「死せる神の島(上)」原案:安田均 著:下村家恵子 出版社:富士見書房

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★はじめに

「死せる神の島」はSWの比較的初期に出された長編であり、現在で言うところのメディアミックス作品でもあります。

この小説自体はコンシューマーゲームの「ソード・ワールドPC」及び「ソード・ワールドSFC」の主軸シナリオの小説化です。

またマンガ版の「漆黒のカース」や、SFCのシナリオ集である「異界の門」という文庫も出版され、手広く展開しました。


また現在では入手困難な「ソード・ワールドSFC・PC全シナリオ100本集 不思議の国の冒険案内」という本もあります。

この「シナリオ100本集」はSFCとPCのマップ付きシナリオが63本、オリジナル・シナリオが37本も収録されています。本当に100本あるんですよ。

また巻末の下村家恵子先生、水野良先生、安田均先生の対談は興味深い内容です。更にはリプレイ「ブラックハウンドの謎」も収録されてます。

「ソード・ワールドPC」は近年復刻し、私もそのお陰で実際にプレイをする事ができました。古いゲームながらにハマる、良いゲームです。


ではこの壮大なメディアミックス作品の主軸は何かというと、世界を震撼させる「ミルリーフ事件」です。

オランを中心にした単発シナリオをクリアする一方で、謎の神像に関わったのをきっかけに大事件に巻き込まれていくのです。

PC版やSFC版ではオリジナルPCを作り、「冒険者の店」にいる複数の仲間PCから仲間を選んで任意のパーティーを組めます。

この小説版ではそのゲーム版の仲間PCの中の5人の冒険者達が主役です。ただの他人ではなく、兄弟という設定も加味されてたりしますね。


ミルリーフは闇の神々の一柱であり、"荒ぶる海の神にして死者の神"という神格を持ちます。つまり彼は水死者の神でもある。

ミルリーフの教えでは「生きる事は苦難」であり、無駄に生き永らえるよりは死を与える事を慈悲と考えます。

神話では人間達が自分の領域である海にまで進出する事を嫌い、闇の神々の陣営について光の神々と戦ったとされています。

その信者は布教よりも死を与える事を本懐としているのですから、当然禁教であり神殿や教団すら成立し難い神です。

人間にとっては邪神以外の何者でもないが、水死体に卵を産み付けるオアンネスという種族にとっては信仰の対象でもある。


この厄介な邪神が復活を遂げてしまいますが、それに例の神像やカーン砂漠の砂漠の民といった謎が多い要素が絡み合います。

物語も折り返す頃になると、ミルリーフの死者の軍勢は世界に死を振り撒き、仲間の1人はミルリーフの信者となってしまいます。

主人公のバートは仲間達と共にミルリーフに挑み、邪神に魅入られてしまったのリザン(そう、弟なんです)を助けようと奮戦します。

余談ですがマンガの「漆黒のカース」はSFCや「異界の門」寄りの物語で、リザンはダークサイドには堕ちません。


もう一つ余談ですが、PC版とSFC版は同じミルリーフ事件を扱っていても、そのストーリーは若干違った兄弟のような作品です。

共通するシナリオもあれば、個別のシナリオもある。そしてSFC版特有のシナリオをTRPG向きにしたのが「異界の門」なんです。

「漆黒のカース」はその「異界の門」やSFC版特有のシナリオを主軸にしていて、最終決戦の舞台である「死者の島」は出てこないんです。

具体的には麻薬「マリス・トリガー」を追いかけ、最後はミルリーフ司祭のソグランを倒してお終い。SFCだとそこから「死者の島」ですけどね。

メディアミックス作品は色々なアプローチで作品を楽しめる一方、このように各メディアの関係がややこしくなる時がありますよね。


序章 悲劇、そして出会い

本格的な冒険に入る前に、幼い日のバートとリザンの出会いの話が挿入されています。実はこの2人は血の繋がった兄弟ではないのです。

幼い頃からバートは傭兵あがりの冒険者であった父に連れられて旅をしてきました。母は既に亡くなり、父親がたった1人の家族でした。

バートは父親をとても尊敬していました。無骨で逞しい父親。涙を見せたのは妻が亡くなったその時だけだったそうです。


バートは父から剣や野伏の技術や知識を学びます。それが彼のファイター技能、レンジャー技能、セージ技能の礎となりました。

父はバートを連れて海も凍る村を去り、奇妙な砂漠の側を通り、睨み合う国々や孤高の都市、滅び去った街、古代の遺跡を巡りました。

それらの地名やほとんど忘れてしまいましたが全てが消えた訳ではない。その旅の間に父親から教わった事はしっかりと彼に染み付いていました。

実際「自分の大切なものを見つけたら決して手を離すな」という父の言葉は、後に青年となったバートが実践しています。

その時父はその大切なものは今持っていると、バートの頭を撫でたのです。しかしバートがその意味を理解した時、既に父はいませんでした


バートと父親の旅の終着点はグロザルム山脈の山中にある村でした。リプレイではオランから東へ3日の所にあるホープ村になっています。

この村はリザードマンの襲撃を受けていて、バートと父は村人達と共にリザードマンを倒しに沼地へ向かったのです。

しかし村人はほとんどが素人で、冒険者の夫婦がいるだけでした。しかも沼地はリザードマンの独壇場、戦いは厳しいものになります。

沼地が足まで浸かるものだとすると、攻撃と回避に−2です。冒険者だって厳しいのに、それでよくリザードマンの群れと戦えたものです。


しかし彼らはリザードマンを追い詰めます。するとリザードマンのリーダーが虫の息の村人を人質に取ったのです。

そこで動いたのがバートの父でした。「人質が死んだじゃねえか!」の一言で人質に視線を誘導し、リーダーに襲い掛かったのです。

父とリーダーは沼地での《組み合い》状態に縺れ込み、壮絶な戦いの末に相打ちとなりました。リザードマン達は敗走し、村は救われました。


しかしバートは父親を失ってしまったのです。父が死んだ事に呆然とし、父がいる筈の沼を掘り返そうと走ろうとします。

そんな彼を止めたのは冒険者の夫婦でした。彼らは何度もバートに謝り、バートを引き取って育てる事にしたのです。

夫婦にはバートと同じぐらいの息子がいました。彼がリザンです。病弱で、気が弱く、友達もいない少年でした。


バート「俺はバート。よろしく」

リザン「ぼ、僕はリザン」

こうして2人は握手をし、兄弟として過ごしたのです。やがて彼らは青年となると村を出て、冒険者となります。

バートにとってその日は父を失った悲劇の日であり、兄弟を得た出会いの日でした。リザンにとっても出会いの日です。

性格は全然違う2人ですし、血の繋がりもなければ物心ついてからの出会いではありましたが、確かに2人は兄弟なのです


さて話の中にあったバートが通り過ぎた土地ですが、断定するのは難しい。しかし氷海に臨む村の出身である事は間違いないでしょう。

東部に限って言うならば、バイカルのアスール湾ならば氷海となるのでその辺りの出身かもしれませんね。

それ以外で氷海に臨む街といえばプロミジーですね。オーファンやラムリアースの北には氷結海がありますが、ヤスガルン山脈の反対側です。

ラムリアースの東部や無の砂漠の北の辺りにも氷海はありますが、この辺に人が住んでいるのかは未確認です。


奇妙な砂漠は無の砂漠でしょうね。精霊力が働かない砂漠。足を踏み入れずに側を横切っただけなのは当然です。

睨み合う国々は北東部の国々でしょう。侵略戦争をするロドーリルと、それに抗する小国やプリシスやバイカルといった辺り。

滅び去った街はロドーリルによって滅ぼされた街かもしれないし、「いにしえの滅びの街」「マーラ・アジャニスの都」かもしれない。


古代の遺跡というのが正にこの2つの古代都市かもしれないし、全く関係ない無名の遺跡かもしれない。

ただ「いにしえの滅びの街」と「マーラ・アジャニスの都」という2つの著名な古代都市は、人が足を踏み入れるには危険過ぎる

「いにしえの滅びの街」には多くの死霊やバンシーが住み着いているし、「マーラ・アジャニスの都」には化物がいる。


「マーラ・アジャニスの都」はラヴェルナによって新王国暦513年によって解放され、廃墟となったのでそれ以降なら大丈夫。

「死せる神の島」は521年(仮)でバートは20歳ですから、513年だと12歳。という事はバートはリザンと会った時点でそれ以上になる。

挿絵のバートは実に微妙な年齢ですが、ちょっと苦しい気がする。息子を連れてそんな所まで行くかというと疑問ですしね。


バイカル辺りの出身でホープ村まで旅をしたという事は、単純に考えてバートと父親は南下し続けた事になりますね。

もっとも何処かで別の方角にも進路を変更したかもしれないので、一概には断言できませんけどね。バート自身忘れてるぐらいだし。


第一章 神像の斧

最初の冒険はPC/SFCでいうところの「謎の神像」というシナリオです。ミルリーフ事件に首を突っ込むきっかけとも言えるシナリオです。

「奇跡の店」のオヤジさんから、小さな飾り物の斧をドワーフの村から買い取ってくるように頼まれるのが導入です。

ところがそのドワーフの村は鉱山がゴブリンに占拠されていたのです。冒険者達はその解放に協力するのですね。


事件の詳細やモンスターのデータなどは「シナリオ100本集」にかなり詳しく載ってます。しかもカラーでマップつきですよ。

ただしゲームの仕様と小説の設定が必ずしも一致するとは限りません。全く矛盾する訳でもなく、メディアの違いから来る表現の差ですね。

それでも参考にはなるし、読んでいて面白いので入手できれば是非したい一冊ですね。絶版なのが悔やまれる。


このシナリオから「ミルリーフ事件」の最重要アイテムの一つである謎の神像が出てきます。果たしてこの神像がどう絡んでくるのか。

また物語の合間合間に眠れる竜の描写が入ります。この竜は最初は訳の分からない存在ですが、神像に関係している事は明白です。


では本編に入る前に主役となる5人を紹介しましょう。ガラードは最初臨時メンバーっぽいけど、すぐにレギュラーですから。


バート 20歳

ファイター2、レンジャー/セージ1。本編の主人公的存在。義弟のリザンと共に村を出て冒険者となりました。性格はやはり熱い戦士野郎

筋力19で生命力18、何とも戦士な数値です。他の数値も平均前後あり、一番低いものでも知力の12で割りと優秀だったりする。

武器は父の形見のバッソー(17)、ショートソード(8)。スモールシールドを装備し、鎧は金がないのかハードレザー(8)。


リザン 18歳

セージ2、ソーサラー1。バートの義弟、血の繋がりはないけど仲はいい。内気で人付き合いも下手だが、優しい青年である。

知力20で敏捷度18、精神力18、こちらも何とも魔術師な数値です。装備はメイジスタッフ(10)とソフトレザー(7)。

本人は生まれつき病弱なのを気にしてるんですが、筋力15で生命力16もある。それとは別なんでしょうかね……内臓疾患?(そんな馬鹿な)


