「新米女神の勇者たち(8)」著:秋田みやび/グループSNE 出版社:富士見書房
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今回の能力値の成長は以下の通り。
ジーク:生命力18→19
エア:器用度15→16
メッシュ:生命力20→21
ニゲラ:敏捷度19→20
イスミー:精神力20→21
エアは初めて器用度を上げましたが、これは能力値の成長で1ゾロを振ったからです。
技能の成長ではエアがついにレンジャー6→7として、戦闘特技《不屈》を自動習得しました。
これで生命力が−になろうとも、生死判定に成功する限り気絶を免れて活動できるのです。
ニゲラ「倒れたときは、死んでるんですよねぇ?」
エア「まぁね。生命抵抗力13だから、−20くらいまでは立ってられるわよ。
生命力25なんだから、並みのエルフじゃないのよ!」
イスミー「一見華奢なエルフの姐さんに見えるってのに」
確かにエルフは華奢というフォーセリア以来のイメージをぶち壊す数値です。
エア「目指せバトエルデン!大司教様のようになるのが、ルーフェリア神官たちの目標なのです!」
GM「バトエルデンはデータ的には生命がむちむちというのが判明しましたからねぇ」
メッシュ「ルーフェリアには、神殿に伝わる謎の生命力増強法があるのでしょう」
具体的には生命力52とかですね。丁度「滅びのサーペント」が出た後なんですね。通称"渚の大司教"(笑)
イスミーはライダー7→8にして騎芸"大型制御"を習得。これでワイバーンに乗るには"空中騎乗"を覚えるだけですね。
メッシュ「けどこれで馬車が乗り回せるようになりましたね」
イスミー「へぇ、じつはそうなんで。8レベルにしてやっと、自由自在に馬車を乗りこなせるようになりやした」
ニゲラ「盗んだバイクは自在なのにねぇ……」
イスミー「盗んでねえ!あれはシフェナの形見でやすよ!」
ジーク「でも、持ち主生きてたじゃんか」
イスミー「……あ。盗んでた」
イスミーは魔動バイクを騎獣にしてきたから"大型制御"や"空中騎乗"がないのは仕方ない。
ちなみに騎獣に近接攻撃を行わせる"攻撃指令"や、特殊攻撃を行わせる"特殊攻撃指令"はちゃんと覚えている。
後者がなかったら《グレネードランチャー》だって使えませんしね。ドラゴンに火を吹かせる日が来たら役に立つ。
ジークは500点だけ経験点を使ってバード0→1としました。習得呪歌は"アーリーバード"です。
対象を眠りから覚ます効果があります。自然の眠りなら自動的に起きるが、魔法等なら達成値の比べ合いが必要。
"スリープ"とかで眠らされた時の対応策だとか。自然の眠りなら蹴飛ばしてもいいけど、一度に複数起こせるメリットはある。
エア「ジークが、わたしの"アウェイクン"を信用していないことがよくわかりました」
ジーク「あ。い、いや、別の理由もちゃんとあるぞ」
SWの頃と同様にバード技能は1レベルにつき何かしらの言語の会話を覚えることができます。
これでジークはドラゴン語を覚えました。エイデルにいるならこれからドラゴンに会うこともありそうですしね。
エア「なるほど、ジークはこれで妹は必要ないと」
ジーク「……あ。本当だ」
エア「そこは納得せずに否定しろー!」
その妹に今回こそ会えるかもしれないというのに、本当にフラグを片っ端から折る男です。
★
前巻行方不明のソラを追いかけて"帳の島"エイデルに渡ったぞんざいズは、グリン村の嫁取りレースに巻き込まれました。
その裏で村と村の友誼を壊すべく八百長と誘拐を働いていた犯人を捕まえて、グリン村の人々の信用を勝ち取りました。
エア「そしてうさぎは嫁未満に逃げられた」
イスミー「うわぁああーん、シフェナー!(泣)」
可哀想なのはイスミーです。死んだはずの初恋の人シフェナが犯人の一味だったという、複雑な事情がありました。
それを知りながらも彼女についていこうとした挙句、ジークにぶん殴られて彼女には逃げられたり散々でした。
メッシュ「男の風上にも置けぬ存在として、現在標本にするかどうかを検討中です」
イスミー「ああー。縛られてやすー」
ジーク「……ハムみたいになってるぞ、イスミー。……じゅる」
イスミー「ひぃいいー!兄貴が食欲魔人の目にー!」
エア「だめですよ、ジーク。動物愛護団体代表として仲間に食欲を刺激されるなんて言語道断(めっ)」
イスミー「姐さぁあん(泣きついている)」
ニゲラ「でもさりげなく、動物扱いしてるしぃ」
でも結構危ないところでしたね。あのままついていったら本当にパーティ脱退だったかもしれない。
そうなればどうにかしてソラが復帰していたかもしれない。ここでムーテスが復帰しても前衛ばかりになるし。
とはいえグリン村からしたらぞんざいズは大変な働きをしてくれた恩人なので賞賛の嵐。
長老「改めて、この村の客人として遇しましょう」
あれだけ素っ気無かった長老も事件を解決してくれたことに感謝していました。
村はラシーの結婚を控えて盛り上がっているし、シフェナのことを忘れればめでたい限りです。
エア「妹は!ソラは一体どこなのー!なんで様付けなの!もしや、どっかのうさぎの嫁未満のように、
悪の心に染まって、これから妹を倒せキャンペーンが始まるんじゃないでしょうね!(じったんばったん)」
長老「……なるほど」
ジーク「似てるだろ?どっか」
エア「わたしと妹は似ても似つきませんよ。妹はもっと可愛いのです」
ジーク「いやいや、えあのほうが、かわいいよ(超棒読み)」
エア「聞き流しておきます。大体わたしは、可愛いんじゃないです、いい女なんです」
ジーク「うん、エアのほうが歳とってるしな」
エア「…………こいつは、あと二回くらい死んだほうがいい」
ソラについてはこの村でも色々あったらしく、長老ですらちょっと恐れている様子でした。
実は彼女の居場所を頑なに話さなかったのは口止めされていたからです。
長老「かねてより、ソラ様は『金髪でやかましくて、自分の名前を連呼する、
小神の聖印をつけたエルフがやってきても、自分の居場所は絶対に言わないように』
と、強く言い含められていましたので」
ニゲラ「なんだか、だんだん姉妹の関係が見えてきたような気がしてきちゃったぁ」
イスミー「嫌われてるんでやすな」
エア「嫌われていない!しかし!ただ、ちょっとばかりウザがられていることは否定できない!」
この村のためにも、ソラには自力で辿りついたということにしてあげた方がいいですね。
ていうかエアをつれていなかったらもっとスムーズにソラに会えたかもしれないんですよね。
ジーク「けど、なんでそんなこと言ったんだソラのやつ」
長老「『だって、こんなところで、呑気にお持て成しされてるなんて知れたら、絶対に連れ戻されるの』と仰って……」
ワイバーンに連れて行かれた時はどうなるかと思ったら、一人でバカンスとは気楽な妹です。
しかしソラは怠惰にくつろぐことを覚えたらなかなか離れない気がする。伊達に云十年ニトってません。
エア「その時には……刺し違えてでも、連れ戻す!」
現在彼女はワイバーンの育成場所で生活しています。そこに世話役用の宿舎があるんだとか。
そこに行くのは簡単ですが、安易に近付いてバレたら逃げられるかもしれませんね。
使い魔のフェイがいますから、いかにその目を掻い潜って接近するかが問題になります。
レンジャー技能の類いは持っていないのでエアの方が有利ですが、魔術師とは厄介なものですから。
メッシュ「では、変装でもいたしますか?今なら私が伝説のダークブラウンエルフあたりに仕上げますよ」
そういえばこの世界にはダークエルフっていないんですよね。フォーセリアの頃はウザかったけどいないと寂しいものです。
その代わりがドレイクなんでしょうけど、肉体派なので魔法使い系のダークエルフとはちょっと方向性が違う気もします。
種族のトップである妖魔王が亜神と言われていたのに対し、ドレイクだってトップは神様に近い力があってもおかしくないけど。
変装がダメならエアは姿を見せないでジーク達だけで接触する手もある。
ジーク「ソラ!大変だ。エアが病気なんだ!」
エア「……賭けてもいいわ、ぜえぇえったい、来ない」
メッシュ「「楽にしてあげて」とか言われて、ドクロマークの付いた瓶でも手渡されそうですな」
ニゲラ「「これ飲めば、すぐに楽になるの」とか笑顔で言われるんでしょうかー」
エア「……自分で言うのは全然いいけど、人に言われると、なんだか癪だわ、微妙な姉心」
イスミー「面倒くさいお人でやすな」
エアとしてはニゲラの絡み武器に期待しているらしい。移動さえ制限できれば捕まえることはできるでしょうね。
多少フェンサーはかじっていても回避力は9程度だし。命中力が素で14もあるニゲラの攻撃は回避できないでしょう。
問題は〔異貌〕すれば発声も動作も必要なく魔法が使えるってことです。"エネルギー・ジャベリン"で抵抗されたらどうしよう。
エア「……くくく、家を壊して出奔したかと思えば、ただ一人の姉を悪人あつかい……
これはちいとばかり久し振りに、お灸を据えてやらねばならんけえのう(にやり)」
ジーク「ちょっと待ったエア!キャラ変わってんぞ!」
ニゲラ「ていうか、言葉遣いまで別物にぃ!」
メッシュ「はっはっは、皆さん何を驚いているんですか、今のは古式ゆかしいネイティブ・ルーフェリア方言なんですよ」
それがなんで広島弁っぽくなってるのかは謎です(笑)
ソラの居場所は分かりましたが、カイン・ガラのチャーター船がそろそろ迎えにきてしまいます。
そこで前回世話になった残念な人、もといザックさんがワイバーンで届けてくれることを約束します。
ジーク「お前残念じゃないぞ、お礼はニゲラでいいか?」
ニゲラ「ジークさぁあん!」
ザック「そういうこと言ってるのは、おふくろだけなんだけどなあ……」
ニゲラ「せめて、手料理一回くらいでお願いしますぅ」
母親「あらあら、本当に嫁が来たみたい」
次のお迎えはまた10日後になります。その時には妹も一緒だといいですね。
★ワイバーンの育つ場所
ぞんざいズは長老から貰った地図を頼りにワイバーンの育成場所へと向かいました。
そこは段々になった崖を人工的にくり貫いた洞窟が複数並んだ岩場で、ワイバーンにとって住み易い地形らしい。
その麓には小さな家が建ち、お世話当番の男女1名ずつが肉を捌いたり、寝藁や水瓶を運んでいました。
ジーク「……当番」
イスミー「ソラ様のお世話当番でやすか」
エア「ちょっと待った!どんな世話をさせてるっての!」
ニゲラ「大きな扇で、そよそよあおいでー……手にはソーダ水とかいうイメージですぅ」
メッシュ「で。「今日の食事は口に合わなくてよ!」と皿をひっくり返すと」
エア「うちの妹はどんな悪の帝王よ!」
実際はワイバーンの世話です。まぁ本人が入り浸ってたら必然とそっちの世話も必要になるでしょうが。
なお彼らはメンソール的な独特の匂いをつけています。どうやらワイバーンの食欲を抑える効果があるらしい。
しかし今村では結婚を控えてお祭り状態かつ合コン状態なのに、こんなところでポツンと仕事とはついていないですね。
彼らは最初はぞんざいズを密猟者かと警戒しましたが、長老が認めた客人だと知ると気を許します。
もしそうでなかったら大変だったでしょうね。今のぞんざいズはドラゴネットライダーですら倒す強豪です。
ワイバーンなんてもう相手にならないぐらい脅威ですから、巣からワイバーンを逃がすのが精いっぱいでしょう。
ところがソラの名前を出すと彼らに緊張が走ります。
ニゲラ「あ、そうそう。ソーラリィム様にー村から伝言があるんですけどーお会いできますぅ?」
飼育員「で、で、で、では……伝えておきます」
ニゲラ「あのー……できればぁ、直接なんですけどぉ……?」
エア「もしかして……」
イスミー「いねえんで?」
ジーク「死んだか?」
一同「こらぁああ!」
最初は口にするのを躊躇う様子を見せた彼らでしたが、意を決して事情を話します。
どうやらソラはジーク達の活躍を聞いて空を飛ばないと行けない遺跡に興味を持ったらしい。
飼育員「『遺跡を見つければ、ほじくるのは使命!』とおっしゃって……
我々は基本的に三人でワイバーンの世話をするのですが……」
エア「ずばり!その最後の一人を連れて、無理矢理ワイバーンに乗ってその遺跡へと向かった!」
飼育員「「そのとおりです!」」
エア「ていのいい人質じゃないので!ていうか、悪の権化か妹!」
神紀文明時代の遺跡は人間と神様が共存していた時代の遺跡ですから、不思議な仕掛けが多いそうです。
そんな所にたった2人と1頭で侵入を試みるなんて、相変わらず無茶をする妹ですね。
メッシュ「何で、あなたがたはそんなに簡単に魔王のいうことを聞くんですか」
飼育員「だって、あの人、簡単にワイバーンを寝かせるんですよ!(涙目)」
飼育員「それに、肉弾戦だって普通の村人じゃ太刀打ちできないくらい強いですし……
"スリープ"って言われたら、ぱたぱた落ちるんですよ!(涙目)」
現在のソラはソーサラー8レベル程度には成長していると思われます。フェンサーに突っ込んでなければね。
そうなると魔力は12程度あるでしょう。ワイバーンの精神抵抗は8(15)だし、確かに抵抗は難しい。
ニゲラ「もしかして「ソラ様」っていうのは……尊敬されていたわけじゃなくて」
一同「恐れられていた!」
GM「ご名答ー(拍手)」
イスミー「薄々とそんな予感はしていやしたが……」
メッシュ「まさしく祟り神的な意味合いですよね、それって」
頼みのワイバーンですら相手にならないのなら、長老ですら恐れていたのも無理はありません。
ただ飼育員さんも弁護はします。ワイバーンに連れてこられた点については彼女は被害者です。
騎手のいなくなったワイバーンの帰巣本能が働いたようですが、グリン村としては責任を感じたようです。
ソラは見た目だけなら少女ですからね。心細くないよう親切にしようと接していたようです。
メッシュ「そうしたらいつの間にか調子に乗って」
飼育員「調子に乗ったというか、この村であの人に敵う人は誰一人いないということに気付きまして」
村としても彼女の実力を頼ろうとつい持て成してしまったそうですしね。
だからってワイバーンライダーをタクシー運転手の如く使い倒すのは流石にやり過ぎという気もしますが(笑)
自力で飛んでいかないところを見ると"フライト"は使えない。つまり10レベルにはなってなさそうですね。
ジークがもうすぐ10レベルですから、ソラもそれぐらい行っていても不思議はないけど、フェンサーに浮気気味だし。
ここでぞんざいズもその遺跡に向かおうとしますが、グリン村だけではワイバーンの数が足りないようです。
子育て中のワイバーンもいるそうだし。そもそも倍ぐらいレベルの違う敵が出てきてもおかしくない危険地帯です。
一応ヒポグリフの村にも協力を頼むつもりですが、ただ飛行速度が速いだけでどこまで高レベルな魔物に通用するか。
それに脅威は魔物だけじゃない。シフェナだってその遺跡を目指していましたしね。
ニゲラ「もしかすると、あのルーンフォークのお姉さんと、ソラさんが鉢合わせしちゃうんじゃあ……?」
エア「え、でも、そうだとしても、別にあの子とそのルンフォが突然剣を交えるようなことにはならないでしょうし……」
メッシュ「ここで最悪なのは」
ジーク「意気投合」
エア「それは、非常に最悪だ!」
イスミーは何とか抵抗しましたが、ソラの好奇心の強さからいって意外と仲良くなれるかもね。
この行動力といい、面白い事に引き寄せられる性分といい、ラクシアのエフェメラ・クルツになりつつありますね。
イスミー「訳のわからない、怪しい主人っぽい神の信者に勧誘されるかもしれませんぜ、姐さん!」
エア「それは一大事!あの子はわたしが後1レベル成長したら、問答無用でルーフェリア信者にするつもりなんだから!」
ジーク「それはそれで迷惑だけどな」
これは10レベル神聖魔法"レベレイション"ですね。信者に聖印を与えて祝福する魔法です。
この時信者が経験点を1000点払うと、その神様のプリースト技能が1レベル習得できてしまうのです。
流石に本人の同意なしでプリースト技能を覚えさせるのは無理でしょうけどね。抵抗「なし」の魔法だし。
★空からの珍客
そうして話しているとグリン村の青年がやってきて、ぞんざいズに客人が村に来ていると伝えます。
その人は若い女性で名前をアインベフというらしく、村の外れでぞんざいズを待っているとか。
どの道村には一度帰らないといけないので、そのアインベフと会ってみることにします。
イスミー「体育館の裏的感覚でやすか。そうだった場合、意趣返しのお礼参りで」
昔の番長漫画的な意味合いかどうかはともかく、不思議とアインベフは村に入ろうとしなかったとか。
イスミー「顔を見た瞬間、「ここで会ったが百年目ー!」とか
いわれねえといいなあと思いやす。おいらまだ、百も生きてねえんで」
メッシュ「というか、お互い無理ですよ。寿命短いんですから」
ルーンフォークもタビットも50年程度ですしね。異種族だからって人間より長命とは限らない。
アインベフは広場にたたずみ、その服装はひらひらしたレトロなものでした。
メッシュ「年恰好はどんなものですか?」
GM「うーん、そうですね。ロリっ子はNPCに多い気がするので……かといって、
おばさまにするとこの熟女好きが!とお叱りを受けるので……十七、八歳にしましょうか」
中年と獣とロリっ子ばかりいるイメージがありますしね。今では若い女性も皇族関係やアイシャがいますが。
アインベフ「私はアインベフという。実は私もお前たちのことをよく知らないのだが。
……というか、冒険者なら誰でも良かった」
ちょっと偉そうな態度だけど嫌味はなく、今までにないタイプの美人NPCって感じですね。
しかしぞんざいズは不信感を拭えません。アインベフの姿はあまりにも場違いなのです。
若い女性がヒラヒラ衣装で、それも何の傷もなくこの島の森を抜けてきたとは考え難いのです。
どう見ても旅をしてきたようには見えない編み上げのサンダル履きだし、一体何処からやってきたのか。
試しにイスミーがNPCの冒険者レベルを見抜こうとしますが。
イスミー「んー、ちと低い。18でやす」
GM「んとね、わからなかったです」
一同「はぁあ!?」
エア「その達成値でわからないってことは、何レベルよ、この女!」
NPCなら15レベルまでは見抜ける達成値ですからね。それはあくまでもNPCとしてのレベルは見抜けないというだけ。
NPCではなく魔物としての正体があるとし、《真偽判定》の後に改めて《魔物知識判定》で見抜くという処理です。
ジーク「わかった、お前、ドラゴンだろう!」
メッシュ「ジーク様ぁあ!」
ジーク「だって、ドレイクなんかも、人っぽくなるじゃないか」
アインベフ「おお、よくわかったな。それならば話が早い」
ニゲラ「そして、認めちゃってますー!」
実はこの姿は<ラミアの首飾り>をつけて、巨大な姿の上に若い女性の姿を被せているのです。
目に見えないだけでちゃんと体はそこにあるので、村にも入りたくても入れなかったというわけです。
アインベフ「というか、あんなものと一緒にするな」
そう言うと女性としての姿は動かないまま、目に見えない指がジークにデコピンを食らわせます。
これは下手に近付こうとすると、突然見えない壁にぶつかったかのように身体に当たるんでしょうね。
メッシュ「ジーク様、次はこいつに求婚なさるとよかろうです!強大な力が手に入りますよ!」
アインベフ「いや、オスはちょっと……」
ジーク「あっさり振られた。ミスティさま以来、あっさりあしらわれたのは久し振りだ」
アインベフ「そうじゃなくて。自分も一応オスなのでな」
メッシュ「なにぃ、今流行の、男の娘!さすがGM!そのあたりを押さえてくるとは!」
<ラミアの首飾り>は女性の姿になるものしかありませんからね。これしか用意できなかったのでしょう。
本題ですが、アインベフが冒険者に用があるのは彼のテリトリーにある遺跡に関係しています。
アインベフ「私は、基本的には遺跡に入って、魔剣や宝を手に入れようとする貪欲さを持つ、勇ましい者は好きだ」
ところが最近空を飛ぶ騎獣を揃えて、物量によって遺跡を攻略しようとする輩が増えてきて困っているのです。
