「新米女神の勇者たち(11)」著:秋田みやび/グループSNE 出版社:富士見書房

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第三十話 新米女神を守る方法

★まずは成長申告だ!

今回のキャラクターシート


今回の能力値の成長は以下の通り。

ジーク:敏捷度23→24

エア:精神力30→31

メッシュ:知力21→22

ムーテス:器用度15→16

ニゲラ:知力18→19

イスミー:器用度25→26

ジークは指輪なしで敏捷度ボーナスがブレイクしました。ニゲラは腕輪で敏捷度をブレイクさせた模様。

ムーテスは腕輪で器用度ボーナスをブレイクです。メッシュは装備欄にはないけど腕輪で知力ボーナスをブレイク可能。

何よりインパクトがあるのはエアが今回精神力が伸びたお陰でMP90点の大台に突入したということでしょうかね。


技能の成長はイスミーのライダー10→11のみ。11レベルの仲間入りがまた1人。

習得した戦闘特技は《命中強化U》です。《命中強化》と冒険者レベル9以上が前提となる戦闘特技ですね。

これで更に命中力が+1されて計+2になりました。ライダー技能につぎ込んでいる分シューター技能を補填ですね。

習得した騎芸は"遠隔指示"です。騎乗していなくても騎芸"攻撃指令"や"特殊攻撃指令"を使用できるようになりました。

ただし有効なのは生物の騎獣のみなので「シフェナ」には使えず、有効な範囲は半径10m内となります。


そして忘れてはいけない種族特徴の強化ですね。タビットの場合は〔第六感〕が更に強化されます。

これは通常課せられる《罠感知判定》の目標値+4を打ち消すというもの。最早下手なスカウトより鋭敏に。

これで残るはムーテス、メッシュ、そしてソラですね。いい具合に3人とも種族が違っています。


エアはコンジャラーを伸ばす手もありましたが、これ以上伸ばすと"クリエイト・アンデッド"が見えてくるので自重。

エア「でも、でもコンジャラー5レベルの呪文"スペル・エンハンス"は欲しい!切実に欲しい!」

5レベルの操霊魔法で対象の魔力を+1するというもの。シンプルな効果ながら実に有り難いものです。


あとニゲラはギリギリでアルケミストを上げるのに経験点が足りませんでした。

エア「それ以上なにか必要な賦術ってある?」

ニゲラ「やーらしい敵が多くなってきたので"バインドアビリティ"が欲しいなって思うんですよぅ」

これは対象の特殊能力の達成値にペナルティを与えます。Bランクで−1、Aランクで−2、Sランクで−3の効果がある。

SSランクに至っては−4の効果に加え、主動作で使えば必中となって抵抗すらできなくなる。5レベル以上前提の賦術ですね。


ただし必要なカードは白なので、またも今まで使ってきたカードとは被りません。

ジーク「いいじゃん。ゴーストシップが戦利品落とすぞ、白いカード」

メッシュ「よいですねえ、そろそろ出てくるはずですよね(にやにや)」

GM「先を読むな!」

自動で落とす<幽霊船の木材>は500ガメル/金緑Aですが、それ以外は軒並み白ですね。

<航海図>は500ガメル/白A、<遠洋航海図>は1000ガメル/白S、<宝の地図>は5000ガメル/白Sです。

基本は換金アイテムの筈なのに色々気になるものを落としますね。特に最後のはどの程度信憑性のあるものなんだろう。

ただし"バインドアビリティ"を使用するには白いカードが2枚必要です。高位の賦術には複数枚の使用を前提としたものが多い。


★久しぶりの《白峰領》堪能編

前巻でぞんざいズは"宥和神"アーメスの分体であるアレンが神の力を取り戻すのを未然に防ぎました。

その際アレンの穢れ入りパジャリガーの遺体を入手し、<パジャリガー・スラッシュ>によって穢れは抜き取りました。

メッシュ「抜け殻であるパジャリガーの遺体は何故か私の<収納ブレスレット>に入ったままにしていたことを今思い出しました」

GM「なぜ!」

それは遺体に穢れが入っているという先入観のある敵の囮に使えるからです。本物は剣と一緒に女帝に預けました。

当分は預かったままでいいでしょうけど、今回の事件が終わったらちゃんとアナトラさんに返さないといけませんね。


その後《白峰領》に帰ってきたぞんざいズはアレン一味に占拠された領主の館を奪還。ついにアレン本人と対峙しました。

ニゲラ「庭師がアレンでしたー」

メッシュ「まさか、ラスボス最有力候補が作業つなぎに首タオルの麦藁帽子で出てくるなんて思いませんでしたよ!
      なんという残念感満載の神!一瞬信者になるしかないと思いました!」

ジーク「こら」

エア「まあ、このポンコツなら許す」

ルーンフォークはいくら祈っても神の糧にはならないから。思想的な意味で危険な気もしますけどね。


戦いの中でルーちゃんと再会しました。現在の神殿はアインベフの来訪や魔法装置の異変で色々大変です。

エア「それは一大事です(抱っこする仕草)」

ニゲラ「ニゲラも信者になったから、ああしたほうがいいのかなぁ」

ジーク「……信者になったらできるのか?」

エア「ただの信者じゃダメ。神官以外はしちゃいけません。ああでも、ルー様がどうしてもというなら……(悶絶)
    ……不思議、信者の立場としては庇護されるはずなのに、母親のような気分」

これはルー様を抱っこする権利の為に昇格を望む信者が増えますね。やったねルーちゃん、神官が増えるよ!


ぞんざいズが消耗したHPとMPはルーちゃんが完全回復してくれます。流石は無限バンダナ無限MPタンクです。

エア「ちがう!回復をしていただくのはわたし!それをみんなに分け与えるのよ!」

ムーテス「つまり、ルー様の手柄を奪うと」

エア「く……そうではなく、ルー様は本来やんごとない人であってぇ……」

ムーテス「ようするに金になる立場ということだよね」

エア「そこは完全には否定できないわ

ニゲラ「そこは形だけでも否定したほうがいいと思うんですよぅ、エアさん」

あとルーちゃんはアイヤール・ルーフェリア神殿最高司祭として《白峰領》領主ダンフォースと現状を報告しあいます。

今まで特に描写はなかったけど、シルフィの懐き具合を見るに前から交流はあったような感じですね。


今後のルーフェリア神殿としてはライフォス神殿とも領主とも協力関係を築き、アンデッド対策に墓地を警戒したりします。

この世界の埋葬方法がどうなってるかはハッキリしませんが、なんとなく土葬だとアンデッド化しやすい気がしますね。

火葬なら少なくともゾンビ的な蘇りはないでしょうが、実体のないタイプのアンデッドにされる可能性までは否定できない。

それにスケルトンタイプのアンデッドなら火葬されても誕生しそうですしね。何とか未然に防ぐ手はありませんかね。

呪歌"レクイエム"はフォーセリアならアンデッド化を予防できたけど、この世界だと行為判定にペナルティを与えるだけです。


何にしてもぞんざいズは今度こそ神殿に帰って、アインベフと会ったり魔法装置を調べたりしないといけない。

アレンの行方については不安が残りますけどね。この領主の館からフーギの街まで地下道があるらしいし。

イスミー「アレンは地下の遺跡……シフェナが埋まっちまった遺跡を掘ったりもしてやした」

ニゲラ「掘るのが得意……。インキュバスなのに、掘るのが得意(にたり)」

エア&イスミー「こらぁああー!!」

今まで見え隠れしていた腐属性が急にオープンに。何を言っているんだお前は(笑)


ニゲラ「え!あ、ち、ちがいますよぅ!そんなつもりで言ったんじゃないですー!」

ジーク「いや、二回言った」

メッシュ「そう。大切なことだからでしょう」

ニゲラ「いやーっ、流してー!流してー!心の迷いなんですうー!

そういえばアーメスが誕生したのも地下の閉ざされた世界でした。まさかめくるめくゲ○パレスだったとか(コラ!)


そんなトップ会談の間シルフィの面倒はニゲラとムーテスが見ていました。トカゲは明らかにコネ狙いです。

飴なんかもあげちゃったりして今から取り入っておきます。すると口に入れた飴を返すという幼児特有の行動をします。

ムーテス「ふ、そんなもの。権力者だというなら、平然と食べるっすよ!

一同(大爆笑)

ジーク「すごいぞ、ムーテス!その権力に対する一貫性!」

メッシュ「清々しいほどの権力の犬ですね」

イスミー「プライドを……プライドを持ってくだせえ、大将ー!!」

ムーテス「ここで眉一つ動かさずに、下賜されるのが商人のプライドってものだよ!」

何このポリシー、何故か格好よく見えてくる(笑)


エア「値段のないものに値段がついちゃうのよね、ムーテスにかかると」

メッシュ「元手がタダですからな」

ムーテス「タダより高いものはないってのは、そういう意味っすよ。ゼロが高額に変わるんだから」

彼のこの地道な努力がミスティン姫との取り引きにも繋がったかと思うと、あながち馬鹿にできませんね。

でも何となくシルフィはジークに懐きそうな気もする。剣の師匠になりそう、トラヴィスに対するフェルディナントみたいな。




ダンフォースとシルフィに見送られ、ぞんざいズは久しぶりにフーギに帰ってきました。今のところ平和そうで何より。

ムーテス「うわー。久しぶりだなあ。僕んち帰ってくるの!

エア「ちがう!もう何度つっこんだかわからないけど、わたしの家!」

ムーテス「今や完全に商店だよ?」

エア「軒を貸してるだけだというのに!」

ニゲラ「軒を貸して、母屋を完全制圧というやつですねー。勉強になりますぅ」

エア「ニゲラも学習しない!」

思えばリャンと一緒にミスティン姫の離宮に行ったきり、牢にぶち込まれたり何だりでずっと留守でしたしね。

もういっそのことムーテスも住居を構えてもいいと思うんですよね。あの時のエアよりお金も名誉点もあるんだから。


ジーク「とりあえず、玄関前に荷物置かせてもらうか」

ムーテス「ああ、どうぞどうぞ、何なら上がって寛いでよ。一服する?」

エア「だからー!」

イスミー「つっこみに忙しそうでやすな。姐さん」

誰かが発言する度にひとつっこみ入れてますね。これはこれで何かの一般技能になりそうな気がする。何かは知らない(笑)


しかしその前にルーフェリア神殿に行きます。アインベフを待たせっぱなしだし、このままでは一般信者にも迷惑です。

久しぶりのルーフェリア神殿の玄関には懐かしのハイグレード・ライフォスが奇天烈な格好をして出迎えてくれました。

メッシュ「何ですか、この奇妙なカラーリングされた肉々しいおじさまは」←覚えていない

本当なら一般信者はその先の通路を抜けて聖堂でお祈りをするのですが、今は入れないので入り口でお祈りして帰っていきます。

お陰でハイグレード・ライフォスを背景に祈りを捧げる人々という、なんともシュールな光景になっていましたとさ。


ぞんざいズも神殿の入り口に来ると、聖堂の前には見たことのある古風な女性の姿がありました。見えない壁に当たるのも懐かしい。

GM「中に入ったときはどうしたんだよと言いたくなりますね。きっと、無理して匍匐前進したんでしょうが」

ムーテス「やめてー!僕は知らないけどドラゴンのプライドにかけて、そんなことしないでー!」

ニゲラ「ムーテスさんにだけはぁ、言われたくないと思いますよぅー

そういえばあの時ムーテスはいなかった。約束通りに一本の魔剣を持って訪ねてきてくれたんですね。


彼はムーテスを見ると異様に可愛がります。竜にとってのリルドラケンは可愛いもの、人間に対する小人的なものなのかも。

アインベフ「おお、来たか来たか。おお、リルドラケンではないか。ちっこいのう、めんこいめんこい

ムーテス「ええっ!何!?今までわりとでっかい扱いだったから戸惑うっすよ!何この人!ひれ伏すべき?

リルドラケンは2m以上あるそうですが、グレータードラゴンの全長は20mほど。確かに小さいでしょうね(笑)


しかし相手が高レベルの竜だと知った時のムーテスのへりくだりっぷりを見るに、やはりプライドはないのかと。

ムーテス「そんな大事なこと早く言ってくれよ!土下座じゃなくて、五体投地レベルだよ!

イスミー「うわ。逆切れされやした!大将、どこまで強いお人にゃ下手なんでやすか!」

ムーテス「好きな食べ物とか教えてほしいっすよ、貢ぐから、献上するから

この身体の大きさでどんだけ食べるか分かりませんが、幻獣の世界でのコネにはなりそう。上手くすればエンシェントとかも。


アインベフ「おおう、ジークハルトよ。息災だったか?」

ジーク「おう、ごめんごめん、お前のこと忘れてたわ

アインベフ「ひどいな薄情なやつめ」

とカラカラと笑うあたり、本当にぞんざいさではジークといい勝負です。


そして約束の魔剣をくれるのですが、ジークの様子をじっと見るとちょっと憤慨します。

アインベフ「もー。やっぱり成長しとるではないか!」

メッシュ「人間はせっかちな生き物ですからな!」

ジーク「おう、お前と出会った頃に比べて、結構筋力も上がってるしな」

アインベフ「それもあるが、なんで《武器習熟》持ってるのだ。
       それならそれで、話が違うではないか。持ってくる剣のグレードが変わるぞ」

以前会った時は筋力21で今は24ですからね。しかも《武器習熟》持ちとなれば話は変わってきます。

以前の場合はBランクかAランクの必要筋力10程度のやつを無理矢理持つのが関の山でした

しかし今ならAランク以下はおろか、Sランクの必要筋力14程度のやつを無理矢理持つことすら可能。


アインベフ「まあ、しかたがない、すんだことだ。あの当時の報酬と思うがいい」

こうしてわたされたのは無銘のBランク<ソード>でした。魔力+1で必要筋力と威力は20で1H。

この場で<ジークハルト・ブレード>と名付けられました。後に<ウィザーズ・トゥーム>にデータが収録されました。


その最大の特徴は鍔に六色の宝石が嵌っているということ。妖精魔法の<宝石>に使用でき、更に特殊な魔力がある。

それこそが《妖精の主》です。この剣で傷をつけ、殺すことなく降伏させた妖精の能力を借り受けるというもの。

借りられるのは各属性1つずつの計六種。弱点に分類される能力を吸い取って克服させることすら可能です。

同時に使用できるのは一種類だけですが、補助動作で切り替えられる。また妖精が死ぬと能力も使えなくなる。


基本取引価格は不明ながら結構な逸品ですね。妖精戦士であるジークには相応しい、センスを感じるチョイス。

メッシュ「素晴らしい!で、今は何の妖精の特殊能力が入ってるので?」

アインベフ「今は空っぽに決まっている」

一同「ですよねー」

しかしこれは使いようによっては凄いですよね。戦闘特技や種族特徴を増やすようなこともできるわけですし。

《魔法適性》とか貰えれば《魔法制御》や各種《魔法拡大》が手に入る。《2回攻撃&双撃》とか《飛行》とかね。


今は<フランベルジュ>の方が強いんですが、その内使いたいものですね。

ジーク「今やってることが終わったら、本気で六大妖精を倒しにいく旅に出たいぞ」

アインベフ「では、用も終わったことだし、失礼させてもらうか」

エア「ちょっと待った!いや、そんなに急がなくても、もうちょっとゆっくりとなさったら?」

ニゲラ「すでに戦力に換算してますねー

アインベフ「邪魔にならないならいいぞ。このフィット感はねぐらを思い出していい感じだからな。
       あとは足元に財宝とかあればもっといい」

こうしてアインベフはもうしばらくみっちりと詰まっていてもらうことにしました。

地下には以前魔神が隠れていた昇降機を使えば行き来できるし。まぁ一般信者には不便ですが。




それでは今度こそムーテスの、もといエアの家に帰ります。実はクロノアさん達が待機に使ってるそうですが。

エア「……おかしいわ。家にすごく帰りたかったのに、もう家じゃない気分

ジーク「じゃあ、ムーテスの店に行こうか」

ムーテス「どうぞどうぞ、案内するっすよ」

エア「……そろそろ、つっこみのバリエーションを増やさないとダメだわこれは」

いっそ家賃をとってもいいかもしれない。増築して居住スペースを増やしたり、いっそ宿泊施設にしちゃうとか。


家に行くとメルとルルが赤ちゃんを抱えながら待っていました。

メル&ルル「ムーテスさぁん!みなさぁん!」「ご無事だったんですねー」

ムーテス「ごめん、ごめん、心配かけて。あ、子供は?見せて見せて」

すると二人は三つ子の赤ちゃんを見せてくれます。もふもふの子犬は殺人的に可愛いです。


メル&ルル「名前はムーテスさんにつけてもらおうと思って!」

ムーテス「なんだって!それは真剣に考えないと……ごめんみんな!三日ほど休みをもらうっすよ!」

イスミー「めっちゃ真剣に考え始めてますぜ」

ムーテス「とりあえず、姓名判断士的な人を探すところからっすね」

一般技能でそんな感じの人がいるかどうかは謎ですが、どっちかというと占い師の分野という気がする。


メッシュ「もう、ポチとタロとボスでいいじゃないですか」

ムーテス「ありえないでしょ!それは!なにがいいかなー。響きのいい縁起のいい名前にしないと……」

エア&ニゲラ「かわいいー♪(一匹ずつ抱っこして連れて行く仕草)」

これでソラが帰ってきても1人につき1匹ずつ宛がえますね。

そしてこの子達もあっという間に大人になって、孫が増えて、あっという間にコボルド御殿に。


さて今度こそエアの家に入ります。表札は「ムーテス商会」「カイン・ガラ出張研究所」ですが。

エア(赤ちゃんを抱っこしたまま生暖かい表情)

リャン「やあ!みんな、おかえりー!」←またお前か

エア「なぜ、ここを家族の溜まり場にする、リルトカゲン!

ムーテス「コイツは僕の家族じゃないっすよ!」

そういえば離宮に置いてきっぱなしでしたね。どうやら自力で帰ってきて縫い物をしていたらしい。


クロノア「あらあら、放蕩娘が帰ってきたみたいねぇ」

エア「うわ。鬱陶しいのがいるわ」

ジーク「よー。久しぶり、あれからずっと残っててくれたのか」

クロノア「ていうか、残れって言ってたでしょうが。ルーちゃんの護衛に」

ジーク「言った言った。護っててくれてありがとな」

エア「なんだろう、この、我が家なのに超アウェイ感

自分でお茶を入れるのも慣れたものです。フィルゲンに捕まる前からだから結構長いこと住んでいるでしょうしね。

赤ちゃんを抱っこしていなかったら平静を保てなかった状況。いっそ別宅を買って引き篭もるべきか。


さて肝心の地下の魔法装置の調査進捗ですが。

イスミー「今、なんか祭壇がピカピカしてるってことは聞きやした」

クロノア「ああ、あれねえ。実は色々迷ってるのよねえ。これ以上調べていいのかとか……」

彼女が調べたところ、あの魔法装置が作られたのは魔法文明時代初期のことです。

神が眠りにつくことで力が失われるのを緩めようと、信者の祈りの力を収束させる役割があるそうです。

普通の神様は信者1人の祈りで0.1くらいの数字にならないMPを集めることで力にします。


それがあの装置の場合は1くらいに強くできる。単純に信者の数が10倍になったのと同じ効果ってことですよね。

クロノア「ま、弱い神が少しでも効率よく力を集めようとする下駄のようなものって言えばわかりやすいかしら」

メッシュ「割りと元も子もない表現ですな。お賽銭の十円玉が百円玉になるのでしょう。それはすごいですよ」

クロノア「ただ、長い時間をかけて、ここに存在したアーメスという神に特化して調整されているみたいね」

具体的にどの程度の人数がいればどの程度の格の神様になるのかは謎ですが、アーメス信者は前よりは増えているはず。


ルーちゃんがあの装置で一時的にでも成長したのは、信者の祈りの性質が似ていたからかもしれない。

GM「祈りの性質というか、信者の望むことの方向性が似てるんですよ。ルーフェリアと、アーメスって」


力をブーストするだけなので信者の祈りが必要なことに変わりはないけど、ある程度意図的に神を育めるかも。

ムーテス「みんなが色んなことを考えて、願うから、中間をとってある程度公平な神になると思うんだよ。
      それを、一人の人間。一人じゃなくても、極少数の人間の意識が10倍になるとしたら、
      すごく歪んだ神を作れるっすよね。都合のいい神というか」

エア「言ってみれば、神作成装置というよりも、俺の嫁作成装置?」

では何故アーメスに特化していたかというと、蛮族達の信仰を分体であるアレンが主導していたから。

つまり現在の"宥和神"アーメスはアレンにとって都合のいい神に歪められてしまっている可能性がある。

分体が本体に影響を及ぼすのはルーちゃんの件でもそうでしたが、そこまで神様を利用できるのは驚くべきことです。


まぁ極閉鎖された世界で誕生した小神ですし、小神としても弱い部類に入るからできることかもしれませんね。

メッシュ「小神というよりも半神に近いんでしょうかね」

エア「まあ、確かにうちの大司教とタイマン張らせたら負けそうなイメージだけど」

タイマンはともかく「滅びのサーペント」のメンバーで戦ったら勝てそうな気はしますね。

続編の「双頭のサーペント」に至っては23レベルとかの規格外モンスターがまるで相手にならないぐらいだし。

15レベル以下を全滅させる例の力を使われたら勝てない筈なのに、何とかなっちゃいそうな気もするのが凄いところ。


そしてクロノアさんが調査を進めた結果、魔法装置に手出しするのを躊躇われる根拠が出てきます。

クロノア「例の祭壇の地下に、アーメスの本体が眠ってるんじゃないかという推測ができちゃったわけなのよ、これが」

もし下手に突いて起こすようなことにでもなれば大惨事。うっかり旧支配者を起こしちゃったような大事件です。

一応奥へ続く通路は発見しているのですが、なにやら装置がピカピカ光っているので侵入は躊躇われるところ。

何だかんだでアレンは分体で本体との繋がりもあるだろうし、彼を崇める信者が増えたことで本体も活性化しているのかも。

そしてアーメスに特化された装置もまた、アーメスが活性化したことで一緒に活性化してしまっているのかもしれない。


エア「つまり、アレンをボコるのが早そう?

クロノア「それも、手っ取り早い方法の一つかもしれない(エアをいい子いい子)」

エア「気安く触るな!(きー)」

居場所さえ掴めれば挑戦してもいいですね。彼自身も強いけど、本体を起こすリスクよりはマシだろうし。


あとは地下には降りずに装置を破壊するのもいいですね。簡単には壊せないでしょうが、不可能ではない。

ニゲラ「"コール・ゴッド"で壊していただきましょうー」

エア「それが一番でしょうねー。あと、二万五千点経験点をちょうだい!」

ジーク「すげーな。神VS神のタイマン勝負か」

イスミー「ちょいと見てえでやすな」

クロノア「そうね、いざとなったら大司教を呼ぶしかないかもね」

このことはダンフォースとセラフィナにだけ報告しておきます。装置の機能は「最近知った」という体裁で。


ここでエアは渋い顔をしながら「バルバロステイルズ」を眺めていました。

ニゲラ「どうかしたんですかぁ?」

エア「……いや、アンデッドも神聖魔法を使えるんだなあって思って」

そのようですね。フォーセリアだと闇の神の暗黒魔法は使えるけど、光の神からは見放されて神聖魔法は不可でしたね。

ラクシアでは特にそういう制限はなさそうですが、多分アンデッドなら信仰するのは"不死神"メティシエとかですかね。

とはいえ例外はいくらでもあるでしょうし、他の神様を信仰するアンデッドがいてもいいかもしれない。

基本的に第一の剣の神は穢れを忌避するし、第二の剣の神だってアンデッド化するまで穢れを溜め込むのはNGっぽいけど。


エア「アンデッドが、神聖魔法を使えるってことは、アンデッドが神を信仰すれば、それは信仰の礎になるのよね

ムーテス「うん、なるね。多分」

イスミー「それって、ルーンフォークよりも上ってことでやすか」←お前もだウサギ

メッシュ「う、上とか下とか言うんじゃありません!」

エア「つまりは、このポンコツは神にとって死体以下と

ルー「そんなこと、思ってないですから。友達ですから」←いい子や

ここでエアが指摘したいのは、例の<呼応石>もどきで知性を持って神を信仰できるアンデッドは量産できるということ。

<呼応石>もどきにパッケージされているのは人間の魂ですし、命令されれば信仰してMPを献上することもできる。

ましてアレンは操霊術師です。適当な死体をアンデッド化して石をつけるだけで物凄い勢いで信者を増やせます。

そういえば例の巨人が守っていた地下遺跡にも人族や蛮族の死体はなかった。幽霊船につんでお持ち帰りされたのかも。


実は彼らのこの想像は毎度のことながらほぼ正解でして、このまま放っておくと敵はアンデッド信者を量産できる。

ミスティン姫の予知夢の内容とも一致しますしね。アレンの居場所、アンデッド工場、攻略すべき場所は色々ある。

ジーク「とりあえず、今日は寝よう!でもって女帝とタビットじいちゃんに祭壇のことを報告してから、次の行動を考えよう」

リャン「わー、今日は大人数だねー」

エア「お前が言うな!っていうか、狭いからわたしは、神殿で寝る!ええ、あのドラゴンにもたれて寝てくるわよ!

ムーテス「そろそろ、この家増築したらどうっすか?」

エア「誰が原因だと思ってるの!」

コボルド一家や極彩色やその他作業道具はムーテスが原因ですね。自分の両親も含めると手狭になったものです。

ちなみに<中規模の邸宅>は<大きな屋敷>にグレードアップ可能。この際お金や名誉点は差額を払えばいいのです。

具体的には名誉点400点と価格10万ガメル以上なので、差額の名誉点250点と8万ガメル以上を払えば増築完了。

また共同名義にして名誉点とお金を出し合うことで入手することも可能なので、いっそ皆で出し合ってもいいかも。


ジーク「ムーテスも自分の家を持ったらどうだ」

ムーテス「……うん、そうだね。考えようかな。そういえば、ここにゾンビが来るかもしれないって予言されてるんだよね。
      どうせ買うなら地価が下がった後で買いたいから、もうちょっと待たない?」

一同「おおい!」

下手したらラクー○シティみたいになっちゃうんですが、そうなったら土地は住み放題ですね(笑)


エア「……そうだ、"コール・ゴッド"よ……今のこの状況を変えるには、もうそれしかない……(ぶつぶつ)」

アインベフ「何があったのかは知らんが、短い人生そう極端から極端に走るもんじゃない、ヤケになるな」

2000年以上生きていれば500年程度しか生きられないエルフは短命に見えるんでしょうね。


メッシュ「なってやってるうちに、あの二人がデキてたら笑えますね」

エア「異種族よ!」

イスミー「なんの!愛は種族を越えやすよ!

メッシュ「愛は越えられるかもしれませんが、貴方は越えてません。まったく、さっぱり、全然」

しかし家主だけを追い出すのは気が引けるということで、結局はルーちゃんも交えて皆でお泊り会です。

なんだか最終決戦前の荒らしの前のひと時って感じですね。こういうことすると誰か死にそうな気もしますが。


ルーちゃんは今までの冒険譚をせがむので、アインベフと会った時の話をしてあげます。

ジーク「ソラもすさまじく元気だったぞ」

メッシュ「家を壊すくらい元気です」

ルー「よかった。みんなと一緒にいないから……聞いちゃダメなことかと、思ったの」

ジーク「そうか、気を遣わせてたのか、別にしちゃいけない話じゃないぞ」

エア「やっちゃいけないことの話かもしれないけどね」

メッシュ「まさしく「家を壊したりしたけれど、わたしは元気です」でしたな」

イスミー「箒じゃなくて、ワイバーンとスカイバイクで飛んでいきやしたが」

あとは修学旅行よろしくコイバナに花を咲かせたり、肝心のジークが速攻で寝ちゃったり。お約束。


ニゲラ「じゃあ、花嫁の母的一環として、おでこに落書きは基本ですよねー」←肉ね

メッシュ「最初に寝たやつが被害にあう、お泊り会の基本ですな」

イスミー「恐るべし、小姑コンビ。てか、エアの姐さん、おいらを抱き枕にしねえでくだせえ」

ムーテス「そういえば、トランプあったよね」

などと久しぶりの憩いのひと時でしたが、夜明けを待たずに新たな異変が起きるのでした。


★暗くて、静かで、ふわふわで

それは真夜中のことでした。いつの間にか眠っていたジークは夢を見ます。ふわふわとしていて現実感がない。

ジーク「そうか。夢か。じゃあ、あんなことやこんなことを妄想してみよう

一同「どんな妄想だ!」

メッシュ「今のうちです、垂れ流してしまいましょう!」

それはジークが神様になった夢。実現する可能性がなくはないし、現時点でも夢に見る分にはいいですよね。


ニゲラ「……ち。弟くんでも出てくるかと思いましたのにぃ」←ホモォ

メッシュ「ニゲラ!貴方、本当に色々吹っ切れすぎましたね!」

ニゲラ「いいですー。ニゲラが一人で夢に見ることにしますー」

流石の変態淑女ですニゲラさん。そこで自分ではなく他人の掛け算を見る辺りが真性っぽい。


夢の中のジークは凄い強くなったので、庭師姿のアレンを懲らしめたりしていました。

ジーク「悪いことすんなよ(デコピン)」

アレン「うわーん、ごめんなさーい。さすがじーくくんだ、かなわないやー」←のびた風

ジーク「やめろ!お前、ちょっと萌えたじゃないか!」

エア「……ジークの萌えポイントが心底わからないわー」

そういう意味では純粋に可愛いものが好きなエアは分かりやすい方なのか。

ソラもそうだけど割りと爬虫類や機械系もイケる。ニゲラは分かるけど分かりたくない部類(笑)


ジーク「どうだ、るー、これでもうしんぱいないぞー」

メッシュ「あ、でもその場合は入浴中で」

ルー「いやーん、じーくさんのえっちー」←しずかちゃん風

メッシュ「って、水をかけられたりするわけですよ」

ジーク「あ、その場合は、今の姿よりもちょっと成長してるほうがいい

イスミー「兄貴、今、すごく素直に欲望を垂れ流しやしたぜ」

そこでむしろ今の「ぺったんぺったんつるぺったん」な方がいい、とか言うよりはマシです。


いつまでも妄想ばかりでは話は進みません。夢の中のルーはジークに気付いて駆けてきます。

ルー「あ、ジーク」

ジーク「あ、こら、走るなよ、こけるぞ」

近づくにつれて今の姿に戻っていくのですが、じわじわと何か黒いものが彼女に絡み付いていきます。


メッシュ「ジーク様、夢の中とはいえ、その属性はちょっと……」

ジーク「え、俺、アブノーマルは……ちょっとしか興味ないぞ

一同「あるんかーい!」

しかしそれは触手ではないし、こっそり隠れていたニゲラでもありません。

黒い悪意そのものが押し寄せる霞のように彼女に絡みつき、飲み込んでいくのです。

ルーちゃんも泣きながら手を伸ばしますがジークには届かず、ジークも彼女を助けられない。


やがて少しずつ彼女は飲み込まれ、黒いものは皮膜の翼に変わっていきます。

ジーク「くっそぉおお!何しやがる、アレン!!」

エア「しげるじゃなくて、京様ね?」

GM「わたしにそれを確認されてもー」

ジーク「みんなー!みんな、どこだ、助けてくれ!俺一人じゃなんともならないなら、仲間がいるぞ!

素直に仲間を頼ろうとするのは好感が持てる。ぞんざいだけど決して独りよがりでもないんですよね。


ジーク「っていうかメッシュどこだー!ったく……あいつ、肝心なときにいないんだよな

メッシュ「ひ、ひどい……それは、冤罪にございますよ、できれば駆けつけたいのは山々で」

しかしそこにはもう一人その光景を見ている人がいました。なんとミスティン姫です。

向こうもこちらに気付いて驚いた様子でしたが、それはこっちも同じ。まさか予知夢を共有している?