シラルム 214歳

シャーマン2。出身不明のエルフ。プラムとはある事件で知り合った(「立ち枯れの森」参照)。装備はショートソード(6)とソフトレザー(6)。

敏捷度18で知力19はエルフの平均ですが、精神力23は平均の17を大きくオーバー。生命力も12でほぼMAX(最高13)。

性格は大分軟派です。道行く女の子に気軽に声をかけてはプラムに嫉妬される。突き飛ばされ、転ばされ、足を踏まれたりと、いいコンビ?です。


プラム 16歳

レンジャー2、シーフ/ファイター/バード1。昔シラルムに助けられたグラスランナーの女の子。気楽ではないけど好奇心旺盛。

器用度24、敏捷度20、精神力25は正にグラランですね。生命力は意外にも18もある。筋力だって平均はある(それでも4)。

武器はショートソード(4)、ダガー(2)。スモールシールドを持ち、鎧はソフトレザー(2)。多分ダガーは複数本持ってる。

昔ロマールでのある事件で精神に大きなダメージを負い、シラルムに連れられてオランまで来ました。そんな事があったからかシラルム大好き


ガラード 57歳

ファイター2、プリースト(ブラキ)5"雄牛の"という二つ名を持つドワーフ。文字通り雄牛のような角のある兜を被ってる。

筋力20、生命力22、精神力24は種族平均を超える。しかし器用度が9(最低値)。武器はグレートアックス(20)とハードレザー(13)。

一人だけやたらとレベルが高いですが、今回の事件では一緒に戦います。後にレベルが上がったバート達と合流するようになる。


以上のデータはあくまでも開始時のものであり、すぐに通用しなくなるので注意が必要ですね。特に魔法使いは。

ただ最終的には全員5レベルぐらいにはなってるかな、という成長速度だと思われます。少なくともPC/SFCではそうでした。


その日のバート達4人は(ガラードはまだいない)一つの冒険を終え、オランの街まで戻ってきて、「冒険者の店」に顔を出していました。

オランには「冒険者の店」も多く、老舗で3軒。潜りまで入れると30を越えるとか超えないとか言われています(本当か?)。

オランの店といえば「古代王国への扉亭」と妖精の多い「麗しの我が家亭」が有名ですが、もう1軒の老舗って何でしょうね?

バート達が顔を出した店の名前は分かりませんが、老舗中の老舗と言えば「古代王国への扉亭」ですね。店主はラウダです。


今回の仕事の内容はゴブリン退治でした。ただし退治そのものが目的ではなく、ゴブリンに奪われた魔法の鐘を取り戻す仕事でした。

上手く行く筈だったんですが、ゴブのボスが自分の仕掛けた罠に嵌り、魔法の鐘を壊してしまったんですね。自滅とは、所詮は語ゴブですね。

それで報酬の600(1人150)が半額の320(1人80)の値切られてしまいました。これにはバートが黙ってはいません。

自分達の落ち度ではない、それなら不満に思うのも無理はないですね。ただ自分達の責任でなくても、時に被らなきゃいけない事もある。

今回は半額で納得しろと、貫禄のある店のオヤジにバートは説得されてしまいます。不運ですが、半額をややオーバーしてるだけマシです。


店を出てからもバートの怒りは収まりません。一方シラルムとプラムは例の夫婦漫才をしてるし、リザンもそれを楽しそうに見ています。

バートを宥めるのは理性的で気楽なシラルムです。生きて帰ってこれたし、暫くは生活もできるからいいじゃないかとね。

ただその気楽さはエルフというかグラランっぽいですが(苦笑)。でもエルフによくある傲慢さが全然なくて、私は結構気に入ってます。

あとシラルムは320あれば1週間は宿に泊まれると言っています。1週間の宿泊費は150〜、大部屋を取れば4人まとめて寝れるかもね。


しかし報酬以外にも得た物はありました。それが魔法のかかった小さな飾り物の曲刀です。用途は全く不明の謎の飾りです。

リザンの鑑定では最低100で売れるらしい。魔法の品の値段なんて有って無き如くですから、人によってはもっと高値で買ってくれます。

その当てとしてシラルムが紹介したのが「奇跡の店」です。ある事件でシラルムは顔馴染みとなっている店ですね。


「奇跡の店」は元々はロマールにあった店で、マジックアイテムやら雑貨やらを手広く扱っています。依頼の斡旋はしてない(と思う)。

店主は禿げて痩せた40〜50ぐらいの小男ですが、目利きは確かです。また売買にも公正な値段を提示するので信頼もある。

あの"剣匠"ルーファスの友人でもある。ロマールの店は息子夫婦に譲って、オヤジはこのオランで2号店を開いたのです。

その移転の時にシラルムとプラムと合い馬車をしたのが縁です。魔法の品の売買ならば、ある意味魔術師ギルドよりもいい所かもしれない。


実は今はこのオヤジさんが例の謎の神像を所有してるんですよ。腕が7本ある、謎の神像です。ただどうも邪悪っぽいのが気になる。

カラー挿絵を見ると、何かヒンドゥーの神像っぽいですよね。多手なのは仏像っぽいけど、アルカイック・スマイルでは決してない。

7本の腕にはそれぞれ武器(というか持物)があるようですが、現在は弓・槌・棒(斧の柄)のみです。


神像の由来はカーン砂漠の蛮族らしいけど、詳細は謎です。ただ武器を揃えたら何かが出てきて何かしてくれるらしい(また曖昧な―苦笑)

台座に刻まれた上位古代語を読む限りでは、確かに何かありそうなんですよね。ただしかすれてて部分的にしか読めない。

上位古代語なんてよくオヤジは読めるなと思いましたが、実は彼は魔法文字を読める眼鏡を持ってるそうなんで、それかもしれない。

単純に知り合いの魔術師に読んでもらっただけかもしれませんけどね。オヤジさんはソーサラー技能は持ってない……と思う。


上位古代語はこんな感じで綴られています。

「光と闇争うとき、我は現れ出でた。おろかな……」「……を滅ぼし、我が主である、民の国を守り築く。時すぎて我は眠る。再び我が力に……。我が武器を揃えよ。まこと、その時、我の目覚めるにあたいするなら、我は……目覚めせし者。その望みえかなえられるであろう」

あっちこっちかすれてて、本当に意味不明ですね。何が凄いって、小説の結末が分かってもよく分からないというのが凄い(苦笑)


オヤジさんはバート達の持ってきた曲刀もこの神像の持物だと悟り、失われた斧の部分を入手してくれないかと話を持ちかけてきます。

その斧は今は何処ぞのドワーフの村にあるというので、それを見つけてくれたら曲刀と一緒に300で買ってくれるそうです。単品では100。

弓・槌・曲刀・斧の柄と揃っているので、あと3.5個ですね。斧の部分を見つけても残り3つ。収拾イベントとは、実にRPGっぽい。

PC/SFCでもこのように神像の持物を収拾するのを軸とするキャンペーンになっています。勿論平穏無事には終わりませんけどね。


ここで初めての眠れる竜の描写が入ります。物質は存在しない光と音に満たされた世界、そこが竜のいる場所です。

竜にはかつて彼のいた世界(物質界ね)から、3つの音が聞こえています。それらは和音となり、彼を呼び起こす鍵となるのです。

当然この音というのは神像の持物でしょうね。7つの持物が揃い、完璧な和音となった時、彼は目覚めるのです。


バート達は「麗しの我が家亭」(推定)のドワーフに話を聞いて、例の斧があるのはトルガというエストン山脈にある村だと教えてくれます。

エストン山脈は"常緑の山脈"と呼ばれる、レックスの北西に位置する山脈ですね。ドワーフの集落が多くあり、あのデュダの出身でもある。


そしてこのドワーフこそがガラードだったんですよ。彼はトルガの出身であり、村に帰るついでに同行すると申し出ます。

5レベルあるだけにそれなりに名が知れているらしく、店で起きていた喧嘩を一喝で収めます。冒険者の間でも一目置かれているんです。

その時にはプラムに向かって倒れてきた男を簡単に突き飛ばし、助けてくれました。頼りになる先輩冒険者ですね。


最初は気難しそうに見えましたが、ドワーフなんて誰もがある程度は頑固なんですから、そんなに気にする程じゃありません。

山道で息も絶え絶えのリザンに手を貸そうとしてくれる一面もありますしね。ただリザンはあくまでも自力で登ろうと断りますが。

しかしゴブリンを見かけた時は目の色を変えます。ドワーフとゴブリンは同じ大地の妖精界の出身ですが、古来から不倶戴天の間柄なのです。

ゴブリンの跳梁は決して許さないのがドワーフです。この辺に巣を作っているのなら、仲間を連れて叩き潰すつもりです。


やがてトルガに到着しますと、ドワーフ達の手による見事な街並みに、バート達は感動します。石の王国のような精巧な街並みなんでしょうね。

ところがドワーフ達の表情は暗い。それもその筈で、今現在彼らの鉱山バルウィルがゴブリンに占拠されているのです。

バルウィルにはブラキ神殿があり、神の火床という神聖な炎があります。どんな鉱石をも溶かす炎だそうです。

彼らにとっては正に聖域なのですが、それが司祭を人質にされた上にゴブごときに占拠されていては、表情も晴れませんよね。


この神の火床が具体的にどういうものかは謎ですが、似たようなものはあります。それがロードスの石の王国にある永久の炉です。

これは代々の"鉄の王"の玉座であり、なんとミスリルをも鍛えられるというのです。ミスリルの精製法なんて、大陸では遺失ですよ。

ロードスはあらゆる意味で大陸よりも古代の力が息づいている。大陸のドワーフすら失った技術を持っていても不思議ではない。


ではこの神の火床とは何なのか。宗教的に特別なだけなのか、それとも通常の炎とは何か違った炎なのか、よく分かりません。

よい鍛冶には3つの要素が必要だと言います。一によい鍛冶家、二によい鉄、三によい火です。この三つ目がなんともいい味を出しています。

よい火とは、永くこの世に留まっている火強い力がある火です。その火を貰いに、わざわざ遠方の寺院まで詣でた鍛冶屋もいたとか。

ドワーフ達にとってこの神の火床とは、正にそういうよい火なんでしょうね。実利があるかどうか、ミスリルが鍛えられるかどうかは別問題です。


どうやら敵はゴブリンだけでなく、それ以上の魔法を使う黒幕がいるらしい。そいつが厄介で、ドワーフ達も攻めあぐねているのです。

ただ精霊を使って聖なる炎を消すとか言ってるから、精霊魔法の使い手であるのは確かでしょう。もう答えは出たようなものですが(苦笑)

ちなみにこのボスはPCとSFCでは違います。PC版ではゴブリン・ロードにゴブリン・シャーマンでした。


炎を守り、鉱山を奪還する為に、バート達が少数で侵入し片をつける事にします。困った人は放っておけない、彼らはそういう人達です。

相手が精霊を使うならシラルムが邪魔をできるそうですが、これは呪文とかではなく精霊魔法の基本的制限と思われます。

精霊使いは精霊を精霊界から呼び出して魔法を使う訳ですが、この時自分が呼び出したか支配している精霊しか使えない事になってます。

だからシラルムが敵よりも早く神聖なる炎に呼びかけ、精霊魔法を使ってしまえば相手はそれで火の精霊魔法は使えない……という事らしい。


ただルールブックではなくQ&Aに断片的に載ってるだけの設定なので、結構曖昧です。全ての精霊魔法がそうなんでしょうかね。

"コントロール・スピリット"でバインドしている精霊は他の精霊使いは使えないというのは間違いないんですよ。

では他の精霊魔法でもこれは該当するのか。精霊魔法は精霊界から精霊を呼び出し、何かの現象を起こして帰すというプロセスを経ています。

では既に他の精霊使いが炎を使って精霊魔法を使ったからと言って、他の精霊使いがその炎を使えないというのは正しいのか?