自分が認めた冒険者以外を遺跡に潜らせるのは納得いかないし、人族の問題は人族が解決すべきだと考えています。
そんな時にアインベフはぞんざいズの活躍を知ったものですから、そういった遺跡荒らしの排除を依頼しにきたのです。
メッシュ「貴方意外と、面倒くさい方ですね」
アインベフ「うん」
何十年か前までは冒険者に魔剣のある遺跡案内をしていたそうですが、最近はスローライフらしい。
それに部位数が多いので狭い遺跡に潜り込まれると追いかけられないので人族の力が必要なのです。
アインベフ「待っていても、なかなか遺跡から出て来れなくて、つまんなかったし」
ニゲラ「うわ、さらっと怖いこと言いましたよぅ」
イスミー「そんな誰一人帰ってこないようなレベルの高いクエストを紹介しねえでくだせえよ」
アインベフ「いや、たまには帰ってきたぞ。というか、そういえばお前、折角ゲットした剣は持ってないのか」
という彼の視線はメッシュに注がれていますが、どうやらオリジナルのパジャリガーが来たようですね。
例の<神殺しの剣>こと白黒の魔剣もここで入手したものと思われます。何処まで縁があるんだか。
しかしこれは渡りに船。アインベフの背中に乗せてもらえば遺跡まで行けます。
ニゲラ「やった、ドラゴンの背中ー!」
ジーク「ソラが羨ましがるだろうなあ。マジドラゴンだもんな」
メッシュ「問題は、首飾りをしたままだと、とても間抜けな姿になることですな」
若い女性が空を飛び、その上に浮かぶように5人が飛ぶことになります。シースルーの飛行機ですね。
★竜たちの聖域
準備を整えたぞんざいズは正体を現したアインベフの背中に乗せてもらいました。
姿を見せると彼はレッサードラゴンでした。フォーセリアのレッサーより知性的なんですね。
レッサードラゴンは13レベルの幻獣です。頭部(コア)、胴体、翼×2の四部位を持ちます。
頭部は真語魔法/操霊魔法を10レベルで使用する《魔法適性》持ちで、練技もいくらか使えます。
また《火炎のブレス》はドラゴネットのそれに比べると威力も範囲も増しています。
胴体は《テイルスイープ》で5体までの敵を薙ぎ払い、《攻撃障害=不可・なし》で頭部を守ります。
翼はドラゴネットと同様の《渾身攻撃》を持ち、《飛翔》も当然持っています。Uではなかったりする。
ただしアインベフはこれよりちょっと成長していて、エルダーには届かない実力らしい。
ジーク「なあ、アインベフ。レッサードラゴンって13レベルで、お前はそれより強いんだよな?」
アインベフ「うむ、まあ普通のレッサーよりは些か成長しているな」
ジーク「報酬はなにもいらないから……フィルゲンを殺ってくれ」
アインベフ「だから、人族の抗争には、なるべく不介入だと言ってるだろうが」
まだ彼が伯爵になっていないのなら、レベル的には互角かちょっと上ですしね。
ところが「フェイダン博物誌」によると彼はグレータードラゴンになっていました。
"導く輝竜"と呼ばれ、年齢は2614歳(自称)。グレーターは2000歳が目安だから確かにそうですね。
実はグレーターは「バルバロステイルズ」で追加された魔物でして、このリプレイはそれより前の出版なんですね。
しかしただのグレーターでは伯爵になったフィルゲンの竜形態よりレベルは低い。名前を持つ魔物なら互角以上かな。
グレータードラゴンは18レベルの幻獣で、全体的にレッサーを強化したものになっています。
部位は頭部(コア)、胴体、翼×2、尻尾の五部位に増えています。当然《テイルスイープ》は尻尾に移動。
真語魔法/操霊魔法は15レベルに強化されているし、さり気なく《マルチアクション》も増えている。
《飛翔》は《飛翔U》に強化されているし、レッサーよりも自重に対する飛行能力が上がったのかな。
さて、彼の背中に乗って遺跡を目指していると、やがて奇妙な地形が目に入ってきます。
それは空に浮かんだ山です。これは竜の浮遊山と呼ばれ、裾野が大地に接していないのが特徴。
エルダーやエンシェントが住んでいるという山で、魔動機文明も手が出せなかった秘境です。
この地形は第二の剣イグニスによって切り取られたとも言われており、神紀文明時代の遺跡が多く残ります。
アインベフ「まあ、私などこの山では、末っ子同然だからな」
エルダーやエンシェントがいるならグレーターである彼が若者扱いされても仕方ありませんね。
彼自身年長者からは人族には関わらないよう言われているそうですが、人懐こくて茶目っ気もあるので聞かない。
ドラゴネットちゃんなどはまだ子供なので、山の下に住んでいるらしい。赤ん坊のインファントもそうでしょうね。
山には他の幻獣も住んではいますが、アインベフや彼の家族の言葉に従い人族や蛮族に干渉する事はまずないらしい。
そんな彼がテリトリーとしているのは草原で、山そのものが大きいので傾斜は殆ど感じない地形です。
ここには朽ちかけた白い石柱が残っていて、複数の神紀文明時代の遺跡があるようです。
アインベフ「じゃあ、後は頼んだぞ親愛なる冒険者たち。自分はちょっと昼寝……
じゃなかった、お前たちへの報酬に相応しい宝でも寝床で選定してくるから(ちゃっと敬礼)」
一同「ちょっと待てー!」
遺跡が複数あるというのは想定外でした。でもそれが本当なら凄い冒険スポットですよね、宝の山かも。
剣の迷宮などもあり、アインベフはそれらを把握しています。自分が認めた冒険者を枯れた遺跡に行かせないためにね。
しかしテーマパークの管理人のような竜ですね。竜が宝を溜め込むことはあっても、こうして管理するのは珍しいかも。
しかも無理そうならちゃんとキャンセルも効くという親切っぷり。
アインベフ「無理なら申し出てくれ、ちゃんと送っていくぞ」
彼自身手伝ってもいいとは思っているようですが、この巨体ではかえって邪魔になりかねませんから。
12レベル真語魔法の"ポリモルフ"で変身するという手もありますが、レッサーのデータでは使えないし。
★緑の海の遺跡探し
ここからはウィルダネスアドベンチャーです。複数のエリアに区切られた地形を探索していきます。
それぞれ神殿やら洞窟やら怪しいスポット目白押しで、小規模な遺跡が沢山あるらしい。
そこでスカウトやレンジャー持ちのメッシュ、エア、ニゲラが分散して《探索判定》をして回ります。
1回の《探索判定》は10分で、それが1エリアをカバーできます。この中のどれかに当たりの遺跡がある。
ここでメッシュがいきなり当たりを引いてしまいましたが、いきなり《危険感知判定》ですよ。
メッシュ「げ!それは……なんだか、気のせいかデジャ・ヴです」
幸いこれは成功して何者かが草波に潜んで接近する気配を感じたので、ダッシュでジークの所に逃げました。
メッシュ「ジークさまぁああ!!」
ジーク「どうした、メッシュ!何かあったか!」
メッシュ「強いて言えば、すぐに逃げたので何もありませんでした!」
エア「え?もしかして、何も調べずに帰ってきたの?このポンコツ執事は!」
ここぞとばかりにダメっ子扱いされるメッシュ。怖いものが出たから逃げてきた子供扱い(笑)
しかも3人以上で近付くと出てこない設定なので、全員で行くと肩身の狭い思いをするこの仕打ち。
当たりを引いたのに不憫なものですが、お陰で新しいワイバーンの足跡を発見できました。
現場に残された足跡を追跡すると、斜めに倒れた石柱の下に潜っていくのを確認。この中が当たりっぽいですね。
ニゲラ「ワンダーランドに通じているみたい、メルヘンですぅ」
エア「ファンタジーなのは間違いないけどね」
丁度ウサキもいることだし、ここは飛び込んでみるのも乙なものですね。
ただし石柱の下で足跡は途切れていて、指を入れると先が消えていくという恐怖。
メッシュ「うわぁああ、持っていかれたー!」
ジーク「返せよぅ!たった一人の従者なんだよー!」
ちゃんと感覚はあってひんやりした温度を感じます。どうやら別の空間に繋がっている様子。
メッシュ「ふふふ。では、今度はむこうを確認するために、首を入れてみますが……
入れながら、ばたっと倒れてみましょう」
GM「じゃあ、いきなり首のなくなったメッシュが、崩れ落ちました」
ジーク&イスミー「ぎゃー!」
ニゲラ「ああああっ、またメッシュさんがお亡くなりにー!」
さっき苛められたから、ささやかな仕返しです。その間に中を確認しますが、そこに青年がいました。
中から見ると急に中空に現れる生首ですからね。下手なアンデッドよりも怖いですね。
これは精神抵抗ものですよね。恐怖判定をして、場合によってはカードを引くところ(ゲームが違う)。
「ぎゃー!」と悲鳴をあげた彼は、ニヤリと笑うメッシュに腰を抜かして逃げようとしました。
メッシュ「では、くねくねと腕を使わずに中へと蛇のように這いながら侵入」
イスミー「メッシュの旦那ー!と叫びつつ取りすがろうとして……顔だけ、中に」
GM「生首二つ目。青年気絶」
エア「ちょっと、五人で並んで首だけ出してEXILEってみるのもいいかと思ったけど……」
ニゲラ「普通に考えてキモいですぅ」
ジーク達も中に入ってみると、倒れたのはグリン村の青年でした。ソラを乗せてきた人ですね。
内部は淡い光沢のあるつるんとした謎の素材でできていて、ほんのり明るい。異星人の宇宙船の中みたい。
青年には"アウェイクン"をかけて起こしてあげます。
ニゲラ「この人は、貴方がここに連れてきたソラさんのお姉さんですよー」
青年「ぎゃー!強制改宗だけは、勘弁してくださいー!」
一同(爆笑)
ニゲラ「どんなことを吹き込まれたんでしょうねえ」
エア「そうね。実に興味深いわ。一言一句、漏らさずにわたしの目を見て説明してちょうだい……」
彼の名前はカラントといいまして、最初ソラにこの山に案内させられた時は追い払われると高を括っていました。
ところがアインベフが留守だったので難なく到着してしまい、ソラがバイクに乗った奇妙な耳の人物を目撃します。
それはこの遺跡へと入っていき、好奇心に駆られた彼女はそれを追いかけて遺跡に入ってしまったのです。
尻込みしたカラント君はソラに置いてけぼりをくらい、帰りの足を確保するためにワイバーンも持っていかれたのです。
ちゃんと迎えに来て、その時にワイバーンを返すつもりだったようですが。
カラント「えっとえっと……あと、ソラ様のお姉さんという人は、まだ若い女神ルーフェリアの変態的信者で、
ことあるごとに人に改宗を迫り、ルーさまーリアさまーとちみっこい女の子を溺愛していて、
人に働け働けというわりに、自分は結構呑気に過ごしているとか聞いていますが……」
メッシュ「実に妹らしく的確な観察眼ですな」
エア「ふーん、そう。で、あなたは実際のわたしを見ても、そう思うのですか?答えなさい」
カラント「……怖い人らしいのはわかりました」
エア「わかればよろしい」
ニゲラ「ええっ、納得したぁ!」
しかしやはりシフェナはここに来ていて、アインベフが排除を頼んでいた冒険者っぽいですね。
最悪彼女と戦闘になるわけですが、ソラがどう振舞うかはある意味それより怖かったりして。
★数万年前の謎遺跡
神紀文明シュネルア時代は人族と蛮族に分かれる前の"小さき人々"が神様と共存していた頃の文明です。
質素な作りの巨大な建造物が多く、神器と呼ばれる強大な力を持ったマジックアイテムが存在した時代です。
魔法が体系立てられる前の時代の遺跡なので、今まで潜ってきた遺跡とは違う神秘的な構造が想定されます。
今回ぞんざいズが挑戦したのは魔物などは出ないものの、不思議な法則に支配された遺跡でした。
通路自体は一本道の先が二股に分かれた単純な構造でしたが、そこで行き止まりになっています。
そこには赤い宝珠と青い宝珠が置かれていて、青い宝珠に触ると緑の宝珠か紫の宝珠に瞬間移動。
同フロアにあったピンクの宝珠に触ると赤い宝珠か白い宝珠の前に瞬間移動してしまいます。
他にもオレンジの宝珠やら黄色い宝珠やらあって、一見法則が掴めない謎のダンジョンとなっていました。
しかし意外と鋭いニゲラがアッサリと法則を看破。
ニゲラ「原色の色の宝珠は、その色を混ぜた色の宝珠の前に。
で、中間色の場合は、その色を混ぜて作ったもとの原色の色の前にワープするんですー!」
すると赤い宝珠に触っていたらオレンジか紫かピンクの前に出るだろうと推測できますね。
今回は他にも複数の遺跡を回る予定だったので、1つ1つの遺跡の仕掛けは比較的簡単でした。
法則がわかっても何処に移動するかはある程度ランダムなので何度も試すしかありません。
そうしていると透明の宝珠を発見します。原色でも中間色でもない宝珠は遺跡の核心へのルートを想像させます。
ぞんざいズは気を引き締めて装備を点検し、全員でペタッと宝珠に触って瞬間移動するのでした。
★最後の部屋と、なつかしの後ろ姿
瞬間移動した先は巨大な神殿のような造りの部屋です。左右には荘厳な柱が並び、奥の祭壇まで続きます。
その前には初見の魔物の姿がありましたが、全員《魔物知識判定》に失敗して珍しく正体不明となります。
プレイヤー的にも謎の敵なので不安そうなのが新鮮。
ジーク「うわぁあ……まずい、久し振りに、正体不明と戦うぞ」
ニゲラ「な、何でしょう、コレぇ……何してくるのかなぁ」
本当はケイドロスという魔神であり、名前を魔持つ魔物"穢れた番犬"フォズリトスというそうです。
「アルケミスト・ワークス」にはこいつと同族の名前を持つ魔物"忠実な駄犬"ディボルクスのデータがあります。
フォーセリアでは未確認の魔神ですね。ラクシアになってから新しい魔神が沢山増えて嬉しい限りです。
フォズリトスは11レベルの魔神で、狼の身体に鷲の翼を持つ全長8mほどの姿をしています。
魔神でありながら主人と認めた者には決して逆らわず、実直に命令をこなす珍しい性格をしています。
頭部(コア)、胴体、翼×2の四部位です。全身が《炎無効》かつ《精神効果無効》で練技も使えます。
頭部は真語魔法10レベルと範囲攻撃の《炎のブレス》を使い、《魔法耐性》で魔法ダメージを5点減少させます。
胴体は《全力攻撃U》すると打撃点+12の回避−2となり、翼は《飛翔》を持っています。
ジーク「しかたがないから覚えたばかりのドラゴン語で話しかけてみよう。
何しろ、出てきたのがレッサードラゴンだから。相手から共通語を喋ってくれて出番がなかったんだ」
イスミー「外国の人を見かけて、頑張って英語で話しかけたら、すごく流暢に日本語で返されたようなもんでしょうなあ」
しかし相手は戦いたくてウズウズしているのか、「ドラゴン語ワカマセーン」とばかりにタンを吐かれます。
この時祭壇の後ろに何者かの姿が見えたのを気にしつつ、先制を取って戦闘に移ります。この時珍しく指輪は壊さなかった。
1ラウンド目
エアが"フィールド・プロテクションU"で1ゾロを振り、幸先の悪い開戦となりました。
イスミーは"特殊攻撃指令"で「シフェナ」の《グレネードランチャー》を発射しますが、炎属性なのでノーダメージ。
イスミーはMP15点を無駄遣いした事にショックを覚えつつ、メッシュには"クリエイトウェポン"で武器を渡します。
ニゲラは練技三点セットで自分を強化してパラミスを翼に入れつつ、<チェイン&シックル>で絡めて飛行できないようにします。
そしてメッシュは《牙折り》を入れつつ、片翼を魔法ダメージ4連発で落とします。ちなみに内1発はダメージ1ゾロ。
GM「……きゅーん、きゅーん……」
ニゲラ「わんこだからって、伏せのポーズをしても……う、ちょっと可愛いかもだけど……」
ジークは《足さばき》で接近して頭を殴って回避されますが、《マルチアクション》でメッシュに"バーチャルタフネス"。
これは6レベルの妖精魔法で、HPの最大値と現在値に魔力点を追加します。つまり8点回復しつつ最大値も増える。
フォズリトスは何故か《全力攻撃》でニゲラを狙いますが、ニゲラは〔運命変転〕で回避しました。
ブレスは後衛のエアとイスミーと「シフェナ」をこんがり焼き、残った翼はメッシュを殴りました。
2ラウンド目
エアはダメージを受けた3人を回復し、ニゲラは頭にパラミスを入れつつ<チェイン&シックル>で絡めます。
これで命中や魔法の行使、更にはブレスにまで−2のペナルティが入るという、素敵な絡みっぷりでした。
メッシュは2回殴って36点素通しです。ジークはメイスで頭を殴りつつ、イスミーに《ウォータースクリーン》。
イスミーはタゲサと"バースト・ショット"で頭部を射撃し、これを倒してしまいます。僅か1ラウンド半の攻防でした。
ここでぞんざいズは戦利品として3000ガメルの<黒曜の王冠>と1万ガメルの<白金の王冠>をゲット。
それぞれ金のSランクとSSランクになるので、ニゲラの"マナダウン"や"クリティカルレイ"に使えますね。
ニゲラ「初めてのSSカードの材料ですぅ。ニゲラもらっちゃっていいんですかぁ?」
ジーク「いいよ。ニゲラのカードは毎回役に立ってもらってるしな」
ニゲラ「じゃあ、三千ガメルのほうは、お金に換えてくださいねぇ」
あと300ガメルの<黒炎の翼>も手に入ったので、こちらは赤のAランクカードとして使えます。
すると"イニシアティブブースト"、"ヴォーパルウェポン"、"クラッシュファング"に使えますね。
残る"パラライズミスト"は緑のカードが必要になります。それはこいつの戦利品からは手に入りません。
という風に呑気に戦利品を剥いでいると、祭壇の後ろにいる人に逃げる隙を与えてしまいます。
エア「ソラ!」
ソラ「全然平気だったみたいなの。行こう行こうー」
シフェナ「そうね。じゃあ、いきましょう。ここには目当てのものはなかったみたいだい」
エア「それは……我が神ルーフェリア様を愚弄し蔑んだルーンフォーク!」
ジーク「ほらやっぱり意気投合してた!」
慌ててぞんざいズが2人を追いかけ、テレポーターらしきサークルに入ると外の草原に出ました。
そこには前の話で逃亡した魔術師がいて、ソラがシフェナのスカイバイクに"タンデム"していました。
ソラ「やほー。みんな。何でここにいるの?」
エア「こらぁあ!帰ってきなさい妹!ここで会ったが四十年目!
知らない人についていっちゃだめって言ってるでしょう!家を潰した反省文を提出するまで謹慎よ!」
ソラ「やーん、お姉ちゃんの意地悪!そんなこというと、ほとぼり冷めるまで、帰らないの」
エア「あほかー!そいつは悪よ!ルーフェリア様の敵なのよー!」
どさくさに紛れて"フライト"で逃げようとした魔術師は、イスミーの"ワイヤーアンカー"で確保します。
イスミー「何が悲しゅうて、野郎の魔術師を取り押さえてるんでやしょう……
血涙を流しながら、嫁ー!嫁ー!と呼びかけてやす」
ニゲラ「そのルーンフォークの人が、何をしようとしているのか、知ってるんですかぁ!」
ソラ「ちょっとしか知らないけど、とりあえず気があったから、ついて行ってみるの!みんな元気でねー!」
それが幽霊船や神のことなら問題ですが、もしシフェナに別の目的があったとしたら情状酌量の余地はある。
エア「ソラ!姉を思う気持ちが、全然ないなら止まりなさい!」
GM[じゃあ、一瞬、スカイバイクを止めた後……ダッシュ]
ジーク「とんちか!ソラ!お前がいなくなってからメッシュが死んだんだぞ!」
ソラ「お悔やみを申し上げるのー!」
今は元気そうなのでそれでは止まりません。もしいなかったら流石に躊躇ったと思いたい。
結局シフェナとソラには逃げられ、魔術師のみ確保して情報を聞きだすことにします。
エア「……どんなお仕置きをするべきか。逃げられると思うなよ、ソーラリィム(にたぁり)」
一同「怖ッ!!」
ソラの視点では追跡者から逃亡するサスペンスになりつつありますよね。
しかしいくらソラでもアンデッド絡みだったらここまで意気投合しないと思いたい。
彼女が納得してしまう何らかの事情がシフェナにあったとしたら、それが次の目的地に関わってきますね。
★成長申告と竜の島での後始末(前半)
今回の能力値の成長は以下の通り。
ジーク:生命力19→20
エア:生命力25→26
メッシュ:精神力10→11
ニゲラ:精神力18→19
イスミー:生命力9→10
見事に生命力か精神力ばかり伸びていますね。1点単位で意味があるから優先させやすいのかな。
今回の成長でついにジークがファイター9→10とし、冒険者レベルが2桁になりました!
