「新ロードス島戦記1 闇の森の魔獣」作:水野良 出版社:角川書店
★はじめに
ロードスという名の島がある。
呪われた島と呼ぶ者は、もはや誰もいない。
ただひとつの場所、暗黒の島マーモを除いては。
かつては"呪われた島"と呼ばれたロードス島も、「戦記」「伝説」のエピソードを経てマーモを除いてその名を返上しました。
「魔神戦争」「英雄戦争」「邪神戦争」を経てロードスの諸王国は盟約を結び、紛争解決の手段に武力ではなく会議を用いるようになりました。
帰らずの森や風と炎の砂漠といった魔境の呪縛も解かれ、魔竜シューティングスターや魔神の軍勢といった凶悪な魔物も滅んだ。
そしてロードスの混乱を影で操ってきた"灰色の魔女"カーラも滅び、ロードスの民は灰色の道しるべを外れて平和な世を築き上げつつある。
ところがそれで全てが終わった訳ではないのです。まだロードスの南東に浮かぶ"暗黒の島"マーモが存在しているのですから。
先の大戦を経てマーモはフレイム領となり、現在はフレイムの公爵であるマーモ公王スパークが、この島をマーモ公国として治めています。
しかしそれでもマーモの闇はなお深い。数々の魔物をはじめ、ダークエルフ、暗黒神の教団、蛮族、マーモ帝国の残党が残っている。
そしてマーモという島自体が"破壊の女神"カーディスの聖地である為、ロードス本島とは趣の異なる様々な闇がこの島には潜んでいる。
今後マーモ公国はそういった闇と向き合い、このマーモを治めていく事になります。そしてそれは新たな戦乱の始まりでもありました。
既に新生マーモ帝国が誕生し、マーモ公国へ様々な謀略を仕掛けるべく息を潜めている。当分は公国対帝国という構造の戦いが続きます。
そしてその裏には"破壊の女神"カーディスの教団が存在し、帝国を隠れ蓑にロードスはおろか世界を滅ぼすべく恐るべき計画を企んでいる。
今までこの世界には様々な名称を持つ王が存在しました。賢王、傭兵王、英雄王、聖王、魔法王と、それぞれ威厳のある名称です。
しかしスパークにはこの名を送りましょう、「不幸王」です。勿論名付け親はリーフです。そして実際これほど不運な王様は他にいない。
何しろ彼はこれからロードスで最も統治が難しいと思えるマーモを治めていくのだから。それでも彼以外それができる人間もいない。
それでは「戦記」「伝説」に続くロードスの物語の第三部、「新ロードス島戦記」の開幕です!
★1
戴冠式の後にスパークのマーモ公王即位を祝い、ロードス本島の各国からの使者を招いた宴が開かれました。
しかし彼らは本気でめでたい席だとは思っていません。「いつまで国を維持できるか?」、それが正直な心境でしょう。
ロードスは連合しましたが、マーモ次第ではまた争いが起こる。「力を貸しても大丈夫か?」、そんな不安を抱いている人もいる。
その為使者もそれほどの大物はいないし、フレイム本国からもスレイン・レイリア夫妻が来ているのみ。カシューの姿もない。
祝いの品は沢山用意してくれてますがね。王衣に王冠、そして王錫。魔法の武具一式や軍馬を数頭。そしてカシュー自身は彼に期待してる。
カシューだってロードスの平和を願っている。その要がこのマーモであり、どうでもいい人間にそんな重要な役目を任せる訳がありません。
しかし公国で働くよう命令を受けた騎士達も不安は隠せない。何しろマーモはフレイムからの飛び地、考えようによっては左遷です。
特に炎の部族は不満です。スパークは彼らの族長であり、その族長をこんな僻地へ追いやられた事が少なからずショックでした。
一応スパーク本人はマーモに居残る事を志願したし、とある経験から公王就任を喜んでいるから、それを露にする事はありませんがね。
あと「邪神戦争」で武功を立てて騎士になった兵士や傭兵の多くもここに封ぜられました。何しろその戦でフレイムが得た領地がマーモだから。
そんな時に緊急の報告が入ります、帝国の残党の反乱が起きたのです。まだまだ不穏分子が多くいるという事です。しかしスパークは……
スパーク「記念すべき最初の反乱だ」
全然隠そうともしないのはむしろ立派です、でも宣言してどうする(笑)
しかし今のマーモは反乱が起こって当然という状況です。それなら下手に隠すよりも、堂々と公言した方がいいんでしょうね。
ハプニング上等、予想外ウェルカムです。そんな事で怯えるようではマーモの王は務まらない。要は問題を解決すればいいのです。
その為にも各国からの支援が必要だし、仲間内での結束は更に必要。人も物も金も足りないのなら、せめて結束だけはあってもいいでしょう。
そんな不幸王スパークをサポートする仲間たちも健在です。詳しい事は序章を参照してもらうとして、この場には仲間達もいます。
今やギャラックは近衛騎士隊長として公国の武官の要だし、アルド・ノーバは宮廷魔術師として文官の要として活躍しています。
ライナはギャラックの夫人として貞淑を装いつつ、裏では密偵の頭のように公国の諜報部門を司る。この不穏な島では情報は本当に大切です。
グリーバスとニースの神官コンビも各神殿とのコネとして公国を支え、リーフは"公王の友人"としてスパークと最も親しい宮廷道化師です(笑)
特にギャラックとライナがくっついたのは嬉しかった。「戦記」の時もちょっとだけ期待していたカップリングでしたけどね。
ギャラックは上級騎士になりましたが、気取らないアニキな所は変わりません。そしてライナも相変わらず裏の事情に通じるお姉さんキャラ。
それに国を運営する上では奇麗事だけじゃ済まない。この豪傑夫婦は、時にそういった汚れ役も務める覚悟です。スパークができない事だから。
一応五大神の神殿は全てあるようですが、あと盗賊ギルドも作るべきでしょうね。正統派のギルドは犯罪の抑制も兼ねます。
このマーモは当然治安が悪く、悪党も多い。だからこそギルドという機関がそれを取り締まる必要がある。言わば必要悪なのです。
それに密偵を育成し、ライナの部下として諜報活動も行える。大陸の国家の大半はそういうメリットを見越してギルドを黙認している。
後々にはフォースも来てくれますよ。ロードスにおける盗賊ギルドは彼が率いるライデン盗賊ギルドが質も規模も最大だと思われます。
火竜山の戦いで一度酷い打撃を受けたけれど、あれから10年以上経ちます。今なら若くて優秀な部下も沢山在籍している事でしょう。
あとウッドの所属していたアラン盗賊ギルドも相当でしょうか。皮肉な事に盗賊ギルドは街が豊かであるほどに充実する傾向にあるのです。
豪傑夫婦は言いました「莫大な配当が手に入るはずだ」とね。確かに賭けのような物ですが、スパークへの情だってありますよ。
フレイムで普通に騎士として過ごした方が遥かに楽なんですから。敢えて苦しみの海に晒されるであろうこの島に残ったんです。
それもスパークに期待するからこそです。そんな彼らには、これから暗黒の島の様々な試練が降り注いでいく事になります………。
★2
公国が宴を開く一方、新生マーモ帝国もまた戴冠式を開いていました。この時マーモ帝国もまた、王を頂き再建したのです。
若き二代目皇帝の名はレイエス。あのベルドの遺児であり、数多くいた兄弟達の中でも利発さと胆力で抜きん出た存在です。
ベルド譲りの赤毛の少年で、年齢は15歳。ただし父親と違って小柄で華奢。それでも不思議と威厳のある少年ではありました。
彼に冠をかぶせたのは、女暗黒騎士ネータ。プラチナの髪を持つ美人で、カノン占領時においては優れた手腕で領地を治めた女傑です。
帝国が敗れつつある時に帝国の財宝を廃坑に隠し、ベルドの多くの遺児を匿った。彼女なしに帝国再建は成らなかったでしょう。
しかしベルドにはそんなに多くの子供がいたんですね。そういえば「魔神戦争」の時も英雄色を好むを素で実践してましたし。
そしてもう1人の重要な人物は魔術師のヴェイル。短編の方でバグナードに強力なアイテムの支援を受けた人物です。
普段はウィンディスの街で酒場を経営し、帝国への後援者をしているだけです。しかし彼こそが帝国の宮廷魔術師兼参謀なのです。
残念ながら帝国の戦力は公国に劣るし、仮に実力で公国を排除したとしても、ロードス本島の連合軍に討伐されてお終いです。
そこでヴェイルは公国に統治を諦めさせるのを目的とし、様々な謀略をしかけていく。バグナードから貸与されたアイテムも使って。
あと彼は密偵のボイドという腕利きを抱えています。ヴェイルは時に彼の優れた諜報能力によって公国を苦しめたりもするのです。
実は既に彼は1つの謀略を実行しています。それはフレイムの内部事情をついたもので、風と炎の部族の仲違いです。
冒頭ではヴェイルは酒場のマスターとして、お得意様である風の部族歴戦の勇者アファッドを丸め込む姿が描かれました。
アファッドはシャダムの右腕とも言われる風の部族最高の戦士の1人であり、スパークも彼を騎士団長にと考えている程の豪傑です。
しかしそんな彼ですら、風と炎の部族の確執からは逃れられない。炎の部族が不満を抱くように、風の部族は不安を抱いているのです。
前述通りに炎の部族は不満を抱きながらもスパークを追ってマーモにいる。するとマーモの騎士階級は炎の部族が多数派となるのです。
本国では風の部族を優先させた政策を進めているのに、これではマーモにおいては風と炎の力関係が逆転してしまったと思ってしまう。
いずれ炎の部族は反乱を起こすのではないか?といった具合に、ヴェイルは親切を装って彼の炎の部族に対する不信感を煽ったのです。
ヴェイル「一人一人の心は操れずとも、人が集まればかえって御しやすくなるもの。
噂を操り、火を熾さずして煙を立てる。煙を見れば、人は平静ではいられなくなります」
ウォートも似たようなことを言ってましたね、大勢集まれば平均化して容易に読めるとか何とか………。
ここでヴェイルは気になるセリフを吐いています。
ヴェイル「幻とされるスカード産の麦酒(エール)などはいかがですか?秘密の製法を知るものがヴァリスに………」
それってやっぱりナシェルでしょうか。私はあれからナシェルはタトゥスの技術を学んで、薬草学を修めたと思っています。
仮に彼本人(ちなみに今年69歳の筈)でなくても、彼の血縁者や門弟である可能性はある。例えそうでも表舞台へ出る事はないでしょうが。
しかしそうして帝国が謀略を企てている一方で、それすらも利用している存在がいた。それこそがカーディス教団です。
