「新米女神の勇者たち(3)」著:秋田みやび/グループSNE 出版社:富士見書房
★恒例成長申告
今回の能力値の成長は以下の通り。
ジーク:生命力17→18
ソラ:生命力18→19
エア:精神力24→25
ムーテス:筋力21→22
これでジークは生命力ボーナスがブレイク。ムーテスは<怪力の腕輪>をつけて筋力24にしてやはりブレイクです。
技能の成長ではソラがソーサラー4→5にし、戦闘特技《MP軽減/ソーサラー》を習得。
これで以降は真語魔法の消費MPが−1点されます。ますます魔法を使いやすくなりましたね。
あとメッシュはスカウト2→3とグラップラー3→4と成長。宣言がありませんが多分このタイミングです
ムーテスはファイター4→5と成長し、戦闘特技《テイルスイング》を習得。
これは<尻尾>の攻撃を同じ乱戦エリアの任意5体の敵に与えるもので、これで彼も範囲攻撃が可能になりました。
<尻尾>の生えていない種族でも練技"ドラゴンテイル"によって<尻尾>を生やせば使用可能な戦闘特技ですね。
さて今回は今までにない程に各人が色々な買い物をしました。いよいよ個人専用装備や特殊装備まで登場です。
これらは今まで貯めてきた名誉点を消費することで入手できる特別なアイテムであり、様々な付加効果が存在します。
まず今まで彼らが貯めてきた名誉点は合計名誉点と所持名誉点という数値に加算されてきました。
前者はPCの名誉そのものを現す指標であり、特別な場合を除いて加算されていく一方の数値となります。
これが現在彼らには130点あり、「噂の人物」として狭いコミュニティの外にまで名前が知られるようになりました。
後者は消費することで名誉アイテムを入手することが可能になり、個人専用装備や特殊装備はこの名誉アイテムの一種です。
装備以外にも住宅、住宅設備、称号、地位(騎士位や爵位)等、色々な名誉アイテムが「ルールブックU」に掲載されています。
その詳細はルールブックに譲るとしまして、今回彼らが入手した名誉アイテムを御紹介しましょう。
まずエアは<女王のコルセット(専用)>を入手しました。これは<女王のコルセット>を個人専用装備にしたものです。
<女王のコルセット>自体は絡みや締め攻撃のペナルティを無効化するアイテムであり、1万ガメルもします。
そしてこの値段に加えて所持名誉点50点を消費して専用化、エアという個人用に調整されたのです。
これによりこの装備をしている限りMP+2点というボーナスを得ます。ただし失うと合計名誉点の減少すら招きますが。
個人専用装備は武器、鎧、盾、楽器、装飾品等、様々な装備品に適用でき、種類によってボーナスの種類も違います。
続けてソラは大量の特殊装備をお金と名誉点で購入。これらはそれぞれ通常のアイテムを上回る性能を発揮します。
<使いやすい調理道具セット>は5点消費、調理系の行為判定で+1のボーナスが入ります。
<迅速の火縄壷>は20点消費、通常1分かかるところを30秒で着火してしまう優れものです。
<頑丈なランタン>は10点消費、3mの高さから石畳に落としても壊れない。某"法螺吹き魔術師"も羨みます。
<よく切れるナイフ>は5点消費、いざという時は威力1のBランクソードとして使用可能です。
<まっ平らの手鏡>は20点消費、鏡を見ながらの戦闘におけるペナルティが−1となります。
<軽い羽根ペン>は10点消費、執筆速度が通常の10%増しになる。以上で合計70点も消費しました。
特に最後の一つは作家揃いのSNEメンバーには羨ましい品の様子。
ソラ「この<軽い羽根ペン>で<白紙の本>に冒険日記つけるの。執筆速度10%増し」
一同「いいなぁああ……(心底羨ましそうだ)」
<白紙の本>は20頁分のものです。少なく感じるけどこの世界では多分そこそこいいもの。
あと<メイド服>を購入したらしくイラストが早速変わっています。前の服もいいけどこっちも可愛い。
服といえばジークは自分用の<礼服>とメッシュ用の<執事服>を買いました。
メッシュ「ありがとうございます、ジーク様」
更に荷馬を買って精神抵抗力+1にする<信念のリング>も購入。5000ガメルの品です。
あと防護点+1にする<ブラックベルト>も購入。3000ガメルの品で、ソラとムーテスも購入したようです。
鎧系ではムーテスが<ブリガンディン>と<タワーシールド>を購入して防護点12点にアップ!
ジーク「……く。俺、防御力6になったって喜んでたのに……ムーテス12かよ。硬ぇ」
メッシュ「おやおや、何をおっしゃってますか、ジーク様。
攻撃を受ける、などという作業は、下郎に任せておけばよいのですよ」
エア「防御力0が何か言ってる」
メッシュ「くくく……それも、遥か昔のことですよ」
そう、メッシュは750ガメル払って防護点2点の<アラミドコート>を購入したのです。
もう防護点0のペラペラボディだなんて言わせない、0点から2点へと成長したのです!
メッシュ「いかがですか、この飛躍的な成長は……!!……成長……成長……(徐々にトーンダウン)」
ジーク「うん、すごいぞ、メッシュ(肩ポン)」
ムーテス「そうっすね。僕の防御点は精々二割り増しっすけど、
0から2なんて、百倍、いや千倍に匹敵する成長っすよ。何しろ無限大倍」
メッシュ「……すいません。いいです、何だか哀しくなってきました」
まぁ多少は生存率が上がったようで良かったですね。これで<ブラックベルト>も買えば防護点3点も夢じゃない。
それと《聞き耳判定》+2の<ウサギのピアス>も購入。実は4000ガメルと鎧より高価です。
更に壊すと瞬間的に精神抵抗力+2される<月光の指輪>も購入。1000ガメルなので腕輪と同じ価格。
そして主人に居場所を報せる<誓いのアンクレット>も購入。3000ガメルの品でやはり鎧より高価。
これは血を垂らした者を主人と認識し、主人はこのアンクレットの位置を常に知る事ができるようになるアイテムです。
これにジークの血を与えてメッシュが装備すれば主従は逸れる事は無い。魔動機文明時代にもルンフォに装備させてたとか。
ジーク「ま、遊びに行く時には、家に忘れてくればいいしな」
メッシュ「ひどい!」
ソラ「メッシュさんが、嬉しそうに「買ってきましたよージーク様ー」といって見せびらかした後
「ふーん、あっそう」って流してるお兄さんの姿が目に浮かぶの」
ジーク「きっとそんな感じ」
メッシュ「しょんぼり」
ジーク「だって、離れることなんて、ないだろ?俺たち」
メッシュ「ジーク様!もちろんです、一生お供いたします!(感涙)」
ジーク「……ということにしておく」
エア「地獄に落としたいんだか、フォローしたいんだとか」
実は高度なツンデレだったりするのかもしれない。
あと薬品系ではエアが<アンチドーテポーション>と<キュアストーンポーション>を購入しました。
前者は達成値15以下の毒を消滅させ、後者は達成値15以下の石化の効果を解除します。
共にお値段は500ガメルと結構しますがパーティの安全に配慮するエアらしい選択です。
ちなみに解毒の神聖魔法"キュア・ポイズン"は3レベルなのでエアにも使えますが、達成値16はなかなか出ない。
石化解除の神聖魔法"キュア・ストーン"に至っては7レベルであり、エアにはまだ使えないので心強いですね。
★陰謀みたいな話
前回の話で朕こと"年輪国家"アイヤールのライフォス神官イアンを保護した一行は、彼から詳しい話を聞きだしました。
イアン「だって、ルーフェリアなんて新興宗教が国教になったら、やだもん」
現在アイヤールには国教というものが定められておらず、ライフォスがそれに近い地位まで来ていたようです。
ところがそんな時にルーフェリア信仰をアイヤールに持ち込み、広く布教活動を行う者が現れたのです。
それによってライフォス信仰が追いやられ、国教の地位を奪われてしまうのではないかという危惧を彼は抱いたのです。
元々ルーフェリアは自分の故郷を守護する女神でした。
GM「だったら、その分体をアイヤールに連れて行って、ひたすら自国の守護を頼んだりしたら……」
ムーテス「女神ルーフェリアはアイヤールの守護神になると?」
信者の祈りの力が神様の力になるのなら、より強い祈りを与えられることで神格が変化する。
アイヤールの人口はルーフェリアの国とは比べものにならない程多いので、将来的にそうなる可能性は高い。
勿論それほどまでに異国の地でルーフェリア信仰が広まればの話なので絶対にそうなるとは限りませんが。
実際ルーフェリアには300年間国を守り続けてきた実績がありますから、布教にはもってこいです。
ジーク「わかりやすい理論かな。神様も、おっさんよりもお姉ちゃんがいいと」
エア「こ、これは国家転覆の陰謀です!」
これには神官という名の変態ことエアが強い反発を見せます。彼女はアイヤールでのルーフェリア信仰自体は賛成です。
しかし本人が望んでもいないのに外国に連れ出す事が許せないのです。ドレイクも関わっているようですしね。
ムーテス「それには、何か陰謀のにおいはする」
ジーク「俺としては、目の前で誘拐されたのを見てるので、むかついてる。何とか取り戻したい」
メッシュ「まったくです、早速取り戻しに行きましょう、ジーク様!攫われたお姫様を取り戻すのは勇者の仕事ですぞ」
その為にも一行はイアンを護衛しながらルーフェリアの国へと帰還しました。
国に帰ってみると街外れに飛行船の離発着場が建設中になっており、街はなにやら浮き足立っていました。
ムーテス「……僕は知り合い全部に、世界一周の旅に出ていると、言ってあるんで」
以前ムーテスが売り払った魔動核はこの国のアメリア・スカイフィッシュという女性商人が買い取った事になっています。
彼女が出資した飛行船がもうすぐ完成し、外国との窓口になりそうな訳ですね。ムーテスには非常に気まずい状態ですが。
ちなみに「ルールブックU」には「ムーテス?ああ、彼はいい人だったよ。実にね」というコメントが載っています。
ソラ「終わった男扱いなの」
メッシュ「まあ、確かに色々終わってますが。人生とか」
ムーテス「終わってないっすよ!僕たちの冒険はまだまだこれからだ!」
GM「……完全に終わってるじゃないですか、それ」
今のところはテラスティア大陸北部にあるザルツ地方のロシレッタ王国との間に定期便ができる予定です。
まぁそれは将来のことです。神殿に着いた一行はイアンや追っ手達を引き渡し、大司教から呼び出しを受けます。
GM「普通の神官さんが皆さんを、案内してくれます。大司教の私室っぽいです」
エア「訂正してください。何故、普通の神官さんが、なんですか。わたしだって普通の神官です」
ヘビークロスボウを担いだ変態気質のエルフを普通にしてしまうと色々マズイことになりそうですがね(笑)
ジーク「エアはもう立派な冒険者なんだ。自覚しろ」
エア「言っとくけど、わたしは冒険者じゃないんだからね、ジーク」
メッシュ「はっはっは、これだからツンデレな人は困りますなあ。あれでしょう
「ジークの従者なんんかじゃないんだからねっ」とかいうヤツですね」
エア「そんな言い方、もう流行らないんだからねっ。というか、本当に従者じゃないし」
ちなみにジークとしては怪我を治してくれる仲間として彼女を必要としているらしい。
それでご機嫌を取ろうとしているのだから、またなんとも微妙なフラグが立ったような、立っていないような。
そして私室の扉を開けるとそこには噂のムキムキエルフがいました。
バトエルデン「やあ、よく来てくれた。色々と世話になっている」
リア「冒険者くんたち、来たの?」
ソラ「わーい、リアちゃん。久しぶりなの」
ムーテス「再会して早速だけど、サインくれない?売りさばくから」
エア「ああもう、この人たちは!一応神様なのよ、もっと敬いなさい!」
ソラ&ムーテス&リア(エアに手を合わせる)
エア「ちがう、わたしじゃない!」
とうとう神様にも突っ込みを入れるようになりましたね。最早突っ込まないと生きていけない身体になりつつある。
ソラはすっかりリアとも仲良くなったらしく、<ギャンブル・ポーション>をあげつつ土産話で盛り上がったりしています。
リア「ありがと。わー、外国一回いってみたいんですよね、わたし」
彼女は人間だった頃の幼心の部分ですから、やはり好奇心は強い。まぁ妹の方が外国に行ってますけどね。
エア「ああ、もう!大司教様、さっさとお話を進めてください!」
バトエルデン「ああ、すまん。つい見物してしまった。娯楽がないもので」
エア「娯楽じゃない!」
そして大司教にも突っ込む。その内"コール・ゴッド"で降りてきたルーフェリア本体にも突っ込みをいれそうです。
さて、それでは大司教からの本題です。彼が一行に出す依頼はアイヤールに潜入するというものでした。
そして詳しい所在が不明のルーを見つけ出し、可能ならば奪回する。結局イアンもあまり詳しい事は知らなかったらしい。
ただし国家間の衝突は避けねばならないので大きな支援はできない。ルーフェリアの国力自体はあまり強くないから。
エア「でも、大司教からの指示はどうやって待てばいいんですか?」
バトエルデン「ああ、これを使うから」←ヒョイっとグラランを摘み上げる
ジーク「よー、イスト。相変わらず扱き使われてるな」
イスト「よっ!一緒に頑張ろうな、自由のために!」
まだ"クエスト"は続いているらしい。フットワークの軽いグラランは間者に適任ですね。
バトエルデン「潜入方法は、一応二通り用意した。そのくらいのことは、協力できる」
メッシュ「おお、さすが腐ってもVIP!」
エア「腐ってません!大司教相手になんてことを!」
バトエルデン「まあ、枯れかけてはいるが、まだ腐ってないな。
ぶっちゃけ、遠回りだが安全な路。超早いが……まあ、そのあとの責任が取れない路」
ソラ「はいはいはい!飛空船乗りたい!」
バトエルデン「うむ。そのルートもある。超早いほうだ」
アメリアの飛行船で山間部を抜け、アイヤールの外延部から国内に侵入するというルートですね。
もう1つはカイン・ガラの更に先にある"集いの国"リオスから河を遡り、商人に扮して侵入するルートです。
ただしこのルートはかなり日数がかかります。カイン・ガラまで1週間で、そこから更に長旅で合計半月程度の予定。
ちなみにリオスはジークの故郷であり、2つ年下の弟が家を守っています。あと従者である女性型ルーンフォーク。
ジーク「大きい箱と小さい箱をそれぞれプレゼントされて、大きい方を選んだらメッシュだったんだよなあ」
ソラ「うわ、見にいきたーい!」
エア「ソラ、飛空船乗るんじゃなかったの?」
ソラ「う。そうだった。どっちにしよう」
どちらも気になりますが、ムーテスは飛行船には反対のようです。顔を出し難いでしょうから仕方ないか。
ただしソラは飛行船よりもジークの弟に興味を覚えたらしく、なかなか意見が噛みあいませんね。
ソラ「……あ。一人味方につけよう。リアちゃんリアちゃん(手招き)」
リア「?なぁに?」
ソラ「リオスのお土産、何がいい?」
エア「こらー!」
リア「えっとね、えっとね。リオスは海が近いから、真珠が名産って聞くの」
既に「リオスの楽しい歩き方」を出してきて嬉しそうにおねだり。可愛いですね。
ソラ「だって、お姉ちゃん」
エア「う、うう。そんなに無邪気に言われると……財布を確かめちゃうじゃないのっ」
バトエルデン「気安く、こいつのわがままを聞かなくていいから。
自分の立場考えろ、今度うかつなこと言ったらドラゴンの前で"コール・ゴッド"するぞ」
エア「やめてー。やめてくださいー。小神はドラゴンには勝てない可能性がッ!」
リア「抵抗するもん!」←あんたがかい
この世界にもフォーセリア同様に様々な種類の竜がいまして、中には凄まじく強力なものもいます。
レッサードラゴンで13レベル、グレータードラゴンで18レベル、エルダードラゴンで25レベルとかありますね。
グレーターはフォーセリアにはいませんでしたね。レッサーとエルダーの中間、中年の竜って感じですか。
そしてその上のエンシェントドラゴンはそれ以上ですかね。ルールが違うとはいえSWとは物凄い隔たりを感じますね。
では小神の実力はどの程度かというと、データなんてものは勿論ありません。
ただ小神の"コール・ゴッド"ではレベル15以下のキャラクターは抵抗不能で消滅させられます。
大雑把に6ゾロと1ゾロの差分である10という数字を加算して25程度と考えると、確かにエルダー相手では微妙かも。
ちなみに大司教は昔それと同格(25レベル)の神族と戦った事があり、こいつも小神より強い可能性がありました。
ではどちらのルートを選ぶかというと、真面目な話あまり時間をかけたくないようです。
エア「こうしてる間にも、ルー様は「ロリっ子萌えー!」と崇められて
間違った信仰に歪められているかも知れないのに!」
ソラ「真っ先に歪めてるのは、お姉ちゃんの気がする」
本体のルーフェリアはちゃんと成人した女性ですよ。「SW2.0ツアー ルーフェリア」のカバー参照。
では何故リアは小さい姿をしているかというと、本人曰く「この方が街のみんなが優しくしてくれるから」だそうです。
この分だとルーも能力に目覚めれば一気に成長した姿になれたりするのかも。まるで魔法少女のようですね(笑)
結局彼らが選んだのは飛行船ルートです。これだと出発当日には現地に到着できる予定です。
あとイアンから湖のある領の情報等を聞いておきます。ただし彼はボンなのであまり世間に詳しくない。
バトエルデン「まあ、報酬に関しては、小国の神殿とはいえ蓄えはあるから期待してくれていい」
ジーク「俺今回ロハでやるつもりだったよ、素で」
エア「わたしは、ルーフェリア様のために働けるだけで満足です。それこそが神官!」
バトエルデン「だが、信仰だけじゃ食っていけんぞ」
リア「ねー」
エア「そんな生臭い話は聞きたくないんです!」
ソラ「でも、正しいの」
こうして宗教団体は営利団体にもなっていくと。神様と教団のトップに言われると世知辛いですね。
ジーク「そういえば、リアにとって、ルーってどんな存在なんだ?姉妹?」
正に妹のようなものらしい。外に対して封じ込められてきた好奇心が、外からの信仰で零れてきたものです。
そのため将来的な伸び代はかなりあると思われます。何しろ国の内と外では外の方が多くの人がいるのだから。
そうなると場合によってはルーフェリアの本体まで向こうに吸収されるかもしれないという。時間はかかるでしょうがね。
それでは出発ですが、その前に姉妹はお父さんに会っていきます。神殿のお仕事でまた家を空けますから。
エア「パパ、パパ。わたしちょっと神殿で重要なお仕事もらって、
しばらく国を出て行くことになったから。うちのことは頼んだわよ」
ソラ「ただいま。そして、いってきます」
カーム「……いかんといてくれ、エア。うちの中が無茶苦茶になる……」
ムーテス「想像以上にダメ親父っすよ!」
ソラは母親似かと思いましたが、こういう所は父親似でもあると。むしろエアの委員長気質は何処から来たのか。
そしてエアは冒険者の世界に入ってしまったソラを見張る目的もあるようです。
エア「あの子がちゃんと生活できるようになるまで」
カーム「……永遠に無理だ……(べそべそ)」
ソラ「さすが実の父親、わかってる!」
エア「そこで喜ばない!(びし)」
ああ、でもこの苦労人気質な所はエアに似ているのかも。ただエアほどエキセントリックではないだけで。
ここで面白そうなのでメッシュが乱入。
メッシュ「はっはっはっは。残念ながら、もうエアは我々のものです、お返しすることは出来ませんな!」
カーム「……"フォース"」
メッシュ「……粉微塵です(撃沈)」
後に9レベル程度と判明するので魔力は12程度ですかね。15点ぐらいは抜けてきますかね。
ジーク「まあまあ、親父さん。エアのことは俺が守るから」
カーム「ほんとに?」
ジーク「ほんとほんと」
ソラ「……あたしは?」
ジーク「ああ、ソラも守る守る」
ソラ「うわ、超軽!ていうか、すごくついでっぽい」
メッシュ「そして、ジーク様は私がお守りします!」
ムーテス「全然関係ないし」
メッシュ「間接的に二人を守ると言っているのですよ、情緒のわからないトカゲですね」
でも実際体を張って《かばう》のはムーテスですけどね。むしろ後衛の姉妹の方が安全というか。
ソラ「大丈夫、お姉ちゃんがいなかったら、お父さんもそれなりにやってくと思うの」
エア「そ、そうかな」
ジーク「試しに一週間ほど家出してみたらどうだ?」
エア「だめ。三日もしたら自分のほうが淋しくなって戻ってきちゃうの。
「あーもう、わたしがいないとみんなダメなんだからっ」」
何だかんだで仲良し一家なのかもしれませんね。あと祖父母とか親戚とか沢山いそうですね、エルフなだけに。
お爺ちゃんのお爺ちゃんのそのまたお爺ちゃん、とか存命かもしれない。この世界のエルフの繁殖力にもよりますが。
★ルーフェリア〜アイヤール・空の旅
飛行船ルートを選んだ一行は新しく作られた発着場に向かい、アメリアに出迎えられます。
ムーテス「やあ、アメリアさん」
アメリア「おや、いい人。久しぶりだね」
ジーク「いいなあムーテス。有名人と知り合いかー」
ムーテス「いや、僕も有名人だったんだよ、前は!」
「ルールブックU」によれば彼女は実はナイトメアで、年齢は45歳。ソラよりちょっと年上でしょうか。
詳細な相場は不明ですが莫大な値がつく魔動核を購入したところを見るに、かなりの資産を有する商人の筈です。
ちなみに彼女の飛行船の場合、ロシレッタまで片道3日の速度です。運賃は1人1000ガメルです。
アメリア「やあやあ。この度は新型飛空船の試験飛行に名乗り出てくれたって?ありがとー」
ジーク「……は?」
メッシュ「……試験飛行?」
アメリア「うん、だって作ったばっかりだし。まだ、ヒト運んだことないんだっ」
今のルーフェリアには彼女の船しか飛行船がなさそうですし、こうならざるを得なかったのでしょう。
ただムーテスの経験上作ったばかりの飛行船はかなり危険なものらしく、安全な実用には試行錯誤を要する模様です。
それでも今更変更はきかないのでアメリアに急かされるままに飛行船に乗り込みました。
アメリア「では、しゅっぱーつ!(上機嫌)」
ムーテス「……ちょっと待った、僕の船と明らかに違う、変な仕様とかスイッチとかないっすか!」
すると船内には『緊急脱出用』や『証拠隠滅用』と書かれた、ドクロマークのスイッチがありました。
ムーテス「このスイッチの意図を教えてくれないか、アメリア!」
アメリア「細かいこと気にすんなよ、大将」
ムーテス「緊急脱出した先が、さらに緊急だったらどうするんだー!」
アメリア「あはは、うまいこと言うねー」
そうこうする内に船は離陸。しかしアメリアは随分快活な女性ですね、普段なら感じのいい人です。
でもこの状況ではその明るさがかえって不安を駆り立てます。一行の脳裏には「墜落」の二文字が過ぎったでしょう。
この時こっそりリアが見送りに来て手を振っていました。
リア「いってらっしゃい、いい旅を」
ソラ「……逝ってらっしゃい、に聞こえるの」
エア「見えなくなるまで、ハンカチ噛みしめて、千切れんばかりに手を振り返しています」
いざ離陸すれば飛行船の速度は流石のもので、あっという間にカナリスの街並みは遠ざかりました。
そして眼下に山や森ばかりになり、徒歩ではあり得ない速度でアイヤールに向かって飛んでいきます。
ちなみにスカイシップという名前の14レベル魔法生物として小型の飛行船のデータが存在しています。
これによれば飛行船の移動速度は50、時速50km程度の速度になります。"フライト"ぐらいですね。
余談ですがこのデータなら15レベル魔動機術の"スカイシップ"によって持続時間1日で作成可能です。
ただし<マギスフィア(大)>を5つも使用します。小型とはいえ本当に高度な魔法でなければ利用できないのです。
SWの話になりますが、「SWサポート2」によれば"フライト"の1時間は徒歩の1日に匹敵する距離を稼げるらしい。
と言いますのも健康な冒険者の徒歩による旅は、時速4〜5kmで適宜休憩を挟みながら10〜12時間になるためです。
これは疲れを残さずに移動した場合であり、旅慣れない人の場合は半分以下になってしまうと考えていいようです。
つまり"フライト"の1時間で一般人二日分の距離を稼げてしまうのです。山越え等ならもっとですね。
そう考えると全くの一般人でもお金さえ払えば空の旅を満喫できる飛行船という存在の有難味が分かりますね。
ところがこれには相応のリスクも付き纏うものでして、一行は空の上で《危険感知判定》を迫られました。
これに成功した一行は船の高度がどんどん下がっている事に気付きます。……処女飛行で遠出なんで無茶しやがって……。
ジーク「アメリアさん、どうしたんだー!」
アメリア「ごめーん、うっかりと『緊急降下スイッチ』押しちゃったー
うっかり不時着するかも。あ、おかしいなあ舵が利かない。
これは『緊急着陸スイッチ』押すべきかな。それとも『緊急停止スイッチ』なのかな?」
ムーテス「緊急のスイッチが多すぎなんだよ、この船!」
ジーク「スピード優先の旅のはずだよな、こっち!」
メッシュ「いや、ジーク様、フルスピードでしたよ。旅の速度も落ちる速度も!」
これでムーテスに続いて2回目ですか。ここまで予想を裏切らない展開になるとは(笑)
以後SNEリプレイの飛行船は落ちるものとして知られるようになります。カプ○ンのヘリみたいなものです。
そして飛行船は山の中腹に衝突。凄まじい衝撃がきたので冒険者+筋力でそれに対抗しました。
この結果ソラは6ゾロ振って踏み止まり、メッシュとムーテスは何かに掴まって事無きを得ました。
ジークは転倒しましたが鎧でダメージはなし。ただ1人エアだけが結構なダメージを受けてしまいました。
ジーク「あ、ごめん、もしかしたらエアを下敷きにしたかも」
エア「金属鎧いたーい」
メッシュ「ジーク様をお助けしながら、エルフに"ヒーリング・バレット"を撃ちこんでおきます」
エア「……くっ、傷を直してくれたことには礼を言いますが、わたしは本来神官なんですからね」
メッシュ「いえいえ、ジーク様のクッションになってくださった、ささやかな礼ですよ」
エア「確かに、怪我が治りきっていないから、ささやかすぎる」
メッシュ「……どうせ、魔力点分の回復ですよ」
防護点6のジークが全部止められるぐらいですし、致命傷を負う程のものではなさそうですね。
やがて飛行船は山肌を滑り落ちて木々に衝突して停止。発火の心配もないようで命拾いしたようです。
ジーク「……ムーテス。飛空船の核を盗むなら今だぞ」
ムーテス「僕も今、それを思っていたところだよ」←コラ!