一応使える精霊は「自分が呼び出した精霊」に限定されてるとは言っても、同じ炎から別の精霊を召喚すればそれで済むという気もします。

それに物質界に留まっている期間は本当に短期間です。ならばシラルムが召喚した精霊を続けて召喚するだけじゃないか。

正直それは"コントロール・スピリット"や"フルコントロール・スピリット"の話で、通常の精霊魔法には無関係だと思う。

ただ今回の敵はシラルムの支配した炎を使用できませんでした。ルールブックに載ってないんだし、あまり深く考えなくてもいいとも思います。


バート達はガラードを加えた5人パーティーで鉱山に侵入しました。その手並みは結構鮮やかで、神の火床に素早く肉薄します。

リザンやシラルムはそこそこ魔法を使いましたけどね。シラルムは見張りのゴブリンを倒す時に、"スネア"を使って2点消費、残り21点(高!)。

リザンは"ライト"で3点、"スリープ・クラウド"×2で10点使って残り5点。1レベルだと消費がデカいですね、あと1回じゃないですか。


鉱山の中はゴブどもに荒らされ、ドワーフもホブゴブリンの監視つきで働かされていて、ガラードがブチキレそうになったのは1回や2回じゃない。

その働かされていたドワーフなんですが、彼はホブゴブがバート達に驚いて逃げようとした所を金槌で撲殺してるんですよね。

その筋力と凶器があれば、ホブゴブ如きはタイマンでも殺せたような気がします。でもやっぱり多勢に無勢でしょうか。


そしてついに神の火床があるブラキ神殿への侵入に成功します。神の火床がある円形の部屋には、ダークエルフがいました。

「ゴブリンと思ったら実はダークエルフが!」というのはお約束ですね(笑)。これがSFCの仕様です。

あとPCの方ではゴブの群れと戦うのですが、これって最初にやるにはレベルがキツくないですか。私はいつもギリなんですが。


ダークエルフは長い柄杓のようなものを使って、精霊石を炎の中に突っ込んでいました。聖なる炎の力を閉じ込めようとしてたらしい。

ダークエルフがわざわざこんな事をするという事は、この炎は本当に特殊な力のある炎なんでしょうね。結局彼は何がしたかったんだろう。

なお精霊石とは魔晶石と精霊を封じた石の中間らしい。また他の記述では、四大魔術の儀式によって精霊や精霊力を封じた石だとか。


ダークエルフとの戦いはアッサリ終わりました。砂を使った"ホールド"だか"スネア"をバートに使いますが、抵抗される。

バートのバッソーやガラードのグレートアックスを避けたのは良かったけど、魔法が悉く効かなかったのでどうにもなりません。

神の火床を使おうにもシラルムが支配してて使えないし、ではそのシラルムに魔法をかけようとしてもリザンのカンタマ効果で効かないし。


最後はガラードに《組み合い》に持ち込まれ、斧に"ヒート・メタル"をかけて焼き殺すという拷問技で灰になります。

"ヒート・メタル"と言えば5レベルのブラキの特殊神聖魔法。金属を赤熱させるという、鍛冶にはもってこいの魔法です。

ただし距離は30cmな上に精神集中が必要なので、敵の鎧にかけて焼き殺すというのはかなり困難です。

完全版では打撃力10なので、ガラードの魔力(7)と合わせると7振って毎ラウンド10点は来ますね。抵抗はできない。

ガラードはこれを自分の斧にかけたというのが斬新です。なお旧版では毎ラウンド15点(固定)なので、より一層早く灰になれそうです。


残党のゴブリン退治はもっと簡単でした。リザンがゴブリン語でリーダーが死んだ事を宣言しただけで連中は敗走します。

一つ問題があるとしたら、リザンはゴブリン語が喋れないという事ですかね(笑)。セージ2レベルで西方語の会話と読解を取ってるんですよ。


鉱山を救ったバート達はドワーフ達の凄まじい酒宴に揉まれていました。村を救った恩人への感謝の念が二日酔いになるぐらい伝わります。

唯一ドワーフの強烈な酒を飲めるバートが大活躍です。酒宴と言うか、ビールかけですよ。何に優勝したんだあんたらって感じ(苦笑)

シラルムなんて精霊魔法で酒を使った水芸まで披露してるし、プラムもなかなかの人気者です。他人とは思えないぐらい溶け込んでいます。


一方リザンは独りでした。宴席に馴染めないので、行こうと思っても足を踏み出せず、「行った所で仕方ない」と諦めています。

自分で作った壁を自分で取り除けず、悲しみは嫌悪感へと変わります。誰の力にもなれない無力な自分を、リザンは誰よりも恥じていました。

両親、友人、恋人(いたの!?)、バート。誰の期待にも沿えない無力感。それがリザンの抱えるコンプレックスです。

劣等感故に人恋しいくせに人を恐れ、独りになる。もがけばもがくほどにその思いは強く、やがては呪いのような重石となって彼を苛む。


バートは何故自分なんかを大切にしてくれるのか、それが彼には疑問でした。自分の両親への恩返しなのではないかとも考えます。

それがなければバートは自分を歯牙にもかけないのではないか。そんな想像がリザンの心をより一層暗くします。

勿論バートにも欠点はある。でもそれが気にならないほどの魅力もある。それがリザンにはよく分かっています。

「誰とでもすぐに親しくなれる」「熱血漢で優しく悪意がない」「物怖じせず、ほどよく間抜け」だとリザンは評価しています。

ていうかそんなに褒められるなんて、何だかんだ言ってもリザンもバートの事が好きなんじゃないですか(苦笑)


