「D&D誌上ライブ ロードス島戦記U」 作:安田均とグループSNE 出版社:角川書店
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★はじめに
このリプレイは「月刊コンプティーク」誌上にて1987年6月号〜1988年7月号の間連載されたものです。
前作「D&D誌上ライブ ロードス島戦記」の続編であり、およそ5年の歳月が過ぎている事になってます。
小説で言えば、前作は1巻「灰色の魔女」に当たり、本作は3〜4巻「火竜山の魔竜」に当たるエピソードですね。
小説でも両者の間には5年の歳月が流れている事になっていて、前作同様後の小説に大なり小なり影響を及ぼしてます。
このリプレイでも前作同様D&Dの第四版のルールに則っていますが、前作より高レベルの冒険行となっています。
何しろキャンペーン開始時に全員の経験点に1万点を加算し、D6個だけマジックアイテムも持たせる大盤振る舞い。
これにより4〜5レベルの駆け出し卒業パーティーとなっていますが、逆に言えばそれだけ厳しい冒険となる訳です。
実際このエピソードを小説を読んで貰えば分かるように、非常に高レベルの人物やモンスターが目立っています。
"傭兵王"カシュー、"黒騎士"アシュラム、そして前作の主人公でもある"自由騎士"パーンとロードスの勇者が勢揃い。
それに合わせて敵はドラゴンです。それも竜族の中でも特に強大な古竜(エンシェント・ドラゴン)だったりします。
そして彼らはロードスの命運をかけてしのぎを削り、超強力なアイテム"支配の王錫"を奪い合うというものです。
このリプレイに登場するPC達も当然活躍はしてますが、いかんせん高レベル過ぎてついていけない事もありました。
それはこのリプレイでも同様で、強力なNPCに出番を盗られるケースが割りと頻繁に出てくる事に気がつきます。
何しろ事件が事件だから前述の強力な人達が出てこざるを得ず、レベル一桁のPC達はレベル二桁の彼らに為す術もない。
結局PCでありながらNPCに任せて傍観。結果最後の方になるとDMの独演会のようになっているとも言えるでしょう。
この事から「ストーリーは面白いがキャンペーンとしては難あり」という評価をよく聞きます。私も概ね同感です。
TRPGは物語を生成するものであって、面白い話をただ展開したいだけならそれこそ小説でやるべきです。
スケールがどうであろうとも、主役はPC。実際前作では「英雄戦争」という大舞台の中パーン達は「主役」でしたね。
それは戦争そのものを主題とせず、その周辺で彼らなりの冒険ができた事が大きい。逆に本作はそれが不充分だった。
とはいえやはり本作のPC達も私には愛着のある人物ばかりで、小説でも忘れられない役どころをそれぞれこなしています。
小説2巻の「炎の魔神」でフライング出演した人、某国の王族の一員になった人、壮絶な戦死を遂げた人、本当に色々と。
中には遥々別の大陸からやって来て、更に別の大陸へと旅立つという、物凄い冒険行を実行している人だっています。
第一部のパーン組や第三部のスパーク組に比べると不遇だとも言われますが、彼らは彼らで代え難い存在感を放っています。
★新しき冒険者たち、自己紹介をする事
それでは今回のPC達の紹介です。シーフは5レベル、それ以外は4レベルになっています。
オルソン
アライメント:中立(ニュートラル)
クラス:ファイター
能力値:強さ=14、教養=9、知恵=7、敏捷性=14、強靭さ=12、魅力=14
パーティーのリーダーであり、現在の乱世をきっかけに王になろうとしている野心的男でもある。
小説では狂戦士として感情が希薄ですが、こちらでは語尾に「だよ〜ん」をつけるひょうきんな面もある。
また戦闘中には当時「ジョ○ョ」において最新のネタであった「ウリィィィ!」という雄叫びを上げて戦う。
シーリス
アライメント:中立(ニュートラル)
クラス:ファイター
能力値:強さ=16、教養=12、知恵=9、敏捷性=16、強靭さ=7、魅力=13
いい男と戦闘が大好きな赤毛の女戦士。小説と違ってしばしば語尾に「ですわ」等とお嬢様風の喋り方もする。
しかしその過激さはそれを凌駕するようになり、ついにはDMにダイスをぶん投げるリアルファイトに発展(笑)
小説の彼女は人気者でOVAにも登場しましたが、意外な事に人気投票では票が伸びずシャリーに負けてたりする。
マール
アライメント:秩序(ローフル)
クラス:ハーフリング
能力値:強さ=11、教養=9、知恵=7、敏捷性=16、強靭さ=13、魅力=17
歌って踊れる陽気な小人族。隙を見ては歌うが悉く空回りで浮いてしまう、でもくじけない、そして懲りない。
持ち歌は某曲の替え歌である「ハーフリングの歌」。「ハ〜フリング、ハ〜フリング、ヤッホーヤッホー♪」。
なお小説の彼は大陸出身のグラスランナーですが、こっちの世界ではハーフリングが普通にロードスにいるらしい。
元々ハーフリングは「中つ国」のホビットの版権問題を乗り越えたものだと言われますが、グラランも同様と思われる。
セシル
アライメント:秩序(ローフル)
クラス:マジックユーザー
能力値:強さ=8、教養=14、知恵=11、敏捷性=9、強靭さ=18、魅力=10
アラニア出身の武闘派魔法使い。パーンやエトに憧れて冒険に出た。名前も顔も女の子っぽいが、それは逆鱗。
正義感が強く悪は決して許さない。合い言葉は「キル・ケイオス!」。得意魔法は邪悪感知の魔法と徹底してる。
また魔法使いにしておくには勿体無い強靭さを誇り、何故か白兵戦が大得意。これは小説の彼にも影響している。
このシリーズではダントツの一番人気を誇ってもいて、このパーティーでは逸早くメディアミックス作品に登場してる。
フォース
アライメント:中立(ニュートラル)
クラス:シーフ
能力値:強さ=10、教養=12、知恵=10、敏捷性=18、強靭さ=12、魅力=16
盗賊ギルドのギルドマスターの養子として育てられ、四男坊である事からフォース(fourth)と名づけられた。
小説の彼にはサーディーという兄がいましたが、彼は三男坊(third)が由来なんですね。とすると次男と長男も?
さり気なく能力値は高いが、高過ぎる魅力が災いして盗みには向かず、冒険者の世界に飛び込んだそうです。
中の人は前作の腐れ魔術師スレインも演じた、吉岡太郎先生。このパーティーでは唯一中の人が明らか(だと思う)。
シャリー
アライメント:中立(ニュートラル)
クラス:クレリック
能力値:強さ=10、教養=11、知恵=16、敏捷性=6、強靭さ=16、魅力=15
NPCの僧侶で、一行の貴重な回復要員。でもあまり魔法は使わない。その辺にもDMの問題が垣間見える。
何故か異様に人気があり、人気投票ではセシルに次ぐ第二位!。でも小説ではあまり目立たず、アニメ等にも未出演。
挙句ワールドガイドの索引にも名前がなく、このキャンペーン中にとある事件で小説にはなかった大変な目に遭う不遇の人。
なおこのリプレイでは既にマイリー信者という設定があり、戦いで傷ついた勇者を癒すという立派な目的意識も持っている。
以上の5(+1)名の今回の主役(である筈)のパーティーです。
なお現在の世界情勢は小説と同じ、あるいはより過酷な乱世となっています。
先の「英雄戦争」でベルドとファーンが共倒れになり、多くの国は勢力を弱め、以前よりも魔物が跳梁跋扈しています。
勢力図を見ると、ヴァリスの版図はロイド周辺のみになってるし。フレイムとマーモは一応持ち堪えているようですが。
アラニア・モス・カノンなんて国境線がないので、まさか無政府状態でしょうか。だとすると小説より悲惨な情勢です。
★謎の一団の乱暴狼藉と、魔法合戦開始の事
物語は自由都市ライデンから始まります。今回は彼らがパーティーを結成する直前からの導入です。
彼らは「海竜亭」という酒場に偶然集まっていて、ここで起きる事件をきっかけにパーティーを結成する訳です。
その時酒場には合計12名の客がいました。内6名は勿論今回パーティーを組む事になるシャリーを入れた6名です。
他6名の内1人はプレートメイルを着た戦士で、他5名は冒険者風の一団で全員で1つのテーブルを囲んでいます。
この5人組の構成は、両手剣の戦士、僧侶、魔法使い、盗賊、エルフというなかなかバランスの取れたものとなってます。
なおエルフは青黒い肌をしたドロウ・エルフという種族で、フォーセリアでいうダークエルフに相当する存在のようです。
そこそこ人も多いので、シーリスなどは早速男漁りをしていました。
シーリス「ねぇ、いい男はいる?」
DM「う、まぁ……。カウンターにいる盗賊っぽいのや(フォース)、
入り口近くのローブの男(セシル)も、ニューハーフといった感じで目を惹くからね」
セシル「ニューハーフ!?」←怒
そういえばこのパーティー、前のパーティーと比べると美形キャラが多いのが特徴でもありますね。
フォースとセシルはその筆頭だし、シーリスとシャリーも美人。オルソンも精悍だし、マールは小説では可愛いし。
……そういえばこっちのマールは小説版とは全然デザインが違う。ドワーフと勘違いしてるんじゃないかというぐらい。
まぁファンタジーの主役なんて、ある意味美男美女が当たり前なんですがね。あとウッドみたいな味のあるキャラとか。
あと5人組の盗賊もフォースに負けず劣らずいい男で、シーリスに一瞥をくれてきたりしてます。
シーリス「あたしの美貌も罪なのねぇ。じゃあ、あたしもニッコリと微笑んだげる」
DM「あちらもニヤニヤと笑う。普通ならいやらしい感じのするその笑いも、
カリスマが高いから、不思議に魅力的になってしまう」
これが所謂「ただしイケメンに限る」ってやつですね。結局男は顔か、顔なのか(笑)
ところがそれを見咎めて注意を促してきたのがシャリーでした。
シャリー「およしなさいな、あの男たちは悪しき者たちですよ」
セシル「なぁにぃ〜〜、悪しき者だと!そんな者は許さんぞ、魔法だ、魔法!!」←落ち着け
シーリス「あの人たちが悪人なんて、あなたはどうして知っているの?」
シャリー「誰が自分に危害を及ぼしそうな人かぐらいわかっていませんと、
今の世の中、長生きできそうにありませんから。勿論、知った手段は魔法ですが」
どうやら邪悪感知の"ディテクト・イービル"らしい。セシルも得意とする呪文ですね。
そうして各自駄弁っていると、いよいよ事件が起こりました。
例の5人組が店を出ようとしたので、店員がそそくさとお勘定を貰おうとしました。
ところが両手剣の男が「こんな不味い物を食わせておいて勘定とは笑わせてくれるぜ」と店員を突き飛ばす。
要はただ食いをするつもりですね。そしてこういう手合いこそ綺麗に完食している事が多かったりする(苦笑)
当然店員は怒るのですが、その時悲劇が……。
DM「今度はツーハンデッド・ソードの一撃が、その不幸な店員の首を刎ね飛ばす。
切り離された首が、コロコロとシーリスねえさんの足元に転がって行く」←やり過ぎだよ!
シーリス「邪魔ねえ。あたしはその首を軽く蹴って向こうに転がしてから、ゆっくり立ち上がるの」←え〜!
これで切り落とされた首が「ま”ぁ〜〜〜〜!」とか叫ぶと、一気にホラーRPGになるんですが(苦笑)
セシル「オレはその暴虐に対して、魔法で報いるぞ」
という事でここから戦闘開始です。まだパーティーは組んでないけど、悪漢相手に彼らは協力して戦います。
あと最後の1人であるプレートの人も一応こっちの味方のようです。特に名前のない脇役NPCとしてですが。
★戦いは終わり、勇者たち完勝する事
1ラウンド目、敵先攻
まず敵僧侶の"サイレンス"がセシルを中心に静寂の場を作って魔法を封じ、続いて魔法使いが動きます。
敵魔法使い「アスト・タラサク・シュララーン・クリナーウィ……」←お前は何処のレイ○トリンだ(笑)
DM「セシルのそばにいた店員がパタリと倒れた」←"スリープ"ね
フォース「もしかして魔法をかけた後ゴホゴホとかやってません?」
やってない、やってない(笑)
続いてこちらの番なので、パーティーを組んでいないながらも正義の心を持つ彼らは共闘し始めます。
マール「おいら、悪人は許さない」←魔法使いにダガー投擲
続いてシャリーもお返しに敵陣に"サイレンス"。オルソンは僧侶と、プレートの人はエルフと接敵。
そしてセシルとレイストリン敵魔法使いは静寂の場から出ようと苦心するも、すぐには出れそうにない。
2ラウンド目、敵先攻
盗賊はマールにダガー投擲をやり返すがハズレ。エルフは"スリープ"でプレートの人と残りの店員を眠らせる。
フォース「魔法合戦ですねえ。ファイヤー・ボールとかの無いこういう魔法合戦も面白い」
セシル「他人事の様に言ってないで、お前も戦え!」
フォース「僕は、ニュートラルの盗賊ですから」
シリーズが変わってもこの人は相変わらずですね。でも今回は魔法のストックがないとは言わさないぞ盗賊(笑)
敵僧侶はオルソンにメイスで襲い掛かるがハズレ。逆にマールのダガー投擲が今度は敵盗賊に命中。
シーリスとシャリーのSSコンビが両手剣に挑む。シャリーのウォーハンマーはハズレるが、シーリスが着実に削る。
両手剣の男はシーリスに逆襲するもハズレ。オルソンも敵僧侶に着実に攻撃を当て、何と一撃で僧侶をKOする!
しかしエルフは目の前で眠るプレートの人に、次のラウンドでトドメを刺そうとしている。次のイニシアティブが大事。
3ラウンド目、PC先攻
マールがまたも敵盗賊にダガー投擲して更に削り、いよいよセシルが静寂の場を脱出して魔法を使えるようになります。
お馴染みの"スリープ"の呪文が敵陣ど真ん中に炸裂し、魔法使いと両手剣が眠る。しかし巻き添えでシャリーも寝る(笑)
フォース「もし相手のレベルが高かったら、こっちが全滅ですよう。味方だって、レベルが低いと寝るんですよ〜」
セシル「結果が良かったからいいの」
お前本当にローフルか。……はて、このフレーズは前作でも度々飛んだような気が。どうもセシルは奴と同じ気質らしい。
シーリスは両手剣にトドメを刺そうとする。一方エルフは"ダークネス"で自分基点で暗闇の場を作り、オルソンは空振り。
この時点で残るはエルフと盗賊のみ。分が悪いと悟った盗賊はさっさと店から逃亡しようとしました。しかしそこで奴が動く!
フォース「僕は勝ち組に乗りますよ。逃げる敵にショート・ボウを撃ちます」←もっと早くに動けよ(苦笑)
何とこの矢のダメージで盗賊も倒れる。更にシーリスと、彼女に起こされたシャリーは両手剣と僧侶を殺す。
残るは暗闇の中に引きこもったエルフ唯1人です。彼は闇に紛れて逃げようとし、オルソンがそれを追撃しようとします。
DM「では、20面ダイスを振って、君のディクスタリティ(敏捷性)より小さい数を出して。失敗したらこけるからね」
オルソン「こけたぁ!」
DM「ドンガラガチャ〜ン、と音がする」
フォース「しません。その辺りはサイレンスがかかってますよ〜」
DM「……」
新シリーズになっても、彼はDMの天敵のようですね(苦笑)
続いて敏捷性に自信のあるマールが追撃しました。
マール「どけどけ、おいらは暗闇だってデックスが高いからへっちゃらよ」←背後からハンドアックス!
これでエルフも倒れた。無銭飲食にして殺人の罪を犯した5人組はこうして討伐されたのでした。
……ていうかたかが酒場の勘定で店員と5人、計6人の命が失われるのも何だかな……。本当に荒れてるなロードス。
悪漢どもを倒した一行は店主からお礼の言葉と僅かな謝礼金を貰い、初戦闘を勝利で飾りました。
そこに3人の男女が現れます。彼らこそは小説でもお馴染みのスレイン、レイリア、シャダムでした!
何で彼らがここにいるかは追々分かってきますが、この辺の設定が小説とは大きく違っている事は確かです。
ただしこの時点ではその小説は出ていないので、むしろこっちの設定の方が先にあった事も了解すべきですが。
これはPCゲーム第一弾にも言えて、これが小説よりもリプレイに忠実なのも最初期の設定を使っているから。
するとこの時点ではシャダムとレイリアは恐らく初登場。何しろ前作の結末だって語られてないんだし。
逆にスレインは前作のPCでもあり、フォースの中の人が当事者なのだから色々感慨深いものもある筈。
★3人の使者現れ、ギルドの入会案内をする事
酒場で起きた事件を鎮圧した冒険者達は、突如現れた3人組に話しかけられました。
シャダム「お前達だな、この酒場で悪党を退治したとかいう冒険者たちは」
オルソン「そーだ」
ていうか情報早いな。悪党を退治したのはついさっきなのに、盗賊ギルド顔負けの情報網でも持ってるのか。
突如現れた彼らを訝しんだセシルは、早速魔法で邪悪感知を決行。しかし勿論彼らの中に悪人はいません。
セシル「よし、魔法だ。得意のディテクト・イービルを掛けるぞ」
フォース「ぼ、ぼくは隠れます」←シャダムが身構えたのにビビった
レイリア「そこの魔法使いは、礼儀を知らないのね。それとも、単に無知なだけかしら。
他人に対して、無闇に魔法を使おうとすると、必要の無い争いをせねばなりませんよ……」
これはSWの"センス・イービル"にも言える事ですが、いきなり人に魔法をかけるのは大変失礼な事です。
例え直接の危害を加えるものでなくても、人によっては心証を害したり敵対行動と取られても不思議は無い。
シーリス「ったく、魔法使いときたらみんな礼儀は知らないし、本当にアブナイ人ばかりなのねぇ」
スレイン「わたしもお、魔法使いなんですけどぉ」←DMが演じてます
フォース「ムムッ、その間延びした話し方は!腐れ魔術師のスイレンさん!」←赤字の所は原文のまま
魔法使いには変わり者が多いという話はよく聞きますし、良くも悪くも普通ではない人が多いでしょうね。
かく言うスレインも、リプレイではとんだ腐れ魔術師で、小説ではマトモそうに見えて奇癖もあるようだしし(笑)
さてコントはここまでにして、シャダムが代表して一行に本題を持ちかけます。
シャダム「私の名前はシャダム、このライデンで傭兵隊長をしていた。
今はある方の力添えを得て、冒険者を集めて冒険者ギルドを結成し、そのギルド・マスターをやっている」
小説の彼は風の部族の族長の息子でカシューの側近でしたが、この時点ではこういう立場という事になってます。
そういえばシューティングスターの襲撃を受けたライデンの街で、カシューに代わって指揮を取っていたのは彼でした。
フォース「冒険者ギルド?うう、ギルドという名前を聞くだけで、頭が痛くなるう〜〜」←それは盗賊ギルドだ
シーリス「きっと、スパルタ教育をさせられたのね」
マール「その冒険者ギルドって、どんな事をしているんだい?」←ようやくマトモな質問が
シャダム「この乱れた世の中を正そうというのが、最大の目的だ。最も、個人の利益を大事にしている」
どうやら冒険の紹介、魔法のサービス、剣のトレーニング、情報交換の場などを提供しているようですね。
大陸には冒険者向けの依頼斡旋・宿屋業務等を行う「冒険者の店」がありますが、それを組織的にしたものかな。
勿論誰でも入れる訳ではない。正義の心を持ち、かつ腕のいい立派な冒険者のみが所属できます。
シャダム「君たちは、その資格を満足させる勇者と聞き、やって来たのだが」
要はギルド入会の勧誘と。それにしても行動が早過ぎる。実は店の外でこっそり様子を伺ってたりして(苦笑)
なお入会金は1人10GPで、会費は無料ときたもんだ。そう言われるとレンタルビデオ屋の会員みたいだけど。
またギルドの紹介で行った冒険で得た収入については、その10%をギルドに収める必要があったりします。
大陸の盗賊ギルドも収入の10%を年会費にしてるので、そんなものかな。なお盗賊ギルドには入会金はない。
会員の特典としては、ギルド・ホールでの宿泊費無料。レベルアップ時のトレーニング料半額(そういうルール)。
更に死者蘇生も半額で、仮にギルドの依頼で捕まったり死んだりしても捜索隊が向かうという大盤振る舞い。
勿論その依頼の斡旋も無料だったりする。例え死んでも復帰できるとは、もう詐欺じゃないかという好待遇。
個人的にはそこまで至れり尽くせりなのはどうかと思いますけどね。冒険者とは、こうも乳母日傘でいいものか?