メッシュ「素晴らしい、お手伝いしますよ」
でもその前にアメリアは魔動核を確保し、一度ルーフェリアに戻って技師を呼んでくる事にしました。
壊れたとはいえ船体を放置する訳にはいかないので回収します。誰かさんと違って持ち直せる程度の損害らしいし。
ちなみにルーフェリアまでは魔動バイクで帰ります。飛行船があるぐらいですからバイクぐらいありますよ。
お値段は1万ガメルでライダーギルドで購入可能。MP1点消費で30分間走行可能です。
また4レベル魔動機術の"オートモビル"で<マギスフィア(大)>を変形させて作成する事もできます。
こちらの場合1時間しか動きませんが、その間MPを消費することなく走行してくれます。
その移動速度は50と結構なスピードが出ますが、地上を走るので行きよりは時間がかかるかな。
ただし彼女は名誉点60点分の特殊装備である魔動バイクGを持っています。移動速度は55と通常より少し速い。
アメリアと別れた一行はアイヤールを目指して自力での旅を始めます。幸いもうかなり近い所まで来ています。
まずソラが使い魔のフェイを飛ばして周囲を探索。すると森の中に粗末な人間の集落を発見しました。
ジーク「ここって、蛮族の領域なんだよなあ。何で、人族の集落があるんだろう。
レッサーオーガの集落とかの間違いじゃないよな」
蛮族の中には人族と見分けのつかない種類のものもいますからね。警戒するに越した事はありません。
ところがそこでまたも《危険感知判定》です。一行は3匹のボガードの接近に気付きました。
ただし以前戦ったボガードはその内1匹だけで、他2匹はボガードの上位種でした。
幸いその2匹共《魔物知識判定》には成功したので、普通のボガードと合わせて能力を確認しましょう。
まず普通のボガードですが、彼には以前戦った時には使用しなかった特殊能力があります。
これが《連続攻撃》というもので、一度攻撃が命中したら同じ相手にもう一度攻撃できるというものです。
これは上位種のボガードにも見られる特徴であり、相手が弱ると畳み掛けるというボガードらしい能力ですね。
上位種の片方は4レベルのボガードソーズマン、両手に剣を持ったボガード界のエリートです。
通常のボガードと同様に《連続攻撃》使用可能。それに加えて練技"キャッツアイ"も使用可能。
その上《2回攻撃&双撃》の特殊能力を持ち、相手に命中しなくても2回攻撃が可能です。
この時2回目の攻撃は1回目に狙った相手でもかまわないし、別の相手でも構いません。
対象を変更できない《追加攻撃》とは明確に違う能力であり、《双撃》はPCの戦闘特技としても習得可能です。
もう片方は5レベルのボガードトルーパー、剣と盾で武装した隊長格のボガードですね。
こちらは《連続攻撃》と練技"キャッツアイ"に加え、筋力ボーナス+2の"マッスルベアー"が使用可能。
あと《全力攻撃》も使用可能。PCの戦闘特技と同様に追加ダメージ+4の代わりに回避力−2となります。
しかもトルーパーは人間の子供を抱えており、ジーク達はこの子を助けようと戦闘を仕掛けました。
1ラウンド目
エアは前衛3人に初披露の"セイクリッド・シールド"。被ダメージが−3点になりました。
メッシュ「……皆さん、ここは一メートル下がりませんか?」
ジーク「やらしいな、メッシュ。相手に先に移動させるのか」
この時点で彼我の距離は20m、先攻こそ取ったものの通常移動では接近できません。
そこで1m下がれば距離は21mとなり、移動速度20のソーズマンでもギリギリ届きません。
そうしておいて次のラウンドの頭に悠々と接近して乱戦エリアを形成してやろうという作戦です。
ところがその行動を見たボガード達はこちらを舐めてかかりました。
ボガードA「ボス、あいつら、弱そうす」
ボガードB「先、帰ってていいっすよ」
一同「裏目に出た!」
もし子供を抱えたトルーパーが立ち去ってしまうと、このまま子供を見殺しにしてしまう可能性があります。
ボガードとソーズマンの2体だけでも4体分の足止めが可能であり、ジーク達の追撃をブロックできるからです。
2ラウンド目
逃がすまいと一行は攻撃に出ます。まずエアが前衛に"セイクリッド・ウェポン"で命中力+1の追加ダメージ+2。
ソラは"ブラント・ウェポン"で相手のダメージを下げ、ムーテスは覚えたばかりの《テイルスイング》で乱舞。
それとメッシュの攻撃でボガードとソーズマンが倒れれば、ジークがトルーパーに乱戦を仕掛けて足止めします。
トルーパーは子供を盾代わりにして粘りましたが、結局は倒されてしまいました。
GM「盾にされていた子供は、びゃーっと泣いてます」
ジーク「助け起こすよ。……そうか、子供って盾代わりになるんだ」
子供「びゃーっ!(逃げた)」
ジーク「あ、うそうそ。怪我はないか?うちはどこだ」
すると子供はさっき見つけた集落の方向を指差し、「あ、しまった」という顔をします。
というのも彼は理由があって集落の場所を部外者にバラす事ができないのです。
ジーク「アイヤールの犯行組織の人間とか、そんな感じなのか?」
子供「ううん、そうじゃないけど……あ、ボク、ジェイクです」
実は彼の集落は《陰影領》ゴラから逃げてきた逃亡奴隷の集落なのです。
貧しい集落なので親の手伝いをしようと森に採集に出たところでボガード達に捕まったのです。
《陰影領》ゴラとはアイヤールの西の端にある領であり、奴隷制が敷かれている事で有名です。
この奴隷とは主に死刑にする程でもない犯罪者や、身寄りのない人族やコボルドを対象とします。
彼らを養う余力のない他の領から預かったり、奴隷商人が個人的に調達して取り引きされているのです。
その事情から白い目で見られながらも必要悪としても見られていて、奴隷が社会復帰するケースも多くある。
ただし心無い主人に買われて逃亡する奴隷もいて、彼らが領の外で小さなコミュニティを形成する場合もある。
ジェイクの集落がまさにそれであり、ジーク達がアイヤールの人間でないと知ると安堵したのもそういう理由です。
エア「人様の国にけちをつけるのもなんだけど……微妙に、もやもやする」
いくら必要悪でも人買いに対する普通の感情はそうなりますよね。
そういった人道的理由から奴隷解放を訴える運動家なんかもいるらしく、キナ臭い領である事は確かです。
それから一行はジェイクを集落まで送り、そのまま集落でお世話になる事になりました。
人口はおよそ30人程度の小さなもので、村の責任者はジェロという若い男性です。
所持技能はフェンサーとシューターとセージらしい。レベルは特別高くはなく、そこそこです。
村の生計は山賊行為で成り立っていて、住人はジェロが襲撃した奴隷輸送車から解放されてついてきたらしい。
何と彼は小さいながらも<守りの剣>を所有しており、現在<剣のかけら>を狩りに出かけているらしい。
ジーク「スカウト持ってないのに、かけら持ちの蛮族を倒すってすごいよな」
ジェイク「いつも、ぼろぼろで帰ってくる。だから心配」
しかも自分では回復魔法が使えないし、薬の効率もよくない。せめて他に仲間がいればね。
ここでその窮状を見かねたジークは1つの提案をします。
ジーク「……あのさ。お前たち、この山を越えて、西にあるルーフェリアって国にいってみ?」
ジェイク「へ?西に国なんてあるの?」
エア「あります!水の豊かな美しい国です!」
それは奴隷達のルーフェリア移住計画。幸い現在拡大中なので働き手はいくらでも欲しい状況ですし。
飛行船を回収しに来たアメリアに事情を話して送ってもらえば十分可能です。<守りの剣>もありますしね。
ただアイヤール側にバレた時には国際問題にならないか心配ではあります。
メッシュ「私的には、ジーク様が火種となって戦争勃発は大いに歓迎するところですが」
ジーク「するなよ!」
メッシュ「英雄の資質ですよ。そこでうまく立ち回って、紛争を鎮めていただきたいのです」
ジーク「そんな面倒くさいことしたくないな」
メッシュ「がーん!」
あくまでも国として関与せず、勝手に紛れ込んでしまえば何とかなりそうですけどね。
どうせアイヤールはこの集落の位置すら掴めていないんだし。関係者が口を滑らせなければ出自も分からない。
ソラ「バトちゃんに、そのあたり、お願いしておけばいいかも」
エア「ソラ!バトちゃんって誰!」
ソラ「大司教バトエルデン。リアちゃんがそう呼んでた」
エア「妹といえど、なれなれしいにも程があります!がみがみ、久しぶりに正座させてお説教モード突入」
そして無言でイヤーラックスを耳に装備する妹でした。流石に怒られ慣れしていますね。
それからジェロに詳しい話をする事にして彼の帰りを待つ事にしました。
その間にMPを消費した姉妹は1つの毛布で眠ります。お説教したばかりなのに仲がいいことです。
★ジェロさんの秘密?
ジェロを待つ間に一行はジェイク君からジェロが所有する<守りの剣>を見せてもらいました。
GM「まあ、剣というよりも短剣なんですが」
メッシュ「おお、これが<守りの爪楊枝>!」
GM「どこまでランクダウンさせるんですか!」
そう言われるのも無理もないぐらいに小さな剣でしたが、これでも集落一つ守る程度には役に立ちます。
具体的な有効範囲は不明ですが、後の描写から民家数件程度の小規模なものと判明します。
それでも非常時に逃げ込めば強力な蛮族やアンデッドは入って来れないし、持ったまま移動する事もできますが。
ここでメッシュはセージ技能による《見識判定》を行い、柄に刻まれている意匠を調べました。
それが何とアイヤール皇室の近衛兵のものです。皇族を護衛するエリートの証ですね。
ただしその紋章には斜めに傷が刻まれています。ロードス等で御馴染みの不名誉印というものです。
この印を刻んだ者は特権階級としての権利を失う事になります。某自由騎士等がそうでしたね。
通常は恥ずべき行いをした者が刻まれるものですが、何故ジェロがこんなものを持っているのか?
それも踏まえて話を聞こうと待ち続けたのですが、夕方になっても彼は帰ってきませんでした。
事前に夕方には帰ると言い残していたのに、集落の人達も心配になって村の入り口を気にしています。
ム−テス「まあ、帰ってこないならしかたないよ。じゃあ、次のリーダーを決めようか」
一同(爆笑)
ジーク「早ぇ!」
メッシュ「さすがムーテスは合理的ですな。っていうか、淡白すぎる」
<剣のかけら>持ちの強力なモンスターが相手だからその可能性は捨てきれないけど、決め付けるのはまだ早い(笑)
ジェイク「ジェロさん、帰ってこないの?」
ジーク「うん、ジェロさんはもう帰ってこないんだ」
ジェイク「えええっ!」
メッシュ「さすが超リアリストジーク様です、子供にも容赦がない!」
もちろん本気で諦めたわけではありません。ちゃんと探しに行こうとする点はやはりいい人達なんですが。
ソラ「……そして、あたしたちだけ帰って来て、爽やかに「うん、帰ってこれなかったよ」って報告するのね」
エア「なんて酷いことを」
ムーテス「そうだよ。亡骸は放っておかずに、ちゃんと持って返ってこないと」
エア「こらぁ!」
探しに行くのは彼が向かったという遺跡です。魔動機文明時代の浄水施設らしく、泉があるそうです。
そこには今もなお綺麗な水が湧いていて、蛮族や幻獣が水を飲みにくるらしい。そこで標的を待ち伏せするつもりです。
ただしその時の彼は浮かない顔をしていたといいます。
ジーク「まあ、先手とれないのに蛮族退治って、心浮き立つものじゃないのはわかる」
メッシュ「ふふ、ジーク様、私の必要性がご理解いただけましたか(にやり)」
ジーク「少々」
メッシュ「……それ、せめて多少レベルになりませんか?」
懇願してもかなり控え目ですね。でもその内先手を取る事が重大な仕事だという認識が定着してきますよ。
メッシュ「とりあえず、場所を聞いて、出かけましょうか。アイヤール観光旅行添乗員ゲットのために」
ジーク「え、ルーフェリア移民推進委員会のためじゃなかったっけか?」
ムーテス「すでに行動の焦点がぼやけてないっすか?」
そのどちらの為にもジェロと<剣のかけら>が必要です。特に彼の経歴はルー救出の為にも利用できるかもしれないし。
★標的は三択
ジェロを探して遺跡に向かった一行は清浄な雰囲気の泉に辿り着きます。ルーフェリア本国でも珍しい程に美しい水場です。
ジーク「こんなところに俺たちが入ってもいいのかな」
メッシュ「それは、汚れきった我々が、という意味ですか?」
ムーテス「大丈夫、まだいける。僕はまだ大丈夫」
ソラ「なんか、自分に言い聞かせてるの」
ここからは《足跡追跡判定》で彼の動向を探ります。どうやら泉の近くをうろついていた様子です。
そして足跡は一本の木の根元で消えます。
エア「あ、そういえば、シューター技能持ちっぽかった!狙ってくるかも!」
事前に気付いたので不意打ちは避けられました。彼は木の上に登って標的を狙い撃ちにしようとしていました。
先手を取れない以上はせめて地の利を得ようとしていたのでしょうか。運が良ければ不意打ちにもなりますしね。
ここでジェロが6ゾロでムーテスに矢を射ましたが、ムーテスも6ゾロを振って華麗に回避します。
ムーテス「これが超人同士の戦いってものだよ」
ソラ「ちがう。偶然(きっぱり)」
ジェロ「あ!すまない、人間だった!」
彼は人間だから夜目が利きません。既に日も落ちているのでうっかり射てしまったのでしょう。
シルエットだけならムーテスは人間ばなれしてますしね。中身はこれ以上ないぐらい人間臭いリルドラですが。
こうして木から降りてきたジェロは噂通りの優男風のハンサムでした。生まれは良さそうな感じですね。
ジーク「みんな心配してるから、早く帰れ。もしくは、俺たちについてきてアイヤールを案内しろ。
でないと……<守りの剣>についていた不名誉印を言いふらすぞ」
メッシュ「やーい、元近衛兵。失敗して左遷された近衛兵ー」
GM「どんな小悪党ですか!」
ジェロ「いや!それは、その……いつかは、その名誉を挽回するつもりで……
今だってその算段をつけようと、あ、いや」
どうやらメッシュの指摘はかなり正解に近いようですね。不名誉印は不祥事の罰だったようです。
ファーンとかカノンの自由騎士は自ら不名誉印を刻んでましたが、そんなカッコイイ人はそうそういませんよね。
更に村の人が心配していた事を伝えると、彼の顔には罪悪感が浮かび上がりました。
ジーク「……もしかして、お前なんかよくないこと考えてたか?このまま逃げるとか」
メッシュ「逃げるだけならともかく、あまつさえ奴隷村の在り処を密告しようとしていたとか。
……って、いくらなんでも村のリーダー自身が、とは私自身も思ってはいませんがね」
ジェロ「……な、なんでそれを」
一同「図星か!」
話を聞いてみると、やはり彼は大きな失態をやらかして奴隷に落とされた元近衛兵でした。
しかしその身分に甘んじまいと脱走し、山賊になった訳ですが、成行きで大勢の奴隷を抱える事になったのです。
そしてその生活が破綻しそうになっているので、情報を《陰影領》に密告して手柄にしようとしていたのです。
ジェロ「ジェロは偽名なんで。村人にリーダー名を吐かれてもばれません」
ジーク「お前の考え方は、何もかも間違ってる!蹴りいれるぞ、《魔力撃》込みだ!」
ジェロ「うわぁああ、でも他に考え付かなくて……」
メッシュ「ジーク様、この男、楽にしてさしあげたほうがいいと思います」
そういう意味での解決はまだ早い。村人のルーフェリアへの移民が成功すれば彼の負担は無くなる。
そしてアイヤールの国内に詳しい彼の協力が得られれば、ルーの捜索だってやりやすくなるでしょう。
ジーク「お前は、いい踏み台になると思う」
メッシュ「ジーク様、正直すぎます。確かにその通りでも、もう少しソフトに言いましょう」
ジーク「そ、そうか。えーと……お前が俺たちには必要なんだ、ジェロ。
だから、お前のしがらみを取ってやりたい。俺たちについてこい!」
ジェロ「本当か?正直、もう行き詰っていたんだ」
これにはジェロ(仮)にとっても渡りに船、協力する事にはアッサリと同意してくれました。
その為にも当座必要な《剣のかけら》を狩る必要があります。実は彼は既に3匹ほど目星をつけています。
ところが1人で倒すには困難なので手を出せずにいました。それも彼らの協力があれば不可能ではありません。
3匹の<剣のかけら>持ちのモンスターですが、いずれも6レベルとなります。
山に生息するフロストワイバーン、街の下水道に生息するレッサーマンティコア、墓地に存在するブラッドサッカーです。
《魔物知識判定》にはいずれも成功したのでデータが分かります。それを考慮した上で標的を絞らねばなりません。
フロストワイバーンは6レベルの幻獣で、7レベルの幻獣であるワイバーンの一種であり竜の亜種です。
胴体(コア)、翼×2、尻尾の四部位です。水に親しい種族のため全身が《水・氷無効》の能力を持っています。
翼にはドレイクと同様に命中力と回避力に+1の《飛翔》があり、片方を落とせば無効化する事が可能。
胴体は連続した手番には使用できない《氷雪のブレス》で水・氷属性の範囲攻撃をしてきます。
尻尾は通常攻撃でダメージを与えた相手に《猛毒の注入》を行い、毒属性の追加ダメージを通してきます。
あと胴体は"キャッツアイ"、"ビートルスキン"、"リカバリー"といった練技を使用する事もできます。
レッサーマンティコアは6レベルの幻獣で、12レベルの幻獣であるエルダーマンティコアの下位種と思われます。
前半身(コア)、後半身の二部位です。獅子の体に蝙蝠の翼を生やし、サソリの尻尾と老人の顔を持ちます。
魔術や神話等への造詣は深いが性格はひねくれています。フォーセリア風に言うなら邪悪な知識の守護者です。
前半身は真語魔法と操霊魔法を5レベルで、妖精魔法を3レベルで使用し、練技"キャッツアイ"、"ビートルスキン"も使用可。
後半身は通常攻撃でダメージを与えた相手に《痺れ毒の注入》を行い、一回食らう毎に器用度−6が累積していきます。
ブラッドサッカーは6レベルのアンデッドで、蛮族のノスフェラトゥ(吸血鬼)の犠牲者の成れの果てです。
生前の記憶は歪んだ形で残り、目は血走り肌は白く、飢えと渇きを癒す為に血を求めて生者に襲い掛かります。
爪の攻撃はボガードと同様に《連続攻撃》を行い、適用ダメージだけHPを回復する《吸血鬼の牙》を持ちます。
また上位の吸血鬼と同様に《視線》によって捉えた相手を麻痺させ、全ての補助動作を封じてしまいます。
更に《再生》によって毎ラウンド3点ずつHPが回復しますが、《吸血鬼の身体》故に太陽の下ではこの能力は失われます。
しかもその際は毎ラウンド6点ずつのダメージを受け続け、命中力と回避力にも−2のペナルティが入ります。
以上3匹の特徴を吟味した上で、確実に明るい場所で戦えるフロストワイバーンに決めました。
ただしソラの弱点である水・氷属性のブレスを吐いてくるので彼女だけは浮かない顔をしていました。
ジーク「大丈夫だ。ソラ、ちゃんと守るさ」
ソラ「本当?」
ジーク「ああ、ムーテスが庇ってくれる(きっぱり)」←範囲攻撃は《かばう》ことができない
ムーテス「僕なんだ!」
ソラ「うわ、すっごくむかつくの」
ジーク「はいはい、守る守る」
ソラ「軽ッ!」
射程は20mとかあるので後衛にも飛んでくる可能性はありますけどね。
エア「……あの二人が上手くいくと、丁度ヒエラルキーが完成すると思ったのに(嘆息)」
ムーテス「ヒエラルキー?」
エア「ほら、姉、妹、妹の婿、そして従者。ほら完璧。この配置だと、姉が一番上位でしょ」
メッシュ「残念ながら、あのナイトメアでは、いいとこジーク様の側室止まりですね。側室の姉」
エア「うわ、すっごく微妙な位置になった」
メッシュ「はっはっは、仕送りなら受け取って差し上げてもよろしいですよ、側室の姉」
本人を前にして酷いことを言っていますね。あとポンコツ執事はともかくリルトカゲンは何処に入るのかな?
