃあレイリアさんは、身重の体で砂走りとやりあったり、アズモを刺殺してたりしたんですか。流石はマーファ(関係ない―笑)
なお、これ以降は元祖六英雄のニースの方を大ニース、小さい方のニースを小ニースと呼ぶようにします。「しょう」です、「こ」ではない筈。
この小ニースの方もかなり重い宿命を背負ってるんですが……それはまたの機会に譲ります。
シーリス達は敵が魔術師1人だと思ったので、散々罵詈雑言を浴びせて誘き出す作戦をとりました。
オルソンは始終無感情です。クールというか、いわゆる綾波っぽい雰囲気。でも芝居で下品な笑い方はするらしい、大根だけど(笑)
それに比べて、シーリスは結構こういうのに向いてるらしい。声が綺麗な人って、悪意を込めると感じ悪くなりますしね。
するとセシル(スレインと思われている)はまんまと誘き出され、周囲に身を伏せていた弓兵達にロックオンされます。
シーリス達の安い挑発に乗り、調子に乗って追いかけた挙句動くに動けない状態に……パーンよりもよっぽど熱血主人公っぽい(笑)
ある程度の距離を置かれて包囲されているので、魔法で無力化するのは難しい状態ですね。
今回は魔法を使う前に射られることになっているので、強行するのは危険すぎかもしれませんね。下手したら矢セシルが誕生しますね。
SWなら先に動ける可能性があります。相手の中にセシルよりも知力や敏捷度が高いのがいたら、魔法を使う前に射られるかもしれませんけど。
レベルはそこそこある(ソーサラー5?)ので、即死はないかもしれないけど、5人もいるとヤバいかも。
いっそ"エネルギー・ボルト"5倍拡大とかやってみたら。視界に入ってないと使えないなら、全員を一度にロックオンはできないでしょうけど。
先手とって動けるようなら、"フライト"を使って150m上空にまで逃げるとか。バビュンと飛び上がるセシル、カッコイイ(笑)
射撃武器は100mを越えると、5mにつき攻撃力に−1の修正が入ります。一度目を耐え切れば上空300mまで避難、当たりませんね。
ニッチもサッチも行かない時に、パーンとディードが駆けつけます。2人を呼んだ村の少年アーティンはアニメにも出てましたっけ。
パーンとディードなんですけど、どうやら同棲してるようですね。ディードが食器を洗ってたりしますし。
もういっそ結婚しちゃえとも思いますが、この2人の場合はそうおいそれと踏み切れないんでしょうね。種族的にも立場的にも……。
ディードは"ウィンド・ボイス"と"ミサイル・プロテクション"を駆使してセシルの安全を確保します。
セシルは周囲を矢が飛び交う中で、"スリープ・クラウド"を使って弓兵を全部眠らせます。
有効距離500mの"ウィンド・ボイス"はともかく、20mしかない"ミサイル・プロテクション"は距離拡大しないと届かないかも。
続いてパーンはシーリスを、ディードはオルソンをターゲットします。白兵戦も出来るセシルはディードをカバー。
この時点でパーンとディードはもう8レベルになっていそうなので、ハッキリ言ってシーリス達に勝ち目はありませんね。
それでもシーリスは戦います。勝つためではなく、噂の腕利きの戦士であるパーンと戦いたいから。結構男前な性格してますね(苦笑)
とはいえ全く歯が立ちませんけどね。彼女だって5レベルだから決して弱くはない、ただパーンが並外れて強いだけ。
一方、オルソンの方はディードの"チャーム"にあっさりとかかります。それはもう、抵抗した様子すら見せずにコロリと。
実は"優しき狂戦士"は、ヒューリーの影響で感情が抑えられている事で、精神系の魔法への対抗力が−4されます。
ディードが8レベルだとしたら魔力11、対するオルソンは精神抵抗が7なのに−4して3。抵抗出来る確立は6%弱、これじゃあ無理ですね。
結果としてオルソンはディードにメロメロ(死語)になってしまうんですが……"優しき狂戦士"のチャーム状態はちょっと想像し難い(苦笑)
シーリスはパーンにボロ負けしたので、割と潔く降参しました。敗者は勝者の言う事を聞く、シンプルですが分かりやすい法則です。
ところが、パーンがシーリスに剣を突きつけていたことで、オルソンが狂戦士となってしまいます!
"優しき狂戦士"はとても不安定な状態で、ふとしたきっかけで狂戦士になってしまいます。主に、最初に狂戦士になったきっかけが鍵となります。
オルソンの場合、目の前でゴブリンにお姉さんを殺されたことがその原因となります。シーリスにお姉さんを重ねたんですね。シスコン?
狂戦士状態になると、攻撃力+4、追加ダメージ+6、回避力−4というとんでもない修正が入ります。
この状態では魔法に対する抵抗もヒューリーが行うので、精神抵抗はなんと34(27)。6ゾロでも振らないとまず抵抗を破れません。
なお、この状態だと生命力をどれだけ削ろうと倒れません。何らかの手段で精神力が0にならない限り鎮まりません。
このまま回りにいる者を全て攻撃して殲滅しようとするんですね。基本的に敵を優先するらしいけど、味方を見逃したりはしないらしい。
リプレイの影響からか「リィ……リィィ……」と唸ります。リプレイのように「ウリィィィ」とか、ジョジョっぽく「UUURRYYY!!」はダメだったか(笑)
世間で実しやかに囁かれる狂戦士伝説ですが、オルソン以外にも実在した狂戦士がいるようです。
燃える城から炎に包まれたまま姿を現し、敵を百名ほど斬り殺した小国の騎士。アラニアの軍艦五隻を道連れにした海賊王など。
前者はともかく、後者はコンパニオンに記録が残っています。ライデンの海を騒がせた英雄、海賊王ローズ・ブロークです。
前者は……何処かに記述があったかな?。滅亡の運命を辿った国の騎士なんでしょうね。何処だろうか、モスかな?