冒険者とはハイリスク・ハイリターンが当たり前だし、冒険者ごときをそこまで手厚く保護するのも違和感がある。
それに世界観を考えると、そこまで充実した組織というのも考え難い。それこそよっぽどの後援者でもいない限りは。
まぁ実際この組織はそれに見合うだけの後援者がいるから成立している訳ですが、大陸ではまず考えられませんね。
ちなみに現在ギルドに所属するのはスタッフ込みで63名。約12組のパーティーが所属しているようです。
彼らはライデンを中心に活動している。支部は無い、何しろ現在のロードスの殆どの地域は無法地帯だから。
色々胡散臭いのも感じるけど、いい話なので一同は乗り気です。早速現在の6名でパーティーを組んで入会します。
オルソン「とにかく、この話に乗る事にする。別に罠はなさそうだし」
フォース「でも、伏線はありますよ、きっと」
またまた、そうしてシナリオの先読みをする(笑)
★懐かしキャラ、冒険者の前に登場する事
冒険者ギルドに入会した一行は、早速詳しい話を聞こうとギルド本部にまで案内して貰いました。
本部は先の大戦で死んだ商人の館を改造したもので、石造りの塀で囲われた大きくて立派な建物でした。
警備状態は、入り口に控えたプレートメイルの衛兵2人。特に身元照会などはなく、顔パスで通される温さ。
一行はその建物内の一室に案内されます。室内の照明はスレインがいるので魔法を使ってました。
フォース「コンティニュアル・ライトか。ランプ寿命は永久、電気代はただ。これは究極の照明ですからねぇ〜」
シーリス「現代にあれば、電灯屋さんはみんな失業ね」
でも点きっぱなしというのもそれはそれで問題ですがね。呪文の基点にカバーをかけるとか工夫がいるかな。
ここから更に込み入った話になるのですが、今ここの挿絵を見ると違和感を覚える人が多いかと思います。
シャダムが明らかにカシューなんですよね。実は出渕さんは当時、カシューとシャダムを間違えていたとの事。
最初はカシューのビジュアルはシャダム用にデザインされたので、この時点ではシャダムがこの顔をしています。
ところがこのシリーズの終盤になってこの事実が発覚。以後カシューは現在知られる顔で落ち着いたそうです。
ここで一行はきちんとスレインから自己紹介をされて、彼らの推測が正しかった事が確認されました。
フォース「いや〜、懐かしいなあ。こんなところで立派に働いているとは、偉くなったものですねぇ」
なお現在のスレインは推定15レベルはあります。何しろ前作から5年の間、第一線で頑張ってきたのだから。
こうして以前活躍したPCが偉くなって登場し、新しいPCの力になってくれる展開は嬉しいものですよね。
残念ながら「誰もが知ってる」という程の著名人ではないけど、ちゃんと彼の事を知っている人がこの中にいる。
セシル「貴方があの、勇者パーンや聖者エトと共に冒険していたという、あの賢者スレインなんですか」
DM「それほどみんな立派だったとも思えんけどなあ」←同感(笑)
そう、それはセシル。彼はアラニア出身でパーン達に憧れていたから、スレインの事もちゃんと知っていたりする。
スレインも立派になったけど、それよりも有名な人が前作PCにはいます。それこそはヴァリスの新王エトです。
小説同様にファーン亡き後のヴァリスに残り、国を立て直そうと懸命に努力する僧侶王として一般に認知されてます。
残念ながらこの2人以外の行方は現在は不明です。リプレイ自体未公開だし。でもその内ゲーム内で語られます。
続いて彼らはレイリアから自己紹介をされますが、彼女が「レイリアとして」喋るのは初めてでしょうね。
PL知識では前作において「カーラに支配されていた人」だと分かっていますが、PCには分かりません。
しかしちゃんと大地母神マーファに仕える僧侶で、スレインの妻であるという設定はこの頃から既に固まっています。
当然物凄い高レベルの聖職者で、"ウィッシュ"(SWでいう"コール・ゴッド"に相当?)まで使える。
フォース(のPL)「ぼ、僕より立派じゃないですかあ。ああ、ノミの夫婦だ」
DM「安心しなさい。スイレンだって結構レベルを上げているから」←また間違ってる
そうそう、小説ではパーン・ディードと並び、ロードス最強カポーとして有名なオシドリ夫婦になるし。
前作の始まった頃には考えもしなかっただろうけど、彼らのPCはこうしてロードス屈指の偉人になっていく。
それこそ古い世代の六英雄に代わるような存在に。まぁあのスチャラカキャラをそこまで引き上げた水野先生も凄いけど。
今後スレインは魔法のサービスと指導、レイリアは蘇生というジャンルにおいてギルドで活躍していくでしょう。
そして一行は書類に目を通し、必要事項を記入の上サインもして、正式に冒険者ギルドのメンバーとなったのでした。
その証として緑色の布を貰います。これを何処かにつけておくと、同僚の冒険者から仲間意識を持って貰えます。
この書類には様々な規則も書いてあったのですが結構温く、邪悪な行為さえしなければ罰則を受ける事もなさそう。
DM「特に金持ちからピック・ポケット(スリ)をしても構わない、とかいう条項など、中々大胆な規則もある」
いくら乱世とはいえ、組織ぐるみでスリを奨励するのは如何なものか。それこそ盗賊ギルドのやり口だし。
治安が悪くとも犯罪は犯罪だし、まして正義をお題目にする冒険者ギルドの評判を落とす事になるような気がするけど。
さて、こうしてギルドに入会した以上は早速仕事を斡旋して貰えます。その仕事とは海賊退治です。
それは近頃ライデンの沖合いに出没する海賊で、最近になってギルド所属の冒険者がその隠れ家を発見したのです。
そこでライデンの傭兵隊に報告せず、こちらで勝手に退治して、そのお宝を報酬としてしまおうという計画です。
勿論その宝の90%は彼らのものになり、ギルドには残り10%を収めるだけでいいという。全く美味しい話ですね。
何やらやってる事が山賊じみている気もしますが(役人を出し抜く&ギルドの独断)、細かい事は気にしない(笑)
相手はどうせ悪人なんだから、それを退治する事自体はライデンの為にもなるし、こういう冒険だってあるでしょう。
冒険者は慈善活動家ではないし、冒険者とは職業ではなく生き方。冒険者は冒険をしてしまうからそう呼ばれるのです。
この仕事を受ける気になった一行は、その晩はギルド・ホールに泊まってお互いの事を知る為に盛大に前祝をします。
そして翌日には海賊の隠れ家を目指します。ライデンの街から北へ3日、左手に入り江を眺めながらの旅になる筈。
シーリス「なら、私は馬で行きますわ。ウォー・ホースを一頭下さいな」
さり気なく軍馬を要求してるよこの人(苦笑)
これが彼らのギルドにおける初仕事ですが、これがロードスを揺るがす大事件の始まりでもありました。
★黄金剣を探す男登場
海賊の隠れ家に向かおうとした一行ですが、その前にもう1人ギルドの紹介で仲間NPCが加わる事になりました。
彼と顔合わせをする為にスレイン・レイリア夫妻に案内され、ギルド1階の酒場「ファニー・ドラゴン」へ赴きます。
マール「そーれ、酒だ、酒。おいちゃん、エールを一杯」
店主のストア「子供にゃ酒はやれんな」←一応成人だけどね
DM「と言いながら、しっかりジョッキにエールを入れ始めている」←おいおい
オルソン「ぼくも酒を飲むよ〜ん。ビールがいいな、特によく冷えたのが」
世界観を考えると冷えたビールは希少でしょうね。精々清流や井戸に浸して冷やした程度だと思う。
ちなみにスレインはミルク、レイリアは赤ワインを飲むようです。注文せずとも出てくるとは、常連だな(笑)
この店はストアという陽気なおっちゃんと、彼の娘であるミルナが切り盛りしています。当然ギルドのメンバーです。
ストア「注文その他はこの娘にしてくれ。ただし、変な誘いはご遠慮願うがね」
フォース「ご安心下さい。僕は実は女嫌いなんですね〜」
シーリス「ウソツキ!」
フォース「ホントですってば、信じて下さいよお。ただ、この目立ちすぎるカリスマが、ああ、カリスマが憎いだけです」
そのせいで盗みが働けない設定ですしね。なお彼の女嫌い設定は小説でもちゃんと生きているのは有名な話。
セシル「オレは女性に対しては優しいぞ。丁寧に挨拶しよう」
ミルナ「美しい女魔法使い様ね」
セシル「ドッカ〜ン。オレはこの女が嫌いになったぞ!」←フェミニストじゃないのか
シーリス「まあ、いい娘だね。これからは、可愛がってあげましょう」
マール「シーリスも母性愛に目覚めたの?じゃないよね」
シーリス「いいえ。私が愛するのは美男子の方よ。それと、冒険ね」
結局この娘にコナをかけようとする男はこのパーティーにはいそうにありませんね(苦笑)
さて肝心のもう1人の仲間ですが、彼はジルヴァーという名の戦士で、決まったパーティーに属していないはぐれ戦士です。
彼のレベルは6と、早くもPCより強いNPCだったりします。まぁ出番を取らないただの助っ人だからいいんですけど。
オルソン「こいつ僕より強いのかあ。でも、このパーティーのリーダーは、あくまで僕だからね」
シーリス「パーティのリーダーの座ぐらいに固執しているようじゃ、王様なんかにはとてもなれそうにないわね」
セシル「そーだ、そーだ」
オルソン「ほっといてよ。僕には僕のやり方があるんだから」
フォース「……どんな、ですか」
オルソン「う、ぐぐっ」←答えられない
DM「さあさあ、子供たち。グズでノロマな亀を虐めるのはそれぐらいにしておきなさい」←酷いやDM
まぁまぁ、リーダー虐めも大概にしておかないと。
さてジルヴァーはカリスマも高そうなお約束の美男子系ですが、1つ問題があったりする
ジルヴァー「オレは「黄金剣」を探している。お前、何かその名に聞き覚えは無いか?」
シーリス「ないわ、だってあたしルールブックも殆ど読んだ事が無いもの」←威張れることか
実は彼は記憶喪失で自分の素性が分からず、その「黄金剣」を何故探しているのかも分からないのです。
フォース「自分の過去なんか、気にしなければいいのに」
セシル「世の中の人がみんなお前の様に脳天気な人間ばかりでは無いからな」←それは酷いよ
フォース「お嬢さん、口が悪いですねぇ」←輪をかけて酷いよ
セシル「お、お嬢さん!?そ、それはオレに対する挑戦だな。魔法だ、魔法!」
仲間1人加入するだけでこの騒ぎ、お陰でなかなか話が進みません。
その一方マールは自己紹介がてら自慢の歌と踊りを披露してたりする。
マール「1番マール君、ハーフリング・ソング歌います。
それ、ハーフリング、ハーフリング、ヤホー、ヤホー♪」
ところが今回ばかりは彼の出番はない。この店にはルシアという歌姫がいて、彼女のステージがあるから。
彼女の歌は静かなバラードで、冒険者の心を打つ不思議な魅力があり、たちまち客一同が彼女の歌に聞き惚れる。
……今回はこのように特徴的なNPCが数多く出ていますが、彼らは読者投稿のNPC達のようですね。
SWでいう"ナイトブレイカーズ"の先駆けのようなものでしょうか、それぞれ実に凝った設定を持っています。
★海賊の砦に猪突猛進する事
新たな仲間を加え、総勢7名になったパーティーは海賊の砦を目指して旅立ちました。
途中3回ほどワンダリング・モンスターを退治し、2回野営し、3日後の昼頃には現地に到着します。
そこは左手に眼下に海が広がる崖、右側にもやはり天を突く崖という急峻な場所で、殆ど人の手が入っていない。
海賊の隠れ家は一行の前方左手岩山の洞窟にあって、見張りは2名。見張り台とバリスタがあるので一目瞭然。
また洞窟からは海賊船の舳先が突き出ていて、舳先はラムで武装してあります。隠れ家にしては隠れてませんね(苦笑)
さてこれからどう攻めるか作戦を立てねばなりません。
シーリス「たかが、海賊なんでしょ。堂々と正面から戦えば、それで十分じゃないの」
オルソン「でも、慎重になって悪い事は無い」
どうやら前作と違って今回のリーダーは慎重派のようです。いやパーンが無謀なだけという話もありますがね。
やはり盗賊の技術か魔法使いの魔法で見張りを始末するのがお約束ですよね。
例えばフォースが前作でウッドも使っていたハイド・イン・シャドウを使って接近し、コキュッと殺っちゃうとか。
フォース「ツツツ(指振り)、よしてくれ。ぼ、僕はカリマスの高いシ、シーフなんだぜい」←また誤字
ああ、目立っちゃうからね。小説のフォースは必殺仕事人のようにアッサリ倒してくれたんですが。
それではセシルの魔法はどうかというと、ちゃんと"スリープ"と"インビジビリティ"があるので成功しそう。
ちなみに他の魔法は、お馴染みの攻撃魔法"マジック・ミサイル"と、品物を探す"ロケート・オブジェクト"。
後者はSWでいう"ロケーション"かな。あとマジックアイテム"スペル・ストア・リング"にもう2つ入ってます。
これは"ディテクト・イービル"が2回分なので、今回は役に立たない。だって相手は海賊、邪悪に決まってます(笑)
でも呪文が勿体無いというリーダーの意見があり、作戦変更。全員で突撃です。結局パーンと同じか。
フォース「ああ、このパターンは今回も変わらないんですねぇ。それじゃあサヨナラ、僕の事を忘れないでくれよ」
セシル「縁起でも無いヤツ。海賊ぐらいに遅れを取るものか。では、キル・ケイオスだ!」
相手が本当にただの海賊なら、確かに勝算は十分あるでしょうけど……。
★そして乱戦、いかなる事になるやら!?
いよいよ海賊退治の開始です。作戦「全員で突っ込む」を実行し、当然気づかれてバリスタで狙われまくります。
陣形としては、フォースやシャリー等のペラペラ組は後ろ。シーリスやジルヴァーら特攻野郎戦士組は先頭です。
シーリス「そうカンタンに弓矢なんかが、当たるもんですか」
DM(甘いなあ、砂糖の10倍ぐらい甘いなあ)
実はこのゲームのバリスタは普通の武器より当たり易い。ダメージもD10+6とかなり痛いものです。
SWでもバリスタは数ある武器の中でも最も強力なもので、人体に命中しようものなら大変な事になります。
DMは一応後ろの人に飛ぶ確率を低くした上で、誰に飛ぶか判定。最初の標的はよりによってセシルでした。
DM「ダメージは11発だ」←アイタタタ
セシル「痛い。だが、オレのヒット・ポイントは24もあるからな」←お前本当に魔法使いか!
フォース「凄いヒット・ポイントだ。本当に女の様な姿の魔法使いなのかな」
彼の強靭さはパーティー最高の18ですから、その辺の修正のお陰ですね。やはり戦士になるべきだった。
お返しとばかりにフォースは見張りの1人を弓矢で狙い、一撃で仕留める。ゴルゴかお前は(苦笑)
セシル「やるな、こそ泥」←酷
しかし楽観はできません。残った見張り君は「敵襲だぁ!」と叫び、仲間の海賊がワラワラと出てきます。
これには冒険者達も愕然としていましたが、それは見張りの本来の役目で、それが正面突破の本来の末路です。
結局洞窟から5〜6名、見張り台にも5〜6名の増援が追加。たちまち大乱戦となったのでした。
シャリー「ここは上は無視して、下の敵から倒していきましょう。
乱戦になれば例のバリスタや飛び道具は使えなくなるはずですから」←NPCの方が冷静
オルソン「さすが、戦の神様に仕える僧侶だ。戦いになると俄然張り切るんだね。
しかし、戦闘になって張り切るのは僕も一緒だよ〜ん。
ここはバーサークだ〜! ウリィィィィィィ」←きたー!
ジルヴァー「貴様ら黄金剣を知っているか!」←注:戦闘中です
もうこのパーティーにはマトモな奴がいない。一番マトモなのは、推定シャリー(笑)
そのシャリーは接近戦になる前にと"ブレス"をかけ、冒険者たちはその祝福をうけつつ乱戦に入りました。
★勇者たち、軽く海賊をけちらすが……!?
冒険者ギルドで海賊退治の依頼を受けた一行は、無謀にも正面突破を試みて乱戦となりました。
マール「まず敵の動きを見ないとね。海賊たちの動きは?」
DM「海賊たちもキミらと同じように突っ込んで来るよ。まるで統制が取れていない」
シーリス「やっぱり、ただの海賊ね」←じゃあアンタらは何だ
フォース「我々がやっている事と、同じなんですけどねえ」
セシル「オレたちがすると、これは勇気になるのだ」
結局無謀と慢心の精霊に憑かれた者同士の戦いですね。既にチョイとしたバーサーカーです。
ここから戦闘に入ります。道幅も広く乱戦になるので、マールは今回ハンドアックスで戦います。
敵の武装はショートソードとレザーアーマーで統一されており、いかにも同じデータの雑魚集団って感じ。
セシル「なんだ、カスい武器だな。なら、魔法は使わなくていいな。オレも短剣で斬り掛かろう」←おい!