メッシュ「陰口だけはたたかないパーティです。面と向かって言いますので」
ソラ「……あたしも、そろそろ殺すリスト作成し始めても、許されると思うの」
こういうのは"ヘッポコーズ"でもそうでしたね。身内にはやたら厳しいが陰険な事はしない、多分(笑)
フロストワイバーンに挑むことに決めた一行はジェロに案内されて山を登りました。
道中ハルピュイアとの遭遇。坂道の上から丸太を転がしてきましたがアッサリと勝利します。
これで戦利品の<きれいな羽根>(30G/金赤B)を入手。ソラが帽子に挿しておきました。
ハルピュイアはフォーセリアでいうハーピィのフリア種にあたる3レベルの幻獣ですね。
その特殊能力は妖精魔法3レベルと呪歌です。SWの頃は特に能力がなかったけどちゃんと歌えるようになったようです。
その使える呪歌というのが"キュアリオスティ"、"チャーミング"、"ラブソング"と見事に魅了系揃いになっています。
ディーラ種は同名のまま3レベルの幻獣として残っています。こちらは呪歌を使えない代わりに《魅了の歌》を持ちます。
それからも山登りを続けると、チルド状態の動物の死骸を喰うフロストワイバーンを確認できます。
どうやら《氷雪のブレス》で獲物を冷凍食品にしているらしい。食料を長持ちさせようとする野生の知恵でしょうか。
《先制判定》では珍しくメッシュの出目が良く14を叩き出し、先制値13と地味に早かった相手を上回ります。
1ラウンド目
まずはエアが"フィールド・プロテクション"をかけて防護点を+1。
ソラは"バイタリティ"を全員にかけて生命抵抗力+2です。ブレスにも尻尾の毒にも有効です。
こちらの前衛はまず相手を地上に落とそうと翼を集中攻撃。防護点5のHP24とあまり頑丈ではありません。
ワイバーンは"キャッツアイ"をかけつつ右翼でジークを、左翼でムーテスを、尻尾でメッシュを攻撃
ムーテス「一応、左翼ダメージは防御点で消えたんだけど」
メッシュ「……私は、毒は辛うじて抵抗」
今の彼の防護点はプロテク込みで13点。一方翼のダメージは2D+8点なので運が良ければカットできます。
一方メッシュの生命抵抗力は"バイタリティ"込みで9。毒は8(15)と有利だけどメッシュだと冷や冷やしますね。
更にブレスで前衛をまとめて攻撃します。こちらは2D+7点だと抵抗はできてもそこそこ痛いようでした。
2ラウンド目
エアがムーテスとメッシュをキュア。ジークは《頑強》のお陰でまだ余裕があります。
ジークは更に右翼を攻撃し、ムーテスは"キャッツアイ"と〔風の翼〕を併用しながら《テイルスイング》です。
ムーテス「これは範囲攻撃だから、全部位に当たる」
これが胴体以外の全ての部位に命中し、右翼のHPが0になって墜落。こうなれば攻撃もあたりやすくなりますね。
更にソラは"エネルギー・ボルト"で、ジェロは弓で後方から援護射撃。流石に《精密射撃》は持っていそうですね。
GM「ムーテスに16点ダメージ」
ムーテス「あ。3点通った」
メッシュ「……なんて厚い面の皮」
2D+10点とか2D+8点といったダメージはゴリゴリこちらのHPを削り、エアは大忙しです。
3ラウンド目?
そんな中エアがまさかのキュア1ゾロです。
メッシュ「なんですとー!」
エア「ご、ごめんー!今まで戦闘中には1ゾロ振ったことないのが自慢だったのに」
ジーク「それは……色々やばい、というか主にメッシュが」
ただでさえ紙装甲でHPはキュアを使った自転車操業なのにね。ブレスが来たら死ぬかも。
GM「次は、後ろのほうに吹きますよちくちく飛んでくる魔法が痛いんです」
ソラ「やだー。氷怖い、水怖い(びくびく)」
弱点込みでダメージは2D+9点ですから、抵抗できないと期待値で16点も抜けてきますからね。
これは生命力が豊富な姉妹でもHPが半減する勢いです。まぁお陰でメッシュは助かりましたが。
それからも殴り殴られ、左翼が落ち、尻尾が落ち、残るは胴体のみとなりました。
これまで練技の"リカバリィ"で5点の回復を続けてきましたが、もうそろそろ限界ですね。
ちなみに"リカバリィ"は「エンハンサー技能レベル」点HPが回復する仕様なので、こいつは5レベル相当です。
"リカバリィ"自体がエンハンサー5レベル以上ないと習得できませんしね。そのくせ習得練技は3つしかないけど。
トドメはブレスに散々脅かされたソラのエネボでした。命がかかっているからかいつになく真剣でしたね。
ソラ「だって、寒いんだもん!」
そして彼女を刺激しないように小さく万歳。これで《剣のかけら》は推定6個入手できましたね。
これもちゃんと一行の名誉点に加算されます。国ではなく集落に献上したということですね。
★その名は……
これでジェロ(仮)は村人を裏切らなくて済んで胸を撫で下ろします。
メッシュ「ついでに、我々のことも裏切らないように(にたり)」
ムーテス「一緒にきてくれるよね?僕たち、君の良心を救ったんだよ(にっこり)」
そして一行は集落に戻り、カームさんやアメリアへの紹介状を書いて村人に渡します。
村の人達は早速飛行船の墜落現場に移動し、彼らに感謝しながらルーフェリアへと旅立っていきました。
ジーク「……これは。なあなあ、ここでこそ、パーティ名を名乗って別れたくないか?」
メッシュ「名誉点でのパーティ称号ですか?」
歴代SWリプレイには様々なパーティがいました。スチャラカ、バブリーズ、ヘッポコ、ペラペラ、猫の手とね。
それらはルール上サポートされている訳ではありませんでした。ところがSW2.0ではこれすら名誉アイテムなのです。
「ルールブックU」には単語単位で消費する所持名誉点が設定されており、これらを組み合わせて称号を作成します。
こうして設定された称号は個人・集団に関わらず世間で認知されていく事になり、それに相応しい振る舞いが求められます。
そして彼らは赤ちゃんの命名よろしく試行錯誤し、ついにパーティ称号を決定しました。
ジェイク「お兄ちゃんたち、なんて冒険者なの?僕もいつか冒険者になりたい!」←何処の村にでもサーラという少年
ジーク「ジェイク、俺たちは……ぞ、「ぞんざい勇者団」だ!(照れ)」
ここにSWリプレイの歴史を彩る新たなパーティが誕生しました。"ぞんざい勇者団"、略してぞんざいズでしょうか。
確かに心掛けるまでもなく彼らはぞんざいだけど、ちょっと名乗るのが恥ずかしい称号になりましたね(笑)
ちなみに必要とする名誉点は「ぞんざい」で5点、「勇者」で15点、「団」で5点の合計25点です。
やはり格好いい単語ほど名誉点も高くつく傾向にありますね。「風」が5点で「嵐」が15点だったりするし。
あと「すちゃらか」「へっぽこ」は5点、「ぺらぺら」は10点となっています。単語だけだと弱そうだからかな。
参考までに"スチャラカ冒険隊"を例にすると、「冒険」で10点、「隊」で5点で計20点とかですね。
こうして彼らは以降ぞんざいズとして知られていくのでした。
ジェイク「ありがとー。忘れないよ、そんざい勇者団のお兄ちゃんたちー」
ジーク「……やり直しって要求できたっけ?」
メッシュ「もう、遅いかと」
取り消しは効きませんが、別の称号で前の称号を上書きする事はできるようです。
「かつて○○と呼ばれていた」とか、活動拠点を移して特定の地域や国に限定したりとか。
ただ彼らがこのフェイダンにいる限りは当分"ぞんざい勇者団"と呼ばれ続ける事でしょう。
★
今回の能力値の成長は以下の通り。
ジーク:知力12→13
ソラ:知力18→19
エア:知力18→19
メッシュ:筋力19→20
ムーテス:敏捷度11→12
今回は全員宣言がないため次の巻との差分をとった上での推測となります。
今回ボーナスが上がったのはムーテスの敏捷度ですね。指輪がなくても敏捷度+2になりました。
技能の成長ではエアがプリースト4→5にし、戦闘特技《MP軽減/プリースト》を習得。
朕と同様に"キュア・ハート"も使えるし、"キュア・ウーンズ"が2点で使えるので回復量も増えました。
MP42点となった今の彼女なら何と21回も使える。毎ラウンド前衛3人にかけても7ラウンド持続の安心感。
メッシュはグラップラー4→5にし、戦闘特技《踏みつけ》を習得しました。
これは《投げ攻撃》で転倒した相手に足による追加攻撃を行えるようになる戦闘特技です。
実は《追加攻撃》は《投げ攻撃》と併用できなかったのですが、これからはどんどん踏んづけていけますね。
勿論転倒状態なので相手の回避力も下がっているので、命中力に−修正が入りがちな足でも当たる希望が持てます。
ムーテスはエンハンサー1→2にし、練技"ビートルスキン"を習得しました。
これで3ラウンドの間防護点+2され、何と防護点14点までは自力で上げる事ができるようになりました。
★さぁて、これからどうしよう?
奴隷村の人々を見送ったぞんざいズは《陰影領》ゴラへの潜入方法を検討します。
ジェロ「ある意味すごく簡単ですよ。そのまま奴隷になればいいんです」
エア「その後のこと、考えてないでしょ」
まずは一番簡単な方法ですね。国の外周にある領なので他の身分で入るのは難しいんだとか。
何しろレッサーオーガみたいな奴もいますからね。人族の姿をしているだけでは信用できません。
ソラ「あれ?じゃあ、その奴隷を扱う奴隷商人は?」
ジェロ「彼らは陰影領内を自由に通行できる手形を持っています」
一同「それだ!」
ジーク「倒して奪う!」
何の躊躇もないのはいっそ立派なのかな。流石はぞんざいズ、その名に恥じぬそんざいっぷりです。
ただしその手形はあくまでも《陰影領》内で奴隷商人の商売を保証するだけのものです。
別の領に行く場合にはまた別の手形が必要になるので、今度はそれを入手する必要がありますが。
あとは大回りして別の領から潜入する方法もありますが、《陰影領》はチリの如く南北に長いので時間がかかる。
それで結局は奴隷商人から手形を奪う方法に決定。小悪党っぽくなってきたけどそんざいズだから仕方ない。
★狩るのはどっちだ?
作戦を決定したぞんざいズはジェロの案内で普段彼が使っている狩場に身を潜めます。
身を隠すにはもってこいの茂みがあり、ここから奴隷を仕入れて足の遅くなっている馬車を狙ってきたんだとか。
ジーク「なるほど、それでどんどん村に人が増えたわけだ」
ジェロ「なりゆきって怖いです……」
今回狙うのもそういう馬車です。可能なら護衛の少ない大き目の馬車を狙いたいですね。
それなら何人かは檻に入って奴隷の振りをしながら潜入する事ができますし。
ただし奴隷商人以外にも普通の商人の馬車も通ります。彼らには迷惑をかけないというのがエアの主張です。
エア「行商の馬車は襲いませんからね!」
ソラ「でも、うっかりと襲ったのが、行商人だったという不幸はありえることなの、お姉ちゃん」
エア「こらソラ!何でそんなに他人事なの(きー)」
でもまず間違える事はないでしょう。何故ならば奴隷は綺麗な檻に入れられて見せびらかされているのです。
宣伝代わりのつもりなのでしょうが、エアにはえらいカルチャー・ショックを与えたようでした。
やがて4人組の奴隷商人が通りかかります。護衛はその内3名の模様です。
それぞれ魔術師、戦士、軍馬に乗った騎手です。何と最後は初登場のライダー技能の持ち主ですよ。
ちなみにレベルは5となかなか強い。そう簡単にはいかない相手として設定されているようです。
ライダー技能は軍馬のような動物や、魔動バイクのような乗り物に乗りながら戦う際に必要な技能です。
この時ライダー技能の所有者は騎手、乗り物は騎獣といい、騎獣を用いた騎芸という能力を使用できます。
また騎手が騎獣に騎乗している場合は複数部位のキャラとして扱われるので、今回は軍馬と騎手で二部位になる。
それでも《投げ強化》を習得しているメッシュなら《投げ攻撃》でぶん投げる事ができますがね。
ジーク「んじゃ、まずはあれを」
エア「ちょっと待った!まずはって……これ失敗したら、わたしたちがあの中ってことよね!?」
それはそれで潜入を果たせますが、以前のように身包み剥がされた状態からの脱出になりますね。
勿論相手は奴隷商人で向かう先は奴隷市場、GMは隙あらば捕まえて売り捌こうと考えているようですね。
ソラ「大丈夫、お姉ちゃん、あの時はお薬飲まされてたから。今度とは違うの」
ムーテス「僕、今度は《テイルスイング》もあるんで、素手でも結構やれるよ」
エア「ああもう、この連中は!ポジティブ思考にも程があるー!(じたばた)」
ジーク「まあ、やられないようにしような、エア(肩ポン)」
そうは言っても相手もなかなかの強敵。1人は非戦闘員だとしても、軍馬を入れて3人と1頭が敵です。
ジーク「これは、誰かが囮になって馬車を止めるのがセオリーか」
メッシュ「誰でもいいですから、女性陣轢かれてください」
ソラ「轢かれてどうする。ここは、"ビートルスキン"覚えたムーテスくんが。
うっかりと直前で止まってくれなかったら「どこに目ぇつけてやがんだコラ」とすごんでくれる」
ムーテス「あ、それは小金も稼げそうでいいっすね」
エア「違うでしょう!もう、もう少し、犯罪から遠い行動を思いつかないの!」
本人はガチガチに固めて安全策を取っている分当たり屋よりタチが悪い。
そして躊躇わずに実行に移すムーテス。ただし当たりはせずにさわやかに世間話に持ち込み、隙を作ります。
ムーテス「やあやあ、こんにちは。実は僕も商人なんだけど。まだ人間を扱う商売はしたことなくてね」
ここで他の人達は《隠密判定》をしますが、ソラが失敗して転がり出て、檻の中の奴隷に気付かれてしまいます。
ソラ「むー、商品の癖にぃ(むかぷん)」
ジーク「こうなったら……見つかったからには、しょうがねぇ、やっちまえ!」
メッシュ「ふはは、貴様らの商品は、我々が貰い受ける!」
エア「悪人かこのパーティ!」
ジーク「しまった、覆面忘れてる!」
ソラ「だいじょうぶ、死人に口なし!」
エア「ちがぁああう!(悶絶)」
まるっきり悪役、それも雑魚のセリフですね。でも覆面をしていないのは失点ですね。
もし勝ててもそれで彼らを解放したら官憲に垂れ込まれる恐れがある。扱いが難しくなりますね。
1ラウンド目
先手を取ったソラは"スリープ"を《魔法拡大/数》で3倍がけ、馬車を牽く二頭の馬と軍馬の足止めを狙います。
これで馬Aには1ゾロを振り、軍馬には抵抗されるものの、馬Bは見事に眠らせて足止め成功です。
エアは毎度御馴染みの"フィールド・プロテクション"です。ただし突出していたムーテスにはかからない。
メッシュは軍馬に騎乗した騎手を《投げ攻撃》。ムーテスは〔風の翼〕と2つの練技を併用しつつ御者の戦士に攻撃。
GM「うわ、のっけから本気だ、この人たち!」
しかし負けじと敵の魔術師はジークとメッシュに"スリープ"をかけます。
ジーク「寝ないですんだ。精神抵抗+1の指輪つけてるのが、功を奏したぞ」
メッシュ「(ころころ)……く、一本足りません、しかし、ここで寝るわけにはいきません!
粉・砕!<月光の指輪>!これ壊すことによって精神抵抗+2です」
ソラ「千ガメルどぶに捨てたの」
メッシュ「どぶじゃない!必要な投資です、これは!」
ここで寝ない事に1000ガメルの価値があると判断したのでしょう。指輪は割るものですしね(笑)
そして騎手は軍馬に騎芸"攻撃指令"を使用してメッシュに蹄による通常攻撃を行わせます。
メッシュ「はははーこいつぅ」
ジーク「メッシュ、顔に蹄鉄の痕が!」
敵の戦士はムーテスに18点の合算ダメージを与えますが、防護点14点になっている彼には4点しか抜けません。
最早ポスト・イリーナ的な存在になりつつありますね。筋力は元よりその堅固さが彼女を思い出します。
この時意外な事に檻の中のコボルドの護衛達から奴隷商人へ応援が飛びました。
コボルドズ「がんばれー、商人がんばれー」
エア「じつは、奴隷を体験するツアー?」
彼らは例の身寄りのないコボルドですね。食うに困るぐらいならと、自ら蛮族社会を抜け出して身売りしたようです。
奴隷は財産、普通は自らの財産を粗末に扱う人はいませんからね。まぁ実際には奴隷を酷使する酷い主人もいるようですが。
それでも上手く領の外の人に買われれば市民権を得て普通の使用人になれるし、彼らなりに必死に生きてるのでしょう。
それからもぞんざいズは全力で攻め続け、主従の《投げ攻撃》&《魔力撃》のコンボが騎手に炸裂。
その一方で魔術師は姉妹の魔法の集中砲火を浴び、戦士はムーテスにしばかれ、満遍なく削っていきました。
やがて騎手が落ちると相手は降参し、捕虜にする事に成功。奴隷商人が捕虜になるというのも皮肉な話ですね。
ジーク「ということで、念のために聞いておく、お前たちは何者だ!」
奴隷商人「むしろそれは、こっちが聞きたいぞ!」
ムーテス「それはもっともだ」
奴隷商人「我々は善良な商人だ」
ソラ「……奴隷という言葉をつけ忘れてるし。その時点で、あんまり善良じゃない気がするの」
奴隷商人に善良なんていう分類があるのかも疑問ですしね。「心優しい悪代官」みたいな矛盾を感じます(笑)
あと自動的に捕まえてしまったコボルド達ですが。
ジーク「さっき襲撃の前に、ヒトがいるってチクッたのはだれだぁ?」
コボルドズ「はーいはーい」
ジーク「そうかそうか。ぎゅー(絞め)」
メッシュ「ジーク様、しつけの悪いコボルドにしっかりとヤキを入れてください」
コボルド「きゃーたすけてー」
ジーク「ぎゅー(気づけば抱っこ)……くそう、コボルド可愛いぞ」
この子達はどうも邪悪という訳ではなく、むしろ無邪気なものです。悪意があってチクッた訳ではないようです。
ただいい生活がしたくて身売りした以上、身柄を預かる奴隷商人を応援しただけ。ある意味正直な子達ですね。
これで入手できた手形は3人分です。ジェロも入れるなら仲間の内3人は奴隷のフリをする必要がありますね。
ジーク「おっと、聞いておきたいことがあった。
それを教えてくれるなら、殺さないぞ。
……奴隷商人ってどうすればいいんだ?」
ソラ「……えーと」
エア「確かに、なったことがないからわからない!」
ただ手形を奪っただけで奴隷商人になりきれる訳ではありませんからね。
大抵の場合商人はギルドに属しているもの。ルールを守らないとあっという間にボロが出ます。
メッシュ「色々と人を商うに相応しい立ち振る舞いについて、レクチャーを受けましょう。
立派なぞんざい人買い団として立つために」
ムーテス「うわ、また名誉点必要になるじゃないか」
ジーク「問題はそこじゃないぞ、ムーテス」
そこで奴隷商人に話を聞くと、やはり奴隷商のギルドが存在しているようです。
奴隷はそこに連れて行って査定を行い、下取り価格をつけてもらって市に出します。
ちなみにアイヤールで唯一冒険者の店がない領でもあり、冒険者は必然と余所者となります。
だから自らが手形を持っているか、手形を持つ人に雇われて同行しているのが普通です。
ぞんざいズが《陰影領》に入った後に別の領に行く場合、手形を持つ人に雇われるという選択肢もあるわけです。
なおこの奴隷商人達は領内に家があります。他の領に行く手形は持ってないのかな?
ムーテス「ふーん。で、家の鍵はこれ?」
奴隷商人「うあぁああん、返してください!」
エア「こらぁああっ!」
ムーテス「まあ、使うか使わないかは別として、念のため」
ソラ「お姉ちゃん、血管とか、堪忍袋とか、色々なもの切れそうになってるの」
エア「いくらアウェイとはいえ、酷いでしょう、それは!」
まぁそれは冗談として、顔を見られている以上は彼らをただ解放するわけにはいきません。
口止めは通じないだろうし、口封じする訳にもいかない。それなら懐柔するしかありません。
そこでぞんざいズは奴隷商人に協力を頼むことにします。
ソラ「ねえねえ、商人さん。今ケージに入ってるコボルド三匹、いくらで売るつもりだったの?」
GM「は?」
ソラ「今回の損失の補填、ちゃんとするからアイヤールに入る手引き、してくれない?
それにプラスして、報酬も出す」
GM「え、えーと……どのくらいなんだろう、この場合」
メッシュ「殺すのも正直気が進みませんし……というか、そこまで悪になりきれないといいますか。
なりたくないと言いますか……ああ、私って善人」
奴隷の相場がどの程度なのかは謎ですが、手持ちの現金で払えるような額かは疑問ですね。
結局はコボルド達は売られる事を希望しているので、商人に代わって彼らを査定に出す事になります。
そして領に入る際には奴隷商人達にも奴隷のフリをしてもらい、利益や手形はちゃんと返します。
領に入る際はメッシュはスカウト技能の《変装判定》でコボルド以外の全員を変装させます。
ムーテス「いいっすね。僕ホワイトドラゴンとかになってみたいんだけど」
メッシュ「無理で御座います。お前、自分の身体の面積がどれくらいあるのか考えたことはありやがりますか」
ムーテス「すんませんっした」
SWだと他人を変装させる事はできませんでしたが、SW2.0だと−4の修正は入りますが可能になります。
達成値は非常に低くなりますが、まぁやらないよりはマシという程度には役に立つかもしれませんね。
これでジークは護衛に、メッシュとムーテスは商人に変装。姉妹とジェロと商人は奴隷に変装です。
ソラ「ムーテスくん、リルドラケンの奴隷は珍しいと思うから、買い手がついちゃうと困るし。商人の振りしとくといいの」
ムーテス「お。何だか、漸く自分の本領に戻った気がするなあ、任せておいてよ」
メッシュ「まあ、リルドラケンが檻で鎖に繋がれていても、単なる動物ですしね……」
ムーテス「……いま、さらっと問題発言したよね」
それを言うならタビットなんて非常食っぽくなるだけですしね(笑)
あとソラはここぞとばかりに今まで買ってきた装飾品を使います。
ソラ「とっておきのお洒落、する。つけ髭装着」
メッシュ「超台無しでございますよ、それは!」
ソラ「ふふ、全てはこの日のために。なの」
ムーテス「すげえ深謀遠慮だね」
そういえば<かつら>とか<ヴェール>とか持ってましたね。その分判定にボーナスが入ってもいいかも。
★潜入!陰影領
《陰影領》の関は思ったより簡単に抜けられました。見張りの兵士も割りと気さくな人達でした。
街に入ればそこには石畳の路が広がっています。区画は割りと整備され、馬車が通りやすくなっています。
ただし鑑札をつけた奴隷と思しき人達がいる点が決定的に他の街と異なります。その扱いも様々ですね。
容姿がいいので見せびらかされるように歩いている人、荷物持ちをしている人、普通の使用人のような人。
あと大通りには奴隷制度反対を訴える運動家の姿が見えます。
『奴隷制度廃止』
『人に売り買いされる人生を考えたことがありますか?』
『奴隷制?マジダサいに超時代遅れって感じ!』
といったプラカードを持っていて、警備兵に追い立てられたりと、問題意識を持つ人もいますね。
しかし今回の彼らはそれを解決する為に来た訳ではない。さっさと奴隷商ギルドに向かおうとしますが。
騎士「アルフォンゾ!アルフォンゾじゃないか!」
そうジェロに声をかけてくる若い騎士風の男性と遭遇しました。元同僚でジェロの知人らしい。
言わずもがなアルフォンゾというのはジェロの本名です。また無駄にやんごとなき名前をしていますね。
これはまずいと察した主従は早速その肩を抱き、フレンドリーかつマイルドに連行します。
騎士「ああー何をするんだ。別に自分は君たちには用は……」
微妙にチンピラっぽいのはいつもの事です。とにかくこのまま騒がせて官憲に目をつけられるのはマズイのです。
ここでメッシュの腹芸が唸ります。本当にどこでこういう技術を覚えたんだろう、このルンフォ。
メッシュ「おやおや、よく似た人とお間違えじゃあないですか?(にこにこ)」
騎士「いや、でも、ポカやらかして近衛兵から奴隷になったアルフォンゾは、多分一人だけだし……」
メッシュ「何を仰るんですか。その奴隷になった人と、見たところ騎士様である貴方とは、まるで身分が違いませんかね?