フォーセリアの頃はリプレイで10レベルになるなんて考えられなかったものですね。
まぁこっちではまだ中堅から大御所への過渡期って感じですかね。フォーセリアならイリーナぐらいかな。
これでHPは82点になりました。今後の成長を考えると3桁に届くのも夢では無さそうなのが凄いですね。
他には成長はありません。メッシュはグラップラーとスカウトどちらを伸ばすか悩んでいるようですが。
メッシュ「《影走り》を目指すのか……しかし、グラップラーを伸ばす方が安い。
最近、先制判定が綱渡りですからね。このレベルになると、先手を取られるのは致命的です」
GM「でも、アルケミストが入りましたし、先制判定が底上げしやすくなりましたから」
エア「そうそう。先制判定は取れないものだと思ってるから平気よ」
メッシュ「く……私がどれだけパーティの安全を護ってきたことか……全然さっぱり覚えてないのですか」
現在のメッシュの先制力は10です。指輪や賦術を考慮すれば結構な達成値を期待できるんですけどね。
「カルディアグレイス」で追加されたウォーリーダー技能でも《先制判定》は可能ですが、この時にはまだないし。
ちなみに《影走り》とはスカウト9レベルで自動習得する戦闘特技で、乱戦エリアで足止めされなくなる。
よって離脱する時にはペナルティはないし、移動妨害を受けることもなく、戦場を自由自在に動ける便利なもの。
★成長申告と竜の島での後始末(後半)
シフェナとソラを逃がしてしまったぞんざいズでしたが、敵の魔術師を捕虜にできました。
イスミー「お前はシフェナのなんなんでやすかーっ」
メッシュ「愛人13号だそうです」
イスミー「むきーっ!」
彼はカイン・ガラの魔術師で、研究者のようです。シフェナとは雇われていただけの関係です。
ソーサラー技能は高いけどセージ技能はさっぱりなので、エイデルに渡って勉強しつつ資金稼ぎをしてたらしい。
イスミー「キリキリ吐くでやすよ!顔にフラッシュライト当ててやる」
魔術師「眩しいです、刑事さん。勘弁しておくんなせえ」
彼がアッサリ吐いたおかげでシフェナの目的が漠然と見えてきました。それはある人物から魔剣の効果を取り除くこと。
その魔剣はこのあたりの遺跡で発見されたので対抗手段があることを期待して、騎獣を揃えて侵入を試みたのです。
ところがぞんざいズの活躍で計画は失敗し、彼とシフェナだけで潜入したところでソラと出会って意気投合したとか。
ここで気になるのはシフェナは「穢れなんてあってもいいじゃない」という主張を繰り返していたこと。
エア「穢れの受容って……それは、完全に蛮族の主張じゃないのよ」
魔術師「確かにそうだが、シフェナさんはその穢れというものがよくわからないルーンフォークだし」
イスミー「ルーンフォークは、穢れが全くたまりやせんからなあ」
メッシュ「死んでも、むしろ綺麗になりますからね」
ジーク「記憶がな」
メッシュ「……ブレインがウォッシュされました(しくしく)」
ソラと意気投合したのもそういった考えがあればこそです。ナイトメアにとっては自分を肯定してくれる主張ですしね。
流石のシフェナもアンデッド化する程穢れがたまるのを受容していたわけではないようですけどね。
ただ生き返って穢れがついてもアンデッド化しないならいいじゃないかと思っていたらしい。
このことから大切な人が穢れる経験でもあるのではないかと、意外と鋭いニゲラは主張します。
そうなるとイスミーの元冒険仲間あたりが怪しくなりますね。シフェナが今生きているなら、まさか仲間達も……。
イスミー「もしかしたら昔の冒険で死んだ師匠や仲間を生き返らせてるのかも知れやせん!」
魔術師「あー。だからかー「穢れなんて、自分のせいじゃないんだから、私は悪いことだとは思わない。
けれど、そのせいで排斥されるなら何とかしたい」なんて言ってたなあ」
穢れを取り除く方法と、謎の魔剣の効力。色々繋がりそうで確信が持てない状態ですね。
ただ、アンデッドは否定しつつゴーストシップと関係があるという矛盾もある。
ジーク「あいつ、本当にアンデッド嫌いなのか?縁はないのか?」
ニゲラ「鎖に絡めて揺さぶってみますー」
魔術師「あ、それは関係あると思う……俺、その部分は、ヤバイなーと思ってたし。
この島でだけの雇われ契約だったから、とりあえず稼いであとは知らん振りするつもりで……」
イスミー「チョーップ!」
魔術師「あぎゃーっ!」
ではシフェナが何処に向かったかというと、リオスの拠点に戻ると言っていたそうです。
ジークの故郷で今まで寄りそうで結局寄らず終いだった国ですね。とうとうジークの実家を見れるのか。
エア「貴方の始末のことは、後ほど考えましょう。貴方のやるべきことはただ一つ!"フライト"を、五倍掛けするのです」
魔術師「無理っすよ!」
エア「何よ!もうちょっと熱くなりなさいよ!いけるいける!」
"フライト"の持続時間は1時間。時速50kmなので竜の浮遊山から出るのならともかく、海を渡るのは無茶ですね。
仮に《魔法拡大/時間》で延長してもキツそうですね。最寄のカイン・ガラでも船で2日とかかかってますし。
そこでアインベフがやってきます。最初に見せた女性の姿です。気に入っているのか?
アインベフ「おお、早かったな。お前たち」
ジーク「よう、ドラゴン。こいつこいつ、遺跡荒らしの一味の一人。ただ仲間は逃がした」
アインベフ「それはご苦労だった」
そうして見えない足で軽く踏みつけました。後ほどドラゴネットを預けている村に引き渡す予定です。
アインベフ「次の機会には裏工作せず、堂々と正面からくるがいい」
でも自力で辿り着いたことは評価しているのが彼らしいというか、妙に人がいいんだから。
これは最初から正攻法で遺跡に挑戦していたらぞんざいズの横槍もなく、普通に成功していたかもしれない。
アインベフ「そうそう。お前たちへの報酬の件だが」
エア「竜殺しの剣とか欲しいです」
アインベフ「それはさすがに、あってもやらん」
エア「でも、あったらムーテスが倒せるじゃない。ソラがあっちにいったなら、ムーテスが裏切らないように……」
ジーク「エア、案外怖いことを考えるな」
リルドラケンは竜が剣を持てるように進化した種族ですから、仮にそういう魔剣があったらリルドラケンにも効きます。
この世界の神話では、始まりの剣は剣を持てる種族を欲して生命を生み出したことになってるんですよね。
竜は人間よりも古い種族ですが、一部の竜も剣を持とうと欲して剣の加護でリルドラケンの姿になったという伝承です。
フォーセリアでは魔力から遠ざかる方向に進化・退化していたけど、ラクシアでは剣こそが進化の象徴なんでしょうか。
肝心の報酬は8万ガメル分の宝石です。お土産に大粒の<魔晶石>や<消魔の守護石>までくれましたよ。
更には<空飛ぶほうき>まで貰っちゃいました。これは文字通りの魔力を持つ2万5000ガメルの品です。
移動力20で全力移動として飛行し、1日に飛べる時間は1時間までとなっています。1人乗りですが荷物は200kgまで可能。
ちょっとしたお使いのつもりが10万ガメル以上も貰っちゃいましたね。
ジーク「これで、リオスまで背中に乗せてってくれるなんて、申し訳ないぐらいだ」
アインベフ「ああ。かまわんぞ」
イスミー「ジークの兄貴、さり気なくとも……って、あっさり承諾された!」
アインベフ「実際、仕事が終わったら、大地に降りる手段がお前たちにはないだろう。
もともと希望の場所まで乗せていくつもりだったからな。多少の遠出くらいはかまわない。
宝石を換金できる場所までは、連れて行かねばと思っていたしな」
ジーク「冗談で言ったのに……棚からぼた餅どころか、満漢全席って感じだぞ。いいやつだなあ」
更にアインベフの報酬はまだあります。彼はジークを掴んで振ったり逆さまにして、筋力を確かめます。
アインベフ「お前たち、見たところ遺跡から特に宝を持ち出したりしなかったようだ。
折角私が立ち入ることを許可した遺跡をクリアしながらも、
手ぶらで返すなど、私がケチのように思えて我慢ならん」
エア「わたしに、妹以外の宝など存在しない!」
アインベフ「それはそれで、寂しい人生だぞ、お前。
だから。そのうち、お前に扱えそうな魔剣を、何か見繕って届けてやろう」
どんだけ気前がいいんだアインベフ。こっちは2ラウンドにも満たない戦闘しかしていないのに。
この調子で宝を贈呈していったらその内ストックがなくなるんじゃないかと心配になりますね。
そもそも彼はどうやって宝を集めているんだろう。神紀文明以外のアイテムも持ってるようだけど。
メッシュ「素晴らしい、魔神殺しあたりもいいですね。ジーク様!」
イスミー「神殺しはないんすか?」
アインベフ「昔はあったはずだけどなあ」
ニゲラ「そんな大事なものの行方が、はずとか、曖昧でいいんですかぁ!」
例のパジャリガーが手に入れた魔剣ですね。ホーリィにあげてそれっきりで、どんな魔力があるのか謎のままでしたね。
こうしてぞんざいズはアインベフの背中に乗せられて"集いの国"リオスを目指しました。
カラントはグリン村に返し、カイン・ガラには迎えの船を断る連絡を入れておきました。
アインベフ「じゃあ、海にでも落とすから上手く着水するのだぞ」
メッシュ「ちょっと待った!落とすのではなく、降ろしてください!街に!」
アインベフ「いや、私は大陸の人里にあまり近付くと、大騒ぎになるから」
ニゲラ「陸の、離れた場所に降ろしてくれればいいじゃないですかーっ」
アインベフ「あ。そっか」
なんてことはない。結局彼もまたぞんざいな竜だったというオチです。
★集いの国にて集まる人々
リオスはコラーロ河流域に栄える商業国家で、大破局時に大アイヤール帝国から独立した歴史を持ちます。
首都ラスベートは海沿いに位置する大きな港を持つ街で、他の地方と盛んに交流する窓口でもあります。
河口付近の中州には大きなマーケットがあります。政治は王政ではなく議会制で、飛行船も複数所有しています。
陸路や海路が集中することから「十本足の蜘蛛の街」とも呼ばれます。フォーセリアのアランの街みたいですね。
ジークとメッシュにとっては地元ですね。
ジーク「まさか、ゴーストシップが来たー!って騒ぎになってたりしないだろうな」
メッシュ「そして、貿易を始める人たち」
ジーク「「あ、漕ぎ手用に死体いかがっすかー?」とか声が聞こえないか?」
エア「葬れよ!」
そう思われるぐらいに商魂逞しい国柄ということですね。冗談抜きで操霊術師用の死体とか手に入る闇取引とかありそう。
ゴーストシップも高レベルで操霊魔法が使えますからね。アンデッド化すれば自分で乗組員を調達できるのです。
エア「しかし、リオスの首都を上空から見て初めて、ルーフェリアというのは田舎なのだと実感しました」
メッシュ「一つ訂正です。ルーフェリアは田舎ではありません」
エア「え?そう?(嬉しそうだ)」
メッシュ「あの国は、遺跡なのです。フェイダン地方の誰もが滅んだと思っていた中に、
突然現れた謎の宗教国家!人がいなくて当たり前でしょう!」
エア「神の裁きを受けさせるぞポンコツ執事」
長年引き篭もっていたから仕方ない。カイン・ガラとは別の意味で引き篭もり国家ですから。
文化的にはリオスが最先端。アイヤールは軍事国家なので無骨だし、カイン・ガラは学研都市だし。
ジーク「まあ、セルフ強制執行は、ちょっと待ってやってくれ。街はどんな感じだ?俺の実家は残ってるか?」
メッシュ「何を仰っているのですかジーク様。二度と戻る家はないと思い切るために、
家に火を放って旅立ってきたではありませんか」
ジーク「残念ながら俺はアルケミストじゃない。エア、強制執行GO」
メッシュ「うおー!ルー様のちっこい拳が乱打してくる!」
その旅立ちは私には某自由騎士の方を思い出させます。OVAの方にしかない描写だけど。
そういえばメッシュって蘇った後にもルーちゃんと会ってましたっけ。直接会話するシーンはなかったけど。
実際街の噂を拾ってみると、幽霊船の噂はあるものの注意を促すだけで大事にはなっていません。
夜のコラーロ河を不気味な船が通っていったという都市伝説があって、それとの関連が囁かれるぐらい。
カイン・ガラでもそうでしたけど、陸には怪談レベルの影響しか及ぼしていないんですよね。さまよえるオランダ船かと。
この街についたぞんざいズはデーニッツ家に向かいます。何しろシフェナはその辺で目撃されてますからね。
デーニッツ家は市内の高級住宅街にあって、敷地面積は結構あるお屋敷です。ちなみに店と家は別です。
ジーク「うちのじいちゃんはリオスの議会の議員だったからな」
メッシュ「そして、ひいじいちゃんは議長でした。曽祖父議長、祖父議員、父は冒険者上がりの商会長、
そして本人が冒険者とデーニッツ家はどんどん零落しているのです!」
ジーク「それを弟が頑張って支えてるんだよ」
ニゲラ「……ジークさん、家帰ったほうがいいと思うー」
とはいえ実際行ってみると本当に立派なお屋敷です。前庭があって、噴水があって、白い犬とか走ってたり。
商人の家に生まれたとは聞いていましたが、商会長の長男となると結構いいところのお坊ちゃんだったんですね。
ジーク「おーい!アイシャいるかー!」
ジョン「あーっ、ジークさんだーっ」
ジーク「懐かしいなあ。元気だったか?」
ジョン「はーい、元気です。ごはん美味しいし、毛並みぴかぴかですー」
エア「確かに、毛並みが全然違う……毛並みから煙が出るほど撫で回そうとします」
ジョン「やーん、やーん」
皆さんは覚えてらっしゃいますか?以前《陰影領》ゴラで奴隷として買われていったコボルドのジョンです。
あれからベルに買われてデーニッツ家の使用人として暮らしていたのです。いい人に買われて良かったですね。
ジーク「よう、怖いおばちゃんはいるか?」
ジョン「はーい、いまーす。こわいおばちゃーん!」
メッシュ「おい、やめろ!眉間を射抜かれるぞ!」
すると窓のあたりがキラリと光り、足元にチュインと跳弾が!
ニゲラ「ひぃいいっ!ジークさん、すごく怖い場所でお育ちですーっ」
エア「アイシャ13、次は当ててくるかもよ」
この分だとぞんざいズに合わせてアイシャのレベルも上がっていそうですね。
こっちにもマギシューはいるけど、あんまりスナイパーってイメージはない。
やがてメイド姿のアイシャが姿を見せます。主君の兄君なので恭しく笑顔で、しかし目は笑っていない。
アイシャ「まあ、お帰りなさいませ。ジーク様。どうぞどうぞ、中に。お待ちしておりました」
ジーク「……え?ええ?ちょ、ちょっと待って。俺、待たれるような覚えはないよな?」
メッシュ「ジーク様、貴方は世界に待たれているのです」
ジーク「訳わからんわ」
今回のアイシャは少し変でした。油断ならない雰囲気はいつものことですが、何故かホッとした雰囲気もある。
しかもぞんざいズを敷地に入れると素早く門を閉ざし、逃がすまいとするかのようでした。
更にはニゲラの顔を見ると「あれ?」という顔をして、こめかみに血管が浮き上がったり。
アイシャ「……まあ。ご一緒でいらしたんですか。それでしたら、話が早いですわね」
ニゲラ「へ?ええ?何のことでしょうかぁ!?」
ジーク「ニゲラ、何かやったのは俺じゃなくて、お前だったのか!お前も観念したほうがいいぞ!」
ニゲラ「えええーっ!ニゲラ何も知りませんよぉー!」
アイシャ「あら、お二人揃って観念していただけるのでしたら、話が早いですわねぇ」
そうして上機嫌になるアイシャでした。面識のないはずのニゲラが関わっているとは完全に想定外です。
ニゲラ「ニゲラ、何もしてませんっ!してませんよぅ!
ニゲラ瓜二つのお父さんが何かしたかもしれませんけどぉ……っ!」
一同「どんな父だ!」
娘は父親に似るともいいますけど、瓜二つというレベルで似るのは珍しいですね。それはお母さんの枠です。
ザルツ地方から来たと思われるニゲラ親子だからこの地方には知人とかいないと思っていたけど。
まさかジークの実家と関わりがあるなんて、世間は狭いですね。そして物凄い偶然ですね(笑)
★デーニッツ家の事情
久し振りに実家に帰ってきたジークは居間へと通されます。実家なのにちょっとお客様っぽい対応なのはなんだかな。
でもメッシュを見た時のアイシャの態度は相変わらずです。「あら、いたの」といった顔をするのはある意味身内だから。
メッシュ「自信満々で通り過ぎます。私など、寝て起きたらこれほどの力をつけたのですからね、
このような真似事、アイシャ風情にはできますまい」
ジーク「ごめんな、アイシャ。メッシュちょっと、色々頓珍漢だと思うけど、勘弁してやってくれ」
アイシャ「頓珍漢は昔からですので、気になりませんわ、ジーク様。……というか、死んだんだ」
イスミー「真似事はできねえというか、普通はしねえほうがよろしいですな」
お陰で《陰影領》で会った時のこともすっかり忘れています。中指立てたりしつつ別れたこともすっかり。
長い付き合いだから面識まで忘れたわけではないとはいえ、一方的に忘れられるというのは複雑なものです。
居間にはベル君もやってきます。
ベル「やあ、兄さん。お帰りなさい」
ジーク「……お、おう。帰ってきたわけじゃなくて、ちょっと寄ったんだけどな。
この家は、ベルがしっかりやってくれているから、全然問題なさそうだよな!これからも頼むぞ、ベル!」
ベル「僕もそのつもりでしたけれど。それ以前の話が出てきてしまったんです」
ジーク「え、ど、どの話だ?あれか?それとも……これか?」
メッシュ「いえいえ、ジーク様、例の話かもしれません」←何やったんだ
相変わらず弟を相手にした時のジークは落ち着きがない。執事についてはかなりぞんざいなのにね。
お互い複雑な事情があって、聞きたい事も色々ある。まずは情報交換からです。
ベル「……情報は商品です。お互いに一つずつ、やりとりをしましょう」
ジーク「……お前、しっかりとしてきたなあ。小ずるくなってきたぞ」
そこでまずこちらはパジャリガー・セカンドの件を尋ねます。これを聞きに寄ったんだし。
するとアイシャが凄く嫌そうな顔をしました。メッシュと同じ顔をして勘違いプロポーズとかウザかったでしょうに。
アイシャ「アレについても、とても此方としては申し上げたいことがございます。そりゃもう、たくさんございますが!」
経緯は以前確認した通りです。パジャリガーがウザかったので、偶然通りかかった女性に押し付けたのです。
それについてはアイシャとしても申し訳ないことをしたと思っていますよ。シフェナにね。
よってパジャリガーをシフェナに押し付けたこと自体は本当に偶然でした。特に何かの陰謀とかではない。
ただそのシフェナですが、アイシャ自身以前から街で見かけていたというのです。
港の辺りに住んでいるらしく、ルーンフォーク同士の主人自慢ということで世間話をしたこともあったとか。
イスミー「見かけるときは、一人でやしたか?」
アイシャ「いえ、そうでもないですね。背の高い男性と一緒だったところを見たことがあります。
それが仕える主人かと思いましたので、多少鬱陶しい……
いえ、暑苦しいものを押し付けても平気かと思ったのですが」
メッシュ「ほほう、男」
イスミー「うおおぉおおう(悶絶)……これが、ハートブレイクショット……」
ジーク「すげーな。土地ごとに同伴する男を替えてるぞ」
その男はアレンというそうです。これも以前の情報の通りですね。ただ仕えてから日が浅い様子だったとか。
シフェナを見かけた港については後で地図をくれるそうです。質問だけしてトンズラとかは許さない(笑)
★オリエンタリス家の事情
続いてベル君の方の話です。アイシャが一枚の吊書をジークに渡します。その中にはニゲラの絵姿がありました。
アイシャ「縁談のお話が来ております。縁談は、ジーク様にです」
ジーク「はぁああっ!?」
ニゲラ「えええ!?」
メッシュ「実は、貴方の実の名前はヨメ・ニゲタ」
ニゲラ「ちがうー!!っていうか、何でー!この絵は誕生日の時に描いてもらったものですよぅ!」
数日前にこの屋敷に一人の男性が尋ねてきました。彼の名はムーティス・オリエンタリスといいました。
どこぞのリルトカゲンに似た名前ですが、正真正銘ニゲラのお父さんです。実は彼はジークの父親と友達だったのです。
ジークの父親は一時は勘当同然で冒険者をしていたのですが、やがて引退後の商売が軌道に乗って勘当は解けたらしい。
そして錬金術師としてお金が必要なムーティス氏に大金を援助していたのです。
「まあ、いいからいいから。君がカード使いとして大成したら、その恩を返してくれ」
アルケミスト技能は確かに便利だけど、それ単体で大成するのは難しい気がする。
何しろお金がかかるんで、赤字になる事だって多いだろうし。他の技能と組み合わせるのが普通ですよね。
ゲーム的な話をすると、賦術で相手の抵抗を破ろうとすると高レベルかつ高い知力が必要です。
でもそんなことをするぐらいなら素直に魔法を覚えて、賦術は補助とした方が便利なんですよね。
抵抗前提あるいは味方にかけるだけなら、必要な賦術だけ覚えてレベルは低いままでいいし。
何より寝れば回復するMPを使う魔法より、確実にお金を削る賦術はコストパフォーマンスがよくない。
それで義理堅いムーティス氏はこう考えたそうです。
「友人は、自分のために身銭を削って協力してくれた。ならば、自分も大切なものを友人に捧げるべきだ!」
かくして自分にとって一番大切なもの、すなわち娘のニゲラを嫁に出そうと考えたわけです。
一同「……(沈黙)」
ジーク「……お前、かわいそうなヤツだな」
ニゲラ「こ、言葉もないですぅ……俯いて、ふるふるしてます(拳を握って)」
エア「つまり、娘を抵当に入れたと。そのグーで親父を殴ってもいいと思うわ」
挙句にこの屋敷に来たときは「いやー。途中で娘とはぐれてしまってねえ」とかほざいていたとか。
捜し出してそのまま嫁にしていいとか、これでデーニッツとの友情が果たせるとか、満足そうだったとか。
エア「ていうか、それ「は」はいらないでしょう」
イスミー「ぐれた、で充分でやすな普通は」
ニゲラ「……お父さん……おねがい、これ以上恥をかかせないでぇ!