いよいよ戦う魔術師の本領発揮ですね。リウイの走りと言いますか、一応後衛に回っとけよ(笑)
まず彼らが戦う海賊は5人。こちらは、オルソン、シーリス、マール、セシル、ジルヴァーが出ます。
丁度5対5になるので一騎打ち×5で処理します。……いやセシルが下がってフォースが出ればいいのでは……。
この戦いはこちらの前衛組が圧倒的に強く、一撃だけで倒れる海賊もチラホラ。結局はこちらの完勝となりました。
セシル「オレたちに勝とうというのが、ムチャなのだ」
そうね、前に出て戦う魔術師ぐらいにムチャかもしれないね。
また見張り台にいたもう5人程の海賊は、シャリーに飛び道具で傷を負わせた程度で洞窟に逃げ込んでしまいました。
マール「中で待ち伏せしているんだろうね。きっと」
フォース「そうでしょうねえ。でも、海賊だけにやっぱり大した事はありませんでしたねえ」
セシル「そうそう、恐れる事は無い。いざ、進めー!」
いや、お前はもうちょっと恐れとけ。一応さっきの戦闘でちょっとだけダメージを受けてるんだし。
このダメージについてはシャリーが癒そうとしますが、残り2回の回復魔法は戦士に取っておこうと自粛させます。
仮に回復魔法を使い果たしたとしても、一応シャリーも前衛で戦えるから、それはそれで戦力にはなるでしょう。
しかしこちらの前衛は多いし、イザという時の回復魔法は大事。あとは約1名が魔法使いらしく魔法に専念すれば。
戦闘からハブにされたセシルには、意外にもジルヴァーが慰めの言葉をかけてくれたりします。
ジルヴァー「我々の戦い振りを見ていてくれ」
シーリス「へぇー、結構神経が細かいのね。そんなにデリケートだから、記憶を失ったんだわ、きっと」
そしてこっちの仲間は何だか酷い。NPCの方が仲間思いな気がするのは如何なものか(苦笑)
隊列を組んで洞窟に入ると、5人の海賊から弓矢の洗礼を受けます。しかし戦士野郎の分厚い鎧が難なく弾く。
オルソン「誰かランタンをつけなきゃ」←光源無しの洞窟アタックは危険極まる
フォース「それは僕がしましょうか」
DM「おっ、フォースは偉いね。明かり持ちは格好の的にされるよ」
フォース「し、しまった〜」←おいおい
しかしそうでもしないと本当に何もしない人になっちゃうし、それは冒険者としてアレだから何かやっとけ。
★勇者たち、哀れ捕らわれの身となる事
そうして洞窟を進んでいくと、やがて魔法の明かりが見え、その部屋には15人もの人影がありました。
その内8名は海賊の生き残りで、内5名は弓矢からショートソードに武器チェンジ。残り3名は普通に剣を持ってる。
問題は残りの7名の方で、こちらは金属鎧もいたりローブ姿の魔術師もいたりの、冒険者風のいかにも強そうな人達。
オルソン「ゲゲッ、話が違う〜!」
マール「ワ、ワナだったんだ。これは不利だね〜」
そもそもこのDMがただの海賊退治で終わらせる筈が無い。これはこれから始まる大事件の幕開けに過ぎないのです。
セシル「何を弱気な、オレたちは正義なのだ!ここはスリープだ。バラの花びらを空中に撒くぞ」
それは「AD&D」のルールのようです。魔法を使うにはこのような媒介が必要なんだとか。
元ネタは「魔法の王国」の主人公カー・デリング。全3巻のシリーズ中2・3巻はスパーク君(清松みゆき先生)翻訳。
この魔法で計8レベル分を眠らせる事ができるので、1レベル集団に過ぎない8人の海賊は全滅しました。
しかし残った7名こそが問題、ここからが地獄の始まりでした。小説の展開通り、彼らはアシュラム一味なのですから。
小説では"支配の王錫"によるロードス統一を目標に、彼らは次々と各地の五色の魔竜を倒していくマーモの精鋭達でした。
こちらでは何名か小説とは違う面子も混じっていたり、誰かがいなかったりしますが、基本的には同じ目的と実力の集団です。
早速向こうからはアシュラム様が前に出てきて降伏勧告をしてきます。
アシュラム「死にたいなら、そこから一歩前に進み出るがいい。
だが、まだこの世に未練があるのなら、そこを動かぬ事だな」
セシル「何を!邪悪な海賊どもめ」←普通甲冑を着た海賊はいない
アシュラム「フフッ、我々が海賊に見えるとは浅はかな女よ」
恐ろしい、何て恐ろしいお方だアシュラム様。周りの人達が言いたくても言えなかったネタを堂々と……(ガクガク)。
続いてアシュラムは何故彼らがここに来たのかを詰問しますが、全員沈黙。
アシュラム「答えられんか。なら、ここで死んでもらうだけだ」
フォース「待って下さい。僕らはただの海賊退治にここに来ただけなんですよ〜。
あなたたちのような強ーい人たちがいると知ってたら来たりはしません。マスターに嵌められただけです」
まぁ流石のDMもここで彼らを皆殺しにしようとは思ってませんけどね。強いて言うならシナリオの都合。
ここでPCを捕虜にするのが真の狙いで、彼我の実力差を考えれば彼らがどう抵抗しても逃げられないでしょう。
抵抗の余地が無いというのは少し理不尽ですが、ある程度PCの決断と行動次第で過程と結果が変わるならありだと思う。
フォースのこの発言が一行を助けました。敵方の魔術師(グローダー)の魔法で彼の言葉が真実だと認められます。
アシュラムは「ならば命だけは助けよう」と今度こそ降伏勧告を行い、一行は武器を捨てて投降する事にしました。
勝てっこない相手に戦いを挑むのは勇気ではなく無謀ですし、時には雌伏の時を過ごして機会を待つのもまた勇気です。
ところが約1名、この状況でも全く怯まない男がいました。
ジルヴァー「お前たち、黄金剣を知っているか?」←何だコイツ!!
フォース「ハラホリハラホレ……」
オルソン「な、なんなんだよ。これじゃあ、ただのバカじゃないか」
アシュラム「そんな剣など知らない」←律儀だよアシュラム様
ジルヴァー「ならばオレも貴様らに用は無い」
そして何を思ったか彼は突然ダッシュして海にダイビング、二度と上がってきませんでした。
ちなみに彼の装備はプレートアーマー。板金鎧の名の通り、全身金属の塊で普通は泳げない重量がある。……南無。
一応敵の僧侶が彼に何か魔法を唱えたようですが、果たして彼の運命や如何に。……きっと敵方も唖然としたろうな。
★暗黒皇帝の遺臣現れ、勇者たちを圧倒する事。
こうして一行は捕虜となった。カーラも使ってたESPの呪文で彼らの知っていた情報を洗いざらい引き出されます。
そのままある一室に閉じ込められて一日が経過し、翌日にはアシュラムの前に引き出されて話を持ちかけられます。
アシュラム「キミたちの手並みは昨日見せて貰ったが、はっきり言わせて貰うと、まだまだだな。
たかが、海賊と舐めていたのかも知れんが、油断は死を招くぞ」
セシル「一体、何が言いたいんだ。はっきり言え、はっきりと!」←一応捕虜なんだけど
アシュラム「ホホウ、またお前か、気の強い魔法使いよ。だがな、礼儀を知らんのも、時には命取りになるからな」
まさか敵に正論を説かれるとは、どんな正義の味方だ(苦笑)
アシュラムが彼らを呼び出した真の理由は、彼らを仲間に引き込む事。そうすれば自由だって与えられる。
アシュラム達はこれから海を渡り、大量の宝を蓄えたドラゴンのいる島に渡る。小説で言う青竜島と水竜エイブラですね。
しかし彼の真の狙いはそんなありきたりな宝ではなく、一本の杖。古代王国で作られた偉大なアーティファクトです。
なおアーティファクトとは世界で唯一の魔法の品を指し、イモータルという神の領域に踏み込んだ人が作ったものです。
このリプレイが掲載された当時、このルールが収録されたセットは未翻訳で、きっと先進的な展開だったのでしょう。
要はこのリプレイでもアシュラムは"支配の王錫"を狙っていて、亡きベルド皇帝の悲願ロードス統一を目指している。
小説では「資格の無き者が持つと死ぬ」と言われても結局何も起こらず終いでしたが、こちらではバッチリ呪いもかかってる。
世界の王たる威厳と資質を与えるが、資格が無いと所有者を滅ぼすという諸刃の刃。"ひとつの指輪"級にヤバイものです。
しかしアシュラムは実に堂々としたものでした。
アシュラム「だが、私にはその資格がある。
私はその杖の所有者として、このロードス全土を統べる王となるのだ」
セシル「王になってどうするつもりだ」
アシュラム「戦乱に満ちたこのロードスの歴史に終止符を打つのだ。
その為には、時には残酷とも思える事もせねばならないだろう。
真の平和とは決して奇麗事だけで得られる訳では無いからな」
ベルドもそうでしたが、一理ある考え方ではある。まぁ旧時代を壊すより、新時代を築いて維持する方が困難なのですがね。
実は冒頭の予想通りにアラニアとモスは既に亡い。諸国が先の大戦で混乱しきっている今なら、本当に成功するかもしれない。
アシュラム「しかしその為には、仲間が必要だ。
若くて、何が正しく、何が間違っているかを見分ける事が出来る諸君らのような仲間が、な。
どうな、私の配下とならないか」
フォース「なら答えましょう。私たちは確かに、正しいものを見分ける事が出来ます。
だからこそ、あえてあなたの申し出を断りましょう。何故なら、正しくないのは、あなただからです」
カ、カッコイイ……。何だコイツ、前作では腐れ魔術師で本作では腐れ盗賊かと思いきや、いい所全部持ってった(笑)
まぁ決断の理由が「ベルド=邪悪」→「アシュラム=ベルドの部下」→「アシュラム=邪悪」という三段論法ですがね。
こうなっては勧誘もおじゃんです。一行は船の漕ぎ手として働かされます、丁度5人ほどいなくなったし。
シーリスやシャリーといった女性陣も力はあるのは漕ぎ手です。だってシーリスの方がオルソンより力あるし。
ただしセシルは雑用係です。普通なら女性がやらされるところですが、何となく分かる、分かりますよアシュラム様。
いやセシルは強靭ではあるものの、実は力は弱い。このパーティーでは最弱、マールよりも能力値が下だったりするし。
こうして一行は捕虜として大海原に旅立ち、竜と財宝が眠ると言われる小島へと向かったのでした。
★敵の正体明らかとなり、冒険者たちは竜の島へ
前回DMの罠でマーモのアシュラム一味の捕虜となった一行は、竜の住む島(推定青竜島)へと向かっていました。
DM「さーて、続きだ、続きだ」
オルソン「ケッ、俺たちは捕まっているから、とてもそんな元気はないや」←やさぐれ気味
マール「駄目だよ。そんな時だからこそ、明るく強くならなけりゃ。そりゃ、ハイホー、ハイホー♪」
フォース「それ、ドワーフの歌ですよ」←七人の小人はドワーフです
マール「う、ぐっ……。ハーフリング、ハーフリング、ヤホー、ヤホー♪」
いや、それは小坂○也の歌なんですけどね。まぁ思ったより落ち込んだ様子ではないので結構です。
しかし彼らは捕虜の身。鎖に繋がれて漕ぎ手をやらされている過酷な状況です。ただしセシルだけは下働き。
フォース「ホント美人は得だなあ」
セシル「美人だと(怒)」
シーリス「嫌味な人ね」
フォース「ああ、二人から同時に嫌われてしまった。こ、これではレイストリンじゃないか」←またかい
こんな馬鹿な事をやってますが、この手の漕ぎ手は死ぬまで酷使されるのが常。結構お先真っ暗だったりする。
そうして働いていると、敵方の7人の名前と特徴が分かってきます。
アシュラムは既に出た通りです。敵方のリーダーであり、マーモの元近衛騎士。ロードス統一の野望を抱く男。
それとマイリーを信仰するホッブ司祭。オルソン達の助命を嘆願したのも彼とアシュラムで、極めて真っ当な性格。
あとバトルアックスを片手で振り回す戦士ギルラム。そして無口で得体の知れないローブ姿の魔術師グローダー。
以上4人については小説でも登場しているのでお馴染みかと思います。しかし残り3名はリプレイのみのキャラです。
1人はスーツアーマーを着た騎士?ジャラン。アシュラムと違って極めて邪悪。顔は昆虫のようなマスクで見えない。
そして美しいものを憎む根性曲がり。特にセシル、フォース、シーリスといった綺麗所を苛立たしそうに見ている。
もう1人は戦士ラーカス、武器はグレートソードとバトルアックス。どうも小説で言うスメディに当たるキャラらしい。
最後の1人は盗賊ベンドール。いかにも悪党といった面構えな上に、シーリスを見る目が意味ありげで余計悪党らしい。
どうやらダークエルフのアスタールとファラリス神官ガーベラは消えたようですね。あとスメディも名前が変わってる?
小説の彼らは「この冒険を成功させよう」という、彼らなりの団結感と仲間意識を持っていて、敵ながら天晴れでした。
こちらはそこまで仲間意識を感じないけど、それでも部下達はアシュラムに絶対的な忠誠と畏怖を覚えているようですね。
これで分かったのは、勝てないという絶望的な事実。まして海の上だし、行動を起こすのは陸地についてからですね。
一行はそれからも漕ぎ手として酷使されてブルー・ドラゴンの島(青竜島)に到着し、暫くは鎖に繋がれたままでした。
ところが2時間ほど経つと島に上陸していたアシュラムが戻ってきて彼らを解放し、彼らに作戦の手伝いをさせます。
その為にシーリス、オルソン、マール、シャリーといった前衛組だけを連れ出し、セシルとフォースは人質として船で留守番。
マール「この二人なら、見捨てた方が夜の為人の為、と言いたいが、おいらは正義のハーフリングだからね」
流石に仲間を見捨てる事はできないので大人しく従い、返してもらった武器を装備して彼らもまた島に上陸しました。
PCゲームでは、この島で下手にウロつくと巨人族やロック鳥なんかと遭遇して大変でしたが、幸いそういう遭遇はない。
★ブルー・ドラゴンと会見する事。
アシュラムの案内で竜の住処へ通じる洞窟に入ると、そこには海賊の死体がゴロゴロ。
アシュラム「私は海賊たちを引き連れ、洞窟の中に入っていったのだがな、中に居た魔物の為にこの有様なのだ」
オルソン「わたくし、帰らせてもらいます」
フォース「そ、そんな〜、僕の命が〜」
でもやっぱり本当に見捨てる事はできない。まぁそれをやっても彼らだけではロードスに戻れないんですがね。
では何故アシュラムがホッブ達ではなく、雑魚の海賊連中だけを伴って洞窟に入ったのか?
フォース「わかった。相手がブルー・ドラゴンだからじゃないですか〜」←前作で戦ったからね
オルソン「ゲゲゲゲッ、酷い!散開して突っ込むと、ドラゴン・ブレスの犠牲になるのは、一人だけ。
俺達はドラゴンブレスの標的代わりに使われるんだ」
DM「わかったらサッサと洞窟に入った、入った」←酷いやDM
青い鱗の竜のブレスは直線状だと前作でも出てましたね。フォースの中の人は前作にも参加してたから察しがいい。
それから一行は海賊との戦闘で果てたオーガーやホブゴブリンの死体を横切り、洞窟のかなり奥までやって来ます。
DM「辺りの岩の様子がなんだか変だ。微妙に脈動しているというか、息づいているというか……」
マール「オイラはその岩から離れて歩くよ」
シーリス「すると、脈動している岩の横を通って行く事になるわけね」
マール「それも、嫌だな〜。よーし、ここは陽気に歌おう!」←思考放棄
いや、それはそれでまた変な影響を及ぼしそうで怖いんですが(苦笑)
当然この岩そのものがモンスターでした。6本の触手と1つの目玉を持ち、無数の歯が並ぶ大きな口の怪物でした。
オルソン「こ、怖い。怖い時には、バーサークだーーオルソ〜ン!」
こいつは「ドルアーガの塔」等にも登場するローパーという宇宙人っぽいモンスターでした。初出はやはりこのゲーム。
本来はなかなかの強敵ですが、素敵に無敵なアシュラム様のお陰で結構アッサリ片付いた。弾除けを減らされても困るし。
こうして危機を乗り越えた一行は、ついにエンシェント・ブルー・ドラゴンのいる大きな空洞に到着しました。
小説では水竜エイブラという老竜でしたが、こちらでは特に名前は出ない。大量の財宝を蓄えている点では同じですが。
他にも相違点は幾つかあります。小説のエイブラは温厚で知的でしたが、こちらは自惚れ屋でおだてに弱い俗物的性格。
また小説ではエイブラの持つ"魂の水晶球"目当てのグローダーの策略により、本来するつもりのない戦闘となりました。
しかしこちらではこの場では戦わない。アシュラムのヨイショという名の見事すぎる交渉術により、無傷で宝が手に入る。
アシュラム「古の時より、王者として生きた偉大なるドラゴンよ。
私の名はアシュラム。死すべき運命にある人間の戦士にして王である。
私は貴方と友好を深める為に一つの宝物を用意してきた。これを、まず受け取って欲しい」
ここで提示されたのはドワーフ作の王冠は見事な逸品で、明らかにドラゴンの敵意が消えました。
マール「上手い!」
DM「で、アシュラムは、マールにこれをドラゴンの元に届けろと、命令する」
マール「上手くない〜」
ドラゴン「人間よ、お前は、中々に礼儀と、そして立場というものを心得ている。
これからは、わしとお前とは、共に王者としての固い絆で結ばれるであろう」
こうして贈り物は渡され、ヨイショされたのも手伝ってドラゴンはたちまち上機嫌となりました。扱いやすい奴……。
そして更にアシュラムのヨイショは続きます。小説の彼からは聞けそうに無い慇懃な感じで。
アシュラム「私は、王者としての礼を示した。
今度は偉大なる者よ、貴方の番です。私にも貴方の宝を一つ頂戴したい。
勿論、私と貴方との王者としての年数、また尊厳から比べ、
その宝物は私が送ったものよりも、当然、価値の落ちるもので結構です。
ですが、見れば貴方の宝は、どれも価値あるものばかり。
これでは、どれを取ろうとも、私には過ぎたものの様に思える。
だから、どうでしょう、杖を1本くれますまいか。
貴方が、古代王国の滅亡の時に持ち去ったと言われる木の杖を。
木は金属より価値がはるかに落ちる。
それなら、私が貰っても、別に貴方の尊厳を傷つける事にはならない。
いや、むしろその行為は王者としての貴方の尊厳を高めるはずだ」
凄いよアシュラム様、ここまで慇懃だと気持ち悪いぐらいだ。でもやはり戦わずに済むに越した事は無い。
しかし残念ながら望みの品は火竜山のシューティングスターに譲ったという。どうも両者に親交があるらしい。
それを聞いたアシュラム様は再び相手との王者としての友情を誓い、至って紳士的に礼儀正しくその場を辞しました。
さて望みの品は得られませんでしたが、これでアシュラムは目的の杖が何処にあるのかを知ってしまいました。
アシュラムの交渉の手並みにPC達は無事に帰れると感心していましたし、実際彼らは何事も無く仲間と合流できた。
しかしアシュラムは続けて主力の部下達を連れて洞窟に入り、明らかに争う音が聞こえたかと思うと帰還しました。
……どうやらブルー・ドラゴンは倒されたらしい。おだてられた直後で油断してたんでしょうね、割とアッサリと。
確かに目的のものはなかったけど、目の前に大量の財宝があって、それを比較的容易に入手できるとあれば容赦なしです。
セシル「酷い奴らだ」
シーリス「でも賢い戦法ね。私たちも見習わなきゃ」
DM(それは絶対見習うべきだ)
確かに見習った方がいいけど、それをやられると今度はDMの方がアワワする事になりかねない。"ペラペラーズ"よろしく。
それでも深く傷ついたアシュラム達の治療と、ドラゴンの財宝の運び出しで再び一行は駆り出され、一日が終わりました。
凄い事に船倉一杯に宝を積み込んでも、まだまだ山のように宝が残っている。それこそいくつかガメても気にされない程度に。
それが終わると再び漕ぎ手として海に出ます。既に海賊は一連の戦闘で3人にまで減ってるという。よく操船できるものだ。
★救出者の出現、そして自由の身となる事
ライデンに戻ると牢に押し込められ、見張りとしてインビジブル・ストーカーを配置され、アシュラム一行は去っていきました。
こいつは前作でもカーラが見張りに使って、ウッドを惨殺してましたね。でも彼らぐらいレベルがあれば倒せそうではある。
ところがそう上手くはいかない。更にブロンズ・ゴーレム×2を配置され、これには流石に勝てないと大人しくするしかなかった。
しかしアシュラム達が去った翌朝、契約通りに冒険者ギルドの救援隊が到着。彼らはアッサリと見張りと海賊を倒します。
メンバーはお馴染みのスレイン・レイリア夫妻。読者応募の女性キャラのみのパーティー。そしてあのジルヴァーでした。
オルソン「生きていたのか〜」
ジルヴァー「俺は泳ぎは得意だからな」
古式泳法ですね(笑)
なお見張りのゴーレムとストーカーを倒したのは最強夫婦でした。内訳はスレインがゴーレム1体、レイリアが残りの2匹です。
スレインは大地の精霊を呼び出してゴーレムと戦わせ、弱ったところで"マジック・ミサイル"を撃ち込みアッサリ排除。
レイリアは"バリアー"で身を守りながらゴーレムを破壊し、魔法でストーカーを消去しました。まったくもって涼しそうな顔です。
オルソン「何も出来ないのはプレイヤーだけだ」
この辺りから徐々に彼らはNPCに出番を取られていきます。やっぱり傍観者にしちゃうのは良くありませんね。
こうして彼らの初仕事は散々な結果に終わりましたが、散々な目に遭うのはむしろこれからだったりする(笑)
なおこの辺りは小説にもあったエピソードですが、次回からは小説ではバッサリカットされたサイドシナリオが続きます。
★タナボタの経験点と、レベルアップの事
前回までの冒険(というか捕虜生活)で一行には、軒並み1レベルずつ上がる程度の経験点が入りました。
マール「なぜさ」
DM「当然、海賊のアジトには腐るほどの宝物があったからさ。
プレイヤーたちは一見何もしれいないようで実際何もしていないけど、ご苦労さん賃ぐらいは出さないとな」
セシル「うーむ、卑屈だ、あまりにも卑屈だぞ!オレはそんなケイオスな経験点はいらん!!」
DM「あ、そ。ご勝手に」
セシル「と思ったが、入ってくるものを拒むのは正義に反することなので、やっぱりもらっておくぞ!」
マール「どっちが卑屈なんだか」
入手した宝が経験点になるから、例え過程がどうあれ宝さえ手に入ればレベルは上がるんですね。
SWならミッションを達成すれば経験点は入る訳ですが、敵に捕まるのが前提なら「脱出できれば」成功かな?