実はレイエスこそはカーディスの高司祭フィオニスの生まれ変わりです。今は立場を利用して従順な少年王を装ってますがね。
そしてフィオニスはかつてナニールの伴侶でした。つまり彼はニースの魂の伴侶。しかも既にフィオニスとしての記憶が蘇っている。
その威厳は酔って絡んできたオッサンを眼力で威圧する程です。
酔っ払い「皇帝陛下にも、そのうち妃を探さねばなりませんな」←絡み酒
フィオニス「心配は無用だ……」
酔っ払い「恥ずかしがることはありませんぞ。皇帝たる者、子を成すことも大切な仕事のひとつ」
フィオニス「聞こえなかったのか?心配は無用だと、余は言ったのだぞ」←ギロリ
酔っ払い「も、申し訳ありません」←酔いが醒めた
フィオニス「我が妃となる者は、もはや決まっているのだから……」
そして彼は今生においてもナニールを、そしてニースを嫁扱いしています。
カーディスの神格は破壊です。そしてその真の信仰の在り方とは「終末信仰」にあり、これは後々明らかになっていきます。
またカーディスを「終末信仰」として崇める場合、普通のカーディス信者では使えない2つの特殊暗黒魔法が使用できます。
1つは"リターンホーム"、マーファのものと同じです。もう1つは"エターナル・リーンカーネーション"、永続的な"リーンカーネーション"です。
いずれも6レベルであり、特に後者を施して永遠に転生する者を転生者といいます。フィオニスもナニールも転生者という事になる。
★3
こちらはマーモ公国サイドのスレイン一家の団欒です。微笑ましくアットホ−ムです。
スレインは今年44歳になるっていうのにあまり変わってません。まぁ元々老け顔だったし、今更そんなに変わらないでしょう(笑)
レイリアさんは今年40歳なのに、相変わらず若々しく美しい。そして彼女の額には今も"カーラのサークレット"がありました。
しかし彼女は抵抗しただけで、サークレットの魔力は消えていない筈。もし外したとしたら、また誰かがつければカーラ復活ですか?
スレイン「この一夜のためだけでも、明日から一年ぐらいは休まずに働くだけの価値がある」
彼はライデンの豪商の家に生まれますが、父親は仕事で忙しく、母親は社交界に入り浸っていて、家族の団欒とは無縁でした。
だからどこまでも愛妻家で娘も大事なのでしょう。「灰色の魔女のメンバー」の中では一番家庭的に成功したのかもしれない。
ちなみに現在両親は他界し、長兄が家業を継いで、次兄は大陸で新たな商会を興し、それぞれ多忙を極めているといいます。
しかしロードス一の大国の宮廷魔術師である今の彼も、多忙さでは負けない。フレイムはスレインなしでは国政が滞る程だそうです。
彼はそれをカシューへの負債を返そうとしているからだと言いますが、カシュー自身はそんな風には思ってないと思いますよ。
何しろスレインがいなければ今のフレイムはないでしょうし。平穏を望んでるように見えて、彼も波乱を求める人種だったという事かな。
ニース「アラニアの大使はスパーク様のことを、あからさまに軽く見ていましたし、
カノンの大使は亡国の王子でも見るような哀れみと同情に満ちた視線を向けていました。
それに、マーモの騎士たちときたら、まるで主人に捨てられた子犬みたい。スパーク様が楽しまれるわけがありません」
レイリア「ニース!」
ニース「……ごめんなさい、母様」
スレイン「落ち込むことはありませんよ。皮肉も人間の英知のひとつですしね。成長したあなたに会って、戸惑っているのですよ」
どうやら久しぶりの再会でニースもちょっとはしゃぎ過ぎてたらしい。でも毒舌のニースも可愛い、罵られたい(ヲイ!)
どうやらこの1年でニースは相当素に戻ってる。聖女だ聖女だと言われ、辛い運命と戦っていたせいでしょうか。以前の方が不自然です。
レイリア「わたしたちの小さなニース。あなたがどんな言葉を言うようになっても、どんなに背が伸びても、
父様にとっても、わたしにとっても、それはささやかな変化でしかないの。
あなたがわたしたちの娘であることは、それだけは変わりようがないのだから」
しかし今のニースにはナニールの記憶が戻りつつあるのか、世界を滅ぼすべく戦う夢を見ている。それは過去の追体験でしょう。
毎回毎回肉体は違うけど、魂は同じ。そしてその魂は今のニースのものと同じで、彼女には邪神戦争以上の試練が待ち受けている……。
★4〜5
即位式から5日が経過し、各国からの使者が帰ると共にスパークは反乱軍鎮圧の為に軍勢を集めました。
ところが風の部族のウッディンとアファッドがバッくれてる。言わずもがな2人はヴェイルの謀略にかかっているのです。
炎の部族への不信感から、スパークからの命令を受け入れる気になれない。しかしそれでは彼らこそが反乱者になってしまいます。
ここで注意したいのは、公国とはいえマーモだってフレイム領だから、スパークの命令に反するというのはカシューや本国に反するも同然。
彼らは多くの戦場に立ち、多くの武功を立て、今やフレイムの貴族です。しかしその特権も国への忠誠を損なえば剥奪されてしまいます。
本国のシャダムに手紙を出しても、返答は「風の部族の誇りを忘れるな」の一言のみ。最早彼らは自分達で決断を下さねばならない。
そんな二人を迎えにスパークは独りで乗り込みました。一見無謀に思えますが、実は理に適っていました。
仮に1人でも護衛を連れていたら、疑心暗鬼に駆られた彼らは本気で応戦し、公国は戦うまでもなく自滅という最悪の結果に終わる。
しかしスパークがどんなに説得しても、ウッディンは「信用ならない」「仇の為に戦いたくない」と猛烈な勢いで反乱するだけです。
スパークは両部族の戦いに実感があまりない。何しろ彼が成長した時には既に両部族は和解していたから。しかし彼らにはそうではない。
実は現在のフレイムで風の部族の勢力は大きいけど、人口は少数派。マーニーやローランやライデンといった都市の市民がマジョリティー。
そして多くの移民や開拓者もいるので、それらを考慮したら母体である風の部族はマイノリティー。将来的に消えていくでしょう。
しかしもし炎の部族と融和し、砂漠の民に戻ったら別です。実際カシューは両部族の血筋を1つに束ねようとしているようですし。
多民族国家なのだから、民族性を尊重するのは当然です。しかし当の諸民族はそれ以上に国家への忠誠を誓わねば国は瓦解するのみ。
ウッディン「反乱を企んでいるのは、炎の部族のほうでしょう!」
スパーク「反乱など企んではおりません!口に出す者は以後、厳罰に処してもいい」
信じられないという人間程厄介なものはない。どんなに言葉を尽くしても、その言葉すらも信じてくれないのだから……。
しかしアファッドがついに答えを出し、その押し問答を終わらせました。
アファッド「わたしには、もはや何もない」
彼は騎士として答えを出そうとしていたから答えが出なかった。彼は何処までいっても砂漠の戦士だったのです。
彼は単純に砂漠で生きたいだけ。そしてカシューやシャダムと一緒に酒を酌み交わし、充足感を味わいたかっただけ。
ところが16の時に戦場に立ち、あれよあれよという間に責任ある大国の騎士です。でも彼のアイデンティティーはそこにはない。
富や名誉にも関心がないし、野心もない。炎の部族を憎む気持ちも実はないので、スパークと戦うつもりも湧かなかったのです。
そしてフレイムへの忠誠もない。彼はカシューやシャダムを尊敬してるけど、国という得体の知れないもの自体には関心がないのです。
結局彼は部族単位でしかものを考えられないのかもしれません。アファッドにとっての公の精神とは、部族が最大の枠なんでしょう。
アファッド「この暗黒の島で生きてゆくには、何か強い思いが必要のようだ」
なるほど、信念・夢・野望・欲・情なんでもいいでしょう。そしてマーモを統治しようという、スパークの熱意です。
アファッド「ウッディン、おまえにはまだ激しさがある。それがあるうちは、まだこの島で生きてゆける。
風の部族の誇りを守ってくれ。炎の部族の野心を抑え、この暗黒の島をフレイム領として安定させてほしい」
そう言い残して彼は故郷へと帰りました。そして特権を失いながらも、それ以上に価値のある生き方を取り戻したのです。
ウッディンはマーモに残り、後にマーモ公国の騎士団長となる。最早彼に迷いはなく、スパークと公国への強い忠誠を抱きました。
アファッドのフレイムに対する最後の奉公は選択肢の提供でした。
『本国に帰りたければ騎士を辞めてしまえ!そうでなければ残って戦え!』
そして何十人かは本当に辞職。でもこれぐらいで辞めるならいない方がいい。
スパークが城に帰ってみると、民兵が1000人ほど揃っていました。それだけ公国の存続を願う人がいるという事です。
更にはドワーフの戦士団や、マイリーの神官戦士団も加勢に来てくれました。そして短編で登場した裏通りの若者達の姿も。
どうやらライナが彼らを密偵として仕込むらしい。彼らにも強い思いがありましたね。そしてそれを公国へ費やしてくれるのです。
ライナ「ギャラックより若いし、退屈しないで済みそうだわ」
何をする気ですか姐さん!(笑)
スパーク「とにかく、これで格好がついた」
群集「公王陛下万歳!」
ヴェイルの謀略はかえって公国を勢いづかせる結果に終わりました。雨降って地固まる、居残り組は覚悟を決めた者のみです。
以後ヴェイルはこのように謀略を繰り出してはスパークと仲間達に破られていく。まるでルキアルのような悲運な策謀家になる(笑)
そしてこの軍勢の行進を店の2階から見下ろしながら、ヴェイルは悪役らしくカッコ良く決めていました。
ヴェイル「今日のところは、祝福を贈ってやろう。だが、最後に勝つのは、このオレだ」←悪役の負け惜しみ(笑)
最初は「祝福なき」建国であるように見えましたが、そんな事はない。公国はスパークに期待する民衆や兵士から十分祝福を受けてます。
以前のような暗黒の島に戻る事は、やはり民だって勘弁願いたい所でしょう。スパークはそんな彼らを導かねばならないんですね。
★1〜2
前回の事件で公国は一応の軍事力を確保しました。特に仕官の道を目指す人間にとって、このマーモは最後の機会となるでしょう。
しかし国家としてもう1つ確保せねばならないものがある。それこそは経済力、この貧しいマーモの土地でどう国民を養うか?