"夜の海"ティガーに海賊の流儀を学び、24歳で海賊デビュー。この際二隻の商船を沈めています。
ローズは様々な海賊行為をして名声を高めていき、多くの海賊に慕われるのですが、盗賊ギルドの反感を買ってしまいます。
ギルドはアラニア海軍と連携し、ローズを海戦に引きずり込んで亡き者にしようとします。この時でした、彼が狂戦士になったのは。
その凄まじい戦いぶりに、今でもライデンの海賊船では彼を象ったフィギュア・ヘッドが飾られているとか……。
その伝説の狂戦士が今パーン達の目の前にいるわけです。装備を全て含めた場合のパーン(8レベル)とオルソンの能力はこんな感じ。
パーンは攻撃力12、回避力14、追加ダメージ12。オルソンは攻撃力12、回避力2(金属鎧)、追加ダメージ14になります。
パーンの攻撃が当たる確立はおよそ94.5%、まず当たるということです。対するオルソンは24.7%、4発に1発は当たる。
流石にパーンも強いですね。でも狂戦士状態とはいえ、オルソンもバカ強い。パーンでもオルソンを鎮める前に倒されるでしょう。
この厄介な狂戦士を止める方法は、肉体ではなく精神をどうにかする事。何らかの方法で精神力を0にすることです。
一つ、「精神力」回数生死判定を行わせる。ダメージを受けても倒れないだけで生死判定は行うのです。失敗すると精神力が減る。
ただしこの方法だと狂戦士の魂は破滅します。生死判定に一度でも失敗すると、死亡確定しますから。オルソンを助けるなら却下ですね。
二つ、精神力を直で削る。精霊魔法の"シェイド"や、暗黒魔法の"メンタル・アタック"などです。抵抗はヒューリーだけで、効果は狂戦士持ちです。
三つ、精神系の魔法で抵抗を破る。バカ高い精神抵抗ですが、抵抗を破れれば精神力が0になります。ディードはこれを行いました。
四つ、狂戦士に対象を全て殺させる。自動的に精神力が0になって倒れますけど、普通この方法は却下されます(笑)
ディードは"チャーム"、"フィア"、"コンフュージョン"などをバシバシかけてオルソンを鎮めようとしました。
数をかけたいなら、1点消費で済む"デストラクション"や"コンフュージョン"がいいと思います。
ディードの魔力が11だとしても、相手の精神抵抗は34(27)、6ゾロでも振らない限り破れません。
それでもやればなんとかなるもので、オルソンは沈静化しました。物騒で哀れな男です。
パーンはトドメを刺そうとしますが、シーリスが庇ったので思い止まりました。甘いんだから(笑)
一同がどうしようもなく疲れ果てているところに、ターバから帰ってきたスレインが現れます。
パーン「今日は勘弁してくれ。明日でいいなら、竜とだって戦ってやるから」
スレイン「そうですか、それは助かります。いかにあなたをドラゴンと戦ってくれるように説得すればいいか悩んでたんですが」
……こうして、パーンの新たな冒険が始まったトサ(笑)
★4〜5
マーモの"黒衣の騎士"アシュラムがロードス統一の野望の為に、あるアイテムを探し始めた事が今回の戦いの発端でした。
アシュラム 31歳
ファイター9、セージ3、シーフ1。マーモが誇る騎士、"黒衣の将軍"や"黒騎士"と呼ばれています。
5年前の英雄戦争の時は26歳、カシューやスレインより2つ下。白い肌に長い黒髪、かなりの美形キャラです。
父はアラニア騎士でしたが、謀略により父母と一緒にマーモへ流されます。母は早く他界し、父はオーガーに食い殺されました。
それからはマーモの子供達をまとめて盗賊まがいのことをしていましたが、ベルドに会ってからはその人柄に魅せられて忠誠を誓います。
現在はマーモ評議会の一員であり、暗黒騎士団の長でもある実力者です。私は「アシュラム様」と呼んでいます。
そのアイテムとは"支配の王錫"。このロードスにいる五色の魔竜の守る太守の秘宝の一つです。
カストゥール王国の最後のロードス島太守サルバーンは、ロードスの各地に莫大な財宝を隠し、配下の五匹の竜に護らせていました。
その財宝の中でも、特に強力なアイテムが太守の秘宝。一匹の竜につき、一つの秘宝が護られています。
白竜山脈の氷竜ブラムドは"真実の鏡"。
暗黒の島マーモの黒翼の邪竜ナースは"知識の額冠"。
青竜島の水竜エイブラは"魂の水晶球"。
モスのアルボラ山脈の金麟の竜王マイセンは"生命の杖"。
火竜山の魔竜シューティングスターは"支配の王錫"。
この五匹は古竜と呼ばれますが、実はマイセンとシューティングスター以外の三匹は老竜だったりします。
これらに強力な"ギアス"をかけ、宝の番人にさせたのです。抗う事は強大な竜の力でも無理なのです。
しかし、ブラムドとマイセンは魔神戦争の時に、大ニースの力でこの呪いから解放されています。
ブラムドの宝は大地震の被災者の救済とマーファ神殿の修繕に、マイセンの宝は魔神戦争の軍資金になりました。
"真実の鏡"は現在カーラの手の内にあります。"生命の杖"は、何があったのかヴァリスのファリス神殿に収められています。
ナースは既に"黒の導師"バグナードとアシュラム様に打ち負かされ(死んでない)、秘宝を全部譲ってしまっています。
"知識の額冠"の魔力により、バグナードは太守の秘宝の存在を知り、それをアシュラムが目をつけたのです。
実はアシュラム様は、ブラムドを殺してるんですよね。14レベル老竜のブラムドをね。3人ほどマーモ兵を道連れにしたようですが。
休眠期とはいえ、老竜を倒すなんて、相変わらずとんでもない強さですね。ぶっちゃけ、大陸の邪竜クリシュよりも圧倒的に強いのに。
まぁ"魂砕き"の魔力を持ってすれば、なんとかならなくもないですけどね。他にも高レベルの仲間もいたし。
"魂砕き"は精神力を削る。アシュラム様が振るうと7振って21点。ブラムドの場合7点も削られます。
ブラムドの精神力は28点なので、4発も当たると気絶しますね。そうなったらもう、「まな板の上の鯉」と書いて「なすがまま」。
アシュラム様はその足で大ニースの元を訪ねて、ブラムドの宝について尋ねたのです。そして大ニースはスレインに声をかけたのです。
だったら、ブラムドの所へ行く前に大ニースに聞けよと思いますけどね。何故にわざわざ山に登る、既に宝はないと分かっていただろうに(笑)
大ニースがブラムドの呪いを解いて宝を譲り受けたという話はかなり有名です。アシュラム様も知っていたようですしね。
それじゃあブラムドの所へ行っても何も得るものはないだろうに、一体何がしたかったんだアシュラム様。
もしかして、ブラムドに聞くまでブラムドと大ニースの関係を知らなかったとか。ロードスを統一したいなら、それぐらい調べて来い(笑)
それはそうと、竜には休眠期と活動期があるのですが、具体的に何か違いがあるんでしょうかね?
