「新米女神の勇者たち(4)」著:秋田みやび/グループSNE 出版社:富士見書房

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第十話 敵から祭りを守る方法

★何はなくとも成長申告

今回のキャラクターシート


今回の能力値の成長は以下の通り。

ジーク:精神力19→20

ソラ:知力19→20

エア:生命力20→21

メッシュ:敏捷度13→14

ムーテス:筋力22→23

今回は特にボーナスが上がる人はいませんでした。ソラがようやく知力を伸ばせたというぐらいですかね。


技能の成長では実はジークがこっそりフェアリーテイマー3にしていた事が判明しました。特に宣言はなかったはず。

そこからフェアリーテイマー3→4と伸ばしました。これで魔力6で《魔力撃》のダメージも少し上がりましたね。

ソラはセージ3→4でドレイク語の会話を習得。ムーテスはレンジャー3→4と更にお薬の効率が良くなりました。


メッシュは一気にスカウト3→5です。前回成長しなかったら2階級特進できるほどに貯まっていたらしい。

エア「称号に「優柔不断」を追加しないとね」

ジーク「ぞんざい優柔不団

ムーテス「え、全員で支払うんっすか?」

これで先制力も上がって先手を取れる可能性が上がりましたね。ソラの習得言語もそうですがちゃんと今後を見据えています。


あと一番大きな変化としてエアがコンジャラー0→2と習得しました。完全に支援に特化するつもりですね。

これで念願のカンタマとかも使えますね。MPもついに50台に突入しました。年齢も50台に突入しています。

ただ彼女に支援魔法が集中しているのは気になるところです。支援を行き渡らせるにはそれなりのラウンドを要する事になる。

ただでさえ彼女には回復役という重要な役割があるのに、それに忙しくて支援そのものが遅延する事にもなりかねません。


今回のお買い物は各人で個人専用装備をいくつか揃えるようになりました。


まずメッシュは<セスタス>と<スカウトツール>と<誓いのアンクレット>をそれぞれ専用化しました。

<セスタス>と<スカウトツール>についてはこれを使う限り器用度+2です。後者はこれまでキャラクターシートから漏れていました。

<誓いのアンクレット>ですが、装飾品なのでHP+2かMP+2のどちらかの筈ですが明言されていないので不明です。

ムーテスは<ヘビーアックス>を専用化して器用度+2です。<ブラックベルト>も専用化しましたがメッシュ同様に詳細不明。

ソラは<ブラックベルト>と<幸運のお守り>を専用化。前者はMPを、後者はHPを+2にするものでこれは明言されていました。


ソラについては今回まとまったお金が入ってきたので恒例のお買い物タイムで色々買い込んだようです。

<化粧品セット><砂時計><虫眼鏡><ペンキ><ティーセット><酒の種>、その他諸々。もう何処にしまっているのか謎ですね。

この中だと<ペンキ>を5缶も持っている事が驚きです。1つが1リットル缶なので5リットル分、物凄く重そうですね。

感心したのは<ティーセット>です。通常はカップが4つしかついてこないので、割増料金を払ってちゃんと5つ揃えました。

<酒の種>は1粒でジョッキ一杯の水を酒に変えるよう魔法で品種改良されたものです。10個入りで100ガメルですね。


一番大きい買い物をしたのはエアでしょうね。名誉アイテムの<中規模の邸宅>を購入したのですから。

住宅には色々な種類があり、これは名誉点150点、価格2万ガメルです。ここで寝泊りすれば生活費がかからなくなる。

ただし維持費というものがかかり、中規模の場合は月に5000ガメルもかかる。普通の生活費より嵩みますね。


そこで住宅設備の一つとして<有能な金庫番>を雇います。この人さえいれば維持費も賃金も資産運用で稼いでくれるのです。

これは住宅に要する名誉点の半分を支払えばいいので、今回の場合75点。よって合計225点で維持費無料のアジトが持てます。

エアはこれにガアラを指名します。神殿の仕事が忙しいのに邸宅の維持までこなすとは、その内過労でぶっ倒れるかもしれない。

住宅は更にグレードアップする事も可能だし、設備には他にも<お抱え劇団>やら<展示ホール>やら<絵画>やら色々あって夢が尽きませんね。


特に宣言はされていませんがジークは<リトルウィング>を買ったようです。落下ダメージを20点減らしてくれます。

SW2.0の落下ダメージはSWと同様で「落下した高さ(m)×3」点なので、大体7m分をカットしてくれます。


★最強モーニングコール

前回蛮族に誘拐されたルーちゃんを救出したぞんざいズは後事をガアラに任せ、大部屋で睡眠を取っていました。

これにはぞんざいズを信頼しているルーちゃんも一緒でした。今は彼らと一緒にいるのが一番落ち着くらしい。

メッシュ「私が近づくと弱るのが面白いので、近づいたり離れたりして遊んだりしています」

エア「やめんか、そこのガラクタ!貴方にはストーカー犯罪法を適用します」

ソラ「何メートル以内侵入禁止?」

エア「二百メートル!

メッシュ「同じ建物にいられないじゃないですか、それでは!」

実際にはこれだけ多くの信者がいればルンフォが傍にいても影響はないようですが。既に以前のような眠り癖はないし。


やがて夜も明けてくるとイストの連絡で本国から駆けつけたリアがぞんざいズを起こしにきます。フットワークの軽い神様ですね。

リア「おはよう。お疲れさまです、皆さん。もうちょっと、
    寝かせてあげたいかなって思ったんですけど、わたしも色々忙しいから……

GM「安心しきったみたいにして寝てるエキストラベッドの姿とそっくり

エア「そんなバカな!そんなはずはありません!」

GM「でもそっくりですよ」

エア「エキストラベッドに寝てるのは、リルトカゲンかポンコツ執事の二択に決まってるでしょう!」←そっちか

そこで紳士なムーテスがルーちゃんにベッドを譲ってあげました。彼は時々ポンコツ執事よりジェントルです。


何でこんなに早いかというと、アメリアが回収した魔動核で飛行船をもう一隻飛ばせるようにしたからです。

ムーテスと違って一回落ちても再起できるんですね。商売を始めたばかりだったムーテスとはその辺が違う。

その時に例の逃亡奴隷達も無事にルーフェリアの国で受け入れたそうです。ジェイク達も安住の地を見つけられたのかな。

バトエルデン大司教も一緒に来ていますが、領の外で降りて色々薙ぎ払って進んでいるので時間が掛かるとか。

彼はファイター13レベルでもありますから、大抵のモンスターなら魔法を使わずとも物理的に排除する事が可能です。


リア「ここで、歪んだ信仰として、ルーフェリアが定着しようとしていたことは、聞きました。
    それを止めてくださって、ありがとう(ぺこり)。下手をすれば、わたしが変質してしまうところでしたし」

多少信仰が変わるのは仕方ないとしても、歪んだ変わり方をしてしまうのは困るというのが彼女の本音です。

同時に折角の信者を無碍にする事も惜しいので、大司教と相談した結果ルーをこの神殿に置く事で合意したようです。


彼女に神の欠片としての自覚があり、信頼できる人が傍にいるのなら、異国の地で信仰を広めて貰うのに適任ですから。

リア「彼女を象徴として、このアイヤール神殿で信仰を集めて育ててもらうのも、いいかと思いました」

ジーク「うわ。プリンセスならぬ、女神メーカー

ムーテス「意外と野心的なんだね」

リア「というか、後戻りできないんです。色々と既成事実作られちゃいましたし」

小神としての力を引き出すにはまだまだですが、それでも下手な神官よりは力を出せるようです。

後にプリースト14レベルとかになってましたし、やはり普通の人族とは素質が違うのでしょう。


ソラ「あ、そういえば、ルーフェリア的お祭り直前だった!」

リア「あれは、成功させておかないと……色々と面子的にも、問題と言いますか」

あれだけ大々的に宣伝した上にライフォスにも喧嘩を売った状態で失敗したら布教どころの話ではありません。

リア「つまり、付け入る隙を与えないように、上手い具合にライフォス神殿の人々を持て成して……」

ムーテス「そ、それは……接待!それは、すごく僕の琴線に触れるものがある」

リア「お祭りを成功させて、上手くライフォスの人々を気分よくさせて、変な隙さえ見せなければ、
    何となく小神のルーフェリアもここで住民権を得るような気がするんです」

意外と世俗的な事にも長けていますねリアちゃん。生まれて何年かは知りませんが色々経験してきたのかな。


リア「立場的にはお爺ちゃまだから、仲良くしておきたいですし」

メッシュ「つまり「お爺ちゃま」を「パパ」と呼べるようにしようと。いやですなー神様同士の援助交際

ルーフェリア(ソラ)「パパー。今月の信仰苦しいの。信者何人か用立ててくれない?

ライフォス(ムーテス)「おお、よしよし。信者三千人でどうだい?

一同(爆笑)

エア「リアさまやってしまってください、信仰が薄れます!」

本当に不敬な連中ですね。王侯貴族が相手でも神様が相手でも態度が全く変わらないというのはある意味凄いけど。


それを踏まえてリアはぞんざいズにもこの神殿に留まって協力して欲しいと頼んできます。

現在マトモな神官がガアラしかいませんしね。エアがそれを手伝って、ジーク達が護衛として神殿に詰めると。

ソラ「お姉ちゃんはどうするの?」

エア「わたしは、神の使徒だから。神様がどうしたいかを仰れば、それに全力を尽くす所存
    この場合は、リアちゃんの言葉もだけど、ルーちゃんがなんていうかも重要かな」

ルー(ソラ)「このままごろごろしてたいの……

エア「くっ、全力で羽根布団を整えて、扇であおいで差し上げます!」←あんた立派だよ

ルーちゃん自身は家に帰りたい気持ちもあるけど、自分に真剣に祈りを捧げてくれた人達を放ってはおけないようです。

幹部連中がアホだっただけで一般信者はとてもマトモです。「平和に暮らしたい」というささやかな願いで祈っていたのですから。


これには一同乗り気ですが、ジークは眉間に皺を寄せて考えました。

ジーク「うっかり根付いて、その間に結婚して子供とかできてしまったら……これ以上旅ができなくなってしまう」

ムーテス&エア「どんな悩み!」

ソラ「お兄さん、一足とびしすぎ」

それでもちゃんと腹を括るのが彼の偉い所です。ていうか前回の嫁宣言はどうするつもりなのか。

細かい条件ですが、拘束期間は半年で場合によっては更新。他の依頼も受けていいけど有事の際には神殿を優先です。

もちろん神殿を拠点とする事ができるのでその間の生活費は神殿持ち。そのまま就職しちゃってもいいレベルです。


こうしてぞんざいズは「ルーフェリア正統神殿」改め「アイヤール・ルーフェリア神殿」お抱えの冒険者となりました。

今後の活動はアイヤールの方がメインになります。本国のリッタさんやコボルドズとは頻繁に会えませんね。


あと今回の件の報酬もリアちゃんから貰いました。神様から手渡しで給料を貰う、何だか貴重な体験ですね。

リア「本当はね、国内で使ってもらえるほうがいいんだけどー」

ムーテス「……経済のことまで考えてるよ、この神様。大丈夫だよ、僕も、
      信仰心の一つの形であるお金が、幾らかルーフェリア神殿に流れるように努力するから」

エア「ムーテスぅうう!もうちょっとオブラードに包めというか、包む努力すらしてないじゃないの!」

ムーテス「僕を漢字一文字で表すと「欲」だから」

自分で言い切っちゃうのはある意味清々しい。この欲の強さと冷静な戦闘スタイルは某長耳フェチを思い出します。




ぞんざいズが神殿の関係者となったことでリアはこの神殿を確保した別の理由を明らかにします。


一つは地底湖にあった祭壇です。あの祭壇で祈りを受けたルーは一瞬とはいえ大人の姿に成長していました。

リア「本来、十数人の信者が、いくら一生懸命とはいえ、もにもに祈ったところで、
    小神を一瞬だろうとも成長させられるわけはなくて。どう考えても、おかしいと思うの」

ソラ「もしかして、もしかして。夕べカマウェトだったのが……時間経ったらドラゴンになってる?(うきうき)」

ムーテス「うわ、それは頑張って友情を育まないと」

リア「がんばって」←淡白ですよリアちゃん

つまりあの祭壇は信者の祈りを増幅させる装置のようなものである疑いがあります。


もう一つはエルヴィーンが信仰していた神様です。ダークトロールは元々何らかの神様を信仰しているものです。

しかし元からルーフェリアを信仰していたはずはなく、何らかの第二の剣の神から改宗した可能性があります。

では何故その神ではなくルーフェリアの力を借りたのか。復讐の為か、あるいはその神の力を使いたくても使えないからか?


ジーク「つまりその神様、ライフォスの神官戦士に倒されてるってことか……?」

リア「その可能性、大きいと思うんです」

それは当時のライフォスの神官戦士が<神殺しの剣>を所持していた可能性を示唆します。

一口に魔剣と言っても様々なものがあり、中には小神を上回る力を持つ魔剣も存在していますから。

そしてもし現在でもそれを所持しているのならば、その剣でルーが殺されてしまうかもしれません。


ジーク「……確かに、それは信用できる相手にしか、明かせんわ」

ライフォス神殿と仲良くしておきたいのはそれを防ぎたいからでもあります。

ちなみに祭壇についてはカイン・ガラから研究者を派遣してもらって調査する予定です。


さし当たっては最高司祭候補としてルーをライフォス神殿に挨拶に行かせました。

本国から来た女神の縁者ということにして、お祭りの最終日にもライフォス神殿のお偉いさんをご招待です。

ホーリィ「うむ。楽しみにしているのだ。
      その娘が、囚われているがゆえに、ルーフェリア神殿の統制がとれていなかったということだな。
      よくわかった。他の者にもよく伝えておこう」

ここまで顔を立ててやればライフォス側もルーフェリア神殿を受け入れるきっかけになります。

責任は全部カティスとかに被せてしまえばルーフェリア神殿そのものを敵視する意見は抑えられます。


ソラ「そういえば、ルーちゃん、神様の自覚できたの?」

リアと手を合わせるとふわっと淡い光に包まれてシンパシーを感じたりもしていました。根っこで繋がったように。

カラー挿絵にあるシーンですが、こうして見ると本当に見分けがつきませんね。双子のようで微笑ましい限りです。

これで彼女にも自覚が出てきたのでしょう。それにしてもルーとリアがいるんだからどこかにフェとかもいないのか。


★祭壇再び

ライフォス神殿からの帰り道、ぞんざいズは「ルーフェリア神殿の上空を飛ぶ大きな影」の噂を聞きました。

これに不安を覚えたぞんざいズは早速地底湖にある祭壇の調査に向かいます。何かが潜んでいる予感もしますしね。


地底湖では相変わらず気さくなカマウェト兄弟が出迎えてくれました。

カマウェト「よう兄弟」

ムーテス「やあ、兄弟。変なものが、ここにきてないかい?」

カマウェト「あんたたちが来たよ

ムーテス「あ、そうか。これは一本取られたな」←そこは認めちゃうんだ

あと「羽のあるやつら」が来たと気になる情報をさらりと教えてくれました。やっぱり何か忍び込んでいる、しかも複数形。


これに警戒したぞんざいズは調査の意味をこめて以前トロールが守っていた地下通路に入ってみる事にしました。

そういえばちゃんと中に入るのはこれが初めてでしたね。前回はカマウェト兄弟が祭壇まで運んでくれましたし。

地下通路は湖の底を潜る形になっており、かなり深くまで階段が続いていました。通路そのもはトロールが通れる程度の広さです。


GM「でもさすがに、ムーテス君が飛ぶのはちょっと辛いかな?」

ムーテス「む、それはちょっと弱気になるな。飛べない僕はただのトカゲだから

ソラ「その自覚は、どうかと思うの」

階段はやがて真っ直ぐな通路に変わって湖を潜り、祭壇に通じる昇りの階段が見えてきました。

ところがその階段が埋まる形で巨大な柱が建っていました。祭壇の真下にあたり、祭壇より二周りほど太目です。


柱の表面には魔法文明語による難解な文章が綴られており、第二の剣の神と思しき名前が辛うじて拾えました。

その名は「アーメス」です。一般的な知名度はない名前のためルーフェリアより更にマイナーな小神と思われます。

かつてエルヴィーンが信仰していたと思われる神であり、ライフォスの神官戦士が戦ったと思われる小神でもある。

その詳細は後に「ウィザーズトゥーム」に収録されましたが、現在のぞんざいズには謎の多い神様ですね。


続いて柱を叩いてみるとどうやら中は空洞のようです。しかし入り口になりそうなものは周囲には見えません。

ジーク「んじゃ、俺一回、階段の上を見に行ってくるわ」

メッシュ「ちょ、お待ちくださいジーク様!この場合単独行動は危ないですよ!

ジーク「え、でも、ここってルーやダークトロールが使ってた通路だろ?」

メッシュ「……ああ、それはそうでしたな。それなら……」

ソラ「あとで聞いたら「あ、一段踏んじゃダメって言われてた場所があったの」とか言われたりするのね」

ところが正にその通りでして、一段だけ踏み抜ける所がありました。罠ではないらしいけど、それじゃあ欠陥建築ですね(笑)

これに気付くには《危険感知判定》ですがレンジャー技能のないジークに気づける筈もなく、踏み抜いて落下してしまいます。


高さはおよそ10mなので30点ダメージですが、<リトルウィング>の効果で僅かに10点の合算ダメージですね。

防護点が6点あるので4点しか抜けませんね。エアに回復魔法を使ってもらうのが惜しくなる程度の怪我で済みました。

本当は柱の表面に隠し扉があったようですが、ソラの"ウォール・ウォーキング"等で全員上から侵入しました。


柱の内部には舞台と同じ太さの柱が更に立っており、こちらが本命の祈りの力を増幅させる魔法装置と思われます。

詳しい事はカイン・ガラの研究者に任せるとして、ここでメッシュは柱の反対側から話し声を聞き取りました。

《聞き耳判定》には成功しましたが、残念ながら彼の知らない言語だったので詳細は不明です。セージ技能伸ばしてないし。


そこで姿だけでも拝もうと《隠密判定》を決行。これで18という素晴らしい達成値を叩き出してその姿を目視しました。

ここで《魔物知識判定》を行います。彼の基準値は4ですが以前調べた相手だったので+2のボーナスが入りました。

これで知名度12を抜いて相手の正体が判明します。皮膜の翼と角を生やした美しい人間の姿をした2人組のドレイクでした。


以前カイン・ガラで調べた事がありましたね。あれ以来遭遇せずに2巻経過しましたが、ようやく登場しました。

ただし爵位の無い素ドレイクであり6/7レベルに過ぎません。8レベルのエルヴィーンの方が上なんですよね。

当時は結構ビビったものですが、今のぞんざいズはドレイクを2人同時に相手にできる程度に腕を上げています。

この分ならモンスターレベル二桁のドレイクバロンに手が届くのもそう遠い事ではないでしょう。何だかんだで強くなったものです。


相手の姿を確認したことでソラが習得したばかりのドレイク語の会話が役に立ちました。

ドレイクA「でも、丈夫だよなあ。どうやって壊すかー

ドレイクB「フィルゲンの大将も無茶な言いつけするわ」

ドレイクA「爵位もちなんだから、しょうがないだろ」

はい、この会話でフィルゲンのレベルが竜形態なら二桁は確定しました。当時戦っていなくて本当に良かったですね(笑)

男爵ならもう少し先にぶつかる可能性がありますが、子爵だと戦うにしても結構先になってしまいますね。

この時点で爵位を明かさないところを見るに、GM自身彼の実力を決めかねていたのかもしれませんね。

男爵ならしばらく後のボスに使えるし、子爵以上ならシリーズを通してのラスボス的存在として使えますしね。


しかもこういう特殊な手合いは必ずしもルールに掲載されているデータと同一とは限りません。

この世界には「名前のある魔物」という、同一種族の中でも飛びぬけた力を持つ個体が存在しているからです。

彼らは同族と比べるとレベルがいくらか高く、特殊な能力を持っている場合がある強敵として知られています。

その分彼らを倒した時には追加の名誉点と称号が手に入り、より名声を轟かせる近道にもなるのです。

フォーセリアでもモンスターのデータは平均に過ぎず、より強い個体や弱い個体がいるという考えがありましたね。


ドレイク「まあ、あいつが一匹いれば、祭りは滅茶苦茶になるだろう」

どうやら祭りをぶち壊す刺客を既に用意しているらしい。祭壇はいいとして、当面の問題はそいつですね。


ここで彼らは少し悩みましたが、放ってはおけないし情報を吐かせるにはいい相手という事で戦いを挑む事にします。

ムーテス「まーまーまーここは一つ穏便にー」

ソラ「ねーねードレイクー。あいつってなにー?なにー?」

新人芸人の如く軽やかに姿を現したことで不意打ちは起こらず、普通に《先制判定》をしました。

ところがこれは取られてしまいます。最近は先制を取る事が多かったけど先制値16はちょっと厳しかったか。

なにしろ先制力7になったメッシュでも出目9が必要ですしね。腕輪を割っても7、期待値が必要だと負けるイメージがあるし(笑)


1ラウンド目

ドレイクの片方は先制の"スパーク"で範囲攻撃を行い、もう片方はムーテスを《魔力撃》でシバいて23点の合算ダメージ。

ドレイクのダメージは2D+8点で魔力8なので期待値は23点。まだ魔法で強化していないムーテスだと11点ほど抜けますね。


続いてこちらの手番ですが、既にムーテスが接近しているので範囲魔法は躊躇われますが。

ソラ「……一発くらい、耐えられる?

ムーテス「ちょ、ちょっと待った、この状況でそれを聞く?」

ソラ「だって"ブラント・ウェポン"は、竜形態に変化したらとけちゃうのよ」

《竜化》すると魔法等の影響は全て解除されますからね。それにできればそうなる前に潰したいし。


そこでまずエアが前衛三人を"セイクリッド・ウェポン"で強化し、片方に集中攻撃を行いました。

まずメッシュが《投げ攻撃》でぶん投げて《踏みつけ》がまさかのクリティカルでHPが半分以上削れます。

ドレイクのHPは38点で防護点は4点なので、<剣のかけら>が入っていないとすると20点は削ったのでしょう。

更に転倒したところでムーテスにざっくりと切られ、まさかの1ターン・キル。2人いて良かったですね(笑)


ジークはもう1人のドレイクに切りかかるも1ゾロ。ソラは"リープ・スラッシュ"で抵抗されて7点だけ削ります。


2ラウンド目

余裕のなくなったドレイクは早速《竜化》します。

GM「構えていた剣を、んぐっと呑む!