リザンはバートが義理で自分に付き合ってくれていると思っていますが、そんな事はない。そんな深い考えがバートにある訳ない(酷)。

血の繋がりはないかもしれないけど、バートにとってはリザンは間違いなくです。何の裏もない、自然な兄弟愛があると思う。


人はすぐに感情に支配されます。友達同士にしても、大した違いも理由もないくせに、簡単に仲良くなったり喧嘩したりする。

感情一つで敵も味方も作ってしまう。だから本当は敵も味方もいはしない、自分の勝手な思い込みが作り出したものです。

リザンは自身のコンプレックスが彼自身をネガティブな思考に結び付けているだけです。そして敵はともかく、味方をつくろうとしない

でも本当は彼にもこの上ない味方が確かにいる。その人達はリザンの事を大切に思ってるのに、それを認めようとしないんですね。

役に立つかどうか、その人達はそんな事考えもしていないでしょう。人が人と向き合うのに、権利や理由なんて要らないのだから。


バート達が村長から斧を受け取り、ガラード達に見送られてオランへ戻ったのはその2日後。これで神像の持物は4つまで揃いましたね。


その時の眠れる竜はまだまだ和音には惹きつけられませんでした。自分が呼びかけてもリアクションがないのですから。

しかしその和音は呼び声であり、昔ある生き物を交わした契約の一部です。和音が揃う時、目覚めの時はまだ遠い。

彼が本格的に動き出すのはもっともっと先です。この物語のクライマックス、海の邪神との戦いの時なのですから。


第二章 砂漠の民

今度の冒険はPC/SFCでは「砂漠からの使者」というシナリオです。対応レベルは1〜2で比較的初期に通るメインシナリオです。

暗殺者に襲われる女性ラテリアを助けるのが導入です。彼女はカーン砂漠の蛮族の族長の娘で、族長が急死したのでを捜しています。

冒険者達は彼女に協力して兄のツーレを見つけ出しますが、彼女は攫われてしまいます。そこで冒険者達はツーレと共に砂漠へ乗り込むのです。

この事件の裏には族長になろうと画策するもう1人の候補者のダライアという男がいて、そいつを倒せばクリアです。

ただしSFCでは砂漠というものがないので、ダライアはレックス近くの遺跡に潜伏しています。この小説はPC寄りですけどね。


ラヴェルナによれば、彼ら砂漠の蛮族は基本的には遊牧民です。ただし行商人や旅芸人として大陸中に散らばっているのです。

中には都会の下町に薬師や占い師として住み着くこともありますが、故郷の習慣を忘れません。また驚くべき知識や技術に精通しています。

しかし彼らには数多くの秘密があり、それを漏らす事はしません。徹底した秘密主義なんですよ。秘密を知ったら暗殺者を派遣されます。


このシナリオに登場する砂漠の蛮族は「ミルリーフ事件」でも大きな役割を果たします。彼らはカストゥール王国の末裔なのです。

「砂塵の国の魔法戦士」では魔精霊アトンを信仰する部族が登場しましたが、ツーレ達の部族("渡る風")とは別物でしょう。

一口に砂漠の蛮族と言っても恐らくは複数の部族が存在し、それぞれに違いもあるでしょう。カストゥールの末裔ですらない部族もいそうです。

ツーレの部族は砂漠の部族の中でも特別な方だと思います。なにしろ彼らは神狩りの竜を使役する部族なのですから。

恐らくはカストゥール王国の技術を最も強く残している部族でしょう。ただしその魔法は謎が多い。あらゆる意味で謎の多い民なのです。


余談ですが、PC版ではこの事件はオラン⇔エマ間の「自由人の街道」を通っている時に発生する強制イベントです。

ところがシラルムやプラムはエレミアの街にいるので、不用意に「自由人の街道」を通るとシナリオが始まっちゃうんですね。

だから私は2人を仲間にする為に、わざわざエストン山脈方面から遠回りするんですよ。シナリオが始まってからでも仲間にできますけどね。

でも2人を仲間にしてからオラン方面のシナリオを遊んで、その後にこのシナリオをやろうと思うならこうしないといけない(と思う)。


ドワーフの村の事件を解決したバート達は「自由人の街道」に出ました。ところがそこで暗殺者に襲われるラテリアと遭遇します(ゲーム通り)。

ラテリアも暗殺者も馬に乗り、物凄い速さで街道を疾走しています。ところが馬が横転し、ラテリアは投げ出されてしまったのです。

見かねてバート達は助けに入りますが、応戦虚しくラテリアは攫われます。ゲームでは一時は保護できるんですけどね(結局攫われるけど)。


暗殺者達のデータはゲームではモンスターレベル2の盗賊と同じです。毒などがあるという記述がないのが残念です。

戦闘そのものは多分勝ってたと思います。バートは一瞬で間合いを詰められながらも、盾で殴って脱臼させるという荒業を使ってました。

シラルムはファイター技能もシーフ技能もないのに暗殺者を1人刺殺していました。後ろから不意を突いていたとはいえやるものです。

プラムはラテリアを守りきれず蹴飛ばされましたが大丈夫。リザンが何にもしてない気がする。誰も毒にやられてないのは幸いです。

あと暗殺者の武装が曲刀(フォールチョン)短曲刀(ジャンピア)となっています。前者はファルシオンですね。後者も実在の武器です。


しかしラテリアは攫われる直前にプラムにイヤリングを託していました。これを持ってオランにいる兄のツーレを尋ねて欲しいと。

それからバート達はオランに戻ります。「奇跡の店」に斧を届け、報酬を貰い、顔の広いオヤジさんからツーレの家を教えて貰います。

ツーレはスラムに住んでいました。狭いながらも上等な敷物やタペストリーを置いていて、怪しく神秘的な部屋だと思います。

彼は外の世界に魅せられて砂漠を捨てたのですが、それでも故郷の雰囲気を大切にしたいと思ってるんでしょうか。


ツーレには例のイヤリングを見せて事情を話すと警戒は解いてくれます。しかしその直後暗殺者が乱入してくるのです。

バート達はツーレの居場所を突き止める為に泳がされていたんですね。ここまで誰も尾行に気づかなかったのは迂闊でした。

この暗殺者達も乱戦気味になりながらも撃退します。それぞれちょっと怪我をしましたが、毒もないので問題なし。


ツーレによれば、この暗殺者達は"名なき部族"という特別な者らしい。大方名もなく暗殺業に従事するような人達なんでしょう。

外の人々が見る砂漠の民は、こういった特別な者、つまはじきにされた者、暗殺者がほとんどなんだそうです。

だからいささか誤解があるのですが、彼らにだって人間の情念はある。ただし余所者は殺す、これが掟です。誰もそれを疑問にすら思わない。

ツーレはそんな掟に納得せず、に族長の座を任せ、従兄弟にして乳兄弟であるダライアをその補佐として信頼し、砂漠を捨てたんですね。


しかし砂漠を捨てたからといって、その繋がりまでをも消す事はできない。ラテリアは族長が急死したから、ツーレを頼ってきたんです。

こうなった以上裏で糸を引いている奴はツーレを放っては置かないし、知ってしまったという理由だけでバート達も生かしては置きません。

バート達はツーレと一緒に"悪意の砂漠"と呼ばれるカーン砂漠を目指します。正にその砂漠には彼らに悪意を持つ人物がいる事を承知の上で。


それから一行は強行軍でエレミアに到着します。そこにはシェイラという老婆がいて、ツーレはその人を頼ってここで休憩します。

このシェイラによって今回の事件の背景が大分明らかになります。結論から言うと、黒幕はダライアです。ツーレが最も信頼する男です。

ダライアは麻薬で狂わせた男を使って族長のバルリア(ツーレの兄)を殺し、ツーレに葬儀を知らせる伝令使を殺すか止めるかしたらしい。

しかしツーレは納得できません。ツーレにとってダライアは、自分達兄弟の為なら命を投げ出す男だと信じているからです。

そこまで信頼していても実際一番怪しいのは彼なんですよね。族長も彼が自分を憎んでいるとシェイラに漏らしていたらしいし。


翌日マザイというツーレの腹心がやってきます。彼は"影"という役割の人物でして、多分族長に仕える密偵のようなものでしょう。

ただし「シナリオ100本集」では剣士となっています。本当にただの戦士野郎なのか、それともシーフ技能持ちなのかは謎です。

ただデータでは5レベル戦士という事になっています。モンスターデータなので何とも微妙ですけどね。ファイター/シーフかもしれないし。


彼の話によると、既に村では"選びの儀式"という族長を決める儀式の準備が整っているそうです。他にも候補はいるけど、ダライアでほぼ確定。

またダライアが守る遺跡にラテリアがいる事も明らかになります。ここまで揃ってしまっては、ツーレも彼が犯人であると認めざるを得ない。

しかし場所が場所なので力押しなんてしたらツーレの立場が悪くなる。かといってこっそり侵入するのも難しい。警備は厳重なのですから。


そこでツーレは自らがダライアと"選びの儀式"で呪術比べをする事にします。そうすれば双方の家の戦士も術師も立ち会わねばならない。

その隙に無関係のバート達が遺跡に侵入し、ラテリアを救出するのです。でもそれって捕まったとしたらツーレは庇えませんよね。

そこまで先の事を考えてるかは分かりませんが、バートはツーレと命を預けあう事に、つまり信頼しあう事に微塵も躊躇いがないのが凄い。


それからバート達とツーレの二面作戦が展開されます。まずはラテリア救出に、砂漠の中にあるマザイの遺跡に向かうバート達の方です。

マザイの案内でダライアの遺跡までは簡単に辿り着けましたが、彼はそれ以上先へはいけません。どうやら今回は助っ人NPCは無しらしい。

遺跡については部族の者が皆守ってるわけではなく、選ばれた血筋の者のみが守れるそうです。多分カストゥールの遺跡なんでしょうね。


マザイは一切表情を表に出さない人です。魔法生物かと思えるぐらいのポーカーフェイスですが、決して感情がない訳ではない。

プラムに「あなたがいてくれたら、心強いのに」と言われた時はちょっと顔が和んだりしてましたしね。本当は優しい人だと思う。

彼は良くも悪くもツーレに絶対の忠誠を誓っています。族長はツーレしかいないと本心から思ってますよ、追従ではなく。

しかしツーレの考え方が、外の者を認めるその考え方が族長としては危険だと指摘する人でもある。そこまで言えるのは本当の忠臣ですよね。

砂漠の民は外の人間を軽蔑してる節がある。例えそれが間違っていても、集団の中で特殊な考えを持つ事は自分の首を絞める事になるでしょうね。


遺跡への侵入も簡単でした。見張りが1人だけだったので、シラルムがインビジで背後に回りこみ、一撃で気絶させます。

それをやるには《忍び足》が要りそうですけどね。つまりシーフかレンジャー。一撃で倒すとなるとファイターも要るかも。

気絶した男は縛って放置です。もし数日間発見されなかったら、干からびて死んでしまうかもしれませんね。


遺跡の中には何故か色々な精霊がいます。具体的に何がいるかにもよりますが、風の精霊がいたら凄いですね。

これはやはりカストゥール王国の技術なんでしょうかね。精霊都市フリーオンのように、四大魔術を使っているんでしょうか。


また明かりが一切ない事については、シラルムが自分と同じ精霊使いだからだと解説します。確かに彼らは精霊魔法も使えるようですからね。

ただし赤外線視では温度差をサーモグラフィーのように見えるだけです。遺跡内が均一な温度になっていればさっぱり分かりませんけどね。

別に日頃から使う訳でもないから置いてないだけなのか、それとも何かあるときは"ライト"やウィスプを使うのかな。

便利だからとプラムは精霊魔法を教えてくれとねだり出しますが、無茶言うな(苦笑)。グラランはとっくに精霊魔法を使う力を失っています。


遺跡に入って最初の敵は彫像に潜む怨霊でした。幽霊(ファントム)ではなく怨霊だそうですが、具体的に何のモンスターなのかは謎です。

ホーントの一種だとしたら厄介だと思っていたら、ウィスプを近づけただけで彫像に逃げ込みます。光に弱い未知のアンデッドなんでしょうか?

ていうか守るべき遺跡にアンデッドを放置するのはOKなんでしょうか。この連中もダライアとかが作ったか設置したんだろうか。


怨霊の入った彫像の数は半端ではなく、一気に駆け抜けてしまおうとダッシュするバート達ですが、階段で罠に嵌ってしまいます。

スロープを滑り降りた先は断崖絶壁の岩棚でした。スピードがついていたら放り出されていましたね。砂漠の地下に絶壁って、どういう地形なのか。

幸い眼下に別の岩棚と穴があったので、バート達はリザンの"フォーリング・コントロール"で順々に降ります。

そういえばリザンもシラルムも2レベルになってるんですね。第二章にして早くも巻末のデータが当てにならなくなってきました(苦笑)


その横穴で小休憩を取った後、バート達は更に奥を目指します。すると見張りが2人立っている部屋を発見します。という事は誰かいる。

見張りはなかなかの手練でしたが、バートはサシで片方を倒します。リザンとシラルムが2レベルなら、彼もレベルは上がってるでしょうから。

ところがもう1人はシラルムを壁にぶつけて気絶させていました。プラムは弓を射るに射れず、リザンは男と向かい合っていました。

できればプラムがリザンをカバーした方がいい状況ですね。(攻撃が)当たらない、(魔法が)かからないのがグラランの武器なんですから。


リザンは推定《防御専念》で何とかしようとしますが、やはり適わずに蹴り飛ばされます。そこで激怒したのがバートでした。

バート「きさまぁー、俺の兄弟になにしやがる!

ほら、やっぱりバートはリザンを本当の弟だと思ってるんですよ。恩や義理でここまで激怒し、体を張れる訳がありません。

怒りに燃えるバートはその男を瞬殺します。正直この下りがこの章では一番好きなんですよね。兄弟の絆を感じさせてくれて。

この時バートは見張りの体から例の7本腕の神像の小さなお守りを発見します。これをちゃっかりポケットに入れておいたのは伏線です。


見張りの立っていた扉の魔法の鍵はリザンが開けます。すると中にはやはりラテリアがいました。覚えてくれていたのですんなり話が聞けます。

ダライアはラテリアを人質に取り、ツーレに儀式で負けるように脅迫するつもりなのです。それで負けると二度と村へは近づけなくなる。

そしてラテリアは族長の象徴の一つです。彼女は族長の妻にならないといけないんですが……実兄のツーレにも嫁いでいいんだろうか?


あとラテリアは彼らの怪我を治してくれました。この時彼女はを組んでるんですよね。これだけで精霊魔法でも古代語魔法でもないと分かる。

彼らの魔法体系は謎であるとされていますが、このというのが一際特殊なんですよ。本当に何なのか。古代語魔法の派生的なものなのか。

回復自体は実は古代語魔法でも可能です。古代語魔法では混沌魔術によって水と光の複合精霊力が、生命の精霊力になるらしいんで。


ラテリアを保護したのはいいんですが、追っ手が増える増える。チャクラムなんて珍しいもので攻撃してきますしね。

追っ手を撒くのにリザンが"ロック"だか"ハード・ロック"だかを使うのですが、これでリザンは精神力を使い果たして気絶。

いよいよ消耗が激しくなってきましたが、それでもプラムは隠し通路を発見してようやく出れると思ったら、そこは迷宮でした。


時間をかければ出れるかもしれないけど、それじゃあ間に合わない。しかしプラムはこの状況を逆転させるアイテムを持っていたのです。

それが魔法の糸玉でした。これを使うと糸が正しい順路をなぞり、迷宮から脱出できるという便利なアイテムです。

実はこれはゲームに登場するアイテムなんですよ。「奇跡の店」で200ガメルという安価で売ってるんです。

カストゥール産なのか、何処ぞの魔術師が作った便利アイテムなのかは謎です。いずれにしろ安くて便利過ぎると思いますね。

ゲームでは道筋を示すどころか、一瞬で外に出れるんですよ。その途中に足で脱出するプロセスがあるのかもしれませんが。


このアイテムの出典はやはりギリシア神話の、英雄テセウスと乙女アリアドネのミノタウロス退治の話でしょうね。

アリアドネは入り口から延々糸玉を伸ばしていたので、テセウスがミノを退治した後簡単に迷宮から出れたのです。


これでバート達はラテリアを救出できました。あとは儀式を行うツーレの所へ急ぐだけです。


一方ツーレはダライアとの再会を果たしていました。儀礼に乗っ取った丁寧なやり取りですが、その実は罵りあいでしかありません。

ダライアは慇懃な言葉遣いをしていますが、内心ではツーレへの嘲りの感情に満ち満ちています。気を抜くと大笑いしそうになってます。

ツーレはダライアが何故自分達兄弟を裏切ったのかと苦悩しているようでした。こんな男ですが、ツーレはダライアを信頼してたのですから。


ダライアと呪術比べの約束をした後、バート達を案内してきたマザイがツーレの控える族長の大天幕を訪れます。

ツーレはマザイへ、自分が抱く思いを断片的にですが語ります。正直マザイにも理解し難いようですが、ツーレはその必要を感じています。


ツーレ「我々の先祖は、神をも狩る力を持っていた……しかし、そのような力だけでがすべてではないのだと私は知った。
    外の世界にはわれわれにはない知識や能力を持ったものがたくさんいる。その事を知るべきではないか?」