取り合えず自国内で全てを賄うのは不可能なので、スパークは貿易を計画しています。その為にはそれに見合う特産品が必要になる。
幸か不幸かこのマーモは独特の植生や生態系を持っている。この闇の特性を利用して財源を確保するのが、今回のお話になります。
その日のスパークは謁見で数多くの庶民から様々な陳情を聞かされていました。しかし彼にはそれは退屈極まりない公務でした。
何しろ彼らの陳情には具体案がない。国を豊かにしろだの、治安を良くしろだの、そんな事は当然であってただの愚痴でしかない。
しかし市井の声はなかなか王宮には届かないもの。こういう機会は貴重だし、ナシェルもなるべく庶民と接するようにしてましたね。
それならいっそ徳川吉宗みたいに目安箱を設置するとか。いずれにしろ最初は噂レベルでも、対応が遅れる事で手遅れになる事もある。
しかも無意味に形式や儀礼がしっかりしていて、普段から落ち着かないスパークが飽き飽きするのも当然です。
アルド「謁見を求めてきた者が、もう一人おりまして……」
スパーク「明日にしろ!」←キレ気味
アルド「よろしいのですか?」
スパーク「いい!」
アルド「ニース様なのですが……」
スパーク「ニース……侍祭が?」
ちなみに庶民が謁見を求める場合は朝一で予約が必要ですが、聖職者と騎士階級は常時申し込み可能です。
このスパークの「しまった……」的な顔に、ギャラックもニヤニヤ。
スパーク「何がおかしい?」
ギャラック「言ってもいいんですかい?」
スパーク「……いや、言うな」
結果的にアルドとギャラックにからかわれたような形になりました。こいつは本当に王様なんだろうか?(苦笑)
この時の彼の心理描写はこんな感じでしょうね。
スパーク「ニースが来ている?それを早く言……いやいや俺が止めたんじゃないか。
スパーク「ていうか聖職者を追い返しちゃいかんよな、だから規則は破っちゃいない!(断定)」
こんな感じの約0.5秒の思考でしょう。そんな微妙にヘタレなスパークが大好きです。ちなみにアルドは形式を守っただけです。
こういった形式や儀礼は疎かにし過ぎると威厳が損なわれるし、厳しくし過ぎると効率が悪くなる。徐々に変えていくしかないでしょう。
★2
その後スパークはニースの持ってきた香草茶と陶器で、バルコニーでティータイム。彼にとってはいい気分転換になりました。
公王になって暫く経つけど、成果が上がらない。そんなジレンマが謁見に対する不満にも繋がっていたのでしょう。
ただしその場に居合わせたギャラックとアルドは緊張気味です。方や崇拝対象、方や命の恩人で、すっかりカチンコチンです。
しかしこの時ニースの持ってきたものこそが、貿易に使える特産品のヒントだったのです。
まず香草も薬草の一種であり、このマーモには土地柄か驚くべき種類の毒草がある。しかし毒と薬は紙一重、加工すれば薬草になる。
この世界の植物には現実に見られないものも沢山あるし、魔法的効果を発揮するものもある。上手く加工できれば特産品になります。
なにしろ神聖魔法による癒しには莫大な寄進が要りますからね。大抵の一般人は薬と薬草師(一般技能:ヒーラー)に頼るのです。
例えば「伝説」に登場したタトゥスのような人ですね。残念ながら専門家がいないので、本島から薬草師をスカウトする必要があるけど。
一応賢者でもあるアルドや、大地母神の教団に所属するニースもある程度の知識はある。だけど彼らには他にも仕事がありますから。
そしてもう1つはこの青い陶器。ドワーフの職人によるもので、意外に詳しいギャラックの鑑定でも家1件建つ程の高級品だという。
スパーク「オレなら絶対買わないな。飲み物の味が変わるわけでもあるまいに」←分かる分かる
具体的にいくらかは分かりませんが、Q&Aによれば小さい家(典型的な日本家屋)では10万ガメルぐらいだそうです。
土地はタダ同然だそうですから、これは家を建てるだけのお金です。好事家とかなら、本物とあれば本当に大金を出しますからね。
陶器そのものは北のドワーフ族(鉄の王国ね)からの贈り物ですが、その原料となるのは腐銀と呼ばれる鉱物です。
嘘か誠か大地の妖魔コボルドには銀を腐らせる能力があるという。故に腐銀もコボルドのせいとされ、コボルドの銀とも呼ばれる。
コボルドはゴブリンと同じく大地の妖精界の出身なので信憑性はある。もっとも、そのせいでドワーフ達は彼らを目の敵にしていますが。
本来腐銀はとても希少性の高い金属です。しかしこのマーモには古来多くのコボルドが住んでいる。腐銀の鉱脈があっても不思議じゃない。
そこでスパークは仲間達と共に腐銀探しに出る事にします。判別はドワーフであるグリーバスがいるので大丈夫。
流石に加工には鉄の王国の職人を呼ぶ必要がありますが、貴重な金属があると言えば喜んでやってくると思われます。
腐銀の陶器とマーモ印の薬草……これは案外有力な財源になるかもしれない。
★3
いつもの面子で公都を発ったスパーク達は、腐銀探しの途中で闇の森、もとい燃え尽きた森に立ち寄りました。
「邪神戦争」の際にルゼーブに半分ほど燃やされたこの森ですが、東半分は健在であり、ダークエルフ・蛮族・魔獣も健在です。
火災の際には住処を追われた魔獣達と煙が多大な被害を生み、戦後に連合騎士団が妖魔・魔獣狩りを試みても中途半端に終わったという。
現在この森の燃え尽きた部分にはカノンのエルフが入植し、新たな植物を植えて森の再生を試みてくれています。
ところがそうして生えてくる植物も闇の森の植物です。つまり闇の森こそがこの土地の自然な植生だということです。
スパークは光と秩序で島を治めたいと思っています。それはブルネイもそうでしたし、だからこそ彼は闇と混沌を滅ぼそうと躍起になった。
しかし闇と混沌こそがマーモの自然なのだとしたら、それは無駄な抵抗でしかない。ブルネイが失敗したのもその影響かもしれない。
光と闇、秩序と混沌は対立する概念。同時に存在する事はできませんが、共存することはできます。むしろ共存している方が自然なのです。
この時スパークはショックを感じ、ギャラックはそれを指摘した人に激昂した。でも後々彼らはそれが真実だと悟るようになる……。
フォーセリアは決して善と悪の対決する世界ではない。光と闇、秩序と混沌、創造と破壊……そういった対立する概念が共存する世界。
バグナードの時も確認した事ですが、絶対善も絶対悪も存在しない。立場や理想を異にしている人々の対決こそが、水野先生の作風です。
そういう意味でマーモは格好の舞台なのです。光や秩序や創造ではなく、闇や混沌や破壊を前面に出し、両者の関係を公にできるから。
さて、この村で一行はリーフの母親ジェイシーと会います。実は闇の森の植生を指摘したのも、人間として客観的に考察できる彼女です。
彼女はマーモ出身の傭兵であり、スパークの前でこそお上品に振舞いますが、リーフの前では物凄いぞんざいに振舞う。外面が良すぎる(苦笑)
リーフの両親については「開かれた森」で語られましたね。復讐を果たした彼女は燃える森から連合騎士団を避難させた功労者でもある。
その日一行は集落で一泊。リーフは久々の母子水入らずを楽しむよう、スパークに残されました。
ジェイシー「いい男じゃない。あんたが公都に行ったきりなのも分かるわ」←スパークを見送って
リーフ「ギャラックのこと?それとも、アルド・ノーバ?」
ジェイシー「かわいくないね。そんな性格じゃあ、男に好かれないよ」
リーフ「好かれたくなんかないわよ」
こんな母子関係です。さっきまでスパークに「リーフは父親似なのか?」とか思わせてたのに。ていうかどういうエルフだ、ケインか(苦笑)
しかしリーフの存在は本当に貴重です。スパークは真面目な性格だから、リーフのような道化が和ませてやらないとすぐオーバーヒートする。
スパークは今ニースに心を寄せているけど、リーフだって最も親しい異性の友人です。そして男女の友情は恋愛の一歩手前か後らしい。
この辺はリウイを見ても分かるけど、リウイとミレルの関係が、少しずつスパークとリーフにも被ってきます。今はまだ自覚はないけど。
ジェイシー「子供が自分で生きられるようになったら、母親なんて仕事は廃業なんだから。今夜は一緒に寝てやるよ」
リーフ「昔の仕事に戻るわけ?」
ジェイシー「儲からないんだけどねぇ、この仕事は……」
確かに儲からない、だけど嫌な気もしていない。どうやらリーフの勝気なくせに時折情を見せる性格は母親譲りらしい。
★4
旅を再会した一行は目的の鉱山に到着し、このパーティーでは初めて?だと思われるダンジョン探索開始です。
ただしライナが何者かの足跡を発見しているので慎重にね。基本盗賊は屋外の足跡を判別できないけど、気にしない(笑)