奴隷なんかにホイホイと声をかけないほうがいいですよ。
(ぐっと声を抑えて)本当に元同僚、友人であるというのなら、もう少し気を遣って差し上げるべきですよ」
騎士「え?え?」
ジーク「メ、メッシュすげぇ」
最早GMは素でメッシュの言葉に翻弄されています。チンピラというかマフィアっぽくなってきました。
メッシュ「何故わからないのですか!少し考えればわかるでしょう。
未だに軍服を着ている貴方が、今の彼に気軽に声をかけるということは、
彼にとって、どれほどの屈辱であることが……!(痛ましい表情)」
騎士「ああ!そのとおりだ!自分は何て酷いことをしてしまったんだ!」
そして彼は物の見事にメッシュに操作され、自分の名前や素性を話してしまいます。改めてメッシュ凄いや。
彼の名前はローランド、アイヤールの東の国境にある《赤砂領》レザナードのアリオス卿に仕えています。
《赤砂領》は"紫闇の国"ディルフラムとの戦の最前線であり、《陰影領》には傭兵を募る為に出張してきました。
彼自身も元はジェロと同じ近衛兵でしたが、奴隷に落とされないまでも蛮族との戦いの最前線に左遷されたようです。
メッシュ「ほほう!なるほど、お強そうなわけですな」
ローランド「いやいや、それほどでも」
メッシュ「(ぼそ)……オツムは弱そうですが」
でも結構いい人らしく、最近《陰影領》で起きている手形の強盗事件について警告してくれました。
なんでも領の内情に明るくない余所者を狙って手形を奪い、他の領に逃亡する不埒者がいるんだとか。
ジーク「びく……もしかして、釘を刺されたか?」
ソラ「一番、あたしたちがやりそうなこと、そのものなの」
いやそこまで頭の回る人ではないでしょう。ただ親切なだけです。
そしてローランドはジェロに「頑張れよ」と囁き、連絡先の宿を教えて去っていきました。
ムーテス「いい人だねえ」
ジーク「嫌味な人だろ、どう考えても!」
メッシュ「私ならぶち切れますね」
彼自身はそんなつもりはなく、純粋に応援しているつもりなのでしょうが。
例え同じ行為でも解釈次第で良くも悪くも取れるものですから、善意が誤解されるのはよくあること。
★ジェロの事情と、アイヤールの内情
ここでぞんざいズは何故この国の近衛は重罰を受けているのかに興味を持ちました。
エア「ジェロ、あんた何やって、奴隷になったの」
ソラ「あ、あたしも聞きたい!(挙手)」
ここでジェロは表情を硬くしながらもこの国で起きた重大な事件について話してくれました。
自分の失敗談なんてあまり話したいものではないでしょうけどね、誰とは言いませんが飛行船が落ちた人もそうですし。
それにはまずこの国の皇室における特別な風習から説明せねばなりません。
この国は大アイヤール時代に皇帝の無能が一因となって領土を縮小し、「大破局」後にも復興が遅れた歴史を持ちます。
その腐敗は「大破局」後にも続き、皇族は幼い内から政争に巻き込まれ、世間を知らずに育てられていました。
それを憂えた皇帝ライオットが発端となり、皇室に生まれた者は5歳の誕生日までに有力者に養子に出す事にしたのです。
そして優秀さを認められた者のみ皇族として認められるのです。このシステムを"皇族還り"と呼んでいます。
基本的に認められた順番に皇位継承権が与えられますが、男子は常に女子よりも優先して高い継承権が与えられます。
そのため有力な男子を擁する養家同士が暗闘を繰り広げ、互いに潰しあうという弊害も存在している模様です。
ところが今の世代のアイヤールでは男子の"皇族還り"が認められておらず、皇族は全員女子となっています。
それに油断した男子の養家は養子が十分な実力をつけるまで機会を窺っていたのですが、2年前突如として皇帝が戦死しました。
これにより当時一番早くに"皇族還り"を果たしていた長女のセラフィナ・カエラ・アイヤールが"女帝"となりました。
彼女自身は12歳にして"皇族還り"を認められた優秀な人物であり、武人としての誉れも国民からの人気も高い事で知られます。
そして現在ではセラフィナ女帝以外の皇族は3人の女子のみであり、女帝はその3人の妹達を溺愛しています。
彼女は普段こそ厳しく厳格な女帝として振舞っていますが、淋しい少女時代の反動からか情に厚い一面も持つのです。
ところがある日四女である"影姫"ライティア・レンダル・アイヤールが蛮族に誘拐されるという事件が起こります。
彼女の身辺を護衛していた近衛兵は役に立たず、彼女がナイトメアである事から一部に見捨てればいいという意見も出ました。
ジーク「つまり、可愛い妹を誘拐された女帝様が、ぶち切れたと」
これによりセラフィナ女帝は妹を誘拐した容疑のあるディルフラムを相手に本格的に先端を開く程に強硬な態度に出ます。
また警護をしていた近衛は三女の姫の進言もあって極刑を免れて奴隷に落とされ、非番であった者も左遷されたのです。
ジーク「ジェロ、いつかそのお姫様を助け出して汚名を雪ぐためにも、
俺たちに協力して、まずは奴隷身分の脱却からはじめるんだ」
ジェロ「がんばります!ムーテスさん、落ちぶれたものどうし、一緒に頑張りましょう」
ムーテス「いや、僕、君ほど切羽詰ってないから」
ソラ「苦労をかけますが、そう気負うものではないですよ、あるふぉんぞ(お姫様口調)」
ジェロ「同じナイトメアでも、殿下はこんなんじゃないー!(涙目)」
ソラ「……予想された反応だったけど、ちょっと、むか」
ただしこのリプレイにおいてライティア姫を救出するシナリオは行われません。それはまた別の機会に委ねられています。
何もこの地方の全ての問題を"ぞんざい勇者団"が解決する必要はありませんしね。シナリオソースにしたかったのでしょう。
余談ですが、このリプレイが完結した後に発売された「フェイダン博物誌」に面白い記述が存在しています。
なんでも最近ディルフラムの王がナイトメアの少女を娶ったというのです。
彼女はアイヤール皇室の紋章が入った装飾品を所持しており、以前の記憶が存在していないのだとか。
もし彼女が攫われたライティア姫なのだとしたら、彼女を救出する事は非常に困難な冒険になるでしょうね。
★檻の向こうでコンニチハ
アイヤールの事情を知ったぞんざいズは、まず約束通りにコボルド達を奴隷商ギルドの査定に出します。
ジーク「ジョン、ファング、ローリー元気でな」←名前つけてるし
コボルドズ「きゅんきゅん、またいつかねー」
この子達はあまり栄養状態が良くなかったのですが、エアが一心不乱にブラッシングしたお陰で大分マシになりました。
そのお陰で下取り価格にもちょっと色をつけてもらいました。奴隷商人からしたら結果オーライなのかもしれない。
ここでジークは情が移った事もあって価格に渋りますが、その様子を窺う二人連れの姿が見えました。
GM「なんだか片方は「ぷ」と見下したように笑った気がする」
メッシュ「むか。ジーク様を見下すとは!視線を遮ります」
ところが主従はその2人と面識がありました。面識どころか家族です、ジークの弟とその従者だったのです。
弟君はジークよりも2歳年下でややインテリ風。名前はベルハルト、通称ベル。現在のデーニッツ家を纏めています。
従者はお堅い秘書風の容貌をした女性型ルーンフォーク。名前はアイシャ。メッシュとは反対に全体的に白っぽい。
アイシャ「……ああ。ベルハルト様の兄上たるお方がこんなところで、奴隷売買なんて……うらぶれてしまわれて」
そう言ってメッシュを見ながら嘆かわしそうにする様子を見るに、どうもメッシュとは折り合いが悪いらしい。
ジーク「弟にアイシャが当たって、俺にメッシュだったとき、正直負けたと思ったね」
メッシュ「ふ……昔は何かとよく、比べられましたよ。……ジーク様に(しくしく)」
例えるなら険悪な仲のドラミちゃんとドラえもんのようですね。これで仲が良かったら色々許せたろうに(苦笑)
エア「兄弟仲は良かったの?」
メッシュ「ごく普通の御兄弟でしたよ。つまり、おやつの時間になると、とっくみあいをしーの。
夕食のおかずの取り合いで、とっくみあいーの。
で、弟さんを泣かせて親父さんにどつかれーのという、平和な日々」←あるある
ジーク「で、俺はメッシュを殴って憂さ晴らしした」
メッシュ「……ふ、どうせ私はデーニッツ家のヒエラルキー最下位ですとも(めそめそ)」
父親が存命の時には「父>兄>弟>秘書>>>>(越えられない壁)>>>>ポンコツ」って感じでしょうか。
執事というか家政夫っぽくせっせと働いている姿が思い浮かびますね。飼い犬がいても下に見られそうなポジションです。
ジーク「お前、一体なんでこんなところにいるんだよ!(びしっ!)」
ベル「商売のためだよ。決まってるだろ。何しろ、無責任にも、家を継ぐ長男がいなくなったからね。
人手不足が深刻で、こっちにいい人材がいないかって、仕事と勉強がてら視察にきたんだ」
会話を聞く限りではベルはセージ技能が高そうですね。その代わりジークのように戦えるタイプではなさそうです。
あと一般技能のマーチャント(商人)技能とか高そうですね。例え兄弟でも才能が異なる事ってありますよね。
ジーク「どうせ相変わらず、セージレベルばっかり上がってるんだろう」
ベル「兄さんこそ、ファイターレベルばっかり上がってるようですけどね、商売の役に立たないですよ、それ」
ジーク「うるさい。フェアリーテイマーだって上がってるぞ」
ベル「ボクだって、上がってます」←妖精使いでもあるのかな?
ジーク「……ど、どのくらい?」
ベル「……ナイショです、兄さんこそ(視線逸らし)」
ジーク「お、俺だってナイショだ(視線逸らし)」
さては2人ともあまりサブ技能に自信がないな。才能が違っても紛う事なき兄弟の絆を感じますね(笑)
そしてジークは長話に気づいて話を打ち切ろうとしますが。
ジーク「お兄ちゃんは忙しいんだ。崇高な使命があるんだぞ」
ベル「はいはいはい、そうだね。いつだって忙しいんだよね。わかってるよ、うん。都合が悪いといつもそうだって」
ジーク「ちがう、今は本当に忙しいんだ。何しろ、国家の危機を背負ってるんだぞ!
何しろ神様に直接頼まれたんだ、お告げだぞ!」
ソラ「お兄さん、言ってることがやばくなってるの!」
幼い日の兄弟喧嘩の様子がうっすらと見えてきますね。でも今回は嘘は言っていない。本当に重大な使命があるのです。
しかしいくら弟でもそうほいほいと事情を話していい事ではありません。結果的にジークがとっても哀れに見えてしまう。
そこで畳み掛けてくる弟主従、変なところでコンビネーション抜群なのは兄主従と同じ。
アイシャ「ベルハルト様の兄君に、奴隷の取り扱いをさせるほど、
落ちぶれさせてしまうなんて……従者失格ではなくって?メシュオーン」
ベル「デーニッツ家の家名を汚さないで欲しいです」
メッシュ「はっはっは、どうせ帰るつもりなんてないですから、問題ありませんよ……って、
ジーク様、もしかして、帰るつもりでしたか?すいません」
ジーク「(ぷるぷる)……か、帰るつもり、何て、ないんだからなっ、って涙目で言ってる」
こちらのポンコツ執事の効果も相まって今だかつてない程に追い詰められましたね。
身内が絡んでいるせいか、普段の彼のぞんざいさがすっかりなりを潜めてしまったように見えます。
するとお兄ちゃん泣かせた、とばかりに一瞬オロオロする弟君が結構可愛かったです。
ベル「ま、冒険者稼業に失敗して泣いて帰ってきても、いつでも何とかしてあげますから、安心してくださいね」
ジーク「そうか、ありがとう」
一同「嫌味通じてねー!」
ベル「プライドはないんですかー!」
と思ったらやっぱりぞんざいでした。一瞬不利に見せかけて一気にひっくり返す、身内相手だからこその駆け引きです。
ベル「冒険に失敗してどこかでくたばって……ないように、精々気をつけてくださいっ」
そしてくたばれとは口が裂けても言えない弟君、何だかかんだでお兄ちゃん大好きっぽいですね(笑)
別れ際に従者同士は中指立てたり親指下に向けたりと、久しぶりの家族のコミュニケーションでした。
ちなみにこの時点でジークは他の仲間達には弟の事は紹介していませんでした。
ソラ「お兄さんお兄さん。さっきの誰?」
ジーク「秘密だ」
ソラ「えー」
秘密というか、思いっきり「兄君」だの「兄さん」だの言ってるから想像できそうなものですがね。
それとも主従のみ離れて会話していたんでしょうか。友達と一緒にいる時に家族と遭遇したような気まずさで。
ところがここでまたもメッシュの大法螺が炸裂してあらぬ疑いが生まれました。
メッシュ「ああ、あれはジーク様の許婚ですよ。男の子の格好をしていますが……」
ソラ「ええっ!がーん!お兄さん、そういう趣味あったんだ」
メッシュ「そうなのです。何しろジーク様は、女の子には苦労なさっておりませんから。
あのように、目新しい雰囲気でないと、飽きがきてしまうようで」
ソラ「ふーん、そうなんだー、へーと生暖かい表情になっていよう。お兄さん、変態ー」
この従者は主君を英雄にしたいのか変態にしたいのか、しばしば分からなくなりますね。
それに変態気質なエキセントリック神官が既にパーティに1人います。1人いれば十分です。
★暗くて深い下水道
《陰影領》に入ってからの僅かな時間でぞんざいズには他の領に行く為の2つのコネができました。
1つは手形を持っているであろう弟のベルに雇ってもらい、他の領まで連れ出してもらうという方法。
もう1つは傭兵を募っているというローランドに雇ってもらい、《赤砂領》まで連れて行ってもらうという方法。
あとは領主に申請してぞんざいズ名義の手形を発行してもらう方法もあるでしょうが、そのコネはまだない。
ジーク「ううう、弟に雇われるのか……さっき、色々啖呵きっちまったのになあ、どうしよう、いやだなああ(悶絶)」
でもそちらの方が後の事を考えれば便利でしょう。傭兵として雇われたら自由に行動できるか疑問ですしね。
ちなみに冒険者の店のエンブレムも手形代わりになりますが、そんざいズは身元が割れるのを恐れて置いてきました。
あとは下水道から他の領に行く方法もあるそうですが、地下には整備の魔動機械が徘徊していて危険だとか。
メッシュ「魔動機械は友達ですよ!」
GM「夕日の中で殴りあって友情を確かめる系の、ですね」
魔法生物の一種ですから、命令には忠実で交渉もできず、ただ侵入者を排除しようとするでしょうね。
以前戦ったクィンドゥームのような巨大な兵器が下水道にいるのは想像し難いので、小さめのやつがいそうですね。
メッシュ「私たちは自ら、行動のハードルをあげているような気がします」
ジーク「しょうがない。俺が弟に頭下げに行くよ。しばらく護衛で雇ってくれって」
それが無難でしょうね。彼の御供としてメッシュとソラがついていき、他の人達は奴隷商人の家で待機です。
ただし弟君の連絡先を聞いていないので、まずは外国人が泊まっていそうな宿泊施設をあたっていきます。
そうして大通りに出ると街がざわついている事に気づき、その辺の人に事情を聞いてみました。
おばさん「あらあら、見たところお譲ちゃん外からの人?気をつけなくちゃダメよ?まったく物騒なんだから……」
ジーク「何かあったのか?」
おばさん「ええ、逃亡奴隷による強盗事件なのよ」
以前ローランドが教えてくれた事件ですね。その逃亡奴隷は外国人を襲い、手形を奪おうとしたそうです。
おばさん「若い商人の子が襲われたらしくて。まだ子供みたいなのに……心配ねえ」
それを聞いたジークは即座に弟の安否を気にしました。何だかんだで仲のいい兄弟ですよね。
ソラ「その強盗、商人の子、殺しちゃった?」
ジーク「ソラぁああっ!」
ソラ「聞きにくいだろうから、あたしが聞いてみたの」
ところがその人は手形を渡さなかったので、逃亡奴隷はその人を人質にとって下水道に逃げ込んだそうです。
ここでジークはまだベルが攫われたかどうかも分からないのに、その強盗を追いかけようとしました。
ジーク「ソラの使い魔で、追いかけられる」
ソラ「……鳥目なの。お兄さんの使い魔なら、夜目利くと思うけど」
メッシュ「私は使い魔ではありません!(きー)」
しかしスカウトにして〔暗視〕持ちの彼なら適任。しかも<誓いのアンクレット>でジークには居場所が分かる。
あとソラも一緒についていきます。ジークはエアとムーテスを呼びに行き、フェイを預っておけばその様子も分かる。
ちなみにフェイ自身は鳥目ではありません。主であるソラと同じ知覚能力なので〔暗視〕を持たないというだけ。
下水道に入ったメッシュとソラは下水の脇に作られた側道を渡り、《足跡追跡判定》で後を追います。
この時ソラは"ライト"をかける《行使判定》と《足跡追跡判定》で2連続で1ゾロを振り、100点ほど稼ぎました。
メッシュ「……くぅ、なんだか彼女を見ていると、真面目に働いてる自分がちょっとバカらしくなるのは何故ですか」
普段は真面目に働いて経験点を稼いでいますしね(笑)
足跡は強盗と思しき乱れがちなものと、それに混じったベルと思しき小さめのものがありました。
あとアイシャと思しきヒールの足跡もあったので、やはり攫われたのはベルで秘書が追跡しているようですね。
メッシュ「では、スカウト技能のないジーク様たちのために、壁に矢印を刻んでおきましょう」
GM「と、見上げた壁の、丁度同じ位置に、大きな矢印が刻まれています」
メッシュ「(ぴき)……消して書き直します」
ソラ「何のために!ていうか、思考回路一緒」
官憲の人達の為にと追跡しながら残していたのでしょうか。結構気が利く秘書ですね。
その頃ジークはエアとムーテスを呼びに奴隷商人の家に戻っていました。
ジーク「エア!大変だ、ついてきてくれ!」
エア「あらジーク。お帰りなさい、怪我でもしたの?ていうか、うちの妹は?」
ジーク「攫われた!」←主語がない
エア「何ですって!ジークあんたうちの妹、放置してたの!?」
ジーク「あ、いや、攫われたのは、弟なんだ!」
エア「へ?(わたしに)弟なんていたかしら」
ジーク「いたんだよ、何も言わなかったけど、じつは!」←自分には、ですね
エア「知らなかった……いつの間に……(よろりら)」
これは帰ったらお父さんが何も悪くないのに追及を受けそうです。こういう勘違いコントってありますよね。
そんな様子をフェイを通して生暖かく見守るソラとメッシュでしたが、ここで魔動機械リガークアと接触しました。
リガークアは5レベルの魔動機械であり、流線型のボディで《水中適性》を持ちます。
通常生じる水中におけるペナルティを受けず、ボガードソーズマン同様に《2回攻撃&双撃》の能力を持ちます。
ただしこいつは鼻先にモップをつけられて清掃用として扱われているようです。
リガークア(GM)『ゴミ発見。掃除』
メッシュ「それは、私の台詞です。ジーク様の進路妨害をしそうなゴミは、
叩き壊して正真正銘粗大ゴミにして差し上げましょう」←魔動機文明語です
リガークア(ソラ)『社会のゴミを掃除します』
メッシュ「生まれてきてすいません!」
そして《先制判定》で見事に失敗するメッシュ。本当に生まれてきてすいません(笑)
1ラウンド目
メッシュはリガークアの《2回攻撃》を見事に回避。水中ペナルティ−2なのに珍しく有能執事。
ソラ「すごい、メッシュさん、有能に見えるの、今回」
メッシュ「今回、と限定しないでくださいませんかっ」
ソラは"パラライズ"で命中力を下げようとして抵抗。メッシュは《牽制攻撃》と《追加攻撃》で当てて8点ずつ。
リガークアの防護点は5点なので6点抜け、HPは40点もあるので、このペースだとあと6ラウンドかかる(笑)
2ラウンド目
またも《2回攻撃》を避けたメッシュはタゲサつきの《投げ攻撃》でぶん投げて8点通します。
更に《踏みつけ》で4点通し、前のラウンドの倍の計12点を削ります。これで残りHP22点、大体半減ですね。
その後押しをしようとソラは乱戦エリアに突入して"ブラスト"を発射。
メッシュ「ソラ、二回攻撃でしばかれますよ」
ソラ「いい。平気。耐える。……とは口にしつつも、やめときゃよかったなーとは内心で思ってるの」
これが抵抗されましたが、ダメージ自体はクリティカル相当の出目10と良かったようです。
威力30の出目10で10点に魔力8を加えてダメージは18点ですが、抵抗されているので半減して9点削りました。
これでリガークアの残りHP13点です。最初のメッシュの攻撃の時にはどうなるかと思いましたが勝てそうですね。
3ラウンド目
案の定ランダムでソラがしばかれました。しかも回避1ゾロでまた50点稼いでいます。
ソラ「普通に失敗するより、いいや」
エア「よくない!誰が治すと思ってるの!」
ソラ「お姉ちゃん(きっぱり)」
エア「……う。信頼が、ちょっと嬉しいと思う自分がいや」
そして再度メッシュの《牽制攻撃》やソラの"ブラスト"を食らい、リガークアは沈黙しました。
本当なら戦利品を漁りたいところですが、それには10分かかるのでメッシュは先を急ぎます。
ちなみにリガークアの戦利品は自動で<鉄>(20G/黒B)と<水中用魔動機械>(180G/黒白A)が手に入る。
出目によっては<粗悪な魔動部品>(100G/黒白A)や<魔動部品>(300G/黒白A)も手に入りますね。
割と儲かりそうなのでこれらを放っておくのは少し勿体無い気もしますが、今は人命第一です。
怪我をしているソラはその場に残り、3ラウンド後に到着したお姉ちゃんに回復してもらいました。
可能なら戦利品を剥ぎたかったのですが、30秒ではその暇もない。10分というのは結構ネックになりますよね。
なにしろ戦闘ラウンドに換算したら60ラウンドにもなります。それだけかけてたら大抵の戦闘は終わります。
引き続き《足跡追跡判定》を行ったメッシュは問題なく現場に辿り着きました。
アイシャ「ベル様を放しなさい。でないと……今度は威嚇射撃ではすみませんよ」
ジーク「戦闘開始直前か!加勢に入るぞ。恩を売る!そして、ベルに頭を下げる気まずさを消すんだ!」
そういう事にしないと恥ずかしいというのもあるのでしょうが、割と本音も混じってる気がする。
アイシャの技能ですが、純粋な後衛らしくスカウトとマギシュー(マギテック&シューター)です。
メッシュと違って本格的な<ガン>の使い手なのでしょう。色といい、技能といい、立場の強さといい、何もかも正反対ですね。
エア「この兄弟、お互いルーンフォーク取り替えたら、後衛と前衛丁度バランスいいのにね」
ジーク「……あ(手をポン)」
メッシュ「ジーク様!そこで何か、開眼しないでください!」
それだとジークはともかくベルが執事に振り回されて大変な事になりそうですけどね。
ある程度メッシュの暴走に耐えられるのはジークだからこそ。ベルが同じことをやらされたら死にそうですし。
そのベルですが、現在は3人の男達に掴まっています。首枷をつけた逃亡奴隷ですね。
男達の1人は銃を持つ射手、1人はリルドラケン、最後の1人は剣を使う人間の戦士と思われます。
ジーク「お前たち、俺の許婚を放せ!」
一同「えええっ!」
アイシャ「ベル様といつの間にそんな関係に!ふしだらな!」
メッシュ「私の与太を真に受けているアイシャに、くくく、と勝ち誇った笑みを浮かべています」
ソラ「生暖かい表情になってるの。やっぱりそうなんだ。お兄さん男装少女がすきなんだ。ふーん」
何故がメッシュの与太に乗っかってしまい、敵も人質も味方も混乱させました。何故自ら墓穴の下に墓穴を掘るような真似を(笑)
メッシュ「ふはははは、その子の持っている通行証は、我々が狙っていたのですよ。貴様たちなどには渡せん!」
奴隷「何!そうすると、貴様たちも逃亡奴隷か!では、協力してこの場を脱しよう!」
ムーテス「うわ、交渉もちかけられた!」
ソラ「おじさんたちの狙い、その子の通行証?決しておかしな趣味を持ってるからじゃないのね?
