「新米女神の勇者たち(2)」著:秋田みやび/グループSNE 出版社:富士見書房

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第四話 無料で旅をする方法

★四方山話しつつ、成長申告だ!

今回のキャラクターシート

3巻には各PCの詳細な装備が明記してあるので、2巻の冒険との差分を考慮して装備品を先取りで記入しました。

ムーテスのシートも追加しました。彼の能力値は3回成長していると思われますが、どの能力値かは不明です。

仕方ないので技・体・心だけ記入し、それ以外は空欄としました。以後もある程度成長したPCは同様にします。


今回の能力値の成長は以下の通り。

ジーク:敏捷度16→17

ソラ:生命力17→18

エア:知力17→18

メッシュ:知力16→17

姉妹が揃ってボーナスが上がりました。


あとメッシュは指輪さえ買えば知力ボーナスが上がりますね。

メッシュ「……そんなことをすると、所持金が6ガメルに(しくしく)」

ジーク「いいよ、買えよ。こっそりとさ(肩ポン)」

エア「そうね、そのお金パーティ財産なんだから、大事に使ってね」

メッシュ「ええっ!いつから!!」

ソラ「無駄遣いしないのよ……」

ムーテス「なんで、優しいみたいに言ってるんだろう。全然優しくないっすよ

あと<ロープ>も買いなおして<魔香草>購入。メッシュの場合指輪を割る事も考えると今後の出費が嵩むでしょうね。

ちなみに<魔香草>は<救命草>と同様に非戦当時にのみ使用できるアイテムで、MPを威力0で回復する100ガメルの品です。


メッシュ「……うう。泣きながら指輪を買います。えーと何の指輪でしたかな」

ソラ「はい。<アホのマシになる指輪>

メッシュ「そんなんいらんわー!あ、いえ、いりませんでございますよー!!」

パーティ内で微妙にギスギスしてるのは"ヘッポコーズ"の頃からの伝統芸なので。

これでメッシュは<知性の指輪>を購入して知力+3に上昇。魔力が上がり、探索系の判定に強くなりました。


買物といえばジークは今回も宵越しの金を持つまいと苦心しています。

ジーク「正しい金の使い方を教えてくれメッシュ。女の人を買うというのもありか?(真顔)」

メッシュ「むーん。それはジーク様には少々早うござますな(真顔)」

成人が15歳なので大丈夫だとは思いますけどね(苦笑)


ソラ「だから、いい賭場、紹介するってば」←カモられそう

エア「貯金するという道はないわけ?」

ジーク「うーん、そうだなあ。じゃあ、試しにやってみるか。神殿に預ければいいのか?

エア「ええ、ルーフェリア神殿は、いつでもお布施は受け付けておりますよ」

メッシュ「お待ちくださいジーク様!それは返ってきませんぞ!」

エア「ち」

これが怪しい宗教法人ならお布施はなんですが、神様が実在する上に神聖魔法もかけて貰える世界ですからね。

少なくとも魔力分しか回復しない弾丸とかよりは実利がある。まぁ仲間に神官がいるなら微妙ですけど。


ただ無目的に貯金するのが難しいなら何か目標を立ててやればいいんですよ。魔法の剣が欲しいとか。

ちなみにジークの装備である<バスタードソード>は<ソード>Bランクなので5000ガメルで魔力+1に加工可能。

結局彼は<妖精使いの宝石>を購入。ケースだけ買って宝石は持っていないとは、何の為の技能だったのか(笑)

そういえば今まで一度も妖精魔法は使ってませんしね。そろそろ妖精戦士としての真価を見せてくれるのでしょうか。


技能の成長はメッシュがグラップラー2→3、戦闘特技《投げ強化》を習得しました。

元々《投げ攻撃》は二足歩行する部位1つまでのキャラクターにしか通用しませんでした。

しかし《投げ強化》があれば足の数は八本以下で部位2つまでのキャラクターを投げられるようになります。

しかも威力は20に上昇して更に強力になりました。これで馬に騎乗している敵を投げたりもできます。


ソラはソーサラー3→4に成長。ついに使い魔を召喚、鷹のフェイをお供にします。

基本的なルールはSWの頃と同じで、視覚や聴覚を共有し、ダメージは術者にフィードバックし、MPを使用可能。

ただしSWだと本物の動物を使い魔にしていたのに対し、こちらは動物を模した魔法生物となります。

このため落下ダメージは受けず、知覚(暗視等)は術者に準拠し、HPが存在しない等細部が異なる。

種類も猫型、鳥型、蛙型等色々ありますね。フェイは鳥型に属するのでMP5点で移動速度30で飛行可能。


買い物では<幸運のお守り>を購入して戦利品の出目に+1できるようになりました。あと<お洒落な靴>とか<イヤーラック>。

ソラ「そしたら、ラウンドシールドが買えなくなっちゃった。買うんじゃなかったかなー」

エア「待った、ソラ。それは色々順番が違う気がする」

ムーテス「いや、ある意味女の子の買い物らしい本末転倒さ」

そして装飾品は基本的に装備しない。気分で一時的に装備していたりするのかもしれないけど。


エアはプリースト2→3で、戦闘特技《魔法誘導》習得。乱戦エリア内に"フォース"を撃ち込んだりできます。

エア「基本は弓撃つけどね」

ジーク「撃つな。《精密射撃》ないだろ」

そのくせ装備は<ヘビークロスボウ>という説が出ていますし。誤射したら本当に洒落になりません、特にメッシュ。


そして最後に新戦力のムーテスです。最大の特徴はやはり防護点9の《かばう》持ちという点ですね。

その装甲を生かして大抵の物理ダメージはカットしてくれるでしょう。ただし魔法ダメージは勘弁な!

あと地味にレンジャー持ちです。自分で薬を飲んだりして万が一の場合は自己回復も可能となります。


エンハンサーはパーティ初ですね。"キャッツアイ"は3ラウンドの間命中力+1の効果です。

練技はどれも消費MPは3点ですが、この技能単体ではMPは増えないのでMPが不足しがちです。


すると<魔晶石>に頼る事になりますね。3点の<魔晶石>のお値段は300ガメル、SWの旧版ルールを思い出す価格設定です。

旧版ルールだと点数×200ガメルでしたから更に安い。完全版だと点数×点数×100とどんどん高くなっていきました。

一方こちらでは1〜5点は点数×100、6〜10点は点数×200、11〜15点は点数×300、16〜20点は点数×400です。

点数が多いほどに価値は上がり、旧版ルールよりは高くなるけど、完全版ルールほどは爆発しないという価格設定ですね。


期待の新戦力ではありますが、パーティ内のヒエラルキーは決して高くはない。

ムーテス「で、どういう状態でしたっけ。僕が破産して……」

ソラ「あ、うん。頑張ってね。ばいばい(手、ふりふり)」

ムーテス「えっ、あっさり見捨てられた!(がーん)」

エア「弱いものいじめはダメよ、ソラ」

ムーテス「……僕、弱いものなんだ」

早速姉妹よりは立場が弱くなりました。


ムーテス「リルドラケンって一応ドラゴンじゃないっすか。
      それがドラゴン風の爬虫類に負けたままは引き下がれない。爬虫類如きに破産させられるなんて」

ジーク「ああ、それは、お前がドラゴン風爬虫類より弱かったからだろ

ソラ「……一刀両断」

ムーテス「くぅ!し、しかし、ファンタジー的にドラゴンは爬虫類より強くないとおかしいっすよ!」

ジーク「じゃあ、お前がおかしいんだよ

エア「容赦なしね」

ジークよりも立場は弱いか。ちなみにリルドラケンは竜が剣を持てるように進化した種族らしい。

何を持って進化とするかは考え方次第ですが、"始まりの剣"からすれば剣を持てるようになる事は進化なのでしょう。


するとあとはポンコツ執事との対決になりますが。

メッシュ「はっはっは、嬉しいですなあ、私よりも立場が弱い人が現れましたよ

ムーテス「……負けませんよ(ぼそ)」

メッシュ「……ほほう(にやり)」

だからと言って前回の失態の数々が帳消しになったりはしませんからね。最弱決定戦はどちらが笑うのか。


★神殿の噂と、護衛のお仕事

新たな仲間ムーテスを加えた一行はその日も「水晶の欠片亭」でぐだぐだしていました。

現金はあるのでエンク君がいる頃を見計らって料理を注文したりと、すっかり常連の振る舞いです。

ムーテス「ただ僕には、そのご飯を食べる金もない

ソラ「……やっぱり、ばいばい(手、ふりふり)」

ムーテス「はうあ!やはり、金の切れ目は縁の切れ目だ!でもあれは僕が悪いんじゃないっすよ、神が悪いんだ!

ジーク「GM(かみ)が悪いそうだよ」

GM「うーんそっかー。わたしが悪いんだー」

あれはシナリオ上仕組まれていたといいますか、いわゆる強制イベントなので(笑)

ちなみに彼の借金は全て帳消しになっていて、彼自身は今までのジーク達と同等のお金を貰っています。

それでこれだけ素寒貧なのは装備に金を惜しむ事無く注ぎ込んでいるから。<幸運のお守り>だけで2000ガメルとかするし。


ムーテス「何かこの世界の大きなもの、実際にいる神が悪いんっすよ!

エア「何言ってるの!神は悪くありません!あなた"キュア・ウーンズ"がいらないようね」

ムーテス「あ、すんません!めっちゃいります!(平伏)」

ジーク「ムーテス、謝っとけ。俺たちファイターにとって"キュア"は生命線だ。悪くなくとも、謝っとけ

それがなくなるとメッシュの魔力分しか治らない"ヒーリング・バレット"か、手持ちの薬しかなくなりますからね。

多少電波が入っていても確実に治る方が無難。SW2.0になって回復手段が多岐に渡っても神官の安心感は変わりませんね。


あとムーテスの使用人だったルルとメルもリッタさんが預かってくれました。

メッシュ「……おかしい、我らの拠点「水晶の欠片亭」が、どんどんコボルド御殿になっていく」

これで5匹ですからね。人数も増えてきたので引っ越しや家事の手伝いをするコボルド派遣業を始める予定。

きっとキュン君はかぁいいものマニアな人達から一位指名で引っ張りだこでしょう。どこぞのエルフとか。


ムーテス「メル、ルル、そのうち迎えに来るからね(抱擁)」

メル&ルル「きゅんきゅん。ムーテスさま、早く一山当てて帰ってきてくださいねー」

そうしていつか返り咲く日を夢見るなら冒険の依頼を受け、名を上げていかなければなりませんね。

一山当てる事を考えるより地道に頑張った方がいいとは思いますけどね。魔動核発見なんてそれこそ宝くじのようなもの。


そこで今回のお仕事ですが、南にある"石塔の学び舎"カイン・ガラ行きの乗合馬車の護衛です。

現在ルーフェリアとカイン・ガラ間には交流があり、巡礼者等の為に両国を行き来する馬車が出ているという訳です。

本来は片道1週間程ですが、旅慣れない一般人も多いのでおよそ10日間の旅程となり、拘束期間もそれと同じ。

報酬は総額で1万ガメル。前払いとして10日間の食料が渡されますが、乗客と同じものを食べる事も可能です。

それ以外にも蛮族と戦えば危険手当がつく。現地に着けばそれでお役御免、観光するなり別の仕事を受けるなり自由です。


メッシュ「……と、いうことは一人二千五百ガメル。うん、悪くない。まあまあの仕事で御座いますね、ジーク様」

ムーテス「一つ訊いていいかい?なんで報酬四分割なのかな?」

メッシュ「我がパーティには、まだ研修期間中のメンバーがいるからですよ。はっはっは」

ああ、これはアレですよ。"ヘッポコーズ"でいうノリス的ポジションに収まりつつありますね(笑)


とはいえ彼がいる事はパーティ全体の利益に繋がる。特に一番大きいのは《かばう》をして貰えるメッシュ。

ソラ「そう。ちょっと可哀想。だから、二千三百ずつで、どう?」

ムーテス「……ああ、それなら、僕の取り分は八百と。それなら……って、納得すんな、僕!」

ジーク「頭悪いなあ、メッシュ。何言ってんだ。一万割る五は、二千だろ

ムーテス「……一生ついていっていいっすか、ジーク」

ジーク「いいけど俺の傍に立つな。陽が翳る」

こうして多少仲間をハブるのも何だか懐かしいコントですね。まさか中の人が一部共通だったりするのかな。

あとムーテスの一人称が「僕」っていうのも何だかいいですね。イカつい外見とのギャップ萌えがある。


メッシュ「ふふ、さすがジーク様、あっという間にリルドラケンを従えるとは、これぞ覇王の資質(感涙)」

ソラ「純粋に、自分の従者の計算能力、疑っただけ、かも?」

メッシュ「え。もしかして、このヒエラルキーの最下位、私ですか?

ムーテス「これからも一緒に頑張ろう、この環境を抜け出すために!(左肩ポン)」

早くも最弱対決はメッシュの自滅で終わるのか。人を貶めようとすれば自分に返ってくるのです。


メッシュ「くそぅ!ジーク様の一の家来は私ですよ!」

ジーク「何を言ってるんだ、メッシュ。お前は家来なんかじゃないぞ。
    (右肩ポン)……『トモダチ』だよ(すっげえ胡散臭い表情)」

ムーテス「うわあ、すごくいい台詞なのに、何だか怖い!」

メッシュ「友達!私はジーク様の友達!(嬉しそう)」

実際の所そんな感じではないかと。友達のような、従者のような、家族のような、そんな存在だったらいいな。


要はこの依頼で旅費がかからず外国に行ける訳です。ちなみにこのパーティには2人ほどカイン・ガラと縁のある人がいる。

1人はムーテス、魔動核を掘り当てたのはカイン・ガラにあった遺跡なので。正に冒険者ドリームの体現者、そして失墜者

もう1人はソラです。何しろカイン・ガラにある学校がソラの母校であり、母親はその学校の先生をしているのです。


結構いい仕事なので彼らも乗り気です。

ジーク「いいんじゃないか?出会いもあるかもしれないし」

メッシュ「若い巡礼者も乗っているかも知れませんよ、ジーク様」

ジーク「男女比四対三を徹底しているとか」

ソラ「もしかして、その馬車、ピンク色だったりする?」

御者が帰りのチケットとか持ってたら完璧ですね。


勿論冒険者を雇う以上は山賊や蛮族との遭遇も予想される訳で、観光気分で受ける訳にはいきません。

メッシュ「ともあれ、馬車を無事にカイン・ガラに送り届ければいいのですな」

GM「ちょっとニュアンスが違う。「乗合馬車の乗客の安全を護って、彼らをカイン・ガラまで送り届けてください」」

一同「……ち(残念そう)」

馬車だけ届ければいいってものじゃありませんからね。

オリエント急行と見せかけて誰もいなくなってしまうのは駄目ですよ。


ちなみに馬車は満員で10人で、乗客は7〜8人です。それ以外に御者もいるのでその全員を護衛する必要がある。

ソラ「大体、馬車の中が一人減ると報酬一割減って、外が減ると報酬は増えるのね

ムーテス「うわ、想定した以上にサバイバルだ。何としても生き残らないと」

外が減るというのは護衛をする人が減るということですもんね。それこそ1万ガメルを四分割できます(笑)


こうして一行はこの依頼を受ける事にしました。出発前にリッタさんはムーテスにもエンブレムを渡しておきます。

ソラ「おそろい、おそろい。何もしてないのに」

メッシュ「本当です、何もしていないのにいきなりですか、女将」

リッタ「だって知名度あるもん。うちの冒険者だって思われたら名誉だしー」

メッシュ「確かに知名度はあるでしょう。しかし、その知名度もあんまりいいものではないのではという……」

ムーテス「いや、まだ大丈夫!まだ周囲に知られてない!」

未だに世間では"空の提督"ムーテスとか呼ばれてたりするのかもしれませんね。名誉点は低いのに。

それが今となっては金欠で食事もできず、他人の落とした小銭を探しているとは、落ちぶれたものです。




出発前にエアが一人で神殿に水垢離に出かけました。ところが神殿の高司祭達はなにやら落ち着きがない様子。

そこでエアは高司祭の一人である父親に話を聞こうとしましたが、どうやら折り合いが悪いらしく渋面。

ただし父親の方はエアの事をちゃんと娘として愛しているので、エアの方が空回りしてるだけにも見えます。

また妹は母親と友達親子よろしく仲がいいのに、何故かエアはその母親とも仲が悪いらしい。複雑な家庭ですね。


メッシュ「「もう、ナイトメア同士で結婚したのに、なんでエルフが生まれてきたのかしらー」とか言われてたんですか?」

エア「うわ!それはそれで、衝撃家族!いや、そうじゃなくて。パパは愛が重すぎるのよ(ぶつぶつ)」

ああ、つまりエアは父親似ってことですね。娘ラブだけどウザがられる父親と、妹ラブだけどウザがられる姉の対比です。


ちなみに父親の名前はずっと後で明らかになりますがカームさんといいます。娘と微妙に接点がある名前ですね(凪)。

あと別居中の母親の名前はクロノアさんといいます。まさか「風のクロノア」が元ネタだったりするんだろうか。

カーム「パパにおねだりするかい?(にこにこと両手を広げて)」

エア「くっ、何だかむかつく」

カーム「パパにおねだりするかい?(にこにことカモン)」

エア「……ふ、言いたいことがあるなら、聞いてあげてもよくってよ」

ここでカームさんは神殿の最高責任者である大司教が行方不明になっている事を娘にこっそりと教えます。


彼の名は"湖の大司教"バトエルデン・エラーです。「大破局」時代から生き続ける人物の一人です。

フォーセリア風に言うなら最高司祭のような地位にある人ですね。ルーフェリア信者の中で最も徳の高い人のはず。

それだけに大司教は極めて高レベルの神官戦士であり、おいそれと誘拐されるような人物ではありません。

後に明らかになるデータではプリースト15/ファイター13とかですしね。実力行使は相当厳しいでしょう。

それなら自分の意思で姿を眩ませたと考えたいところですが、「何の為に?」となるとやはり謎ですね。


★添乗員と乗客たち

そして翌朝、大司教の件は内緒にしてエアは仲間達と集合場所に向かいました。

現地には大き目の乗合馬車が止まっていて、乗客の荷物を載せるであろう荷車がついていました。


彼らを出迎えたのは添乗員兼御者の男性二名です。交代で客の世話と馬車の面倒を見る人達です。

片方は人間のコルツさん。剣をぶら下げているのでファイターかフェンサーと思われます。

もう片方はグラスランナーのイストさん。楽器と薬を所有しているのでバード/レンジャーと思われます。


ムーテス「……グラスランナー……(生暖かい表情)」

ソラ「……この依頼、失敗に終わったかもしれない

メッシュ「た、確かに。当てになんねえ……あ、いや、当てになりそうもございませんな」

確かにグラランはお気楽・楽勝・責任感皆無、自分の好奇心の赴くままに行動する種族です。

レンジャーとしての実力は確かでしょうが、この手のツアーコンダクターに向いているとは思えません。


これに関しては相棒のコルツさんがこうフォローしています。

コルツ「え、多分大丈夫です、概ね。きっと(目逸らし)」

実は彼らはカイン・ガラからこのルーフェリア行きの便でも添乗員を務めています。

ところが蛮族との戦闘中に呪歌"ヌーディ"を歌って、敵はおろか護衛や乗客の服まで脱がせたそうです。

お陰で帰りの契約は破棄され、こうしてジーク達を新しく雇わねばならなくなったという愉快なグラランです。


ちなみに"ヌーディ"はバード5レベル以上が必要な呪歌なので、冒険者レベルはそこそこ高いグラランですね。

この呪歌はSW2.0になってから追加されたもので、抵抗を破った対象の装備を外させる効果があります。

「武器」「盾」「鎧」「(装飾品の)任意の部位」「衣服」等を歌詞で指定して脱がせる事が可能です。

ただし脱がせる装備を変える毎に精神抵抗を行うので、全ての装備を外させたとしたら複数回抵抗を破った筈。

しかも一度外した装備は奏者の目が届かない所に行くまで再装備できないというのだから堪りませんね、色んな意味で。


メッシュ「……ふふ。聞いたことがあります。グラスランナーとは、放浪する種族。
      ある日、いなくなったとしても、誰も驚きません

エア以外の一同(親指ビシッ!)