活発さが違うんでしょうが、具体的な数値の修正とかは入るんだろうか。−4でも、あるとないでは大違いなんですが。
アシュラム様がこのまま"支配の王錫"を手に入れてしまうと、マーモ(というかアシュラム様)を倒すのが非常に困難になります。
というわけで、先回りして竜を倒して王酌を手に入れようとするわけですが………じゃあアシュラムの方を狙えとも思いますけどね。
竜と"竜殺しの英雄"どちらが強いかという反論があるでしょうけど、個体で言えば竜の方が強いに決まってます。
アシュラム様がブラムドを倒せたのは仲間と装備があればこそ、人海戦術で分断して1人でいる所をフクロにすれば勝てます。
いっそスレインが"ライトニング・バインド"でもかけてやれば、それだけで決着がつくでしょう。抵抗されても毎ラウンド5点は抜けるし。
カーラの記憶を持つレイリアさんが、太守の秘宝の事をある程度は話してくれます。
でもどの竜がどの宝を護っているかまでは分からなかったりします。カーラも微妙に役に立ちませんね(苦笑)
見当をつけるとしたら、エイブラかシューティングスターです。どちらにしろ、とりあえずフレイムのカシューを頼ろうということになります。
今回はレギュラー4人に、セシル、オルソン、シーリスも一緒です。
シーリスについては、セシルあたりが強硬に反対しますが、結局は折れました。
ディードもあまり気は乗らないらしい。自分は何処まで行ってもエルフだけど、シーリスはパーンと同じ人間。その事を考えると、複雑なんです。
シーリスは命を助けてもらった恩を返すということでついてきます。あと、パーンと別れたくないから。
それはそれでいいんじゃないですかね。ここで別れたらずっと後悔するというのなら、とことん付き合ってみればいい。
オルソンはしばらくしたら目を覚ましました。普通狂戦士になったらそれっきりなんですけどね、運がいい。
彼なりにパーン達に謝罪もします。感情がないとしても、人間としての心がそう異常だというわけでもないらしい。
感情に振り回されない分冷静。感情論を一切挟まず物事を考えるので、味気ないけど詰らないミスもなさそうです。
パーンは言いました「誰だって、最初は見知らぬ他人さ」と。意図せずに出た格言かもしれませんね。素っ気無いようで深い。
パーンは今まで出会いを大切にしてきました。それがエルフだろうが盗賊だろうが傭兵だろうが、行動を共にすれば仲間なのです。
人と人との出会いをどう捉えるかは、それこそ人それぞれです。でも少なくともパーンはこの出会いを大切にしたいと思ってるようです。
そうしてパーンの周りには人が集まり、時に一国の運命をも左右する。フレイムでしたことも、パーンが出会いを大切にすればこそです。
ちなみにレイリアさんは小ニースを大ニースのところへ預けていくそうです。戦う子持ち神官戦士、マーファらしいといえばらしいかな。
レイリアさんが本当の心の平安を得るには、目の前の問題から目を逸らす訳にはいきません。そんなヤバイ王錫を渡すわけにはいかない。
オルソンの事も気になるらしい。無意識で暴れるというのは、他人事ではないんでしょう。マーファ神官としても放っておけないし。
それに、オルソンが狂戦士になったのは英雄戦争が原因です。そんな間接的な責任まで気にするのだから、彼女の悲しみは計り知れません。
もっとも、そのレイリアさんと一緒に生きていく事を誓ったスレインも大したものですけどね。
★1
パーン達よりも一足速く、アシュラム様はフレイムの王都ブレードにあるマイリー神殿を訪れていました。
竜の咆哮に対抗する為に、マイリーの特殊神聖魔法"バトルソング"の必要性を感じたからです。
現在のフレイムではマイリーが流行っているようです。勇猛な風の部族の気質にも合っていたんでしょうね。
ちなみにロードスにおけるマイリーの総本山はモスの"竜の炎"ハーケーンらしいです。
モスは古来より小国が入り乱れての戦国時代が続いていましたからね。マイリーの教えが根付くのは当然といえます。
神殿の司祭はホップ、3年前の戦いでパーンと同じ傭兵部隊にいたマイリーの神官戦士です。あの時は名前も出てませんでしたけどね。
ホッブ 40歳
7レベルのファイター/プリースト(マイリー)。人は彼を"勇者の導き手"と呼びます。
ファイターとプリーストが共に7レベルというのは、かの"至高神の聖女"フラウスと同じですね。
7レベルのマイリーの特殊神聖魔法、"ディバイン・ウエポン"と"ディバイン・アーマー"を使いこなせるだけの神官戦士なのです。
その徳の高さ故に、ハーケーンの老齢の最高司祭の跡を継ぐと噂されてたりもします。現在はカシューの援助で神殿を開いています。
アシュラム様はホッブを味方にして、今後の竜との戦いに備えようとしてるんですね。竜の特殊能力《咆哮による恐怖》の対抗策なのです。
"バトルソング"は5レベルのマイリーの特殊神聖魔法。聞く者に勇気を与えます。具体的には攻撃力に+2。
対する竜の咆哮は聞く者の心に恐怖を植えつけます。精霊魔法の"フィア"のように、恐怖表から導き出した効果を与えるのです。
竜の咆哮と"バトルソング"は共に精神に影響しますから、同時にかかることはありません。
"バトルソング"で竜の咆哮に対する抵抗の目標値を上回る達成値を叩き出せば、自動的に咆哮を無効にします。
アシュラム様はブラムドとの戦いで、竜の咆哮の効果を知ったようですが、ナースの時はどうだったんでしょうね?