男装少女萌えとか。その子を連れて逃げると、女の子の秘書ルーンフォークが追いかけてくるのがいい、とか」
奴隷「実際、それもたまらんが」←変態だー!
一同「たまらんのか!」
奴隷「それはそれ、これはこれだ」
結局彼らの狙いも通行証こと手形です。奴隷商人戦もそうでしたが、今回はアイヤールのパスポートを入手するシナリオでしたね。
ここで奴隷達はじわじわと横道に移動しています。何らかの伏兵がいるのでしょうか。
そうなると狭い側道だけで戦うのは前衛の数も限られて面白くない、エアの"ウォーター・ウォーキング"が欲しいですね。
ただしこの魔法は接触する必要があるため、戦闘特技《魔法拡大/数》で対象を増やす事はできないのです。
そうなると1ラウンドに1人ずつかけていかねばならず、回復の手間も考えると手が足りなくなりそうですね。
ベル「兄さん!どうしてここに!」
ジーク「兄さん?ははは、お前が弟だった時期はもう終わりだ!」
エア「そう、これからは妹の時代よ!」
ジーク「そうじゃなく!俺たちが必要なのは、お前の通行証だけだ、このままお前も下水の露と消えるがいい!」
そしてアイシャがジークに"クリティカル・バレット"を撃ち込むと。はたから見ると酷い兄貴ですから。
ただしこれは相手に人質の価値がないと思わせるための方便です。本当はそんな事考えていません。
それでも弟君はショックを受けた様子ですが。
奴隷A「なんて酷い兄貴だ!」
奴隷B「そうだ、俺たちと一緒に行こう!外の世界に」
強盗のくせに微妙にいい人っぽい。後で弟君に謝っておかないと本当に嫌われてもおかしくありません。
そういえばこの戦闘で初めてカテゴリ<ガン>がまともに使われますね。魔力点しか回復しないやつは別として。
<ガン>は《命中力判定》にはシューター技能を、ダメージの決定にはマギテック技能を用いるという珍しい処理を行います。
使用するには<弾丸>が必要となり、この弾丸に魔動機術の"○○・バレット"という魔法で魔力を込めて発射します。
命中した場合は攻撃魔法と同じく魔法ダメージとなり防護点が効きませんが、魔法と違って回避される可能性があります。
その場合は普通の武器と同じように相手にダメージを与える事はない。この辺は抵抗されても半減する魔法と違いますね。
では"○○・バレット"にはどんなものがあるかといいますと、これがまた色々な種類があって面白い。
スタンダードなのは1レベルの"ソリッド・バレット"ですね。威力20の魔法ダメージを与えます。
次に覚えるのは2レベルの"クリティカル・バレット"、威力は変わりませんがクリティカル値−1となります。
「ウィザーズ・トゥーム」には計13種類の"○○・バレット"が収録されており、それを補助する魔法も多数あります。
話せば話すほどにこじれる一方です。もう面倒になってきたので戦闘に入ります。
GM「では、『先制判定』をどうぞ。こちらは12です」
メッシュ「(ころころ)うわ、1足りない!誰か、6ゾロの方はいらっしゃいませんかー?」
ジーク「(ころころ)やった、1ゾロ。……って、今回は喜べないか」←〔運命変転〕は奴隷商人戦で使用済み
メッシュ「くぅ、<疾風の腕輪>を割ります!」
これは必要経費です。ただブーストしたいだけなら指輪の方が安上がりですけどね。装備してボーナスが上がるなら別ですが。
1ラウンド目
ソラは敵の戦士とリルドラケンに"ブラント・ウェポン"で物理ダメージ−4。<ガン>は魔法ダメージなので効果がありません。
エアはメッシュに"ウォーター・ウォーキング"をかけ、敵のリルドラケンが飛ぶ前にと《投げ攻撃》です。
メッシュ「ダメージは……(ころころ)おお、クリティカル!」←出目12!
ジーク「おお、すげえ。《投げ》でクリティカルか。これは大きいなあ」
メッシュ「ふふふ。本日はメッシュ・デーと覚えておいてください」
これが23点と強烈で、更に《踏みつけ》で9点の合算ダメージ。いかに頑丈なリルドラケンといえどかなり効いてる筈。
そこにジークが《魔力撃》で命中6ゾロです。
ムーテス「身内が絡むと強いね、ジーク」
ジーク「(ころころ)そんなことないぞ。ダメージ決定が1ゾロだった。
ああー奴隷商戦ですでに〔運命変転〕使っちまったよ」
一同「あああああ……」
GM「一日くらい、休んでくれても良かったですのに」
1日休めば全てのイベントが1日遅れで起こっていたのでしょう。コボルドを査定に出したりしてたし、働き過ぎですね。
仕方ないのでムーテスがちゃっかりトドメを刺しました。リルドラケンが飛ぶ前に落とせたので幸先いいですね。
更にアイシャは"クリティカル・バレット"で相手の戦士を撃ち抜き、クリティカルで大ダメージ。
すると銃で撃たれた男は横道に向かって「出てこい!」と呼びかけます。すると奥からレッサーマンティコアが登場!
前回ジェロが目星をつけていたやつですね。そういえば街の下水道に生息しているとか言ってましたっけ。
戦士「俺たちは、この下水道の工事員をやってたんだ!
外に出る下水路が塞がれて、脱走の機会も潰えてしまった。
で、同じように外に出られなくなっていたマンティコアと手を組んだんだ!」
エア「なんだ。結局は倒しにこれなかったのね」
道理で相手が弱すぎると思った。奴隷商人の方が強かったぐらいです。でもこれで<剣のかけら>が6個も手に入ります。
登場したレッサーマンティコアは前衛と前に出ていたアイシャを巻き込んで"スパーク"。
ソラ「……何か、怖いのが飛んできたのは、わかる。帰ろうかな」
エア「ソラ、薄情なこと言わないの」
ソラ「だって、まだ向こうから視認されてないし……」
エア「……(考えこんだ)」
ジーク「いなくなるな、神官!治してくれ!」
5レベルの魔導師にして3レベルの妖精使いです。今回は攻撃魔法を後衛からガンガン撃ってくるんでしょうね。
ただし《魔法誘導》や《魔法収束》等は持っていないので無闇に撃つと味方の戦士まで巻き込んでしまいますが。
もっとも相手は性格がねじくれていますから、手を組んだ人間達を巻き込んでも気にしないかもしれません。
2ラウンド目
ここでメッシュとムーテスが敵の戦士を受け持ち、ジークは弟を抱えた射手に向かう作戦を立てます。
メッシュ「嫁を回収してきてください」
ジーク「わかった。……って、さっさと嫁発言を否定しろよ俺。
アイシャ、ベルは俺に任せて、レッサーマンティコアを撃ってくれ」
アイシャ「正直任せたくありませんが、よろしくお願いします」
シューター技能だけなら回避力0ですから、ジークとタイマンになれば《魔力撃》でボコれます。
ただ避け難くなってるので相手が銃を撃ってきたら怖いんですが、逃亡奴隷の身でどれだけ装備があるかは謎です。
そしてメッシュは敵の戦士に《投げ攻撃》で15点、《踏みつけ》で10点とかなりのダメージを通します。
GM「あうう。メッシュ、いきなり強くなってる」
メッシュ「いきなりではありません、失敬な」
ここに来るまでにポンコツと蔑まれながら頑張ってレベルを上げてきました。そういった下積みがあればこそです。
ここでソラが戦士に"リープ・スラッシュ"でトドメを刺し、空を飛べるムーテスも射手に迎えるようフォローします。
ジークは予定通りに射手を《魔力撃》でかなり削りますが倒しきれず、またもムーテスがトドメを刺しました。
ジーク「弟よ!(ハグの姿勢)」
ベル「助けてくれてありがとう!」←ムーテスに飛びつく
ジーク「つ、つんでれにも程があるぞ、こいつぅ!」
これで残るのはレッサーマンティコアのみですが、メッシュの《聞き耳判定》で何者かの接近を感知します。
どうやらあと5ラウンドほどで別のリガークアが2体もやってくるらしい。流石に同時に相手にするのは厳しいです。
3ラウンド目
ソラ「じゃあ、交渉する。あたし、魔法文明語しゃべれるの」
ムーテス「それで解決できるなら、よろしく」
ソラ「ね、レッサーマンティコア。あたしたち、貴方を倒そうとしてるわけじゃないの」
マンティコア「わたしは、お前たちを倒そうとしている」
ソラ「わかった。"ライトニング"」
実に爽やかな交渉決裂ですね。間違った方に潔いネゴシエイターでした。
この"ライトニング"が抵抗を破って前半身に15点、後半身に11点入ります。ちなみに前半身の素のHPは38点です。
仮に前と後ろに均等に<剣のかけら>を分配していたとすると、HPは15点追加されて53点とかになっていますね。
部位モンスターの場合<剣のかけら>はできるだけ均等に分配するのが目安になっているので多分これぐらいでしょう。
次のマンティコアの攻撃でメッシュのHPがごっそり持ってかれましたが、エアの"キュア・ハート"でアッサリと回復。
《MP軽減/プリースト》のお陰で4点消費なので、"スパーク"で怪我をした人全員に拡大して16点消費ですね。
更に前衛が次々とレッサーマンティコアに殴りかかり、ソラも<魔晶石>に手をつけて"リープ・スラッシュ"で追撃。
最後はアイシャの"クリティカル・バレット"が2回も回って落ちました。
メッシュ「ゴルゴか、この女」
リガークアが来る前にベルも救出できたし、あとは立ち去るだけですが。ここで後ろ髪を引くのは戦利品です。
ソラ「……あああ、でも、マンティコアから剥ぎたい、戦利品」
ムーテス「そうだね、もったいないね。<剣のかけら>」
一同「……(顔を見合わせてる)」
結局物欲が出てリガークア2体と戦い、激戦の末に勝利。<剣のかけら>も手に入って戦果は大きかったですね。
ちなみにレッサーマンティコアの戦利品は<上質な幻獣の皮>(300G/赤A)と<きれいな幻獣の皮>(800G/金赤A)。
後者は2Dで10以上必要なので厳しいでしょうが、前者は7程度で剥げるので入手できた可能性はそこそこでしょう。
★弟くんと一緒!
こうしてベルは無事に救出し、ぞんざいズは地上に戻ってきました。
ジーク「まったく目を離すと、子供はこれだから」
ベル「(しゅんとしている)」
ジーク「けど、お前もこんな外国まで来て商売のために頑張ってるんだ。
長男として、放って置くことができない。しばらく護衛してやるよ」
また見事なまでに負い目を感じない形で雇われましたね。でもこれで《陰影領》の外に行けそうです。
ベル「え、でも。兄さん、忙しいんじゃないの?」
ジーク「何、可愛い弟のためだからな。そのかわり……俺たちを、
買った奴隷ということにして、この陰影領から連れ出してくれ」
ベル「な、何やってるの、兄さん!」
どうやら本当にジークが奴隷商人をやってると思っていたらしい。
でも本当に奴隷商人ならこんな事は頼みません。弟君からしたらお兄ちゃんの仕事が謎過ぎますね。
ベルのこれからの予定ですが、注文されていた品を届けに行くそうです。
ベル「どこかの小神の、聖典とか聖印とか、神官服をそれぞれ三百揃え。届けに行くんです」
エア「……どこかの、マイナーゴッド」
ベル「あ、君が、耳につけてる感じの聖印に似てるよ。
もっと洗練された感じにデザイン変更したけど。イモっぽいから」
どうやらルーフェリアの神官服等を受注していたらしい。まさか身内が手がかりを持っているとは。
しかしこれで彼に同行すればルーを攫った連中の居場所が分かる。ある意味手形よりも価値のあるパスを手に入れました。
★
今回の能力値の成長は以下の通り。
ジーク:敏捷度17→18
ソラ:生命力19→20
エア:精神力25→26
メッシュ:知力17→18
ムーテス:器用度13→14
これでジークは敏捷度が、メッシュは知力がブレイク。特にメッシュは<知性の指輪>を割っても平気ですね。
あとエアも<知性の指輪>を購入して知力20になりました。これは緊急時に割るために装備しています。
技能の成長はジークとムーテスがファイター5→6になり、特にジークはHPが50点を越えました。
ソラはソーサラー5→6とフェンサー1→2。エアはプリースト5→6でメッシュ以外は全員6レベルですね。
買い物はムーテスとメッシュがジークの援助で武器を<魔法の武器+1>にして少し強くなりました。
ソラ「ね、お姉ちゃん。魔法の剣、買って」
エア「シカトした」
ソラ「む。お兄さん、魔法の剣、買って」
ジーク「おろおろした」
ソラ「なんでよー!」
エア「魔法の剣なんて買ったら、あんた前線に出るでしょう」
ソラ「うん、嬉々として」
エア「却下」
ソラ「ばかー、お姉ちゃんのばかー(ぽかぽか)」
もちろんこれは姉妹喧嘩のロールプレイ、実際にはソラの成長は彼女の意思を尊重しています。
今回でフェンサー2にしたとはいえ、前衛が6レベルに到達した今の状態では不安が残りますしね。
あとはジークが<陽光の指輪>を購入。<月光の指輪>と対になり、壊すと生命抵抗+2になります。
ムーテスは<韋駄天ブーツ>を購入し、通常移動+5m、全力移動+15mでジークと足並みが揃うようになりました。
これまで彼の弱点だった移動距離の短さをカバーできますね。これでお値段2000ガメルというリーズナブルさ。
エアは<雫のブレスレット>を購入。これで常時水・氷属性のダメージを1点軽減ですね、むしろ妹が持ってもいい。
更に1日に3回まで、合計1リットルの水を発生可能。お値段5000ガメルで水の神の神官らしさが増しました。
他にはメッシュの<スタンパー>とエアの<ラウンドシールド>はこのタイミングで購入したようです。
この巻の冒頭に収録されているデータに記入されていたので、うっかり7話のキャラクターシートに記入してしまいました。
★陰影領を脱出だ
前回の話でジークは弟のベルと再会し、《陰影領》の外に連れ出してもらえるようになりました。
GM「さて、前回のことは覚えておいででしょうか、皆さん」
エア「覚えていますよ、超失敬な小僧っ子に、ルーフェリアの聖印と神官服をイモっぽいと言われたことは!」
ジーク「ごめんな、正直な弟で」
ベル「ごめんごめん、じゃあ言い直す。レトロ?」
ソラ「違うの。ロハスって言うのよ、こういうの」
250年も外界から閉ざされていたのだから世間の流行に遅れるのは仕方ないのかもしれません。
ちなみにフェイダン地方の流行はジークの故郷であるリオスが最先端のようです。商業が盛んなら自然なことですね。
他の国が引き篭もりにして宗教国家のルーフェリアや、軍事帝国のアイヤール、学研都市のカイン・ガラだから尚更仕方ない。
その神官服等は《赤砂領》に届けに行く予定です。例のローランドが左遷されたという蛮族との戦争の最前線ですね。
ベル「大口の取引だったから、変な注文だなあって思ったけど、受けちゃいました」
ジーク「疑え、ちょっとは!」
ベル「だって、お店の経営大変なんですからね!」
ジーク「すまん(土下座)」
かといってジークのぞんざいな性格はあまり商売には向いていなさそうですけどね。ある意味適材適所。
お父さんは元冒険者でその財で始めた商売だといいますから、ジークは冒険者としての父親の血が濃かったのかもしれません。
ジーク「ある日思い立って、散歩に行くみたいに何気なく冒険の旅に出た」
エア「弟ほったらかし!」
ジーク「アイシャがいるから大丈夫だと思ってさ。俺とは違うんだよ」
メッシュ「ん?(考えこんだ)……深く追求しないことにします」
それが賢明でしょうね。うっかり嫌な想像をしてしまう前に忘れてしまった方が幸せかもしれないし。
しかしその旅立ちだと弟も心配したでしょうにね。流石に手紙ぐらいは残したと思いますが、心細かったろうに。
それもここで再会した事で多少は和らいだでしょう。弟は兄の頼みを聞いてぞんざいズを「購入した奴隷」として連れ出します。
アイシャ「ああ、もう。ご主人をそんな身分に落としているなんて、従者失格じゃなくって、メッシュ」
メッシュ「わかっておりませんな、アイシャ。時には主を苦境に立たせるのも従者としての仕事なのですよ。
それによって、ジーク様はより一層、覇王としての風格と懐の深さを身につけて……」
ジーク「俺今、懐すっからかんなんだよな。メッシュに金やったから」
エア「貸したって言わないとこが、ある意味大物よね」
ちなみに<魔法の武器+1>は既に所持している武器に5000ガメルの費用で加工可能ですが、これには一ヶ月を要します。
よってメッシュとムーテスは既に加工済みの武器を新規で購入した筈ですから、2人合わせて1万ガメルを越える額になる。
ジークがその内いくらを融通してあげたかは謎ですが、彼の性格からいって結構な大金でもポンと出してあげていそうですね。
こうして《陰影領》を脱出した一行はベルの馬車に同乗し、年輪を突っ切るようにいくつもの領を横断していきました。
一つの領を通過するには平均して徒歩で1日、馬車等なら更に短い時間となるため、割と頻繁に入領と出領を繰り返す筈です。
「大破局」の影響で領一つ隔てただけで気候すら異なる場合も多く、短い期間に様々な風景を見る事ができるでしょう。
ちなみに関の通行料は10ガメル程度のささやかなもので、パスポートよろしく領の印章を押す帳面が渡されるようです。
ベル「まったく、急に姿を消したと思ったら、一体何やってるんだか」
ジーク「ん?聞きたいか?お兄ちゃんの話を聞きたいか?」
ベル「は、話したいというなら、聞いてあげてもいいよっ」
ジーク「ええい、このツンデレ弟め」
本当にお兄ちゃん大好きっぽいですね。旅費も負担してくれているようだし、こんないい子を置いていくとは罪なことです。
ただし秘書の方がしっかりと帳簿をつけているので後で請求されそうですが、こっちの執事は改竄するつもりです(笑)
道中ルーフェリア信仰の噂も集めますが、まだひっそりとしたものであまり大々的には布教していないようでした。
ちなみにベルに神官服等を発注したのはカティスという人物です。ルーの行方を知る為にも会わねばならない人物ですね。
★ライフォス神殿のお姫様
《赤砂領》までの旅の途中で一行は朕ことイアンの故郷である《石街領》アイールという領に立ち寄りました。
リプレイに登場しながら「フェイダン博物誌」からはハブられた不遇の領であり、その詳細は不明です。
国内最大のライフォス神殿があり、年輪の割と中の方にある平穏な領だという事は判明していますが。
ここではジーク、エアのみで神殿に向かい、被差別種族と思われるメッシュとソラはお留守番、ムーテスも護衛で残ります。
何しろライフォスは穢れを忌避していますからね、ナイトメアは受けが悪い。あと神を信仰できない人造人間も。
もっともライフォスは調和を重んじる神様ですから、それらの種族とも仲良くしようという信者は沢山いるでしょうけど。
神殿はかなり大きなもので、正直なところルーフェリアが脅威になるとは思えないほど賑わっています。
フォーセリアでいうファリスのようなポジションですからね、何だかんだで世界中に信者がいるから当然の事です。
その分他の神を軽んじるような人もいるようですが。いくら教義が調和でもこう人が多いとどうしてもそういう人は湧くものです。
神の教えと信者の考えが必ずしも一致しないのはフォーセリアの頃からよく扱われていたテーマでしたね。
まずジークとエアは適当な神官を捕まえて、イアンの紹介状を見せつつ話を聞きました。
ジーク「ようよう、最近ライフォス神殿を差し置いて、辺境の小神が偉く幅利かせてるんだって?大変だよなあ」
エア「ジ〜〜〜ク〜〜〜ぅ(恨めしそう)」
神官「ああ、そうなんですよねえ。困ったものですよ」
ジーク「ぶっちゃけルーフェリアをどう思う?(声を潜めて)」
神官「最悪……とまでは言いませんけれど。まあ、所詮は小神ですしね。身の程を弁えてもらいませんとね」
ある意味自分に正直な人のようですね。そう思うのも仕方がない程信者の数が違いすぎますし。
ちなみにライフォスはルーフェリアを導いたザイアを導いた神。よってルーフェリアは孫神のようなものです。
神官さんにはあまり焦りはなく、なにか勝算があるかのように余裕たっぷりです。
神官「何、あと二、三年もすれば。こちらは皇族へのコネもできますし」
ただしアイヤールの女帝は特に熱心なライフォス信者という訳ではありません。役に立てばなんでもいい、というタイプ。
某砂漠の傭兵王もそうでしたが、為政者が何らかの神に肩入れしない事で下の者の思想や信仰を保証しているのかもしれない。
イアンについては彼は顔見知りのようでした。ルーフェリアを弱体化させると豪語して出て行ったんだとか。
それがそのルーフェリアの国に庇護され、ルーフェリアの便箋で手紙を書いてきた事に半ば呆れていました。
それでも彼が無事なことに安心したようです。「雌伏の期間も必要だ」とかぶつぶつ言いながら。
では何故彼がそんな先走った真似をしたのか。
神官「まあ彼なりの焦りはあったのかもしれませんけどねえ、何しろ、ホーリエルはまだ十一歳ですし」
突然登場したいかにも重要NPCっぽい名前に一同探りを入れ始めます。それが皇族とのコネなのか?