先頭に立つグリーバスはスパークの盾(多分ラージ級)とハンドアックスを装備し、《暗視》を使いつつ万全の体制で進みます。
いつものバトルアックスは多分坑道内じゃ振り回し難いでしょう。仮に振り回せても味方が横に並べそうにない、危ないから。
そういえば"鉄の王"フレーベは石の王国掃討戦では普段のハルバードを使わず、最初ハンドアックスでした。多分あれより狭いんでしょう。
実はこの鉱山にはダークエルフの兄弟が隠れている。一行が近づいた事で兄の方が警戒し、風の精霊シルフを召喚します。
しかし坑道とは大地の精霊力の強い場所であり、風の精霊であるシルフは狂える精霊と化して一行に襲い掛かったのです。
ところが《通常武器無効》と知らないギャラックが1人突貫して盛大に空振りし、アルドはスパークの魔剣にエンチャントを無駄撃ち。
「邪神戦争」の時のチームワ−クはどうした。ていうかギャラックも近衛騎士隊長なんだし、魔剣ぐらい持ってても良さそうですけどね。
ちなみにオーファンの近衛騎士ローンダミスも魔剣を持ちますが、何故か筋力に合わない。推定奥さんに買って貰えない、まさかライナも……。
シルフを倒した一行は更に進みます。
リーフ「こいつの後に続いて」←ウィスプ召喚
スパーク「よし、分かった」←めっちゃナチュラル
ギャラック「ちょっと待ってください。先頭には、わたしが立ちますぜ」
スパーク「どうしてだ?カシュー王は先頭に立たれることも多いと聞くぞ」
ギャラック「あの人ぐらい強かったら、文句は言いませんや」
実際にはカシューだって普段は後方に控えていて、どうしてもいう時のみ先頭に立って味方の士気を高揚させる。
スパークはもうちょっと守られる事に慣れるべきです。王様なんだから、大抵の事は部下に任せるのがセオリーなのです。
そして坑道の奥で弟を庇うように臨戦態勢を整えるダークエルフ兄と遭遇します。これには一同迷いました。
彼は一応力のある妖魔で基本的に敵である。しかし子供でもある。逃がすべきか殺すべきか、善良なゴブリン問題にも通じる。
公王としての立場に立てば、見逃す事は法を曲げる事になってしまう。しかし殺したとしたらそれは人として大切なものを失う事になる。
そこでスパークにいつになく真剣に訴えたのはリーフでした。
リーフ「カノンでダークエルフたちが行ったエルフ狩りは、子供だって容赦されなかったの」←それで父親を殺されてる
ライナ「そうよ。だから、迷うことなんてないわ」
リーフ「違うわ。あたしが言いたいのは、マーモ公国がダークエルフと同じことをしていいのかってこと」
確かにリーフは父を殺されたけど、後にマーモを打倒した。そしてそれこそが評価できる事。だって戦を終わらせたのだから。
この際ジェイシーはダークエルフを殺してますけど、それ自体は無意味。気持ちを晴らせただけで、父親が生き返った訳じゃないから。
悩んだ末にスパークは逃がしました。彼は「ダークエルフだから殺す」のではなく「罪を犯したら裁く」のを選んだんです。
勿論彼らが罪を犯せば容赦はしない。しかし今はその証拠もなく、現状だけ見れば暴漢はこっち。今はこれでいいと判断しました。
これはつまりスパークがある意味闇を認めようとしている事でもある。そもそも腐銀だってコボルドという妖魔の恩恵?なのだから。
旧マーモ帝国も妖魔を飼い慣らしていた。そしてアシュラム様のカノン統治は厳しいが公平でした。罪を犯せばマーモの人間にも容赦はしない。
見習うべき所は見習う。それが即マーモ帝国に繋がる訳でもない。この暗黒の島では闇が自然、だから闇と向き合うのは避けられないのです。
スパーク「闇を恐れない。だが飲み込まれない。そのぐらいの気持ちがなければ、マーモは統治できないんじゃないだろうか」
これが以後の彼らのスローガンのようになる。そういう考え方ができるようになっただけでも、この冒険には価値がある。
そもそもギャラックとライナが建国記念の宴で決意した汚れ仕事も国家の闇です。そしてそれはどうしても必要になる時がある。
そしてダークエルフ兄弟のいた場所に腐銀の鉱脈を発見し、有望な財源を確保できそうです。そういう意味でもこの冒険は成功でした。
いっそブラキ神官を呼ぶのも手だと思う。鍛冶の神ブラキの特殊神聖魔法には"センス・メタル"という鉱物を感知する魔法があるし。
これを使えば特殊な色彩で視覚的に鉱物を感知し、色で種類が、強さで質が、範囲で量が分かる。以後の腐銀鉱脈拡張には非常に役に立つ筈。
★1
一応の軍事力と経済力の目処を立てた公国でしたが、国を治めるにはもう1つ大切なものがある。それこそが国家の威信です。
今回のヴェイルはとある方法で魔獣を駆り出して人里を襲わせるという、ある意味嫌がらせとも言える攻撃を始めます。
もしこれを収束できないようであれば国民の信頼はがた落ちです。例え富や武力があろうとも、威信を失えば国は成り立たない。
最初の(多分)被害者は農家の夫婦でした。彼らはウィンディスの街を目指し、馬車を進めていたところでした。
現在の公国はある程度税率も下げているので、帝国の時代と違って生活に必要な分と、税として納める分を差し引いても余剰がある。
そこでその余剰の作物を街で売ろうとしていました。そうして貨幣を手に入れれば、別のものを購入できて生活が潤うという幸せな状況。
こういった社会では農民の扱い次第で国が傾きかねません。国を守るのは軍隊でも、国の食糧事情を支えるのは農民です。
例えば江戸幕府は百姓を村の中へ閉じ込めて自然を糧とする生活をさせ、その一方侍や大名は街に住んでガンガン金を使っていました。
これは大きな矛盾であり、社会的二極化です。農民には自然経済をさせながら、統治者は貨幣経済を満喫してるんですもの。
貨幣経済を機能させる為には商品の流通が不可欠。しかしそれと相反する自然経済を強いたのだから、農民が不満に思うのも至極当然。
一方フォーセリアでは今のところそういったものはないですね。自分で作った作物を売るのは自由ですから。
勿論納税の義務はありますが、農家による商品の売買は禁止されてはいない筈です。中にはそれに当て嵌まらない場合もあるでしょうが。
全てを国が管理する計画経済は必ずや破綻を来たす。ある程度市場に任せないと人も物も金も滞り、GDPも上がりませんよ(あるの?)。
そういった民と民の財産を守るからからこそ、領主という地位が許される。そういう意味でも旧帝国が破綻したのは自然の成り行きでした。
この夫婦も実に仲睦まじく、未来への期待に溢れていました。しかしこういう風に登場するのは事故フラグです。
なんと突如飛来したグリフォンが馬車を粉砕。馬や作物も台無しになりました。夫は大丈夫だと妻を励ましますが、失望は隠せない。
このようにマーモでは運が向いてきたと思った時が落とし穴です。油断なのか邪神の気まぐれなのか、いきなり事態は悪化する事が多い。
一方とある牧場の少年もまた犠牲になりました。夜中に愛犬の声に起こされて出歩き、遭遇してしまったコカトリスに愛犬共々石化です。
この少年は貧しい実家の為に働きに出ていて、主人は事ある毎に折檻をする怖い人です。その上こんな不運が身に降りかかるとは……。
まぁ嘴の攻撃を受けていたら身体に穴が開いてましたし。石にされた分まだ幸せなのかもしれない。石化なら"リフレッシュ"で治ります。
ちなみにグリフォンとは6レベルの魔獣であり、獅子の胴体に鷲の首と翼を持つ。あるいは前半身獅子で、後半身鷲ですね。
基本的に人は襲いませんが、光物が好きなので巣には宝物がある事もある。戦闘時には鉤爪・鉤爪・嘴の3回攻撃をしてくる。
また雌馬との間に子供やヒッポグリフを作る。これは前半身はやはり鷲で、後半身が馬という5レベルの魔獣(あるいは幻獣)です。
コカトリスは4レベルの魔獣であり、人間大の巨大な鶏?で足と尻尾はトカゲです。戦闘力そのものはそれほどでもありません。
しかしその嘴には《石化》の魔力があり、精神抵抗で11出さないと固まる。犬や少年ではまず抵抗できないでしょうね。
その魔力のせいで普通に食事をする事ができず、ヘンルーダという石化予防の効力のある草のみを食べる。丁度牧場にこれがありました。
ちなみに幻獣と魔獣の違いとは、人間にとって有害か否かです。だからグリフォンやコカトリスは基本的に魔獣なのです。
しかしユニコーンやペガサス、そしてリュンクス等の比較的大人しく何らかのメリットのあるものは幻獣と呼ばれる。
むしろこういった幻獣は人間に狩られる事がある。ユニコーンの森、ヘッポコ、「幻獣の遺産」等がその例になりますね。
ヒッポグリフは基本的に大人しくて余程空腹でない限り人を襲わず、それどころか乗騎になるので幻獣という事もできるでしょうね。
★2〜3