アシュラム様とバグナードは、多くの手下を連れてナースと戦ったようです。ナースの狡猾さを考えると、速攻で咆哮を使ってきそうです。
バグナードや、今回の遠征隊に参加しているその弟子のグローダーなら、事前に竜の咆哮の脅威をアシュラム様に説いておきそうなものですが。
竜に対して数のゴリ押しが通用しないのもこの咆哮が大きい。聞いただけで、中途半端な雑魚は恐慌をきたしてしまいますからね。
竜と戦うに値しないような低レベルの戦士では、まず抵抗できません。そこそこレベルが高くても抵抗出来ないことがあるし。
大陸では邪竜クリシュに対抗する為に、ファン王国が軍隊を投入したそうですが、咆哮一発で総崩れしたとかしてないとか。
多分リジャールがクリシュと戦った時も、ジェニの"バトルソング"の援護を受けて戦ったんでしょう。
ちなみに、ブラムドやエイブラといった14レベルの竜の咆哮に対する抵抗の目標値は21です。
ホッブの魔力は9、限界まで拡大して13。咆哮を無効化するには、出目は8必要です。確立にして約41.7 %。結構微妙ですね。
もしもジェニのような10レベルのマイリーの司祭だとしたら、元の魔力が12として拡大して17。出目は僅かに4ですね。
ホッブより徳の高い司祭はそういないようですから、アシュラム様としてはなんとしてもホッブを味方にしたいようです。
そういう打算的な理由だけでなく、マイリーの司祭を味方にする事は勇者の証明でもあるし、カシューに対する嫌がらせでもあります。
なによりも、ホッブの人柄をアシュラム様が気に入ったというのが大きい。カシューがパーンを欲しがるのと同じですよ。
しかしホッブはカシューに恩があるし、カシューを勇者だと信じて従っているのです。そうおいそれとは協力できません。
ここからアシュラム様のプレゼンテーションが展開されます。いかにベルドが偉大で、カシューが卑怯な行いをしたのか。
ベルドとカシュー、共に超英雄ポイント20点という化け物ですが、多分カリスマはベルドの方が上だったと思います。
共に裸一貫から王にまでなった正真正銘の英雄ですが、砂漠の民とマーモの民、治めるならやはり後者の方が困難でしょう。
ダークエルフやファラリス信者といった輩を従える事が出来たのは、やはりベルドのカリスマあればこそ。カシューだとちょっと想像できない。
英雄戦争ではカシューがベルドを倒しましたが、あれは当然です。ファーンとの戦いで消耗しきってましたからね。
神聖武具を装備したファーンの回避力はなんと19!。特に記述はなかったものの、"ジハド"の影響下にあったのなら21。
ベルドの攻撃力17だと超英雄ポイントを使って当てていかないとヤバイ。ファーンからの攻撃の回避でも同じく。
そうして消耗したベルドに、超英雄ポイント20点の満タンなカシューをぶつければ圧勝でしょう。
それでも本編ではカシューは押されてましたが、ベルドの肩に矢が刺さった隙にベルドの首を飛ばしました。やはり卑怯でしょう。
しかもあの矢って、「新ロードス島戦記5 終末の邪教(上)」で明らかになった通りに、カシューが部下にやらせた物です。
別にカシューを全否定するつもりはありませんよ。それでもやはりカシューは勇者であり英雄です。パーン達に見せる人柄も、素の彼でしょう。
卑怯な行いも、許されるかどうかは別として、一国を背負う王ならばそれぐらいやってもいいと思えます。王は純粋まっすぐ君では勤まりません。
ただ、カシューはやはり最強の戦士ではない。一騎打ちで誰にも負けないからといって、最強であるとも限らないのです。
カシューはフレイムの王になった事で野心はすっかり消えてしまったように思えます。演技ではなく、本当に。
現在はひたすらフレイムを豊かにし、ロードス中の争いを鎮めようとしていますが、別に統一の意思があるわけではないと思います。
対するベルドは最初からロードス統一という途方もない夢を掲げていました。魔神戦争でのあの出来事があったとしても、です。
ファーンは連合、ベルドは統一という手段でロードスの争いを収めようとしていました。どちらが勝ってもロードスは平和になるはずでした。
統一という手段をとる以上、邪悪の温床マーモの王になる事から始めるのは必然だったのです。
もしも他の土地から始めたとしたら、マーモの住人を滅ぼす事が最後の戦になってしまっていたでしょうからね。
アシュラム様は、そんなベルドの人間の大きさに魅せられた1人なのです。バグナードとかもその点では同じです。
マーモの民の心を法や道徳や信仰でまとめるのは不可能です。しかしベルドは、その最も困難な民の心を一つにまとめてしまったのです。
そしてベルドは、妖魔や邪悪な人間ですら市民となるような帝国を作ろうとしていました。少なくともアシュラムはそう信じています。
もっとも、そんな帝国を治める事が出来るのはそれこそベルドぐらいでしょうけどね。崩御したらまた荒れると思う……。
アシュラムはその志を引き継ごうとしています。成功すれば、間違いなく末永く語り継がれる英雄となるでしょう。
ロードス統一。全ての者が生きる事が許される帝国。途方もなく大きくて馬鹿げているけど、これほど魅力的な夢もありません。
カストゥール滅亡以来、夢見た者は数多いものの、実際に成功した者はいません。カーラによってそれに見合う器の人間が潰された事もあるし。
ホッブはそんなアシュラムに勇者の資質を見出したのか、同行する事を承諾しました。
大きな夢を持ち、それを公言して憚らない自信を持っている。アシュラムはこの「ロードス島戦記」の裏主人公のようなものです。
ホッブもいい目をしてますね、先見の明がある。ベルドやカシューのような、アシュラムの英雄の相のようなものを感じ取ったのだから。
実際アシュラムの活躍は、今後パーンやカシューに勝るとも劣らないものになります。ある意味ベルドを超えるほどの英雄となります。
アシュラムは将来、ベルドの名で呼ばれる土地と、その土地をベルドの名で呼ぶ民の王となります。そう、将来………。
アシュラムは言いました、「いつの日か、あなたはわたしの王都の城下で神殿を開いていることだろう」と。これも叶ったようですよ。
それに、カシューは何事も自分でやる男ですからね、ホッブは必要ではない。しかしアシュラムは自分を必要としている。
勇者に力添えをするのがマイリー信者の王道の一つです。抱いている目的がどうかなんて、二の次です。
ホッブは後事を侍祭のシャリーに託し、神殿を出る事にしましたが、そのシャリーはホッブを止めようとしました。
シャリー 年齢不詳
プリースト(マイリー)5、ファイター3。何故かワールドガイドでは人名録に項がないので年齢が分かりません。多分20代。
ホッブの弟子のようなもので、ホッブの事を心底慕っているようです。父と娘のような感じでしょうか。
割と冗談も分かるクチで、レイリアさんとはその辺が違うかもしれない。ホッブが去った後も一生懸命勤めに励むし、真面目な面もあります。
シャリー「正義ある戦いだけに、司祭様のお力は使われるべき……」
シャリーはアシュラムに同行している面子を見て、多少警戒してますしね。アシュラムにホッブがついていくのが心配だったんですよ。
ちなみにメンバーは、闇の森の蛮族のギルラム、スメディ。闇エルフの精霊使いアスタール。魔術師のグローダー。ファラリスの神官戦士ガーベラ。
ものの見事にヤバそうな面子ですよね。ダークエルフとファラリス信者なんて、街中を歩いているだけでも御用でしょうし。
それに対してホッブは、「戦いには善も悪もない。正当であるか否かだけが問題なのだ」と答えました。
続いて「他人が何と言おうとかまわない、自分が正しいと信じれば、あくまで戦い抜けばよい」とも。
世俗の評判や世論なんて関係ない、あくまでも自分の心と神の教えにだけ忠実なのです。聖職者としては間違っていないと思いますよ。
むしろ、他人からの批判を恐れて、自分にとって有利か不利かだけで判断する方が信仰に反しているでしょう。打算的過ぎですから。