エア「こらこらこら!」

まぁ面倒な事をされたくないのは分からなくもありませんが、一応彼も護衛の対象ですからね。


これには常識人?のエアが差別はいけないと主張します。

エア「大体、この世界……グラスランナーだって神を崇めることが出切るの

ジーク「恐るべし。宗教心の有無は全てを許すのか」

そう、実はSW2.0のグラスランナーに習得できない技能はない。よって魔法使いになる事も可能なのです!

ただし種族特徴〔マナ不干渉〕によりMPが存在しないので、魔晶石等に頼る事になりますけどね。

中には使い魔のMP目当てにソーサラー技能を4レベルだけ習得するグラスランナーもいるようですが。


エア「あ。タビットはもふもふふかふかで可愛いから、宗教心を持っていなくても、OK」

メッシュ「……何故でしょう、身体に震えが走ります(がくがくぶるぶる)」

タビットとルーンフォークは種族的にプリースト技能は習得不可です。

ルーンフォークは人工生命だからでしょうか。神の声が聞こえず、妖精の姿も見えない(フェアリーテイマーも不可)。

タビットは原因不明です。彼ら自身は「呪いをかけられた神の末裔だから」と自称していますが真実は謎です。


そうしていると乗客も集まってきます。


まずはお金持ちの中年男性エルビーさん。お腹の出た恰幅のいいおじさんです。

ジーク「金持ち!めっちゃ狙われるだろうが、山賊に!」

メッシュ「まったくです。こういう人は、自分で警護を編成して、個人旅行をお願いしたいものですな」

ソラ「……迷惑」

ムーテス「何言ってるんすか。有力者。カタカナで書くとセレブ
      友達になっておいて損にならない筆頭!あ、僕この人に常時《かばう》宣言しとくんで

ソラ「……似たようなこと考えてたのに、先に言われた」

次はその従者であるフォントさん。エルビーさんの荷物を持ったりしています。


あと顔見知りの毛玉が2人ほどいました。

モーブ「あー。みなさん、どうもー。先日はお世話になりました」

エア「あ。ふらふら〜〜。ちっちゃいのにぎゅむー」

ムーブ「おねたん、くるちー」

ジーク「オタビット兄弟!

どうやら兄弟のコミュニケーションを図ろうと他の家族がいるカイン・ガラまで旅行に行く様子。

ついでにぶっ壊れたフラービィ・ゴーレムも梱包して持ってきています。師匠に修理してもらうつもりらしい。

それならいっそ新しく作ってもらうか、自分で作れるようになるまで勉強し直した方がいいかもしれない。


ジーク「でもまあ、儲けものだよな。援護してもらえるぞ」

GM「彼、一応客ですから」

ジーク「……モーブよ、お前俺たちに、借りがあるよな?(にやり)」

モーブ「は!わかりました。MP尽き果てるまで、護衛させていただきますううぅ〜〜(平伏)」

むしろ今回のムーテスの《かばう》枠はどこぞのエルフから弟君を守るのに使うべきなのでは(苦笑)


次の客は老夫婦のニールさんとオデットさん。そして歳の離れた娘のルーちゃんです。

ニールさんは賢神キルヒアの<聖印>をぶら下げています。ルーフェリアには珍しい敬虔なキルヒア信者ですね。

ルーちゃんはソラより少し年下の娘さんですが、今はお父さんに背負われてうとうとと眠り続けています。


エア「お嬢さん、ご病気なんですか?」

ニール「え、あ、はい……原因不明の眠り病で……目が覚めないんです」

メッシュ「ほほう。それは、どこに起動スイッチがついているのかわからないということですね。捜して差し上げましょうか?」

ムーテス「え、冬眠でしょ?」

お前らと一緒にするなポンコツ&トカゲ。


だから両親は研究施設の整ったカイン・ガラでルーちゃんの事を調べてもらおうとしている訳です。

ソラ「……、この子に魔法使ってみていい?」

メッシュ「え、"エネルギー・ボルト"ですか?」

ソラ「何で。"センス・マジック"何か、魔法の影響を受けてるのか、確かめてみるの」

メッシュ「いえ、出てきた美少女ライバルの息の根を、即座に止めるのかと

ソラ「……それも、ありか」

エア「こら!」

しかし魔力は検出されません。となると本当に病気か、毒か、未知の何かか。

カイン・ガラには様々な系統の研究施設が集まっているので診察してもらうには絶好の場所です。


あと若い巡礼者のセインさんも来て、これで全員です。御者が2人、乗客が8人ですね。

巡礼者が結局1人しかいませんでしたが、ルーフェリアに来た人はそのまま修行する人が多いんだとか。

エア「そうそうルーフェリア神殿名物、滝修行で背骨折る一般人が多いのよねー

ジーク「……生きて帰れぬ、水神神殿修行、恐るべし」

それは〔優しき水〕があってもやっぱり危険な修行のような……。


★奇妙な眠り姫

乗客が全員集まったところで出発です。

ソラ「このお客さんたち、長期外国旅行用の保険、入ってるの?」

GM「ていうか、皆さんを雇っていることが保険ですから」

ジーク「はっはっは、それはそうだ。一本とられたな」

護衛の方法は馬車の前後を歩く形になります。基本は2人1組で余った人は休憩です。

必然と前衛と後衛のコンビになる事が多く、ムーテス&ソラとかジーク&エアで組んでいます。


ソラ「前衛で、一番硬いから、安心。前から捨てドラゴン欲しかったし。がんばって、育てる決意をしたの」

ムーテス「捨てられてないから!」

ソラ「立派なドラゴン、なってね?(よしよし)」

ムーテス「聞いちゃいないし」

そしてジークの使い魔(メッシュ)はソラの使い魔(フェイ)と一緒に馬車の中と。


旅の間は特に眠り続けるルーちゃんを気にかける事が多く、自然と彼女の身の上話を老夫婦から話されました。

ムーテス「生まれつきこうなのかい?」

ニール「あ、いいえ……ルーはその、養女なので」

実はルーちゃんは身元がはっきりしていません。養女にしたのは病気がわかって不憫に思ってのことでした。

元々老夫婦には子供がなく、湖岸の別荘で過ごしていたところ、嵐の日に湖に浮かぶルーちゃんを見つけたのです。


メッシュ「でも、何故かなかなか目が覚めない」

エア「信心が足りないせいかしら」

これがある意味正解だったりするんですよね……。


ちなみに種族は人間のようです。食事は口元にスプーンで運ぶと雛鳥のように食いつく

ソラ「やりたい!(挙手)」

メッシュ「それじゃ、変な動物みたいではないですか!」

ムーテス「いや、ちょっとやってみたいっすよ。ここは当番制でひとつ」

これには老夫婦も恐縮していましたが、当人達はとっても楽しそうだったので問題ありません。


ソラ「……次は、この唐辛子……上手くいけば目、覚めるかも……」

これは両親が涙目で止めました。あと熱々のおでんとか面白そうですね、ダチョ○倶楽部みたいで(笑)


旅そのものは国境を過ぎるまではのんびりとしたものです。たまに森の上にキプロクスの首とかが見えますけどね。

メッシュ「……隠れましょう。何となく気まずいです」

立て札に「キプロクス注意」とか書かれていたりしますし、最早「クマ出没注意」みたいなものですかね。

ちなみに例の親子は北の国境にいる筈だから、南に向かって旅をしている以上は遭遇しないと思います。


その間の食事はイストが作ってくれました。

イスト「皆さん、どうしますかー?ボクのご飯、食べますかー?」

これがなかなか料理上手で好評でした。本人はバードでもあるのでルーフェリアの童歌や聖歌も歌って楽しませてくれます。

こういう娯楽面に限ってはグラランは適任ですね。まぁ料理上手というスキルはちょっと珍しいかもしれないけど。


旅を続ける間もルーちゃんとのコミュニケーションを取り続け、老いた両親に代わって背負ったりもしてあげました。

するとルーちゃんは少しだけ目を覚ます事がありました。熟睡という程ではなく、まどろんでいる程度の浅い眠りですね。

ルー「……ありがと、ございます」

そう言ってふやっと笑ったりして可愛い。ちょっと拙い感じなのが更にいい。


ここで少し気になった一行は彼女を少し観察しました。すると掌や足の裏がぷにっとしている事に気付きます。

子猫と親猫の肉球の質が違うように、この年代の子供にしてはあまりに未発達です。まるで生まれたての赤ん坊のようです。

ジーク「……こんな女の子が、世の中にはいるんだ。ちょっとドキドキするな」

ソラ「何だか、ムカッとしたの、お姉ちゃん」

エア「そうね、何だかわたしたちが、意識する対象外みたいでむっとするかな」

そりゃあこの姉妹はジークより年上ですから(笑)


しかもルーちゃんの覚醒は少しずつ強くなってきて、見るもの聞くものの全てを新鮮に楽しんでいました。

彼らの話に耳を傾けたり、あちこち見回したりと、最早まどろんでいるだけでなくかなり覚醒している様子。

老夫婦「こんなに、ルーが元気そうにしているのは初めてかもしれません

今までは本当にぐっすり眠っていたようですから、これだけでも赤ん坊が立ち上がったような驚きがあります。


メッシュ「では、ジーク様の武勇伝を、あることないこと少女に流し込みましょう」

ルー「くー(ぱた)」

メッシュ「……は?」

GM「メッシュの話を聞きだすと、寝てしまいます

ソラ「あたし、この子好きかも。自分に正直な子、好き」

他にもメッシュにもたれて眠っている事が多いらしい。あとオタビット兄弟を抱いて寝ている事も多い、正直な子ですね。


そして彼女の変化は留まる事を知らず、「あれ何?これ何?」と能動的に質問をするようになってきます。

特にエアには懐いていて、後をついて回ったり、エアの真似をしてお祈りをしたりと、最早完全に覚醒するようになりました。

これには両親も驚いていました。ここまで活動的な娘を見たのは初めてらしく、顎も落とさんばかりです。


エア「……つい、世話焼いちゃう。もう、ちゃんとボタン締めて。パンくず零さないのっ」

ソラ「これで、お姉ちゃんが妹離れをしてくれる。……けど、何となく面白くない」

でもソラ自身も妹のように彼女を可愛がっていたりと、すっかりパーティ共通の妹分となりました。


ソラ「……つい、真語魔法教えたり、しそう。"エネルギー・ボルト"の撃ち方講座、急遽開設」

メッシュ「「ああ、それなら十回ほど唱えられます」とか言い出しますか?」

ムーテス「ちょっと待った!その時点でMP50なんだけど!」

流石にそこまでの謎パワーの持ち主ではありませんが、不思議な魅力のある女の子ではあります。


あと嗜好としてはキラキラしたものが好きらしく、ジークの宝石や店のエンブレムに興味津々。

ジーク「いいよ、俺の宝石一個やる」

メッシュ「ジーク様!それがないと妖精魔法が唱えられないでしょう!」

ジーク「え、何か不都合あるっけ?」

メッシュ「……まあ、まったく、何の不都合もなさそうですな」

ジーク「一個百ガメルだし。はい」

ルー「大事にするね、ジーク

<妖精使いの宝石>はこの時のルールでは1個50ガメルですが、多少いいものを購入したのかもしれない。

後に「ウィザーズトゥーム」でルールが改定され、契約する妖精のランクに合わせてより高価な宝石が必要になりました。


ソラ「……狙ってたのに(ふてくされ)」

メッシュ「正攻法で訴えれば、もらえたかもしれませんな」

ソラ「それはそれで、面白くないの」

ジーク「可愛いなあ、妹っていたらこんな感じなのかなあ、エア」

エア「そうでしょう、可愛いでしょう、妹って

ここにきてソラの方でフラグを立てていたりしますが、"旗折りの"ジークが相手では分が悪いですね(笑)


★国境外だ!

そんな和やかな旅でしたが、国境を出ると気を引き締めねばなりません。

街道は存在しているものの、舗装もされていない荒れた道です。ただ旅人によって踏み固められただけですね。

ここからは山賊や蛮族の襲撃を受ける可能性も高くなる。ていうか何事もなかったらシナリオ的に面白くない(先読みするな)。


すると道中でさっそくスカウト+知力の判定を振る機会がありました。

エア「レンジャーは関係ないのね。(ころころ)だめ」

ジーク「俺も、平目で7だもんな」

メッシュ「(ころころ)はっはっは、私もジーク様に御付き合いをして、7ですよ!平目じゃないですが!(泣き笑い)」

ムーテス「……噂に聞いてたけど、酷いっすね

メッシュ「うるさいですよ!しみじみ言わないでいただきたい!」

何故屋外なのにレンジャーは無効かというと、スカウト同士の符号に気付くかの判定だったからです。それに失敗したと。


そして3日目の夕飯を迎えます。メニューはオムレツときのこのスープで、美味しくいただきました。

ところがここでまさかの生命抵抗です。これは目標値15と高くてエア以外失敗、まだ何の影響もないけど何か起きそうです。


更にレンジャー/スカウト+知力の判定を行いました。

ムーテス「(ころころ)あ、6ゾロ」

メッシュ「ふふ、よいですよリルドラケン。その調子で、ジーク様のお役に立つのです(偉そう)」

ムーテス「がんばってるよ。で、そこの執事さんの出目は?」

メッシュ「……7。(しくしく)平目じゃないのに、7……

ソラ「今日も遺憾なくポンコツっぷり、発揮してるの」

メッシュの基準値は3なので、さっきから4ばかり出しているという事ですか。4を振る確率は10を振る確率と同じなのにね。

ここでムーテスは森の奥に怪しい光が瞬いている事に気付きました。どうやら何者かが人為的に信号を送っているらしい。


そしてその意味を理解するのは最初の判定と同じくスカウトのみにできる事ですが。

ムーテス「あ、うちのパーティ、スカウトいたんだっけ?(真顔)」

エア「一応いる。時々……訂正、しばしば不具合起こすのが問題だけど(真顔)」

メッシュ「ふふ、スカウトの本領は、誰にも気付かれないことです……
      私は、十二分に、その本領を発揮しているということですね」

でもその信号の意味に気付く判定も失敗。スカウト+知力だったんですが、もう涙で前が見えない。

生命抵抗も入れると計4連続で失敗していますしね。しばしば不具合を起こすというか、稀に正常に動作するが正しい。

あとスカウトの本領は誰にも気付かれない事かもしれませんが、同時に自分だけは異変に気付くという大前提もあります。


結局相手の意図は不明でしたが、何らかの襲撃があるであろう事は予想できます。

一行は特に警備体制を整え、しっかりとローテーションを組んで不寝番を立てて夜に備えました。

ところがここに来て先程の生命抵抗の意味が判明します。遅効性の眠り薬を盛られたようです。

エア以外の人達はみんな泥のように熟睡。エアがどんなにゆさぶっても起きる気配がありません。


すると数名の足音が聞こえてきて、覆面をした山賊と思しき男達が現れます。

ソラ「くー。捨てドラゴンに凭れて、寝てるの」

メッシュ「……機能停止中です。く、こんなことなら
      ルーンフォークは睡眠不要にすべきと強く製作班に主張しておけばよかった!」

エア「は!ここは伝家の宝刀……狸寝入り!

賢明な判断ですね。6〜7人の集団相手に1人で反抗したってどうにもなりません。


すると山賊達は彼らを乗合馬車に放り込み、何処かの洞窟に拉致しました。

更に剣や指輪等の装備を解除し、戦闘員と一般人を別々に個室に監禁しました。

鎧は脱がすのが面倒なのでそのままで、服の中に隠してあったお守り等はそのままです。

ただ発動体等の魔法を使う為に必要なものまで取られてしまったのは痛いですね。

エアは咄嗟に口の中にでも<聖印>を隠しても良かったかもしれませんが、気付かれたら大変ではある。


ちなみに鎧を脱がす手間ですが、呪歌"ヌーディ"では防護点ラウンドを要する事になっています。

するとムーテスの<チェインメイル>で6ラウンド(1分)ですか、頑張れば脱がせられたかも。

そうすると防護点0のメッシュの<ポイントガード>なんて1ラウンドもかからず脱げるという事ですか。




山賊達の足音が遠くなるとエアは寝た振りをやめて起き上がります。

ここはダンジョンの一室と思われる岩の一室。この場にいるのはエア達5人だけです。


薬を持って馬車ごと誘拐という手口から察するに計画的犯行であり、ただの物取りではなさそうですね。

それにただの物取りならその場で金目のものを回収して、場合によっては殺してお終いでしょうしね。

初めから誘拐が目的となると、誰が目的かなのか。金持ちのエルビーさんの身代金誘拐かもしれないけど。


そうして考えていると、彼らに薬を持ったと思しき犯人がやってきます。

エア「……何しにきたの」

イスト「あ、起きてた。すごいじゃん、俺の薬に抵抗するなんて。ごめんな?こっちにも色々事情があってさー

生命抵抗の目標値を決める時にGMはサイコロを振っていましたからね。

きっとイストのレンジャー技能を使って判定をしたのでしょう。それが思いがけず出目が良くてこの有様です。


イスト「でな。申し訳ないと思ってる気持ちの一部」

そう言って彼は<魔法の発動体>や<聖印>を出します。どうやら掠め取ってきたらしい。

でも彼が犯人とグルなのは本当で、"ヌーディ"で他の護衛を脱がせたのも怒らせて契約を破棄させるためでした。

何しろ彼らは6レベルと結構強いパーティだったので。山賊達では返り討ちに遭う可能性が高かったのです。


では何故彼がこんな事をしているかというと、家族を人質にとられて仕方なくやったらしい。

合図を待って食事に薬を盛り、全員を眠らせて速やかに拉致。そしてこのダンジョンの各部屋に監禁する計画でした。

エアが起きていた事を除けば計画は概ね成功しました。あの時メッシュが符号に気付いていれば何か変わったかもね。


エア「何で、わたしたちに先に相談するとかしなかったの?

イスト「オレの行動、見てるやつが乗り込んでるって、言われてたからさ」

エア「誰ー!」

イスト「わかんない。でも、できたら、みんな助けてやってくれよ。虫のいい話だとは思うけどさ」

内通者が2人もいたわけですか。1人はイスト、ではもう1人は?


