「新米女神の勇者たち(5)」著:秋田みやび/グループSNE 出版社:富士見書房
★毎度好例成長申告
今回の能力値の成長は以下の通り。
ジーク:精神力21→22
ソラ:精神力21→22
エア:敏捷度15→16
メッシュ:精神力8→9
ムーテス:筋力23→24
今回でメッシュが<宗匠の腕輪>をつけて専用装備に限り器用度+4になって命中力も上昇です。
ムーテスは素で筋力24になりましたね。ますます"至高神の猛女"を思い出すガチムチっぷりです。
ただメッシュの器用度については少し疑問がありまして、4巻の頭で20、5巻の頭で25となっているんですよね。
これ自体は12話の成長と専用装備と腕輪で+5されたものと思ってたんですが、次巻以降24で固定されるんですよね。
これは腕輪もつけていない状態で、且つこの5巻で一度も器用度は成長していないのなら微妙に計算が合わないんですよ。
次巻以降の<知性の指輪>が<巧みの指輪>の誤記ならいいんですがね。まぁ器用度なんて24と25に大した違いはないんですが。
あるいは状況に応じて色々な指輪を付け替えているのかもしれない。この5巻でも<知性の指輪>の修正が入ってるようだし。
技能の成長ではジークがフェアリーテイマー4→5に成長。装備を<華美なる宝石飾り>に変えています。
これは名誉点を払って入手する特殊装備であり<宝石>を6つまで収納できます。妖精使いとしても腕を上げてきましたね。
エアはレンジャー3→4に成長。ソラはセージ5→6として魔神語を習得。ますます怪しい生き物との交流が盛んに。
大きな変化はメッシュがグラップラー6→7にしたことです。これで《命中強化》と《カウンター》を習得です。
《カウンター》はグラップラー7レベルで自動習得する戦闘特技であり、敵の近接攻撃を殴り返せるようになります。
具体的には敵の《命中力判定》の達成値が出た時に宣言し、こちらは《回避力判定》ではなく《命中力判定》を行います。
相手の達成値を上回ることで敵の攻撃を回避しながら攻撃できますが、失敗したらダメージ6ゾロで攻撃を喰らう。
重要なのは能動と受動が入れ替わる事で同値では成功せず、必ず上回らなければならない点ですね。失敗したら大変な事になる。
メッシュ「ふふふ、殴ってきた相手を殴り返しますよ」
ソラ「そして、失敗して血だるまになる……」
ジーク「メッシュが7レベルになる日がくるなんて……」
メッシュ「な、なんか色々と暴言が飛び交ってませんか、皆さん」
それを避けようと少しでも命中力を上げる為に腕輪を買ったり《命中強化》を覚えたりしてます。
《命中強化》は書いて字の如く恒常的に命中力+1にする戦闘特技です。地味ですがとても大切ですね。
あとムーテスはファイター6→7にして《防具習熟U/金属鎧》と《タフネス》を習得。
《防具習熟U》は《防具習熟》の発展であり、防護点を+2点(計+3点)にしてSランク装備まで使用可能になる。
これでムーテスはパーティ財産から援助を受けて念願の<ミスリルプレート>を購入。ついに防護点18に!
しかもこれは何の強化もしていない素の状態ですからね。練技やらエアの援護やらを入れれば20点越えも可能です。
ジーク「お、なんだムーテス。いい鎧着てるな。ぺたぺた」
ムーテス「いやーやめて、指紋つけないでー」
GM「……うわー、もうムーテス殴りたくないなー」
エア「これからは毎回ばきゅーんっていわれるのね?」
ソラ「銃か魔法で狙い撃ち、ね」
本気で殺ろうと思えばそうなるでしょうね。物理ダメージで彼を倒せる敵を出すと他の人が大変な事になるし。
《かばう》だって万能ではありません。1ラウンドに1回しかかばえないんですから、他の人に攻撃がいく事もある。
ムーテス「……これは墓穴を掘ったか。メッシュさん、こうなったら一緒にお空の星になろう!(肩ポン)」
メッシュ「ちょっと待った!何故私が道連れなんですか!」
ムーテス「どう考えても、交代要員はこの二人が適当かと思って」
いずれ"ヘッポコーズ"のように交代するとして、この2人がいなくなるとそれはそれで寂しいですね。
ノリスとガルガドだって結構喪失感が大きかったし、何だかんだでこの5人が大好きになってますしね。
他の買い物ですと、特に宣言はないもののジークが色々装備を変えていました。
装飾品だと首に<宝石ケース>の代わりに<水晶の首飾り>を装備。光に翳すと虹色に反射するそうです。
これは毒・病気に対する生命・精神抵抗時に+1のボーナスを入れるというもの。お値段3000ガメルの品ですね。
右手には<マナリング>という攻撃魔法のダメージを+1する指輪を嵌めています。1万ガメルの品ですね。
ただしこれはその値段の割には次巻以降装備しておらず、どうも誤記なのではないかと思わなくもない品ですね。
そして足にはムーテスでも御馴染みの<韋駄天ブーツ>です。何の宣言もないのでちょっと驚く変化ですね。
ソラは足に<百音ブーツ>を装備。自分の好きな足音を立てられる青い革靴です。お値段は1万2000ガメルです。
メッシュは顔に<ひらめき眼鏡>を装備。《見識判定》と《探索判定》に+1のボーナスが入る4000ガメルの品です。
腰には<多機能ブラックベルト>を装備。<ブラックベルト>を<多機能○○ベルト>という特殊装備にしたものです。
多機能化すると<ブラックベルト>の上に別の腰用装飾品を装備できます。ただし名前にベルトとつく装備は除きます。
更にメッシュは武器をカテゴリ<格闘>のAランク装備である<ハードノッカー>に変更。専用化しています。
<セスタス>と比べると威力が上がっていますね。まだ<魔法の武器+1>にしていないので命中力や追加ダメージは劣ります。
宣言のある装備だとジークは鎧を<イスカイアの魔動鎧>に変更しています。1万4000ガメルするBランクのカテゴリ<金属鎧>です。
これを装備しながら《マルチアクション》を宣言すると命中力と魔力に+1の修正が入るという魔法戦士向けの鎧です。
ただし金属鎧なので妖精魔法を使う場合は《行使判定》に−4のペナルティが入るため達成値は期待できませんね。
元々は古代魔法文明時代のイスカイア王国の正規兵が装備していた品らしく、ミスリル製のくせに結構数は出回ってるとか。
★不思議な姫の見た夢は
《青嵐領》を舞台にパジャリガーの真実を知ったぞんざいズは、約束通りホーリィにパジャリガー・ショーを披露していました。
ホーリィ「うむ、パジャリガーかっこいいのだ!」
メッシュ「無言でかっこいいポーズを決めています」
ムーテス「その横で、怪獣のポーズをしてるっすよ」
姉妹「さらに、その後ろで生暖かい表情をしています」
ホーリィ「我は、いつかパジャリガーの剣を探しにいくのだ!それを、皇族に還るための試練と決めている」
すっかりやる気を取り戻したホーリィを見てプルチーノさんもひっそりガッツポーズ。依頼は果たしたようです。
ムーテス「その際には是非とも御供いたします」
ソラ「ムーテス君が利益に絡まないのに、自分から」
ムーテス「何言ってるんだよ。絶対金になるっすよこの仕事、決まってるじゃないか」
ジーク「……ムーテス……」
ムーテス「あ、いや。小さな子の純情な夢を叶えるための崇高な仕事なんだよみんな!」
同時に大きい子のドロドロした野望も叶うなら一挙両得ですね。目指すは皇室御用達の冒険者です。
やはり世の中は金とコネなのか。まぁ冒険者としては上昇志向があるのはおかしい事ではないんですが。
ムーテス「是非とも「何とあのムーテスが!」とか言われたい。また、言われたい」
ソラ「え、もう言われてると思うの。「あのムーテスが……(溜息)」」
エア「「あのムーテスがねえ……(哀しそう)」」
ムーテス「ちがう!そっちは完全にマイナスイメージじゃないか!」
強運に恵まれて一躍成功者となり、一気に破産したかと思えばまた成功者。もう自伝を書けるぐらい波乱万丈です。
悪い噂はすぐ広まるものですが、その状態で良い噂が起きれば不評をバネにして前以上の名声が得られるかもしれないし。
ここでぞんざいズはプルチーノさんから家庭教師代として3万ガメルを貰い、買い物をしました。
ジーク「あとは……そうだなあ、名誉点も結構溜まったし、
そろそろ誰かが死ぬかもしれないから、皆の絵を描いてもらおうか」
メッシュ「黒枠でですか?」
ソラ「それ、遺影の発注じゃ……」
エア「それなら、小説のほうが世に広まりやすいんじゃない?
小説家ミャービ・アーキーとかいう人に頼んで書いてもらうとか」
GM「あ、だめ。その人相当遅筆だから、なかなか書き上がりませんよ」←自分で言うな
本当にね、できればヘッポコの小説は完結させて欲しいものです。2012年5月現在最終巻手前で止まってますし(笑)
絵画や伝記も名誉アイテムの一種ですよ。どちらもそのサイズやボリューム、作家の質により必要な名誉点と値段が変わります。
絵画の場合2m×3mの特大サイズで名誉点200の5000ガメルで作成可能。これならパーティ全員の群像で描ける。
伝記の場合は全10巻以上の大長編が名誉点200ですね、お金はかからない。正にこのリプレイのようなボリュームです。
それから数日間は離宮で世話になりましたが、やがてホーリィが神殿に戻ることになってお暇することになりました。
ミスティン「皆さんにお目にかかれてよかったです。どうぞご壮健で」
この時にはミスティン姫も見送ってくれたのですが、どうも彼女の顔色がよくありません。
ジーク「姉ちゃんがまず壮健でいろよ。肉喰え」
ミスティン「ありがとう。何でもありません(主従の頭撫で撫で)、ただ、ちょっと……夢見が悪かったものですから」
ホーリィ「……姉上が夢のことを話す時は、ろくな内容ではないのだ」
やはり彼女の予知夢の能力が発動していました。しかもそれはぞんざいズに関係のあることだというのです。
基本的に彼女は身内かアイヤールの趨勢に関わる予知夢しか見ないのですが、この時はハッキリ彼らの姿を夢で見たそうです。
聞かないという選択肢もありますが、聞くことで未然にそれを回避できるのなら聞いておいて損はありません。勇気は要るけど。
ミスティン「皆さんの姿が見える前で、年端もいかない少女が刺される夢を見たのです」
その少女は年の頃は13〜14歳ぐらいのふわふわロングヘアです。……ピンポイントで思い当たる知り合いがいます。
メッシュ「い、いえ。刺しただけなら大丈夫でしょう、仮にも女神の欠片なのですから。
ただ……刺したものによっては死ぬかもしれませんが」
例の<パジャリガー・スラッシュ>が本当に神様を殺すだけの力があるのなら、本当に死んでしまうかもしれませんね。
ちなみに犯人はフード姿の男、パジャリガーではありません。刺された場所は神殿のような場所だったとか。
ジーク「俺たちが、一緒にいたんだよな?。でも、それはありえない。俺たちは絶対にそんなことさせないから」
ムーテス「何より《かばう》発動」
ジーク「そうだよな。刺されるならムーテスのはず」
エア「ありがとうムーテス、貴方のことは忘れない」
ムーテス「ちょ、ちょっと、そこで僕の死亡フラグ立てないでくれる?」
あとは刺される可能性があるのがルーなのかリアなのか分からないという点ですね。念のため本国にも警告しておくべきです。
しかしこれはあくまでも現時点で起きる可能性の高い未来なので、今後の彼らの活躍次第では回避することもできるかもしれない。
逆に夢に見たシチュエーションの細部が変わって実現する可能性もある。犯行現場や犯人だって変わるかもしれません。
急に不安を覚えたぞんざいズはミスティン姫と連絡がつくよう手配してもらい、急いで《白峰領》に帰りました。
ミスティン「年端もいかない少女が刺される夢は、気が塞ぐものです。なんとか回避してあげてくださいね」
ジーク「まかせろ。絶対阻止してみせる。だからあんまり心配するな」
ミスティン「貴方も無理してはいけませんよ、ジークハルト(頭撫で撫で)」
ジーク「……ミスティさま年上かー……あ、いや、そう思うとエアとソラもすんごい年上なんだけどな」
姉妹「何か言った?」
ジーク「いや、何でもないです。戻ろう、急いで」
こうしてぞんざいズは不吉な予知夢を告げられてしまいました。彼らはこの運命を回避できるのか……。
★神殿のお客様
ホーリィとプルチーノさんを《石街領》に送り届けたぞんざいズは《白峰領》のルーフェリア神殿に帰ってきました。
エア「信者であるわたしが言うのもなんだけど、神様殺せる剣を手に入れたとして、
試し切りにするのに最適な存在なのよね、ルー様」
ムーテス「あ、ちょっと頼りないのがいるから刺してみるか」
エア「そんな感じ。出刃包丁の大根みたいなものよ」←大根扱い
近頃は鉄パイプを切断するパフォーマンスとかもありますしね。どんなものもスッパスパ、貴方の骨もスッパスパ(笑)
神殿に戻ったぞんざいズは早速ルーちゃんを呼び出しました。
ソラ「神殿前のマスターグレード・ライフォスにお辞儀して入っていくの」←バージョンアップしてる
メッシュ「もちろん変なポーズを取らせておくのも忘れません」
エア「この非常時に!」
ジーク「ただいまー!おーいルーお土産だぞー」
ルー「おかえりなさーい」
入れ替わられていないか試しに《真偽判定》して怯えさせたりしましたが、彼女の無事は確認できてひと安心。
ちなみにお土産はグリグリズリー一家から貰った美味しいりんごです。パジャリガーの肖像画よりもよっぽど嬉しいですね。
ジーク「よしよし。何か変わったことなかったか?変な奴が来たりしなかったか?」
ルー「変な人?うん、来た」
一同「何が来たーっ」
エア「どんな人ですか。変な格好してませんか。フード被ってますか。
剣持ってますか。ああああっ、ここは神殿、惨劇に立地最高ーっ!!(錯乱)」
ルー「あ、ちがうの、ちがうの。お客様……でも、変な格好はしてたかも」
エア「ほわぁああん。ルー様、よく喋るようになられましたねー大きくなりましたねー(かいぐりかいぐり)」
メッシュ「アップダウン激しすぎますよ、そこのエルフ」
ここまで情緒不安定だとむしろこの変態神官の方が心配になってきます。いっぺん"サニティ"をかけてもらうべき。
エア「このままだと、お嫁さんに行ってしまうのもすぐかしらー?」
ジーク「いやーごめんなー?」
エア「……そういうことは、名誉点たんまり溜めてからお言いなさい。街レベル勇者」
現在の彼らの合計名誉点は不明ですが、400点を越えるぐらいと思われます。
これだと「都市レベルで名前が通じる」レベルですね。500点越えると「都市レベルの有名人」です。
そこまで行くと地元なら殆どの人から名前と顔が一致して覚えられるレベルですね。神様を娶るにはまだ早いかな?
ではどんなお客さんかというと、若いエルフの男性でカームさんとかではありません。対応したのはガアラでした。
ガアラ「素性の知れない者を、直接ルー様に対面させるわけにはいきませんので」
ムーテス「それはグッジョブだね」
ガアラ「ですからエアさんのお宅に通しておきました」
エア「何で人ン家に通すのー!!」
メッシュ「それもグッジョブですな」
それを聞いたエアはダッシュで自宅に帰り、「ムーテス商会分室」という看板に一突っ込み入れて玄関を開けます。
そこには1人のエルフの若者がいました。そしてぞんざいズの姿を見て開口一番「やあ、お帰り。ムーテス」です。
ムーテス「うわ。リャンじゃないか、久しぶり!生きてたんだ!」
メッシュ「あの時、カイン・ガラの地下に埋めてきたはずなのに!」
ソラ「ムーテスくん、なんで後ろ手で、斧握ってるの?」
ムーテス「してないっすよ!めっちゃ喜んでる!」
彼はムーテスの幼馴染であり、カイン・ガラ時代にパーティを組んでいた仲間です。
ムーテスが生まれ育った村の隣の森に住んでいて、種族の枠を越えて親友だったそうです。
ムーテス「どっちが森の一番高い木に登れるか競争だって30ガメル賭けた時に、
一人で飛んで上がった時の優越感は忘れられない」
エア「詐欺じゃん」
現在は冒険者を引退しており、昔からの趣味が高じてファッション・デザイナーとして名を広めようとしています。
ただし彼の着ている服はちょっと独特で極彩色、流行の先端を走りすぎて斜め上にかっ飛んだ感じのセンスです。
もっとも彼も自分の趣味が一般受けしないことを理解しており、事業として売り出すデザインは割りといい線をいってるとか。
多分一般技能のテイラー(仕立て屋)技能とかを持っているんでしょう。衣服作りの専門家らしいので。
メッシュ「しかし、リャンさんとやら。一時とはいえ、ムーテスの名前はアレだけ広まり知られているわけで。
一方、貴方は全くの無名。それにわだかまりはなかったのですか?」
リャン「そうだねえ。まあ、でも僕もすぐに名前が知られるようになるはずだから。
そのために、ムーテスに空運業のルートを開いてもらっておけるのは、ありがたかったんだよね。
……落ちたみたいだけど」
ムーテス「……だばだば思い出し涙を零してるよ」
ちなみに「シャンデル製品に次ぐようなブランド」を立ち上げるのが夢だとか。これはザルツ地方の高級ブランドのことです。
何やら凄い自信ですね。ただ以前のムーテスもそうですが、これぐらい向こう見ずなぐらいで丁度いいのかもしれない。
メッシュ「悪いことは言いません。……諦めろ?」
リャン「おやおや出会い頭に何を痛烈なことを言ってくれるんだい(肩すくめ)」
では何故彼がここにいるかというと、このアイヤールが服飾関係における新規開拓地だと判断したからです。
このフェイダン地方の流行はリオスから生じます。以前ベル君がルーフェリアの聖印をレトロと言ってましたもんね。
それに比べてアイヤールは人口の多さの割りに無骨でファッションには疎い。だからこそ付け入る余地があると判断しました。
ムーテスの居場所はルーフェリアの国で聞いたそうです。そこで新しい飛行船の建造現場で聞き込みをしたのです。
何しろ飛行船なんて珍しいものが新しく造られていたらムーテスが関わっていると考えても無理はありません。
リャン「アメリアって人に聞いたら『ああ。ムーテス、彼はいい人だったよ。実にね』って、
懇切丁寧に、アイヤールに落ちたってことを教えてくれて……」
ムーテス「……アメリア……」
一時は破産したけど色々あってそれなりに著名な冒険者になりましたからね。本国で聞けば行方はすぐに分かるようです。
あと彼の飛行船が落ちたのはルーフェリアの国境あたりであってアイヤールではない。アメリアのそれは蛮族の領地に落ちたけど。
リャン「もうー、僕がファッションリーダーになったら、
服の空輸を一手に任せようと思っていたのに、なんで、潰れてるんだよー(拗ねてる)」
ムーテス「それは僕のほうが聞きたい!あの輝かしい日々を、もう一度!」
リャン「その意気だよ、ムーテス!さあ、ボクと一緒にもう一山当てようよ!」
ムーテス「おお!いい言葉だなあ。一山!」
リャン「というわけで儲け話を持ってきたんだ、ムーテス」
というわけで彼が今回の依頼人です。ただ予知夢を聞いて警戒厳重な今それを受けるべきかは悩みどころです。
エアなんて既にルーちゃんを抱きしめてしっかりガードしています。主にリャンから変な影響を受けないように(笑)
リャン「え、なに?なに?その子?」
ムーテス「いいかい、リャン。彼女は神なんだ。変なことをしたら、一国を敵に回すと思ったほうが……」
エア「あほか!言うな!」
メッシュ「はっはっは、いわゆるアイドルというやつですよ」←誤魔化そうとしている
しかし大の大人が少女を囲んで「神」だの「アイドル」だの言ってるのは傍目には危ないですね。
リャン「ま、人の好みはそれぞれってやつだよ(肩すくめ)。……どこで踏み外したやら」
ムーテス「ちがう!断じて違う!まあ、十秒ごとに《かばう》を宣言してるけど、そういうのじゃないんだ!」
確かに彼にはそういう癖はありませんが、「俺の嫁」扱いしている人や息も荒く萌え転げている変態神官の仲間と考えると(笑)
まぁそれはいいとして(いいの?)、今回のリャンの依頼は服飾に使用する素材を集めるというものです。
彼はこの国では「黒を基調として力強く高級感を持たせる」形で自分のデザインを売り出そうとしています。
そのためにラプテラスという怪物の戦利品として入手できる<黒い皮膜>というアイテムを求めているのです。
換金すると500ガメルする品です。出目にして7〜12が必要。ソラなら出目5〜10で取れますね。
ラプテラスとは9レベルの動物であり、体長は少なくとも5mを越える羽毛のない怪鳥です。翼竜みたいな感じ。
頭部(コア)、胴体、翼×2の四部位。その体格から《小回りがきかない》ため同じ対象に攻撃できるのは1ラウンド2回まで。
頭部は《烈風の吐息》を吐いて半径5m/15を対象に風属性の魔法ダメージを食らわせます。ただし連続した手番には使えない。
胴体は《攻撃障害=不可・不可》なので頭部を近接・射撃攻撃で狙う場合はまず胴体を落とさねばなりません。
翼は《飛翔U》を持つので全部位は命中力・回避力に+2のボーナスが入ります。片翼を落とせば失われるのはいつもの通りです。
また翼を羽ばたかせて《疾風》を起こし、"ライトニング"のように「貫通」する物理ダメージを発生させる事も可能です。
こいつが《白峰領》の近くに住んでいるそうです。普段なら気安く受けるのでしょうが、今回は色々ありますからねぇ。
メッシュ「いつまでにとかいうのはありますか?」
リャン「そりゃ、早いほうがいいに決まってるけど」
ソラ「報酬は?友達のよしみで、ただとか超安値で……とか、思ってる?」
リャン「え、友達だから少し高めに出そうかとは思っていたけど……あれ、もしかしてムーテスってお金に困ってるのかい?」
ムーテス「え!ち、ちがう!それは……商人として、お金に意地汚いのは、常のことじゃないか!」
ソラ「がんばるのね、ムーテス君。一文無しの経験、隠そうとして……」
報酬は全部で4万ガメルほど用意しているそうです。プルチーノさんの報酬より多いとは、意外としっかりした額ですね。
ではこの依頼をどうするか。彼らは一応神殿付きの冒険者で、有事の際にはそちらを優先する義務がありますが。
ムーテス「そう。その責任は放棄できない。ちなみに、僕としては、リャンの儲け話に一口乗りたい気満々だけど」
ソラ「一緒一緒。あたしも結構、割のいい儲け話なので逃がしたく、とか思うの」
ムーテス&ソラ「心は一つ(握手)」
エア「こらっ!」
そこでまずはガアラと相談して対策を練ることにします。余裕が出来るようなら受けると。
それまでの間リャンはムーテス商会の事務所、もといエアの家に泊まることにしました。
メッシュ「しばらく、汚い家ですがゆっくりとしていてください」
エア「汚くない!(キーッ)」
リャン「ああ、いやいやお構いなく。あ。宿代は百ガメルくらいでいいのかい?」
ムーテス「うわ、懐の広さを見せ付けられた」
エア「……あのね?お金を払うほうがヒエラルキーは上なのよ?」
この宿代が何日分なのかは不明ですが、一般的には一日で30ガメル以上、一週間は150ガメル以上です。
馬小屋の片隅なら一日15ガメルぐらいで済みますが、エアの家ならスタンダード(30ガメル以上)相当でしょう。
★お出掛け前の対策会議?