こうしてアシュラム様は、新たな仲間を得て次の竜退治に旅立ちました。ある意味、運命的な仲間と共に。
★2〜6
一方、アシュラム様に遅れるようにブレードに着いたパーン達一行は、多少変わっているブレードの現状を目の当たりにしました。
3年も経っているいるだけに人口も増え、緑も多くなっています。四大の精霊力のバランスが元に戻りつつもあるようです。
しかし由々しい事に、多くの難民が雪崩れ込んでいて、深刻な食糧不足になっているようです。
ザクソンでは森を切り開く事でなんとか凌いでいましたが、フレイムは砂漠の国です。元から食料に余裕があったわけではありません。
精霊力のバランスが戻りつつあると言っても、それにはもっと長い年月が必要です。急に肥沃な土地に戻ったりはしません。
パーン達は、飢えの余りに盗みを働いて私刑に合いそうだった難民達を庇ったりもしました。当然パーンが一瞬で片付けますけどね。
レイリアさんが争いを収めるマーファの神聖魔法"ピース"を使った方が穏便に済んだ気もしますけどね。力づくで止めても根本的に解決しないし。
危うくフレイムの正規兵と戦闘になりかけますが、パーンの名を聞いただけで手の平を返したように協力的になりました。有名人め(笑)
どうやらその騎士は3年前のパーン達の活躍を知っていたようですね。両部族の争いを収めたわけですから、ある意味英雄です。
スレインはその難民に自分の路銀をポンとあげてしまいました。それに対して、オルソンは不思議に思っていました。
所詮自分の手持ちの財産なんて限られてます。それに大して難民の数は余りにも多い。全員を助けるのは不可能。
助けるなら全員を助けるべきだし、それが出来ないなら1人も助けないのが平等で理屈に合う。そう考えていました。
それでも救える人だけは救うという考えがあります。神様仏様でもないのだから、一切衆生を救うなんて出来やしないんだし。
それに対しても、自分の会った者だけ助けて満足するのは欺瞞だし、一人も助けない事が肯定されるわけではない。と考えます。
ならば自分の利益を最優先すべきだ、ともね。感情がないとそういう風に物事を考えるものなんでしょうかね。
感情がないからといって、そんな不思議ちゃんになるとも限らないと思いますけど……こればかりは当事者でないと分からない思考かも。
騎士に先導されて一行は3年ぶりにアークロードに登場し、カシューとの再会を果たします。相変わらずリベラルな王様です(笑)
今回の旅の目的を語る訳ですが、偶然にもフレイム王国もシューティングスターを倒そうとしてました。
フレイムの西には火竜の狩猟場と呼ばれる大平原があります。その名の通りシューティングスターのテリトリーなのです。
恐らくは風と炎の砂漠と繋がっていて、ロードスの中北部を覆う巨大な平原だったんでしょうね。
最近の食糧難を解決する為に、カシューはこの平原を新たな穀倉地にしようとしています。その為に開拓村なども興しました。
しかしその村はシューティングスターによって壊滅したのです。この魔竜は、狩猟場の中に人間が入ってくる事を許さないのです。
元々シューティングスターは、人間と折り合いをつけるために、この平原だけを自分のテリトリーとしていました。
かつては無作為に人を襲う事もあったそうですが、人間を本気にするとタダでは済まないことも知っていたので、妥協したのです。
その不文律を破ったのが人間側だからといって、兵士も一般人も皆殺しにされたら、報復しないといけません。国として。
竜に軍隊をぶつけるのは愚策なんですが……まぁこの時点では仕方ないか。
話し合いの結果、シューティングスターの方にはフレイムが行くとして、エイブラの方にはスレイン達が向かうことになりました。
なお、パーンとディードはフレイムに残る事になりました。数千の軍に精霊使い1人加わっても大して変わらないと思いますけどね(苦笑)
まぁイルクを召喚すればそこそこ効果を期待できるでしょうけど、致命傷までは与えられないと思いますよ。
それに、パーンとディードを欠いたメンバーで水竜エイブラと戦うのも絶望的ですよね。いても勝てるか微妙だし。
スレインとレイリアさんはともかく、前衛がオルソンとシーリスですよ。1ターン保つかどうか。打撃点24/25ですよ。
スレインの"パラライズ"に期待ですが、それでエイブラが固まったとして、ダメージ通るかな。防御点20ですよ。
それは置いといて、青竜島メンバーのリーダーはオルソンになります。
パーンはリーダーになって、多くの経験を積んで、感情に揺さぶられて、成長していきました。
だから同じ立場にオルソンを置いて刺激を与える事で、ヒューリーの影響力を和らげようと思ったんですね。
実際効果があるかどうかは謎です。妙案かもしれないし、全くの無駄かもしれない。それでも冷静だからリーダーとしての判断は大丈夫でしょう。
それはそうと、この辺りのオルソンは一人称が「わたし」になってますよね。
その後、カシューはパーンを誘って「鍛えの間」で稽古などをしました。円形の闘技場のような部屋です。
当然勝てやしませんが、パーンは5本に1本は勝てる程度には強くなっているらしい。実戦は1回きりですけどね。
カシュー「この一撃をかわされればあとがないというぐらいの覚悟で飛び込んできていたら、お前の勝ちだったかもしれんぞ」
この一言から、後に"自由騎士"パーンの秘剣とも言える突きが生まれる事になります。
その後カシューは「王になってみんか」という爆弾発言を吐きました。アラニアの王になるのならば、フレイムからの支援もあるのです。
今のアラニアはいつ終わるか分からない内乱が続いていて、民は英雄を求めています。自分達を救ってくれる英雄を。
カシューはその役をパーンに務めてもらおうとしてるんですね。多分他意はないと思います。
パーンを傀儡にして勢力拡大を企んでいるという考えもあるでしょうけど、既に野心がなくなっているならそれも否定されます。
むしろ単純に、早くアラニアが安定して、マーモに対する包囲網を完成させられる事を望んでいるのかもしれません。
現在カノンとヴァリスの東半分はマーモ領です。アラニアが内乱で外征どころではないので、ヴァリスに対して圧力もかけやすい。
しかしもしアラニアが安定したとしたら、マーモは北と西から圧迫される事になります。ヴァリスとモスも安定すれば絶対包囲です。
カシュー「おまえが王になって、同じ立場になってくれれば、お互い気兼ねなしに付き合うこともできよう」
こんな事も言ってます。何でそんなにパーンの事が気に入っちゃったんだろう、このヒゲオヤジは。
カシュー「オレには、そのことがどちらかといえば嬉しいよ」
やっぱり野心なんてないのかもしれませんね。何かこの言葉の方が、つまらない邪推よりも信用できそうです。
別の意味で野望を持ってそうですが。お星様に届け、バーニング野望(笑)
この話はこの時点では保留になりますが、結構後まで尾を引く問題になります。パーンももう、そんなスケールのデカイ男になっているのです。
パーンは後に"自由騎士"と呼ばれるようになるわけですが、この問題に対する彼の答えが、その理由とも考えられます。
ちなみに、この時点では既にエトがヴァリスの王になっています。"神官王"ですね。
ヴァリスでは代々王は、神聖騎士団の中から最も相応しい人物がファリス神殿によって選ばれてきました。
世襲を避ける建国王アスナームの意向で、以後200年以上も守られてきた伝統です。それを覆した訳ですね。
その後宴などが開かれるわけですが、結構複雑に思いが交錯してました。特に恋愛関係の思いが。
パーンを中心に三角関係?。ディードは勿論の事、シーリスもパーンに好意を持っています。パーンは気づいてなさ気ですが(笑)
それにオルソンも、シーリスに特別な感情を持ってるように思えるんですよね。感情がない"優しき狂戦士"なのに。
オルソンはずっとシーリスと一緒だったわけですが、それは別に理屈があってそうしてたわけではないと思いますよ。
奔放で、快活で、強くて、そういった所が好きだから一緒にいたようです。それって惚れてるといいません?