しかし悔やんでいても仕方ない。ここは彼から少しでも多くの情報を引き出して脱出しないと。

エア「とりあえず、情報を全部ゲロりなさい。そうしたら、少しは情状酌量の余地と、司法取引的価値を量って、
    次に会ったら全殺しのところを八割殺しに負けてあげてもいいですよ……と、ジークが言ってます」

ジーク「……言ってねえけど、言いそうで悔しい」

イスト「そこを何とか半殺しくらいでお願いしたいんだけど」

まず敵の構成ですが、どうやらボスと山賊の連中は仲がよくないらしい。

ボスはターバンを巻いて巨大な剣をぶら下げた男で、元々山賊達の仲間ではなかったらしい。

更にここは魔剣の迷宮であり、理不尽な罠もあるらしい。イストもそれが危なくて内部の構造には詳しくない。


この世界には様々な魔剣が存在しますが、力のあるものは自らの持ち主を求めて迷宮を作り出すことがあります。

こうして作られたのが魔剣の迷宮であり、内部には様々な魔物が召喚されたり、理不尽な罠が仕掛けられたりします。

その迷宮の内部は魔剣の性格の影響を受けて、強力な魔剣ほど難易度の高い迷宮を生み出す傾向にあります。

またより強い持ち主を呼び込むために財宝もまた用意される事があり、そのお陰で迷宮の挑戦者は絶えない訳です。

そして迷宮の最深奥には迷宮を作った魔剣が鎮座し、そこに辿り付いて魔剣を手にする事でその人物は魔剣の持ち主となるのです。


なお、ルールブックTによれば「前の持ち主の意識を反映させて」迷宮を作るとあります。

魔剣を他人に渡したくないという怨念や妄想が結実し、魔剣を迷宮に閉じ込め、それ故に罠や魔物を設置してしまうんだとか。

もしそうなら迷宮の傾向というのは必ずしも魔剣の性格だけで作られるのではないのかもしれませんね。

同じ魔剣でも前の持ち主の執念が強ければ、それだけ恐ろしい迷宮を生み出してしまう事があっても不思議ではないのかも。


もっとも、彼らがいる迷宮は既に魔剣が存在しない枯れた遺跡なので、魔剣や財宝の類いは期待できませんが。

それで罠や魔物が健在だとハイリスク・ローリターンという、ある意味一番理不尽な迷宮になりますけどね。

リスクとリターンが比例するのがダンジョンへの挑戦者を絶やさないコツですね。この世界の魔剣はその辺をよく分かってる。


最後にイストはこの部屋の鍵を渡してくれます。

イスト「後は適当に逃げてくれよ。俺も、義理は果たしたんだし」

エア「……むー……あなたにも事情があるのは察しました。でも、だからと言って許せることではありません

イスト「うん、だから、みじん切りにされない内に逃げようと思ってる

それが賢明でしょう。できれば家族を連れて何処か遠くへ逃げて全部忘れるべき。元々グラランは放浪する種族です。


エア「今はできる限り遠くへ逃げなさい。その後、こちらの力が及ばず、
    もし仲間や乗客に何かあったら、どこまでも追いかけてあなたを断罪します

イスト「が、がんばれよっ、全員の無事を、ルーフェリア様にお祈りしておくから」

エア「祈りなさい。……あなた自身のために(にっこり)」

いっそ罵倒してくれた方がマシな怒り方ですね。


それからエアは時間をかけずに脱出しようと、"キュア・ポイズン"で妹を解毒して起こします。

ソラ「……うー……お姉ちゃん、うるさーい。もう、見張りの時間ー?(むにゃむにゃ)」

現在の彼女の魔力は6ですが、出目9出してアッサリと達成値15を叩き出すあたり流石でした。

あと他の人達も"キュア・ポイズン"で解毒したんでしょうか。しかも達成値15ばかり出して。

1回あたりの消費MPが3点とはいえ、そう何度もかけられる程MPに余裕はないはずですが。


そして仲間が全員起きたら脱出開始です。武器がないのはつらいので、まずは装備を取り戻すのです。

あとジークの<妖精使いの宝石>以外の<魔法の発動体>や<マギスフィア>は戻っているので魔法は使えるのが大きいですね。

メッシュ「ふふふ、しかしここは私の出番のようですね。武器がなくても殴れますよ」

確かにここはグラップラーの出番ですね。「クロノトリガー」で黒鳥号に乗り込む時にエイラを連れて行くようなもの。

まぁ素手で殴る事はジークとムーテスにも可能ですけどね。<パンチ>は<格闘>Bランクの武器で威力0ですが。

あとムーテスは<尻尾>で攻撃可能ですね。威力11となかなかのものです。勿論グラップラーの戦闘特技も凄いけど。


ここを攻略しても得られるのは命だけで、財宝はないというのが癪ではありますが。

ムーテス「……テンション下がるなあ、お宝なしか」

ソラ「でも、ここ、根城にしてる山賊の宝、あるかも」

ムーテス「あ、ちょっとテンション上がった

エア「護衛の人間もいるし。なにより、彼らを無事に救出しないと」

ジーク「すでにイストが外れてるんだ。これ以上減ると、報酬も減る

ムーテス「うあ、めっちゃ士気上がった。背水の陣的にだけど」

メッシュ「意外と簡単ですな、ムーテス」

この場合イストの裏切りも報酬に影響するのだろうか。むしろ危険手当をつけて貰うべきかと。


★剣の理不尽な迷宮

イストの鍵を使って部屋を出た一行は螺旋状に伸びたスロープ状の通路に出ました。

通路は上にも下にも繋がっていて、湾曲しているので先は見え難い構造となっています。

通路の外側の壁に扉が付いています。全体図を見ると円筒状の遺跡という訳ですね。


実は彼らはその中腹にいて、扉は上に2つ、下に4つ存在しています。

どちらから攻略するのも自由ですが、できれば装備を取り戻すなり奪うなりしたいところですね。


ソラ「そういえば、フェイは?あたしの、使い魔」

フェイは人に慣れた鷹に見えたのか、鳥篭に入れられているのが視覚を通して確認できます。

フェイのいる部屋にはベッドがあり、そこにはルーちゃんが横になっています。また熟睡している様子。

ただし部屋の四辺には扉がついておらず、遺跡内の何処に存在する部屋なのかはフェイの感覚からは不明です。


ソラ「危険……ていうか、ベッドに一人って、すごく、待遇いい?」

エア「そういえば、わたしたち、十把一絡げに牢屋だったものね」

ジーク「ともあれ、山賊から装備を奪い返すぞ

指輪なんかも奪われているのでちょっと不安ですしね、主にメッシュの《先制判定》が。

あとムーテスは指輪の恩恵で皆と移動速度を合わせています。それでも移動速度12はパーティのドベですが。


ここから彼らは大事なものは奥に隠すという推測で下に向かいます。

その前にダンジョン内ということもあるので《聞き耳判定》をしておきます。

ジーク「(ころころ)9。いいさ、メッシュに任せる」

メッシュ「(ころころ)はい、私は6です」←出目3

エア「相変わらず絶好調ね(冷ややか)」

メッシュ「……自分でも、素敵すぎると思います……(しくしく)」

結局何の音も聞き取れませんでした。しかたないさ、メッシュだもの、みつ○。

あと自分達のいた部屋の扉にはソラが"ロック"をかけて発見を少しでも遅らせる細工をしておきます。


スロープを降って最初に見えた扉は牢屋と同じ薄い扉でした。ベニヤより少しマシという程度です。

ここでメッシュは再度《聞き耳判定》をして、部屋の中から共通語の会話を聞き取ることに成功しました。

山賊A「あーもう、あいつ早く出て行ってくれないかなあ」

山賊B「ほんとほんと、息が詰まってどうしようもないや」

例の仲の悪いボスのことを毛嫌いしているようですね。ちなみに人数は2人だけです。


メッシュ「絞めますか?」

ジーク「え、まだ扉開いてないだろ?」

メッシュ「そういう意味ではございません」

ジーク「ああ、縊るほうのシメるか

メッシュ「そこまで露骨なことは申し上げておりません。」

でもやっぱりシメてやります。まずこちらからノックをし、向こうに扉を開けさせてから攻撃します。


ソラ「じゃ、扉の前で"ライトニング"のタイミング、窺う」

エア「もう、ソラはずれたことばっかり思いついて(しくしく)」

ムーテス「そうだねえ、誰が育てたんだい?」

エア「(挙手)……でも、こんなこと教えてないはずなのに。
    ちょっと、ガキ大将時代、色々隣でやって見せただけ……」

ソラ「お姉ちゃんだけ、素直に更生してずるいの(むかぷん)」

"ライトニング"はSWの頃から御馴染みの魔法ですね。威力20の雷を発射します。

射程30mで形状「貫通」という形でルールが整備されていまして、「ウィザーズトゥーム」に詳細があります。

ここで重要なのは効果範囲だからといって必ず巻き込まれるとは限らないということです。

目標に指定された対象は必ず巻き込まれますが、それ以外の人は個別に半々の確率で判定して処理します。


さてムーテスが扉をノックすると中から反応があります。

山賊「黒い角

ジーク「……合言葉?」

ソラ「想定外なの」

ムーテス「えーと、真面目な話、これはピンポンダッシュならぬ、コンコンダッシュをしたほうがいいんじゃ……」

メッシュ「がんがんがんがん!ごんごんごん、がつんがつんがつん!大変だ大変だー!」

ムーテス「ああっ、メッシュさんが熱暴走起こしてるっす!

ジーク「埋めといて」

それでも彼らは動かなかったので、部屋の中から発射された"ライトニング"を食らいました。

相手方にも魔術師がいたということです。しかも扉は薄いので貫通して扉の前にいた人に当たるということです。


GM「扉の前にいたのは?」

エア以外「はーい(挙手)」

GM「……皆さん、正直ですね」

ムーテスとメッシュはノックをしてたし、ジークは飛び込む準備をしてましたから。

ソラだって"ライトニング"の準備をしてると宣言してたから妥当なところです。撃つ前に撃たれたのは予想外ですが。


これに抵抗できたのは珍しく6ゾロを振ったメッシュのみ。後は全員抵抗失敗で大打撃です。

ジーク「今何時だ?それによって〔剣の加護/運命変転〕使う!」

メッシュ「夕食に盛られた薬が絶賛効きまくりの時間帯ですから、真夜中では?」

ジーク「うわー、悩むー」

〔剣の加護/運命変転〕は1日に1回だけ使用できるので、タイミングによっては丸一日使用できない状態になりえます。


それで渋ったようでジークはクリティカルで20点食らい、ムーテスなんて二回りして大ダメージです。

ムーテス「僕は30点食らったっすよ

一同(黙祷)

ムーテス「いや、生きてる!2点残ってるから!生きてる!」

一同「おおー!さすがはリルドラケン!(拍手喝采)」

何しろ素の生命力が23もありますからね。これでも種族平均は割ってるのだから驚きですよね。

ちなみに野伏生まれのリルドラケンの場合生命力の平均値は24もあります。戦士生まれだと27とかです。


扉が破られたところで相手の姿が見えます。相手の構成はフェンサー2レベルとソーサラー4レベルでした。

相手が人間だと出目がひっくり返されるのが嫌だけど、既に〔剣の加護/運命変転〕は使い切っている設定です。


1ラウンド目

先制を取ったソラは"ライトニング"を撃ち返して見事に抵抗を破ってそれなりのダメージ。

ジークは妖精魔法"ウィスパーヒール"を唱えようとしましたが、<妖精使いの宝石>がないので断念。


ちなみに"ウィスパーヒール"は魔力点回復するという、レーティング表を用いない回復魔法です。

それだと"ヒーリング・バレット"より回復量は少なくなりますが、半径3m/5の範囲魔法というメリットもある。

まぁ誰かさんの場合"ヒーリング・バレット"を使っても"ウィスパーヒール"と同じ程度しか回復しない事がありますが(笑)


続けてエアがジークとムーテスを回復し、それでも追いつかないムーテスは自分で薬を飲んで回復。

ムーテス「ふぅ、やっと人心地ついた。《かばう》持ちなのに、扉の影に隠れて薬飲んでる屈辱感といったら」

ソラ「しょうがないの、ムーテスくん冒険者ブランク長いから」

ムーテス「うん、ちょっと商売にかまけすぎたっすよ。反省反省」

そしてメッシュはソーサラーに接近しようとしてフェンサーに阻止され、《投げ攻撃》でぶん投げました。

更にジークが加勢してフェンサーを拳で殴り、まさかのクリティカルで沈めます。しかも生死判定に失敗して拳で殴り殺す


次に相手の反撃ですが、魔術師は仲間が倒れて巻き込む恐れがなくなったので遠慮せずに"ライトニング"を発射します。

某法螺吹き魔術師は仲間を巻き込んで"ライトニング"を発射してましたが、そこまで非情でもうかつでもないということです。

このダメージがまたキツくて、結局ジークは〔運命変転〕を使いました。使い渋って命を落としたら元も子もないのです。


2ラウンド目

エアはまた仲間を回復し、主従の投げ&拳の連続技を食らった魔術師はアッサリと陥落しました。


相手を倒したところで装備剥ぎです。ここでジークの<剛力の指輪>を取り戻しました。

あとフェンサーの使っていた<サーベル>を徴収し、ジークは護身用にとソラに渡します。後の彼女の装備がこれですね。

部屋の中から見つかった<魔香草>でMPを回復し、<ヒーリング・ポーション>でHPを回復したりと体勢を整えます。


そして肝心の尋問です。

ソラ「……よくも、二発も"ライトニング"撃ってくれたの」

魔術師「合言葉を返してこないヤツがいたら、容赦なく撃てって言われてたから……」

ジーク「あ、その合言葉って何なんだ?」

魔術師「赤い爪

ジーク「本当だろうな、コラ」

魔術師「じゃあ、次の時に言ってみればいい」←反抗的

敵の人数ですが、迷宮内にいる仲間は5人だそうです。ターバンのボスは含めていないと言いたげですね。

犯行に及んだ動機は「食い詰めていたから」。捨て駒でも良かったとコメントするほど苦しい生活だったらしい。

でもターバンのボスは本当に嫌いで、でも強過ぎて勝ち目もないから反抗する気にもならないんだとか。


ムーテス「それで、今ボスはどこにいる?」

魔術師「わからん」

ジーク「神出鬼没?」

魔術師「いや、このダンジョンのどこかに、ボスの使ってる隠し部屋があるんだと思う」

例のフェイの視界を通して確認した部屋でしょうか。そういえば扉も見えなかったし。


そしてボスの目的は女の子、つまりルーちゃんにあったようです。それ以外はついでで、後で適当に売るつもり。

ソラ「そういえばベッドに寝かされてた。一人で」

一同「ボス、ロリコン説急上昇!

それは冗談としても、何故彼女なのかという疑問は残りますね。彼女の知られざる身の上が関係しているのでしょうか。


最後に彼らの処遇ですが、寛大にも「ボスに利用されていただけ」だとルーフェリアの国には証言してあげる予定です。

これはルーフェリアの神官戦士団が動くであろう事件です。その犯人として捕まったらどうなるかは予想できますね。

エア「そうなるとあんたたちの未来が明るいかどうかは、おのずとわかるでしょう」

魔術師「……黄昏?」

メッシュ「執行猶予くらいはつくように努力してくださいますよ、ジーク様が」

すると彼はほだされたのか、一度調べた引き出しの二重底の仕掛けを教えてくれます。

さっきの《探索判定》で見つからなかったものですね。高い達成値を出してれば見つかったかもしれないけど。

中からは<魔晶石(5)>×2と、<魔香草>×2、<ヒーリング・ポーション>×2、<魔法の鍵>×2が出てきました。


<魔法の鍵>のみ初出ですね。これは多分<アンロック・キー>の事ではないでしょうか。

"アンロック"と同様に魔法の鍵を開ける効果があって、スカウト技能の《解除判定》で使用できる便利なものです。

この場合《解除判定》の達成値を求める必要はあります。また成否にかかわらず使い捨ての100ガメルの品です。


ジーク「よしよし、協力してくれたとみなしておくよ。俺たちのほうが強盗気分だ」

もう一度フェイの様子を見ますが動きはなし。今後は常時接続し、変化があったらすぐに対応します。

奪われた装備は上にあるようですが、挟撃を避けて先に下から潰していくことにしました。


★頑張って、早く。迅速に

更にスロープを降っていくと2つ目の扉が見えてきます。ついでに《聞き耳判定》の必要もなく声が聞こえてきます。

ムーブ「えーん、えーん。にーたーん、にーたん、おっきしてー」

ジーク「すごいな。兄が寝てるのに、弟起きてるぞ(感心)」

実は薬を盛られた時の生命抵抗で6ゾロを振ったので普通に寝ていただけでした。小さいから少しは効いたのかな。


メッシュ「ルーンフォーク風合理主義的発想を申し上げれば、
      ここで下手に救出して足手まといを増やすよりは、スルーした方が得策かと」

ジーク「しかし、コンジャラーはいてもいいと思うんだ」

メッシュ「発動体を奪われているのでは?」

ソラ(魔術師から奪った発動体を突きつける)

メッシュ「さ、タビットの方々、もう心配はありませんよ!(恭しく)」

ムーブ「あー」←嬉しそう

モーブの方は寝ていましたが、時間経過で毒が薄れて解毒の目標値は11だったのでアッサリと起きました。

起きたモーブは一行に"レイジング・アース"を使って微妙に残っていた怪我を治してくれました。


"レイジング・アース"は半径10mの空間にいるキャラクターのHPを3点回復し続ける魔法です。

効果はラウンドの終わりに発揮され、持続時間は3ラウンドなので一度の行使で確実に9点回復するわけです。

13レベルに上位魔法の"レイジング・アースU"というのもあって、こちらは1ラウンドの回復量が10点です。


モーブにもついてきて貰うつもりでしたが、ムーブ君がいるのでこの部屋で待機させます。

それにタビットはその知力の高さに反比例して敏捷度が低い。イザという時に足並みが揃いません。

ルールブックTの場合、全生まれの器用度と敏捷度の平均が10を割ってますからね。Uだと丁度10。


モーブ「わかりました、気をつけてくださいね」

ムーブ「おにたん、がんばれー」

エア「……連れてかないの?」

トロイから仕方ありません。SW2.0だからいいものの、SWの敏捷度順のルールだったら戦闘でも後手に回りますね。




それでは3つ目の扉です。

メッシュ「では今度こそわたしが『聞き耳』いたしましょう。たまには役に立ってご覧にいれますよ」

ジーク「うん、できれば、たまじゃないほうがいいけどな。役に立つのは」

ところがメッシュが扉に耳を付けようとした時に《罠感知判定》が発動しました。当然のように失敗ですが。

これでメッシュは扉に塗られた接着剤でピタリとくっつきました。某"至高神の猛女"を思い出しますね。


しかも頭上からブロブが降ってきました。ますますゴブリン御殿を思い出す展開です。

エア「さすが、元剣の迷宮」

ソラ「罠っぽい罠ね、お姉ちゃん」

メッシュ「そこの異種族姉妹喜ばないように!」

そして当たり前のように回避に失敗するメッシュ。


SW2.0のブロブは4レベルの魔法生物です。一部位で主な攻撃手段が体当たりという点は変わりません。

しかし《柔らかい身体》によって打撃武器への防護点+5点で、《投げ攻撃》等が無効となっています。

更に体当たりが命中すると《取り込み》が発動し、脱出するまで毎ラウンド魔法ダメージを食らい続けます。

そして肝心の《酸の身体》です。ブロブと接触した装備は24時間で溶けてなくなってしまうのです。

しかし今回は救済策が用意されていまして、24時間以内にアルコールで洗い流せばこれを免れます。


うっかりとメッシュが取り込まれたりしましたが、仲間がフルボッコにして退治してくれました。

ジークは拳でも《魔力撃》は使えるし、今度はムーテスの<パンチ>がクリティカルしました。多分防護点+5点だけど。

あと姉妹の攻撃魔法も容赦なく飛びましたしね。これだけ接近していても《魔法誘導》ならメッシュには誤射しないのかな。


メッシュ「ご、ご迷惑をおかけしました(土下座)」

ジーク「いいよ、早く扉を開けてくれ。罠があるってことは、ここが宝物庫の可能性が高い」

メッシュ「承知。では『鍵開け』をば(ころころ)……(出目3)。"ノッカーボム"!!」←キレた

ジーク「やめろ、でかい音が鳴るはずだ。その魔法は!(羽交い絞め)」

メッシュ「扉の癖に生意気なのですよー!無機物の癖にー!