はぐれたと思ったら、こんなところに迷惑をかけて……っていうか、お父さんの存在が迷惑……(さめざめ)」
これってベルもアイシャも望まぬ結婚話を他人にスライドさせてるという意味では同じなんですよね。
ベル「ていうか、何でタイミングよく帰ってくるのかな。
こんなタイミングに、しかも一緒に帰ってきたりしたら、身を固める覚悟ができてるも同然だろ!
この際、結婚して落ち着けばいいじゃないか!」
ニゲラ「ふぇええ〜〜ごめんなさい、ごめんなさいっ、お父さんはどこですかぁ?ご迷惑をかけてごめんなさぁーい!(平身低頭)」
ムーティス氏はこのお屋敷に世話になっているのですが、現在用事があって外出中です。
デーニッツ家としては大損はしているものの、先代の約束なのでチャラでもいいし、少しでもお金を返してくれればいいんですが。
まぁこうしてジークに話した以上、ベル君は清々しくしらばっくれる気満々ですがね。
ベル「あ、誰が義姉さんになるにしても、その前にちゃんとうちに挨拶に来てくださいね」
エア「うわ。清々しいと清々したって同じ漢字だということを思い出したわ、なんか」
今回はシフェナとムーティス氏という2人を、この広いラスベートで捜すシティアドベンチャー的な話ですね。
どちらから手をつけてもいいんですが、精神衛生上の問題からまずムーティス氏の方を片付けるつもりです。
ではムーティス氏はどこに行っているかというと、ドーレ叔母さんのところだと思われます。
ドーレ叔母さんはジークとベルの母親の妹で、両親亡き後の後見人を務めていました。
ジーク「おおう、懐かしい。俺とベルはかーちゃんを早くに亡くしてるから、
すごく懐いてたんだよなあ。おばさんっていうなって殴られたけど」
メッシュ「ベタなエピソードですな」
現在ドーレさんは近所にある実家の方に帰っているので、まずはそこから尋ねてみます。
もしムーティス氏がおばさんという外堀から埋めるような策を練っていたりしたら厄介ですね。
エア「丸め込まれて「早く、おばさんを安心させておくれ」とか言われるようになったらどうしよう」
ニゲラ「今すぐに行きますぅ、父に会うため……いえ!捕獲するためにぃいい!」
お父さんを捜すという世界名作劇場的な当初の目的が、何でこんな厄介なことになってるんだろう(苦笑)
ここからニゲラは初期のおどおどした雰囲気からどんどんぞんざいに変わっていくので、いいターニングポイントではあるけど。
イスミー「ところで。ニゲラの嬢ちゃんは、どっちがいいんでやすか?」
ニゲラ「は?」
イスミー「ジークの兄貴か、その弟と結婚しちまやぁ、四方八方丸く収まるってもんですぜ」
ジーク&ニゲラ「それはない」
これについては意見は完全に一致しているようですね。本人の了承もない縁談なんて、昔からぶち壊されるものです。
これが本人の私物で補填するなら何の問題もなかったんですけどね。いくら娘でも一人の独立した人格を譲り渡したら駄目ですよね。
しかしシフェナの方を放置するのも気になります。
ジーク「アイシャはシフェナの顔を見たらわかるんだよな?」
GM「え。あ、はい、わかります」
ジーク「探してこい」
一同(爆笑)
エア「すごい、今ジークが凄まじく俺様だったわ!」
ニゲラ「しかも理不尽に」
でも適任ではあるんですよね。スカウトだし、顔も知っているし、戦闘力もあるし。
後に判明することですが、実は彼女は戦闘特技《射手の体術》を習得しているので前衛がいなくても何とかなるし。
これはシューター技能で《回避力判定》ができるようになる特技でして、これさえあればガン=カタが可能。
習得条件はシューター技能が7レベル以上ですが、今のアイシャなら大丈夫です。自動習得でないのが残念ですが。
メッシュ「ジーク様。ベル様のほうから頼んでもらうのです」
ジーク「ああ、そうか。……なあなあベル、ちょっと頼むよ」
ベル「何を言ってるんだよ兄さん。僕の従者に何でそんなことをさせなきゃいけないんだい」
ジーク「ち、自我が芽生えやがった」
ベル「でも、今はそんなに急ぐこともないしね。アイシャお願い」
エア「頼むんかい!(高速裏手つっこみ)」
イスミー「すごいツンデレ具合でやすよ」
ジーク「そうだ、こういうヤツだった、可愛いやつめ」
ついでにアインベフから貰った8万ガメル相当の宝石の換金も頼んでおいて、ドーレ叔母さんの家へ向かいました。
★もうひとつのデーニッツ家の事情
ドーレさんの家は中心街からは外れた古くて静かな区画にあって、そこは彼女の仕事場でもあります。
彼女の仕事は占い師です。会員制のサロンのように、信用できる人のみ相談に乗ってもらえる名の知れた占い師です。
メッシュ「ははあ。議員とかやり手の商人が出入りしてそうな感じのですな」
ニゲラ「「アンタ、地獄に落ちるよ!」とか怖い顔で言ったりしてるんでしょうかぁ」
"ラスベートの母"と言っていいものか。経営のコンサルタント的なこともしてるらしいので怪しい人ではなさそうだけど。
余談ですが、一口に占い師と言っても一般技能と冒険者技能の両方に関連する技能があります。
一般技能ではフォーチュンテラー(占い師)技能といい、本当に能力のある人から詐欺師まで玉石混交です。
冒険者技能では「カルディアグレイス」で追加されたミスティック技能というものがあります。
占瞳という占いの能力を持つ占者の技能で、その能力は本物です。ただし習得には先天的な才能が必要とも言われます。
ミスティン姫とかは今ならこの技能の持ち主ということになりそうですね。予知夢という形による幻視型の占瞳とか。
ドーレさんはどちらかというと一般技能っぽい気がします。才能より技術を使って占ってそう。
しかし頼るもののない人が占いに救いを求めるのは昔からよくあることです。政治家や経営者みたいな責任のある人は特に。
お金を騙し取る詐欺師のような占い師は問題ですが、心に平穏を与えるという意味ではこういう仕事も社会には必要なのでしょう。
ドーレさんの家に行くとすぐに会ってくれました。普通ならアポが必要なんでしょうが、身内ですしね。
ドーレ「あらまあ、ジーク大きくなって!」
メッシュ「出たな、占いババ」
イスミー「神秘的な魔女おばさん」
ジークの母親とは歳が離れているのでまだ30代で若々しいんですけどね。
ジークが子供の頃なら10年ぐらい前だとして20代だろうし、おばさんと呼んだら怒るのも無理はない。
エア「ほほう、あれがジークの初恋の人」
ジーク「ちがう。……とは言い切れないか。そういうこともあったかもしれない」
ニゲラ「すごいですねー。ジークさんの守備範囲って、熟女から幼女、王様から神様まで」
既に相手が人外でも全く不思議はありません。ストライクゾーンは限りなく広いようで狭いけど。
ジーク「お、おばちゃん、おひさしぶり、です」←身内には歯切れが悪い
ドーレ「まあ元気そうでよかったわ。いきなり冒険者になって家を飛び出したっていうから心配してたのよ」
ジーク「なあ、早速だけど、こいつに似たおっさんがここに来なかったか?」
ニゲラ「すいませんー。はじめまして、眼鏡をかけたこういう顔が無茶を言いに来ませんでしたかぁ?」
ていうか父親がニゲラに似ているのは確定しちゃっていいのか。どんだけ面白いおっさんなんだろう。
GMは知的なクールビューティーにする予定だったそうですが、今までとこれからの挙動を見るに不可能かと(笑)
ドーレ「ああ、来たわよ。ムーティスでしょ、あのバカ殿」
ニゲラ「がーん!一刀の元に斬り臥せられた気分ですぅ(よろり)。穴があったら入りたいーっ」
ジーク「あ、ごめんおばちゃん。こいつ一応娘なんで、表現をもうちょっとソフトに」
ドーレ「あら。ごめんなさい。とっても大らかなお父さまね。昨日おいでになったのよ」
しかしどんなに表現をソフトにしようがマイルドにしようが、本人はとってもビターです。
どこぞの勇者よろしくこの家にある資料を勝手に漁って、何かを見つけて出て行ったとか。
ドーレ「どっちも了承してない結婚話は不幸になるだけだから、
考え方を改めなさいと言って、叱りつけたところだったのよ」
ジーク「……よかった。おばちゃんは良識派だった」
ニゲラ「すいません、すいませんっ、うちの父が非常識ですいません!(平謝り)」
それで少しでも借金を返す方に切り替えたように見えたそうですが、それが例の資料と関わってそうですね。
ドーレ「まあ、これで諦めてくれればいいんだけれど。借金なんて、適当に踏み倒せばいいのにね。
変に義理堅いのは結構だけど、それを娘に押し付けるのはどうかと思うのよ」
ニゲラ「あああ……ありがとうございますぅ!(感涙)」
散々父親のせいで心を痛めていた時に、こんな優しいことを言われたら涙も出るというもの。
ジークのお父さんも貸付とか融資とかそういう金融的な思惑ではなく、友情でお金を貸してた気もするし。
少しずつでいいから真面目に働いて返すのが本当の義理ですよね。錬金術師は金銭感覚が崩壊している人が多そうだけど。
ジーク「おばちゃんは占い師だし、不幸な結婚話なんて山ほど見てきたんだろうしなあ」
ドーレ「そうね。あんたの母さんも含めてね」
ジーク「え……うちのお袋、そんなに不幸だったのか?だとしたら、今から親父の墓石蹴り倒しに行くぞ、俺」
ドーレ「あ、いやいや。義兄さんとは良好だったわよ。でもねえ。その……一回目の結婚がねえ」
どうやらジークのお母さんはバツ一だったらしい。ということは父親の違う兄弟姉妹がいるかもしれません。
エア「出た、ラスボスへの伏線!」
メッシュ「なるほど血の繋がった兄を倒すというのは、英雄によくあるドラマですからな」
イスミー「ナイトメアとして生まれて、ダークナイトになった兄とか格好よくねえでやすか?」
エア「うーん。個人的には、今にもダークナイトに落ちるんじゃないかと心配な妹がいるから、ちょっと胃が痛むわ」
そういえばゼルブリスでは無駄に活き活きしていましたね。ディルフラムならダークナイトもそこそこいるようですが。
事情を聞いてみると、ジークの母親フィーレさんも占い師で、直感の働くタイプ(ミスティック技能?)でした。
彼女はさる高貴な家のお抱え占い師となりまして、そのままやんごとない人の愛妾となり、子供も生まれました。
ところが5歳で引き離される悲劇からは哀れなもので、病弱だった我が子が心配のあまり占いの調子も悪くなってしまいました。
そんな彼女の様子を見に来たのが冒険者となった幼馴染、ジークのお父さんでした。
ドーレ「かつて憎からず思っていた同士。焼けぼっくいに火がと……姉を連れて逃げたわけよ。義兄が!」
イスミー「うおードラマでやすなあ!」
ジーク「格好いいぞ、やるなあ親父!」
ニゲラ「そんな甲斐性のあるお父さま素敵ですー」
というわけでジークとベルはちゃんと愛のある両親の元に生まれたのですが、問題はその異父兄弟です。
高貴な家で、5歳で引き離されて、病弱で、占いと関係があるなんて……ピンポイントで思い当たる人物がいます。
ジーク「そうか…………ミスティン姫、俺の姉さんだったのか」
ミスティン姫からすると、メッシュとアイシャは母親の再婚相手の家に里子として出した感じなわけですね。
複雑な関係でしょうし、国家間で色々問題になったはずですが、どうやらそこの仲は悪くはなかったようですね。
ジークの経歴にあった「予知夢を見たことがある」というのも血縁を証明する伏線として回収されたことになる。
ジーク「……なあ、いきなり不安になったんだけど」
エア「何?」
ジーク「俺、自分の姉ちゃん、うっかり口説いたりしてなかったよな?」
あの時は完全に子供扱いされてたし、メッシュがいつもの妄言を吐いて切り捨てられただけです。
でも今なら納得がいきますね。ミスティン姫からしたらジークは弟なんですから多少子供扱いするのも無理はない。
イスミー「こうして家族の話題が出ると、ルーンフォークというのは淋しい種族だというのがわかりやすな」
メッシュ「ん?ふふ、私たちには家族など必要ありません。私たちに必要なのは、主人です」
ジーク「まあ、そんなことはどうでもいい」
メッシュ「ジーク様ぁあ!?」
いや、自分のことで一杯一杯で話を聞いてなかっただけですよ。デーニッツ家の人がメッシュの家族です、多分。
兄弟という意味ではパジャリガー・セカンドがそう呼べるはずですが、本人達は絶対認めないでしょうね(笑)
さて、デーニッツ家の過去が判明したところでオリエンタリス家の厄介事に戻ります。
ムーティス氏が調べていたのはジークの父、ザムエル・デーニッツが残した冒険の記録でした。
具体的に何を見ていたのかは《文献判定》で調べることになります。
ジーク「げ、またセージがネックか?」
エア「こんな時にだけ、とってつけたように妹のことを思い出さない!」
しかし娘であるニゲラが探し当てました。実はアルケミスト技能って《文献判定》や《見識判定》もできるんですよね。
イスミーがライダー技能で《魔物知識判定》ができるから、2人揃えばある程度セージ技能の穴を埋められます。
ムーティス氏が調べていたのはリオス近郊の未探索の魔動機文明時代の遺跡でした。
しおり代わりに彼のメモが挟まっていたので分かりました。ちなみにメモの内容はお金を貸してくれそうな人リスト。
ニゲラ「いつかこのメモの名前で迷惑をかけていたのかもしれない人たちに、謝罪巡礼をしますぅ」
財宝目当てにこの遺跡にアタックする可能性が高いですね。「人手は冒険者の店で雇えれば……」とか言ってたらしいし。
流石に1人で遺跡に潜るほどの命知らずではなかったようですね。錬金術師1人では攻撃手段もなくて詰みますしね。
以前はニゲラが前衛を務めていたわけですが、それだって1人じゃキツかったでしょう。
ニゲラ「ニゲラのお母さんは、ニゲラがお父さんを護るようにと言い残して亡くなりましたけど、
まさか厄介ごとから護るためだったなんてぇっ!」
メッシュ「絡み武器は、お父さんを絡めておくためにだったわけですな」
そのニゲラがはぐれていなければこの事件を防げたんだろうか。別の形でぞんざいズと知り合えた気はしますが。
★いれちがう、すれちがう
ムーティス氏の足取りを追って、ぞんざいズは「二本目の蜘蛛の手亭」を訪れました。
店の親父に聞くと彼が来たことはアッサリ教えてくれました。冒険者を雇って遺跡へ向かったとか。
報酬は遺跡払いです。宝が出たらそれを相談して分配する、見つからなかったらその時というやつですね。
ただ仲介料を取られないよう直接交渉で食い詰めた柄の悪い連中を雇ったというのが心配ですね。裏切られるパターン。
行き先は分かったのでアイシャに情報を聞いてから向かいます。
ニゲラ「すいません、うちの身内が手間をかけてっ!」
エア「いいのよ。うちの身内も迷惑かけてるから」
イスミー「おいらの身内も迷惑かけてやすんで」
ジーク「そうだな。……俺の身内は、常時迷惑をかけてることがあるし」
メッシュ「ジークさまぁあ!私をオチに使うのはやめてくださいませ!」
そしてメッシュの身内(パジャリガー)は暑苦しいと。何なんだこのパーティは(笑)
デーニッツ家に戻るとアイシャからシフェナの情報が聞けます。
どうやらシフェナはこっそりとセミナーを開いて、名も知れぬ神の信者の勧誘をしていたらしい。
何の神様かは知られていなくて、信者の間でだけ秘蹟のように授けられているらしい。
その神様に力を取り戻させるための活動で、行方不明者もいるけど表沙汰になるほどではないと。
リオスは豊かな国ですが、その代わりに競争も激しいし貧富の差もあります。
競争に敗れた人には縋るものが必要だし、秘密の神様に近しい信者という立場は優越感を持てるもの。
例の「亡くなった人に会える」という話も孤独な人の心にはよく響く文句でしょうし。
エア「そんなろくにプロモーションもせず、街頭ライブみたいなことをやってる神様なんてだめだとわたしは思うのよね。
大々的に自分たちの後ろにはザイア様が付いてるんだと、知らしめるだけでも正式なデビューができるのに」
ニゲラ「それ、正式なんですか?」
メッシュ「なるほど、後援会がなくてはいけないと。しかし、堂々と
「私たちのバックはラーリス様です」とか言われたら逃げ出しますよ」
エア「まあ……その場合、滅ぼすけど」
ルーフェリアは大御所をバックにメジャーデビューした新人アイドルのようなものです。
それに比べるとその神は地道にライブ活動を続けてCDを手売りする地下アイドルみたいなものですかね。
アイシャ「あと、大サービスで、集会が行われていたらしい場所に潜入し、カチコミをかけてまいりました」
ジーク「さすが、優秀なほうのルーンフォークは気が利くぞ」
メッシュ「……しくしく。後衛の癖に……」
雑魚しかいなかったので例の《射手の体術》を駆使して何とかしたらしい。
そこで以前も手に入れた幽霊船の航路図とアイヤールの地図を入手してきました。
後者には《白峰領》や《青嵐領》にチェックが付いていて、中心の《皇城領》にもチェックしてあります。
現在シフェナは馬車でリオスに向かっていて、連絡用の<通話のピアス>も入手してあるという優秀さです。
あとベルがお金の袋を渡してくれます。例の宝石を換金したものですが、中には10万ガメル入っています。
ジーク「……ベル、お前、前に俺が返した借金をこの中にいれただろう」
ベル「いいえ、何も知りません」
メッシュ「きっとベルさまが相場よりも高く売ってくれたのですよ」
ジーク「何だそうか。すごいなベル」
ベル「ボ、ボクの才覚からすれば、それくらい簡単だよっ」
ちょっと声が上ずってたり、相変わらずのツンデレ弟です。どこぞの妹にも見習って欲しいです。
ニゲラ「や、ちょっと、この子可愛いですぅ」
ジーク「全くだ。こいつと血が繋がってることが、残念だ」
ニゲラ「……えっ」
一瞬場は沈黙したものの、机を叩いて喜ぶニゲラに腐の片鱗を見ました。
★未探索遺跡リオス編
遺跡へ向かうとその入り口で3人の冒険者が何かをげしげしと蹴り続けていました。
イスミー「かめ?」
GM「もう、壊れているので竜宮城には連れてはいきません」
蹴られていたのは警備用魔法生物のレンガードでした。
レンガードは1レベルの魔法生物です。平たい身体に車輪の付いた短い4本の足を持ちます。
攻撃方法は電撃ですが、これは物理ダメージ扱いらしく防護点が有効です。特殊能力は仲間との《連結》です。
仲間が1体連結すると命中力+1、打撃点+3。最大で5体合体まで可能(命中力+4、打撃点+12)。
ちなみに冒険者の方は人間の戦士と魔術師、ドワーフの神官戦士で冒険者レベルは6です。
メッシュ「やあやあ、ここで何をしているのかな、雑魚くんたち」
6レベルというとぞんざいズはエルヴィーンと戦ってた頃のレベル帯ですね。
頑張ればラグナカングとか倒せる実力ですが、今のぞんざいズの敵ではありません。
ところが彼らはニゲラの顔を見ると驚いた様子を見せます。
冒険者「てめえ、どうやって出てきやがった」
ニゲラ「ほほう……ということは、貴方たちがー、お父さんが雇った冒険者なんですねぇ?……お父さんは?」
冒険者「な、何ものだお前たち!」
武器を構えた冒険者ですが、戦闘になるとわずか1ラウンドで降参してしまいました。
正座させて事情を聞いてみると、彼らはムーティス氏を残して遺跡から逃げてきたようです。
実はこのレンガードは特別仕様の亀形レンガードで、本来は遺跡の最奥まで案内をする役割を担っていたようです。
ところが壊れていたので危険な部屋に案内されて死にそうになり、ムーティス氏を責めると彼は逃げてしまったとか。
ぞんざいズは例の資料から遺跡内部の地図は持っているのですが、ここはちょっとしたパズルになっています。
このレンガードはUターンもバックもできず、角に来たら必ず左右どちらかに曲がるという壊れ方をしています。
それでも最奥の大事な部屋に認証されていない侵入者を案内しないという役割は果たせていたようです。
つまりこのレンガードの移動パターンでは絶対に辿り着けない部屋を地図を見ながら解けばいいのです。
ムーティス氏が逃げ込んでいるとしたらその最奥の部屋である可能性が高い。
ニゲラ「……お父さん、無事かなあ。バカだけど、知恵は一応回らないわけじゃないから、無事でいてくれるといいけど」
間違った部屋だったら死にそうな目に遭うのは経験しているので、知恵は絞っているでしょう。
ところがこのパズルはエアがアッサリ解いてしまいました。こういうパズルは得意な人なので早いものです。
そしてムーティス氏もアッサリ保護。本当におっさんなのにニゲラに似ていました。
ムーティス「ああっ!人だ!」
メッシュ「もしかして……ムーティス・オリエンタリス氏ですかな?」
ムーティス「ああ、そうだよ!君は一体?」
メッシュ「ご安心ください!私は貴方の未来の息子、
ジークハルト・デーニッツ様の命を受けて、貴方を保護しにきた者です!」
ムーティス「おお!なんて気が利くんだ、未来の息子!」
それを否定しにきたのに、ウケを狙ったなポンコツ(笑)
そしてムーティス氏は娘を見つけると満面の笑みです。
ムーティス「愛しいマイドーターまで!ああ、君はいつもなんてたくましいお姫様なんだ!