そういえば「予知夢を見たことがある」っていう経歴がありましたね。それが今になって突然蘇ったのかな。


それに気付いた瞬間夢は覚めました。

メッシュ「え、そこは、姫様がにやっと笑って……」

ミスティン「気付いてしまったのですね、ジーク……

メッシュ「とかいいつつ、ずばーっと」

ムーテス「やめてー!あのお姫様が黒幕とか、僕たち掌で踊らされすぎっすよ!」

既に夜が明けていました。ルーちゃんはうなされた様子もなくジークの隣で眠っていました。

もっとも姑A(エア)が二人の間に毛布を押し込んで何食わぬ顔で神殿の庭掃除とかしてますけどね。

姑B(ニゲラ)は頻繁に様子を見て愛でているので隙がない。本当に割ってはいる隙が無い(笑)


ジーク「でも、安心したぞ。みんながこんなに護ってるんだし……色んな意味で」←頭撫で撫で

ルー「……おはよ?ジーク。どうしたの?」←寝起き可愛い

ジーク「……いや、なんでもない朝かららしくなくシリアスな気分になっちまった」

ニゲラ「ニゲラも起き出しますー。おはようございますー。ルー様は今日も愛らしいですねー」←起きてたくせに

イスミー「おいらもオクタンに轢かれて起き出しやすー。ミニに餌やんなくちゃ」

ジーク「……く、深刻な気分過ぎて、まるでボケが見つからない」←無理にボケようとするな

ここでジークはルーちゃんにはお使いに行かせて、仲間たちに夢のことを相談します。

一人にするのは危険ですけど、ガアラを一緒に行かせます。殆ど出番がないのに相変わらず便利な人です。


ジーク「……みんな。俺、ルーが大人になった夢を見たんだ

一同「そっちかよ!」

エア「とりあえず、神の鉄槌を喰らわせたほうがいいかもしれないわ」

ニゲラ「何て不埒な!

メッシュ「まあまあ、そこで不埒までいくのは、妄想力が激しすぎですよニゲラ」

エア「でも、夢の中で大人になったっていえば、もうそれしかないじゃないの!ねえ、ニゲラ」

ニゲラ「はーい、ジークさんふけつー」←その理屈はおかしい

本題はそこから。黒い翼に飲み込まれる夢をミスティン姫と共有したことに、一同面倒くさそうでした。

事前に判明するのはありがたいとはいえ、ただでさえ非常時だというのにそんなの見られたら不吉です。


エア「なんで夢見の能力が重用されるてるけど、面倒なのかよくわかった。この、ジークめ!って思っちゃうもの。
    ……逆説的にいえば、ジークがそんな余計な夢さえ見なければ、そんな不吉なことは起こらないのよ!」

イスミー「ひでえ!姐さん、そいつはひでえよ!」

メッシュ「メタ視点にもほどがあるでしょう」

ジーク「あ、今、姉ちゃんの苦しみが、すごくわかった」

一見便利だけど、本人にとってはデメリットも大きい。これはむしろ不利な特徴としてCPを貰えるかも(ゲームが違う)。


しかしこの夢は無視できない。以前から言われている通り、ルーフェリアとアーメスの信仰は似ているから。

エア「一般信者からすれば、同一化されてもおかしくないかもしれない」

ジーク「閉じ込められた状態で、否応なしに誰かががんばらなきゃ的状況で生まれた神ってことだよな。
     閉じこもった中で、仲良く助け合おうってのも似てるんだよ、実は」

エア「そう。ただ違うのは、アーメスにはバトエルデン様がいなかった

ニゲラ「教えを支える人がちゃんといたってことですねえ」

神の在り方が信者の祈りによって決まるのなら、正しく教えを広めてくれる人がいないと歪んでしまいますからね。

神の分体であるアレンが誰よりもそうするべきだったのに、私利私欲に走った結果がこれですからね。

もっとも同じ分体であるリアやルーちゃんだって普通の信者の助けがなくてはやっていけないんですが。

そういう意味では分体ですらなく、本当にアーメスを理解していた人族なり蛮族なりがいなかったのがアーメスの不幸かも。


アレンは何らかの方法でルーちゃんを取り込もうとしていると予想できます。こういう時こそ大司教ですが。

エア「本国に送り返すという選択肢もあるにしても、その移動のタイムロスがこわいわ」

ニゲラ「一瞬のうちに、移動できる神聖魔法がありましたよねぇ?」

エア「あるわよ。ちょっとレベル足りないけど。"エスケープ"一番近い神殿に移動する。……つまり、ここ!」

メッシュ「では、まずはこの神殿を破壊するところからはじめましょう!

エア「あほかー!」

12レベルの神聖魔法ですね。消費MP僅かに3点という省エネで最寄の神殿なり祠なりに移動できる。

フォーセリアにもマーファの特殊神聖魔法"リターン・ホーム"とか、パーティ全員を移動させる"レスキュー"とかありましたね。


ここでぞんざいズには色々な選択肢が提示されます。ルーちゃんを護衛して本国まで行くというのも一つです。

あるいは信者の拠点を叩く、アレンを叩く、アーメスを叩く、待ち伏せする、など。そんな皆の輪にカームさんが入ってきます。

カーム「あまり言いたくはないけれど、アーメス信仰の隠れ里のようなものは、《白峰領》の外側にあるみたいだよ」

それは山を一つ越えた所にあって、パジャリガーにこの地を追われた信者達が逃げ延びた場所のようです。

カームさんがアーメスという神について調べる中で、あのエルヴィーンの記録から彼がそこから来たと判明しました。


カーム「何にどのように備えるか。そして、行動するかは君たち次第だ。よい流れに乗れるように祈っている

ちょっとルーフェリア神官っぽい言葉ですね。流れに逆らわず、流されず、上手く乗ることが大切なんですね。

ではどうしようかと相談するぞんざいズですが、魔法装置については散々脅されたので手を出すつもりはないらしい。

本当はそこまで危険ではないようですが、わざわざNPCに危険だと明言されたことを無理に追求する気にはなりませんしね。


そんなぞんざいズの流れを変える懐かしい客がやってきます。

ジェロ「たのもーう」

メッシュ「お前など知らん!ばたん!(閉めた)」

エア&ニゲラ「まてまてまて!」

ジーク「ごめん、こいつ本当に知らないんだ」

ジェロ「やあ、久しぶり、ジークくん」

本当に久しぶりですねジェロ。本名アルフォンゾ。うっかり姫様を攫われて奴隷に落とされた元近衛。

一時期バジリスクに石像にされたりしていましたが、今ではすっかり元気になって《赤砂領》で働いているらしい。


ジェロ「以前は色々とお世話になりました」

ムーテス「うわ!懐かしい!そういえばいたっけこんなヤツ!」←思い出した人

メッシュ「チキンハート・ボーイですな。覚えてないんですが」←記憶にございませんな人

ジーク「よう、久しぶりだなあ。ちょっとは出世したか?」

ジェロ「いや、全然

ジーク「だろうなー」

今回の彼はアリオス卿の使いとして、連絡係兼アイテム供与係として派遣されてきました。

何しろ彼には携帯型の<守りの剣>がありますからね。あれば役に立つだろうと気を利かせてくれたのです。

ただし本人はシューター6のフェンサー5と少ししか成長していない。何のために前線にいたんだお前は(笑)

それこそぞんざいズがエルヴィーンと戦ってたぐらいの実力ですね。お使いばかりで実戦はやってないのかと。


まぁとにかくこれさえあれば高レベルの蛮族やアンデッドは手が出せなくなって、多少護衛も楽になる。

メッシュ「少なくともアレンは手を出せないということですよ」

GM「…………」

これでぞんざいズはルーちゃんの護衛を他の人達に任せて、自分達は積極的に外に行く気になりました。

それは結構なことなんですが、GMの沈黙が意味することに彼らは気付いていなかった。アレンには穢れがないというのに。


更にジャスティの部下のペガサスの伝令がやってきて、《無法領》にあった魂をパッケージする装置が盗まれたと伝えます。

やはり以前ニゲラが想像していた通りに何か利用するつもりなのです。今度はルーちゃんの肉体にアレンの魂をくっつけるとか。

色々不吉な想像が過ぎりますが、セラフィナとミスティン姫、そして本国の大司教に現状の報告をしておきます。


★深く深く作戦会議

ぞんざいズはクロノア、カーム、ガアラ、ついでにジェロを交えて作戦会議を行います。

GM「クロノアさんは、さっき届いたという封書を見せてくれますよ」

エア「何なの、そこの母親みたいな人」

クロノア「あら、可愛くない。それに引き換え、素直で可愛い我が家の次女が、こちらに向かっているそうよ」

ここにきてようやくソラ復帰フラグです。ちゃんとオクタンの本体を連れてきているようですね。


しかしお姉ちゃんの顔は浮かない。

ニゲラ「あれぇ?嬉しくないんですかぁ?あんなに妹ラブでしたのにー」

エア「いや、妹は可愛いんだけど、一難去って、更に四難って感じなのよね、気分的に。
    これは、経験に基づく偏見だけど……なんか、災難をつれてくる!(きっぱり)」

GM「なんで偏見なのに、そんなに力強いんですか」

エア「でもどんなに迷惑かけられても、可愛いという自分もいるの。姉は複雑なのよ」

色々やらかしそうだけど、やっぱりソラには帰って来て欲しい。彼女だってぞんざいズの一員なんだから。

ノリスみたいに最後までNPCというのは寂しいですし、ちゃんと中の人も一緒に帰って来て欲しいところ。


さて、ソラが帰ってくるまでの間何もしないわけにはいきません。アーメスの隠れ里やら魔法装置やらと調べる事はある。

逆に敵に対する備えも考えないといけません。それについてはガアラが一つ気になるところを指摘します。

ガアラ「じーじ……いや、ダンフォース領主が憂慮なさっていたのは、
     神殿近くに通じることがわかっている隠し通路の存在です」

実は30年前、パジャリガーはこの通路を使って密かに街に潜入し、エルヴィーンらを追い払ったのです。

ダンフォースの親が当時のパジャリガーの仲間だったので確かな情報です。その功績で領主になったんですかね。

前回の敵はそれを狙っていたとしたら、パジャリガーにやられたことをそのままお返しするつもりなのかもしれない。


そうなるとルーちゃんの安全をどう確保するかがやはり問題です。護衛を固めて本国まで逃がすというのも手ですが。

ムーテス「でも、僕たちがそれをするわけにもいかないでしょ」

ジーク「そうなんだ。護衛をつけるにも、エアのとーちゃんとかーちゃん、
     あとガアラだろ?ミニ<守りの剣>を持たせても怖いぞ」←リャンとジェロもいるよ(笑)

エア「……じゃあ、ソラにも行かせる」

ニゲラ「そうしたら、ソラさんを安全圏に確保できるとか考えたでしょー」

エア「いや、正直そうとは限らないと思ってるわ。ご本尊を動かしたら、
    狙ってるやつらは絶対そっちに集中するでしょ?下手したら最前線の可能性高いのよ」

それにそれだけの護衛をつけるとこのフーギの街ががら空きになる。守るべきなのは最早ルーちゃんだけではないんですよね。


エア「今までの展開を考えると、ここを手薄にした瞬間、イヤァアアッフー!とばかりにアレン一党が攻め込んできて、
    ルーフェリア信者を根こそぎ刈りとってそのままアーメスに……なんて展開も充分に考えられると思うわ(じろ)」

GM「……なんで、そんな不穏な目で見るんですか。あ、一つ言っておきますけど、
    アレンは罪のないルーンフォークの集落を一つ潰すくらいのことは平気でしてます」

エア「ほらぁあ!」

ニゲラ「見えてるところは、マヌケなのにー」

それに既に本国のルーフェリア信仰と、アイヤールのルーフェリア信仰は微妙に違ってきていそうですしね。

ルーちゃんがこの国の信仰に馴染んでいるとしたら、最早ここから離れて生きていくのは負担を強いるだけなのかも。

ルーちゃん自身もここに残って人々を護りたいと考えているようだし、もうそういう神様として信者と共生関係にあるのかも。


エア「あ、でも、ヴィシュヌと吉祥天程度の違いで、本質は同じだろうけど」

ムーテス「もらえるお布施(MP)は、どちらも同じってことだよね」

エア「汚れた信仰の解釈をするなトカゲ!」

ムーテス「え、汚れてないよ。僕の心ほど、純粋な信仰はないっすよ!

メッシュ「金、の一点ですな」

ムーテス「そう!何にも濁らず!何にも惑わされない!あ、ジーク。できれば、次は相場の変動の予知を頼むっす」

ジーク「清々しいなーお前」

結局ルーちゃんは<守りの剣>と一緒にここに残ってもらうことにします。エアの家に匿っておきます。

そこにカームさんとクロノアさん、ガアラにコボルド一家、ついでにリャンを詰め込んでおくと。流石に狭すぎる(笑)


そこでムーテスが突然いいことを思いつきます。

ムーテス「エアさんちの隣か裏かの敷地で家を買うって言ったら、すぐ買えるっすか?」

<守りの剣>の効果範囲内に家を買ってそっちに匿ってしまえば、すぐには居場所を突き止められないという作戦です。

そのために以前のエアと同様に2万ガメルと名誉点150点で<中規模の邸宅>を購入するのです。


ムーテス「神を匿った家で商売!これってすごくない?」

メッシュ「商魂逞しすぎでしょう!」

GM「いいですよ、認めます」

あとは名誉点75点で<有能な金庫番>も雇います。ルル&メルのどっちかを。間違っても極彩色とかは指名しない。

そっちの家にはルーちゃんで、エアの家には夫妻。コボルド一家とリャンはバランス取ってムーテスの家ですかね。


ムーテス「五年後くらいに「神を護った家」って堂々と名乗るためには、ルーを護る!これっすよ!
      おおー滾ってきた!あ、みんな、壁とか床のどっかにサインしてってね」

ジーク「あと、もこもこ領主とシルフィも呼んでおけば安全なんじゃないか?防御が硬い理由も納得するだろうし。
     それに……シルフィが未来の皇帝になったら、さらに「神と皇帝を護った家」だぞ」

ムーテス「それだーッ!!」

それだけ危険もありますが、賭けるだけの価値がある投資といえます。本当に商才があるなこのトカゲ。

ダンフォースとシルフィもそっちの家にお迎え。なんだか可愛いのが集まってきましたね、極彩色を除いて。

するとすっかり影の薄いジェロはエアの家のほうですか。全く面識のないおしどり夫婦と同居とか気まずいにも程がある。


あとアインベフは相変わらず詰まっています。

アインベフ「ここが微妙に居心地よくてごろごろしていたら、ちょっと身体のサイズが変わったようでな。太ったかもしれん

ジーク「おーい、ここに大量の肉を運べー!

ということでこのまま詰まっていてもらいます。グレータードラゴンの番人は心強いものです。


そしてぞんざいズはアーメスの隠れ里へと向かいますが、そうして準備をしているとルーちゃんがそわそわ。

メッシュ「……さ、皆さん気を利かせるのですよ」

エア「できれば邪魔したいところだけどねー」

ジーク「ルー。なんか怖い夢とか見てないか?身辺に変なことはないか?
     色々と不自由させてる気はするんだけど……ごめんな、お前の意思を無視して、色々と決めて」

ルー「平気。正直、あの神殿の変化は少し怖いけれど、それから逃げちゃダメなのだと思う
    けれど、今の状況を一番わかっているのは、ジークやみんなだから、
    みんながそうしたほうがいいって判断をしたのなら、それに従うつもり

本当に信頼してくれているんですね。初めて出会った時から積み上げてきたものがあればこそ。


ルー「今度、戻ってきたときには、わたしが《白峰領》の街を案内してあげるね……約束
    前に、カナリスを案内してくれたから」

ジーク「そうだな……って、……ちょ、ちょっと待て。これは、なんかフラグ立てられていか?いやな方向に」

ということでどっちのものか分からない死にフラグが立ちつつ、2人は指きりで約束をしたのでした。


まぁその様子は全員から見られていたんですけどね。メッシュは隠密で、イスミーはマントで、その他は物陰で(笑)

エア「ジークが英雄になるのはいいんだけどねー……ルー様とうにゃうにゃになるのはねー」

ニゲラ「複雑ですかあ?」

エア「むしろ、わたしがルー様と!

一同「おおおい!」

メッシュ「あ。ジーク様はお気になさらず、この狂信者エルフはこっそりと始末いたします」

エア「うそうそ。でも、信者としては複雑なのは本当」

ここでルーちゃんは以前ジークから貰った宝石を守りとして渡してくれます。あれからずっと持っていたんですね。


エア&メッシュ(ルーの視界外からブロックサイン中)

ジーク「え?なになに?」

エア&メッシュ「ア・タ・ラ・シ・イ・ノ・ワ・タ・セ!」

ジーク「……く!じゃあ、この……フランベルジュを……!」

エア&メッシュ「あほかぁああー!」

そこで黒子のメッシュが<通話のピアス>をこっそりとジークのポケットに忍ばせておきます。

いくら《影走り》があるからって思いっきりフレームインしている気がしますが、気にしない。


ジーク「何かあったら、呼ぶんだぞ。みんなの言うことをよく聞いて、一人でふらふらすんなよ?」

ルー「はい。いってらっしゃい、皆さん。怪我をしないでね?」

こうして色々なフラグが乱立する中ぞんざいズはアーメスの隠れ里へと向かったのでした。


★宥和の教えを伝える地

カームさんから隠れ里の位置を聞いたぞんざいズは《白峰領》を出て徒歩で2日ほど旅をしました。

大アイヤール帝国時代の遺跡がちらほらと見えますが、ディルフラムの領土というわけではないようです。

多分両国の緩衝地帯のようなものでしょう。以前ラプテラス狩りに出かけた時もこんな感じでしたね。


久しぶりに遺跡らしい遺跡を目の当たりにした気がします。オクタンがいた遺跡より危険そうだし。

ムーテス「冒険者としては、うずうずするんだけどね」

ジーク「また機会あれば、こような。俺も妖精を見つけて戦いたいし」

魔動機文明時代の遺跡なら妖精というか、ドゥームのような魔動機械系の魔物が出そうですけどね。

あとは当時の戦死者のアンデッドとかも。中央に見捨てられた市民や軍人が沢山いそうですしね。

大型サプリメントの「カースドランド」にもそんな設定の哀しいアンデッドが出てきて印象的でした。


やがて目的地に近づくと例によってメッシュが斥候を買って出ます。

イスミー「そいじゃあ<姿隠しのマント>と<サイレントシューズ>をお貸ししやすぜ」

メッシュ「それは、完璧。では、見事役目を果たしてまいります!(敬礼)」

ニゲラ「……それが、メッシュさんを見た最後でした

エア「そこからまた記憶が一年消えるのね」

メッシュ「縁起でもないことを!」

ムーテス「まあ、僕たちは彼を信じて、鍋でも囲むっすよ

メッシュ「うわ、ハブられ感満載」

いつかの脱獄の時みたいに《隠密判定》に+6もの修正が入りますね。

基準値にして18、ちょっとやそっとでは見つからない筈なのに1ゾロが怖い(笑)

まぁ実際これらを使うのは危険を察知してからです。それまでは素の能力で頑張ります。


<望遠鏡>などを使いつつ先を見ながら進んでいると、やがて地面に立てられた1本の杖を発見します。

荒涼とした風景の中にポツンと突っ立ったその杖の先には独特の結びをしたロープが巻かれていました。

<望遠鏡>越しにではそれ以上はよく分かりませんでしたが、実はこれはアーメスの聖印を意味していたりします。

以前イスミーが捕まった浮島で見たものですね。分かる人には分かる、そうでない人にはさっぱりな印です。


ここで警戒したメッシュは<マギスフィア(大)>で"マナ・サーチ"を使用し、半径50m内を調べました。

すると杖やロープそのものには魔法の反応はないものの、そこから15m離れた岩陰に5つの魔法の反応を確認。

メッシュ「それは……お宝が五つ埋まっているのか。それとも、五体の魔法生物が待ち構えているのか……」

あるいは以前のライルバート卿のようにマジックアイテムを5つほど装備した何かがいるのかもしれない。


これを警戒したメッシュはその辺りを迂回して進むことにします。すると急に激しい頭痛を感じます。

メッシュ「ハイ!?あだだだだ!」

それは頭を締め上げるような感じたことのない痛みでした。孫悟空の緊箍児みたいな感じですかね。

そのまま歩くことが困難なほどですから、フォーセリアの"ギアス"みたいな行動不能状態かも。


しかし必死に仲間達の方へ戻ろうとすると嘘のように痛みが引いてしまいました。

エア「うーん、これは……逆<守りの剣>というか、
    穢れのあるものだけ進入できる類いのアイテムがあってもおかしくないかなー
    ……なんて、鍋突きながらぼんやりと考えたりするけど。そうじゃなきゃ、活動限界じゃない?」

ジーク「いや!まだメッシュは八年しか動いてないぞ!」

エアのこの推測は正解でした。後に<守りの剣>の逆の効果を持つ<穢れの剣>によるものだと判明します。


実はこのアイテムは「ウィザーズトゥーム」にデータが収録されていまして、魔動機文明時代に誕生したものです。

当時地上から蛮族を淘汰するのに役立った<守りの剣>でしたが、生産する中で生じた不良品が存在しました。

遺棄されたそれら不良品が蛮族の手に渡り、研究の結果穢れのないものを排斥する効果を得たのです。

その効果は《穢れの領域》といい穢れが0点だと制限移動のみで主動作不可、全ての行為判定に−4と雁字搦めです。

穢れが1点だと行為判定への修正は−2に抑えられ、移動や主動作に制限は入らない。2点以上で一切の影響なしです。


つまりこの場にソラがいれば多少なりとも先に進めないこともなかったんですね。お姉ちゃんが許さないだろうけど。

ちなみにその効果範囲は<守りの剣>と同様に様々で、半径数km単位でカバーするものもあれば半径数十mのものもある。

力を維持する為には<守りの剣>と同様に<剣のかけら>が必要で、力の弱い剣ほど消費する量は少なくて済むらしい。

今回使われているものがどの程度かは不明ですが、だだっ広い風景の中に敵の集落が見えないのなら結構広そうですね。


その後メッシュは仲間達を連れて戻ってきて、杖の鑑定を行ってもらいます。

エア「頭のいい人たち、「見識」判定で、あれが何か判断してくれない?」

イスミー「へい!」

メッシュ「……こういう言い方をすると、何ですが。タビットが頭がいいことは周知の事実なんですが、
      ここでイスミーが名乗りを上げることに強烈な違和感が!

イスミー「ひでえっ!」

かといってソラがいて名乗りを上げても違和感を感じますけどね。性格や判断力は中の人に依存するから仕方ないけど。


これでこのロープの結び目がアーメスの聖印だと判明します。

ジーク「あー……つまり、あそこからアーメスの連中の陣地ってのを無言で主張してるのか?」

メッシュ「しかし一本しか立ってないですよ?」

イスミー「遠くに、ぽつぽつ立ってるのかもしれやせん。ここだけ見てたら、わかんねえかもですが、ライン上に」←正解でした

例の<穢れの剣>は穢れを持たない者を排斥しますが、それは穢れを持たない動物なんかも追い出してしまうことになる。

それでは狩猟ができなくなってしまうので、この杖によって結界の有効範囲を見極めるという工夫でもあります。

穢れ持ちは結界の存在に気付かないでしょうしね。逆に猛獣や幻獣に襲われた時もここを越えたら大丈夫という目印にもなる。


それならばと、メッシュは岩場に近づくように進んでみることにします。

すると岩場の影からダークトロールがのっそり立ち上がります。エルヴィーンの同族だし、浮島でも戦ったので判定不要で分かる。

メッシュ&トロール「な……「何しにきた?」

一同「ハモった!」

ジーク「メッシュが若干上ずり気味だけどな」

ただし今まで見た中でも一際ガタイがいいとか。それってブラッドトロールよりいい体格してるってことですかね。

どうやら蛮族PCのダークトロールとしてデータを作っているらしいので、ダークトロールでありながら高レベルなのかも。

試しにメッシュが《魔物知識判定》で13を出してもデータが見抜けなかったので、11レベル以上はあることになりますね。

ちなみにモンスターデータとしてのダークトロールは8レベルで知名度13。PCデータとは基準が違うんですね。


メッシュ「日光浴か」

トロール「我らでないものよ、疾く、この地を去れ」

メッシュ「まあ、そう言うなや」

自分達とは違うものを追い出そうとするこの態度。いかにもアーメス信者っぽいですね。

普通のダークトロールだったらそう簡単には逃がさない筈。それが強そうな人族なら遠慮なく戦いを挑みそう。


メッシュ「なにしとん?」

トロール「我らが我らでないものが入ってくることを戒めている。我らになるものであれば、受け入れよう」

メッシュ「……たいへんそうやな

トロール「うむ(こっくり)」

メッシュ「昼間っから、大変やなー……動き鈍くなるのに」

トロール「ゆえ、岩で日陰を作った(こっくり)」

何故か関西風に和み始めました。エルヴィーンの時はいきなり戦っちゃったし、こんな風に交渉するのは新鮮。

この会話自体は汎用蛮族語と思われるのですが、まさかそういう訛りってことはありませんよね。

PCデータのダークトロールの方も初期言語は汎用蛮族語と巨人語なので普通に通じるでしょう。


ちなみにPCとしてのダークトロールも日光で《弱体化》し、命中力と回避力に−2のペナルティが入ります。

しかし毎ラウンドHP5点自動回復の《暗闇の再生》は種族特徴としては備わっていなかったりするんですよね。

その代わり6レベルで〔限定再生〕という形で種族特徴が増え、1日1回だけHPを「冒険者レベル×5」点回復できる。

《暗闇の再生》でいうと「冒険者レベル」ラウンド分の回復を一気に行う感じですね。この辺の違いはどういう理屈なんだろう。

これは主動作を費やしますが、11レベルになると補助動作に強化されます。ロッ○マンXでいうサブタンク的なものですね。

あと《暗闇の再生》が日光の下では効果を発揮しないのに対し、こちらにはそういう制限はない模様ですね。PCとして使いやすいかも。


メッシュ「貴方たちみたいなの、ぎょーさんいる?」

トロール「それなり。もっとも、我らでなくなった者もいるが」

実は彼らはアーメス信者でこそありますが、アレンとは違う派閥の信者だったりします。

アーメスの教えに従っていようとも別の派閥に行ってしまえばそれはもう別の存在なんですね。

同じ引き篭もりの神でもどんどん拡張を続けるルーフェリアとの決定的な差はその辺が原因なのかも。

こういう信仰の仕方をしている限り勢力的には右肩下がりでしょうしね。境界が曖昧な分周期の時代の神獣の民より危うい。


メッシュ「まあ、無理はしないように(バイバイ)」

トロール「うむ、道中気をつけよ。我らでないもの」

メッシュ「お前も、無理すんなやー」

ムーテス「お帰り」

エア「……っていうか……なぜ和む!なぜ、すごすごと帰ってきたァアッ!

実際問題、仮に彼を倒せしたとしても<穢れの剣>の結界がある限りそれ以上先に進めないんですよね。

あと例の5つの魔法の反応は彼の装備、剣・盾・鎧・指輪のトロール仕様だったようです。


もし本気で入ろうとするなら一番簡単な手は……。

ジーク「みんなで穢れてみる?」

ニゲラ「これから殺し合いをしマース?

メッシュ「いやいやいや!私はどうやっても穢れは無理ですから!」

エア「わたしは多分生き返ってこないわよ」

ジャガスラで一時的に穢れを得るという方法もありますが、その為には許可を得たり穢れを得たりと色々面倒です。


仕方ないのでミニに騎乗したイスミーとムーテスが上空から偵察に赴きます。

イスミー「やーいやーい、ここまで来てみろー的な気分でやすなあ」

GM「じゃあ行く」

イスミー&ムーテス「は!?」

GM「"フライト"」

一同「飛んだぁああ!?

まさかの魔法戦士でした。最低でもソーサラー10レベルで、プリーストも持っていると。

ただし"フライト"は常に全力移動しているものとして扱われるので、魔法は使えないし回避も落ちますけどね。

その辺を自由にしたいのなら12レベル深智魔法の"フリーフライト"という手はありますね。

これなら制限移動も通常移動も自由自在です。ただし真語魔法&操霊魔法を12レベルというのは長い道のりですが。


エア「あ、空で星が三つ流れる……」

トロール「それ以上近づくな、我らでないもの。それ以上近づけば、我らの排除と、無用の苦痛を味わうことになるぞ」

ムーテス「……うわー。……苦痛で、しかも無用って嫌だなあ」

これにより相手も警戒を強めて増援が来ます。カスタム・ダークトロールが2体と、名前のあるサキュバスです。


ジーク「……なあ、あそこにいるダートロも、杖のロープも、結び目の材質はおんなじか?」

GM「え?あ、材質はまちまちですね」

ジーク「じゃあ、その結び目を俺たちもつけて近づいていくってのは?

一同(爆笑)

エア「わたし的には汚らわしいんだけど!」

こうして「いっそ正面から突っこむか」という蛮族より蛮族らしい思考に帰結する一方、相手方は何やら協議を開始。


しばらくすると大きな白い布に文字を書いてこちらに見せてきます。

布「我らでなくなった者よ。幾度来ても、戻す気はなし。戻る気はなし

ニゲラ「……一回、出て行ったら、帰ってくるなってことぉ?」

布「何度使者を差し向けようと、無駄無駄無駄

このメッセージにより、ぞんざいズも彼らがアレン一派とは別の派閥なのではないかと感づきます。

試しに彼らの結び目を対象に《見識判定》をすると、アレン一派のものとは微妙に異なることに気付きます。

揃いも揃ってその異なる結び方をしているので、間違いではなく意図的なものだと考えられるわけですね。


エア「……うーん。……みんな、わたしは、ちょっと、おなかがいたくなりました。
    なので、ここですこし、やすんでいようとおもいます(棒読み)」

ニゲラ「そうですねぇ、それは大変ですぅ。では、ゆっくりと休んでいてくださいー」

ということでエアが見て見ぬ振りをしてくれたのでダークトロール達と交渉しにいきます。彼女なりの精一杯の譲歩です。

こちらは武器を構えずに魔法が微妙に届かない30m手前で静止。向こうは武器こそ構えますが戦うつもりはないようです。


ジーク「お前たち、アーメス信者か?」

はっきりとは答えませんが結び目を隠す素振りもないので肯定でしょう。そしてメッシュの顔を見て何やら訝しげ。

「ルーンフォークだな」

「うん、人間じゃないな」

「じゃあ、違うな」

どうやら彼らはパジャリガーの顔を覚えているらしい。蛮族にとっての30年なんてつい最近、現役でも不思議はない。

ちなみにダークトロールの寿命は300年程度とされています。ドレイクは不老で1000年以上は余裕で生きる。

他の蛮族ではラミアは200年、ライカンスロープは150年と、エルフほどではないにしろ人間よりは長命です。

ではコボルドはどうかというと、実は寿命は30年ほど。普通の犬よりは長く生きるもののルンフォやタビットより短命です。


ムーテス「キミたち、分派とかいない?アーメス信者に迷惑をかけられてるから、そいつらを僕たちは何とかしたいんだ」

トロール「我らでないものと、我らであるもの、区別をするならばいるだろう。もっとも、それは、すでに我らではない

つまり彼らから離反したアーメスの一派がいると。それこそがアレンで、今は袂を分かっていると推測できますね。


では彼らは《白峰領》に未練はないのかというと、実はもう土地を奪還する気はない派閥のようです。

仮に奪還してもまた追い出されるだろうし、<穢れの剣>で引き篭もっているだけで満足してしまっていると。

蛮族としては堕落っぽいけど、ある意味理想郷を見つけてしまった連中なのかもしれませんね。

もっともアイヤールが再拡張すれば元大アイヤール帝国領だったここもいずれ人族に奪われるかもしれませんがね。


それとここの出身であろうエルヴィーンの名前を出すと、最初のダークトロールが嫌な表情をします。

ジーク「なあ、エルヴィーンって知ってるか?」

トロール「我がダンテの不肖の弟であった。若いがゆえに仕方がないのかもしれん。
      この地での変わらぬ留まった時間を厭い、故郷を取り戻そうと戯けたのだ」

まさかのお兄さんでした。弟とはえらい実力差がありますね。そしてえらい格好いい名前です。

まぁこの連中は同じアーメス信者でもアレン一派よりは実害はなさそうなので当面戦う必要はないでしょう。


問題なのはダンテが言っていた使者です。どうやらアレン一派から協力を要請する使者が何度か来ているらしい。

ダンテ「我らの修行を兼ねた、共同体での生活は不便であろうと、何度も空からやってくるが、
     如何に誘われようと、あれらは受け付けぬ!我らにとって不死者は敵ぞ!これ以上は近づかせぬ!」

イスミー「実害は出てるんでやすか?」

ダンテ「幾人か戦士がやられ、向こうに宥和された」←つまりアンデッドにされたと

一度離反したアレンは例え神の分体であろうと認められず、使者を何度も断っていたらアンデッドが差し向けられたと。

穢れの塊であるアンデッドは<穢れの剣>の結界を越えてきますからね。ダンテはそれに備えていたようです。

蛮族にとってもアンデッドは敵です。そんなものを扱うアレンを受け入れることはもうないのでしょう。


ということでアレン一派を倒したいという点では彼らと利害が一致しています。その辺を踏まえて敵の情報を聞きます。

するとダンテは翡翠入りの麻袋を渡してきます。仲間に引き込む賄賂としてアレン一派が渡してきたものらしい。

この閉じたコミュニティの中で全てが完結しているのならお金とかは無価値でしょうしね。財は全員の共有物。


この翡翠の濡れたような輝きを見たとき、イスミーだけはそれに見覚えがありました。

メッシュ「そう……!実はあの時、うさぎのパーティメンバーを押しつぶしたのは、巨大な翡翠の地層だった!」

イスミー「ひぃいい!」

GM「あ、まさしくそんな感じです」

メッシュ&イスミー「なにぃいいー!!(驚愕)」

イスミーを除いて全滅したという例の遺跡ですね。彼はそこでこれによく似た翡翠の輝きを見ていたのです。

アレンがシフェナを助けたという場所ですが、アレンは元々活動資金として翡翠を得るためにそこにいたのかもしれない。


その遺跡はルーフェリアとアイヤールの間の山脈、以前アメリアの飛行船が墜落した辺りにあります。

ジーク「お前らの嫌いな連中は、俺たちがぶったおしてくるからな!」

ダンテ「我らでないものが、それを成すのは些か複雑なものはある。
     とはいえ、我らでないものは、その輪を広げるために大切なものを盾として、取り込むことも多いという。
     お前たちが、彼らにならぬことを祈っている」

つまり人質を取ることがあるから気をつけろと。ますます《白峰領》が心配ですが、今はイスミーの案内で遺跡へ向かいます。


★名を継ぐものたち

西に旅をすること2日、かつてイスミーが泣きながら駆け下りてきた山脈に近づいてきました。山道はそれほどで苦ではない。

GM「それよりも<保存食>がもつかが心配ですが」

ジーク「……へ?」

ニゲラ「わぁ、ニゲラ、そんなところに全くお金割いてませーん」

メッシュ「私はルーンフォーク用のカプセルがあるので三週間は大丈夫ですが、皆さんの分は獣を狩りながら進みましょう」

ムーテス「久しぶりだなあ、ウィルダネス!忘れてたよ!」

ここ最近は人里での冒険が多かったからあまり買ってないんですよね。カードやら指輪やらはしっかりしてるのに盲点でした。


やがてイスミーがかつてお世話になった猟師小屋が見えてきます。近くの集落のもので、冒険者も使っているらしい。

ジーク「……保存食、置いてないかな

メッシュ「みんなが思っただろうことを、率先して口に出せるジーク様、素敵で御座います!」

蛮族に追われた時のために防衛用の石垣などもある小屋ですが、先客がいるらしく煙突から煙が上がっています。

時刻は夕方なので夕飯の準備にかまどを使っているものと思われます。行水用に水を張ったたらいも準備OKという生活臭。


例によってメッシュが偵察に向かいます。《隠密判定》の達成値は17と低め、これでアレン一派だったら危ないけど……。

?「骨付き肉を盗んで逃げた犬、追いかけて〜♪(ころころ、気付いた)誰だ!」←扉を蹴破った

メッシュ「なにい!貴様は!(微妙に劇画チック)」

パジャリガー「あ?バッタものじゃないか、何でこんなところにいるんだお前」

一同「でたー!」

お久しぶりのパジャリガー・セカンドでした。頭にタオルを巻いてエプロンをつけ、包丁を持った家事スタイル。

意外と家庭的なのは一人旅をする都合上、そういうことは全部一人でできないといけないから。パーティとか組めばいいのに。

この分だと服を繕ったり、洗濯したりと、メッシュ同様に家事全般ができそう。こんなところでもシンクロニシティが(笑)

こういう所を見ると彼にとっては自分自身が御主人様なのかもしれない。近頃は独立精神旺盛なルンフォも増えているらしいし。


ジーク「よー、セカンド!晩飯食わせてくれー!」

パジャリガー「なんだ、お前ら!夕食時を狙って襲撃とはタチが悪いぞ!