ぞんざいズはリャンにはエアの家で待機してもらい、ガアラに予知夢の件を報告します。
ムーテス「ルーも一緒にいさせたほうがいいかな。予言の当事者なんだし」
エア「そこは、正直ルー様を、子供として扱うか、神様として扱うかによると思うのよね」
ジーク「そうだなあ……つい、あんな姿だから、庇護対象にしちまうんだけど。それは失礼なのかなあ」
後の様子を見る限り彼女には話していないようです。その代わりガアラには身辺警護を依頼しますが。
この報告だけでもショックを受けた様子のガアラにぞんざいズは追い討ちをかけます。
メッシュ「で、それはそれとして、ムーテスの昔馴染に冒険に誘われているんですけどね」
ガアラ「今の状況で、行ってらっしゃいは言い難いですよっ(真っ青)」
ジーク「まあそりゃそうだ。ともかくガアラ、しばらくルーは絶対に一人にしないようにしてくれ」
ガアラ「わかりました。しかし……ニールさんとオデットさんがもうすぐ面会にこられるというのに」
ルーちゃんの養父母だった老夫婦ですね。実はこの夫婦、誘拐事件からずっと事情聴取を受けていたようです。
それがこの度解放されて、ルーちゃんの顔を見に来たいと言っているようです。あれからずっとって結構経ってますけどね。
事情聴取というのも拘束された上での事なのか、監視がついていたのかにもよりますが、神殿の扱いに問題はなかったのか。
それからルーちゃんの身辺警護をして5日ほどが経過しましたが、特に異変はなし。
ソラ「覆面をした、大きな剣を持った変な人が入り込んだりしていない?」
GM「そうですね、少なくともそんなピンポイントに目立つ風貌の人は、神殿の奥にはお邪魔していません」
ここで気付いたのは予知がいつ実現するのか不明だという点です。今すぐかもしれないし、1年後かもしれない。
あるいは彼らの与り知らないところで既に事情が変わっていて凶行は中止になっている可能性だってありますしね。
メッシュ「これは、リャンとやらの依頼を一件すませて、もう一度対策を考えたほうが良いのでは?」
エア「……飽きたでしょ」
メッシュ「はっはっは。そんなわけがあるわけないじゃないですか!」
結局何の変化もないのでリャンの依頼をさっさと済ませる事にします。幸いラプテラスの生息地は《白峰領》のすぐ外だし。
ルーちゃんの護衛は一時解除しますが、傍にはフェイを置いていってソラといつでも連絡が取れるようにしておきます。
リャンのスペックはフェンサー/スカウトだったようですが、解散当時の3レベルで止まってるようです。
リャン「何を言ってるんだい?ボクはすでに引退した身だよ、アーティストなのさっ」
ムーテス「うん、いいよ。君には何も期待してないから」
リャン「おおっと、これは痛烈だなあ」
ムーテス「一応は依頼人として、《かばう》枠を使わなきゃいけないのが、微妙に理不尽だなあ」
リャン「何を言ってるんだい。兵器さ、ムーテス。ボクは誰よりも後ろにいて護られてるよ」
万が一乱戦エリアに巻き込まれたら死にそうですしね。ソラと同レベルですがHPは彼女よりずっと低いだろうし。
相手が強過ぎて避けられないことを前提にすると、HPが高くて自己回復できるエアよりも前に出すのは危険かもしれない。
そしてガアラには本国にも警戒するよう連絡させて、ルーちゃんとはまた暫くお別れです。
ルー「……ジーク、どこかへいくの……?」←寂しそう
ジーク「おう。ごめんな。すぐに帰ってくるから、しばらくは一人になったりするんじゃないぞ」
ルー「うん、わかった。いい子にして待ってるね……」
旅行から帰ってきたと思えばまた仕事。出張の多い旦那の帰りを持つ若妻みたいになってきました。
ぞんざいズはリャンを連れて《白峰領》の外へと向かいます。リャンはジークの愛馬ポピーちゃんに乗っています。
リャン「やあ、冒険っていうのも久し振りだねえ」
エア「大丈夫、貴方はもう格好が冒険してるから」
道案内はリャンです。彼は地図を持っていまして、それを見ながらぞんざいズを城壁に儲けられた出入り口へ案内します。
以前《赤砂領》の「偉大なる住処」に行った時だって国境は越えなかったのに、いよいよ東の国境を越える時がきましたね。
ここから先は蛮族の領地、危険が予想されます。
GM「とはいえ、そんなに近くに蛮族が集落を作ってるようなことはないでしょうけどね。
多くは猛獣とかじゃないかと思います。何故曖昧かと言うと……」
姉妹「情報収集してこなかったから!(挙手)」
ムーテス「気付こうよ!そして、調べようよ!」
実際蛮族の集落はもっとずっと西に行かないとないようです。この辺りは荒野で猛獣とかが徘徊しています。
それだけに門番さんはここを通る人は珍しいと言っていました。
門番「まあ、少し前にはエルフが一人入ってきたけど」
エア「多分うちの大司教じゃない?」
ジーク「ああ、なるほど。だったらすげえ危険な猛獣とかはいなくなってそうだよな」
メッシュ「壁の向こうは水浸しで、すごい湿地帯に変わっていたりするかもしれません」
普通に旅をしていて襲い掛かってくるようなのは撃退しているでしょうね。
もっともぞんざいズが向かう先まで掃討してくれているとは限りませんが。
荒野に出てもリャンは地図を見ながら案内していきます。
リャン「まずは拠点を確保しないとね。もう少し行くと、小さな神殿跡があるんだよ」
一同「神殿跡!」
ジーク「うわわ……ルーを連れてこなくて良かった……」
ラプテラスのことを調べる際にそういった情報も調べていたらしい。ただし本当にそこが予知の場所かは不明ですが。
ここでメッシュは《足跡追跡判定》を行い、人っぽい足跡が少しあって、殆どは獣のものだと判断します。
人っぽい足跡は人族のものか蛮族のものかは不明ですが、獣のものもあるのなら警戒した方がいいでしょう。
リャン「誰もいないみたいだし、行ってみようよ」
ムーテス「怖いからそれ以上口を開かないでくれるかい、リャン」
リャン「いやー、そんな迫力があるなんて、照れるなあ」
ムーテス「もう、それでいいから喋るな(にこやか)」
ソラ「かみあってないにも程があるの。幼なじみなのに」
神殿は太陽神ティダンのものですが、「大破局」時に放棄されて荒れ果てています。昔はここもアイヤール領でした。
いずれアイヤールがさらに拡張すればアイヤール領に戻る時がくるんでしょうかね。何百年かかるか分かりませんが。
メッシュは神殿に入ると《探索判定》を行い、野営の痕跡と争った痕跡を発見します。
メッシュ「リャン、心当たりはありますか?」
リャン「へ?(首を左右に振る)」
ジーク「本当か?なあリャン、トイレは何処だ?とか聞いたら「あ、さっきの突き当りを右に」とか、言わないか?」
リャン「何を言ってるんだい。ジークくんとやら。冒険者たるもの、この広い大地全てがトイレさ」
ソラ「スケールでかいの」
ムーテス「リャン、お前今、かっこよく決めたつもりだろうけど、汚いよ」
でも日も暮れてきたのでそのまま神殿に泊まることにします。野宿よりはマシですかね。
しかしリャンを信じきれないのでリャンの当直時にメッシュも起きて見張ることにしました。
メッシュ「了解しました。ぐおーっ、がおーっ」
エア「うわ、主従揃って、肝心な時に大根」
すると当直になったリャンはふらふらと神殿の外に出て行き、メッシュは慌てて《隠密判定》で追跡します。
相手も一応スカウトですが全く後方を警戒する様子もなく、星空の下でちょっとロマンチックに浸ったりしています。
リャン「ああ……星が綺麗だなあ。インスピレーションを刺激されるよ」←独り言
メッシュ「な、なんなんだ。こいつは」
リャン「ああ……人の営みの灯りは見えないだけで。この世は何と寒々しく見えるんだろう……
いや、しかし、そんな孤独な心を、星の灯りが照らしてくれる」
メッシュ「……奴を、ゴ○ゴに暗殺を依頼したい」
ムーテス「いやーGM天才っすね。恥ずかしくないですか?」
GM「黙れや」
スパイと連絡を取ったりするのかと思いきや、まさかのマイ・ポエム。もしこれが暗号だったら打つ手なし(笑)
ところがメッシュがげんなりしている一方で神殿の方では大変な事になっていました。
残されていた人達が《危険感知判定》に失敗し、2頭のサーベルタイガーの襲撃を受けていました。
サーベルタイガーは7レベルの動物であり、発達した二本の犬歯を持つ虎です。
部位は一つで《全力攻撃》も可能ですが、その最大の特徴は牙の攻撃が命中した時に発生する《双牙》です。
これはダメージ決定を2回行いその両方を適用するというもの。二本の牙が同時に食い込んでくるわけですね。
ダメージは2D+10、よって防護点18のムーテスなら殆ど止められる相手なのですが。
ムーテス「さすがに、寝てるときには<ミスリルプレート>は着ないよねえ……盾だけは持たせてよ」
鎧を着ないと《防具習熟》のボーナスも入らないので14点ほど防護点が減少してしまいますね。
ここでは防護点2と言っていますが、〔鱗の皮膚〕で3点はあるはず。<ブラックベルト>もつけていたら4点。
メッシュ「海老の殻をむかれたような状態ですな。それは」
ムーテス「うわぁああんっ、僕はもう二度と野営でも鎧は脱がない!」
とはいえ金属鎧を着たままでは休息できません。それを解決するのが<オールタイムアーマー>の加工です。
これは金属鎧に内張り加工を行い、金属鎧を着ながら休息できるようになるというもの。加工費用は4800ガメル。
1ラウンド目
ジークは乱戦エリアに巻き込まれたエアに《マルチアクション》で"ストーンガード"を使いつつ攻撃します。
これは3レベルの妖精魔法で一度だけ物理ダメージを−5点にできます。自前の防護点と合わせて9点ぐらい止めますね。
万が一攻撃が行った時は期待値で17点が2回ほど来ますから、8点と13点で21点ほど削られますね。
2ラウンド目
それでも傷だらけになったエアにジークは"プライマリィヒーリング"しつつ《マルチアクション》で攻撃。
こちらは4レベルの妖精魔法で魔力+4点HPを回復させます。今のジークだと11点ほど回復しますね。
エア「え、誰この人。この通りすがりの紫のリルドラケンは」
ムーテス「え、僕のアイデンティティー鎧だけ?」←かばおうとしたのに
やはりエアが乱戦に巻き込まれ、ムーテスが防護点を発揮できず、メッシュがいないこの状態はかなり苦しいようです。
一方そのメッシュはというと、リャンと判定をしあってとうとう見つかりました。
リャン「こうして、友と過ごすかけがえのない時間……ボクは、星に感謝しよう!さあ!わが友よ!」
メッシュ「は、しまった。見つかってしまいました」
リャン「何故、ムーテスじゃないんだ!どうして君がここにいるんだい?」←キレられた
メッシュ「やかましい!……あ、いえその、コホン……ははは、貴方の声に誘われてきたのですよ……(嫌そう)」
リャン「そうか、ボクの詩を理解してくれるんだね。けれど、そろそろ冷えてきたよ。火の傍に戻ろう」
こうしてメッシュは3ラウンド目に合流できるようになりました。戻ってきたら修羅場ですね。
3ラウンド目
満を持してメッシュ登場。
メッシュ「私が来たからには、もう安心ですぞ、皆さん!」
一同「遅いんだよ!」
リャン「みんな!彼を責めないでやってくれ!彼はボクの歌声に惹かれてしまっただけなんだ!」
ジーク「なおさらだ!」
すると不思議と形勢は逆転し、一頭はソラの"スリープ"で眠り、もう一頭は全員でフルボッコにしました。
例の野営の痕跡と争った痕跡はここで野営をしていた蛮族がサーベルタイガーに襲われたものだったのかもしれない。
リャンについてはムーテスが説教しておきます。彼の歌声がサーベルタイガーを呼び寄せたかもしれないし、単独行動は危ないし。
ムーテス「もう、心に訴えかけるような切なる声で」
リャン「わかったよ!ボクもう、こんなことしないよ!」←正座
ムーテス「くぅ……こいつ、演技なんじゃ……」
エア「ムーテスの顔も三度まで」
リャン「今度こそ、しっかりと見張りをするよ!」
メッシュ「いや、お前は大人しくしていてくださいませ。誰の安眠も妨害しないように」
こうして初日の夜は更けていきました。明確に怪しい行動こそ取っていないものの、リャンに不審を抱きましたね。
★羽音を追いかけて
神殿で一夜を明かしたぞんざいズはリャンが持っていた地図を見せてもらいます。それは幾つかの印がついた簡素な地図でした。。
ソラ「いくつか付いてるバツ印は?」
リャン「よくぞ聞いてくれました!これは、ボクたちのターゲットであるラプテラスらしい羽音が聞こえたという場所なんだよ」
ジーク「……へーえ。よく調べたなあ」
リャン「そりゃあ、ボクの野望が掛かっているからね」
エア「でも、どうやって調べたの?このあたりは、蛮族の領域よね」
リャン「え、あ。そりゃあ、昔の地図とかでね」
ジーク「……羽音の位置もか?」
そう聞かれても色々コネがあるのだと詳しくは話さず、とにかく勢いで突っ走ろうとするリャンに不信感は募るばかりです。
彼の地図の情報源はどこなのか?コネとは何なのか?それが明らかになるまで彼を信頼することはできそうにありませんね。
メッシュ「お前からは目を離しませんよ、リャン。お前はジーク様を危険に晒したのですから」
リャン「え、そんな……熱い視線で見ないでくれよ」
メッシュ「何が熱いか!熱いどころか氷点下ですよ!」
エア「空気が読めない最先端ね」
しかし今だかつてこれほどまでに胡散臭い依頼人がいたでしょうか。裏がある匂いがプンプンしてきましたね。
しかもメッシュが彼の服装を《宝物鑑定判定》したところ、どうも端々が安っぽいように見えました。
4万ガメルもの大金を用意したにしては少しお粗末ですね。その皺寄せで自分の服をケチるタイプにも見えないし。
ムーテス「ごめんみんな。こういう奴なんだ。悪い奴じゃないんだけど」
ジーク「そんな風に言われると、ムーテスの方もどんどん怪しく思えてくるな」
ムーテス「ええっ!」
エア「わたしたち皆を、窮地に陥れて、パーティ財産を独り占め?」
ソラ「あ、パーティ崩壊の危機」
ムーテス「ちがうー!そんなことするなら、あらかじめもっとパーティ財産を積極的にかき集めてるよ!」
そういえば今回購入した<ミスリルプレート>もパーティ財産から出てましたね。……だめだ、本当に怪しく見えてくる(笑)
ここでジーク達はムーテスのパーティが解散した時の話を聞きました。
当時の彼らは3人パーティで、ムーテスとリャンに加えてミラという女の子のリルドラケンが参加していたそうです。
エア「彼女?(にやにや)」
ムーテス「そんなんじゃないっすよ。「防護点も筋力もある自分が、魔法使いやったら最強じゃね?」
的なことを言いながら、少ないMPでコンジャラーをやってたんで」
ジーク「中途半端になりやすいぞ、それ」
ソラ「……ちょっと、気が合う人のような気がしてきたの」
エア「確かに、方向性は似てるかも、妹と」
つまりファイター/レンジャーとフェンサー/スカウトと推定ファイター/コンジャラーですか。
ちゃんとした後衛が1人もいない前のめりな構成ですね。実際彼らはパッとせずに解散することにしたんだとか。
ところがその時諦めきれないムーテスはもう一度遺跡に潜り、そこで例の魔動核を発見したというわけです。
この時ムーテスはリャンにもミラにも分け前はあげていない。そうなるとリャンが大金を持っているのは益々不可解ですね。
さて、そうして駄弁っているとぞんざいズはリャンの案内で羽音が聞こえたという廃墟に到着していました。
ここで元仲間のムーテスが《探索判定》で頑張って高い数値を出し、羽や爪の痕跡を発見しました。
ところが《魔物知識判定》でその正体を調べてみるとラプテラスではなくキマイラであると判明します。
キマイラは9レベルの幻獣であり、獅子の身体に山羊と竜の頭と蛇の頭が付いた尻尾を生やし、皮膜の翼を持ちます。
獅子頭/山羊頭/竜頭/胴体/翼の計五部位を持ちます。コア部位は全ての頭で独自に思考し、様々な能力を持ちます。
獅子頭は練技"キャッツアイ"、"ビートルスキン"、"リカバリィ(5点)"を使いつつ牙で攻撃してきます。
山羊頭は操霊魔法7レベルを魔力10で使い、《魔法適性》持ちで《魔法制御》まで使いつつ角でも攻撃可能です。
竜頭は《炎の吐息》を1体を対象に吐き、牙でも攻撃可能。翼は毎度御馴染みの《飛翔》を持っています。
そして胴体に生えた蛇の頭は《呪いの毒牙》を持ち、ダメージを受けた上に抵抗に失敗すると命中力−2です。
SWでも色々してくるマルチなモンスターでしたが部位の概念が取り入れられたことで更に手強くなりましたね。
この中だと《魔法適性》に含まれる《魔法制御》が目新しいですね。PCも戦闘特技とし習得可能なものですが。
これは《魔法誘導》《魔法収束》を前提に習得するものであり、範囲魔法を任意の対象にのみかける事が可能になる。
よって乱戦エリアに"ファイアボール"とかを撃ちこんでも味方は無傷で敵だけ傷つくという夢のような特技ですね。
味方が使えば夢のように素晴らしいで済むけど敵が使うと悪夢ですけどね。ぶっちゃけラプテラスより厄介です。
するとリャンは計ったように余計なものを見つけます。
リャン「すごい、何だかキラキラしてるのが近付いてくるよ!」
推定戦利品の<黄金のたてがみ>ですね。2900ガメルとかする高級品ですよ。
ぞんざいズは逃げられないと悟り、こいつを迎え撃つことにします。戦利品はぞんざいズのものですけどね。
ソラ「戦闘圏外に出てて、四万ガメル(蹴り出した)」
リャン「もちろん、それはかまわないけど……って、ああっ、かわいい顔してご無体なっ、やっぱり女は金に弱いんだー」
ソラ「う、可愛いって言われると、嬉しくて赤面するかも」
40超えても女の子ですから。メンタルは少女時代とそう変わらない気もしますしね。
ジーク「かわいい」
ソラ「……反応に困った。ぷい」
ジーク「何だか哀しくなった、エアにも言ってみよう。かわいい」
エア「……"キュア・ディジーズ"」
ジーク「いや、熱はないから!」
思えば今までジークはこの姉妹についてはあまり女扱いしてきませんでしたね。
ルーちゃんとかホーリィとかミスティン姫とかとは明らかに扱いが違うし。リウイみたいに仲間扱いしてるからですかね。
エア「わかってないわね。わたしは自分のことを可愛いとは思っていないの、いい女、なの」
メッシュ「おばちゃんですからな」←こっちは50超えてますからね
エア「むっかぁ……ポンコツ執事に対する"キュア"系魔法の使用回数に制限をかけようかな」
メッシュ「いやぁ、もう、かわいいんだからぁ〜〜(超軟派調)」
エア「うわぁあ、イラっときた!」
7歳児と50女の会話とは思えない殺伐さ。この世界だと祖母と孫とかでもおかしくない年齢差なんですが(苦笑)
戦う前にソラは一応キマイラと交渉してみました。交易共通語、汎用蛮族語、ドラゴン語、魔法文明語全て話せるので。
ソラ「あなたの縄張りを荒らしに来たんじゃないの、できたら見逃して」
キマイラ「死体なら見逃す」
ソラ「わかった。"ライトニング"」
思い切りの良すぎる交渉パート2。そういえばマンティコアとキマイラってフォルムが似てますよね。
1ラウンド目
ぞんざいズが先制を取ったことで、まずソラが"ファイアボール"を撃ちこんで抵抗も破れたのか大ダメージです。
続いてムーテスは"キャッツアイ"を使いながら《テイルスイング》で全部位を狙い、翼に命中しますが。
ムーテス「……もう一声欲しいな。でも、ここで<巧みの指輪>を割ると……」←持ってたらしい
ソラ「あたし、予備の指輪持ってる。ムーテス君、いっちゃえー!」
ムーテス「ありがとう!じゃあパリーン!ボーナスが上がった。全部位に当たるよ」
この時のムーテスは"キャッツアイ"と〔風の翼〕の効果で命中力12で出目7らしく達成値19でした。
翼だけは他の部位より回避力が1〜2低くて辛うじて命中し、指輪で+2されて命中したという感じですかね。
他の部位の回避力は10(17)と11(18)なので固定値の場合《飛翔》があっても10(17)には当たりますね。
ということは<剣のかけら>が入っていないけどサイコロは振っているのでしょう。一回振りか個別振りかは分かりませんが。
この攻撃で山羊頭と翼が瀕死になり、エアの"フォース"が突き刺さって翼が落ちてキマイラは墜落。
更にジークが山羊頭を落とし、メッシュは竜頭を殴って大ダメージです。いきなり魔法と飛行の脅威が消えましたね。
次に獅子頭は全練技を自分と他の部位に入れつつメッシュに攻撃。しかし今の彼に不用意な攻撃は自殺行為です。
メッシュ「っしゃあ!ついにきましたね、《カウンター》のお披露目が!」
GM「はいはい、19」
メッシュ「(ころころ)ふぁあっ!、19!しまった、《カウンター》は同値では殴り返せない!」
せめてタゲサでも入れていたら違ったんですけどね。仕方ないので指輪を割って普通に殴り返しました。
何しろ獅子頭のダメージは2D+13点です。失敗したら25点とか喰らいますしね。仕方ありません。
2ラウンド目
ソラが《魔法制御》もないのに"ファイアボール"を撃とうとして止められました。
エア「ちょっと考えなさい!使用人とトカゲはともかく、その魔法でジークが死んだらリプレイに書けないでしょ!」
GM「書きますよ。面白いから」←ですよねー
ムーテス「いや、トカゲと使用人も死んじゃだめっす!」
結局エアが"バトルソング"を歌って袋叩きにして倒しました。<剣のかけら>は入ってないとはいえ呆気ないですね。
これは7レベルの神聖魔法であり、半径6m/20の任意の対象の命中力と追加ダメージを+2にします。
SWの頃には同名の魔法がマイリーの特殊神聖魔法でありましたが、こちらでは基本神聖魔法なので宗派を問いません。
★ちょっと問い詰めてみた
キマイラは倒したものの、ここにきてついにぞんざいズのリャンへの不信感は頂点に達します。
リャン「じゃあ、今度はあっちに行ってみないかい?」
ムーテス「……あっちというのはなんっすか?」
リャン「え?やっぱり、大きな羽音が聞こえるっていう場所だけど」
ムーテス「……で、なんで僕は君に敬語なんっすかね?」←マジ切れしている時に敬語になる人
リャン「本当だよ、水臭いなあムーテス!」
まぁ彼の案内で危険な目に遭ったから当然ですかね。実際は20秒で片付く危険でしたが危険は危険。
リャン「ど、どうしてみんな、そんなにボクを胡散臭い目で見るんだい?」
一同「うさんくさいからだ」←ハモった
この時ばかりは普段はぞんざいなジークですら彼に常識的な指摘をします。
ジーク「あのな?オマエな?ここまでこんな風に旅をしてきて、俺たちを危険に晒してるわけだ。
しかも、情報の確かさも危うい。
それで、まだボクを信じて欲しいってのは……ちょっと、甘いんじゃないか?」
リャン「え?どうして?(きょとん)」
ジーク「それでどうしてって思うのは、すでに常識がないぞ?ま、俺にもないがな」
エア「色々と人として、いやエルフとして軸がぶれてる」
そして地図の情報源が誰かと問い詰め、少し抵抗しましたが帰る素振りを見せると吐きます。
情報の提供者はルーフェリア神官フロリダス。エアも名前を知っている本国の人間です。
では何故こんなことをするのか?