それに対し、マザイはバート達のような外の者が、自分達よりも優れているという言葉に拒否反応を起こしているようでした。

これです。これが彼らの欠点、慢心です。自分達が優れた一族であり、外部の者達は劣っているのだという傲慢な考えです。


ツーレ「私の感じている事を、村の者に理解してもらうのは、今はまだ無理だろう。
    もしかすると永遠に無理かもしれない。しかし、このままでは砂漠の民は、内側から朽ち果てていくだろう。
    おごりたかぶるものは滅びる。この分かりきったことを、何故人は忘れてしまうのだろう……」

彼らはカストゥールの末裔であり、祖先は古竜をも従えたり狩ったりする事ができました。しかし彼らはそれに奢っていました。

その慢心が強大な力を生み、その力は王国を滅亡させる魔精霊アトンを生み出してしまった。それで彼らは学んだ筈なんですよ。


しかし今の砂漠の民はそんな教訓を自覚していない。祖先のように、自分達は優れている事しか頭にない。外の者を認めようとしない

「栄枯盛衰」。長い目で見ればどんな国も、どんな民も、どんな文明も一瞬の夢のようなものです。

太陽がいずれは西の地平に沈むように、星々が朝の薄明に消えるように、優れた戦士は最後には土に還るようにね。

自分達の優れた文明は決して滅びないのだと誰もが思う。しかしそうして滅びた文明は有史以前から数多ある。文明の死は常に溺死です。


それにしても、ツーレはよくぞこの閉鎖的な村に生まれて自己批判ができるようになりましたよね。外に出るまではどうだったのか。

彼を革新的な人間とすれば、ダライアは保守的な人間です。複雑に見えて実は単純な対立、クリスタニアのような閉鎖された社会ではよくある。

外に目をやって相対的に物事を考えられる者と、内側にしか目が行かず自らを絶対とする者。後者の方が楽といえば楽かもしれませんね。

だがそれが民にゆるやかな死を与えるならばと、ツーレは部族を救いたいと今は思っているのです。兄の死を代償に、また一皮剥けましたね。


さていよいよツーレとダライアの呪術比べです。これは精霊を呼んで泉を作るというものです。簡単な術ですが、魔力が高い方しか成功しない。

これは単純に同じ呪文を同じ精霊に使い、達成値の高い方のみが成功するというやつでしょう。そう解釈しておきましょう。

しかし精霊を呼ぶという事は、これは精霊魔法です。ところが精霊魔法というのは派生であり、無から何かを生み出すことは不可能です。


地下水脈とかがあれば、なにか特殊な精霊魔法によって呼び出すことはできるかもしれないけど……ここは風と炎が強い砂漠だし。

そもそも水の精霊界への門を開ける程度の水すらないし、本当にこれは精霊魔法なんでしょうか。かといって古代語魔法とも違うし。

ラテリアの例もありますが、やはり彼らの魔法は知られざるものです。いずれ明かされる時が来るとQ&Aでは言ってますが、どうなるやら。

ちなみにゲームではダライアはソーサラー2、シャーマン3です。ツーレはそれに加えてファイター3です。多分小説ではもっと高い。


儀式を執行するのは"呪術の長""剣武の長"です。文字通りの役職の人達なんでしょうね。時に族長よりも力がるらしいし。

2つの円陣を挟むようにツーレとダライアは向かい合い、それぞれの背後には配下の者がグルリと座っているという形式です。

そして2人の長がそれぞれ詠唱を開始します。2人の詠唱が重なる様子を、文面では上下二段に分けた文章を括弧で括って表現してます。

この詠唱ではツーレは"渡る風"、ダライアは"流れる風"という二つ名を持っていました。これにも何か意味があるんでしょうね。

ツーレの足元にはラテリアの耳飾が落ちています。命が惜しければ負けろという無言の脅迫ですね。やる事が微妙にセコいです。


最初の呪術比べは互角でした。呼びかけの強制力が全く同じで、精霊は哀れにも引き裂かれてしまったのです。可哀そうに。

続けて彼らは"精霊界への道"を開く呪文を使います。ただし道を通れるのは精神のみで、肉体までは無理。

さりげなく凄い事をやってますね。あのハイエルフのディードリットは妖精界へも精霊界へも行けましたが、あれは特殊です。


当然こんなとんでもない呪文は遺失です。わざわざ遺失というからには古代語魔法や精霊魔法なのか。それとも彼らの知られざる魔法なのか。

またダライアは"邪眼の呪い"というのも使えるらしい。視線だけで相手を殺せる能力ですが、そんなものも使えるんですね。

邪眼というと、クリスタニアのブルーザの9レベルタレントに"デスゲイズ"という、正に邪眼そのものの能力があります。


2人の精神は水の精霊界の表層に現れ、互いの意見をぶつけあいます。ツーレの主張は先に述べた通り、彼は村を変えて救おうとしています。

一方ダライアはというと、彼にも色々あったらしい。ツーレとその兄を尊敬していたのは確かのようです。憧れだったのです。

だから彼はそれと同等に扱われようと、剣技も呪術も狩りも毒学もやってきました。そして努力の甲斐あって、ついに兄弟を抜かしたらしい。

それでも彼は欲を持たず、彼らの側にいるだけで満足だったのです。この辺まではツーレの言うとおり、信頼できる男だったんですね。


ところがツーレが村を捨てた事で彼にも欲が生まれ、族長になろうとしたのです。しかしそれでも彼にも決して越えられないものがでした。

ツーレとその兄は族長の血、全き血です。しかしダライアはその従兄弟に過ぎず、汚れた血らしい。それが彼には我慢できなかった。

何故優れた自分が汚れているのか、何故自分よりも劣る者が族長なのか。その義憤が彼をしてこの暴挙に走らせたのです。


だがツーレはそんなものを越えて、やりたい事がある。また部族の他の者には見えないものも見えるのです。奢りは愚かだと知っています。

ツーレ「力ではない。我々はもっと大切な物を失おうとしている。それを失ったとき、我々は、けだもの、悪魔……それ以下の存在になる」

ダライアを苦しめているものもその奢りであり、無意味な血というものです。だが苦しんだからこそ、それを乗り越える事もできる。

人は価値観を揺さぶられる壁にぶつかった時、成長のチャンスを得る。それを漏らさず掴んだのがツーレで、掴み損なったのがダライアです。


ツーレはまだダライアを見捨ててはいませんでした。苦しんだからこそ、分かってくれるのではないかと期待していました。

しかし駄目でした、分かってはくれませんでした。あくまでも戦おうとするダライアを、ツーレは倒しました

この戦いがまたスピリチュアルでカッコイイ。力のぶつかり合いは、盾とか槍とかになって攻防をしてるんです。


物質界に戻ってこれたのはツーレだけでした。足元では泉が湧いてます。ダライアは肉体は全く無事なんですが、魂は精霊界で散ったようです。

これでツーレが族長となったのですが、ダライアは既にラテリアをぶっ殺す事にしていたと聞いていたので、生存は絶望視していました。

ところがそんな彼の頬に触れたのはプラムの糸玉でした。そんなインド奇術みたいな事もできるとは、便利な糸玉です(苦笑)


妹にして妻になるラテリアを抱き締め(いいの?)、ツーレはバート達への感謝の思いで一杯になっていました。

しかし直接礼を言う事は彼の立場上できません。そんな事をしてバート達が見つかったら殺されてしまいますからね。

これからツーレは村を変えようと頑張っていきます。色々と障害も多いし、批判する人も多いでしょうが、彼なら何とかなるかもしれない。

ラテリアはまだ外への偏見はありますが、バート達に希望を見出せています。それは生きる力。石を割って根を下ろす種子のような強さです。


ツーレとラテリアの無言の感謝を受けて、バート達は砂漠を後にしました。またいずれ会う時もあるでしょう。案外すぐに。


眠れる竜は、いや神狩りの竜は新たに斧という和音が加わったせいか、呼び声が確かなものになっていくのを感じていました。

だがそれは呼び声でしかなく、まだ呼びかけられていはいない。しかし彼は様々な音や力や光を受け、目覚めようとしていました。

彼を呼び出すのは他でもない砂漠の民です。でもまだその時ではない。彼らはまだ神像を手に入れていないし、倒すべき敵もいないのですから。


第三章 消えた商船

今回の冒険はPC/SFCでは「霧に消える船」というシナリオです。対応レベルは2〜3。今までよりも1ランク上のシナリオですね。

カゾフ周辺で船の行方不明事件が相次いで起こり、冒険者達はその護衛として海に乗り出します。しかしそこには凶悪な罠があったのです。

古代王国の監獄島をミルリーフ司祭のソグランが利用し、海賊を手下として何隻もの船と船員を捕獲していたのです。

金品は適当に海賊に与え、ソグランは船と船員をミルリーフの贄として海へ沈めているのです。その野望をぶっ潰せばクリアです。


また小説ではこの話でナイトシェード一味が登場します。ゲームでも活躍する3人組の盗賊です。ゲームのこのシナリオには出てこないけど。

リーダーの女盗賊ナイトシェードは何かと有名な盗賊なのですが、西部諸国で活躍するナイトウィンドとの関係は謎です。一説には姉妹。


ナイトシェード 19歳

シーフ5、ソーサラ−4、ファイター3。割と可愛い赤毛の女盗賊です。マンガでも小説でもバートと色々あったりして。

能力値は全体的に高めです。敏捷度19で生命力18。華奢な見かけによらず筋力は17もあったりする。でも精神力は13と唯一平均を割る。


マーディ 27歳

シーフ5、セージ4、プリースト(チャ・ザ)2。ターバンを巻いた細身の男。何故か女言葉を使う。あっち側の人かは謎。

メイン技能のシーフに対応するように器用度と敏捷度は共に18。筋力が11であるのを除けば、他の数値も平均以上。


カインズ 28歳

ファイター/シャーマン5、シーフ3。マッチョな大男。その図体で精霊とお話してると考えると、不思議な感覚に襲われる(笑)

筋力19で生命力18と流石に高いが、その分敏捷度は10。武器は強烈なグレソーだが、精霊魔法の為に鎧はハードレザーだったりする。


以上の3人が今回から登場するんですよ。船員に化けて、行方不明になった船のお宝をいただいてしまうつもりです。

ゲームでは準レギュラーとして頻繁に登場するし、最終決戦の地でも助けてくれたりするんですけど……残念ながら小説では今回きり。


バート達はゲームの導入と同じく船(「黄金のアヒル号」)に乗って海に出ていました。ところがバートは船酔いに悶絶していたりします。

この時から水夫に化けたカインズや、料理人のマーディの名が出ます。そしてナイトシェードもアネリーという名でバートと接触してきます。

別に何か企んでる訳ではなくて、単にバートが苦しんでいるのを見かねただけ。喧嘩を吹っかけて元気付けるつもりだったんですね。

冒険者や傭兵は金で動くから信用できないとか、真面目な熱血野郎のバートには聞き逃せない事をわざと言っています。

バートが気色ばんでくると態度を変え、「あなたの怒った顔が見たかっただけ」とオチをつけます。単純なバートはすっかり元気になりました。


その夜の見張りではバートと彼女は同じ見張り番になります。どうやらバートは彼女に惚れてしまったらしい。意外……でもなく惚れやすい?