ところがこの扉、実は罠用のフェイクです。部屋なんかありません、残念でした(笑)


メッシュ「もう、やることなすこと裏目に出てる気がいたします
      おかしい、武器を回収するシナリオなど、私の独壇場と言えたはずですのに……」

今回はいつも以上に彼に災難が降りかかっていますね。




更にスロープを降ると正真正銘の3つ目と4つ目の扉が見えてきました。3つ目は壁に、4つ目は突き当たりにあります。

メッシュ「(ころころ)みなさん、扉から離れてください。『聞き耳』達成値7」

メッシュ以外「大丈夫、想定内(親指ビシッ!)」

メッシュ「……うう。それはそれで哀しい(めそめそ)」

ジーク「あーもう、文句言えばしょげる。責めなくても落ち込む。難しい年頃だな、七歳児

ムーテス「反抗期っすよ、きっと」

ここまで酷いと実は彼のスカウト技能はバツ技能だったりするのでは(ゲームが違う)。


扉の中にはまたも2人組の山賊がいました。今回はファイターとシューターです。

ジーク「もう、上階は制圧した!無駄な戦いはするな!(びしっ!と指差し)」

ムーテス「僕たちはまだまだ余裕で戦えるっすよ。無駄な抵抗はして欲しくないなあ」

エア「まあ、嘘じゃないか(小声)」

ソラ「……一応、ここよりも上の階だから。それより上の部屋、手付かず、だけど(小声)」

そしてぬるりんとしたメッシュは隠れていると。世知辛いな七歳児。


多分にブラフも含まれていますが、一部真実なので説得力はありました。合言葉や構造も知ってるし。

エア「何か情報ちょうだい。それでボスを倒せれば、あなたたちの功績にしてもいい」

山賊「ほ、ほんとか?ボスは多分、二人ほど得体の知れない部下を連れてるんだけど」

1人は今回の仕事で帰ってきたというので、乗客の誰かでしょう。変身能力を持っているのかも。

もう1人は透明の怪物で、彼らもどんな姿をしているか確認できていないので恐れています。


一行の説得が功を奏してここの2人は大人しく投降してくれました。無駄な戦闘は避けられましたね。

この部屋でメッシュの銃とムーテスの斧を取り返せました。他の装備は上の部屋でしょうか。


メッシュ「一緒に戦いましょう、平和を取り戻すために」

山賊「あ、それは勘弁。確実に死ねる

ジーク「そんなに強いんだ」

山賊「強いです。人間じゃないみたいに

それは比喩表現ではなく、本当に人間ではない可能性が高いですね。何らかの蛮族かもしれません。


メッシュ「あなた方の安全は……完全には約束は出来ませんが、出切る限り手を尽くしましょう。ジーク様が」

ジーク「俺かよ!(裏手つっこみ)」

これで3つ目の部屋もクリアです。残るは突き当たりにあった4つ目の部屋です。


★最後の一部屋

残る4つ目の扉ですが、その中は円形の広間になっていて最上階まで吹き抜けとなっていました。

壁には螺旋階段がついていて、今まで降ってきたスロープ状の通路とは壁一枚隔てた形です。

この遺跡は円筒形をしていましたが、円筒の外周はスロープで、内周は階段によって結ばれている訳ですね。

魔剣の迷宮はこういう風に何らかのテーマに則って構成されている事が多く、全容を知ると驚かされます。


ここでフェイは部屋内に異変を察知しました。1人の男が現れ、うとうととしたルーちゃんを抱え上げたのです。

ソラ「抱いてる人の顔、見られる?」

GM「はい、フォントさんです。エルビーさんの従者」

メッシュ「ちょ、超ノーマーク!

彼がイストを監視していたという2人目の内通者です。本当に意外な人でした。

見れば部屋の床に四角い切れ込みが入っていて、梯子の架かった出入り口が開いていました。

フォントさんの姿をした者は部屋の天井に更に穴を開けて、梯子を架けて登ろうとしています。


このままではルーちゃんを攫われると焦った一行は吹き抜けの部屋に入りました。

吹き抜けは20m程の高さを持ち、螺旋階段の突き当たりの天井にルーちゃんのいる部屋に繋がる出入り口を確認します。

ちなみに迷宮そのものの出入り口はスロープの通路を登った突き当たりにあります。隠し部屋はそれより高い位置にある。


これは頑張れば彼女を取り戻せるかもしれませんが、実はこのシナリオは元々彼女が攫われる事を前提にしています。

ところがジーク達は装備の奪還や乗客の救出を後回しにし、山賊とも宥和して休息も殆ど取りませんでした。

これがGMの予想を大きく上回る攻略速度となり、本来見る事のできない彼女が連れ出されるシーンを見せたのです。

予定されたイベントをすっ飛ばして大幅なショートカットをする、これがこのパーティの持ち味となっていきます。

冷たい事を言えば彼女が攫われてもミッション失敗にはならないのですが、どうせならできる事は全てやりたいものですよね。


ムーテス「悠長に足で登ってたら、取り逃がす可能性があるっすよ。足止め要員に相応しいのは?」

ジーク「え?足止めなら……メッシュかな、何しろ投げられる」

ムーテス「じゃあ、メッシュを抱えて〔剣の加護/風の翼〕を使う!
      これで少しの間だけど空が飛べるんで、先に行って足止めするっすよ!」

こうしてムーテスはメッシュを姫抱っこして20mの距離を一気に飛び、ルーちゃんのいる部屋に飛び込んだのです。

ただし飛行速度は通常移動と同じなので1ラウンドに12m。20m飛ぶには2ラウンドを要する筈ですが。

まぁ相手も2ラウンドでは大して動けませんけどね。ラウンドで表記するとやや長く感じるけど20秒ですもんね。


ソラ「その様子見たら、鳥篭の中のフェイを思いっきり騒がせる。
    ゲージ、破らんばかりに、シャギャーシャギャー!くるっぽーくるっぽー!

メッシュ「それは鳩ですな」

ソラ「注意、引ければいい」

ターバンの男「早くしろ」

フォント?「わかりました、フィルゲンさん」

そこにムーテスとメッシュが飛び込み、ターバンの男改めフィルゲンの顔を少し見れました。

ここで飛び込んだ2人とフェイの視界を通したソラは《魔物知識判定》をしましたが、誰にも分からなかった。

少なくともフィルゲンという人間ではなさそうな男にルーちゃんが攫われそうになっている事だけは確かです。


そしてフィルゲンはこう言い残します。

フィルゲン「思ったよりも早く辿り着いたな。女神のうつしみは、もらっていく」

続けてフォントさんの姿をした者は「ふん」と力を込めてその正体を現します。身長2m程もある蛮族でした。

ところが彼についてもまた《魔物知識判定》に全員失敗。折角のシーンなのに今ひとつ驚く事ができません(笑)


ジーク「『魔物知識』判定に成功しないと「よーし、殴っちゃえー」にしかならないよな、俺たち」

メッシュ「ああ、そうだ。敵の名前がわからずに呼びにくいので、元フォントさんの蛮族をこう呼びましょう。
      とても上背のある敵なので、めっさー大柄

一同(爆笑)

GM「嫌な名前つけるなー!」

判定に失敗しただけでやはりプレイヤーには検討がついていましたね。レッサーオーガです。


レッサーオーガは4レベルの蛮族で、2m程の筋骨隆々とした身体をしています。

これでもオーガという種族の中では小柄な種類で、レベルも低い。それ故にレッサー(より劣った)と呼ばれます。

3レベルで真語魔法を使える他、補助動作で《人化》という能力を使う事で人間の姿に化ける事ができます。

化けられる姿は個体固有のものがデフォルトで存在し、それに加えて心臓を食べた人族の姿がレパートリーとなります。


つまりこいつは本物のフォントさんを食べてその姿を盗んだのです。フォントさんという人物は実在していた筈。

丁度フォーセリアの鏡像魔神のような位置にありますね。こいつらがいるだけで人族は隣人を疑うようになる。

オーガといえばフォーセリアでは力だけのモンスターでしたが、ラクシアの場合はもう少し文化的ですね。

「長靴をはいた猫」に登場するオーガ(人食い鬼)は魔法を使い、変身能力があっただけによりオリジナルに近いかも。


更にもう1匹フィルゲンには透明の部下がいて、そいつも襲い掛かってきますが全員《魔物知識判定》には失敗(笑)

メッシュ「我ら、アホの子のようですな。全く敵の正体が分かりません

何しろセージ技能がソラもメッシュも1レベルしかありませんからね。ちょっと低いかな、あと出目が悪い。

SWの頃からそうですが、敵の正体が分からないといずれ致命的な状況に追い込まれる事もありえるでしょう。


ちなみにこいつの正体はインビジブルビースト。筋肉と血管の浮き出た奇怪な姿をした3レベルの蛮族です

《透明》の能力で姿を消す事ができますが、戦闘等の激しい運動をすれば2ラウンドでその姿を見せます。

また命中を与えたり受けたりすると血液が付着するのでやはり姿を見せ、その後18ラウンドの休憩を要します。

最初の方がウザイだけで大したステルス機能ではありませんね。それでも姿が見えないので厄介な工作員ですが。


1ラウンド目

敵に先制を取られ、ムーテスはインビジブルビーストの攻撃で14点の合算ダメージを受けます。

現在ムーテスはラウンドシールドを取り戻していないので防護点は8点。よって適用ダメージは6点です。

そしてレッサーオーガはメッシュを狙い、8点の適用ダメージ。盾とか鎧とか関係ないから計算が楽ですね(笑)


メッシュ「げふ。いくら低くても私にはダメージが素通しなんですよ、痛いんです」

ムーテス「敵にそんなこと言ってたら、余計に狙われるんじゃ?」

メッシュ「はっはっは、今蚊か何かが止まりましたか?ぼたぼた〜〜〜(爽やかに流血)」

メッシュはレッサーオーガに《投げ攻撃》で12点、更にムーテスが殴って8点の合算ダメージを与えます。

実はレッサーオーガは防護点2と大して硬くないので、これだけで16点の適用ダメージを受けます。素のHPは36点。


2ラウンド目

転倒した状態でレッサーオーガはメッシュに"リープ・スラッシュ"。魔法の《行使判定》に−2入りますが抵抗を破ります。

メッシュ「(ころころ)うぎゃああ、回った!

一同「うそ!」

メッシュ「(ころころ)だ、大丈夫、一度だけ。合計ダメージが、と16点。1点残りました!(万歳)」

相変わらずタイトですね。早くムーテスが《かばう》してあげないと本気で逝く。


レッサーオーガはムーテスの攻撃で瀕死に追い込まれますが、インビジの最後の透明攻撃でムーテス自身も血達磨。

ムーテス「くそ、ポーションを飲む余裕もないや」

メッシュ「うっうっ、ムーテスくん庇ってくれてありがとう(涙)。死なずにすみました」

ムーテス「まあ、僕も彼岸をのぞいてるけどね」

ここで初めてムーテスがメッシュを《かばう》してあげたようです。


これでインビジの透明が切れ、ジーク達が参戦。エアがメッシュとムーテスの怪我を治してジークも前線に加わります。

メッシュは主のために《投げ攻撃》するもハズレ。ジークは普通に攻撃し、ソラはめっさー大柄に"ブラント・ウェポン"

この時上の階から「どういうことですか!」と揉める声が聞こえてきますが、覗きにいく余裕はありません。


3ラウンド目

既に透明ではないインビジブルビーストはムーテスを殴って少しだけ通す。

メッシュ「さっきから使うのを忘れていましたが"ターゲットサイト"!そして《投げ》ます、ジーク様止めを!

GM「あ、それで落ちた

メッシュ「……あ。やりすぎた。ジーク様!ほら、止めの一撃を!」

ジーク「いい。お前の手柄にしとけ、メッシュ」

ここでジークは乱戦エリアからの離脱を宣言、1人でルーちゃんの後を追いました。ソラはこっそりフェイを回収。


SW2.0の戦闘には乱戦エリアという概念がありまして、これは「戦闘を処理するための抽象空間」と定義されます。

乱戦エリアに参加しているキャラクターは互いに激しく動き回り、文字通り乱戦状態にあります。

この際乱戦エリアに敵を足止めできるのは、キャラクター1体につき敵2体まで。味方の2倍までの数を足止めできるのです。

今まではレッサーオーガとインイジブルビーストの2体がいたから、彼らだけで4体までの足止めが可能でした。

しかしジーク達前衛は3人なのでこれを突破できずにいました。そこでレッサーオーガが倒れた事で均衡が崩れます。

インビシブルビーストのみでは2体までしか足止めできないので、その役目をメッシュとムーテスが引き受けたのです。

こうなるとジークは何のペナルティを受ける事もなく乱戦エリアからの離脱が可能になるのです。ちょっとややこしいですね。


梯子を登ったジークは屋外に出ます。そこにはルーちゃんを抱えるフィルゲンの姿がありました。

またそこでフィルゲンと言い争っていたのはルーちゃんの養父母であるニールさんとオデットさんでした。

ジーク「ルー!大丈夫か!」

ルー「ジーク……」

フェイはフィルゲンの足止めをしようと飛び掛り、爪が彼のターバンを落とします。


その下からは優美な角が見え、腰には剣を帯びていました。

GM「えー、ハンサムガイ、らしい」

エア「らしいって何!」

ムーテス「自身なさそうだ」

メッシュ「ふ、執事ガイには、及びませんな」

ソラ「ナイトメア?」

GM「多分、明らかにちがう。でね、腰に帯びていた剣を……んがっと……呑む?

メッシュ「いや!呑まなくていいはず!
      それが私の想像通りの生物なら呑まなくてもいいです、胸の前に構えるだけでいいはず!

ジーク「呑んだら一気に芸人認定だよな」

剣を構えると彼の姿は竜に変化し、ルーちゃんを抱えて空の彼方に飛び去ってしまいました。


メッシュ「男として、追いかけるべきですジーク様!台詞は「必ず助けるから」です!」

ムーテス「俯いて「ごめん」はダメだよ!」

エア「演義指導が入ってる」

ソラ「……お兄さんが大根なのは、ゾンビ事件でわかってるはずなのに」

メッシュ「私がその場にいれば、カンペを出すものを!(悔しそう)」

そして攫われたルーちゃんの手にはジークから貰った宝石が握られていました。




その頃にはムーテスがインビジブルビーストを倒し、仲間達は合流していました。

詳しい事情聴取は後回しにし、山賊達にも協力して貰って全ての人質を解放して遺跡を脱出します。

10人の乗員がいたのに、2人が裏切り1人が誘拐され、7人だけになってしまいましたね。


馬車の中でエルビーさんと養父母は呆然としていました。

どうやらレッサーオーガはエルビーさんに海外への視察をしきりに勧め、勝手にこの旅を計画していたようです。

本物のフォントさんを殺して摩り替わり、エルビーさんを隠れ蓑にして馬車に潜りこんだ訳ですね。

そしてニールさんとオデットさんはルーちゃんをカイン・ガラで診せた方がいいと神殿で勧められたのです。


どいういう事かと考えていると、馬車の前に一人のエルフの中年男性と一人の少女が立ちはだかります。

少女「皆さん、もう一人のわたしがお世話になりました」

少女の方はさっき攫われたルーちゃんにそっくりです。しかも自分で立ってはきはき喋っています。


メッシュ「あの……どゆうことでございましょうか?」

ソラ「病気が治ってる?」

少女「今は、傍に信者がいるので、ちゃんと眠りに陥らずにこうして、活動できるんです」

エア「あのね、もしかしてね……考えたくないんだけど……ものすごく、突飛なこと言うけど。
    エルフの男性、で、信者がいるのでって……もしかして、ルーフェリア様?

少女「はい。そうです。ルーフェリアです。正確には、ルーフェリアの一部です。
    向こうがルーでしたので、こちらはリアとでも呼んでください」

一同「どういうことー!」

この世界の神様はフォーセリアのような創造主ではなく、ある意味信者との共生関係にあります。

信者の祈りの力が神様の力となり、神様はその力を信者に分け与える。一方だけでは成り立ちません。


祈りの力で神様が養われているのなら、信者の祈りの内容が神様に影響を与える事もあるのです。

現在ルーフェリア信仰は国外にも爆発的に広まり、多くの信者が増え、ルーフェリアの力となっています。

しかしそれは今まで国を守るだけで良かった彼女に別の付加価値を期待するものでもありました。

それがルーフェリアに不安定な状態を生み、その不安定さの中で誕生したのがルーという分体です。


ちなみにリアの方は「人間だった頃に近い意識の一部」であり、ルー誕生以前から存在していました。

"彷徨う小女神"として困った人の所に現れて冒険者を呼んだり、森で迷っている所を導いたりしてきました。

それに対してルーは「外の世界への憧れ」です。2人は姉妹のような存在なのかもしれませんね。


それにしても信者の祈りが神様にフィードバックされるという考え方は面白いですね。人は祈り、神は為す

例えるなら、初めは縁結びの神様だったのに、いつの間にか祟り神にされてしまったオヤシロ様のようで(笑)

それは神様自身が信者に依存し不本意な形に変質してしまう可能性をも意味する。この世界の神様は超越者ではないのです。


リアの方の素性は明らかになりました。ではエルフの男性の方ですが。

リア「わたしは、近くに信者がいないと、活動を停止してしまいそうになるので……」

エア「消えてた大司教様……?