メッシュ「呑まなくていいと。構えるだけでいいとったでしょうが!」

それで三部位の竜に変身すると一気に隠し芸っぽくなりました。これで主動作が終わりますけどね。

ちなみにバイカウント(子爵)以上だと《瞬時竜化》となり、補助動作で竜形態に変身できるようになります。


相手が変身したことで《光のブレス》が怖くなったので、ソラは全員に"バイタリティ"で生命抵抗力を上げます。

エアは"フィールド・レジスト"で「純エネルギー」属性のダメージを3点減らせるようにします。

これは「炎」「水・氷」「土」「風」「雷」「純エネルギー」のいずれかの属性の被ダメージを−3点する魔法です。

"フィールド・プロテクション"同様に範囲魔法であり、半径5m内の最大15体までの対象にかけられる優れものです。


メッシュはまず翼を狙って相手を地面に落とそうとします。翼のHPは28点で防護点は4点とあまり丈夫ではない。

メッシュは16点ほど削り、ムーテスが18点削ってHPを0にしました。変身して10秒で墜落とは哀れな(笑)

ソラ「なーんだ見掛け倒しー。これならムーテスくんのほうが……マン・ドレイクのほうが強いかも」

エア「人族に近いドレイク。通称マン・ドレイク」

割と昔からあるジョークですね。某"法螺吹き魔術師"以前から使われていた記憶があります。

マンドレイクを強引に竜と結びつけ、転じて竜を植物扱いするという、リルトカゲンのような蔑称になりそうです。


地面に落ちたドレイクはジークが《魔力撃》でシバき返します。胴体のHPは52点で防護点は7点と流石に頑丈ですが。


3ラウンド目

GM「むきー!悔しいからブレス吐く!一番鬱陶しいのは……多分、そこの神官」

エア「いいわよ、きなさい。わたしはこう見えてもこのパーティで三番目にHP豊富なんだから」

メッシュ「つまり真ん中でしょう」←一番低い人

実は個人専用装備のお陰でソラの方が1点だけ上なんですけどね。生命力だけならムーテスに次いで2番ですが。


その後前衛に袋叩きにあったドレイクは呆気なく倒れてしまいます。ドレイクが雑魚扱いとは感慨深いものです。


倒したドレイクは殺さずに捕虜として尋問します。やはり彼らはフィルゲン配下のパシリだったようです。

ここが元はアーメスの神殿だった事に間違いはなく、この祈りの力を増幅させる魔法装置で力を維持していたそうです。

装置そのものに善悪はなく、エルヴィーンが敗北したことで人族の手に渡らないよう破壊しに来たそうです。

アーメスが本当にライフォスの神官戦士に倒されたのかは彼らも知りません。エルヴィーンと違って地元民ではないし。


あと気になる「あいつ」の存在ですが。

ドレイク「魔神を解き放った。祭りを壊す一番いいタイミングで、現れて暴れるようにと」

エア「うら、げし(蹴った)。ナニさらすかこのボケ。ああ?祭りを壊す?
    ふざけるな。ルーフェリア様の名を貶めようとは不届き千万。げしげし」

ジーク「待てエア、ヤクザ蹴りはすな。さすがに羽交い絞めするぞ」

どうやらここで拘束されていた魔神を「祭りをぶち壊す」事を条件に解放してしまったらしい。

その魔神は随分長い間自由を奪われていたらしく、鬱憤も溜まっていたのでこれを快諾したようです。


ジーク「俺も魔人解放

エア「げしげしげしげし」

ドレイク「ああーやめてー」

これは由々しき事態です。祭りにはホーリィ達も招待してるし、そこで魔神が現れたら心証最悪ですね。

蛮族との癒着の疑惑をかけられるのを阻止した直後なのに、魔神との関係を疑われたら折角の接待が台無しです。

肝心の魔神の種類ですが、《魔物知識判定》には失敗したものの名前だけはわかります。ラグナカングですね。


ラグナカングは9レベルの魔神であり、体長5mの直立した竜のような姿をしています。

頭部(コア)、胴体、翼×2の四部位です。頭部は神聖魔法5レベルに《魔法適性》と練技持ちです。

《魔法適性》とは魔法関係の特殊能力のパッケージです。この場合《魔法拡大/数》《魔法誘導》《ワードブレイク》。

練技は"キャッツアイ"、"ビートルスキン"、"マッスルベアー"に加え、炎と水属性のダメージ−5点の"ストロングブラッド"もあり。

更に頭部の牙によって傷を受けると《猛毒の注入》によって毒属性のダメージが追い討ちのように入ります。

胴体は《攻撃障害=+4・なし》を持つので頭部への近接攻撃が当たりにくくなります。射撃攻撃には無効ですが。

胴体の尻尾によって傷を受けると《痙攣毒の注入》によってあらゆる判定に−1のペナルティが入ります。

翼には御馴染みの《飛翔》の効果があるので、どちらかのHPを0にしない限り命中力と回避力に+1のボーナスが入る。


ラグナカングといえばフォーセリアの「魔神戦争」では割と雑魚扱いだったのを思い出しますね。

5レベルのグルネルとザルバードよりちょっと上の6レベルで、下位魔神の中では割と下っ端でしたし。

ラクシアではグルネルが7レベルでザルバードが6レベルで、それと比べるとラグナカングはちょっと出世した気がする。

まだラクシアの魔神とフォーセリアの魔神の関連は分かりませんが、ラーリスとファラリスの類似性もあるのでもしかしたら……。


そのラグナカングはお祭りで最も盛り上がる所で大暴れすると思われます。その程度の狡猾さを持っています。

元々カティスはルーフェリアの降臨をクライマックスに持ってくるつもりでしたが、現在はガアラがプログラムを組みなおしています。

エア「ちょっと急いで聞きにいこう。ガアラさぁーん!」

GM「そんな、青いネコ型ロボットを呼ぶような声で呼びかけられても……まあ、いっか」

既に祭りまで2日しか猶予が無いので、ガアラはプログラムの再編やら招待状の作成やらで大忙しでした。

現在の予定では大司教がルーを神殿の最高司祭に任命する式典をクライマックスに持ってくるようです。


ガアラ「その際、上手くいけば大司教様が"コール・ゴッド"を見せてくださると

エア「マジ!?」

ガアラ「リア様がやらせるって仰っていたので……」

"コール・ゴッド"といえばSWだと術者の魂が砕け散るのと引き替えに行使する10レベルの神聖魔法でしたね。

この世界でも15レベルという最高位の神聖魔法ではあるのですが、その効果は神格によって大きく異なります。


小神の場合は準備に6ラウンド、行使に1ラウンド、MPは50点消費。行使した瞬間HPが0になるだけで済みます。

生死判定に成功すればちゃんと生き残ります。ただし行使できる奇跡は丘を花畑にする程度のささやかなものに限る。

あと1週間の間MPの上限が50点減少しますが、15レベルなら十分賄える量ではあります。

ちなみにこれを戦闘に使用した場合15レベル以下のキャラクターは抵抗不能で一掃するという程度の効果です。


フォーセリアのように魂の破滅すら招くのは古代神のみ。大神ですら即死するだけで蘇生は可能な状態です。

その代わりその効果は小神とは比べものにならないほど絶大で、古代神の場合世界地図を変えるほどの奇跡を行使できます。

大陸に大穴を空けたり、島を生み出したり。戦闘だと35レベル以下のキャラクターを一掃できます。

大神の場合は山を吹き飛ばしたり、視界の限りを森に変える程度です。戦闘だと25レベル以下のキャラクターを一掃できます。


古代神で丁度フォーセリアのファリスやファラリスと同程度の力でしょうか。しかし35レベルとは、そういうのも存在し得るんですね。

神様自身を含めていいならその程度の力はあるでしょうが。最早次元が違いすぎて超英雄ポイントでもないとどうにもなりませんね。

もし抵抗不能で葬れる対象のレベルが6ゾロと1ゾロの差分だとしたら、古代神で45レベルで大神で35レベルぐらいかな?

以前も話したことですが、小神であるルーフェリアより25レベルの神族の方が強い可能性があるのならそれぐらいの感覚かと。


ではその"コール・ゴッド"でラグナカングを倒してもらうというのはどうか。

ムーテス「招待したライフォス神殿関係者の前で?」

メッシュ「お祭りの一番の盛り上がりには、間違いないでしょうね。デーモン登場。炸裂ルーフェリアぱんち

やっぱり弱みは見せたくないので今回も内密に始末するに越したことはないでしょう。戦闘に勝利しても社会的に敗北です。


ここでぞんざいズはラグナカングの存在をガアラに明かしておきます。

メッシュ「祭りに対するテロなのです」

ガアラ「えええっ!(真っ青)」

ジーク「それでだ、お前に大切なことを聞きたい。すごく大切なことだ」

ガアラ「な、何でしょう」

ジーク「ラグナカングって何?

いつかのめっさー大柄のようにNPCに聞いてしまうパターンですね。

しかし知識のあるなしは生死を分かつ事もある。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥どころか一生が終わりかねない(笑)

残念ながらセージ6レベルのガアラでも1ゾロを振ってしまっては分からないので、後で調べてもらう事にしました。


ここでぞんざいズはエアの新居で休息を取ります。雑魚とはいえドレイクと戦った直後だし。

メッシュ「おや、ここですか。なかなかのお住まいで」

ジーク「ずかずかずか。なーエア、俺の部屋は?」

ムーテス「転居祝いに「ムーテス商会」って看板かけておくね」

エア「こらぁあ!」

極自然に新居を蹂躙されました。その内ムーテス商会に乗っ取られるかもしれませんね。

<中規模の邸宅>だとパーティ一同が住む程度の広さはあるでしょうが、この連中だとどうも手狭な気がする。


これにはルーちゃんもお招きします。こっちにはエアも大歓迎です。

エア「ルー様は、ご飯何が好きですかあ?お蜜柑食べます?」←デレデレ

メッシュ「ちょっとやめてくださいよ、ジーク様の将来のお嫁さんなんですから、そんな親戚の子みたいな扱い」

ソラ「お姉ちゃん、近所のおばちゃんと化してるの」

むしろ孫みたいな猫可愛がりっぷりです。やはりジークがルーちゃんを嫁にする上で最大の障害はエアなのか。


★大きなムーテス君?

ぞんざいズがラグナカングへの対策を講じようと図書室に向かうと、なにやら信者たちが騒然としていました。

ムーテス「飛んでったデーモンを見たとか……」

エア「ありえる」

ジーク「じゃあ、捕まえて話を聞こう。何があったの?」

信者A(ソラ)「じつは、さっき街の外れに、みすぼらしい姿をしたエルフの中年が現れてねぇ(おばちゃん風)」

信者B(メッシュ)「大司教だなんておかしなことを言うんだよ、イラッとして石ぶつけちゃった

エア「あははは、そりゃ身分詐称で、石投げられても仕方ないわー……って、だめー!それ本物ー!!(悲鳴)」

本当は真夜中に「大きなリルドラケン」が現れ、準備中の会場を荒らしていったというのです。


ソラ「で、ムーテスくん、昨日の夜何してたの?」

ムーテス「皆知ってるでしょ、エアさんの家で台所の隅で寝てたじゃないか!」←トカゲか

エア「そういえば、ひんやりしたところが好きって、離れなかったっけ」

メッシュ「勝手口の傍ですね」

ジーク「アリバイなしか」

ムーテス「ちょっとちょっと!」

ところがそのリルドラケンの大きさというのが四部位相当でして、どう考えてもラグナカングなのです。

リルドラケンの身長は2mを下回ることがないとはいえ、流石に5mまで大きくなる事は無いでしょうね。


被害の方ですが、幸い怪我人はいないものの準備中の露店が力任せに破壊されていました。

ソラ「……ああ、だめなの、ムーテスくん。いくら商売敵だからって……(溜息)」

ムーテス「確かに、考えたことはあるけど、今回は僕じゃないっすよ!」

一同「あるんかーい!」

ムーテス「ちょっと、店舗を破壊して、店舗用の丸太を売る商売を……って」

ソラ「……うまいの」

エア「ソラ!心を動かさない!」

間違った方向に商才がありますが、ラグナカングの仕業なら不安を煽る示威行動といったところでしょう。

このフーギの街にはどうやら<守りの剣>はなさそうですが、もし<守りの剣>があったとしても魔神には効果が無い。

何故なら魔神は穢れがないピュアソウルの持ち主なのです。異界の住人なのでラクシアのルールから逸脱しているのでしょう。


ジーク「何を言ってるんだ皆、俺たちは仲間じゃないか!仲間を信じられないのか!
     あ、ムーテス。預けておいた二万ガメルは返しておいてくれ

メッシュ「ジーク様、それは、いつでも縁を切れる準備です!」

ムーテス「覚えてた!あと二セッションぐらい持ち越せば、僕のものになるかとナチュラルに思ってたのに!

エア「あ、その鎧と斧も、パーティ財産で購入したっけ?」

ムーテス「いや、それは違うっすよ!ちょっと借りただけだから

今回の件では冤罪の筈ですが、別の罪状でしょっぴく事ができそうなのは何だかな(苦笑)


現場に行ってみると、力でへし折られたり鉤爪で切り裂かれた無残な露店があり、街の柱まで倒されていたりします。

メッシュ「なるほど、残っているのは、中に鉄の芯を入れたルーフェリア人形くらいですか」←露店あるあるその1

ソラ「それ、倒れるわけない。それが見つかって、射的のおじさんがお客に責められてる?」

ムーテス「当たりくじのないくじが、周辺に散乱してたりもするんだね」←露店あるあるその2

ていうかまだルーフェリア人形の射的屋があるんだ。不敬な上に不公平なのでガアラは摘発すべきです。


被害が出たのは神殿のある裏山です。前回メッシュが忍び込んで腕輪を割ったりしていた場所ですね。

ムーテス「裏山って、どれくらい広いんだい?」

メッシュ「そりゃ、山くらいでしょう

ムーテス「……簡潔なお答えありがとう」

身長5mの巨体で街中にいるとは考え難い。それなら裏山にいると考えるのが妥当でしょうね。

あとは例の地底湖のある地下空洞のどこかとか。幸い鏡像魔神のような変身能力はないので姿は誤魔化せません。


メッシュ「それより、どうやってデーモンをおびき出すか考えないと、煮干をまいたら出てくるとかはないんですか?」

ソラ「山に火、つけたら出てくるんじゃない?

エア「あんたのほうがテロリストじゃないの!ソラ!」

ソラ「え、でも、水の神様だし、後で消せば……」

エア「全否定。却下。審議の余地なし」

ルーフェリアの特殊神聖魔法は水を湧かす事はできてもあまり消化には役に立たないんですよね。

精々"ファンテイン"で泉を作ってバケツリレーってところですか。ウルトラ水流みたいな水芸が欲しいところです。


ムーテスへの容疑については犯人が1分(6ラウンド)以上悠々と飛んでいた事でアッサリ晴れました。

ジーク「良かったなムーテス。疑いが晴れたぞ!」

ソラ「ムーテスくんより優秀な、上位リルドラケンだったみたいなの」

ムーテス「うわ、嬉しいはずなのに、何だか全然嬉しくないっす」

12レベルになると2分(12ラウンド)飛べるようになりますが、それでも全然足りませんね。

ラウンドで表記すると長くなったなと感じますが、実際の時間で考えるとあまり違いは感じなくなりますね。


その後一度神殿に戻った時にガアラに呼び止められ、ラグナカングのデータを教えてもらいました。

ジーク「おお!すげえなガアラ。お前が微妙に出世していた理由がわかったぞ

そのデータを聞いてムーテスあたりは嫌な顔をしていました。《痙攣毒》はウザったい上に累積しますからね。

《かばう》で攻撃を受けて鎧で弾くムーテスですが、それでも1点でもダメージを受けたら判定が必要です。

それで失敗してしまったらどんどんペナルティが大きくなっていきますし、ディフェンダー泣かせの相手ですね。




山にラグナカングが隠れていると推測したぞんざいズは早速山狩りを開始しました。

まず裏山を管理しているレンジャー達に聞き込みを行い、最近傷がついた木の位置などを教えてもらいます。

そこが以前メッシュがルーちゃんの部屋を覗き込んでハァハァしたあたりであり、神殿にも近い場所でした。


ジーク「俺としては……昔のかくれんぼの経験から言うと、一度鬼が探した場所っていうのが、一番見つかりにくいんだよ」

その法則に従うのならラグナカングは山ではなく地下にいる事になります。

身長5mのラグナカングの通れる通路は限られています。柱から出たのはジークが踏み抜いた階段からです。

ではそこからどうやって地上に出たかが問題になります。ラグナカングはそのあたりに潜んでいる可能性が高くなる。


そこでメッシュは相手の足跡を追おうと《足跡追跡判定》を行い、見事に成功しました。

メッシュ「(ころころ)よし、16、ジャスト成功でございますよ」

一同「おおおー(拍手)」

ジーク「こんな有能なメッシュはメッシュじゃない。何かに食われてすり替ってるんじゃないか?」

これでメッシュはルーフェリア神殿の倉庫を発見します。ここに例の昇降機の出入り口がありました。

前回は昇降機を地下に降りる事にしか使いませんでしたが、上に行くとルーちゃんの部屋などを通過してここにくるらしい。


ここで《探索判定》をすると、昇降機の出入り口が内側から力任せに開けられ、天井に角が擦れた形跡を発見します。

出入り口自体も5mほどなので、ラグナカングはここから地上に出たと思っていいでしょう。

現在ガアラが地下を閉鎖したので昇降機は使用禁止になっており、ぞんざいズの足元で停止しています。


ジーク「でも、何でゴンドラに異常がないんだ?」

メッシュ「何を言ってるんですか。私たちがこうして下ばかり見ている。
      ……つまり、ラグナカングは今私たちの頭上にいるのに決まってるではありませんか!」

ムーテス&ソラ「なんだってー!」

エア「上見る!」

GM「……いません」

そんなエイリアンみたいな事はありません。


次にぞんざいズはもう一度地下を見に行こうと、下にいる見張りに声をかけて昇降機を一度上げてもらいました。

ジーク「おーい!誰かいるかー?」

見張り「何ですかー?っていうか、誰ですかー?」

ジーク「ジークだ!」

見張り「おつかれさまーっす」

ソラ「このやりとり、じつはデーモンとじゃなければいい、と思う」

ところがGMはこの時点で結構ビクビクしていました。何故か……。


ジーク「下に降りたいんだけど、一度昇降機あげてくれないかー?

見張りA(ソラ)「じゃあ、服を脱いできてくださーい」

見張りB(ムーテス)「そして塩を身体にすりこんできてください!」

ジーク「喰う準備をされてる……注文の多い昇降機

昇降機は人力で上げられ、ゴンドラ部分がぞんざいズの高さまでやってきます。


ところが何を思ったかもう少し上げてみるように指示を出しました。

ジーク「何かゴンドラの下にいたりしてな

GM「…………」

メッシュ「あれですな。床とゴンドラの狭間から覗き込んで、「はぁい♪」と」

エア「その瞬間、ゴンドラ落としてもらわないと」

GM「……くやしい」

ムーテス「へ?」

するとゴンドラの下には金色の目が爛々と輝いていました。噂のラグナカング君です


まさかの展開に一同声を失い、一泊後に大爆笑ですよ。

一同「…………」

ソラ「ぷ」

一同(大爆笑)

エア「あはははは、うそー!ホントにいたー(机どんどん)」

ジーク「お前、何やってるんだー!

GM「あなたたちこそ何やってくれるんですかー」

外に出たフリをしてゴンドラの下に潜み、タイミングを見計らって暴れ出すつもりだったようです。

ところがそこはぞんざいズ、GMの予想を裏切るといういつもの展開でアッサリ見つけてしまいました。

ゴンドラの下にスパイ○ーマンよろしく張り付く身長5mの魔神がうっかり見つかるとか、もはやコントです。


ムーテス「もしかして身長に自信がなくて、ぶら下がり健康法でもやってたんっすか?」

ソラ「いくらなんでも、それはないと思うの。身長五メートル」

メッシュ「いやわかりませんよ、身長四メートル九十で、気にしているのかもしれません!

エア「誤差の範疇じゃない!何人同族がいるのよ!」

ジーク「いや、彼女が五メートル二十センチだったりしたら、やっぱり気になるぞ」

メッシュ「それは純情物語です。応援したくなってきましたよ!
      マスター、ラグナカングとその彼女の関係は世界観的にどのようなものですか」

GM「らぶらぶなんじゃないですか?」

まさかの展開に笑いの止まらない一同、テンションがおかしい事になっています。

魔神相手にこんな萌えトークを繰り広げる人なんてそういないでしょう。あと魔神に性別があるかは不明です。

「魔神戦争」の時にも少し話題にしましたが、漫画版「ファリスの聖女」には女性っぽい魔神がいましたが。




こうなってしまった以上戦うしかありません。ラグナカングの先制値は16です。

メッシュ「(ころころ)16ですね?ぱりーん」

ソラ「また腕輪壊したの」←腕輪は割るもの

ラグナカングから先制こそ取れましたが、現在ラグナカングは昇降機のシャフトにいるのが問題です。

形成される乱戦エリアの中心点こそ地上ですが、半分はシャフトによる空中エリアと見なされるようです。

このため空を飛べるムーテスとラグナカング以外には足場が悪い事による−2のペナルティが入るのです。


ジーク「まずは翼を叩き潰して、転ばせれば……シャフトへの落下ダメージで逝ってくれるといいな」

部位モンスターであっても落下ダメージは各部位毎に適用される事になっています。

ラグナカングの頭部はHP48点の防護点10ですから、20mの落下で60点になるので倒せますね。

<剣のかけら>が9つ入って+45点のHPを均等に分配していたとしても、もう4〜5mあれば削れますね。


この昇降機は山の上から地底湖まで繋がっているのでそこそこ高さはあるでしょうから本当に逝くかも。

もっとも地底湖といっても本当に地上より低い位置にあるかは不明ですがね。単に神殿の位置より低いだけかも。


1ラウンド目

エアは御馴染みの"フィールド・プロテクション"を使用し、ソラは抵抗上等で"ファイア・ボール"を撃ちこみました。

ムーテスは2つの練技を使いつつ翼に当てて16点。翼はHP29点の防護点5なのでこれだけで11点は削りました。

メッシュは自分にシャドボをかけて乱戦エリアに飛び込む準備。ジークは普通に殴るもハズレてしまいました。


ラグナカングはのそのそとシャフトから出て飛びました

ジーク「え?ラッキー」

GM「何故かと言うと、縦穴の中では翼で攻撃できないからです。しっぽの攻撃も難しいからです」

それだけで四部位中の三部位が攻撃できなくなりますね。でも特にペナルティが解消される訳ではないらしい。


GM「まずはメッシュ。(ころころ)20」←牙で攻撃

メッシュ「サイコロ二つで13を出せば避けられますよ!」←無茶言うな

シャドボ込みで回避力9ですが−2が入って7ですもんね。しかも回避の出目が11、ペナルティがなければ避けてた。

毒への抵抗には成功したものの、やはり格上の相手にこのペナルティは結構痛いですね。しかも相手はこのGMだし。


ジークは尻尾の攻撃を食らいます。《痙攣毒》には抵抗しましたが冷や冷やしますね。

GM「うん、強い強い」

ムーテス「何軽やかに言ってるんっすか!そいつ、めっちゃ強いんすよ!」

GM「うん、正直、ここでこんな不利な戦いになるとは思わなかった

ムーテス「うわぁ、肯定した!」

本当は儀式の最中に聖堂の裏で戦ったり、あるいは儀式に乱入したりする予定だったとか。

翼の攻撃は2回ともムーテスに行きましたが、防護点15点になっている今の彼は1点しか通しませんでした。

これで次回から毒はムーテスに使う事になります。魔神は賢い、1ラウンド戦っただけで戦略を立て直す程度の事はできる。


2ラウンド目

ソラの"リープ・スラッシュ"とメッシュの拳が翼Aに集中し、それを見たジークはついに攻撃魔法を使用します。

使うのは4レベル妖精魔法の"カオスショット"。六属性の妖精の力を結集した威力20で純エネルギー属性の攻撃魔法です。

この攻撃で翼Aが落ち、ラグナカングは落下。《飛翔》の効果が消えた上に足場の悪さも入って−3のペナルティが入ります。


それに続こうと唯一〔風の翼〕で飛行するムーテスは胴体を攻撃します。

メッシュ「さながらムーテス無双

ムーテス「あと四ラウンドはね」

エアは死にかけのメッシュ等の負傷者を"キュア・ハート"で癒します。


ラグナカングはムーテスに牙で反撃するも6ゾロで避けられ、尻尾で攻撃するも毒には抵抗される始末。

ジーク「すごい、ムーテス輝いてるぞ!

GM「翼Bが殴るのは、そこの柔らかい人。さっきかなりいい手ごたえだったの覚えてますよ」

ソラ「メッシュさん、毒ダメージ入ったら、終了目前なの

メッシュ「ふ、ふふ……皆さん今頃気付きましたか?私は、初手で気付いていましたよ(がくぶる)」

ジーク「渋く決めながら、震えるなよ。一万ガメルは用立てておくから」

メッシュ「もしもの時はよろしくお願いします」

牙のダメージは2D+13点なので期待値で20点。防護点3のメッシュだと17点も抜けてHPは16点に半減。

続いて《猛毒の注入》は2D+8点の魔法ダメージなので期待値で15点ですか。確かに運が悪いと危ないかも。

ちなみに"フィールド・プロテクション"は毒・病気・呪い属性のダメージには無効となっています。


3ラウンド目

ソラは毒対策に"バイタリティ"を使用し、エアは前衛3人に"キュア・ウーンズ"で回復です。

ムーテス「おっと、忘れるところだった。僕、メッシュさん庇う」

メッシュ「プライドが邪魔をして、嬉しいのですが態度には表せません。めっちゃありがとうムーテスくん

そして前衛一同が胴体に集中攻撃です。ここさえ落ちればあとは頭をフルボッコにできる。


ラグナカングは苛立ってきたのか全ての練技を使用し、メッシュへ牙による攻撃を宣言。

当然ムーテスはそれを《かばう》ので攻撃をモロに食らい、ダメージ毒で15点ほど削られました。

GM「そして、今一番ガンガン当ててくるのは、やっぱりムーテスくん。能力値下がっちゃえ!」←尻尾で攻撃

ムーテス「うわ、それ当てられたら地面に降りた後が目も当てられないっすよ!(ころころ)っしゃ!避けた!

そして翼は《かばう》効果のなくなったメッシュを狙うも回避されます。結局エアに回復する手間を与えただけ。


4〜6ラウンド目

それからも攻防は続き、ソラとジークは抵抗上等で攻撃魔法を使い続けました。

ジーク「《マルチアクション》ほしいぞくそー!」

エルヴィーンのように攻撃魔法を使いながら武器でも攻撃できますからね。魔法戦士の憧れです。

またエアは回復サイクルに入って援護魔法が使い難いようです。やはり彼女に援護が集中しているせいでしょう。


GM「これは頭が"フォース"かなあ。折角《魔法拡大/数》あるし」

エア「来なさいよ。あんたの"フォース"は4点消費。わたしの"キュア"は2点消費」

GM「うわ、ちょっと殺意芽生えた」

そこで魔法を使う3人に"マナ・シンク"を使用します。これは2レベルのラーリスの特殊神聖魔法ですね。

MPに威力0のダメージを与えるというもので、ラグナカングの場合抵抗できないと7振って7点削られる。

これはソラでいえば"リープ・スラッシュ"1発分に相当します。キュアなら3回分ですね、最早嫌がらせか。


しかもムーテスについに《痙攣毒》が効いてしまいます。もうすぐ〔風の翼〕が切れるので一気に弱体化しますね。

ちなみにこのラウンドを4〜6としているのは推測です。実際には1ラウンド分でしかないのかもしれません。

ただ「〔風の翼〕がもうすぐ切れる」というアナウンスを「次のラウンドに切れる」と解釈したためです。


7ラウンド目?

ようやく余裕のできたエアは前衛に"エンチャント・ウェポン"です。

そしてジークは最後の"カオスショット"でついに胴体を落とします。これで残るは頭部のみですが。

GM「でも……"アウェイクン"唱えたら、起きる?

ジーク「い、今のうちにぼこれー!」

一同「イエッサー!」

そして本当に胴体と翼を復活させますが、所詮はHP1の状態。こちらの手番を使わせるだけです。

あと頭部のMPも空になったようです。3点消費の練技すら唱えられない有様で分かりやすい消耗戦ですね。


8ラウンド目?

ソラ「大丈夫、残ったMPで"エネボ"頭と胴体と翼!でも、あたしもこれで打ち止めなの!」

これで頭部へのダメージが回って23点と痛手を与えますがまだ辛うじて生きています。

復活した胴体と翼はこれでアッサリと落ち、やはり頭部を集中攻撃する詰みの状態に入ります。


ソラ「もう何もできることない。すみっこにぺたって座るの」

エア「うん、あとはお姉ちゃんに任せて。みんな回復させる!」

しかもこれでようやくMPが半分になったというのだから恐るべき継戦能力と言えますね。

キュアの消費MPが2点とローコストな上に一度に怪我をする人数も数人ならそうなるかも。


それでも途中で"キュア・ハート"とか唱えていたし、26点程度の消費で抑えられるものなのか。

1ラウンド目は"フィールド・プロテクション"で1点消費。この時大怪我をしたのは主従です。

2ラウンド目で主従に"キュア・ハート"を使ったとすると8点消費。3ラウンド目は前衛3人にキュアで6点消費。

4〜6ラウンドは不明ですが"マナ・シンク"でキュア2.5発分削られたので5点は消費している筈です。

7ラウンド目の"エンチャント・ウェポン"は前衛3人に使っているので6点消費。これだけで26点です。

あとはカットされた期間とこのラウンドの回復を入れると半分では済まないんじゃないかと。<魔晶石>併用かな?


9ラウンド目?

ジークは最後の魔晶石まで使った"カオスショット"でラグナカングを更に追い詰めます。

ジーク「すごいな、ここまでMP使ったことなかったぞ

メッシュ「もしかして、あと魔法何発かで落ちるんじゃないですか?」

むしろ魔法を使ったことすら殆どありませんでしたね。早く《マルチアクション》が欲しいですね。


そこで回復を休む余裕ができたエアは"フォース"で攻撃するもまだ立っている。

ムーテス「念のため殴るよ」

GM「ううん、足場が効いてる。今は翼がないからなあ。何とか、同値回避

ムーテス「同値?それなら腕輪壊すよ。これで達成値+2だ!」

ジーク「おお、輝いてるぞムーテス!」

メッシュ「素晴らしい、まさしく燃え尽きる前の蝋燭の、最後の輝きのようだ!