ニゲラ「突撃となりの晩御飯的な形にはなりましたけどぉ。ご馳走してくださいー♪」

確かにちょっと無法者っぽい。お茶碗の数が合わなかったらどうするんだ(そういう問題か)。

そしてそんなぞんざいズにちゃんと御飯を出してくれたりと、相変わらず変な所でいい人だ。


ムーテス「お前何してたんすか?」

パジャリガー「え、飯作ってた」

ムーテス「ちがう!もっと広いスパンでのことだよ!

メッシュ「貴方ねえ、貴方がそんな態度だと、ルーンフォーク全部がアホだと思われかねないんですよ!」

お前が言うな。


エア「白竜山にシフェナを追いかけたんだろ?」

パジャリガー「そうそう!登った!超登ったっつーの!」

白竜山にアレンが向かったというからちょっと心配でしたが、無事だったようで何より。


ただし遭遇はしたらしく、彼の顔を見たアレンは戦闘を仕掛けてきたそうです。

(回想中)

アレン「貴様は……パジャリガー!」

パジャリガー「そう!俺様こそはパジャリガー!

(回想終わり)

メッシュ「あほか!」

エア「アホだけど、よく生きて逃げられたわね」

どうやら練技"シェイプアニマル"を覚えていたので逃げ切れたらしい。一度死んで学習していますね。

これは犬や猫、馬や豚など人間社会に近い動物に変身するというもの。持続時間は1時間と地味に長い。

変身中は発声可能で技能も使える。ただし装備や衣装をつけたままでは変身できない、あとで回収したのかな。

これでネズミにでも化けて物陰に逃げ込んでしまえば追跡は困難ですね。逃げる途中で魔法を食らったりしなければね(笑)


その時にアレンの危険さを悟り、シフェナは騙されているので目を醒まさせてやらねばと考えたわけです。

そこで彼女から聞かされていたこの遺跡を訪れ、"ポゼッション"が使える仲間達の遺品を見つけてあげようとしました。

パジャリガー「すこしでも気が休まるのならと、せめて遺品なり見つけてやれれば、仲間の声を聞かせてやれるかと思ったんだ

ジーク「……お前、無駄にいいヤツだな。アホだけど」

既に遺体は回収している。アレンなら"ポゼッション"も使えるはずですが……まさかシフェナを利用する為に使わなかったのか。


残念ながらそんな高レベル操霊術師のアテはないそうですが、ぞんざいズならアナトラさんというコネがありますね。

ニゲラ「ニゲラたち、"ポゼッション"使える人知ってますよー!」

パジャリガー「うむ、それは、ぜひ紹介してくれ!(手をがしぃ)」

ニゲラ「暑苦しいので、ヘッドバッド

しかしこれはいい手ですね。死んだ仲間に「ありがとう、もういいんだよ」とでも慰めてもらえれば大分救われるでしょうし。

操霊術師はアンデッドやゴーレムを作るわ、死者蘇生するわで一般にいいイメージはないけど、シャーマン的な良さがある。


ジーク「しかし、遺品を見つけたとして、どうやってシフェナに会うつもりだったんだ?」

パジャリガー「愛の力

メッシュ「幸せそうですね、貴方!」

あとはリオスに行ってアイシャから話を聞こうとも思ってました。それだとぞんざいズを紹介されそうですけどね。


イスミー「……嫁は、そっちでやすよ

ムーテス「あ、言っちゃうんだ」

パジャリガー「へ?」

イスミー「本当の、心の花嫁ってぇのは、そのすげぇ怖い女ルーンフォークのほうでやすよー!
      だからおいらの嫁から手を引いてくだせえ!」

パジャリガー「な、なにい!」

これには流石のパジャリガーもショックが大きかったのか、床に突っ伏してしまいました。

思えば墜落死したのも、記憶が飛んだのも、こんな所にまで来たのも、全部アイシャを嫁だと勘違いしたからです。


ジーク「まあ、いいや。パジャリガー呑め!今夜は呑め!」

パジャリガー「い、いや……花嫁でなかったにしても、俺は一度始めたことは、できるだけやり遂げる……明日も遺跡に行って掘るぞ!」

エア「暑苦しいし鬱陶しいけど、悪いやつじゃないのがねえ」

それどころかかなり善人ですよね。自分の労を厭わないあたり英雄っぽい。

そしてこの夜はぞんざいズと一晩酒を酌み交わしたという。いっそこのまま仲間になっちゃえばいいのに。


パジャリガー「全く作業は進んでないがな。時々変なもんが飛んでくるんで、警戒が解けねえ」

ムーテス「変なもの?」

パジャリガー「おう!こーんなで、あーんなで!」

彼にはセージ技能がないので身振り手振りですが、どうやらゴーストシップっぽい。

本来ゴーストシップに飛行能力はないのですが、その辺はどうにかして飛んでいるんでしょう。

しかしソロでセージ技能無しは結構キツいですね。スカウトがあるから先制は取れるにしても毎度出たとこ勝負です。


★遺跡に舞い降りる影

そして翌日、パジャリガーを加えたぞんざいズは遺跡へと向かいました。

地下への階段は本来土砂に押し潰されていたはずですが、パジャリガーが来る以前から掘り返されていたとか。

《足跡追跡判定》をすると細長い五角形の巨大な痕跡を発見。ゴーストシップが着陸していた場所と思われます。

遺跡周辺と船の周りにはパジャリガーがつけた以上の足跡が残っており、乗船下船を繰り返して何やら出入りがある様子。


土砂の方には緑色の欠片が混じっていたので《宝物鑑定判定》です。

ニゲラ「ニゲラ、女の子ですから、キラキラしたの好きなんですー」←平目で6ゾロ

するとダンテに見せてもらったのと同じ輝きの翡翠の欠片だと分かりますが、あまりにも綺麗過ぎる。

翡翠は原石のままではそんなにピカピカしないのに、人が研磨したかのように美しいのです。


ムーテス「いい鉱脈ってこと?」

GM「めちゃくちゃ」

ムーテス「証拠として、そっと懐に入れるっす

ニゲラ「こらぁ。ナチュラルすぎますよぅ」

しかしエアとメッシュは浮かない顔をしていました。プレイヤー知識で嫌な予感がビンビンでした。

そういえば以前ぞんざいズは精巧な石像を作る蛮族と戦ったことがありましたね。それの宝石版の残骸だとしたら……。

そんな嫌な予感とGMの表情にビクビクしながら《魔物知識判定》をした結果、ジェイドバジリスクと判明(Oh...)。


ジェイドバジリスクは14/15レベルの蛮族です。バジリスクの上位種で全体的にバジリスクを強化した存在です。

真語魔法は13レベルに、《毒の血液》によるダメージは2D+8点に強化されています。

特徴は二つの邪眼を持っているということ。片方の《翡翠の視線》によって対象を石ではなく翡翠に変えてしまいます。

ただし器用度か敏捷度を−6していくバジリスクと違い、こちらは器用度か知力を−6していく仕様です。

もう片方の邪眼による《蘇生の視線》は"リザレクション"と同等の効果を持ち、精神抵抗に失敗すると強引に蘇生させられる。

《魔物化》すると右邪眼、左邪眼、頭部(コア)、胴体の四部位になります。右が翡翠色の翡翠の邪眼、左が乳白色の蘇生の邪眼


大型サプリメント「ミストキャッスル」において、霧の街を支配する蛮族の大ボス"翠将"ヤーハッカゼッシュの同族ですね。

まぁ続編の「ミストグレイヴ」で更なる秘密が明らかになったりしたのですが、とにかく強い蛮族という印象が根強い。

それ以外にも「剣をつぐもの」にも同族が登場していたりするし、数はそんなに多くない筈なのに割りとよく出てくる気もする。


ムーテス「僕は、こいつを従えるために強くなってきたっすよ……あるいはお友達になって、
      剣や花瓶や、そういった無機物とか花を翡翠に変えてもらって売る!動物は、ちょっと可哀想だからね!」

イスミー「こらぁああ!大将!」

パジャリガー「おめーの欲の皮はすげーな」

無機物まで変えられるかは分かりませんね。対象には「敵」や「キャラクター」といった表現が使われているので無理かも。

もしそうだとするとこの土砂に混じっている翡翠の欠片は、全部犠牲者達が砕けた亡骸ということになってしまいますが。


しかしこの《蘇生の視線》は脅威ですね。10分間睨む必要があるので戦闘中は使えなくても、それ以外では使い放題。

アレンやゴーストシップの"リザレクション"は行使に1時間かかるのに、その6倍の効率で蘇生ができる。

これで無理矢理蘇らせてアンデッド化した人に<呼応石>もどきをくっつけると、予想以上に効率的に手下を増やされる。




そうしていると遺跡の奥の方から「ずる、ずり」という低い足音と共にオークが姿を現します。

GM「何かを地下から引きずり出してるみたい。……それが何かと言うと……」

ニゲラ「皆まで言わなくていいです!……信者の素ですよねぇ?」

もともとここは流行病で死んだ人達の共同墓地であり、その奥に魔動機文明時代の開かずの扉があったらしい。

オークはそのモザイクをかけないといけない感じの遺体を遺跡の前に転がし、再び奥の方へと姿を消しました。

実はアレンがここにやってきたのはこれらの遺体を掘り出して、配下となるアンデッドの素材にするためだったとか。


ここで思い出されるのはパジャリガーが見たという空飛ぶ幽霊船です。それはこの遺体の運搬手段と考えられますね。

"クリエイト・ゴーレム"の持続時間は1日です。《魔法拡大/時間》を使っても数日しかオークは維持できません。

となると割と頻繁にここを訪れてオークを補給し、遺体を回収するという作業を続けていることになります。

ちなみに通常データのゴーストシップの《魔法適性》にこの能力は含まれない。あるのは《魔法拡大/範囲》ですね。

ではジェイドバジリスクの《魔法適性》はどうかというと、こっちにはバッチリ《魔法拡大/時間》と《魔法拡大/距離》がある。


時間を拡大できるカスタム・ゴーストシップの可能性もありますが、普通に考えてジェイドバジリスクも一枚噛んでいる。

エア「……で、その飛んできたのはいつきたの!」

パジャリガー「一昨日の今頃」

というフラグを立てたところで不意に太陽の光が遮られます。見上げてみれば空飛ぶ幽霊船の姿がありました。

遺跡の内部では範囲魔法を撃ち込まれては一網打尽になると、ぞんざいズ+1は思い切って屋外でそれを迎え撃ちます。


幽霊船の上にはいつかのバジリスク兄弟のように顔を布で隠した男性の姿がありました。何やら溜息をついている様子。

Jバジリスク「……今日は一体だけか。そろそろオークで掘り進めるのも限界になってきたな」

その一体もあと数分早く到着していたら間に合わなかったでしょうね。もう粗方掘り尽くしてしまったらしい。

一体どれだけの遺体がここに埋葬されていたのかは定かではないけど、流行病って時に尋常ではない被害を出しますしね……。

普通の"リザレクション"だったら拒否すれば蘇生しない。しかし《蘇生の視線》は抵抗に失敗すれば強制的に蘇生します。

一体どれだけの人数が望まぬ形で現世に引きずり戻されてアンデッド化したか。そしていくつの魂がその器に入れられたのか。


やがて彼はぞんざいズに気付きます。中でもイスミーの顔には見覚えがあるらしい。

Jバジリスク「おやおや、珍しい闖入者だ。一回潰されただけでは足りなかったかね」

イスミー「いえ、人違いでやす(顔逸らし)」

一同「こらぁあ!」

ムーテス「キミの因縁だろ、ここは!」

イスミー「そ、そうでやすけど、顔合わせたくねえんで」←気持ちは分かる

《翡翠の視線》は16(23)を対象に精神抵抗です。パーティで最大の精神抵抗力を誇るジークやエアと同値ですね。

ましてイスミーの精神抵抗力は14です。カンタマを入れてようやく同値、それはまともに視線を合わせたくありませんよね。


ジーク「お前、アレンの友達なのか?」

エア「蛮族の戯言、ヨロ

本当は遺跡の奥にある記録でも分かった情報ですけど、ここはジェイドバジリスクさん(本名不明)が説明します。

元々彼は随分昔からこの遺跡に住み着き、時折気に入った素材を誘拐して翡翠に変えるだけの耽美な生活を送っていました。

例の開かずの扉のコマンドワードを知っていたので部外者が入ることはできず、なかなか快適にコレクションを増やしていました。

ところがそうして素材集めに外出している時に侵入した冒険者が罠にかかり、彼の家はコレクションと共に潰されてしまったのです。


その冒険者のことを教えてくれたのがアレンで、それ以来協力関係を続けているらしい。

Jバジリスク「住み慣れた我が家は、人族という強欲のために崩壊した
        共同墓地という忌まれた場所のため、人も長くこないと思っていたら……」

イスミー「ちがう!お前の家の建てつけが悪かったんでさあ!」

Jバジリスク「人という強欲のために崩壊した!」←押し通す気だ

イスミー「くそー!かっこいい台詞と思って、二回繰り返しても心にゃ響かねえぜ!」

Jバジリスク「ああ、何度でも言ってやる。人族の強欲のために崩壊したんだ!我がコレクションと共に!」

なんだこのジェイドバジリスク、イスミーと同レベルで張り合ってます。まさに争いは、同じレベルの者同士でしか発生しない!!

もうウサギとトカゲがグローブを嵌めて殴り合っている姿しか思い浮かばない。何だこの低レベルな争いは(笑)


ジーク「イスミー、ごめんなさいは?」

イスミー「兄貴ぃいい!?」

ジーク「悪い悪い。お前がキーになると、いつもお前が悪いような気がしちまった

イスミー「一点の曇りもなく、悪気もなく言われると胸に鋭い棘がダース単位で突き刺さりやすよ!」

元々このバジリスクは人族と争うことを恐れたりはしませんが、それでも精々来たら返り討ちにしてやる程度に思っていました。

ところがその住み慣れた我が家すら潰されたことで怒り心頭。アレンと組んで自ら打って出ることにしたのです。


Jバジリスク「ていうか、何でわたしが隠れ棲まにゃならんのだ!幸いにも、アレンという盟友も得た。
        きゃつの欲している土地に二度と誰もこられぬ場所を作ればいい。それが人族への復讐ともなる」

エア「言っていい?言っていい?」

ニゲラ「なんですかぁ?エアさん」

エア「(ぷっと笑って)ざまー

それならディルフラムにでも行けばいいのに。彼ほどの実力者ならかなり高い地位に就けるでしょうね。

15レベルならギリギリ十三魔将にも入れるかもしれない。そうでなくても堂々とコレクションを増やせるだろうに。

しかし彼のこの主張を聞く限り、やはり彼はアーメス信者ではない。引き篭もりではあるけど宥和する気なんて欠片もない。


ちなみに落盤ですが、イスミーは事故を主張していますけど、どうも重量オーバーも原因の一つのようです。

イスミーのパーティは4人ですが、ライダーが2人もいるとなると最低でももうニ部位は余分に重いはず。

当時のシフェナの騎獣は多分今イスミーが持っている高性能魔動バイク。イスミーは不明ですが多分魔動バイク。

それなら六部位相当ですね。冒険者パーティとしては決して多くはないけど、一ヶ所に重量をかけると結構なものかも。


それに現場にはジェイドバジリスクが長年ためてきたコレクションもあった。

ジーク「お前が、がんがんコレクションを増やしたせいじゃないのか?

Jバジリスク「(視線を逸らしつつ)しかし、最後の藁の一本を置いたのは人族!

イスミー「そんなカタストロフィーはいらねえんでやすよー!」

人間大の翡翠の像が何体も何体も並んでいたら、それは重いですよ。木造住宅だったら床が抜けるかも。

それら過重量に加えてうっかり大きな罠が発動し、落盤事故が起きたということは過失相殺で賠償責任は……(裁判はもういい)。


まぁ向こうの気持ちも分からないでもないけど、恨みがあるのはこっちだって同じです。

イスミー「うるせぇ!お前が後先考えずに、コレクションをばんばか増やした結果、
      おいらたちの……シフェナの悲劇を生んだんでさあ!」

因縁の対決だというのにどうもお互い小物感が拭えませんが、シフェナの時もそんな感じだったし丁度いいのかも。

それにゴーストシップにはオクタンの本体を痛めつけられた恨みがある。こっちは修理中なのに向こうは全部位回復とは羨ましい。


ちなみにゴーストシップが飛んでいたのは、ジェイドバジリスクが"フライト"をかけて飛ばしていたからです。

ただし"フライト"は対象が「1体#」の魔法。すなわち自動的にMPが対象の部位数だけ拡大される魔法です。

これは《魔法拡大/数》を取っていなくても自動的に発揮される。よってゴーストシップの場合は7倍拡大。

"フライト"の消費MPは8点なので、なんと56点消費!素のMPが91点あるとはいえ結構な消耗です。

せめて彼の回復用にお供の神官を何人かつけてあげればいいものを。折角の盟友なのにアレンも気が利かないんだから。


ムーテス「どうっすか、僕が貴方様がこれから先、人族に煩わされない住居を提供しましょう。
      それは、隠れ住んでいるのではなく、世俗を見下ろしているんっすよ!
      あ、お礼は、時々運び込む品物を、ちょこっと翡翠に変えていただくだけで……」

ニゲラ「人族の強欲の塊ですねー」

それをやり始めると、いずれ悪役として冒険者に成敗されることになりそうな気が(苦笑)


エア「まあ、いいわ。貴方には一つ感謝してもらいたい。貴方の事情をわたしたちはこれ以上になく理解した上で戦ってあげるのよ!
    何も知らない15レベルの冒険者がぽやぽやーっとやってきて、「あ、蛮族だ。倒しちゃえ〜」ってなったら、
    何一つそういった事情も憤懣もぶつけることができずに倒されていくのだから!」

メッシュ「たとえば、彷徨える百変化のグラスランナーとかが通りかかったり、
      カイン・ガラの引き篭もり賢者が珍しくフィールドワークに出てきたり。
      この地域15レベルって多いんですよ」

ジーク「山一つ越えたらムキムキエルフだしな」

Jバジリスク「関係ないわー!」

いずれも「滅びのサーペント」「双頭のサーペント」で大司教と一緒に戦った15レベルの英雄ですね。


"百変化の"ゆん・ゆん・ぽむ
はエンハンサー15、グラップラー14、スカウト13で敏捷度67という高機動グラランです。

まず間違いなく先制は取られるし、開幕で《ファストアクション》が発動して怒涛の連続攻撃に晒されるでしょう。

ひとしきり殴る蹴るされた後も練技"フェンリルバイト"や"バルーンシードショット"で攻撃されれば1ラウンドもたないかも。


"カイン・ガラの宝石"ジュエリィ・ルーティアはフェアリーテイマー15、セージ15で知力66なナイトメアです。

基準値26の彼女にかかれば弱点まで軽く抜かれて、《ファストアクション》による魔法2連発を食らうでしょうね。

ことによると"フェアリーロード"で17レベルの妖精王を召喚され、フルボッコにされる恐れもありますね。




ムーテス「僕的に美味しいのは、ここで一人二人翡翠になって、泣きながら仇を討つことかな。うん。そのあと売る

メッシュ「治せや!」

ということで戦闘です。相手の先制値は20と高く、今回は"イニシアティブブースト"のSランクを使ってもらいます。

メッシュの先制力は12で脅威の出目11を出し、カードの効果もあって27で先制奪取。……ていうかカードいらなかった。


これには思わずニゲラも舌打ちし、メッシュは仕事をやり遂げた晴れやかな顔をしていました。

メッシュ「私のクライマックスの見せ場はこれで終了で御座います。ジーク様、私の財布に一万二千ガメル入っておりますので」

ジーク「わかった、もらっておく」

メッシュ「えー!」

カードの補填ではなく蘇生費用です。ていうかまた死ぬ気かポンコツ執事。この状態で死ぬとまたムーテスのことを忘れちゃう。

ちなみにパジャリガーは自前で1万5000ガメル持っているので死んでも安心。ただしルーフェリア様の奇跡の無駄遣いになる(笑)


あと今回は久しぶりにパジャリガーも参戦します。現在の彼はファイター11、スカウト7、エンハンサー5になっています。

GM「あ、誰か、パジャリガー・セカンド担当します?」

メッシュ「回復役が一番暇なのでは?」

エア「そうね。わたしがするわ。……それでは、理性という名のリミッター・オフ!

パジャリガー(エア)「ヒャッハー!戦うぜ戦うぜー!

ニゲラ「エアさんが壊れたー!」

メッシュ「まさしくエア・パジャリガー」

ちなみに装備は魔力+1の<首切り刀>です。カテゴリ<ソード>のSランク武器、お値段2万5000ガメルとかします。

必要筋力20にして威力30/40です。ランク効果を使っている様子なので《武器習熟/ソードU》まで持っているらしい。

ではそのランク効果はどうなのかというと、クリティカルする毎に威力+10というものです。

両手持ちだと最初は威力40、一度回ると威力50、もう一度回ると威力60と、雪達磨式にダメージが増えていく。


しかもSランク武器を<魔法の武器+1>にする加工費用は2万ガメルなので、実質4万5000ガメルの装備です。

これでも今までのぞんざいズの報酬に比べるとかなり抑え目なんですけどね。ぞんざいズの場合カード代が馬鹿にならないから。

カードに換算するとSSカード2枚、Sカード2枚、Aカード5枚分ですが、ニゲラはそんなのすぐ使い切っちゃいます(笑)


他にも<奇跡の首飾り>で《生死判定》に備え、いざという時の脱出手段に<チキンベルト>も装備。

これは合言葉によって装着者を20m吹き飛ばすものです。お値段は1500ガメルですね。

着地の際に20点の落下ダメージは受けるものの、自動的に乱戦エリアから脱出できるという強みがある。

《影走り》を覚えるまでは重宝しそうですね。"シェイプアニマル"同様に一度死んで学習した上での装備なのかも。


1ラウンド目

エアはカンタマ7倍がけ、ジークは"ブレイブハート"7倍がけとまずは《翡翠の視線》に備えます。

ちなみに《翡翠の視線》は呪い属性の効果であり、"ブレイブハート"は精神効果と呪い属性を防ぐので有効です。

ただし呪い属性を防ぐ効果は「ウィザーズトゥーム」で削除されてしまったので今だからできる手ではある。


イスミーはクリポン武器をメッシュに渡し、メッシュの魔法ダメージ4連発でまずはオールを折りにいきます。

メッシュ「(ころころ)そして太陽神は我と共にありー!」←1ゾロ振った

GM「まあ、サイコロの赤くて丸い出目二つは、太陽二つに見えますけどね、確かに」

メッシュ「朝陽と夕陽で、心にダメージ50点です(しょんぼり)」

それでも他の攻撃が容赦なくオールに襲い掛かり、残りHP3点にまで削ります。


ムーテスは練技を全部使い、<アンチマジックポーション>を飲みつつ《テイルスイング》で4本のオールをビシビシ。

これで脆くなっていたオールを1本折りました。ニゲラも練技を使いつつ1本に攻撃、絡ませはしません。

生命抵抗力17(24)な上に七部位では実質24(31)、引っ張り合いでは到底勝ち目はありませんからね。

ちなみにこの部位によるボーナスは部位のHPが0になっても有効。よってどれだけ部位をもごうが絡み辛さに変わりはない。


パジャリガー「よーし!俺様の出番だな!練技を四つ使った後、
        主役は遅れてやってくるアターック!(ころころ)オールBに、26!」

GM「無理無理」

パジャリガー「28点ダメージ!」

GM「いて。……2点残った」

パジャリガー「そんじゃあ、それに《ファストアクション》分の攻撃だ!」

実はスカウト7レベルなので《ファストアクション》できちゃうんですよね。しかもこの攻撃がクリティカルです。

2回目は威力+10なので更にダメージは増えて計37点の合算ダメージ。残り3点のところにこれではオーバーキルです。


ニゲラ「意外とちゃんと強かったんですねー

パジャリガー「んだとぉ、小娘」

2本のオールが破壊されたので《乗り込み阻止》が消え、甲板に上がって砲塔や船体も乱戦に巻き込めるようになりました。


それでは相手の反撃ですが、オールが2本しかないけど《一斉攻撃》を使って必中の物理ダメージを与えます。

この場合のダメージは2D×ニ部位で、出目8だったので16点。ムーテスなんて全部弾いちゃいましたよ。

メッシュ「二本だとあまり痛くないのですね。……ふふ、10点以上きてますが」

イスミー「紙でやすな、旦那は」

船体は操霊魔法の"スタンクラウド"をムーテスに使用。まさかの抵抗失敗で宣言型戦闘特技が使えなくなりました。

3ラウンドの間とはいえ、《かばう》とか《テイルスイング》が使えないのは痛いですね。


砲塔の片方は後衛のエアとイスミー&ミニへ《榴弾砲》を発射。エアは<不撓のバックル>があるので回避せず精神抵抗です。

エア「(ころころ)……あ」

ムーテス「どうかしたんすか?6ゾロじゃない、何で残念そうなんす?」

エア「……避けられてた。6ゾロなら銃弾を全部避けてるのよ!
    <バックル>効果だと、半分は必ず当たっちゃうの!くやしー!余計なことしなきゃよかった」

ダメージは2D+16点です。期待値にして23点、半減すると12点だけど、回避してたら0でしたもんね。

あとニゲラにも同じものを撃ち込みました。銃も魔法も物理も使えるというなんともマルチなやつですね。


そしてジェイドバジリスクです。まずは"ディスペルマジック"で"ブレイブハート"を解除しようとします。

ジーク「くそー!達成値10じゃ消され放題だよなあ」

GM「……あ」

メッシュ「どうしました、マスター」

GM「なにぃ!Jバジリスク!こいつ「魔法適性」の特殊能力を持ってるくせに
    ……《魔法拡大/数》がないとか、どういうこと!?

ムーテス「やった!あいつ結構ザコいっすよ!」

時間と距離は拡大できるのにね。《魔法適性》といいつつこういう中途半端なことがままある。

仕方ないのでジークに12レベル真語魔法の"ショック"です。HPとMPに威力30でダメージを与える。

必中なので抵抗もできない。20点以上も削られたでしょうし、"ブレイブハート"がますますかけ辛くなる。


2ラウンド目

こちらの前衛達は、オールを半分失ったゴーストシップのコア部位である船体に乗り込んでいきます。

エアはそんな前衛達に"セイクリッド・ウェポン"です。持久戦になるのを避けてひたすら攻めに出るつもりです。

ジークは"ブレイブハート"に備えてMPを温存しなければならず、《マルチアクション》できないのが地味に痛い。

ニゲラはムーテスの<オーガモール>に"ヴォーパルウェポン"を使いながら、鎌で船体にクリティカルして高笑い。


そしてムーテスは"スタンクラウド"が切れた時に使うべく、"ドラゴンテイル"で尻尾を強化しながら船体に攻撃。

ムーテス「(ころころ)28!これだけ強化して当たらないとショック!」

GM「それは無理ー……(ころころ)ふふ。どのような攻撃も、6ゾロなら回避するんですよ!

ムーテス「さ、最低だ!」

実は<デクスタリティポーション>まで飲んでたんですけどね。今の命中力は19程度にはなっている筈。

実は船体そのものには近接攻撃手段はなく、回避力も12(19)というトロさなのにどうやって避けたのやら。


その後メッシュ、パジャリガー、イスミーの攻撃が次々と船体に当たりますが倒すには至らず。

ゴーストシップは前衛に"アシッドクラウド"を使い、メッシュの指輪とニゲラの〔運命変転〕を使わせます。

これは8レベルの操霊魔法で空気を毒に変え、半径5m/15に威力20の毒属性の魔法ダメージを与える魔法です。

更に砲塔は《榴弾砲》で、ジェイドバジリスクは《マルチアクション》による攻撃&"ブラスト"とダメージを与えてきます。


実はGMが模擬戦をやった時は《魔法拡大/数》があるものと思ってバランスを取っていたため、押され気味です。

GM「まあ、いいや。ガンガン攻撃の補助魔法を入れられてる前衛がウザい」

メッシュ「ん?誰のことでございますか?