何故こんな事ができるかというと、ヴェイルはバグナードから授かった宝の一つ"竜爪の錫杖"の力を使ったのです。
「湖岸の国の魔法戦士」を見ても分かるように、竜の爪には竜を従属させる力がある。恐らくはそれを利用したアイテムなのでしょう。
かつてバグナードはこの杖で、あの五色の魔竜の1匹"黒翼の邪竜"ナースを掌握した。15レベルの老竜を屈服させるとは、恐るべき魔力です。
ナースは「邪神戦争」の際に金鱗の竜王マイセンに破れ、何処かへ飛び立った。ヴェイルがそれを呼び戻し、咆哮で魔獣を追い立てている。
その結果グリフォンやコカトリスだけでなく、ミノタウロスやらヒッポグリフやらが人里に現れて被害を出しているのです。
東の闇の森、西の山岳地帯、南東の海岸地帯と、様々な種類の魔獣がね。流石はマーモ、魔獣の生息地にバリエーションもある(苦笑)
お陰でウィンドレストも緊張した様子ですが、恐慌をきたしている程でもない。この辺が覚悟を決めた上で残った証拠なのでしょう。
そして人里に出た以上は、魔獣を退治しないと公国の威信に関わる。逆に言えば、退治さえできれば民の信頼も勝ち取れるでしょうが。
ギャラック「おまえの母親の仕業じゃないだろうな」
リーフ「馬鹿言わないでよ。このまえ、母さんに言い負かされたのが、そんなに悔しいの」
ギャラック「言い負かされてやしない!」
でもこんな姿を国民に見られたら威信も何もないか(苦笑)
とにかく魔獣の種類と能力を把握し、しかるべく戦力で討伐隊を差し向けます。その際は"リフレッシュ"できる司祭も必要ですね。
そこでスパークはニースを呼びに行きます。もう恒例のパターンですが、リーフはどうしても一緒に行く気になれなかったようです。
だってそこにいくとスパークとニースの仲睦まじい様子を見せ付けられるから。この時点で彼女にもフラグが立ちつつあったんですね。
リーフ「"公王の友人"って、いったい何なのかしら?あたしってば、一生、こうなんだろうな」
"公王の友人"だから、リーフはスパークの私室に自由に出入りできる。これはアルドやギャラックにもない特権です。
しかし同時に危険の悪いスパークの相手をさせられる事もしばしば。特権の代償として、果たして釣り合いが取れてるのかな?
一方地下のマーファ神殿では、スパークが来たことを聞いて花が咲いたかのような笑顔を見せるニース。やっぱりヒロイン、可愛すぎる。
しかもエプロン姿ですよ、エプロン姿。幼妻って感じですね。スパークが思わず「似合っていた」と言ってしまったのも頷けます(感動)。
ここでニースは父から聞かされた魔獣使いのエレーナの話をスパークにして、この謎の魔獣出没事件の解決方法を示したのでした。
★4
準備を整え、魔獣退治の為にスパーク出陣です。公王様自らですから、親征とでも言いましょうか。
近衛騎士や魔法使いを率いて、実に堂々としていて立派です。こうしていると王様っぽいから不思議ですよね(苦笑)
あとリーフが精霊力で天気予報なんてしてますが、自然の精霊力なんて常に揺れ動くものですから、あまりあてにはできない。
しかし今回のはあくまでも人里に現れた分を退治するのであって、既にマーモから魔獣を駆逐するつもりはない。
例の魔獣狩りの時にも被害が大きいだけで実利がなかったようだし、しかも金もかかれば時間もかかる。手に入るのは空虚な名声のみ。
既にスパークは闇はマーモの自然だと知っていて、魔獣もその闇の一部です。自然との対決は生活を守る為にのみするべきでしょうね。
現地に着いてからはグリフォンの囮に雌馬を設置して待ち伏せしますが、一向に来ないので部隊を2つに分けました。
スパーク。ニース・リーフ+近衛騎士×2はコカトリスで、ギャラック・ライナ・グリーバス+騎士数名はグリフォンです。
いつもの面子を2つに分けても仕方がないけど、そこは王様です。多くの騎士がいるのだから、戦力は十分過ぎる程あるのです。
実はスパークが動かせる騎士の数は、本国の「砂漠の鷹騎士団」の1軍隊に相当する。つまり2000〜3000騎にもなるのです。
これはカノンやアラニアといった国にも劣らないし、実際は「邪神戦争」で消耗しているから真っ向勝負でも十分戦える戦力だったりする。
ただしそれがマーモを統治する上で十分かといえば、そうでもない。文官にしろ武官にしろ、公国は慢性的に人手不足のようですから。
それに街や領地の守りだって必要だから、あまり大人数を裂くと事件があった時に対処できない。何かある度にその辺も悩みの種になる。
またこの時点で密偵の頭であるライナは新生マーモ帝国の存在を察していて、幾つか怪しい噂を掴んでいます。
1つは黒く大きな空飛ぶ影。もう1つは魂も凍る叫び声。後者は例の邪竜でしょうが、前者は更に別の存在だと思われます。
他にも「一つ目の女が公都を見つめて笑ってた」とか、「暗黒神の幻影が空に浮かんでた」とか。それは最早都市伝説でしょうが(苦笑)
★5
最初はコカトリス班からです。まず一行は牧場に立ち寄り、石化した少年とその愛犬を助けます。
ところが彼らは納屋の隅に放置されていました。せめて室内に安置してあげればいいものを、まるで物扱いでスパークは憤慨します。
いっそスパークに主人をぶん殴って欲しかったけど、追加ダメージで最低8点も来るし、大怪我しそうなので流石にマズイでしょう(苦笑)
続いてニースの"リフレッシュ"で元に戻しますが、先に少年を元に戻してしまったので石化した愛犬を見て軽くトラウマを負ったり。
でもこういう時に少年を優先させようと思ったのは悪い事じゃないですよ、詰めが甘いだけです。でもニースは可愛いから許す(笑)
そしてスパークは少年に"公国の羊番"という称号を与え、主人を軽くビビらせて惨いDVをしないよう釘を刺すのも忘れません。
それから一行は少年の案内でヘンルーダの生息地を頼りにコカトリスを探して、これを討伐する事に成功します。
この際彼らはヘンルーダを食べて石化に備えました。青汁のように不味いので苦労しましたが、石化するよりはマシなので。
ちなみにヘンルーダは1株9800ガメルとかするので、上手く扱えば本島に輸出できるかもしれない。ある意味これも特産品です。
ただし効果は採集後3日しか持続しないので、鉢植えで出荷する必要があるかも。あるいはこの味を改善すれば冒険者に需要が出るかも。
ちなみにコカトリスの石化への抵抗の目標値は11なので、精神抵抗が最低7あるスパークなら素で抵抗できるでしょう。
護衛の近衛騎士が3〜4レベルしかないと石になる事もままありそうですが、ニースもいるから石化はそんなに怖くないですよ。
コカトリスとの戦いはアッサリ終わりましたね。死に掛けたり(近衛騎士)、魔法を抵抗されたり(リーフ)したけど、死者もいない。
近衛騎士の1人がマウントを取られて顔に風穴を開けられそうになっている隙に、スパークが一撃で首を落として退治成功です。
コカトリスは防御点は7で生命力16、スパークならサシでも1分かからずに倒せそうです。こう見えてもスパークは結構強いんです。
パーンやカシューが強過ぎるから目立たないけど、大陸だったら普通に一流です。そして「邪神戦争」の頃より確実に強くなっている。
ニース「怪我はありませんか?」
近衛騎士「大丈夫です」←シャキーンと立ち上がる
確かに大丈夫そうだ。別の場所がちょいとしたJUNK状態のようですが(苦笑)
★6
続いてグリフォン班です。グリフォンは怖い特殊能力はないけれど、空を飛ぶ上に戦闘力もある正統派の強さの持ち主です。
ところが所詮は鳥頭。光物が好きな習性は変わらないので、グリフォンは落陽に照らされて輝く鎧に反応して襲い掛かってきます。
3回攻撃で1回の打撃点は15点。仮に近衛騎士が3〜4レベルしかないとすると、金属鎧を着ていても全弾当たれば危ないかもしれない。
戦闘中に一名の近衛騎士が掴み上げて高い所から落とすという荒技を食らいましたが、普通に生きているのでそこそこでしょうね。
仮に4レベルで鎧で5点止めたとして、7〜8m(21点〜24点ダメージ)ぐらいなら即死はないでしょう。よっぽど運が悪くなければ。
しかし空を飛び回るフリフォンはとても厄介です。その窮地を打開したのが、グリフォンと同レベル?(最低6)のギャラックでした。
いや、冒険者レベルとモンスターレベルは微妙にズレがありますけどね。同レベルならPCの方がモンスターよりは強くなる筈です。
彼は鎧に"ライト"をかけてグリフォンを誘います。闘牛あらぬ闘グリフォンですね。ちなみに牛は色盲なので、布の色ではなく動きに興奮する。
ギャラックが囮になったお陰でグリフォンはクロスボウで弁慶状態になり、更にライナの鞭とアルドの"スティッキング・ストリング"で拘束。
そして多くの騎士達が波状攻撃を仕掛け、ギャラックがトドメを刺した。死者は1名、負傷者は5名と、随分と梃子摺ったものです。