バトエルデン「バトエルデンだ、よろしく」

ソラ「一番信心力強い人、連れてきたんだ」

ルーがオタビット兄弟やメッシュ、キルヒア信者の養父母の前では眠り、エアの前では覚醒していたのもそういう理由です。


突然の女神様降臨に一同愕然としますが、一番混乱したのはエアでした。

エア「……うそうそうそ。いやそんな、こんなルーフェリア様が、目の前に降臨されるなんて、あるはずがなくってよ。
    ルーフェリア様というのは、もっと、パーッとして、キラーッとして(錯乱中)」

GM「じゃあパーッとして、キラーッとしてみましょうか。ちょっと成長して、むちぷりになってみたり」

エア「五体投地

ソラ「……お姉ちゃん、祈ってるんじゃなくて、わんこの伏せみたい」

そうやってふざけているリアの後頭部を張り倒し、バトエルデン大司教は彼らにこの事件の緘口令を敷きます。

これは国家の一大事であり、秘密を知る者は極一部にしておきたいからです。そして今後も協力してもらうつもりです。


メッシュ「ていうか、大司教、女神の化身をしばきましたよ

バトエルデン「できれば、彼女を取り戻すために協力して欲しい」←無視

「水晶の欠片亭」は神殿とも繋がりのある冒険者の店です。大司教はその店が認めた彼らを信頼しているのです。

それに高名な冒険者に依頼するとかえって目立ってしまいます。その点今のジーク達はまだ駆け出しですから。


ルーを救出する事にはジーク達も乗り気です。

バトエルデン「共に協力してもらえるなら、また連絡しよう。
        一度対策を練るために、我々はルーフェリアに戻る。
        神殿内にも、この一件における内通者がいるようだから」

ニールさんとオデットさんを唆した人ですね。とにかく今回の事件は内通者の多さが目立った事件でした。


GM「大司教さんはもごもご動く頭陀袋背負って、リアを連れて歩き出します」

イスト「すいませーん!ごめんなさーい!(もごもご)」

エア「捕まってる!」

あとニールさんとオデットさん、エルビーさんも事情聴取の為に一度国に戻ります。

10人の乗員がいたのに、2人が裏切り1人が誘拐され、3人が連れて行かれて残るは4人

残っているのは御者のコルツさんとオタビット兄弟、あと巡礼者のセインさんだけという有様。

でも欠員は不可抗力として報酬は目減りしないように大司教が補填してくれるそうです。


ムーテス「意外と世知に長けてるね、大司教」

バトエルデン「まあ、中間管理職だからな

エア「……え?雲の上の人じゃないの?」

ジーク「神様と信者の間に挟まれて、大変なんじゃないか?」

エア「……改宗って、できたっけ

可能ですよ。バトエルデン自身若い頃はザイアの神官で、今はルーフェリアの神官やってますから。

SWだと一度プリースト技能が剥奪されて、そこから元のレベルまでは経験点が半分に優遇されながら再成長でしたが。


ソラ「お姉ちゃんの、アイデンティティ崩れかけて……」

メッシュ「はっはっは、幻の存在に傾倒すると大変ですなあ

ムーテス「目の前に神が現れても信じない人も、ある意味大変だと思うっすけどね」

そういえばメッシュにもルーやリアの姿が見えていましたね。神の声は聞けないだけで姿は見えるのでしょうか?


こうして目の前で女神の分体ルーを誘拐されたジーク達は彼女を救出するというキャンペーンに身を投じるのです。

そしてそれは彼女を救出するだけに留まらない。このシリーズが「新米女神の勇者たち」と題されている通りに。


第五話 消えた剣を探す方法

★それはともかく、成長

今回のキャラクターシート

前回は迅速な行動でルーちゃんの誘拐を食い止められそうだったので、経験点に若干のボーナスが加算されています。


今回の能力値の成長は以下の通り。

ジーク:生命力16→17

ソラ:筋力20→21

エア:精神力23→24

メッシュ:精神力7→8

ムーテス:器用度12→13か生命力23→24

エアの精神力がついに24になり、精神力ボーナスも+4になりました。ますますタフになりましたね。

それに比べるとメッシュは成長していながら8しかない。3倍も差がつくとは種族の格差ですかね(笑)

あとムーテスは宣言がなくて詳細不明。仕方ないので次の巻との差分を取り、2回分の成長を先取りして記入してあります。


技能ではジークがファイター3→4と成長し、<魔法のバスタードソード>を購入。通常のものに+5000ガメルの品です。

SWの魔力+1の魔剣と同様に命中力+1の追加ダメージ+1です。+2以上の品はかなりの貴重品になります。


ソラはセージ1→2です。前回で《魔物知識判定》の弱さを痛感したのでしょう。でも知力は伸びない

ソラ「代わりにまた、筋力伸びた」

ジーク「ソラの頭はそこが限界か」

ムーテス「うわ。筋力、追いつかれてる!

見た目少女のソラとイカついリルドラケンが同じ筋力とは、これもSWリプレイの伝統でしょうか。


ムーテスはジークと同様にファイター3→4と成長。ジークと同じペースで成長していく様子です。

メッシュはスカウト1→2となって少し有能執事です。でも冒険者レベルは3のままなかなか上がらない。

ジーク「メッシュ技能が多いしな。一人冒険者技能が遅れがちになるのは、しかたがない」

メッシュ「わ、私なんて、全部足したら8レベルですよー!

ソラ「気のせいか、有能に聞こえる」

ええ、気のせいですから。


そしてエアはレンジャー2→3で薬の回復量が少し多くなりました。次でプリーストも上がる予定。

買い物で<火トカゲの髪飾り>を購入しました。頭につける装飾品で、炎の矢となって飛んでいきます。

威力20+5点なので、威力10の"ファイアボルト"よりも威力は上ですね。ただし1回の使い捨てですが。

しかも《精密射撃》や《魔法誘導》がなくても誤射しないという親切なもの。これでお値段1500ガメル。


それとソラとムーテスはカイン・ガラ名物の<ギャンブルポーション><賭け魔香草>を購入しました。

これは通常の<ヒーリングポーション>や<魔香草>より安価な分効果が安定しないというものです。

このセッションでは1Dを振って1か2だと効き目が半分になり、6だと倍になるそうです。


ただし<ギャンブルポーション>については「フェイダン博物誌」でデータが改定してあります。

1/6の確率で全く回復しないことがありますが、MPも回復したり、クリティカルしたりする場合もある。

その分お値段は70ガメル(通常100ガメル)なので、お金のない学生や駆け出し冒険者が購入する事が多いとか。

<賭け魔香草>はデータ不明ですが、大体同じようなものでしょう。なかなかユニークなアイテムですね。


★初めてのカイン・ガラ

乗員の減った乗合馬車を護衛しつつ旅を続けた一行は、ついに"石塔の学び舎"カイン・ガラに到着しました。

カイン・ガラは海に面した学研都市であり、様々な魔法使い達が日夜研究や勉強に勤しんでいます。


海岸線以外は半円形に巨大な石塔が立ち並び、それがまるで牙のように見えることから"イグニスの牙"とも呼ばれる。

この石塔の一つ一つを色々な派閥が管理しており、真語魔法学部操霊魔法学部魔動機術学部等が有力です。

他にも妖精魔法学部神学部賢人学部等があります。主要な知的技能は一通り揃っているという訳ですね。


またこの都市の地下には様々な文明の遺跡が眠っており、各石塔から降りられるようになっています。

遺跡はまるで地層のように折り重なり、地表から魔動機文明、魔法文明、神紀文明となっています。

一時代だけでも何層にも渡って遺跡が重なっている事から、幾度も破壊と再建を繰り返してきた都市といえます。

最近では「大破局」時にこの街は一度壊滅的被害を受けていますが、生き残った人達が集まって再建しています。


各遺跡には基本的に管理する派閥が存在しますが、冒険者だけが知る秘密の出入り口も存在します。

その中で公然と出入りが許されているのが"夢の入り口"自由遺跡塔案内所という出入り口です。

この出入り口から螺旋階段を降ると様々な扉が設置してあり、その一つを選んで攻略していく事になります。

面白い事にこの遺跡が不思議のダンジョンでして、表層にある遺跡も数日で姿を変えてしまうのです。

その事から地図が全く役に立たず、駆け出し冒険者から一流冒険者まで挑戦できる正に"夢の入り口"ですね。


冒険とは過酷なもの、その多くはなかなか実を結ばないものです。しかし近年大事件がありました。

この遺跡の表層に数回潜っただけで飛行船の魔動核を見つけるという、強運に恵まれた者が現れたのです。

勿論我らがムーテス君です。この事から確かに冒険者ドリームを叶えるチャンスが眠る遺跡である事が証明されました。




さて、カイン・ガラに着いた一行はまず前回の仕事をやり終え、乗合馬車の乗員達ともお別れです。

乗員一同「ではお世話になりました(礼)」

ジーク「お疲れ様、気をつけてな」

ソラ「右の八重歯の塔には近付かないほうがいいの、隕石振ってくること、あるから」

ムーブ「あ、左の八重歯も危ないんですよ、ゴーレム各種がわさわさと大行進してるんで」

左右の八重歯にあたる塔が真語魔法学部と操霊魔法学部の塔で、この街の二大勢力といったところです。


一行は役所で報酬を貰いますが、1万5000ガメルと大司教の手配で少しボーナスが入っています。

ジーク「じゃあ、宿でパーッと使うか!」

メッシュ「貯金という概念を持ってください、ジーク様!」

この報酬で前述の買い物をしたという事です。成長と違って買い物は然るべき場所でないとできませんからね。


それと今後の活動ですが、その為にも冒険者+知力でカイン・ガラの知識を判定します。

ジーク「(ころころ)やりぃ、6ゾロ!俺、ここに来るまでに暇だったから「カイン・ガラの歩き方」で予習してたんだ!」

メッシュ「護衛してください、ジーク様」

ムーテス「さすがに、6ゾロには適わないなあ、ジモティなのに」

ムーテスは判定に+4もの修正が入っていたのにね。あとソラも詳しい筈です。


この判定でこの街の冒険者の店の老舗を3つほど挙げられます。

黒眼鏡(ブラックモノクル)の英知亭」角帽(スクエア・キャップ)の思考亭」短外套(セレモニー・ガウン)の閃き亭」といいます。

順にダンジョン、シティ、ウィルダネスの各種の依頼を分け合っていて、各店のエンブレムは店名そのものとなっています。

この事から3つのエンブレムを揃える事が一流の冒険者の証であるとされています。エアとソラのお母さんもその一人です。

もっともこれはこの3つの店が競合店との差別化の為に提携して広めた一種のキャンペーンなのですが(笑)


勿論これ以外にも複数の店がありますけどね。何にせよ冒険の入り口の多い街ですね。

メッシュ「つまり、イラストのために、どのアイテムを身につけさせるべきか選べというコトですね!(握りこぶし)」

ジーク「ここは、眼鏡だろう、眼鏡!(机だんだん)」

メッシュ「いや、外套も捨てがたいものがあるかと……(にやにや)」

コスプレではなくエンブレムの筈ですけどね。


ソラ「あたし、お母さんちに泊まる」

エア「じゃあ、わたしは神殿かな。お母さんに借り作りたくないの」

ジーク「待てよー!泊まれよ、泊まってくださいー!(駄々っこ)」

ムーテス「何を言ってるんだ、みんな。全員別々で泊まって、全種類コンプリートが基本だろう!(熱弁)」

気持ちは分かるけど、店に認められる為には依頼をこなさないといけないでしょうから、即日は難しいでしょう。

それこそ魔動核を発見した直後のムーテスなら宣伝の為にもエンブレムを貰えたかもしれないけど。


それから一行は買い物をしたり、「黒眼鏡の英知亭」で駄弁ったりと、カイン・ガラを満喫しました。

ソラは一人でお母さんの家に行きました。街の居住区にある小さな家ですが、生憎と留守のようでした。

彼女のお母さんのクロノアさんは真語魔法学部の教授であり、遺跡に潜る事も多いので仕方ありませんね。


ちなみに部屋には埃が積もり、ダイニングと思しき場所には「地下三階くらいにいってきます」とメモがありました。

ソラ「もしかしたら、地下三階じゃなくて三十階の間違いかも。四階に行くとか言って、八階に潜ってる人だから

ムーテス「どんなブレイバーっすか!」

部屋は単に掃除をしていないだけでしょうが、この分だとこのメモすらいつ書いたものか怪しいですね。


かと言って学校や研究室に顔を出すのは躊躇われます。

ソラ「やんちゃするのが忙しくて、十年学んで、1レベルだった子だから」

男性陣「いま、さらっとすごいこと言った!」

エア「え?何で、エルフであるわたしの妹なのよ?」

そのくせこの数週間で4レベルですから、やはり座学だけでなく経験を積むのが大切ですよね。


彼女も置手紙を書いておきます。

「"エネルギー・ボルト"で、ボガードを倒しました。"リープ・スラッシュ"で、ゴーレムも倒しました。
 お母さんの気持ちがわかりました。気持ちいいの。
 今度"メテオ・ストライク"教えてください。ソラより」

そして腐海に沈んでいないお母さんのベッドで休む予定です。彼女の部屋は既に物置だったので。

ただしソラの私物はちゃんと分けて箱に入れられているあたりは、やっぱりお母さんなんですね。


そしてソラは元彼と歩いた思い出の街並みを堪能しますが、そのメインストリートの名前が変わっていました。

GM「《ムーテス・ストリート》とか名前が変わってますね」

一同(爆笑)

ムーテス「よし、決めた。僕はムーテス大ファンの一介のリルドラケンなんで、そこんトコよろしく!」

このあたりでは「幸せの紫のリルドラケン」というキャッチフレーズが存在しています。ハンカチかよ。

それにあやかって紫の鱗のラッキーアイテム、紫のスケイルメイル、紫の<着ぐるみリルドラケン>等が売っているとか。

彼の幸運にあやかろうとしているのでしょうが、その後の墜落を考えるとあまりあやかりたくなくなってきますね。


ちなみに<着ぐるみリルドラケン>は文字通りリルドラケンの着ぐるみです。

そのふざけた外見に似合わずカテゴリ<非金属鎧>で、防護点が3点ほどあります。

またリルドラケンへの《変装判定》時に+4の修正が入ります。変装というか仮装ですけどね。


ジーク「宿に入る前に、やたらと子供に触られていたのはそのせいか」

子供(ジーク)「わーい、幸せの紫のリルドラケンだー」

子供(エア)「財布に入れておくので、鱗一枚ください!」

子供(メッシュ)「逆鱗くださーい」

ムーテス「やれるかぁ!……うう。ソラさんのヴェールを借りて被っておこう」

彼が被るとヴェールというかほっかむりに見えるから不思議。




さて、一行は「黒眼鏡の英知亭」でくつろいでいました。現在エアの機嫌が悪いですね。

ジーク「人の悪口ばかり言ってると、歳とるぞー?」

エア「何よう!どーせ年寄りですよー。貴方より三倍も人生経験積んでますよーだ。ぐだぐだ」

ジーク「うわ、手に負えねえ」

エルフだから若いけど、50歳ですもんね。本来は親子ほど歳が離れている。


メッシュ「はっはっは、私の七倍年とってるわけですね」←おいばかやめろ

エア「そうよ、だからあんたの七倍、人生に文句もあるわけなのよ、わかる?」

メッシュ「矛先がこっちにむいたので、スリープモードに移行します。ぐー」

いわゆるタヌキング・スリーピングというやつですね。それはルーンフォークでなくても備わっている機能ですね。


しかし寝ているだけだと具合が悪いので、ランダムリアクション機能を作動させておきます。

メッシュ「『そうですねー』『え?』『ああ、私もそうおもいますよー』『そういうものですか』
      『わかりますよー』『まったくです』『ええ、聞いていますよ』の七種類を繰り返す機能があります」

ムーテス「それは……意外と、人生に必要な機能を備えているかもしれない」

ジーク「そうか、メッシュは有能なんだ。冒険の役に立たないだけで

メッシュ『……ああ、私もそう思いますよー』

おお、本当に役に立ちますね。本人は何故かとても辛そうでしたけど(笑)


そうしていると、またもオタビット兄弟と遭遇します。今回は2人だけでなく、もう1人女の子のタビットも一緒です。

モーブ「おや、皆さん、お食事はこちらだったんですか」

ミーブ「こんばんわ、妹のミーブといいます」

彼女は耳の先端だけ黒いタビットで、ムーブと違って真語魔法学部で学んでいるそうです。


何故彼ら兄弟が冒険者の店にやってくるかというと、彼女が冒険者という訳ではなく、別の事情がありました。。

モーブ「こういう、色んな人の行き交うところでしか、ゆっくり会えなかったというか……」

メッシュ『ええ、聞いていますよ』

モーブ「え、聞かれてたんですか。いやーもう、困ったものですよ。真語魔法学部と操霊魔法学部の諍いは……」

メッシュ『まったくです』

ムーテス「すごいな、会話しているように聞こえる」

ジーク「……何げに役に立つな、メッシュ」

実は操霊魔法学部内で盗難事件がありまして、その犯人が真語魔法学部の人間だと言われているのです。

盗難事件が発生した時に両学部の共同研究発表会が開かれていたせいでそういう噂が広まっています。

お陰で両学部の行き来も制限され、多くの人が困っているのです。実際モーブとミーブは公然と会う事ができないでいますし。


ソラ「そろそろ、みんなと合流するの。……あ、またお姉ちゃんイライラしてる。嵐、通り過ぎるまで隠れてよう」

エア「大丈夫、ムーブくん抱っこして、アニマルテラピーされてるから」

ムーブ「くるちー、くるちー」

兄姉(おろおろ)

ソラも合流したので学部内に出入りする権利をある程度有するようになりました。あとタビットにも人権を。


その盗まれたものというが、なんと<守りの剣>というのだからかなり深刻な状況です。

<守りの剣>とは穢れを排斥する魔力を秘めた魔剣であり、魔動機文明時代に量産された品です。

これのお陰で蛮族やアンデッドを地上から一掃した実績があり、現代でも主要な都市には常備されているものです。

今まで貯めてきた<剣のかけら>が何故名誉に繋がるかというと、この<守りの剣>の力を維持する為に必要だからです。


具体的には穢れが2点で不快感を覚え、3点で頭痛が始まり、4点以上だと行動不能に陥ります。

目安としては4レベル以下の蛮族は3点、それを上回れば4点、アンデッドは5点の穢れを有しています。

よって高位の蛮族やアンデッドは街に近づけず、レッサーオーガあたりはギリギリ侵入できるようになっています。

勿論これには例外もあって、一時的に穢れを抑えるアイテムや能力、あるいは穢れを持たない蛮族もいる。

ちなみに1点以下だと影響がないので、ナイトメアやコボルド、軽度の蘇生経験者等は生活に支障はありません。


これが無くなると、この街の場合地下の遺跡から蛮族が侵入してくるケースも考えられますね。

ただ元々操霊魔法学部の所有する<守りの剣>はあまり強力なものではありませんけどね。

モーブ「……だって、操霊魔法学部なんですよ?
     操霊魔法で、この街に要求されることといえば……ねえ、それを重ねてたら……」

一度蘇生すると必ず穢れは1点上昇し、蘇生までの日数によってはそれ以上の穢れが発生する可能性があります。

ナイトメアでも一度ぐらいの蘇生ならともかく、それ以上になると蘇生した瞬間に大変な事になりますからね。

そうでなくても研究の都合上アンデッドを扱う事もあるでしょうし、学研都市でも肩身の狭い魔法ですね。


このままでは街の治安にも関わってくるので、ジーク達は<守りの剣>と犯人の捜索の依頼を引き受けます。

報酬は基本的には1万ガメルで、各種ご優待つきです。操霊魔法学部への入学金免除とか、蘇生料8割引とか。

ソラ「……見事に、自分の懐の痛まない方向の報酬」

ちなみに蘇生料は1万ガメルなので、2000ガメルで引き受けてくれる訳ですね。お得なのかな。

もっともそれに要するのは担当者のMPのみ。眠れば回復するという、ある意味無限のリソースですがね。


ジーク「これで、俺たちが上手く<守りの剣>を確保して売り飛ばしたら
     きっとカイン・ガラで学んだコンジャラー連中が大挙して追いかけてくるんだろうなあ……」