バートは夜に2人きりで気が昂ぶっていたのか、冒険は遠慮するという彼女に「冒険者自身も遠慮したいのかな?」とアプローチします。

意外に積極的です。彼女の返事もそう悪いものでもなく、無言のデートをしながら彼女にもうドッキドキでした。青春ですね(笑)


ところがその時海に霧が現れます。この霧はただの霧ではない。実は"スタン・クラウド"の霧なのです。監獄島の設備ですよ。

「シナリオ100本集」によればこの霧への抵抗の目標値は18もあります。今の彼らでは6ゾロでも振らない限りまず抵抗できませんね。

この霧で昏倒して海賊に捕まり、牢獄から脱出して敵を倒すというシナリオですから、この辺は手堅く決めたかったんでしょう。

"スタン・クラウド"という事はかかると意識を失い、1時間は昏倒したままですからね。海賊達は楽々と彼らを島まで牽引できるでしょう。


ナイトシェードはこの異変を察知し、船室にいる仲間の所へ急ぎます。船室に立て篭もり、シルフによって霧の侵入をブロックするんです。

しかしバートからすると彼女が突然走り出したのは理解できず、それを覗いていた水夫には強引に迫って逃げられたと見えたのでした(笑)

バートはそんな体を張った笑いを取りながらも、この霧がただの霧ではないと悟ります。でも何もできずに甲板に突っ伏し、夢の中。


目を覚ました時は既に牢獄の中でした。鎧は面倒だからか脱がされていないけど、武器の類は当然没収されています。

ゲームでは所持金までリセットされてしまうので、経済的にイタいイベントなんですよ。でも必須シナリオだから避けられない。

仲間達は全員無事だし、隣の牢には他の船員達(ノリスという人がいる!)もいます。ナイトシェード達はいません。上手く逃げたんでしょう。


牢の中にはノーランドという賢者のお爺さんがいます。彼はこの監獄島や"スタン・クラウド"の装置の研究をしていたんですよ。

ゲームでは弟子になるといってやってきたミルリーフ司祭ソグランに騙されてしまったそうですが、小説でも似たようなものだと思う。

装置の修理をできる唯一の人物なので生贄にはされずに生かされてるんですね。あと杖を取り上げられて無力化されています。

特にデータはありませんが、"トランスレイト"を使えるというのでソーサラー5以上。それならリザンの発動体をかしてやった方が戦力になる。

確かゲームではこの頃にはもうリザンが指輪の発動体を持っていたので、古いメイジスタッフを貸してやった……と思う(うろ覚え)。


牢からは簡単に脱出できます。プラムが全身に道具を隠してるんでね。シラルムの肩を借りて、チョチョイと鍵は開きます。

ゲームでは牢の中での魔法は封じられていて、天井にある魔法陣を消すとか、見張りから鍵を奪うとかして脱出しましたね。

牢から脱出したバート達はまず装備を奪還しようとします。それがないとまともに戦う事すらできないし。脱出するのはそれから。


一方ナイトシェード達はすでに監獄島に侵入していました。通りかかったスケルトンをカインズのグレソーで粉砕しつつ、宝を探します。

彼らは色々な装備品のある部屋、バート達の目指している部屋に到達します。でもナイトシェードはお気に召さないらしく、更に上を目指します。

マーディに食って掛かったり、大男のカインズを顎で使ったりしてますが、何故に2人はここまでナイトシェードに頭が上がらないのか。


バート達は牢の見張りを倒そうと物陰から様子を伺っていました。ところがその見張りはゾンビだったりするんですよ。

ミルリーフは水死者の神であり、カーディスに負けず劣らず不死生物の使役が達者です。スケルトンやゾンビがいるのは当然ですね。


バートは見慣れているんですが(所詮2レベルだし怖くない)、こういう事に慣れない船長は腰を抜かしていました。

ミルリーフを相手にするなら、これからこういう敵と頻繁に戦う事になりますからね。この程度で怯んでいては神経が持ちませんよ。

喧嘩や海の荒波には負けない屈強の船乗りも、歩く死体には流石にビビるんですね。まぁグロいし臭いし、冒険者だって嫌な相手ですが。

ゾンビはバートがぶん投げてまとめて壁にぶつけてぶっ壊すという肝の据わった戦いをして、船長に感心されていました。


その先に転がっていた何者かに(カインズに)ぶっ壊されたスケルトンをスルーしつつ、例の武器のある部屋に到達します。

ここでバート達は武器を確保します。これで下級のアンデッドごときは敵ではない。所詮スケルトンもゾンビも駆け出し冒険者の敵でしかない。

ここからはバート達は2手に別れます。バート達とノーランドは"スタン・クラウド"の装置を破壊に、船長達は船を取り戻します。

あとここでバートは例の神像のお守りをリザンに渡します。これが後に極めて重要な、世界の命運を分ける役割を果たすとは予想だにしません。


その頃ナイトシェード達はお宝を求めて動いていました。隠し通路を通るとそこは船着場。「黄金のアヒル号」が見えます。

今まさに船長達がスケルトンの群れを圧倒し、船を取り戻そうとしています。カインズが感心した顔をしていました。


その先で一行は幽鬼と遭遇します。爬虫類の口を持ったミミズのような、アンデッド?です。また謎のモンスターが出てきましたね。

似たようなモンスターが「暗礁の巨獣」というシナリオに出てきましたっけ。リアルタイムで10分ぐらい戦った覚えがある(笑)

しかしこっちの幽鬼はナイトシェードの"ライトニング"1発で消えます。見掛け倒しですね、クリティカルでもしたかな。

ところがその先の壁にナイトシェードが吸い込まれます。多分そういう魔法の罠なんでしょう。カインズとマーディは取り残されました。


バート達の方は海賊を追い詰めていました。敵は部屋に立て篭もり、出てこようとしません。海賊のくせに頑張り屋さんですね。

ところがプラムがまたもこの状況をひっくり返すアイテムを取り出します。これはクラウド・エッグというアイテムです。

これもまたゲームに出てくるアイテムで、"○○・クラウド"系の魔法が封じられていて、投げて割るとそれが発生するのです。


ゲームでは"スリープ・クラウド"、"スタン・クラウド"、"ポイズン・クラウド"と3種類ありましたね。3つ目のは何だろう……?

小説では麻痺、眠り、毒、呪いなどがあるらしい。他のはともかく呪いってなんでしょうね。遺失魔法でしょうか。

"ポイズン・クラウド"というのも謎ですね、"アシッド・クラウド"かな。まぁ"デス・クラウド"がないだけマシですが(これが呪い?)。


こんなものを使うといわれたら海賊達の意気地も挫けます。何が起こるかわからないパロプンテなアイテムなんて怖いです。

海賊達は降伏したので、情報を聞き出せます。ここで彼らは初めてこの事件にミルリーフが関わっていると知るのです。

リザン曰く"荒ぶる海の神。海で死んだすべての使者の主にして、死者の船を統べるも者"だそうです。また長ったらしい呼び名ですね。

別の場所では"荒ぶる海の神にして、死者の船を統べる者"です。「SWサポート2」では"荒ぶる海の神にして死者の神"となっています。

他の事は冒頭でも書いた通りです。彼らはリザンが扉に"ロック"をかけて封印します。1日経てば出れるし、死にはしません。


更に上を目指そうとバート達が階段を上った時の事でした。ナイトシェードと同じくバートも壁に吸い込まれたのです


吸い込まれた先の小部屋でバートとナイトシェードは再会を果たしました。ここでようやくバートも彼女の正体を知るのです。

2人はお互いの事情を話し、協力して脱出する事にします。なお部屋にいたパイソン(4レベル)はナイトシェードが始末しています。

意外にもバートが目ざとく抜け穴を発見します。大土蜘蛛という蜘蛛の張った巣を見分けられたお陰で、隠れていた通路が見えたのです。

これはセージ技能ではなく、レンジャー技能の《動植物判定》かもしれません。父親に習った事はしっかり覚えてるんですね。


抜けた先は切り立った山肌でした。少し行ったら断崖絶壁ですが、上に登れば装置のある部屋へ行けそうです

海鳥が飛び交い、木々や草むらの茂る山肌を登り、バートはまたナイトシェードと2人きりの時間を過ごすのでした。

夕焼けにしみじみとするバートに対し、ナイトシェードはお宝を見たいとムードを考えません。もうちょっとこう……盛り上げて(笑)


ナイトシェード「女の方が現実的なのよ。その分、夢見るときは際限ないんだって、言われるけどね」

彼女にこう言ったのは彼女の義理の親父です。彼の名はガルードといって、先代ナイトシェードです。エレミア周辺のギルドの頭的人物だとか。

女好きでスチャラカな親父だそうですが、ナイトシェードはそれでも結構親父が好きらしいです。どういう過去があるんでしょうね。


またバートは昔の事を思い出します。剣の稽古をつけてくれた義父、竈の前にいた義母。そして机に向かって勉強をするリザン。

バートも時々リザンとの間に亀裂が走る事があると、薄々感づいています。しかしその正体は分からず、亀裂が消えるまで待つしかない。

リザンの事は弟だと思ってるし、絆があると思ってる。でも時々感じる隔たりを埋める事ができないでもいるんです。


その時海の彼方から死者の船がやってきます。捕獲した船を連れてくるガレー船ですが、その労働力はアンデッドかもしれませんね。

ミルリーフは死者の船を統べる者でもあり、死者を満載した幽霊船を作り出すこともしばしばある。海はミルリーフの領域なのです。


そんな船に嫌悪を覚えつつ先を目指し、ついに装置を破壊します。"ファイア・ボール"で一撃ですよ。ついでに魔晶石もパクりました。


リーダーに残されたリザン達とカインズとマーディは合流し、一緒に上を目指していました。

リザン達がスケルトンに襲われていた所を2人は助けてくれたのです。この時点では遥かに格上の人達ですから、頼りになります。

やがて彼らは広間に出ます。以前は何もなかった部屋ですが、今はミルリーフ神殿と化しています。毒々しい彩色に香の匂い、そして燭台。

祭壇は錨と色々な動物の骨で作られていて、いかにもミルリーフの祭壇に相応しい気味の悪さです。海賊達もよくこんなのと手を組めますね。


そこには1人のミルリーフ司祭がいました。PC/SFCではソグランですね。マンガやシナリオ集にも出てきます。

早速戦闘に入るのですが、奴は1人ではありません。この神殿を形作る様々な装飾が全てスケルトンと化して襲ってくるのです

まるでファウスト[世みたいです。全ての骨を融合させて12730kgの骨巨人とか作り出しそうな人です。


しかしこれはネクロマンシーではない。フォーセリアにおけるネクロマンシーとは死霊魔術、古代語魔法の一派です。

これは多分暗黒魔法ですが、一体一体を"クリエイト・ゾンビ"で作るのは骨が折れる。それとも大量にアンデッド化させる方法があるのか。

なお"クリエイト・ゾンビ"は通常はゾンビを作る魔法ですが、それとは別に"クリエイト・スケルトン"もあるとかないとか(笑)

単純に"クリエイト・ゾンビ"を白骨にかけるとスケルトンになる、でもいいんじゃないですかね。その辺は臨機応変に。


襲い掛かる使者の群れは波のようで、防ぐだけで精一杯です。亡者に地獄に引きずり込まれるかのような状況に、リザンは叫びます。

リザン「バート……どこにいるんだ、僕じゃだめなんだ。バート、バート!助けて!!