GM「そのぴかぴか光ってる拳か、"ヴォーパル"な巨大モールに決まってるじゃないですか!」

ムーテス「は……僕なんて、置物みたいなものっすよ(遠い目)」

ニゲラ「ムーテスさん、壊れちゃダメーッ」

元々ムーテスのモールは威力45+16点とかだったのに、それに魔法やら賦術やらで固定値が20点以上。

今や30点ぐらい普通に出る破壊力なんですけどね。いまいち思うように攻撃できなくて歯がゆい思いをしている様子。


3ラウンド目

このラウンドの前衛達によるフルボッコの結果、ゴーストシップは陸上で撃沈!思えば長いこと追いかけてきた気がする。

Jバジリスク「そろそろ、このこけおどしの船も潮時かとは思っていたが、歩いて帰らねばならないのは、業腹だな」

ムーテス「"フライト"で飛べばいいじゃん!」

ニゲラ「……もー。その耽美な設定とか、脅威のスペックとかを裏切る残念な言動は、さすがアレンの盟友というかー(肩竦め)」

GM「残念言うな!これでも色々と考えて美学を捨てて、最適解を出しているつもりなのに!」

その後ニゲラのパラミスSランクが入り、メッシュに投げられて転倒した状態で、ジェイドバジリスクに手番が回ってきます。

既にゴーストシップを失った状態ではありますが《魔物化》はせず、通常攻撃に留めてぞんざいズに手番を譲ります。


ジーク「あれ?まだ変身しないのか?……って、あ、そうか!次で"ブレイブハート"が切れるからか!

《魔物化》すると理性的な判断がし辛くなりますからね。ブレイブの切れ目で《翡翠の視線》を使うなら人間形態の方がいい。


4ラウンド目

このラウンドに相手を倒しきれるかどうかでジークの行動は決まります。倒せるなら袋叩きに参加、そうでないならブレイブです。

ところが肝心のメッシュとパジャリガー・セカンドが揃って1ゾロを振ってしまい、倒しきるのは無理だと判断されました。

ジーク「さすがはパジャリガーズ

メッシュ「ジーク様!あんまりです、あいつと十把一絡げにしないでくださいおぞましい!」

パジャリガー「はっはっは!まあ、そう言うなや兄弟!」←兄弟!?

仕方ないのでジークは"ブレイブハート"をかけ直す。エアは前衛達に"キュアハート"で魔物形態に備えます。


エア「それぞれサイコロで回復して、魔力は15よ」

ジーク「おう!(ころころ)……あ。俺には入らない1ゾロ50点」

ニゲラ「ジークさんが回復しませんでしたぁー!」

エア「ばかー!その50点はわたしのものとして美味しくいただくけど、ばかー!」

この人数になるといちいち振るのが面倒ですからね。自分で振らせるのはいいし、1ゾロ振っても負い目を感じなくて済む。


そしてジェイドバジリスクは《魔物化》して手番終了。ドレイクバイカウントと違って変身は主動作なんですよね。

ジーク「へ、アホになりやがった」

Jバジリスク「アホが弱いと思うな!」

ジーク「ちょっと悔しいんだけどな。今回「魔物化」するだけだったら"ブレイブ"温存しておけばよかった」

メッシュ「いえ、そうすれば人間形態で邪眼を使ってきたと思いますよ」

エア「そう、双方チキンレースなのよ」

人間形態でも間抜けに見えてその辺はしっかりしていましたね。


5ラウンド目

バジリスク的には仕切りなおしのこのラウンド、いい感じに消耗しているぞんざいズとしてはさっさと倒したいところです。

以前戦った無印バジリスクもそうでしたが、バジリスクはコア部位である頭部が地面の高さにあるので《攻撃障害》がない。

よって前衛の多いぞんざいズからしたらフルボッコにしがいのある相手でもある。《毒の血液》は怖いですけどね。

ちなみに2つの邪眼はHP45点とかです。回避は高めだけど余裕があったら潰しにかかってもいいかもしれない。


ニゲラはダメージが47点も残っているので攻撃はせず、主動作で賦術を使っておきます。

ニゲラ「"パラミス"SSランクです!抵抗失敗すると、6ラウンド効きますよぅ!」

イスミー「すげー、一投げ二万ガメル!」

ニゲラ「売ったら、誰かを復活させられますからねー」

ところが達成値16と低い。パラミスSSランクは相手の抵抗に−4のペナルティは入りはしますが。

素の精神抵抗力が16(23)とかあるので当然抵抗されました。それでもこのラウンドは回避が−4です。


ジーク「盾を捨てて攻撃する!」

パジャリガー「俺も真似するぜ、パジャリガー・サード!

ジーク「サード!サードって何だ!(愕然)」

パジャリガー「俺がセカンドだから。一度はパジャリガーの名を継いだお前に敬意を表してだ。
        もちろんファーストがオリジナルなのは不動だが」

ジーク「継ぎたくねーっ(悶絶)」

イスミー「意思は継いでやすよ。……てことは、あれ?」

メッシュ「な、なんですかその目は!断じて違いますよ!私はフォースなどではありませんからね!」

そうしてジークやムーテスが次々と頭部をぶん殴っていき、着実にHPを削っていきます。こっちのHPも削られますが。


そして色々注目のこの人です。

パジャリガー「よぉおーし!俺様がいくぜ!さっきの宣言どおり盾は捨てた、両手持ちだぜ<首切り刀>!」

メッシュ「気のせいか、活き活きしてませんか?」

エア「あ、これはパジャリガーだから。キャラ作りって大変よねえ」

普段は後衛で回復やら援護やらで忙しいですからね。近接攻撃でダメージを叩き出すのが嬉しいらしい。


パジャリガー「ダメージは32点ー!そして、傷口に染みるぜ、毒の血液……っとくらぁ!

ニゲラ「解放されてますねー」

GM「エアのプレイヤーがやってるって、書いていいのか悩む。……けど、面白いから書いてやる」

エア「……しまった、すこし慎めばよかったわ。とっとと行きなさい、パジャリガー・フォース」

メッシュ「ちがう!そっちのポンコツがメッシュ・セカンドなのですよ!」

その後ジェイド・バジリスクは攻撃しつつ、《マルチアクション》のディスペルでジークのブレイブを解除。


そして満を持して《翡翠の視線》を使用して達成値26とか出しますが。

Jバジリスク「やあ、私の僕にならないかい?」

ジーク「そんなに俺を愛でたいか!今の精神抵抗力は18……
     出目8以上!(ころころ)っしゃー!10!28で抵抗だ!

Jバジリスク「顔に落書きしてやろうかと思ったのに」

でも近接攻撃の回避に1ゾロを振ってしまい、防御ファンブルです。GM思わずガッツポーズ。


ジーク「……うー、本当はもっと格好いい場面で使いたかったけどな。そんなこと言ってられん、ぺろーん(ひっくり返す)」

ムーテス「あ、まだ〔運命変転〕残してたんだ。そして、ハンパなく効果音がカッコ悪いっすよ!」

これにはGMもガッツポーズのまま萎れたとか。人間最高!人間万歳!


6ラウンド目

気付いてみれば2回目のブレイブも切れそうになってきたので、このラウンドに落とそうと猛攻を仕掛けます。

ニゲラ「というわけで"パラミス"補助で、短期決戦にSS使用!

ムーテス「どんだけSSカード持ってるんですか!」

ニゲラ「えへへージークさんに、おねだりしましたー」

ジーク「……俺、今、どんだけ金使ったのか、初めて知ったわ。いや、使え!使ってしまえ!」

"リザレクション"した上に"イレイス・ブランデッド"してもらった方が安くつくかもしれないけど。


そしていい感じに弱ってきたところでまたもこの男の出番です。

イスミー「パジャリガー、先行きやすか?」

パジャリガー「ん?俺様の活躍が見たいかうさぎ!
        しょうがねえ、目をかっぽじってよぉーく見やがれ!(ころころ)26!」

これが命中したのはいいのですが、ここからとんでもないことになりました。


パジャリガー「首切りファイティング!(ころころ)お、回った!威力40の出目10だぜ!

一同「おおー!(拍手)」

パジャリガー「(ころころ)おお、やったぜ!さらに威力50の10と!

ジーク「待て、お前が持っていくな、パジャリガー!」

パジャリガー「そして威力60の8!合計ダメージ……57点!!

GM「うわぁああ!<首切り刀>の+1はやりすぎたー!」

一同「お前が持たせたんだー!」

そしてこの一撃で見事にジェイドバジリスクの首を切り落としたのです。恐るべし<首切り刀>。


これには思わずブーイング交じりの拍手が起こったという。

パジャリガー「イェエエアー!我こそは勇者ー!(サムズアップ)」

ジーク「くそぉー!カッコイイ!」

イスミー「うわーん、おいら、止めを狙ってたのにー!宿敵取られたー!」

メッシュ「空気読めよ、お前!」

ニゲラ「ポッと出のNPCのくせに、見せ場を取らないでくださいよぅ」

パジャリガー「え?俺さまが超活躍したのに、何このアウェー感」

その後エアは"ファンティン"で温泉を作ってニゲラと一緒に浸かって回復。メッシュは戦利品を剥ぎました。

これが予想以上に出目がよくてSSランクの素材がいくつか手に入ったとか。この出目が何故戦闘で出ない(笑)


ちなみにジェイドバジリスクの戦利品は自動で手に入る<バジリスクの純血>ですら1000ガメル/赤Sです。

出目2〜9の<翡翠の瞳>は4000ガメル/赤金S、出目10〜12の<生命の瞳>で1万ガメル/赤SS。

出目13以上の<翡翠の邪眼>で2万ガメル/赤金SSなので、出目10以上が上手く出続けたことになる。


しばらくして落ち着くと、イスミーはパジャリガーに頭を下げておきました。

イスミー「おいらにとっても、仇でやすんで」

パジャリガー「勇者の仕事だ、気にすんな」

メッシュ「心の嫁に自慢してやるといいですよ、鋼鉄のような女ですが、きっとでれでれになりますよ

パジャリガー「そ、そうか!デレ期に入るかなあ、真の心の花嫁

ニゲラ「……おかしいなあ、ニゲラには遠くから銃で追い立てられる図しか思い浮かびませんー」

むしろ何をしたらデレるのか全く想像できないんですけど(笑)


これで敵のアンデッドの供給源は断ったかもしれません。しかし敵の企みを全て潰したわけではない。

実はゴーストシップの戦利品を剥いだ時に計画書を見つけまして、敵の動きはある程度分かりました。

それによると《赤砂領》方面と山脈方面から死人兵団を率いて《白峰領》を襲撃して撹乱させる予定でした。

これの山脈方面の進軍は阻止したし、死人もこれ以上増えないかもしれないけど、アレンの行動が不明です。


撹乱させるということは本命が別にあるということでして、ぞんざいズは大急ぎで《白峰領》へ戻ります。

護衛はいるし、<守りの剣>の結界もあるから大丈夫。そう思っていたのですが、ここで大変なことに気付きました。

ジーク「いや、その……俺、すげえ嫌なことを思い出した」

メッシュ「何ですか?ジーク様」

ジーク「……アレンは、穢れがない蛮族だ

一同「……あっ」

ようやく気付きました。アレンに<守りの剣>の結界は無効なのです。入り放題なのです。


<通話のピアス>を起動するとそこからはルーちゃんの涙交じりの声が……。

ルー「こわい……いやなの……いや!」

ジーク「……ルー!」

まだ通話時間があるのにも関わらず接続が切れてしまいました。何か異変が起きたのは間違いなく。

ぞんざいズは魔動バイクを作って相乗りし、全速力で《白峰領》を目指して走りました。

やがて境界壁に近づくとそこには赤い鎧の兵団が展開し、神殿のある山の頂を貫くように白い光が


ニゲラ「あれは……神殿でしょうかぁ?」

ジーク「……何が起こってるんだ?」

次回はいよいよ最終回。懐かしのあの人も復活し、"ぞんざい勇者団"は最後の戦いに挑みます。


第三十一話 新米女神を救う方法

★31話が始まる前の30.5話?

全11巻という大長編として続いてきた"ぞんざい勇者団"の物語も今回で最終回となります。

以前"ヘッポコーズ"が10巻まで出た時も驚いたのと同時に、いつまでも続いて欲しかったと思ったものです。


そしてSW2.0が開幕して最初のシリーズであるぞんざいズも期待を上回る面白さで、11巻があっという間でした。

ただ長いだけじゃない。物語としても、ゲームとしても、魅力に溢れた素晴らしい作品に夢中にさせてもらいました。

シリーズが終わった後に抱いた思いもヘッポコと同じで、喜ばしいことに続編も出ているという人気の高さです。


そんなこのシリーズにおいて前半に大活躍し、人気キャラでありながらも諸々の事情で抜けていたあの人が戻ってきました。

某プレイヤー「おひさしぶりなのー!

GM「いえーい(ハイタッチ)。今回はお招きに応じていただいまして、ありがとうございますー」

某プレイヤー「いえいえ、できたらずっと、参加したかったの。でも、最後くらいは……って思ったし!」

もはやPC名を表記するまでもなく口調だけで分かりますね。ムーテスに続き、ソーラリィムことソラが堂々の復活です!

NPCとしては何度も出ていますが、PCとしての参加は6巻の18話以来です。それでも相変わらずで何よりです。


しかしいきなり復活というのも唐突なので、本編に入る前のミニシナリオを導入とします。

ソラ「やったぁ主役!」

プレイヤー知識にある10巻までの流れはPCも知っていますが、現在仲間達がどうしているかまでは知りません。

オクタンの修理でカイン・ガラに行っていた彼女がどのように仲間達と合流するかをプレイしていくことになります。


では本編に入る前に彼女の成長を確認しましょう。ムーテス同様に最後の成長申告は17話なので14回分ですね。

今回のキャラクターシート

器用度17→19

敏捷度16→16(変化なし)

筋力24→27

生命力20→20(変化なし)

知力22→25

精神力23→29

この中でも器用度については本に収録されているキャラクターシートでは21になっていますが、恐らくはこの数値です。

といいますのもこの後日談になる「閃光のトライアンフ」にゲスト出演する彼女の器用度はこうなっていたりします。

器用度については多分専用装備か、シートには記されていない予備の腕輪の影響で2高くなっているのではないかと。


あとそちらでは生命力は1高く、精神力は2高くなっていますが、これについては今後の成長によるものと思われます。

実はミニシナリオの後にもう2回成長の機会があって、最終回のシナリオ完了の成長で計3回分と考えると計算が合います。

ただその2回は前回とこのミニシナリオの分の成長なので、前者は成長回数14回の内1回に含まれるのが自然だと思います。

そうなると計算が合わなくなってくるのですが、まぁ「リターンズ」で再登場した時に改めて正確な数値が判明するでしょう。


こうしてソラの能力値を見直してみるとやっぱり優秀ですよね。ナイトメアは優秀なものだけどそれにしても凄い。

本業は魔術師のくせにボーナス+5にも届かんばかりのマッスルボディー。筋力28のムーテスに次ぎ、パーティ第二位。

知力は腕輪込みで27もあって、同じく腕輪こみで知力29のイスミーに次ぎ、これまたパーティ第二位です。

精神力29はやはり精神力31のエアと2点しか違わずパーティ第二位。トップではないものの全体的に高いのです。


では肝心の技能はというとソーサラー7→11、セージ7→8。あとこっそりインベンター(発明家)技能も1レベル。

意外とフェンサーは伸ばしていませんが、習得した戦闘特技は《武器習熟/スタッフ》《武器習熟U/スタッフ》

これによりカテゴリ<スタッフ>のSランク装備である<ソーサラースタッフ>を装備。某"法螺吹き魔術師"もお気に入りの逸品。

これは《行使判定》に+2の効果がありまして、更に《魔法の武器+1》にして追加ダメージ13点という変態っぷり。

お値段は2万2500ガメルで加工費を入れると4万2500ガメル。パジャリガー同様に仲間達に比べると押さえ気味?


あとは11レベルになったことで種族特徴〔異貌〕が強化されています。《行使判定》《命中力判定》に+1です。

よって素の魔力は15あって、<ソーサラースタッフ>装備かつ〔異貌〕で《行使判定》は+3されて魔力18相当。

こっそり<マナリング>も装備しているので〔異貌〕するとダメージ+2されます。これは抵抗の後に加算されます。


その代わりに《魔法収束》《魔法制御》は取っていないのはちょっと意外ではある。派手に魔法を撃ち込めない。

ソラ「途中で、《魔法収束》なんて、意味のないものを取るくらいなら、成長を感じられるほうがいいの

それなら彼女らしい選択でむしろ安心。乱戦エリアに範囲攻撃魔法を撃つことはできないけど、もう抵抗上等とは言わせない。


フェイも以前紹介した"ファミリアーU"で上位の使い魔になりました。あとは御馴染みのお買い物ですが。

ソラ「アイテムも色々充実。本当は<異形の面>欲しかったけど、それ買うと、他のもの買えないから。」

<異形の面>はナイトメア専用の装備でお値段11万8000ガメルという高級品です。

その効果は〔異貌〕時に毎ラウンドの手番終了時にHP5点、MP2点自動回復という驚異的なもの。

10分も休憩しようものなら60ラウンド分、HP300点とMP120点が回復で実質全快します。


そんなものを買おうとしていたということはやはりお金は10万ガメル以上受け取っていたんでしょうね。

でも例によって色々買い物がしたかったので諦めたと。何よりも自分の好奇心を満たすというブレのなさ。

ソラ「今回の目玉は……じゃじゃーん!<投人機>ー!(嬉しそう)」

これは合言葉で巨大化する投石機の模型です。巨大化時にはキャラクターを300mまで飛ばせる

飛ばされたキャラクターは軟着陸できるため怪我をしないし、普通の投石機のように使うこともできない。

お値段2万ガメルという珍品ですね。ただし射出にはそのためのキャラクターが必要なので1人では飛べない。


言わゆる人間大砲的な使い方ができる面白かっこいいアイテムなのです。

GM「そ、そうですね。何かうまく使う機会があるといいですね」

ソラ「うん。"アポート"のための印、つけた」

これでソラは誰かに射出してもらった後、着陸後にこのアイテムを回収できるわけですね。


"アポート"は7レベルの真語魔法で、印をつけた品物を術者の手元に呼び寄せることができます。

サイズは直径3m、高さ3mの円形に収まるものに限る。印はつけた後1週間以上経過しないと使えない。

更に一度につけておける印は技能レベル個(この場合11個)までと色々制限はありますね。

その代わりに魔法の持続時間は「一瞬」。つまりSWの頃と違って時間経過で元の場所に戻ったりはしない。


他にどんな面白アイテムを持っているのやら。この分だと青いネコ型ロボットよろしく色々出しそうなものです。

こうして色々変わった(そして一部変わっていない)姿でソラは仲間達の所に戻ってきたのです。




それではミニシナリオ本編です。既にオクタン本体の修理は終わってる状況からスタートです。

ソラ「はーい。ソラは、イスミーとかいう子の巨大魔動機械、手に入れて、ほくほくしてまーす!(挙手)」

GM「早速違う!」

ソラ「ほんとうはねー。こういうの、操るためにライダーも取りたいって思ってたの。でも、経験点、足りなくて」

某プレイヤー「……世界平和のために、やめてほしいでやす」

ライダー技能で騎獣として扱える魔動機械については魔動バイクを筆頭に色々ありますが、これは流石に危険すぎる(笑)

ソラの場合非生物の騎獣よりも生物系の騎獣の方が好きそうですけどね。ヒポグリフとか、ワイバーンとか、ドラゴンとか。


あとは持ち主に届ければいい。ソラはベル君を頼ってジーク達の居場所がアイヤールであることを知ります。

ソラ「むぅ。そうなると《白峰領》と思うの。久しぶり、お母さんに会いたいし、
    ルーちゃんがどうしてるのかも気になるから、会いに行く。……荷物、邪魔

なにしろ八部位の金属の塊です。頭脳であるオクタン本体がいない今、ジュドなきザンダクロスよろしく動かない。

どうやら馬車に乗せてシートを被せて目立たないように運搬するつもりのようですが、どうやったって目立ちます(笑)

この正体を知ってスルーしてくれる領は皆無でしょうね。下手したらテロリストと間違えられて拘留、そして没収。

そもそもこんな重機みたいなのを運ぶのにどれだけの馬がいるのやら。馬車も普通のものだとすぐに壊れそう。


それでもベル君のコネでコラーロ河を遡ってアイヤールに入り、《白峰領》も目前というところまできました。

道中の関所はカイン・ガラで修理を依頼された魔動機械という言い訳で無事に通れました。役人の目が節穴で良かった(笑)

ところが現在警戒中の《白峰領》となると話は違います。外縁の領なので城壁もしっかりしていて検問にひっかかりそう。


ソラ「……しかたない。大人しくしてよ」

GM「しかたないって、何か企んだんですか」

ソラ「まずは、お母さんに久しぶりに会いたいから《白峰領》の神殿行くのは決定なの。
    ルーちゃんの護衛も兼ねてるはずだし、ルーちゃんにも会いたいし。あと、ついでにお父さん

意外とまともな考えです。カームさんの扱いが微妙にぞんざいで、お姉ちゃんには触れもしないけど、いつものことなので。


ソラ「久しぶりの《白峰領》だし、「るるぶ白峰領」でも買って、観光名所と食べ歩きマップチェックしてるの。
    神殿のある街しか、基本的に知らないから。御者台でうきうきしながら、検問の順番、待ってる」

GM「旅行満喫してますね。ある意味」

あるんだるるぶ。この分だと他の領も一通り出てそうですね。それこそ都道府県別よろしくビッシリと。


さてここでソラは少しでもオクタンの正体がバレないように一工夫しておきます。

順番待ちの間に"シール・エンチャントメント"をオクタンの身体にかけて魔力が感知されないようにします。

これは10レベルの真語魔法で物体一つを対象に魔力を隠すことができます。しかも効果は永続、"シルバーブリーズ"を思い出す。

これさえかければ"センス・マジック"や"マナサーチ"等で感知されない。まぁそれでもこの大きさだけで驚愕に値するのですが。

ちなみに魔法をかける際はちゃんと〔異貌〕しておきます。これなら怪しい魔法を使っていると見咎められないで済む、角を隠せば。


いざ検問に入ってみるとやはり驚かれます。

兵隊「なんじゃこりゃー!

ソラ「そりゃ、魔法かかってなくてもあやしいの」

兵隊「ど、どうする、こんなデカイ怪しいもの」

兵隊「一応、領主様に報告をしたほうがいいのか?」

どうやらこういう事態には慣れていないらしく、セージ技能も高くなさそうなのでサッパリ正体不明です。

現在ダンフォースはムーテスの家にいるのですぐに指示を仰げず、会いに行こうにも往復に時間がかかります。


その混乱っぷりを見抜いたソラはひと芝居打って穏便に抜けようとしました。

ソラ「……ああ!やっぱり思ったとおり!

GM「……へ?」

ソラ「あたしは、見ての通り、《石塔の学び舎カイン・ガラ》の魔術師なの。
    そして、フーギの街にあるルーフェリア神殿最高司祭のルーちゃん……じゃなくて、ルー様の親友
    どうやらこの平和な《白峰領》に何か重大な事態が起きそうだと、領主様から相談されて
    その助けとなるためにこうして《カイン・ガラ》から極秘の荷を運んできたところなのです!

彼女はダンフォースとは一切面識はない。しかしそれ以外は嘘ではないというこの嫌らしさ。

ところがここまで堂々といわれると経験の浅い兵隊さんも彼女を無下にはできない。本当なら領主様のお客様です。

なにか粗相があったら責任を問われるかもしれない。責任を問われると強くは出れないのが公僕や雇われの悲哀。

結局その演技、というか気迫に押されて田舎者の即席兵士の皆さんは彼女を通してくれました。ごり押し万歳!


するとソラの後ろにいた老婦人がくすくすと笑い声を上げます。大きなトランクを引いているのが特徴

ソラ「あ。すいませーん、長いこと、通行止めさせちゃった(ぺこり)」

老婦人「いえいえ。気にしないでいいのよ。無茶をできるのは、若い人の特権ね
     私も、若い頃は随分と無茶をしたなあ、と少し懐かしくなっただけよ」

若いといっても40なんですけどね。下手したら老婦人とそんなに違わな……いや、なんでもないです(笑)


しかもこの老婦人は古びているけど確かな通行証を見せてあっさりと検問を抜けます。

老婦人「ダンフォース坊やの知り合いなのだけれど、彼はフーギの街にいるのですって?」

領主を「坊や」扱いする上に、彼女を送り出す兵隊さんの丁重な扱いといい、なにやら只者ではない様子。


ソラ「領主様の知り合いなんですかー?」

老婦人「まあ、随分と長いこと会っていないけれどね。ところで物は相談なのだけれど……。
     フーギの山道を歩いて登るのは大変でねえ。馬車を借りようと思ってはいたけれど、
     同じ行き先なら乗せていってもらえないものかしらねえ。御礼は出来る限りのことをしますよ」

ソラ「乗るのいいの

一人旅も飽きてきたらしいので即決。旅は道連れともいいますし、折角であった人と相乗りというのもオツなもの。

もしオクタンが動くことができれば多少退屈も紛れたんでしょうけどね。ただしテンペストオクタドゥームは会話できない。

知能は高いものの言語は持っていないんですよね。イスミーとのやり取りを見る限り犬のようなコミュニケーションは可能だけど。


老婦人「でも、こんなものを神殿に運び込むなんて、無茶をするものねえ」

ソラ「あ、あの神殿変なの。いつ見ても、変な格好したフルカラー・ライフォス神像が飾ってあるし」

老婦人「あらまあ。私は、フーギの街の神殿には参ったことがないのよ。そんな面白いものがあるの?」

ソラ「……しまった。口って災いのもとなの」

そりゃあ神殿自体できたのは最近ですからね。通行証の古さや領主とは御無沙汰なところを考えると不思議はない。


ところがそうしてライフォスの話をすると、彼女が持っていたトランクがガタッと動きました

その瞬間老婦人はトランクに蹴りを入れます。トランクは静かになりましたが……怪しい、オクタンより怪しいかも。

隙さえあれば10レベルの真語魔法"シースルー"でトランクの中を透視しようとも思いましたが、相乗りでは隙がない。

流石に隣で〔異貌〕したらバレますしね。かといってSW2.0におけるこの魔法の射程は10mで持続時間10秒と短いし。


結局中を確かめることはできずに旅は続きます。道中の警戒はどんどん厳しくなっていきますが、老婦人の通行証の効果でパス

ソラ「一緒に来てもらってよかったの」

練度の高そうな兵隊さんも丁重に送り出すぐらいですし、やはり只者ではない。ソラ1人では難儀してたでしょう。


そうしてフーギの街に着くとクロノアさんが迎えてくれました。

クロノア「ソラー!久しぶりだねえ。元気だった?」

ソラ「おかーさーん(馬車を降りて抱きついた)。なんでわかったの?」

クロノア「《カイン・ガラ》の助手のレイクから、ソラがそろそろ着くだろうって報せは入っていてねぇ。
      そろそろ騒ぎでも起こして呼ばれるかと思ったら、何、真っ当に辿り着いたじゃない。こんなデカブツ曳いて」

もし老婦人と同行しなかったらそんな展開になってたのかもしれない。とりあえずオクタンは街の入り口に置かせてもらいます。

「触るな危険、呪うぞ」という言葉をあらゆる言語で書いた注意書きをつけておいて、管理も完璧ですね(そうか?)。


あと老婦人とはここでお別れです。別れ際にお駄賃を渡してくれようとします。

ソラ「あたしも助かったから、いいの」

老婦人「若い人は遠慮するもんじゃありませんよ」

という心温まる交流でしたが、そこで綺麗に別れることはできませんでした。

街に入ろうとすると不意にトランクのキャスターがつっかえたように停止。逆に曳くとスムーズに動くという謎現象。


それでも何事もなかったかのように彼女とは別れました。

老婦人「それでは、失礼いたしますよ。ありがとう、お嬢さん」

ソラ「あ、そっか。またね、おばさん」

そうして背中を向けたところで"シースルー"しようとしたところ、射程10mの壁に阻まれて未遂に終わります。

中身が何だったのかは謎のままになりましたが、旅の疲れがあるソラはあっさりと諦めてお母さんと一緒にエアの家に向かいます。


ソラ「きっとお母さんナイズされていて、下手にドアを開けると爆発したりするのかなー。
    レイクリスがよく吹っ飛んだとか言ってたの」

GM「いえ、ちょっと違う。半分服屋になってる」

ソラ「……いるんだ!うわー、ムーテスくん、苦労してるのー」←察した

某プレイヤー「時々、夢であってくれればいいと思うけど、何度も悪夢として復活するんだよ、あいつ……リャンは!」

もはやなすりつけ不可能な貧乏神的存在です。そういえばミスティン姫との契約はどうなったんでしょうね。


家に行くとカームさんも出迎えてくれました。

カーム「まったく、手のかかかる放蕩娘はソラだと思っていたら、エアのほうになってしまいそうだよ」

ソラ「そーでしょー。お姉ちゃん、人にばっかり注意して、自分だけふらふらしてるの。ずるい(ほっぺぷくり)。
    あたしなんて、《カイン・ガラ》でちょっとエクササイズ&対人兵器の修理、してきただけなのに」

カーム「そうだねえ。やっと帰ってきたら、また出て行ってしまうし。エアがいないと、お部屋が汚いままなんだよ」

自分で掃除しろよ夫婦。部屋の半分が資料によって腐海に沈み、表に服が並んでいるところを見るとリャンも片付け苦手そう。

となるとメル&ルルに期待が集まりますが、現在子育てに忙しそうだし。ここはジェロの意外なスキルに期待するしか。


ここでソラは現在のジーク達の状況を一通り聞いてリハビリ完了。いつでも復帰できる状態です。

ソラ「で、出て行った?」

カーム「そう、出て行った」

ソラ「つまり。ここに何かが来る、危ないぞ、と言って本人たちは逃げた。よし、殺そうお母さん!

そこだけ聞くと逃げたように思えますね。そうでなくてもうっかり出かけたばかりに大変なことになったりするんですが。


ソラ「ま、いいの。とにかくあたしは、イスミーにオクタンのボディ、返してあげるためにきたんだし」

クロノア「ミニボディに移した思考は、手順を踏めば返せるようにしてあるそうだから」

ソラ「あの、ちっこいボディに"アポート"かけておけたら、楽勝だったの」

某プレイヤー「……ほ。強制撤収は寂しいでやすよ」

荷物にしまっておいて気付いたらなくなってたりするんですね。それは事情が分からないと慌てますよね(笑)


ソラ「でもまあ、何で頭をぶっこ抜いたかと言うと、研究室で大砲ぶっ放して暴れるからであって。
    その研究室を壊したオクタンの所有者には、修理の請求書が行くかもなの

某プレイヤー「ぎゃーっ!」

某プレイヤー「……誰かが損をするということは、儲けるチャンスだよね」

それからソラは長旅の疲れを微塵も見せずに、久しぶりにルーちゃんに会いに行きました。


ソラ「ルーちゃん、久しぶりなのー!」

ルー「ソラ、ソラ……久しぶり、うれしい。元気だった?」

ソラ「ぎゅーぎゅーハグ。ガールドトークしたり、お茶したりするの。絶対に、退屈だったに違いないし」

直接会うのはルーフェリアのドレイク姉妹との戦い以来ですかね。あれからソラは色んなところを飛び回っていたし。

実際はその後もルーちゃんはカナリスの街にいたけど、その頃のソラは家に篭りがちでお喋りの機会はなさそうです。


ルー「退屈とかはないの。でも……自分だけ、ここで守られてるの、ちょっともどかしい
    でも、こうしていることで、みんなが安心してくれるなら」

ソラ「うーん。もしかして、お兄さんやお姉ちゃんは、ルーちゃんが好きすぎて、
    大事にする方法を間違ってるかもしれないの。なんてしたり顔ぶっこいてる」

ルー「そんなことない。一番いい方法を選んでくれてるはずだから」

元々ルーちゃんはルーフェリアの外部に対する好奇心から生まれた分体です。

ジーク達を信頼しているから大人しく言いつけを守っているけど、本当は好奇心を抑えているはず。


そこでソラは友達の退屈を紛らわそうと新しい面白アイテムを早速使ってみます。

ソラ「ルーちゃん見て見て、面白いアイテム持ってきたの!じゃじゃーん<投人機>ー!

ルー「え?」

ソラ「これで、空を飛ばせてあげるの!きっと気持ちいいから気晴らしになる!」

飛距離は最大で300mですが、実際の飛距離は飛ばされる人が任意に決められます。

決めない場合は自動的に300m飛びますね。ちょっとしたアトラクションの代わりにはなるかも。

ていうか飛びたいならソラが抱えて"フライト"でもいいんですけどね。遊覧飛行なら多少動き難くてもいいし。


流石に戸惑うルーちゃんでしたが、ソラが純粋な好意で言ってくれているのは分かるので試してみます。

ソラ「じゃあ、帰りやすいように、大通りに向けてかな。ファイヤー!