オルソンは感情がないわけではなくて、感情がヒューリーの影響で押さえ込まれている状態だと思われます。
表に出ていないだけで、オルソンにとってはシーリスは特別な存在です。それは間違いないと思いますよ。
つまり三角関係じゃなくて四角関係かな。いや、カシューも加えて五角関係か……(待て―苦笑)。
なお、ここでシーリスが「わたしには表裏のない純朴な自由騎士のほうがお似合いね」なんて言ってます。
もしかしてパーンを自由騎士と称したのはこれが初めてかな。意外な所で意外なキャラが。
宴の二日後、準備も整ってパーティーも二つに分かれて出発する事になりました。
当日になってマイリー神殿のホッブの協力を得ようと、カシューも一緒にブレードの街に繰り出します。
王様が昼間っから供も連れずに堂々と街中を歩くとは……本当にリベラルな国ですね(苦笑)
マイリー神殿の門番はドワーフが勤めていたりするんですが、もしかしてグリーバス?
ところが、当のホッブはもう5日も前にアシュラムと一緒に出かけていたりします。この5日間は、シャリーが神殿を切り盛りしてる訳です。
でも司祭位を名乗るつもりもないようです。あくまでも、ホッブの帰りを信じて持っているんですね。健気だ……。
丁度オーファンマイリー神殿のメリッサのような感じかもしれませんね。中には彼女見たさに神殿に来る人もいるそうだし。
からかわれた時は、神官戦士の訓練で培った経験を生かして対処するわけですが……それって口で諭すわけではないんでしょうね(苦笑)
当然カシューは怒ります。当たり前といえば当たり前ですね、よりにもよって敵についていくんですから。
普通なら怯えるものですが、シャリーはやや押されながらも思った事を素直に話します。結構勇気ありますね、流石はマイリー。
カシューにはホッブは必要ないけど、アシュラムには必要で、カシューは何事も自力で行おうとする、という事ですね。
カシューは出来る事は自分でやるタイプですから。もっと任せたり守られたりする事に慣れた方がいいのかも。
普通の王様なら家臣に任せっぱなしにしたりしますし、それはそれで問題ですけど。何でも自分でやろうとするのもやっぱり問題ですかね(苦笑)
勿論ホッブに援助したり、式典に出席してもらったりもします。でも、精神面ではやはり自分の力を頼りにする。
確かにそういう所ありますものね、カシューって。仕えるほうとしてはやや不満が残る事もあるのかも。私はそういう人の方が好感持てますけど。
仕方ないのでシャリーがオルソン組に参加する事になりました。彼女はカシューが勇者だと信じていますから。
勇者や正当な戦いに力を貸す、それがマイリーです。例え師と戦う事になろうとも、です。
レイリアさんは宗派は違うものの、やはり戦う事に思う所があるようです。生きる事は不断の闘争、それを否定する事はしませんけどね。
全ての神々は間違いなく存在するし、その教義も一つ一つが真理を説いてる。全否定するのは愚かなことです。
それでも、戦う事が自然な事なら悲しい事だとレイリアさんは思いました。戦いが終わる事がない、それは確かに喜ばしい事ではない。
だからこそ、マイリーの教義は重要なのかもしれませんけどね。戦う事の本質を忘れないように、避ける事の出来ない事に屈しないように。
今ロードスで起こっている争いは、レイリアさんも無関係ではない。それに自分の大切な人も巻き込まれている。それはやはり悲しい事です。
色々ありましたが、エイブラのいる青竜島に行くメンバーは決まったわけです。
オルソン、シーリス、セシル、シャリー、スレイン、レイリア。何となくスレインとレイリアは助っ人NPCって感じですね。
オルソンの出発の号令は「出発しよう」という抑揚のない一言でした。思わずズっこけそうですが、オルソンなりにシメたつもりなんです。
あと2人ほど仲間がライデンで加わりますが、その時になってみてのお楽しみ(笑)
★1
ホッブを加えたアシュラム様一行は、水竜エイブラの住む青竜島に渡る為に、自由都市ライデンにまで来ていました。
正確には、その近辺の洞窟です。ここには予め派遣しておいたマーモの軍船「海魔の角号」が停泊しています。
乗組員も一応マーモの正規兵ですが、ほとんど海賊と変わりません。まぁマーモの軍船は平時には私掠船らしいし、仕方ないのかも。
私掠船とは、国家公認の海賊船といった感じですね。略奪行為を行う点は一緒ですが、一定比率を国に収める義務がある点は違います。
ちなみにこの「海魔の角号」の場合は半分を収めるらしい。これが多いのかどうかは分かりませんが、史実では概ね儲かっていたらしい。
船長のアルハイブはほとんどならず者ですが、一応騎士位を持っています。暗黒騎士の長であるアシュラム様は上司ですね。
本来なら余計な事をせずに潜伏しているべきなんですが、堂々とライデンの商船を襲ってたりします。結構儲かるらしい。
アシュラム様はその点にご立腹でしたが、グローダーがとりなして事なきを得ました。お星様になるかと一瞬心配になりましたけどね(苦笑)
ちなみに、この辺からもう少し南の崖は「大直崖」と呼ばれています。ライデン南部からモスにまで続いているとんでもない崖です。
ロードス島創世神話では、『カーディスが今際の際に大地を呪い、マーファがその大地を大陸から分断した』となっていますね。
一説には、この崖こそがアレクラストとロードスの接合面だったのではないかと言われています。スケールのデカイ話ですね。
では大陸のどの辺とくっついてたのかと言うと……よく分かりませんね。トゥーデント半島の辺りでしょうか?