すると頭上からバートが現れるのです。わざわざ高い所から、弟の声で召喚されるとは……お前はフェニックス一輝か(笑)

しかしこのシーンがなんか好きなんですよね。そしてバートの第一声も「リザン」だし。堪りませんね、この兄弟(色んな意味で)。


バートはナイトシェードの"フォーリング・コントロール"で降りて、ソグラン(推定)を倒します。これでスケルトンどもも崩れ落ちるのです。

この時ソグラン(推定)が魔法を打ち消してるんですが、もしかして彼は古代語魔法も使えるんでしょうか。ゲームでは5レベル闇司祭ですが。

「異界の門」ではマゼール・ソグランという名で、ファイター/セージ3が追加されています。ソーサラー技能はなさ気ですね。


これでこの監獄島は完全に手中に収めましたが……悲劇はここから始まったのです。リザンがミルリーフの力に惹かれてしまったのですから。

リザンはバート達が装置を見にいったり、ナイトシェードが渋々ノーランドに魔晶石を返していたりする時に、犯行に及んでいました。

ソグラン(推定)の胸に光っていた紫色の燐光の正体である、ミルリーフの護符を手に入れていました。出来心だったんだと思う。

リザンはその護符を見たときに魅入られたらしい。それに宿る強大な力を手に入れられると、思わず手にとってしまったのです。


リザンの望みは強さでした。バートのような強さが、バートに助けを求めなくてもいい強さが欲しいのです。

多分リザンは「同情されたくなかった」んですよ。誰もが庇ってくれる事が、自分の不甲斐なさだと思ってきたんです。

それで力を欲した訳ですが、リザンの憧れる強さというのは武力とか魔力ではないと思う。使い古された話ですが、もっと精神的な事でしょう。

まぁ武力や魔力を身に付けることで自分に自信が持てて変われるという考えもありますが……ミルリーフの力は危険過ぎる


リザンは気づいてみれば仲間と一緒に宝が置かれた部屋に着いていました。文字通り宝の山で、物色するだけで楽しそうです。

その時リザンは目ざとくマーディの読んでいた本に目をつけます。それこそは幻のミルリーフの教典だったのです。

リザンはその教典をマーディから貰って、目を通します。護符の力なのか、見た事もない文字をスラスラ読めます。

リザンはフラフラしていて、明らかに様子がおかしい。まるで何かに憑かれているようで。彼はついに倒れてしまいます。


それから彼らは船に乗って監獄島を脱出します。甲板でのナイトシェード一味の面白愉快なやり取りは好きですね。

海賊達も「アバヨ!」(笑)と逃げてしまいました。彼らも相手がミルリーフ司祭だと知らずに手を組んでしまったのかもしれませんね。

リザンは何かに憑かれたように黙々と教典を読み、バートを理不尽な言葉で追い出します。リザンがこんな風に振舞うのはきっと初めてでしょう。

バートはリザンを大切に思ってるし、心配もしてる。でもそれで理解し合えるとも限らないのです。悩ましい限りですね。


これで今回の事件は一件落着。丸く収まった……かに見えますよね。しかしこれはミルリーフ復活の序章に過ぎなかったのです。


その頃の神狩りの竜は冷たい流れを感じていました。それこそはミルリーフの力でしょう。彼が倒すべき敵が現れようとしている。

しかしまだ目覚められない。和音はまだ4つしか揃わず、呼びかけによって門を開く人もいないのですから。でもそれももう時間の問題。


第四章 堕ちた都市

今度の冒険はPC/SFCの「無謀さの代償」と、PCのみのシナリオである「落星のダンジョン」を合わせたものです。

対応レベルは共に4〜5。実は彼らはもうそれぐらい強くなってるんです。舞台は両方ともレックスだから都合もいい。


「無謀さの代償」は本来「ミルリーフ事件」とは直接は関係しません。しかし後味の悪いシナリオですよ。

冒険者達がパダの「冒険者の店」で同業者のパーティーと喧嘩になるのが導入です。彼らはレックスの遺跡探検で決着をつける事にします。

ところがその相手パーティーは無謀さが祟り、全滅の憂き目に遭います。彼らを倒したモンスターのマンティコアを倒せばクリアです。

PC版では本当に彼らは全滅しちゃって、後味が悪い事この上ない。でもSFCでは手当てすれば助かるのが救いかな。どちらにしろ哀れですが。


そして「落星のダンジョン」はPC版におけるミルリーフ復活のシナリオです。正確には魂を解放しただけで、完全に復活はしていない。

SFCでこれに対応するのは「異端の迷宮神殿」です。こちらはシナリオ集「異界の門」やマンガ「漆黒のカース」で応用されてます。

マンガを読んだ方ならば、ミルリーフ司祭のソグランの配下のヒューカーニアが出ていてちょっと嬉しいかも。

マンガ版のソグランは何ともダンディーなオッサンなんですよね、小説の挿絵ではマッチ棒みたいですが。あとヒューとカーニアも濃いキャラでした。


大陸に帰還したバート達は冒険者の街であるパダへ来ていました。大陸最大の遺跡群である堕ちた都市レックスに程近い、正に冒険者の街です。

この街は城壁の外と内で対立している節があり、中の冒険者の店に入るには実力が伴わないといけません。既に4〜5レベルあれば十分です。

また色々な未鑑定品も数多く出回っていて、バートなんて呪いのペンダントを売りつけようとするスリに遭遇してました(撃退)。

呪いであるとリザンは一発で見抜いていましたが、見ただけで分かるとは大した鑑定眼です。セージ技能も上げてるのかな。


これらの設定は「SWツアー4 パダ〜堕ちた都市」が詳しいのでそちらを参照。文字通りこの辺をカバーしたサプリメントです。

ただ一つだけ気になるのがレックスを作ったのはブランプという魔術師であるという記述。実はワールドガイドにも名前がある。

レックスを支配していた魔術師の1人に付与魔術の門主ブランプナスというのがいますが、ブランプとブランプナスの関係は謎。


彼らがここに来た理由はリザンが望んだから。曰く、ここに彼の望む物があるから。……それは非常にヤバイ物なんですがね(苦笑)

一応あれからリザンは平静を取り戻しています。しかしギルドで色々調べものをして、ここに来たいと言い出したのです。

今のリザンがミルリーフについてどういう認識を持ってるかは分かりませんが、力が手に入ると考えてるのは間違いない。


紹介された冒険者の店に行くと、バート達はここに入る為の洗礼を受けます。店にいた別の冒険者パーティーと喧嘩になったのです。

彼らはバート達に罵詈雑言を浴びせてきて、店のオヤジも両者を面白そうに眺めているだけ。解決してみろと言わんばかりです。

そこでバートは相手パーティーのリーダーであるフォーシスと1対1の喧嘩をします。路上での男と男のステゴロです。


バートはこう見えて喧嘩は強い。だが相手もなかなかのもので、2人はお互いにボロボロになるまで殴り合います。

そしてお互いの顔を見て大笑い、こうして彼らは男同士の友情を築いたのです!。お前らいつの時代の番長だって世界ですね(苦笑)

フォーシスはバートの事をすっかり気に入ってしまい、両パーティーは仲直り。バート達はパダの店の仲間入りを果たしたのです。


なおフォーシスのパーティーは5人です。戦士である彼と、マイリーの神官戦士、ハーフエルフの精霊使い、盗賊、魔術師です。

神官戦士はケヴィンで、エルフ娘はライザです。レベルは大体バート達と同じぐらい。つまり4〜5レベルの中堅所ですね。

このエルフというのはハーフエルフの精霊使いのつもりなのか、それともパーティー内にエルフとハーフエルフと両方いるのかは謎です。


あと店にはあのガラードがいます。また冒険に出て、この店でも顔馴染みらしい。顔が広いんですね。他に冒険仲間もいそうです。

彼も5レベルですから、成長してなければバート達は追いついたんですよね。今ならパーティーを組んでも吊り合いが取れる。

これで両パーティーは同編成の同レベルになりますね。4〜5レベルの主要技能を網羅した5人パーティーです。


こうして揃った10人の冒険者達に店のオヤジは冒険の話をしてきます。最近の地震で開いた遺跡の入り口があるというのです。

早く手をつけないと、他の連中に横取りされるかもしれません。彼らは揃ってレックスに向かうのでした。


バート達にとっては初めてのレックス探検ですね。フォーシス達は既に来た事があるので、多少は土地勘もあるらしい。

かつては天空都市であったレックスを浮かしていたのは、大地に据えつけられた環状列石です。これが重力を打ち消していたのです。

蛮族によってこれらは破壊されたのですが、その魔法の影響が今も尚残り、空中に浮かぶ岩や土砂なんかが普通にあります。

また魔法の影響で動植物は変化し、危険な魔獣や妖魔も徘徊しています。死を受け入れられない魂も彷徨っていて、憐憫を誘います。


遺跡は塔と建物の2つがあり、パート組とフォーシス組で分かれて探索をします。10人じゃ流石に動きづらいし。いや10人でもいいんですが(苦笑)

1日経ったら合流する予定で別かれますが、バートの方は何事もなく終了。大した危険はない代わりに、大した宝もありません。

ゲームでもこれは同じで、あまり実りはない。全くのスカでもなく、かといって大した発見がある訳でもない。


ところがいつまで経ってもフォーシス達が帰ってこないから探しに行くと、既に彼らは全滅していたのです。PCの方の展開ですね。

ゲームでは「危険な場所へ行く無謀で嫌味な奴」という死亡フラグが立ちまくる設定でしたが、仲良くなっても結果は同じ。

もっとも「仲良くなったばかりの無謀な奴」というのも、1回こっきりで死亡するキャラである事が多いんですが(苦笑)


彼らを倒したモンスターがまた謎モンスターなんですよね。ゆらゆらと揺れる邪悪な人影。戦うまでもなく消えてしまって、正体は謎でした。

既に述べたようにゲームではマンティコアでしたが、このモンスターは結局何だったんだろう。少なくとも4〜5レベルが全滅する敵です。

実体もないようだし、戦っていたらバート達もやられていたかもしれない。その後1回も出てこなくて助かりました。


リザンはフォーシス達の埋葬が終わる前に奥に行ってしまいます。今のリザンは目的の物がすぐそこにあって待ちきれないんですね。

彼らの埋葬をシラルムとガラードに任せ、バートとプラムはリザンを追います。するとリザンはとんでもない発見をしていました。

それは丸の中に三角形が3つ刻まれた扉で、これは古代魔法学院の紋章です。するとフォーシス達がいた場所は見習い魔術師の寮ですね。


それが本当だとすると大発見ですね。当時の学院がどれ程高レベルだったか分かりませんが、オラン魔術師ギルドの比じゃないでしょう。

この情報をオラン魔術師ギルドに流せば大事になるでしょうね。調査が進めば色々な発見もあるでしょうが、どうなったのやら。

しかしこの扉を開けるには学院の賢者である証が要るらしく、リザンが不用意にプレートに触ると、白い光に弾き飛ばされます。

この分だと破壊するのも難しいでしょうし、"アンロック"じゃ開かないでしょう。達成値が20とか30ある非解除の魔法でしょうから。


フォーシス達の簡単な埋葬を終え、一行は学院の敷地内にあるを探ろうとしますが、その日は適当な部屋を見つけて野営します。

扉があるようならいっそ"ハード・ロック"でもかけた方がいいかもしれません。でもそれだと外の様子は分からなくなりますがね。

見張りは最初はリザンとガラードでしたが、途中でリザンはプラムと交代。ガラードはドワーフらしく軟玉細工などをしていました。

彼が手を加えるごとに生き生きとした鳥が作られていく様子は、好奇心旺盛なプラムにはなかなか面白かったようです。


そこでプラムは自分も細工をしたくなり、材料を探しに部屋を出てしまいます。こうしてガラードが1人になったところで事件は起こります。

実は例の塔にはシーが大量に住んでいて、彼らが一行を捕らえに来たのです。完全版では彼らのデータもありますが、これが彼らの初出です。


シーは3レベルの魔法生物の一種で、手足や指がひょろ長いグラランのような姿をしています。人間並みの知能があり、国を作ってたりします。

古代語魔法3レベル(魔力5)を使用し、直接的な戦闘力は低い。遺失魔法も知ってるし複数で活動するので、侮れない相手です。

完全版と文庫のデータ的な違いで最も大きいのは精神力だと思う。文庫では24もあるのですが、完全版では14しかないんですね。


また文庫では古代語魔法ではなく暗黒魔法3レベルになっています。そのくせ古代語魔法の遺失魔法を使うし。ついでに種族が妖魔だし(笑)