モーブ「あ、うちの長兄は、どっかの国から出仕の話が来るくらいのエリートなんで、追いかけてきたら怖いですよー」

判明しているだけで三男一女ですか。この分だと長兄は真語魔法と操霊魔法を両方こなすウィザードかもしれない。


詳しい情報は翌日にモーブの師匠から聞けるというので、今夜はこれで解散です。

エア「明日、操霊魔法学部にモーブを訪ねて行けばいい?」

モーブ「はい。それでお願いします。……弟返してください

エア「…………なんのこと?」

ジーク「ヒョイ(摘んで)ぽい(投げる)」

エア「ああああ……ふわふわ……なんとことを、酷い……(涙目)」

ムーブ君も早く魔法を覚えてある程度自衛できるようにした方がいいかもしれない。いっそ前衛技能の方がいいのかな。


★現場一回

翌朝、久しぶりに宿で眠れた一行は身繕いをして操霊魔法学部にいきます。

エア「この街のルーフェリア神殿で水浴びもしたし。ピカピカ身繕い。あ、忘れてた。ソラもお風呂に入れなくちゃ

ソラ「……お姉ちゃんから逃げまわりつつ、精霊魔法学部にいくの。お風呂、きらい。ちょっと入って、すぐに逃げる」

エア「人に会う時には、身繕いしなさい!服も全部洗濯して、がみがみ」

ソラ「あ、でも、洗った服を身につけるのは好きなの。洗濯は嫌だけど。
    だからきっと、こっそりと汚れた物はお姉ちゃんの荷物に……」

エア「もう、勝手なんだから。ざぶざぶ」

がみがみ言いながらもちゃんと洗濯してあげる甲斐甲斐しいお姉ちゃんでした。

あと執事も主君のお世話ができて嬉しそうです。やはり執事としては有能なんだろうか。


操霊魔法学部に着くと既にモーブが待っていました。

モーブ「おはようございます、みなさん」

エア(極自然に弟を抱っこ

ジーク「……諦めたら、そこで試合終了だぞ、戦えモーブ。
     とりあえず……そうだな、ともかくお前に、変なものを持たせた師匠に、一発がつんとかましに行くか」

モーブ「やめてくださーい。フラービィゴーレム、直してくれなくなっちゃいます」

そしてその通りにして師匠を恐縮させたりします。やっぱり自分で作れるように修行した方がいいかも。


さて盗難時の詳細ですが、3日前のことです。二学部間で交流していた時に出火するという事件がありました。

幸い小火程度で済んだのですが、その騒ぎの間にいつの間にか<守りの剣>が盗まれていたそうです。

元々操霊魔法学部内では真語魔法学部に限って交流は盛んであり、それは真語魔法学部内でも同様です。

それ以外の学部の人も資料の閲覧に訪れる事はありますが、<守りの剣>を盗める程深くに立ち入る事は許されていない。


よって容疑者は二学部の人間に限られ、既に数名の容疑者がピックアップされています。

エマーソン:真語魔法学部所属のエルフ。ソラにお菓子を挙げた事もある。

レイクリス:真語魔法学部所属の人間。ソラの元彼

レイチェル:真語魔法学部所属の人間。詳細不明。

ケアリー :真語と操霊の両方を使う魔導師(ウィザード)の女性。新参者で自ら自宅謹慎中。

他にも二名ほど操霊魔法学部所属の人間が挙げられますが、最後まで名前も出てこないので関係ないのでしょう。

この中ではやはりソラの元彼であるレイクリスに注目が集まりますね。既に中年男性ですが。

あと1人だけ魔導師なケアリーさんも毛色が違いますね。この場合籍は両方の学部に置いているのでしょうか?


続いて一行は犯行現場を検めにいきます。道中陶芸教室よろしくゴーレムを動かそうとする生徒さんの姿も見えます。

メッシュ「にっこりと爽やかに笑っておきましょう」

女生徒A「きゃーっ」←黄色い声

女生徒B「ルーンフォークよ、ルーンフォークよ。何処の階層から掘り出されてきたのかしら」

女生徒C「どんな機能があるのかしら

メッシュ「そういう興味のもたれ方は必要ありません!」

ジーク「女の子の注目を浴びていて悔しい。ええい、じろじろ見るな、こいつは俺のだ!

そして別の意味で黄色い歓声が上がったとか。立派な貴腐人に成長する事を期待しています(笑)


塔の地下に降りると、そこはあまり広くない殺風景な部屋でした。天井は高くしっかりしています。

その中央に柱が立っていて、床から3m程の位置に十字の窪みがあります。そこに<守りの剣>が収められていました。

その高さからリルドラケンのような長身の種族か、"レビテーション""ウォール・ウォーキング"等の使用が疑われます。


"ウォール・ウォーキング"は5レベルの真語魔法で床や天井に張り付いて歩けるようになる魔法です。

"レビテーション"は6レベルの真語魔法で地上10mまでの任意の高さに浮遊できます。SWからの御馴染みの魔法ですね。

他にも〔剣の加護/風の翼〕のように種族的に飛行可能な者の犯行かもしれませんし、これだけで犯人を特定するのは無理です。


ここで一行は前回戦っためっさー大柄(レッサーオーガ)の存在を思い出します。

幸いここは学び舎です、資料も豊富なので《文献判定》を試みます。これに成功すれば《魔物知識判定》の失敗も補えます。

ソラ「(ころころ)……やっぱり、未来を見ないとね、うん

ムーテス「何か別のことに気をとられてたっぽいね」

元彼が気になって作業に集中できなかった、という事にしておきましょうか。

しかしレッサーオーガの存在は重要です。4レベルなので穢れは3点、結界内に侵入できる上に《人化》できますしね。

必然と工作員として街中で遭遇しやすい蛮族であり、同時に駆け出し冒険者のボスキャラになり易い蛮族でもある。


エア「ソラ、抱っこする?(ムーブ君を差し出す)」

モーブ「返してくださいー弟返してくださいー」

ジーク「悪い、ちょっと我慢してやってくれ。アレを抱いてる間は、エアは機嫌がいいから」

ムーテス「エアさん、腫れ物じゃないっすか!

ジーク「そうだよ

エア「断言された。ムーブくんの耳の間の柔らかい毛並みをしゃーって擦って遊んでる」

ソラ「……悔しいから。ちょっとだけ、お姉ちゃんからムーブくん貸してもらって、抱っこしてる。
    あんな生き物は、いないの。プラズマだもん(拗ねた)」

仕方ないのでモーブが代わりに《魔物知識判定》に成功してデータを教えてくれました。

知名度9だからそう何度も失敗する相手じゃないんですよね、本来は。これでめっさー大柄からも卒業です。


更にスカウト技能で《探索判定》を行います。屋内なのでレンジャー技能は使えません。

メッシュ「承知。優秀なスカウトっぷりを、ご覧くださいませ、ジーク様。(ころころ)11」←成功

ソラ「……あ、6ゾロ」←平目

ジーク「ソ、ソラ!一応、メッシュの立場というものを考えてやってくれ!」

メッシュ「ジーク様、そういうお気遣いは必要ありませんから!」

これで柱に3日前に付着したと見られる血痕を発見します。少し離れた場所にも大量の血を拭った痕跡を発見。

ここで戦闘が起こり、学部内の人間がやられてしまった可能性がありますね。犯人はやはりレッサーオーガかもしれない。


★聞き込み一人目

次は容疑者への聞き込みです。まずは新参者で両学部に縁のあるケアリーさんを訪ねます。

ジーク「こんにちわー(ガンガン)」

ケアリー「はぁい、だぁれえ?」←色っぽい

メッシュ「操霊魔法学部のほうからきました、ここを開けてもらいましょうか!」

ジーク「呪文書とかゴムひもとか、歯ブラシ各種取り揃えてるんで、よかったらー」←訪問販売か

ケアリー「じゃあ〜、ちょーっと、見せてもらおうかしらぁ。歯ブラシ、欲しかったのよネェ」

訪ねて早々にちょっと頭の弱そうなお姉さんという印象を抱きました。


ただし本人は自分が容疑者だと自覚していて、現状を好ましく思っていません。

ケアリー「早く解決して欲しいのよねぇ。でないと、彼氏にも会えないしー」

ジーク「彼氏?恋人いるんだ」

ケアリー「うん。この騒ぎのせいでぇ、仲良くなったんだけどぉ。レイクリスって言うのよぉ」

これには一気にソラの機嫌が悪くなりましたが、お姉ちゃん他は彼女の交際歴なんて知らないので突っ込めない

今後も彼女が自分の口からカミングアウトするか、当時を知る人物が証言してあげるかしないと明らかになりません。


ケアリー「真語魔法学部の結構デキる、お堅い人って噂だったのに、
      結構そうでもないみたいでぇ、何ていうの?いわゆる、ギャップ萌え?

本来お堅い筈の人がそうでもない、急な人格の変化は入れ替わりの伏線というのがお約束というものです。


またこのケアリーさんも新参者で怪しいので《真偽判定》をしておきます。

これは「偽物ではないか?」という疑念を持った時に行い、その真偽を冒険者+知力で判定するというものです。

見破れるものは演技嘘の発言変装幻覚、そして人族に化けた蛮族等です。実は《人化》も見破れます。

まず怪しい人物がいたら《真偽判定》で偽りがある事を確信し、それから《魔物知識判定》というプロセスになるでしょう。

SW2.0からの新要素に見えますが、SWでも不信によって幻覚を見破るルールがあります。判定の一種と定義されたのは初ですが。


ところがこれも出目が悪くて誰もケアリーさんの真偽は見破れませんでした。

レイクリスについてはソラが人となりを知っていますが、若い頃しか知らないので今はどうなってるか不明です。

ソラ「いわゆる紅顔の美少年

メッシュ「今や厚顔無恥の中年というわけですな」

ソラ「……悔しい、そんな場合でないのに、座布団あげたくなった」

ケアリーさん曰く、今は堅物で融通が利かない人だという評判があるんだとか。


ソラ「うん、四角四角で真面目な人だったの。年下の男の子」

メッシュ「はっはっは、そういう人ほど、歳をとって遊びを覚えると、嫌らしくなるのですよ

エア「ジーク、ああいうことを、このルンフォにインプットしてきたわけ?」

ジーク「俺のせいじゃない!勝手に情報収集した結果だ」

メッシュ「お任せください、この私の高性能な頭脳は、百を聞いて一を知ることなど、造作もありませんゆえに!」

ジーク「まちがっとる!」

メッシュ「はっはっは、世の中99は無駄ということですよ

ルーンフォークの人格ってどういう風に形成されるんだろう。やはり人間のように環境と教育次第なんだろうか?


さて、ここまで聞いた時点でレイクリスの人格の変化は非常に怪しいと見ていいでしょう。

エア「内心吐露していいよね?ぶっちゃけ、別人っしょ

ジーク「まあ、まだ世間からレイクリスの評判を聞いたわけじゃないから、なんとも言えないが。
     ほら、「大学教授、痴漢で逮捕」とかそういう隠れた実態かもしれん」

しかし世間の評判も真面目な人というものらしく、研究や教室の管理にも熱心な優秀な人物という印象です。

また彼はクロノアさんの担当する教室の副責任者でもある。彼女が不在の時には教壇に立ったりするんだとか。


今のところケアリーさんの証言だけが食い違っています。

そして昨晩レイクリスは大きな荷物を持って彼女の部屋を訪れたそうですが、中身はケアリーさんも知らないそうです。

早速非常に怪しい人物が浮かび上がってきましたね。これは現在のレイクリスにも会っておく必要があるでしょう。


★聞き込み二人目

レイクリスは真語魔法学部の宿舎に住んでいます。入り口には警備員室があり、そこで彼の話を聞けました。

エア「レイクリスさん、最近どう?」

警備員「ああー、そうだね。怪我はよくなかったんかねえ」

何でも3日前に怪我を負って帰ってきたんだとか。所持技能がソーサラーとセージだけだから怪我を治せません。


事情を話して彼の私室に通してもらうと秘書のゼクレさんが出迎えてくれました。

部屋はそこそこの導師なので広く、書斎と寝室があるタイプです。見習い時代の大部屋を知るソラには感慨深い。

ゼクレさんの証言によると、やはり3日前の犯行当時は妙によろよろとしていて、深刻な顔をしていたそうです。

そして昨日は私物の探し物をしていた様子です。あちこちひっくり返して、片づけが大変だったとか。


ゼクレ「思わず声をかけた、私の名前も、咄嗟に出てこなかったようですし」

ソラ「……そんなど忘れするような人じゃなかった、ね。初対面の人でも一発で名前覚えるような人だったのに」

3日前に怪我を負って帰ってきた時はゼクレさんの顔も認識していた様子ですが、探し物のあたりから明らかにおかしいです。


そこでソラはこっそりとゼクレさんに話しかけます。

ソラ「レイクリス、元気?」

一同「おおー、呼び捨て!」

ソラ「あたしが聞いてるのは、ここ何十年かのトータルな様子だけど。
    ……持ち上げられなかった辞書を、ちゃんと片手で持てるように、なったのかなあ、とか」

ゼクレ「ああ、時々運動不足な時には、辞書を片手に運動されてたコトがありますねえ」

ソラ「……ホロリとしてるの」

かつてはスペ○ンカーよろしく虚弱な体質だったようですね。きっとソラの方が力持ちだったでしょう。

そして未だに辞書を使っているところをみると、ただ身近にある重量物というだけの理由ではないのかもしれない。


どうやらゼクレさんは盗難事件の事は知らないらしいので、もうぶっちゃけて協力を要請します。

ジーク「ゼクレさん。レイクリスさんは、もう中身が変わってるかもしれない

ムーテス「うわ!単刀直入に言い切った!」

メッシュ「もうちょっと、搦め手を覚えてくださいませ、ジーク様!」

ジーク「まどろっこしいことはしたくないし、近道があるならそっちのほうがいいだろ」

こうして誠意を持って説得されるとゼクレさんは協力してくれました。拙速が巧遅に勝ることもある


一行はレイクリス?さんが探し物をしていたという書斎に通してもらいます。

エア「ソラの写真が出てくるかも。そしたら、色々と問い詰めてみよう」

メッシュ「ポエミーな日記とか出てきたらどうしましょう」

ムーテス「何言ってるんですか、ここは初々しく交換日記っすよ!」←分かってるなトカゲ

ソラ「みんな、探すもの間違ってるの。あたしは、何となく、探りにくいな……」

ジーク「頼むぞメッシュ。今、お前は、みんなの期待を一身に背負ってる!(肩ポン)」

メッシュ「お任せください!私は、他人の恋路に土足で踏み込むのが大好きでございます!」←フォーマットするぞルンフォ

現在の彼の基準値は5、そして奇跡の出目11で達成値16を叩き出す!いい仕事をしてくれました、色んな意味で(笑)


ジーク「うむ、輝いてるぞメッシュ、まるで蝋燭の燃え尽きる最期の輝きのようだ」

メッシュ「不吉なことを言わないでください!」

これでレイクリスの若い頃のスケジュール帳を発見。実はソラがプレゼントしたものです。

大雑把に経歴を見ると、13歳でカイン・ガラに来て、15歳ぐらいまで謎の人物S(ソラ)との予定が書かれています。

しかし彼女と別れてから、16歳ぐらいからは殆ど人付き合いもなく引き篭もりの研究生活を続けたようです。


ジーク「あ、何だこの「S」って。もう死んでるかも知れないけど
     こいつ昔は彼女いたんだ……って、俺すげーデリカシーない?」

ソラ「うん、脛蹴っ飛ばそう」

ジーク「ううっ、なんで蹴られたのかわからない……痛みから庇ってくれ、ムーテス」

ムーテス「あ、僕はエアさんに抱かれっぱなしの子うさぎ《かばう》のに精一杯だから」

まだ抱いてたのか。という事はモーブもいるはずだけど発言しないと存在が消えますね。


エア「大丈夫、同意のもとだから。ほら、ムーブも「うん」って言ってる(揺さぶってる)」

ムーテス「ちょっと待って、仮に四十の男が五歳の女の子を連れまわして同意って言われても、犯罪だろ普通」

エア「一緒にしないで!」

ジーク「そう、五十の女性が、一歳半の男の子を抱きしめて離さないだけだ

エア「犯罪臭く言わない!」

可愛い子ウサギと若い女性だからギリギリセーフですが、もし人族同士だったら余裕でアウトです。


ソラ「あ、そうだ。ゼクレさん、レイクリス、使い魔連れてた?」

ゼクレ「ええ、連れていましたよ。猫で、大抵は研究室に置きっぱなしなんですけれど……あ。
     そういえば、いませんね。三日前までは、いたのに

ムーテス「使い魔って、主人が死んだらどうなるんっすか?」

ソラ「……死ぬの。いなくなるの」

メッシュ「もう、黒判定して、いいんじゃないですかね?」

それだとケアリーさんも怪しくなってきますね。利用されているのか、共犯なのかは微妙ですが。


ここでソラは冒険者+知力の判定でスケジュール帳の記憶を思い出します。

これで自宅で食事をした思い出や、現《ムーテス・ストリート》で買い物をした思い出が蘇ります。

特に散策の丘という公園で散歩をし、思い出の木に二人で名前を刻んだりと、何処かのギャルゲーみたいな事をしてます。


ソラ「卒業するときに、そこで告白したら、幸せになれる……という伝説があるの」

ムーテス「べたべたっすね」

聞けば幸せそうですが、ソラと別れてから引き篭もった彼にとっては数少ない思い出の場所のはずです。


ジーク「しかし、これだけ状況証拠が出てきたら、思うよなあ。
     このレイクリスってヤツ、もう喰われてるよな。レッサーオーガに」

エア「というか、食べられないと化けられないわけだから」

ソラ「……む。お兄さんとお姉ちゃんに、後ろから蹴りいれて涙目になってる

しかしそういう風に言われるのも彼との関係を黙っているからです。言えば随分変わってくるんですがね。


それでもあまりのデリカシーの無さにソラは部屋から飛び出していってしまいました。

ソラ「お姉ちゃんなんて嫌い!」

エア「え、今までは好かれてた?

ムーテス「そこ、喜ぶところじゃないだろ!」

ジーク「なんだ、ソラ、便所か?