パパを心配してここまで来てくれたんだね、しか婚約者まで連れて……」!
ニゲラ「ニゲラ、駆け寄ります。お父さんー!」
ムーティス「おお、愛しい娘よ、パパは淋しかったぞ!」←カモン!俺の胸に!のポーズ
ニゲラ「うらぁああっ!その勢いのままアックスボンバーですぅ!今日という今日は、堪忍袋の緒が切れましたっ!」
ムーティス「ふごおおおっ」
ニゲラ「いつもいつもいつも、人様に迷惑かけてばっかりでーっ!めっ、でしょうっ!」
ムーティス「ああ……すごいよニゲラ。やっぱり強いねえ、パパの自慢の小鹿ちゃんだよ」
小鹿ちゃんはこんな風に人を壁に叩きつけたりしません。今までの鬱憤からニゲラのキャラが変わってる(笑)
保護したムーティス氏とは話し合い、遺跡の宝を見つければ借金はチャラにするという形で落ち着きます。
ムーティス「……まあ、それで君が満足するのなら。ニゲラ!また二人で旅に出ようね」
ニゲラ「……うん。そうね、考えさせてもらうかもぉ」
イスミー「苦労しそうでやすなあ、嬢ちゃんも」
ニゲラ「うらぁ!がす!お前がいうなぁ!……は(肘鉄直後に我に返った)」
イスミー「うわぁあんっ、か弱いうさぎを殴ったでやすー!」
こうしてニゲラもまた本当の意味でぞんざいズの仲間入りを果たしたのでした。何てことだ……。
まぁそれはいいとして、宝を拝もうとした時でした。突如背後で何者かが動く気配がします。
イスミー「ゴーレム?」
メッシュ「生っぽいですか。硬いっぽいですか。「魔物知識」の判定が必要ですか」
GM「あー、そうですね。エアは必要ない。わかる」
エア「ルーフェリア様!」
GM「違うわ!アイアンゴーレムです」
ゴーレム系には《正体露見=コンジャラー技能》という特徴があり、判定の必要なく正体が分かります。
「バルバロステイルズ」のアイアンゴーレムの項目には書いてありませんが、他のゴーレムにはあるので抜けでしょう。
アイアンゴーレムは11レベルの魔法生物です。身長5mほどの鉄でできたゴーレムです。
右半身、左半身の二部位です。左右の拳は《狙い定め打つ》ことで命中力+4、打撃点−8で攻撃可能。
《鋼鉄の身体》は刃のついた武器や、純エネルギー属性以外の魔法からのクリティカルを受けつけません。
ダメージは2D+16点と強烈で防護点16という頑健さはフォーセリアの頃から変わりませんね。
その代わり回避力9で先制値9という鈍足っぷりも変わらない。ムーテスの方が頑丈で硬いけど。
ここではムーティス氏が弱点まで看破して純エネルギー属性+3のボーナスを獲得。セージ技能も高いらしい。
もちろんこの鈍足っぷりなので先制もアッサリ取れました。つくづくムーテスがいないのが悔やまれる。
1ラウンド目
イスミーがクリポン武器をメッシュに与え、エアは"バトルソング"でルーフェリア様を讃えつつ前衛を援護。
ニゲラ「お父さん、"パラミス"使ってください!」
ムーティス「いいとも、可愛い蝶々さんの頼みだからね!Sがいい?SSがいい?」
ニゲラ「普通にAを使えーっ!これ以上借金を増やす気かぁー!」
ムーティス「やだなあ。マイスィート、ニゲラ。白髪が増えるよ」
主動作で使いましたが抵抗されました。賦術専門のNPCというのも抵抗を破れる可能性を抱けて乙なものです。
メッシュの《投げ攻撃》は達成値28で炸裂しました。タゲサと"バトルソング"入りで出目11ですか。
しかもイスミーのクリポン武器は足に装備していたらしく、《踏みつけ》で33点素通しという活躍っぷり。
でも折角の《ファストアクション》は1ゾロ振るあたりがメッシュですね。そこは痺れもしないし憧れもしない。
ところがこの時部屋そのものが振動します。《魔物知識判定》の結果、この部屋そのものがシンカーハウスだと判明。
シンカーハウスは8レベルの魔法生物で、部屋そのものに《擬態》して得物を誘い込みます。
部屋の内装は自由自在で5mの立方体形です。これを見破るには目標値18の《危険感知判定》が必要です。
内部にいるものには《3本の錐》によって3体のキャラクターまで攻撃が可能になります。
また《部屋回転》によって5mの落下ダメージを与えたり、《床変化》で3種類の状態に変化します。
回避にペナルティが入る軟化、命中にペナルティが入る上に転倒する氷結化、炎でダメージを与える高温化です。
ジークは《マルチアクション》で弱点の純エネルギー属性である"カオスショット"、抵抗されても10点とか抜けます。
メイスの攻撃は当たりはするものの3点しか抜けず、ニゲラの攻撃で右半身はアッサリと落ちてしまいます。
この時ニゲラは賦術"クリティカルレイ"を使っていました。実際に使うのはこれが初めてだったはず。
これは威力表を振るときの出目を上昇させるもので、Bランクで+1、Aランクで+2、Sランクで+3、SSランクで+6。
ただし効果があるのは最初の1回だけで自動的に発揮される。名前とは裏腹にクリティカル値を下げる訳ではありません。
SW2.0ではクリティカル値は7以下には下がりません。でもこの賦術なら7以下の出目でもクリティカルが起こりえる。
シンカーハウスは《部屋回転》で落下ダメージを入れつつ、エアとイスミーと「シフェナ」を錐で攻撃。
アイアンゴーレムは起き上がってジークを殴って18点も抜きますが、まだHPは60点以上ある(笑)
2ラウンド目
またムーティス氏がパラミスを使いますが、何と抵抗を破って1分(6ラウンド)持続します。
ジーク「やるじゃないか、おっさん!」
ムーティス「パパと呼んで構わないよ、ザムエルの愛息子」
ジーク「それが好かんというとるんだ!」
元々回避力が低い上に−2入れば避けられる筈もなく、前衛3人に袋叩きに遭って左半身もボロボロです。
更にイスミーの"バースト・ショット"が削り、エアの"ゴッド・フィスト"も炸裂して残り3点とかになります。
削りきれずに《床変化》の高温化で嫌がらせをするものの、そのダメージでアイアンゴーレムが落ちます。
そして次のラウンドに袋叩きの対象がシンカーハウスに移って呆気なく倒されてしまいました。
★遺跡の奥には……
番人を倒したぞんざいズ+おっさんは遺跡の一番奥の部屋にやって来ました。
そこには儀礼用なのか華美な装飾が施されたテンペストオクタドゥームの姿がありました。
テンペストオクタドゥームは12レベルの魔法生物で、魔動機文明時代末期に作られた体長10mの決戦兵器です。
胴体(コア)×2、砲塔×2、脚部×4の八部位です。砲塔は主砲を、脚部は機銃を<ガン>として使えます。
胴体は《搭載/1》でキャラクター1体を搭載し、攻撃を受けると《防御膜展開U》を発動させます。
これは物理ダメージか魔法ダメージを無効化するもので、受けた攻撃を無効化するように切り替わります。
まだ起動はしていませんが、すぐ傍にはそのために使うであろうコンソールがあります。
ムーティス「うわぁ!これは素晴らしいね!」
ニゲラ「うりゃぁあ!身内だからこそ!惨劇を起こすまいと涙ながらにお父さんにバックドロップですぅ!」
エア「……ニゲラ。ナイスだけど、一皮剥けたわね」
ちゃんと起動させるにはマギテック+知力で目標値16が必要になります。失敗すると暴走します。
メッシュ「……うさぎくん、どうぞ」
イスミー「へいっ!じゃあ……」
メッシュ「ジーク様、部屋を出て扉を閉めますよ。危険ですからね」
イスミー「おおおおーぅ、おおおーぅ!(泣きながら扉を叩いている)」
イスミーだと基準値10なので出目6、期待値でいけるけど微妙に失敗しそうでいい感じですね。
指輪でブーストすれば出目4だからほぼ確実にいけるけど、もし暴走したら大惨事かもしれない。
イスミー「えい!ままよ!ぺたっ」
一同「うわー!触ったー!」
イスミー「(ころころ)ぱりーん。成功」
ジーク「イスミー……今お前、危ないことしたよな?(にっこり)」
イスミー「びく。ぷるぷるしてやすよ。そ、そんなこと、ねえでやすよ?つぶらな瞳で見返すでやす」
ジーク「今ぱりっていっただろう!ボッケの壊れた指輪は何だ、耳掴むぞ!」
イスミー「いや、ちょっと割れちゃって……」
それでも起動には成功。ドゥームはイスミーを掴み上げ、砲塔部にこすりつけてじゃれつきます。
音声認識らしくイスミーが命令するとすぐに大人しくなってお座りしたり、可愛いやつです。
この子をどうするか、シフェナをどうするかは次回の課題とし、ムーティス氏が更生するのを祈るばかりです。
★成長申告&後始末(前半)
今回の能力値の成長は以下の通り。
ジーク:筋力19→20
エア:精神力28→29
メッシュ:生命力21→22
ニゲラ:筋力15→16
イスミー:精神力21→22
とうとうエアの精神力が+5まであと1点になりました。グラスランナー並みのタフさですね。
既に20回以上成長していて能力値の上3つは3回しか成長していないんですよね。筋力なんて一度も上がっていない。
ジークは器用度だけは上げていません、+3あれば十分だと踏んでいるのか。メッシュは割りとバランス型の傾向があります。
技能の成長ではニゲラがファイター9→10としてジークに続いてレベル二桁です。
ニゲラ「ちょっと逞しくなりましたぁ」
ジーク「おお、色んな意味で強くなったもんな」
ニゲラ「はい。ニゲラは心も身体も強くなりました。が、ちょっと荒んだかもぉ」
メッシュ「そうですね。前回くらいから初々しさを感じなくなりました」
ニゲラ「大人になるってこういうことなのかもぉ」
エア「……人間、諦めも肝心ということよ、特に身内に関しては(ふっと遠い目)」
このパーティ、身内に厄介なのを抱えている人が多すぎます。今はいないムーテスも然り。
★成長申告&後始末(後半)
ニゲラの父ムーティス氏を追って遺跡に突入したぞんざいズは見事に彼を保護することに成功します。
しかも彼の借金をチャラにするのと引き替えに決戦兵器テンペストオクタドゥームを手に入れました。
こんな危険なもの手に入れても持て余しそうですけどね。ジークのお父さんもそれで放置していたのかもしれない。
ムーティス「ニゲラ、ボクの愛しいお姫様。これでまた二人で旅に出られるね!もっと素敵なお婿さんも見つかるよ!」
ニゲラ「うん……そうね、お父さん。ニゲラ、とっても嬉しいけどぉ、
生憎とこの旅の間でルーフェリア信者になったから。結婚とか、できないの」
エア「え?いつの間に?」
ニゲラ「ね。エアさん(すげー殺人的な目で睨んだ)」
エア「あ、うん。そうね。……でも、水に流すことも肝心だからね、
きっとルーフェリアの本神殿にでもいって、結婚のお許しをもらったら大丈夫だと思うけど」
エアのお父さんを見てもわかるように、別に信者だからって結婚できないわけじゃ……いや言いたいことは分かる。
ムーティス「わかったよ!大切なお花ちゃんを、放ったらかしになんてできないからね!私も信者になるよ!」
エアが"ポゼッション"を使えるまであと1レベルですよ。まさに「ワタシと契約してルーフェリア信者になってよ!」。
でも別に神官になる必要はありませんよね。むしろプリースト技能を持たない平信者なんて沢山いるでしょう。
この世界ではスポーツのサポーター感覚で神様の信者になってる気がするし、本人がなろうと志せばいいんじゃないですか。
まぁニゲラとしては余計なことをさせないようどこかに放り込んでおきたいだけなんでしょうけど。
そのためにも何処かに定住させるのはいい考えです。特に鎖国が長いルーフェリアで錬金術師は少ない気がするし。
真面目に技術を広めるために働いてもらうのが無難かも。このまま放置したら次は何をするか分からないし。
そこでエアが大司教に紹介状を書いてルーフェリアの国に向かわせます。文面は「大司教ヨロ」です(笑)
ニゲラ「いいですかぁ?修行中の身は、神様の庇護の土地から勝手に出ちゃダメですからねぇ?