こうして討ち取られたコカトリスとグリフォンの死体を晒しながら凱旋し、人々は歓声と共にスパークを出迎えたといいます。
国の威信を保つには、王の人気取りも大切です。これで街の人々も安心や希望を抱き、公国とスパークの未来に期待をする事もできる。
しかしまだまだ魔獣は跳梁跋扈しています。スパークはより確実な決着の為に、魔獣使いエレーナを尋ねてアラニアへと向かいます。
★1
魔獣使いのエレーナを招聘するため、スパークはいつものメンバーと共にアラニアへとやってきました。
しかしこの緊急時に王様が国を留守にするなんて、結構なギャンブラーですね。もしもこれで成果がなかったら一大事です。
そういえばこのパーティーがアラニアに来るのは初めての筈。「邪神戦争」の時はフレイム→ヴァリス→カノン→マーモだったから。
それどころかスパークは一度もカシューの指揮下で戦った事がない。もし普通に騎士になってたら、アラニアでの合戦にも参加してたろうに。
お忍びとはいえ一国の王が勝手に他国を歩くのは問題があるので、スレインを通してセシルが同行しています。
今回はエレーナを訪問するので、唯一の友人である彼の案内が必要です。もし無防備に近づけば警戒されるでしょうしね。
セシルは今年で33歳。今はザクソン伯としてかつて独立運動を働いたザクソンを守りつつ、宮廷魔術師として王宮に出仕している。
ただし彼の周りは敵だらけです。伝統を推し進めるアラニア王ロベスに対し、セシルは革新的な形で意見をするのが仕事で完全アウェイ。
最早フレイムの監視役のようなもので、だからこそ身の安全が保証されてる。彼が変死を遂げればザクソンやフレイムとの関係は悪化する。
しかしそういう状況でも、彼は基本的に変わらない。
セシル「断っておくが、エレーナさんは邪悪な人じゃない。彼女の悪口を言うのは、このオレが許さないからな」←ムキー!
このように「気が短くて怒りんぼ、そのくせ繊細で優しい」という落ち着きのない30代です(笑)
そしてエレーナとの関係もこんな感じ。
ライナ「エレーナって女性のことをまるで恋人か何かのように言うのね」
セシル「そんなことはない!」←顔真っ赤
まるで中学生みたいな反応のセシル。本当に変わってないのは、喜んでいいのか悲しむべきなのか。
ここで彼らの年齢を確認してみました。スパークは18歳で、ニースが14歳というのは本編でも触れている事です。
ギャラックは今年で30歳で、アルドは32歳、グリーバスは46歳、リーフは18歳、ライナは23歳。平均年齢21歳強かな。
これで公国とはいえ一国の命運を背負っているのか。ただしドワーフの寿命は人間のおよそ2倍なので、グリーバスは種族的には若い。
もしかしなくてもセシルは社会的には最年長。炎の魔神で初登場した時は19歳で若いなと思っていたのに、すっかりオッサンですね(苦笑)
「魔獣の森」の物語からおよそ10年が経ちますが、今でも魔獣の森はあの頃のまま相変わらず不気味な雰囲気です。
ただし例の事件で多くの魔獣は解放されて退治されたので、今手元にいるのはリュンクス、ラミアとほんの数体のみです。
あとグージェルミン導師のお墓の横に、ランディスの墓標が増えていますが。それらが彼女の心を呪縛する一因でもある……。
ちなみにリュンクスの体内にはリグニア石という貴重な石(1つ1万2000ガメル!)がある。「幻獣の遺産」参照ですね。
リーフ「マーモ公国の財源になるかもね」
スパーク「相手は魔獣だぞ。飼育などできるものか」
リーフ「もしかして、本気で考えたの?」
スパーク「オレは当分のあいだ、ロードスで最も貪欲な商人になるつもりでいるんだ」
商会を営むのも国を営むのも同じようなものかもね。ただしリュンクスは捕獲が難しく、多分採算に合わない。
★2
エレーナは今年で29歳になるかと思いますが、どうも20代半ばと若く見えるらしく、すっかり大人の女性です。
彼女は本当に隠遁生活を送っているようで、マーモの旧帝国が滅びた事すらよく知らない様子です。セシルも特別話さなかったんでしょう。
そうなると普段セシルとどんな会話をしているのかが気になる。セシルもああいう性格だから、決してロマンチックな話ではないでしょうし。
また彼女の魔術師としての実力は相当なものです。勿論秘術も卓越していますが、通常の魔法も7レベル以上では使えるようです。
取り合えず"テレポート"は多用するのでね。何と後に9レベルの"コマンド・ゴーレム"や、10レベルの"ルーン・バリア"も使っている。
ただし彼女ほどの魔術師になると超英雄の可能性があるので、一概に10レベルとは言えない。多分ラヴェルナぐらいだと思うけど。
仮に彼女が9レベルで、知力も+3はあるとしましょう。すると魔力は12で、限界まで拡大すると+5で17にもなります。
仮に10レベルの成竜を引き合いに出してみると、抵抗は19(12)です。それなら支配も可能じゃないでしょうか?
でも15レベルの老竜は別です、26(19)もあるんですよ。基準値が違いすぎるし、よっぽど出目が良くないと支配できないでしょう。
拡大するにしても、恐らくは秘術は高レベルの魔術です。基本消費精神力も高そうだから、彼女が9レベルでも何処まで拡大できるやら。
しかしもし超英雄だとすれば、超英雄ポイントの量によっては自動的に成功にできるかも。まぁあくまでも可能性の問題ですけどね。
肝心の招聘ですが、最初はエレーナもスパークの申し出を丁重に断ります。
エレーナ「秘術は異端の魔術であり、本来なら葬り去られるべきものです。わたしは、この秘術を知る最後の一人になるつもりです」
彼女が正義感から招聘に応じるという考えは甘かった。彼女の意思は強く、それ以上に悲しみは深い。
ギャラックはマーモの民を魔獣から見捨てるのかと激昂しますが、彼女にそんな義務はない。
エレーナ「魔獣に殺される人間は、マーモ以外の国にも大勢おります。わたくしには、そのすべてを救うことはできません」
スパーク「我々が彼女を招きたいのは、正義のためではない。マーモ公国の利益のためだ。
自由騎士ならざる我々には、公国の民を守ることしかできない。彼女も同じだ。守るべき者だけを守る義務しかない」
ロードスには優れた人物が数多くいる。中には人間の限界を超える人もいるけれど、限界を超えても人間である事は変わらない。
『救うべき者は無数に存在し、救いうる人間には限界がある』
得の高い司祭とて全ての人を癒す事はできない。だから彼らは寄進を取る事で、心苦しく思いながらも救う人を選ぶ。
王は最も多くの人を救う義務を持ちながらも、やはり全ての人を救う事はできない。カシューとて燃えるライデンに背を向けた事がある。
だからスパークは"自由騎士"になり、王にならず王にも仕えず、自分の心にのみ従って民衆を救おうとした。そんな彼にも限界はある。
王は最も大きな権力を持つ代わりに、最も過酷な責務を負っている。飢饉や犯罪、天災、外国との摩擦、その被害を最小限に抑える義務がある。
カシューは「贅沢がしたいから国を豊かにする」と冗談のように笑っていたけど、確かにそれが実現できれば国民も幸せになれるでしょうね。
マーモの民をそういう風に幸せにするには、マーモにとっての自然である魔獣というものを掌握できる秘術の力が必要になるんですが。
結局その日は説得を諦め、一行は野宿します。邪神戦争の時を思い出しますね。こういう時間は本当に貴重です。
焚き火の明かりに煌々と照らされ、仲間達と楽しく談笑。王様になってしまった今のスパークには、ささやかな憩いの時です。
スパーク「他人の心に踏み込みたくはないが、彼女をこのままにしておくのもどうかと思うな。
若くて美しい女性が、悲しみに包まれているのを見過ごすのは騎士道にもとる」
リーフ「若くも、美しくもないなら、放っておいていいわけ?」
ギャラック「決まってるじゃねぇか」←あんた漢だよ(笑)
まぁそれが男の哀しい性かも。「エロイのは男の罪、それを許さないのは女の罪」です。
結局はそれが良くないと分かっているから、若くも美しくもない人にも救いの手を差し伸べる。
スパーク「誰の心のなかにも、闇の部分はあるものだからな。そのことに無自覚でいるほうが、危険だと思う」
かといって闇を自覚して身を委ねてもいけない。これもまた「闇から目を背けず、飲まれず」です。
しかし最近のスパークは実に哲学的です。でも仲間達は不満そうです。
リーフ「最近、隙がなさすぎ。公王だからって、いきなりいい子にならないでよ」
ギャラック「同感でさあ。あまり一人で結論を出さないで、オレたちにも手伝わせてください」
リーフ「そうよ、欠点の多いところが、あなたの魅力なんだから。それでこそ、わたしたちが手伝おうって気も起きるの」