ルー「きゃぁあっ」

ソラ「だいじょぶ、すぐに迎えに行くから。ほーら、早速役に立ったの」

小さな悲鳴を上げてルーちゃんは空を飛びました。本国の神官やお姉ちゃんに知られたら大目玉でしょうに。

まぁソラは皇女候補にジャイアントスイングかけた実績があるぐらいだし、神様の分体を飛ばすぐらいはね(笑)


ソラ「でも、安全だもん。気晴らしも出来るし」

GM「ダメージが出ないのと安全は、必ずしも同義ではないわけで」

某プレイヤー「大体、このシリーズで、飛んで落ちないなんてことないっすよ

ソラ「あ、いいこと言うの」

某プレイヤー「こないだ、飛空船が無事に着陸して騒ぎやしたからなー」

あくまでも落下ダメージを受けないというだけで、飛んだ先に危険がないとは限りませんしね。

例えば落下先が崖になってたりした場合、崖下まで軟着陸できたりするんだろうか?


確かに落下ダメージは受けたりしませんでした。何しろ落下前に彼女を受け止めた人がいたのですから。

ソラ「……だれ?」

アレン「まさか、こんな形で飛び込んできてくれるとは、思わなかったな
     まさしく、飛んで火に入る夏の虫といったところか」

ソラ「久しぶりなの、フィルゲン」

一同「ちがう!」

皮膜の翼を翻してルーちゃんを空中でキャッチしたのは、他ならぬアーメスの分体アレンその人でした。

今回は衛視の制服姿です。作業着に麦藁帽子だった前回よりはマシだけど、相変わらずしまらないラスボスです。

ルーちゃんがこの街のどこかにいることは分かっていたのでこうして張り込んでいたのですが、まさかこんな形で(苦笑)


アレン「神官の家にでも匿っているのだろうと思ったが……まさか、隣の家から飛び出してくるとは……
     さすがに、隣の家まではマークしていなかったので、ありがたかったぞ」

つまりソラがルーちゃんを連れ出さなかったらバレずに済んでいたかもしれないってことですね。

ムーテスの策は半ば成功していたわけですが、それを仲間のソラが破綻させてしまったのは皮肉なものです。


とはいえもしそうなったらアレンは街の人に犠牲が出る形でルーちゃんを見つけ出すつもりでした。

エアの家にアレンを突入させるとか、街の人を人質にしてルーちゃんを差し出すよう要求するとかね。

既に何の罪もないルーンフォークの里を壊滅させたりしている男です。それぐらいは平気でするでしょうね。

そしてもしエアの家に入った場合、NPCの誰かが殺される予定でした。結果論ではありますけどね。


セージ技能の判定の結果、達成値20でも正体は不明でした。流石に知名度が高いですね。

それでもインキュバスに近い何かということと、リアやルーちゃんとよく似た存在ということは分かりました。

ミスティン姫もそんな感じで正体が分からなかったんですよね。一体こいつの知名度はいくつぐらいなんだろう。

多分分類上は神族とかでしょうが詳細不明です。ちなみにルーちゃんは「フェイダン博物誌」での分類はです。


ちなみに神族の定義は「フェアリー・ガーデン」によると以下のようになっています。

もとは人族や蛮族、幻獣などであったものが神となった存在が分類されます。
神族の中には神格や昇格した時期により古代神、大神、小神などに分類されます。
また、神だけでなく、神になる過程にあるものや、神獣や神の使いなどといった、神の眷属も分類されます。

つまり神も神族に含めていいということですね。分体を分類するならやはりこれが最有力候補でしょう。

もし天使なんてものがいたらここに入るんでしょうね。フォーセリアですら存在がはっきりしなかったけど。

ここで気になるのは幻獣も神になる可能性があるということ。これは恐らくは剣を持てるものに限らない。

「堕女神ユリス」には竜を限りなく神に近づけた存在が出てきましたし、神の階梯を昇らせる手段があればいいのでしょう。


ただし「フェアリー・ガーデン」の後に発売された「バルバロステイルズ」では少し変わっています。

神様自身は神族に含まず、幻獣が神になり得るという記述もなくなっています。

神々に連なるもの、あるいはいままさに神としての力を得ようとしているものたちのことを、神族と呼ぶ。

前者は神の眷属でいいとして、後者は神になる過程ですね。そして過程のまま神になれずにいると考えられます。

言わば神のなり損ない。「滅びのサーペント」にも神になろうとしてなれなかった魔法王が登場します。

彼は小神をも上回りかねない力を持ちながら、神になれずに終わってしまった哀れな存在です。


「バルバロステイルズ」にはとある賢者によって以下のような見解も述べられています。

神はその力を維持するために、数多くの信望者を必要とする。
そのことから考えても、神はなろうとしてなるものではなく、
なるべくしてなったものが神と呼ばれるのではないだろうか。

逆に言えば神の分体は小神ほどの力はないとはいえ、信者の信仰心によって育まれる点では神そのものです。

そういう意味では神族ではなく、神そのものに分類する「フェイダン博物誌」の記述は意図的なものかもしれません。


とにかく大変なことをしてしまったと悟ったソラは珍しく慌てます。

ソラ「いや、落ち着け、落ち着け。やばいやばい……これは、ダメなの。
    何が何でも、黙って渡すわけにはいかないの。ルーちゃんを離しなさいよ!

珍しく慌てるソラはアレンを挑発しますが無視。ルーちゃんが"フォース"を打ち込んでも無傷ときました。

これは"スケープ・ドール"にダメージを吸収させたと思われます。やっぱり一筋縄ではいかないか。


しかしそれで友達を見捨てるソラではありません。果敢にアレンに立ちはだかります。

ソラ「あたしの名誉のためにも、離してもらうの!色々と怒る人とか怒る人とかがいるの、これがばれたら!」

しかし先制力0ではまず先行は取れない。フェンサー5レベル程度では精々数ラウンドの間サンドバッグになるのが精一杯。

そんなソラの逡巡を見透かしたかのようにアレンが手を挙げると、街に大量のアンデッドと魔法生物が襲撃を仕掛ける

アンデッドはグール、レブナント、マミーといった面子です。魔動機械は砲撃の音がするからにはドゥーム系でしょう。


あちこちで悲鳴が聞こえ、剣戟が鳴り響き、平和だった街はあっという間に戦場へと変わってしまいました。

ソラ「な……なに、すんのー!」

アレン「お前たち、第一の剣に繋がる者たちは、こうされればなかなか動きがとれまい

ソラ「なるほど。いい目のつけどころなの、褒めないけど」

騒ぎが起きるとクロノアさんとカームさんも外に出てきて応戦しますが数の差は歴然としていました。

この程度の雑魚ならソラと両親で倒すことはできるでしょうが、圧倒的に数で劣る以上救える人には限りがある。


某プレイヤー「何が起こっているのか存じませんが、「汝のなしたいように、なすがよい」でございますよ」

一同「だまれ!」

さっきからトカゲとウサギらしき人の声は聞こえていましたが、どうやらポンコツも来たようです。

他の人達が集まる前のミニセッションのつもりが観戦者が増えていきますね。しかしPCとしては何もできない歯痒さ。


そんな中自分の危機を省みずルーちゃんは叫びました。

ルー「ソラ!街の人、たすけて!

ソラ「だよね〜。ルーちゃんはそう言うと思うの。でもでも……ここで見逃したら、あの連中、引かせてくれる?」

アレン「それとこれとは、全く別の話ではないかな。お前一人が私の足止めをできるとは思えんよ」

ソラ「わかった。"ライトニング"

これは懐かしい、潔すぎる交渉パート3。もうこうなったらどんなに無茶でもやるしかない。

しかし当然のことながら先制は取れず、相手の"コアーシブ"に抵抗できずにあっさりと無力化されました。

自分の手番でディスペルしようともしましたが、達成値26という数値を抜くことはできませんでした。


アレン「これで、我の復活の手立ては整った。この、まったき扉を使って、我が神への扉を開こうではないか

そういい残してアレンは"エスケープ"で逃げてしまいました。最寄のアーメスの神殿なり祠なりに行きました。

それを悔しい思いで見送ることしかできないソラの周りでは、阿鼻叫喚の地獄絵図が展開されていました。

夫婦は死者の群れを食い止めつつ一般人の避難誘導をし、ムーテスの家からは"キュアリオスティ"の呪歌が聞こえます。

ダンフォースが<守りの剣>の結界に誘導しようとしているんですね。ドゥームはともかくアンデッドは入れないから。


クロノア「ソーラリィム!あんたは前衛も後衛もある程度できる。てことは、この中で一番、一人で行動できる戦力なの。
      どんな手段でもいいわ、この街を出て、助けを呼びにいきなさい。私たちは、なんとかこの街を守るから」

ソラ「おかーさん……。……うん!わかった<投人機>で飛ばして!

一同「"フライト"は!」

ソラ「だって、倍くらい速度違うの!」

300mの飛距離が1ラウンドの移動距離なら、移動力50で全力移動150mの"フライト"の倍速いですね。

「ソラいきまーす!」とカタパルト代わりにして飛び出し、300m飛んだ辺りで"フライト"に切り替えればいい。

どちらも全力移動扱いになるから危険はあるけど、この際贅沢は言っていられない。ただ自分で飛びたいだけという説もあるけど。


クロノア「わかったわ、覚悟しなさいよソラ!エアリサームたちが外に出ているわ」

ソラ「よしこい!わかった、みんなを呼んでくる!それまで待ってて欲しいの!」

こうしてソラは燃えるフーギの街に背を向けて、仲間達のもとへと飛び立っていきました。使い魔のフェイは母に預けました。

そうして飛び出す彼女の背後で、神殿から放たれる白い光に不吉な予感を覚えつつ、ソラは急ぎました。


★真31話の前に、成長申告

今回のキャラクターシート


今回の能力値の成長は以下の通り。

ジーク:筋力22→23、生命力21→22

エア:知力23→24、生命力28→29

メッシュ:器用度22→23、精神力13→14

ムーテス:筋力28→29、知力13→14

ニゲラ:筋力19→21

イスミー:生命力10→11、精神力22→23

今回は30話と30.5話の2回分能力値が成長しました。初期メンバーは全31回成長、強くなったもんですね。

できる限り「リターンズ」の数値と齟齬のないよう記録してきました。面倒な所もあったけど毎回楽しい作業でもありました。

なおジークとメッシュなどは申告がないので「リターンズ」との差分で推測しました。他にも微妙に数値が合わない人がいますが。


能力値の伸ばし方を見てみると各人の個性が出ていて面白いものですね。ジークなんて一度も器用度を上げていない。

エアなんて31回の内12回は生命力、8回は精神力が伸びています。なんというムチムチエルフなんでしょう。

そのくせ筋力は一切伸ばしていないということは、筋肉をつけずにひたすら心身ともにタフになっているということですね。

ある意味聖職者らしい成長の仕方なのかもしれません。メッシュより筋力ボーナス1つ分勝っている妹は魔術師として不思議ですが(笑)


ちなみに成長の目安として「バルバロス・ロワイヤル」に収録されている表を確認すると、30回成長は10〜11レベルで妥当なところ。

しかし追加経験点4万5000点、所持金7万5000ガメル、所持名誉点750点となっていて、ぞんざいズはいずれもそれ以上です。

目安はあくまでも目安ですし、考え方によってはぞんざいズは同程度のキャリアの冒険者の中でも抜きん出た実力者ということです。


それではお待ちかねの技能の成長です。これにも30.5話の分を上乗せして各人成長していますよ。


まずはジーク、ついにファイター11→12となりました。一人だけ一足先に12レベルの仲間入り、流石はリーダー的存在。

これによってHP90点に到達ですよ。エアがMP90点で周りを驚かていましたが、こっちもこっちで凄いことになってます。

なおAテーブル技能を12→13レベルにするには1万500点が必要。もう数冊分冒険すれば《バトルマスター》ですね。


メッシュはグラップラー10→11にして戦闘特技《両手利き》を習得。命中力が下がるものの1ラウンド3回攻撃が可能。

《ファストアクション》が効果を発揮しようものなら脅威の1ラウンド6回攻撃が可能になり格下はフルボッコ必至ですね。

更に種族特徴〔HP変換〕が強化され、使用回数が1日2回になって低めのMPを補填しやすくなりました。


あとアルケミスト0→3にして練技"パラライズミスト"、"クリティカルレイ"、"インスタントウェポン"を習得しました。

前2つはニゲラと分担できますが、最後のやつは初出ですね。簡易の武器を作って対象に与えるというものです。

作れる武器のカテゴリは任意に決定できますが、必要筋力1でクリティカル値10の特殊効果なしに限定されます。

威力はランクに左右されまして、Bランクで威力10、Aランクで威力20、Sランクで威力40、SSランクで威力80です。


エアはレンジャー7→9にして戦闘特技《ポーションマスター》を自動習得です。

エア「そして、わたしが主に飲むのは<魔香水>!

GM「魔香水は、吹き付けるほうじゃなかったでしたっけ?」

ムーテス「僕をリスペクトしたんだね」

エア「ちがう!……と言いたいけど、あながち外れてないあたりが悔しいわ」

大司教も何故か<魔香水>を飲む癖があったりしますが、吹き付けるのが本来の用法です。大司教の秘密のブレスケアなのです(笑)

これでエアは自らMPを回復しながら仲間を回復したり援護したりできる。後衛として更に頼もしい存在になりました。


ムーテスはファイター10→11として戦闘特技《武器習熟/アックス》を習得。<デスサイズ>のランク効果も使えますね。

種族特徴〔剣の加護/風の翼〕も強化され、1日の飛行時間が12ラウンド(2分)に延長されました。

ムーテス「今まではラウンドをちまちま数えて、いつ消えるかとびくびくしていたけど……!」

GM「これからも、ちゃんと数えてくださいね

ムーテス「……はい(視線逸らし)」

余った経験点でエンハンサー3→4にして練技"マッスルベアー"を習得して更なるダメージの向上を図ります。


それでも余った経験点で戯れにセージ0→1にしました。最終回だからこその無駄遣い。

メッシュ「言語は何を覚えました?」

ムーテス「なんとなく、妖精語(にやり)」

ジーク「……ぞくり」

ニゲラ「ジークハルト・ブレードを奪う気満々ですよぅ

例の効果を使うには妖精語を話せればいいだけで、妖精魔法を使える必要はないんですよね。

基準値でいえば3と低いし、6ゾロ狙いなら平目でも同じだけど、技能があれば知力ボーナスで達成値を底上げできる。

ほんの少しの基準値の差で知名度や弱点を抜けることもあるし、あって無駄な技能ではありませんよね。


イスミーはマギテック6→7、エンハンサー1→3として練技"アンチボディ""メディテーション"習得。

前者は毒・病気属性に対する生命抵抗・精神抵抗+4で、後者は精神効果属性に対する精神抵抗+4ですね。

毒・病気属性はプロテクション系でダメージ減少できないので抵抗できるに越したことはない。

精神効果だって"ブレイブハート"やカンタマの効果を受けられない時には自力で抵抗したいものです。


あとニゲラなんですが。

ニゲラ「経験点が、50点足りなくて、ファイターを伸ばすことが出来ませんでしたぁあ!(泣)」

ジーク「それは悔しいなあ。一回、1ゾロ振ってれば届いたんだな」

まさかのパラサ状態です。実は前回1ゾロを振っていたんですが〔運命変転〕で6ゾロにしちゃったんですよね。


ニゲラ「あの時そのまま"アシッドクラウド"を喰らっておけばよかった!(じたばた)」

ソラ「これだから人間は、なの(肩竦め)」

ニゲラ「むか。火花が散りそうな予感」

仕方ないのでプリースト2→3、アルケミスト7→8にして以前の予定通りに"バインドアビリティ"を習得。

彼女は今後ファイター技能よりもプリースト技能やレンジャー技能に力を入れていきますが、それはまた別の話。


ソラはちゃっかりとセージ8→9と伸ばして戦闘特技《マナセーブ》を自動習得していました。

これはセージ9レベルで自動習得するもので、全てのMP消費を−1点するというもの。

《MP軽減/ソーサラー》と組み合わせれば真語魔法の消費MPが恒常的に−2点になるわけですね。

この場合の消費MPには練技やアイテムによるもの等も含まれますが、消費MPを0点以下にすることはできません。

それでも"ディスペル・マジック"をはじめとする消費MP3点以下の真語魔法はMP1点消費になりますね。


あとついでにパジャリガー・セカンドも成長しました。能力値は例によってメッシュと同じです。

技能はエンハンサー5→7にして練技"リカバリィ"と"デーモンフィンガー"を習得しました。

後者は初出ですね。1ラウンドの間器用度+12するというもので、命中力そのものを上げる"キャッツアイ"と併用可能。

ただここでは持続時間2ラウンドと言っているので、戦闘特技《練体の極意》も習得していると思われます。


パジャリガー(エア)「今日も<首切り刀>で、ラスボスの首狩っちゃうぜ♪

イスミー「空気読め!」←お前が言うな

これで"ぞんざい勇者団"7+1人が揃いました。いよいよ最終セッション開始です!


★《白峰領》に迫る危機

ジェイドバジリスクとゴーストシップを倒したぞんざいズは、アレン一味のアンデッド供給源を断つ事に成功しました。

しかしその間にアレンは《白峰領》のフーギの街に侵入し、ルーちゃんを連れ去ってしまったのです。

自分達の誤算を悔やみながらも街を目指すぞんざいズは隔壁の前に展開する赤い鎧の一団に遭遇しました。


現在はパジャリガーは同行していますが、ソラはまだ合流できていません。

ジーク「俺たち実は、あいつの保存食で生きてるんだよな、今」

メッシュ「私は違いますよ!カプセルがありますからね!あいつの施しなど受けません!」

パジャリガーが<保存食>を持っていた助かりましたね。もしカプセルしか持ってなかったりしたら面倒でした。


例の赤い鎧の一団は《赤砂領》レザナードの兵隊でした。アリオス卿のところで何度か見ています。

メッシュ「実は、一人残らずレブナント部隊でした」

ジーク「撤収ー!」

ニゲラ「せめて迂回でー!」

GM「大丈夫、主に人族ですよ

人族ではないものが混ざっているのは以前も確認した通り。最前線では細かい出自なんて考えていられません。

彼らは《白峰領》に入れないよう隔壁の前に陣取っていて、指揮を取っているのはアリオス卿のようでした。


ジーク「アリオスのにーちゃーん!

一同「まてまてまてまて」

ジーク「いやだって、顔見知りだろ?」

アリオス「おう、お前ら。懐かしい顔ぶれじゃねえか。最近名を上げてるらしいなぁ」

今回のアリオス卿はしっかりと戦装束に身を包んでいます。ぞんざいな所は以前と変わらないようですが。


ジーク「すまないが、ものすごく急いでる、通してくれ」

アリオス「おう。そうは言うが、現在ここには何者も通すなって命令が下されていてな、ちょいと難しい」

既にアイヤールはフーギの街がアンデッドと魔動機械の群れに襲われていることを把握していました。

混乱に乗じて変なものが侵入しないよう守りを固めるのが《赤砂領》に出された命令でした。

セラフィナはアイヤール最大の主力空戦団を率いてこちらに向かっています。最悪の場合、山脈一帯を殲滅します。

もちろん人命は尊重して救出も考慮していますが、領主が行方不明の上にこの異常事態では難しいことでした。


ダンフォースの居場所自体はフーギの街だと知っていますが、街事態と連絡が取れないわけですね。

ムーテス「何とか通してもらえませんっすかね?」

アリオス「うーん……これ以上は、妙なもんを通すのは不味いと思うんだが。
      お前らには、うちの部下が世話になった借りがあるからな」

エア「妙なもん?」

アリオス「ああ。正確には、通したか通してないか曖昧らしいんだが、
      こっちにドラゴネットで飛来したっていう、妙に立派な格好をしたマッチョなエルフが来たらしくてな」

間違いなく大司教ですね。そんな特徴的なエルフはフェイダン地方でも一人しかいません、一人いれば充分です

エアの生命力も大概ですけど、まさか筋力30まで伸ばして<インペリアル>を着込むエルフが出てくるとはねぇ……。

ちなみに大司教の騎獣はドラゴネットのクラウンです。中の人がオーファンの近衛騎士団長と一緒なのでこんな名前です(笑)


大司教は《赤砂領》の兵隊達と「通せ」「通せない」の押し問答の末、荒事になる前に"エスケープ"で瞬間移動したらしい。

最寄のルーフェリア神殿はフーギの街でしょうから直接行けるかも。その前に祠とかあったらそこを経由することになるかも。

アリオス「お前たちには、借りがある。俺が通したってのは女帝には内緒にしろよ。ただでさえ覚えがめでたくないんでな」

ジーク「ありがとな、兄ちゃん。女帝は話がわかるから怒らねーと思うぞ」

それでも公私混同はしないから何らかのお咎めは出すかもしれませんが、まぁ悪いようにはしないでしょう。

そもそも一つの領の周囲をカバーするなんて、一体どれだけの人員が必要なのやら。空を飛ばれると関所なんて関係ないし。


その時アリオス卿のもとに伝令がやってきて、アンデッドの一団の襲撃を伝えます。

伝令「しかし、以前よりも少数です

アリオス「どうやら、忙しくなっちまった。そうなったら、人族の冒険者を咎めてる余裕なんざねーよ」

イスミー「申し訳ねぇ」

ニゲラ「ありがとうございますぅ。……あの人たちの戦ってるアンデッドの数、
     ニゲラたちが少しでも減らしておけたらいいんですけどぉ」

実はアンデッドの供給源を立ったお陰で敵の数は少なくなっています。もしそうでなかったら激戦になっていました。

隔壁が崩れて混乱が拡散するという大惨事にも繋がっていた可能性があるので、前回の戦いは無駄ではありません。


★空からの飛来者

《白峰領》に入ったぞんざいズは領主の館がある街の目前まで来ていました。フーギの街まであと少しです。

ニゲラ「パジャリガーさん、ご飯お願いしますー

パジャリガー「え、何で俺様!?ていうか、俺も一緒に行く理由は……
        いや、これはきっとライフォスの英雄として、パジャリガーの名をより知らしめるための……」

ムーテス「ひたすら凝ったものを作り始めたら、それはそれで萌えるっすね」

何だかんだで料理を作ってくれるパジャリガー。メッシュもそうですが、女性陣の誰よりも家庭的なのは何故なのか(笑)


ところがそうして夜を迎えるとメッシュは《聞き耳判定》によって夜空に何かが飛んでいることに気付きます。

飛行物体は全部で3つです。1つはアインベフ、竜の姿で飛んでいるのは何度か見ているのですぐ分かりました。

残る2つはアインベフを追って攻撃を仕掛けていまして、操霊術師のエアは判定の必要なくシルバーウィングと判別。

いつかのアイアンゴーレムと同じく《正体露見=コンジャラー技能》の特徴を持っているわけですね。


シルバーウィングは13レベルの魔法生物です。体長5mの銀で作られた鳥型ゴーレムです。

頭部(コア)、胴体、翼×2の四部位です。《狙い打つ》ことでダメージ−4、命中力+2で攻撃することができます。

また全身が《銀の身体》のため、刃物や純エネルギー属性以外の魔法ダメージでクリティカルしない。

胴体は《テイルスイープ》によって5体までの敵を攻撃し、《攻撃障害=不可・不可》で頭部を守ります。

翼は御馴染みの《飛翔U》を持ちます。また頭部のHPが40点以下になると全身が《煌めく》という能力を持ちます。

こうなると1分間(6ラウンド)の間は全部位の攻撃が魔法ダメージになる代わりに、時間切れになると自動的にHP0になる。


本来ならこの程度のゴーレムはアインベフの敵ではない。しかし今のアインベフは背中に人を乗せていて戦えないのです。

ジーク「つまり、あの背中のを排除してやればいいんだな?」

エア「何が張り付いてるの?じー」

ソラ(しがみついているポーズ)

エア「…………見なかったことにしましょう

一同「おーいっ」

久しぶりの再会なのに、突然すぎてお姉ちゃんは現実を受け入れられない様子。PCとしては本当に久しぶりですしね。


ジーク「おおおーい、アインベフー!お前何やってんだよこんなとこで!(手を振ってみた)」

アインベフ「おお。ついでに届けものだ、そっちに降りるぞ。
       別に、死んでもいんだが、私のせいで殺したとなると、些か寝覚めが悪い」

実際はソラ一人乗っている程度で怪力のグレータードラゴンが戦えないことはないでしょうしね。

そういえばフォーセリアの竜騎士も人が乗っていると竜が全力を出せないという設定がありましたっけ。

ライダー技能は騎獣を乗りこなすだけでなく、騎獣の邪魔にならないようにする意味もあるんですね。


アインベフはジーク達の方へ墜落するように降下。

ソラ「やっほー、お兄さーん、ひさしぶりなのー

これでフルメンバーですね。シルバーウィングは最終決戦の前の呼吸合わせとして用意された敵です。

以前ニゲラとイスミーが入った初戦闘でうっかり死人を出していますからね。お互いの能力を知る予習は大切です。

レベルアップした直後な上に8人もの大所帯。行動順、役割分担、把握しなければならないことは沢山あります。


アインベフはというと、着陸するといつもの女性の姿になって観戦モード。NPCだから許されるものぐさです。

イスミー「戦えやぁ!」

ソラ「むぅ、できたらあのドラゴンも巻き込んで、範囲魔法をぶち込みたかったの

エア「こらこらこら、めっでしょ!」

ソラ「だって、死んでもいいって言ったんだもんー(ぶー)」

ジーク「お前、あのドラゴンの土地を荒らしたことあるんだぞ。ソラ」

ソラ「しらなーい」

本当に知らないんですよね。シフェナと意気投合して遺跡を歩き回った挙句、すれ違うように逃げちゃったし。

それにしても姉妹のこういう会話は何だか久しぶりな気がする。やっぱり中の人がいると違います。


それでは戦闘です。こいつらは雑魚なのでGMはサイコロを振らず固定値。<剣のかけら>も入っていない。

イスミー「っしゃー!回避が2くらい下がったも同然ですぜ!」

つまり期待値は9は出ていると。以前別のリプレイでもそんなこと言われてましたっけ。

ルナルのニートの中の人も秋田先生っぽいし、あの驚異的な出目を考えると否定しきれないのが凄い。


ちなみに《先制判定》はニゲラのブーストSランクを入れてもらった上に指輪を割ってもぎ取りました。

シルバーウィングの先制値は21と高めなものの、先制力12のメッシュがSランクブーストされたら基準値16。

これなら出目5以上で取れるはずなのに出目は3か4だったというわけで、こっちの期待値も2は低い気がする(笑)


1ラウンド目

イスミーは補助動作でミニを出して片方にブレスを吐かせ、暗いので自らは"フラッシュライト"です。

ソラは剣と盾をしまいつつ<ソーサラースタッフ>を出し、〔異貌〕して"ブリンク"もかけておきます。

エア「こらぁあ!さがりなさぁあい!

そして"エネルギー・ジャベリン"をシルバーウィングの翼に撃ち込みます。

それを見たエアは"ゴッド・フィスト"で同じ部位に追撃です。姉妹による連続攻撃魔法も久しぶりに見ました。


その後ジークの《マルチアクション》による攻撃&"カオスショット"でシルバーウィングBの片翼をもぐ

ニゲラはシルバーウィングAの翼を攻撃し、メッシュがそれに続いて《ファストアクション》&《両手利き》です。

エア「やってしまえばいいじゃない。どうせ、これ以上弱い敵なんて出てこないわよ、雑魚戦よ!」

GM「そ、そんなことわからないじゃないですか!」

エア「わたしがGMなら、絶対出さない(きっぱり)」

シルバーウィングの回避力は14(21)です。《飛翔U》が入っていても16(23)ですね。

今のメッシュの命中力18なら《両手利き》で−2されても同値で、期待値で当たる。タゲサやパラミスが入ってると尚更に。

実際メッシュの攻撃は4回連続命中してシルバーウィングAの片翼をもぐ。残り2回分の攻撃はできませんでした。

《双撃》を持ってないから目標を変更することができないんですよね。かといって13レベルはまだまだ先のことですし。


ムーテスは色々強化しながら1ゾロに終わり、ソラに対して《ガーディアン》で5回分《かばう》を宣言。

ソラ「恩に着るの

パジャリガーの<首切り刀>も回ることなく、シルバーウィングに手番が移ります。


片翼こそもげたものの、胴体は健在なので《テイルスイープ》です。

ムーテス「あ、ごめん、範囲攻撃は無理。かばえない」

ソラ「恩は忘れるの

余談ですが、「双頭のサーペント」では《テイルスイング》の定義は範囲攻撃ではなくなっていると明言されました。

対象:1体を同時に複数に与えているとみなす(物理)攻撃は、自身が対象からはずれていれば、《かばう》発動」

《かばう》をした結果2回当たるのは避けたいとのことですが、これは恐らくは《テイルスイープ》にも有効です。


もっとも現在前衛が6人いるから逃れられるのは1人だけ。よりによってそれがパジャリガーだったりするし(苦笑)

メッシュ「バカでしょう、お前!誰よりも一番に落ちるべきでしょうが!

パジャリガー「ふははは!俺様のまとう英雄のオーラが、シルバーウィングを怯ませたのよ!」

まぁそれでもソラは"ブリンク"で1回は回避できるし、《テイルスイープ》は連続した手番では使えないから何とかなる。


2ラウンド目

それからもぞんざいズは互いの実力を披露しあい、結束を固めていきました。

ニゲラ「胴体に攻撃!しますけど……絡みませんー。絶対に、引っ張り合いに負けちゃうと思うのでー」

ソラ「筋力、足りてないんじゃないー?といじわる」

ニゲラ「むぅ。足りてなくていいもんー。無駄に筋力高くて、肩パット入ってるような体型になりたくないですしー。と、つんけん」

ソラ「むかぁ、ちゃんとエクササイズしてるものー!」

ジーク「……女子の会話が一気に怖くなってきたぞ」

メッシュ「女性というのはいつまでも、恐ろしいものですぞジーク様」

もしかしてこの2人は相性悪いのか。エアとニゲラが上手くやってたからすぐに仲良くなると思いきや。


ニゲラ「……イスミーくん、悔しいから"クリポン"で"チェイン&ウェイト"を作ってー!」

イスミー「念のため聞いときやすが、攻撃対象はシルバーウィングでやすよね?」

<チェイン&ウェイト>はカテゴリ<絡み>のAランク武器にして、カテゴリ<投擲>のAランク武器でもあります。

いわゆる鎖分銅、よく忍者とかが使っているあれですね。投げて使うと相手に絡めることになります。

《武器習熟/投擲》を持っていれば投擲した時に相手に絡めないことを選ぶこともできるようになる。

また外れたり絡み状態を起こさなかった場合、鎖をたぐって分銅を回収し、また投げることができる。

鎌と違って打撃武器なのでシルバーウィング相手にもクリティカルするし、威力は19とそこそこある。


ところがそのクリポンは1ゾロによって不発に終わりました。

ニゲラ「その50点をよこせー!