あ、ニゲラは、こちらにおいでになる徳の高い神官様について、色々お世話しなきゃいけないようないけなくないような、
色々と面倒な事が一杯あって忙しくてそのへんは説明面倒くさいからごちゃごちゃとうるさいことは言わずに
とりあえず流しておいてくださいねお父さん、もうこれ以上借金すんなよっていうか、
ニゲラも忙しいんだから娘に恥かかせないでください……わかりましたかぁ(にっこり)」
ムーティス(ガクガク頷いている)
端々から滲み出る娘の本音。別に父親が好きなことに変わりはないらしいけど、自我が芽生えたらしい(笑)
父親には旅費とカード代として2000ガメルを渡しておき、生活費も送るという孝行娘っぷり。介護は早いぞ。
でも冗談抜きで無駄にSランクカードを買って2000ガメルを一瞬で融かしそうですね。これがカード破産か。
イスミー「家族というのは厄介でやすなあ」
メッシュ「まったくですな」
ニゲラ「ニゲラはちょっと、反抗期に入っただけ。でもね、やっぱり大事だと思っちゃうの、ムカッとはするけど」
エア「そうなのよ。家族っていうのは大事なの。ムカッとするけど」
ジーク「メッシュは、あえて言えばアイシャが姉か妹みたいなもんだよな」
メッシュ「おお。なるほど……ついムカッとする相手しかいませんね」
ジーク「ま、俺の弟は可愛いけどな」
エア「……うん、そうね。あの弟ならわたしも欲しいわ」
ミスティン姫もジークのことをそんな風に思っていたりするのかな。
余談ですが、神様の庇護の土地から離れることがプリースト技能に制限を生むというルールもあったりします。
古代神は世界規模で信仰されていますが、大神は信仰されている大陸を、小神はその地方を離れると力が弱まります。
具体的には消費MPが増えたりしますが、ほこらを建立したり信者を増やすことでこの制限は解消されます。
また<浄化の聖印>を装備することでも解消されます。1万3800ガメル、エアも将来的に必要になるかもね。
★デーニッツ家での日々
テンペストオクタドゥームは刷り込みされた小鳥よろしく、イスミーから離れようとしませんでした。
イスミー「でもでも、いい子なんでやすよ!お手だってしやすし!」
GM「のしっ、とイスミーの手に砲台がのせられた」
ジーク「イスミー、発射口が頭を狙ってるように見えるぞ」
しかし誰かに売るわけにもいかず、許可を取ってデーニッツ家に置いてもらうことになりました。
デーニッツ家の敷地から出さないこと、有事の際は街を護るために使うこと、これらが条件です。
こんな決戦兵器を街に入れるのだって普通は拒絶されるでしょうが、ジークのお爺さんの威光のお陰かもしれない。
名前もイスミーがつけまして。テンペストオクタドゥームを略してオクタンです。グランディスタンク、略してグラタンみたいな。
ジーク「じーちゃんの威光に感謝。うちにあるアレクサンドロス議員の肖像画にお辞儀しとこう」
えらいゴツイ名前ですね。孫がジークハルトとかベルモントだからこんなもんなのか。
それから数日間は平和なものでした。
ベル「兄さん少しは、長男らしく勉強しなよ」
ジーク「んぁ?(口から涎を垂らす振り)」
メッシュ「……自分が弟なら、絶対に心が折れます」
ベル「家の長男らしくしなよーっ!」
それができるのなら冒険者にはなっていない。10レベルにまでなった今、どう考えても天職です。
ジーク「ベル。お前も、この家を無理矢理継ぐ必要なんてないんだぞ。
やりたいことやっていいんだからな。何かしたいことはないのか?」
ベル「……店で商売」
ジーク「じゃあやれ。継げ。単なる適材適所じゃないか」
ニゲラ「そうじゃなくて、弟さんは、お兄さんとお店がやりたかったんじゃないかなぁ」
だとしたら可愛い奴です。でもきっとお兄ちゃんは商売には向いていない。
ところがベルはそれとは別にピリピリした雰囲気を出しています。どうやら商売の方でトラブルを抱えているようです。
ジーク「一人でいらいらしてないで、兄ちゃんに話をしてみろ、ベル」
普段はだらしないけどこういう時はお兄ちゃんらしいですね。《陰影領》で誘拐事件が起きた時も必死でしたしね。
ベルに話を聞いてみると、最近デーニッツ商会は海運業にも手を出しているそうです。
ところがカイン・ガラからリオスへ向かう船の到着が遅れている状況で、商品の搬入も大きく遅れている状況なのです。
遅れるどころか船が音信不通で今どこにいるのかも分からない状況です。そうなると気になるのは幽霊船ですよね。
カイン・ガラからリオスなんて幽霊船の航路と完全に被っていますし、どこかで襲われたのかもしれません。
ちなみに時化とかの情報はなく、海賊被害もリオスは海軍や私掠船を抱えているのである程度は抑えています。
嫌な予感を感じたぞんざいズは船の行方を探るために、前回アイシャが手に入れた<通話のピアス>を利用します。
こちらからかけると怪しまれるので連絡を待ち、かかってきたら情報を聞きだすつもりです。
ちなみに連絡員の名前はゼルデットという。有能なアイシャはちゃんと聞きだしておきました。
それまでは耳の装備が空いているニゲラが装備しています。装備していないと着信が分からないので。
ニゲラ「ピアスですよね。布団針で、えいっ!」
イスミー&メッシュ「ぎゃーっ」
ジーク「そんなに無邪気に軽やかに穴を開けるな!」
エア「女の子はそういうの平気なのよ」
ニゲラ「ねー?」
メッシュ「五十を越えているくせに何が女の子ですかずうずうしい」
実はメッシュも<ウサギのピアス>をつけているんですけどね。ビクビクしながら穴を開けたイメージがある(笑)
それまでは街で時間潰しです。ところが外出しようとするとオクタンがついてこようとします。
策に腕をかけてぎしぎしいわせていますが、イスミーが命令すると大人しくお座りで見送ってくれます。
ジーク「……ちょっと可愛いな」
イスミー「でやしょう!?」
ジーク「うん。お前よりは可愛い」
イスミー「がーん!」
ジーク「だって言うこと聞くしな」
こっちのうさぎは言うこと聞くどころか裏切りそうになりましたしね。
ジーク「……オクタン、俺の言うことって聞くのかな。「踊れ」」
GM「ばた。フテ寝」
ジーク「スクラップにして経験点にするぞ!」
イスミー「兄貴の後ろでこっそりと小さな声で「踊ってくだせえ」」
すると四本の足で小粋なステップを踏み始めます。BB1号を思い出す可愛さですね、デカイけど。
倒したとしたら12レベルの八部位なので960点にもなりますね。1回の冒険の基本経験点ぐらいですか。
そうしているとピアスに着信です。ニゲラはスカウトであるメッシュにピアスを渡します。
メッシュ「あー……ゴホン、こちらゼルデット。ごほんごほん。おっと、喉の調子がおかしい」
シフェナ「あら、風邪でも引いたの、気をつけなさい」
シフェナはけっこう優しい上司ですね。彼女はゼルデットに船を用意して仲間の所へ向かうよう指示します。
シフェナは「例の場所」とやらに行ってアレンに手を貸すらしい。あとソラも仲間の所へ行ったとか。
色々気になるところですが馬鹿正直に聞いても不審だし、頭を使わないといけない場面ですね。
エア「幽霊船騒ぎのせいで、船がつかまらないから迎えのコネはないかって聞けばいいんじゃない?」
メッシュ「おっとなかなか賢いですね。ではそう伝えてみましょうか」
シフェナ「あら、そうなの。しかたがないわね。じゃあ迎えを寄越すように手配しておくわ。物資を運び込む船は必要だし」
メッシュ「では、リオスの港で赤いマフラーをしたルーンフォークの変装をして待ってますので」
一同「何故!」
シフェナ「なんで!」
変装が面倒ですからね。もし変装するならアイシャに出来を確認してもらわないといけないし。
シフェナ「変な男。わかったわ、では赤いマフラーのおかしなルーンフォークに変装してるっていっておくから」
イスミー「さすがシフェナでやす、直接顔を合わせていないってぇのに、なんて的確な表現でやしょう」
メッシュ「おっと、うさぎに躓いた(蹴り)」
ゼルデットがどういう風貌の男だったのかは謎ですが、果たしてそれは変装だと納得できるレベルなんだろうか(笑)
★案内船の攻防
メッシュが指定されたオープンカフェで待っていると、案内役と思しき男がやってきますが、声をかけづらそう。
メッシュ「やあ、君が迎えのものかね?私だよ、ゼルデットだよ」
ジーク「うわ、押し通すつもりだ!」
案内役「え?あ、そうなのかい?一回会っただけだけど……そんな顔だったっけ?」
メッシュ「はっはっは、ルーンフォークに化けておくと言ったじゃないか」
案内役「いや……そこまで完璧だと、ひく」
しかし顔をあわせればこちらのもの。肩を抱いて人気のない場所へ連行します、実にナチュラルです。
案内役「ど、どこに行くんだゼルデット、自分にはそんな趣味はないぞ」
メッシュ「私にもありませんよ!うら、どかぁああっ!(殴った)」
9レベルグラップラーにぶん殴られてはひとたまりもありません。ここからはいつもの尋問タイムです。
まずはアレンという男について聞いておきます。
案内役「自分には人間に見える。しかし、人間を越えた何かかもしれない。あの方は神なのだから!」
イスミー「あいたたた……」
エア「へー、ほー、ふーん(すっごく胡散臭そう)」
メッシュ「なんだ、ただの神か」
神聖魔法程度の奇跡は起こせるといいますけど、それが本当にアレンの力によるものなら本物ですね。
ルーちゃんやリアの例もありますし、この世界の神様は普通の人間に見えてもまったく不思議はない。
普通なら痛い人なのに信憑性があって困りますね。下手したら第二の剣に連なる神様かもしれないし。
どうやら以前に酷く傷ついて眠りについていた時期があったらしく、現在は力を取り戻そうとしているらしい。
では仲間が集う場所とは何処なのかと聞くと、それは彼らの聖地なんだとか。神殿があるらしい。
それは浮島であって潮の流れによって位置が変わるという、ひょうたん島のような場所らしい。
既に大勢の信者が集まって楽土を築くべく努めているらしい。カルトっぽいのに勤勉な連中です。
船は用意されているので、余裕があったらオクタンを連れて行きたいですね。貢物という建前で大暴れさせます。
メッシュ「しかし、まかり間違って戦いの場にうさぎ耳ルーンフォークが戻ってきたら、
その瞬間、オクタンの砲塔の標的は我々になるやも知れません(ちらっとイスミー見ている)」
ジーク「……そうだな。諦めるか(ちらっとイスミー見て溜息を吐いた)」
イスミー「あれー?おいら全然信用されてない?」
ニゲラ「そりゃあ、一回裏切りかけてるものぉ」
エア「"クエスト"でもかけておきましょうか?」
イスミー「ひぃいいいっ!」
一度失った信頼を取り戻すのは難しい。でも信用を失うのは一瞬なのだから気をつけないとね、手遅れだけど。
ジーク「まあ、みんな落ち着けよ。大丈夫イスミーはもう裏切らないさ。信じてやろう」
エア「そうかしら、わたしはすごく怪しいと思うけど。何で、そんなに言い切れるの?」
ジーク「……こうやって言っておけば、心が痛むだろう?裏切れなくなるって」
エア「計算ずくだった!」
でもこの優柔不断っぷりだと、シフェナを見捨てられないのと同じ程度に仲間を裏切れない気もします。
可愛いマスコット的ポジションになるかと思いきや、気付いてみればうっかり八兵衛的な存在ですね(笑)
シフェナが用意した船には武装の必要がないメッシュと、聖印を隠したエアが似運び役として堂々と乗り込みます。
ジーク達は荷物として梱包されて侵入。しかしあのエアがあっさりと聖印を隠すようになったんですね。
そして船長に挨拶をするのですが、今までの経験から疑り深くなっているエアが《真偽判定》を提案します。
すると珍しく6ゾロを振ったメッシュが彼の正体をインキュバスだと看破します。以前戦ったサキュバスの男版ですね。
ところがGMが彼の風貌を健康そうな色男マッチョと表現したことで大変なことに。
インキュバス「ああ、なんて潮風が気持ちいいんだろう」
エア「キモ!海の男キモ!」
メッシュ「蛮族とわかった瞬間、そこまで言いますか」
エア「だって、黒々と陽に焼けて、健康的で爽やかで暑苦しいインキュバスでしょう!
そんな矛盾した存在滅ぼしてしまえ!」
イスミー「……松崎○げる?」
インキュバスというからには吸血鬼ほどではないにしろ、もっと耽美な感じを想像しますしね。
これがサキュバスなら色黒なのもちょっといいかもしれないけど、男だと何故か生理的に来ますね。
しかも今回のエアは何故かこいつがお気に入りらしく、どんどん描写を精密にしていきます。
エア「あんなテカテカマッチョ!バトエルデンさまでもあそこまでテカテカしていない!」
メッシュ「あれは、湖の男ですから」
GM「えー?何で、そこまで拒否反応が出ますか。普通に海の男っぽくしただけなのに」
メッシュ「いやー、インキュバスと海の男という組み合わせがダメなんですよ」
挙句「この船で一夜を明かしたくない」とか「見たくない光景を見させられる」とか。
この船が飛んだ薔薇園になりつつあります。ていうかインキュバスは同性にも襲い掛かるものなのか。
エア「たまには、クレバーな潜入捜査をやってみようかと思ったのに……黒マッチョ&インキュバスという
最悪のラグナロク的組み合わせによって作戦は無残に崩壊させられたわ。GMのせいよ!」
GM「ええっ、私のせいですかぁ!?」
エア「黒々とした日焼けに、白い歯に、上半身裸でふんどし!
抱えた白いギターは汗でてかてか。こんな健康的な蛮族は滅ぶがいいわ!」
ということで戦闘です。ここで倒しちゃうと島への潜入に困りそうですね。どこかの魔法戦士みたいに。
1ラウンド目
先制は取ったので、まずはニゲラが荷物から飛び出してパラミスを使いつつ殴ります。
ニゲラ「うわ、濃ッ!」
続いてジークが"ブレイブハート"を全員にかけ、メッシュが投げようとして失敗。
最後に出てきたイスミーの"バースト・ショット"を食らって大ダメージです。
相手のラウンドで船員達も武器を持って駆けつけますが、戦力差がありすぎて近づけない。
インキュバスは"フォース・イクスプロージョン"でぞんざいズに大ダメージを与えます。
2ラウンド目
怪我はエアが治します。メッシュが投げ、ニゲラに絡み取り、挙句ジークのクリティカルと絶好調。
そしてトドメとばかりにイスミーの"バースト・ショット"が当たりますが、<消魔の守護石>で辛うじて生き延びます。
生き残ったインキュバスは"エスケープ"で仲間と一緒に逃げてしまいます。
インキュバス「ばっはは〜い、可愛い子猫ちゃんたち」
エア「最後まで生理的にむかつくヤツ!」
これは12レベルの神聖魔法で、対象を最寄の神殿に瞬間移動させるというものです。
対象の部位数だけ拡大しないといけませんが、消費MP3点と比較的軽いので大人数運ぶのも可能。
この場合はきっと浮島にある神殿に逃げたんでしょうね。敵にもぞんざいズの存在が知られてしまいました。
その後の探索で幽霊船の航路に浮島の位置を足した海図を見つけますが、現在位置までは分からない。
そうして途方に暮れている彼らのもとに一隻の船が近付いてきます。警戒した様子ですが会話ができる程度には接近します。
指揮を取っているのは二十代半ばの背の高い女性です。ちょっと鍛えたいい身体をしているらしい。
エア「ニゲラみたいな」
GM「そう、ニゲラみたいな」
ニゲラ「うわーん、ダイエットするー」
スポーツマン体形なら痩せる必要はありませんね。別の世界には筋力24で悩んでいる女の子だっているんですよ。
女「貴様たちは、浮島の物資を運ぶ狂信者たちか!」
ジーク「貴方たちは、新しい神の信者の方々ではないのですかー?」
女「ふざけるな!」
メッシュ「もしかすると、浮島の人々に酷い目にあわされたりした人ですかー?」
女「そうだ!」
どうやらシフェナの仲間ではないようですね。第三勢力、敵の敵は味方かもしれません。
ちなみに相手の船には船籍を表すものがありません。
ジーク「じゃあ、海軍じゃない。もしかして海賊か?」
女「そうだ」
イスミー「もしかして、やつらにすげー迷惑してるんでやすか?」
女「滅茶苦茶している!」
メッシュ「少しお話してみませんか?ちなみに……我らがリーダー、ジーク様はいい男ですよ?」
女「もっといい男を知ってるから、いい」
またフられた。でも既に好きな人がいるのなら仕方のないことです。年上の女性よりロリっ娘の方が相性がいいですね。
ジーク「お前たち、あの信仰宗教団体の敵なのか?だったら、知ってることを教えてくれないか?」
女「何を言ってる。貴様たちこそ、あの胡散臭い狂信者たちの仲間でないといえるのか。できるものなら証明してみろ!」
エア「はーい。はーい。わたし、ルーフェリアの神官ですー。
ルーフェリア様の名において、ご用命はありませんかー?神聖魔法使えますー」
メッシュ「……という、狂信者の一種だけど、扱い易い神官を乗せています。他の神の神官が立ちいる隙はありません」
エア「他の神様の信者など追い出しまーす!……って、誰がそこまでするか、説法すんぞ!」
女「確かに他の神の神官がいるということは、連中の仲間であるはずがない。ごめん。
アタシはアデリーナ。紅旗双島海賊団の首領を務めている」
話は聞いてみると彼女達はリオスの私掠船で、デーニッツ商会からみかじめを貰っている海賊でした。
もともと浮島は彼女達のアジトだったのですが、例の宗教団体に奪われてしまったようです。
メッシュ「海賊の癖にしょぼ……」
アデリーナ「何を言ってるんだお前たち!滅茶苦茶強かったぞ!12レベルだぞ!他にも色々あるんだぞ!(机バンバン)」
ニゲラ「やっぱり幽霊船は、向こうについてた?」
アデリーナ「ついてた。お陰で何人も部下を持っていかれたよ」
殺されて"クリエイト・アンデッド"の素材にされたか。本当にミルリーフみたいな連中ですね。
敵の構成ですが、人間に似た美形の男が首領で、幹部は羽つきの男女、特徴的な耳のルンフォ、巨大な姿です。
順にアレン、インキュバス&サキュバス、シフェナでしょうね。巨大な姿は謎ですが蛮族っぽい描写です。
その他細かい種族や技能の構成なども知りたいのですが。
アデリーナ「……すまん。うちの連中はアタシを含めて、そんなに知恵のめぐりがよくなくて……」
つまりセージ技能がないので正体不明。幽霊船はデータは不明だけど何となく分かった感じですかね。
アデリーナ「すげーのよ!ぼあーんとなって、しゅーっとなって、ぶしゅーって……」
魔法使いも少ない、というか下手したらいなくて呪文の正体すら不明という状況ですね。
アジトを奪われてからも、嫌がらせのように敵の物資を奪って少しでも疲弊させようとしているようです。
ところが最近アデリーナの恋人であるリフェールというリオスの若い軍人が島に潜入捜査をしているらしい。
アデリーナ「実は頼みがある。リフェールと接触を持って、無事な姿を確認して欲しい」
現在彼とは<通話のピアス>でも連絡が取れません。上手く潜入しているとは思うのですが、やはり心配なので。
アデリーナ「リオスの海の平和を非公式であろうと、一端を担うものとして、
河口から幽霊船が現れたという噂を聞いた時に、追いきれなかったのは落ち度だと思っている」
例のコラーロ河に幽霊船が現れたという噂ですね。幽霊船がそっちから現れたということですか。
すると河を遡ったアイヤールあたりが怪しくなってきますが、一体どこで発生した幽霊船なんでしょうね。
依頼を受けることについては元から潜入する予定だったついでですが、問題は報酬ですね。
9〜10レベルの報酬の目安は1人1万ガメル、8〜9なら8000ガメル。安く見積もっても4万ガメルにはなる。
イスミー「あ、ちょいと待ってくだせえ、実は後一人仲間がいるんでさあ!」
ジーク「へ?ソラの分は要らないだろ?むしろ、あいつが経験点にならないかと心配なのに」
イスミー「そうじゃなくて、12レベルの仲間がおいらたちにはいるじゃねえですか!」
オクタンですか。確かにイザという時には物凄い戦力になりますけどね。
ニゲラ「ええーっ、それありなんですかぁ?」
メッシュ「八部位ということは、あっはっは、安く見積もっても六万四千ガメルの仲間ですな」
アデリーナ「それは無理ー!」
ニゲラ「すごーい、いつの間にかニゲラたち、パーティ総額十万越えの冒険者に!」
アデリーナ「必要経費は出すから、勘弁」
実はルールブックには10レベルまでの報酬の目安しかないんですよね。
SWだと(冒険者レベル)×(冒険者レベル)×50〜200ガメルという指標があったのですが。
果たして12レベルで八部位の魔法生物にいくら出すべきか。騎獣なら維持費を必要経費扱いでいいかもしれないけど。
具体的には騎獣の適正レベルの最低値×100ガメルなので、イスミーは「シフェナ」に700ガメルを毎回払ってます。
あとアデリーナはぞんざいズに<導き貝>というアイテムを貸してくれます。1万2520ガメルの品ですね。
これは半円の真珠がそれぞれに装飾された一対の二枚貝で、水に浮かべると片割れのある方向へ漂います。
恋人同士が持つことで知られるアイテムであり、当然片割れをリフェールさんが持っているので島の位置も分かる。
エア「なるほど、これでいる方向は分かるのね。本人が持っていれば」
ジーク「まだ、お前のことが好きならな」
アデリーナ「がーん!」
それと浮島の地図も書いてくれます。それは佐渡島のような形状をした双子の島で、人工的にくっつけたものらしい。
島には家、ドック、集会場、溜池と色々な設備があって、自然の森なんかもある。思ったより立派な島でした。
特に溜池は大切ですね。浮島だから井戸もない。真水を蓄える設備は死活問題です。
エア「みなさん!平和になったらルーフェリアを信仰するのです!」
"ピュリフィケーション"で海水を真水に変えられるし、"ウォーター・ウォーキング"で海面を走って突撃可能。
湖で生まれた神様ではありますが、海においても結構便利ですね。そういえば他に水の神様ってあまりいないし。
水を作るなら"慈雨神"フェトルというのもいます。こちらが司るのは雨と雷で、農民や船乗りの信者が多い。
メッシュ「これは……そのうち「海賊神ルーフェリア」として栄えるかもしれません!」
エア「不名誉な!ルーフェリアの旗を見て商船が逃げ惑うことになるじゃないの」
メッシュ「これからは海の文字もつければいいんですよ」
エア「"海の神"ルーフェリア?」
メッシュ「"海水の神"ルーフェリア」
エア「何故!一気にグレードダウンした気がする!」
海賊帽子を被ったルーちゃんが可愛い過ぎる。冗談抜きでそういう形で布教すれば他の地方にも広がるかも。
思えばフォーセリアの頃も海の神様ってマイナーでしたね。ミルリーフは印象最悪だし、グラーミアはマイナー過ぎる。
そもそも海が混沌の象徴ですからね。アレクラストとしては公式で海の神様は未設定で終わっていた気がします。
それでも色んな作品で海の神様という単語が出てくるのは、迷信深い海の男たちに海の神様が不可欠だからかもしれない。
あとは潜入方法ですね。遮蔽物は多いし、<空飛ぶほうき>もある。海中や空中から接近するのも不可能ではない。
ジーク「おい、うさぎ。いい方法がある。今から、オクタンを出すぞ」
イスミー「はぁあっ!?な、なんででやすか!」
ジーク「あいつを倒すと……その経験点で俺はフェアリーテイマー技能を上げられるんだ!