リャン「うん、君たちが、色々と邪魔をするからって聞いてね」
ソラ「はぁ?」
リャン「とあるいたいけな少女と、運命の悪戯によって引き離されてしまった、
義理とはいえご両親との……感動的な再会を」
エア「荷物を纏めて帰りましょう」
まさかルーちゃんと老夫婦の再会すらフロリダスのセッティングしたことだったとは、早く帰らないと危険です。
ちなみにリャンが<黒い皮膜>を欲しがっているのは本当です。彼に悪意は一切ありません。思慮もありませんが。
リャン「ボクは君たちを雇うためのお金をちょっと借りただけさ」
ムーテス「もらっとるじゃないか!」
リャン「だって、お金をくれる人は皆いい人だって、言ってたじゃあないかー」
ムーテス「オマエは間違ってる、リャン!お金はただもらうものじゃない!何とかして騙し取るものなんだ!」
ジーク「ちょっと待て、それも違うぞ!……多分」
それでも彼に悪意はない。昨夜もムーテスだけは安全な場所に連れ出そうと詩を吟じていたそうだし。
彼とフロリダスの利害が一致し、リャン自身はそれが良いことだと確信した上で計画に加担していたわけですね。
正しい意味での確信犯というわけです。悪いことだと確信した上で行うという誤用の意味ではない確信犯ですよ。
ルーの身に危険が迫っていると知ったぞんざいズの行動は迅速でした。
まずリャンはムーテスが持っていた<リャン専用猿轡>を噛ませてポピーちゃんに括りつけておきます。
そして最短距離を突っ走って《白峰領》に戻り、あっというまにルーフェリア神殿にまで帰ってきました。
ところが神殿には既に彼女の姿はなく、ガアラと一緒に馬車で両親に会いに出かけてしまったといいます。
ジーク「出掛けるなー!ガアラーどこだー!」
神官「ルー司祭のご両親ということですので、付き添いと聞いています」
エア「ルー様も、今のところは一介の神官扱いだしね。……わたしは何介くらいになるのかな」
メッシュ「地下三階」
エア「地に潜った!」
相手は馬車で先行すること2〜3時間とのことなので、こちらも馬を借りて分乗して追いかけます。
幸いフェイが一緒にいるので発見すること自体は難しくなく、敵に接触される前に追いつくことができました。
もしグズグズしてたりリャンに連れまわされてたりしたら間に合わなかった可能性もありましたが、本当に迅速でした。
ジーク「止まれ、そこの馬車!」
メッシュ「……実に追い剥ぎチックで素敵です、ジーク様。大人しくすれば命はとりません!」
GM「じゃあ……追い剥ぎならガアラさんが中から"フォース"で迎撃準備を……」
ということはなく、御者も護衛である神官さんも顔見知りだったので何事もなく合流できました。
ルー「どうしたの?ジーク、お仕事終わったの?」
ジーク「ガアラだけじゃ心配なんだよ。あんまりふらふら出歩くなよ」
ルー「だって、お父さんとお母さんが……会いにきてくれるって。
少しでも、早く元気にしてる姿、見せたかったの(しゅん)」
ジーク「まあ、今まで寝っぱなしだっただけに、気持ちはわかるけどな……」
エア「可愛い子には、あんまり旅をさせたくないの」
メッシュ「可愛い子には旅は道ずれ世は情けでございますよ」
ソラ「何言ってるのかわかんない」
あんまり神殿から離れすぎるとまた寝ちゃいますけどね。領内なら大丈夫だとは思いますが。
ここでぞんざいズはガアラには事情を話し、馬車を護衛しながら待ち合わせの場所へ向かいました。
馬車を護衛しつつ街道を進むぞんざいズはある地点で《危険感知判定》に成功し、何者かの潜伏を察知します。
メッシュ「……ふ、そんなに殺気立っていては、隠れている意味はないぞ!」
ムーテス&ソラ「ちょっと待ったー!」
エア「それ、どっちに警戒促してるのよ!」
ジーク「え。俺普通に、メッシュかっこいいなーと思って見てた」
すると草むらから2人の男性が出てきます。金属鎧を着込み、ルーフェリアの聖印をつけた騎士の姿です。
騎士「大切な方が、おいでになるということで護衛にきた者だ」
ソラ「……あやしい」
エア「じゃあ何で隠れてるの」
騎士「……いや。その、馬車に既に護衛が付いてるとは。あ、いや。
大事になるのもどうかと思い、陰ながら護衛をしようと」
ここでソラは3レベルの真語魔法"センス・エネミィ"を使用して相手に敵意があるかを調べました。
敵意は感じられませんでしたが、これは術者への敵意を感知するだけでルーちゃんへの害意までは感知できません。
ちなみにこの魔法を使用すると相手は軽い不快感を覚えて何をされたか理解できるため、心証を悪くする可能性もある。
SWにも同名の魔法がありましたし、邪悪を感知する"センス・イービル"と同様に使いどころを考えないといけませんね。
エア「ごめんなさいねー。これは形式上のものですからー。
これは、貴方が敵意を持ってるかどうか、調べるものじゃなくてー。
敵意を貴方が持っているかどうかを調べる魔法なんでー」
メッシュ「一緒ではないですか」
もし冤罪だったらちょっと悪いことをしたかなと思いましたが、それは甘い考えでした。
彼らは自分達を派遣した人物がフロリダスだと白状したのですから。まさかバレてるとは思わなかったのでしょう。
もうほとんど決まったようなものですが、最後に彼らにはルーフェリアの教義を暗唱させてみました。
ところが本職のエアから見ると非常に付け焼刃っぽく怪しいものでして、《真偽判定》でルーフェリア神官であるか確認します。
すると彼らは"ピュリフィケーション"も唱えられないと判明。1レベルでも使えませんが、技能そのものがないのでしょう。
もっとも技能がなくても聖職者をやってる場合もあるとは思いますが、彼らはただ聖印をつけただけの騙りという意味なのでしょう。
ただしプリースト技能こそ持たないものの、ファイター技能は高くてジークと同等の7レベル相当のようです。
これはPCデータがあるのではなく、モンスターデータとしての7レベル人族の正騎士にあたるのでしょう。
《牽制攻撃》と《かばう》と〔運命変転〕まで使えるし、HPは《タフネス》効果なのか66点と高いので厄介です。
そして今回のボスは彼らなので<剣のかけら>も入っています。7つ入っているとしてHPは101点にもなりますね。
ジーク「ご苦労。もうお前たち帰っていいぞ」
GM「えええっ!いきなり存在否定された!」
ジーク「まあ、ぶっちゃけ俺たちはフロリダスって奴のことを疑ってる。
なので、そいつから派遣されてきたっていうお前たちのことも疑ってる」
メッシュ「ジーク様、率直すぎて素敵でございます」
一切遠回しなことはせずにストレートにぶっちゃけましたね。遊び玉も変化球も一切なし、男前すぎる。
ジーク「だって、フロリダスって奴、リャンの話しからして
明らかに俺たちからルーを引き離そうとしてたじゃないか」
騎士「何だって!」←驚いている
ソラ「え?本当に驚いた?」
エア「知らなかったの?」
騎士「そこまで喋ったのか、あのアホは?」
主従「そっちかよ!」
はい、結局彼らもフロリダスの計画を知った上で派遣されてきたようですね。
しかも正しい意味での確信犯ではなく、誤用の方の確信犯に当たるのかもしれません。
ここまで分かればもう腹の探り合いも必要なし。《先制判定》で珍しく危なげなく先攻を取って戦闘開始です。
1ラウンド目
ソラが"ファイアボール"を撃ちこんで開幕の花火をあげ、メッシュがより弱っている方を投げに行きます。
エア「ちょっと!援護飛ばす前に動いちゃだめー!」
メッシュ「は!忘れていました」
GM「うん、このままだと(ころころ)うん、同値回避」
メッシュ「ふおおおおっ!何故私は"ターゲットサイト"を入れてないんだ!」
遅れてエアが"バトルソング"を熱唱。ジークとムーテスは馬車の護衛をガアラに任せて騎士を殴ります。
次に相手の番ですが、片方は主動作でポケットから笛を取り出して吹く。どうやら援軍を呼んだようです。
レンジャー技能の《聞き耳判定》で何者かの羽音を聞き取り、2ラウンド後には到着すると分かりました。
エア「おかしいと思ったのよ。ラスボスなのに7レベル2人って。今回、雑魚で9レベルぽこぽこ出してたくせに」
GM「そ、そういう深読みはしないでください」
騎士2人だけじゃただの弱いものいじめになっちゃいますからね。羽音というキーワードに嫌な予感はしますが。
もう1人の騎士はメッシュに切りかかって《カウンター》を喰らいます。防護点10あっても7点とか通っています。
2ラウンド目
メッシュは今度こそはと相手を《投げ攻撃》で捉えましたが。
GM「ここは……運命変転!」
一同「に、人間うぜーっ!!」
しかもこいつが仲間に《かばう》とか宣言しています。勝てないと悟った上で時間稼ぎのつもりですね。
援軍が到着する前に彼らを倒して乱戦エリアを解除し、馬車をカバーするつもりが読まれているようです。
しかしぞんざいズも流石のもので、ムーテスの《テイルスイング》やジークの《魔法拡大/数》"カオスショット"です。
《かばう》は範囲攻撃や魔法まではかばえませんからね。それでもHPは豊富なのでまだまだ倒れそうにありません。
GM「魔法痛かったジークを殴る。ぺち」
ジーク「いいよ。まだ56点もHP残ってるし」
GM「くぅ……」
ムーテス「僕のほうが、殴り甲斐があるよー」
GM「ムーテス硬いんだもん!」
メッシュ「私、柔らかいですよー」
GM「殴り返してくるじゃん!」
それぞれタイプの違う前衛達ですね。HPと防護点のある戦士はもちろん、テクニカルな拳闘士も馬鹿にできない。
ただし《カウンター》は1ラウンドに1回しか使えないので2人がかりで殴りかかればメッシュは危ないかも。
3ラウンド目
メッシュは相手を投げ、ジークは〔運命変転〕でクリティカルにまでして攻撃しますが倒しきれません。
エア「ここでずっと継続させてた"バトルソング"を中断。"フォースで止めを刺す!"」
ジーク「おお!エア頼む!」
エア「"フォース"二倍掛け。喰らえ神のしっぺ!」
しかし抵抗されて倒すには至らない。本当に頑丈ですね、まぁこっちの前衛も大概なんですが。
ここでソラは援軍に備えるべく単身馬車をカバー。すると空の彼方からラプテラスが飛来!
蛮族と宥和する異端のルーフェリア信仰の派閥があるぐらいですから、蛮族から技術提供を受けたのかな。
今回は全力移動で接近しただけなので攻撃してきませんが、ソラはルーちゃんとガアラを守るように立ちはだかります。
4ラウンド目
ソラは眼前のラプテラスに"ファイアボール"。ボスではないのでサイコロは振らずに抵抗されました。
ソラ「ちょっと希望が持てる。……戦ってみようかな」
エア「下手なものは持たずに、自分の身を護ることを考えなさい!」
このラウンドでジークは《魔力撃》で、ムーテスは《テイルスイング》でついに騎士達を倒す事に成功します。
しかしラプテラスも動いて《烈風の吐息》を自分にとっての後衛、つまりジーク達にお見舞いします。
GM「……出目低い……」
ジーク「思ったよりもダメージはなかったな」
ムーテス「GMは力を溜めているにちがいない」
メッシュ「メッシュはまごまごしている」
翼はソラを殴って大ダメージ。早くカバーしないとソラだけでなくルーちゃんやガアラも危ない。
ムーテス「何とか乱戦に食い込まないとルーを《かばう》ことができない。ガアラはどうでもいい」
ガアラ「ええーっ、あんなに尽くしてきたのに!」
エア「そうよ!ガアラが死んだらうちの家の<金庫番>がいなくなるじゃない!」←アイテム扱い
実際は守る気はありますよ。ただルーちゃんの方が優先度が高いだけです。
5ラウンド目
ムーテスが〔風の翼〕で乱戦エリアに突入。ルーちゃんに《かばう》を宣言します。
ガアラは"フィールド・レジスト"で風属性に備え、ルーちゃんはいつでも回復魔法を使える準備。
エア「神の恩寵……それは、わたしだけにください!信徒の誉れとして!」
ソラはブレス対策に"バイタリティ"を周りの人たちにかけ、次のラプテラスの攻撃に備えます。
ちなみに作中ブレスと表記してありますが、これは「ルールブックV」では《疾風のブレス》だったためです。
すると思ったとおりに相手はブレスを吐いてエアと護衛の神官さんと御者さんがやられましたが、何とか耐えました。
6ラウンド目
ジークとメッシュも乱戦エリアに参加。まずは翼から落としにかかります。
GM「エアの傷はルーが治しましょうか」
エア「それは……五体投地の舞で五時間は費やさなければ!」
ソラ「お姉ちゃん、それは後にして」←ドライな妹
こうしてフルメンバーが揃えばいつもの袋叩きモード突入です。
まずは右翼を落として地面に引き摺り下ろし、頭をフルボッコにしてラプテラスは沈黙しました。
倒したラプテラスからはリャンが欲しがってた<黒い皮膜>が取れました。
ムーテス「……それは、僕が現金でひきとるっすよ。何のかんの言っても、リャンは本気で欲しかったみたいだし」
ジーク「ムーテス、お前いい奴だなあ……(しみじみ)」
ちなみにリャンは連れてくるのも邪魔だったのでエアの家に放り込んでおきました。
戦利品が剥げれば次は尋問です。今回の計画の絵を描いたフロリダスの情報を引き出します。
エア「で、そこの騎士っぽいの。あんたたちなんでルーフェリア神官を騙ったりしたの」
騎士「別に騙ったわけではない。今だけなってみないかと勧誘されただけだ」
エア「それを騙ったと言うんでしょうが!」
彼らの受けた命令は馬車についている冒険者、すなわちぞんざいズの足止めでした。
そうして危ない目に遭わせておき、合流地点で両親を護衛していた人達がルーちゃんを保護する名目で拉致すると。
それを聞いたぞんざいズはニールさんとオデットさんも保護しようと合流地点に向かう事にします。
ルー「"トランスファー"できるから……しようか?」
フロリダスも来ているのならMPは回復させておきたいですからね。実は彼女のMPはほぼ無限だったりする。
トランスファーとは"トランスファー・マナポイント"です。MPを融通する5レベルの神聖魔法ですね。
SWの"トランスファー・メンタルパワー"と同様に融通する点数+1点を消費して相手のMPを回復させます。
ただし一度に融通できる点数に上限ができていまして、20点(21点消費)が限界という事になっています。
メッシュ「ください!貴方は素晴らしい女神だと、今はじめてわかった気がします!」
ソラ「あたしもあたしも」
ムーテス「できれば僕も……」
ジーク「ルーにもらえるってのがなんか嬉しいからくれ」
無限のMPなんてフォーセリアの魔力の塔並みに貴重ですからね。これだけ群がるのも分かります。
しかし女神の欠片でもMP無限とは、信者から受け取る祈りを原動力にMPを作ってるんでしょうかね。
「ルールブックV」では「神官が祈りとMPを捧げることで奇跡を授ける」とあるので祈りとMPは別物のようだし。
メッシュ「あー気持ちよかった。おや、貴方はいらないのですかエルフ」
ムーテス「うん、何だか僕にも信仰ってモノがどんなものかわかった気がする」
エア「うわぁああっ、何だかルー様が穢された気分!」
こうして以降エアはルーちゃんが仲間に直接魔法を使うのを阻止するようになるのです。
可能な限り魔法は自分が使い、トランスファーにしても一度自分が受け取って下賜するという形式です。
それから合流地点に行ってみると失敗を悟ったフロリダスは既に姿を消していました。
ルーちゃんは残されていた両親との再会を喜び、ぞんざいズは暗躍するフロリダスの名を心に留めておきます。
リャンは既にエアの家から逃亡していました。次に登場する時にも彼らを引っ掻き回してくれるでしょう。
★さて、今回の成長申告は?
今回の能力値の成長は以下の通り。
ジーク:知力13→14
ソラ:精神力22→23
エア:生命力21→22
メッシュ:生命力18→19
ムーテス:筋力24→25
今回は特にボーナスの上がる人はいませんでした。エアがエルフのくせにパーティ第二位の生命力という事実に少し笑いましたが。
能力値とは関係ないところでジークとメッシュが専用装備を増やしていますね。これでジークはHP71点というタフネスに。
そのくせ本人の生命力はパーティで一番低いというのは意外ですね。《頑強》を取っておいた分HPはムーテスにも勝ってるのに。
技能の成長ではジークがフェアリーテイマー5→6で"ブレイブハート"も使えるようになりました。
あと"シュートアロー"を使うために<矢>と<矢筒>を購入。必中の矢を飛ばして威力20の物理ダメージを与える魔法ですね。
メッシュはスカウト5→6で先制力が上がりました。念願の《ファストアクション》まであと一つといったところです。
エアはコンジャラー2→3としてMPを上げつつ"ファイア・ウェポン"が使えるようになりました。
大きな変化ではソラがセージ6→7とし《マルチアクション》を習得。言語は汎用蛮族語の読文を習得。
エア「……だめだ……うちの妹は、一回本当に死んでしまうかもしれない(頭抱え)」
ソラ「大丈夫。だって、お姉ちゃんがコンジャラー上げ始めたから」←蘇生させる気か
メッシュ「なんて素敵な姉妹プレー」
エア「ちがぁああう!」
そして《弱点看破》を自動習得しました。これは《魔物知識判定》で弱点を見抜いたときボーナスが2倍になるというもの。
命中力+1とかだったら+2になったりするわけですね。ただしソラ本人にしかこの効果はありません。
ムーテスはエンハンサー2→3として練技"ドラゴンテイル"を習得。通常は<尻尾>を生やす練技ですね。
既に<尻尾>を持つ者はこの練技を使用する毎に命中力+1か追加ダメージ+2を選択します。
このボーナスは命中力+2かつ追加ダメージ+4まで累積するため、強化次第では下手な武器より強力になりますね。
その性能で《テイルスイング》でもしようものならかなりの脅威です。乱戦エリアを乱舞するムーテス君の活躍に乞う御期待。
買い物ではエアが<女神のヴェール>を購入。回復魔法がクリティカルするようになるという2万ガメルの品です。
エア「"ハート"一回回れば、25点とか30点回復するようになったわ」
前衛「よろしくお願いしまーっす!(最敬礼)」
現在のエアが"キュア・ハート"すると威力30+10点で、一度回ると20点は確定。2度目が出目7で27点とかですね。
ソラは<ラミアの首飾り>を購入。予め設定されている女性に化ける事ができる5000ガメルの品ですね。
エア「誰が、その首飾りを使っても、同じ姿になるってことね」
メッシュ「ということは、そこのエルフが使おうが、ムーテスが使おうが同じ姿になると」
ムーテス「ちょっと変なミステリーでも書けそうっすね。三日前の彼女だけが別人、とか」
最初はルーちゃんの影武者を務めようとしていたようですが、そういうカスタマイズはできないので残念。
そこで古代魔法文明時代の色っぽい女性魔術師に変身するタイプを選びました。今回のカバーイラストですね。
★そして再び姫の招集
前回の事件から数日、ニールさんとオデットさんは神殿の近くに住居を構えて時々娘に会いに来るようになりました。
ジーク「ルーから目を離さないぞ。しばらくついて回ってる。服の裾握って」←お前が握るんかい
ルー「ジーク、どしたの?」
エア「やりすぎ。そこまでするならエンゲージしてからにしなさい」←いいの?