ジーク「いやー十一歳で、すでに神殿に入ってるなんて、すごいなあ、将来有望な子なんだなあ」
エア「あれですか、神童とか才女とか?」
神官「いやいや、まあ、それはね。五歳の頃から預けられているからね。我々も手塩にかけて……」
五歳で預かる、皇族とのコネ……。これらのキーワードを結びつけると、一つの仮説が導かれますね。
ジーク「じゃあ、ここだけの話ということで、皇位継承権何位くらい?(声を潜めて)」
神官「まあ、このまま行けば……三位になるんじゃないかなあ」
どうやらライフォス神殿も1人の皇室に生まれた子供を預かっているようですね。皇女様候補、確かにコネになります。
いくら女帝が特定の宗教を優遇しないとはいえ、妹の後見人にライフォスの最高司祭とかがつけば無視はできません。
ちなみに第一位である次女は病弱であり、第二位である三女は騎士働きをしているので不幸な事も起こり得るでしょうね。
四女は前述通りに継承権を持たない上に誘拐されているし、上の姉達に何かがあれば皇位そのものを継げるかもしれない。
とはいえ十一歳の女の子を権力抗争の道具にする構図にかわりはなく、いくら公人とはいえあまり感心できませんけどね。
女帝自身は妹思いのお姉さんのようだし、妹達も姉を慕っていると考えると、周りの思惑がとても無粋に思えてなりません。
一方神殿の外で留守番をするソラ達でしたが、ソラは神殿に入れない事に腹が立つので壁に落書きしていました(笑)
エア「こらぁああ!ムーテス、ちゃんとその子監視しておいてー!宗教戦争に発展する可能性が!」
すると「何をしているか、無礼者!」と叫んで木剣で殴りかかってくる女の子が現れます。
言わずもがな噂のホーリエル様です。後に"無垢なる未皇女"ホーリエル・ラスドン・アイヤールと呼ばれる少女です。
編みこみの入ったお下げを四本も垂らした活発そうな少女で、一人称は「我」と偉そうなのが特徴。
しかし幼い頃から預けられている反動からか淋しがりやの一面も持ち、敬虔なライフォス信者らしく公平な性格です。
ホーリエル「無礼者めっ、いきなり神殿の壁に落書きをするとは、どういう了見か!」
エア「あああああ、すいませんすいません。申し開きも出来ません。本当に無礼です」
ジーク「どうしたんだエア。いきなり虚空を見詰めて謝りだして」
ホーリエル「そなたらの父上や母上は、貴様に一体どういった教育をなさっておいでなのか!」
ソラ「えーとね。お父さんは何も教えてくれない。
お母さんは「汝の為したいように、適当に為せばいいんじゃない?」って」
ホーリエル「……それは、なんだか微妙にまずい教えではないのか(怯む)」
それは"狂神"ラーリスの教えですからね。主に魔神達が信仰する、完全なる自由を説く神です。
どの剣に連なる神なのかも謎であり、蘇生を忌避せず、異界の存在を召喚する事に長けています。
まるで世界のルールから逸脱しているようであり、MPを持たないグラランや、穢れを持たない魔神にも似ている。
こうなるとどうしても"暗黒神"ファラリスとの関連を疑ってしまいますね。一体どこから来た神なのか?
ここで目敏いムーテスは彼女の服が地味でありながら上物である事に気づきます。皇女様候補ですもんね。
ムーテス「金の匂い?」
メッシュ「営利誘拐禁止ですよムーテス」
ムーテス「そんなこと、ちょっとしか考えてないっす」
まぁそれは冗談として、可愛い子なのでソラは頭を撫でてせっせっせーと遊んであげました。
すると遊んでくれる相手がいないのか年相応に嬉しそうな顔をし、ムーテスに肩車してもらったりとご機嫌です。
逆に言えばこんな他愛のない事でこれだけ喜べるほど娯楽が少ないという事でもある。女帝もこんな女の子だったのかな。
ホーリエル「うむ。我はホーリエル。お前たち気に入ったから、ホーリィと呼ぶことを許そう」
メッシュ「清々しいほど大上段ですな」
姉のセラフィナ、ライティアもそうですが「ィ」が入っているのが姉妹の特徴ですね。あと何処となく正義っぽい。
セラフィム(Seraphim)やライト(Right)から来ているのでしょうか。するとホーリエルはホーリー(Holy)。
そうして遊ぶ内にどんどんエスカレートし、ジークとエアが帰ってくる頃にはとんでもない事になっていました。
ソラ「ほーら、ホーリィちゃん、これがジャイアントスイングっていう遊びー」
ホーリィ「きゃー、目が回るのだー」←でも楽しそう
エア「他所様の子に何をしてるのソラー!!(驚愕)」
ホーリィ「叱るなー遊んでもらっているのだ、叱るなー」←イメージボイスは釘宮理恵さんでお願いします
しかも冒険者+筋力で達成値19という出来栄えです。基準値が10もあるから出目9ですね、実に見事ですね。
でも後で彼女が皇女様候補と知って一気に背筋が寒くなったり。むしろ護衛が止めないのが不思議ですね。
ソラ「お勉強の合間には、色々悪さの一つもしないと、息が詰まるものなの」
ホーリィ「し、しかし悪さはいかんぞ。人様に迷惑をかけてはならぬのだ」
どうやらしっかりと教育されているようですね。ライフォスなだけに特に正義感や公平さが強そうな子です。
そのくせ教育する側は子供を利用して権力に食い込もうとしているのは矛盾しているような気もしますが。
これがぞんざいズと未来の皇女様との最初のささやかな?交流でした。
ホーリィ「また遊んでくれ、ソラームーテスーメッシュー」
ソラ「うん、またねー」
ジーク「で、あの女の子誰?」
メッシュ「ホーリエルとかいう、この神殿の元気なクソガキですよ、ジーク様」
ジーク「……きっと真っ青になってるな、俺たち」
エア「素敵、わたし、皇女様候補にジャイアントスイングかけた妹を持ってるのね」
それは非常に希少ですね。大抵の場合そこに至る頃にはパクられてますし。
★街で拾う神様の噂
旅を続ける一行は《赤砂領》レザナードに近付くにつれてルーフェリアの祠を多く目撃するようになりました。
どうやら神官が辻説法をする事で地道に知名度を上げているらしく、教義そのものも大きく間違ってはいないようです。
《赤砂領》は蛮族との戦いの最前線な上に水源の乏しい領です。それだけに対蛮族の実績がある水神は歓迎されているようです。
その辻説法をする神官の名前はガアラといいます。エアがプリースト+知力で判定しましたが知らない人のようでした。
GM「流れを全て受け入れ湖面のように穏やかな心を保ち続けましょう。みたいな」
ソラ「お姉ちゃんは常にエキサイトしてるけどね」
メッシュ「信者失格ではないですか」
エア「してない!そんなことない!」
彼女がそうなる原因の半分ぐらいは仲間への突っ込みですが、もう半分はルーフェリアへの信仰心故にです。
最早突っ込まずにはいられない体になりつつある気もしますし、むしろ彼女が突っ込まないと収拾がつかない。
ただしルーフェリアの神格が「湖」ではなく「国境」や「壁」になりつつある点は指摘したい所ですね。
初めは湖の女神だったとはいえ、蛮族を退け続けた実績から外部の人間がそう認識しても無理はないのかもしれませんが。
例え元がどうであれ、信者がそう認識してしまったら抗えない。以前大司教が危惧していたのはこういう事かもしれない。
やがて《赤砂領》に入った一行はベルの案内で、領主である"紅の魔人"アリオス・レザナードと面会します。
元冒険者のナイトメアで、ジークとベルの父親の知り合いだったらしい。一緒に冒険した事もあるかもしれない。
その時の縁は現在も続き、外国でありながらデーニッツ商会と懇意にしてくれているお得意様のようです。
年齢は32歳らしいのでジークの父親よりは年下でしょうか。ただしナイトメアなのでまだ青年に見えます。
性格は陽気で気さくであり、粗野な振る舞いは貴族からは蔑まれているものの、部下や領民からは慕われているらしい。
彼と面会したのはジークとベルとその従者達。あと興味本位で<メイド服>を着たソラです。
領主の館は特に飾り気はなく、赤い鎧で統一した兵士達が見張りをしています。最前線らしく正に質実剛健ですね。
アリオス「赤砂領レザナード領主のアリオスだ」
GM「手にはセスタスが嵌ってる。あと、彼は隠してないですがナイトメアです」
メッシュ&ソラ「は!ライバル!」
ジーク「違うってことだけは、俺でもわかる」
技能的にはメッシュと同じ拳闘士でしょうか。それなりに高レベルっぽいですね。
商品を渡すとアリオス卿は面倒くさそうな様子を見せたのが印象的でした。
アリオス「遠いところを、ご苦労だった。まあ、あとは白峰領の使いに手渡すだけだ。
さっさと持っていってもらうさ。ああ、謝礼と料金はこっちで預かっている、あとで受け取ってくれ。」
ジーク「何で、そんな面倒くさいことしてるんだろうな」
アリオス「しょうがないだろう、こっちは恵みが少ないんだ。土地的に豊かな白峰領の援助を取り付ける代わりに、
兵隊を融通したり、ちょっとした面倒ゴトくらいはきいてやるって暗黙の了解なんだよ(不機嫌)」
《白峰領》ゼスは《赤砂領》レザナードの北に隣接する領で、寒冷な気候と高い山岳地帯が特徴です。
寒冷ではあるものの土壌は豊かで牧畜が盛ん。あるライフォスの神官戦士が強力な蛮族を倒して切り開いた領でもある。
メッシュ「最前線ならしかたがないですね。生産活動も余り活発じゃないでしょうし」
ジーク「なあなあ兄ちゃん」
メッシュ「ジーク様!領主相手にいきなり「兄ちゃん」ですか!……素晴らしい、器の広さでございます」
ソラ「一瞬、背筋が寒くなったの」
でもアリオス卿自身はジークに輪をかけたぞんざいな人なので特に気にする様子は無い。むしろお互いそっちの方が楽そう。
ここでジークが提案したのは、自分達が《白峰領》まで商品を届けるというものです。
この《赤砂領》はあくまでも仲介に過ぎず、ルーの所在の本命は《白峰領》であると睨んでの事でしょう。
アリオス「へえ?そいつはありがたいな。あっちの恵みは欲しいが、
できればこういう宗教臭いのとは、なるべく関わりたくないんだ」
彼は雑多な傭兵団をまとめる領主ですから、セラフィナ女帝と同様に宗教関係には距離を置いているのでしょう。
アリオス「戦働きする連中にとっては、どの信者がかけても同じ"キュア・ウーンズ"だろう。
使い手は何人いても困らないが、上の者が一つの神を贔屓したら下がやりづらくなるし、派閥を作ると面倒だ」
なかなか話の分かる人ですね。元冒険者なだけに世事にも長けている。どこぞの"傭兵王"を思い出す人柄です。
実際この領が雇用している傭兵は人族だけではありません。中には蛮族の傭兵も混じっているようです。
所属する神官も第一の剣に連なる神だけではなく、"戦神"ダルクレム等の第二の剣に連なる神の神官もいるようです。
蛮族が蛮族と戦うのは奇妙に見えるかもしれませんが、人族が人族と戦うケースも多いのだから別におかしくはありません。
傭兵は報酬と引き替えに戦う稼業ですし、最前線という事もあって種族や出身にはかなり寛容な領のようですね。
アリオス「それなら、面倒ゴトを押し付ける形になって悪いが……
荷物を、白峰領に運んでもらおうか。報酬は二千くらいでいいか?」
ジーク「渋いぞ、領主!」
アリオス「財政難なんだっちゅうとるだろうが!」
でも馬車を用意してもらい、防寒具や保存食までちゃっかり貰ってしまいました。どうせ本命の仕事ではないし。
あとここまで連れて来たジェロを預け、案内役としてローランドとトレード。ジーク曰く「しっかり鍛えなおしてくれ」。
ライティア姫を取り戻すという目的があるなら悪くないかもしれませんね。もっとレベルを上げないとお話になりませんし。
あと弟ともお別れです。
ベル「全然お金ないんでしょ、二万くらい貸しておくよ」
ジーク「ええっ!いいのか?」
メッシュ「さすがはジーク様の弟君、素晴らしい(揉み手)」
ベル「言っておくけど、あげるんじゃないですからね。貸すんだからね」
アイシャ「必要経費分はこれに記録してください(帳面を渡す)。
それによって査定します。ザルな勘定では通しませんからね」
メッシュ「もちろんもちろん。ちなみにわたしの勘定はザルではありません、どんぶりです」
素晴らしいツンデレっぷりの弟です。このお金は貸したという名目ですが、事実上の報酬です。
何しろ《陰影領》に潜入して以来、特に報酬もなく突っ走ってきましたからね。いい加減資金が底をつく。
シナリオの展開上仕方のない事かもしれませんが、もっと負い目を感じない形でお金を渡したいところでした。
会計については商人でもあるムーテスがやります。
ムーテス「任せてくれれば増やして返すから」
ソラ「増やす?じゃあ博打打とう、ひさしぶり」
ムーテス「違う。利殖に回すんだ」
これが遊び人と商人の違いです。失敗するとまた負債が増えるという点では同じですが。
更にベルはジークの所在をしっかりと聞いてきます。
ベル「あ、会いに行くんじゃないですよ。取り立てに行くんだからねっ」
ジーク「可愛いヤツだなあ。ちょっとぎゅっとしたくなるぞ」
本当になんでこんな可愛い弟を放ったらかしにしてきたんだろう。
★白い峰の白い神殿
《白峰領》ゼスに入るとかなり頻繁にルーフェリアの祠を見かけるようになります。やはりここが核心か。
そして山岳地帯の中腹まで来ると「ようこそ女神ルーフェリアの里へ」という横断幕まで見られます。
一同「何だそりゃー!」
エア「ルーフェリア様の別荘、くらいに書き換えてやるー!
本舗、元祖とかいう文字とかあったら、二重線で消して回る!」
ムーテス「何でだろう、急に放置してもいいような気がしてきた」
ここ数日でかけられた様子から、隠す必要がなくなったと見られます。町興しみたいになってるし。
そこでルーフェリア団子を売っているおばさんに事情を聞いてみました。
エア「るーふぇりあだんご……(わなわな)」
ソラ「わーい。パチモン、パチモン。リアちゃんに送ってあげたいの」
ジーク「びっくりしたよ、前はこんなんじゃなかったのに、いつの間にあんな横断幕が」
おばさん「ああ、そう。近々大きな祭典が開かれる予定らしくてねぇ。
それに合わせて神殿が、ルーフェリア正統神殿として名乗りを改めるそうなんだよ」
それは峰のかなり高いところにあるフーギという街にある神殿であり、お祭りの真っ最中なんだとか。
わざわざ「正統」なんてつけている所から本国の神殿への対抗意識も見えますね。そこにルーちゃんもいそうです。
ムーテス「やばい既成事実を着々と作られてる」
おばさん「もともとは小さな国の神様だったらしいけどねえ」
ジーク「その国はいったいどうなったんだろうな」
おばさん「さあ。でも、どこにいようと神様の力には関係ないだろう?
大きな神殿で祀られて、信者がたくさんいたほうがいいじゃないかねえ」
エア「……ぶっちゃけると。ルーフェリア様がどこにおわそうとも、じつはどうでもいい。
この国にいる分には、いいと思ってるの、実は。
信者が増えるのも、いいことだと思うし。大神になってくだされば、嬉しい。
でも、それが無理矢理っていうのは気に食わないし、陰謀が絡んでたら余計にほっとけない」
神様を取られる事に抵抗はあるかもしれませんが、それはとても世俗的な事だし、信者の都合でしかありません。
本当に神様のことを思うのなら、彼女のようにそれを潔く受け入れる事も必要なのかもしれませんね。
ただしここに来るとその教義はかなり歪んでいます。
「互いの間に隔たりを設けて、他人に立ち入らない。他人に立ち入らせない。
そうすることで他者と自分を比べることもないから、心穏やかに平和に暮らせますよ」
エア「自分と他人とを区別して立ち入らないなんて、教えてないー!
なぜなら水の流れは区切れるものではないから!」
ソラ「器に入ったら区切れるよ、お姉ちゃん」
エア「なぞなぞじゃないのー!」
本来はどんな流れもいつかは穏やかになり、留まることなくゆっくり変化するので、それを待って受け入れるというもの。
壁を作ったのは蛮族を退ける上での結果に過ぎず、それ自体はルーフェリアの教義ではありませんからね。
信者が増えるのはいいとして、教義の変更はどの程度まで受け入れるべきなのかという別の課題が生まれましたね。
それからそんざいズは峰を登ってフーギの街に入ります。《白峰領》の中でもかなり大きな街のようです。
噂の正統神殿(笑)は新雪のように白い大理石で作られており、本国の神殿より立派なぐらいです。
そんざいズは発注者の神官カティスに納品する名目で会う事ができました。今度行われる祭典に深く関わっている人ですね。
ムーテス「しかし、こんなに一杯の神官服や聖印、どうなさるんですか?」
カティス「ああ、それはですね。この祭典に合わせて入信したいという人々が多くて」
神官服や聖印をつければ信者や神官になれる訳ではありませんが、気を引き締める意味で用意したんだとか。
一時は馬鹿馬鹿しいと思ったこの祭典ですが、思った以上に大事ですね。やったねルーちゃん、信者が増えるよ!
ジーク「ここの神殿の一番偉い人は、なんていう人なんだ?」
カティス「あ、エルヴィーン様のことですか?」
すると彼は「あ」という顔をして、取り繕うようにあまり人前に顔を出さない人だと付け足していました(怪しい)。
ジーク「俺、誤魔化されたことにも気付かずに、うっかり聞いちゃうけど」
メッシュ「素晴らしい、その面の皮の厚さこそ、勇者の証でございます、ジーク様」
カティス「いやいや、まあ……ちょっと私も疲れているようで、色々余計なことをいいましたかな。
何しろライフォス神殿との軋轢もあって、大変なんですよ」
元々この《白峰領》はあるライフォスの神官戦士が蛮族から奪い取った土地で、ライフォスの影響が強かったのです。
それだけに新参者のルーフェリアが幅を利かせている事はライフォス神殿にとっては愉快な事ではないのでしょうね。
メッシュ「ははは。しかたがありますまい、出る杭は打たれるものですよ」
カティス「うむ、まあ、そうだね。今絶賛出まくり中だからな、我々は」
メッシュ「人気のバロメーターと言うヤツですな」
エア「……ルーフェリア様を、出る杭扱いするの、やめてよ」
ソラ「すごいの、完全に売り出し中の新人アイドルと大御所の喧嘩って感じ」
そしてそれが最高潮に達すると思われるのが5日後に行われるルーフェリア降臨祭です。
それに合わせてライフォス神殿も何かを計画しているらしく、非常に不穏なものを感じます。
ルーの所在を半ば確信したそんざいズはカティスに頼んで神殿に泊めてもらい、情報収集に乗り出します。
★フーギの街の情報収集
荷物を正統神殿に置いたぞんざいズはお祭り真っ盛りのフーギの街に情報収集に乗り出します。
メッシュ&ソラ「レッツお祭り!」
ジーク「たのしそうだな、お祭りコンビ」
メッシュ「……一緒にされるのは、とても屈辱的なのですが」
ソラ「それ、あたしの台詞だもん」
ここでぞんざいズはこの領がライフォスの神官戦士によって蛮族から解放された歴史を知りました。
そうなるとやはりルーフェリア神殿がライフォス神殿のシマを横取りしてしまった状態になる訳ですね。
イアンが神殿を飛び出したのもそれに危機感を覚えたからかもしれない。このままでは宗教紛争勃発か?
それでは次にこの街のライフォス神殿を尋ねたいところですが。
メッシュ「あ。あとちょっとお待ちください、あとちょっとで、ルーフェリア人形が取れそうなんですよ」
どうやらお祭り名物の射的屋に引っ掛かったらしい。でもシューター技能がないので上手くいかないのです。
エア「ああああっ、ルーフェリア様を撃つんじゃありませんー!