ソラ「……使い魔のフェイで一回お兄さんに攻撃しておく」

ちなみにダメージは2D−1点です。出目によってはムーテスの装甲すら貫くこともある(笑)


しかしトイレと言われたら追いかける事もできません。

ムーテス「今日ずっと変な顔してたのは、腹具合が悪いせいだったのかもしれないし

エア&ジーク「あ、謎は全部解けちゃった!」

メッシュ「全て繋がりましたな。腹痛の薬でも、用意しておいて差し上げましょう」

これでソラはヒロインにあるまじき形で単独行動を取るようになります。


そして彼女がいなくなってから、メッシュは部屋そのものへの《探索判定》でゴミ箱からメモを発見します。

「私の中の、信頼できる大切な思い出の中に、守るべきものを託そう」

その思い出の場所をスケジュール帳の中からピックアップして調べる形になるでしょう。

しかしその具体的な場所はスケジュール帳を読むだけでは不明です。当時を知るソラでないと分からない。


★黄昏教室物語

そもそもソラとレイクリスは何故別れてしまったのか。これはGM自身ソラに設定を委ねているようです。

GM「でも、何でソラとそのレイクリスさん、別れちゃったんでしょうね」

エア「何となく、スケジュール帳を見ると、初々しくらぶらぶな印象」

ソラ「うん、しっかりとした年下の男の子で、ちょっと堅物で、
    はじめはあたしが面倒見ていたんだけど、優秀でどんどん追いつかれて拗ねたり、落ち込んだりしてたの」

途中からは逆に面倒を見てもらったり、補習に付き合ってもらったりと、立場は逆転した模様です。


やがて外出中に絡まれた時にソラは〔異貌〕を発動してしまいます。

ソラ「レイクは、気にしないって言ってくれたんだけど、あたしのほうが気まずくて

そうして疎遠になっていき、ルーフェリアに帰ることになって別れてしまったということです。

レイクリスがずっと独身だったのも、ソラを傷つけたという自責の念から人付き合いを敬遠するようになったからかも。


そしてソラは何気なく入った夕方の教室でレイクリスの姿をした人と再会を遂げたのです。

レイクリス(仮)「あ、今日は、ここでは授業はなかったはずだけれどね」

ソラ「……レイクリス」

レイクリス(仮)「あー、君は誰だったかな。生徒の数が多くて、覚えてないんだ」

ソラ「がーん!自分でも、思いがけないくらい、ショック受けてる。どうしよう、理性的な判断、できるかな」

主従「いけいけ"ライトニング"、やれやれ"ライトニング"(小声)」

ムーテス「二回回せば、楽勝っすよ(小声)」

レッサーオーガが盗めるのは姿だけです。記憶までは盗めません、下位魔神のダブラブルグのように。

ちなみにHPは素で36点です。魔力7の彼女が2回6ゾロで回しても最大で34点、微妙に倒しきれない。


ソラ「……そっか、覚えてないんだ」

レイクリス(仮)「え、あ、覚えているとも、忘れるわけないじゃないか、今ちょっと忙しくて混乱してね

一同(爆笑)

メッシュ「まずい!こういう男いますよ!」

ジーク「むしろ、本物臭くなった!

ちなみに本人は顔を忘れたら空気を読まずに「誰だっけ?」とか言うタイプの人だったようです。


しかし怪しいと分かっていても死んだと思っていた元彼と再会できた安堵からか、騙されたいという衝動に駆られます。

ソラ「……本当に、あたしのこと、覚えててくれたんだ」

レイクリス(仮)「も、も、モチロンダヨ。授業を、とっていたじゃないか」

他一同「うそくせー!」

ソラ「……無事でよかった(歩み寄る)」

レイクリス(仮)「え、無事って、何のコトダイ?」

ジーク「まずい、ホラーモードに移行し始めてるぞ!急げエア!」

しかもこの場合危険なのはレイクリス(仮)の方という。いきなり鉈とか振り上げて襲い掛かりそうな雰囲気です。

その頃お姉ちゃんは整腸薬と水を持ちながら片っ端からトイレを探し回ったり、聞き込みをしたりと、不審者丸出しです。


ここでレイクリスらしき人は自分は探し物をしていて忙しいのだと邪険にしだします。

ソラ「そっか……忙しいんだ。そうね、二十年も経ってる、ものね。……色々あったにちがいないよね(しょげ)」

レイクリス(仮)「(きゅぴーん)そういえば、二十年前といえば、よくでかけていたね。」

どうやらソラがスケジュール帳の関係者だと気付いたらしく、思い出の場所に案内させようとしています。


このままではレイクリス(仮)に連れて行かれてしまいますが。

エア「ソラーソラー、どこー?」

空気も読まずにお姉ちゃんがやってきました。でもお陰で連れて行かれずに済みました。

でも昔を懐かしむように「何処が思い出深かったか?」と巧妙に聞いてきたせいである程度喋った後でした。

あまりに出し惜しみすると何をされるか分かりませんが、喋ったら喋ったで何をされるか分からないので危ない所でした。


ソラ「……殺人的な目で、お姉ちゃんを睨みたい」

エア「こちらの先生ですか?ソラがお世話になってます(深々とお辞儀)。
    さあ、みんな待ってるから帰るわよ(手をぐいぐい引っ張る)」

ソラ「ぺいっと振り払うの」

エア「ああ、もう、この子はいつもこんなことばっかりして。反抗期なんだから」←妹さんは大人ですよ

父兄の登場もありましたが、相手は情報を貰ったので良しとしてそれ以上踏み込んでは来ませんでした。

後はその場所を実際に調べに動くでしょうから、こちらにできる事はその現場を押さえることです。


ジーク「真面目な話をしよう。このメモと、手に入れた情報を纏めると……
     <守りの剣>を盗んだのは本当に、レイクリスだったんじゃないかという、推測が立つ」

しかしそれは蛮族の手から<守りの剣>を守ろうとしてのものであり、その時手傷を負って現場に血痕が残った。

そしてスケジュール帳に記される自分の思い出の場所に<守りの剣>を隠したが、レッサーオーガに襲われて喰われた。

彼の姿を盗んだレッサーオーガは<守りの剣>を狙って彼の私室に侵入したものの、<守りの剣>は既に隠された後だった。

ヒントの書かれたメモはその場でゴミ箱に捨て、彼の足跡を探って<守りの剣>を探し回っているということです。


ジーク「というわけで、俺たちのすることは一つ!レイクリスの同僚教授に、ヤツの「S」が誰なのか聞いて回る!」

メッシュ「さすがでございます、ジーク様!なんという行動力でしょう!」

プレイヤーは全て知っていますが、あくまでもPCとしてのソラが白状しないことにはそれに基づいて行動できません。


そこでやんわりとソラに自白を促すのですが。

ムーテス「この「S」の話を聞かないと、詳しい場所が分からないんだよねえ(チラチラ)」

ジーク「そうなんだよなあ(チラチラ)」

メッシュ「一体誰なんでしょうねえ。この「S」って

エア「やっぱり彼女だったのかしら」

しかしソラは今更喋るのが恥ずかしいらしく、なかなか口に出すことはできないでいます。

でも行動しないわけにはいかないので、ソラはスケジュール帳を引っ手繰って歩き出します。


ソラ「「S」って昔のクラスメートかも。そうだとすると、大体予測つく」

あくまでも自白はしないのでこんなことを言っていますが、本人はもうバレてもいいとは思っているようです。


★センチメンタル巡り

スケジュール帳に載っていたキーワードを拾うと、「一緒に帰る」「補習」「買い物」「息抜き」となります。

この内「補習」はさっきレイクリス(仮)と遭遇した教室ですが、そこにはなかったようなので別の場所です。


そこで「買い物」が指し示す《ムーテス・ストリート》に向かいます。

ムーテス「うげ」

メッシュ「貴方にも、痛い思い出の旅になりそうですね」

ムーテス「僕、その商店街で、知り合いに声かけられたら、必死で逃げるよ。空飛ぶ勢いで

ジーク「一日一回の貴重な能力を、こんなどうでもいいことで使うなよ!」

ムーテス「どうでもよくないよ!面子がかかってるから!」

そんなものはとっくに潰れてるんだから時間の問題ですけどね。


さて《ムーテス・ストリート》ですが、実はソラの嵌めている指輪(発動体?)はここで買ったものです。

レイクリスが露店で買って贈ってくれた思い出の品です。20年前のことなので店は残ってるか微妙でした。

ところが露店どころか店舗を構える程に成長していました。どこぞのトカゲと違って商売に成功しているようです。


そこには20年前看板娘だった人の姿もありました。

おばさん「あれ?ソラちゃん、ソラちゃんじゃないの?」

ソラ「は。前はお姉さんって呼んでたけれど、今は微妙に呼べない雰囲気
    
……お久しぶりです、お(もにょもにょ)さん」

エア「あら、ソラ、知り合いだったの?妹がいつもお世話になっています」←保護者モード

ここで無理にお姉さん呼ばわりしても嫌味ですしね、本人はまだ若い外見のままだし。


おばさん「今日は懐かしい顔をよく見るわねー。さっきレイクリスくんも来てたわよ

メッシュ「そのレイクリスさん、何しに来たんですか?よくここに?」

おばさん「ええ、昔はソラちゃんとよく来てましたよ

一同「さらっとばらしたー!」

本人が喋れない以上こうしてバラしてくれたのはむしろ良かったのかも。GJおばさん。

レイクリス(仮)は「何か預けものをしなかったか?」とか聞いてきたようです、やはり捜してますね。


実は前回に引き続き、またも彼らはGMの予想を上回る速度でシナリオを攻略しています。

本来は容疑者達からもっと聞き込みを行い、レイクリスの挙動や共犯の可能性を探る予定でした。

それがソラの元彼という設定があったものですから一気に彼に探りが入り、真相に気付いてしまったのです。

犯行時のアリバイトリックやらタイムテーブルやら用意したミステリー風のシナリオだったようですが。

アリバイトリックというのも気になりますが、《人化》を利用した入れ替わりトリックとかかもしれない。


次に向かったのは飲食店です。以前はハンバーガー屋だったのがレストランになっていました。

ソラ「昔は一個のハンバーガーを半分こして食べたっけ。……自分で割って、大きいほうを自分で食べた

エア「途中まで微笑ましかったけど、その食い意地何とかしなさい、ソラ」

何だか何処も大繁盛してますね。当のムーテスはこんな状態なのに。こんな状態なのに(二回言った)。

ここではソラが「店長を出せ」と武装した仲間と乗り込んだものだからクレーマー扱いされました。

レイクリス(仮)は忘れ物コーナーで何か捜していたようです。想像すると中年男性の悲哀を感じますね。


次の場所ですが、その前に街中の「遭遇表」を振りました。毎度御馴染みのGM謹製です。

ここではムーテスが専用の「遭遇表」街の人に気付かれるというイベントが発生しました。

街の人A「あ、あれ、ムーテスさんじゃないか?」

街の人B「おい、本当だムーテスさんだよ」

ムーテス「やあ、そうとも、ムーテスだ。君たちも元気でやってるかい?」

彼がこんなに強気なのは思ったより懐が暖かかったからです。見得は晴れるので。


すると人の輪はとんどん大きくなっていきます。

街の人C「わ、すげえ。ムーテスさんだ」

街の人D「え、ムーテスだって?」

街の人E「え、どこどこ?」

群集「ムーテスさん、うろこをくださーい!!(殺到!)」

たちまち人の波に飲み込まれる一行。仕方ないのでムーテスが囮になって何処かに逃げていきました。

この時まだついてきていたモーブも巻き込まれて連れて行かれてしまいました。まるでコ○ケのようです。

お陰で商店街は非常に歩きやすくなりましたが、帰ってきたら〔鱗の皮膚〕の種族特徴がなくなってたらどうしよう(笑)


あとジークは呪いの人形を押し付けられ、エアは暴発した染料を頭から浴びました。

エア「今日一日、肌が紫色です

ジーク「精神抵抗には成功したから、ぬいぐるみを背中に背負っていく

ソラ「……変な集団」

エア「ひみつですが、抱っこされてるムーブくんも紫

ソラとメッシュは何もありませんでした。つまらない、どうせならメッシュは記憶が1年ぐらい飛べばいい(こら)。


次は「息抜き」が指し示す散策の丘です。この辺りではベタなデートスポットのようです。

メッシュ「カップルの中に乱入するのですね、お任せを」

ソラ「ちがう。気が付いたら、ペアの男女の間を突っ切るように爆走してるだけ」←迷惑

エア「あら、一人もののコンジャラーが"スパーク"の練習してるわ」

ソラ「それは、頑張れ」

それはあえて自分を追い詰めるという苦行ですか。しっと○スクよろしくアベック(古)を襲わないか心配です。


そしてこの頃には「レイクー、レイクー」と必死に呼びかけながら走るソラでした。

ジーク「……それ見ると、俺たちデリカシーなかったよな、と反省しちまうなあ。
     ソラの知り合いに「もう死んでるなー」とか「喰われてるよな」とか連呼してたし」

エア「そうね、大人しい妹が、あんなに必死になって呼ぶような相手だったのね」

メッシュ「大人しい?」

エア「そう、思い込みたいのっ!」

まぁそれについてはソラが黙っていたのも原因なんですがね。そうと分かって連呼したら最低ですけど。


ジーク「ソラ、仇は討ってやるからな」

ソラ「仇っていうなー!

そしてソラのグーパンが脅威の2連クリティカルを叩き出し、11点の合算ダメージを叩き出します(本当に殴った!)。

これだと防護点5点のジークでも6点の適用ダメージです。<パンチ>とはいえフェンサーが繰り出すとクリティカル値が下がる。


ジーク「恐るべし乙女心」

メッシュ「そこな神官、彼女に"キュア・ディジーズ"をお願いします」

エア「しょうがないのよ。"サニティ"でも治らない恋の病だから」

こればかりは魔法でも治りませんものね。それは時にどんな魔法よりも強力で精神抵抗すら許しません。


やがてムーテスも合流し、一行は綺麗な花壇の前でうろつく不審な男女を発見します。男の方はレイクリス(仮)です。

ケアリー「あらぁ、あなたたち」

ソラ「……何やってるの」

ケアリー「えー?そんな、ここにきたら、普通は逢引きに決まってるじゃないー!」

ここでソラは彼女を保護しようとこちらに招き、背中に庇います。どうやら共犯扱いはしないらしい。


そしてソラは一対一でレイクリス(仮)と話します。

ソラ「レイク、レイク。よくここに来て、お花を見たよね。カップルの鐘を鳴らしたりしたよね。
    とか言いつつ、超嘘。鐘は、レイクが恥ずかしがって鳴らさなかった」

レイクリス(仮)「ああ、そうだねー。ガランガランと鳴らしたなあ。懐かしいよ」

ソラ「……もらった「イヤリング」今でも大事にしてるよ。超嘘。もらったのは、指輪」

レイクリス(仮)「わあ、嬉しいなあ(にこにこ)」

エア「許すから。やっちゃいなさい」

完全に墓穴を掘ってます。これでソラも彼が既に入れ替わられていると確信を持たざるをえません。

本当はもうとっくに分かってたのかもしれないけど、それでも最後まで無事だと信じたかったでしょうにね。


そしてその時、冷たい声が一行の後ろから聞こえます。

ケアリー「あんたバカでしょう」

すると彼女の下半身が蛇に変身。やはり彼女も蛮族で、むしろレッサーオーガの上司だったようです。

ところがまたも《魔物知識判定》に全員失敗。またも正体が分かりませんでしたが、ラミアです。


ラミアは6レベルの蛮族で、上半身は美しい女性、下半身は蛇の姿をしています。

若い人族の血を吸わないと生きていけないため、《変化》によって人族に変身して人族の社会に紛れ込む事があります。

真語魔法/操霊魔法を5レベルで使える魔導師であり、《吸血蛇》の能力で血を吸い適用ダメージ分HPを回復できます。

ただし中には人を襲う事に苦悩する個体もいて、必ずしも人族と敵対する種族ではありません。PCにもなれます。

ちなみに穢れ度は2点なので<守りの剣>の影響は不快感に留まります。レベルの割りには穢れの少ない種族ですね。


ケアリー「このバカ!誘導されてるのに、気付かないのかい。役立たず!
      だからアタシがこうやって歩き回って、<剣>の在り処を捜さなくちゃいけなくなるんだろう!
      穢れを一時的に下げる護符はあっても、頭痛は激しいんだよ!」

この発言からこのセッション時にはラミアの穢れを4点程度と考えていたと推測できます。

4点だと結界には入れないから、その護符で1点下げて3点になれば頭痛はするけど侵入できるという形ですね。

その後ルールが整備され、「バルバロステイルズ」で正式にラミアの穢れ度が決定したという経緯ではないでしょうか。


そしてレイクリス(仮)も最早正体を隠そうとしません。

レッサーオーガ「で、でも姐御。食ったやつの思い出の場所に隠してるって、聞いたじゃないですかー。
         だからこうしてー塔の研究者一人食って、剣を持ち出すまでは、上手くいったじゃないですか……」

どうやらエマーソンさんを最初に食べて姿を盗んで侵入したようです。入れ替わりは実は2人いたわけですね。

剣を持ち出したということは最初に盗んだのはやはりレッサーオーガで、レイクリスはそれを奪い返して逃走したのでしょうか。


1ラウンド目

先制を取ったケアリーは部下を巻き込んで"スパーク"を使用し、一行にそこそこのダメージを与えます。

しかしうっかり部下にクリティカルし、それ以上のダメージを与えてしまいます。実は知力+4相当で魔力9もあるんですよね。

レッサーオーガはソラに乱戦宣言。戦闘開始時には彼女だけ突出してレッサーオーガと向き合ってましたからね。

しかもケアリーを背中に庇う形だったから実質挟み撃ちの形です。早く戦線を立て直さないとエアまで巻き込まれます。


ソラ「すごく、すごく、怒ってるから剣を構えて、〔異貌〕発動

実はこれが本編では初披露です。角が肥大化して肌は紫になり、鎧による制限も発生も動作も必要なく魔法を使用できます。

そして目の前のレッサーオーガに"ライトニング"を発射し、2連クリティカルで26点ダメージを叩き出します。

これで"スパーク"の効いていたレッサーオーガは即死。本当に2回回して倒してしまいましたね、敵のアシストがありましたが。


エアは全員にキュア。メッシュはタゲサを使いながらケアリーに攻撃するもハズレ。ジークとムーテスは当てました。

ケアリー「いたーい」

ジーク「ごめんなさい、年上の女性には弱いんだよなー俺」

そして今回の《かばう》は怪我が残っているジーク。"スパーク"もそうですがソラのグーパン、略してソラパンの影響でしょうか。


2ラウンド目

1人残されたケアリーはムーテスに5レベルの真語魔法"ブラスト"で15点の魔法ダメージを与えます。鎧が利かないから痛い。

これはマナの塊を敵にぶつける攻撃魔法であり、威力はなんと30。SWでいう"バルキリー・ジャベリン"と同じ威力ですね。

ルールが違うので全く同じではありませんけどね。むしろバルジャ枠は8レベルで威力40の"エネルギー・ジャベリン"かも。


エアはムーテスとジークにキュア。メッシュは投げ損ない、ジークとムーテスはまたも命中です。

ラミアは魔法使い系のモンスターなので防護点3点のHP28点と薄く、13点とか16点とか食らうと結構通ります。

<剣のかけら>が6つ入ってHP+30点されているにしても、このままでは13点の攻撃を6発も食らったら倒れてしまいますね。

あとムーテスはダメージを見るに<ヘビーアックス>を両手持ちで使ってるようですね。脅威が魔法なら盾は役にたたないからでしょう。

ソラは"パラライズ"で回避力を下げようとするも抵抗される。魔法使い相手なら命中力を下げるよりは有効でしょう、吸血は怖いけど。


3ラウンド目

ケアリーはまたもムーテスに"ブラスト"です。強力な攻撃魔法ですが相手はまだまだ撃てるはず。

なにしろMP42点に<剣のかけら>で+6するとMP48点です。6点消費の"ブラスト"でも最大8発も撃てる。

既に6点消費の"スパーク"を撃ってるので最大7発ですがね。既に2発撃ってるのであと5発も撃てる計算です。


GM「本当は、ドラゴンを「吸血」したいところなんだけどな、おいしそうだし」

ムーテス「ちがうっすよ、僕はドラゴンじゃなくて、トカゲなんで!