ムーテス「僕は街の警戒にあたって、不審人物の情報を集める傍ら
「リャン、怒らないから帰ってきなさい」ってポスター作って貼りに行ってる」
ソラ「きっと、忘れた頃にひょっこり帰ってきそうなの」
その時も全く悪びれずに帰ってきて、何だかんだで許しちゃうんでしょうね(笑)
あとは老夫婦にフロリダスというルーフェリア神官の詳細を聞かせてもらいました。
彼は確かに本国の神殿に籍を置く神官であり、実はルーちゃんを最初に見つけた時から関わっていました。
彼女を介抱したのも彼、養女にするよう勧めたのも彼、カイン・ガラで調べてもらうよう準備をしたのも彼。
フィルゲンとの関連も疑われますし、早く本国の大司教と連絡を取り合って対策を練りたいところですね。
そうした緊張の日々を送っているとライフォス神官のクレインさんが訪れ、手紙を渡してきました。
差出人はホーリィとプルチーノさんの連名。宛名はぞんざいズ全員です。今回はジークとエアの名前も入っています。
ジーク「名前を覚えてもらえるのは、やっぱり嬉しいもんだな。破るよ、ばり」
メッシュ「おや、真っ二つに。相変わらず、ジーク様は勢いがありますな」
エア「ちょっとー!ライフォスの使者からの手紙を読まずに破るって……それは即ち、宣戦布告じゃないの!」
ジーク「いや、俺は封を破ったつもりだったんだが」
内容は冒険のお誘いです。例のパジャリガーの剣が眠る魔剣の迷宮を発見したそうです。
約束通りにぞんざいズと一緒に潜ろうとわざわざお誘いしてくれたんですが、タイミングが悪すぎる(笑)
実は既に下見として現地に到着しているのですが、いくつか問題があるようです。一つは妨害者の存在です。
「調べに入ろうとすると、変な奴に邪魔をされているのだ。お前たちの知己ということだそうだが……」
ジーク「変な奴?」
ムーテス「知己?」
ソラ「でも、パジャリガーに関係する知り合いって一人しかいない気、するの」
「パジャリガーと名乗っている」
一同「やはり奴か!」
エア「思ったより早く再戦の機会が訪れたわね。本物争い」
彼も第四節の謎を解いたんでしょうかね。パジャリガーを継ぐものとしては譲れない魔剣ですしね。
「そいつはメシュオーンにそっくりなのだ、その責任を取って何とかしてくれ」
メッシュ「そんな責任取れるか!」
ムーテス「メッシュさんが決闘状でも送ったら、こっちにダッシュして来るんじゃないっすか?」
ジーク「その間に迷宮潜れ、ホーリィ」
もう一つの問題は迷宮が二つあるということ。左右対称に同じ入り口が並んでいるというのです。
魔剣の迷宮はその魔剣の性格に大きく影響するということは随分と癖の強い魔剣のようですね。
「というわけで、不用品の引取りの協力を要請したい」
エア「ここでも不用品扱い!」
メッシュ「心の傷を抉るのはやめてください!」
ぞんざいズとしてはミスティン姫の予知があるためできれば潜りたいところですね。
パジャリガーの剣が本当にルーちゃんを殺せるだけの魔力を持つ<神殺しの剣>だったら怖いですしね。
もし無くなっていれば既に何者かが獲得している事が分かるし、そうでないなら自分たちで確保できます。
本当に刺されるのがルーちゃんなのか、それともリアなのかは確定していませんが可能性は少しでも潰したい。
ムーテス「……そうか。いっそ、ルーを坊主にしてしまうっていうのはアリかもしれない」←ないない
それで坊主頭が刺される夢を見ればルーを、そうでなければリアを重点的に護衛すればいいわけですよ。
メッシュ「決まりました、早速神殿にルーを坊主頭にしていいか許可を取りましょう」
ムーテス「それで、本国とかめっちゃ大きな会議とか開かれるんだろうねえ」
メッシュ「その場合は全神像を坊主にするか否かで議題も紛糾しますよきっと。
……やめましょう。エルフが、すごい表情で此方を睨んでいます(がくがくぶるぶる)」
まぁそれは冗談としても、既にホーリィを現地で待たせてしまっているのでできれば行きたいところです。
その場合ルーちゃんをどうするかというと、「連れていく」という案と「置いていく」という案が存在しますね。
連れて行ったとして本当に余地を防げる保証は無い、かといって今の神殿にはぞんざいズ以上の戦力は存在しない。
これには彼らも悩みましたが、やはり自分達自身で守りたいという意見が強いですね。
ジーク「そうだなあ……少なくとも、ムーテスの背中に隠せるっていうのは大きい」
メッシュ&ムーテス「しかもMPが無限!」
エア「そこでハモるな!」
ソラ「いや、でも、現実問題として、それ大きいのよお姉ちゃん」
いざ強敵と戦おうという時にもかなり有利になりますしね。やはりガアラだけに任せるよりはマシか?
ここで彼らの悩みを断ち切ったのはソラの意外なアイディアでした。
ソラ「ね。ね。お姉ちゃん」
エア「ん?……今お姉ちゃん頭煮えるほど、悩んでるのよ」
ソラ「そこでこれ。<ラミアの首飾り>」
エア「でも、それってルー様の姿になったりできないわよ」
ソラ「うん。だからルーちゃんに嵌めてもらうの」
一同「…………あ」
他人がルーちゃんに化ける事はできない。ならばルーちゃん自身が変身してしまえばいいという逆転の発想ですね。
こうして変身してしまえば連れ歩いても直接狙われる可能性は低いし、《真偽判定》すら思いつけないかもしれない。
なによりルーちゃんが色っぽいお姉さんになるのが最高ですね。
メッシュ「そ、そうすると、ルーが突然、魔法文明時代のぼんきゅっぼんの女性魔術師に!
しかし、性格は天真爛漫なままで!うはぁあ堪らん!」
ジーク「神様にも、このアイテム効くのか?ルー、ルーちょっとこの首飾りをつけてくれ!」
エア「……ジーク、目がいきいきと」
ソラ「ふーん……砂時計体形がそんなにいいんだー」
ジーク「ちがう!これは……純粋な好奇心だ!」
ルー「(変身!)……なんか、変じゃない?(もじもじ)」
主従「ブラボー!」
こうして大人のお姉さんに変身したルーちゃんを加えたぞんざいズは魔剣の迷宮へと旅立ちました。
これで念願の6人パーティで1人だけジョブ名が神官どころか神。プリーストではなくゴッデス!
留守を預かるのは例によってガアラです。ルーちゃんの不在がバレないように振舞うよう努力してくれます。
★パジャリガーの走る先
ルーを加えたぞんざいズはパジャリガーの歌の第四節が示す場所へと向かいました。
ライフォス神殿は以前からその場所を掴んでいましたが、ホーリィが試練に挑む時期が来るまで手をつけずにいました。
道中ミスティン姫の離宮に再度立ち寄りましたが、ホーリィがいないので直接は会えず手紙だけ家来に託しておきます。
「まだ、夢の状況には陥っていません、安心してね。
もし、ぼんきゅぼんのお姉さんが刺される夢を見直したら、是非とも教えてください」
そんな夢を見たら確定ですしね。<ラミアの首飾り>には特に時間制限はなさそうですし常時つけててもいいですね。
そして迷宮がある土地につくとホーリィ達が貸切にしている宿屋へ向かいました。
メッシュ「おっと、そういえばルーのことは何と言って紹介しますか?
一応、ホーリィとルーはささやかではありますが面識があります。
とはいえ「あのルーです」とは言えないでしょう」
エア「神様に嘘をつかせるの?……仕方ないとはいえ……」
GM「はい。そのルーですが……神殿のある《白峰領》から離れたこともあり……」
エア「あ!しまったまさか……」
そう、ルーちゃんは信仰の力が薄い土地に来たので眠ってしまいました。懐かしい姿ですね。
神殿では元気に振舞っていましたからね。すっかり忘れていたこの設定。
エア「ルー様、ルー様起きてくださいー!」
ソラ「忘れてた。計算違いだったの……」
メッシュ「……いいですか。不本意ですが、我々のMP補給は、完全に貴方の信仰力にかかっています(エアの肩ポン)」
エア「そういう問題なわけ?」
これから向かう先は迷宮だし、ホーリィ達ライフォス信者が多いということも不安材料ですね。
もっとも以前はエア1人でも傍にいればそこそこ動ける程度には覚醒するようでしたけどね。
キルヒア信者の両親がいてもそうでしたから、他の神の信仰は0なだけでマイナスという訳ではないとは思いますが。
エアのレベルはあの頃より上がっているのはプラスになりそうですが、実際のところどう処理すべきかは不明です。
ジーク「しまった。俺、1レベルだけでも、プリースト習得しておくべきだったかなあ。
なるべくエアの傍にいさせて、「俺ルーのこと信じてるからなっ、信じてるからなっ」ってささやき続けるぞ」
ソラ「せめて、お姉ちゃんから予備を借りて聖印くらいはつけておこう、気休めに」
<聖印>は神様との交信に必要なものであり、1レベルでも技能があればMPと祈りと引き替えに奇跡を授かる。
アイテムやレベルだけが信仰ではないとは思いますが、そこまでできるなら多少はプラスに働きそうではあります。
仕方ないので今後はムーテスが背負っていきます。戦闘になったらエアが背負う。
エア「しかたがない。今は貴方にルー様をお守りする栄誉を与えます。光栄に思いなさい」
ムーテス「え、何でそこまで上から目線?」
エア「それはわたしがルーフェリア様から直接、天啓……つまりお言葉を賜り、目覚めた神官だから」
ムーテス「お言葉なんで、毎日僕たちだってもらってるっすよ?」
エア「そう。なんてありがたい日々……《白峰領》では、エブリタイム天啓なわけよ」
ルーちゃんと出会う前からエアは神官でしたけどね。今やルーフェリアにとっての大司教みたいなポジションですが。
ソラ「お姉ちゃん、ルーちゃんが「にんじん嫌い」とでも言おうものなら、にんじん畑を滅ぼすくらいやりかねないの」
エア「そこまではしない!」
ムーテス「ねえルーちゃん、一回でいいから紫のリルドラケンは神聖なものだって言ってみてくれない?一回でいいから」
メッシュ「ルーンフォークは保護するべきだと、是非一度」
ソラ「妹離れはするべきだって」
エア「だから。妄信と信仰は違う!」
普段の変態っぷりだってあくまでもエアの個性であって信仰とは関係ありませんしね(笑)
ホーリィの止まっている宿には神官戦士の警備がありましたが、顔を知られているぞんざいズはすぐに入室を許されます。
結局ルーちゃんのことはホーリィには適当に紹介したのか特に騒動はない。まぁ寝てるので絡みもありませんしね。
ホーリィ「あのパジャリガーと名乗る不埒者を、どうにかしてくれ。
力ずくで排除するのも、ライフォス信者としては気が咎めるのだ」
ムーテス「まあ、確かにあいつは不埒者っすね、うん」
ソラ「力ずくは自制したんだ」
ホーリィ「お前たちの縁者だとも言っているし」
メッシュ「……まあ、それは向こうが勝手に主張していることで」
ホーリィ「兄弟ではないのか?」
メッシュ「あんな恥ずかしい男が兄弟など、断じてありません」
兄弟というのはパジャリガーが言ったことなのか、ホーリィが推測したことなのかは不明です。
それでも確かに兄弟と言えないこともない関係ではあるんですよね。その場合彼の方がお兄さんになるのかな。
パジャリガーをどかせて迷宮の探索に協力するのは依存ないのですが、これは冒険者としては依頼になります。
ホーリィ「友達に言うのも心苦しいのだが……探索を手伝ってもらえるならば、我らもそれなりに謝礼は準備していた。
ただ、ちょっと相場が分からなくてな。成功報酬で八万ほどでいいだろうか」
ムーテス「ああ、うん、全く問題ないっす、ほぼ相場通り」
メッシュ「ハ、ハイペリオン買えますよ、<ハイペリオン>ッ!」
7レベル前後の場合報酬は5000〜6000ガメルなので5人だと2万5000〜3万ガメルが1回あたりの相場。
8万というのはほぼ3回分の報酬ですが、元々ちゃんと報酬が貰える事が少ないんだし貰っておけばいいんですよ。
ちなみに<ハイペリオン>とはカテゴリ<ソード>のSSランク武器。必要筋力20にして威力40/50の魔剣ですね。
もっともそんなもの買っても戦闘特技《武器の達人》を習得しないと使えませんけどね。冒険者レベル11以上が必要です。
ジーク「……いや、もらっておこう、素直に。貧しいところから搾り取ってるわけじゃないし、
これから先、キッカリ三回分報酬が出るかどうかわからないってことなんだろうし」
ムーテス「あ、ホーリィ。ちなみに、この値段は僕たちが一流だからこの値段なのであって、
他の冒険者に頼む場合はもっと安く設定したほうがいいよ。忠告として」
まるで"バブリーズ"のようですね。偉い人が特に相場も分からず高額を提示してしまうというのも懐かしい気がする。
★《迷宮》に立ちふさがる英雄もどき
ホーリィとライフォスの神官戦士達に案内され、ぞんざいズは迷宮のある岩山にやってきました。
ジーク「おーい、パジャリガー!」
パジャリガー「俺様の真の名を呼ぶものは、誰だ!」←岩山の上でマントを翻し
姉妹「……やっぱり」
そういえばこの人には本名とかないんでしょうかね。パジャリガー・セカンドって自称でしょうし。
そもそもルーンフォークの名付け親って誰がなるものなんでしょうかね。やっぱり起動者や最初の主でしょうか。
メッシュ「あ、長いこと預かっていた銘入りの<うさぎのピアス>を返しにきましたよ」
パジャリガー「おお!すまん、ご親切に。これがないと、合計名誉点が減ったままだった」
エア「可愛いピアスをつけて胸を張るな」
メッシュ「しかも、ダブルですよ。私もつけていますからね」
ジーク「うわ、暑苦しい……」
カイトさんの墜死現場の遺留品でしたね。そういえば拾ったまま返していませんでした。
格好つけていても届け物があると知るといそいそと取りに来るパジャリガーを見ると、つくづく悪い人ではないんですよね。
彼に現在の迷宮の攻略状況を尋ねてみると、2つの迷宮のどちらも同じ程度の深さに到達しているとか。
エア「そして、撤退してるのね」
パジャリガー「…………(のの字を書いてる)」
ムーテス「いやーすごいなあっ、さすがだよパジャリガー!ちょっと内部の様子を絵に描いてみてはくれないか?」
パジャリガー「ははは、当然だとも何しろ、俺様はパジャリガー・セカンドだからな!(筆を用意する)
……くぅ!危ない、お前たち、俺様を出し抜くつもりか!」
メッシュ「おや。こいつ、かしこさが1上がってますよ」
パジャリガー「味方の裏切りは心を強くしたのだ!」
あれだけの事があって学習しないと本当のアホですからね。やはり普通に迷宮に入る許可を取るのは無理そうです。
そこでメッシュは提案しました。
メッシュ「パジャリガーさん、パジャリガーさん。どうでしょうか、一つ提案があるのですが」
パジャリガー「む、何だ」←パジャリガーと呼ばれると嬉しい
メッシュ「折角ここに、二つの迷宮があることですし……どちらが先に迷宮の奥まで到達するのか、競争をしましょう」
パジャリガー「……俺、一人じゃないか」
メッシュ「はっはっは。何を仰っているのです、私たち下々のものは、それくらいのハンディキャップは戴かないと」
パジャリガー「いやちょっと待て、この場合は数は力だろう!MPには限りがあるんだぞ」
どんな時でも「数は脅威」。1人でこつこつと調査するならともかく、多人数相手に競争するとか無茶です。
彼はファイター/スカウト/エンハンサーですしね。回復の手段も大したものはなさそうだし、むしろ今までよく1人で平気でしたよ。
そして"口先の魔術師"ことメッシュは彼の自分達への対抗意識を利用し、更に追い詰めるのです。
メッシュ「パジャリガーの名を継ぎたいのでしょう!偉大なるパジャリガーは、そのような弱音は吐きませんよ!」
パジャリガー「うわああ、そう言われると、すっごく言い返せねえっ!」
というのは流石に酷過ぎるので彼らも妥協案は出します。ホーリィ配下の神官戦士を彼につけてあげるのです。
本物のパジャリガーもライフォスの神官戦士を引き連れて戦っていたでしょうから、彼も満更ではなさそうです。
パジャリガー「ライフォスの神官戦士だと。そ、それはちょっと、本物っぽいじゃないか(ぽっ)」
エア「同じ人数をそろえてしまうと、貴方もホラ、パジャリガーとして恥ずかしいことでしょうし。二、三人でいいわよね?」
パジャリガー「うむ、そうだな。それはしかたがないな。パジャリガーとして(にこにこ)」
ソラ「……アホでよかった」
神官戦士が2〜3人いれば回復面ではかなり充実しますね。相変わらず後衛不足ですが、その辺は勇気と根性でカバーです(笑)
ブルチーノさんあたりは反対したんですが、ホーリィがこちらについて「自分達が我慢すれば丸く収まる」のだと説得してくれました。
姫ではなくこんな訳の分からないヒーロー野郎の御供をさせられる神官戦士さんが可哀想ですけどね。しかも噛ませっぽいし。
パジャリガー「よし!勝負は本日の夕刻からだ、逃げるなよ!」
と言いつつその場で夕御飯の準備を始める彼を見ているとどうも憎めない。やっぱり宿屋とかには泊まらないんですね。
そういえば野外生活が得意そうなのにレンジャー技能は持ってないんでしょうかね。せめて薬で自己回復できればいいんですが。
★迷宮アタック――鍵の謎!
それではいよいよダンジョン攻略です。セオリー通りにメッシュが偵察し、油の流れる階段を発見して仲間に注意を促します。
ジーク「じゃあ、ホーリィは俺が手を繋いでやるな」
ホーリィ「う、うむ。手数をかける」←照れくさい乙女心
ルーちゃんはムーテスが背負っていきます。こちらには2人の少女が姉妹と一緒に後衛に配置されている形ですね。
ムーテスが一度に《かばう》ことができるのは1人なのが不安ですが、前衛を突破されない限りは大丈夫だと信じたい。
戦闘特技《鉄壁》を習得すれば一度に3体のキャラクターを《かばう》ことができますが、彼はそれを取っていないし。
そうして階段を降りたところにはシザースコーピオンの姿がありました。アンドロスコーピオンの戦士種ですね。
アンドロスコーピオンは5レベルの蛮族であり、巨大なサソリの胴体から人間の上半身が生えた姿をしています。
個体としての概念は薄く、集団で行動するのが特徴。主に砂漠のような乾燥地帯に生息しています。
上半身(コア)と下半身の二部位であり、上半身は魔動機術を4レベルで使いつつ《銃撃》をしてきます。
下半身の尻尾にはダメージを与える《毒》があり、HPが0になると《棒立ち》になって上半身の回避力が下がります。
シザースコーピオンはその戦士種にあたる7レベルの蛮族であり、魔動機術は5レベルまで使えます。
通常種に加えて下半身から部位ハサミが出ていまして、その大きなハサミによる強烈な攻撃をしてきます。
それ以外の能力は概ね通常種を強化したものです。《棒立ち》になった時にはハサミの回避力まで下がる点が違いますが。
蛮族の中では魔動機術を使う者は珍しいのですが、それは魔動機文明時代に魔動機術によって苦しめられたからです。
「仇敵である人族が生み出した魔動機術なんて学ぶものか!」といった感じで拒絶していたのでしょう。
しかしアンドロスコーピオンは我が強くなく合理的であるため、魔動機術の有用性を理解して研鑽に励んだのです。
ムーテス「うわああっ、銃はいやだーっ!誰か、ルーちゃんパス!」
したたる油によって床は濡れていましたが、エアが"ピュリフィケーション"で真水にしてペナルティを無くします。
そしてメッシュが先制を取り、ソラが"ファイアボール"を撃ちこみ、ムーテスの《テイルスイング》が乱舞。
メッシュとジークの《魔力撃》でしばいてしまえばアッサリとシザースコーピオンは落ちました。儚い相手でした。
7レベルの蛮族が1ラウンドで撃沈とは。同レベルな上に<剣のかけら>が入っていなければこんなものです。
ジーク「見たか、ホーリエル、冒険者の戦いを」
ホーリィ「すごいのだ!我も、いつかは負けずにそなたのようになるぞ、ジーク!」
そういえば戦っている姿を彼女に見せるのはこれが初めてでしたか。今までの挙動だと芸人と大差なかったけど。
するともう1つの通路からヒーロー野郎と神官戦士たちの姿が現れます。
パジャリガー「おう、やったか」
エア「もしかして、繋がってた?」
パジャリガー「だから、言っただろうが。どっちも同じくらいまで到達したって」
メッシュ「早く言いなさいこの頓珍漢がー!」
パジャリガー「いやいや、これからだ、これから。七匹目ー(サソリの尻尾を壁に打ち付けて)」
実は今までソロで6回もこいつを倒しているようです。一度倒してももう一度入れば復活していますけどね。
それだけで7レベル×3部位×6体×10点=1260点もの経験点になりますね。部位モンスターは個別に計算可能なので。
では何が「これから」なのかというと、実はここからまた道が2つに分かれているのです。
そしてその間にはプレートが1つあって、取り外してみるとこんな言葉が刻まれています。
「剣への扉となりし封印の鍵。我を同じ形の二つに分けて持て。
闇の部屋には全て光をもたらし。光の部屋は、全て闇をもたらせ。
その果てにて――二つの鍵を、四つのまったき辺を持つ、一つの形へと重ねよ」
メッシュ「……リ、リドル来た――ッ!」
ムーテス「これが噂の……どんな強い冒険者であっても、敗北を喫することがあるという恐るべき敵……リドル!」
このプレートは指で線を入れれば2つに割れ、3つ以上には割れないが元には戻るという謎物質でできています。
これを全く同じ形に割って2つの通路の先で正方形に組み直せという、ちょっとしたパズルですね。
2つの通路を進む際にはそれぞれにプレートが必要なため、ここで解いていかなければなりません。
パジャリガー「ふはははは!おそらくはそのとおりだ!俺様はここで脱落した!」
メッシュ「いばるな!あ。一応私、この先がどうなっているのか覗いておきたいのですが」
GM「はいはい。早々に諦めましたね」
メッシュ「偵察ですよ、偵察!」
2つの通路の片方は階段を上がって入れる暗い迷宮。もう片方は階段を下がって入れる明るい迷宮です。
プレートを持つ者が進むと暗い迷宮は明るくなり、明るい迷宮は暗くなるという仕様になっています。
全ての部屋の照明を反転させればいいので、各迷宮の全ての部屋に奇数回出入りすれば攻略となります。
ただし複数回出入りする部屋には嫌らしい罠があったりするので、一筆書きで攻略するのがベストとなります。
ここでぞんざいズは散々プレートの謎に悩みましたが、ジークが偶然解いて拍手喝采。
ジーク「できた!すっげえ、偶然だけど、できた!」
メッシュ「さすがはジーク様、わたしは信じておりましたよ、ジーク様はやると」
そう言っている七歳児のルンフォは紙飛行機とか作っていて割りと現実当為気味でしたけどね。
迷宮の仕様についてはプレートの片割れを持ったメッシュがここで調べました。
ジーク「失くすなよ?」
ソラ「命のほう、亡くすかもしれないけど」
エア「平気よ、ルーンフォークは穢れ溜まらないから」
ムーテス「でも記憶が飛ぶっすよ」
エア「それはそれで……おもしろくない?」
ホーリィ「穢れが溜まらぬのか……そういうことなら頑張るのだぞ、コンジャラーのツテは用意しておくからな!」
メッシュ「しくしく……皆、心に残る声援をありがとう。覚えてやがれ」
結局ムーテス君が一緒に行ってあげました。友情ではなく報酬の目減りを防ぐ為に。味方はいないのか……。
仕様を調べたぞんざいズは暗い迷宮を、パジャリガー達は明るい迷宮を攻略することにしました。
実はGMはパーティを2つに分けると予想していたので各迷宮のモンスターが弱過ぎるようですが。
★明るくしていこう!