アシュラム様に同行するマーモの人間は5人です。
スメディ 27歳
ファイター?。闇の森の蛮族出身の女戦士。女とは思えないほどの筋肉が特徴、ちょっとジーニに似てるかも。
ギルラム 35歳?
ファイター?。スメディと同じく蛮族の戦士。生年が不明で、共通語もたどたどしい事から、かなり未開の土地の出身かと思われます。
ガーベラ 30歳。
ファイター?、プリースト(ファラリス)?。"闇の大僧正"ショーデルに派遣されたファラリスの神官戦士。
アスタール ?歳
シャーマン?。ダークエルフの長ルゼーブの腹心。上位精霊を操るほどの精霊使いで、あのピロテースの兄でもあります。
グローダー 30歳
セージ8、ソーサラー7、ファイター3。"黒の導師"バグナードの一番弟子、宮廷魔術師の次席のはずです。
バグナードから密命を帯びていますが、次第にアシュラム様に惹かれていくようになります。この面子の中では一番縁が深いのかも。
その密命とは、エイブラの持つ"魂の水晶球"を手に入れる事です。何に使うかまでは教えられていません。
以上のようなメンバーなんですが、スメディとギルラム以外はお目付け役のようなものでもあります。
ベルドが亡き後の現在のマーモは、マーモ評議会によって危ういバランスの上で成り立っています。
メンバーはアシュラム様の他に、バグナード、ルゼーブ、ショーデルです。見事に4つの技能の象徴のような人物ばかりですね。
今回の探索行はカノンのシャイニング・ヒルでの、評議会の会議で許可を取った上で行っています。
"支配の王錫"を手に入れれば、マーモが戦に勝つのはいいとしても、アシュラム様が実権を握るようになりますからね。
他のメンバーとしてはそれをおいそれと許すわけにはいきませんが、なんとか許可は下りたのです。
ルゼーブは寿命の無さ気なダークエルフの上位種?のようなので、一時アシュラムが頂点に立っても問題なしと判断しました。
ショーデルは統一後のロードスでは、ファラリスを国教とする約束を交わすだけでOKが出ました。布教熱心ですね。
バグナードは……ぶっちゃけマーモの勝敗すらどうでもいいんです。ある目的を達成する事に関心があるだけです。
そんなバグナードにとっては、アシュラムを利用して"魂の水晶球"を手に入れるチャンスですから、むしろ積極的にアシュラム様を支持。
結果、それぞれの実力者は、グローダー、アスタール、ガーベラ、を同行させることにしたのですね。
表向きは協力、実際はお目付け役。もし約束に反するようなことをしたら、即それぞれの上司に連絡が行く事でしょう。あるいは実力行使。
アシュラム様もそんなことは承知の上です。マーモでは裏切りを恐れていてはやってられませんからね。
ところがこの探索行の中で、不思議と彼らの間にも仲間意識のようなものが芽生えていくんですよね……。
命がけの冒険を経たからこそかもしれません。サンシャイン風に言うのなら、「悪魔にだって友情はあるんだ」(ちょっと違う―笑)
グローダーは1人外に出て、バグナードと秘密の会話などを行っていました。魔術師らしく古代語魔法で。
会話の内容は何て事のない中間報告のようなものです。予定通りエイブラの所へ行きます、みたいな感じで。
これは6レベルの遺失魔法で"マインドスピーチ"というものです。ワールドガイドで追加された魔法です。
遠くにいる者と会話を行えます。会話といっても口に出すことはありませんが、お互い知っている言語でないといけません。
言語を超越すると言われる超能力のテレパシーとは微妙に違うんでしょうかね。なんかタレントにこういうのありそうですけど。
シルヴァリのタレントに"メッセンジャー"というのがありますけど、これは言語を無視できるようなのでやはり違います。
まぁ無線か携帯のようなものと考えといていいでしょう、そういうマジックアイテムもありますし。切る時はツーツーと鳴るのかな(笑)
★2〜5
一方、パーンとディードはフレイム軍と共に火竜の狩猟場に向けて進軍していました。
砂漠の鷹騎士団から500騎、民軍から1000人が参加しています。魔神とかならこれで十分なんですけどね……。
なお、傭兵隊はライデンの治安維持に行っているので参加してません。相手が竜だと辞退する者も多そうな気がしますし。
シューティングスターは16レベルの古竜で火竜です。魔神王や精霊王といった異界の存在を除けば、マイセンと並ぶ最強生物です。
竜には主に2つの分け方があります、階級と属性です。前者はレベルで、後者は宿る精霊力の種類でハッキリします。
古竜王(エンシェントドラゴンロード)のレベルに関しては公式ではありません。古竜と明確に分けた場合こうなるかな、と。
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属性で分けた場合、それぞれの竜には他の竜にはない特徴が備わります。清松先生のサイトで見れますよ。
火竜の場合は、他の竜よりも凶暴で打撃点も高くなります。ブレスは他の竜が扇形なのにたいし、半円になるそうです。
つまりルールブックのデータが火竜のものなんですね。レベルと属性の違いを考慮して、これを変動させて他の竜のデータを作ればいいんです。
しかもブレスの打撃力は他の竜のものに加えて10です。ルールブックの15レベルの老竜は、他の属性だとブレスの打撃力は20なんですね。
シューティングスターが竜族の中でどの辺に位置するかは表を見れば分かりますが、実は古竜の中では下の方なんですね。
大陸の西部諸国はドラゴンズクレーターには古竜アクシズなるものがいるそうですが、具体的なデータは不明です。
ただ他の竜と違って精霊魔法が使えるというのは興味深い。その名の通り古竜なのかも。下手したら16レベルを超えるような。
シューティングスターが本当に神話の時代から生きているかは知りませんが、その思考は興味深いものがあります。
高い知性を持つ古竜である彼も、生まれて1000年ほどは獣のように生きていたらしい。ロクに自我も持っていなかったんです。
下位種の竜もそうなのかは不明です。成竜は脱皮して老竜になると高い知性を持つようになりますが、同じく1000年なのかは謎。
そもそも脱皮の周期だって謎ですしね。竜に関してはとにかく謎が謎と謎を呼ぶのです。メルキシュに聞けば分かるかな(笑)
作中では空を飛ぶシューティングスターの思考が書かれていますが、やはり火竜なだけに凶暴な性格のようです。