ムーテス「不吉なこと、言わんといてください!金は稼いで貯めておくだけじゃなく、使いどころが肝心なんだ!

それでもまだまだ倒れない。エルヴィーンよりしぶといヤツですね。まさか<剣のかけら>を頭部に集中させた?


?ラウンド目

最早ラウンド数すら分からない激戦の末、ソラは魔晶石を使ってまで攻撃するも1ゾロ。ジークは空振り。

エア「もう一回、"キュア"なくても耐えられる?それなら"フォース"撃つ!」

ムーテス「じゃあ続いて僕も殴っておくっす。よし、大丈夫、今回は6ゾロで当たる」

GM「はう。……1点残った

一同「1点!(目の色が変わった)」

まさかの慢心アタック状態。もはやかすり傷程度でもいいから当てればキルマークが貰える状態です。


メッシュ「ふはははは!漲ってきましたー!

ムーテス「あ、ごめん。そういえば僕、エアさんに"エンチャント・ウェポン"もらってたよね」

メッシュ「な、なに!」

GM「うん、それだと今のダメージで落ちた

ジーク「メッシュ……漲っただけで終わったな」

メッシュ「急速に萎んでいきます……」

ソラ「ナイス計算なの」

メッシュ「……もうお前なんか、友達じゃないやい(投石)」

今までで一番の激戦になりましたが、これでラグナカングは退治しました。


戦利品を剥ぎながらガアラや神官達を呼び、事情を説明して彼らの仕事も終了です。

エア「安心してください、我がルーフェリアの名において、退治しましたよ

神官A「確かに、こんなのが昇降機の下に入り込んでいたら、祭事の際に聖堂に侵入されかねませんでした」

神官B「さすがは、神殿に信用された冒険者だけのことはある

思えば彼らは事情を知らない人からすれば無法者でした。地底湖で2度も大暴れしてましたからね。

それもルーフェリアだけに水に流し、神殿御用達の冒険者としての信頼を勝ち取る事ができたのでしょう。

魔神については「はぐれ魔神が出たので倒した」と発表し、ライフォス神殿も街の警備に参加してくれました。

それはルーフェリアとライフォスが手を取り合っているようでもあり、住民にも2つの神殿の共存が受け入れられたでしょう。


彼らが守ったお祭りにはルーだけでなくホーリィも連れ出してあげたようです。

ジーク「全部終わったら、露店巡りに連れ出してやろう。優等生でいるのも大変だろうしな。息抜き息抜き」

メッシュ「優等生でいるばかりがいい子ではありませんよ。融通が利くのが何よりです

エア「また余計なこと唆して」

これが後に新たな事件を呼ぶ事になるのですが、それはまた別の機会に。


★アイヤール水神神殿誕生

翌日、正装を準備されたぞんざいズは祭典に招待されました。大司教も昨日の夜に到着したようです。

バトエルデン「ご苦労だったな。大変だっただろう」

ジーク「いや、大変なのはあんただ」

メッシュ「この人、護衛とかいないんですか?」

いるそうですが、本人がルーフェリアの国最強だし。実は彼はライダー技能が11レベルとかあるし。

愛用する騎獣は竜の子供ドラゴネットなので空を飛べばもっと早かったでしょうが、この時は設定が決まってなかったので。

あと《白峰領》の領主やライフォス神殿に出向いて政治的な交渉をしていたそうなので、戦闘ばかりではないはずです。


祭典は厳粛に華々しく執り行われ、大司教がルーを最高司祭に任命します。

エア「感無量。ぼろぼろ泣いてます」

そして祝福を与える意味で大司教は"コール・ゴッド"を使用、女神ルーフェリアの姿が神殿に現れます

淡い光で包まれたその神々しい姿は神殿の外にいる人にも知覚され、その奇跡の力は神殿のある峰の木々に花を溢れさせました


GM「それくらいのことはしてもいいでしょう」

メッシュ「逆に言うと、それくらいのことしかできないと

GM「黙れ

ムーテス「でも、きっと信者たちは大興奮、オールスタンディング状態だよね。で、神殿で金とってもいい?」

エア「とるな!それは寄進!」

ソラ「むしろ声も出ない状態?」

お姉ちゃんは元気に突っ込んでますけどね。妹の方はルーフェリアの水に<酒の種>を入れて乾杯してたり。


こうしてアイヤールにルーフェリア神殿が建立され、ルーフェリア信仰は大きな一歩を踏み出したのです。

ジーク「まあ、そんなことより、ルーが幸せそうにしてるなら、それがいいやな」

メッシュ「苦労は多いかもしれませんがね」

ジーク「俺たちが、それを助けるんだろう?

第四話から続いた女神の欠片誘拐事件もこれで本当に一段落つきました。色々伏線は残っていますがね。

次回からはこのアイヤールを舞台にした新章開始です。単発と見せかけて新たな伏線もふんだんに登場します。


第十一話 素敵な像を得る方法

★さあさあ、恒例成長申告

今回のキャラクターシート


今回の能力値の成長は以下の通り。

ジーク:精神力20→21

ソラ:敏捷度15→16

エア:敏捷度14→15

メッシュ:敏捷度14→15

ムーテス:生命力24→25

ソラが<疾風の腕輪>を購入して無理矢理敏捷度ボーナスをブレイクさせました。

装備箇所はその他のようですが、それだと今まで装備していた指輪の発動体がどうなったかは不明。

5巻のデータだと右手が不自然に空いているのでここに装備しているのかもしれませんね。


技能の成長ではメッシュがグラップラー5→6に成長。これで全員冒険者レベル6以上になりました。

メッシュ「いつか、《ファストアクション》と《カウンター》を備えた、無敵のグラップラーになるのが夢なのです」

ジーク「その前にリプレイ終わるって

GM「夢は見ましょうよ」

エア「こら、GMもそこで、終わりませんよ、と力強く宣言しないと!」

実際終わりませんでしたね。そしてメッシュが言うところの無敵のグラップラーにもなります。

まだ先の事になりますが、この2つの戦闘特技を習得したメッシュの活躍には全国のメッシュファンも大感激でしたよ(多分)。


ソラはセージ4→5で戦闘特技《鋭い目》を自動習得。これは戦利品を決定する出目に+1できるというものです。

ムーテスはレンジャー4→5で戦闘特技《治癒適性》を自動習得。これは自身が回復効果を受けた際の回復量に+1というものです。

直接戦力を上げる訳ではありませんが、地味に有り難い特技ですね。セージやレンジャーにはこういうものが多い。

あと前回特に宣言がなかったのですが、メッシュもスカウト4→5になった際に戦闘特技を自動習得していた筈です。

その名も戦闘特技《トレジャーハント》です。効果は《鋭い目》と同じですね。Bテーブル技能にはこういう特技が多くていいですね。


ちなみに今回ソラが習得した言語はフェイダン地方語の読文。会話も以前覚えたのでこれでフェイダン地方語は完璧に習得。

ソラ「ふふ、これで、お姉ちゃんとはエルフ語で秘密会話。お兄さんとはフェイダン地方語で。
    ムーテス君とはドラゴン語で秘密会話できるの。パーティみんなと、内緒話できるの

ジーク「メッシュとは?」

ソラ「……ひみつだけど汎用蛮族語で」

つまり彼女がセージ技能で習得したのは汎用蛮族語(会話)、ドラゴン語(会話)、ドレイク語(会話)。

そしてフェイダン地方語(会話&読文)と。生まれと技能でエルフ語、交易共通語、魔法文明語の会話と読文も可能。

なんともマルチリンガルな妹ですね。あとお姉ちゃんはコンジャラー技能で魔法文明語を覚えたのでそっちで会話も可能です。


そしてジークはライダー0→1と習得。それに合わせて馬のポピーを購入。以前購入したのは荷馬のルドルフというらしい。

エア「荷馬が捨てないでって寂しそうな目をしてるわよ」

ジーク「毎日その荷馬が大きくなんないかなーと育ててるんだけど、なかなか上手くいかないんだよな」←でしょうね

メッシュ「大司教が、ちゃんと連れてきてくれたんですよね。ルーフェリアから」

ちゃんと両方とも可愛がっているようですね。意外といいところがありますね大司教、同じライダー技能持ちだからか。


ちなみに習得した騎芸は"探索指令"です。これは騎獣の知覚や探索能力を使えるようになる騎芸です。

具体的にはライダー+知力を基準値として《足跡追跡判定》《危険感知判定》《探索判定》を行えます。

あと騎芸ではありませんがライダー+知力で《魔物知識判定》が可能になりましたね。ただし弱点までは抜けません。


あくまでもメッシュの手伝いをするだけです。このレベル帯で戦闘に出したら死んでしまいますからね。

ソラ「動物は生き返らせられないの

GM「自然の流れに逆らおうとするのは、人間の一部だけですからね」

エア「ちなみに、馬と従者、どっちがヒエラルキー高いの?

ジーク「え。(固まった)……えーと、それは……」

ムーテス「迷いだしたっすよ」

メッシュ「やべ。……聞きたくない(真剣)

騎獣のデータは騎手のライダー技能のレベルである程度は向上しますが、馬(ホース)では5レベルまでなんですよね。

ちなみに軍馬(ウォーホース)だと10レベルまで一緒に成長してくれますが、ポピーちゃんは軍馬ではなさそうだし。

騎手が1レベルの時の馬はゴブリンと大差ない能力しかありませんし、ある意味姉妹以上に乱戦エリアに巻き込めない。


アイテムについてもジークはライダー技能関連でいくつか購入しているようです。

1つは<騎獣縮小の札>です。これを貼った騎獣は掌サイズの彫像に24時間変化するというものです。

ただし24時間経っても適正な空間に置かれなければ元に戻らないので、荷物に詰めていればかなりもちます。

種類は<T><U><V>とあり、それぞれ3レベル以下、7レベル以下、13レベル以下の騎獣を対象とします。

ポピーの場合は当然<T>になりますね。これだとお値段100ガメルです。<U>は500、<V>は2000とかします。

もう1つは<上等な手綱>です。これは騎獣行為の判定に+2のボーナスが入るというものです。お値段1000ガメル。


★呑気な日々に取り立て屋

ルーがアイヤール・ルーフェリア神殿の最高司祭になってから一ヶ月、ぞんざいズは平穏な日々を送っていました。

ジーク「嬉しそうに馬を操ってる。ルー、見てみろ可愛いだろー?」

最早眠らなくなったルーは馬と遊んだり、カマウェトと遊んだりと、年頃の女の子らしく楽しく過ごしているようです。

神殿も人員整理が行われ、信者が増え、以前の排他的な雰囲気はなくなって開放的な神殿として運営されているようです。


この街にも冒険者の店があるらしいので、そちらで依頼を受ける事も可能です。

ジーク「まあ、旅の勘が鈍らないように、そっちにも時々顔を出しておくかな」

エア「わたしは、すでに骨を埋める気満々だけど

ジーク「え?あ、新しいプリーストを紹介してくれガアラ」

そんな人材はいません。今この神殿でレベルの高い神官なんてエアとガアラぐらいのものです。

その内本国から派遣されてくるようですが、それはまだ先の話です。だからこそ彼らを雇っているのです。


ジーク「く……ルー、一緒に旅をしよう。冒険者楽しいぞー」

ルー「す、すごーくいきたい、けど……」

ソラ「お姉ちゃんが、鬼瓦みたいな顔をして睨んでるの

この神殿から離れすぎると以前のように眠ってしまう可能性がありますしね。まだ遠出は難しいでしょう。

もっと信者が増えれば何処にいても眠らなくなるんでしょうけどね。携帯電話の電波みたいなもんです。


冒険や神殿の仕事以外にも神殿の日曜学校の先生もしているようですが、あまりに平和すぎて執事は不満そうです。

メッシュ「ジーク様に英雄になってもらうためには、騒ぎの一つも起こさないと……

エア「こらぁ!それは、いくらなんでも英雄の行いじゃないでしょう!」

ソラ「ばれなきゃいいの。あたし、ムーテスくんと組んで、街で賭け腕相撲してる」

ムーテス「結構なしのぎになるっすよ」

懐かしいですね。思い返せば主従と姉妹の出会いの時にも腕相撲とかしてましたっけ。妹の圧勝でしたが。


メッシュ「ここは、英雄としての偉業の第一歩として、私が街で騒ぎを起こして
      ジーク様に収めていただくために暴れてこようかと……」

ムーテス「メッシュさんがマッチで、ジークがポンプと。お小遣いくれるなら、悪役やるっすよ、僕」

メッシュ「ふ、そこは友情割引でお願いしますよ、未来の大商人」

ソラ「でも、二人が街で暴れて、お兄さんがそれを止めても、寸劇にしか見えない気、するの」

ジーク「こら、何をやってるんだ、お前たち(棒)」

あまりのショボさにエアも"フォース"突っ込みを躊躇い、同情の御捻りが飛んでくる始末です。

まぁ付近住民の皆さんの暇潰し程度には役に立っているようだし、騙される人もいないなら放置してもいいかと。


すると御捻りに混ざって投石が行われます。シューター技能6レベル相当の剛速球でした。

メッシュ「ぐはぁあ?それは、命の危険が!くっ、何をする、ジーク組ことぞんざい勇者団と知っての狼藉か!

アイシャ「知っての狼藉に決まってるでしょう、この道化。
      少しは人様のお役に立つことをしているかと思えば……主人の名を貶めることをしているなんて
      従者の程度で主が知れるというものよ、メシュオーン。恥を知りなさい

そこには久しぶりの弟主従ことベルハルト君と秘書のアイシャの姿がありました。


ジーク「そう怒るなよアイシャ、メッシュはメッシュなりに一生懸命なんだ

アイシャ「そうですね。それなりに、ね」←悪意しかない

ジーク「何しにきたんだ。商売か?」

ベル「商売だよ。神殿に届けものをしに来たんだ。別に、兄さんの様子を見に来たわけじゃないんだからね

アイシャのメッシュ弄りは相変わらずですね。そして弟君のツンデレっぷりも相変わらずです。


今回の彼らは神殿が発注したライフォスの神像を届けに来たのです。ひと月前にガアラが速攻で発注したアレですね。

メッシュ「あれですか、やはりライフォスっぽい人をメデューサの前に連れていって、ぴきーんと」

ムーテス「それは、いいっすね。一日で石像のできる石工。有名になるっすよ」

ああ、以前別の世界の変態探偵がそんな事件を解決していましたっけ。あっちは魔法の毒による犯行でしたが。

このラクシアにも石化能力を持つ魔物が複数存在しますので、そういう事をやらかす人もいるかもしれませんね。


ぞんざいズは弟主従を神殿まで案内し、神像の搬入作業を見守りました。

コボルドズ「運ぶよー運ぶよー」「お手伝いするよー」←奴隷市で買われた子?

ところがそこで露になったライフォス神像は出来の酷い手抜き作品でした。福笑のような愉快な造形ですね。


エア「がーん!何これ!折角ハリボテじゃなくなると思ったのに!」

ベル「そう、この石像を作った彫刻家なんだけど、もともとこんな手抜き仕事をする人じゃないらしいんだよね」

その彫刻家の名前はカロンといいます。本来は幻の名工と言われるほど腕のいい彫刻家らしいのですが、今回はこのザマです。

あまりの酷さにアリオス卿も「こんなん受け取れるかボケェ!ちゃんと値段に見合ったもんを作れ!」と激怒したとか。


そしてそのクレームを発注先の彫刻家に届ける仕事をジェロことアルフォンゾに任せました。

ジーク「ジェロ……下っ端だな、あいつ(涙を堪えている)」

ところが今度は彼が行方不明になってしまったのです。仕方ないのでアリオス卿はこの出来損ないを時間稼ぎに送りました。

そしてアリオス卿は行方不明の原因を調べて彫刻家に神像を作らせる依頼をぞんざいズに任せようとしているのです。

ベルは神像と一緒にこの伝言を預かってここまで来たのですね。ちなみに本人は出征準備で忙しくて手が割けないとか。


ここでメッシュと弟主従がセージ技能とスカウト技能で《宝物鑑定判定》をします。

ベル「セージ的に価値はないね」

アイシャ「スカウト的にも価値を認められません」

弟主従「お金払う価値なし

メッシュの見立ても同様です。この出来損ないに神殿は2万ガメル払ってるそうなのでクレームをつけるのも当然です。

余談ですが、名誉アイテムの<個人名声品>等身大の彫像がありますが、これが3000ガメルです。

高さ数mに達する巨大なものでも1万ガメルらしいので、2万ガメル払うならかなりの出来を期待していいでしょう。


エア「むきー!これはわたしたちでもクレームをつけに行くべきです!(机だんだん)」

ソラ「だから、それはジェロさんがつけに行ったんでしょ?」

エア「いや、ぶっちゃけそいつはどうでもいい

神殿関係者として手抜きは許せないので、担当者として正式に抗議するというのがエアの主張です。

当面は布をかけて「設置中」として時間を稼ぎます。間違ってもホーリィやライフォス神官を近づけないように。


これで今回の冒険は決まりましたね、彫刻家カロンに抗議する

ジーク「まあ、じっとしてると身体が鈍るしな、ちょっと行ってくるか」

メッシュ「はい。ポピーを引いてまいりました、ジークさま」

ベル「うん、いってらっしゃい。……ところで兄さん」

ジーク「ぎく。……さり気なく、このまま出ていこうと思ったんだけどな」

ベル「二万ガメル貸してたよね。返して

以前報酬代わりに渡したものですね。ここで蒸し返さなければ本当に報酬にできたんですけどね。

やっぱりPCに負い目を感じさせる形で報酬を渡すと後が面倒になりますね。ヘッポコ時代からの教訓です。


ジーク「とりあえず二万ルーフェリアガメルで払っておくな。変動相場。現在の相場にして二十ガメル

ソラ「安っ!」

エア「ルーフェリア安っ!」

1ガメル=1000ルーフェリアガメルですか。どんだけ信用のない通貨なんだルーフェリアガメル(笑)

アレクラスト大陸にもローカルな通貨というのは存在しましたが、このテラスティア大陸ではどうなんでしょうね。


ジーク「何を言ってるんだ、ベル。お前は商売上手そうじゃないか。二万の損失くらい、すぐに取り戻せるさ!」

ムーテス「損失って言った!だめだよ、ジーク。そういう場合は増やして返すくらいは言わないと!」

ベル「……そ、そりゃそのくらいはすぐに取り戻せるけどね

アイシャ「ベル様は兄上にお甘いんですから」

ジーク「はっはっは、また取り立てに来いよー!」

そして弟をいい子いい子して旅に出る兄でした。これを口実にまた遊びに来いという意味ですかね。


★領主の依頼と、とある「像」

ぞんざいズは《赤砂領》レザナードのアリオス卿の館にやってきました。

ジーク「じつは、俺は何となくジェロ……本名は、アルフォンゾだっけ?
     そいつのことはあんまり心配してない。あいつ、生きてるだろ多分」

メッシュ「そうですね。彼は、生命力だけは豊かそうです。
      あ、この場合の生命力はリアルな数値のことではなく」

エア「生存力とか?」

主従「そうそう、そんな感じ」

確かにどんなに悲惨な事態になっても、彼だけは生き残りそうですね。グラランみたいに(笑)


ジーク「よう兄ちゃん、依頼ちゃんと聞きにきたぞー」←ぞんざい

アリオス「よう、来たか。入れ入れ」←ぞんざい

メッシュ「彫刻家の居場所を教えてください。ちゃんと報酬に見合った仕事をさせてきましょう」

アリオス「おう、話が早くてありがたい。大体の話は、聞いてるか?」

ジーク「あらかた」

アリオス「もともとは、いい仕事をしてるはずの奴なんだが……
      何故か、今回の作品は見てもらえればわかるとおり、クソだった

著名な彫刻家相手にも遠慮なしですね。でもこのぞんざいさのお陰でお互いに話が早くていいですね。


元々その彫刻家はアリオス卿が子供の頃から創作活動をしていたらしく、卿のお父さんはかなり贔屓にしていたとか。

アリオス卿が32歳ですからね。それが子供の頃からだから、軽く20年は現役という事になりますね。

お父さんは《赤砂領》には珍しく芸術に理解のある人だったようですが、アリオス卿は興味がないので詳細は不明です。


ただこの家にもカロンの作品があるらしいので、倉庫を漁って見せてもらいました。

エア「誰の像か分かる?」

アリオス「通りすがりの英雄らしいぞ」

ジーク「通りすがり!」

ソラ「なのに英雄!」

しかしその出来は素晴らしく、《宝物鑑定判定》をしたところ8万ガメルの価値でした。いい仕事してますねー。


GM「でもって、知ってる人に似てる」

ジーク「ん?誰だ?」

GM「メッシュにそっくり

一同「はぁああ!?(驚愕)」

メッシュ「父上!

ジーク「えぇええっ!(さらに驚愕)」

ジェネレーターから生まれるルンフォに人間と同じ意味での父親はいませんが、確かによく似ています。

像を見る限りこの英雄は人間の戦士のように見えますが、ルーンフォークと見分けがつかないだけかもしれない。


メッシュ「いきなり自分が有名人になった気がするので、サングラスでもかけましょう」

ジーク「まあ、つまりはよくある顔ってことだろ?」

アリオス「ああ、そうかもな

メッシュ「ジークさま!!領主までダブルで酷い!

ソラ「一刀両断だったの」

以前も話題になりましたが、ルーンフォークは複数の個体の体の一部(爪や髪等)を培養液に入れて生成されます。

この際機能が正常なら容姿は任意に選べますが、そうでなければ人族と同じように親の特徴がランダムで現れる

そういう意味でのモデルになった親は存在し得るし、そのメカニズム上できやすい容姿というのも存在し得るでしょう。


ジーク「もしかして、メッシュって、型番があって、大量生産されてたりするのか?

魔動機文明時代ならドラ○もんよろしくラインに乗って生産されていても不思議ではないかもしれませんね。

彼の場合起動したのが7年前というだけで、製造されたのはもっと昔のことかもしれませんしね。

ジークの父親からのプレゼントだったようですが、その出所についてはジークは聞かされていないようだし。


ムーテス「本来二万ガメル払ったら、八万ガメルになるならいい商売だよ、石像ファンドだね」

ソラ「あ、ほんとだ。いい商売になるかも」

ムーテス「でも、今の僕は全力を出しても一万九千ガメルまでなんだ!

エア「何の全力!」

ソラ「ムーテスくん、たしかその現金、預かり金だったと思うの」

メッシュ「自分の力ではありませんな」

ムーテス「くう……みんな、僕(オラ)にもっと力を分けてくれ!

ジーク「現金玉が作れそうだな」

本来それだけの実力がある彫刻家だというのは確かのようだし、それだけにクレームをつけたい気分も尚更強い。

本当に手抜き仕事をしたとか、未熟な弟子に代替わりしたとか、殺されて別人と入れ替わってるとか、色々考えられますが。


あとジェロだけでなくローランドにも様子を見に行かせたそうですが、彼まで行方不明になっているらしい。

アリオス「元近衛の連中軒並み使えねーぞ

エア「ミイラ取りがどんどん増えてってるじゃないの!」

メッシュ「いや、平和的なほうに考えましょう。
      もしかしたらあの二人が、手に手をとって駆け落ちしているのかもしれませんし!」

アリオス「ああ、もしそうだったら殺していい

一同「新しい依頼になったー!」

ジーク「ざっくばらんにも程があるぞ、兄ちゃん」

いくら役立たずでも預かった側としては無事でいてくれないと心が痛むのでしょう。まぁローランドも生存力高そうだし。


カロンの居場所ですが、「偉大なる住処」という遺跡群の一つだそうです。そこにアトリエを構えているとか。

そこは限りなく国境に近い場所であり、蛮族が出ても不思議ではないので彼が本当に人族なのかも怪しいところです。

ただし本人は人前に姿を現さず、身の回りの世話をする使用人の人族が取り次ぎをしてくれるそうです。


報酬は1万ガメルで、行方不明者二名を見つければ1人につき300ガメルの追加があるとか。

ジーク「相変わらず渋い領主だな」

アリオス「まともに産業のない領地が、使いっ走りで小銭を得ようとしてるんだ。ケチにもなるぞ」

今回の件についても仲介料よりこの報酬が多いようなら赤字ですしね。前線なんだから中央から補助金とか出ないものか。


「偉大なる住処」まではおよそ一日半ほどです。割と近所にあるんですね。

ムーテス「あ。予備の保存食を買っておくの忘れたなあ」

ソラ「ムーテスくん、あたし保存食、かなり持ち歩いてるよ。売ろうか?」

ムーテス「じゃあ、ソラさん保存食売ってください」

ソラ「いいよ。じゃ、一日分十五ガメルね」

<保存食>は一日分で10ガメル以上です。つまりより高価な<保存食>も存在するという事ですが。

今回の件については10ガメルのものを15ガメルで売りつけようとしているようですね。


それなら適当な店で買った方がいいのですが、ムーテスは一応食い下がってみます。

ムーテス「一日分十ガメルでいいっすか?」

ソラ「十五」

ムーテス「十ガメルで売ってくださいよ!何で仲間内で商売してるんっすか

ソラ「十五。ムーテスくんから、やり方教わったの」

ムーテス「くっ、教える人間間違えた」

ムーテス曰く、このやり方は一期一会の相手に限り、関係を続けたい場合はむしろサービスするべきだそうです。


ソラ「そうなんだ……ムーテスくん、今までありがとうね?

ムーテス「一期一会認定された!