という訳で彼らは5〜6レベルのパーティーとなりました。それでもレベル二桁のアシュラム達には到底及びませんがね。
DM「これで強力な怪物も怖くないね」
フォース「そんなことありませんよぉ〜。怖いものはやっぱり怖い」
セシル「お前は話の腰を折る事しか能が無いのか、たわけものめ!」
しかしこのDMの今までのマスタリングを考えると、NPCに頼らないと勝てない怪物を出される恐れもあるし(苦笑)
何はともあれ帰還した一行は、再びギルドの酒場「ファニー・ドラゴン」を訪れました。
ストアが特別に料理を作ってくれたり、ルシアのバラードを聞いたりと、束の間の休息を楽しみました。
DM「歌姫ルシアのバラードが、なぜこれほどまでに冒険者の胸を打つのかが、わかったような気がする。
彼女の歌は冒険から生き延びて帰ってきた者だけにわかる安らぎがあるんだね」
実際危うく死に掛けたし、ナーバスにもなるでしょう。そんな時に馴染みの店で綺麗な歌を聞けば、それは心が安らぐ。
なおルシアの過去は謎に包まれていて、冒険者の連れ合いを失ったとか、自分が熟練冒険者だとか、色々な噂があるらしい。
シーリス「それ、読者の設定?」
DM「単なる僕の思い入れだよ」
シーリス「バカ」
とはいえこうしてNPCにも感情移入するのは悪くは無い。プレイヤーのいない彼らを彩れるのは、他のプレイヤーだけだから。
そういえば同じような歌姫で、元は人魚でさる事情で人間の姿になり、悲しい思い出を歌に込めているというキャラもいたような。
★冒険者ギルドと傭兵王カシューの事
ルシアのショータイムが終わると、お馴染みのスレイン・レイリア夫妻がやって来て、一行を地下の会議室に呼び出します。
そこにはシャダムと夫妻の他にもう2人の人物がいて、どうやら彼らを含めた5名がギルドの主要メンバーのようでした。
そのもう2人の人物ですが、1人はいかつい顔の魔法使いグース。魔法使いと言うか、山賊の頭って感じです(笑)
グース「うつけものどもがっ!!」←PCに出会い頭に
フォース「ヒエーッ、何だかわからないけど、ごめんなさい」
シーリス「何を謝っているのよ。怒られる理由なんて無いじゃない」
グース「お前たちだな。最初の仕事でもうレスキュー隊の世話になったという軟弱者は!!」
オルソン「それはそうだけど、あれはシナリオの為で……」←そうそう、相手が悪すぎた
セシル「キル・ケイオス!それは腐ったプレイヤーのいい訳だぞ。オレたちは未熟だったから、怒鳴られて当然なんだ」
何故か魔法使い2人だけやけに熱血漢です。マトモに知的な魔法使いはスレインしかいないのか(苦笑)
もう1人は元はフレイム近隣の盗賊団の頭だった女盗賊スィスニア。現在はさる事情でこちらの手伝いをしているとか。
彼女は小説ではライデン盗賊ギルドのフレイム支部長でしたね。フォースの部下で、ライナの上司でもありました。
自己紹介も終わったところで、まずシャダムから一行に謝罪があります。とんだ誤情報で酷い目に遭わせましたから。
しかしそれも全くの無駄ではなかった。マーモのアシュラムがロードス統一の為に暗躍しているという情報は大変貴重です。
しかもその為に超強力なアーティファクト"支配の王錫"を求めているとあっては、これは国家規模に重要な情報ですらある。
シャダム「その杖なんだが、持つ者が邪悪な意思の持ち主なら、恐るべき存在となるだろう。
しかしその資格に相応しい者が持てば、この世の為に素晴らしい力を発揮してくれる事だろう」
どうかな、例え善良であれ邪悪であれ、魔法で人の心を支配する事が、果たして世の為人の為と言えるのでしょうか?
人は弱い。例え普段は善良でも、強大な力に魅せられ過ちを犯さない保証は無い。指輪に魅せられたボロミアよろしく。
個人的には、世界を支配する力なんて、人間にとっては必要の無い無駄なものだと思う。そんなものは可能なら破棄すべきだと。
しかしシャダムはそれに相応しい人物がいると言いたげです。
シャダム「お前達、秘密を守る事に命を懸ける事が出来るか」
セシル「勿論だ」←安請け合いするな
彼の言う人物とは、フレイムの国王カシューです。リプレイでは初登場で、小説ではお馴染みの"傭兵王"ですね。
前作では「英雄戦争」のエピソードが未公開なものだから、この時点では彼の人となりを知る人はいない。
しかしやはりリプレイでもベルドがファーンを一騎打ちで倒し、カシューがその後でベルドの息の根を止めました。
それ以外の性格や実力も基本的に小説と同じで信頼できる人物です。実はこの都合の良過ぎるギルドのスポンサーでもある。
スレインとレイリア、それにスィスニアがこうしてライデンでギルドに参加しているのも、彼との縁があればこそですね。
カシューが小説と同じ性格だとしたら、確かにアシュラムに渡すよりは彼に渡した方が良さそうではある。
それを知った上でどうするかはシャダムがフレイムに報告してからの指示待ちになるので、この場ではこれ以上話は進まない。
でもカシューと杖の事は決して口外してはならないと緘口令が敷かれ、当分の間オルソン達には自由時間が与えられました。
オルソン「口外したら?」
DM「当然、首チョンパだ」
しかし首チョンパという言葉も今では殆ど死語ですよね(苦笑)
★女性パーティーとともに敵の本拠へ向かう事
彼らが会議室を辞して酒場に戻ると、前回彼らを助けてくれた女性だけのパーティーに声をかけられました。
フォース「わあ、近寄らないで、近寄らないで。僕はカウンターの方へ逃げます」
本当に女嫌いなんですね、ロールプレイが徹底してます。ていうかこれはもう殆どビョーキです(笑)
彼女達が彼らに話しかけた理由は、彼らにちょっとした悪党退治の手伝いをして貰いたいからです。
彼女達によると、ライデンから2日ほど南に下った所に小さな村があり、そこが悪い魔法使いに支配されているとか。
しかもその魔法使いは奇妙な技を使うらしく、どんな相手かは未知数なので彼らに助っ人をお願いしたいという訳です。
オルソン「こっちには助けて貰った恩があるからねえ〜。
カシューというのがやって来るまで1週間以上はありそうだし、ここは行ってもいいんじゃない」
セシル「邪悪な魔法使いを許しておく訳にはいかん」
まぁこっちにはある意味その上を行く厄介な魔法使いがいるんですがね(苦笑)
協力する事に決めた一行はその晩はギルドで休み、翌日に出発。2回ほど怪物との遭遇もあったけど数の暴力で圧勝。
DM「大変だった……。こんなに沢山NPCを登場させるんじゃなかった」
1人2人ならともかく、一パーティーまるまるですからね。SWと違って固定値という概念も無い?から処理も大変です。
仮に固定値があってもダイスロールの手間が省けるだけで、面倒な事に変わりはないけど。猫の手4巻級の数になるともう……。
こうして目的の村が目前となりましたが、ここに至って女性パーティーのリーダーから残念なお知らせが入ります。
オルソン「うげっ!また罠に嵌められたんじゃないかな」
DM「その通り!と言っても、この女性達が悪者という訳ではなく、この村全部が悪者だという事なんだけどね」
実は彼女達はある魔法使いに恨みを買っていて、付け狙われているんです。その魔法使いの本拠地こそがこの村です。
そこでオルソン達に加勢を頼み、「殺られる前に殺れ」とばかりにこっちから敵の本拠地を殲滅してやろうという訳です。
セシル「なんだ、そんなら最初からそう言ってくれても、付いて来てやったのに」←いい奴だなセシル
やはりこのパーティーがそんな事で怒る筈も無く、彼女達は謝罪すると、どう戦うか作戦を練る事にします。
フォース「そいつは無駄です。何しろ、このパーティは力押ししか出来ないんですよぉ」←情けない
しかし相手の魔法使いは本当に強い。例の奇妙な技もあるし、村人の数の暴力もあるし、流石に正面突破は……。
なお村人の数は30名ほどだそうです。
オルソン「30人かあ、それは中々多いなあ。数はやっぱり脅威だからな」
いくら強くても、数が多いと微量のダメージも結構なものになるし、何回もダイスを振ると全てが成功するとは言い難い。
幸い野盗崩れの雑魚ばかりなので、多分海賊同様1レベル程度でしょう。でも流石に30人を相手にするのは賢いとは言えない。
なお彼女達のパーティーにはセシルほど使える魔法使いはいない。
シーリス「ここは私たちが頑張って、この前助けて貰った恩を返しましょ」
マール「でも本当は、恩を感じなきゃいけない相手はスレインや、レイリアさんの様な気がするね」
DM「その通りだけど、指摘してあげちゃ可哀想だよ。彼女らもそれは十分に感じているみたいだしね」
セシル「そうだ。女性は大事にしなけりゃいかん」
フォース「なら、セシルは今回は後方で待機していてくださいな」←相変わらず酷いよ
セシル「ケッ、言うと思ったぜ、シーフ野郎!」
オルソン「アーッ、うるさい。そんなにケンカばかりしていると、僕もバーサークするぞ」
あの時洞窟に残っていた海賊は1レベルが3人だけで、多分彼女達が倒したのはそいつらだけ。
★フォース、おとりとなりて近づく事
女性冒険者パーティーと共に悪い魔法使いの本拠地を目前にした一行は、早速侵入の為の作戦を練りました。
DM「1ヶ月の間に作戦は十分に練ってくれたかな?」←コンプティークは月刊誌
オルソン「もちろんだよ〜ん。まず、剣を抜く、次に雄叫びを上る、そして突っ込むーーどうです、すばらしいでしょう」
なるほど、凄い作戦だ。前作のリーダーと発想が同じという点が特に凄い(笑)
まぁそんな与太話は置いといて、まず今回同行している女性だけのパーティーの構成を確認しておきましょう。
メリッサ
クラス:ファイター5
パーティーのリーダーで、装備はプレートアーマーにソード、シールド。某マイリー神官とは無関係。
アルマ
クラス:ファイター3
長い銀髪を垂らした美人で、装備はチェイン・アーマーと槍。戦士にしては比較的軽装で、差し詰め軽戦士。
リオナ
クラス:シーフ?
パーティー最年少の16歳。素肌に革鎧という所謂ビキニアーマー・スタイル。ただし一見老けている。
クリス
クラス:クレリック5
教養は低いが知恵が高いドングリ眼の少女。装備はメイス、プレートアーマー、シールド、及び魔法の指輪。
イミアナ
クラス:マジックユーザー2
最近パーティーに加わったボーイッシュな女の子。取得魔法は"スリープ"×2で、あとは武器で戦う(お前もか)。
以上の5名から成るパーティーです。構成はなかなかいいのですが、ややレベルにバラつきがある。
なお彼女達はPCゲーム「五色の魔竜」でPCが青竜島に向かう際に同行したパーティーのモデルのようですね。
水竜エイブラを目前にして敵にやられて息絶えるという、ちょっと不幸な感じのパーティーだった筈です(多分)。
イミアナのスタイルについてはこんなコメントが寄せられています。
セシル「当然だ。魔法使いだって、戦わねばならない時には杖を振るう」
ただし彼女の攻撃手段はダガーの投擲。決してセシルのように前衛に立ったりはしない(笑)
さて肝心の作戦ですが、フォースとリオナの盗賊2人が村に矢を射ち込み、敵をおびき寄せる事にします。
追っ手が少なければ返り討ちにし、多ければその隙に手薄になった村を襲う寸法ですが、果たして上手くいくか?
DM「リオナさんは、フォースと一緒ならと快く引き受ける」
セシル「いやあ、美男子はいいなぁ」
フォース「僕に惚れても無駄ですよ。お嬢さん」
オルソン「そのパターンはやめろっていうの。それより作戦実行だ。みんなガンバロー、オーッ!」←一人円陣
ていうか村の鼻先でこうも盛り上がっていたら流石に気づかれそうなものですがね。
作戦が始まると、盗賊2人は影に隠れるハイド・イン・シャドウと、忍び歩きのムーブ・サイレントリーを駆使して接近。
村の守りは貧相なもので、囲いの類いはない。単に道が南北を貫いていて、入り口に相当する場所に門柱が立ってるだけ。
見張りは門に2人、巡回警備が数名。気になる装備は海賊同様統一されていて、レザーアーマーにハンドアックスらしい。
一方こちらの飛び道具はショートボウなので、修正なしの射程距離は30m。シャリーの"ブレス"で若干強化されています。
2人はおあつらえ向きの射撃ポイントに移動し、門柱の見張りを狙います。丁度敵は2人なので、1人につき1人を狙う。
フォース「ダイスの目は19です。でも、ダメージは2発ですけどね」←命中は凄いがダメージはショボ
セシル「う〜ん、無能か有能かわからんヤツ」
マール「勿論、優秀だよ。これなら見張りが声をあげる事が出来るからね」←偶然だけどね
ところがこの見張りがHP1という貧弱貧弱ウリリリリィィィ!なので、2人とも射殺してしまいました(笑)
仕方ないので姿を現して大声を上げて挑発しました。
フォース「村人のみなさん、よく聞いてください。私は見張りを倒しました。私は見張りを倒しましたよ!」
これに驚いた村人はたちまち警戒状態。3名ほどがフォース達を追って出てきて、入り口には10人程が駆けつけます。
結局裂けた戦力は5人だけ。囮の数の少なさと怪しさが仇になったのか、思ったほどの効果はありませんでしたね。
TRPGではちゃんと敵にも知能があり、ゴブリンはともかく人間程度の知能の持ち主なら待ち伏せを警戒するのが当然。
数値として存在するデータに限らず、このような数値では表現されない内面的能力も意外な所でネックになったりする。
★奇怪な怪物出現し、窮地に陥る事
フォースとリオナの囮作戦は推定30の敵戦力の内5人を削りましたが、まだ推定25人程が村に残っている。
セシル「仕方が無い。早速強行突破あるのみ。キル・ケイオス!オレは接近戦が大好きなんだ〜!!」
オルソン「やっぱりこうなるのか〜。バーサークだ、ウリィィィィ!」
やはりこの連中に作戦は無意味でした。まぁHP1の雑魚集団だし、この戦闘では負けないでしょう。この戦闘では……。
実際村に突っ込んでいった9人の冒険者達は数の劣勢をものともせず、"スリープ"を数回使用してこれを殲滅しました。
囮組のフォースとリオナも2人の追っ手を倒して戻ってきます。ただし少しだけ怪我をしました。
フォース「全く、盗賊の仕事は剣を振り回す事ではないんですよぉ〜。
これでは全く無理、無茶、無謀のセシルさんじゃあないですか」
セシル「何を言う。オレは二人を杖で殴り倒したが無傷だぞ」←おまえっ……!
フォース「良い子のみんなは絶対真似しちゃいけないよぉ〜」
ただし後の世に杖を折りゴブリンズを撲殺する筋肉魔法戦士が登場したりする……。
捕虜にした村人に口を割らせた一行は、ボスの魔法使いが住んでいるという家に襲撃を仕掛けます。
DM「どこから入る?」
セシル「勿論、正面から堂々と入るぞ」←いい加減にしろ(笑)
シーリス「下手な作戦を立てるより、その方が確実ですものね〜」←諦めるな
フォース「嘘ですよぉ〜。読者の皆さん、やっぱり作戦は考えましょうね」
とはいえ小細工を練る余裕はないし、中から入るよう促す声も聞こえるので、今更作戦も何もありません。
そりゃああれだけ大立ち回りをすれば気づいているでしょうね。ぶっちゃけ最初のフォースの大声から臨戦態勢でしょう。
家に入るとそこはちょっと広いエントランスホールで、黒いローブの魔法使いが待ち構えていました。
彼は3体のリビング・アーマーを従えていました。リウイの"番兵"同様独りでに動く鎧で、例の奇妙な技がこれでしょう。
DM「これぞ名付けてプレート・モンスター1号、2号、3号だ〜!」←略してプレモン
これは「コンパニオン」のP.41にも挿絵が載っていて、鎧の各部が浮遊して人形になってます。ややジョイメカに似てる(古!)。
なお「コンパニオン」にはジョイメカリビング・アーマーに限らず、このリプレイシリーズの挿絵が数点掲載されています。
ちなみに同じモンスターでも個体差があって、微妙に装備が違ったりします。
1号は巨大な盾とフレイルの重武装タイプ。2号は鎧の各部が9片に割れて中に浮かび、武器はソードのノーマルタイプ?