暗い迷宮に入ったぞんざいズは各部屋に奇数回出入りすればいいと早々に気付き、まずは全体の構造を調べる事にします。
迷宮はセフィロトの樹のように丸い部屋と直線の通路によって構成されており、部屋数は19という広さです。
こうなると地図が欲しいものですが、それを入手するイベントもちゃんと迷宮内に用意されているという親切設計です。
まずぞんざいズが遭遇したのはボガードソーズマン×2体です。
ソーズマン「(あ、という顔)」
ジーク「可哀想に、こんな迷宮に連れてこられて」
メッシュ「はい。とても可哀想です。可哀想なので……楽にして差し上げましょう」
本当は向かってこなければ見逃すつもりでしたが、蛮族の嗜みとして人族と見るや襲いかかってきたので返り討ちにします。
そして彼らはこの迷宮の地図が描かれた羊皮紙を持っていたのでゲット。ただし何者かと奪い合いをしたのか破れた半分だけ。
地図には汎用蛮族語で「きらい」「ごはん」「おみず」という書き込みがありました。
そこでまず「ごはん」の部屋に向かったぞんざいズは、広い部屋にポツンと置かれたチェスト(宝箱)を発見。
メッシュが開けてみると魔法的な食料が詰まっていました。ペースト状でそれぞれの好みに合わせた匂いがします。
GM「甘い物好きな人には、バニラっぽい香り、お肉が好きな人には芳ばしい香りとかが感じられます」
メッシュ「せ、専用カプセルの匂いが……(ふらふら)」
ソラ「それ、匂いないでしょ」
実はこれ本当に存在しています。その名も<栄養カプセル>、ルーンフォーク専用で1粒で1週間食事不要という代物です。
このチェストは迷宮に召喚したモンスターの食料として魔剣が用意したものなのでしょう。多分無限に湧いてくる。
そうやってチェストを囲んでいると第二のイベントが発生します。
ドラゴン語による鬨の声を上げて、リザードマンとリザードマンマリーナが突入してきたのです。
ムーテス「ドラゴン語ならネイティブだよ」
リザードマンズ「食事を渡すわけにはいかーん!」
実は先ほど鳴子の罠を鳴らしていまして、様子を見に来た彼らに食料泥棒と思われたようですね。
リザードマンは4レベルの蛮族であり、直立したトカゲの姿をしていて身長は2m弱もあります。
湖沼地などに生息し、竜を崇めて独自の文化を形成していることがあり、水中では無呼吸で1時間活動可能。
《水中適性》を持つため水中での活動にペナルティはなく、《テイルスイング》に似た《テイルスイープ》が使用可能。
リザードマンマリーナは7レベルの蛮族であり、敵地に潜入し突破口を切り開く役割を帯びた精鋭です。
同じ乱戦エリアにリザードマンマリーナがいる数だけ命中力が上がる《連携》の能力があります(最大で+4)。
また同じ乱戦エリア内でリザードマン(種は問わない)が倒されると打撃点+2になる《憤怒》の能力もある。
ムーテス「迷宮に終身雇用されてるわけだね。この蛮族たち」
メッシュ「終わるまでの生命がひどく短そうですけれどね」
ムーテス「うん。あと……二十秒くらい?」
エア「ムーテスくんから、2ラウンド終了宣言でました」
そして本当に2ラウンドで倒してしまいました。マリーナ1体だと《連携》もありませんしね。
マリーナは例の地図の半分を持っていたのでゲットです。あのソーズマンはマリーナ相手に地図を半分奪ったんですね(感心)。
完全な地図を手に入れたぞんざいズは攻略順序を検討して改めて闇の迷宮に挑みます。
★改めて――真・ダンジョン攻略!
順路を検討した結果、一筆書きは難しいのである部屋を3回通る順路で闇の迷宮に挑戦することになりました。
部屋数は19なので計21回部屋を通過することになります。以後この番号で各部屋を表記することにします。
まず1の部屋はソーズマン達と戦った場所なので今は何もない。2〜3の部屋には元から何もありませんでした。
4の部屋は地図に「おみず」と表記されていた部屋です。ここにはMPを少しだけ回復する泉がありました。
確か朕を追いかけて入った迷宮にもこんなのがありましたね。でも今は無限MPタンクことルーちゃんがいるのでスルー。
続いて5を通過して6に入ります。ここは膝まで泥がある部屋でして、ホーリィはジークが背負って渡ろうとしますが。
ジーク「ムーテル、ルーを頼むな?」
ソラ「戦士の手がどっちも塞がってるの、まずくない?"ウォール・ウォーキング"をかけるよ?」
ジーク「ああ、俺は"ホバリング"していくつもりだから」
ソラ「……あたし、お兄さんより筋力あるから、ホーリィちゃん預かる。具体的に言うと、7点ほど上」
ジーク「ぐさっ!」
筋力18あれば決して非力ではないんですがソラは筋力25ですもんね。女性の方が力持ちなのはSWリプレイの伝統。
"ホバリング"は5レベルの妖精魔法で強風を地面に吹き付け、10cmほど浮いた状態で移動できるようになります。
この状態だと敏捷度は半分として処理されるので移動速度も落ちる。それに泥の上でやると飛び散りそうな気もしますね。
あとこの状態でも<韋駄天ブーツ>は効果があるんでしょうかね。風の魔法が織り込まれているらしいけど地面に靴が接していないし。
メッシュ「くっ、ナイトメアに皇女の初恋フラグもばっきり折られましたな、これは」
GM「女神を嫁、嫁と言っていて、皇女にも未練がありましたか」
メッシュ「何を言ってるのです。将来手に入る国の大きさを考えると……ねえ」
エア「あの不届きなルーンフォークは、そのうち何とかしないといけない気がする」
かと言って周りがくっつけようとしても自らフラグをへし折るのがジークという男ですがね。
そうしてぞんざいズが泥を渡っているとキラークリーパーの変異種(5レベルに強化)に襲われますがアッサリ排除。
やはりパーティを分断することを前提にしていたので敵が弱いですね。その分頭を使わせているからいいかもしれないけど。
ちなみにキラークリーパーとはマナで変容した2レベルの植物モンスターであり、自在に動くつるを持ちます。
このつるが命中すると《絡め取り》が発生して移動ができなくなり、命中力・回避力に−2の修正が入ります。
今回はこの《絡め取り》になると壁を歩いていた人も落下するはずでしたが、魔法の集中砲火で儚く落ちました。
次は地図に「きらい」と書かれていた7の部屋です。ここはリザードマン達の居住区だったようです。
8の部屋は例の3回通らないといけない部屋であり、それだけに嫌らしい罠が仕掛けられていました。
この部屋の天井にはガラスが嵌めこまれていて、プレートを持つ者に光線を発射するというものでした。
しかもこの光線が17点とか21点とかの魔法ダメージなものだから痛い。メッシュだと一撃でHP半減ですよ。
ではこの部屋で誰がプレートを持っていたかというと。
メッシュ「ああ、あれはジーク様の荷物にこっそりとお入れしてありますよ。
ジーク様が通るたびに光が灯る……美しい光景ではありませんか」
これのせいでジークは光線の直撃を受けて痛い思いをしました。良かれと思ってやった執事は複雑です。
とはいえ20点前後のダメージではHPが70点を超えるジークを即死させるほどの威力ではありません。
あと2回通過する時は避けるなり何なりすればいい。そもそも持たずに床を滑らせるとか糸で引くとかでは駄目なのか。
メッシュ「あの罠壊せませんか?殴ってみます」
エア「ちょっと待った!所詮は剣の迷宮、壊せたとしても次には治ってる気がする!」
メッシュ「いえ!ジーク様の敵です!うおらぁああ!」
これで多少ダメージは与えたかもしれませんが、反撃の光線を食らってHP半減という有様です。
メッシュ「ぬおおおおっ、こちらもダメージを与えたものの、すっごく痛い〜〜〜〜」
ジーク「……すまん、エア。うちの愚か者を治してやってくれ。俺はまだいいから」
ところがエアはキュアをかけようとして2回連続で1ゾロ振って100点ほど経験点を稼いでしまいます。
しかも3回目は<女神のヴェール>の効果でクリティカルし、完全に回復するという形でダイスの神様は帳尻合わせです。
ソラ「ホーリィちゃんの手を引いて、9の部屋を見にいくの。あんな大人になっちゃダメよ?」
ホーリィ「うむ。わかったのだ」
この部屋にはジャイアントバットがいましたが、ソラの"ファイアボール"とムーテスで掃除しました。
こちらは3レベルの動物で所謂巨大コウモリです。《飛行》し、牙で噛み付いた相手から《吸血》してHPを回復する。
この時はホーリィも戦いました。実は彼女はプリースト4レベルだったりする。年齢の割には優秀な子ですね。
ムーテス「おお。ライフォスの"フォース"。略してライ"フォース"」
ソラ「ホーリィちゃん、プリースト4レベルなのに。《魔法拡大/数》持ってないの?」
ホーリィ「うむ。《魔力撃》《武器習熟》なのだ」
ただし本人はファイター技能は持ってない。将来的には取って神官戦士になるつもりなのでしょう。
それなら《魔力撃》《武器習熟》はその時にでも覚えることにして、今は《魔法拡大/数》にしておけばいいのにね。
ブルチーノさんあたりならその辺を気にしそうですが、同時に壮大な理想を思い描いて実用性の薄い成長のし方をさせそう。
それから一行は10を通過し、「ごはん」の部屋でもあった11も通過。そして12の部屋=8の部屋に再挑戦です。
回避力11でパーティで一番避けやすいジークがプレートを持ち、"ブレス"で更に+1して6ゾロで駆け抜けました。
13の部屋では怪しいチェストの罠を解除するのに失敗し、ジークとメッシュに嫌な匂いが染み付きました。
実はこの匂いにイラついたリザードマンの襲撃を受ける可能性があったのですが、今となってはただ臭いだけの嫌がらせです。
メッシュ「これで正真正銘、ジーク様と一緒に臭い仲ですよ!」
ジーク「傍寄んな」
14の部屋にはベッドがあったのでジークが匂いを移そうと近づいたところ、ベッド・トラップ・ビーストでした。
これは恐らくはチェストトラップビーストの上位種にあたるデックチェストトラップの一種でしょう。
数は3体とかいましたが所詮は雑魚なので一蹴。SWでいうイミテーター的なポジションの魔法生物でしたね。
チェストトラップビーストは3レベルの魔法生物で宝箱に《擬態》しています。
この状態だと《魔物知識判定》を受け付けず、近づけば不意打ちをしてくるので《危険感知判定》を行います。
正体を現せば何本も腕を生やし、1人の対象に《二回攻撃》を行い、その両方が命中すると《捕獲》されます。
デックチェストトラップは5レベルの魔法生物で宝箱以外の家具にも《擬態》可能です。
データはチェストトラップビーストを強化しつつ、《二回攻撃&双撃》の能力まで備わっています。
そして16の部屋=12の部屋=8の部屋に再々挑戦。今度は回避できずに21点とか喰らいます。
ジーク「さすがに痛かったな」
ルー「治す?治す?」
エア「触らなくてよろしい。ルー様」
17の部屋には床に穴が空いており、パジャリガー達の声が聞こえましたが軽やかにスルー。
18の部屋には何もなく、19の部屋はソーズマン達の居住区でした。そして20の部屋を通過し、21の部屋に至る。
全ての部屋に光が灯ったことで21の部屋にあった扉の鍵が開き、下り階段が現れました。
エア「……そろそろ、やばい気がしてきた。ジーク、フルになるまで"キュア"かけておくから」
ジーク「ルー、ちょっと俺に触れてくれ」
ルー「うん、"トランスファー"……20点くらいでいい?」
エア「こらぁあっ!うちの神様から気安く精神力を賜らない!」←おかんか
ジーク「なんだよ、仲間じゃないかよー」
エア「仲間じゃない!神様!」
ルー「……仲間じゃ、ないの?」←寂しそう
エア「く……卑怯な」
そもそも信仰の対象がパーティの仲間というのが珍しい状態ですし、エアにとっては難しい状況ですね。
メッシュ「もちろん、仲間などではありません」
エア「は!さすが人の心の機微のわからないポンコツ、ナイスよ!」
メッシュ「仲間ではありません、婚約者です」
エア「むきーっ!なにこの、人間関係!」
仲間にして神様にして婚約者。11歳の子供を前にややこしい話をしてるんだか(笑)
ホーリィ「そうか、そういう関係なのか(うむうむ)」
メッシュ「あ、もちろん、貴方にもチャンスはありますよ、ホーリエル。
ジーク様は一人の女性に縛られるような器ではないのです」←炊きつけるなポンコツ
ソラ&ルー&ホーリィ「ふーん(ジト目)」
ジーク「え、何この空気!メッシュ、お前余計なこと言うな!」
ソラ「……知ってる、ホーリィちゃん、ルーちゃん。お兄さん、男装少女が趣味なのよ?」
ルー&ホーリィ「ふーん(ジト目)」
また懐かしいネタを。そしてポンコツのせいで間違った方向に勇者になりつつあります。
さて、階段を下りるとそこは大きなフロアになっており、光の迷宮からの上り階段もあります。
ジーク「なるほど、パジャリガーはそっちから来るはずなんだな。まだ、姿見えないけど」
メッシュ「この勝負は私たちの勝ちですね。パジャリガーの名は堂々とジーク様のものですよ」
ジーク「いらん」
それからお茶をしつつ待つこと2時間後、パジャリガー達が到着しました。
モンスター的な障害はほとんど無かったようなのにえらい時間がかかりましたね。
パジャリガー「くっ、俺様はまた……適わなかったのか!」
ジーク「いいよ、もうお前がパジャリガーで。とりあえず、プレートくれ。置いてきたって言ったらぶっとばす」
大丈夫、彼にとっても<パジャリガー・スラッシュ>は大切なのでそれだけは死守しています。
まぁその代わりに髪の毛は守れていないのかジークと同じような焦げ跡があったりするのですが。
★最後の扉のその奥に
光と闇の迷宮を攻略したぞんざいズ+αは正方形にしたプレートを最後の扉に嵌めました。
そこは石柱が整然と並んだ神殿風のとても広いフロアであり、奥にアルケミートゥースの姿がありました。
アルケミートゥースは10レベルの魔法生物であり、体内に「黄金病」という奇病の細菌を植えつけられた小型の蛇です。
その牙による攻撃を受けて生命抵抗に失敗すると感染し、以後病気属性のダメージを受け続ける事になります。
ダメージの蓄積と共に傷口から黄金の斑点が広がり、最終的には全身が黄金色に染まってしまいます。
この病気に感染したまま死亡して24時間が経過すると遺体の表面が金属のように硬化し、蘇生不可能になります。
なお、名前とは裏腹に硬化した遺体は黄金ではなく黄金色の金属に過ぎないのですが、これを利用した詐欺が横行しています。
いよいよ10レベルモンスターの登場ですね。本編では見栄え重視で大型の個体として登場していますが。
ちなみに「黄金病」は戦利品として自動的に入手できる<黄金の血清>によって完全に回復させることができます。
感染前に服用しておけば24時間は感染を予防できますし、倒す実力さえあればそんなに怖い病気ではありません。
ところが折角登場したアルケミートゥースは既に死亡していました。
ムーテス「ちょっと待った。ってことは……そいつを倒した何者かが、すでにここにいるってことだよね?」
エア「一人で倒したんだとしたら、少なくとも冒険者レベル9か10は必要」
ムーテス「そのアルケミートゥースの隣に、すごい装備をした戦士の彫像とか立ってない?金色の」
メッシュ「ナイス、相打ち!」
ここでぞんざいズは神殿風の内装に警戒しつつ、ホーリィとルーを姉妹より後ろに配置して進みますが。
ジーク「いやしかし、ここで守護者っぽいモノが倒されてるってのを見るとさすがにビビるぞ。
剣があるだけなりい。守護者なら戦う。けど、その守護者が倒されてるとなると……
相手は確実に<神殺し>希望者だろう?そして、それを手に入れてる可能性があるってことなんだぞ?」
ソラ「それはそうだけど……」
ジーク「その中にルーを連れて行くっていうのは、いくらぞんざいな俺でも躊躇う」
エア「……認めた」
ムーテス「認めたね、自分がぞんざいだって」
かといってルーちゃんを疲れきった神官戦士と一緒に残し、手の届かないところで襲われるのも嫌ですしね。
それを警戒してメッシュを1人で偵察に行かせると、それはそれで1年分の記憶が飛ぶ事になるような気もしますし。
ムーテス「どんな行動を取るにしても、いまはある程度のリスクは覚悟しないといけないと思う。
リスクはあるけれど、それを恐れていたら大儲けはできないよ」
エア「なるほど、つまり、ルーとメッシュを天秤にかけないといけないってことね。よろしく!(敬礼)」
メッシュ「え!ものすごく簡単に天秤傾いた!」
ルーとメッシュだとどう考えてもメッシュの方が危険に対応できますしね。スカウト技能もあるし。
それでももうちょっと考えてあげてもいいとは思いますけどね。天秤が軽いと命まで軽くなりそうだし。
ソラ「でも、アルケミートゥースに近付くなら全員で行ったほうがいいと思うの」
ムーテス「その場合は、ルーは連れて行くべきだと思うよ。
何より、護るべき相手を、かばえない場所で殺されたりしたらきっと一生後悔する気がする」
メッシュ「く、トカゲの癖にかっこいいじゃないですか」
ジーク「……そうだな。誰に剣が渡ったかわからないままになると、
この先すごく困る気がする。ルー、命がけで護るからな」
ルー「うん」
予知夢を警戒するとどうしても多くの不確定要素を考慮しなければならず、なかなか決断が難しい。
しかし未来が不確定なのは予知が有っても無くても同じこと。こうして真剣に最善手を話し合うのも冒険の内です。
こうしてぞんざいズは背後にルーとホーリィを庇いながら部屋の中に入りました。
するとカツーン、カツーンと、靴音が響いてフロアの奥にある階段から1人の若い男が降りてきます。
ボロボロの外套を羽織り、腰には二振りの長剣と一本の小剣を帯びています。どれかが<パジャリガー・スラッシュ>ですね。
男「やっぱり来たか」
メッシュ「「当然ですよ」と呟き返し、近付いていく……ふりをして、ムーンウォークで下がります!」
ジーク「ちょっと待てメッシュ!それでいいのか!」
メッシュ「神殿っぽい場所から少しでも遠ざかりたいのですよ!貴方の婚約者のために!」
相手は10レベルの魔法生物を単騎で撃破した実力者ですしね。戦う時は全員一緒です。
それにしても彼は1人でどうやってあの光と闇の迷宮を抜けたんでしょうかね。壁を壊した跡はなさそうだし。
男「まあ、<神殺し>の伝説を持つ剣に手を出せば、例の冒険者どもが動き出すだろうとは予想されていたさ。
だから、今頃空っぽだろう神殿のご本尊が大変なことになってるだろうがな」
エア「……あ」
ソラ「うん、ちょっと、忘れてた」
ジーク「……な、なんだってぇえっ!そ、そんなこと、ゆるさない、ぞおお!(棒)」
メッシュ「その通りです、ジーク様!きっと、神殿責任者のガアラが、
命をかけてルー様を、お守りしてくださっておりますとも、ご安心ください!(棒)」
その主従の慌てっぷりに男は満足そうな顔をしています。《真偽判定》されなくて良かったですね。
ルーちゃんの変身を見破ろうという気はおきなくても、この主従の大根っぷりを見破るのは簡単そうだし。
男「まあ、ここでお前たちを排除してしまえば、この剣を使う必要もなさそうだしな。
……どっちがどっちかわからんが。まあ、それは後で調べればいいことだ」
エア「……二本あったってこと?」
メッシュ「二本?へー。パジャリガー、知ってましたか?」
パジャリガー(首を横に振ってる)
一つの迷宮に二つの魔剣。ということはもう一つは彼の自前ということになりますね。
魔剣を持ち歩いている推定蛮族とくればドレイクを真っ先に疑ってしまいますね。
そこでぞんざいズは彼の名前を探ろうとカマをかけてみます。
メッシュ「……ふ、まさか蘇っていたとはな、パジャリガー!!」
姉妹「ちがーう!」
ジーク「明らかに大外れだ!」
ソラ「具体的に言うと、二巻第一話で聞いてる!」
エア「ファルゲンよ」
ソラ「あ、お姉ちゃんすごい!(拍手)」
ムーテス「すごいなあ、エアの記憶力は」
エア「え、ちょっと待った、もしかして皆忘れてたの?」
もう随分前の事ですが、忘れもしないルーちゃんを攫ったドレイクの名前です。
仇敵の名前をちゃんと覚えていたエアを褒め称える声が仲間達から湧き上がります。
男「……まあ、その方の名前を覚えていただいているというのは光栄だが。それを言うならフィルゲンだ」
エア「……あれ?(可愛く首を傾げる)」
一同(爆笑)
メッシュ「違うじゃないですか!さらに別人!」
ソラ「一瞬すごく尊敬したのに!」