ジーク「いいよ、ムーテス。俺の食えよ。えーと確か……
     (メッシュのシートをチェック)うん、十食あるから、二食分くらい融通してやるよ

メッシュ「……ジーク様の、そのナチュラルなジャイアニズム、素晴らしいと思います(シートから保存食を減らしてる)」

エア「まさしく執事のものは俺のもの」

メッシュ「でも、もともとはジーク様から預かったお金で買ったものですから」

ただ取るだけでなくちゃんと与える所が凄いですよね。ジャイアニズムは奪うだけで与えたりしないし。

もっとも最近は新解釈として「他人のものも自分のものと同じように真剣になる」という綺麗なジャイアニズムもありますが。


★超うさんくさい使用人

アリオス卿の依頼を受けたぞんざいズは借りた馬車で移動し、幾つもの洞窟がある岩山に辿り着きます。

ここが彫刻家カロンが住むという「偉大なる住処」ですね。トルコのカッパドキアのような印象のようです。

洞窟は天然のものではなく人工的に掘削したものであり、その出入り口は綺麗なアーチを描いています。


その洞窟群の手前に二階建ての一軒家が建っていました。ここがカロンの使用人が住む家のようです。

ソラ「こんにちはー(コンコン)」

使用人「はーい。どちらさまでございましょうかー?」

メッシュ「えー、アリオス卿からの依頼を受けましてー……」

ソラ「石像のデキに文句言いにきました

エア「クーリング・オフお願いします

メッシュ「この姉妹は……取り繕ってください、ちょっとは!」

すると二階のベランダから樽のような体形の男性が現れます。種族はルーンフォークのようでした。

SW2.0の発売前の情報にルーンフォークの男性はメッシュのような長身の姿が多いというのがありました。

ところが現在では個体によってタイプは千差万別という事になっており、中にはこういうタイプもいるのでしょう。


使用人「すいません」

エア「謝らなくていいから、作り直してください」

使用人「わたしの非ではありませんが、確かに主の非です」

メッシュ「……うさんくせー……」

使用人「何を胡散臭いと仰るのですが、同胞」

確かにヒ○男爵みたいな風貌の彼は胡散臭さが溢れて垂れ流さんばかりでした。

彼はぞんざいズを見比べて何やら頷いた仕草を見せて家の中に消え、中から彼らを家の中に招き入れました。


ジーク「お前本当にルーンフォークなのか?
     ルーンフォークってのは、主人の不手際でも自分の失敗と思い込むような種族だぞ」

姉妹「それはちがう!

ムーテス「多分、それ、ルーンフォークという種族じゃなくて、メッシュさんのメンタリティなんで」

使用人「主の悪いところは、悪いところです。認めます。しかし、私には関係ありません

公私の区別がちゃんとついているようですね。ある意味メッシュよりもしっかりしているのかもしれません。


ちなみにカロンは秘密のアトリエに篭りっきりでここにはいません。同居している訳でもないようです。

必要な伝言がある時には岩山にあるポストに手紙を入れて済ませていて、彼自身滅多に近づかないようです。

石像の発注書もその妖怪ポストに投函しているらしく、その結果できたのが例の出来損ないのライフォス像だったとか。


ジーク「そうだ、最近若い騎士っぽいのが二人、訪ねてこなかったか?」

使用人「ええ、訪ねてこられましたよ。時間差で二人」←隠さない

ただし彼らは行ったきりで戻ってはきていないとか。仕事が終わるまで待っているのか、寄らずに帰還したのか、それとも……。

メッシュが室内を《探索判定》するとジェロの矢羽の一部が落ちていたのでここに来た事は確かなようですが、どうなったやら。


続いてメッシュが"マナサーチ"すると二階に魔法の反応がありました。何らかのマジックアイテムが置かれているのかもしれない。

"マナサーチ"は1レベルの魔動機術で魔法の反応を<マギスフィア>に視覚的に表示してくれます。"センス・マジック"とは少し違いますね。

その効果範囲は<マギスフィア>のサイズで異なり、(小)で半径10m、(中)で半径30m、(大)で半径50mとなります。


ムーテス「ああそうだ。君、今の主人に仕えてどのくらい?
      もしかして、このメッシュさんに似た人に会ったことはないかい?」

使用人「そうですね、かれこれ二十年ほどになるでしょうか。この御同輩に……ですか」

彼はメッシュの顔をマジマジと観察し、首をぷるぷるさせて答えました。

使用人「いえ、会ったことなんて、ないですじょ?

一同「うそくさ!」

使用人「本当です、本当です。会ったことなんてありませんじょ?

はい、絶対嘘ですね。以前主人のモデルになったのを見た事があるのでしょう。

メッシュの三倍ぐらい長く使用人やってますし、丁度アリオス卿が子供の頃からですもんね。


ジーク「お前、どのくらい主人に直接会ってないんだ?」

使用人「そうですね、かれこれ……一ヶ月ほどでしょうか

ジーク「お前ちょっとは心配しろ!メッシュなんか、一日顔を合わさないだけで、すごく心配するぞ!

エア「若干、嬉しいのか鬱陶しいのかわからないレベルよね、それ」

ギリで鬱陶しいレベルですね、子供じゃないんだし。色々煽っているように見えて実は過保護な執事です。


使用人「いえ、うちのご主人様は頼りになる方ですので

ジーク「お前には、愛がないな

メッシュ「……ふ。貴様、今、さり気なくジーク様を侮辱したな?」

ジーク「いや、メッシュ、今のは相当ストレートだと思うぞ」

使用人「何ですって!それに気付くとは、貴方自分の主人に対しての侮辱ではないのですか!」

メッシュ「黙れ、デブ」←それ以上にストレート

使用人「羨ましいですか。このたっぷりボリューム感が羨ましいですか」

世の中にはそういう嗜好の人もいるのでしょうけど。やっぱりこの体形って変わらないんですかね。

ルーンフォークは生まれてから死ぬまでずっと同じ姿を保ち続けるそうだし、ダイエットとかも無駄なのかな。


そう余裕たっぷりに言い放った彼は突然ぞんざいズにこの家での逗留を勧めてきます。一体何が目的で?

使用人「そうそう皆さん。折角ですし、この家を少し見て回ったりされませんか?

メッシュ「いきなり何を言ってるんですか、このもっちりルーンフォークは?」

使用人「あちこちに、主の残した装飾や細工がありますので、皆さん喜んでくださるんですよ。
     あ、もう夕方ですし、どうぞ泊まっていってください

一同「胡散臭すぎる!」

使用人「えっ。こんなにさり気なくお誘いしましたのに!

ジェロとローランドもここに泊まったようですし、この状態で泊まるのはないですよね。


そこでソラは魔法の反応があった二階にフェイを飛ばしてみます。客室も二階らしいのでとっても怪しい。

客間には大きめのベッドと姿見があり、宿泊客のコメントが記されたノートが置いてありました。

「ああ、いとしの姫。ここで手柄をたてて、いつかは助けに」
「こんなトコに書くなよ」←前の書き込みの固有名詞を消している

最新のコメントがこんな感じです。誰が書いたのかは言う必要もありませんね(笑)


もうこんな胡散臭いルンフォの相手は御免なので、ぞんざいズは洞窟の方に向かう事にしました。

使用人「はぁ……そうですか。でも、その前に二階に上がってみませんか?

ジーク「だから何でだ!」

何故そこまで頑なに二階に上げようとするかというと、客間の姿見に秘密があります。

実はこの姿見こそがマジックアイテムです。対になっていまして、片割れがカロンのアトリエにあります。

その鏡面には片割れの鏡面に写った風景を映し出す魔力があり、カロンはこっそり客の品定めをしています。

お眼鏡にかなった人にはカロンがモデルになってくれるように依頼するので、使用人はその機会を増やそうとしているのです。


盗撮ですが、それだけなら大した悪事ではありません。しかしこの使用人を見るとどうも不安が過ぎりますね。

ムーテス「ねえ、君のご主人、人間?」

使用人「考えたこともありませんねえ。ご主人様はご主人様ですので」

一同「考えろよ!」

カロンは二足歩行の男性で、常に顔にベールをかけているそうです。非常に怪しい人ですね。

彼は自分の事を深く詮索しない使用人を重宝しているらしく、使用人の方でもそうあろうとしているらしい。

一時はしっかりしてるかと思いきや、こいつはとんだ食わせ者です。ぞんざいズはフェイを監視に残してお暇しました。


★アトリエにお邪魔

例のポストはすぐに見つかりました。そこには完成した像を置いているであろう小さな庇もあります。

そこを《足跡追跡判定》すると一軒家から延びる馬車の轍の跡と、洞窟に延びる複数の足跡を発見します。

馬車については作品を載せるのに使っているのでしょう。それそのものは不審ではありませんね。

問題は足跡の方です。より多く残っている足跡は近くの洞窟に繋がり、より少ない方はより遠くの洞窟に繋がる。


ぞんざいズはまず近い方の洞窟に突入します。

ジーク「カロンさーん!ご在宅かー!クレームつけにきたぞー!」

GM「返事はないです」

ジーク「よし潜入」

洞窟に入るとすぐに高さ20m程の巨大な部屋に入ります。入ってすぐ分かりますが、ここは巨人の家だったようです。

天井から垂れ下がった沢山の縄は縄のれん。もこもことした起毛素材の床は絨毯。四本の巨大な柱を結ぶ板はテーブルです。

この世界にも巨人が存在しているのでそういった種族が以前住んでいたのでしょうが、幸いにも現在は使われていないようです。

カロンは空き家となっていたこの巨人の家をアトリエ代わりに使っているらしく、通常の人間サイズの生活感はあります。


まずぞんざいズは人間サイズより少し大きめの扉を調べます。巨人からしたら猫扉みたいな感じですかね。

中に入るとそこには無数の人形が収納されていました。石像ではなく、柔らかいような硬いような樹脂のような素材です。

メッシュやソラが鑑定したところ、これらは魔動機文明時代の大量生産品的人形と判明します。フィギュアですね。

それぞれ体形がデフォルメされていたり、無駄に躍動感があったり、やたらセクシーだったりマッチョだったりします。


本来もっと小さなサイズで好事家、といいますか当時のオタクな人達に収集されていたようですが。

ジーク「ここに住んでるような大きな人にとっての、ミニチュアサイズというわけだ」

ソラ「海○堂さんちだったのね」

メッシュ「ジーク様の好きそうな像を確保しておきましょう」

ジーク「俺、こんなの趣味じゃねーよ、とか言いながら、にやにやしてる」

これが本当の大きなお友達ですね。つまりここはコレクションをしまう戸棚だったと。


次にムーテスが〔風の翼〕でテーブルに上がってみます。高さは5m程度なので往復できる程度の距離です。

そこには巨大な座布団のようなものがあり、ローランドにそっくりの掘りかけの像と、石化したローランドがいました。

一同「ホ、ホントに石になってたー!」

ムーテスが調べると普通ならノミが届かない口の中まで精巧です。これで本人が石化したと推測できるわけですね。

驚いたぞんざいズは全員でテーブルに上がって彼を囲み、「あきゃー」という表情で石化したローランドの姿に慄然。


ここでぞんざいズは彼を治して事情を聞きだそうとします。

メッシュ「……ちょっと、お高いですが……<キュアストーン・ポーション>を使ってみますか

ジーク「このままにしておくのも忍びないし、話も聞きたい。使ってやろう。
     必要経費として、あとで領主のにーちゃんに請求しような」

随分前に購入してそれっきりだったやつですね。これなら達成値15までの石化を解除できます。

ところがこの薬でも彼は元に戻りません。そこでぞんざいズは《魔物知識判定》を行い、バジリスクの仕業と推測します。


バジリスクもまた蛮族のリーダー的種族であり、8レベルの人間形態と9レベルの魔物形態という二つの姿を持ちます。


ドレイクとはライバル関係にあり、いずれの形態でも《石化の視線》《毒の血液》という能力を持ちます。

前者は相手を睨むことで石化させる能力であり、SWの頃と違ってある程度段階を踏んで石化していきます。

バジリスクの場合は抵抗に失敗する毎に器用度か敏捷度を−6していき、いずれかの能力値が0になると完全に石化します。

後者はバジリスクの存在する乱戦エリア内でダメージを与えた者は2D点の毒属性の魔法ダメージを受けるというもの。

加えて真語魔法7レベルの能力も使用できます。「バルバロステイルズ」では魔物形態に神聖魔法とありますが誤記です。


人間形態のバジリスクは人間と見分けはつきませんが、石化の能力を制御できないので目隠しをしている事が多い。

《魔物化》によって魔物形態に変身した際はドレイクと同様にHPとMPは全回復しますが1時間は戻れなくなります。

魔物形態になると邪眼、頭部(コア)、胴体の三部位になり、八本足で体長5mの巨大なトカゲとなります。

こうなれば戦闘能力は向上しますが知能と判断力は下がり、その醜い姿を嫌って魔物形態になるのを敬遠する者も多いそうです。

またこの形態だと《石化の視線》は邪眼に、真語魔法は頭部に、《毒の血液》は全身にと、能力が分散して備わります。

胴体のHPを0にすると《棒立ち》となって頭部の回避力が下がり、ドレイク同様に《人間化》しても回復はしません。


余談ですが、バジリスクにもまた上位種が複数確認されています。

バジリスクは成長すると共に石化の邪眼宝石の邪眼となり、石ではなく様々な宝石に変える能力となります。

現在は翡翠の邪眼を持つ14/15レベルのジェイドバジリスクが確認されています。「ミストキャッスル」の大ボスですね。

また蒼玉の邪眼を持つ18/19レベルのサファイアバジリスクも確認されています。ドレイクカウントより高レベルです。


更に宝石の邪眼を持つに至ったバジリスクは追加の邪眼を獲得し、様々な特殊能力が備わります。

ジェイドバジリスクは"リザレクション"と同等の効果を持つ蘇生の邪眼を持つことで知られています。

サファイアバジリスクは対象を氷付けにする蒼冷の邪眼と、対象を若返らせる新生の邪眼の2つを持ちます。

宝石の邪眼も加えれば最大3つの邪眼を持つわけですが、4つ以上の邪眼を持つ例は確認されていないそうです。

バジリスクもまた謎の多い蛮族であり、宝石の邪眼にも追加の邪眼にも様々な種類があると推測されます。


さて、バジリスクの仕業と推測したところでエアは"リムーブ・カース"を試してみました。

石化は呪い属性なので石化が進行中ならこの魔法で解除できますが、完全に石化すると"キュア・ストーン"等が必要です。

しかし今回はそこまでルールが整備されていなかったのか達成値17を叩き出しあっさりと解除します。

ちなみに人間形態の《石化の視線》の抵抗は9(16)なので結構厳しかった。戦闘中に抵抗し続けるのはかなりキツイ。


エア「やったー!妹が調べ、わたしが解呪する。何て素敵なコンビネーション!」

ローランド「は!ここは……君たちは!」

ジーク「お前んとこの領主に頼まれて助けにきたんだよ。何があったんだよ」

ローランド「じ、じつは自分はここに、アルフォンゾを迎えに来て……」

彼はカロンのお眼鏡にかないモデルになるよう頼まれ、それを引き受けることで新しい像を作ってもらう約束をしたのです。

ちなみに手抜きの像を作った理由を尋ねると「だって、ライフォス嫌いだから気が乗らなくてねえ」と答えたとか。

そうしてモデルをしていると不意にカロンのベールがずれ、その瞬間にぴきぴきっと石化してしまったようです。


エア「……って、それって彫刻家自身がバジリスク!?

ソラ「でも、前に見た像は、ちゃんと手作りだったの」

ローランド「そういえば、石になる直前に……
       『持って生まれた特殊能力などで、生き物を固化しての像など邪道!
       私は、私の技術をもって、美を作る!』とか叫んでいたような」

ソラ「……変な趣味に目覚めた?」

石化の能力を持ちながら自らの技術で石像を作ろうとする変わったバジリスクというのがカロンの正体なのでしょう。

普通なら部下を大勢率いていてもおかしくない種類の蛮族なのですが、中にはこういう変わり者がいてもいいでしょう。


★水槽の準パラダイス

ローランドを救出したぞんざいズは次に段差1mの階段を上り、巨大な水槽のある部屋を訪れます。

先行して偵察に向かったメッシュは水槽の中に何かがいるのを発見し、《魔物知識判定》で女性のマーマンと判明。


マーマンは5レベルの蛮族です。下半身が魚になった人間、すなわち人魚の姿をしています。

通常海に住んでいるため他の人族や蛮族との接点は少なく、蛮族の中では珍しく中立的な立場を保ちます。

性格は温厚で思慮深く争いを好まない。外敵に対してエルフと同盟を組んで戦う事すらあるのでエルフ語が堪能。

特殊能力として《かばう》を持ち、〔優しき水〕のように水中での行動と発声を可能とする《水中特化》を持つ。

ただし水中に特化しているため地上での全ての行動に−2の修正が入るという弱点も持っています。


この場にいたのはマーメイドのお嬢さんが2名です。その傍らには彫りかけのマーメイド像もあります。

水槽の中には陸地っぽいところも作られており、水族館のペンギンよろしく擬似水辺環境を与えられている様子。

メッシュ「こんばんわ、お嬢様方。と交易共通語で話しかけてます」

ところが彼女達には言葉が通用しない。マーマンの種族語はマーマン語ですからね。あとエルフ語もできましたね。


メッシュ「……すごすごと、エルフ姉妹を呼びに戻ります。あとはよろしく」

ソラ「あたし、水に近寄りたくないの」

エア「はいはい、行ってきます。……って、一人で行かせないで、襲われたらどうするの」

メッシュ「え?それはお気の毒ですと……

エア「だーもう、これだから情緒のわからないポンコツは!」

でも大丈夫、彼女達には敵意はない。それどころかエアとも友好的に接してくれました。


エア「あなたたちこんなところで何してるの?」

マーメイドA「モデルしてるの。わたしたちの、泳ぐときの躍動感が素敵って言われて」

マーメイドB「それにこの近場って水が少ないし。水は確保してくれるって条件で、ここにきたの」

マーメイドA「でも、狭いからそろそろ飽きてきたー」

他人と会話するのは久しぶりなので我先にと喋ってくれます。カロンの事もペラペラ喋ってくれるので好都合ですね。


彼女達はカロンは芸術家として活動する変わり者のバジリスクだと証言します。

マーメイドA「聞いてる聞いてる、変なヤツなの」

マーメイドB「『このような、持って生まれた特殊能力などで作れてしまう石の姿など、美しくもなんともない!
        一彫り一彫り、心を込めて、最も美しい瞬間を留めることこそ、真実の美だ!
        とか、吼えながら石彫ってる」

エア「……えーと」

ムーテス「ある意味、天晴れな理念と言える」

ちなみに例のフィギュアはカロンの美的感覚に相反するものらしく、不自然なデフォルメが気に入らないそうです。

もっと在りのままの姿を留めるべきだという反抗的インスピレーションを得てリアルな作風になったんだとか。

そのくせ気まぐれな性格だから題材やモデルによって出来不出来の差が著しいんですけどね、ライフォスとか。


ここまで聞いてぞんざいズはふと悩みました。

ムーテス「……うーん。バジリスクのカロンがやってるっていうのは、推定、
      今のところ人間を攫って石にして、モデルをさせてるらしいってことだよね」

エア「うん」

ムーテス「倒そうというモチベーションまでは、行かないんだよね、実は」

エア「でも、人死には皆無じゃないと思う、こんな状況だと。
    それを放っておくというのは、正直わたしの選択肢にはない」

今まで得た情報では彼は長い間芸術家として人族社会に馴染んでいて、それなりの評価も受けています。

石化したのも事故のようなものだとすると、エルヴィーンのように倒そうという所まではいかないかも。

所謂「善良なゴブリン問題」というやつですね。"スチャカラ冒険隊"のデルヴァの森を思い出しますね。

蛮族が人族の敵だという認識を改める必要はないと思いますが、もしかしたらカロンは例外かもしれないし。


そこで気になるのは使用人のルンフォです。彼は何処まで真実を知っているのか。

メッシュ「彼は最初の主人をインプリンティングされたようなものなのではないですかね。
      ルーンフォークにも若干、蛮族に仕えるものがいると言いますし。
      「じつは俺バジリスクだったんだー」と言われても……」

使用人(エア)「ええ!そうだったんですか!……それはそうと、ご飯食べます?
         あ。もしかして今までのご飯、お口に合いませんでしたか?」

ソラ「ありそうなの」

一度仕える相手を決めたらそうそう変わるものではないだろうし、よっぽどの事がない限り現状維持ですかね。


ここでぞんざいズが取る方法は色々ありますね。

一つは蛮族退治は依頼ではないので見逃す。この時アリオス卿に報告だけはするというオプションがあります。

一つは後顧の憂いを無くすべく戦いを挑む。領内の蛮族を退治したとあれば報奨金だって出るでしょうね。

真実を知る者が全員口をつぐめば、「カロンはバジリスクに殺されていたので仇を取った」と公表しても疑われないかも。


ジーク「いや、しかし、そういう捏造の道には走りたくない
     それにだ、俺はルーフェリア信者のエルヴィーンを倒したのは、
     あいつを野放しにしてると、色んな被害が出ると思ったからなんだよな」

蛮族だから戦うのではなく、戦うべき相手だから戦う。なかなかしっかりした考えだと思いますよ。

"不幸(公)王"よろしく、敵対種族であってもそれを受け入れる事で物事が解決するなら一考の価値があるかと。


なかなか答えが出ないぞんざいズはジェロの探索を続行しようとします。

ジーク「それでうっかりとカロンと行き当たり
     「ククク、貴様ら何をしている。俺様の秘密を知ったからには、生かしてはおけんわ!」
     と、襲い掛かってこられれば、正当防衛で戦える

エア「相手に、戦意がなかった場合は?」

ジーク「それが厄介なんだよなあ、正直」

メッシュ「ふはは、それは我々が楽勝ということではないですか!

ソラ「それは、どっちが蛮族かわからないの」

ただしジェロも石化して運び出されていったそうです。その際カロンは「あ、ごめーん」と謝っていたとか。

本当に事故で石化しているだけだとすると、ますます戦い難い相手ですね。これは戦闘なしでミッション完了か?


こうなればもう一度あの使用人を問い詰めるのも手ですが、その前にカロンの姿を見ておくことにします。

自分達は階段の影に隠れ、マーメイド達に「おなかすいたー」と騒いでもらって姿だけ確認します。

すると狙い通りにカロンが姿を現します。あり合せの毛布を被ったてるてる坊主のような姿のようです。


カロン「ああ、すまない。そろそろ食事の時間だったか」

ムーテス「ちょっと困ったよ。めっちゃ気さくじゃないっすか」

問題はバジリスクもマーマン語やエルフ語は喋れないってことですかね。

7レベルの真語魔法に未知の言語を喋れるようになる"タング"があるけど使っている様子はないし。

あるいはどちらかが相手に合わせて何かの言語を習得しているのかな。マーメイドも汎用蛮族語ぐらい覚えてそうだし。


カロンは"ウォール・ウォーキング"を使って水槽を上り、保存食を投げ入れます。

カロン「すまないなあ。ちょっと食事のグレードが落ちて」

メッシュ「カリカリじゃなくて、たまにはレトルトを食べさせてやりたいんだが」

GM「キャットフードじゃないんですから

この荒野のど真ん中だと普通の保存食だって手に入れるのは大変でしょうね。水は井戸でもあるんだろうか。


ここでカロンは更に気になることを口にしていました。

カロン「また、一人うっかり石化させちゃったから、それを解いてもらうのに、金が必要なんだよ
     しかも、二人もだよ……これは集中して作品を作らないと」

メッシュ「もしかして、石化させたことに罪悪感はある……?」

ちゃんとお金を出して治療しているとしたら実害は殆どない。ますますやり難い相手です。

何より罪悪感があるというのが非常に大きいです。反省している上に弁償もしてるならそれ以上咎めるのはちょっと。

"キュア・ストーン"は7レベルの神聖魔法ですからね。バジリスク本人には使えないし、それなりの神殿に依頼している筈。


★たぷたぷを問いつめろ!

カロンの真相を知ったぞんざいズは続けて例の使用人を問い詰める事にします。

使用人「おかえりなさいませー」

ジーク「ずかずかずかずか。おい髭男爵!

使用人「何を仰います。わたしは髭男爵ではありませんよー(乾杯)」

ジーク「お前の名前を知らないからだ」

使用人「おお。奇遇ですね、私も皆さんの名前は知りません」

すると彼はアンデルスと名乗ります。また無駄に貴族っぽい名前ですね。


ここでぞんざいズはアンデルスに尋ねました。ジェロを何処の神殿に連れて行ったのか、と。

アンデルス「……さあ(てへ)」

メッシュ「どういうことですか。ぶっちゃけネタは上がってるのです」

ムーテス「キリキリ、吐いたほうがいいよ」

アンデルス「本当にわからないんですよ。お金と一緒に、預けてしまうので

彼は石化した客をお金と「"キュア・ストーン"をお願いします」という手紙と共に各地の神殿に託すようです。

足がつかないように通りかかった隊商などに託す場合もあり、ジェロが何処の神殿に運ばれたかは分かりません。

そのやり方だとお金だけ奪って放置される恐れがありますが、その辺は人族の良心に任せているとのことです。


ちなみにジェロはカロンがベールを外しているところにアポなしで突入して石化したとか。

ソラ「……ジェロ、ばか」

そしてローランドも創作でエキサイトしている時にうっかりベールが外れて石化したという推理通りです。

そうして石化した人は可能な限り治そうとしていますが、復讐に戻ってくる人もいるかもしれませんが。


アンデルス「まあ、基本的にご主人様は温厚な方ですが。その兄上も、温厚な方とは、限りませんので

ソラ「……あに」

ジーク「……兄、とな」

メッシュ「ふ、二人いたー!」

エア「無理、一匹ならともかく、二匹は無理」

カロンの兄はシグルドといい、よりバジリスクらしい性格をしたバジリスクです。人族との戦い上等です。

現在兄弟は「偉大なる住処」で別居しており、足跡の少ない洞窟の方に住んでいると思われます。

シグルドはカロンが芸術に傾倒している理由が理解できず、石像なら目を光らせれば簡単にできると考えています。


カロンの正体を知って討伐に来た冒険者を返り討ちにしている疑いもあります。

また暴れるのが大好きなので温厚な弟にイラつきながらも説得し、早く蛮族側の領地に帰ろうとしています。

人族が大挙して討伐に来るのを警戒して大人しくしていますが、故郷に帰る時は手土産に村を幾つか滅ぼすつもりです。


ジーク「ものすごい歪んだバランスの許に成り立ってる平和ってことか?」

カロンは彫刻家として評価を受けてはいますが、石化の能力と兄の存在がある限りいつかは破綻するでしょう。

それにここは遺跡群、潜りにきた冒険者と遭遇したらどうするのかと尋ねると、アンデルスは口をつぐみました。

確かにカロンは人族と共存してきた蛮族だけど、それは今まで偶然上手くいっていただけなのかもしれない。


メッシュ「例えばですね。蛮族側の勢力が、バジリスク兄弟に
      「やあやあ、君たちの芸術はいくらでも評価するから、ちょっと近辺で暴れといてくんない?
      と唆す。そうすると、この領は内側から崩されるわけです」

ムーテス「カロンさんが有名な彫刻家であることを利用して、有力者の像を彫るために、
      モデルにお招きする。お呼ばれする。で、石にされる

アンデルスの弁護によれば石化は稀な事故であり、多くの場合は謝礼を渡してお終いらしいのですが。

今後そのような取り返しのつかない事件に発展する可能性は否定できない。バジリスクとはそれだけ強力な蛮族です。


ちなみに現在進行中の作品はライフォス神像です。何度もクレームがつくのは鬱陶しいので真面目に作るとか。

マーメイドの像とかローランドの像とかが作りかけでしたが、その辺は後回しにしているのかもしれませんね。

エア「仕事はしてるのね。……でも、実はちょっと微妙」

ジーク「蛮族の作った像を飾るのは嫌か?」

エア「そういう気持ちが全くないと言えば嘘になるけど、でも、
    それ以上にライフォスに対して畏敬の念を持たずに形だけ準えた神像を飾るのが、いやなの
    義務で作られても、ありがたくも何ともない」

しかし今回の彼らの仕事はその神像を作らせることと、行方不明者2名の救出でした。

後者はまぁいいとして、前者についてはどうしてもカロンに作らせるのが嫌なら別の人を探さないといけない。


そして依頼とは別の問題がバジリスク兄弟が人族の領内にいるという事実です。弟の方が非常に戦い難い。

ムーテス「けど、完全放置はできる?」

ジーク「無理。蛮族と人族は結べないと、思う

エア「言い切ったわね、ジーク」

ジーク「うん。蛮族という種と人族とが手を取り合うってことは、俺は多分無理だと思う」

メッシュ「歴史的にも、かなり無理がありますな」

ジーク「でも、個人的に友好関係を結べるヤツは、いると思うんだ」

この辺はエルヴィーンの時にも考えましたね。種族単位では無理だけど、個人的には可能だと。

カロンとアンデルスの主従関係がその好例だし、ぞんざいズがカロンと戦う事に感じる躊躇いもその証拠です。


そこでぞんざいズはまず話し合いをする事にします。カロンにこの土地からの退去を勧告するのです。

ジーク「そうすれば、少なくとも人族としての責任は果たせる……気がするんだ」

メッシュ「ジーク様、それは説得という形ではなく、カロンに交渉を持ちかけるということでしょうか」

もし交渉が決裂したらその時は正々堂々戦う、騙まし討ちはなし。それが彼らがカロンに示せる誠意です。


ムーテス「アンデルスくん、平和的な話をしてくるから、念のため君を縛ってもいいかい?