まぁあれですね、結束と同時に色々な人間関係も固まってきたということで(笑)

それからエアの"バトルソング"が響く中、《煌めく》が発動すると同時に手番を渡さぬフルボッコタイムです。

Bの頭部はムーテスの一撃で砕け、Aの頭部は改めて作られたクリポン武器によってニゲラに深手を負わせられます。


トドメはまたもパジャリガーでした。

パジャリガー「イェエエアアァアー!!俺様最強ー!(天を仰いでる)」

ソラ「何で、あいつの行動順、最後にするの。だから持っていかれるの(ぶー)」

ムーテス「もう、お前、最初に動くといいっすよ」

パジャリガー「ていうか、お前らトドメ近くになったら、ラウンド開始時、俺の存在を忘れてるだろう」

これで2連続でキルマークを持っていかれました。NPCのくせに、皮肉にもその実力は主役級です。




戦い終わって戦利品を剥ぐ時間を利用して、ソラは事情を話しておきます。

ソラ「あ。そうだ。ルーちゃん、攫われた」←簡潔

エア「……(硬直)……あ、貴方は何を言っているのデスカーッ!!(声裏返った)」

ニゲラ「エアさん、声裏返りすぎぃ。音声でお届けできないのが残念です状態ですよぅ」

エア「そこのベフ!アインベフ!貴方、ルー様が攫われたって、どういうこと!」

アインベフ「あ、そこは知らん」

実はアインベフが神殿に詰まっていたのは黒幕への嫌がらせで、できれば顔を見たいという気持ちもありました。

ところがアレンは魔法でそれをスルー(推定"エスケープ")してしまい、結局対面することは叶いませんでした。


元々人族や蛮族の争いには不介入の彼です。アレンが今回の異変を起こしたところで帰ろうとしたのですが。

アインベフ「視界の隅にこれがな。彷徨っておってな」

ソラ「はーい。隠れながら逃げてたんだけど、助けてもらったの。おかげで飛んでくるのに見つかってありがた迷惑だったけど」

GM「そんなこと言うと、ごすごすと見えない鼻先でつつきますよ」

ソラ「いたいのー」

エア「お世話になりました、うちの愚昧が(深々と)」

黒幕の顔を見たかったというのもついでで、神殿に詰まっていた主な理由は本当に個人的嗜好でした。

そしてソラを届けたことでさっさと島に帰るつもりです。本当に幻獣というのはフリーダムな存在ですよね。

実はぞんざいズの選択によっては彼にも役割があったそうで、それはそれで見てみたかったものです。


アインベフにはこれ以上聞くことはない。ソラからフーギの街に到着してから何があったのか聞きだします。

ジーク「そのとき、ルーは元気だったか?」

ソラ「えーと、うん。お茶したり、女の子トークしてたの。それで、まあ、色々あってー…………攫われた

イスミー「なんか、ものすごい抜けてやすよ、途中経過」

エア「ソラ、正直にぶっちゃけなさい、これは国の存亡にも関わる話です」

ソラ「うん。……確かにそうなの。誤魔化そうとしたの、ちょっと反省」

そこでソラは"アポート"で今回色々やらかしたアイテム、<投人機>を召喚します。


ソラ「ぱらりらっぱぱー。<投人機>ー!」

ジーク「なんだそれ、誰が作ったんだ」

ソラ「《カイン・ガラ》で普通に売ってるの」

アイテムには製作時期という項目があり、<投人機>は「魔動機文明時代」となっています。

残念ながら現代には製法は伝わっていないものの、2万ガメルで普通に購入できる程度には出回ってます。


ソラ「面白いでしょ?」

ジーク「うん、おもしれぇ。で、これとルーが、どう関係あるんだ?」

ソラ「だって、300m飛ぶの!すごくない?」

ジーク「……まさか、飛ばした?」

ソラ「だって、ルーちゃん寂しがってたの。しょんぼりしてたから、気分転換させてあげたくて」

ニゲラ「つまり、ルー様、これで飛んでった……で?」

ソラ「そしたら、途中でその変な抜け毛男が、飛んできて途中でインターセプト」

ソラは神の分体を「抜け毛」と表現するのがお気に入りらしい。発生過程を考えるとあながち間違っていない。


エア「……推定、残念な神の欠片、京本インキュバスが、ルー様を捕まえたと。
    動かしてはならない大事な人を、変なアイテムで飛ばして、でもって、その言葉どおりとするなら、送り届けたと」

ソラ「わー。お姉ちゃん、要点まとめるの上手ー(ぱちぱち)」

一同(大爆笑)

ニゲラ「ひどいー(笑い転げてる)」

あれだけ悩んで家まで買った作戦を見事にぶっ壊してくれましたからね。帰ってきて早々にやってくれました。

それからアレンがアンデッドと魔動機械の群れを街に攻め込ませ、ソラは助けを呼びに脱出したことを話します。


ルーちゃんは攫われ、街は襲われ、女帝はそれを殲滅しようとしているという、このカオスな状況。

イスミー「つまり、まとめると。……一大事ってことでやすね」

一同(爆笑)

ムーテス「うん。綺麗にまとめたね。いまだかつてないくらい」

ジーク達がアレンの穢れを失念していたというミスはあった。しかしそれが霞むほどのミスもあった。

お陰でジーク達の気は少し楽になったかもしれないけど、一大事ということに変わりはない。

こんなこと言ってるソラだって本当に反省しているんです。何というか回を追うごとに色んな業を背負っていきますよね。


それと街に残してきたフェイの視界で現在の状況を確認しておきます。

現在の街は一部の建物が損壊・炎上していて、生き残った人はエアの家の敷地内に逃げ込んでいます。

円形に展開された<守りの剣>の結界の周囲にはゾンビ、グール、マミー、ナイトグールといったアンデッドが徘徊。

カームさん、クロノアさん、ガアラは魔動機械を迎撃しています。統制は取れていない様子なのが幸いか。


傷病者が優先的に運び込まれる野戦病院状態で。ダンフォースは"ヒーリング"の呪歌で負傷者を癒しています。

"モラル"の呪歌で戦線を支え、ジェロも射撃で援護していますが、圧倒的前衛不足は否めません。

"ヒーリング"はHPを1点回復させる呪歌です。前奏に3分かかり、10分置きにしか効果を発揮しません。

回復魔法と比較すると効率はとっても悪いですが、演奏が届く範囲を纏めて癒せるのでこういう状態では役に立つ。

"モラル"は命中力+1の効果がありますが、前衛不足の現状ではジェロの弓にしか役に立たないかもしれない。


あまりな状況にシルフィは泣きながら棒を持って戦おうとする有様です。周りに止められていますが。

ジーク「あのガキ、根性あるじゃないか」

エア「ここの、前衛過多状態を何とか分けてあげたいわ」

カームさんがいるからある程度はブロックしてくれるでしょうが、ドゥーム系が相手だと体がもたない。

ムーテス一家のコボルド達は限られた食料で炊き出しを行い、リャンは負傷者の手当てをしています。


それが自分の作ったドレスを解体して包帯にするという壮絶な姿でちょっと感動。

ムーテス「……リャン(ちょっと絶句した)。……うん、そうだね。
      まあ、これくらいはやってもらわないとね。うん、僕のビジネスパートナーなんだから

ニゲラ「ちょっと感動したでしょー、今(にや)」

どうやらもうしばらくは持ち堪えられそうな様子ですが、時間をかけているとその前に女帝の攻撃が始まるかもしれない。


エア「……それにしても、<守りの剣>の万能性に頼りすぎたのが盲点だったわ。色々反省しないと」

ソラ「ごめんね、お姉ちゃん。300メートル飛ばしてしまって

エア「そっちじゃない!盲点は、そっちではないのよ!それは、盲点とかいう話ではなくて、常識外の話だから!

ソラ「がみがみ叱られても、お姉ちゃんがちょっと元気になってくれたので、ほっとしてるの」

反省しないといけないのは全員一緒です。あとどこぞのヒーロー野郎は自重してくれるとありがたい(笑)


エア「とにかく、自分の至らなさを猛省しているのは当然だけど、それもひっくるめて、
    ルー様に何かしようとしているやつは許さん!ここに誓う!(握りこぶし)」

ソラ「うん。同意なの。あたしも、友達助けたいの(握りこぶしこつん)」

ニゲラ「それには、ニゲラも入れてください。新参でも、ルーフェリア神官ですぅ(握りこぶし)」

そして握りこぶしをぶつけ合い、互いにルーちゃんを救うことを誓う女性陣でした。

ソラとニゲラはちょっと険悪な雰囲気になったりもしたけど、これがきっかけで仲良くなってくれるといいな。


★ぞんざい勇者団進軍準備!

現在のフーギの街はいわゆるラスダン状態なので、その前に装備を整えるべく最後の買い物をしておきます。

丁度フーギの街に行く途中にダンフォースの館がある街があります。街の名前をダリアンというそうです。

領主のお膝元なのだから《白峰領》では一番大きな街です。ここなら大抵のアイテムが揃うでしょう。


ところがその前、夜の間にソラは思い切った行動に出ます。

ソラ「ソラは夜のうちに、髪を切るの。反省の証」

イスミー「え?丸めるんで?」

ソラ「そこまでは無理!」

長かった後ろ髪を切ってショートカットになりました。以後ソラは挿絵でもこの髪型で定着します。

ルーちゃんが攫われたのはシナリオ上のイベントであって、プレイヤーとしては避け難いことだったと分かっています。

それでも自分がトリガーを引いてしまったけじめということです。PCからしたら自分の責任に他ならないし。


ジーク「でも、そうやっていきなり頭がなくなってると「誰だ、お前?」とか言いそうだぞ、俺」

メッシュ「ジーク様!台無し感満載でございますよ!」

イスミー「しかも、頭って……兄貴、それじゃあ、デリカシーなさ過ぎて、女の子にもてやせんよ!」

ムーテス「あ、多分キミよりは、フラグ乱れ飛んでるから大丈夫

イスミー「おおおおおーん!」

ソラ「……パーティのヒエラルキー、随分変わったみたいなの」

執事とリルトカゲンが最下位争いしていたのも懐かしい。今では最下位が明確になってしまいました。

意外と逞しいニゲラと相変わらず飄々としたソラは甲乙つけがたい。いずれもエアには頭が上がらない気はするけど。


ニゲラ「きゃぁああっ、ソラさん、なんてことを!」

ソラ「ニゲラ……」

ニゲラ「なんで、切るんですかぁ!キャラかぶるじゃないですかぁあ!

ソラ「知らんわー!」

このように微妙な友情?を育みつつ、朝を迎えたぞんざいズはアインベフと別れ、ダリアンの街を目指します。

アインベフは戦いそのものには干渉しないものの、戦いの行く末ぐらいは見届けてから帰るつもりらしい。


街への移動手段は魔動バイク、"フライト"、ミニなどです。高レベルになると大所帯でも色々あるもんですね。

ただ移動力50のバイクと"フライト"はともかく、25のミニは空を飛んでいるとはいえちょっと遅いかも。

地形によってはそれでも飛んだ方が早いかもしれませんが、山谷を通っている様子はないですね。

ちなみにパジャリガーは乗り物がないので、"シェイプアニマル"でハムスターに変身して運んでもらいました。


やがて街に着くと薬やカードや指輪、<魔晶石>や<消魔の守護石>といった消耗品を買い込みます。

指輪は厳密には装飾品ですが、この買い込み方は割ることを前提にしているのでほぼ消耗品です(笑)

そういえばこのリプレイが出た頃には魔符がないんですよね。「ウィザーズトゥーム」で追加された消耗品の。

これは破くことで一時的に生命抵抗力や精神抵抗力を上げる効果がありまして、消耗品なので装飾欄は埋めない。

前者を<陽光の魔符>、後者を<月光の魔符>といい、+1〜+3の効果があって数値が大きいほどお高くなります。


似たようなアイテムで<陽光の指輪>や<月光の指輪>もありますが、装飾品なので頻繁には使えませんしね。

ただし指輪だと+2の効果で1000ガメルであり、同じ効果で1500ガメルする魔符よりはお安いのですが。

他にも<剣のかけら>の個数で抵抗力を上げる選択ルールや、穢れの点数で抵抗力を上げる<イグニスの魔符>などもある。

「ウィザーズトゥーム」を採用すると魔法関連で大きな変更が入るので、抵抗力を上げる新要素でバランスを取ってるんですね。

残念ながらこれが発売する前にこのシリーズは完結してしまいましたが、「リターンズ」では使われています。


ジークやニゲラもいらない装備を売ってお金を捻出し、別のアイテムに買い換えたりと散財の限りを尽くします。

ムーテス「そんなものはあとで買いなおせばいい

最後の戦いは今までにない過酷なものでしょうし、負けるわけにはいきませんしね。

実際何を買ったのかは不明ですが、一番大きなお買い物はパーティ財産を崩して買った<憤怒のマスク>のようです。

これは生物の騎獣専用の装備品であり、装着すると常に興奮状態になって高い戦闘能力を発揮します。

データ上は騎手のライダー技能が1レベル高いものとして強化される6万2400ガメルの品ですね。


今回の場合はイスミーのライダー技能が12レベルになったものとして強化されます。

そうなると命中力や回避力等は概ね+1されるし、胴体のHPは5点上がって73点とかになりますね。

ムーテスやニゲラとそう変わらないぐらいです。子供とはいえ正真正銘の竜です、流石のタフネス。


そうしてぞんざいズが買い物を終えて店を出ると、アイヤールの飛空船団が飛来してきました。

先頭を行く旗艦は見覚えのある「純白の風」、セラフィナが以前乗っていた船ですね。

その軍勢は太陽の光を遮って地上を翳らせるほどであり、いずれの船にも大きな砲門がついています。

セラフィナは本気で山ごとフーギの街を殲滅できる戦力をかき集めてきたのです。それこそほぼ総力でしょう。


やがてその一部はダンフォースの館へと降りていきます。セラフィナの来訪を察したぞんざいズもそこへ向かいます。

館は緊急の作戦本部としてものものしい警戒が敷かれていましたが、女帝に報告がある旨を伝えるとすぐに通れました。

何しろフーギの街の様子を伝えに出たソラは、今のところぞんざいズとしかコンタクトが取れていませんしね。

現時点で最も状況に詳しいのはぞんざいズです。セラフィナもその辺を理解しているのでノータイムで会議室に通しました。

会議室には国の重鎮達が集まっていて、ドラクロア将軍の姿などもあります。フェルディナントとかはいないようです。


中央のテーブルにどっかり腰をおろしているセラフィナは、まるで碇ゲ○ドウのように顔の前で手を組んでいました。

セラフィナ「……さ。報告を聞こうか。どういうことだ。何が起こっている」

ジーク「ごめんな。失敗した

このぴりぴりした空気の中で相変わらずストレートです。本当に相手が女帝でも神様でも最後までブレませんでしたね。

ここの挿絵でセラフィナの後ろにいる人は近衛のようですね。以前ムーテスが着ていた近衛の鎧と同じ紋章をつけています。

中島鯛先生の同人誌「新米女神と勇者たち」に収録されているコメントでもちゃんと近衛であると明記してあって感心しました。


ここでぞんざいズは現状を説明します。<呼応石>もどきの調査については密かに進展があったようです。

セラフィナ「そなた達から預かり、賓客として迎えていたアナトラ殿を、
       かつての冒険の経験を生かしてもらえぬだろうかと、我が《皇城領フェーゴ》の研究室へと招聘していたのだ」

これについては「フェイダン博物誌」にも書いてありますね。研究と、各領の私塾や教育の現状を視察したりしているとか。

ここではパジャリガーのフルネームがパジャリガー・コルディンであり、妻である彼女はアナトラ・コルディンとなっています。

未亡人になっても籍はそのままなんですよね。ちなみにパジャリガーの二つ名は"百面の英雄"でアナトラさんは"賢女"ですね。


高レベルの操霊術師にして賢者である彼女の働きは素晴らしく、既に<呼応石>もどきを無効化する方法を発見していました。

ムーテス「それが本当なら、こっちはすごく楽になるんだけど!」

ソラ「フーギの街で、すっごくみんな頑張ってるの!」

アンデッドも魔動機械もこれで動いているのなら一気に街の人達を救出できる。英雄の妻は伊達じゃないですね。

そもそも現在のアレンは多くの幹部をぞんざいズに倒されてますし、もう殆どまともな部下は残っていないのかも。

<呼応石>もどきを使っていたのも軍事的な力不足からでしょうし、シフェナのような実力者だってそう多くはいないはず。


ところがここでセラフィナは訝しげな表情を浮かべます。

セラフィナ「そなた達、まだ会うておらぬのか?」

イスミー「へ?」

セラフィナ「アナトラ殿は、一足先にこの《白峰領》へと向かわれた
       実際にその<呼応石>で動いている存在を見たことがないそうでの。行動力のある方よ」

ところが現在連絡がつきません。彼女を見つけることもまた現状を打破する重要な鍵なんですね。

ここで初めてソラがアナトラさんの特徴を聞いたことで、例のミニセッションで同道した老婦人を思い出します。

彼女がアナトラさんだったんですね。只者ではなさそうな老婦人という時点で薄々感づいていた人もいそうですが。


アナトラさんがフーギの街に入ったことまではソラが確認しています。しかし何処に向かったかは不明です。

フェイの視界で<守りの剣>の内部を見ても姿は見えないので、エアやムーテスの家に避難してはいないようですが。

前衛技能はなさそうでも高レベル操霊術師ですし、雑魚のアンデッド相手なら無事でいてくれそうなのが救い。

それどころか荒ぶるサンプル達を前にテンションが上がっているかもしれない。アンデッドさん逃げて!(笑)


ジーク「なあ、女帝。今、フーギの街にはお前の、その……ピ――ッ……もいるんだよ」

ニゲラ「何ですかぁ、その消去音ー!」

ソラ「今の、解釈の方法によっては、色んな意味に取れると思うの、お兄さん卑猥!

シルフィもいると言いたかったんですね。珍しく気を使ったからどこを伏せるべきか分からなくなったと。

言いたいことは伝わったので重鎮達は一瞬どよめきます。このままでは女帝としても姉としても過ちを犯すことになる。


しかしセラフィナの決断は鈍らない。眉間に血管を浮かべつつ言い切ります。

セラフィナ「妾の決断が鈍ったことで、第二の剣の神が復活し、更なる被害をもたらすかも知れぬのだ。
       妾は、より多くの民を守るために、後に愚帝の名を頂くことを恐れぬ

ジーク「うん、アンタはそういう人だと分かってる」

そこでジークはセラフィナに総攻撃まで時間をくれるよう頼みます。その間にアレンを倒してルーちゃんを助けると。


ジーク「俺にとっては、ルーは神様の欠片でも何でもなくって、ただの女の子なんだよ

セラフィナ「ほう」

エア「うん……その気概やよし。しかし、ルー様を手に入れるというなら、わたしとバトエルデン様を倒していきなさい!

ジーク「うわ、それは一気に難易度上がったぞ」

ニゲラ「あ、ちなみに、ニゲラも神官ですから、エアさんの味方ですよぅ」

エア「そして、ムーテスは、金をばら撒くからわたしの味方!どう、この布陣!」

ムーテス「どっちがいくら出すかによるかなあ

作戦を止めることはできない。しかし時間を与えることはできる。セラフィナは一斉攻撃を明日の夜明けとします。

現在はお昼ぐらいなので猶予は24時間を切っています。〔剣の加護〕を回復させる余裕もありませんね。


あとルーフェリア本国の大司教からこの件に対して正式に抗議が入っています。

セラフィナ「せいぜい、時間までは角を付き合わせてくる」

エア「あ!そういえばあのおっさん、どこにいるの!」←既におっさん呼ばわり

バトエルデン「お前たちも、ここに集うこととなったか」

一同「何故、いる!」

フーギの街のルーフェリア神殿に"エスケープ"しようとしたけどできなかったようですね。

つまり現在の神殿はルーフェリア神殿として機能していない。アレンが何かしてアーメス寄りになっていると。

そもそも隣の国の最大戦力がアイヤール領で暴れるのも問題ですし、セラフィナに会談を申し込んで体裁を取り繕わないと。


バトエルデン「一つ言っておく。リアの言葉だが、急にルーとの繋がりが途絶えたという」

二人は常に意思を疎通させているわけではなく、普段は何となくお互いの存在を感じ取れる関係らしい。

それが急に途絶えたことで異変を察し、大司教自らこうして出陣してきたという事情のようです。


ここでセラフィナは席を立ってぞんざいズの方へ歩み寄ります。

セラフィナ「大切なものならば、何故手元から話した、愚か者。失ってから、山のように後悔に苛まれても、もう遅いのだ

彼女も大切な妹をそうして失いました。そして今は自らの手で末の弟を殺そうとしているのです。


セラフィナ「妾は、この国のために飛空船団を組織した。少なくともフェイダンでは最強であると自負している、
       しかし――その全砲門を、この手で我が国に向けて開くことになるとは思わなかった」

しかもそれはミスティン姫の予知夢にあった山が崩れるビジョンに繋がる。まさか自分がその引き金を引くなんて残酷すぎる。


メッシュ「そんな必要はありませんよ、ええ、未来永劫」

ニゲラ「ぞんざい勇者団が、阻止してみせますよぅ!

イスミー「安心してくだせえ!そんでもってシフェナの恩赦を……ふぎゃあぷ!」←エアとニゲラに蹴られた

流石はだめうさぎ、この状況でそんなことを言い出すとは思わなかった(笑)


何だか色んなフラグが乱立していますが、特に印象深かったのはソラに対するセラフィナの態度です。

ソラ「明日の朝までには、きっとみんなで笑ってられるようにするの」

セラフィナ「……無事に、帰って来い」

そう言って優しくソラの頭を撫でたりします。ライティア姫もナイトメアの魔術師でしたからね、思い出したんでしょう。


彼女の問題についてはこのシリーズ中でぞんざいズが解決することはない。しかし今後関わってこないとも限らない。

ジーク「どんな子?無事に帰ってきたら、捜しにいっても……」

セラフィナ「ん?聞きたいのか?そんなにも聞きたいのならば話してやろう。姉妹の中でも実に聡明で、
       少々内気で、なかなか感情を表に出さないあたりが放っておけないタイプというか……」

イスミー「腰落ち着けた!」

ムーテス「長話する気満々っすよ!」

そこで大司教がトップ会談の体でその話を聞き、ドラクロア将軍はぞんざいズを外に出してくれます。

どんな話なのかちょっと気になりますけど、両国のトップの心遣いを無駄にしないためにもフーギの街に行かなくては。


出発前にドラクロア将軍がセラフィナからの餞別を渡してくれます。まずは直結の<通話のピアス>で連絡手段を確保。

そして<魔晶石>の20点×4個、15点×5個。<消魔の守護石>の10点×8個。緑のSSカード×3枚です。

順に8000ガメル×4、4500ガメル×5、1万ガメル×8、2万ガメル×3で合計19万4500ガメル!

あれだけアイテムを充実させてまだこの大盤振る舞い。一体どんな激戦が待っているのやら。


★ぞんざい勇者団進軍!

装備を充実させたぞんざいズは以前ダンフォース達が隠れていた地下道へと降りました。

シルフィが隠れていた土砂の裏側にフーギの街へ繋がる通路があるのですが、そこは既に複数の足跡に踏み荒らされていました。

そういえばダンフォースとシルフィをムーテスの家に匿ってからここは放置されていましたね。その間アレンは使い放題でした。

もしここの通路を塞いでいたら敵の侵入経路を潰せていたのかもしれません。今は逆に潰されなかったお陰でこっちが使えますが。


その先へ進むと通路は急な登りになっていき、山の上にあるフーギの街に繋がっている確信が持ててきます。

ところがその途中には例の魂をパッケージする魔動機械が放置されていました。盗まれたというもう一つの魔動機械ですね。

アレンはここで更なる<呼応石>もどきを作り出し、アンデッドや魔動機械に取り付けて配下に組み込んでいたのです。

作り出したものはそのままフーギの街に攻め込めるわけです。幽霊船を攻略していた裏でとんでもない計画が進んでいたんですね。


やがて上り坂は階段へと変わり、山をかなり登ったところで押し開けるタイプの扉にぶつかります。

そこでメッシュが《聞き耳判定》をすることで扉の向こうで二足歩行の何かが歩き回っていることを知ります。

メッシュ「むう……二本足のアンデッドの可能性もありますな。ここはなるべくリソースを温存しておきたいのですが、
      やり過ごすまでの時間も惜しい。地下から山を登るはじめてのルートで、時間もそれなりにかかっていますからね」

イスミー「では、ここはおいらが、何者かを絞りやしょう」

こんな時こそ"ライフセンサー"です。反応がなければアンデッドや魔法生物ということになりますね。

ところが生体反応をキャッチしました。これだと人族かもしれないし、アレン配下の蛮族かもしれません。

そもそもアレンの配下には人族もいたわけなので、種族だけで敵か味方かを断定するのは危険ですけどね。


ソラ「じゃあ、さらに念のため……、"シースルー"なの」

これにより上にいるのはソラも見たことのある老婦人、今ならアナトラさんであると判明します。

ソラ「アナトラさんの今日のぱんつ、見えるの」

GM「パンツルックだから見えぬ!

エア「え、"シースルー"よ?」

GM「見たいんですか!」

この魔法自体は範囲にかけるものであり、その範囲が術者にとって透明になるという処理です。

ということはピンポイントで服だけ透けるかというと微妙ですね。生物は透けないというのは確かですが。

下手したら範囲内の生物は丸裸に見えるのかもしれません。まったくフォーセリアの頃と変わらずとんでもない魔法です(笑)


アナトラさんは困った様子でその辺をウロウロし、時々苛立ったようにトランクを蹴飛ばしたりしています。

ここでぞんざいズは彼女を驚かせないよう予め声をかけてから扉を開けます。幸い彼女はこちらの声を覚えていたので大丈夫。

アナトラ「あらあら、ありがとう。世話をかけるね」

メッシュ「では失礼いたしまして、と。一番最初に出て行くのは、同じ顔のパジャリガー・ツインズですよ

パジャリガー「おお、外だ」

これにはアナトラさんもちょっと嫌な顔をしたという。亡くなった旦那と同じ顔が二つも出てくるなんてどんな嫌がらせ。


抜けた先は神殿のある山の一角のようでした。

イスミー「こんなところで何してたんでやすか」

アナトラ「開けてくれてありがとうね。このあたりに、領主の館に通じる抜け道があるのはわかっていたんだけれど」

彼女にはスカウト技能がないので見つけられずにいたと照れ笑い。実は何人か難民を保護しているので一緒に逃げるつもりでした。

ここに通路が開通したお陰で他にそういう人達がいても逃がせますね。敵がいなければフーギの街の人達も誘導できるんですが。


ソラ「あと、ゾンビ玉を何とかする方法を知りたいの」

アナトラさんが調べたところ、<呼応石>もどきにもぼんやりとした意思が残っていて、肉体と薄く繋がりを持っているそうです。

だから水晶にパッケージされた肉体を傷つけると意思も消える。パッケージされた人にトドメを刺すことになりますけどね。

以前ミスティン姫が誘拐された時の犯行声明にもそんな注意書きがありましたね。かなり後味の悪い解決手段ではあります。


それでもぞんざいズはセラフィナに連絡を取ってこれを伝えます。山を吹き飛ばす決断をした彼女なら何とかするでしょう。

やるとしたら今から《青嵐領》の地下遺跡に入って、パッケージされた人達の肉体を片っ端から攻撃していくことになります。

本当なら死んでいる人達を解放する、と考えることはできますけどなかなか嫌なミッションになるでしょう。


説明はアナトラさんに任せてぞんざいズはその難民の様子を見ます。怯えた様子で固まった人達が20人ほどいました。

内通者を疑って"ディテクト・フェイス"をエアとニゲラがかけることも考えていましたが、流石に多すぎますね。

消費MPは4点なので80点とかですよ。エアだけなら《MP軽減》があるので60点で済みますけどね。


初代パジャリガー「あ、アーメス信者はいないと思うよ。心配しなくていいんじゃないかな」

ジーク「なぜいる!」

ソラ「わぁ、ゴーストなの」

イスミー「成仏するって言ってたじゃねえですかい!」

はい、初代パジャリガーです。ここに同じ顔が3人集まりました、セカンドにとっては憧れの英雄との初対面ですね。

難民達が怯えていたのはアンデッドや魔動機械ではなく彼だったと。まぁ彼もある意味アンデッドなんですけどね(笑)


初代「いや、どうせなら。消えるんじゃなくて"リーンカーネーション"を唱えてからにしようと思ったら、
    呪文かけるべき死体を君たちに預けちゃったことを思い出してさあ」

一同「あほかー!」

ムーテス「重荷がなくなったら、いきなり新しい人生をエンジョイすることを思いついたっすね」

14レベルの神聖魔法ですね。フォーセリアの頃から御馴染みの転生の魔法です。

ただしこちらは死後24時間以内の死体にしか効果はなく、対象は7日以内に生まれ変わることになっています。

転生後の種族と能力値は前世と同じで、魔法の達成値が高いほどに前世の記憶・技能・戦闘特技を取り戻すのが早くなる。

これが達成値25以下だと自然には取り戻せないので気軽にはかけられませんけどね。32以上なら5歳にして覚醒しますが。


ラクシアでは魂は輪廻すべきものなので蘇生は専門外ですが、転生なら神聖魔法の範疇ということですね。

初代「どうせなら、アナトラにもかけてあげるよって提案したら『殺す気か!』と抉りこむように殴られてねえ。
    まあ、そう思うともう少し待たないといけないのか……。
    いや、それはいいんだ。どうせなら、顛末を見届けてからにしようかと思ってね」

しかし魔法の効果からして彼は既に手遅れです。死後24時間ということを考えると時間調整は難しい魔法ですね。

基本的に魂は循環するものであり、待ち合わせはできない。そんな世界のルールを示しているのかもしれない。


ソラ「もしかして、この人、トランク入ってた?」

初代「ああ、アナトラに親切にしてくださったお嬢さん。
    そうそう、あの中には穢れMAXの俺は入れないから。人形と一緒に詰め込まれて大変だった」

トランクを蹴っ飛ばしていたのは夫への突っ込みだったと。結界に入れないというだけで色々不便ですよね。


★パジャリガーの情報

ムーテス「折角出てきたんだし、全力で支援してよ。情報とかない?」

メッシュ「手を抜くと、死体を無事に帰すことが難しくなりますよ

初代「何故そんな、邪悪な台詞をさらっと考え付くかな、キミ達は!」

ジーク「そこを複数形にするな」

実は初代パジャリガーとアナトラさんは神殿の奥のことを知っています。元々ここを攻め落としたのは彼らですから。


例の地底湖の周辺は蛮族達の集落になっていて、湖には祭壇があり、更に地下へ潜る通路がありましたね。

メッシュ「そういえば、地下に降りた記憶がありますな」

エア「それは嘘でしょ」

メッシュ「……はい、覚えていませんでした

その祭壇の地下には幾体かの魔神が封じられていて、アーメスの神体を守っていたのです。


ラグナカングはその生き残りだったんでしょう。

ソラ「なるほど、次はゲルダム……」

GM「ちがーう!」

エア「今、なんでマスターが、即座に反応したと思う?それは勿論、敵候補に入れていて、詳しく調べたからよ」

ゲルダムといえばロードス島の「魔神戦争」において、ベルドと一騎打ちをしたことで知られる魔神将です。

ラクシアにおいては19レベルの魔神であり、「滅びのサーペント」なんかにも出演していますね。

イブリバウゼンデラマギドスといった他の魔神将を差し置いてラクシアでも登場してくれました。

とはいえフォーセリアではエルダードラゴン(ラクシアでは25レベル)と同格だったのに格下になってしまいましたが。


では初代が挑んだ時はどうだったのか。

初代「何故、俺がアレンを無力化し、他に障害がなかったにも
    かかわらず小神アーメスに戦いを挑まなかったか、わかるだろうか?」

イスミー「本体とも戦おうとしたんでやすか!」

ジーク「何でだ?ていうか、怖いもの知らずだなお前」

挑もうにも挑めなかったのです。アーメス本体に挑むには特殊な手順を踏む必要がありました。

地下道はやがて二つに分かれ、それぞれに門番がいます。その2体の門番を同時に倒すのが先に進む条件だったのです。

ゲーム的には「同じラウンドで倒す」ということです。それによって神への階が現れてアーメス本体に近づけると。


ただし倒し損ねるとどちらの門番もHP・MP全回復して復活という鬼畜仕様でした。

当時のパーティにはパジャリガーしか前衛がいなかったので同時に倒すことは諦めたという経緯です。

しかし前衛過多なぞんざいズなら何とかなるかもしれない。だからってゲルダムは勘弁な!


ここで初代のプリースト技能が14レベルもあることを知ったソラは一つ提案をします。

ソラ「あたしたち頑張ってくるの、超頑張ってくるの。というわけで……
    孫神の無事のために"グレイス・オブ・ルミエル"をかけて欲しいの!」

一同「おおおー!」

イスミー&ムーテス「〔変・転〕!〔変・転〕!!」

メッシュ「〔剣の加護/運命変転〕欲しいですか、そんなに。……欲しいですね、超」

これはライフォスの10レベル特殊神聖魔法で、任意の種類の〔剣の加護〕を与えるというものです。

ただし既に持っているものを重複して与えることはできないし、レベルが高くても強化はされず1レベルの効果となる。


消費MP10点を8人にかけるのはかなり重いのですが、初代は頑張ってかけてくれました。

これによりジークとニゲラは〔剣の加護/風の翼〕を、それ以外の人達は〔剣の加護/運命変転〕をもらいました。

〔優しき水〕や〔炎身〕は使用場面が限られますからね。持続時間は1時間しかないので速攻で攻め込まないといけませんね。


エア「パジャりんも〔運命変転〕でいいのよね」

ムーテス「あいつ最近、調子に乗ってるから外したいんだよねー」

パジャリガー「くくく、俺様がもっとも英雄らしいからな、<首切り刀>の威力を見よ!
        オリジナルに加護をもらうなど、望外の喜びだー!