3号は蜘蛛の足のようなショルダー・パットを持ち、このパットが6本の槍となる。まるで「るろ剣」の乙和瓢湖です。
シーリス「3体もいるの?気持ち悪〜い」
セシル「そんな怪物、オレの正義の炎で叩き壊してくれる。
そりゃ!必殺、ユーザーのファイヤー・ブゥォルだっ!!」←巻き舌
ただし敵は殆ど抵抗してしまったので、それぞれ10点程度のダメージに留まりました。1号だけ20点ほどです。
なおこの時セシルはダメージ決定を個別に振りました。推定SNEのハウスルールで、公式ルールでは1回振りです。
この手の範囲魔法の判定では個別振りと全員まとめて1回振りがあり、SWの公式ルールでは状況に応じて使い分けられます。
PCがモンスターにかける際(あるいは逆)は前者、PCがPCデータを持つ敵を含む集団にかける場合は後者となります。
これはモンスターの場合固定値が存在する為、PCが個別に振るという手間を尽くしても、その一度で解決できるから。
しかし相手もPCデータを持つ場合は互いに振っていたのでは煩雑なので、かける側は1回振りでかけられる側が振ります。
この固定値という概念があるお陰でマスターはPCに判定を任せる事ができ、マスタリングの手間が軽減するという事ですね。
ただし公式のリプレイですら必ずしもこれに従う訳ではなく、各ユーザーも同様でしょう。結局はその辺の采配もマスター次第。
★またもや救いの神現れ、大逆転となる事
セシルの火炎に続き、既に魔法を使い果たしたイミアナは投げナイフで敵魔法使いにチクリとダメージを与えます。
リオナはハイド・イン・シャドウで戦闘に参加する素振りを見せ、僧侶のクリスはこのプレート・モンスターを前にして
クリス「あたいバカだからわかんない!」
とか言っていました。うん、一人称からしてバカっぽい。でも明かりの魔法で室内を照らし、一応の役には立ちます。
またこの戦闘では敵魔法使いは鎧どもを操るのに忙しい上に、シャリーの"サイレンス"のお陰で魔法は使えませんでした。
DM「で、誰がこの怪物の相手をするんだい?」
セシル「オレが……」←やめとけって
接敵関係は、シーリス&マールVS1号、オルソンVS2号、メリッサ&アルマVS3号です。
幸いダメージが大きかった1号は魔剣持ちのシーリスが一撃で倒しましたが、そこからが問題でした。3号が強いの何の。
3号の六道蠱ショルダー・パットが3本ずつメリッサとアルマに向かい、これに毒があってNPC2人とも倒れる。
たちまちオルソン&シーリスVS2号と、マールVS3号という形になりました。これだと次にマールがやられそうですね。
そして2号と3号がオルソンとシーリスに襲い掛かり、戦線は崩壊し、後衛に雪崩れ込まれ……と微妙に全滅ムードです。
しかしそこでクリスは頭が悪いなりに考えた。彼女には教養は無くとも知恵はあるから。
クリス「う〜んと、ここはとっても危ないから、指輪の精さんに頼みましょうか?」
彼女の指輪にはジンが入っていて、召喚されたジンは2ラウンドで鎧を殲滅し魔法使いは降伏。めでたしめでたし。
……いや、そんなものがあるならオルソン達の加勢は要らなかったのでは。最強夫婦に続きNPCが出張り始めましたね(苦笑)
魔法使いはギルドに引渡して一件落着です。落着なんですけど……。
シーリス「結局、今回も私たちの活躍って目立ってなかったわね」
オルソン「う〜ん、情けない。こんな事では王への道は遠いよ〜ん」
NPCが本気を出せば解決するシナリオでしたからね。思い返せば今まで彼らが倒したのは海賊と村人だけです。
何というか敵が極端なんですね。瞬殺するかされるかというものばかりで、彼らが「頑張れば倒せる」程度の敵がいない。
最初のシナリオは導入だから仕方ないとしても、今回のようなサブイベントすら自力で解決できなくては達成感もない。
今回はまだメインイベントと関係ありませんでしたが、次回以降もメインの傍らでこういったサブイベントがあります。
そしてメイン・サブ問わずに、その殆どが今回同様NPC万歳な内容だったりする。まぁストーリーは面白いんですけどね。
★傭兵王が大いなる使命を勇者たちに与える事
DM「さて、今回も頑張ってみようか」
フォース「と言われても、頑張っているのがNPCばかりでは、盛り上がり様がありませんよ〜」
やはりプレイヤー本人もその事を気にしている様子です。ただDMは一切気にせず話を進めます(笑)
前回悪い魔法使いを倒した(のを傍観していた)一行はライデンに帰還し、噂の"傭兵王"カシューと対面しました。
ただしここの挿絵のカシューはさながら床屋に行った直後の角刈りの男で、小説のビジュアルはまだシャダムのものです。
そしてカシューに同行していた前作のPCパーンとディードとも顔合わせをし、小説同様主要キャラは勢揃いですね。
しかし今思えば、リプレイではスチャラカだったこの2人を主役とヒロインに抜擢した水野先生の先見の明は異常です(笑)
簡単に自己紹介したカシューは、小説同様気さくな様子でこう切り出しました。
カシュー「王たる資格を与えてくれるという古代の魔法の杖の事だが、
アシュラムにその杖を渡すのは絶対にいかん。
と言って、オレが持つべきかどうかは、正直なところよくわからん。
オレは嘗てのファーン王やベルドの様に選ばれた英雄では無いし、
また杖の力によって建てられた王国が、長い間民の信用を得る事が出来るとも思えないからだ」
セシル「ずいぶん奥ゆかしい男だな」
シーリス「あんたが厚顔無恥過ぎるのよ!」←酷
おお、やはりこっちのカシューも気さくで俗な性格ですね。。稀代の英雄でありながら、自分の分を弁えている。
でもだからこそ信用できそうにも思えます。権力者が暴走するのは非常に恐ろしい事ですが、彼ならそれはなさそうですね。
杖をどうするかはまだ決めていないけど、アシュラムの手に渡るのは阻止するというのが今後の方針になるでしょう。
もし再び大戦が起きれば文明は崩壊し、蛮族レベルに逆戻りするかもしれないというがカシューの懸念している事です。
小説ではそういう事はなかったけど、このリプレイでは既に数国が無政府状態なので、とっても信憑性があったりする。
カストゥール王国の崩壊が魔法文明を衰退させたように、技術や文化は必ずしも進歩するとは限らず、時に衰退もし得るんですね。
セシル「その通り!キル・ケイオス。あんな連中は皆殺しだ!」
アシュラムだってそこまで過激な事はしなかったのに、こっちの魔法使いときたら……(苦笑)
そうと決まればすぐに出発します。ライデンから南東の方角に進み、魔竜シューティングスターの住処火竜山を目指します!
現在一行はアシュラム達から5日ほど遅れていて、普通に(多分徒歩で)旅をすると約10日程度の行程となります。
なお「SWサポート2」にはこういう旅の処理を紹介していて、なかなか面白い。強行軍だと早くなるけど疲れるとかね。
幸い敵は山登りを目的としているので徒歩だから、こちらは何かしら乗り物を使って一気に距離を縮めるべきです。
そこでシャダムは馬車を用意します。SWでは全員が馬車を使えば1.5倍、乗用馬に乗れば2倍以上の速度が望めます。
しかしカシューの乗り物はもっと凄いですよ。なんとロック鳥です。輸送用に飼い慣らされたもので、座席つきです。
ドラゴンとかペガサスを騎獣にするのはよく聞きますけど、ロック鳥を乗り物にしてしまうのはフォーセリアでは他に例がない。
ただしここからはカシュー・パーン・ディードはこのロック鳥に乗って別行動です。敵のルートも分かりませんから。
でもちゃんとスレインとレイリアはこっちについてきてくれます。ほら、万が一アシュラムと遭遇したらまた負けるし。
オルソン「うう、情けない。今度は命を取られるだろうしな」
ていうかそんなデカイものがあって確実にアシュラムに先回りできるなら、全員で火竜山に直行した方がいいのでは?
★前回キャンペーンの意外なる結末の事
パーン達と別れる直前、前作からのファンへのフォローなのか、前作の結末が語られました。概ね小説通りでしたがね。
「英雄戦争」を生き延びたパーン達は再びウォートに会い、対カーラ用の強力なマジックアイテムを譲り受けました。
それは"プロテクション・フローム・マジック"の巻物で、この魔法防御を頼りにカーラとの直接対決に挑んだのです。
小説ではこれは"アンチマジック・ワンド"でした。あらゆる魔法を行使不能にするとんでもないアイテムでしたね。
いずれにせよ彼女のような超高レベル魔法使い相手にマトモに戦う実力がない以上、これは当然の処置と言えますね。
前作ではマジックアイテムによってその辺の調整をしていたのに対し、今回はNPCで調整しているとも考えられる。
アイテムを使うのはPCなので最後に勝負を決めるのもPCですが、NPCの場合は完全に手柄を奪われてしまいますが。
ギムの犠牲はあったが、一行は見事にカーラに勝利。ウッドがサークレットを引き剥がす事に成功しました。
ところがその時ウッドがサークレットを嵌めてしまう。彼は新たなカーラとなってロードスの戦乱を影から操っています。
その後パーンとディードは彼を追い、エトはヴァリスの復興に貢献し、スレインとレイリアはギムの遺体をアラニアに運びました。
小説ではギムの遺体はカーラの屋敷諸共に火葬にしてしまいましたが、こっちではちゃんと故郷の土に葬られたんですね。
そしてエトはフィアンナ姫と結婚してヴァリス王になり、スレインとレイリアはロードスの平和の為にカシューに協力してると。
小説と比べるとスレイン周りのエピソードが若干違ってますね。特にアラニアに帰ってからの彼とレイリアの行動がかなり。
小説のスレインは暫くザクソンで自治活動をして、小説5巻「王たちの聖戦」を契機にフレイムの宮廷魔術師になりました。
でもこっちでは自治活動無しでいきなりカシューに協力し、冒険者ギルドというリプレイのみの存在の顧問になってますから。
セシル「つまり、前回のキャラクター達は今やロードスの命運を握る勇者となっている訳だな。
オレも負けてはいられないぞ。オレはこの短剣にかけてロードスから邪悪を駆逐してくれる!キル・ケイオス!」
そこで杖ではなく短剣に誓う辺りが実にセシルらしい。でも小説の彼は微妙に不幸な役回りで、色々苦労人ですがね。
★荒野の村での一夜、そして新しき冒険の発端
カシュー達と別れた一行は街道を進み、3日程度でヒートリバー(熱き川)沿いの小村の群立地帯に差し掛かります。
この辺りは小さい村が点在しているのみで、ライデン⇔ヴェノンの街道の途中にあるホストに行かないと大きな街はない。
そういう大きい街なら武力も物資もあって治安が維持されているが、こういう小村は悪党に襲われ壊滅していたりもする。
この世界は基本封建社会で、大抵の村にはそれを領地とする領主がいる。しかし必ずしも安全が保障されている訳ではない。
領主と言えども領地の全てを把握しているとは限らず、その領主が悪事を行う事もあり、事件が起きても露見しない事がある。
モンスターや悪党による蹂躙、領主による暴政、何かの組織の陰謀……。それが人知れず民を苦しめている事があります。
今回一行が遭遇するサブイベントは正にそういう類いの事件で、人知れず、しかし確実に人々を苦しめる敵が登場します……。
さて、一行はこれからそのホストからヒートリバーを遡り、火竜山の頂上を目指す予定でいる。
なお熱き川は火竜山の東にあるので、火竜山の西にあるホストから一度火竜山を経て東に行き、そこから登るとは考え難い。
位置からするとヒートリバーとは火竜山の西へ流れて海に至る炎の川かもしれない。でもそれだとフレイムリバーです。
そういう予定を立てていた3日目の夕方、一行は小さな村に到着し、ここに宿を求める事にします。
ところが村人の行動が不審でした。一行を見ると慌てて家に引っ込み、道行く人は逃げ出すように去ってしまいます。
セシル「無礼な奴らだ。おい、マスター。村人の一人に"ディテクト・イービル"の呪文を使うぞ」
そっちの方が無礼だよあんた(苦笑)
呪文の判定では村人は邪悪ではない。しかし憎しみではなく、恐怖を覚えている様子でした。
それどころか彼らに何かを訴える様子を見せつつ、首振って去っていく。……おかしい、明らかにおかし過ぎる。
そこでスレインはESPのメダル(相手の心を読む)を取り出して、村人の心境を読みます。
スレイン「こいつらは旅人の様だ、でもきっと伯爵には勝てないに違いない、とか考えていましたねぇ」
どうやら横暴な領主に苦しめられていて、一行に助けを求めようとするが諦めるというお決まりのパターンのようですね。
しかしただの横暴領主ならまだ可愛いものです。伯爵には更なる恐るべき秘密があるのです。
フォース「名前はストラードとか言いませんよね」
ストラードとはAD&Dに準拠した「暗黒城の領主」という作品に登場する吸血鬼です。横暴領主、と見せかけて吸血鬼か。
領主が吸血鬼となって領民を苦しめる、か……。それはそれでパターンですけど、ただの横暴領主より恐ろしい敵ではある。
現時点では予想に過ぎませんが、それでも街からは人の姿が消え、雨が降り出し雷鳴が聞こえるとソレっぽい。
今までのスチャラカなノリが一気にホラーRPGの様相を呈する……ような気がする。まぁ心証は限りなく黒ですね。
真相がどうあれ、宿無しで雨に打たれるのはキツイ。
マール「普通なら、村長の家にでもご厄介になるんだけど、それらしい家は見付からないかな」
DM「この村には大きな館は二つある。一つは村外れに立つ、館というよりもちょっとした城といった感じの建物」
それだけ聞けば即却下です。明らかに伯爵の居城じゃないですか。彼の正体が何であれ、避けるのが吉です。
もう1つは普通の倍ほどの大きさがある民家です。
フォース「民家の方にしましょう。城の方はちょっと……」←ですよねー
セシル「何を怯えているんだ、盗賊。オレ達は恐れる必要は無いぞ」
フォース「そりゃ、恐れもしますよ。何せ相手はヴァンパイアなんですからね。前世魔神の正体見たり!」
DM「バレタカ〜」
ああ、「ダイヤモンドアイ」ね。外道照身霊波光線、"バブリーズ"でも出てきたネタです。
結局民家の方を訪ねると、やはりこっちは善い人らしく泊めてくれました。ただし出てきたのは若い娘さんだけです。
フォース「若い女の人は苦手ですよう」
オルソン「ウリィィィィィィィ!そのパターンをやると、オレはバーサクするぞ」
フォース「怖〜い。皆殺し軍団ですよ〜」
フレッド・セイバーヘーゲン著「バーサーカー 皆殺し軍団」より抜粋。著者は推定ヒースの名前の元ネタ?
家には彼女一人しかいませんでしたが、この人数が泊まれるだけのベッドはありました。
そこで見取り図を見ながら誰がどの部屋に寝るかを決めます。……もう襲われるとしか思えない展開ですね(笑)
★吸血鬼の正体、明らかとなる事
推定吸血鬼となった伯爵の支配する村で宿を取った一行。窓の外は酷い嵐と稲光でした。
シャリー「不吉ね」
オルソン「なんだい、いきなり声を低くして、まるで妖怪百物語みたいな感じだな」
フォース「だって敵は西洋妖怪人気実力ナンバー1のヴァンパイアなんですからね」
セシル「そんな事はキャラクターは知らないのだ、お前は腐ったプレイヤーだぞ!」
吸血鬼を妖怪に分類すべきかは不明ですが、ファンタジーでは吸血鬼は最も恐ろしい敵の一つではあります。
ただし伯爵=吸血鬼説はプレイヤー知識によるもので、まだPCが断言できる程には情報は出揃っていません。
マール「こんなくらい雰囲気の時こそ、オイラの歌が役に立つんだ。
それっ!ハーフリング、ハーフリング、ヤホー」
オルオン「やめろっていうのに。いつもおんなじ歌ばかりで、もう聞き飽きたよ」
さり気なく辛らつなオルソンの突っ込みは、稲光よりも鋭かったという(笑)
そうこうする内に夕食も終わり、まだ夜も浅い時分ですが、こんな状況では外にも出れない。
セシル「何もする事が無いんなら寝てしまうぞ」
DM「あのね〜、もっと手近に大事な情報源があるでしょうに」←泊めてくれた娘さんね
フォース「わ、忘れていた。ああ、僕はなんて無能なんだろう」
彼らがNPCに出番を取られるのは、DMだけの責任ではないのかもしれない。
結局スレインとレイリアが娘さんに事情を聞きました。彼女の名はシャンディス、この村の村長の娘です。
彼女は最初本当に話していいものかと逡巡しますが、レイリアが魔法で落ち着かせて優しく語り掛けました。
レイリア「安心なさいな。ここにいる者は全て、正義の志の高い立派な若者たちです。
あなたが何が恐れているのかわかりませんが、必ずやその恐れの元を撃ち破ってみせましょう」
何しろレイリアは20レベル前後の僧侶だから実力も確か。シャンデイスは安心した様子で真実を明かしました。
ていうかこの辺から既に「最強夫婦とそのお供が村の危機を救う」的な構図になっているんだけどいいのかな(苦笑)
シャンディスによると、この村は「英雄戦争」が始まる前まではスヌークナッド伯爵家が治めていたそうです。
当時の当主であった伯爵は高位の魔法使いで、カストゥールの文献を数多く収集し魔法の研究に没頭していました。
彼の研究目標とは不死。その為にシャンディスの父親であった村長に領主の仕事を任せ、書斎に閉じ篭っていました。
領主としては褒められた話ではありませんが、税金は高くないので彼の評判は悪くなく、まぁまぁ平和な日々が続きます。
そんなある日、3年ほど前についに自分の研究を完成させたようです。
「自分は死から解放された、同時に生とも訣別した」
そうお触れを出して自ら葬儀を行い、村の全権を村長に譲って二度と村人の前に姿を見せなくなりました……。
それだけで終われば良かったのですが、最近になって数名の村人が行方不明になり、変死体となって発見されました。
彼らは獣に襲われたように全身ズタズタで、内臓も食い荒らされていました。シャンディスの父親もその1人です。
更に伯爵の城に怪しい影が入るのを目撃した人もいるし、夜になると無人の筈なのに明りが灯っていたりもします。
そういう訳で村人一同伯爵の仕業であると恐れをなしている。しかし村人は村を捨てる事もできないでいます。
シャンデイス「その誘惑を押し止めているのは、伯爵と対決しようという勇気では無く、
今のロードスのどこに行こうと同じだという諦めなのです」
目の前の脅威と未だ見ぬ脅威の板ばさみになっているんですね。正に今のロードスは"呪われた島"の名に相応しい。
本来彼ら民衆を救うのは王や領主の責任ですが、その領主が敵とあっては、一行のような冒険者の出番なのです。
この話を聞いた一行は、当然村人を救おうと奮い立ちます。
セシル「礼など要らん。邪悪な者を倒す事こそ、我が使命なのだ、キル・ケイオス〜!」
レイリア「明日朝早く館に出掛けて、片を付けてしまいましょう」
オルソン「レベルの高い人は気楽でいいね。オレたちにとっては命懸けだ」
このゲームの吸血鬼も恐ろしい敵のようですし、村人の遺体を見るに敵は吸血鬼だけじゃありませんしね。
★不意打ちを受け、シャリーさらわれる事
話も聞けた事でその晩は早々にベッドに入り、明日に備えました。ちなみに部屋割りは2人ずつ4部屋です。
オルソン・セシル、マール・フォース、スレイン・レイリア、シーリス・シャリーで、シャンディスは1人です。
この際シーリス・シャリーとシャンディスの部屋のみ、他の6人の部屋とは離れた玄関寄りの場所にあるのが特徴。
しかし敵の対応は早く、深夜に奇襲を受けます。気づくかどうかは賢明度(知恵)による判定です。
オルソン「なんだ、なんだ。賢明度7の僕が成功する訳無いじゃないか。
成功したのは、誰?マールとフォースとそれにシーリス」
マール「ちなみにオイラも賢明度は7だからね」
オルソン「う、ぐぐっ」←負け組
とはいえ賢明度とか知力といった能力値をどう解釈するかも問題ですがね。結局PCの内面はプレイヤーのものだし。
SWには知力がありますが、これは記憶力や感覚によるもので、推理力や判断力は基本的にはプレイヤーに依存されます。
あとスレイン・レイリア夫妻のどちらかも成功したらしい。成功した人は目を覚まし、裏口からの侵入者に気づきます。
マールとフォースは隣で寝る狂戦士と戦う魔法使いを起こしに向かい、シーリスはシャリーがいない事に気づく。
そして出遅れたPCの代わりに唯一現場に向かった夫妻は、侵入者がワーウルフ(人狼)だと判別して叫びます。
ワーウルフどもは裏口だけでなく、玄関からも侵入してきます。村人を食い荒らしたのはこいつらの仕業だったんでしょう。
この際鎧を着るかで悩みましたが、それをやると10ラウンドかかるので手遅れになる可能性がある。
セシル「鎧は着ずに武器だけ持って早く行かねばならないぞ」
これは普段から鎧を着ないから言える事。戦士達は鎧無しのプルプルお肌で行ったら大変な事になりかねない。
なおこの際の「手遅れ」とは、夫妻がやられてしまうのではなく、夫妻に手柄を取られてしまうという意味です(笑)
実際最強夫婦は僅か3ラウンドでワーウルフとダイアーウルフを滅ぼし、またもやPCの出番はなくなりました。
しかし彼らも何もしなかった訳ではなく、玄関の方を担当しました。こっちの敵はワーウルフ×2とゾンビー×3。
こいつらはセシルの"ファイアボール"とマール・オルソンの活躍で倒せました。シーリスは鎧を着ていて何もしない。
こうして侵入者は殲滅しました。シャンディスも無事です。しかしシャリーがいない事に一同愕然。
フォース「きっと、ヴァンパイアにチャームされて、攫われたんだ。普通なら村長の娘が攫われるパターンなのに」
まぁ人気投票2位!だし、ぶっちゃけシーリスとかより人気あるし。
★伯爵との対決、そしてシャリーの危機
シャリーを取り戻そうと、一行は伯爵の城に殴りこみをかけます。城は石造りの2階建てでした。
城壁には一面蔦が絡み付いていますが、不気味な様相を気にせず扉をぶち開けると、そこは12m四方のホールでした。
部屋の片隅には黒いマントを羽織った吸血鬼と、2体のガーゴイルが2階へ続く大階段の前に陣取っていました。
ここまで来れば交渉も口上も一切無しで戦闘です。しかしイニシアティブは敵の先攻で始まりました。
DM「ヴァンパイアは魔法だ。玄関を中心にファイアボールの呪文が炸裂する」
マール「アベシッ、死んでしまったよ〜」←え〜!