メッシュ「お前は何を言ってるんだ!それは平和的でも何でもないだろ!」

ジーク「素になるほど怒るなよメッシュ」

メッシュ「自分の従者を縛って連れていかれたら、それは交渉じゃなくて、単なる脅迫ですよ

ジーク「……(首を傾げる)」

メッシュ「そうだと言ってくださいジーク様!」

GM「別に縛ってもいいですけど、アンデルスさんに冒険者技能はないですよ。愛玩用なんで」←なん……だと

一同「えぇえええっ!(驚愕)」

多分一般技能のハウスキーパー(家政夫)技能とかバトラー(執事)技能が高い人なんでしょう。

カロンの方はスカルプター(彫刻家)技能を身につけたバジリスクって感じですかね。


★彫刻家の向かう先

ぞんざいズはカロンに立ち退きを要請するべく、アンデルスを伴って再び「偉大なる住処」を訪れました。

アンデルス「ご主人様ーご主人様ーアンデルスでございますー」

カロン「おお、何の用だアンデルス。ちょっと待ってくれ、今ベールをつけるから」

そうして出てきたカロンをぞんざいズは理をもって説得します。この時の彼の困った雰囲気がとても印象的でした。

蛮族といえば人族の敵で戦うことが当たり前の間柄なのに、その違いを忘れるほど誠実そうな交渉でしたね。


ソラ「カロンさんが、必ずしも邪悪じゃないってわかってるけど、でもお互いのためには、離れて暮らしたほうがいいと思う」

エア「出来たら、自分の里に帰って欲しい。そうすれば、追いかけてまで脅されることもないだろうし」

カロン「そっかぁ……そうなんだ(溜息)。うん、まあ里に帰るのは構わないよ、近いし。
     でももうちょっと、色んな人間見たかったなあ。まだ作品を作り足りないんだ」

こうして彼は自分を問答無用で倒そうとせずに交渉に来てくれた事に感謝し、立ち退きに応じたのです。

ひと波乱あるかと思いきや拍子抜けするほどに簡単に説得できましたね。戦わずに解決するのがベストですよ。


今後はレッサーオーガに人族に変身してもらってモデル代わりとするそうです。そこそこ偉い立場だから問題ないでしょう。

ただ蛮族達に彼の芸術が受け入れられるかというと難しいでしょうね。彼の兄の反応の方が一般的な蛮族の反応に近い筈だし。


カロン「向こうで、綺麗なお姫様捕まえたって話をきいたことあるし、彫らせてもらおう。
     あ、そうするとなんとなく、前向きな気分になってきたかもしれない」

例のライティア姫ですか。でも今のぞんざいズにはどうする事もできない。ジェロがいなくて良かったですね。

それからぞんざいズはカロンとアンデルスの引っ越し作業を手伝いました。アンデルスもマーメイドも連れて行くそうです。

マーメイドはともかくアンデルスは少し心配ですが、向こうでも人族が暮らしていない事はないので大丈夫でしょう。

もっともその多くは奴隷や家畜としてなので、よい主人を持てたアンデルスはかなり幸せ者の人族に見えるでしょうね。


エア「ねえ、お兄さんは?」

カロン「シグルドですか?あれは気まぐれですから……
     でも、もともと故郷に帰ろうとは再三言ってたから、
     置手紙をすれば、そのうち追い付いてくるんじゃないかなあ」

エア「兄弟仲良くしなさいよ!」

ソラ「気持ちはわかるけど、兄弟仲良く襲い掛かられても困るし。そこはスルーしよ、お姉ちゃん」

蛮族は個人主義の者が多いそうですから、例え肉親であろうとも人族ほど親密に振舞わなくても仕方ないのかもしれない。


それを感じさせたのがシグルドと戦って倒してしまった場合を想定しての彼のセリフです。

カロン「可哀想だけど、負けたらしょうがないんじゃない?
     いや、もしかしたら君たちのほうが可哀想なことになるのかもしれないけど」

ソラ「さすがは個人主義」

ジーク「いや、いっそ気分がいい。憂いも晴れるし」

ただしシグルドに加勢を頼まれた場合はそちらにつくそうです。それは兄の身を案じてではなく、兄弟で石化合戦になったら嫌だから。

何しろバジリスク自身には石化の耐性がありません。お約束通りに相手に鏡を使われると自分が石化してしまう可能性もあるんですよ。

具体的には鏡を持つ者の精神抵抗の達成値が石化の達成値より4以上高いと視線が反射します。この時バジリスクは抵抗できません。

鏡を使わなくても人間形態のバジリスクの精神抵抗は石化と同じ9(16)なので、受動側有利とはいえ怖いですしね。


ライフォス神像については諦めて別の彫刻家を探す事になりそうです。

カロン「時間を下されば、今作りかけているのを彫ってしまいますが?」

ジーク「芸術家が妥協すんな!

カロン「がーん!」

あとメッシュ似の英雄像ですが、確かに昔そういう人をモデルにして彫った事があるそうです。とても強い人物だったそうです。

ただ何十年も前の事なので詳しい事は思い出せず、ぞんざいズも深くは追求しなかったのでその正体は不明のままとなりました。


こうして彫刻家カロンは従者のアンデルスと共に"紫闇の国"ディルフラムへと帰っていきました。

「フェイダン博物誌」に彼のその後が少しだけ載っていますが、向こうでも芸術を解する人族には好意的に振舞っているとのこと。


★我侭なお兄ちゃん

ぞんざいズがカロンを見送っていると背後からベールをつけた長身の男性が現れます。

シグルド「人族ごときの言葉に踊らされよって。バルバロスの風上にも置けんわ」

ムーテス「やあ、お兄さん」

エア「貴方も、弟さんを追いかけてさっさと帰郷しない?そうすればこっちも追いかけないんだけど」

メッシュ「もちろん、帰り道で人族に被害は出さないのが前提ですが」

シグルド「はっきり言えば、故郷に帰るのは全くやぶさかでもないが、
      人族に言われてそのとおりにするのは、プライドが許さん

清々しいほどに蛮族らしい人ですね。しかしこういうタイプなら何の躊躇もなく戦えます。

折角初の非戦闘エンドかと思いきやそう上手くはいきません。元々この人の好戦的性格も問題の一つだったし。


メッシュ「やってしまいましょう。では先制はとったということで」

GM「まて。話は早いですが、判定してください」

メッシュ「ちっ(ころころ)……ぱりーん。先攻とりましたよ、ジーク様」

ジーク「毎回壊すな、メッシュ!

メッシュ「だって、丁度2足りなかったのですよ!先攻一回千ガメルなら安いものではありませんか」

ブーストしたいだけなら腕輪(1000ガメル)じゃなくて指輪(500ガメル)で十分ですけどね(笑)


1ラウンド目

まずエアは《石化の視線》対策に全員にカンタマです。コンジャラー技能万歳ですね。

エア「精神抵抗苦手な人ー」

メッシュ&ムーテス「はいはーい!」←精神抵抗7と8の人

エア「じゃあ、とりあえず、全員に"カンタマ"」

ムーテス「聞いた意味は!」

メッシュ「恥をかかせただけですか!

これでぞんざいズの精神抵抗は9〜12になりました。基準値からして互角以上なのでかなり防げる筈です。

そしてソラは《毒の血液》対策に前衛3人に"バイタリティ"です。前衛の役割上血を浴びるのは避けられませんから。


メッシュはシグルドを《投げ攻撃》で投げる事に成功しますが、追撃の《踏みつけ》は回避されました。

ジークは普通に攻撃して当てますが、変身後を見越して〔風の翼〕を温存したムーテスは回避されます。

人間形態のバジリスクの素のHPは49点で防護点は9点。主従の攻撃だけで12点ほど削りました。

今回はドレイクの時と同様に変身するかどうか微妙な状態に追い込み、そのまま一気に倒してしまうのが狙いです。


シグルドは《石化の視線》をメッシュに飛ばすも抵抗されます。一番抵抗力が低い相手だったんですけどね。

そして理性的な判断ができる今の内にと、《マルチアクション》で"ブラスト"&攻撃をムーテスにお見舞いします。

ムーテス「よし、抵抗もしたし避けもしたー!(万歳)」

そしてラウンドの終わりに主従に《毒の血液》が入り、GMの出目が11で抵抗の目標値20という鬼畜っぷりを発揮。


2ラウンド目

エアは前衛に"セイクリッド・ウェポン"。ソラは抵抗上等でエネボルを撃ち、メッシュはまたも《投げ攻撃》です。

そしてクリティカルの《踏みつけ》とジークの攻撃という主従コンボによって一気に42点ものHPを削りました。

既に<剣のかけら>の修正分に突入して一気に倒せるかと思いきや、ムーテスの一撃が回避されてしまいます。


ムーテス「ごめん!僕だけ一回も血を浴びなくてごめん」

メッシュ「もしかして、毒の血に防護点が効かないと思って、無意識に手加減をしてるのでは」

ムーテス「さっき僕、19の渾身の力で殴ったっすよ!」←出目9出したなら頑張った

このラウンドにシグルドは《魔物化》し、体長5mの大トカゲの姿になりました。

主動作は費やしてしまったものの、補助動作でできる《石化の視線》をメッシュに飛ばして抵抗されます。


3ラウンド目

このラウンドからぞんざいズは攻撃をコア部位である頭部に集中させます。実は胴体に《攻撃障害》がないので。

四つんばいになっている都合上、頭は地面の高さにあるためキプロクスのように胴体が障害にならないわけですね。

バジリスク共通の弱点ということになりますが、世界のどこかには後ろ足で立ち上がる個体がいてもいいかもしれない。


ソラはエネボルがクリティカルしてドーピング分のHPを剥ぎます(均等に割り振れば推定3個で15点)。

毒を浴びるのが怖いジークは"カオスショット"を使うも1ゾロ。メッシュは三部位の相手を投げられないので普通に殴る。

ムーテスはまたもはずしました。3ラウンド連続で外し、返り血すら浴びずに無傷。そろそろのの字を書いてもいい頃です。


シグルドは《マルチアクション》で一番痛い攻撃をしたメッシュに"ブラスト"&攻撃ですが、通常攻撃はムーテスが《かばう》

魔物形態の胴体のダメージは2D+10点なので、素の防護点が12点あるムーテス相手にも少し通りますかね。

ところが"ブラスト"の方がよりにもよってクリティカルし、27点の適用ダメージでHPが9点にまで減ってしまいます。


メッシュ「うがが。久しぶりに彼岸を見ましたよ。大丈夫、まだ立ってます。次に回復がくれば……」

GM「でも、メッシュはさっき攻撃当ててましたよね?

メッシュ「は!毒の血!……終わった(がくり)」

2D点ですから出目9以上でHPが0点以下になって《生死判定》ですね。そしてその通りに《生死判定》をしました。


メッシュ「ムーテス、のの字を書く権利はいただきましたよ」

ムーテス「わかった。君の分まで戦おう

ここでエアは即"アウェイクン"するのは自重しました。HP1点で復帰されてもトドメを刺されるだけなので。

この場合はまず回復させてHPを安全圏まで持っていき、そこから"アウェイクン"で起こした方がいいですね。

ちなみに気絶すると自動的に「乱戦エリアに存在するが乱戦エリアに参加していない」状態となります。

トドメを刺す動作は3ラウンドその動作に専念する必要があるため、メッシュが即殺されたりはしないわけです。


ソラ「あとちょっとで一年分の記憶が消えるなら、それはそれで、楽しいかも」

メッシュ「やめてください。変な記憶植えつけられる。やめてー!!

それからはムーテスの攻撃も当たりだし、ジークの魔法も通りだしたりと、愛され執事っぷりを披露します。

《石化の視線》はカンタマ効果で耐え続け、通常攻撃はムーテスがカットするので致命傷にはなり難い。

あとは魔法や《毒の血液》といった魔法ダメージが怖いものの、その勢いは回復手段を持たないシグルドを圧倒します。


?ラウンド目

ソラ「ううー……もう"エネボル"飽きたぁ!」

エア「何言ってるのソラ、そんなこと言うと次はわたしが"キュア"飽きたって言うわよ!」

メッシュ&ムーテス「すいません!言わないで!」

ソラ「ごめんなさい、お姉ちゃん」

そして次に放ったエネボルが見事にクリティカルし、シグルドは倒れたのでした。


ジーク「メッシュー!生きてるかメッシュ、死ぬな、死ぬんじゃない(びしばしびしばし)」

メッシュ「お約束ですが……その拳で死にそうですジーク様

気絶していたメッシュも無事に目を覚まし、ぞんざいズはシグルドの首を持ってアリオス卿の屋敷に帰りました。


★後始末と、新しい名物……?

アリオス卿にはカロンの正体は伏せ、「バジリスクがアトリエを占拠していた」とだけ報告しました。

新しい彫刻家の手配に頭を悩ませるアリオス卿でしたが、バジリスク討伐の報奨金は払ってくれました。いい人や。


「偉大なる住処」についてはまだまだ未探索の場所がありそうですが、今回はパスです。

ジーク「また、有給もらって潜りにこような」

メッシュ「神殿付き冒険者って、有給あるんでしょうか?」

エア「無給かつ無期限休暇ならあるかもね」

ムーテス「それ、単なるクビじゃないっすか」

生活費がかからないだけ好待遇だと思いますけどね。実質正規雇用じゃないですか。


あとはジェロの行方ですが、神殿に帰ってきたぞんざいズは見覚えのある石像を前にしたルーに迎えられます。

ルー「おかえりなさいー」

ソラ「……石像?」

ムーテス「もしかして?」

ルー「"キュア・ストーン"を唱えてくださいって、お金と一緒に託されたんですって」

ジーク「ここにあったー!」

これでジェロも救出されました。ていうかルーちゃんいつの間にか結構レベルが高くなってますね。

今ジェロの石像の前で魔法を使う準備をしてましたし、やはり女神の欠片というだけの事はありますね。


それからしばらくしてアリオス卿からの手紙つきの荷物が届きました。

「バジリスクの巣を念のため探ったら、変なもん出てきた。一応神像もあったようだから。
 ちょっと趣は異なるが、しばらく代理でこっち、置いといたらどうだ?」

正式な神像を彫る彫刻家は現在手配中ということで、カロンのアトリエにあった例のフィギュアを送ってきました。

それは微妙にデフォルメされたライフォス像です。肉々しく着色された躍動感たっぷりの素敵なおじさまの像です(笑)


エア「やめてー!こんなんが地元のライフォス神殿の人たちに見つかったら侮辱罪を適用されるー!」

追伸「一通り有名な古代神と大神はコンプリートされてたようだが、
    何か他に欲しいのあるか?月神なんか結構色っぽいぞ」

エア「黙れ!」

ソラ「えーでも、名物になりそう」

ところが「こういう解釈もあるのか」と割と世間の評判は良かったとか。芸術って難しいですね。


第十二話 ライバル勝負に勝つ方法

★スーパー飛躍な?成長申告

今回のキャラクターシート


今回の能力値の成長は以下の通り。

ジーク:筋力17→18

ソラ:筋力22→23

エア:精神力26→27

メッシュ:器用度20→21

ムーテス:敏捷度12→13

ジークの素の筋力が18になったのでもう指輪は必要ありませんね。代わりに割るようで<巧みの指輪>を装備。

あとソラの筋力が腕輪込みで25となりました。これでフェンサー技能でも必要筋力13までの装備が使えます。

在りし日の"至高神の猛女"を思い出しますね。これにより彼女は装備を一新、<魔法のロングソード>を買いました。

更には<ハードレザー>と<カイトシールド>まで購入して〔異貌〕前提で真語魔法を使うスタイルになりました。


ついでにフェンサー2→3と成長。一端の魔法戦士になりつつあります。

ジーク「エア、いいのか?妹のああいう成長具合は」

エア「うん、もう痛い目にあって学習させるしかないと思ったので、放置」

そしてエアはまたも精神力が伸びたと。妹の影響かどんどん我慢強くなっています(笑)

それに比べると一応魔術師である妹は一度も精神力が伸びてないんですよね。元々お気楽な性格だからか。


他の技能の成長ではジークがファイター6→7とし、念願の《マルチアクション》《タフネス》を習得!

メッシュ「素晴らしい!皆のもの、ジーク様を称えるのです!」

一同「おめでとー(拍手)」

これで"カオスショット"の固定砲台役も卒業です。魔法を使いながら殴れる立派な魔法戦士ですね。

あと《タフネス》の効果もあってHPが69にまで伸びました。最早下手な蛮族よりもよっぽど頑丈です。


エアはプリースト6→7に成長し、戦闘特技《魔法拡大/確実化》を覚えて回復の安全度を増しました。

これは余分にMPを消費することで複数回《行使判定》ができる特技であり、回復魔法1ゾロの事故対策にもなる。

SWには達成値を上げる意味での拡大がありましたが、それと違ってあくまでも複数回振るというものです。

どちらかというとダメージの確実化の処理に似ていますが、ダメージの算出は《行使判定》に含まれません。


★教育係のちょっとした愚痴

前回の事件からひと息ついたぞんざいズは相変わらず呑気な日々を送っていました。

ソラ「《赤砂領》から届いた着色済みハイグレード・ライフォスと、
    ハイグレード・ザイアに変なポーズとらせて遊んでるの」

ムーテス「ザイアいいっすよね、なんか変なパーツ多そうで」

メッシュ「デッサン人形は必ず変なポーズで放置されるの鉄則」

エア「やめてー!礼拝に来た人の目に触れたらどうするの、やめてー!」

そんな呑気な?日々を送るぞんざいズの所に、以前エルヴィーンの件で世話になったライフォス神官が尋ねてきます。


ジーク「まさか、この神殿のライフォス像に正式にクレームをつけに……」

エア「ほんまにすいませぇええん!(土下座)

そういう訳ではなく、今回は神殿からの仕事の依頼に来たようです。顔見知りだから使者に選ばれたのでしょう。

ハイグレード・ライフォスについては一応の市民権を得ているようですが、その内本当にクレームが来るかもしれない。


そこでぞんざいズは彼とお洒落なカフェに訪れて密談です。もちろん金魚鉢パフェとか奢らせますよ。

エア「一人で一個抱え込んでます」

ジーク「……エアの身体のどこに、あの体積が消えていくのか、本気で不思議だ」

メッシュ「ジーク様、お忘れですか、彼女の生命力を

ジーク「え、俺、ストレスかと思ってた

エア「わかってるなら行動を自重しなさーい!(じたばた)」

てっきりむちむちスタイルに全部還元しているのかと思いました。


ちなみに彼の名前はクレインさんです。彼はおもむろにホーリィの名を出してきます。

クレイン「皆様、たしかホーリエル様と仲がよろしかったですよね?」

メッシュ「マブですがなにか?(きっぱり)」

ジーク「何だ?羨ましいか?(にやにや)」

クレイン「ぶっちゃけ羨ましいです

ムーテス「どうしてもって言うなら、サインもらってきてあげてもいいよ」

ソラ「ムーテスくん、ものすごい上から目線なの」

神官なのに自分の野心に正直な人のようですね。皇女様候補とマブなんていいコネですもんね。

今回彼が持ってきた依頼もそのホーリィ関連です。コネは新たなコネを呼ぶ、"バブリーズ"状態の入り口です。


そのホーリィなのですが、最近反抗期なのか「いやじゃ、いやじゃ」とごねるようになっているようです。

以前のお祭りで「優等生なだけじゃ駄目だぞ」的なことを言いましたからね。その影響でしょうかね。

ムーテス「いやいや、子供なら誰でも一度は通る道でしょう」

エア「そうそう、子供とか妹なんて、思うとおりには育たないものですとも。
    ええ、散々心配させて、手を焼かせて、説得を繰り返しても、
    気が付いたら冒険者なんかになってたり……(さめざめ)」

ソラ「お姉ちゃん、何でそんなに思いっきり実感ここめてるのかな」←実感してるからです

それで以前ぞんざいズと遊んだ経験が忘れられず、彼らを御指名で遊び相手になって欲しいと我侭を言っているのです。

まぁ多少の我侭や反抗は子供の特権です。皇女様候補とはいえそういう事があっても不思議ではありません、むしろ微笑ましい。


ソラ「じゃあ、また新しいプロレス技を考えていかないと、ムーテスくん、何かいい技ある?」

ムーテス「じゃあ、僕がソラさんの足を持って回すんで、ソラさんは彼女を持って……」

ソラ「おお。ダブルジャイアントスイング

メッシュ「首がもげそうなほど、遠心力がかかりそうですな」

プロレスはプロレスでも超人レスリングの域に達していますね。それも悪魔超人寄りの(笑)


そこでライフォス神殿はぞんざいズに子守の依頼をする事にしたのです。報酬はちゃんと出ますよ。

あとクレインはホーリィのサイン入りの封書を渡してきます。彼女が唯一の神殿外の友人宛に書いた手紙です。

「メシュオーン、ソーラリィム、そしてムーテス、元気であろうか」

ジークとエアの名前がないのはこの2人はまだ彼女の前で名乗っていないからです。

一度目はニアミスしてて、二度目は自己紹介せずに膝を折ってお願いするだけでしたから。お祭りにも一緒に行った筈ですが。


ソラのいったとおり、勉強の合間に悪さの一つもしなければ、息が詰まる、とのこと。早速実践してみた

ソラ「その、あたしが言ったとおり……っていう部分は、ぴゃーってインクで消すの」

エア「大丈夫、私信だから。私文書だから」

どうやら彼女は周りの大人達が自分に姉達への競争心を煽ろうとしている事に気付いているようです。

幼く見えても自分の立場を弁えているわけですね。賢い子ですが、何だか不憫ですね。同じ年頃の友達もいなさそうだし。


そこで彼女は唯一気の許せるぞんざいズに手紙を送ってきたと。いじらしいです。

また、我と遊んでくれると、嬉しい。あと、面白いものを見つけたので、同封してみる」

途中までちょっといい話でしたが、この彼女が見つけたという「面白いもの」が本当に面白いものでした。

それは何かの書物から破り取られた一頁なのですが、そこに描かれている挿絵がメッシュそっくりなのです。


「姉上からいただいた本の挿絵の一つなのだが、誰かに似ておらぬか?面白かったので、送ってみた

ジーク「面白かったからか」

ソラ「でも、面白かったの。うけた」

みんなで笑ってくれれば、嬉しく思う。では」

メッシュ「笑うこと前提ですか!」

他一同「わはははははは(爆笑)」

ソラ「こんなの、このパーティに放り込んだら、そりゃ大爆笑なの。ホーリィちゃんよくわかってる」

それは気取った感じの戦士の挿絵であり、お洒落に鎧を着込んでいます。例の英雄像のモデルと同一人物に見える。

本が作られたのも20〜30年前のようですし、アリオス卿やカロンの証言とも年代が一致しています。

カロンが像のモデルにし、本にも残っている英雄。無関係の情報ソースがこうも揃うと興味も湧いてきますね。


その正体を確かめるためにも、寂しい思いをしている友人を励ますためにも、ぞんざいズはこの依頼を受けました。

ジーク「ルーしばらく留守にするから弁当くれー。土産に持っていったほうがいい菓子とかあるか」←亭主気取り

ルー「じゃあ、これ……持っていって?」

それは手作りのミニライフォス像水羊羹などのお菓子詰め合わせでした。


メッシュ「ルーフェリアの超高圧水流で削りだしたのですね、素晴らしい技術です」

エア「こらぁ!ルー様を小間使いするんじゃありませんー!」

メッシュ「違います、あれは嫁使いしているのです!そして、今度は若い愛人候補のところに……と、ふふ」

ソラ「メッシュさん、ものすごいどす黒いオーラが湧き出してるの」




こうして子守の依頼を受けた一行は再度《石街領》アイールのライフォス神殿を訪れました。

ジーク「……ルーが作ってくれた弁当……刺身弁当っていうのは、エアの差し金か?」

エア「ほほほ。ルーフェリア名物、程よく糸を引いていてよ

ジーク「せめて寿司にしてくれ!腹を壊すだろうが!」

エア「ちなみに、わたしとソラのは、ちゃんとリクエストして焼き魚弁当だから」

水饅頭だの水羊羹だの刺身弁当だのと、この分だと水餃子とかもルーフェリア料理っぽいですね。


ライフォス神殿を訪れたぞんざいズは以前のあばれはっちゃくっぷりを覚えている門番さんに微妙な顔をされます。

ジーク「む。ジークがきたと伝えてくれ、門番(偉そう)」

メッシュ「あ!お待ちください。メシュオーンの主人である、ジーク様がいらしたとお伝えください!」

すると門番さんは奥に走ってしばらくすると戻ってきます。

門番「『ジークが誰だかは知らんが、メシュオーンならば知ってる』とのことですので、どうぞお通りください」

ジーク「……(のの字を書いている)」

メッシュ「し、しまった。二重三重に失礼なことをしでかした気がする」

言わなきゃ言わないで門前払いを食らいかねなかったので仕方ないとはいえ、相変わらず要領の悪い執事です。


中に入れてもらったぞんざいズはまずホーリィの教育係であるプルチーノという女性に会わされました。

いかにも教育係といった感じのモノクルをかけた堅そうな中年女性ですね。ソラが苦手なタイプです。

挿絵はありませんが、なんとなくハイジのロッテンマイヤー先生みたいなイメージがあります(笑)

ちなみにホーリィの一般教養や礼儀作法などはこの人の担当ですが、神学等の専門分野には専門の教師がいるとか。


彼女はモノクルを指で上げつつぞんざいズをじろじろ見ながら挨拶します。

プルチーノ「教育係も兼ねております、プルチーノと申します。
       ホーリエル様の我侭にお付き合いいただけるとのこと、感謝いたします」

彼女の話によると、どうやらライフォス神殿はそろそろホーリィに"皇族還り"の試練を受けさせるつもりのようです。

セラフィナ女帝は12歳で試練をパスした記録を持つので、11歳のホーリィに記録の更新を期待しているわけです。


そんな大人のドス黒い野望が見え隠れする話をオーバーアクション気味に語るプルチーノ女史でした。

ジーク「……ああー……何が何でも早くしたいんだな(悟った)」

メッシュ「つまり、新記録を狙っておられると

プルチーノ「そのとおりです」

ソラ「ぶっちゃけた」

プルチーノ「いえいえ、いえいえ、そんな。しかし、それくらいの実力があると、
       周囲に知らしめたいだけなのでございます。ほほほ」

今更取り繕っても遅いですよ。まぁそうして鳴り物入りで城に戻れればいいパフォーマンスにはなりますね。

それにしてもこうも名誉欲があることを明示されると依頼を受けるのも躊躇われますね。片棒を担がされる感じがして。


そして彼女は熱弁します。自分の生徒がこの世代の新記録を狙えるほどに優秀なのだと。

メッシュ「その稀有な才能を、日々たゆまぬ努力で磨き上げてきたのが、貴方であると」←煽るな

プルチーノ「そのとおりです!