そして彼自身はフィルゲンではなく、彼の部下です。実はエルヴィーンの時に最後にチラっと出てきた人ですね。
あの時はフィルゲン自身が来たかと思いましたが、それでもアルケミートゥースを倒すほどの実力者です。
もしあの時戦っていたら全滅必至でしたが今は随分レベルも上がった。十分倒せる相手のはずです。
ちなみに彼の種族はドレイクバロン。いよいよ爵位持ちのドレイクとの戦いです。レベルも二桁ですよ。
ムーテス「こいつが「その方」とか言ってるフィルゲンってボスは、さらに上なんだろうなあ……
例えば、しりとりすると一巡して戻ってきそうな」
ソラ「うわ、嫌だなあ。ドレイクハイロード?」
メッシュ「絶対に勝てなさそうですよ、それは!」
ソラ「でも、HP必ず最後で1点残してくれるから」
カウント(伯爵)ですら17/18レベルなのに、そんなのがいたらどれだけの実力者なのやら。
下手したら老竜(25レベル)すら上回り、小神どころか大神の域にまで達しているかもしれません。
ジーク「……戦う前に一つ聞かせてくれ」
男爵「何だ?」
ジーク「ここのアルケミートゥースは、お前が一人で倒したのか?」
男爵「……ちょっと苦労した」
レベル的には竜形態になって互角ですしね。でも特に消耗はしていないというズルさ。
ジーク「……ところで、もしルーが死んだら、リプレイのタイトルどうなるんだろう」
GM「故・新米女神の勇者たち?」
エア「断固阻止ー!」
先制はメッシュが指輪を割ってもぎ取りました。いよいよレベル二桁の世界に突入です。
バロンは通常のドレイクを全体的に強化し、《マルチアクション》も使えるようになっています。
操霊魔法は7レベルまで使用でき、《魔法適性》持ちで《魔力撃》を使うと魔力10点が上乗せされます。
更には練技"キャッツアイ"、"ビートルスキン"、"リカバリィ(5点)"。《光のブレス》は2D+16点に強化です。
1ラウンド目
エアは"セイクリッド・シールド"を、ルーは"セイクリッド・ウェポン"を前衛4人にかけました。
メッシュは投げようとして失敗。腕輪を壊すと命中力が下がるというのでやはりギリギリでブレイクさせてるらしい。
ジークは普通に攻撃して17点。ドレイクバロンは防護点10のHP53なのでそれなりに削れているようです。
ムーテスは"キャッツアイ"と"ドラゴンテイル"を使いつつ攻撃。竜形態になった時の《テイルスイング》を見越してるようです。
ソラは抵抗上等で"リープ・スラッシュ"。パジャリガーも攻撃してダメージを与えます。やはり蛮族に剣を取られたくないらしい。
バロンは《マルチアクション》を使いつつ後衛の姉妹に"ポイズン・クラウド"を撃ちこんできます。
4レベルの操霊魔法で抵抗に失敗した相手に1分間3点の毒属性の魔法ダメージを与え続けます。
そして色々練技を入れつつジークを殴って大ダメージ。2D+13点とかあるので追加分だけで防護点を抜けますね。
2ラウンド目
メッシュの《投げ攻撃》が決まります。こうなると《飛行》が失われる上に転倒によるペナルティが入って当たりやすい。
そこでここぞとばかりに前衛達は彼を攻撃しますが、ムーテスの"ドラゴンテイル"第二段階を6ゾロで回避したり。
ムーテス「くそ!このマスターはこれがあるから嫌なんだ」
ジークは〔運命変転〕まで使って当てましたが削りきれず、30点ほど残してしまいました。
倒せそうにないと悟ったソラは"ポイズン・クラウド"を解除しようとディスペルするも失敗。
次に同じダメージが来たら倒されてしまう程度には追い詰めたので、バロンは《竜化》します。
3ラウンド目
こうなればもう出し惜しみはしません。特にムーテスは持てる全ての能力をつぎ込みます。
ムーテス「ついに飛んだな。よし、僕もここから〔風の翼〕を発動。
勝負はここからだ!"ドラゴンテイル"第三段階!全部位に攻撃!」
これに対抗しようとバロンは"スタン・クラウド"を使いますが抵抗されてしまいます。
これは6レベルの操霊魔法で3ラウンドの間宣言が必要な戦闘特技を封じる効果があります。
よってムーテスの《テイルスイング》やジークの《マルチアクション》などを封じる事も可能なわけですね。
それからも激しい攻防は続きますが、強烈な《光のブレス》もエアは<女神のヴェール>の効果で癒してしまいます。
メッシュなんてこの化け物相手に果敢に《カウンター》で反撃します。もう庇われるだけの貧弱な坊やではないのです。
やがて"スタン・クラウド"でムーテスの尻尾無双を封じられましたが、同時に翼を折って地面に落とします。
この頃には"ファイア・ウェポン"や"ブレス"も入り、前衛の攻撃力はかなり底上げされています。
エア「神官は対蛮族には超有能だから」
ソラ「"ファイア・ウェポン"はコンジャラーなの」
エア「心意気の問題!」
地面に落ちれば《飛翔》も失われて更に戦いやすくなる。もうひと息ですね。
8ラウンド目
ムーテスは《テイルスイング》を封じられながらも強化した<尻尾>で着実にダメージを通します。
ソラは相変わらずの抵抗前提"リープ・スラッシュ"。ジークは《マルチアクション》で"カオスショット"しつつ殴ります。
バロンはHPがキツくなってきたので《マルチアクション》でムーテスを"ドレインタッチ"しつつ殴ります。
こちらは7レベルの操霊魔法で、威力10の魔法ダメージを与えつつ適用ダメージ分HPを回復します。
これで14点とか吸われましたが、牙による攻撃は殆ど通らず、翼による攻撃なんて完全にブロックするあたり流石です。
ムーテス「でも次のラウンドには、地面に落ちる。
かばえない、飛べない。くそう、僕はただのトカゲになりつつある!」
飛べないのは相手も同じだから気にすることはありません。硬いのは相変わらずですしね。
9ラウンド目
ソラの魔法に抵抗失敗して大ダメージを与え、ジークが更にダメージを稼ぎ、もうひと息で倒せそうです。
メッシュの攻撃は防護点を貫けなかったものの、いっそエアが回復を休んで"フォース"でトドメを、と考えた時でした。
メッシュ「あ。(ころころ)しまったパジャリガーの攻撃がクリティカルです」
エア「え!しまった、わたしが先にフォースを撃っておくんだった!」
メッシュ「……ダメージ合計、24点」
GM「あ。それで倒れた」
一同「ばかー!」
パジャリガー「え?俺様倒したのに、すっげえ不評?」
散々頑張ってNPCにキルマークを掻っ攫われるこの虚しさ。最後まで空気の読めない男でした(笑)
戦い終わるとぞんざいズはバロンが持っていた長剣と小剣を入手しました。
ホーリィ「おお、この小剣は、パジャリガーがどんな旅にも携帯したといわれる剣だ」
それは本の挿絵にもハッキリと描かれているもので、パジャリガー所縁の剣であることは確かです。
しかし長剣の方にはパジャリガーの刻印と目立つ装飾が施されています。しかも抜いてみると刀身が特殊でした。
それは刀身の片面は白く、反面は黒いというものです。この迷宮を作ったのはこっちの長剣の方のようですね。
その正体は不明ですが、ホーリィが試練で獲得した事にして厳重に保管しつつ調べてもらうことにします。
ジーク「ホーリィ、お前が家族のもとに戻るためのクエストの剣だぞ」
ソラ「わっ!」
GM「ひあっ!」←素で驚いた
ソラ「……と、ちょっと驚かしてみたの」
これには剣に手を伸ばしていたホーリィも飛び上がりました。子供か。
しかしホーリィは悩みました。本当に自分が貰っていいのだろうかと。
ホーリィ「我は何もしなかった気がするのだ……それで、剣を手にしてもいいのだろうか」
ソラ「あ、そう?だったら一本頂戴」
ムーテス「僕たちは当然のことをしたまでです。
でも、それでホーリエル様の心が穏やかになるのなら、
剣を一本下賜していただいても、一向に構いません」
エア「……あんたち、なんでこんなところでは打てば響くような反応なの」
魔剣の分配は宿に戻ってから決めるとして、ぞんざいズは地上へと帰還しました。
ソラ「あ!待って大事な用事があるの!」
メッシュ「何でしょうか?」
ソラ「……アルケミートゥースから戦利品、剥いでおきたいの」
一同(爆笑)
エア「あたちたちが倒したんじゃないでしょう!」
ソラ「でもだって、だって、ドレイクバロンは絶対に剥いでる余裕なかったもん!」
自動で入手できる<黄金の血清>で300ガメル、出目9以上で入手できる<黄金の鱗>が600ガメルです。
確かに剥げるもんなら剥いでおきたいですよね。敵も倒して時間的余裕もありますし。
★成長申告だ
今回の能力値の成長は以下の通り。
ジーク:敏捷度18→19
ソラ:知力20→21
エア:生命力21→22
メッシュ:生命力19→20
ムーテス:筋力25→26
特にブレイクした人はいませんが、こっそりムーテスが3回連続で筋力を伸ばしていますね。
技能の成長ではソラがフェンサー3→4にしました。
エア「まだ上げる気なの、ソラ!」
ソラ「うん、ガンガン上げてくよ?」
エア「ソーサラーは?」
ソラ「お母さんが、ソーサラーは"ファイア・ボール"が使えるようになればそれでいいよって言ってたから」
エア「うそつけー!」
ムーテスはレンジャー5→6としました。こちらは7レベルで自動習得の《不屈》狙いのようですね。
そして肝心なのはメッシュがスカウト6→7とし、念願の《ファストアクション》を自動習得したことです。
ジーク「おおすごい!」
ムーテス「本当だ、すごいっすよ!」
ジーク「……あのメッシュが……7レベルまで生きてたんだな……(ほろり)」
ムーテス「そうだね。かばって、かばって、庇いまくった甲斐があったっすよ……(じーん)」
メッシュ「え!そっちの意味で感動されてる!?」
これは《先制判定》で自軍が先攻を取った場合、1ラウンド目だけ主動作を2回行えるようになる特技です。
よって今後のメッシュは上手くすれば1ラウンド目に限って4回攻撃が可能になるということですね。
エア「大丈夫、ミスティン様じゃないけど、わたしにも未来が見える。
……先手を取れば、《ファストアクション》で二回攻撃!
残念、指輪を割っても先手が取れませんでした、ごめんなさい、という未来が!」
ジーク「そんな克明な未来はいらん!」
ムーテス「そうっすよ、それ、予言じゃなくて、予定じゃないっすか!」
メッシュ「何気に一番ひどいですよ、リルトカゲン!」
残念ながらとってもリアルにそんな状況を想像できるんですよね(苦笑)
先制力が9になったし、指輪を割ることを前提にすれば基準値11相当なのにね。
買い物だとムーテスが<デスサイズ>を購入。カテゴリ<アックス>のAランク武器で魔法の武器でもあります。
このゲームにはカテゴリ<サイズ>とかないから鎌は斧に入ってるんですよね。流石に特殊過ぎますからね。
これは全長2mを超える漆黒の大鎌であり、HPを5点消費すると1ラウンドの間追加ダメージ+5点になる効果があります。
非常に強力な戦力になりますが、文字通り身を削らなければならない諸刃の刃。レンジャー技能で自己回復しながら使う手もある。
それと特に宣言はされていませんがソラが"マナスタッフ"を購入しているようです。
これはカテゴリ<スタッフ>のAランク武器で、装備していると使用者の魔力が+1点されるというもの。
ただしこれは「アルケミスト・ワークス」以降ランク効果、すなわち関連する《武器習熟》や《防具習熟》が必要な効果です。
ソラには《武器習熟/スタッフ》がないが、本人の筋力が武器の必要筋力を10以上上回っているので装備自体は可能です。
しかしそれだけではランク効果までは発揮できないため、何らかの方法でこれを補わねばなりませんが、その一例は本編参照。
★小さな剣の賜りモノ
ドレイクバロンを倒して2本の魔剣を入手したぞんざいズは拠点である宿屋に帰ってきました。
心配そうに帰りを待っていたブルチーノさんは成果を知って大喜び、労って宴会なども開いてくれました。
そして一晩調べた結果、やはり長剣の方が伝説にある<パジャリガー・スラッシュ>だと判明します。
短剣の方は正体がわかりませんでした。まぁ秘められた魔力が分からないという点では長剣の方も同じなんですがね。
ただパジャリガーは<スラッシュ>を置いていくことはあっても短剣を置いていく事は無かったとだけ伝えられています。
それを見てパジャリガー・セカンドは物欲しそうにしていましたが、彼は前回勝負に負けたので仕方ありません。
ジーク「……俺の実家の住所を教えてやるから、それで我慢しろ」
パジャリガー「え……そ、それはっ、パジャリガーの花嫁の」
ついでに報酬も分けてあげます。実は前回の報酬は戦利品込みで9万2000ガメル以上にもなりました。
そこで彼には戦利品分の1万2000ガメルを分配します。ルーちゃんを入れてても等分には若干少なめ。
多分ドレイクバロンの戦利品の中でも最も高価な<美しき竜人の角>が取れたのでしょう。4200ガメルとかします。
エア「それで、結婚指輪でも買って贈ってみたら?」
メッシュ「ン?それは、いくらくらいの指輪を買って贈るつもりですか?」
ジーク「え、なに?もしかして張り合うつもりか?」
メッシュ「いえ、違います。
「照れくさいので、変装して、結婚指輪と称して借金を返しにいくと思うので、よろしく」
という手紙を出しておこうと思うのです」
そしてアイシャはそれを大人しく受け取り、彼らの借金も帳消し。まさに"口先の魔術師"ですね。
一方彼とは違って本当の成果をあげられたホーリィは改めてぞんざいズにお礼を言いました。
ホーリィ「ありがとう、皆。我らだけでは、パジャリガーの剣は、決して手に入らなかっただろう。
改めて例を言わせてくれ(ぺこり)」
そこで感謝の印に短剣をぞんざいズに贈ることにしました。審査は長剣の方だけで十分だと。
もしそれで審査を落とされても今回の件は彼女にとって大きな経験となって役立っていくでしょう。
ソラ「……ホーリィちゃんをぎゅーっとするの。
なんとなく、お姉ちゃんと喧嘩しつつ一緒にいられるのが、鬱陶しいけど大事なことかもって、
ちょびっとだけ、ちょびっとだけ、思う」
エア「ちゃんと、家族と一緒に暮らせるようになるよいいね、ホーリィちゃん」
ホーリィ「うむ、エアとソラも、あまり喧嘩せぬように仲良くな。
でも、神殿のブルチーノたちも、好きなのだ。だから、今の生活も悪くないぞ」←いい子や
11年という短い人生の半分以上を神殿で過ごした彼女にとって、神殿の人達だって家族なのかもしれませんね。
メッシュ「で、この小剣のほうのスペックは?」
エア「情緒を知れ、そこのポンコツ執事」
詳細な魔力はブルチーノさんも調べ切れなかったようですが、基本スペックとしては魔力+2<ショートソード>です。
魔力+2は魔剣の多いこの世界でも結構なレア物ですよ。SWのようなアイテム価格の計算式が不明なので比較できませんが。
ただし必要筋力5で威力5に過ぎず、多少命中しやすくても前衛の筋力が高いこのパーティではちょっと威力に難あり。
フェンサーであるソラにしても同様。多少当たりやすくても筋力25あれば必要筋力13までは持てますから勿体無いかな。
その真の魔力は後で調べるとして、ぞんざいズは襲撃を受けたと思われるルーフェリア神殿へと帰還します。
★《白峰領》の新しい戦力
ぞんざいズには急ぎの用事がある上にルーちゃんが寝ていることもあり、ライフォス神殿が気遣って馬車を貸してくれました。
エア「では膝枕をして、一人で萌えています。ああああ……ルー様、お休みになっていても愛らしい……」
《白峰領》に近付くにつれ彼女の眠りも浅くなっていくのですが、ある時急に目を覚ました彼女はこう口走りました。
「……何か、さむい……?」と。それは彼女自身何故か口走ってしまった言葉であり、すぐにまた眠ってしまいました。
嫌な予感を感じつつフーギの街に近付いてくるとルーちゃんは何事も無かったかのように覚醒しだします。
外の景色を眺める余裕も生まれてきたのは幸いですが、馬車の中からでも神殿から黒煙が出てる様子が見えてきます。
メッシュ「……ガアラ……安らかに眠れ」
ムーテス「縁起でもない。神殿は大丈夫そうかな?どんな感じ?「ムーテス商会」事務所は?」←乗っ取るな
何事かとソラはフェイを飛ばして神殿の様子を見に行かせます。すると神殿の庭には無数の焼け跡が燻っていました。
魔術師であるソラにはそれが何か判定の必要なくわかりました。"ファイアボール"が炸裂した痕跡なのです。
ソラ「お母さん、なんてことを!」
エア「ちがーう!」
ところが今回ばかりは冗談では済みませんでした。
クロノア「また来たわね斥候が!撃ち落してくれる!」
魔術師なら判定の必要なく使い魔の正体がわかるので、フェイを敵だと思ったエルフの女性が神殿から飛び出してきます。
彼女の名はクロノア。エアとソラの母親であり、カイン・ガラの真語魔法学部で教授を務める魔術師だったのです!
ちなみに顔はソラで体つきはエア。つまりぱっつんぱっつんなムチムチボディをしたソラというわけで、完全体現る。
ソラ「……えっとね。お姉ちゃん。神殿で"ファイアボール"がいっぱい炸裂しててね」
エア「つまり、新手のテロ!どこの魔物の仕業!おのれ蛮族、許すまじ!」
ソラ「あ、ううん。そうじゃないの。蛮族じゃないの」
エア「では、新手の魔法生物!」
ソラ「うーん、魔法的なサムシングではあるけど」
エア「では、魔神!ルーフェリア様の神殿を土足で荒らすなど、断じて捨て置けません、
総員総力戦の準備を、直ちに殲滅します!」
ソラ「だらだらだら(汗)」
エア「くぅ!この怖いもの知らずの妹が虚空を見詰めて黙り込んでしまうなんて!
どんな恐ろしい悪魔が来ているというの!(握り拳)」
ソラ「……どうしよう。家庭環境的には、このまま、黙っていたい」
そしてフェイの視界では妻を止めようとするカームさんの姿もあったり。
この一人でエキサイトして身内に止められるあたりはエアは母親に似たのかもしれない。
とにかく家族で戦闘は避けねばなりません。ソラは御者台に移動して手を振り声を張り上げ訴えます。
ソラ「おかーさーん、撃っちゃだめー!」
エア「何を言っているの!このように神殿の前庭が無残に焼け焦げて……
所業を為すような女が母でありえるはずがないでしょう!……いや、むしろありえる」
ジーク「どんな母だ」
流石のクロノアさんもライフォス神殿の馬車を吹っ飛ばすほど無鉄砲では無かったようです。
しかし馬車を降りてもエアの態度は変わらず、母も母でそれを仁王立ちで迎えて相対します。
エア「……わたしに《魔法拡大/数》があれば、負けないものを!」
ソラ「家族間魔法合戦するのやめて、お姉ちゃん」
エア「子はいつか、親を踏み越えて進まねばならぬのよ!」
クロノア「……ふ、相変わらずその顔は、私の天敵のようね、エアリサーム」
エア「貴様、名も知れぬ魔神のようだが……一体何のようだ!」←話を聞かない娘
クロノア「ふ……今度は私の娘たちの姿に化けてくるとは……ちょっとは、頭を使ったようだねえ。
しかし!その顔相手に、私が容赦すると思ったら大間違いだよ!」←話を聞かない母
エア「ハ!親の姿をとれば、こちらがトドメをさせぬと思ったようだけれど……
それこそ、魔神の浅知恵ということを、教えてあげてよ!」
そして会話のドッヂボールを見物する男達。メッシュなどジークとルーちゃん専用の御座を用意しています。
ここで姉と母の仲裁を買って出たのは妹でした。普段暴走するのはむしろ彼女の方なのにね。
ソラ「おかーさーん、おかーさーん。一応本物だから!
実家の二段目の箪笥の裏に、お父さんのへそくり三百ガメルあるの知ってるー?」
クロノア「ふ、甘いわね。今では五百ガメルよ!」←把握してる!
カーム「ああーやめてー折角貯めたのにー(泣)」
しかしそんな家庭の内情を知っているのは娘に他ならず、一家四人はようやく落ち着いて話ができるようになりました。
こうなれば庭で駄弁っているのもなんなので移動してゆっくりできる場所で話します。
クロノア「ああ、そういえばエア、家買ったんですって?」
エア「貴方に跨がせる敷居はない!(くわっ)」
しかしこの夫婦をこの神殿に派遣したのはバトエルデン大司教その人なのです。
以前から問題になっていた神官不足はカームさんが、例の地底湖の魔法装置の調査はクロノアさんが担当します。
それに高レベルな魔術師にして賢者であるクロノアさんがいるお陰で早速例の短剣を調べることもできます。
ジーク「あ!アイテムの鑑定や発見が専門の研究者ってことは、この剣の効果わかるか?