またその遺失魔法というのは文庫では2つあります。"ディープスリープ""スティッキング・ストリング"、両方とも3レベルです。

前者は"スリープ・クラウド"の強力なやつで、抵抗に失敗すると熟睡状態になり、18ラウンドは起きないらしい。

後者は粘つく糸で相手を絡め取る魔法です。「クリスタニアRPG」では"スパイダーウェブ"とかいう名前で出てますね。

またこれは「ロードス島ワールドガイド」で新たに追加され、2レベルの魔法になっています。現在はこっちを使った方がいい。


このシーの襲撃を受けたガラードは、その魔法攻撃に翻弄され、無力化されます。たかだか3レベルのくせに手際がいいです。

この時シーは"ブラインドネス"をガラードに使ってるんですよ。真っ暗闇になるなんて、暗視持ちのガラードには初めての体験だったでしょう。

ただし"ブラインドネス"は接触の魔法なので、本編のシーのように指をさしただけではかかりません。

あとその後に"スティッキング・ストリング"で絡め取られるんですが、持続時間の3分を遥かにオーバーして効いてる気がする(苦笑)


プラム以外の4人はシー達に捕らえられ、彼らのの元へ運ばれます。宝の山の上にふんぞり返っている偉そうなシーです。

ガラード以外は縛られてないけど、針のような剣を持つシー軍団に囲まれてて動くに動けない。"ライトニング"×20とかされたら死ぬし(笑)

王によれば、人間のバートとリザンは「主」という存在に捧げられ、妖精2人は食うそうです。この2人が簡単に食われるとは思えませんが。

実際密かに助けに来ていたプラムのお陰でシチューの具を脱出し、3人の妖精は追っ手から逃げに逃げて塔の最上階に登ります。

ここまで来ると元気なのはプラムだけ、流石はグララン。なおシー達は「主」を恐れ服従してるので登ってはきません。


その少し前に、バートとリザンはシー達に連れられ、「主」のいる最上階の部屋に入ります。シー達もやはり「主」が怖いのでガクブルしてます。

実はこの「主」というのは、カストゥール王国の付与魔術師だったりします。名をエルドースといい、現在は体は滅び、に魂を封じています。

エルドースはを欲しています。自由に動ける体を求めてシー達に人間を連れてくるように命令してたんですね。どうやら創造主らしいんで。

現在の彼は杖に魂を封印していて、誰かが触れると体を乗っ取る事ができるのです。まるでカーラみたいですね。同じ魔法なのかな。


しかしリザンは恐れもせず、エルドース自身である杖こそが学院の賢者の証であると確信し、進んで杖に触ろうとします。

本来ならばその圧倒的な強制力にリザンは屈していたでしょう。カーラのサークレットだと抵抗の目標値が25ですよ。

エルドースも勝利を確信していましたが、ミルリーフの護符の力でリザンが勝利。まさかこんな事になるとは、エルドースも予想外でしょう。


これでリザンはエルドースを支配し、その知識を自らのものとしたのです。学院の扉を開ける手段も分かり、自信に満ちた顔をしてます。

その自信は決して彼自身の力によるものではないと思うんですけどね。仮初の力で得た自信は危険です、自他共に。

シー達は杖を持つリザンに恐れおののき、すっかり従順になってしまいました。料理に旅支度と全部やってくれましたよ(笑)


これでようやく古代魔法学院に入れます。エルドースの知識を引っさげたリザンを先頭に、一行は学院内に入ります。

今のリザンは恐らくは学院内の構造や仕掛けを把握してると思う。「明りよ!」という古代語で照明がつく事も知ってましたし。

最初の部屋は巨大なもので、色々な品物がゴロゴロしてました。これらも見る人が見れば大変な発見なんでしょうね。

小型の船とか金属の翼を持つ鳥はいいとして、巨大な長い筒とか鉄柵とか何なんだろう。笛や竪琴のような楽器もマジックアイテムなのか。


やがてリザンは上の階に登ろうとして、エスカレーターに乗ります。ウォートの館にも似たような仕掛けがありましたね。

バートにとっては衝撃的な設備ですが、リザンはなんら感動する事無く1人でスタスタ歩いて行ってしまいます。

2階には無数の部屋が並んでいました。この部屋の中にも色々なアイテムが眠ってるのなら、本当に大発見ですよ。

シラルムは1つ1つの力が強いから分けているかもしれないという推測を口にしていますが、そういう考え方もあるんですね。


リザンは目的の部屋に当たりをつけ、"アンロック"かディスペルで開けようとしますが、達成値が足りないのか開かない

達成値が20とか30とか当たり前の世界でしたから無理もない。むしろ再挑戦して開いたのは凄いですよ。

しかしここまで来るとリザンの興奮もピークに達しているのか、それを妨げる物にはイライラが隠せません。

「バート、集中の邪魔になる。下がっていてくれないか」と険しい顔で非難してきます。ちょっと第二次反抗期っぽい(笑)


扉の中には1つの大きな箱がありました。実はこれはで、中にはミイラがいます。そのミイラは胸の中にミルリーフの魂を封じているのです。

このミイラは(SW風に言うならマミー)は特殊でして、炎が弱点ではないのです。しかも金色に光っていて、中身がない

アンデッドというか、マミーのデータをしただけの魔法生物なのかもしれませんね。大方古代語が刻まれた包帯が本体とか。

なおマミーには6レベルのサーバントと9レベルのマスター・マミーがいますが、こいつはデータ的には前者です。


ミイラは自分が封印してあるものが危険だから立ち去れと言ってきますが、その直後扉をロックするとはどういう事だ(笑)

これで戦わざるを得なくなったのですが、こいつが強いんですよ。炎は効かないわ、中身がないわで戦いにくい。

シラルムの"ファイア・ボルト"やリザンがバートにかけた"ファイア・ウェポン"は大して意味がないでしょうね。

あとガラードが"ホーリー・ウェポン"を使ってますが、それが効果あるのならこいつはやはりアンデッドになりますね。


またここではシラルムが"バルキリー・ジャベリン"を、リザンが"スケルトン・ウォリアー"を使ってました。両方とも5レベルですよ。

小説の冒頭では1レベル魔術師だったリザンが、1冊終わったらもう5レベル。見えないところで色々冒険してるんでしょうね。

しかし竜牙兵を2体も作っているんですが、それだと1つ5000ガメルの竜の牙を2つも使ってるんですよね。計1万ガメル

それで勝てればいいんですけど、軽く粉砕されてるし。仮にも5レベルある竜牙兵を瞬殺とは、本当にこいつは6レベルなんしょうかね。


ミイラは包帯を取り去るとそのまま倒れてしまいます。やはりこの包帯がこいつの体を構成していたのかもしれません。

その胸からは1つの万華鏡(カレイドスコープ)が出てきます。これこそはミルリーフを封じている封印です。

中は合わせ鏡になっているので、その無限回廊に魂を封じているんですね。鏡像世界に魂を封印、なかなか美しい趣向です。


こうなればリザンはこれを破壊するだけです。中に入っていた赤い塊、ミルリーフの魂はリザンを取り込んで消えてしまいます。

魂から漏れる暗褐色の光と、護符から漏れる紫色の光が交じり合い、ミルリーフの狂喜と共に壮絶なエフェクトを起こしています。

後に残されたのは4人だけ、リザンはいない。ついに復活した海の邪神ミルリーフがその猛威を振るうのは、それからすぐの事です。


間章 新しき司祭

封印を解かれたミルリーフですが、今は肉体もなく力も衰えています。海の底にある真の神殿に辿り着く事もできそうにない。

しかし彼に呼びかける声がありました。ミード湖の底にある神殿で、1人のミルリーフ司祭がそこで彼に生贄を捧げているのです。

ミルリーフはその生贄、子供の死体に入り込みます。今の彼には血も肉もないから、生贄の血肉を自らの血肉とするのです。

こうしてミルリーフは肉の塊となり、自らの血をすすって力を取り戻そうとします。これからもっと沢山の生贄を手に入れないといけません。


一方リザンはというと、ミルリーフに取り込まれた時には恐怖と苦痛を味わい、後悔と悲しみで泣いていました。

何やら肉体が溶けて融合してるようです。そしてエルドースも痛覚がないはずなのにその苦痛を味わっていました。

しかしリザンは外に出されます。護符を持ったリザンはミルリーフ司祭として、生贄を手に入れるように働かせるつもりらしい。

ミルリーフの気まぐれ次第ではそのまま殺されて、その血肉の一部になっていたかもしれません。


ミルリーフはどうも記憶が曖昧になってるようです。自分に仕える司祭という存在までこの時点まで忘れていたようだし。

ミルリーフ自身がこんな有様なのに、よく今までのミルリーフ司祭達は暗黒魔法を使えましたね。本人は封印すらされていたのに。


その場にいた司祭は神の出現に歓喜していました。その中から現れたリザンにも恐縮してましたが、ただの魔術師だと分かり態度を変えます。

しかしリザンの落とした教典に手を伸ばしたのが運の尽き。リザンに物凄い顔で睨まれ、殺されて生贄に捧げられました

リザンの逆鱗に触れなくても、リザンはこの司祭を生贄にしていたかもしれませんけどね。……あのヘタレていたけど優しいリザンは何処へ。


リザンはミルリーフの司祭として、護符と教典を携えて生贄の捕獲を始めます。その尖兵は今まで生贄に捧げられた人で作ったスケルトン。

リザンが片手を挙げただけで起き上がり、リザンの命令に忠実に従ってるんですよ。これも護符を通したミルリーフの力でしょうか。

死体を無制限にアンデッド化し、更に血肉をすすって力とできるなら、ミルリーフは死者が多ければ多いほど強大になる


これが大陸最大の王国オランを騒がせた「ミルリーフ事件」の始まりでした。リザンはその司祭として、多くの命を奪っていきます。

それを止めようと命がけで戦うのは彼の仲間であり、兄のバートです。そしてミルリーフを倒せるのは"神狩り"と呼ばれる竜だけです。





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