以下30分ほど自慢話が続きましたが、ソラはとっくに室外に避難していました。流石は説教慣れしていますね(笑)


そして彼女はそんなホーリィが最近勉強にも身が入っていないと嘆きます。ええ、ここ最近ね。

メッシュ「それって……ルーフェリア神殿の近くに行ってからじゃ……

エア「それを口にしたら、とんでもない宗教間亀裂が入りそうなので黙ってて」

プルチーノ「……まあ、どのような人間から、どのような影響を受けたのかは存じませんが。
       ホーリエル様に再びやる気を出すようにと、皆様に導いていただきたいのです」

彼女も大人なのでハッキリとは言わないものの、暗に責任を取れと言っているようなものです。


現在の皇族は全員女子であり、例え年齢が下でも認められた順番に皇位継承権が与えられるので焦る気持ちはわかる。

有力な男子は潰しあっているとはいえ、まだどこかにいたとして試練をパスしたらホーリィよりも上にきますし。

女帝に子供ができたらまた変わってきそうですしね。まぁ女性なので男性の場合と違って大勢子供は作れないでしょうが。

それならできる限り上位の継承権に押し込んでおきたいというライフォス神殿側の本音も分からない事はありませんけど。


問題はホーリィ自身の気持ちです。最年少で皇族になるということは、無邪気な子供時代が一番短くなるということ。

公人ともなればプライベートなど保てず、いつも政治的な問題に板ばさみになる不自由な生活を強いられるでしょう。

生まれた時点で背負わなければならない事もあるとはいえ、もう少し猶予をあげてもいいんじゃないかとも思いますが。


ソラ「何かねえ、何か……ホーリィちゃん可哀想になってきちゃったの、あたしだけ?
    と、首を傾げながら、廊下を歩く日曜学校の子供たちに、ジャイアントスイング教えているソラであった」

友人としてはやっぱりそう考えますよね。しかもプルチーノさんは報酬として3万ガメルを提示してきます。

その金を貰うと友達ではなくなってしまいそうな気にもなりますね。簡単そうに見えてちょっと厳しい依頼かもしれません。


ジーク「今は、そういう金の話はしたくなし。寂しがってる友人の顔を見に来ただけだ

メッシュ「……名前も覚えられていない友人ですけれどね」

ジーク「…………(のの字を書いている)」

だからいくら事実でもそういう事は指摘するなと(笑)


★プチ反抗期のお姫様

プルチーノさんとの話を終えたぞんざいズはホーリィの私室に案内されました。私的な面会という形式です。

ソラ「ホーリィちゃーん、きたのー」

ホ−リィ「おお、ソラか!メッシュにムーテスも」

メッシュ「はい、参りました。そして、こちらがジーク様です!
      私の主であるジィイイーークハルト・デーニッツ様でございます!

部屋で本を読んでいたホーリィが嬉しそうに顔を上げる様子が可愛いですね。

そして先程の失敗を取り戻そうとやたら主をプッシュする執事でした。この機に覚えさせる気ですね。


ホーリィはプルチーノさんにはお茶を出すよう所望して追い出し、ジークの名前を聞いて不思議そうな表情を浮かべます。

ホーリィ「……どこかで、聞いたことがあるような気がする」

ジーク「へ?弟が商売にきたりしたか?」

ホーリィ「弟は知らぬが……どこかで、ずっと昔に聞いたことがある気がするのだ

ずっと昔といっても所詮は11歳児、そう昔のことではないでしょう。冒険者だったお父さんの影響か?

もっともこの伏線が明らかになるのは随分先の事になるので、今はそれほど気にしなくても大丈夫でしょう。


メッシュ「ところで。試練を受けるのを渋ったり、反抗期したりしているそうですが?」

ホーリィ「うむ。姉上がたを、越えよう越えようと、反目するのは、どうかと思うのだ。
      我は、姉上たちの手伝いはしたいが、それ以上に仲良くしたいのだ
      ライフォス様も、皆で仲良しにするのがいいと仰ってるのに」

エア「うーん、全くその通り。姉妹仲はよくないと」

周りの大人達だってライフォス信者でしょうに、その教えに忠実なのは子供の方とは皮肉な話です。

皇族になれば幼い彼女にも公務が課せられ、お姉さん達の負担を減らす事はできるでしょうからね。

もっとも本人も自分が子供に過ぎないと自覚しており、戦士団の先頭に立ってもお飾りにしかならないと拗ねてますが。


ホーリィ「それに、もう少し神殿以外の生活を……外を見てみたいと思ったのだ
      そなたたたちを見ていて、そう思った」

ジーク「うん、そうだな。……俺たち教育に悪いな

ソラ「まさに「やっちまったな」な気分」

ルーちゃんと一緒にお祭りに連れ出して、色々吹き込んだのがこんな形で影響するとは思いもしなかったでしょうに。

悪気はなかったし、いつかは迎えていた反抗期だったかもしれないけど、プルチーノさんの気持ちも分からなくもない(笑)


ところがここでムーテスは「自分達も自由ではない」と彼女を諭そうとします。

ムーテス「ちょっとたとえ話をするけど……ここに一万ガメルあるんだよね」

ホーリィ「う、うむ(正座)」

ムーテス「一万ガメルあれば、色んなものが買えるだろうって思えるよね?
      でも、<ミスリルプレート>は二万三千ガメルなんだ

女性陣「わけわからん」

<ミスリルプレート>とはカテゴリ<金属鎧>のSランク装備、防護点11という高性能の鎧です。

現在の鎧である<ブリガンディ>ですら防護点7ですから、いかに高性能かお分かり頂けるかと思います。

必要筋力24ですが今のムーテスなら条件を満たしています。あとは戦闘特技《防具習熟U/金属鎧》とお金です。

"鉄の王"も同名の鎧を装備していましたね。「アルケミスト・ワークス」収録の鎧では第二位の防護点です。


ムーテス「いや、僕が言いたいのは、本当に欲しいもの……
      それを考えた時に、ここで五ガメルでも無駄にしていいのかということなんだよ」

つまり大きな目標がある場合、ほんの僅かでも時間やガメルを無駄遣いするのはどうかと思うと言いたいわけですね。

この場合ホーリィには立派な目標があるのだから、それに邁進するべきなのではないかと。一理ありますけどね。


ホーリィ「し、しかし、五ガメルくらい仕方ないではないか」

ムーテス「くらい?いや、ここははっきりさせておこうじゃないか。……お前、五ガメルを舐めるなよ!(激マジ)」

一同(大爆笑)

ムーテス「たしかに!僕も飛行船を持っていたときには、そう思っていた!五ガメルごときと!
      しかし……しかし、今となってはその五ガメルは、本当に神々しいものなんだ!

ソラ「まずいまずい。ムーテスくん、泣きそう

ホーリィ「う、うむ。すまぬ」

実感をこめまくって号泣するムーテスの勢いに押されてしまったホーリィでした。

そんなムーテスを主従は部屋の片隅に連れて行って、肩を抱いて慰めてあげたりします。

今までつらかったんでしょうね。それがホーリィのお嬢な発言で一気に噴出したと、なんだこのロールプレイは(笑)


まぁそれはいいとして、例の挿絵が描かれていた本の話題に移ります。

それは子供向けの装丁の本で、タイトルに『よくわかるパジャリガー様の本』とあります。

一同「パジャリガー!!(笑)」

ムーテス「パジャマ着て変身する感じの、正義の味方チックな名前っすよね」

パジャリガーとはライフォスの神官戦士であり、アイヤールのライフォス信者の間では著名な英雄らしいです。


ホーリィ「何を笑うのだー!おかげでアイヤールのライフォス信者には、パジャリガーという名前の者は時々いるぞ」

メッシュ「いや、素晴らしいご当地ヒーローです!」

ソラ「ローカルヒーローなのね」

日本における一部の戦国武将のような存在のようですね。ご当地では有名だけど、興味のない人や外国人はよく知らない。

織田や徳川のような超メジャーではなく、島津や毛利みたいな感じですかね。私自身詳しくないので上手く例えられませんが。


本を読んでみると色々な冒険譚が載っていますが、一つとても気になる記述がありました。

雪の深い蛮族の領地だった山に仲間と共に乗り込んだパジャリガーは、
 名も知れぬ小神と戦い、神々しい剣にてそれを打ち倒し、その一帯に平和を取り戻した」

どうやらエルヴィーンや小神アーメスと戦い《白峰領》を平定したライフォスの神官戦士こそがパジャリガーのようですね。

小神と戦えるほどの英雄なんてそうそういないし、ライフォスの神官戦士というキーワードから連想してもいいですね。

実際後にパジャリガーはファイター15/プリースト14はある実力者と判明します。大司教級の英雄じゃないですか。

それだけ強いと名誉点も相当なものになりそうだし、アイヤールだけのローカルヒーローなのが不思議なぐらいですよ。


そうなると気になるのはアーメスを倒したという剣です。リアが気にしていた<小神殺しの剣>ですね。

ジーク「やっぱり<パジャリガー・ソード>とか呼ばれてるのか?」

GM「残念。<パジャリガー・スラッシュ>と呼ばれているようです」

エア「パジャリガーのほうが死んでるじゃない、それ!」

間違って自分の指を切って死にかけたという逸話もあるとか。英雄のくせにとんだドジっ子ですね。

その<パジャリガー・スラッシュ>は現在どこかに安置され、本人は何処かに消えてしまったそうです。


こんな面白英雄がメッシュと瓜二つとくれば、当然イジられるわけです。

ムーテス「君は今日からパジャリガーだ(肩ポン)」

メッシュ「やべ。急にパジャリガー・ショーとか企画立てたくなってきました」

ジーク「すげえな、メッシュ。有名人だ」

ただし全ての本の絵姿がメッシュのそれに統一されているとは限らないようです。

カロンがモデルにしている以上、メッシュに似ている方が本人に近そうですけどね。


その本の最後にはホーリィのお姉さんのサインとメッセージが入っていました。

「親愛なる妹、ホーリィへ。貴方が、とても気に入っていた英雄の本です。
 この挿絵が、一番似ているといわれていますよ。いつか内緒で青嵐領へと遊びにいらっしゃい。
 ここには、パジャリガーの生誕の地であり終焉の地といわれる村があります ミスティ」

まず《青嵐領》デラルザについては《見識判定》でソラが知っていました。

年輪のかなり内側に位置する風光明媚な領です。貴族の別荘が点在し、果樹園や果実酒の醸造が主な産業。

住人も自然に囲まれた穏やかな生活を好む者が多く、ルーンフォークが多いことでも有名な土地です。


そしてミスティとは姉妹の次女、皇位継承権第一位にあたる"夢見の予知姫"ミスティン・デラルザ・アイヤールです。

生まれつき身体の弱い儚げな美人であり、空気のいい《青嵐領》で養生していることの多い姫です。

何故身体の弱い彼女が"皇族還り"を果たしているかというと、彼女には特殊な能力があってそれが高い評価を受けたからです。

その能力とは予知夢です。地震や冷害といった自然災害や蛮族の襲撃を予知することで事前に対策が取れるわけですね。


為政者にとってはかなり便利な能力といえます。

メッシュ「確かに!サ○プライムには手を出すなとか」←この本は2009年初頭に出版しています

ソラ「ユー○預金は年が明けてからとか」

ムーテス「お姉さんに紹介状お願いします(真剣)」

的中率はかなり高いようです。「現時点で最も起きる確率の高い未来」を見るようですね。

もちろん努力によってそれが回避されることもあります。あくまでも確率の問題なので絶対ではありません。


実は先代の皇帝が戦死する前にも夢を見て、泣いて父を止めたけど助からなかったという逸話もあります。

GM「お陰で陰口の一つとして「皇女が夢を見たら碌なことがない」とも言われているようで」

エア「カサンドラな姫様ね」

メッシュ「実は黒幕説を唱えてみたいですが……ホーリィがそれでぴぎゃーと泣いても可哀想なので、黙っておきます」

とはいっても幸福な未来を予知されてもあまり役に立ちませんけどね。不幸な未来だからそれを覆す価値がある。

不幸な未来を言い当てられて平静でいられる人間は珍しいからそう思うのは分かるけど、口に出しちゃ駄目ですね。


ここまで話してホーリィはお姉さんもパジャリガーも誇らしそうでした。いずれも彼女の尊敬する人物なのでしょう。

ホーリィ「格好よかろう、パジャリガー!」

ジーク「……それは、メッシュが格好いいって言われてるみたいで、微妙

ホーリィ「そ、そんな……(ぽろぽろ)」←泣いた

メッシュ「そこまでショックですか!」

実はプルチーノさんに頼んで《青嵐領》を訪れ、パジャリガーの史跡巡りを計画していたので夢を壊された気分らしい。

それを聞いたぞんざいズは彼女の気分転換も兼ねてこの旅行を実行するようプルチーノさんに進言する事にします。

なんだかんだでパジャリガーにもミスティン姫にも興味が出てきたし、<パジャリガー・スラッシュ>も気になりますから。


ソラ「決まり、決まり。あのおばさんを説得しにいくの」

ホーリィ「行く!行きたい!共を申し付ける!

この時のホーリィは歳相応の子供らしさを見せてくれました。なかなか可愛らしいところもありますね。

友人との旅行、大好きなお姉さんとの再会、尊敬する英雄の史跡巡り。これだけ揃えばテンションMAXでしょうね。


★姫候補と旅をする

プルチーノさんの許可を得たぞんざいズはホーリィと一緒に《青嵐領》へ旅行に出かけます。

ただしお目付け役としてプルチーノさんも一緒ですが、むしろ彼女1人だけの同行なら信頼されている方でしょう。


ジーク「しかし、何でメッシュ拾っちゃったんだろうなあ……」

メッシュ「ジークさま!(大ショック)」

ジーク「あ、そうじゃなくて。親父からの誕生日プレゼントにもらったけど、
     それをどこで拾ったのか、全く聞かなかったんだよね俺」

メッシュだけではなくアイシャの出自も不明です。プレゼントにルンフォという無茶な設定がここに来て意味を成してきました。

もしメッシュがパジャリガーにあやかって作られたルンフォだとするなら、アイシャはその伴侶である可能性もありますしね。


ムーテス「パジャリガーに恋人がいて、でも結ばれなかったからその姿に似せて
      ルーンフォークを作って結ばれさせようとしたとかだったら、浪漫だよね」

メッシュ「……」

ソラ「メッシュさん、すごい微妙な顔になってるの」

元がどうあれ現在のメッシュとアイシャは犬猿の仲ですから。まぁモデルが誰であれ結局は別人なので気にしないことです。

ただパジャリガーが生きていたのはほんの数十年前のことですし、存命中の彼を知る人物がまだいても不思議はありません。

もしそういう人物に話を聞くことができればメッシュの事も何か分かるかもしれない。聞かない方がいい真実もありますけどね。


そういった話をしつつ安宿体験ツアーを満喫するホーリィは好奇心一杯で実に楽しそうでした。

大勢で一つの部屋に泊まるのも初めてなのでしょう。プルチーノさんはいい顔をしないけどいい経験ですよね。

ソラ「……ここはお約束として、枕投げから教えておくべき?」

エア「まあ、最初はガールズトークの楽しさからで。
    ねえねえ、ホーリィちゃんはやっぱりライフォス様のような男性が好き?」

ホーリィ「おっさんは嫌じゃ

信仰と恋愛は別物、11歳でもその辺はとてもシビアです。まぁ仮に好みがおっさんだと犯罪でしかないから仕方ない(笑)


《青嵐領》につくと一行はミスティン姫が養生している離宮へと案内されます。次はお貴族様体験ツアーですね。

離宮は領の中央にあるのではなく、パジャリガーが生まれたという村の外れに建てられた小さなものでした。

また第一皇位継承権の持ち主がいるだけに警備は厳重であり、流石のぞんざいズも少し緊張気味でした。


ホーリィは一足先にミスティン姫と再会し、ぞんざいズは少し遅れて案内されました。

ジーク「でもはっきりいってちょっと怖いぞ、顔あわせた瞬間に
    「貴方がたの未来は、もうわかっています」とか哀れみを籠めた視線で見られたらどうする」

エア「うわ。確かにそれは怖い!」

ムーテス「いや、しかし次に不作が来る作物の情報は、是非とも欲しいっすよ」

メッシュ「欲は力ですね、ムーテス」

そんなピンポイントで金儲けに繋がる未来が見えるかは分かりませんが、予知を恐れる気持ちは分かります。

メタな見方をすれば、わざわざ予知夢を見る人物を出しておいて予知をしないで終わるとは考え難いですからね(笑)

何らかの予知をされて、その運命を覆すミッションが課せられそうな気がしてならない。神の啓示と似たようなものです。


やがて接客の間に通されると、そこには痩せて血色のあまりよくない儚げな美人がいました。

ジーク「姉ちゃんもっと肉喰え」

エア「さすがにジークの足先踏みつける」

そして彼女は優しそうな微笑を浮かべてぞんざいズに視線を送りますが、メッシュの時だけ笑いを堪える表情でした。

自分が送った挿絵とそっくりの人がやってくるとは、「笑ってはいけないぞんざい勇者団」ですね。ミスティン、アウトー!


メッシュ「くっ……屈辱。パジャリガー、本当に人気があるのか。
      こうなったらフレンドリーに「やあやあ、ミスティン。久しぶりだね」と抱擁の一つでも交わしましょうか」

ソラ「そんなことをするとSPが槍飛ばしてくると思うの」

緊張しているかと思いきや相変わらずのぞんざいっぷりです。本当に衛兵が一瞬殺気だったりと見ているほうが冷や冷やします。


ミスティン「ごめんなさいね、失礼をしました。ミスティンと申します。
       本来は、正式に名乗りを上げるべきなのかもしれませんが、まだ皇族でない妹の護衛の皆さんとの……
       ごく私的な顔合わせという形になりますので、省略をさせていただきます。どうぞ、ミスティと及びください」

意外と腰が低いのに驚きつつぞんざいズも慌てて自己紹介をします。国のナンバー2でしょうに奥ゆかしくて素敵な人ですね。


しかし非常に気になる事に、メッシュだけでなくジークにも何か含みがありました。

ミスティン「ご両親は、お元気でいらっしゃいますか?

ジーク「へ?俺の?いや、どっちも死んだけど……家は弟が継いでるし。
     っていうか、俺の父ちゃんをお姫様がしってるわけないよな?」

メッシュ「何を鈍いことを仰っているのです、ジーク様!これは身辺調査の一環です、
      皇女様はこう仰りたいのですよ!「気に入ったから婿にきなさい!」

ソラ「えええっ!」

ミスティン「いえ、それはいりません

エア「そして、あっさりと断った!」

しかし彼女はジークの両親を知っている様子です。しかも「両親が何をしようとも貴方には関係ありません」的な口ぶりです。


ジーク「何をした親父ー!」

ミスティン「いえ、貴方のせいではありませんから、気に病まぬことです」

ジーク「いや、全然病んでなかったのに、これから病みそうだ

ホーリィの反応といい、ミスティン姫の反応といい、どうもデーニッツ家はロイヤル姉妹と何らかの関わりがありそうですね。

しかしやはりこの伏線が明らかになるのはずっと先の事になります。気になりますけど、今は気にしないでも問題ありません。


★七つの史跡を持つ男

そして翌朝、一行は村にあるというパジャリガーの七つの史跡を巡るツアーに出かけます。


今回はちゃんと村のマップまで用意されていまして、このマップを上手く使わないと解けない仕掛けもあります。

どうやら史跡等を一つ尋ねる毎に決められた時間が経過する仕組みらしく、一日に回れる数には限りがあります。

割と昔からある手法ですが、SW2.0でいうと「ミストキャッスル」等の春のサプリメントに近いシステムですね。


その七つの史跡は以下の通り。それぞれにパジャリガーの像があって、これも重要な要素です。

生家と没家が2つずつある時点で色々突っ込みどころ満載ですが、調べてみれば分かるでしょう。

「生家1」 :骨付き肉を食べる犬とパジャリガー
「生家2」 :祈りを捧げるパジャリガー
「神殿」 :弓を引くパジャリガー
「井戸」 :中空を指すパジャリガー
「塔」 :鷹を解き放つパジャリガー
「没家1」 :走るパジャリガー
「没家2」 :剣を持つパジャリガー

また史跡以外にもマップには「カイトの家」「お化けりんごの木」なども存在しています。

どうやらこれらも時間経過に数えられるポイントのようですね。6つ回ると夜になるらしいので1つ2時間ぐらい?