メッシュ「平和になったら、整形とかしましょうかねえ、もう……」

前回に引き続きパジャリガー・セカンドのロールプレイはエアの中の人がやっています。

本当にはっちゃけていて楽しそうです。ていうかロールプレイとは思えないほど活き活きしてるんですけど(笑)


★決戦、ぞんざい勇者団!

ルーフェリア神殿の聖堂は破壊され、生物の気配はない有様でした。

ただし地下より深い場所には魔法的な防御が敷かれているのか"ライフセンサー"も効きません。

地底湖の祭壇は真っ白に光り輝いていて、これが山を突き抜けてそそり立つ光となっていました。


そこには以前仲良くなったカマウェトの姿がありましたが、1匹は大怪我を負っていました。

ムーテス「あああ、可哀想に!」

カマウェト「あのな。前にここに住んでた蛮族の男が来て『敵に施しを受ける、意地汚い動物め』って、攻撃されたー」

アレンはルーちゃんを連れて更に奥へ向かったそうです。カマウェトにキュアして後を追います。


やがて初代パジャリガーの情報通りに道は2つに分かれ、いつものようにメッシュが偵察です。

フェイやオクタンに偵察させることもできましたが、万が一攻撃されるといきなり犠牲者が出るので。

ジーク「お前こそ、また首飛ばすなよ。メッシュ」

メッシュ「また不吉なことを」

ジーク「俺としては、メッシュは元気なときにはいて欲しいから、あと30年は動け」

メッシュ「あと30年というと、普通の耐用年数よりも短いんですが」

ジーク「あ、俺、いつか神になるから、もっとずっと動いていてもらわないとな
     大事にしよう。メンテナンスメンテナンス(よしよし)」

メッシュ「ぶわわっ(感涙)。なんでこんなところでデレ期に入ってるんですか!フラグですか!」

2つの通路の先はそれぞれ円形の大きな部屋になっていて、両者は底が見えない穴によって遮られています。

空さえ飛べればお互いに行き来はできるし、そうでなくても視界は通るし魔法も通るという構造です。


その部屋の片方にはダンテのようなPCデータのダークトロールオクタンのボディがいました。

ニゲラ「……ですよねー、あんなの置いていったら使われますよねー……」

しかもダークトロールはファイター/プリースト12、スカウト7、エンハンサー4の猛者です。

先手取られると《ファストアクション》が決まるし、HP100点の防護点12という鉄壁っぷり。

この場合の門番はダークトロールの方なのでオクタンまでは同時に倒さなくていいとはいえ厄介な。


そしてもう片方の部屋には作業着姿のアレンです。麦藁帽子を被ったその姿は相変わらず威厳がないけど。

メッシュ「……い、いやちょっと落ち着け、私。これは……もしかすると」

ここでさっきの初代の情報が活きてきます。ここは魔神によって守られていると。

プレイヤー知識で嫌な予感を感じつつ、ソラは指輪まで割って正体を見抜きます。ドッペルゲンガーでした。


ドッペルゲンガーは15レベルの魔神です。身長3mの真っ黒な体に真一文字に赤く裂けた口を持つ上位魔神です。

上半身(コア)、下半身のニ部位です。上半身は真語魔法15レベルと《魔法適性》、下半身は《攻撃障害=+4・なし》。

その最大の特徴は観察した対象に《変身》すること。一目見ただけでも所持品を含めた姿をコピーすることができます。

1分観察すると口調や仕草までコピーして親しい人でも見抜けなくなり、1時間観察で完璧にコピーすることができます。

観察して変身した対象の能力や記憶はもちろん、所持する技能や魔法まで全て使えるようになってしまうのです。


ロードス島の「魔神戦争」では武力とは別の形で人々を恐怖に陥れた魔神がラクシアにも現れましたね。

今回のドッペルはアレンを完全にコピーしているので操霊魔法と神聖魔法まで使えてしまうのです。

もし「ウィザーズトゥーム」を導入していたら深智魔法まで使われていましたね。プレイヤー的にもGM的にもしんどい。


イスミー「オクタンは、こうしてちっちゃくなっても、おいらの傍にいやすし。
      最悪折角修理してもらって申し訳ねえですが、壊れちまってもいいと思いやす
      もしかしたら、そのうち新しいボディを探すのもいいかも知れやせんが、
      ちっちぇえと、人様に迷惑をかけることはねえし、ずっと一緒にいられるんで」

いっそそっちの方がオクタンとしても幸せかもしれない。元のボディは今の御主人と一緒にいるには過ぎた力です。

なんだかシフェナよりもミニやオクタンの方が本命っぽくなってきましたね。一体このウサギは何処へ辿り着くんだろうか。


1〜3ラウンド目

先制は取りましたが部屋には入らず支援を行います。相手は部屋に入らない限り動かないという推測ですが、これは大正解でした。

特にドッペルの方は契約に縛られているのでアーメスが嫌いであり、余ほどのことがない限り神聖魔法は使わない設定です。


敵の姿を視界に納めながらニゲラは"ヴォーパルウェポン"を前衛に、エアは"ウォーター・シェル"をミニを含めた全員にかけます。

イスミーはクリポン武器を量産し、ソラは"マジシャン"で自分とイスミーに《魔法収束》《魔法制御》を付与していきます。

最後にエアが全員にカンタマをかけ、前衛達は通常移動で部屋に入る。ムーテスは<アンチマジックポーション>なども服用済み。


このラウンドでは敵はこちらに反応しながらも特に動きません。

ソラ「……全部幻だったらどうしよう。「真偽判定」しなかったんだけど」

一同「嫌な疑いを持つなー!」

ニゲラ「しかも、かなりMPもアイテムも消費したのにー!精神的ダメージでかいですよぅ」

そういうことはありませんでしたが、それはそれで恐ろしい罠ですね。


4ラウンド目

いよいよ長い長い最終戦闘の始まりです。まずミニに騎乗したイスミーがドッペルの視界を遮るように"スモーク・ボム"。

イスミー「(ころころ)ふぉおおおお!(愕然)」

一同「1ゾロ!」

思いっきり幸先の悪い開戦になりましたが、"グレイス・オブ・ルミエル"の〔剣の加護/運命変転〕でひっくり返します。


これで6ゾロの煙幕が張られるわけですね。

ソラ「すごい、災い転じて副と成したの。こちらの意思がない限り、絶対に解けない"スモーク・ボム"!」

実は効果時間が「一瞬/○秒」の魔法は元々術者の意思では解除できません。ディスペルなどは有効ですが。

しかしこれで3ラウンドの間はドッペルから視認されずにダークトロールとオクタンを攻撃できます。

まずダークトロールを瀕死の状態までボコり、それからドッペルもボコって同時に倒すという戦略です。


続いてイスミーはミニにブレスを吐かせますが、1ゾロを2回も振る面白ウサギ

イスミー「うわーん!おいら今日だけで4回も1ゾロでやすよー!最終話でこれでやすかー!」

GM「あのね。私は一応、無駄に殺しにかかるつもりはないですけれど、死にに来る場合は止めようがないんですよ?」

某"至高神の猛女"とかも自分で振った出目で死にましたからね。いかな"ダイス母神の愛娘"でも他人の出目はどうしようもない。

いや本来自分の出目だってどうしようもないんですけどね。1ゾロ・6ゾロ・クリティカルある限りSWに事故はつきもの。


姉妹は通常移動し、前衛達がオクタンの脚を一通り攻撃しておきます。まずはオクタンから沈めるつもりらしい。

ここで敵の手番に移る前に、ぞんざいズは部屋と部屋の境にある深い淵の斜め上方に途中までで途切れた階段を確認します。

その先には奇妙に光る透明な壁で遮られた空中神殿があり、そこから立ち上る光の中にルーちゃんの姿がありました。


ジーク「ルー!」

エア「ルーさま!」

イスミー「ぼわん、6ゾロスモーク」

一同(大爆笑)

メッシュ「はぁあ!見えない!」

なんという台無しウサギ。もはやう詐欺。最終回にして何を色々台無しにしてくれちゃってるんですか(笑)

まぁ部屋に入る時に一瞬見えたでしょう。ルーちゃんのすぐ横には神官服に身を包んだアレンがいました。

今更そんな格好されてもむしろ違和感しかない哀しいラスボスですけどね。最早作業着姿がデフォです。


そして敵のダークトロールの行動です。

ダークトロール「我が神の教えの尊さを知りに来たみたいだけど、死んじゃえばいいよ」←投げやり

ここで彼は初公開のアーメスの特殊神聖魔法を使用します。今回使うのは7レベルの"リフューズ・エネミィ"です。

対象に威力40の衝撃属性の物理ダメージを与え、抵抗できないとそれに加えて10m強制移動させるというものです。

乱戦エリアから強制的に離脱させられたり、制限移動では魔法が届かない位置まで吹っ飛ばされたりするわけですね。

「ウィザーズトゥーム」にはこれ以外の今回の戦闘では使われない特殊神聖魔法のデータも収録されています。


これに狙われたイスミーですが。

イスミー「(ころころ)はぁう!また1ゾロ!」

一同「こらぁ!」

イスミー「ダメージを受けつつ、騎獣から落っこちやした。騎乗状態解除でやす」

データ上は騎乗状態まで解除されるかは明記されていませんが、効果を受けた対象だけ吹っ飛ばされるならそうでしょうね。


これで5度目の1ゾロですが、彼の不幸はまだ終わっていない。

イスミー「ともかく。受身をして……(ころころ)うわぁああ!(さらに1ゾロ)」

メッシュ「まずい。もう神が、うさぎに死ねと言っていますよこれは

ニゲラ「これ、全員に数を拡大して撃ったら、ドラゴンボールみたいな戦いになりますよねー」

どうやら吹っ飛ばされたことによる落下ダメージなどはない様子。最初の衝撃属性のダメージに含まれてるのかも。

その後オクタンのボディは銃によって攻撃し、ドッペルはディスペルで煙幕の解除を試みるも失敗。


GM「いっけー!(出目11)……残念」

イスミー「やめてえー!無駄にどきどきさせるの、やめてくだせぇー!

それはこっちのセリフだウサギ(笑)


5ラウンド目

エアは銃で撃たれた自分とイスミーを軽く癒し、ソラはできるだけ敵を巻き込んで"ライトニング"です。

この攻撃で脚が2本落ち、前衛は程よくダークトロールが弱ってきたのでやはり脚を攻撃したりと調整に余念がない。

本来強敵のテンペストオクタドゥームも今やぞんざいズの敵ではない。敵ではないけど部位が多いだけに時間はかかる。


そして敵の行動ですが、ドッペルは賢いのでこちらの妨害をしようと"ディメンション・ソード"です。

煙幕で見えないのでダークトロールも含めて1/2の確率で当たる無差別攻撃ですね。

ところがこれで前衛は全員巻き込まれた上に抵抗失敗。確率を無視してなんという大漁、爆釣にも程がある。

威力60+21点のダメージですね。本編では28とありますがそれは《行使判定》の際に使用する固定値です。

これでムーテスなんて何度も回って48点とか食らってましたよ。半分以上持っていかれてるじゃないですか。


6ラウンド目

エアはその傷をほぼ全快に癒し、イスミーとソラのダブル攻撃魔法でオクタンボディは撃沈!

この際イスミーは制御つきの"グレネード"を、ソラは初公開の攻撃魔法"サンダーボルト"を使用しました。

これは11レベルの真語魔法で、対象に威力50の雷属性の魔法ダメージを与えるというものです。

対個人用の攻撃魔法としては同じ真語魔法の"エネルギー・ジャベリン"以上の威力を誇ります。


一方ダークトロールは《マルチアクション》で"フォースイクスプロージョン"しつつニゲラに攻撃するも外れ。

ドッペルはまたも"ディメンション・ソード"です。今度はジーク以外の前衛に当たり、何なの今回の戦闘は(苦笑)


あとこのラウンドで煙幕も晴れました。

エア「ルーさまー!と、叫んで回復魔法を中止して駆け寄ります!

前衛ズ「アホかー!!」

ソラ「そのお姉ちゃんに乱戦宣言」

エア「うそうそ、ちゃんと回復しますって」

既に度重なる被弾でジーク以外はHPがイエローゾーンに突入。パジャリガーなんて<消魔の守護石>を使って堪えています。


7ラウンド目

このラウンドにソラはダークトロールへ"スリープ"をかけます。

ソラ「(ころころ)ええい、28−!!」

GM「まだ目はあるんですけどね……(ころころ)あ、だめ、ダートロ寝た

一同「いよっしゃぁあー!!(ガッツポーズ)」

こうして思いがけず片方の部屋を制圧してしまいました。あとは好きな時に袋叩きにして倒せばいい。


乱戦エリアが消滅したので前衛達は淵を越えてドッペルゲンガーの部屋へ向かいます。

淵の幅は30mほどありますが、メッシュは《冒険者判定》の幅跳びで渡るつもりのようです。

メッシュ「問題ありませんな、なぜなら私は<ジャンプブーツ>着用だからです!通常の跳躍距離の5倍が可能!

<ジャンプブーツ>の効果は判定に+4入るというだけで、そんなタレントみたいな効果はないはず。

しかも通常の幅跳びは3mまでは目標値10で、以降1m毎に達成値に−2のペナルティが入るという仕様です。

よって30m跳躍しようとすると−54ものペナルティが入るわけで、判定自体不可にしていいレベルですね。


ソラ「あ、いざとなれば、安全に300メートル飛ばせるの

ニゲラ「そんなの使うぐらいなら、ソーサラーらしく魔法使ってくださぁい」

ソラ「通の心意気のわからない子なの、ニゲラって(ぶー)」

それでも目標値10に特にペナルティが入っていないのか普通に跳躍。男塾に出てきそうな跳躍力です(笑)

その際イスミーが持続時間が切れたクリポン武器を新しく作って渡し、前衛達は〔剣の加護/風の翼〕で飛んでいきます。

パジャリガーは残ってダークトロールとドッペルゲンガーの遮蔽になります。魔法で起こしたりできないようにね。

ドッペルはムーテスに"スタン・クラウド"を使うも奇跡的に抵抗。"ブリンク"で攻撃を一度無駄にさせるのも忘れない。


8ラウンド目

今回のニゲラは"ディスペルニードル"をSSランクで使用します。SSカードだと確実に相手の特殊能力を打ち消す!

ニゲラ「「変身」の特殊能力を、打ち消すんです。ドッペルゲンガーの素の姿を暴きますぅ!

GM「じゃあ、みゅんっ、と全身真っ黒のつるんとした顔のない魔神になりました」

メッシュ「その緊張感のない擬音はどうかと思います」

個人的には漫画「至高神の聖女」みたいな解除が好きですね。全身の皮が剥がれて筋繊維が剥き出しになるみたいな。

これでドッペルは操霊魔法、神聖魔法、あと《淫夢》なんかも使えなくなりました。今回はブレイブとか使ってる余裕はない。


今回はメッシュがパラミスを使い、タゲサ&《牽制攻撃》で《両手利き》のペナルティを相殺しつつ3回攻撃。

ジークは<イスカイアの魔動鎧>の命中力上昇目当てに《マルチアクション》。"カオスショット"で少ないながらも確実に削る。

一方ドッペルは"スティール・マインド"を拡大してかけてこっちのMPを大幅に吸います。自身の回復以上にリソース削りが痛い。

何しろドッペルの魔力は21もありますからね。メッシュなんて23点も持っていかれてピッタリ0になる始末です。


GM「本当は、そのあと"マナ・シール"をかけてみたかった……」

エア「いじめかっこわるい!」

GM「殴るのはどうしようかなあ。手が届くのは、厚い(ジーク)硬い(ムーテス)うざい(メッシュ)の三人かー」

メッシュ「私はただ、殴り返すだけじゃないですか」

ジーク「三バカみたいに言われたぞ」

ニゲラ「何で嬉しそうなんですかぁ」

結局ジークを殴って27点とか入れてきます。このレベルになると素の攻撃で2D+18点とか平気で言ってきますからね。


9ラウンド目

あとはドッペル相手に正面から殴り合いです。ジークはMPが少ない中<魔晶石>を潰しつつ頑張ります。

《マルチアクション》の命中力上昇がないと当たらない、かといって魔法が使えるほどMPに余裕もないという。

ジーク「だだっこ"カオスショット"!(ころころ)うー、達成値14!」

GM「(ころころ)……あ」

ニゲラ「1ゾロー!(嬉)」

GM「あれー?なんだかジークの魔法にはよく抵抗で1ゾロしてる気がする」

メッシュ「これぞ、未来の英雄補正でございますよ!」

この時のドッペルの下半身のHPは14点で"カオスショット"で12点ほど削って瀕死に追い込みます。

〔剣の加護/運命変転〕で落とすこともできましたが先を見越して自重。次の近接攻撃ははずれました。


そしてドッペルは脅威の真語魔法"ライトニング・バインド"でムーテスとメッシュを捕らえます。

これは13レベルの真語魔法で対象を電撃の網で絡め取り、移動を封じて行動判定に−2のペナルティを入れます。

しかも捕らえられている限り毎ラウンド威力20で魔法ダメージを食らい続け、抵抗しても1ラウンドは効く。

フォーセリアの頃も驚異的でしたが、こっちもなかなか凶悪ですね。「with BRAVE」で猛威を振るった魔法でもある。


魔力21もあると毎ラウンド洒落にならないダメージになるし、その上持続時間6ラウンドは本当に痛い。

6レベルの魔動機術"レジスト・ボム"で緩和することはできますけどね。移動もできるようになる。

これは指定した属性のダメージを−4点する上に、その属性から受ける不利な効果まで打ち消すのですから。


一応ニゲラが最初に"フィールド・レジスト"を入れていたのですが、それでも素のHPが低いメッシュは本当に危ない。

ムーテスは自分でお薬を飲み続けて耐えられないこともないけど。メッシュは自力の回復が威力0のあれしかないし。


10ラウンド目

イスミーはエアと"タンデム"してミニに乗って救出に向かえるようにし、ドッペルの下半身を撃つもはずれます。

結局下半身はジークの《マルチアクション》用の"カオスショット"で落ち、ついに上半身を攻められるようになります。

メッシュは電撃の拘束を受けながらも《牙折り》を使い、ムーテスも攻撃しながら<アンチマジックポーション>で耐えます。

ソラは"アポート"でフェイを手元に召喚しておきます。上位の鳥使い魔のMPは18点、大粒の<魔晶石>に匹敵します。


ドッペルは"ブリザード"で広範囲を痛めつけ、《マルチアクション》でメッシュをぶん殴ります。

メッシュ「ぐは!前半こちらに攻撃が来ないと思ったら、ここでラッシュが……」

ジーク「また死ぬなメッシュー!!

メッシュ「または嫌でございますー!」

《牙折り》を入れておいたお陰でHP2点でぎりぎり踏み止まりました。ムーテスが《かばう》を忘れていたと陳謝。

まだ1ラウンドしか"ライトニング・バインド"を受けていないのにこの有様。あと5ラウンド、耐えられるのか。


11ラウンド目

エアは"キュア・インジャリー"で回してメッシュのHPを48点とか回復させます。恒常的に出る数字ではないけど凄い。

その後ムーテスとニゲラはドッペルのHPを気にしながらも上半身を殴り続け、残りHP17点程にまで追いつめました。


これならイケる、自然と皆の士気も上がったかと思ったら、ドッペルが初めて口を開きます。

ドッペル「好きにするといいさ。いざとなれば、自分に何かを撃ち込もうかねぇ

黒い顔に赤い口が半月状に開いて、まさかの自害宣言にぞんざいズは一気に固まりました。

魔神はずる賢いものです。自害して完全回復するぐらいの判断はできるでしょうが、流石にこれは計算外でした。

このラウンドにダークトロールを倒してドッペルが生き残ったら自害なんてしないし、そうでなければ自害の可能性はある。

しかしこれがただのブラフである可能性もあるわけでして。たった一言で揺さぶりをかける、魔神らしい見事な口撃ですね。


一番いいのはこのラウンドにダークトロールもドッペルゲンガーも倒してしまうということですね。

現在手番が残っているのはエア、ムーテス、ニゲラ以外の5人です。イスミーはミニに乗っているのでどちらにも行ける。

ダークトロール近辺にはソラとパジャリガーがいて、ドッペル近辺にはジークとムーテスがいるという状況です。

この絶妙のシチュエーションで見事に両方を倒せれば空中神殿への階が出るし、下手をしたら完全回復した相手と再戦。


それでもぞんざいズは両方とも倒しにかかります。一番手はメッシュです。

ジーク「いけ、メッシュ。悪いことは考えるなよ、やれることをやれ」

メッシュ「ジーク様。……御意に御座います!

ソラ「ぞんざい勇者団は前のめりなの!

ここで使用したのは"インスタントウェポン"SSランクです。ドッペルの回避力に1点負けている状況で勝負。


メッシュ「(ころころ)まずは"インスタントウェポン"使用……くぅ、期待値!」

GM「今回入ってる"パラミス"はAですよね?(ころころ)あ。6……当たった」

メッシュ「きたきたきたーッ!!(ころころ)よぉおおっし!
      その目に焼き付けるがいいSSカードの威力!札束で顔叩いてやりますよ、59点ー!!

いかに威力80で色々修正が入っているといっても普通の攻撃でこんな数値は出ないでしょうから、多分回った。

フェルディナント伯爵とかは色々強化すると回さずに70点ぐらい叩き出したりしますけど、あれは別格です。


これでドッペルゲンガー撃破!。続いてダークトロールは早めにお休みしたのでまだ46点ほど残っている。

エア「待って、そうなると……次の行動は、先に繋げるためにもよく考えないと……」

ソラ「お姉ちゃん、あたしに行かせて!こいつ寝てるから、鴨なの!《マルチアクション》!!」

いくら防護点12といっても、ソラは追加ダメージだけで13点とかありますしね。実際やってみると6点ほど抜けました。

続いて本命の"サンダー・ボルト"が達成値27で抵抗を破って27点。これで3人を残して残りHP13点ですね。

実はジークなんかも<カトレアの花冠>をかぶっているので、"カオスブラスト"で40mとか届くので攻撃可能ではある。


今のぞんざいズなら一撃で倒せて、残り2人がこのラウンド中に空中神殿へ乗り込める可能性が高い。

ムーテス「あと一撃圏内っす!」

パジャリガー「つまり、俺様の出番か―――ッ!!

一同「またお前かー!

ジーク「マテ!お前にまた首を取らせるぐらいなら、イスミーに行かせる!」

パジャリガー「えええー(不満そう)」

ということでイスミーが撃ちますが、ダークトロールも流石のもので指輪を割って同値回避。これがPCデータの恐ろしさ。


ソラ「いいよ!イスミー、ミニに「ブレス」吐かせるの!」

イスミー「乱戦に入ってやすから、巻き込みやすぜ!」

ソラ「いいの!耐える!

これが26点を叩き出し、ダークトロールは起き上がろうとしたところでこんがり焼けて動かなくなりました。


これで両方の部屋の番人が倒れ、部屋の間の淵から空中神殿へ向けて30mほどの光の階が出現しました。

神殿を覆っていた光の壁は消えて乗り込めるようになりましたが、神殿の上空にはアーメス本体の姿がありました。

それは胎児のような姿をして、ある種の"コール・ゴッド"らしくじりじりとルーちゃんへ向けて降りてきています。


"コール・ゴッド"のルールに従ってあと6ラウンドほどで復活するものと思われます。

ジーク「時間がないじゃないか!まだ戦闘継続でいいか?俺、動いてないんだよ、一気に階段を上がるぞ!」

ただしムーテスとメッシュは動けないので、ソラがディスペルで"ライトニング・バインド"の解除を試みます。

ソラは、<ソーサラースタッフ>装備かつ〔異貌〕で魔力18、指輪を割ることも想定すると魔力20相当です。

"ライトニング・バインド"は達成値27でかかったので出目8必要。ただしソラにはまだ〔剣の加護/運命変転〕がある。

よって7さえ振らなければひっくり返して強引に"ライトニング・バインド"を解除することが可能なのです。


3人は解除に残り、それ以外の5人はルーちゃんの救出に専念するわけです。

ニゲラ「ジークさん、パジャリガーさん、先行してください!すぐに後を追いますぅ!」

パジャリガー「よぉおおっし!行くかぁ!共に、神への階を登る!うむ、お前とはいい好敵手になりそうだぜ!

ジーク「行くぞ!アレンを倒して終わらせる!

メッシュ「……く。あいつはやはりJバジリスクの遺跡に埋めてくるべきだった……」

パジャリガーにトドメを刺させなかった結果、更にヒーローらしい役割を与えてしまうというこのオチ。

一応エア、ニゲラ、イスミー&ミニも迎えるけど、このラウンドの行動を終えてしまったので見送らざるを得ない。


★空中神殿の最後の戦い

空中神殿の門番を倒し階を出現させたぞんざいズは、ジークとパジャリガーを先行させて戦闘を継続します。

ジーク「先に行くぞ、みんな!」

ムーテス「すぐに追いつく予定っすよ」

エア「ルー様を頼んだんだからねっ!」

ソラ「あたし、フェイをアレンにぶつけてやりたいの!」

でもその前にアレンの《魔物知識判定》です。ところが達成値17でもよく分かりませんでした。

相変わらず正体不明のアレンはこちらの様子に気付いていますが、儀式に集中していて特に何もしてきません。


12ラウンド目

近接攻撃可能な距離に近づいたのでまずはジークからアレンに切りかかります。達成値は25とかなり高くて命中します。

ジーク「よし!(ころころ)1ゾロ!」

一同「こらぁあー!」

イスミー「ヒーロー失格でやすよ!」

ジーク「ふふ、ここで回すために〔運命変転〕を温存してたんだよ!6ゾロ!」

正確には出目+2されるので14相当だけどそうはならない。威力表においても12が上限なんですよね。

また仮に出目+2された結果12になったとしても自動的成功扱いにはなりません。元が1ゾロの時のみ6ゾロ扱いです。


しかもこのラウンドまではクリポンで作った<フランベルジュ>が使えるので素通しですよ。

ジーク「これでも失格か、イスミー!」

イスミー「すいやせん主席合格でやす!」

しかもその後もクリティカルが続き、出目12、11、10と3回転の特大ホームランをたたき出します。


ジーク「(ころころ)止まった。合計56点、魔法ダメージだ!!」

このタイミングでとっても嬉しい大ダメージですが、この一撃で倒せるほど甘い相手ではありません。むしろ……。

ジーク「(ハッとして)……またパジャリガーに持っていかれる!

一同(大爆笑)

ジーク「せめて、他に攻撃できるやつはいないのか」

ソラ「お兄さん、持ってるんだか持ってないんだか」

早めに倒せそうなのは結構ですが、程良く弱った所でむしろパジャリガーに手柄を譲ってしまう可能性が出てきました。


そして色々問題のこの男の出番です。その空気の読めないNPC無双はかつてのスレインを彷彿とさせます。

一つ違うのはスレインはGMの思惑通りに活躍したのに対し、パジャリガーはGMもプレイヤーも予想外に爆発する点。

パジャリガー「行くぜ行くぜ俺は行くぜ!ぱりーん!9点の<魔晶石>割って、練技全部入れる

メッシュ「本気出すな!空気を読めー!」

ジーク「くそぉー!腹が立つ!」

パジャリガー「俺様はついに、神を救う英雄になるのだー!」

飛び交うブーイング、不思議とこいつならやるという期待、色んなものを発散しつつ彼は攻撃しました。

しかも達成値29というとんでもない数値で普通に命中。本当になんなんだこいつの主役補正は(苦笑)


パジャリガー「ダメージ!(ころころ)……変転!!クリティカル!ありがとうオリジナル!

一同「やめろ―――ッ!」

パジャリガー「(ころころ)いよーっし!さらにクリティカル!!
        威力40の出目11の、さらに威力50の12!さらに(ころころ)」

イスミー「もうやめるでやすー!

パジャリガー「さらに威力60の出目10!そしてさらに70の……8!くそう、止まったか」

ジーク「お前なあ、拗ねるぞ!お前一人で殴ってても倒れたんじゃないか?」

順に12点、15点、15点、16点で、威力表だけで58点とか叩き出しています。恐るべし<首切り刀>。

11レベルの筋力+3で14、魔力+1の武器で+1、《武器習熟U》で+3、"マッスルベアー"で+2ですね。


つまり追加ダメージだけで20点もあるわけで、それに58点を足すと……。

パジャリガー「ダメージ総計、78点――ッ!!

GM「倒れた

一同「えええええええ――っ(大ブーイング)」

メッシュ「それはないでしょう!」

ニゲラ「本当に空気を読まない人ですー!」

ソラ「ない!これはないわー!」

ラスボスにはお決まりの口上すらできずに倒してしまいました。一気呵成過ぎて小説なんかだと第二形態フラグなんですが……。


13ラウンド目

まぁ倒してしまったものは仕方ない。エア達もダッシュで階段を駆け上がります。

バインド中の2人「ちょっとまだ動けないんですけどー!

メッシュ「あ、私、自分の頭を"ヒーリング・バレット"で射抜きます。そろそろやばい」

ムーテス「みんなが喜んでいるのを尻目に、あと頑張って2ラウンド耐えるっすよ」

ということは既に4回ダメージを受けている。13ラウンドが経過しているということで良さそうです。

色々あったのでソラも2人の拘束を解除するのを忘れている様子。ルーちゃん優先にしてもちょっと酷い(笑)


光が収まりつつある空中神殿でぞんざいズ(2名欠席)はルーちゃんを囲みます。

ルー「……みんな」

ソラ「ルーちゃん無事でよかったの……」

ジーク「……じゃあ、ルーを抱っこしてやろう。もう大丈夫だからな」

しかし彼は気付いてしまいます。髪の毛で見えなかったけど、彼女の額に<エンジェルリング>が嵌っていることを。

そして胸元には嫌と言うほど見てきた<呼応石もどき>がついていたことを……。まさかの真ラスボスの存在に一同戦慄。


14ラウンド目

そんなことが起こっている足元でバインド連盟ことメッシュとムーテスは地味に死に掛けていました。

ムーテス「5ラウンド目っすけど、耐えられるっすか?いざとなれば、薬を飲ませるっすよ?」

メッシュ「そろそろ不味いですね」

エア「ごめん!もう終わったと思ってたのよ!」

「ルールブックU」によると通常他人には使用できないお薬も《ポーションマスター》なら主動作で使えるらしい。

回復役と解除役の姉妹が揃って行ってしまったのが祟ります。仮にあれで戦闘終了でもこのままではまずいんですが。


一方空中神殿では睡眠状態のはずのルーちゃんが<呼応石>もどきの効果で起き上がり、笑います。

ルー?「あと少しだったのにな……」

男性の口調で喋ったかと思うと、髪の毛が黒く染まっていき、背中からは皮膜の翼が生えてきます。


かつてジークが見た悪夢と同じですね。アレンに身体を乗っ取られたのです。

アレン「この自在に神の力の扉を開くことができる娘を使って、
     ルーフェリアではなくアーメスの扉を開こうと思っていたが、意外と強情だ。
     貴様たちを目の前で生贄に捧げることによって、その心を圧し折り、完全に従わせることとしよう

そう言って"リフューズ・エネミィ"でジークを階から突き落とそうとしますが、抵抗して踏み止まります。

余談ですがこの魔法、本編では"レヒューズ・エネミー"となっていますが、「ウィザーズ・トゥーム」で改名されました。


エア「まさか、アレン?自分をあの機械にかけて、眠ってるルー様をのっとろうとしたのね。このロリ!

そんなやり取りをしているとさっき倒したアレンは少し成長した別のインキュバスに変わっていきます。

"ディスガイズ"で影武者を務めていたんですね。まさか連続クリティカルで滅多切りにされるとは思っていなかったでしょうに。


お陰でパジャリガーにラスボスを持っていかれるのは避けられましたが、更に困ったことになりました。

アレン「さあ、この身体を傷つけることができるかな?お前たちに」

ジーク「じゃあ、ぎゅっとしよう(ハグの姿勢)」

ソラ「ノータイム!」

イスミー「かっこいーでやすー」

メッシュ「ジーク様、それでこそ勇者……!(感涙)」

今まで散々女性キャラとのフラグをへし折ってルーちゃんを守ってきたのが報われますね。

これで別の女性キャラとそんな感じになっていたら微妙になっていたけど、これなら納得のカップリングです。


ソラ「あたしも、ルーちゃんに呼びかけるの!ルーちゃん!ルーちゃん!お迎えにきたの!