ていうか店の親父!こんな神に弓引く行為を、商売にしてはいけません!」
親父「銃だから……(もじもじ)
メッシュ「はっはっは、これは一本取られましたな」
エア「余計に威力が高いでしょうがー!(悶絶)」
実はこのパーティでシューター技能を持つのはエアだけなんですよね。2レベルしかないけど。
この銃がコルクを撃ち出す玩具ならばシューター技能だけで撃てるでしょうね。絶対やらないだろうけど。
まさか魔動機術が必要な本物の<ガン>は使っていないでしょう。当てたとして景品が粉々になる可能性が高いし(笑)
ソラ「ルーフェリア的なお祭りというと、やっぱり金魚すくいとかヨーヨー釣り?」
ムーテス「他はアレでしょ、素潜り大会」
ソラ「ここでは寒いんじゃない?」
ムーテス「そりゃあ、洗面器に水を張って、よーいドンで顔つけるんでしょ」
ジーク「当然決勝戦はエルフばっかり」←〔優しき水〕で1時間水中活動可能
メッシュ「決勝戦は、まず一時間水に顔をつけてからスタートでしょうね。ハンデ戦が必要です」
エア「故郷では、珍しくも何ともない行事じゃない」←あるんだ
それをやると生命力52の大司教が強そうですね。〔優しき水〕がなくても8分40秒ほど耐えられます。
あとは戦闘特技《不屈》があるので生死判定に成功する限りHPが0以下になっても大丈夫かもしれない。
こうしてお祭りを堪能した後にライフォス神殿を訪れたのですが、敷地の広さに反して人の姿は少ないようでした。
ソラ「何か、今、街、お祭り状態で落ち着かないの。何かルーフェリア、ルーフェリアって、ちょっときもーい」
エア「…………」
ソラ「ライフォス信者の心証をよくするための演技だからね、お姉ちゃん(ぼそ)」
エア「……わたし離れておきます。うっかり、妹相手に"フォース"を撃つか、二秒くらい悩んだけど」
神官「全くだね。バカ騒ぎったらないよ、みっともない」
すると対応してくれた神官さんは表情を輝かせて賛同しました。やっぱりストレスになっているらしい。
神官「でも、まあ……あと少しの辛抱だしね」
一同「あと少し!?」
ジーク「え、なんで?そこは怪しまれようともつっこむぞ」
どうやら《石街領》アイールから騒乱鎮圧用の神官戦士団本隊が到着するらしい。それがライフォス神殿の計画でした。
ルーフェリアの祭りが行われている最中に精鋭部隊が颯爽と現れ、ライフォスの威光を示そうという魂胆なのでしょう。
それとカティスが口にしていたエルヴィーンという名前について尋ねると、神官さんは驚いた顔をしました。
そしてぞんざいズを人目のつかない個室に案内し、エルヴィーンとはこの土地を支配していた蛮族のリーダーの名前だと証言します。
正統神殿にある地底湖を住処にしていたが、数十年前にライフォスの神官戦士に倒されたのです。種族はダークトロールでした。
トロールといえばフォーセリアでは知能の低い巨人族でしたが、この世界では蛮族における"戦士の一族"として知られています。
優れた戦闘力と裏表のない性格を有しており、蛮族でありながら自らを鍛え強者と戦う事に生甲斐を見出す武人なのです。
種族的な特徴として太陽の下では《弱体化》し、命中と回避に−2のペナルティを受けます。また多くは神聖魔法を使用します。
通常のトロールは6レベルの蛮族ですが、ダークトロールはその上位種にあたる8レベルの蛮族です。
通常のトロールより引き締まったスマートな体をしており、卓越した戦闘センスと篤い信仰心(神聖魔法7レベル)を持つ。
その肌は名前が示すように黒く、太陽の下でなければ《暗闇の再生》によって毎ラウンド5点ずつHPが回復していきます。
他の特徴として魔力10で《魔力撃》使用可能。《マルチアクション》《ワードブレイク》《魔法拡大/数》使用可能です。
実はラミアやコボルドと同様にPCにする事も可能な種族であり、個体によっては8レベルを越える者も存在します。
また例え人族であっても強者には敬意を払う性格から、中には人族の個人や集団との間に友好関係を築く者も存在しています。
《赤砂領》には蛮族の傭兵もいるようですが、その中には彼らダークトロールが混じっていても不思議ではありません。
ちなみに《マルチアクション》はPCの戦闘特技にも存在する能力で、近接攻撃と魔法を同時に使用するというものです。
武器で攻撃しながら味方を援護したり、武器と攻撃魔法の二連撃を叩き込んだりと、魔法戦士がより有効に戦えますね。
ダークトロールのような神官戦士の場合は自分で自分を回復しながら殴れますから、セルフ回復で殴られる一方にならずに済むし。
あと《ワードブレイク》もPCの戦闘特技にあり、任意の魔力を使って効果時間中の魔法を打ち破る事が可能になります。
敵の魔法にとらわれている状態でそれを打ち破る、そんな小説ではよくある描写を合法的に再現する事が可能になる訳です。
ムーテス「で、平和をもたらしてくれたライフォスよりも、
その平和を維持してくれそうな若くて綺麗なお姉ちゃんの女神に民衆は流れつつあると」
ソラ「……ライフォスが怒る気、わかる気はしなくも、ない」
そしてその地底湖の管理権限も急速に力をつけた正統神殿に奪われてしまったと。
この上ルーちゃんがルーフェリアとして降臨したらライフォスの功績は忘れられそうですね。
実は例の神官戦士団の出陣にも地底湖が関係していまして、何者かによる密告があったのです。
『現在ルーフェリアの正統神殿は、本当に小神を地底湖に招こうとしている』
『地底湖の蛮族が復活してきてる。ルーフェリアの正統神殿は、それとつるんでるがゆえに地底湖を支配している』
そういった有事に備える為の出陣でもあるらしい。それでも名目は演習。
実際この神官さんも本当に事件が起こるとは考えていないようです。
神官「でなければ演習の旗頭にホーリエル様を押し立てたりしませんよ」
ソラ「え、あの子来るの?」
ジーク「戦いになったら危ないじゃないか、あんな小さな子」
もしそうなったら大人が出張ります。そうでない限りは彼女のお披露目をメインにするという魂胆もある。
流石にただの対抗意識で演習をする程愚かではなかったようですが、どうも本当に戦いになるという意識は薄そうですね。
しかし密告が真実である可能性は高く、それが露見したらルーフェリアは蛮族と手を組む邪教と認定されてしまいます。
よって正統神殿が蛮族と手を組んでいるという事実をぞんざいズが誰よりも早く掴み、露見する前に処理するのが望ましい。
エア「ルーフェリア信者としてあざとい言い方をすれば、信者はそのままで蛮族は倒したい」
恐らくは事情を知るのはエルヴィーンの名を口にしたカティスのような幹部のみ。一般の信者や神官は知らないのでしょう。
そういったガンのみを切除し、正しいルーフェリア神官を据えてしまえば、アイヤールにおけるルーフェリア信仰の橋頭堡にもなる。
これはとてもデリケートな事件ですね。誰にも知られず、誰よりも早く、解決しなければならない。
失敗すれば破滅だが、成功すれば非常に美味しい事になる。その鍵が正統神殿に捕らわれていると思われるルーちゃんです。
★正統神殿の危ない事情
現在の正統神殿で味方になりそうなのは2人です。捕らわれのルーちゃんと、正しい布教をしていると思われるガアラですね。
しかしルーちゃんの幽閉場所はまだ分からず、ガアラは布教活動で神殿を留守にしているので会うことはできません。
そこでカティスと交渉し、一部の信者にしか拝観を許していない地底湖への立ち入りを許可してもらいました。
ジーク「そうか、ガアラさんに会えないのか、残念だな」
カティス「まあ、あの人は頭の固い人ですから。もうちょっと、頭を柔らかくして欲しいところですよ」
メッシュ「頭を柔らかくとは、どんなくらいに。もしかして蛮族と一緒に女神を崇めてもいいと思うくらいですか?」
ソラ「あーあーあー!ご飯美味しいのっ、すごく美味しいのっ!」
流石にメッシュの質問は直球過ぎますが、ガアラがまともなルーフェリア信者ならカティスにそう思われてるでしょうね。
あと料理については本当に美味しいそうです。それは以前イストが作ってくれた料理を思い出す程にね。まさかヤツが既に……。
メッシュ「まあ、食事を終えて、夜になったら私が探りに行ってみようと思うのですよ」
一同「そ・れ・は・や・め・と・け」
メッシュ「何故そんなに声が揃うのですか!」
ジーク「最初の印象って強烈なんだよ」
出目もさることながら、冒険者レベル6に届く現在スカウトが3レベルで止まってるのも不安を誘いますね。
GMはそれを踏まえて目標値を12や13程度にしてくれているので期待値でいける筈ですが、その期待値が出るか(どんだけ不安だ)。
そうして宛がわれた部屋で話していると、ドアの大分下の方をノックする音が聞こえてきます。
イスト「ベッドメイクにきましたー!」
ジーク「本当に忍び込んでいた!」
ムーテス「すごいな、優秀だ」
イスト「よう!びっくりしたぞ、ほとんど同時だな!」
"クエスト"は目的を遅延させてもダメージが入りますからね。既に神殿に料理人として潜りこんでいたのです。
リオス経由で川を遡ってきたとして、ぞんざいズの寄り道を考えてもかなり早い到着のような気がします。
彼の内偵で神殿の見取り図と、人族に化けていると思われる蛮族の情報が手に入りました。《真偽判定》でぞわっとしたとか。
その人物は神殿の奥にある人力の昇降機を守っている連中です。これはハンドルを回して上げ下げするエレベーターですね。
昇降機は下にいけば地底湖に通じていると思われます。上にいけば山の中に突っ込んだ謎のスペースに繋がります。
これを聞いたメッシュは山を登って調べにいきます。〔暗視〕があるので暗い山道でも問題なし。
ソラ「それならフェイ連れていって、捕まるところ実況中継して」
ジーク「あと、預かった二万ガメルはおいていってくれ」
メッシュ「(しくしく)……うう、何故失敗を前提とされているのでしょう、私は」←メッシュだからです
それでももしルーちゃんの居場所を掴めたらすぐにイストが大司教に連絡する予定です。
これに使用するのは<通話のピアス>です。黒いドロップ型のピアスで、2つで1セットとなっています。
どれだけ離れていてももう片方のピアスに声を届ける事ができます。1日10分まで使用可能な2万ガメルの品です。
携帯型のトランシーバーみたいなものですかね。スパイや各国の要人は当たり前のように所持していそうな品ですね。
こうして調査に乗り出したメッシュは予想に反して《隠密判定》や《探索判定》に連続成功して進んでいきます。
一同「…………(沈黙)」
メッシュ「誰ですか、残念そうな顔してるのはー(得意気)」
成功したらしたでこのどや顔。素直に喜べないのは何故だろう(苦笑)
これでメッシュは明り取りの窓を発見。中を覗いてみると、昇降機で昇った先にある女の子の部屋と思われます。
メッシュ「夜中女の子の部屋を覗くわたくし。何だか、胸がどきどきします。……匂いでも嗅いでみますか」
GM「やめ」
残念ながら部屋の主は不在でしたが、ルーちゃんの部屋と思われるので場所だけ覚えて退散です。
窓は小さすぎてグラランでも入れず、置手紙を置こうにも敵に見つかったらこちらの存在がバレるので自重します。
あと帰りにも《隠密判定》が必要でしたが。
メッシュ「(ころころ)……ぱりーん」←腕輪を壊した
ムーテス「ああっ、躊躇いなく千ガメル壊した!」
ジーク「いいよいいよ。また街に行ったら軍資金で買い直そう」
ただ壊すだけなら指輪の方がリーズナブルですけどね。
そして翌朝、腕輪を買い直し、昇降機で地下に降りて地底湖の拝観に参加します。今回は数名の一般巡礼者も一緒です。
ジーク「カティスさん、上には何があるんだ?」
カティス「ああ、上は一番偉い方のお部屋ですよ。もちろん」
ジーク「一番偉いって、もしかしてルー……」
カティス「いやいや、それは、はっはっは」
笑って誤魔化していますが否定はしません。やはり例の部屋がルーちゃんが軟禁されている場所でしょうか。
地底湖は大きな鍾乳洞になっていて、湖の中央には円形の舞台があり、女神像が飾られています。
GM「本国に伝わっている女神像よりも若干幼いですね」
メッシュ「本国のものとは多少変化があるわけですな。腹筋が割れてたり」
エア「割れてない!」
ムーテス「蛮族を蹴散らすルーフェリア様像という、雄々しい姿だったり」
エア「蹴散らさない!……ちょっといいかもって思ったじゃないの!」
ムーテス「え、それ僕のせい?」
ここに以前は蛮族の集落があったのでしょう。しかし既に跡形もなく、その存在すら疑わしくなるほどです。
あと周辺には他の神々の像もあって敬意を示しているようですが、含みがあるかのようにライフォスの像だけがない。
本来ライフォスはザイアの次ぐらいにルーフェリアと仲がいい筈なんですけどね。やはり宗教紛争勃発か。
ここでメッシュは《探索判定》を行い、出目11で達成値17を叩き出します。
ジーク「今日はすごいな、メッシュ」
ムーテス「ついに死亡フラグっすか?」
メッシュ「ろくでもないモノを勝手に立てんでくださいリルトカゲ!片っ端からへし折りますよ」
これで湖を回り込むような人間よりも大きな足跡と小さな足跡を発見します。推定エルヴィーンとルーちゃんですね。
エルヴィーンがルーちゃんを舞台に連れて行った痕跡だとすると、この足跡の先に舞台に通じる通路があると思われます。
ここでぞんざいズが取った行動はまたとんでもないもので、大騒ぎをしてカティスの気を逸らすというものでした。
ジーク「うわあ、広い場所だなあ!よぉし、メッシュ!向こうの端まで競争だ!(めっちゃ朗らかに)」
メッシュ「よろしいですね、ははは、ジーク様、負けませんよー(とても楽しそうだ)」
ソラ「あ、フェイーフェイー遠くにいっちゃダメなのー!」
カティス「な、何やってるんですか。皆さん順路を逸れないでください!
変なところに勝手に走らないで!ああっ、ペットを放さないで!ここは神聖な場所なんですよ!」
ムーテス「すいませんねぇ、彼ら子供なんで、広いところに出るとつい、はしゃぎたくなるんですよ」
これで警備の人達はジーク達を抑えようと大騒ぎ。この隙にエアはレンジャー技能で石筍を遮蔽物として足跡を追跡。
すると足跡の途切れた場所に隠し階段を発見します。湖の下を潜って舞台に繋がる通路になっているのでしょう。
ついでに湖を調べると謎の生物を2匹発見します。《魔物知識判定》の結果カマウェトと判明しました。
カマウェトは4レベルの幻獣で、翼のないドラゴンのような姿をしています。体長は数mで本来は海に棲んでいます。
好物は魚で性格は温厚。人族を背中に乗せて船の代わりになってくれる事もあります。知能は人間並みでドラゴン語を使用します。
このカマウェト兄弟もエアに対して友好的に接してくれますが、言葉が通じないのでどうしようもない。
そこでドラゴン語をネイティブで喋れるムーテスを呼びます。リルドラケンは種族的にドラゴン語を使用していますからね。
エア「……じゃあ……水中からそっと顔だけ出して。ムーテスに"コアーシブ"をかけます。気付けやコラァ!」
ムーテス「うわぁ!しまった昨日の夜、二万ガメルから百ガメルぱちったのがばれた!」
"コアーシブ"は6レベルの神聖魔法で術者に敵対行動を取る事ができなくなるというものです。
この場合の敵対行動とはダメージを与える行動を意味し、「ウィザーズトゥーム」でダメージを与えない行動なら可能と明記されました。
エア「水面から半分顔出して、めっちゃムーテス見てる。顎で「来いや」の仕草」
ムーテス「がくがく震えながら近づいて行きます。体色、紫なのに、青紫になってる、まじビビリ」
そしてエアが水中に引きずり込み、カマウェトに助けてもらいました。金属鎧だと行動不能になるので危ない所でしたよ。
カマウェト「やあ、兄弟」←ドラゴン語
ムーテス「君たち、ずっとここに住んでるんですか?」
カマウェト「そだよ」
ムーテス「ここで何をやってるか知ってますか?」
カマウェト「知ってるよ」
彼らの話によれば毎夜小さな女の子を舞台に乗せて祈りを捧げているそうです。その瞬間だけ女の子は成長していたとか。
祈りを捧げて人工的に力を与えているのでしょう。最終的には大人の女性の姿に進化するのかもしれない、某堕女神の如く。
カマウェトA「いやー。ずっと前は、人族蛮族で争っていて大変だったんだよ」
カマウェトB「でも……最近はいいよね。喧嘩してなくて」
やはり蛮族と手を組んでいるのでしょう。密告の内容が真実だと判明した訳です。
ただその為に払った代償は結構高くつくかもしれない。カティスの心証を「死ねばいいのに」レベルまで下げてしまいました。
メッシュ「私など"フラッシュライト"まで唱えて、明後日の方向を探すという、迫真の演技でしたよ」
ソラ「ごめんなさーい。やっと帰ってきましたーって、言いながら、フェイをちょこんと肩に乗せてるの」
カティス「貴方たち……貴方たち……神聖な場所で、何をするんですか!もう、二度とここには立ち入らないでください!」
主従&妹(反省のポーズ)
カティス「そんなんサルでもできるわー!」
そして神聖なはずの湖で水浴びしているエルフとリルドラケンの姿もあり、彼は完全にキレてしまいました。
そのまま説教室送りになり、延々とお説教を聞かされました。別に嫌われるだけならいいんですが、行動を制限されるのは痛い。
★説教室の懲りない面々
説教室にぶち込まれたぞんざいズはカティスから延々と説教を受けましたが、それで怯むぞんざいズではありませんでした。
ソラ「暇だから、その間にフェイを飛ばすの、女の子の部屋覗きにいく。お説教を聞き流すのは、得意」
すると今度は部屋にルーちゃんの姿がありました。ただし頭に<エンジェルリング>をつけて眠っています。
これはつけている限り歳も取らずに眠り続けるという5000ガメルの品です。監禁には好都合のアイテムといえます。
それを確認したソラはフェイを呼び戻し、仲間に報告して手紙を書き始めます。説教中なのに見事なスルースキルです。
エア「え、何ですって!それは、わたしも書かないと!え?お説教?はいはい聞いてますよー!」
メッシュ「超嘘ですな」
カティス「聞いてないじゃないですか、反省してないでしょうー!」
エア「え?ああもう煩い。字を間違えたでしょう!」←逆切れ
ますますヒートアップするカティスを他所に、序文で便箋二枚を使う大作の執筆に取り掛かります。投稿小説か(笑)
妹は『るーちゃんへ。これはあたしの使い魔です。怖がらないでね。みんな一緒にきたよ』と簡潔にまとめていたのに。
再度ルーちゃんの部屋へ飛んだフェイはクチバシでリングを外して彼女を起こして手紙を渡しました。
するとルーちゃんは「にぱー」とばかりに嬉しそうな笑顔を浮かべ、机にある聖典を破って便箋代わりにして返事を書きます。
『ルーはげんきです。ここにいると、ねむくないの。心配しないで。
ここにいて、わたしが、しないといけないことあるんだって』
微妙に利用されているようですね。信仰が神の糧になるのなら、まるで餌付けをされた雛鳥のようなものでしょうか。
でもぞんざいズの事もちゃんと大切に思っていてくれて、ジークがあげた<宝石>はペンダントにして身につけていました。
しかしそうすると更にカティスの怒りを買い、説教の時間が延びます。最早時間的コストを払って情報を得ているようなものですね。
メッシュ「むむ、しかしこのまま解放されないというのも困ります。
最初は、ふざけた態度で聞いていますが、次第にしょんぼりと、項垂れながらお説教を聴きましょう」
ムーテス「うまいっすね、メッシュ」
メッシュ「生活の知恵ですよ」
流石はデーニッツ家のヒエラルキー最下位、色んなものを切り売りして少しでも楽な方に行こうとしていますね。
すると流石にカティスも心が痛んだのかクールダウンしてきますが、そのタイミングでまたフェイが帰ってきて台無しです。
更にはカティスと反りの合わないガアラの事を聞いて反感を買い、《真偽判定》をして目つきが悪いと怒られたりもしました。
こうして彼らはかれこれ4〜5時間も説教室に入り浸っていたのです。もう説教室どころか反省室に放り込まれても不思議ではない。
そして自分を無視して相談を続けるぞんざいズを相手に、最後には涙目になって一喝。
カティス「貴方たち……貴方たち、私になんか文句でもあるんですか!(机バーン!)」
エア「究極、貴方個人に文句はありません。しいて言うなら、この国のシステムに文句があります」
ムーテス「エアさん、火に油を注がない!」
エア「抜本的な改革が必要です!(握り拳)」
ソラ「革命だー革命だー」
カティス「う、うむ。それはそのとおりだ。確かに、この国のシステムには問題が多い」
……どうやら別のスイッチが入ったようです。彼は現体制に不満があり、賛同者を欲していたのでしょう。
どうも彼は信仰さえあれば人族と蛮族を区別しないタイプの人のようです。ある意味理想主義者ですね。
カティス「人間の中でダルクレムを信仰する連中よりも、わたしとしては、
ルーフェリア様を信仰する蛮族のほうが、わかりやすいし、分かり合えると思いますよ」
それによって蛮族が教団のトップに立っても問題なし。志が同じなら種族は問わないという考えですね。
それだけ聞くと素晴らしい事のように思えますが、数千年に渡って戦い続けた種族同士が仲良くするのは難しいでしょうね。
皆で仲良くというのは一つの理想ですが、理想であるからこそ叶わない。個人レベルならともかく種族レベルではね。
以前フォーセリアでファリス・バッシングが強く、ファラリスが擁護されている時にこんな質問をする人がいました。
「あなたはファラリス信者と同じ部屋で寝れますか?」
大抵の人はNOでしょうね。自由を標榜する連中が何をするのか分からない、だから怖くて隙を見せられない。
確かにファラリス信仰にもある種の正当性はあるかもしれないけど、それを受け入れるかどうかはまた別の話です。
「自分と同じ常識を有しない」者に対し、人間はどうしても拒絶反応を示しますし、当たり前の防衛本能です。
同じ人間同士でも知らない人間は警戒するし、外国人や異民族は簡単に受け入れられないものですしね。
ラクシアの人族と蛮族もまたしかり。調和の人族と解放の蛮族にはどうしても崩せない常識の壁があるように思える。
信仰によって限定的にそれを取り除ける事はあるかもしれないけど、種族や国を挙げて結ぶのはちょっと無理でしょう。
本人は良くても周りの人達はどうしても蛮族を受け入れないでしょう。同じ人族同士でも差別があるのに、敵対種族なら尚更です。
とはいえここは彼に話を合わせてベラベラ喋らせるのが正解でしょう。
メッシュ「素晴らしい考えです!(拍手)」
カティス「おお!君はわかってくれるかね、ルーンフォークなのに!」
メッシュ「ええ、きっと分かり合える蛮族たちはいますよ!」
ちなみに蛮族PCは名誉点によって人族社会の地位を名誉アイテムとして買うことが可能です。
250点で「名誉人族」となり都市レベルで受け入れられ、900点で「人族以上に人族」で国家レベルで受け入れられる。
そして3000点で「もはや蛮族と呼ぶ者はいない」となり、超国家レベルで受け入れられるのです。
ただ3000点って相当なものですよ。大司教が3000点越えですから、それぐらいの偉人にならないといけない。
何故ガアラがカティスと反りが合わないかというと、ガアラはその思想に反対する一般的な人族の常識を持つ人物だからです。
カティス「ああ、あの人は頭が固くてねえ。いくら本国で修行したといっても……
あのがちがちに硬直した思考では、水の如く柔軟に対応すべきという我々の思想にはついていけないよ」
メッシュ「ああーそれはいけませんね。ガアラさんには、是非とも早く蛮族のお友達を紹介して差し上げるべきですよ」
相変わらずメッシュの交渉は見事なものですね。宗教的束縛を受けないルンフォという事もあるのか手段を選ばない。
しかしそれがタブーに当たる神官もここにはいるわけでして。
エア「……えーと、念のために、メッシュに訊いておきたいことがあるの。予め」
メッシュ「何ですかな?」
エア「一体何発撃ちこんで欲しい?(真顔)」
一同(爆笑)
メッシュ「フォ、"フォース"ですか?"フォース"ですか!」
実際には撃ちこまないけど、ぶち切れる神官がいてもおかしくない内容ではありました。
ソラ「すごいなー。蛮族のこと、そんなに信じられるんだ」
カティス「何を言ってるんだい。信じて欲しいなら、まずはこちらが信じなければ」
エア「納得してしまいそうにはなる」
カティス「そして、お互いに利益をもたらしあえれば最高の関係が築けるとは思わないか」
ムーテス「確かに、それは商売の基本だね」
正論ではありますが、蛮族にとっての利益が人族にとっての不利益になりえるのが問題です。
実際ルーちゃんを誘拐するという、ルーフェリアの国にとっての不利益を与えていますしね。
ただしこの国は現在ディルフラムとの戦いの真っ最中にあるため、カティスはそれを快く思っていません。
カティス「隣国ディルフラムに攻め込めば攻め込むほど、バルバロスと結ぶのが難しくなるというのに!」
バルバロスとは蛮族が自分達を呼ぶ際に使う言葉です。蛮族に対して同胞意識をもっているようです。
しかし彼の危ない思想を引きずり出せたのならこちらのもの。同胞のフリをしてしまえばいい。
メッシュ「素晴らしい!カティス様、私は貴方の宗教人としての理想の高さに、感銘を受けました!(拍手)」
カティス「なんと!わかってくれるのかね!(目がキラキラしてる)」
ソラ「わかるわかる。蛮族なら、ナイトメアの穢れも、あまり気にしなさそうだし」
エア「ソラー!……妹に裏切られた気分」
カティス「もちろん。バルバロスにとっての、穢れとは誇りじゃないか」
メッシュ「おお、素晴らしい理解ですよ。何て心が広いのでしょう(感涙)」
ムーテス「この素晴らしい教えは、何としてでも、広めなければいけないよ!(感銘)」
ここで同調するのは嘘が苦手なジークと言わずもがなのエア以外の3人です。
そしてガアラも自分達が説得しようとカティスに誓いました。
メッシュ「我々が是非、その柔軟かつ広い心の教えに従うべきだと進言をいたしましょう!」
カティス「すばらしい!してくれるのか!(握手)」
腹芸組「もちろんです!!(握手)」
実はガアラはもうすぐこの神殿に戻ってくるそうなので、ぞんざいズはそれを出迎える使者の役目を任されました。
メッシュ「では、そのお役目喜んで」
ムーテス「ルーフェリア様の名において」
ソラ「名においてー」
ジーク「……メッシュが遠いところに行く気がする」
エア「偶然ね、ジーク。わたしも妹の背が涙でかすんで見えないわ」
正統神殿の使者のフリをして実は本国の使者という、二重スパイ的な立場になっていますね。
★孤高の布教人?