DM「成仏してね」
いきなり猛威を振るうヴァンパイアの強力な魔法に、低レベルの彼らでは為す術無し。……絶対バランスおかしい(笑)
セシル「こちらもファイアボールを使うぞ。ガーゴイルを射程範囲の中に入れる事は出来るのか」
DM「自分達も巻き込むつもりがあるのならね」
セシル「残念だ」
既に2体のガーゴイルはこちらに接敵してるので、範囲魔法は自爆技でしかない。
これが少々ヴァンパイアを削り、続いてはレイリアの"ターン・アンデッド"です。
DM「終わった、ヴァンパイアは塵となって消滅したよ」
はい、これで吸血鬼は倒せました。……いや、だからバランスおかしいって。瞬殺するかされるかだし。
続いてスレインの"マジックミサイル"が2体中1体のガーゴイルを瞬殺。最強夫婦はやはり最強でした。
強さは、NPC>(越えられない壁)>吸血鬼>(越えられない壁)>PCですね。じゃあPC必要ないし(笑)
でも一応あと1体ガーゴイルがいるので戦闘は続行し、またもや悲劇が繰り返される。
DM「ガーゴイルが先に殴る」
オルソン「ヒデブッ、僕も死んだ」
ああ、2人目の犠牲者が。小説では火竜山で壮絶な戦死を遂げたのに、なんでこんな消化試合の雑魚戦で……。
しかしそれでも戦闘は続く。いっそ最強夫婦に任せろとも思うけど、それだと本末転倒なので。
シーリス「あたしはガーゴイルに切り掛かる。でも、外れ」
セシル「オレは20で当てたぞ。ダメージは3発だ」←ダガーで攻撃しました
DM「レイリアはマールの死体の上に屈み込み、祈りの言葉を唱える」←蘇生呪文"レイズデッド・フーリィ"
マール「生き返った!」
またえらい簡単にマール復活。そして戦う魔法使いは脅威の出目です、命中もダメージも出目MAXだし。
そしてこの奇妙な世界は次のラウンドも続く。
DM「レイリアは今度はオルソンに"レイズデッド・フーリィ"」
オルソン「成功したよーん、よーん、よーん!」
セシル「オレは殴る。20で当てて、ダメージが3発」←またMAX
DM(信じられないヤツ)
次のシーリスの攻撃でガーゴイルは倒れましたが、なんか勝った気がしないな(笑)
これで2階のシャリーを救出すればめでたしめでたし、かと思いきやスレインがそれを制止します。
スレイン「今倒したのは伯爵ではありません。彼は上にいます。でも、君たちでは絶対に勝てません」
さっきから攻撃せずに何をしてるかと思いきや、魔法で城の中を調べていたようですね。
「絶対勝てない」と断言するだけの事はあり、伯爵はリッチのようです。このゲームにおける最強のアンデッド。
昨今宝島社等からファンタジーや神話の様々なキャラクターを紹介する本が数多く出ています(09年12月現在)。
リッチはその数冊の本の中でも紹介され、注釈として「フォーセリアにおけるノーライフキング」だと記されてます。
リッチとは魔法使いのアンデッドで、元々ノーライフはリッチをフォーセリア風にアレンジしたものだと言われます。
ちなみに名前の元ネタはいとうせいこう氏の「ノーライフキング」で、原意は「無機の王」でアンデッドではない。
それから最強夫婦は2階に上がって別次元の戦いをし、PC達は残ってワーウルフやワイトの追撃を阻みました。
オルソン「死んだり、レベルを抜かれたりで踏んだり、蹴ったりだよ〜ん」
ワイトにはレベルを下げるという恐ろしい能力があり、後の「ロードス島コンパニオン」にも受け継がれてます。
そうしてオルソン達の戦いが終わった頃、スレインとレイリアも戦いが終わって彼らを2階の一室に招きます。
そこにはシャリーが白装束でベッドの上に横たわっていて、その手前にはリッチの残骸であるガイコツが転がってます。
レイリア「最早、この僧侶を救う術は無いわ。
邪悪な魔法によってヴァンパイアに変えられてしまっているのです。
この娘の心臓に杭を、生木の杭を打たねばなりません。それは貴方方の役目でしょう」
フォース「む、惨い」
セシル「マスターこそがケイオスだったのか」
オルソン「オニ!」
マール「悪魔!!」
DM「何とでも言って」
これはあんまりな結果です。ていうかDMはこれをやりたかったのか、だとするとあまりにも悪趣味です。
ていうか吸血鬼を滅ぼす定番は白木(ホワイトアッシュ)の杭のような気もしますが、D&Dでは生木なのかな。
★シャリー絶体絶命、さあどうする!?
吸血鬼になってしまったシャリーが目覚める前に胸に杭を打つかどうか、一行は非情な決断を迫られていました。
オルソン「いくらNPCだって、そんな真似はできないよ〜ん。何か方法は無いのかな」
レイリア「わたしは知らない」
シーリス「かわいそうだけど仕方が無いわね。杭を打ちましょう」←アッサリ過ぎる(笑)
SWだったらアンデッド化しても"セーブ・ソウル"で救えるんですが、その手の手段はないようです。
しかしそれはあんまりなので、フォースが懸命に室内を探索し、伯爵の研究ノートを発見しました。
そこにはリッチになる為の研究や、人を吸血鬼に作り替える研究が記されていて、非常にヤバそうなものでした。
セシル「それは魔法使いであるオレの仕事だな。盗賊野郎、そのノートを貸せ!」
ところがセシルのレベルでは理解できそうに無い難解なものなので、スレインが解読しました。
ノートには吸血鬼を人間に戻す方法も記されているようで、シャリーを人間として起こす事ができそうです。
今のまま彼女の胸に杭を打てば、彼女の肉体は吸血鬼の魂諸共に滅ぶ。そういう設定のようです。
しかし特殊な素材で杭を作れば話は別です。肉体を滅ぼす事無く、吸血鬼の魂のみを滅ぼす事が可能です。
良かった、いや良かないけど取り合えず良かった。流石のDMもシャリーを殺す程の鬼畜ではなかったらしい。
ところがその素材がよりにもよって黄金樹の枝でなければなりません。またえらい無茶な注文が入りました。
なお黄金樹の設定ですが、どうやらこの時から現在のフォーセリアのソレと同一の設定が生きていた模様です。
神話の時代に世界樹から全ての生命が生まれ、その性質を受け継いだ黄金樹には生命力が満ち溢れている。
だから吸血鬼の負の生命力を打ち消し、正の生命力を肉体に与えて蘇生させる事ができるという理屈です。
問題は、その黄金樹がこの世界では妖精界にしか存在しないという事。どうやって行けば……。
フォース「簡単ですよ。妖精界は今、目の前に広がっているんです。
でも、ちょっと次元が違っていて見えないだけで……。我々には行きようがありませんねぇ」
おお、流石は本家スレイン。いかにも賢者っぽい事を言ってます(笑)
でも大丈夫。妖精界とこの物質界には所々交わる場所があるのです。ロードスでは帰らずの森が代表的ですね。
小説でも帰らずの森に黄金樹はありましたが、それは基本的に物質界に根ざすものだったので微妙に違います。
しかしアラニア南西部の帰らずの森まではあまりにも遠い。片道でも徒歩でひと月ぐらいはかかります。
そこでもう一度室内を調べます。この時スレインが嬉しそうに古代の魔法書をパクっていました。
セシル「勝手にどうぞ。戦う魔法使いのオレには不要なものだ」←勉強しろよ(笑)
しかし結局この場では有益な情報は見付かりませんでした。いよいよ手詰まりか……。
★鏡の森と、黄金樹の枝の事
ここで一行の偉かった事は、それでも諦めなかった。例え弱くても仲間を見捨てたりはしなかったのです。
そこでレイリアはシャリーを今の状態で保存し、救う術が見付かるまでもたせる事を提案しました。
この魔法は破られない限り半永久的に続く。ただし彼女を動かす事はできず、イバラ姫のようになります。
残る問題は王錫の件をどうするかです。そちらを優先するとシャリーを救う前に一行が全滅する恐れもある。
それに村人が城に火を放つ恐れもあり、色々危険です。残念ながらこのDMだとどちらも非常にありそう(笑)
そこで一行は王錫の件は一旦忘れて、シャリーを救う方を選びました。
オルソン「ま、その位は仕方が無いな。よーし、妖精界を探し求める冒険だ」
ぶっちゃけ一行が火竜山に行っても役に立たないし、同行してるのもこの事件を口外しないようにする為だし。
スレインもその辺を指摘されると認めました。そんな事に付き合わされるなら、彼らだけの冒険を始めればいい。
それに世界なんて大層なものを救うだけが冒険じゃない。たった1人の仲間を救うだけであっても十分冒険です。
レイリア「いいのかしら。このままこの人たちを行かせて」
シーリス「行かせないつもりなの!」
レイリア「私は人が裏切るのを何度も見てきたのよ。
でも、私はマーファの教えに従いましょう。
あなた方の友を大事にするその気持ちを良しとしましょう。我望む」
これが最高レベルの魔法"ウィッシュ"です。DMが認めれば全てが叶う。SWでいう"コール・ゴッド"級。
……ていうかそんな魔法があるならそれでシャリーを救えば……。いやそんな事はDMが認めないかな(苦笑)
かくしてスレインとレイリアとはここで別れ、一行は村に戻ってシャンディスから妖精界の場所を教えて貰います。
この際城はそっとしておくように頼んでおきました。これでいよいよNPCの加勢もなくなり自力の冒険が始まる。
この近隣で妖精界と交わる場所とは、モス方面にある鏡の森でした。小説でも黄金樹のあった場所ですね。
この森に3年前から翼の生えた美しい生き物(妖精)が住み着き、黄金の森という一画ができました。
そこには黄金の広葉樹が数本立っているというので、きっと妖精界と関わりがあるという推測なのですがね。
鏡の森といえば小説では大勢のエルフが住んでいた森ですが、そういうフェアリー的な妖精は未確認です。
★シャリーを助け、再び古代の杖の冒険へ
こうして旅立った一行は2つほど冒険をこなしてレベルを上げ、目的地に到着。相変わらず飛ばす所は飛ばしますね。
黄金の森は噂通り黄金に輝く神秘的な森で、一行を早速透明の翅で空を飛ぶ妖精を発見しました。
最初彼らは一行に驚いて姿を消してしまいましたが、一行が森の奥に進もうとすると1人が呼び止めました。
妖精「お待ちなさい。鉄を帯びた者が、この森に何の用があるというの」
そう話しかけたリーダーらしき妖精の周りには、弓矢を構えた複数の妖精達(全員女性?)の姿もありました。
しかし戦闘にはなりません。彼らは戦いに来たのではありませんからね。
オルソン「僕たちは敵じゃありません。
あなた方にお願いがあって参ったのです。どうか、僕たちの話を聞いて下さい」
こうして誠実に話しかけたお陰でリーダーは聞く耳を持ってくれました。やはり交渉は大事、戦うだけが能ではない。
彼らの潔白は妖精達の唱えた"ディテクト・イービル"で証明されました。こういう時には便利な魔法ですよね。
妖精「あなた方が悪人では無さそうだというのは、わかりました。
で、私どもにお願いとは、一体どういう事ですか」
オルソン「この森に生えている黄金樹の枝を一つ頂きたいのです。
僕たちの連れの僧侶が、邪悪な魔法に捕らえられてしまったのです。
その苦境を救うのに是非とも黄金樹の枝が必要なんです」
何の捻りも無いストレートな懇願です。シンプルだけど、だからこそ訴えるものがあります。
この訴えに最初は困った顔をした妖精さんでしたが、一行の真剣な様子を汲み取ると笑顔を浮かべます。
妖精「私たちもかつて勇敢なあなた方の様な冒険者によって、長年の呪縛から解放されたことがあるのです」
実はこれは文庫版リプレイ第2巻に収録されている、T&Tルールのリプレイ「帰らずの森のフェアリー」です。
パーン達「灰色の魔女」メンバーの知られざる冒険の一つで、今でも文庫を入手すれば普通に読む事が可能です。
妖精「我々にとって黄金樹は大切なもの。
1枝どころか、その木の葉1枚1枚に至るまでね。
ですが、あなた方のお仲間の為に、あえて差し出しましょう」
セシル「で、我々はどれくらいのお礼をすればいいのだ。10万GPまでなら用意出来るが」←今までの収入
妖精「あなたは人を救うのに代償を要求しますか。
あなた方が遠路遥々やって来られたのは、お仲間を救いたいその一心だけでしょう。
この地にやって来るまでには、幾度も危険に出会ったはずです。
その危険をも顧みず仲間を助けようとする心こそ、私があなた方に求めるものです。
そして、その心をいつまでもお持ち頂ける事を約束戴けるなら、私は満足ですね」
こうして妖精さんから黄金樹の枝を1本受け取る事ができました。しかしなんてピュアな心の妖精なんだ。
しかし妖精さんの粋な計らいはこれだけじゃない。もう1つプレゼントをしてくれます。
妖精「どこか望む場所を教えて下さい。そこに、妖精界の門を開いて差し上げます」
これを使えば彼らは一瞬でそこに移動できる。当然彼らはシャリーのいる城を指定しました。
帰還した一行は無事にシャリーを蘇生させる事に成功し、約半月の遅れを取り戻すべく火竜山を目指しました。
今回の冒険はNPCの力が得られず、無駄な戦闘も必要とせず、プレイヤー自身が楽しめる内容でしたね。
しかしそれも今回までです。いよいよ次回からは火竜山編に突入し、彼らの及ばない激戦が繰り広げられる。
★勇者たち、火口への入り口を求めて彷徨う事
妖精さんの協力で吸血鬼化したシャリーを救った一行は、スレイン達に遅れること半月で火竜山に到着しました。
火竜山は登る際に専用の装備を必要とする山ではありませんが、それでも岩肌剥き出しの急斜面はかなり苦しい行程です。
セシル「なんの。急がねば、話の核心を見れなくなってしまう。冒険者には、休息の二文字は無いのだ」
フォース「でも、休まずに行ったら、死んでしまいますよ〜」
セシル「情けないヤツめ。みんな日頃の鍛錬が足らないから、こんなところで顎を出すのだ。
オレの耐久度は18あるから、山道なんてへっちゃらなのだ」
どういう魔法使いだお前は。そういえば小説でもアニメでも、彼だけは無駄に元気でしたっけ……(遠い目)。
結局一行は疲労を残さないよう休み休み登り、およそ5日で山頂付近に到達します。しかしタイムロスは半月……。
フォース「ゲッ。もう全てが終わっているんじゃないですかね」←最後まで蚊帳の外か
もしそうなっていたら、このリプレイはいよいよ伝説となっていたでしょうね。まぁ現時点でも別の意味で伝説ですが。
一行の心配は杞憂に終わり、幸いな事にカシューと合流できます。パーン、ディード、スレイン、レイリアも一緒です。
シーリス「ご都合主義というのじゃないの」
DM「RPGだから、それでも良いの!
日常的な行動をしていても、非日常的な軽率で事件が起こるのが、RPGの良いところなんだから。
平凡な人生は現実だけで十分だろう。僕は基本的にPCたちは英雄になって行く運命の人々だと思っているんだ」
PCとしてスポットが当たった時点でその人物は英雄候補生になる。それがフォーセリアのRPGだと私も思います。
SWでも冒険者レベルは英雄レベルという解釈ですし。もっとも英雄になるだけが人生じゃない、別の道があってもいい筈。
ロードスは概ね英雄譚なのでそういう傾向にありますが、アレクラストやクリスタニアとなるともっと平凡な主役もいるし。
とにかく先にカシュー達と遭遇したのは運がいい。これでアシュラム一味と遭遇しても瞬殺されないで済みそう。
レイリア「まだ正義は滅んではいなかったのですね」
シャリーの事を一番気にしていたのはこの人かもしれません。彼女が無事に仲間と共に来れただけで凄い嬉しそうです。
冷たい事を言っていたスレインも嬉しそうに頷いているし、彼らの姿を見れた気さくな英雄カシューも上機嫌です。
ところが肝心の王錫の探索は暗礁に乗り上げていました。王錫があると思しき火口へ続く道がないというのです。
火竜山といえばロードス唯一の活火山であり、現在はその活動が激し過ぎて普通に近寄る事はできないでいるのです。
現在は火口へ続く洞窟があるというので、それを探している最中です。アシュラム達も同じ状況だそうです。
しかし高レベル魔法使いも数名いてこの様とは、2週間何をしていたんだ。いやお陰で決戦に間に合ったんだけど。
ここからは一行も協力して洞窟を探します。その方法は徒歩で虱潰しという、実にセシル向けのものでした。
判定方法はD20で1が出るまで振り続けるというもの。1が出るまでの回数が探索に要した時間になる訳です。
D20は当然1〜20までの一様分布なので、1が出る確率は5%。20回も振れば1回は出る筈でした。
頭を使わずダイスを何度でも振っていいならいつかは見付かる筈。ええ、いつかは、ね。
オルソン「1回目、2回目、3回目、4回目、よ〜ん、よ〜ん、よ〜ん、よ〜ん、よ〜ん」←延々と続く
かくしてオルソンが1を出したのは、なんと45回目です。つまり1以外の数が延々44回出続けたと(笑)
すると95%の44乗で、44回1が出ない確率は約10.5%です。あり得ない事ではないけど酷すぎる。
こうして一行は45日目で洞窟を発見しました。食料はどうした、魔法使いは何をしていた、疑問は尽きない。
洞窟が見付かったのはめでたいのですが、やはりアシュラム一味に先を越されていました。
洞窟の入り口には見覚えのあるアシュラム配下の戦士、ギルラムとラーカスが見張りに立っていました。
まだ見張りが立っているという事は、まだアシュラムも中にいるという事。まだ間に合うかもしれない。
ていうか45日かけたこっちの連中と大差ないという事は、あのクールなアシュラム様がひと月半彷徨っていた(笑)
★勇者オルソン、天界の星となる事
こうなれば一刻の猶予も無い。スレインが挨拶代わりに"ファイアボール"を撃ち込み、洞窟へ向けてダッシュです。
オルソン「ギルラムとラーカスは我々で引き受けて、残りの人にはアシュラムを追い掛けてもらおう」
マール「ラ〜リホ〜!」
こうして強力NPC軍団と別れた一行は、格が上過ぎる強敵を2人相手にする事になりました。
1ラウンド目、突撃につきイニシアティブなし
シャリーは毎度お馴染みの"ブレス"をかけ、フォースは明かりを用意。対決場所は洞窟内になりそうなので。
残念ながら敵は2人とも殆どダメージを受けた様子はありません。爆発時に洞窟内に身を潜めたのです。
それでも彼らは怯まずに接敵していきます。マールはギルラムに、シーリスとオルソンはラーカスに向かいます。
これだとマールが厳しいか……。
セシル「では、オレはギルラムだな。新装備ダガー+2の魔力を教えてやるぞ」←本当いい加減にしろよ(笑)
フォース「違う、何かが違う!」
それは魔術師のくせに戦士向けの能力値を振ったせいか、無謀なプレイヤーを持ったせいか。多分両方。
2ラウンド目、PC先攻
オルソンは攻撃を外し、戦う魔法使いは本当にギルラムに突っ込んで行きました。
セシル「キル・ケイオス!20!見たか、ダイスとはこうやって振るものだ。ダメージは5発」
また命中でもダメージでも無駄にいい目を振ってるし。本当にセシルは戦士になるべきだった。
続いてマールも5点だけギルラムを削ります。シーリスもまた+2の魔剣に物を言わせてラーカスに10点。
このラウンドの終わりにシャリーはギルラム組の援護に入り、カシュー達は洞窟の奥へ向かいました。
DM「で、ギルラムたちの反撃。オルソンに11発と12発。マールに8発と12発」←痛!!