酷い言われようだけど、こうやって欠点を曝け出せる仲間がいるというのは幸せな事です。嫌でも王様は完全を求められるんだから……。
★3〜4
一晩明けて清々しい朝がきました。ちなみにセシルはエレーナと二人っきりでしたが。
ライナ「昨日は、お楽しみだったの?」
セシル「そんなんじゃない!」
………やはり駄目か。魔術師って何なんでしょうね。アルドといい、セシルといい、女性にはてんで疎いんですから。
少しはスレインを見習えばいいのに。美しい妻、愛くるしい娘、大国の宮廷魔術師。勝ち組にも程がある、多くの男性が嫉妬する筈。
ついでに、娘が自分似でない事もスレインにとって幸福な事です。OVA版スレインみたいに眉毛すらないニースなんて嫌でしょう(笑)
そして再説得です。
スパーク「今のままの暮らしがあなたにとって、幸せであるようには見えないのです」
グリーバス(いい顔をしておる)←満足そう
最近のグリーバスはマイリー信者として、多くの困難に襲われるであろうスパークとニースを守るのが信仰の証になっているようです。
思えば彼の師であるホッブは"勇者の導き手"として多くの勇者に仕えた。しかしその実勇者に導かれた点がグリーバスにも当て嵌まる。
実はエレーナは秘術に強い劣等感を持っている。それが呪いに他ならないと。
エレーナ「魔獣ばかりではありません。父もわたしも、そしてランディスまで呪縛されてしまった」
ランディスの話は序章の方を見てもらうとして、やはりあの出来事が未だに彼女の心を苦しませている。
しかし今のままではエレーナは討伐される恐れがある。今のアラニア王ロベスはエレーナを放逐して、人心を集めようとしてるらしい。
外の心配がなくなればその警戒心が内側に向くのは当然です。そして民衆は戦争が終わっても、近場に魔獣の巣窟があれば落ち着きません。
エレーナ「そのときには、出てゆくしかありませんね」
セシル「どうしてなのですか!不幸であり続ける必要がいったいどこにあるのです」←絶叫
エレーナ「分かっていないのは、あなたよ……」
確かにエレーナは秘術は呪いだと思っているけど、同時に幼い頃から秘術を学んできた彼女にとって秘術は身体の一部なのです。
エレーナ「マーモに行けば、呪いは永遠に続くことになります。それでは、不幸になる人間が増えるだけなのです!」←大泣き
秘術の力は強大で、魔獣のみならず術者の人生をも呪縛する。
秘術は呪い、でもその呪いから離れられない。それが彼女の悩みでした。しかしスパークはだからこそ彼女を招く。
スパーク「ならば、その不幸、わたしたちにも分かちあわせていただけないでしょうか……」
確かに呪われている、それが何だというのか。マーモだって呪われている。スパークはそのマーモを統治しようとしている。
そして「闇から目を背けず、飲まれず」という答えを出した。その為には秘術によって魔獣と共存するのが必要なのです。
スパーク「それが邪悪な力なら、その邪悪さも共に受け入れましょう。呪いであるなら、共に呪われましょう。
約束いたします。魔獣支配の秘術は、マーモの人民とあなた自身の笑顔のためだけに使われるべきであると」
エレーナ「笑顔のため……、マーモの人々とわたし自身の……できますでしょうか?このわたしに?」←目から鱗
スパーク「不幸かどうかは、他の誰でもなく当人が決めることだと思います。
例えば、わたしのことを不幸呼ばわりするこの少女は、大切な友人の一人です」
エレーナ「あなたは、お強いのですね……。その強さ、わたくしも身習わせていただきます。
マーモへ参りましょう。呪われた秘術が、人々に笑顔を与えられるのなら、わたくしが笑うことができるなら……」
こうしてエレーナは居場所を手に入れた。呪われた自分が生きる事ができる場所と、受け入れてくれる仲間を……。
心が決まれば引越しの準備も手際がいい。きっとギャラックやアルドが大活躍でしょう。マーモ二大マッチョマンですから(苦笑)
掌握していた残りの魔獣達も元の住処へ帰し、それから術が解けるように命令しました。ていうかそんな便利な使い方もできるんだ。
別れを惜しむセシルとエレーナは絵になります、映画みたいです。
エレーナ「ありがとう、セシル。そして、ごめんなさい」
セシル「謝らないでください。わたしの一方的な想いでしかないのですから……」
エレーナ「さよなら、優しいセシル。また、お会いできるといいわね」
セシル(優しいか……。あなたにだけは、そう言われたくないのにな)
切ない……。エレーナにとってセシルは特別な存在だけど、彼はそういう特別さを望んではいなかっただろうに。
マーモへ帰還したスパークは、エレーナの力で各地で跳梁跋扈する魔獣達を次々に鎮めていきました。
有史以前から魔獣と付き合ってきたマーモの人々にとって、彼女の力はなんら恐ろしくなく、むしろ尊敬の対象ですらありました。
マーモの人々は本島の人間よりも遥かに闇に寛容です。例え闇の秘術であろうとも、自分達を守る存在なら恐れる事などないのです。
帝国側にとって幸いな事は、公国は魔獣を鎮める事はできても、支配して武力として使う事はできないという事です。
いや使おうと思えば使えるんでしょうけどね。でも旧マーモ帝国の妖魔兵団のような軍団を作ると、諸国からクレームがつきそうなので。
闇を認めるとは言っても、闇そのものになる訳じゃない。旧帝国の見習うべき所は見習うが、帝国そのものには決してならないのが大切。
★1
エレーナの活躍で各地で暴れる魔獣達は次々に元の住処へ送還されていきました。やはり正面からガチでやるより効率がいいですね。
彼女はまず探索の糸を四方八方へ伸ばし、魔獣の精神に触れるとこれを精査。すると魔獣はこの糸を辿って向こうからやって来る訳です。
そして更に糸を伸ばして支配の網で雁字搦めにし、最終的に名前を与えます。この名前そのものに魔法的強制力があり、相手は服従する。
彼女はこうして魔獣使いの力を使って人々を助けるにつれ、笑顔を取り戻していく。今までの欝で湿っぽい表情が嘘のようですね。
自分の存在や力を認めて貰えるというのは、大切な事ですね。セシルもランディスも、彼女のこの笑顔に会いたかったのかもしれません。
更にこの偉業に同行するスパークの支持率も鰻上りです。彼女が得るべき名声を横取りしてるようで気が引けるけど、人気取りも大切なので。
ところが1つ解決すればもう1つ問題が出てくるのがマーモです。なんとヒュドラが公都に迫っている情報が入ります。
いよいよ中ボス登場って感じですね。ヒュドラといえばモンスターレベルが10もある九つ頭の大蛇、とっても強いキング・オブ・蛇です。
レベルだけでいえば最高位の成竜に匹敵し、本気を出せば街一つ滅ぼす事もできる。当然公都に到達すれば某放射能怪獣並みに大惨事です。
ちなみにナースはこの化け物を実力で屈服させ、住処から追い出したらしい。ヒュドラも凄いけど、流石に老竜には勝てないか……。
ヒュドラは公都の北にあるエレファスからセスト川を下っています。そこで留守番のアルドとグリーバスが騎士達を率いて足留めをします。
そして旅先にあるスパーク達はエレーナの"テレポート"で全員で瞬間移動。仮に彼女が9レベルでも4点消費、全員飛ばすなら物凄い消耗ですね
以前は7レベルの"ディスペル・オーダー"を使えなかったのに、上達してるよ。それで4〜5人運べると言っている以上精神力は20以上?
スパークはとんでもない逸材を引き抜いてきたようですね。スレインにも劣らない実力の魔術師なんて、むしろパーンと一緒に戦える水準。
エレーナ「わたしも魔術師の端くれです」←ニッコリ
レイナ「……端くれって、アルドには瞬間移動の呪文なんて使えないわよね」←旦那に耳打ち
9レベルなのに端くれって、天然で嫌味ったらしい。でも可愛いから許す。ニースにも言える事ですが、「可愛いは正義」。
しかしエレーナで端くれじゃあ、アルドやセシルは「端くれの片隅に遠慮がちに居させてもらう」ようになっちゃいますよ(笑)
★2
こうしてアルドはグリーバス司祭と一緒に、およそ30騎の騎士を率いて、ヒュドラの移動予想路上に待機します。
タダでさえ臆病なのに、馴染みのメンバーと離れて恐るべき魔獣ヒュドラと戦うだなんて、生きた心地がしないでしょう。
相変わらず見た目にそぐわぬピュアハートの持ち主です。でも恐怖を感じながら逃げないというのも、1つの立派な勇気だと思う。
「暗黒の島の領主」でも触れましたが、"嘆きの川"セストは北の休火山エレファスを源泉とし、無数の沼がある湿地帯へと流れ込みます。
ロードス本島の沈黙の大湿原にもヒュドラはいますよね。PCゲームにも出てきたし。ヒュドラにとっては湿原が住み良い環境なのかな?