カイトというのはパジャリガーの親友だったというドワーフなので訪ねてみる価値はありそうです。




ぞんざいズは地図を見ながらあれこれ相談し、まずは離宮に近い「神殿」を訪ねてみることにします。

ここはパジャリガーが結婚式を挙げたという神殿であり、もちろんライフォス神殿になっています。


神殿を訪れてまず目を引くのは入り口にあるパジャリガーの像ですが、挿絵に比べるとあまりメッシュに似ていない

GM「なんとなく特徴が削ぎ落とされているというか」

ホーリィ「しかし、こちらのほうが美男ではないかっ」←上機嫌

それは遠まわしにメッシュを傷つけているのですが、子供は時に残酷なのです。


ちなみにライフォスの像は神殿の中にあります。入り口にはご当地ヒーローで本尊は中、観光地ですか(笑)

エア「うちの神像と、ここの神像、何とか取り替えてもらえないものかと……」

ソラ「お姉ちゃん、それちがう」

ムーテス「そんなにいやっすか、ハイグレード・ライフォス

エア「むしろ、何でそれでいいと思えるのかを、聞きたいんだけど」

いっそ直接ライフォス神殿に経験のある彫刻家を紹介してもらった方が手っ取り早いような気もしますね。

ただそれをやると相手にライフォスの神像がないことをバラしてしまいますし、結局はアリオス卿に期待ですかね。


神殿の中に入り、ぞんざいズが声をかけると1人の神官さんが対応してくれました。

ジーク「すいませーんパジャリガーの話を聞きに、ルーフェリアからきましたー」

神官「何ですって!あんな西の果ての国から話を聞きに来るくらいパジャリガー様の名声は高まっているのか!」

外国人がご当地ヒーローを訪ねて観光に来たと考えると地元人としてはかなり嬉しいでしょうね。


しかし何でパジャリガーは実力の割りにこうもマイナーなんだろう。30年前ならルーフェリアも開国してたのに。

名誉点を貯めないタイプの人だったのか。何らかの不祥事をやらかして合計名誉点が大幅に減少した人だったのか。

もし後者だったらライフォス神殿の人にもそれが知れていてもいいけどその様子は無い。

あるいは合計名誉点の減少と引き替えに隠蔽したという扱いだったのか。なんともミステリアスな男ですね。


この神官さんの話によれば、パジャリガーはここで蛮族討伐中に出会った女性と式を挙げたといいます。

神官「肖像画をご覧になりますか!」←嬉しそう

一同「見まーす(挙手)」

ところがこの肖像画、ソラがセージ技能で《宝物鑑定判定》をしたところ精々5年前に描かれたものです。

実は若い頃のパジャリガーはよくある「村を出て行った無謀な若者」に過ぎませんでした。

だから絵姿もあまり残っておらず、この神殿に至っては村興しのように表にある像を真似て肖像画を作成しただけです。


神官「少し前までは、パジャリガー五歳の時のしゃれこうべとか売られていたんですが、
    さすがにそれは詐欺なので摘発しました」

ジーク「あんまし変わんないんじゃねーの?」

神官「何を仰います。これは、本人の姿に似せて描かれた上に、衣装も再現されているんですよ」

メッシュ「……まさか、余の顔を見忘れたというのか

神官「あ、こんにちは、ルーンフォークさん」

メッシュ「あ、こんにちはー」

本の挿絵やカロンの記憶と技術を信じるなら、世間で浸透しているパジャリガーの顔は実物と違うのでしょう。

例の似ていない像が情報ソースとなり、公式設定として浸透してしまっているとしたらアテになりませんね。

未来の真実は例え虚偽でも過去の事実を塗り潰すものです。逆に言えばメッシュの顔を見て反応する人の情報は信頼できる。


肖像画のお嫁さんの顔もベールで隠れていて実に微妙です。しかも似顔絵は5ガメルでお土産として買えます。

ムーテス「……ホーリィに五ガメルの大切さを説いていた身に、これは買えない

ソラ「あたし買うの。面白いし。ホーリィちゃんも買う?」

ホーリィ「うう……どうしようかの」←お説教が効いてる

お嫁さんの顔が定かではないのは挙式当時には普通の夫婦として何ら特別扱いせずに処理されていたからです。

村興しをするにあたってパジャリガーがこの神殿で式を挙げた記録が出てきたからこの肖像画をでっちあげた

ただしお嫁さんの名前だけは明らかになったのは収穫でした。その名前はアナトラさんです、勿論記録を信じるならですが。


またここでぞんざいズはドワーフのカイトさんがパジャリガーの親友だったという情報を掴みます。

実は例の似ていない像を含め、七つの史跡の像を作った人物であり、頻繁に像を磨いている人物でもあります。

ドワーフなら30年程度前の記憶は確かでしょうが、ならば何故本人に似せないのか?という謎がありますね。


★井戸端英雄

カイトさんの家に行く前に神殿のそばにある「井戸」に寄ります。ここはパジャリガーがよく水を飲んだといわれています。

まぁこの村の出身ならこの井戸を使うでしょうから特に珍しくはない。現在は村の社交場として奥さん達の溜まり場です。

しかし小神を倒した英雄の史跡というから、蛮族と戦った古戦場跡とか、白骨化した強力な怪物の遺骸とかを期待してたんですがね。

すっかり観光地化した平凡な村にインチキ臭い肖像画と、この拭いきれないショボさはむしろローカルヒーローらしいのかな。


ちなみにこの史跡には「パジャリガーのような立派な強い人になろうね」的な教えがあるらしい。

メッシュ「ここで悪さをすると「パジャリガーさんが退治にくるよ!」とか叱られるんでしょうかね」

GM「そんな感じ。子供たちも御当地らしくパジャリガーさんの歌を歌ったりしてますね」

ソラ「パジャリガーの歌!」

ムーテス「なんだそれ、全然尊敬されてないよ!」

微妙に馬鹿にされているようなその歌に、ホーリィも実に微妙な顔をしていました。

このネタキャラっぽい扱いを見るに、むしろメッシュのモデルである事に納得してしまいそうにもなる(笑)


その歌詞というのがこんな感じ。譜割りは「サ○エさん」を超字余りにした感じ。

「骨付き肉を盗んで逃げてく野良犬追いかけて、裸足でかけてく陽気なパジャリガーさん

馬鹿にしてるのかと思いますよね。ところがこれにもちゃんと意味があったりするから侮れない。


あとこの場にいるおばちゃんに声をかけてみると、やはりパジャリガーのことを嬉しそうに語ってくれました。

おばちゃん「おやおや、あんたたちもパジャリガーの話を聞きに?いやー嬉しいねえ。こんな風に有名になってくれると」

ソラ「も?今、もって言った?」

おばちゃん「わりとさっきのことなんだけどね。フードを被った背の高い若い男が、
       やっぱりパジャリガー様の伝説を聞きにきたんだよ。本当に嬉しそうにしていてねえ」

どうやらぞんざいズと同じようにパジャリガーの史跡巡りをしている男性がいるようですね。

しかもしらけ気味のぞんざいズと違って割りと真剣な様子。どんな物好きなのか気になりますね。


★英雄譚、急転

続いて予定通りに「カイトの家」に向かうぞんざいズでしたが、家の前に人だかりができていました。

若者「大変だ大変だ。カイトさんが、カイトさんが!」

ジーク「死んだのか?

若者「はい!

ジーク「ええええっ!(驚愕)」

メッシュ「ジーク様!何を不吉な……って、ええええっ!」

それは比喩表現ではなく、《生死判定》に失敗しての本当の死亡です。名前の頭に「故」がつくやつです。

死因は墜死。七つの史跡の一つである「塔」の屋上から転落したようです。発見者は村の自警団の若者でした。

自警団の若者にとってもこんな事件は初めてらしく、事故か自殺か他殺なのかすら全く分からない状況です。


ここでぞんざいズは少し迷いましたが、事件現場の塔に急遽向かうことにします。ホーリィも一緒です。

ホーリィ「訪ねようとした方が不幸に遭われたのだ。我も事情くらいは知りたい」

メッシュ「なるほど。身体は子供、頭脳も子供、どんな事件も迷宮入り!ですね」

エア「それ、どうしようもないじゃない」

ただの子供ですからね。まぁ終わってみれば本格ミステリーとかではないので名探偵が出張るまでもありません。




「塔」は高さ30mというかなり高いものでした。昔は物見だったとか。

メッシュ「三十メートル落下は大変ですよ。九十ダメージですからね。大抵は死ねます」

ジーク「え、そうなのか?(計算している)あ、俺死なないぞ

<リトルウィング>の効果で70点アメージで、HP69点の防護点6なら5点ほどHPが残りますからね。

大怪我ではありますがまず死にませんね。30m落下してごく普通に生きている人間というのも凄いですね。


ソラ「あ、あたしも平気。"ウォール・ウォーキング"」

ムーテス「僕も平気っす。〔風の翼〕」

エア「あんたたちは邪道」

あとはスカウトやレンジャーの《受身判定》で達成値と同じ値だけ落下ダメージを減らせますね。

基準値7のメッシュだと期待値で14点程減らせます。それでもHP36点の防護点2では−38点でまず助からない。

SWの時は基準値を落下距離から引いて計算できたのですが、この辺は思いっきり改定されていますね。


次に現場検証です。《探索判定》にエアとメッシュが成功し、足跡を発見しました。

足跡は2人分あって、片方は大柄な男性のもので出入りしている。もう片方は歩幅が小さくて入ったきり。

つまりカイトさんは大柄な男性と一緒に塔に入り、屋上から転落したと。どうも他殺っぽくなってきました。


更には血痕のあたりには消えかけたドワーフ語でダイイング・メッセージが残されていました。

メッシュ「へ?……それは、通りすがりのドワーフを連れてこないと!」

ソラ「カイトさんの村なら、いたんじゃない?」

エア「ちょっと待った。ソラ、あんた"トランスレイト"使えるでしょ!魔法は使ってこそよ!

ソラ「あ。使う使う。ドワーフ語なにするものぞ」

"トランスレイト"は5レベルの真語魔法。術者にとって未知の言語も読めるようになります。

この妹は怪しい生き物の言語は得意だけど一般的な人族の言語にはそれほど強くないんですよね。

あとはセージ技能の高そうなプルチーノさんとかも読めたかもしれませんが、ドワーフ語だとちょっと微妙かな?


そこにはこう書いてありました。

「パジャリガーの欠けた歌」

例の恥ずかしい歌のことですね。実はこの塔の内部で「パジャリガーの歌」の歌詞を見ることができます。


塔の内部は螺旋階段になっていて、階段に沿ってパジャリガーの足跡や生い立ちが綴られています。

その中でも比較的新しく付け加えられたように書かれています。言語は交易共通語なので誰でも読めます。

またパジャリガーの足跡の中には「倒せなかった魔物の史跡」というものもあり、非常に興味深いものです。

これを読み上げたメッシュの様子を見るにGMは本文を書き出していたようですが文庫には未収録です。


では以下にその歌を紹介しましょう。文中赤字で書かれたものが「パジャリガーの欠けた歌」です。

ただしこれはこの塔には書かれていない隠された歌です。ぞんざいズがこれを知るのは少し後のことです。

というのもこの歌に例の「倒せなかった魔物の史跡」の在り処が隠されていて、危険なので一般公開はしてないのです。


骨付き肉を盗んで逃げた犬、追いかけて
裸足でかけてく陽気なパジャリガーさん
捕まえたらそこで ドワーフの友達笑ってる

盗み食いするいけない犬だよ
びしっと指差し注意するけど
本当は怖くて 後ろの井戸に逃げこみたい
がんばれ英雄パジャリガー
美味しい木の実がご褒美だ

パジャリガーさんお祈り最中
静かにこっそり犬がご飯を差し入れる
そっと覗いて見てごらん 奥方と一緒にお昼寝だ
目を覚ますのは いつのことやら

パジャリガーの弓が狙ってる
パジャリガーが刃を突きつけてる
パジャリガーの肩から鷹も狙ってる
だからきっと 今日も 平和で元気

夕日を背負って駆けてくパジャリガー
いつかはきっと剣と交わる
だって そこには 戦いがあるから
多分 きっと いつか そのうち


ソラ「……本当に尊敬されてるのかな、この英雄」

色々突っ込みどころはありますが、まず三行目にして「サザ○さん」の譜割りでは無理っぽい(笑)

一瞬「めだかの学校」っぽくもなりますがそれでもやっぱり無理っぽい。果たしてGMはどう歌うつもりだったのか。

あとどんだけ犬が好きなんだよという突っ込みもありますね。実際彼は犬が好きだったようですが。


真面目な考察としては歌詞のいたる所に七つの史跡にあるパジャリガーの像の特徴が出てきますね。

これと文庫に収録されている「像の向き」を組み合わせる事でパジャリガーの秘密が明らかになる仕掛けです。


これについては物語が進むにつれて一つずつ解説していきますが、まず第一節についてだけ解説しましょう。

骨付き肉を盗んで逃げた犬、追いかけて
裸足でかけてく陽気なパジャリガーさん
捕まえたらそこで ドワーフの友達笑ってる

ここにある「骨付き肉を盗んで逃げた犬」とは「生家1」にある像のことです。

そして「裸足でかけてく陽気なパジャリガーさん」とは「没家1」にある像のことです。

この2つの像の向きにマップ上に線を引くと、「カイトの家」で2つの線が交差するという簡単な仕掛けです。

他の謎も大体こんな感じで解けますが、それが何を意味しているかは今の時点では全ては分からないかも。


さて、ぞんざいズは歌をメモしながら塔の屋上に出ると現場を《探索判定》します。

塔の屋上には柵がありましたが、カイトさんがこれをよじ登った痕跡は発見できませんでした。

また現場には「P」とイニシャルの入った<ウサギのピアス>が落ちていました。例の男の遺留品でしょうか。


これは個人専用装備であり、これを落とした人は合計名誉点の減少を招いている筈です。

ソラ「パジャリガーのP?

エア「ということは遺品泥棒?」

メッシュ「な、なるほど!私は蘇ったパジャリガーが、自分の痕跡を消すために
      知り合いを次々に消していってるのかと思いましたよ!」

エア「それ怖いわよ!」

結局それ以上の発見はありませんでした。今のところ限りなく他殺っぽいのですが、犯人は例の若い男なのか?




それからぞんざいズは再び「カイトの家」を訪れました。鍛冶屋だったので常連さんやご近所さんが集まっています。

ムーテス「じゃあ、僕がさり気なく聞きに行こう。
      カイトさん、事故に遭われる前、何かおかしなこととかなかったっすか?

メッシュ「超ストレートじゃないですか」

すると悲しみにくれていた人が答えてくれますが、今朝はいつもと様子が違ったようです。

いつもならすぐに発注を受けてくれるのに、今朝は「知人を案内する」と断られたそうです。

それは背の高い男で、フードを深く被っていたので顔は見えなかったらしい。例の男でしょうか。


次にパジャリガーの歌の作者について尋ねてみると、不思議な事に誰も知らない

若者の一人が言うには元は一番しかなかったけど、どんどん長くなっていったそうです。

歌について一番詳しかったのはカイトさんでしたが、亡くなってしまいましたからね……。


ソラ「……コンジャラーさんに、お願いする?
    ホーリィちゃんは嫌がるだろうけど、お姉さんのほうにはツテとかありそう」

以前のレイクリスのように蘇らせてしまうのも選択肢の一つです。本人が了承するかは分からないけど。

普通は魂が穢れるのを嫌って蘇生を拒否しますが、現世によっぽど未練がある場合はその限りではない。

死体に残った痕跡から捜査をすることを「死体に聞く」と例えるものですが、本当に聞けてしまうのがファンタジー。


あと9レベルの操霊魔法に"ポゼッション"というイタコのように死者を憑依させる魔法がありますね。

これなら蘇生させずに死者と会話が可能ですよ。ただし既に蘇生・輪廻している魂には無効です。

特定人物を憑依させる場合には死者に所縁のある品物が必要だそうですが、それは自宅にいくらでもありそうだし。


ソラ「生き返ってきてくれなかったら、一万ガメルさらっと消えちゃうようなものだし」

ムーテス「てことは……"リザレクション"詐欺とか横行してそうっすよね。
      7レベルコンジャラーの振りして、魔法をかけた振りだけして、一万ガメルぽっけにないない
      あっ、もちろん僕は、考えたこともないけど」

ジーク「お前本当に商才あるなあ、ムーテス」

こういうのも商才というんでしょうか。結局蘇生は諦めたようですが、GMはそれも想定していたらしい。

もしかしたらカイトさんも何らかの未練があって"リザレクション"には応じるという設定だったのかな。


★林檎の木の上と下で

ぞんざいズは歌にある「美味しい木の実」が成ると思われる「お化けりんごの木」へ向かいました。

昔はここに一本の大きなりんごの木が生えていただけでしたが、ある時それが枯れそうになるという出来事がありました。

その時村人が添木をしてあげたのがきっかけで複数のりんごの木が癒着し、どんどん大きくなっていったとのことです。

それが楽しくて村人が一丸となって世話した結果、その幹の太さは人間が何十人も手を繋がないと抱えられない程になりました。


パジャリガーもこの木になるりんごが大好きだったらしく、ぶっちゃけ史跡よりもよっぽど見応えがある(笑)

ジーク「じゃあ、登るか!」

ソラ「登る登る!」

エア「こらぁ!安全に"ウォール・ウォーキング"しなさーい!」

とお姉ちゃんが忠告する頃には既にサイコロを振った後でした。攻撃魔法以外は眼中にないのかこの妹。

ちなみに"ウォール・ウォーキング"の対象は「一体」、すなわち術者以外にもかけられます。


するとその様子を見た村人が遠くから注意してきます。

村人「危ないよー!やめときなー」

ジーク「俺、最悪落ちても死なないし大丈夫!」←31mまで平気

ソラ「あたしも"レビテーションあるし"」

村人「そうじゃなくてー!そこは欲張り(グリード)グリズリー……通称グリグリズリーのテリトリーだから!」

ジーク&ソラ「は、早く言えー!」

熊が住んでいるとは、予想以上に大きい木ですね。ハワイのモンキーポッドどころの騒ぎじゃありませんよ。


通常のグリズリーは6レベルの動物であり、《2回攻撃》とそこから派生する《ベアハッグ》が得意です。

《ベアハッグ》とは《2回攻撃》が両方とも命中した相手を抱え込み、以後自動的にダメージを与え続けるというもの。


グリードグリズリーはフェイダン地方の固有種であり、なんと8レベルと通常のグリズリーを上回る強さです。

《樹上活動》が得意で木の上にいる限り命中力・回避力+1です。また《硬い木の実》を投げて攻撃することも可能。

さり気なく《全力攻撃》なども使えるそうですが、《2回攻撃》と《ベアハッグ》は失われているようです。

ただしこれは「フェイダン博物誌」収録のデータであり、このリプレイではデータ的にはオリジナルと大差ないようです。

木の上での活動にペナルティが入らず、その代わり木から降りると動きがとろくなるというだけのちょっとした違いですね。


グリグリズリーは自分のテリトリーに入ったジークとソラに襲い掛かりました。

当然スカウト技能を持たない2人が先制を取れるはずもなく、あっさりとジークが《ベアハッグ》状態です。

そこにソラの"スリープ"が決まって1人と1頭は木から落ちて落下ダメージを食らい、熊が弱気になって戦闘中断です。


ジーク「あああ。ごめんなごめんな。ちょっと好奇心で登っただけなんだよ。不注意だった」

ソラ「素直に反省なの」

グリグリズリーの方はというと、すっかり弱気になって「おーうおーう」と木の上の家族を呼んでいます。

すると子熊が顔を覗かせました、親熊だったんですね。あるいはこの子達を守ろうとして興奮していたのかもしれない。


通常のグリグリズリーは愛嬌のある熊さんであり、農家が果実を渡して手懐けて狼や蛮族を追い払ってもらっているそうです。

また木の実を分けてもらうにも安全な方法があるらしく、今回の件は彼らのテリトリーを荒らした人間側に非があります。

そこでぞんざいズは親熊を木に返してあげました。すると家族はお礼に美味しいりんごを選んで落としてくれます。賢い熊ですね。


ちなみにこの木の実には薬草と同じように回復効果があるそうです。史跡よりもよっぽど有意義な村の名所ですね。

ソラ「お姉ちゃんに叱られて、珍しく素直に反省しているの」

ジーク「ムーテスにうさぎ型に剥いてもらって喰ってる」

これでもレンジャー技能のボーナスが入るんでしょうかね。上手くすれば落下ダメージぐらい治せますかね。

あとホーリィにもわけてあげます。こちらは豪快に丸かじりを教えられて食べています。こういう食べ方もきっと初めて。


さて、これで「神殿」→「井戸」→「カイトの家」→「塔」→「カイトの家」→「お化けりんごの木」と6つ回りましたね。

GM「ということはそろそろ夜になりますけど」

ソラ「ホーリィちゃんを暗い中連れまわすのは気になるから、一度休も?」

ホーリィ「我はまだ平気なのだー」

エア「わたしたちのお腹が空いたの。帰りましょうね、一度

ソラ「……あんな風に優しく言ってくれたこと、すごく遠い日なの」←切ない

年齢十代のバイタリティは凄まじいものがあるものですが、本人の口ぶりとは裏腹に体力的には限界でしょう。

あと四十代のプルチーノさんは明らかにグッタリしています。長旅の上にこのスケジュールと事件では無理もない。


★「犬」が結ぶ線

離宮に戻ってくるとミスティン姫は私的な接客中でした。使用人曰く「離宮に所縁のある人」だとか。

それが終わると夕飯はホーリィやぞんざいズと一緒に取るそうなので、質問はその時にでもするつもりです。


ここでメッシュはホーリィにミスティン姫の簡単な経歴を尋ねました。

ホーリィによると、彼女は5歳で城を出てこの領の領主の家に養女として預けられたそうです。

そして15歳で"皇族還り"を果たし、現在22歳になるとか。つまりこの領とは17年間の付き合いになります。

ちなみにホーリィが城を出たのは6年前になるため、7年前に城に戻った彼女とは1年間だけ一緒に過ごせたらしい。

ホーリィがミスティン姫に懐いているのも、ホーリィが一番親しく過ごせたお姉さんだからなのかもしれませんね。


またここでムーテスは「パジャリガーの歌」の解読方法を発見します。

特に第一節から第三節までの全てに犬が登場するのがヒントになったようです。

実は第一節から第三節までの全ての「犬」は「生家1」の像を指すという点では同じものです。

つまり「生家1」の像の向きに第一節から第三節までの謎の答えが直列になっているということになる。


では第二節を解説してみましょう。

盗み食いするいけない犬だよ
びしっと指差し注意するけど
本当は怖くて 後ろの井戸に逃げこみたい
がんばれ英雄パジャリガー
美味しい木の実がご褒美だ

「盗み食いをするいけない犬」は前述通りに「生家1」にある像のことです。

「びしっと指差し注意する」は「井戸」にある像のことです。像の向きの反対側が「井戸」というわけです。

この2本の線が交差する所に先程の「お化けりんごの木」があるのです。もし後年に木がなくなっていたら謎でしたね。


ここまではいいとして、問題は次の第三節です。ムーテスもこれの答えが何を示すのか分からない。

パジャリガーさんお祈り最中
静かにこっそり犬がご飯を差し入れる
そっと覗いて見てごらん 奥方と一緒にお昼寝だ
目を覚ますのは いつのことやら

「パジャリガーさんお祈り最中」はまだ行っていませんが「生家2」にある像のことです。

「静かにこっそり犬がご飯を差し入れる」も「生家1」にある像のことです。

そしてこの2本の線が交差する所に何があるかというと、実はこの離宮があるのです!

問題はここにあるという「奥方と一緒にお昼寝だ。目を覚ますのは、いつのことやら」という歌詞です。

これは文字通りの意味だけではなく、もっともっと深い意味があるのです。世間から隠さなければならない意味が。


そうしてぞんざいズがエキサイトしている所にミスティン姫が現れます。

ミスティン「皆さんおかえりなさい。史跡めぐりは如何でしたか?」

ソラ「面白かったの。木登りして、熊に叩かれたけど

ミスティン「様々な勲功を残された方です。見るべき場所も、多かったと思います」←スルー

そうして微笑むミスティン姫でしたが、「パジャリガーの欠けた歌」が話題に出ると表情を曇らせます。


ミスティン「……まあ、それは……迂闊に公表しておいて、子供が入り込んだりしては、困りますから」

ソラ「あたしたち、大人だもの」

ジーク「そうそう、木登りして熊にペガサスローリングクラッシュされたりもしたけど、俺たちはこう見えても大人だから!」

ミスティン「ええ、わかっていますよ。ジークハルト」

するとミスティン姫はジークの頭を撫で撫でしてくれます。完全に子供扱いです(笑)


メッシュ「まあまあ。確かに、みんな子供っぽいですが、保護者の私ががおりますので、大丈夫ですよ」

ミスティン「何を言っているのです、メシュオーン。貴方も幼いじゃないですか。確か……そう、七歳ほどのはずですよね?

メッシュ「な、なんで、それを知ってるんですかー!」

最近忘れがちですが、実はメッシュは七歳児。生きた年月だけで言えばホーリィよりも年少だったりします。

ルーンフォークは生まれてから外見が変わらないから年齢が分かり難いのに、彼女はそれを言い当てましたね。


ミスティン「まあ、先ほども言いましたし……いいでしょう」

これは先程まで話していたという客のことです。その客とはどうやら例のフードの男のようです。

ジーク「そいつ、カイトさん殺した人なんだぞ!」←まだ決まってない

メッシュ「ジーク様!いきなりぶっちゃけますか!」

ミスティン「……そんな風には、見えませんでしたけれど

エア「外見で判断すな!(裏手つっこみ)」←皇女に突っ込んだ!

流石は突っ込みクイーン。神様や大司教だけでなく皇位継承権第一位のVIPにまで突っ込み出しましたよ。

実は例のフード男ですが、ぞんざいズは悉くニアミスしていましたが順路によっては鉢合わせになっていました。

ところが見事なまでに全ての遭遇をスルーしたものですから、ここにきて彼の情報を何も知らないままなんですよね。


ムーテス「ていうか、そのフードの人って、知ってる人なんだね?」

ミスティン「いいえ、存知ません。……けれど、存在していたことも、名前も存じ上げています。彼も可哀想な人ですから」

エア「名前は知ってて、存在は知ってるけど……知らない人。なんかパジャリガー本人の気がしてきた」

ミスティン「ええ、彼はパジャリガーと名乗っています

ソラ「もしかして、訪ねてきたパジャリガー、これと同じ顔?(メッシュを指す)」

すると彼女は笑いを堪える様子を見せます。フードの男は自称パジャリガーでメッシュと同じ顔というわけですね。


ソラ「別人ってわかってるのに、パジャリガー扱いしてあげたの?」

ムーテス「そ、それは……大人の対応なのかな」

ミスティン「まあ、彼も可哀想な人なので……
       実際、わたしがよく知っているわけではないのですが、
       しっかりとパジャリガーになりきろうとなさっていたので

メッシュ「それは、単なる痛々しい人ですよ!」

この辺のミスティン姫は謎かけのように答えて真実を明らかにするのを避けている。それにもちゃんと意味があるのです。


それでもミスティン姫はぞんざいズが望むのなら全てを話してもいいと言ってはくれますが。

ミスティン「ただ聞くと後悔するかもしれませんよ?わたしは決して語るまいと心に誓っていたのですから」

メッシュ「はい、貴方に話していただかなければならないのです皇女殿下」

ミスティン「わかりました(メッシュを撫で撫で)」

メッシュ「何をしとるかね、君は。額に青筋立てますよ」←一瞬口調が変わった

ミスティン「あら……貴方が眠っている間は、わたしはよく貴方たちをこうして撫でていたのですよ

これには流石のメッシュも一瞬フリーズ。彼女はメッシュの起動前を知っている、それも彼以外のルンフォも込みで。


ジーク「ちょ、ちょっと姉ちゃん、何を知ってるんだ?」

ムーテス「これ、どこに眠ってたんっすか?」

ミスティン「この離宮の地下です。……おかえりなさい、七年ぶりの里帰りですね、メシュオーン」

主従「え、えええええっ!(驚愕)」

そして彼女の口からはメッシュの出生の秘密が語られたのです。


数十年前にこの村でパジャリガーが亡くなった時、英雄の死によって一部の蛮族達が勢いづいてしまう恐れがありました。

そこで彼に世話になったルーンフォークの一族は優秀なジェネレーターを使い、彼の影武者を複数製造したのです。

そしてパジャリガーの奥さんの影武者として出来のいい家系のルーンフォークを用意し、影武者達は離宮で眠り続けました。

やがて現役の影武者の活躍もあってパジャリガーの死は蛮族に漏れず、現在でも生存説が囁かれるまでになりました。

没後二十年が経過した頃には戦局も安定したので彼の死を公表し、村興しに利用されるまでになったのです。


そうして未起動の影武者達はその役目に就くことなく離宮で眠り続ける事になったのです。

そんなある日、この離宮をジークの父親であったデーニッツ氏が訪れて影武者の存在を知りました。

彼は男女1体ずつの影武者を所望して、メッシュやアイシャと名付けられてデーニッツ家の使用人となったのです。


歌の第三節にあったお昼寝をするパジャリガーとその奥さんというのも、影武者の存在を意味しているわけですね。

ムーテス「え、でも影武者を人様にプレゼントするって、どうなんすか!」

エア「もう必要なくなったからじゃない?……つまり、廃品だった

メッシュ「……くぅ……アイデンティティが上がったり下がったり、大変ですよ、今」

ちなみに生家が2つあるのもこれが原因です。片方はオリジナルの生家であり、もう片方は初代影武者が起動した家です。

没家は両方ともオリジナルが死んだ場所です。彼は1回蘇生を受け入れ、2回目は穢れが溜まりすぎてダメだったんだとか。


エア「つまりメッシュは保管されていた影武者パジャリガーの一体で、いつか影武者になるはずだったと」

ミスティン「そうですね。いつ非常時が来て、影武者としての役割で目覚めさせられるかわからなかったんですが。
       こうしてすでにパジャリガーの死を公表してしまえば、特に使い道がなく……あ」←言っちゃった

ソラ「言った!」

ムーテス「あはははは!すっごく素で、口を滑らせてた!