暫定<パジャリガー・スラッシュ・ぷち>と名付けた」
GM「はい、じゃあ……クロノアさん鑑定。(ころころ)……。(ころころ)うん、わかった」
エア「ちょっとお待ち。何でサイコロ二回も振ってるの」
クロノア「任せて、ばっちりわかったわよ、感謝しなさい(目逸らし)」
1回目はセージ技能における《宝物鑑定判定》、2回目は"アナライズ・エンチャントメント"ですね。
これは7レベルの真語魔法で対象にかけられている魔法の詳細が分かるというもの。マジックアイテムの鑑定にもってこい。
それを指摘したお姉ちゃんにはアメリカンに肩をすくませ、「姑そっくり」とか言いながらその効果を教えてくれます。
この魔剣の詳細は「ウィザーズトゥーム」で明らかになりますが、本当の名前は<ダガー・フォー・レジデンス>というそうです。
カテゴリ<ソード>のBランク武器にして3万7000ガメルの品で、魔法文明時代の貴族達の間で流行になった魔剣らしい。
その知名度は21もあり、クロノアさんが多少高レベルでも失敗するのは仕方ない程度にはマイナーな魔剣かもしれませんね。
この魔剣を柔らかい地面に突き刺すと地中に居住空間を作ります。大きさは2人が快適に暮らせる程度。
ベッドやお風呂なども揃っており、寝室の暖炉に移動した魔剣を抜くと中のものは安全に外にまで押し出されます。
この時寝室に設置された宝箱に入っているものだけは押し出されず、魔剣と一緒に携帯することが可能となります。
なお居住空間内には魔剣の召喚した魔物扱いでゴーレムが用意されており、主の身の回りの世話をしてくれます。
今回ぞんざいズが入手したのはその一つであり、実際に居住空間を作ってみると四部屋ができました。
梯子を降りた先の寝室と、そこから繋がる浴室、トイレ、そして世話係のクーガが格納されたクローゼットです。
寝室だけでも十畳ほどの広さがあり、ベッドはダブル。お風呂にはちゃんとお湯も張られていて下手な宿屋より快適そう。
宝箱にはパジャリガーとその奥さんの服が残されており、彼のラブレターや<消魔の守護石>7点分がありました。
クーガとは3レベルの魔法生物で二足歩行魔動機械の試作品です。身体の基礎しかできておらず装備もない。
それだけに日常生活用に特化するようカスタマイズされているのでしょう。他にも色々なタイプが存在しそうですね。
<消魔の守護石>は魔法ダメージを軽減する効果があり、自由にこの石に魔法ダメージを肩代わりさせられます。
石にはそれぞれHPが定められていて、その値段はHP×HP×100ガメルとSWの魔晶石を彷彿とさせます。
7点残っている場合は4900ガメルとかします。便利だけど頑丈なのは値が張るので自分では買い難い品ですね。
メッシュ「いかがでしょう。折角ですし、今日はご家族で川の字になって眠っては?」
エア「いい(きっぱり)」
クロノア「もう、ツンデレなんだから(指でつん)」
エア「一度たりとも、母に対してデレたことはない!」
クロノア「ひどい……ママ、こんなに、姑に似た娘でも頑張って愛そうと歩み寄っているのに」
メッシュ「そこでもう一踏ん張りですよ、奥さん!」
エア「唆すな!」
こんな母と娘だけど、幼い頃にはちゃんと親子として接していた時期もあったんだろうか。
まぁとは言ってもエルフだし、あったとして40年は前でしょうけどね。時の流れは残酷である。
では何故クロノアさんは神殿の庭を絨毯爆撃したかというと、夫婦が到着して早々に蛮族の一団による襲撃があったのです。
カーム「何やら『エルヴィーンの仇ー』という声も聞こえたのだけれどね。心当たりはあるだろうか」
ジーク「ああ、あるある。そっち方面の恨みを買ってるとすると……
神殿までの抜け道というか、地の利はそれなりにありそうだなあ」
今となっては懐かしくなってきた名前ですね。あの時戦った蛮族の数は少なかったし、まだ仲間がいても不思議はない。
ちなみに襲撃者の中にはトロールもいましたが他の種族もいたそうです。以前戦った時はレッサーオーガの仲間もいましたしね。
メッシュ「しかし、我々は結構さらっと帰ってこれましたよね。蛮族の気配や影は感じましたか?」
ムーテス「僕は結構外を見ていたけどなあ。馬車が窮屈だからだけど」
クロノア「それは、リルドラケンがいるからよ!そうに違いないわ!」
ムーテス「は?なんっすかそれ」
ジーク「もしかして……リルドラケンが敵にいたとか?」
クロノア「(首肯)今度見つけたら、丸焦げにしてやるわ。あのピンクのリルドラケンめー!(地団太)」
ここでムーテスは反応しました。ピンクの鱗のリルドラケンというのはなかなか珍しいものです。
そして彼の昔の仲間であったミラという女リルドラケンの鱗もピンク。これは偶然の一致で済ませていいものか。
ただそれだけなら次の襲撃で返り討ちにすればいいのですが、道中ルーちゃんが寒気を訴えていたことが引っ掛かります。
エア「あ。思い出した、ルー様、まだ寒い?そう言いながら、作っているのは大量のピリ辛雑炊系」
ジーク「うわー無駄に身体が温まりそうだー」
ルー「……うん。何だか、寒いの。何でかな、すごく、不安なの」
ジーク「……まさか、本国のリアになんかあったとか、そんなんじゃないよな……?」
ルー「……あのね。リアちゃん、返事してくれないの」
ジーク「おおおおいっ!」
現在大司教はがら空きだったアイヤールの神殿に戦士団や神官団を多く派遣しています。
それは本国の守りが手薄になっていることを意味します。すると蛮族の襲撃は本国の異変を悟らせない作戦の可能性も……。
ジーク「状況を整理しよう。お母さんたちが、この神殿に到着したのを見計らったように、蛮族の襲撃が……
とか言ってたよな。あ、俺名前聞いてないから、うっかり「お母さん」とか呼んでるけど」
クロノア「……どっちの?」
ジーク「へ?」
クロノア「アンタ、どっちからのお義母さん扱いなの?(ずずいっと身を乗り出す)」
ジーク「ち、ちがう!俺は無実だ!」
メッシュ「ジーク様、私、遠くから見守っております(にこやか)」←こういう時だけ日和る執事
しかし夫婦は大司教直々の命令で派遣されているので下手に帰るわけにもいきません。偽命令とかではありませんしね。
実際今までよくぞぞんざいズとガアラだけでルーちゃんを守ってきましたよ。女神の欠片とはいえまだ未熟な女の子だし。
ムーテス「あ。そうそう、ルーのことはどこまで知ってるの?ご両親」
カームさんは事情を全て知っています。でも最高機密扱いなのでクロノアさんは真実を知らない。
クロノア「あんたが、ルーフェリアの親戚の子だってー?ちゃんと、神官になってるなんて偉いのねー?(撫で撫で)」
実は現代でもルーフェリアの子孫はちゃんと生きています。本国では騎士団を率いる王族という立場ですね。
ただし実権は王宮や国王ではなく神殿や大司教が握っていますけどね。現在の王族の主な役割は国防です。
そんな状況でも大司教は「早く、神殿業務だけやってたいなー」とか呟いているそうで、複雑な宗教国家ですね。
ソラ「あ、思い出したの!フロリダスって人、お父さん知ってる?」
カーム「ああ、頼りになる人だねえ。今回も、自分たちを派遣する人選をした人だって聞いているからね」
ジーク「親父さん、その人怪しいっすよ」
カームさんによると、フロリダスというのは代々神殿に仕えていて、彼自身子供の頃から神殿に関わっているとか。
現在は大司教の側近として辣腕を振るう人物であり、カームさんからすれば彼が敵だとは考え難いもようです。
ここまで知ったぞんざいズは自分達だけでも一度本国の様子を見に帰るつもりになりました。
ジーク「そうだ……命令が解除になったあとは、どうやって国に帰るつもりだったんだ?」
カーム「アイヤールに来た時は飛行船で来たけれど……
帰りはのんびりママとふたり旅をしようと思って。はじめての海外旅行」
エア「あーあー、本当に、大司教のお心遣いが身に染みることでっ」
ジーク「意外とラブラブ」
つまり急いで本国に帰ろうにもこちらからは足が用意できず、地道に陸路か水路を使うしかないと。
あとは陽動っぽいとはいえ蛮族の一団を放置して即帰ってもいいのか、それとも殲滅してから帰るか。
後者は時間が掛かりすぎるのでできれば前者にしたいところ。そうなると夫婦のスペックにもよりますが。
メインの技能だとクロノアさんがソーサラー9、カームさんがプリースト9で、他にもちらほらあるらしい。
前衛技能はあっても高く無さそうですが、それは本国から連れて来た戦士団に頑張ってもらえば何とかなるかな。
あとは《かばう》が欲しい所ですが、戦闘特技はGMも考えてなかったのでこの場で設定します。
ソラ「プリーストが《かばう》」←お父さん前提
メッシュ「常に奥さんの前に出て、《かばう》!どかーん!自分に"キュア・ウーンズ"!をエンドレス」
ムーテス「もちろん、複数を庇える戦闘特技《鉄壁》も持っているから、娘二人も大丈夫だね!」
メッシュ「そしてそんな生活をしているので5レベルになって習得したのは《頑強》です」
ジーク「父、偉大なリ」
そして自分しか癒さないので《魔法拡大/数》すら取らないという新しすぎるプリーストの誕生です。
よってカームさんの戦闘特技は《かばう》《鉄壁》《ブロッキング》《頑強》《頑強U》となりました。
この中だと《鉄壁》は初出ですね。これは《かばう》で1ラウンドに3人まで庇えるようになります。
《ブロッキング》は部位数を2倍に、エルフの場合二部位相当になることで4人まで乱戦に巻き込めるようになります。
そして《頑強U》は《頑強》に加えて更にHP+15点(計+30点)にできます。《タフネス》もあれば+45点も夢じゃない。
メッシュ「もちろん、セージも9まで伸ばしているので、MPは軽減されています」
ジーク「おっさん、俺たちのパーティに入らないか?」
カーム「生憎、庇う人は生涯一人と決めてるから」←娘達は例外
ムーテス「おおお!かっこいい、一回でいいから言ってみたかった」
ジーク「ごめんな、ムーテス。いつもむさくるしいのを庇わせて」
これはセージ9レベルで自動習得する《マナセーブ》のことですね。各系統の魔法、練技、アイテムによる消費MP−1点。
ていうかそんだけ高レベルなセージなら彼が《宝物鑑定判定》をしても良かったんですね。夫婦とは互いを補い合うものです。
クロノアさんの方は結局謎ですけど、彼女の性格から言って《魔法誘導》《魔法収束》《魔法制御》の三点セットは持っていそう。
次にミラと思われるピンクのリルドラケンをどうするかです。
メッシュ「……ムーテスを高いところに括りつけておくと、ふらふらとおびき出されませんかね?」
ムーテス「うわ、何だかいきなり剣呑になって、昔の仲間のミラのことを言い出しにくくなったじゃないか。いや、言うけど」
ソラ「お母さん、あれが今回の首謀者の彼氏みたいよ」
クロノア「自首ご苦労。"エネルギー・ジャベリン"でいい?」←よくない
ムーテス「いやちょっと待った!昔の仲間だっただけだから!(ホールドアップ)」
別に付き合ってたわけじゃありませんし、ミラだと決まったわけでもない。
でも彼がアイヤールを離れている間にまた戦闘になったら、クロノアさんに殺されそうなのが気がかりなのです。
ムーテス「できたら殺して欲しくないんだけど」
ジーク「なぁんだ早く言えよ。そんな仲だったのかよ(にやにや)」
ムーテス「いや、ちがう!言っておくけど僕は、あのリャンですら庇ってきたんだよ!」
そう言われると夫婦も努力は約束してくれます。どうなるかはまたその時にでも分かるでしょう。
残る問題は移動手段です。ルーフェリアから潜入した時には山脈を突っ切るコースとリオス経由のコースがありましたね。
山脈を突っ切るのが手っ取り早いんですよね。蛮族の領域とはいえ彼らも強くなってるし、いけない事はないはずです。
あとはアイヤールの飛行船に乗せてもらうという手もあります。現在確認されているものは全て国の管理下ですがね。
そこでぞんざいズはホーリィ経由でミスティン姫に連絡を入れてもらい、飛行船を出してくれるようお願いする事にします。
ミスティン姫自身はぞんざいズに好意的ですが、周りがそれを許してくれるとは限らないので賭けになりますけどね。
ホーリィも好意的ですが、まだ皇女になっていないのでそこまでの権限があるかは疑問なので無難な手です。
あとは適当なライダーギルドを訪ねて空を飛ぶ騎獣の騎手を紹介してもらい、タクシー代わりに使うという手もありますかね。
もちろん空振りに終わった時の事も考えて徒歩で山脈を突っ切るコースを先行します。
道中頻繁に狼煙をあげ、更にはぞんざいズの居場所が分かる<誓いのアンクレット>を用意して目印にしてもらいます。
ジーク「ルー、ここでお前を守ってくれる人たちがいるから、大人しく待っててくれるな?」
ルー「……うん、リアちゃんたちをお願いします。本当は、一緒に行きたいけど、
わたしはまだまだすぐに寝ちゃうみたいだから……迷惑かけてしまうから」
エア「ルー様。どれだけ離れていても、わたしの心はルー様と共に……よよよ」
メッシュ「ふ、しかしながらルー様の心はジーク様のものなのですよ!残念でした!」
女神の欠片とはいえ、信者が少ない新米女神の身の上では人間より不自由なことが多いというのは複雑ですね。
多分山脈を突っ切る間は眠っちゃうんでしょうけど、ルーフェリアの国内に入れれば活発になれるのでしょうが。
ジーク「いいか、ルー。俺たちが出ていったら、ルーがここの人たちの面倒を見るんだぞ?
……今までも、俺たちが面倒見てたわけじゃないけどな」
ムーテス「台無し」
ソラ「いい、ルーちゃん。ガアラさんの言うことをちゃんと聞くのよ。……あたしたち、全然聞いてなかったけど」
GM「ひどい人たちだ」
むしろルーちゃんは言いつけはちゃんと守るいい子でしょう。ぞんざいズが独立愚連隊みたいになってただけで(笑)
ムーテスも神殿の人達にはピンクのリルドラケンは生け捕りにするようお願いしておきます。
ソラ「ムーテスくん、そういう言い方じゃダメなの。
ね、お母さん、ピンクのリルドラケンは……なるべく苦しめて上げてね」
ムーテス「そ、それは確かに、命だけは助けてくれそうだ!」
実はピンクのリルドラケンを探るシナリオもあったようですが、本国の様子が気になるのであっさり没です。
結局その正体は謎のままになるのは気になりますが、何かを選択した結果、何かを諦めねばならないのもリアルな話です。
そうして軽く宴会をして全員就寝。翌日に出発する予定でしたが、明け方になって蛮族が攻めてきました。
襲ってきたのはトロール×2体とオーガ×2体。でもぞんざいズは呆気なくこれを倒し、捕虜にします。
そういえばレッサーオーガは沢山出てきましたけどオーガが出てきたのは初めてかもしれませんね。
オーガは7レベルの蛮族でレッサーオーガの上位種、あらゆる面でレッサーオーガを凌ぎます。
《人化》が使えるのはもちろん、真語魔法は5レベルまで使えるし、《魔法誘導/数》と《ワードブレイク》も使える。
ところが今のぞんざいズにとっては怖い相手ではない。捕まえた連中を尋問します。
エア「そうそう。あんたたち、誰に扇動されてここに攻めて来てるの(げしっと蹴った)」
トロール「え、それはその」
オーガ「なんて偽名だっけ」←偽名かい
トロール「ああ、あれだよ、あれあれ」
オーガ「おお、そうだ。思い出した」
蛮族達「ムーテス」
ムーテス「ミラ決定じゃないかー!」
やっぱりミラでした。これでますます生け捕りにしてもらわないといけませんね。あと身内の犯行なので謝らないと。
しかしムーテスってば、リャンといい、ミラといい、どうしてこう昔の仲間が犯罪に関わってくるのか(苦笑)
ムーテス「……僕、そろそろ名前を捨ててもいいかもと思い始めたよ」
ジーク「そういえば、一つ余ってる名前があるんだ。お前にやるよ」
ムーテス「へ?余り?」
ジーク「よろしくな、今日からお前がパジャリガーだ!」
ムーテス「うっわー、僕今の名前大好きだから!」
彼の戦闘特技《かばう》は物理的なだけでなく社会的な意味でもあったんですね。
もはや不利な特徴として厄介な身内を抱えている代わりにCPを余分に貰っているんじゃないかと疑うレベル(ゲームが違う)。
★一路ルーフェリアへ
アイヤールを旅立ったぞんざいズは一路西へ進み、山脈を突っ切ってルーフェリアの国を目指します。
メッシュ「ルー様ちゃんと花嫁修業をなさってくださっているでしょうかねー」←ルー様ちゃんに見えた
ムーテス「なんですっかり敬語になってるんっすか」
メッシュ「当然、将来の女主人最有力候補のようですからね」
道中頻繁に狼煙を上げていますが飛行船が来る気配はない。やっぱり無茶だったかな。
ところが飛行船の代わりに別のものが寄ってきたのです。
リャン「ムーテスーッ!(半泣)」
ムーテス「リャン!?ええ?何で!」
ジーク「いけ、ムーテス。ここで《カウンター》だ!」←使えないから
前々回姿を消したリャン君と何故か山中で遭遇。結構危険な土地なのによく一人で無事でしたね。
ムーテス「しかし、全ての遺恨はとりあえず脇に置いておくとして……
商売の話をしよう、リャン!ここに四枚の<黒い皮膜>がある!」
リャン「うわぁああ、すごいやムーテス!君ならやると思っていたんだよ!本当にすごいや!」
ソラ「そして、乗るなぁああっ!」
ジーク「無邪気にも程があるぞ、俺たちを騙していたことを忘れたのか、貴様!」
リャン「何を言ってるんだい?僕は全然騙してないよ!心底<黒い皮膜>は欲しかったんだ!」
確かに騙してはいませんね、自分の気持ちは。彼にしてみればぞんざいズに対する罪の意識もないと。
決して悪いエルフではないのですが、悪意がないからといって悪行を働かないとは限りませんしね(苦笑)
今回は狼煙が見えたから寄ってきただけで、別に待ち伏せしていたわけではないようです。
しかしいくらピュアソウルな彼とはいえぞんざいズとの仲が険悪になったのは分かるはず。それで何故顔を見せたのか?
リャン「だってムーテスなら僕にひどいことしないと思って。それに……ほとぼり冷めたかなって。てへ」
一同「冷めるかぁああっ!」
ちなみに彼はフロリダス繋がりでミラとも再会済みです。むしろフロリダスを紹介してくれたのは彼女のようです。
その時も彼女はムーテスに対して凄く怒っていたと鈍感な彼ですら証言します。何故そこまで恨みを買っているのか?