更にヒュドラは地上では移動速度は12ですが、水中では20で移動できる。時速21.6kmといった程度、まぁ犬ぐらいの速さです。
アルド「こういうときには、自分の臆病さが嫌になってきます」←緊張してる
グリーバス「戦いを恐ろしいと思うのは、自然な感情だ。だが、いつの世にも戦いがあり、逃れることはできんのだ。
生き物は他の生き物の命を奪うことで、存在を続けているという事実もある。この永劫の戦いによって、
人間も妖精も、その他の動植物も栄えてきたのだ。死とは邪神の呪いではなく、神の与えた祝福とも言えよう」
つまり死ぬ事にも意味がある。言い換えれば、意味のある死に方ができるかどうかは、生き方にかかっている。
『勇気とは恐怖に抗う事、恐怖を支配する事、恐怖を感じない事ではない』
恐怖を感じるのは当然の事。むしろ恐怖を知らない勇気は無謀です。アルドのように臆病を知ればこそ、それを乗り越えれば勇気になる。
とはいえ現実は過酷です。ヒュドラは強かった。騎士達は襲い掛かるヒュドラにパイクを展開し、正面からぶつかりました。
しかしパイクとは本来突進してくる騎馬や人間へ向けるもの。相手が人間なら有効でしょうが、魔獣相手には独自の戦術が必要です。
今回ばかりは相手がデカ過ぎた。何しろ全長10mですからね。騎士達は勇敢に立ち塞がるもまとめて弾き飛ばされ、5名の騎士が喰われた。
せめてミノタウロスとかトロール程度の大きさなら力押しも通用したんでしょうが、やはり正面から戦うにはパーン程度のレベルが必要かな。
実際ヘッポコがヒュドラと戦った時も、マトモに戦えたのはパーンと同格のローンダミスのみ。それだって魔法使いの援護が必要でした。
★3
スパーク達が合流した時には、ヒュドラは公都まであと1日の距離に迫っていました。最早待ったなしです。
しかしアルドはすっかり自信喪失。スレインと比べるのは可哀想だけど、フレイムの宮廷を知っている騎士には頼りなく見えるようです。
一応彼が多少の手傷を加えてくれたお陰でヒュドラの動きも鈍ってるし、対処方法も悪くはなかった。ただ相手が規格外過ぎただけです。
スパーク「この湿原の領主になりたい者がいたら、喜んで封じてやるぞ」
ウッディン「城を維持するだけで、破産してしまいそうですな」←冗談の口調
スパーク「領地としては十分だと思うがな。沼で魚を養殖するなり、沼地で育つ作物を調べて、栽培を促進すればいい」←真面目
ウッディン「ご無礼を申しました……」
マーモの貧しい土地を領地とする場合、武勇は勿論のこと領地の経営にも長けていないといけないという事ですね。
領主が黙っていても収穫が出る、アラニアやカノンの豊かさとは訳が違う。本当に有能な領主がいなければ、領民にも迷惑がかかるんでしょう。
スパーク「魔獣には九つも首がある。首の数で武勲は競えるからな」
貴方たち一度に20点ダメージ以上を与える気ですか。それはよっぽどいい一撃が入らないと無理ですよ(苦笑)
軍議が終わると、離れた場所でアルドは一人自分を責め続けていました。そこにニースがやってきて、彼を慰めます。
アルド「慰めなどいりません!」←自暴自棄っぽい
ニース「そういうと思っていました。だから、慰めません。わたしは、慰めてもらうために、ここに来たのですから」
ここでニースは自分がナニールの生まれ変わりである事をカミングアウト。実は今までニースは仲間には明かしてなかったんですね。
アニメ版の「英雄騎士伝」では普通にアルドが知っていて、皆にカミングアウトしていましたね。そのせいかこの辺でハッ!となりました。
アルドはその過酷過ぎる運命を知り号泣。
ニース「……これでも、わたしのことを聖女だと思いますか?」
アルド「わたしにとって、ニース様は永遠に聖女です……」
彼は確かに臆病ですが、それは優しさの裏返し。そしてその優しさはきっかけ次第で強さになる。
この時アルドはニースを支える事を心に誓ったのです。そして自分の弱さを叱咤し、立ち上がりました。
★4〜5
ヒュドラとの2度目の対決では、エレーナが秘術でヒュドラを呼び寄せ、支配して一発で解決しようとしました。
しかし流石にヒュドラの抵抗を破る事はできずに失敗。一同死ぬ気で応戦を試みますが、ニースの"ピース"で痛み分けとなりました。
相手から敵意を奪い、自然ならざる戦いを鎮める3レベルの特殊神聖魔法ですね。大ニースは合戦を丸ごと鎮めたりしてましたっけ。
ただしこの魔法は空腹で襲い掛かってくる敵には通じない。それは相手にとっては捕食活動であり、生き物として自然な戦いだからでしょう。
つまりこの時ヒュドラは別に空腹という訳ではなかった。多分魔法をかけられた事に怒って逆襲したとか、そんな感じだったんでしょう。
こうして2度目の戦いも決着はつきませんでした。しかし次こそは決着をつけようとする彼らは、「燃える水」を利用しようとします。
見た目は黒く、液体で、ドロドロしている。地下にある炎の精霊力が作用している水です。もしかしてこれはフォーセリアにおける原油?
これに"ファイア・ボール"等で火をつける事で猛烈な勢いで燃え上がる。その炎はヒュドラの強力な再生力をも封じるでしょうね。
かつて神々は世界創造の際に精霊力を分化し、今の世界を築いた。だから現在は炎と水のように、相反する精霊力が同居する事はない。
また相反しない組み合わせの複合精霊力なら存在しうるようですが、それだって複合精霊力を単独で司る複合精霊は存在しない。
しかしそれらは神話の時代には存在したし、カストゥールの四大魔術師も創造した。これは大地と炎の複合精霊ラーヴァの例で明らかです。
ラーヴァは溶岩の複合精霊とも言うべきものですね。炎の精霊力が強く働き過ぎて大地の精霊力を乱し、結果溶岩(の複合精霊力)を形成する。
この際溶岩(の精霊力)は普通に存在しえますが、単独で溶岩を司る複合精霊ラーヴァは基本存在しません。リウイでも明らかですね。
しかし大地と炎はまだ相反しないけど、炎と水は完全に相反するものです。混沌魔術ですら相反する精霊力の複合はできないのにも関わらず。
ただし混沌界には燃える水や流れる大地等、正に神々が精霊力を分化する前の混沌が存在している。燃える水は正にそういうものです。
恐らくは大地の底で炎の精霊界や混沌界と繋がっているのか、あるいは神々が世界創造の際に炎の精霊力を地中へ封印したかしたのでしょう。
3度目の戦いは更に工夫を重ねます。まずエレーナがリーフに"ウォーター・ウォーキング"をかけてもらって、「燃える水」の中央部に陣取る。
呼び寄せられたヒュドラを水の中におびき寄せ"テレポート"で脱出。あとはアルドが"ファイア・ボール"を炸裂させ、焼き殺すという作戦。
それはエレーナに危険があるのですが、彼女は志願しました。
エレーナ「わたしはすでに、マーモ公国の人間のつもりでいます」
ああ、本当に吹っ切れたんですね。何て心強いんだろう……。
そしていざ3度目の戦いが始まると、ヒュドラを火達磨にする所までは作戦通りです。しかしそこからが予想外です。
燃える水は水面にしか張られていない。本当に油のようですね。これに気づいたヒュドラは潜水して脱出、爬虫類のクセに賢いね(苦笑)
しかし火傷は酷く再生を封じた。スパーク達はグリーバスの"バトル・ソング"の援護を受けて袋叩きにし、ついにヒュドラを討ち取ります。
しかしこの戦いで死者3名・昏睡者1名を出しました。前の戦いでの死者は5名。皮肉にも首の数と同じ9人の命が失われたんですよ。
更に燃える水は予想以上に激しく燃え、鎮火する目処は立ちません。精霊力を完全に使い切るまで、途方もない年月燃え続けるでしょう。
この戦いでヒュドラや燃える水といった、強大な闇の存在をスパークは実感しました。光をも飲み込む闇の存在を……。
スパーク「光の存在も、闇の存在も認める。滅ぼすべき闇もあるだろう。だが、それは全てであってはいけない。
ヒュドラだって存在してよかったと思う。どの闇を葬り、どの闇を残すかオレ自身の目で見極めないとな……」
このマーモは本島に比べれば闇が深い。しかし闇に飲まれるようなら帝国に任せればいいし、光に縋るならヴァリスに任せればいい。
でもスパークはどちらでもなく、どちらでもある、最も過酷な道を選んだ。「闇から目を背けず、飲まれず」の思いに変わりはない。
スパークはマーモという島を理解しようとしています。そしていつかニース相手にもそれを要する時が来るでしょう。
ニースもまた大きな闇を抱えている。スパークならいざという時に、その闇から目を背けず飲まれず、彼女を救う事ができる筈です。