シューティングスターはかつて人を食べていました(今もそうだけど)。しかしそれは生きる為ではありません。
竜をはじめとする幻獣・魔獣の類は食べ物すら必要ないケースがあります。特に竜は世界の根源に関わりますからね、食べる必要なさそう。
では何故食べるかというと、楽しいからです。食べようとした時の反応が面白いので、年に一度の生贄を強要したりもしたそうです。
ロクな性格ではありませんね。温和なブラムドやマイセンとは大違いです。これじゃあ人間と共存するのは不可能でしょう。
しかしそんなシューティングスターも、カストゥールの魔術師に支配されてから雌伏の時を過ごしました。
何度かは街を襲ったりもしたそうですが、その都度魔法によって痛い目にあって、とうとう支配されたのです。
それからは、戦や見世物にさんざん使い倒されたそうです。そのヒューリー絶好調な怒りは敵に向けられたとか。
今もなおシューティングスターは、宝を守るという彼にとってはどうでもいい命令に縛られているのです。
その怒りが、今度はフレイム軍に向けられるわけですね。微妙に哀れな境遇ですが、元の性格が外道なのであまり同情できませんね(苦笑)
フレイム軍は隊列を整え、サー・コートに水を被り、シューティングスターに備えました。
サー・コートに水を被るというのは、エフリートとの戦いでも使ったそうです。そこそこ効果はあるらしい。
多分精霊魔法の"ウォーター・スクリーン"と同じ扱いでしょう。炎のダメージを1点減。
とはいえ、相手は火竜とか炎の精霊王とか、よりにもよって最高クラスの炎の使い手ばかりですよ。焼け石に水ですね。
カシューの作戦としては、まずバリスタなどの飛び道具で皮膜の張った翼を貫いて地面に落とす。
それから騎士達が突撃してケリをつけるつもりのようです。まぁ相手が飛んでる以上は、そうでもしないとこの軍勢を生かせませんからね。
ところが、フレイム軍は咆哮で総崩れ。………まぁなんとなく予想は出来てましたけどね。人間は元より、馬が耐えられる訳がない。
ちなみにシューティングスターの咆哮に対する抵抗の目標値は23です。カシューだってカンタマかかってても15ですよ、出目にして8。
これじゃあ普通の騎士や兵士じゃ6ゾロでも振らないと抵抗できませんね、まともに耐えられるのは36人に1人(笑)
そしてブレスの洗礼を容赦なく浴びせます。抵抗の目標値は同じく23、ダメージは抵抗されても7振って23点、絶望的ですね。
実際抵抗なんて出来っこないし、その場合だと7振って25点。5レベルあっても生死判定に突入しそうですね。
本編では浴びたら最後、一瞬で黒コゲです。もはや生死判定とか抵抗とかのレベルを超えてますね、浴びたら助からないと考えていい。
まぁ咆哮とブレスだけでよかったですよ、これで竜語魔法まで使ってこられたら全滅してた気がするし。
"サモン・ワイバーン"、"サモン・ワーム"、"サモン・レッサードラゴン"………特にレッサーを何匹か出されたら、もうどうにもならない。
シューティングスターが飛ぶだけで、風圧に煽られてますしね。空を飛べるこのシチュエーションを選んだ時点で勝利はなかった。
リジャールだって、空を飛べない連奇岩の内部でクリシュと戦いましたからね。ブレスでヒット・アンド・アウェイをしてきたらまず勝てない。
このシューティングスター相手に、ディードはイルクを召喚しましたが、なんとなく中途半端に退場。
多分イルクは"ウィンド・ストーム"を使ったんでしょうね、かまいたち的な攻撃でシューティングスターを切り刻もうとしました。
しかしあえなく抵抗されます。シューティングスターの翼を切り裂いて、地上に叩き落しただけでも大したものですが。
ちなみにイルクの魔力は13、シューティングスターの精神抵抗は27(20)。抵抗を破れる確立は僅かに4.7%といったところです。
風の王とはいっても魔法は10レベル扱いなんですね。元々風の精霊魔法は攻撃的ではないし、これじゃあ大したダメージを与えられなくて当然。
"ウィンド・ストーム"だとしたら、ダメージロールで6ゾロっても17点。1点しか抜けません。
どうせ1種類(風)の精霊魔法しか使えないのだし、精霊王としての威厳を保つ為にも10レベルを超えると考えてもいいと思いますけどね。
なお、ジンの打撃点は体当たりで29点。シューティングスター相手でも7点抜けますから、10回ちょいで倒れますね(長い)。
絶望かと思われたこの戦いですが、カシューとパーンがそれぞれ一撃ずつ加えてシューティングスターも退散しました。
カシューは左目を刺しました、痛そう。"ソリッドスラッシュ"は装甲を無視するので、16点減点ですね。
カシューの場合は7振って21点ほどなので、5点ほど抜けます。なんとなくこれはクリティカルっぽいので、もっといってそうですけどね。
パーンは足首を刺しましたが、パーンだとダメージ通りそうにないんですよね。8レベルあるけど、防御点22だし。
パーンの剣はミスリル製のブロードソードなので、必要筋力ピッタリだとしても打撃力18。魔剣を考慮しても7振って17点。
仮に高品質+5だったとしても、打撃力が5増えて23ですね。1点ほど増えますかね。あまり変わらない(苦笑)
クリティカルすれば20点以上いきそうなんで、そうだったと考えればいいんでしょう。やっぱりクリティカルっぽい刺さり方だったし。
微妙に傷ついたシューティングスターは、捨て台詞などを残して、巣である火竜山の火口に飛び去っていきました。
「オレはおまえたちの街を襲う、傷ついた鱗の一枚に対して、百人の人間を殺す」そんな感じだったそうです。
終わってみれば、フレイム軍はおよそ1/3が死亡していたそうです。つまり500名ほどが。
カシューは軍をブレードに帰して、自ら火竜山に登る決意を固めました。もちろんパーンとディードも一緒に。
カシューとしてはシューティングスターに復讐するまで国に帰らない覚悟です。
その為に一度ライデンに寄って、傭兵の中から一緒に登る人間を選ぶそうですが、やはりスレイン達になるんですよね。
王様が軍を離れて竜退治、結構危ない橋を渡りますね。他の国だったら流石に止められそうですが、フレイムはOKらしい(苦笑)
カシューの復讐、アシュラムの野望、パーンの決意。それぞれの思惑が交錯する王錫争奪戦は、様々な不安を残しつつ、下巻に続きます。