それで"ボトムウォーキング"を覚える」
ジーク「鬼やぁ!兄貴は鬼やぁ!」
メッシュ「ジーク様、いい感じに外道です(親指ぐっ)」
これは7レベルの妖精魔法で水中呼吸が可能になるというもの。SWでいう"ウォーター・ブリージング"ですね。
その名の通り水底を歩いている限りペナルティも入らない。ただし泳ぐ時はその限りではありません。
持続時間も1時間と長いので潜水して潜入するには最適の魔法なんですね。エアは元から必要ないので4人でいいし。
★疑惑の鳥飛来
潜入を決めたぞんざいズは海賊船に乗って浮島へと向かいます。近くまで行くといつものようにメッシュが斥候に出ます。
今回のメッシュは<空飛ぶほうき>に乗り、ジークに"サイレントムーブ"をかけてもらって上空から島を偵察します。
すると双子の島の左側は一般信者用なのか人が沢山生活していて、家が増築してあったりと結構手を加えてありました。
右側は幹部用と思われます。舞台があって、その周りに椅子を並べて集会場のようにしてあり、ドックや溜池もこちら。
そうして偵察していると一羽の隼が近付いてきます。
メッシュ「おやおや小鳥さん、お散歩ですか?」
言わずもがなソラの使い魔のフェイです。もしソラがこっち側にいたらフェイを偵察に行かせられたんですよね。
フェイはホウキの端っこにちょこんと止まり、何らかの意思疎通を行おうとしているようでした。
ところがメッシュは大変なことに気付いてしまいます。
メッシュ「あ。そうです。いいことを思い出しました」
GM「ん?」
メッシュ「私、彼女が使い魔を連れていることを、知りませんでした!」
そう、メッシュにはソラがフェイを作り出して以降の記憶がないのです。一度の過ちがどこまでも祟ります。
もっとも《魔物知識判定》で知名度8を抜けば使い魔であることだけは分かります。メッシュでも分かりそうなものです。
ちなみに使い魔は《正体露見=ソーサラー技能》なので魔術師なら判定不要です。まぁその魔術師もいないんですが(笑)
メッシュ「これはこれは。なんて珍しい鳥!しゅばっ!(捕まえた)」
フェイ「ぽーっ!」←ハト?
メッシュ「偵察はしたし、珍しいお土産もできたので、戻りましょう」
ジーク「そして、俺たちは途方にくれるわけだな。それ、見たことあるぞ」
エア「こ、これは……ソラ!ある意味でかしたわ、ポンコツ」
ニゲラ「うわー、これがソラさんなんですぅ?ちっちゃーい」
イスミー「ご姉妹、あまり似てやせんねえ」
記憶がないなりにいい働きでした。これでソラとちょっと意思疎通できますね。
隼だから細かいニュアンスは伝えにくいだろうけど、こっくりさんみたいにして会話する伝統芸もありますし。
ちなみに11レベルの真語魔法には"ファミリアU"というのもあって、上位の使い魔を作ることができます。
こちらは5レベルで《自由意志》を持ち、会話も可能という優れものです。ただし言語は魔法文明語です。
エア「そこに座りなさい!(びしっ)」
GM「……ぱた。死んだ振り」
メッシュ「すごい、ルーフェリア神官には死の呪文があるのですか!」
エア「こらぁああ!粘土に戻ってないから振りだとわかっとるわ!」
フェイはお姉ちゃんに甘える素振りを見せてご機嫌取りをしますが、エキサイトしたお姉ちゃんは止まりません。
それでもフェイは敵対するつもりはないと訴えます。ソラだって連中の危険さを知らずにいたようだし。
ところがここでジークの思わぬ行動がソラを驚かせます。
ジーク「ソラ、お願いだ。戻ってきてくれ!(土下座)」
メッシュ「うわー……嫁さんに逃げられた亭主のようでございますよー」
エア「……うわー……何かジーク……ごめんね」
ジーク「迎えに行くからなっ!」
これがソラを一気に上機嫌にさせます。八の字を描いて飛ぶフェイは島の地図の一点をクチバシで指します。
そこは右側の島にある屋敷の母屋です。それなりにいい所に部屋を貰っているようですが、もう用はないでしょう。
気分はすっかり囚われの姫君。「マリ○早く来てー」とばかりに迎えが来るのを待っているんでしょうね(笑)
まぁここまでやっといてジークに他意はないというのが罪作りですけどね。
メッシュ「どうせ、セージとソーサラーがいないと不便だと実感したからでしょう」
ジーク「あとは、使い魔って便利だなと思った、真剣に」
エア「……無残なリ、妹」
ジーク「人格とか、性癖とか、経歴とかどうでもいい。あと、ソラがいないとエアの機嫌が悪くなるんだよ」
そのうち思いつめた女の子に刺されやしないかと心配です。
ジーク「あ、俺エア大事だぞ?」
エア「はいはい。その名前の上にキュアってルビが振られてるのが見えるわ」
ジーク「守らなきゃいけないっていう大事ならメッシュだな。一回うっかり死なせてるし」
メッシュ「おっと。思わぬところに胸キュンで御座いますよ」
ジーク「あとは……俺は今、守らなきゃいけないウェイトに、お姉ちゃんの存在が確実に増してるんだけどな」
それに弟も入っているでしょうし、他意はないけど純粋に身内を大切にしているならいい奴ですね。
ソラもそんな身内の1人なら、彼女の期待するものとは違う形の愛があると考えるといくらか救われますかね。
いよいよ潜入ですが、その前にオクタンはやはり連れて行きます。例の黒マッチョから奪った船に乗せればいける。
海賊船を港につけるわけにはいかないので、沖合いまでは"ウォーター・ウォーキング"を使います。
これを足の部位にかければミズスマシかアメンボのようにスイーッと水上を移動できるのです。
肝心の潜入方法についてはアデリーナから<うろこの仮面>を2枚借りて使います。
これをつけている限り水中での呼吸が可能になるという便利なもの。お値段4万ガメルの高級品です。
ただし装着時に会話は不可能になるし、魔法も使えない。エルフの〔優しき水〕ほど自由ではない。
それでも持続時間に制限がないのはやはり便利です。潜入時は2人ずつ仮面をつけていきます。
最初に潜入するのはメッシュとイスミーで、エアは2人を送った後仮面を持って船に帰還。
今度はジークとニゲラが仮面をつけて島に潜入し、無事に発見されることなく島へ入れました。
ちなみにイスミーが先発に選ばれたのは彼が<姿隠しのマント>を持っていたためです。
これは魔動機文明時代の隠密で使用されたとされるマントで、魔法の染料で染められています。
フードを被って全身を包むことで背景に溶け込み、《隠密判定》に+4の効果があります。
ただし主動作や通常移動で効果は切れるし、使用は1日1回の制限があってお値段8000ガメル。
★赤耳潜入大作戦
ぞんざいズが上陸したのは浮島の基部になっているマングローブが露出している部分です。
ただし長い時間をかけて堆積した土や、運び込まれた土から芽吹いた雑草のお陰で茂みになっています。
時刻は夕方。またメッシュが見つからない程度に《隠密判定》で接近して様子を探ります。
すると信者達の生活環境がよく見えるのですが、宗教団体のわりには結構フリーダムでした。
服装もバラバラで人間やドワーフが多い。神を信仰しないルンフォやグラランやタビットはいません。
見る限り彼らは助け合って生活しているようで、質素な生活ながらも楽しそうに見えます。
信者「もしかして足りないのかい?」
信者「僕の分をお食べよ」
信者「君疲れていそうだね、大丈夫?」
むしろお節介なぐらいに助け合っています。これだけだと悪いことをしているようには見えませんね。
ただし蛮族らしき人物の姿もあって、右側の島に入ろうとする人族をさり気なく止めたりしています。
左側の島が一般信者用だとすると外面のいい環境が見せられていて、核心は右側というパターンですかね。
ついでに<導き貝>を使ってみると右側の島の方を指したりするので、やはり右側を調べる必要がありそうです。
しかし力一杯パンピーな集団にフル装備のぞんざいズが入ったら一発でバレてしまいます。
そもそもメッシュやイスミーなんて姿を見られただけで不審人物以外の何者でもありません。
そこでイスミーが"ディスガイズ・セット"を使って赤髭のドワーフに変装して単独潜入を試みます。
メッシュ「オクタンは、なるべく高価に売り払いますからね(肩ポン)」
イスミー「えええーっ!おいら意地でも生きて帰ってきやすよっ!」
これは6レベルの魔動機術で術者が人族または蛮族の姿に変装するというものです。持続時間は1時間です。
似たような魔法に4レベル操霊魔法の"ディズガイズ"がありますが、これは他者にもかけられます。
そうしてドワーフの姿のイスミーが右側の島に近付くと、にこにこした顔の男性が声をかけてきます。
信者「やあ、ご同輩。見かけない顔だねえ」
イスミー「ほっほっほ。いやぁ、最近こっちに来させてもらったんでさあ」
信者「そうかそうか、ここはいいところだからね。みんなで助け合う素晴らしい土地だよ。さあ、君も少し呑みたまえ」
すると彼は酒を持ってきてくれます。真水が貴重なので酒の方が安価なのです。ラム酒とか海賊ものによく出てきますよね。
しかしイスミーは<酒の種>を持っていたのでこれを御馳走すると、一気に人が集まって宴会モードに突入です。
イスミー「<酒の種>をいくつか持ってきたんでさあ、みんなで呑もうと思いやしてねぇ!」
信者「それはすごい!」
信者「おーい、みんな<酒の種>だってさ!海の水を汲んでこいよ」
信者「みんなで呑もう呑もう!」
信者「君のものは僕のもの、僕のものは君のものだからね!」
一見ジャイアニズムっぽいけど、自分のものを他者に分け与える点が違いますね。
さっきから分かりやすく描写してくれているように、こうして他者と分け合い共有するのが教義のようです。
そこでさり気なくリフェールのことを聞いてみると、彼はリフという偽名でドックで働いているようでした。
イスミーは彼に昔世話になったから挨拶したいとでっちあげ、親切な信者に案内してもらいました。
そうして右側の島を見張っている蛮族らしき人物に話しかけたのですが、適当にあしらわれてしまいます。
一般信者との温度差が凄いですね。やはり右側が幹部達のいる核心で、一般信者とは一線を画しているのか。
ところがここでイスミーはとんでもない失態を犯します。
イスミー「へい!どうしても会いてえんでやす!アデリーナさんがよろしくっていってやしたんでー!」
これがマズかった。宗教団体と敵対しているアデリーナとの繋がりがバレたら彼の身も危うくなる。
見張りの男も急に興味を持ったように積極的にイスミーを世話しようとします。
見張り「そうかそうか、リフはアデリーナさんの知り合いなのか。
それは、大切な伝言があるんだろうなあ、まかせろ今すぐに会わせてやろう」
イスミー「へい。ありがとうごせぇやす!(嬉々)」
そうしてイスミーが案内されたのはドックにある作業部屋でした。個室でちゃんと鍵もあるんですよ。
イスミーはそこに案内されて素早く鍵を掛けられます。ええ、ありていに言うと監禁されました。
最初は首を傾げていたイスミーですが、仲間達の説明で自分の致命的失敗に気付いて愕然。
イスミー「あぁああああ!!おいらは、なんて取り返しのつかねえことを……!!」
エア「どうする、これってミッション失敗かもしれないわ」
イスミー「すいやせんー、すいやせんー。おいら考えが足りませんでしたっ。
完全に忘れてやしたっ!潜入が上手くいって、脊髄反射で受け答えしてやしたっ!(土下座)」
やはりぞんざいズにクレバーな潜入捜査とか無理だったかな。ゼルブリスでは結構上手く立ち回ったけど。
まぁイスミーの個人的失敗なんですけどね。メッシュだったらいつもの口先の魔術師っぷりを発揮してたろうに。
困ったことにジーク達はこの状況を知らないんですよね。連れて行かれたあたりまでは見えていたかもしれないけど。
やがて追及を受けたリフェールさんが隣の部屋にぶちこまれたらしく、壁を叩いてコンタクトを取ってきます。
イスミー「こんこんと失意の中で叩き返しやす」
GM「じゃあ、さらにコンコン」
イスミー「コンコン……ガツンガツン、と途中からヘッドバッドになってやすよ!超反省のポーズ!」
リフェール「うるさいっ。君は誰なんだ?僕はリフというものだ」
イスミー「ああ、リフェールさんでやすか!」
エア「そこの、柔らかい毛皮しか取り得のない赤うさぎ!
こんな誰が聞いてるかわからない場所で、本名をゲロれるわけないでしょうが!」
スパイの本名を大声で元気に確認するとか、最早コントか。
イスミー「すいやせん。おいら、アデリーナさんとリフさんの関係を口にしちまいやした……」
リフェール「君、あほだろう」
メッシュ「一撃で見抜きましたな、なかなかの密偵に相応しい観察眼です」
リフェール「君は、なんで僕の苦労を残らず粉微塵にするのかな!まだばれていなかったのに!」
実際は灰色っぽかったようですけどね。でもドックで働くところまでは彼にとっても都合がよかった。
それが信用されてのことなのか、見張るための処置だったのかは、この状況では最早どうでもいい(笑)
イスミーならこの部屋から脱出して2人で逃げるのも不可能ではありません。
鍵は"ノッカー・ボム"で粉砕し、収納スフィアに入れた「シフェナ」に"タンデム"できるし。
これは正式には<魔動バイク収納スフィア>といいまして、魔動バイクを補助動作で出し入れできる1万ガメルの品です。
イスミー「そうすると大きな音が立って、あやしい信者が雲霞の如く集まってくるって寸法で……ってダメじゃねえですかい!」
島にいる限りは下手に逃げ出しても囲まれるだけでしょうし。仲間の所に敵を案内するだけかもしれない。
もういっそ力押しでもいいんじゃないかと思えてしまいます。相手の戦力が幹部連中だけならゴリ押しで何とか。
★ぞんざい勇者団の救出作戦!
そんなことがあったとは知らないジーク達でしたが。
ジーク「うーん、帰ってこねえなあ、イスミー」
メッシュ「ジーク様、あやつは囚われたに一票投じたいと思います」
ニゲラ「(挙手)はーい、ニゲラもそう思いまーす」
エア「何を言ってるのみんな!わたしは、誰よりもあいつを信じてるわ……!……ええ、捕まったってね」
ということで全員一致でイスミーは捕まったという最悪のケースを想定して動きます。
夜になるのを待ってまた海に潜って島の反対側から再上陸して、イスミーを捜すことにしました。
この時メッシュだけはスカウト技能を使って地上を移動したのですが、信者達の宴会で気になる言葉を聞きました。
信者「アーメス様、今日も一日ありがとう、よい助け合いができましたー」
信者「宥和神アーメス様、ばんざーい」
メッシュ「……しまったっ、一回死んだのは何処までも祟る!この名前、聞き覚えがありますよ!」
そう、以前調べた《白峰領》の地底湖にある魔法装置にその名前が刻まれていましたね。
しかしその時の記憶がないメッシュには分からないことです。よりにもよって1人でいる時に聞かなくても(笑)
まぁ敵が崇める神様の名前だという察しはつきますし、覚えておいてジーク達に伝えれば思い出すでしょう。
そうして移動したぞんざいズはドックの正面にやってきます。そこには2人ほど見張りがいました。
見張りA「あーあ。リフのヤツ、やっぱり間者だったみたいだぜ」
見張りB「怪しいとは言われてたよな、<通話のピアス>とか持ってたらしいし」
見張りA「あーあ。あのドワーフ、バカだよなあ」
見張りB「全くだ、リフも友達は選ばないとダメだよなあ」
これでイスミーが捕まったどころか、リフェールさんに迷惑をかけていることまで分かりました。
見張り2人については"サイレントムーブ"で死角まで移動して不意打ちをし、あっさりと倒してしまいます。
明かりを持っていなかったので蛮族だろうと推測していましたが、案の定正体はレッサーオーガでした。
オーガではなくレッサーオーガでは今のぞんざいズの相手になりません。以前のボスも今では雑魚、強くなったものです。
ここでレッサーオーガはアーメスの聖印を持っていましたが、この意匠は例の魔法装置に刻まれていました。
これのお陰でジークとエアも魔法装置とアーメスの関連を思い出し、この因縁の深さを痛感したのでした。
ちなみにアーメスの聖印は4本のロープを独特の形に結んだものとして表現されます。
SW2.0は各神様の聖印がちゃんと設定されているんですよね。フォーセリアだと結構曖昧だったけど。
例えばルーフェリアは湖を示す円に水滴が3つぶら下がっている形です。この水滴を透明な水晶にするのが通。
またレッサーオーガはドックの鍵束も持っていたのでこれでイスミーを助け出せると取り上げようとしました。
ところがこの鍵束には<警戒の石>がついていまして、うっかり鍵束に触ったことで騒音をあげてしまいます。
これは薄赤と紫の二つの石からなる飾りで、あらゆるアイテムにつけることで騒音をあげるようになります。
音は石を取り付けた人以外が触ると発せられ、30秒の間けたたましく響き渡ります。お値段は2480ガメル。
この騒音にスニークミッションを諦めたぞんざいズは力押しでいくことにします。結局こうなるのか。
ジーク達はドックの裏側に走り、イスミーは例の方法で鍵を粉砕してリフェールさんと「シフェナ」に乗って脱出。
ジーク「うわー、メッシュが轢かれたー!」
イスミー「えええぇ!?」
メッシュ「くぅ……鍵を開けようとしたところに突っこむとは、うさぎめ……祟ってやる、ばた」
ジーク「ああ、うそうそ。冗談だ。生きてたんだなうさぎ」
エア「墓碑銘、用意してたのに」
ニゲラ「……残念」
まぁリフェールさんは一応保護しているし、本当に最悪のケースは避けられたかな。誰のせいで捕まったかはともかく。
その頃には周囲は騒がしくなり、脱出は難しそうです。
エア「っていうか、わたしたちソラに、まったく接触持たなかったのよ」
ジーク「忘れてた!」
イスミー「ひでぇ!兄貴ひでぇっすよ!あんなにきっぱり迎えに行くって宣言してやしたってぇのに!」
ジーク「そうだよ!俺あいつに土下座したのに!」
エア「……色んな意味で、妹にはジークに夢を見るなって諭してやらなくちゃ」
そうこうしている内に敵がわらわらと集まってきます。海からはゴーストシップと、海の男インキュバスが。
そして島にある首領の邸宅からはブラッドトロールが出てきます。例の巨大な姿の正体でしょうね。
ブラッドトロールは13レベルの蛮族です。ダークトロールの上位種であり、トロール達の統率者です。
神聖魔法13レベルや《暗闇の再生=10点》など、全体的にダークトロールを強化したものになります。
更には《魔力撃》は《強化魔力撃》になっています。魔力17なので17点もダメージが跳ね上がります。
ただし《弱体化》の特徴も健在であり、太陽の下では命中力と回避力に−2のペナルティが入ります。
《強化魔力撃》はPCも習得できる戦闘特技に類似したものがありまして、その名も《魔力撃強化》です。
この特技によって《魔力撃》は強化され、ブラッドトロールの《強化魔力撃》と同等の性能になります。
ダメージに魔力点が追加されるのは変わりませんが、命中力に知力ボーナスが加算されるのが特徴。
その代わり回避、生命抵抗、精神抵抗へのペナルティは−2になり、強化ではなく過激化とも言われます。
ちなみにこの効力はON/OFF不可のようです。一度習得したら過激になったままになります。
例えばこのブラッドトロールの場合、通常は命中力18(25)でダメージは2D+14点です。
これが《強化魔力撃》を宣言することで命中力22(29)でダメージは2D+31点にもなる。
期待値にして38点というダメージはメッシュだったら一撃でHP半減どころの騒ぎではない。
その代わり回避力15(22)が13(20)になってこちらの前衛の命中力が凌ぎますけどね。
しかし流石の実力です。「ミストキャッスル」で街を牛耳る幹部の1人と同族なだけはありますね。
ブラッドトロール「まさか、借宿とはいえ、我らが教えの庭に、この様な鼠が入り込んでいるとは思わなかった」
イスミー「鼠じゃねえや!こちとらうさぎでぃ!」
ジーク「俺たちだと様になんないけど、お前がそれをいうと、ちょっと納得させられる気がする」
ブラッドトロール「しかし、よい度胸だ。堂々と我らの前に現れるとは」
イスミー「いやぁ(テレ)」
もしこんなのがいると分かっていたら昼間に行動に出ていたんですけどね。何でよりによって夜に(苦笑)
もしティダンの神官がいたら10レベルの"デイブレイク"が使えたかもしれませんけどね。
これは小さな太陽を生み出す魔法で、半径30m内を太陽の下にいるのと同じ状態にします。
トロールはもちろん吸血鬼のように太陽が苦手な魔物と戦う時にはとっても便利。時に切実なぐらいに。
ブラッドトロール「我が神、アーメス様が、まだ完全に復活なされておらず。ことを全てなしておられぬ今、
まだ我らは表の舞台に出るわけにはいかぬ。小さき者よ。我らに宥和されるがよい」
エア「黙れ、邪神の徒め!海賊たちの信仰心は我が神ルーフェリアががっちりゲットした!