ジーク「ルー、ここにいるんだろ?……どうだ、アレン、俺に抱きしめられるのはキモイだろう!

エア「後半!もっといいことを言いなさいよ!」

アレン「気持ちが悪い、離せ!」

超兄貴っぽいインキュバスの例があるからちょっと不安だったけど、こいつはノーマルだったらしい(笑)

しかしそんなアホなやり取りの間にもルーちゃんの身体は振るえ、片目からは涙が零れ落ちています。

現在の彼女は眠っている状態ですから、ある種の悪夢にうなされているようなものなのかもしれません。

となると<エンジェルリング>を外して覚醒させるか、<呼応石>もどきを破壊して悪夢を終わらせてあげればいい。


ということで本当の最終決戦の前に《魔物知識判定》で現在の状態を確認します。

ムーテス「じゃあ、今6ラウンド目ってことでいい?こっちは懸命に怪我に耐えてるんだよー」

メッシュ「ちょっと待ってください!「魔物知識」の判定の前に、やらなければならない判定があるのです!」

ジーク「へ?」

メッシュ「「死亡判定」です!」

一同「ちょっとー!!」

正確には《生死判定》ですが、そういえば前のラウンドで既にギリギリでしたね。15ラウンド目(6回目)は無理だったか。

しかし<消魔の守護石>がまだ残っていたのでそれで凌ぎます。これで解除されるから何とか生き延びたようですね。


改めて《魔物知識判定》をしたところ、今度はデータを見抜きました。弱点は見抜けないのではなく、存在しないらしい。

GM「便宜上の名目は「のっとられルー」とつけたんですが……」

エア「ネーミングセンスなさすぎる!」

ソラ「じゃあせめて「パラサイト・アレン」くらいで」

ということでラスボスはパラサイト・アレンに決定。残念ながら詳細な数値等は非公開ですが、大体の能力は説明されています。

これって今までの展開次第ではお蔵入りになっていたんでしょうね。あるいはルーちゃんではなくパジャリガーになっていたか。


パラサイト・アレンの種別は神族です。アレンの魂が<呼応石>もどきに宿り、ルーの体を乗っ取った存在です。

<呼応石>もどき(コア)、ルーのニ部位です。ルーの体からは皮膜の翼が生えて《飛行》状態にあります。

コア部位である石はその小ささによるある種の《攻撃障害》によって守られ、回避に+4の修正が入っています。

また2以内の差で攻撃が外れた場合はルーの体を傷つけることになる。外す時は思いっきり外さないといけない。

石は神聖魔法(アーメス)14レベルと操霊魔法12レベル、ルーは神聖魔法(ルーフェリア)14レベルを行使可能。

ただしルーは抵抗を続けているので戦闘時の行動はある程度ランダムであり、1D6を振ことで決定することになります。

1ならぞんざいズの味方として行動する。2〜3はまごまごして行動不能。4〜6でアレンの意思で動いてしまいます。


ちなみに石のスペックですが、回避力17、防護点16、HP40で刃物によるクリティカルは起こらないらしい。

《攻撃障害》を入れると21相当、パラミスをSランクで入れて相殺しないとなかなか当たりそうにないですね。

刃物でクリティカルしないということは<首切り刀>も回らないということです。一撃で持っていかれはしないでしょう(笑)

そこでジークは剣ではなくメイスに持ち替えておきます。万が一にもルーちゃんに誤爆した時のことを考えると回り難い方がいい。




改めて《先制判定》を行い、戦闘を仕切り直します。既にバインドも解除されているので丁度いいタイミングです。

まだメッシュは階の下にいますが、ニゲラがSSランクの"イニシアティブブースト"を使用したので自動的に先攻です。

ただ倒すだけならそれほど強いわけではないでしょうが、極度に消耗している上に人質を取られた状態では厳しい戦いになるでしょう。


1ラウンド目

メッシュはHP9で立ち上がり、階を駆け上がってパラミスをSランクで使用。主動作で使いましたが抵抗されました。

本当なら《ファストアクション》分の行動があるけど多分パス。ちなみに全ての賦術は通常移動まで使用可能です。

エアはルーちゃんの体に"ホーリー・ブレッシング"をかけて誤爆に備えます。有利な効果なので抵抗せず受け入れてくれました。


ソラは石に"サンダー・ボルト"を叩き込みますが、アレンは<消魔の守護石>を1つ使い潰して可能な限りダメージをカット。

なにしろHPが40点しかありません。抵抗したとしてもソラの魔法を数発食らっただけで壊れてしまいますからね。

パジャリガーは〔HP変換〕を補助動作で使用してMP補充、"リカバリィ"を含む練技を4つ入れて切りかかります。

1発目は命中するも《ファストアクション》分の攻撃は外れ。ニゲラは温存していた〔剣の加護/風の翼〕で飛行します。

そして"ヴォーパルウェポン"SSランクを使用し、ダメージを8点上乗せするというお大尽アタックで石を狙います。


相手も飛行状態とはいえ、パラミスSランクが入った状態で達成値26は充分当たり目はありましたが。

GM「(ころころ)あ、目がいい。1外れ

イスミー「本体に当たりやす!

指輪は嵌めていないのでどうすることもできずルーちゃんに命中。ダメージは賦術の影響もあって31点と高い。

しかしブレッシングが全部剥げて1点抜け、それも防護点で止めてノーダメージです。エアの機転が役に立ちました。


アレン「ナイス判断だ、エルフのプリースト。私は今、ルーフェリアの分身でもあるのだからな」

エア「お前に褒められても嬉しくないのよ!

ジークはルーちゃんを傷つけるのを恐れ、"ウィンドカッター"で6点だけ抜きます。少量なので<消魔の守護石>も使わない。

これは3レベルの妖精魔法で、威力10の風属性魔法ダメージを与えます。もうMPもないのか消費MP3点と省エネですね。

イスミーはアレンが魔法を使えないよう視界を遮る"スモーク・ボム"を使用しますが、相手の感覚は「魔法」なので効果はない。


ムーテスは特に宣言はないけど移動ぐらいはしてると思われます。アレンは8人全員に"リフューズ・エネミィ"の大盤振る舞い。

これがニゲラ以外階から転げ落ちるという大惨事になりました。なんともラスボスっぽい攻撃をしてきますね。

階自体の長さは30mですが、10m吹っ飛ばされて転げ落ちるので滑落と判断し、落下ダメージは15m相当とします。

それでも45点ダメージはかなり痛いものでして、<リトルウィング>を背負っているジークはともかく酷いものでした。


ところがこれが思っていた以上の大惨事になってしまいます。

メッシュ「(ころころ)……あ!」

ジーク「どうした、メッシュ!」

メッシュ「……私、最初の"レフューズ・エネミー"のダメージで、死亡しました

一同「はぁああ!?(驚愕)」

そういえばHP9点とか言ってましたもんね。物理ダメージとはいえ防護点の低いメッシュが食らった時点で危険だったんですよね。

物理ダメージと落下ダメージの2重ダメージは他の人にも猛威を振るい、イスミー、ムーテス、パジャリガーは気絶

死者が出ているから気絶はマシに見えますが、一撃でパーティ半壊というのは尋常ではないプレッシャーです。


ということでメッシュ死亡確認!気絶したイスミーの頬をミニが心配そうに舐め、その周りで動かない人多数という地獄絵図。

メッシュ「しまった、階段の下で援護に徹しておけばよかった……」

ジーク「メッシュー!すまん……治してやれる余裕が全くなかった」

エア「ごめん、本当にごめんなさい、目の前のことにかまけすぎた」

ムーテス「うん、僕ももう一回メッシュに無理やり薬を飲ませておけばよかったっすよ」

20点はあろうかという魔法ダメージに、45点の落下ダメージでは1回の薬では間に合わなかったかもしれませんが。

ああすればよかったと後悔するのも、手遅れだと痛感するのも、現実世界顔負けに目の前のことに集中していたからです。

一気呵成に影武者を倒してしまえば色々頭から飛んでしまうのも無理はないし、ミスはミスでも合点のいくミスではある。


しかしまだ最悪の事態ではない。ここで勝てば2度目の蘇生の可能性だってある。

ジーク「メッシュは、すぐに、生き返らせてやるからな……今度はバトちゃんに交渉して記憶付だ!!

エア「そうね。それくらいの戦功は立ててるわよ、わたしたち!」

ニゲラ「ええ、これからも立てるんですぅ!みんなで!

なんだか死亡フラグっぽいですが、直後のルーちゃんの行動は出目1で彼女の意思で動けるようになりました。


ジーク「ルー!俺たちの声が聞こえるか!みんなが大変なんだ、治してやってくれ!」

必死の呼びかけに応えたかのようなこの出目。ルーちゃんはほぼ無限のMPを活かして全員に"キュア・モータリー"です。

これは13レベルの神聖魔法で威力70でHPを回復させます。威力70+18点なら期待値で32点ほど治ります。

残念ながら<女神のヴェール>を装備していないのでクリティカルしないとはいえ、かなり助かりましたね。


14レベルだから"キュア・モータリー"が精一杯ですけど、もし15レベルだったら"レストレーション"だったでしょうね。

こちらは15レベルの神聖魔法でHP全回復という、フォーセリアでいう"リフレッシュ"的存在の魔法です。

しかも魔法・賦術・特殊能力等の対象が望まずに受けている効果を達成値の比較不要で解除するという、まさに究極の回復魔法です。

魔法生物やアンデッドには効果はないけど神族には効くでしょうから、万が一にもアレンに使われていたらと思うとぞっとしますが。


2ラウンド目

気絶組のHPはプラスになったのでエアが"アウェイクン"で起こして回ります。以後パジャリガーはメッシュが担当します。

ムーテスは起きると同時に<スピードポーション>を服用し、階を駆け上って空中神殿に乗り込みます。

これは6ラウンドの間移動力+5される2000ガメルの品です。通常移動26mのムーテスは31mになって届く。

そして石を狙うも外れますが、ルーちゃんに《かばう》を宣言します。これで5回は攻撃をカットできますね。


直後にニゲラが攻撃してまたルーちゃんに当ててしまい、早速ムーテスのお世話になります。

ムーテス「僕にダメージ頂戴」←カッコイイ!

ニゲラ「ごめんなさぁい。(ころころ)……さらに、ごめんなさぁあい!37点ー!」

ムーテス「大丈夫、大丈夫。薬で回復できる範疇だよ」

とはいえ何発も食らうとエアの回復と合わせてもムーテスが危ない。この状態でもアレンは容赦なくムーテスを攻撃するだろうし。

ちなみにムーテスがルーちゃんに当ててしまった場合は《かばう》はできません。流石に自分で当てて自分でかばうのは不自然か。


ジークは移動力の問題から乱戦を仕掛けるのは諦めて《足さばき》で階を登りつつ、また"ウィンドカッター"です。

射程は30mと低レベル妖精魔法のわりに長いので届くんですね。<カトレアの花冠>と《足さばき》で20m稼げるので10mでもいける。

またもアレンは<消魔の守護石>を使い渋ります。ダメージがこう少量だと限りある<消魔の守護石>を使うのが勿体無いんですね。

かといってHP40点と低いならこれも馬鹿にならないはず。抵抗して6点程度でも2発当たると12点も削られているわけだし。


パジャリガーの攻撃も当たり、アレンは"リフューズ・エネミィ"でムーテス、ニゲラ、ソラを狙います。

ニゲラ「(ころころ)やったー!また6ゾロぉ!(万歳)」

エア「ニゲラすごい!」

ニゲラ「はいー!でも今回ニゲラ、まだ味方にしかダメージ与えてないんですー

ジーク&エア「ダメだろ、それ!」

ムーテスは抵抗こそできないものの〔剣の加護/風の翼〕で転落は阻止します。


ところがまたもこれが大惨事に繋がります。

ソラ「(ころころ)あ!クリティカルしちゃったの」

エア「ソラ!」

ソラ「(ころころ)あう……ッ、また回った……!」

イスミー「嬢ちゃん!」

ソラ「(ころころ)うそ……!」

まさかの3回転でダメージ総計68点!HP−30点で《生死判定》も絶望的な状態になりました。


〔剣の加護/運命変転〕はあるとはいえ、それでも1ゾロか6ゾロのみ(5.56%)という状況です。

ソラ「ルーちゃん!って叫びながら生死判定。(ころころ)ああぁう!惜しい(出目11)」

エア「ソラァアア!!(泣)

アレン「私に敵対する者はそうなる。神罰だ」

ということでソラ死亡確認!まさかの死者2人目ですよ、一度の戦闘でこんなに死ぬのは珍しい。

ルーちゃんはアレンの意志で動いて自分に"ブレス"。ただしHP6点、<消魔の守護石>残り1つで崖っぷちです。


3ラウンド目

エアは生き残っている仲間に"ファナティシズム"です。どうせ相手の近接攻撃はたかが知れているので当てるのを優先。

エア「ただし、残りMP2!これ以上回復魔法は飛ばない!<魔晶石>も尽きたの!

崖っぷちはこちらも同じ、このままでは順繰りに殺されていって全滅です。多分アレンのMPもほぼ無限でしょうしね。


エア「そしてこっそり自分は<トリートポーション>

ニゲラ「悲壮なのかせこいのかわかりません!」

ジーク「回避なんかいらん!とにかく当てる!」

こちらは<ヒーリングポーション>より強力は薬で、威力30でHPを回復することができる500ガメルの品です。

高レベルプリーストがHPの回復に薬を使うというのはよっぽどですね。まぁこのラウンドは別に魔法を使ったせいもあるけど。

MP2点なら《MP軽減》があるエアなら"キュア・ウーンズ"をあと1回は使えるけど、相手の魔力を考えると焼け石に水。


パジャリガー「お、俺様の視界に、3枚Sランクの緑のカードと、20点の<魔晶石>が」←メッシュの遺品です

エア「あとで剥ぐ

パジャリガー「清々しいほど迷わん女だな!」

ソラ「あたしの死体にも20点の残ってるの、おねえちゃん使ってー!」

20点の<魔晶石>2つならキュア20発分に相当します。ジリ貧だけど多少延命になるかも、あと戦闘後の手当てに使える。


ニゲラはパラミスのSSランクを使用し、<魔晶石>を砕いて練技を使い、達成値30という凄まじい攻撃をお見舞いします。

流石のアレンもそんなものはかわせずに命中、ダメージも30点。これなら残りHP6点の石も粉砕できますが。

GM「あああ、これ受けたらさすがにアレンも、ヤバい。最後の切り札"スケープ・ドール"!

ニゲラ「はい、それがあることは察してましたぁ!ジークさん、よろしくお願いしますー!」

これでダメだったらまたパジャリガーに持っていかれると考えると気合も入るというものです。


するとジークも達成値30を叩き出して命中します。

ジーク「でも、ダメージがなあ……(ころころ)22点!」

GM「えと、防護点が16で……あ」

イスミー「さっき、残り6点って言いやしたね!言いやしたよね!?」

そう、この一撃でアレンの魂を宿した<呼応石>もどきは砕け散った。光の柱は砕け、石は塵となって消えていきます。


興味深いことにそこには彼が抱いていたルーフェリアへの嫉妬が感じられたそうです。元は似たような環境で生まれた神様です。

それなのにルーフェリアは今も崇められて多くの人に大切にされているのに、自分は力も住処も失ってしまったのです。

神の分体であることに対する誇りが強かったのか、放逐されてから性格も歪み、ルーちゃんやリアとは決定的に違ってしまった。

信仰を失った神は滅びるのみ。そんなこの世界における厳しい現実に最も強く打ちのめされた神様なのかもしれません。

人間なら居場所を失っても別の生き方を模索できるかもしれないけど、神様は神様としてしか生きられないんですね。


そんな彼だから以前のような閉じられた世界という楽園を復興させることを夢見ていたのです。

エア「ルーフェリアは、ルーフェリア様だけがおつくりになった幸福な楽園じゃないのよ。
    みんなが支えていて、きついことも哀しいこともあったりして、でも大事な場所なの

多くの人の祈りが無ければ存在できないのが神様なのに、歪んだ形で祈りを集めた時点で結果は見えていたのかもしれない。


なによりルーフェリアにはこんなにも頼もしい"新米女神の勇者たち"がいる。

ムーテス「風に乗って、周囲に凝り固まった嫌な思念が渦をなして……第三形態?」

一同「それはいやー!」

多少ボケたところがあるのも御愛嬌。こうしてぞんざいズは見事に神の分体を、そして一人の女の子を守りきったのです。


★すべて終わって

砕け散った光の柱は《白峰領》中に舞い落ちました。これに触れるとほんのりと守りたい人のことを思い出したそうです。

この光はルーフェリアへの祈りを収束し増幅したものです、用途がどうであれ守ろうという意思が反映されたのでしょう。

アレンの命令を失ったアンデッドや魔動機械は次々に崩れていき、ルーちゃんも元の姿に戻っていました。

セラフィナの命令で動いたジャスティがパッケージされた人達の水晶を破壊していたお陰で被害の拡大も防げました。


こうして事件は一応の解決を見て、気絶したルーちゃんはジークが抱き止めましたが、犠牲者が2名……。

ジーク「メッシュー!!」

メッシュ「静かに横たわっています」

ソラ「あたしもー」

エア「それは駆け寄るわよ!」

階のお陰で淵への転落は免れたものの、大変痛ましいことになってしまいました。いくら蘇生できても素直に喜べませんね。

蘇生には頭部や脊髄が必要ですから、遺体がちゃんと残っているだけまだマシなのかもしれませんが。


ニゲラ「ジークさんも遠慮なくどうぞー。あ、その間ルー様はニゲラがお預かりしますので、どうぞどうぞ」

ジーク「あ、とられた!いや、そんなことよりも、やっぱり二人が気になる!」

ソラ「地味に、お兄さんがどっちに駆け寄るか気になるんだけど」

実際どうしたのかは不明ですが、何となく順番なんて気にせず両方とも気にかけていそうですけどね。


それからぞんざいズはルーちゃんと2人の遺体と一緒に神殿の外に出ました。アーメス本体はこのままそっとしておくつもり。

時刻はまだ夜ですが朝陽の気配が漂い、フーギの街の人々も焼けた街並みの中にポツポツと姿を見せ始めています。

本当はここで全員揃って朝陽を迎えられたらよかったんですが、今はそれどころではないので2人の蘇生に奔走します。


まずメッシュはルーちゃん救出とアレン討伐の功績は絶大なものなので、記憶つきの蘇生が許可されます。

またも"コール・ゴッド"のお世話になったわけですが、これって1回目に死亡した時に消えた記憶はどうなるんですかね?

もし可能ならそっちも取り戻させてあげたいけど、小神の奇跡だとできるかどうか正直微妙な気がするんですよね(苦笑)


本当なら街の復興に使いたいところだと大司教は愚痴をこぼしたりもしましたがね。

メッシュ「あ、蘇生は喜び勇んで受け入れますよ。まだまだジーク様に仕え足りませんからな。
      しかし、記憶をなくしたままだと、これだけ長いキャンペーンで、
      記憶があるのが一巻分だけという、面白いオチになるかと思い、一瞬躊躇しました」

一同「するな!」

イスミー「そこまで、身を切って芸に走らねえでも」

メッシュ「しかしありがたい神の奇跡を、ほとんどドラゴンボール的な使い方しかしてませんな、我々」

むしろドラゴンボール的ではない神の奇跡の使い方の方が珍しい気もしますけどね。普通の手段では解決できないから使うわけで。

本家の方は神様より強い敵がわんさか出てくるので直接敵を倒すのに使えないない点は小神の奇跡に似ていますし。


ソラはアナトラさんの"リザレクション"によって蘇生しましたが、これで穢れは2点。<守りの剣>の影響を受けないギリギリのライン。

これを見ていたルーちゃんは"イレイス・ブランデッド"をかけたそうにしていました。でもソラはこれを断ったのです。

ソラ「……これは、ずっと持ってたいの。これは、あたしが浅はかなことをして、友達を傷つけそうになった戒めだから」

ルー「ちがう、ソラのせいじゃないの!」

ソラ「うん、ルーちゃんはそういってくれると思うけど、あたしが、あたしを許せないだけなの」

穢れの点数を罪の重さだと考えるのなら、ナイトメアとは罪を抱えながら生まれて、それを償う過程にある種族なのかもしれない。

転生を繰り返すことでいつかは禊が終わるのかもしれないけど、それは死ぬことではなく生きる過程で洗われているのかも。

周りが許そうとも自分が許せなければ意味がない。そういう意味ではルーちゃんだって罪の意識を感じていそうです、優しい子ですから。

この辺のことは「新米女神と勇者たち」収録の漫画でフォローされていて、ファンの一人としてとても嬉しかったものです。


それからぞんざいズはフーギの街の復興に尽力しました。パジャリガーは故郷の復興のために旅立っていきました。

ジーク「しばらくは冒険に出ずに、街の立て直しに協力するわ。弟に連絡したら、商売しに来てくれるだろうし」

ムーテス「ちょっと待った!弟君に連絡するのは一ヶ月ほど待って、僕の商売の基礎を整えてからに!

エア「服屋以外に商売するの?」

今回の一件でルーちゃんの意識にも変化が生まれ、「もっとしっかりしなくちゃ」と気合を入れるようになりました。

訳が分からないまま事件の渦中にありましたからね。もっと皆から信頼されるようになろうとしているわけですね。


しかしそれは神様というか、とても人間らしい感情です。エアは色々複雑ながら彼女に聞いてみました。

エア「ルー様は今の自分が嫌だったりしません?普通の人間の女の子になりたくありませんか?

ルー「今の自分が、普通じゃできないことを、たくさんできるのはわかっているから。
    今は時々自分が頼りなくて、情けなくなるけど、そうならない自分になりたい。もっと世界を知って」

普通の女の子になりたいという気持ちがないわけではないようです。でも自分の持って生まれた力を活かそうともしている。

そうして自分が神の分体であることにこだわらず、自分の力を人の為に役立てようという気持ちがアレンに少しでもあればね。


ニゲラ「あ、じゃあ世界を知るには、色々と冒険してみるのが一番ですよぅ

エア「こらぁ!変な誘惑をするな!」

ニゲラ「最初は白峰領から、はじめて、すこしずつー」

実際そうして経験を積むのが成長する上では大切ですけどね。ニゲラだって色々あったおかげで変わりましたし。

今のところは信仰の関係上あまり遠くに行くと眠っちゃうけど、活動範囲をもっと広めるためにも頑張って欲しいものです。


イスミー「ジークの兄貴は、ルーの嬢やが人間になったりすると嬉しいでやすか?」

ジーク「ん?でも、ルーはルーとして神の欠片って形で生まれたんだろ?それをどうこうするよりも、
     俺がどうにか同じ立場になったほうが早くね?ていうか、そういう努力のほうが気が楽」

以前の神宣言も健在ですか。今後どうなるかは分かりませんが、未来でも彼らが幸せに過ごしていてくれることを願います。




そうして復興事業が落ち着いてくるとソラは大司教のところに出頭します。今回の自分の失態の責任を取ろうと。

ルーちゃんは泣いて縋りついたりしました。ソラの行動がなければエアやムーテスの家の誰かが犠牲になっていたでしょう。

しかしそれは結果論に過ぎません。本人が罪の意識から救われたいと裁かれることを望むのなら誰かが受けるべきです。

そのためにエアは大司教、カーム、ガアラと一緒に会議を開きました。半分家族会議っぽいけどソラに必要な罰を考えるために。


エア「でもって、バトエルデン様にも裁可いただいて、裁量を発表します。妹は国外追放

ソラ「……うん、むしろ軽いくらいって思う」

イスミー「国外ってどこので?」

エア「湖国ルーフェリアに決まってるでしょ」

ルーフェリアの住人なんだからルーフェリア国内における裁量しかできないのは当然のことですしね。

つまりカイン・ガラやアイヤールに行くも自由、もちろん《白峰領》にいるのも自由です。表面的な処分ですね。

この国外追放処分は特に期限は定められていませんが、「with BRAVE」にてこれを償う機会が与えられたりします。


ソラ「それを静々しく受け取ってー……フーギの街の露店で、ルーちゃんとおやつ食べてるの

罪を犯しても、罰を受けても、ソラは変わりません。残念なような、安心したような、とにかく丸く収まって良かった。


一方エアの方は正式に《白峰領》の神殿の神殿長に就任。いわゆる高司祭とかそういうポジションですかね。

エア「今回のことで、痛感したわけよ。……ルー様は、わたしがしっかりと守り育てると!(握りこぶし)」

ジーク「それって、エアがルーの母親代わりってことか?父親は?」

ニゲラ「必ずしも父親なんて必要ないものですよー(遠い目)」

エア「そうよねー」

メッシュ「神官ズが、微妙に怖い意気投合を果たしておりますよ」

これは「フェイダン博物誌」のアイヤールの項目でもちゃんと明記されています。ルーちゃんと一緒に頑張っているようです。

思えばルーちゃんと出会ってから色々ありましたが、収まる所に収まったという感じですね。未来の大司教ポジションかも。


この街で生きていくことを決めたのはエアだけではありません。ムーテスはお店を服屋に留まらず商売をするつもりです。

ムーテス「うん、ここで《冒険者の店》を開くのもいいかと思ってさ」

これも「フェイダン博物誌」でフォローされています。"成功者"の二つ名を取った彼は「女神の微笑み亭」という店を開きました。

もちろん服屋や現役の冒険者としての活動も続けていて、メル&ルルに店番を任せて自ら冒険に出ながら頑張っているようです。

皇室とのコネを最大限に利用して新しい店であるにも関わらずロイヤルな依頼が舞い込むこともあり、将来が楽しみですね。


ジーク「いい依頼は優先的に回してくれな」

ムーテス「うん、皇室からも機密的な依頼をいくらでも受けたまわるっすよ!」

今回の事件でぞんざいズはセラフィナからお褒めの言葉と恩賞を受け取ったりしましたし、白粉エルフの言うとおりコネって凄い。


イスミー「あ、皇室といえば……おいら、その際にシフェナの減刑を女帝にお願いしにいくでやすー」

ニゲラ「あ、それはニゲラも気になるの」

そういえば裁かれる人がまだいましたね。ソラのケースと違って死刑が濃厚という絶望的状況ですが。

現在のところはイスミーの嘆願もあって拘留中ですが、いずれは判決が下されるでしょう。流石にこっちは表面的処分では済まない筈。


その前にぞんざいズはアナトラさんにお願いして、パジャリガーの目的通りに"ポゼッション"をかけてもらいます。

ところが魔法は失敗です。魂は呼び出されることはありませんでした。既に魂の循環に乗ってしまったのかもしれません。

イスミー「シフェナ、もう苦しむ必要はないんでさあ。セドリナさんたちは、無理やり戻ってこなくても、
      ちゃんと安らぎを得てるんでやす……だから、ちゃんと罪を償ってくるんでやす」

シフェナ「……うん、そうね。私、何をやってたのかしらね……」

これには放心の後に涙をポロポロとこぼしてしまいました。もう少し早くこうしてあげていれば、やはりアレンは故意にやらなかったのかも。


そして泣き止んだ彼女はイスミーではなく、強く同情してくれたニゲラを見つめて言いました。

シフェナ「あの……いつか、罪を償って出てこられたら、お嬢様と呼ばせていただいていいですか?

イスミー「うわぁああん!そっちでやすかぁああ!」

エア「あら、吹っ切れると、早速仕えたくてしょうがない感が出てる」

メッシュ「まあ、正しいルーンフォークのあり方ですな(うんうん)」←共感しているらしい

2代前の主人を事故で亡くし、先代の主人はロクデナシ。一番頼りになるべき仲間はヘタレウサギと散々でしたがいい主を見つけましたね。

同じルーンフォークとしてメッシュあたりとの絡みもありそうだし、いっそいつかPCに昇格して一緒に冒険してくれないかと期待します。


ニゲラ「(笑顔でOKサイン)戻ってきたら、一緒にいましょうねー

イスミー「ニゲラの嬢ちゃーん!おいらも一緒にー!」

これを受けたニゲラはイスミーとシフェナを従業員として運び屋の仕事を開業するようです。何しろ空を飛べる高レベルライダーですから。

量よりも速さと確実さをモットーとし、フェイダン地方のあちこちを飛び回る運び屋として一目置かれる存在になっていくようです。

もちろん冒険者としても現役です。正式に"茂みの悪魔"の二つ名を取ってまだまだ皆と一緒に冒険して回るようです。


ニゲラ「ルーちゃんを連れ出せば、エアさんも必然的についてくるでしょうしー。ソラさんも誘いやすいですしー……」

ソラ「……何か、夢が広がりまくってるの。気が付いたら、うかうかと女の子パーティで何かしてそうな自分がいや」

エア、ソラ、ニゲラ、ルー、シフェナですか。今度はまともな前衛がニゲラしかいなくて後衛過多ですね。……ジャスティこないかな。


ジーク「……あ、そういえば、俺はルーに、お守りを返さないとな」

メッシュ「ジーク様、そこは指輪にして贈り返すのですよ

ムーテス「その細工はムーテス商会でも承るっすよー!」

装飾品まで手がけるのかムーテス商会。その内幅広く活躍する大商会として成功してくれないものか。




さて、全11巻に及ぶ「新米女神の勇者たち」の物語はこれで完結となります。アレンの事件としてはですがね。

後に「リターンズ」として続きますし、今後もぞんざいズの冒険はまだまだラクシア世界で続いていくことでしょう。

既に英雄となった彼らがどんな冒険を続けるのか、できるだけずっと見守って行きたいというのが正直なところです。

本当にジークが神の階梯を昇り、ルーちゃんと一緒になる日がくるかもしれないし、まだまだ世界は広大に広がっています。


SW2.0開幕と同時に始まった本シリーズですが、ルールブックと一緒に読めた最初のリプレイがこれで良かったと心底思います。

当時私が愛してやまなかったフォーセリアからSWが離れ、ラクシアで再展開すると知った時は正直なところ哀しかったです。

20年近く付き合ってきた世界ですから今でも恋しい気持ちはありますが、今や同じぐらいラクシアを愛しているつもりです。

私がSW2.0開幕から時間を置いて本シリーズのレビューを始めたのも、書いていくための愛を育む時間が必要だったからです。

フォーセリアの頃もそうでしたがこんな面倒な作業は愛がなければできない。見返りはただ楽しいという気持ちだけなのですから。


ぞんざいズへの興味からSW2.0を追い続け、シリーズが完結してからも追い続けるぐらい夢中になりました。

ぞんざいズ以外のリプレイも全て読んでいますし、フォーセリア時代とは比べものにならない量のサプリメントも網羅しています。

フォーセリアの頃と比べると小説の展開が少ない気もしますが、その分ゲーム的な展開が凄まじく大変楽しませて頂いています。


その展開の速度は本当に凄まじく、ぞんざいズ完結時にはまだ「エターナルエンパイア」が出たところですよ。

その後の「ウィザーズトゥーム」で大幅に魔法が見直されたり、「カルディアグレイス」で新種族・新技能が増えたりしました。

「フェイダン博物誌」や「ザルツ博物誌」で流派や秘伝といった要素が追加され、当時とはまるでプレイ環境が違います。

それらの要素は「リターンズ」で導入され、他のリプレイシリーズにも随時導入されてきましたが、まだまだ世界の一部に過ぎない。


欲を言えばぞんざいズのように低レベルから高レベルまで成長したパーティにこそ、そういう要素を取り入れて欲しい。

今後も「リターンズ」として続いていくでしょうが、だからこそ常に先頭を走る名物パーティとして頑張って欲しいものです。

一応「滅びのサーペント」みたいな高レベルリプレイもありますけど、やはり駆け出しの頃から積み重ねたものがあると違いますし。

そういう意味では「from USA」シリーズの"ガッデムガーデイアンズ"なんかも私は大好きです。同じフェイダン地方なので絡めそうですし。


そういったラクシア世界そのものへの好奇心が私の中に芽生えたことこそ、ぞんざいズの大きな贈り物です。

丁度ロードスでフォーセリアに興味を持った時を思い出すぐらいに、ぞんざいズとラクシア世界への思いが止まらず今まで書いてきました。

これでこのレビューも一応の完結ですが、SW2.0が展開を続ける限り何らかの形で関わっていきたいと思っています。

物語は読む時に楽しみ、自ら書く為に読み返すことで二度楽しめる。これが私が今まで読み書きしてきた物語から得た教訓なのですから。








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