ジーク「確認しておくけど、本当に円満解散だったんだろうな、ムーテス」
ムーテス「円満だったよ!ただ、皆がダンジョンから出て、帰っていく背中を見届けた後で……
もう一回ダンジョンに潜ってみたら、飛空石を見つけただけで……」
ジーク「お前本当に、そういう大儲けの可能性があると考えなかったか?ん?」
ムーテス「そ、そーだなあ……確かに、行き過ぎた通路で、目の端で何か光ったかな、と思ったかもしれない……」
真偽はどうあれ、ムーテスは仲間には分け前はあげませんでした。ミラはそれが許せなかったようです。
「一人じめするなんて。ずるい。慰謝料と手切れ金をくれるべき」とか言ってたそうです。つまり金銭トラブルと。
しかも魔動核を見つけた彼はその足で不動産屋に行って豪邸に移ったものだから、彼女が要求に行った時には引っ越し後だったとか。
その後リャンは純粋にデザイナーとして生きていくための資金と材料を欲して活動を開始し、フロリダスを紹介されました。
しかしそれはただの出資者としての付き合いであって、彼の陰謀やら蛮族との宥和やらに賛同していたわけではありません。
ところがミラの方は完全にフロリダスを信頼しているらしく、彼についていけば取り立てて貰えると思っているようです。
思えばリャンは確信犯なだけで別に邪悪でもガメつくもなかったし、ムーテスを恨んではいないのにね。同じ仲間でこうも違うか。
では何故彼はこんなところでうろうろしていたのかというと。
リャン「うん、色々と心の行き違いで嫌われたらしいから……
とりあえず、ルーフェリアに帰って、フロリダスさんにお金をもらおうと思って」
ジーク「…………(頭抱えた)」
ソラ「心の行き違い?」
エア「いや、嫌われたってことがわかってるなら、いいけど……
にしても、お金もらうって何!今、心底本気で言ったでしょう!」
リャン「だって、僕はデザイナーになるための資金がいるから」
メッシュ「困った方向に筋の通った男ですね」
この場合も彼にとってお金は手段であって目的ではない。目的はデザイナーになることです、なんというピュアソウル。
その天真爛漫っぷりで周りに迷惑をかける事も多いけど、かといって見殺しにするのは可哀想だから助けてしまう。
それがこうも憎みきれない人格を作り上げ、ムーテスも「今度だけだぞ」と思いつつ毎回助けてしまうのです。
そして結局彼も同行することになりました。しかもムーテスの馬に乗せてもらったり。
エア「今日の分の狼煙を上げて……と」
リャン「何をやってるんだい?僕は見つかったよ!」
エア「はいはい。あんたはいつも自分が世界の中心にいるんでしょうけど、
わたしの世界の中心はあんたじゃないんだからね!」
リャン「え……それって、ツンデレってやつ?ボクに惚れられても、応えてあげられないよ」
ソラ「来た。天然大暴言」
ムーテス「黙れリャン。命が惜しかったら、黙っておいたほうがいい」
こんな感じで道中イラッとさせてきますが悪気はない。それが余計にタチが悪いけど。
また尾根を越えた辺りで何故の集落を発見しました。今回は以前のような奴隷村ではなく長年定住している様子です。
遠目に見た限りでは普通の人間達が暮らしているようですが、今は特に補給も必要ないし急いでいるのでスルーします。
ムーテス「……く、そうなると、勿体無いことをした気がするんだよね」
ジーク「何かイベントがあっただろうしな、きっと」
それが良い方向に働くか、悪い方向に働くかは分かりませんが、確かに何があったのか気になりますね。
後にこの集落の正体が明らかになるのですが、その時にも立ち寄って良かったのかどうかは謎でしたし。
そして尾根を降りようとしたところでぞんざいズは空から複数のペガサスがやってくる事に気付きます。
ペガサスは5レベルの幻獣であり、翼を生やした白馬の姿をしています。性格は温厚だが主以外に背中を許さない。
空中での移動速度は40となかなかのもの。騎獣としての人気も高く、ライダーギルドで飼育されていることもある。
騎獣として使う場合の適性レベルはライダー5〜7レベル。騎芸"空中騎乗"も必要でお値段2万ガメルです。
特徴として騎手以外にキャラクターを1体《搭載》することができ、《搭載》されているものは独自に主動作が可能。
ジーク「うわーすげー。初めて見たー」
メッシュ「ファンタジーですな!」
GM「ファンタジーですよ!」
ペガサスの数は六騎。それぞれに騎手がいて、一騎だけ同乗者がいてぞんざいズの<誓いのアンクレット>を持っています。
彼らは飛んできた方向からアイヤールの騎士と思われますが、それを隠すためか紋章の類いはつけていません。
しかし一般知識としてアイヤールには飛行系の騎獣を駆る騎手が所属する"蒼穹騎士団"という一団があると知られています。
騎手のリーダーは凛とした印象の少女です。他も全員若い女性だけど彼女は特に若い。
女騎士「えーと、とある人から頼まれたのよね。さすがに飛空船とか持ち出すと、問題が起こりそうだからって」
メッシュ「ある人なのですか。……高貴な?」
女騎士「えー、あー、うん。高貴高貴、超高貴」
ジーク「ミスティン、ホーリィ……ありがとう」
今回の彼女達はぞんざいズをルーフェリアに乗せていく以外に諜報活動の任務も兼ねて出動しています。
今ルーフェリアの国で何が起きているのかを調査し、場合によってはアイヤールも何らかの行動に出るかもしれない。
ここでぞんざいズは五騎に一人ずつタンデムしてルーフェリアの国へ向かいました。
ジークの馬だけ<騎獣縮小の札>で回収し、既に同乗者がいる一騎は報告と同乗者の安全の為にアイヤールに帰還。
リャンには自分達の馬を一頭だけあげて、残りはアイヤールのルーフェリア神殿に届けてもらいますが結構駄目元(笑)
ソラ「ね、名前聞いていい?リーダーさん」
女騎士「ジャスティって呼んで」
本人は特に何も言いませんが、彼女こそは皇位継承権第二位の"天空の姫"ジャスティン・フォストリス・アイヤールです。
ロイヤル・シスターズの中では三女にあたりますね。溌剌とした少女であり、"蒼穹騎士団"の団長でもあります。
姉妹のネーミングとして「ィ」が入っていますね。名前の由来はやっぱりジャスティス(Justice)なら正義そのものですね。
メッシュ「ふふふ、アイヤールがジーク様のモノになる日も近いですな」
ジャスティ「ざけんな?(さわやかな笑顔)」
これで直接会っていないのは"女帝"と"影姫"のみですね。両方とも特殊な立場だから仕方ないけど。
ペガサスの飛行速度をもってすれば山越えもあっという間です。やがて懐かしきカナリスが見えてきます。
ところが街のほぼ全域が氷の天蓋に覆われていました。陽光を反射してキラキラ輝いていて綺麗ですね。
これこそが13レベルのルーフェリア特殊神聖魔法"アイス・ドーム"。氷の天蓋で半径30mをカバーします。
氷は炎属性の攻撃以外は無効化しますが、防護点0のHP100扱いなので炎で攻めれば突破できないこともない。
ただ今回のそれはサイズが尋常ではない。例え戦闘特技《魔法拡大/範囲》を使ったとしても何倍拡大したのやら。
ちなみにこれは2倍拡大で半径+1m、3倍拡大で半径+2mといった具合でSWの頃とは計算方法が変わっています。
更に後に明らかになったデータでは大司教はこの戦闘特技は持っていないのでルーフェリアが張ったのでしょう。
"コール・ゴッド"ならこの特大サイズの天蓋を作ってもらえそうですしね。その効果で敵を倒した方が早そうだけど。
この国では国境の物見から異変の報告が入ると大司教に連絡がいき、大司教が"オラクル"で全神官に伝令します。
これは13レベルの神聖魔法で、半径10kmの範囲内にいるプリースト1レベル以上の神官に声を聞かせるというものです。
場合によっては神官戦士達が住民を避難させつつカナリスに集まり、"アイス・ドーム"を張って攻めるか守るかを判断します。
それがこの国における300年のやり方でした。エア自身初めての事態のようだから久しぶりの緊急事態でしょうけどね。
この事態に一同唖然としましたが、ぞんざいズは降ろしてもらって様子を確かめに向かいます。
ジーク「送ってくれてありがとな」
ジャスティ「うん、わかった。キミたちを送るっていう、任務はこれで終了。あとはこっちで勝手にさせてもらう」
彼女達も独自に調査をして国に報告するのでしょう。それでアイヤールがどう出るか。
地上に降りたぞんざいズは天蓋に覆われていないあたりから調査を開始します。以前立ち寄った宿場町の辺りです。
ソラ「キプロクスが踏んだ店ね」
メッシュ「ムーテスが、最後に私たちに奢ってくれた店ですね」
ムーテス「ああ、懐かしいなあ栄光の日々」
街はすっかりもぬけの殻でゴーストタウンさながら。《探索判定》の結果略奪を受けた形跡は見つかりました。
争った形跡はないので住民は避難できたようですが、こうなるとどこで蛮族と遭遇してもおかしくありません。
続いてぞんざいズは氷の天蓋の方に向かいます。リッタさんやコボルドズも無事だといいんですけどね。
ソラ「ああう、さむいー」←<イヤーラックス>装備
エア「わたしは超気持ちいい。マイナスイオンでてる。ルーフェリア、なんて素晴らしい国」
ムーテス「親もいないし?」
エア「そう、それが重要」
やがて以前キプロクス追跡の際に立ち寄った牧場に差し掛かります。川で溺れたりしたのが懐かしい。
ここも荒された形跡があり、《探索判定》の結果ボガードや足のない種族や成人男性の靴跡等が見つかります。
これを《追跡判定》しようと思った時、1人の男性が転がり出てきます。
牧場のおじさん「ああああ!キミたちは!」
まさかの再登場、牧場のおじさんです。キプロを追いかけている時に馬を貸してくれた人ですね。
家畜を逃がしていたら避難に遅れて天蓋から締め出されていたらしく、涙を流してぞんざいズに抱きついてきます。
蛮族に怯えながら逃げ隠れしてきたのでしょう。久しぶりに会えた人族を前にすれば当然の反応ですね。
ジーク「おっさん、大丈夫か?他に逃げ遅れた奴らもいるんだな?」
牧場のおじさん「ああ。やっぱり何人か逃げ遅れた連中はいるんだよ。
で、備蓄してあった食糧を何とか取りにきながら逃げ延びてきたんだ。
でも、何人か蛮族に捕まった連中もいるよ。もしかして、人質に使われるのかもしれない」
ここでぞんざいズは彼らを匿うために<パジャリガー・スラッシュ・ぷち>を貸してあげます。
入り口は隠して食料を運び込みます。天蓋を張りなおすタイミングで逃げこめればいいんですけどね。
ぞんざいズが遅かったらおじさん達は助からなかった可能性もあるらしいし、イベントを飛ばすのも悪くなかった。
★氷の天蓋前にて……
おじさん達の安全を確保したぞんざいズは氷の天蓋へと向かいます。どうにかして内部とコンタクトを取りたいようです。
ところがつるはしを振るって壁を壊そうとする蛮族の姿がありました。炎属性の攻撃ではないなら無駄な努力ですが。
蛮族は全部で3体いて、その内2体は以前戦ったラミアです。残る1体は毛むくじゃらの大男、イエティでした。
イエティは10レベルの蛮族であり、寒冷地に生息する身長5mの雪の巨人です。全身は白い剛毛で覆われています。
上半身(コア)と下半身の二部位です。上半身はボガードでも御馴染みの《連続攻撃》を使用します。
そして下半身は《攻撃障害=+4・なし》によってコア部位を守るという御馴染みの二段構成です。
ソラは《魔物知識判定》の際に指輪を割って弱点を抜き、炎属性ダメージ+3点を看破しました。
エアの"ファイア・ウエポン"をかけようものなら通常の+2点に加えて+5点もの追加ダメージになりますね。
"セイクリッド・ウェポン"もかければなんと追加ダメージ+7点です。純粋に生命力旺盛なパワータイプなので嬉しい。
あと《弱点看破》を習得しているソラが"ファイア・ボール"でも使おうものなら魔法ダメージが+6点もされますね。
彼我の距離は20mということです。
メッシュ「く、通常移動では3m足りん。は!"ブレス"をお願いします!」
エア「え?器用度上げるの?」
メッシュ「この流れで何で器用度なんですか!敏捷度に決まってるでしょう!」
ついでにムーテスも1mほど足りないので一緒にかけてあげれば3人揃って前線が構築できます。
1ラウンド目
先制はメッシュが危なげなく取り、まずソラが"ファイア・ボール"を撃ちこみます。
そしてエアは前衛三人に"ブレス"をかけ、前衛は通常移動で前進。これでジークは回避力が上がるから無駄ではない。
まず攻撃したのは《ファストアクション》を発動させたメッシュです。4回攻撃を行いますが殆ど通りません。
下半身の防護点は12もありますからね。そもそもの威力が低いメッシュの攻撃だとちょっと力不足ですね。
ジークは普通に攻撃。通常移動のため、魔法の使用要件(制限移動等)を前提とした《マルチアクション》は使えない。
ムーテスは練技と〔風の翼〕と<デスサイズ>の効果まで使って22点ものダメージを叩き出しました。
この状態のムーテスは威力37+17点ですから、7振ると25点とか平気で叩き出すので少ないぐらいですが。
ラミアの片方は自分とイエティにカンタマを唱え、もう片方はムーテスに"ブラント・ウェポン"です。
ムーテス「やめてー!血を吐きながら殴ってるんだよ!こっちは!」
そしてイエティは23(出目11)でメッシュを殴り、《カウンター》は自重したのにMAXダメージ23点。
しかも《連続攻撃》への《カウンター》も失敗して同じMAXダメージ23点を喰らい、残りHP3点。
エア「まずい。これは強化よりも"キュア"が先っぽい」
ムーテス「あ、ごめん僕が庇っておけばよかった」
ジーク「いや、一回くらいはしょうがない。そういうこともある。他の戦闘特技を使ってたら使えないもんな」
ムーテス「ううん、普通に忘れてた。デスサイズに浮かれてたんだよ。
「今日のボクは死神だぜヒャッハー!」って感じで」
一同(爆笑)
ムーテス「危ない危ない。本当に死神になるところだったよ。味方にとって」
そもそも他の宣言が必要な戦闘特技は使ってないのでやろうと思えばやれましたからね。
ただし《かばう》と<デスサイズ>の併用でHP消費は普段より多くなるのでちょっと心配ですが。
2ラウンド目
メッシュの回復はジークが"プライマリィヒーリング"で行い、エアは前衛3人に"ファイア・ウェポン"です。
ただ"プライマリィヒーリング"で17点も回復していますが、魔力+4点なら12点になる筈なんですよね。
そしてジークは《マルチアクション》で通常攻撃、〔運命変転〕まで使ってクリティカルです。
ソラは自らに"ウェポンマスター"をかけて《武器習熟/スタッフ》を一時的に覚えます。
ソラ「これで次はムーテスくんに"ディスペル"かけるから」
ムーテス「ありがとう!それは助かるよ」
これで<マナスタッフ>の効果もあってソラの魔力は10。魔力9のラミアを基準値で上回ります。
こちらは5レベルの真語魔法。武器を扱う戦闘特技を一時的に覚えさせるというものです。
覚えられるのは《武器習熟》《牽制攻撃》《必殺攻撃》《全力攻撃》《挑発攻撃》のどれかです。
ちなみに8レベルの真語魔法にはこれの魔法版の"マジシャン"という魔法もあります。
こちらは《魔法誘導》《鷹の目》《魔法収束》《魔法制御》《MP軽減》のどれかです。
いずれの魔法も重ねがけすることで異なる戦闘特技を覚えさせていく事が可能です。
ラミアの片方はジークに"パラライズ"で回避力を下げ、もう片方はイエティに"ファイア・ウェポン"です。
ジーク「何だよ、拳を火傷しろよ!」
しかしジークはその攻撃を回避。回避したので《連続攻撃》も発生しない。
3ラウンド目
ソラはジークとムーテスにかけられたラミアの魔法をディスペルする事に成功します。
エア「やったわソラ、それが本来のソーサラーというものよ!(感涙)」
ソラ「……でも、今"ファイアボール"撃ってたら、二回も回ったはずだった……」
エア「ちがーう!」
達成値19だったらしいので、必要な達成値20を出すためには出目10なので確かに回ってましたね。
それにしても当然のように出目10出して魔法をかけるとは、流石は秋田GM(笑)。あるいはデータを強化したラミアなのかな。
ジークが"ファイアボルト"で1ゾロ出したりもしましたが、メッシュの拳が回りムーテスの追撃もあって下半身陥落。
ところが上空から何者かの羽音が聞こえてきます。新手だと察したぞんざいズは決着を急ぐ事にしました。
4ラウンド目
ところがエアのカンタマもソラのエネボルも揃って1ゾロ。
エア「全員にカンタマ!……げ、1ゾロ」
ソラ「確実化しないからぁ!」
エア「ここで1ゾロるとは思わなかったんだもの!」
ソラ「イエティにエネボ!……げ、うそ1ゾロ!」
エア「確実化しないからっ!」
ソラ「特技ないもんー!」
ジーク「……もしかして、ネタあわせでもやってる?」
姉妹「超真剣っ!」
それからも応酬は続きますが、回復に忙しいエアはなかなか援護魔法を充実させられず手間取ります。
やはり操霊術師と神官の兼業は手数が足りませんか。イエティさえ倒せればラミアは敵ではないんですがね。
しかもメッシュは予言の通りに《カウンター》を失敗し続けて血達磨に。回避より目があるのに出目は悪いのはお約束。
?ラウンド目
それでもようやく"セイクリッド・ウェポン"がかかります。
ムーテス「すごいよ、エアの支援だけで、ダメージのプラスが7点だよ」
エア「神官としての慈悲の力ね」
ソラ「うそー。コンジャラー入ってるくせに!」
7点中5点は操霊魔法ですからね。これでムーテスは威力37+24点、出目7で32点とか出ますよ。
しかもメッシュの蹴りが決まってイエティはついに倒れますが、ソラはラミアに"ファイアボール"を撃ち込むも倒せず。
そうこうする内に謎の羽音も近付いてきます。この戦いの勝利は確実なのに嫌な予感しかしません。
しかもラミアズのかけた"スリープ"がメッシュとムーテスを眠らせてしまい、足止めされてしまいます。
ラミアA「こ、こうさんしなさーい」
ラミアB「こうふくしなさーい」
強がっていますが2人ともHPは20点切ってて崖っぷちです。それでも逃げないのは羽音が味方だからか。
こっちだってラミアだけなら楽勝だけど羽音があるので逃げたいけど逃げられない。お互いタイトですね。
?+1ラウンド目
そうなるとジークが《マルチアクション》で武器と魔法をトカゲと執事に叩き込んで起こすか。
エア「死ねるかもよ。特に執事。それなら、手早く攻撃魔法を叩き込んでラミアを始末するか」
ジーク「いや。後方のエアとソラが、そのまま前線になる可能性大なんだ、今のままだと。
そうなると、二人は今のうちに全力移動で撤退してもらうという手もあるんだよ」
ラミアだけならじっくり起こしてねっとり倒せばいい。しかし羽音が強敵である場合姉妹が危険です。
ソラ「ここは、前衛巻き込んで"ライトニング"で起こしがてらラミアごと片付ける」
ジーク「俺は耐えられると思うけど、ムーテスの残りHPが10点そこそこなんだ」
ムーテス「うん。回ると死ぬかな。気絶じゃなくて」
ソラ「……さすがに自粛。じゃあ、魔晶石割って"ファイアボール"かなあ」
エア「なんで更に派手になるのよ!」
ムーテスをジークとエアが回復してから"ライトニング"を撃ち込めば耐えられないかな。
ソラの"ライトニング"は一度回ったぐらいなら30点もいかないし。執事が派手に回しそうな気もしますが。
中途半端に味方にダメージを与えてラミアを倒しきれなかっら、今度こそトドメを刺されるかもしれませんしね。
ラミア「て、抵抗するもん、抵抗するもんっ、助けてフィルゲンさまー」
ソラ「う、す、すごく嫌な名前聞いたの」
それでもソラはエネボルを、ジークは"カオスショット"をラミアに撃ちこみますが片方は生き残りました。
エアは倒しきれないと悟って寝ている2人に"キュア・ハート"。2人とも20点前後HPが回復しました。
そしてこのラウンドついに羽音が彼らの背後に降り立ちました。ラミアの言うとおりフィルゲンです。
そして《魔物知識判定》の結果、彼がドレイクバイカウント(子爵)だと判明。しかも名前を持つ魔物っぽい。
ドレイクバイカウントは12/13レベルの蛮族であり、あらゆる点でバロン(男爵)を上回ります。
人間形態では操霊魔法11レベル(魔力15)でバロンの《魔法適性》に加えて《魔法制御》まで使えます。
しかも《竜化》は《瞬時竜化》に強化されており、補助動作で竜形態になって即主動作が可能です。
竜形態の体躯はドラゴネット(竜の子供)に匹敵し、《光のブレス》は範囲攻撃の《燦光のブレス》に強化。
しかもフィルゲンは「SW2.0ツアー ルーフェリア」で名前を持つ魔物としてデータが公開されました。
それによると彼はテラードレイクバイカウント、13/14レベルで"執行者"の異名を持ちます。
操霊魔法12レベルで《ファストアクション》と同等の効果である《先制の一撃》が使えます。
竜形態では《燐光のブレス》のダメージを更に強化した《エネルギーブレスU》が使用可能です。
更に彼の持つ<フィルゲンの魔剣>はHPへの適用ダメージ分MPを削るという"魂砕き"の如く効果を持ちます。
彼を倒した場合このとんでもない魔剣(60万ガメル!)に加え、"フェイダンの救世主"の称号と名誉点100が貰えます。
フィルゲン「遅かれ早かれここに来ると思っていた」
ジーク「いつかは会うと思ってたぞ、こっちだって。……お前結構失敗多いよな」
ソラ「使う部下、考えたほうがいいの」
フィルゲン「遠い国に派遣するのは、どうせ捨て駒だからそれはいい。
確実に成功させたいことだけ成功すればいいさ、このように」
この強敵を相手にしても相変わらずのぞんざいっぷり。例え万全の状態でもまだ勝てそうにない相手なのにね。
彼にしてみればバロンですら捨て駒ですか。どこぞの"指し手"のように結構大胆な打ち手ですね、正にサクリファイス。
ここでフィルゲンがぞんざいズを全滅させる事は簡単です。でも彼は一つ交渉を持ちかけてきます。
フィルゲン「このあたりで、降伏しておく気はないか」
ソラ「条件によるの」
フィルゲン「殺されない」
ジーク「降参しなかったら?」
フィルゲン「まあ。一点だけ俺たち寄りになるだけだ」
操霊魔法12レベル(この時点では11扱い)なら"リザレクション"できますからね。承諾しなければいいけど。
ちなみにこんなに強いフィルゲンが何故ルーちゃんを攫った時はさっさと逃げたかというと、大司教がいたから。
彼はファイター技能だけで13レベル以上ありますしね。ガチで殴り合っても多分勝てません。
手っ取り早く"コール・ゴッド"とかされたら抵抗の余地なく瞬殺です。大司教とタイマン張ったら殺される。
ソラ「まだ、この国滅ぼせてないんだ。はじめまして」
フィルゲン「ああ、はじめまして」←意外と礼儀正しい
彼がぞんざいズを捕虜とすることのメリットは、ぞんざいズのような強い人族は使い道があるからです。
高位の蛮族は<守りの剣>の結界を越えられないけど、だからこそ超えられる部下が重宝されます。
魔神だったり、魔法生物だったり、自分たちに味方する人族や幻獣だったり。色々手はありますしね。
勿論ぞんざいズにはここで降伏してもいい。しかしそれは冒険者としての名誉を損なう事も覚悟しないといけない。
ルール上蛮族に降伏したからといって合計名誉点が減少する訳ではないけど、数値だけが名誉ではありませんしね。
かといって逃がしてもらっても蛮族と通じている疑いをかけられかねないし、自力で逃げるか倒すのが理想ですね。
しかし今はそのどちらもできない以上、命を粗末にせず降伏するのも一つの勇気だと思いますけどね。
ジーク「……俺たちは、あんまり素直じゃないぞ」
フィルゲン「跳ねっ返りは嫌いじゃない。いつでも、裏切るつもりでいてかまわないぞ」
ソラ「あたしたちが降伏したら、この国攻めない?」
フィルゲン「それとこれとは話は別だろう」
ソラ「そーだよねー」
ジーク「本当に、俺たちを生かしておくと、後でどうなるか知らないぞ、フィルゲン」
フィルゲン「そういうのは、むしろ嫌いじゃない。部下にも、いつでも俺を殺して成り代わってみろと言っている」
このように彼は「下克上、上等」「いつでもかかってこい」という人です。忠誠を誓う必要はない。
彼は相手が裏切る事を前提にしている。だからこそ裏をかく事はできても本当の意味で裏切る事はできない。
かなり厄介なタイプですね。まぁ蛮族の頭領なんてそれぐらいの貫禄がないとやってられないのかもしれないけど。
ジーク「いくら俺たちがぞんざいでも、命までぞんざいに捨てるつもりはないからな。
……降伏でいいよな?無駄に穢れを溜めたくないし」
エア「うう……悔しい。蛮族に屈したくない……けど」
まだルーフェリアは陥落していない。大司教もリアも無事だし、自分達も生きている。
それならとぞんざいズはフィルゲンに降伏しました。反撃の機会はきっとくると信じて。
ジーク「後悔させてやるからな、絶対に」
その時彼らのやりとりを聞いていたと思われる者が飛び立つ羽音が聞こえてきたりしました。
それが希望に繋がるか、それとも彼らを更に窮地に追いやるかは今後の立ち回り次第です。