流石の高レベル戦士です、2回攻撃とかしてきましたよ。一行も7レベルになってはいるんですがキツイ。
3ラウンド目、敵先攻
ギルラムはマールとシャリーを1発ずつ殴ります。これでマールにはもう13点ほどのダメージが。
ラーカスは装備の関係で動きが後れるので、セシルがシャリーに場を譲り魔法で援護(それが本来の在り方)。
"マジック・ミサイル"が2発飛んで合計13点のダメージを与えます。しかし次の前衛組は全員ハズレ(酷)。
最後にラーカスがオルソンを殴って12点ほど削る。これで彼のHPは残り6、レッドランプが点灯する。
オルソン「大ピンチ。ここは、バーサクだ。行くぞ分家ウリィィィィ!」←本家ではない
しかし小説の彼と違って本当の狂戦士になれる筈も無く、パワーアップとかもしません。
4ラウンド目、PC先攻
引き続きセシルは魔法で援護します。まるで本物の魔法使いのように魔法を使いますね(おい)。
セシル「行くぞ、正義のマジック・ミサイル。今度はラーカスに向かって放つ。10発!」
DM「かかったな、セシル。そのダメージはお前らに弾き返る。これが魔法の力だ!」
彼は魔法を跳ね返す"スペル・ターニング・リング"を装備していたのです。エイブラの宝かもしれない。
続いてこちらの戦士はシーリス以外そこそこ削る。オルソン初ヒットですね。ギルラムの攻撃はハズレ。
しかしその次のラーカスの攻撃で、小説でもお馴染みの悲劇が起きる……。
DM「ラーカスはオルソン、オルソン。外れて、当たった!オルソン、さよなら〜」
フォース「忘れませんよ〜!」
DM「こうしてオルソンは、星になった」
ラーカス「次はお前だ〜!」←シーリスに
シーリス「変態!」
こうしてオルソン死亡確認!。小説の彼は狂戦士になってこの展開をよりドラマチックになぞった訳ですね。
まぁただ死ぬだけなら今までもあったし、レイリアさんがいれば蘇生して貰える。希望は消えた訳じゃない。
しかしこの強敵相手に戦士1人倒れるのはイタイ。
フォース「仕方が有りません。主義を変えて、ここはシーリスの援護に入りましょう」
オルソン「いよっ、色男!僕は最早観客だよ〜ん」
開始当初から戦闘を避けてきた眠れる獅子が、いよいよその牙を剥く。いや、そんな上等なものじゃないけど。
5ラウンド目、敵先攻
ラーカスはシーリスを集中攻撃し、ギルラムはシャリーとマールを1発ずつ攻撃。そこで思わぬ援護が入ります。
セシル「ギルラムの顔面にコンティニュアル・ライトをかける」←目潰し!
DM「ギルラム、まぶしい」
セシル「おまけに、ランタンの明りも不要になる。これが戦う魔法使いの実力だ!」
DM(どうせ、憶えたて呪文なんで、一度使ってみたかったんだろう)←分かる分かる
実際これのお陰でギルラムの攻撃は空振りに終わる。ラーカスはやっぱりラウンド最後になります。
そして微量ながらこちらの反撃も当てて行きます
シーリス「オルソンの敵!命中!7発のダメージ」
フォース「僕も当てました。ダメージは4発」←シーリスお下がりのノーマル・ソード+1装備
マール「おいらも命中だ。ダメージは5発」
DM「シャリーも当てる。ダメージは6発」
数で優位とはいえ、敵の攻撃回数はこちらと同じでダメージは桁違い。やはり厳し過ぎるかな……。
DM「ラーカスの反撃、両方とも外れ。こいつ、フェミニストか」
フォース「セシルに任せていたら良かったですねぇ」
いや、さっきシーリスに変態と罵られた快感のせいで剣先が鈍ったのでしょう(変態だ!)。
まぁこれで2発当てられると本当に逝きかねないし。気づけばさっきからシャリーが回復魔法使わないし。
NPCが(DMが)必ずしも最善の行動を取るとは限らないけど、そういう時はPC側からも要請した方がいい。
6ラウンド目、敵先攻
ギルラムは何かに取り憑かれたようにバトルアックスを外し続けますが、こちらも当てたのはマールのみ。
魔法が尽きたのかセシルは行動せず、ラーカスはシーリスを13点削る。だからシャリー回復しないと……。
7ラウンド目、PC先攻
いよいよ状況が動きます。マールとシャリーの集中攻撃で(回復……)、ついにギルラムが倒れる。
シーリスとフォースもラーカスを沈めようと奮闘するも削り切れず、敵の攻撃がまた少し削ります。
8ラウンド目、PC先攻
シャリーはシーリスの剣に"ストライキング"をかけてダメージ+3点です。そういうのは最初にかけろ(笑)
そして図ったようにその3点の追加ダメージがラーカスの息の根を止め、一行は苦い勝利を手にしました。
ついにオルソンがお星様になってしまいました。戦闘中の回復が不十分だったのが死因の一つだと思います。
それに本来武器の威力を増す援護魔法は最初にかけるべきですしね。ダメージの増加は戦闘の早期終了に繋がる。
逆に言えば、かけるのが遅れる程に、本来与えられる筈のダメージをどんどん逸失していきますしね。
戦闘冒頭に援護魔法を徹底し、毎ラウンド考慮すべき回復魔法を怠らなければ、結果は違ったかもしれない。
★正義と邪悪の一騎討ちが果てしなく続く事
ギルラムとラーカスを倒した一行は奥へと急ぎます。オルソンの遺体はシーリスが運びます、筋力が高いから。
DM「まさかコンティニュアル・ライトのついたギルラムの死体を運んだりはしないだろうな」
フォース「しません、しません」
そうそう、持っていくのは首だけで十分ですしね(違うだろ)。
硫黄の匂いが立ち込め、汗をかくほど暑くなっていく洞窟の中を進むと、やがてカシュー達に追いつきます。
するとそちらの戦闘ももう終盤です。ジャランは死に、グローダー・ホッブ・ベンドールの3人は降伏してました。
その代償にパーンのダメージは大きいようですが、これで残る敵はアシュラム1人。かなり優勢にありました。
しかしまだ王錫争奪戦の勝敗は分からない。カシューとアシュラムの一騎討ちが行われようとしているからです。
アシュラム「ベルド陛下の敵!」
カシュー「ファーン王の恨みを思い知れ!」
シーリス「お取り込み中でしょうが、オルソンを助けてやって欲しいのですが」
ちゃんとレイリアに話しかけてますよ。この状況で一騎討ちに割って入るほど非常識じゃない(笑)
これが最後の対決っぽいし、どうせ傍観だし、それならオルソンも蘇らせて後顧の憂いを絶ちたいのが人情です。
これで吸血鬼戦同様蘇生魔法をかけてもらい、これまで同様SNEのハウスルールに従い蘇生の判定をします。
オルソン「13!13!13〜!失敗してしまったよ〜ん、よ〜ん、よ〜ん」←目標値は12以下
DM「ああ、哀れオルソン。気苦労を一人で背負ったまま、死んでいくのか。君のバーサクは最早見れないのか」
ここでまさかの蘇生失敗、オルソンは本当にお星様になってしまいました。小説同様に……。
ただ小説の彼は狂戦士として死に魂が消滅してしまったので、そこまで哀れな状況ではありません。死んだだけで。
実際レイリアにはあの何でもありの奥の手が残されていますしね。
シーリス「他に手段は無いの?」
DM「あんまりだから、もう一度だけ、チャンスをあげよう。レイリアはウィッシュの呪文を使った」
オルソン「18!18!18〜!失敗してしまったよ〜ん」
フォース「さらば、オルソン。君の事は忘れない」
まさか連続失敗とは、どこまでダイス運とDM運がないんだオルソン。スパーク君よりよっぽど不幸です。
とはいえ彼のこのキャラと最期がなければ小説の話もなかったかもしれないし。これもダイスの神の思し召しか。
TRPGは物語を生成するゲームです。ハプニング上等、予想外ウェルカムの姿勢で考えるとドラマチックかな。
かくして"優しい狂戦士"オルソン、身も心も火竜山に散る……っ!
仕方ないのでオルソンの中の人はパーンを管理します。街に戻れたら別のPCを作るかもしれない。
オルソン「それなら、次のキャンペーンで、新しいキャラクターを作ってトライするよ」
次の第三部スパーク編ですね。果たして彼は参加したのでしょうか……。
DM「さて、カシューの背後霊が一人増えたところで、両雄の一騎討ちを実況でお届けしよう」
ここからはDMのワンマンショーです。PCはひたすら観戦モード、最後まで付き合います(笑)
両雄の戦いは非常に高度なもので、互いに激しく切り結びながら会話もこなす。
フォース「アニメのノリですねぇ〜。富野先生ごめんなさい」
そういえばカシューの中の人はシャア役の池田秀一さんだし。いあゆるガンダム風の戦闘ですね。
数回攻撃は当たり前。「ルーンクエスト」のフェイント、パリィ、リポスト等も使いD&Dでは再現不可能。
両者の会話を生中継されてもウザイ煩雑なので、重要な部分を抜粋して説明されました。
アシュラムはひたすらカシューを卑怯者と罵ります。この世界でもカシューはベルドの隙をついたんですね。
何処からともなく飛んできた一本の矢がベルドの肩に刺さり、カシューはその隙にベルドを討ち取ったのです。
小説では後にこの矢がカシューが射らせたものだと判明しました。王に敗北は許されないからです……。
これに対してカシューは
カシュー「オレは剣闘士上がりの傭兵だ。卑怯などという言葉とは無縁よ」
これが彼が矢を射らせた事を前提にしていると考えると意味深ですが、多分当時はその設定は無かった。
「ザ・スニーカー」のコラムで「ベルドに矢を射た人の話」を構想していたというコメントもあったし。
その言い方だとカシューとは別の新キャラの存在を思わせます。まぁ候補ではあったかもしれませんがね。
それよりベルドを操っていたカーラこそが真の敵で、アシュラムの野望も彼女の陰謀の一つだと主張します。
これはアシュラムよりもレイリアに堪えたようですが、アシュラムの心は決して折れませんでした。
アシュラム「この戦いは、ベルドさまの弔い合戦よ。ベルド様のご意思は何としてでも成し遂げる」
お互いに立場があり、理想がある。最早両雄が交わるには剣を介するしかありません。
……この辺りに来ると本当にDMの一人語りでプレイヤーは延々話を聞かされるのみです。
カシューとアシュラムの一騎討ちは凄いし、小説を見てもこの展開は本当に燃える名場面だと思う。
しかし本来主役である筈のPCが、目の前で起こる状況を傍観するしかないというのはやはり寂しい。
割って入っても邪魔になるだけ、かといって他にできる事は賑やかしのみ。セッションとしては問題かな……。
★星になったオルソンに代わり、パーン登場!
王錫を巡る火竜山での決戦もカシューVSアシュラムの一騎討ちの局面に差し掛かりました。
しかし先の戦いでPCのリーダーオルソンは壮絶な戦死を遂げ、仲間達も決闘を見守るだけでした……。
なおオルソンの中の人は臨時にパーンを操る事になりました。現在の彼は15レベルの聖騎士です。
どうやら戦士から聖騎士にクラスチェンジしていたようです。ただし知恵が低いので魔法は使えない罠(笑)
それでもスレイン同様に彼もまた驚くほど腕を上げていますね。ディードやエトも多分これぐらいでしょう。
パーン「おのれ〜、よくもオルソンを!だよ〜ん」
フォース「やっぱり、少し変ですね〜。無理がありますよ〜」
でもオルソンがいなくなった気はちっともしませんでした。むしろセシルの人の方がハマリ役かも。
SWやクリスタニアのリプレイでも、こうしてPCが死んで臨時に新しいPCを用意する事が間々ありました。
その際は新しいPCを作るか、既存のNPCを流用するか、状況に合わせて色々な方法が取られてきました。
前者の例は「蟻帝伝説クリスタニア」のテューレとカルーアですね。間抜けな交代劇を小説では綺麗にまとめました。
後者の例は「猫の手」のウィンドとジョージでしょう。この場合ウィンドは誘拐されただけで死亡確定ではないのが特徴。
そこでいずれ復活する事を見越して既存のNPCを臨時で使い、ウィンド復活後にはジョージをGM管理に召し上げた。
いずれにしろPCを扱う以上はそのPCに思い入れもできるし、粗末な扱いにならないよう配慮してやりたいものですね。
さてカシューとアシュラムの一騎討ちも段々勝負が見えてきました。徐々にカシューが優勢になっていくのです。
カシュー「無駄な抵抗はよせ!お前ほどの英雄、この時代には貴重な存在なのだ。
過去の事は忘れ、共に明日のロードスのために戦おうではないか」
降伏を勧めて和睦を申し入れるつもりのようです。小説でも決闘は受けたけど命までは取ろうとはしてなかったし。
しかしアシュラムは降伏勧告に応じず、ひたすら勝機を狙って戦い続けたのです。
シーリス「か、感動的だわ。さすがに色男は違うわね〜」
フォース「まさか、今頃になってアシュラムに味方するなんて言わないで下さいよ〜」
シーリス「言うものですか!あいつには色々と恨みも多いのよ」
シャリー「好きだったのですね。オルソンの事をーー」
DM「あいてーっ」←シーリスのプレイヤーにダイスをぶつけられた(笑)
シーリス「変な突っ込みはしないでちょうだい!」
DM「ひえ〜っ。今のはシャリーの言葉なんですってば。
キャラクターの立場で行動してよ、キャラクターの立場で」
そうそう、流石にリアルファイトはマズイ。PCの言動で応えないとね。
そこでシーリスはPCとしてシャリーに答えました。
シーリス「オルソンは色男では無かったし、別に特別な感情を抱いてもいなかったけれど、
それでもかけがえのない仲間でしょう。あなたは、悲しみを感じないの?」
シャリー「それは、悲しいわ。でも、オルソンは戦いの中で果てたのよ。
名誉な死だわ。だから、決して彼は不幸では無いの。
その魂は喜びの野に行き、勇者として迎えられるのだから」
ちゃんとマイリー信仰がこの頃から確立してたんですね。どうやらオルソンの従者候補でもあったようだし。
セシル「えーい、話を早く本筋に戻すがいい。つまらぬ説教など聞きたくも無い!」
ちょっとDMに対する鬱憤も溜まっているように見えるのは気のせいかな(苦笑)
★赤きドラゴン現れ、総力戦となる事
肝心の一騎討ちの方は決着がつきそうでした。アシュラムは壁際に追いやられ、最早後は無い!
フォース「さらば、アシュラム。あなたの事も忘れません」
しかしそうは行きませんでした。突然山鳴りが起こり、洞窟全体が大きく振動したのです!
フォース「初期微動も無かったのですか?」
DM「げっ、突然高校の地学の時間に引き戻さないでくれ。僕は地学が苦手なんだ〜」
セシル「ふふふ、弱点を見つけたぞ。マスター覚悟!」←何のだ(笑)
フォーセリアの自然現象は精霊力によって起きるので、初期微動なしでいきなり地震が起きても不思議ではない。
とはいえそういう大規模なものになると予兆があるという考え方もあるので、その辺は設定次第でしょうね。
例えば「呪縛の島の魔法戦士」では火竜山の噴火の予兆として、小規模な地震や山鳴りや発光現象が起きたようです。
この状態だとしゃがまないと転倒してしまうので判定を行います。ただし小さくて安定のいいマールは有利(笑)
マール「もちろん、成功さ。ハ〜フリング、ハ〜フリング、ヤホホホ、ヤホホホ」←バイブレーション
パーン「もちろん、みんなしゃがむぜ!だよ〜ん」
DM「ディードリットは、踏ん張ろうとしたけど、見事にこけた」
パーン「大丈夫か、ディードリット!だよ〜ん」←こだわりのだよ〜ん
他も概ねしゃがみ、洞窟も崩れる事無く、とりあえず全員無事でした。
しかしこの振動で判定に成功したアシュラムは洞窟の奥へ逃げ、元から座っていた降伏組3人は動けました。
これでグローダーは魔法で逃げ、ベンドールも走って逃げる。ただしホッブは堂々とこの場に残る。
ホッブ「一度戦いに敗れ、降伏した以上ジタバタはせんよ」←流石!
シャリー「それが我々、戦いの神の掟です。彼の言う事は真実です」
勇者の力になるのがマイリー神官の誉れ。アシュラムに協力していても彼は邪悪ではないのです。
遅れるようにカシュー、スレイン、レイリアはアシュラムの後を追います。ディードはパーンの判断待ち。
ここでちゃんとディードがこっちの様子を伺ってくれるのがいいですね。それだけでパーンをやりたくなる(笑)
勿論残った人達もカシューに続きます。どうせ逃げた連中は捕まえられないし、下手すると本当に除け者になる。
洞窟の更に奥に待ち構えていたものこそが、王錫の守護者にして火竜山の魔竜シューティングスターでした。
シューティングスター「我を恐れよー。そして跪けー。さすれば、死に方も楽なものとなるだろう」
こいつは五色の魔竜の中でも最も凶暴な竜です。初めから彼らを生かして帰すつもりはありません。
しかしこちらもロードスの精鋭揃い。カシューもアシュラムも戦う気満々でレイリアも魔法で援護します。
レイリア「我望む、我らの身体をあらゆる炎から守りたまえ!」
これで彼らに炎は効かない。小説では強力な耐火炎魔法"ファイア・プロテクション"でしたが、それより強力そう。
ここからはいよいよ魔竜との戦闘に入ります。シューティングスターのHPは120点もあります。
またどうやらHPの残点と同威力のブレスを吐くようですが、基本的にそれは弾かれて終わります。
1ラウンド目、PC先攻
セシルは取って置きの攻撃魔法"アイス・ストーム"を唱え、抵抗されるも14点削って残り106点。
敵のブレスはあえなく弾かれる。カシューとアシュラムは互いに一時休戦を申し入れて魔竜に突っ込みます。
パーン「オレも行くぜ〜。正義の刃を受けてみろ〜。ウリィィィィィィ!!」←バーサクしてる
レイリアとシャリーは先程のパーンのダメージを回復しました。……それをオルソンにもやってくれれば……。
2ラウンド目、ドラゴン先攻
ブレスが効かないので普通に攻撃します。アシュラムとカシューに合計6回攻撃でかなりのダメージ。
PC達は飛び道具で攻撃し、シーリスが4点削り残り102点。他は軒並みハズレ、やはり基本的には適わないか。
セシル「さしもの戦う魔法使いも、相手がドラゴンでは太刀打ち出来ないぞ」←ですよねー
そこで余っていた"ディテクト・イービル"を使うと、竜はイービルでアシュラムはイービルではないと出ました。
どうやらアシュラムのアライメントはニュートラルのようです。やはり彼は野心家ではあっても悪人ではないのです。
ディードは"マジック・ミサイル"を撃ち込み、スレインは最強の魔法防御呪文"アンチ・マジックシェル"を唱える。
レイリアはメイスを片手に前衛に参加し、いつのまにやら来ていたホッブもそれに続いて魔竜に挑みかかります。
3ラウンド目、PC先攻
パーン「ウリィィィィ!17、15!両方とも命中だ。ダメージが11発と、9発」
飛び道具連は全員ハズレて、ディードも弓に装備変更。これでシューティングスターのHPは残り82点です。
レイリアとホッブは"コーズ・クリティカル・ウーンズ"。推定SWでいう"ウーンズ"ですが、中立だから抵抗無し。
これで合計33点ほど削り、残りは49点。その反撃で新手の3人も軒並みダメージを受けるが、まだ立っている。
4ラウンド目、PC先攻
パーンが引き続き22点のダメージを与え、トドメとばかりにカシューとアシュラムの攻撃が炸裂して魔竜撃沈!