ミスティン姫が笑いを堪えていたのも、子供扱いしていたのも、昔バザーに出した子供服を見た気分だったから。

ド○えもんよろしく子守用ルーンフォークとして貰われたわけですから、その対象であるジークも子供扱いしていたと。


ミスティン「い、いえ……その、困った時に。困った時に起動するようにと言われていましたので……(視線逸らし)」

エア「いえ、姫様。貴方の判断は正しいです!」

メッシュ「す、すいません……そろそろ涙を流しながら、走り去っていいですか?
      古代の超兵器か何かだと信じていたのに……しょっぱすぎる真実!!

真実なんて往々にして自分の望むものではない。ミスティン姫が語らずにいたのも頷けますね。


ミスティン「メシュオーン、貴方は心血を注いで造られた子ですからね?」

フォローしてくれていますね。実際戦の行く末が掛かっている局面で造られたわけだからその通りではあるでしょう。

愛のない見方をすればただの廃品提供ですが、愛のある見方をすればミスティン姫は彼らに自由を与えたことになる。

パジャリガーの翳を背負わずに、少しでも人様の役に立つようにとね。今のメッシュを見ればその試みは成功でしょう。

しかもそれが妹の友人となり、仕事で偶然にも帰郷するなんて、ちょっと運命を感じてしまう展開でもありますね。


もちろん例のフード男もその影武者です。しかも順調に影武者を続けた場合の次の世代の影武者

彼はオリジナルのパジャリガーや役目を全うした父(先代影武者)を尊敬崇拝しているのです。

そしてその跡を継ごうという意思を持ち、オリジナルが倒せなかったという魔物を求めているのです。

先程ミスティン姫は彼に「パジャリガーの欠けた歌」を教えてしまいました。またここでぞんざいズにも教えます。


それでは第四節、「パジャリガーの欠けた歌」の解説です。

パジャリガーの弓が狙ってる
パジャリガーが刃を突きつけてる
パジャリガーの肩から鷹も狙ってる
だからきっと 今日も 平和で元気

「パジャリガーの弓が狙ってる」とは「神殿」にある像のことです。

「パジャリガーが刃を突きつけてる」とは「没家2」にある像のことです。

「パジャリガーの肩から鷹も狙ってる」とは「塔」にある像のことです。

これら3本の線は村の南東に位置する森の一角で交差します。1点を指すだけなら2本あれば足りますけどね。


フードのパジャリガーは既にここに向かっています。パジャリガーとしての責任を果たすのだと。

残る謎は誰がカイトさんを殺したのか?ということですね。英雄を目指す男がそんな酷い事をするだろうか?


★決戦!パジャリガーVSパジャリガー?

ぞんざいズはフードのパジャリガーに話を聞くためにも「パジャリガーの欠けた歌」が指す森へと向かいます。

ジーク「さすがに、今回はホーリィを連れてはいけない。姉ちゃんのところで留守番しておいてくれ」

メッシュ「今回のパジャリガー事件の真相は、また戻ってきたら、話して差し上げますよ」

ホーリィ「……わかった。絶対だぞ、姉上が何を話していたのかも、教えてくれ」←うたた寝してました

全く会話に参加してこないと思ったら完全に聞いていなかったんですね。やっぱり疲れていたのか。

聞いてたとしてパジャリガーの真実をどう受け取っていたか。いっそ彼女のパジャリガー幻想は守るべきか。

影武者云々はともかくとして、穢れを忌避するライフォス信者が蘇生を受け入れたという事実はショックかもしれないし。


ソラ「任せて。きっとパジャリガーが迫真の演技で報告してくれると思う

メッシュ「……もういいですよ、パジャリガーで(拗ねた)」

ジーク「何を言ってるんだよ、俺たちは普通に運命の出会いだったんだぞ、メッシュ。
     パジャリガーでいたら逢えなかったじゃないか」

メッシュ「ジーク様……ぼろぼろ(泣いた)」

こういう恥ずかしいセリフをサラッと言えてしまうのがジークのいい所です。

生まれがどうであれ、現在のメッシュはパジャリガーとは別人ですしね。自分のために生きればいいんだし。




ぞんざいズは歌が示す森の一角に移動し、いつものようにメッシュが《隠密判定》で先行偵察をしてきます。

これが達成値17という素晴らしい出来だったので相手に気づかれることなく様子を窺えました。

メッシュが夜の森の中で見たのはフードのパジャリガーと、あと謎の女性の姿でした。こちらは完全に想定外。


女性「まだ扉は見つからないの?パジャリガー」

パジャリガーの方は積み上げられた石を崩して何かを探している様子でした。


メッシュの報告を聞いたぞんざいズが取った行動はメッシュのパジャリガーショーです。

ソラ「ねえねえ、パジャリガー」

メッシュ「ちがうというてるでしょうが!」

ソラ「ううん、今だけパジャリガーになってみるの、どうかなって思ったの。
    あたしたち、従者やってあげる。滅多にないことよ?」

何となくソラに面白がられているだけの気もしますが、折角なのでメッシュは迫真の演技を披露します。

後ろからソラが"ライト"で照らし、<赤いマフラー>を棚引かせ、超熱血漢のノリで堂々と姿を晒します。


メッシュ「おい!貴様ら何をしている。私の名はパジャリガー!
      この名に賭けて、私の足跡を踏み荒らすことは、許さん!(超熱血調)」

ムーテス&エア「おお!生パジャリガー(拍手)」

結構ノリノリです。まぁ一度はやってみたいシチュエーションかもしれませんしね、恥ずかしいけど。

すると「何ぃ!」とオーバーアクション気味に相手は振り返り、フードが落ちて顔が露になります。

その顔はやはりメッシュそっくりでしたが、髪はボサついていてややワイルドに見えます。


パジャリガー「貴様がパジャリガーだと!おこがましい、貴様には新たな名があるはず!
        俺は別の名など一度も名乗ったことがない……
        俺様は名を問われれば、常にこう答える。パジャリガー・セカンドと!」

一同(生暖かい表情)

メッシュ「……ちょっと、我に返って恥ずかしかったりしませんか?」

GM「うるさい」

この通りに彼は熱血漢のヒーロー野郎です。もしオリジナルに口調を似せてるとしたら、ホーリィが泣くかもしれない。

あと彼は自分のことをセカンド(二代目)と言っていますが、先代の影武者がいるからむしろサード(三代目)以降では?

まぁ色々面倒なので今後は彼の希望通りに「パジャリガー」と呼びましょう。オリジナルかセカンドかは必要に応じて明記。


エア「一体何をやってるの?」

パジャリガー「ふ……訊かれれば、答えねばなるまい。俺様はパジャリガー。
        そしてオリジナルを越えて更なるパジャリガーの高みを目指す!
        そのためには、オリジナルが倒し損ねていた魔物を、俺自らの手で倒すのだ!」

メッシュ「うぜ

ジーク「あ、そう。がんばれよ」

パジャリガー「え?」

彼の中ではパジャリガーというのは個人名を越えて一つの称号になりつつあるようですね。

ルーンフォークである彼はオリジナルのように神官戦士になる事ができないのを残念に思っていそうです。


すると彼と一緒にいた女性、暗い印象の美女が彼に囁きかけます。

美女「何を言っているのパジャリガー。
    彼を放置しておいては、貴方が偽者かもしれないと、疑われてしまうわよ。
    それに、花嫁を奪われたままではないの」

メシュ「花嫁?」

パジャリガー「真のパジャリガーの後継者たる者が娶るべきと用意された花嫁だ!
        離宮に迎えにいってみたがすでに外に解放されてしまったという……」

彼はアイシャの方にも幻想を抱いているらしい。彼女を娶るのは難易度にしてウルトラハードでしょうに。

実際メッシュが何年も一緒に暮らしていて全く仲良くならなかったぐらいです。この熱血漢はウザがられるだけでしょう。

ここでぞんざいズは美女の方を不審に思って《真偽判定》&《魔物知識判定》を行い、彼女がバンシーだと判明します。


バンシーは9レベルのアンデッドであり、酷い裏切りを受け、悲しみの中で死んでいった女性から生まれます。

真語魔法/操霊魔法9レベルを魔力13で使う後衛型アンデッドであり、《魔法拡大/数・範囲・確実化》を使いこなします。

更には《2回行動》によって主動作を2回行える。これで1ラウンドに魔法&《狂乱の叫び》の2重攻撃をしてきます。

《狂乱の叫び》とは醜悪なミイラの姿となって金切り声を上げ、半径20m内の全てのキャラクターを錯乱させるものです。

これに抵抗できなかった者は敵味方を問わず自分に一番近いキャラクターに近接攻撃か射撃攻撃を行わねばならない。


ムーテス「この「金切り声」って喰らったらちょっと大惨事すよ。"カンタマ"で何とか抵抗確率五分って……何事」

《金切り声》は「ルールブックV」の表記ですね。「バルバロステイルズ」では《狂乱の叫び》になりました。

その精神抵抗の目標値は13(20)と極めて高く、精神抵抗が11あるジークとエアにカンタマをかけても五分ですね。

下手をしたら延々同士討ちを続けて一方的に魔法を喰らい続ける事にもなる。肉体的には弱いけどある意味恐ろしい相手です。


これの対抗策の一つが6レベル妖精魔法"ブレイブハート"です。「精神効果」「呪い」属性の影響を3ラウンド無効化します。

バンシーに限らず、吸血鬼やバジリスクの視線のように毎ラウンド抵抗が必要な悪影響を未然に防ぐことも可能となる。

SWだと"バトルソング"がそんな位置づけでしたが、あれは精神効果上書きの法則を利用して達成値の低い効果を防ぐだけです。

しかしこちらは達成値の比べ合いも不要。例え格上の相手の能力であろうとも、毎ラウンド抵抗し続ける必要がなくなる重要な魔法です。


もっともこのパーティには本業の妖精使いがいませんし、ジークですら4レベルなのでこの手は使えない。

ジーク「そこのおねえさーん。一体何が目的ですかー?」

メッシュ「ジーク様、敵におもねらないでください!」

バンシー「私の目的?私の目的は……私を裏切ったパジャリガーを、私の理想のパジャリガーにすること!

事情を聞いてみると、彼女はパジャリガーが「いつか大英雄になって帰ってくる」と約束して村を出た時から待ち続けたそうです。

ところが村に帰ってきたパジャリガーは既に女連れで結婚までしてしまったものですから、彼女は裏切られたと思ったそうです。

しかしこの話を聞く限りパジャリガーは別に彼女を娶る約束なんてしてないんですよね。まさか一方的な思い込みか?

あるいはパジャリガーが知らない内にプロポーズしていたとか。「いつか白馬に乗って迎えに来るぜ!」的なことを言ったとか。


いずれにせよその推測も彼女の証言だけでは証明不能。確かなのは彼女がヤンデレだという事実です。

バンシー「でも、この子なら、姿形も変わらないし、パジャリガーの自覚もあるし、きっと素敵なパジャリガーになれるわ!

つまりセカンドの方を自分の理想のパジャリガーに仕立て上げようとしていると。影武者というか代用品扱いですね。

セカンドは自分をパジャリガー扱いしてくれることを期待しているわけですが、こういう扱われ方で本望なのでしょうか?


ジーク「えーと、カイトってドワーフのこと、知ってる?」

パジャリガー「知っているとも!パジャリガーの友だ!」

バンシー「あの人は嫌い。パジャリガーの姿を歪めてしまうんだもの」

どういうことかというと、カイトさんは自分が作った像を磨くフリをしてその顔を変えていったのです。

「このままだと、自由に生きられない者たちがいるから」とね。史跡の像が似ていないのはそういう理由です。


バンシー「それに、パジャリガーのみっともない思い出を幾つも知っているんだもの。
      早く消して素敵なパジャリガーだけを残さなきゃ(にこにこ)」

だから彼女はパジャリガーが塔から出たのを見計らって、カイトさんを塔から落としたのです。

彼女自身は浮遊しているので足跡は残らず、まるでパジャリガーが彼を落としたようになってしまったと。


さて、これで今回の事件の謎も大体明らかになりましたね。あとはこのバンシーをどうするかですが。

メッシュ「聞いたか。パジャリガー!その魔女は本来のパジャリガーの親友であったドワーフを、殺したんだ!(びしっ!)」

パジャリガー「な、なんだって!お、俺は……一体どうすればいいんだ!!仲間が裏切り者だったなんて!!」

ジーク「……どうすりゃいいって」

ムーテス「アホだけど、いいやつかも

この通り彼は暑苦しいヒーロー野郎ですが根は善人です。真相を知ればバンシーを見逃すような男ではありません。

ここでぞんざいズは彼を味方に引き込んでバンシーと対決すべく、ヒーローもののノリで彼を煽っていきます。

戦隊モノでいえば6人目の追加戦士を引き込む感じですね。実際彼は助っ人NPCとして今後も活躍していくわけですが。


エア「パジャリガー!あなたが本当に真のパジャリガーであると言うのなら……その力の向けるべき場所はわかるはずよ!

ソラ「そう!これは貴方の最後の試練!これを乗り越えてこそ、真のパジャリガーとなるのよ!」

ムーテス「親友カイトさんの無念……君が晴らさねば、誰が晴らすんだ!
      そう、正義の名のもとに、君はここで挫けてなんていられないはずだ!」

エア「そうよ。立って!」

メッシュ「我々と共に戦おう!パジャリガー!

うわ、暑苦しい、でも楽しそう。このお約束の展開によってパジャリガーはアッサリとこちら側につきます。


パジャリガー「わかった!この戦いを終えてから、どちらが真のパジャリガーであるのか、正々堂々俺様と勝負だ!」

ジーク「何を言ってるんだ、こいつはただのメッシュだよ

肝心のパジャリガーのスペックですが、能力値はメッシュと一緒です。つまり精神抵抗は苦手と。

技能はファイター、スカウト、エンハンサーで詳細なレベルは不明。多分ファイターはグラップラーと同格の6レベルでしょうが。

習得している練技も詳細は不明ですが、戦闘時に常用している様子から"キャッツアイ"、"マッスルベアー"、"ガゼルフット"あたりかな。


1ラウンド目

メッシュが腕輪を割って先行を取り、エアはカンタマを6人全員にかけました。

エア「バンシーの持ってる魔法で一番怖いのは……」

メッシュ「個人的には"バインド・オペレーション"が吐くほど怖いです」

"バインド・オペレーション"は9レベルの操霊魔法であり、対象の行動を制限する効果があります。

具体的には移動は制限移動までに限り、全ての行動判定(精神・肉体抵抗と生死判定を除く行為判定)に−2のペナルティです。

更にはルーンフォークや魔法生物はこの魔法の抵抗時に−2のペナルティが入るため非常に怖い魔法なのです。

もしこれを使われたらメッシュの場合はカンタマ込みでも精神抵抗はたったの7。まずバンシーの魔力には抵抗できない。


ジーク「"セイクリッド"系欲しいなあ」

エア「でも、今回はもう行動したから。あうう、もどかしい。ラウンドかけないと、補助魔法がかけきれないのよ

以前も話題にしましたが、彼女には回復役という重要な役割もあるので手が空いているとは限らない。

前衛はかなり充実している反面、エアに補助の魔法が集中しているのはやっぱり問題がありましたね。

「アルケミスト・ワークス」でも補助魔法の多いプリースト技能とコンジャラー技能の兼業はスピードに難ありとあります。


ソラは同士討ちを恐れて<ロングソード>を捨て、エネボルで地道に削ります。ムーテスは当たるもダメージ1ゾロ。

ジークは推定《マルチアクション》による武器と魔法の連続攻撃で削ります。メッシュは当たるけど防護点が抜けない。

バンシー「だめよ、パジャリガー……そんな拳では、わたしの心は打ち抜けなくてよ

メッシュ「く、屈辱!」

バンシーの防護点は10と高くはないものの、威力1+10点だと出目5以下で10点だから抜けませんね。


バンシーは《金切り声》を使いますが出目が悪く目標値は17となり、全員成功しました。

次の主動作を使ってジークとメッシュとパジャリガーに"ブレード・ネット"を拡大してかけます。

GM「これがかかって行動したら痛いですよー。まあ、「金切り声」で、無理矢理動かすつもりなんですけどね」

ソラ「ひいい……」

エア「なに、その危ないコンボ!」

"ブレード・ネット"は9レベルの真語魔法であり、そのラウンドに行動した者に威力0で魔法ダメージを与えます。

主動作、補助動作、移動等を一切行わなかった場合は無傷で済みますが、《金切り声》にかかると動いてしまいますね。


2ラウンド目

エアは前衛全員に"ウォーター・シェル"。7レベルのルーフェリア特殊神聖魔法であり、水の殻で魔法ダメージ−5点。

エア「ルーフェリア神官の真骨頂よ!」

ジーク「うわ、滅茶苦茶ありがたい」

エア「ただし、呪い属性のダメージは止まらないから気をつけてね」

ジークは"ブレード・ネット"の痛みに耐えながら《マルチアクション》を使い、同様にメッシュは《投げ攻撃》するも失敗。


パジャリガーも当ててはいるのですがなかなか大ダメージには繋がりませんね。

バンシー「ああ……素敵、パジャリガーが二人もいるわ……

次の《金切り声》にメッシュが失敗してコンボ発動。ジークも失敗しますが〔運命変転〕で強引に抵抗します。


2回目の主動作でお手製のパジャリガー人形に"カース・ドール"をかけてソラを攻撃です。

GM「うん、達成値23」

ソラ「ふざけんな。6ゾロで同値って、なに!」←カンタマ込みで精神抵抗11

当然そんなものに抵抗できるはずもなく21点の魔法ダメージを食らってHPが半減しました。

"カース・ドール"は9レベルの操霊魔法で、人形を媒介にして対象に威力30で魔法ダメージを与えるというものです。

この時人形を突き刺す必要があるため、一度使った人形は壊れてしまいます。それにパジャリガー人形を使うとはヤンデレですね。


3ラウンド目

錯乱したメッシュが"ブレード・ネット"に刻まれながらパジャリガーに攻撃します。

パジャリガー「貴様!やはりパジャリガーの名が欲しいのかぁあ!」

メッシュ「何だかちょっとムカッとするんですよ、貴方は!」

エアは回復に従事しますが、既にMP残り10点という有様。自慢の継戦能力も追いつかない消耗ですね。

カンタマは1点消費なので6倍にしても6点ですが、"ウォーター・シェル"が8点と重かったります。

《MP軽減》があっても7点消費で、それを4人にかければ28点。これだけで34点とか使ってますね。

それに4点消費"のキュア・ハート"を3倍がけで使うと12点消費の計46点消費。丁度残りMPが10点になる。


ジークは《マルチアクション》でひたすら武器&"カオスショット"の攻撃を続けます。

武器で18点なので適用ダメージは8点。魔法は抵抗されるも半分通って7点、計15点を通しています。

GM「……じつは、結構痛い」

ジーク「ふふ、《マルチアクション》幸せだー

ところが次の《金切り声》でジーク以外全員抵抗失敗。次のラウンドは回復もできない大惨事です。


更に次の主動作で全員に"スティール・マインド"。7レベルの真語魔法で適用ダメージ分MPを奪い取る

ジーク「……ぐあ。16点吸われた」

メッシュ「私もMPが0になりましたよ

ムーテス「気が合うっすね。僕も0になった

エア「……ほとんど、MP使い果たしていてよかった。あとは、魔晶石の勝負ね」

ソラ「うわぁあん、"スティール・マインド"クリティカルしたー」

ただし回復する上限は対象の最大MPの1/10です。これでぞんざいズのMPは殆ど吸われました。


4ラウンド目

今回攻撃できるのはジークのみ。《マルチアクション》で削る一方、同士討ちが起きています。

エア「死ね、妹!」←ヘビークロスボウ発射

ソラ「お姉ちゃん、消えてー!」←飛び蹴り

メッシュ「パジャリガーはこの世に一人で十分よー!」←投げて踏んだ

ムーテス「あ、僕はジークを殴るってるっす。もう庇うの飽きたんだよー!

ジーク「何だって!みんなひどい本音が透けてるぞ!」←避けた

あとパジャリガーはメッシュを切りつけて12点の適用ダメージ。凄惨な現場です、ホーリィがいなくて良かった。


GM「じゃあ、皆さんのラウンドが終わったので、もう一回「金切り声」」

一同「もうやめろー!

これでムーテスとパジャリガーは失敗。メッシュは<月光の指輪>を割って抵抗しました。

次の主動作では"スティール・マインド"で奪ったMPを使い、"カース・ドール"でジークとムーテスを攻撃しました。


5ラウンド目

エアは<魔晶石>を使って仲間を治し、戦線を立て直そうとします。トカゲとヒーロー野郎は殴り合ってましたが。

パジャリガー「ぐうう……天命よ、俺様はパジャリガーに相応しくないと言うのか」←残りHP3点

ジーク「おいパジャリガー!お前、この戦いを生き抜いたら、アイシャを紹介してやるぞ!」

パジャリガー「えっ、心の花嫁を?(きゅんきゅん)」

ただし紹介するだけですけどね。上手く行くかは彼次第、多分ダメでしょうけどね。


メッシュ「やっとまともに組み合えますよ、バンシー」

この《投げ攻撃》がついに決まってバンシーは転倒し、そこにジークが切りかかるという主従コンボが発動

これが見事にクリティカルしてバンシー撃沈。実はバンシーも人形を使い切っていたので丁度いい幕引きでした。


倒されたバンシーは綺麗な結晶となって砕けて消滅します。

バンシー「ああ……貴方が本当のパジャリガーだったのね……
      私を倒した者が、本当のパジャリガーだと信じていたの……」

ジーク「よし、じゃあ、俺はお前の心の英雄として、パジャリガーを継ごう!

パジャリガー「なに!」

ジーク「……あ。もしかして、鬱陶しいこと、言ったかも」←言いました

この一言でパジャリガーの跡目争いにジークまで巻き込まれてしまいました。


メッシュ「はははは!そうです!我がジーク様こそ、本当の英雄!パジャリガーの志を継ぐものなのですよ!」

ソラ「そして、ここぞとばかりに押し付けてるの」

パジャリガー「くぅ……!し、しかし……。しかし、俺様には今は、それに反論するだけの力がもうない……
        今だけは認めてやる、お前がパジャリガーの名を継ぐものだと

心底要りませんが、これでパジャリガー・セカンドはジークをライバル視するようになりました。

勇者とは資質であり、英雄とは結果である。英雄を継ごうとするのなら結果を出さなければいけませんから。


★英雄たちの行末は

戦い終わったぞんざいズはパジャリガーが掘り出そうとしていたものを埋め直します。

本当はそこに色んなアンデッドがいたらしいのですが、今はその余力もないので仕方ありません。


そして朝になればパジャリガーとはお別れです。

パジャリガー「俺は貴様たちから真のパジャリガーの名を奪うために、いつか再び相見えよう!
        その日までその名を大切に、恥じぬ働きをするのだぞ!」

そう言うと彼はその場で野営の準備をします。ホームレスチックですが宿屋には泊まらないタイプらしい。

そういえば彼はパーティを組んではいないんですね。スカウト技能はあるけど回復手段を持たないでソロは危険ですよ。


パジャリガー「あ、まて!最後の歌の行き先に、パジャリガーの剣が眠っているという
        今はまだ、我々では挑戦すること叶わない厳しい試練のようだが、
        いつかは誉れある<パジャリガー・スラッシュ>を賭けて、正々堂々と勝負をしようではないか!」

ジーク「え?あ、うん。気が向いたらな

メッシュ「我々はこう見えて忙しいんですよ、神殿付きですし」

相手は暑苦しいまでに熱血漢なのに、この温度差。「お前と違って忙しいんだよ」と言いたげです(笑)


では最後に第五節の解説をしましょうか。

夕日を背負って駆けてくパジャリガー
いつかはきっと剣と交わる
だって そこには 戦いがあるから
多分 きっと いつか そのうち

「夕日を背負って駆けてくパジャリガー」とは「没家1」にある像のことです。

「いつかはきっと剣と交わる」とは「没家2」にある像のことです。

この2つの線は村のマップ上では交わりませんが、遥か北西の彼方で交わるようになっているようです。

それは《青嵐領》すら飛び出てしまう程の距離があり、それ相応の難易度の魔剣の迷宮があると思われます。


ホーリィに伝える真相についてはできるだけソフトかつマイルドにするつもりです。

ソラ「確かに、憧れの英雄が捨てた女が、バンシーになってたなんて、思春期前の女の子になかなか言えないの」

ムーテス「じゃあ、こう言えばいいよ。「彼は実に英雄らしい男だったよ。そしてミステリアスだった」

ソラ「……言葉って使いようなのね」

そこでぞんざいズはメッシュ主演のパジャリガー・ショーを開いてホーリィに説明することにしました。


メッシュ「むむ。将来の政治的コネクションを築くためにも、
      パジャリガー・ショーの一つや二つ見事成功させてみせましょう!
      また嫁候補が増えたわけですし

ソラ「え?ホーリィちゃん?お兄さん変態ー!

ジーク「え?そっち?俺としては、ミスティン姫に弟タイプって嫌いですかって聞きたいんだけど」

エア「そういう売り込み方をするんじゃありませんー!」

メッシュ「……しまった。あの路上生活者をお招きして、ショーを手伝わせればよかった」

タイトルは「パジャリガーVSメカ・パジャリガー」って感じですか。あるいは偽パジャリガー

それに衣装を合わせればよくある双子の替え玉トリックを使えるし、早変わりもできそうですね。


こうしてぞんざいズは皇女様候補のやる気を取り戻させるという当初の依頼をこなしたのでした。

知って良かった真実、知らなければ良かった真実、暑苦しいライバルに<神殺しの剣>の手がかりと伏線も満載。

これらが後にアイヤールを揺るがす極めて大きな事件に繋がっていくのですが、それはまだずっと先のこと。





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