神殿から馬車を借りたぞんざいズはガアラとの接触に成功します。旅のし過ぎでボロボロになった髭親父でした。
最初は正統神殿の使いかと警戒していましたが、本国から来たと明かして適当な酒場に連れ込みました。
ジーク「じゃあ、肩組んで適当な酒場の個室に連れ込む」
ムーテス「……なんだかさー……微妙にやることがチンピラ臭いんだよねえ」
結果は気にするけど手段は気にしない、それがぞんざいズのぞんざいさなのです。
話を聞いてみると、彼はこの国の人間ですがルーフェリアの国で修行を積んだ経歴の持ち主でした。
ソラ「じゃあ、大司教さま、知ってる?……ていうか、うちのお父さん知ってるかなあ?」
ガアラ「……ああ!懐かしい、しばらく同地位にいたよ!」
エア「あ、娘です。こんにちはー」
ガアラ「あー!思ったより若い娘さんがいるんだねえ、さすがエルフ。
ああ、そう言えば娘の一人がナイトメアだとかも言ってたなあ」
ソラ「あ、娘パート2です。こんにちはー」
思わぬ所でお父さんのコネが使えました。これでガアラもこちらを信用してくれたようです。
そしてガアラはぞんざいズ以上に相手の情報を知っています。
ジーク「蛮族が本当にルーフェリア信仰ってあるのか?」
ガアラ「うん、それはそうなんだが……実際、エルヴィーンは本当にルーフェリア信者だ」
彼の目的はこの土地を取り戻すことです。孫神であるルーフェリアの力でライフォスを駆逐するという報復でもある。
アイヤールの人間の信仰の力で奪われた土地を、今度はアイヤールの人間の信仰の力で奪い返すという皮肉でもある。
そうなればルーフェリアの本体がアイヤール側に吸収され、ルーフェリアの国の守りはザルになる。
ルーちゃんを攫ったフィルゲンというドレイクの目的はそちらの方で、彼はそれを待って本国を攻め落とすつもりです。
ソラ「本国狙ってる蛮族と、白峰領欲しい蛮族で、手を組んだ?」
相変わらず察しのいい人達ですね。それぞれの目的の為に利害の一致するフィルゲンとエルヴィーンが手を組んだわけです。
当然ガアラはそれを阻止したいのですが、今や彼は正統神殿内でもぼっち状態。仲間がいないのです。
正統神殿の偉い人達は元々彼の同期で使命に燃えていたのですが、カティスと同様にすっかり染まってしまったのです。
ガアラ「いやー。ルーフェリアに長くいすぎたせいか、政治的なことは苦手になってねー」
エア「理由になるか!」
ガアラ「せめて神殿が先走ったりしないように、ライフォスに密告を入れるのが精一杯だった」
エア「お前かー!」
そこでぞんざいズは今晩にでも上層部とエルヴィーンを倒してしまうつもりです。事が露見する前にね。
そして一般信者は根こそぎ頂くという計画です。結局は以前話していたのと同じ、秘密裏に全てを処理する。
まぁ説教室で4〜5時間無駄にしたせいで既に夜なんですけどね。情報を得るためとはいえちょっとかけ過ぎましたね。
仕方ないので睡眠による回復は諦めて<魔香草>によるMPの回復に留めておきます。お金で時間を節約ですね。
ただし決断そのものはGMの予想を上回る速度ではあります。本来はお祭りに便乗して攻め込むと予想していたとか。
ところが危ないルーフェリア神官のロールプレイが高じてうっかり敵の真意を明かしてしまったのです。
お陰でシナリオ的な大きなイベントをすっ飛ばす事になったんだとか。この行動の早さがぞんざいズのパーティカラー。
歴代パーティにはどれも傾向がありましたが、"ヘッポコーズ"より"ペラペラーズ"や"バブリーズ"の立ち回りに近い気がする。
★決戦準備!
ぞんざいズは神殿に攻め込む前にライフォス神殿へ挨拶に向かいました。
面倒な挨拶はガアラに一任しましたが、ルーフェリア側から挨拶に来たので多少は相手の顔を立てる事ができました。
ホーリィ「そなたたちが、なぜここにいるのだ?」
そして神殿にはお御輿として連れて来られていたホーリィもいて、急な再会に流石に驚いていた様子です。
GM「……ふぅ」
メッシュ「何を、急に微妙な顔をしているのですか、GM」
GM「あ……いや、その中年充填率少しでも薄めようとしたら……
今度はNPCがちみっこばっかりになったなあと思って……」
最初の頃は中年と獣ばかりだったのにね。ルーちゃんにホーリィと、やんごとなきお嬢さんが目立ってきました。
ここで下手にエルヴィーンの事を明かしてしまうと、ライフォス側に出兵の口実を与えてしまいます。
勿論ホーリィはぞんざいズを悪いようにはしないでしょうが、周りの大人達はそうはいかないでしょう。
ジーク「じゃあ、膝を折って、できるだけ礼を尽くそう」
メッシュ「おお。ジーク様が初めて礼儀正しい態度を!(感激)」
ジーク「じつは、俺たちは、これから大事な人を助けにいく。そのために、もしかしたら少し騒ぎが起きる可能性がある」
ホーリィ「大切な人?……それは、我も手伝ったほうが、よいだろうか?」←いい子だ
人助けはライフォス的にも正しい事なので彼女は協力を申し出てくれましたが、それは丁重にお断りしました。
また近隣住民に被害が出るようなら放ってはおけないのもまたライフォス的に正しい事なので、不干渉は強いられません。
ジーク「それはない。断言する。あったら何が何でも止める」
ホーリィ「では……今夜は神官戦士団もゆっくりと休むよう、指示しよう」
ジーク「ありがとう。すごくすごく感謝する」
ホーリィ「ちゃんと、大事な人は助けてあげるのだぞ。我にも、助けたい人がいるのだ。
いつか、家族全員で暮らせたらいいなと思っているのだ」
彼女の命令は尊重はされるでしょうが、有事の際にはむしろ庇護の対象となるので絶対ではないでしょう。
それでも大切な人を助けるという行為を尊重する気持ちが大事。彼女だって人事ではないのですから。
メッシュ「こういういいライフォス信者もいるのですから、ライフォスの神像だけハブにするなんて、
子供っぽいことは、すべて片付いたらなしにして欲しいものですよ、ガアラ」
ガアラ「明日にでもライフォス神像を発注します」
あれはガアラというか、エルヴィーンと結んだカティス達の仕業だと思いますけどね。
本国で修行を積んだのならライフォスを尊重する程度の分別はつくでしょうし、やはり異端の信仰には弊害が出ますね。
あとムーテスとソラはカマウェト用にお魚を調達。特にソラは捨てドラゴンの次は捨てカマウェトを飼う気満々ですね。
ムーテス「僕は捨てドラゴンじゃないから」
ソラ「知ってる。どっちかっていうと、落ちドラゴン?」
ムーテス「ど、どこから落ちたって言うんだー!」
メッシュ「主に、栄光から」
あと飛行船的な意味で空から。
正統神殿に帰還したぞんざいズは信者用のケープを羽織って武装を隠し、例のお説教で改心したフリをします。
メッシュ「全員雁首並べて、キラキラした目でカティスさんを見ましょう」←キメェ!(親指びしっ!)
カティス「おお!あの頑固者のガアラが!」
丁度これから一般信者が地底湖で例のお祈りをする時だったので、それに便乗してルーちゃんを救出するつもりです。
つい半日前にあんな事を仕出かしたのでカティスは嫌がりましたが、ガアラの頼みという事で渋々了承します。
地底湖へ降りる際の昇降機には2人ほど神官服姿の男がいましたが、こいつらはレッサーオーガでした。
地底湖は照明も少ない厳粛な雰囲気であり、湖の祭壇にはルーちゃんとエルヴィーンの姿がありました。
ちなみにエルヴィーンは身長3m超とサン○ャイン並みであり、流石に一般信者は怪しむべきだと思う(笑)
また例の隠し階段の警備役としても3mを超える人影が見えましたが、こいつは普通のトロールです。
カティスを入れると人族1人に蛮族4人が敵側にいるわけですか。レッサーオーガは参戦に時間がかかりそうですが。
そしてカティスの合図で信者一同跪き、祭壇のルーちゃんに祈りを捧げました。
そうすると彼女は光の明滅と共に幼い姿と大人の姿が二重写しとなり、祈りを力に変えている様子が見れました。
まだまだ神様にしては新米だけど、信者に身近な小神の欠片だからこそかえって信者の求心源になりそうですね。
やはり目に見えて成果が現れると祈る方のモチベーションにもなるだろうし、本当にこの世界の神様は面白い存在です。
そうして祈りを捧げて一般信者が退散しようとした時にぞんざいズは動き出しました。
まずはジークが屈伸をするフリをして"ウィンドボイス"でルーとエルヴィーンの会話を拾います。
ルー「これで、いいの?お祈り拒否しないでいたら、誰も怪我しない?」
エルヴィーン「ああ、勿論だとも」
蛮族を利する祈りなんて神様の方で着信拒否できそうなものですが、それができないよう釘を刺されているのでしょう。
"ウィンドボイス"はSWの頃から御馴染みの魔法ですね。対象範囲の音を聞いたり、逆に音を届けたりできます。
ちなみにSWの頃の到達距離は500mもあったのですが、SW2.0では100mとかなり短くなっています。
あと持続時間が1時間だったものが3分間と大幅に短縮。効果範囲そのものは半径5mと変わらないんですけどね。
次にソラは〔異貌〕をしながら"コンシール・セルフ"で姿を消し、カティスのすぐ傍で待機します。
これもSWの頃から御馴染みの魔法ですね。視覚・嗅覚・聴覚を欺き術者の存在を隠蔽する6レベルの真語魔法です。
具体的には「五感」「機械」「魔法」のいかなる知覚も欺く事が可能です。接触や魔法の感知では流石にバレますが。
あと術の使用中には制限移動しかできないのも変わりません。ただし精神集中の限り持続する仕様はなくなり、1時間が限度となる。
そしてソラ以外の人達は一度昇降機に乗り、昇り始めた所で不意を打って飛び降りて戦闘開始です。
1ラウンド目
まずソラは姿を現しながらカティスに"スリープ"。見事に眠らせて回復役を1人潰しました。
エアはジークに"ウォーター・ウォーキング"をかけ、〔風の翼〕を使ったムーテスと共に祭壇に攻め込みます。
ただし岸から祭壇まで30mとかあるので、ジークは全力移動すればいいとして、通常移動の速度が限度のムーテスは無理っぽい。
6レベルになると種族特徴が強化されて全力移動での飛行が可能になるので、このルールを取り入れていたのかもしれない。
エルヴィーンにはジークとムーテスが挑みます。ムーテスは《かばう》をルーに使いながら戦うつもりです。
メッシュはガアラと組んでトロールの方に向かいました。ガアラは"フィールド・プロテクション"で前衛を援護です。
メッシュ「ちなみに私は「ルーフェリア様をお守りしろ!」と叫びながら制限移動で近付いていきます」
GM「あれ?もしかして……それだと、メッシュが敵って判断できないかも?」
メッシュ「にやり」←計画通り
GM「ううう、おのれ狡猾な!」
更にタイマンになるので久しぶりのシャドボも使用。プリースト6のガアラが一緒とはいえ当たると怖いし。
一方トロールは自分に"ウォーター・ウォーキング"をかけてジーク達を止めようとしました。
そしてエルヴィーンは自分に"ヴァイス・ウェポン"です。"セイクリッド・ウェポン"の蛮族版ですね。
SW2.0の神聖魔法もSWと同様に信仰する神様毎に使用できるものとそうでないものがあります。
特に有名なのが"セイクリッド・○○"や"バニッシュ"と"ヴァイス・○○"や"フィアー"という二系統です。
前者は主に第一の剣の神の魔法で蛮族とアンデッドに効果があり、後者は第二の剣の神の魔法で人族とアンデッドに効果がある。
これらの魔法は神様毎にどちらを使えるかが決まっており、使用する神官の種族には影響されない事になっています。
しかし生まれて千年未満の若い神はこれが不確定であり、今回のように第一の剣の神でも蛮族に力を与える事がある。
ただしこれは歳月を経て神格が確定するとどちらかに決まります。第三の剣の神であるキルヒアは第一側で確定したらしいし。
中には例外もあって、"狂神"ラーリスなんかはどちらも使えたりしますが、自由なラーリス様なら仕方ありません(笑)
詳細は「ウィザーズトゥーム」を参照してください。どちらの陣営なのかグレーゾーンにいる神様も分類しています。
この時トロールと違ってエルヴィーンの方はルーの名を呼んだジークを敵と見なします。
ジーク「上等だ、俺の嫁から離れろ!」
一同「えええええっ!(驚愕)」
ソラ「いつの間に!」
今まで散々フラグを折ってきたくせに、ここに来てまさかの嫁宣言。しかも相手は神様、どういう心境の変化なのか。
2ラウンド目
エアは"セイクリッド・シールド"を、ガアラは"セイクリッド・ウェポン"を前衛にかけました。
ムーテスは全力移動でエルヴィーンと乱戦エリアを形成して足止めし、"ビートルスキン"を使用。
この瞬間彼の防護点はプロテクで+1、セイクリッドで+3、練技で+2で合計18点の鉄壁さです。
ちなみに練技は全力移動と併用できない事になっています。通常移動か制限移動なら可能。
あと練技(補助動作)は移動後に限定していた時期もあったようですが、現在は移動前も認められています。
ソラはメッシュの前のトロールにも"スリープ"をかけますが抵抗されました。
メッシュ「ふははは、ジーク様の嫁取りの邪魔はさせぬわ!」
トロール「なんだとー!味方のふりをするとは卑怯な!殴ってくれるわ!」
これでトロールの《全力攻撃》が命中した上にダメージ6ゾロで26点と物凄く痛い一撃となりました。
2D+10点で《全力攻撃》で+4点です。防御魔法のお陰で6点減らせるとはいえ20点抜けました。
エルヴィーンは《マルチアクション》で自分に"ヴァイス・シールド"をかけつつムーテスに通常攻撃です。
GM「ダメージ19点」
ムーテス「あ、1点抜けた」
GM「えええー!何、それ硬い!」
メッシュ「な、何なんですかそれ!」
ダメージは2D+12点に"ヴァイス・ウェポン"で+2点。期待値で21点ですが、それでも3点しか抜けない。
3ラウンド目
ガアラはメッシュの怪我を直し、ソラはトロールに"ブラント・ウェポン"で少し弱体化させます。
ジーク「エアは出切れば、"キュア"が届く位置まで近付いてきていて欲しいなあ」
エア「"ウーンズ"は無理だけど、"ハート"を唱えること前提にしてるから大丈夫」
前者の射程は10mしかありませんが、後者は30mあるので岸からかけてもギリギリ届きますね。
でもこのラウンドは前衛3人に"ブレス"で器用度+6です。命中力が+1点ずつ増えました。
"ブレス"といえば「ロードス島RPG」でお馴染みで、「ロードス島ワールドガイド」でSWの仲間入りをしましたね。
そちらでは10人を対象に攻撃力+1でしたが、こちらでは対象が1体になる代わりに各能力値を上昇させます。
器用度・敏捷度・筋力・生命力のいずれかを選択し、上昇させる能力値を変えれば重ねがけも可能となります。
ジークは一回回って24点の合算ダメージ。防護点9に"ヴァイス・シールド"で被ダメージ−3なので12点抜け(作中では13点)。
ムーテス「飛んで"キャッツアイ"入りで殴る。(ころころ)22!」
GM「そんなん、避けられるか!」
基本の命中力が9で、練技にセイクリッドに〔風の翼〕に"ブレス"も入って命中力13。出目9でしょうか。
一方エルヴィーンの回避力は9(16)です。基準値で4も負けていて避けろという方が無茶ですから。
エルヴィーンの方も果敢にやり返すのですがあまりの硬さに通らない。普通の殴り合いでは勝ち目は薄いか。
GM「ムーテスを殴る時には《魔力撃》にしよう。支援魔法はかけ終わったし」
ムーテス「それは痛くなるんだよね、急に」
魔力10なので"ヴァイス・ウェポン"も入れると2D+24点ですから期待値でも31点。13点も抜けます。
4ラウンド目
ソラはトロールに"リープ・スラッシュ"で抵抗される。
ムーテス「ジーク《魔力撃》使っていいっすよ。次からは攻撃全部食らうんで」←カッコイイ!
ジーク「え、でも、ルーは?」
ムーテス「動かないなら乱戦を宣言される心配はないからね」
ジーク「わかった。ルー、一歩も動くなよ、すぐに終わらせるから」
ここでジークは盾を捨てて両手持ちの《魔力撃》です。命中力は10に"ブレス"とセイクリッドで推定12ですね。
この状態で出目4を出したらしく、〔運命変転〕までして出目10に変えて22という素晴らしい一撃をお見舞いしました。
GM「それは無理っぽい(ころころ)あ、ごめん」
ジーク「6ゾロ!?俺、ひっくり返したんだぞー!?」
折角の〔運命変転〕でしたが、相手もナチュラルボーン〔運命変転〕で回避。地味に凹みます。
しかもメッシュはトロール相手に《投げ攻撃》がなかなか決まりません。
メッシュ「よーっし!ダメージ50点!」←何事!?
GM「ええっ?」
メッシュ「……わたしの心に50点ダメージ……(しくしく)」
ソラ「1ゾロなの……」
経験点的な意味で50点でした。勝てない相手ではないはずですが、投げコンボが決まらないと長引きますね。
エルヴィーンは宣言通りに《魔力撃》でムーテスをシバいて32点とか出しますが、ムーテスは頑張って《かばう》。
5ラウンド目?
エアはムーテスを回復し、ソラはエネボルでトロールを攻撃。ジークは相変わらずの《魔力撃》。
メッシュ「よし、ダメージ回りました!」
GM「あ、それでトロール落ちた」
メッシュ「よぉーっし!(ガッツポーズ)」
ジーク「なんだなんだ。今メッシュの戦ってるほうで、倒れる音が!」
ムーテス「……メッシュさん……あんたの雄姿は忘れないっす」
メッシュ「何でわたしが倒れること前提なんですか!」
これでメッシュがフリーになりました。ところがこのタイミングで背後からレッサーオーガ2体が参戦します。
無防備なガアラとエアが攻撃されてしまいますが、幸いメッシュがフリーなので次のラウンドにはカバーできます。
6ラウンド目?
エアはレッサーオーガに"バニッシュ"を使用して行動に−1のペナルティを入れる。
ソラ「お姉ちゃんの前のレッサーオーガに"スリープ"!」
エア「ソラぁー(感激)」
GM「あ、それ無理。寝た」
ソラ「お姉ちゃん、大丈夫?」←姉妹愛に少し感動しました。
メッシュはガアラの前のレッサーオーガを《投げ攻撃》&《踏みつけ》でHPを半分削ります。
それからもジークはムーテスに庇われながら延々と《魔力撃》による攻撃を続けました。
エルヴィーンも《魔力撃》や《マルチアクション》の攻撃&魔法でムーテスを削りますが、エアがすぐに回復。
メッシュはレッサーオーガを掃討して回り、ソラはフェイのMPまでつぎ込んでひたすらエルヴィーンにエネボルです。
ついにはエアまで"フォース"の届く距離(10m)まで近付いて攻撃。《暗闇の再生》で多少のダメージはすぐ治りますが。
?ラウンド目
殴り殴られ数ラウンド、ジークのクリティカルがエルヴィーンのHPを<剣のかけら>分まで削ります。
GM「ええい、MP残していてもしょうがない、届く人たち全員に"フォース"!」
でも《頑強》持ちのジークは意外と余裕がありました。庇われているからまだHPが40点もあるらしい。
あとエアは精神抵抗力10と高いので抵抗できたらしい。相手の魔力も10ですが受動側が優先されるし。
トドメを刺したのは今回随所で活躍したこの人でした。
ムーテス「あ、6ゾロ、クリティカル」
メッシュ「おお、ムーテスが回るのは珍しいですね」
ジーク&姉妹「ムー・テス!ムー・テス!(ウェーブ)」
ムーテス「うわ、そんな力一杯の声援を浴びたのは久しぶりだなあ。ダメージ合計39点!これでどうだ」
エルヴィーン「くそう、我らが悲願がー……」
こうしてルーを誘拐した犯人の片割れは倒され、女神と《白峰領》の危機は未然に防がれたのでした。
ジーク「ごめんな、怖かっただろ。ルーは、自分にできることを一生懸命やってたんだよな?」
ルー「怖かったの。わたしを起こすくらい、祈ってくれる人たち、傷つけるっていわれて、どうしていいのかわからなくて」
ジーク「ルーは、誰も傷つけたりしないように、自分のできることをやろうとしてたんだろ?
でも、それを、悪いやつらが利用しようとしてたんだよ」
ルー「もういいの?怖いお祈りを聞かなくていい?」
エルヴィーンは一般信者の祈りをルーの糧とし、命を質に取り、実に上手く利用していたようです。
生まれたばかりで自覚のない女神の欠片だから付け入る隙があったのでしょう。こうして見ると普通の女の子と大差ないし。
ルーを保護したぞんざいズはカマウェトに岸まで運んでもらい、ガアラが一般信者の混乱を鎮めました。
エア「まだ上層部何人か残ってると思うし、混乱の処理はあると思うけど……
ついにルーフェリア様の分身を救出……この日をどれだけ待ち侘びたことか(感涙)」
この時昇降機の辺りでかすかに羽ばたきの音と「役立たず」というフィルゲンのものと思しき声が聞こえたとか。
流石にここでは戦いませんが、ルーフェリアの国を狙う彼との因縁はまだまだ長いものとなりそうですね。
メッシュ「ああ、一つ質問があります」
GM「はい?」
メッシュ「神様と結婚するには、名誉点何点要るんでしょうかね?分体割引とかありますか」
GM「そんなん知るかああ!」
名誉アイテムに「異性の継承者」が存在し、爵位等を持つ異性の伴侶を入手する事も可能となります。
公爵位で2500点、王位で5000点とか必要ですが、仮に神様にも有効だとするともっとかかるかもしれない。
そもそもこれは名誉を使ってコネを築くルールであり、普通に交流した上で発生したコネまで否定するものではないと思います。
ルーちゃんを本当に嫁にできるかどうかは今後のジーク次第です。人間と神様が結ばれるなんて、前例はいくらでもあるのですから。