★ドラゴン倒れ、再び両雄の一騎討ちとなる事
こうして彼らは魔竜に勝利しました。ほとんどNPCのお陰だけど、気にしたら負け、気にしなくても負け。
セシル「我々は為す術も無かったな。それと、スレインに一言文句を言いたい。
レイリアさんの魔法の効果もアンチ・マジックシェルをかければ消えてしまうではないか」
スレインによると、あの状況では魔法の方が脅威だったからだそうです。結局使わなかったのは結果論です。
そういえば小説のシューティングスターも魔法を使わなかった。古代語魔法も竜語魔法も使わずにただ倒された。
しかし戦いはむしろここからです。カシューとアシュラムの一騎討ちが再開されます。
アシュラム「さて、決着をつけようか」
カシュー「どうあっても、戦う気か」
アシュラム「無論。それが、ベルド陛下のご意思なのだ。それに王たる資格を問う杖の件もある。後に引く訳にもいかぬ」
カシュー「その様な杖の力で、真の平和が勝ち得ると思うか。オレはその杖、壊してやろうと思う。
人間は魔法の力では無く、己自身の力で運命を切り拓くものだ。そうは思わぬか」
アシュラム「ならば、お前は自分の力で、その思いを成し遂げるが良い。わたしも、お前を倒して杖を手に入れてみせる」
そして両雄は再び戦い始めたのです。最早誰にも、そう本来主役であるPCにも止められない。
フォース「いえ、見守るのには、慣れましたから〜」
しかしDMはこの皮肉を軽くスルー。最早このDMすら誰にも止められず、物語は最終局面に突入する。
★見守るだけの勇者たちとDMの長い解説の事
魔竜シューティングスターは倒れ、一行が傍観する中カシューVSアシュラムの一騎討ちもいよいよクライマックスです。
シーリス「我々、本当にこのまま見ているだけでいいのかしら。
カシュー王を手助けした方が、良いようにも思うけれど」
パーン「でも、一騎討ちだから、名誉の為にも手出しは出来ないよ〜ん」
フォース「我々は、またしてもその他大勢という訳ですね」
DM「いつも、すまないねぇ。
ちょっと、キャンペーンのスケールを大きくしてしまった為に、
みんなには寂しい思いをさせてしまったかもね」
問題なのはシナリオの規模よりも目標だと思いますけどね。前作も「英雄戦争」という大規模な設定があったし。
パーン達もファーンVSベルドという一騎討ちには手出しできなかった。しかし彼らには自分達だけの戦いもあった。
ところが今回は勝てない怪物、勝てないライバル、強過ぎるNPCの中翻弄されるのみで、自主性がありません。
マール「でも、ストーリーは楽しめたよ。ゲームを遊んだ気にはならないけど」
今回のキャンペーンを集約した発言かもしれませんね。シナリオそのものは面白いんです、でもTRPGの必要がない。
ここでDMのキャンペーンをする上での注意点が挿入されますが、セシルがそれを一刀両断にします。
実は今までにも度々こういう小コラムが挿入されてきました。一応D&Dの紹介が目的ですからね(実際はNPC無双)。
セシル「随分と長い言い訳が続いたな」
DM「さては貴様、次のDMの座を狙っているな!」
セシル「フッフッフッ。私は既に他のキャンペーンを準備している。
いつかは、ロードス島もそのキャンペーン・ワールドの中に組み込まれるであろう」
……まさか清松みゆき先生なのかな。同じくフォーセリアを舞台にしたSWのシステムデザインを手がけていただろうし。
実際TRPGとしてのロードスは、今後コンパニオンやら「ロードス島RPG」やらと、色々と紹介されていきます。
しかし最終的には「ロードス島ワールドガイド」の発売を機にSWに組み込まれた。本当に清松先生だったりして……。
★梟雄アシュラム、火口に消えるの事
そうこうする内に一騎討ちはカシューの勝利となっていました。トドメは刺していませんが、もう勝負はありました。
マール「おいらはアシュラムに、降伏を勧めるよ。いまなら〜、まだ〜、間に合うからあ〜♪」
パーン「その歌は一体何なんだ、だぜ、だよーん」←語尾がこんがらがってる
フォース「あなたの話し方も随分破綻してますよお〜」
マール「徹夜で作った降伏勧告のバラードだよ。
作詞、作曲マール君。他の人が無断で歌ってはいけません。
心を入れ替えてえ〜、早くぅ、武器を捨てなあ〜さあ〜い♪」
これがファ○ロードでもお馴染みの「降伏勧告のバラード」ですね。パーンの「だよーん」同様ささやかな自己主張。
マールに乗っかった訳でなくカシューも再度彼に降伏を勧めます。しかしプライドの高いアシュラムは受け入れない。
DM「傷口を押さえながら、ハァハァと荒い息を吐くだけだ」
シーリス「いーわね、色っぽくて」
ああ、苦しむ姿もお美しいですアシュラム様。OVAの吐血シーン並みに絵になりそうです。
カシュー「どうだ、この辺で気を変えるつもりは無いか。
お前の行為は、ベルド皇帝に恥じるようなものでは無いはずだ」
アシュラム「だが、敵であるお前に勝てなかった。皇帝陛下のご意思を成し遂げる事もな」
小説でもそうでしたが、さぞ無念だったでしょう。主君を騙まし討ちにしたも同然の仇敵に歯が立たないのです。
更にはその主君の意思を受け継ぐ事も、その存在を越える事もできない。自分の力の限界を思い知らされたのです。
小説の彼はその後長い鬱期に入り、死人も同然になります。そんな彼がどうやって蘇るかは「王たちの聖戦」参照。
そして彼は覚悟を決めたのです。
アシュラム「最早、これまで。生き恥だけは晒したくない」
すると彼は火口へと向かっていきます。カシュー達の説得も空しく、彼は火口に飛び込んだのです……。
結局今回のDMはこういうドラマチックなシーンを展開したかったんでしょうね……。
DM「哀れ、アシュラム。己の美さの為に死す。僕には真似の出来ない立派な精神だ」
フォース「僕にもですよぉ〜」←最早完全にスレイン口調
マール「おいらだってさ」
セシル「オレだって、例外では無いぞ」
パーン「オレもだぜ!だよ〜ん」
男性陣「うんうん。卑屈な人生でも、生きていような」
シーリス「止めて欲しいわ。情けない」
とはいえ大抵の人はそう考えると思いますけどね。誇りの為とはいえ自害できる人がどれだけいるか。
そういえばこういう格言が一部では有名ですね。
未成熟な人間の特徴は、理想のために高貴な死を選ぼうとする点にある。
これに反して成熟した人間の特徴は、理想のために卑小な生を選ぼうとする点にある。
後に水野先生は作中で「死を美化することはない」と記します。実は生も死も等価で、何を尊ぶかは人それぞれだと。
ただ生きたいという欲求は誰であれ強いものでしょうし、それを捨てられるのは未成熟でも尋常な事ではない筈です。
★偉大なる杖の行方と、火竜山噴火の事
魔竜は退治され、アシュラムは死んだ(ように見える)。これで王錫争奪戦は一応の完結を見ました。
アシュラム配下の連中も殆どが死亡するか逃亡するかして全滅も同然。今残っているのはホッブのみでした。
そのホッブはアシュラムが火口に身を投じた時にこう祈りを捧げていました。
ホッブ「彼の魂を喜びの野に運びたまえ」
アシュラム一味の中でも他の連中のような邪悪さの無い彼は、シャリーの嘆願もあって見逃されました。
マイリー神官は勇者に仕えるのが信仰であり、彼自身は決して邪悪ではない。だから彼を裁く理由はないのです。
今後彼は暫く一行と行動を共にして、裾野に戻ったら新しい勇者を探して己の信仰を貫いていくでしょう。
ちなみにシャリーは勇者候補のオルソンを失ったので、今度はパーンと行動を共にしようかと思案中です。
パーン「ディードリットは気にしないのかな」
DM「するだろうけど、その方が嬉しいだろう。よ、色男!」
パーン「でへへへ」←情けない(笑)
小説のホッブとシャリーは師弟で、戦後はシャリーが神殿を守りホッブがパーンに同行したという相違点がある。
あと肝心の王錫ですが、これは大量のマジックアイテムと宝石の山の中から苦心の末に発見されました。
DM「さて、これをどうしようか」
セシル「オレは、そんな杖の力を頼りにすべきでは無いと思う。
魔法で人を治めるなんて、詐欺みたいなものだ。
やはり、国王は正義の力で国を治めるべきだ」
この杖の力さえあれば王にでもなれる。オルソンが生きていたら悩んでいたかもしれませんね。
しかし大き過ぎる力に魅入られた人間がどうなるか……。それは前作のウッドの行動から皆が学んでいました。
フォース「あれは、せこいウッド・チャックだからこそ、様になるんです。
女性ファンの多い僕には、とても出来ない行動ですね。
バレンタインの時、僕宛にセシル・チョコレートを送ってくれた読者の方どうもありがとう」
そういえば人気があればリプレイキャラでもプレゼントが届くそうですね。"スチャラカ冒険隊"のケインとか。
結局この杖は火口に放り込んで処分する事にしました。小説では事故で落ちたんですけどね。
DM「誰か一緒に飛び込む人いるかい?」←いるか
マール「そんな人いないよ。僕ハーフリングであって、ホビットじゃないもんね」
危険なマジックアイテムは火山で処分。これは「指輪物語」以来の王道ですね(笑)
王錫を廃棄するのはカシューの仕事です。最後までNPCだけど、場面が場面なので代表者が投げるのは当然です。
カシュー「古代の偉大なる力を秘めた杖よ。
我、フレイム王カシューは、大いなる決断をもって汝を破壊する。
全てを焼き尽くす炎の中で消えよ」
そして、杖をゆっくりと手放す。あたかも、スローモーションの様に、杖は溶岩の中に落ちて行く(本編より抜粋)
セシル「おお、流石にクライマックス。形容にも凝っているな」
DM「徹夜で考えたんだよ。これが、マスターの楽しみでね。
みんな、無茶なキャンペーンに付き合ってくれてありがとう」
自分で無茶と言ったらおしまいですね。でも自覚があるならもうちょっと何とかならなかったのか(笑)
……さて、これで今度こそ王錫争奪戦は完全決着です。しかしまだ最終回ではなく、もうひと波乱ありました。
杖を放り込んだ後、再び火山性の地震が勃発。杖のせいかもしれませんが、火竜山が噴火しようとしています!
一行は大急ぎで下山しようとしますが、この時レイリアはオルソンの遺体も持っていくように言いました。
実は彼女は宝の中から"魂の水晶球"という死者を蘇生させる偉大なるアーティファクトを発見していたのです!
一応死者が出た時の救済措置だったのかもしれませんが、これが次のキャンペーンの伏線でもあったりするのです。
なお溶岩の熱だけならレイリアの魔法で何とかなりますが、火山岩の直撃を受ければそれまでです。
マール「そうすると、火口に飛び込んだだけでは、アシュラムは死なないんじゃない?」
……そうか、これは小説にはなかった設定です。"ウィッシュ"のお陰で溶岩はただの泥も同然なんですね。
とはいえ熱で死ななくても溶岩に沈めば窒息するし、まして噴火するとやっぱり死ぬでしょうけど、どうなるやら。
アシュラム生存説に"魂の水晶球"。色々次作への伏線を気にしつつ、一行は火竜山から避難を始めました。
★DMの最後の解説と、カシュー王の帰還の事
アシュラムとの一騎討ちを終えた一行は、噴火直前の火竜山から地上へと帰還するだけとなりました。
セシル「DMは「さあ、始めよう」と今回も言う!」
ところがここでDMの最後の解説が挿入されます。テーマは「キャンペーンの終わらせ方」です。
一度始めたものは必ず終わる時が来る。それは自然に終わる事もあれば、意図的に終わらせる事もある。
前者はいわゆる自然解散ですね。文通の頻度が下がってやがて途切れてしまうように未完で終わるパターン。
それはちょっと寂しいので、後者のように何らかのゴールが見えて終わらせることが一つの理想かもしれません。
何しろ物語は始めるよりも、続けるよりも、どういう形であれ綺麗に終わらせるのが難しい。
キャンペーンの目的を果たしたり、PCが出世して以後NPC化したり、全滅だって一つの終わり方です。
そう考えると今回は王錫争奪戦に勝利し、魔竜やアシュラムを倒すという明確なハッピーエンドです。
DM「敗れたり、セシル!いきなり解説がくるとは思わなかったろ!」
セシル「ふ、不覚!」
シーリス「何やってんの。ふたりで盛りあがらないでよ」
フォース「まったく、「忍者武芸帖」じゃないんですよお〜」
パーン「ふ、古い。「聖闘士星矢」ぐらいいえないのかよ」←当時は最新でした
マール「♪せ……」
DM「歌ったらダメだよ、マール君。他人の歌詞は載せるときにお金がかかるんだから」
マール「「ハーフリング・ソング」や「降伏勧告のバラード」は大丈夫だから、みんなで歌って盛り上がろう」
DM「じゃかあしいわい!」
いっそその二曲もアニメ化の時に実現できたら良かったのにね。サントラのボーナストラックとかで。
まぁ歌詞はともかく音楽の方は小坂○也さんの歌をパクることになるので別の問題が発生しますけどね(笑)
さて、戦いを終えた一行はオルソンの遺体を抱えてライデンの街に帰ってきました。
火竜山の噴火は続いており、ライデンでも中程度の地震は何度も起きています。そのせいで古い建物は倒壊している。
そんな中帰還した一行はシャダムをはじめ、グースやスィスニアといった冒険者ギルドの幹部達に出迎えられます。
幹部の誰か「やあ、ご苦労さん」
フォース「ずいぶん、軽い出迎え方ですね」
しかも彼らは冒険者ギルドの会議室に酒宴の準備をしています。
その上「お帰りなさい、カシュー王ご一行様」という垂れ幕まで用意していたという。本当に余裕あるなこいつら(笑)
★DM、各キャラクターの進路指導をする事
もうキャンペーンのエンディングです。ここからは各キャラの進路を明らかにしていきます。
まずはスレインですが、カシューは彼に宮廷魔術師として仕えてくれないかと打診します。
カシュー「おまえの娘も立って話せるようになったぞ」
フォース「え、レイリアさんとの間に子供もいたんですか」←本人も知らず
この時点で小説は「灰色の魔女」しか出ておらず、次のリプレイ第三部で小ニース初登場となりますからね。
実はこれが小ニースの存在が明らかになった瞬間かもしれない。小説だとこの時点で3歳ぐらいのはず。
セシル「小説は読んだぞ。ふたりは正義のために力をつくそうというのだ。立派な心がけではないか」
そしてこの小説が後に100万部を売り上げる国産ファンタジーの金字塔になるというわけです。
ちなみに小説だとスレインはこの後「王たちの聖戦」を経てからフレイムの宮廷魔術師になります。
こちらではすぐにでも仕えたらしく、レイリアさんもマーファをフレイムの国教とすべく従ったとか(さり気ない野望)。
ここでセシルにもスカウトする人が登場します。冒険者ギルドのグースです。
グース「おまえは正義を愛する魔法使いだと、話に聞いておる。なかなかに立派な心がけだ。
それに免じて貴様を特別にわしの弟子にしてやろう。心して精進に務めるがよい」
セシル「な、なんだ、この展開は。さては、たばかったな、DM!」
DM「フッフッフッ!」
セシル「陰謀だあああ!」
かくしてセシルはグースの押しかけられ弟子となり、冒険者ギルドでは正義の真実と過激さが魔術の真髄とするのでした。
セシル「やったろーじゃないか!正しい魔法道は白兵戦にこそあることを、
戦う魔法使いの真髄を、これからの冒険者に教えてやる〜」
そしてその教えは北のアレクラスト大陸の某筋肉魔法戦士にも受け継がれていくというわけですね(笑)
何にせよこれからセシルは冒険者ギルドで多くの後輩を指導する立場になったそうです。
これにより魔術師も護身の為に武器を持つのが当たり前になっていくというのだから凄い影響力です。
実はフォースにも同様のスカウトがあります。彼の場合は冒険者ギルドのスカウト部門の指導者ですね。
というのも彼の前任に当たるスィスニアがカシューと結婚するということで、寿退社?となりました。おめでとう!
小説だとシャダムの妹と結婚してましたが、王になったからといって無駄に家柄を求めないあたりがカシューらしいです。
本人だって過去に剣闘士やら冒険者やら傭兵やらやってたわけだし、夫人が盗賊上がりというのもある意味心強い。
それに合わせてシャダムも国に戻るのでギルドマスターが不在となりますね。
シーリス「ま、まさか」
DM「ピンポン!本当はオルソンにお願いするつもりだったんだけど、
お亡くなりになってしまった以上、シーリスにお願いするしかないもの」
シーリス「じゃあ、あたしは一生ギルドの女親分なわけ。
それあんまりじゃない。あたしだって、どこかの勇者と幸せになりたいわ」
DM「よーし、わかった。とっておきの勇者を紹介してあげよう。
その名もドラゴン・ロードのレドリック。きみは将来彼と巡り会う運命にある。どう、これでいいかな?」
ということで彼女はモスのハイランド王国の王子様と結婚。後にハイランド王妃にしてモスの公后となります。
次のリプレイ第三部でもそうだし、小説でも「王たちの聖戦」をきっかけに彼と巡り会うのです。
ちなみにこの時点ではモスの設定が今とは違い、ハイランドは2人が出会ってからの新興国ということになっています。
シーリス「都合いいのね」
DM「ご都合主義大いにけっこう。いつもいっているとおり、これはゲームなんだから、
全員がヒーロー、ヒロインになったってかまいやしないのさ」
「そして幸せにくらしましたとさ、めでたしめでたし」というありふれた終わり方でも構いやしません。
みんなで頑張って冒険をやり抜いたのならハッピーエンド上等。誰かが必ず不幸にならないといけないと決まってはいない。
マール「おいらは、まだ冒険を続けたいな」
そこでマールにはウッド・カーラを捜すパーンとディードの仲間として冒険者を続ける道が提示されます。
この旅にはシャリーも同行するらしく、ディードがやきもき。小説だと同行するのはホッブでしたけどね。
どうせハーフリングに王やギルドマスターは似合いませんしね。旅こそがハーフリングの人生、海だって越えちゃいます。
パーン(故オルソン)「不幸なのは、ぼくひとり」
DM「あ、忘れてた。どうする、「魂の水晶球」の力に頼るかい」
故オルソン「それは、決めないことにするよ〜ん」
こうしてオルソンは生死不明、歴史の中でも語られない謎となりました。まぁリプレイ第三部には出ますけどね。
★ロードス島戦記Uこれにて完結の事
こうして各キャラの進路も決まり、いよいよエンディグです。ここでは最後にDMの長台詞となります(カンペあり)。
かくして、きみたちはひとつの冒険を終わり、次の新たな冒険にそれぞれつくわけだ。
そこにいかなる危機が待ち受けているかは、きみたちにはわからない。
だが、根っからの冒険者であるきみたちのこと、いかに平穏に生きようとも、決してその人生は平凡なままでは終わらないだろう。
きみたちの名は、あるいは伝説に、あるいは人々の伝承に、そしてあるいは吟遊詩人の歌うサーガの中に語り伝えられることになるかもしれない。
その中で、きみたちがある時期に、短くはあったもののともに苦しみを分かち、助けあいながら旅をしたという記録は残らないだろう。
しかし、きみたちの心にはその思いはきっと残る。楽しかった思い出も、苦しかった記憶も、すべて残らず心の奥底に。
それが、まだまだ続く戦乱の時代を生きるきみたちの心の支えになってくれることはまちがいない。
さあ、旅立て!永遠の旅人たちよ。新たな冒険の時が来たのだ〜!!
DM「みなさん、ご静聴、どうもありがとう〜!」
セシル「なんなんだよ、こいつは」
フォース「『ファイナル・ファンタジー』しましたねえ」
シーリス「原稿見ずにそれをいえたらたいしたものなのにね」
DM「へーんだ、こんな長いセリフ、覚えられるものですか」
思えば色々無茶なキャンペーンでしたが、終わってみると楽しかったですね。
前作が途中で終わっちゃったから完走したリプレイとして歴史的な作品である事に変わりはないし。
DM「それじゃあ、「ロードス島戦記U〜英雄王の復活〜」はこれにて、おしまいだ!」
フォース「ぼくたちのことを忘れないでくださいよお〜」
こうして一つの冒険は終わり、また新たな冒険が始まる。そしてロードス島へ、永遠に。