あとはこの浮島を再び拠点として取り戻すことによって、我らが神の教えの偉大さを見せ付けさせてもらおう!」
ニゲラ「エアさん、それ目的ちがう!」
メッシュ「うわー……生臭い宗教戦争の現場ですねぇ」
エア「これは聖戦である!」
イスミー「そっすねー」
同じ小神同士、結構いい勝負かもしれません。これが大神とか古代神になると世間体もあって自重しそうですが。
ジーク「なあ、お前どこからきたんだ?」
ブラッドトロール「えーと。……アイヤールからだが」
折角格好よく決めてたのに、間の抜けた質問でコントみたいな雰囲気になりました。
でも彼らがアイヤールの、それも《白峰領》の地底湖に陣取っていた一派であることは確かなようです。
ということはやはりエルヴィーンが以前信仰していた神はアーメスなんですね。色々煮え湯を飲まされている神様ですね。
ブラッドトロール「しかして、貴様たちが憂えることはない。なぜなら我らが御大が、現在攻略の手を伸ばされておるがゆえ」
つまりルーちゃんやリアみたいに生身で活動していると。多分分体なんでしょうが、それがアレンの可能性が高い。
それにしてもこの世界の神様はそんなに気軽に出歩けるなんて、フォーセリアの頃とは本当に違うんですよね。
まぁ殆どの神は天界で眠りについていることになっていますが、古代神であるにも関わらず出歩くダメ神もいるし(笑)
エア「何を言ってるの、ルーフェリア様はちょろちょろとなんか歩いていないわ!」
メッシュ「そうですか?結構気軽に……」
エア「しゃなりしゃなりと歩いておわすのよ!」
メッシュ「……がっかりですよ、貴方には」
ちなみにリアは結構アグレッシブに出歩いていて、困った人がいると冒険者を使って助けたりしているとか。
この分だとやっぱりどこかにフェがいるんだろうか。チビーナズだって3人姉妹だったし、3人というのは切りがいい。
先制はメッシュが取って戦闘開始です。今のところ敵はブラッドトロールだけですが、もたもたしていると増えるかも。
1ラウンド目
エアが"セイクリッド・ウェポン"を自分以外の4人にかけます。イスミーは射撃攻撃なのでダメージは上がらない。
しかし命中力+1はちゃんと効果があるので有効ですね。まぁこのラウンドは命中関係ない"グネレード"なんですけどね。
「シフェナ」と自分が"グレネード"を連発し、抵抗されるもそれぞれ10点、計20点も削りました。
続いてニゲラが全ての練技とパラミスを入れて絡み攻撃。これが腕に絡んだ上にダメージもいくらか通します。
ブラッドトロールの防護点は14点。現在のニゲラは威力22+17点なので7点ぐらいは通した筈です。
メッシュが《投げ攻撃》をするもいつものお約束で1ゾロ振って失敗。《ファストアクション》で投げ直して今度は成功。
ここでも7点ほど通しますが、《踏みつけ》は失敗でした。最後にジークが《マルチアクション》で攻撃です。
この"カオスショット"と近接攻撃がやはり7点ずつ通し、累計で50点ぐらいはHPを削ったことになります。
ブラッドトロールのHPは111点と流石のもので、しかも<剣のかけら>が13個(65点)も入ります。
一部位なのでそれが全て加算されて176点ぐらいになりますね。流石のタフネス、しかも毎ラウンド10点回復。
しかも今回の戦闘は色々トリガーがあるらしく、HP50点減少で敵に増援が発生しました。
参加してきたのはダークトロールが2体です。以前戦ったエルヴィーンの同族ですね、今なら雑魚だけど。
ダークトロールはブラッドトロールと自分達に"ヴァイス・ウェポン"と"ヴァイス・シールド"です。
ブラッドトロールは起き上がって自分達に"ブレスU"です。まずは耐えて支援を充実させる作戦のようですね。
これは11レベルの神聖魔法で全ての能力値を+6するという非常に優秀な支援魔法です。
固定値である魔物の場合は各種数値が概ね+1されるし、HPとMPは6点ずつ増える感じですね。
ここで気をつけたいのは《強化魔力撃》です。当然筋力+6の分でダメージは+1ですが、知力も関わってきます。
知力が+6されれば知力ボーナスも魔力も+1されて、計命中力+1でダメージ+2と地味に増えるのです。
2ラウンド目
このラウンドでこちらにも増援がきます。海賊船に乗ったオクタンが幽霊船の足止めを始めたのです。
イスミー「オクタン!そこで時間稼ぎをしてくだせえ!」
メッシュ「一応微弱ながら、自立思考機能があるのですね」
ドゥーム系の知能は「命令を聞く」程度ですが、何故かテンペストオクタドゥームは「人間並み」です。
正確にはサプリメント収録の名前のある個体がそうなのであって、全ての個体でそうだとは限りません。
しかしこういう展開を見るとご主人様を守ろうとする機械の健気さだと考えたい。タチコマみたいな。
オクタンの魔法の弾丸は強力な兵器ですが、幽霊船とインキュバスが相手では流石にキツイでしょう。
実は既にGMは模擬戦闘を行っていまして、今後のラウンド経過に合わせてそれを適応していきます。
良い結果もあれば悪い結果もあり、最悪オクタンが破壊されてぞんざいズが挟み撃ちになるかもしれませんね。
エアは全員にカンタマをかけ、ニゲラは絡めたまま鎌でザクザクと切りつけてきます。
メッシュは《牙折り》を入れつつ殴り、相手が防御ファンブルで「最終的な算出ダメージを2倍にする」が出ます。
これが38点と大ダメージで21点も通し、ジークとイスミーの攻撃もガンガン敵のHPを削っていきます。
敵のダークトロールですが、1人はブラッドトロールに"キュア・ハート"しつつジークを殴って回避。
もう1人はイスミーに対して"コアーシブ"です。抵抗に失敗すると攻撃できなくなりますがカンタマで無事抵抗。
ブラッドトロールも"コアーシブ"をエア以外の4人に拡大してかけます。期待値でも達成値24というエゲつなさ。
カンタマが功を奏して失敗したのはイスミーのみ。いつもは危ないメッシュも<月光の指輪>を割って何とかしました。
これで今後はブラッドトロールを撃てなくなりましたね。仕方ないのでダークトロールを狙い続けることにします。
3〜4ラウンド目
ニゲラが再度パラミスを入れつつ、達成値30という素晴らしい攻撃を繰り出します。
メッシュ「ニゲラには援護をもらってばっかりで、援護し返して差し上げされないのが、微妙に申し訳ないのですよ」
ニゲラ「ニゲラは、役に立ててるのが嬉しいので、そう思ってくれるだけで十分ですっ!時々自慢させてくださいねぇ」
ニゲラ「ニゲラは謙虚だなあ」
ところがその攻撃もGMの6ゾロ回避の前には無力でした。折角いい話だったのに、思わず舌打ちするニゲラでした。
しかし達成値30というのはどうやって出したんだろう。鎌なら命中力14で、魔法と練技と絡み時+2入れても18です。
これでは出目11でも29にしかなりませんね。まさか<チェイン&シックル>が魔力+1相当だったりするんだろうか。
それからブラッドトロールはパラミスが入っていても回避できるようになってきます。
火力担当のイスミーが攻撃できないのは辛く、しかもメッシュとニゲラまで"コアーシブ"にかかってジークが一騎打ち。
エアは"バニッシュ"でダークトロールを追い払ったりしますが、ボスはやはり一筋縄では行きません。
そうこうする内にオクタンと幽霊船も乱戦状態に突入し、色々キツイ状況で戦闘は続いていきます。
5ラウンド目
敵対行動が取れなくなったニゲラはジークに"クリティカルレイ"で支援します。
ニゲラ「そして使うカードは……虎の子のSカードです!金のカードはパパにもらいましたから」
これで出目+3ですね。更にイスミーはクリポンでヘビーメイスを作ります。命中性重視で素通し、しかも回りやすい。
残念ながら《マルチアクション》の"カオスショット"は1ゾロでしたが、メイスの方は命中して25点素通し!
それでも倒れないのでエアが"ゴッド・フィスト"を《魔法拡大/確実化》を2倍で行使します。
抵抗は抜けたものの16点で倒しきれず、残っていたダークトロールの"キュア・ハート"が飛びます。
ブラッドトロールはジークに《強化魔力撃》をお見舞いし、42点。8点だけ止めて34点も通してきました。
ここで見ていられなくなった並のオーガが全力移動で突っこんできますがメッシュがブロック。
メッシュ「……勇敢ですが、あほですな。私はやることがなくなってしまい血に飢えていたのですよ。丁度いい」
今のメッシュが相手ではいいようにされるのがオチですからね。経験点おいしいです!
6ラウンド目
ここでソラの詠唱が聞こえてきます。
ジーク「さて、どっちに向けて飛んでくるかなー」
メッシュ「全員巻き込んで、"ディメンション・ソード"!」
イスミー「ぎゃー!」
エア「いや、そのレベルになってる時点で、もう負けでいいわ、わたし」
これは14レベルの真語魔法で、空間を断ち切る刃で射程50mに渡って貫通する斬撃属性の攻撃魔法です。
威力は60ととっても強力。"ディメンション・ゲート"を攻撃に応用した魔法ってところですね。
某SF小説のリープ・レールガンを見た時に私も同じようなものを妄想しましたが、まさか公式で実現する日が来るとは。
実際は"コアーシブ"を解除するための"ディスペル・マジック"でした。ちゃんと味方なんですよ。
まぁ失敗して「ごめん!」という明るい声で謝ってきましたけどね。慣れない魔法を使うから(笑)
エア「これ以上お姉ちゃんから逃げるようなら、お姉ちゃんは貴方から卒業します!」
ジーク「うん、それもいいんじゃないか?」
ニゲラ「そうそう。ニゲラも、こないだお父さんから卒業したしぃ。
家族っていう繋がりは消えなくても、いつか卒業していくものなんですよー」
エア「あ、今の言葉は心の琴線に触れた」
ソラ「そうなの!やっとわかってくれた?」←嬉しそう
エア「……うっわー……隠居してー(遠い目)」
どうせならちゃんと戦闘に参加して欲しいですね。ベ○ータのような抵抗上等のエネボル連発をもう一度。
さて、メッシュはイスミーからもらったクリポンの<ハードノッカー>でオーガを一瞬で瀕死に追い込みます。
ジークはニゲラの"クリティカルレイ"Sランクを受けつつ、"アドバンストヒーリング"で自分を回復。
これは6レベルの妖精魔法で魔力+8点HPを回復させます。今のジークだと16点ほど回復します。
そして《マルチアクション》で再度ぶん殴って22点素通しです。これがブラッドトロールのHPを3点まで削る。
これを聞いたエアは再度"ゴッド・フィスト"でぶん殴ります。瀕死のオーガもついでにぶん殴ります。
エア「ほほ、真の神の拳を受けるといいわ!(ころころ)おおう!あぶない!(出目3)」
ソラ「お姉ちゃん、相変わらず、神様系が絡んだ時は痛々しいの」
例え抵抗できても魔力分で十分致命的であり、ブラッドトロール撃沈!ついでにオーガも死にました。
それにしても"コアーシブ"がキツかった。あれでジークとエアしか戦力にならなくて長引きましたね。
「聖戦士物語」でもそんな展開がありましたが、下手したら攻撃できずに詰む可能性もある恐ろしい魔法です。
「クリスタニアRPG」の"ディスパース"みたいな雑魚撃退用ですが、敵が使うとこんなに怖いとは。
★後始末てんやわんや……そして。
ボスが倒れたことで他の蛮族達は戦意喪失して投降してきました。
オクタンと戦っていた敵の被害も甚大で、インキュバスは死んだらしい。幽霊船も部位が四つしか残っていない。
幽霊船は敗北を悟ると海の彼方へと逃げていきます。流石のぞんざいズもそれを追うことはしません。
オクタンは生きてはいますが部位半減。残った部位は胴体(コア)×1、砲塔×1、脚部×2のみ。
イスミー「ああああっ、ぼろぼろでやすー(涙)」
ジーク「うわ……オクタン頑張ったな……」
こんなにボロボロになりながらも船の上で半分だけの足で立っているオクタンは健気過ぎる。
口をきけないから犬猫のように堪らなくなりますね。「もうお休みしていい?」と聞こえてきそうで。
イスミー「……おいらはいつか、オクタンを治す旅に出たいでやす」
メッシュ「《カイン・ガラ》に持って行けば、治してくれるんじゃないですかね?」
魔動機械の修理は難しいですね。大抵の回復魔法は「アンデッド」「魔法生物」に無効だし。
公式のQ&Aでも通常の手段では回復しないとあるし、自然ならざる存在は強力だけど支援が少ないのです。
14レベルの魔動機術に"マシンリペア"というのがあって、これなら魔法生物の外見と機能を修復することは可能です。
しかしそれでもHPまでは回復させることができない。やっぱりちゃんとした設備で修理しないと駄目なのかな?
ソラ「わー、わー、どうしたのこれっ(すりすり)」
エア「……ソラ、ちょっとそこにお座りなさい」
ニゲラ「来た。お説教タイム」
ジーク「あ。ソラ、先に言っとくわ。敵対しないでくれてありがとな」
エア「ジーク!甘やかさないでちょうだい!」
もともと彼女には敵対する気はないし、蛮族に協力する気もなかったようですけどね。
ただシフェナの大切な人から穢れを取り除きたいという願いに賛同していただけで。
ニゲラ「この方が噂のソラさんですねー。はじめましてー」
ソラ「はじめまして。あーもう、お兄さん、また女の子引っ掛けてるの(むかぷん)」
ジーク「ひっかけてねぇぞ!……あれ?ひっかけたか。ある意味」
勘違いでお父さんに会わせるとか言って連れてきたけど、何だかナンパみたいでしたね。
さてソラの今までの行動ですが、大体推理した通りでワイバーンに引っ掛けられたことで始まりました。
シフェナと穢れの件で意気投合して彼女に協力しようとした。そこまではソラの視点では何らおかしいことはない。
ソラ「で、長いこと一緒にいたらね。なんかすごく、やばいなーこの人って思ったの。だって、ばんばん蛮族いるんだもん」
エア「……よかった。それぐらいの良識は働いたのね」
ソラ「だから、一緒にアイヤールに行こうって誘われたんだけど。こっちで地道に騒ぎでも起こして
足許ぐらつかせられると楽しいなーと思ったの。そしたら……火種、たくさん来襲」
イスミー「火種でやす」
ニゲラ「どうも、火種ですぅ」
ちゃんとソラだって自分の立場で計画を阻止しようとしていたんですね。ちょっと感心しました。
更にはここにあるというシフェナの大切なものを狙ってもいました。
ソラ「それをあたしがゲットすることができたら、揺さぶれたりすると思って」
エア「恐喝じゃないの!」
ジーク「さすが、ソラ。悪知恵が働くなあ」
ソラ「敵の大事なものを確保したら、それって切り札なの」
それはドワーフとグラスランナーの遺体でした。"プリザーベイション"をかけて大切に保存されていました。
イスミーが確認すると紛れもなく冒険仲間のセドリナとウィンプでした。彼らを救うのがシフェナの目的だったのです。
このまま蘇生すれば確実にアンデッドです。だから穢れを取り除く神の奇跡にルーンフォークの身で縋ったと。
彼女からすれば信頼していたイスミーに見捨てられて、孤軍奮闘していた気分だったのかもしれませんね。
エア「一応事情はわかりました。でも色々とご迷惑をかけた人たちがいるので、一発ビンタしておきます」
ソラはこれをフェンサー技能で避けました。しかし「避けちゃった」という顔をしてエアの手を自分の頬に当てます。
ソラ「ごめんね、お姉ちゃん」
この時ばかりはいつものおふざけは無しです。
エア「あーもう……あのね。ソラ」
ソラ「うん、なあに?」
エア「一人で」
ソラ「うん」
エア「勝手に」
ソラ「はい」
イスミー「遠くに出ちゃいけません」
エア「……的なことをいいます。っていうか持っていくなうさぎぃいいい!」
イスミー「あぁああっ、額にハゲができるッ、熱い、熱いー擦らないでくだせええ!」
何故自ら焚き火に飛び込む真似をするんだこのうさぎは。旅人さんの餌になる殊勝なうさぎでもあるまいし。
エア「いいですか。お姉ちゃんは、帰ってくるのかわからない妹を待つ気はもうありません」
ソラ「そうなの?」
エア「それ以上好き勝手するようなら、もうおうちに帰ってこないでください」
エア「じゃ、帰るの」
天邪鬼な妹を追いかける、エキセントリックなお姉ちゃんの冒険はこれで一応の完結です。
内心は嬉しいこともイラッとすることもあるでしょうが、それがこの2人ならではの姉妹愛でもある。
ここからは後始末です。まずデーニッツ商会の船を取り戻し、アデリーナさんに結果を報告です。
あとはアーメスの信者達に色々事情聴取してアーメスとはいかなる神なのかを知っておきます。
これからはアーメス教団との戦いになるでしょうから、敵のことを知っておくのはとても大切です。
"宥和神"アーメスは魔動機文明時代に人族に追われた蛮族が地下で生活する時に誕生しました。
そこは人族以上に雑多なコミュニティであり、それを統率しようとしたある蛮族が神の階梯を昇ったのです。
その教義とは全ての境界を取り払うこと。人と人の区切りや区別、品物や金品の私有の壁を取り払います。
欲しがられれば与え、欲しくなれば与えられるべきだと説かれ、良い方向に信仰されれば仲間思いになる。
ただし大抵は排他的になり、仲間でなければ排除すべきだと考え、他人の富を強奪するのも厭いません。
今回の浮島の左の島のように閉じた世界ではそれが通用したかもしれませんが、世界は外にも広がっています。
それこそクリスタニアの神獣の民のようにどんな世界も外部からの接触を受ける時が必ず来るでしょう。
その時に蜂の巣を突いたような苛烈な反撃に出るようでは、相手だけでなく自分達の首を絞めることにもなる。
理想はわかるけど方法に問題があるという、この手の神様に良くある矛盾を抱えていて面白い信仰ですね。
さて、それからラスベートに戻ると知らせを聞いたベル君が出迎えてくれます。
ベル「兄さん、おかえりなさい!」
ジーク「おお。ベル、やったぞ、積み荷は多少目減りしたけど、船は無事に見つけたからな」
ベル「ありがとう!さすが兄さん……じゃない、えっと、
僕の兄さんなら、それくらいのことはできて当たり前だと思っているけどね!」
ニゲラ「かわいいですぅ」
エア「……うちの妹とは大違いだわ」
ソラ「おねーちゃーん」
普段からそうしていたらお姉ちゃんは間違いなく今以上のシスコンになって、余計にややこしくなっていそうですね(笑)
それはそうとベルは屋敷にジークのお客様が来ていると伝えます。飛行船から降りてきて驚いたとか。
リャン「やあ。みんな久し振りだね!会いたかったよ!」←またお前か
一同「あいたくねー!」
ジーク「帰れよ!それよりムーテスを返せ!そのせいでメッシュが死んだんだぞ!」
居間にいたのは極彩色でした。確かに毎ラウンド1回ずつ庇われていたら生き残っていた可能性が高いですね。
しかし客は1人ではありません。もう1人やんごとなきお嬢さんが極彩色を突き飛ばして、メッシュに泣きつきます。
ホーリィ「会いたかったのだ!すごく探したのだー!」
ジーク「ホーリィ!?何やってんだお前、こんなところに来ちゃいけない立場だろ!」
ホーリィ「だって、だって……我しかこれなかったのだ!お前たちしか、頼れる友人がいなかったのだ!」
エア「友達少ないのね」←言うな
まだ候補かもしれないけど、ほぼ皇女確定のお姫様が勝手に国外に出るなんて無茶苦茶ですね。
見たところ護衛らしい護衛もいない。いたとしてもこの極彩色だけではノーガードにも程がある。
しかし彼女の口から聞かされた事件は、彼女の無茶すら霞むとんでもないことでした。
ホーリィ「頼む、力を貸してくれ!姉上が誘拐されたのだ!
……我の優しい姉上、第一位皇位継承権を持つ、ミスティン姉上が誘拐されたのだー!」
ジーク「――……え」
アーメス教団の存在が明らかになった途端に起きた皇女誘拐事件。
アイヤールで陰謀をめぐらせているというアレンとシフェナとの関連も気になりつつ、事件は更に加速していきます。