エア「リルドラケンのプライドはどうしたの!」

ムーテス「プライド持って死ぬよりは、今だけはリルトカゲンということで、汚名をかぶっても生き延びたい」

また無駄に語呂のいいニックネームですね。グラスランナー、略してグラランよりいいネーミングかも。


しかもこの"ブラスト"がクリティカルして22点とか出たものだから、ムーテスのHPは残り3点。

エア「……そのダメージ、他の男衆が食らったら、総崩れよね」

メッシュ「何が何でも庇ってくださいー!

ジーク「あ、こら、メッシュ!俺俺、俺を庇ってくれムーテス!

でも《かばう》できるのは近接攻撃や射撃攻撃のみ。魔法や特殊能力、範囲攻撃等から《かばう》ことはできません。

しかもこの状態でかばったらムーテスが倒れますしね。既に相手のHPも補正分だけとはいえギリギリの戦いです。


ところがメッシュがまたも投げ損ない、ムーテスはエアのキュアと自分の薬で回復するも心許ない。

仕方ないのでソラが乱戦エリアに参加。敵を挑発して1発だけ"ブラスト"を受けるつもりのようです。


4ラウンド目

ソラ「一回なら、ダメージ耐えられる。その間に、戦線立て直して」

ケアリー「アンタが、レイクリスを見破ったんだっけね」

そして予想通りに"ブラスト"を発射。しかもクリティカルしてソラのHPは残り1点、うっかり慢心アタックです。


ソラ「……一瞬、レイクが呼んでるような気がした。でも、食らった瞬間、汎用蛮族語で「くそぶす」って呟いておく」

ジーク「女の戦い、怖え(がくがくぶるぶる)」

男同士の殴り合いとはまた違った生々しさがありますよね。


そしてソラの気持ちに応えるかのようにメッシュの《投げ攻撃》が6ゾロで炸裂します。

ケアリー「やぁん、痛いこと、しないでっ」

ソラ「やかましいわ(ぼそ)」

転倒状態だと《生命抵抗力判定》と《精神抵抗力判定》を除く全ての判定に−2の修正が入ります。

よって魔法の《行使判定》にも−2が入りますが、ラミアの場合魔力は高いのでそれでも7では抵抗を破られる可能性はある。


そこでジークは一撃で仕留めようと《魔力撃》発動。うっかり1ゾロを出すも〔剣の加護/運命変転〕で6ゾロで命中!

これが1回回って29点と強烈な一撃となり、ラミアを倒したのです。1回回ってこのダメージだと盾を捨てて両手持ちですかね。


★<剣>の行方

こうして戦いは終わりましたが、ソラに突きつけられたのは悲しい現実です。

ソラ「泣きそうになりながら、近くのお兄さんにしがみつこう。ちなみに、まだナイトメア〔異貌〕モード」

ジーク「あ、そこまではしなくていい(さらっと)」

ムーテス「うわ、甲斐性なし全開!」

メッシュ「台無しでございます、ジーク様!」

流石は"旗折りの"ジーク、主人公としてのお約束の展開すらひっくり返します。


そしてソラはナイトメアである事を気にした自分の僻みを口にしますが。

メッシュ「失礼な話ですよ。ナイトメア。我々は、角があるないで差別をするような、原始的な生まれではありません」

ソラ「……ちょっと嬉しい」

メッシュ「力いっぱい却下で御座います。
      私は単なる、超個人的な嗜好の元に、精神力豊かな貴方を思いっきり僻んでいるだけで

ムーテス「さらに、追い討ちをかけるダメ主従だなあ」

まぁ元気付けているのだと好意的に解釈しましょう(笑)


エア「でも、そういう人が、思い出に託した<剣>の在り処を調べるのはソラの大事な、最後の役目だと思う」

ムーテス「え。生き返らせてもらったら、ダメなんですか?

一同「…………(沈黙)」

依頼主は操霊魔法学部ですしね。場合が場合だし、レイクリスが同意すれば蘇ってくるでしょう。

蘇生条件として頭部と脊椎が残っている必要がありますが、ケアリーの家でレイクリスの遺体を発見したので大丈夫。

またこの時ラミアの計画書を発見。<守りの剣>を除いて地下の遺跡から街に攻め上がるつもりだったようです。


エア「……ふ、いいこと言ったつもりだったのに、リルトカゲンに台無しにされちゃった(肩竦め)」

ソラ「あ、ううん。ちゃんと、探す。お姉ちゃんの言うとおりだと思う。多分、あたししかわからない」

ちょっといい話っぽく終わりそうでしたが、1回ぐらいの蘇生ならナイトメアと同じなので問題ありませんしね。

ちなみに死後4日以上経つと1日毎に蘇生時のリスクが増しますが、まだ3日なのでギリギリセーフ。


残るキーワードは「一緒に帰る」です。レイクリスが寮暮らしである以上、これが指し示す場所は1つしかありません。

ソラ「……うちに帰る!

するとソラの私物が入れられていた箱の中に見慣れない魔力を帯びた短剣が見つかります。

ソラ「座り込んで<剣>ぎゅってする」

エア「頭撫でて、傍にいる」

ここが彼にとって信頼できる思い出の場所であり、大切なものを託すことのできた場所です。


その頃主従の方はというと、丘で木の幹に掘られた2人の名前を発見。更にそのうろに宛名のない手紙を発見します。

「この二十年、信頼できる自分の思い出がここにしかないことに気付いた。
 秘書に託せば巻き込まれるかもしれない。
 かつての大切な人のもとに、守りを隠す

彼はソラが帰ってくる事を知らなかったわけだから、実際はクロノアさんに託したのかもしれません。

でもそれだけでは彼女の私物の中に隠す必要はありません。ただでさえ散らかってた家です、隠し場所はいくらでもあった。

それでもあえてあの場所に隠したというのが彼の偽らざる気持ちでしょう。きっと自分の代わりに守ってくれると信じてね。


こうしてこの事件は幕を閉じました。<守りの剣>は操霊魔法学部に返却されました。

ソラ「……それでね、もらえた報酬はレイクリスの蘇生資金にしてくださいって、あたしの分、置いていく

GM「え、置いていくんですか?」

ソラ「うん。いらない。冒険者としてじゃなくて、個人的な感情で動いた気がするから」

報酬は1万ガメルと蘇生料8割引。1人あたりの報酬は2000ガメルで、8割引の蘇生料と等しい。


ジーク「じゃ……俺も、いいや。俺の分も残しておく。
     俺にとっては、ここの仕事は、本当に待ってる仕事の暇つぶしみたいなものだったし」

エア「そうよね、わたしとしては蘇生なんて神に背くこと、したくないけど。
    でも、ソラの大事な人の香典みたいなものよ。置いてく」

メッシュ「ジーク様に従いましょう」

ムーテス「うう。みんながそんなことすると、一人でもらいにくいじゃないか!」

既に蘇生に必要な額はオーバーしていますが、気持ちが大切なので。

ムーテスは悩んだ末にレイクリスに投資する事にしました。将来冒険を斡旋してくれるかもしれないし。

それにレイクリスの本職はクロノアさんが発掘したアイテムの鑑定研究なのできっといいコネになる。


ソラ「……「元気でね」って呟いて、帰る」

エア「蘇生した顔、見なくていいの?」

ソラ「うん、いい。いこ?」

こうした彼らの好意により"鑑定者"レイクリス・カッスルは普通よりも早く蘇生しました、

また後に不慮の事故等で蘇生し、穢れを得た学生の精神的相談役として多くの人の力になっていきます。


第六話 逃げた迷子を見つける方法

★成長成長

今回のキャラクターシート


今回の能力値の成長は以下の通り。

ジーク:精神力18→19

ソラ:筋力21→22

エア:生命力19→20

メッシュ:筋力18→19か生命力17→18

今度はメッシュに2回連続で申告がないので2回分の成長を先取りして記入しています。

ソラは<怪力の腕輪>を購入して筋力24に到達。作中は<剛力の指輪>とありますが多分誤りです。

次巻では<怪力の指輪>という誤植があり、筋力が成長せずに24になっているため<怪力の腕輪>でないと計算が合いません。


技能ではジークがファイター4→5に成長し、戦闘特技《頑強》を習得してHP+15点とタフになりました。

ちなみに戦士はファイター技能7レベルで《タフネス》という《頑強》と同様の効果の戦闘特技を自動習得します。

これによりジークは将来的にHP+30点となり、ムーテスとはまた別の意味でのタフさを身につける事になるでしょう。

なにしろ+15点だけでも普通なら冒険者レベルを5も上げないと手に入らない数値ですもんね、正に戦士の役得。


ソラはセージ2→3に成長。SW2.0になって魔術師と賢者の兼業がやりやすくなりましたね。

ムーテスはレンジャー2→3でお薬の効率がちょっとよくなりました。益々《かばう》を使いやすくなりますね。


エアはプリースト3→4に成長。ルーフェリアの特殊神聖魔法"ウォーター・ウォーキング"で水上を歩けるようになりました。

あと対蛮族・アンデッド用の援護魔法"セイクリッド・ウェポン""セイクリッド・シールド"も使えるようになりますね。

前者は命中力+1のダメージ+2、後者は被ダメージ−3という結構馬鹿にならない修正を入れてくれるので心強いですね。


エア「妖精の弓とか欲しかったんですけど……」

GM「でもエア、《精密射撃》とってないですよね?」

エア「え、何でそんなもの、とらなくちゃいけないの。
    弓っていうのは、どこに飛ぶかわからないから、面白いのに(真顔)」

妖精の弓とは<妖精の武器>の弓バージョンでしょう。<魔法の武器+1>のように通常のそれに付加効果のある武器です。

<妖精の武器>の場合武器を魔法の武器として扱えるようになり、ダメージに属性を付与することができます。

Bランク武器の場合は通常の値段に+3000ガメルと<魔法の武器+1>よりは安価に入手できます。


★思いがけないメッセンジャー

前回カイン・ガラに侵入した蛮族を倒した一行は大司教からの連絡を待ち続けていました。

エア「とりあえず、抱き上げすぎてぐったりし始めたムーブを、元気になったら戻っておいで……と、放流」

そしてお兄さんは弟を抱いてだばだばと短い足で逃げていきました。これで当分この兄弟ともお別れですね。


彼らの現在のヤサはソラの母クロノアさんの家です。前回の報酬はレイクリスの蘇生費用にしたから手持ちがあまりないので。

メッシュ「我々男性陣は現在大掃除の真っ最中です」

ソラ「お母さん、掃除できないから。特に、台所なんて、腐海に沈んでる」

ムーテス「変な新モンスターが湧いてた。倒した、経験値にならない?」

GM「湧いてない!倒してない!ならない!」

特に割烹着を着て掃除をするメッシュの姿を見ていると、彼は執事というか家政夫なのではないかと思わない事もない(笑)


またそうして時間ができれば前々回ルーちゃんを攫ったフィルゲンの正体を調べることもできます。

ムーテス「推定蛮族、ということくらいしか。あとは、ドラゴン?」

ソラ「もっと洗練された、ムーテス

ムーテス「それどういう意味っすか!」

何しろここは学研都市。前回のめっさー大柄のように時間さえあれば《文献判定》でできます。

調べた結果彼はドレイクだと判明します。SWだと古竜や古竜王のことでしたが、この世界では蛮族の竜人です。


ドレイクは蛮族のリーダー的種族であり、6レベルの人間形態と7レベルの竜形態という2つの姿を持ちます。


人間形態のドレイクは美しい姿をしており、生まれた時から魔剣を持ち、優美な角と皮膜の翼を持ちます。

主な能力は操霊魔法5レベルと《魔力撃》です。また《飛行》の能力で命中と回避に+1の修正が入っています。

ところが危機に陥ると魔剣の魔力を取り込んで《竜化》し、その瞬間HPとMPが全回復して竜形態となります。


竜形態のドレイクは流線型の巨大な体躯に白銀の鱗を持ち、刃のように鋭い翼を生やしています。

この状態だと胴体(コア)、翼×2の三部位です。胴体が操霊魔法5レベルの能力を持つ点は人間形態と同様です。

また口からは《光のブレス》を発射し、純エネルギー属性の魔法ダメージを1体に対して与えます。

これは連続した手番で使用できない点が救いです。ドレイクに限らすこういう制限を持つ魔物は多いです。

また両の翼は《飛翔》で人間形態の《飛行》と同様の効果を持ちますが、片方でもHPが0になると墜落して効果が失われる

これもまた他の翼を持つ魔物によく見られる特徴であり、まずは翼を折って地上に落とすのは一つのセオリーです。


ちなみに竜形態で《人化》して人間形態になる事もできますが、この際は胴体の受けているダメージを引き継ぎます。

しかも《竜化》の能力は1度使うと1時間は使えないので、人間形態から再度竜形態になって回復する事はできない。

よって人間形態で倒してしまうのがベストであり、竜形態になってもその状態で倒せば仕留められるという事です。


このように多様な能力を持つ恐ろしい蛮族なのですが、更に恐ろしい事に上位種が複数存在しています。

これは爵位によって表現され、1つ上のドレイクバロン(男爵)でも人間形態9レベルの竜形態10レベルです。

同様にドレイクバイカウント(子爵)で12/13、ドレイクカウント(伯爵)で17/18となっていきます。

更に上にドレイクマーキス(侯爵)ドレイクデューク(公爵)もいる筈ですが、「大破局」以降確認されていないらしい。


エア「……超、大物?」

しかもフィルゲンが普通のドレイクである保証はない。爵位持ちである可能性も高い。

もし爵位持ちなら一番下のバロンでも9/10レベルですから、まだ正面から戦って勝てる相手ではありません。


ジーク「とりあえず、まだこいつと喧嘩する気にはなれないと……となると、明日から何しようかなあ」

エア「何、その、ダメ人間的発言」

ムーテス「じゃあ、ジーク。明日は一緒に、自販機のつり銭口を探りにいかないかい?(きらい)」

ジーク「そういう、心躍らないものじゃなくて……いや、ちょっと踊るか」

メッシュ「そこのリルトカゲン!爽やかにジーク様にセコい行為を唆さないでください!」

ソラ「まるで、ドライブかサーフィンに誘うかのごとく、爽やかだったの」

飛行船が落ちたのは仕方ないとして、志まで落ちてしまうのはいかがなものか(苦笑)


そうして駄弁っているとルーフェリアの国にいる姉妹のお父さんであるカームさんから手紙が届きます。

「エアへ、ソラへ。お元気ですか?今度、いつ帰ってくるか、それとなくママに聞いておいてくれないか?

一同「弱ッ!!」

エア「ダメ親父!」

「ああ、そうそう。最後になったけれど、大司教様からの使者と密書を、そっちの街の神学部に向かわせたから」

エア「それを最初に書け!(叩きつける)」

最初に本題を書くとプライベートな話はスルーされる恐れがあったからです。公私混同もいいところですね(笑)


それから一行は神学部の塔に向かいました。塔そのものは小さいものですが、親知らずのように根の深い塔のようです。

これは神様を研究する都合上、最も下の層に眠る神紀文明時代の遺跡を調査する機会が多いためでしょう。

ちなみに現在の神学部ではルーフェリア研究がホットです。ご近所な上に小神への昇格の目撃者の多い神様ですからね。

これは世界的に珍しい事例であり、研究対象としては非常に興味深いものなのでしょう。あくまでも信仰ではなく研究のために。


ムーテス「インディーズからメジャーデビューしたバンドみたいなものかな」

「あの神様は俺たちが育てたんだぜ!」みたいな感じ。それは贔屓のスポーツチームを応援するのにも似ているかもしれない。

昔の「コナン・ザ・グレート」か何かの映画で自分の信仰する神様を自慢しあうシーンがありましたが、それに近いですね。


そうして神学部を訪れるとそこには知った顔がありました。

イスト「やあ、久しぶりー。元気そうだねー」

メッシュ「よくも、おめおめと清々しく顔を出せたものですね」

あの後彼は大司教に"クエスト"をかけられて、この一件が解決するまでは協力を約束させられたそうです。

7レベルの神聖魔法ですが、これもSWから御馴染みの魔法ですね。対象に神の使命を課す魔法です。

SWだとそれに背くと耐え難い激痛で行動不能に陥りましたが、こちらでは毎ラウンド魔法ダメージ1点です。


エア「それを、ルーフェリア的に因果応報と言います」

ジーク「ぶっちゃけると?」

エア「ざまーみろ」

イスト「一生懸命抵抗したんだけどなあ」

何しろ大司教は素で魔力20とかありますしね。プリースト15レベルで知力+5です。

しかも魔法使いとしてはこれでも決して高くはない。彼と同レベルの某妖精使いは知力+11で魔力26とかあるし。


それに大司教の本当の凄さは魔力以上に生命力です。なんと生命力52のマッスルボディー、エルフのくせに。

これは「回復役は倒れてはならない」という考えによるものです。それは自分のみならずパーティそのものの危機です。

エアもそういう方向に進みつつありますが、大司教に比べればまだまだ。まぁ大司教の初期生命力が7なので彼より素質はありますが。


さて、イストが大司教から授かった指令ですが、ルーの居場所を知る情報提供者を保護せよというものでした。

実はルーが向かった方向は予想が付いています。それはルーフェリアの東にある"年輪国家"アイヤールです。


アイヤール帝国は魔動機文明時代にフェイダン地方の大半を領有した大アイヤール帝国を前身としています。

ところが隆盛を極めた大アイヤール帝国は腐敗と堕落の限りを尽くし、「大破局」時には領土の大半を蛮族に奪われてしまいました。

しかし「大破局」後には"英雄帝"ライオットという皇帝の活躍で少しずつ蛮族の勢力を押し戻し、版図を広げていったのです。

こうして奪還した領土は堡塁や壁で覆っていき、壁で覆われた領土をとします。各領は高い自治性と多様な風土を有します。

現在では50以上もの領を有するに至り、"年輪国家"とも"大輪の薔薇"とも"たまねぎ国家"とも呼称される独特の領土を形成しています。

そして現在でもアイヤール帝国は拡大を続け、帝国の東にある"紫闇の国"ディルフラムという蛮族の国家と戦争を続けています。


しかし状況証拠だけでアイヤールに蛮族との関与を問い質すのは難しいものであり、神官戦士団を派遣する訳にもいきません。

何しろ長年引き篭もっていたルーフェリアの国は外交面が貧弱であり、諜報員を他国に送り込むのも大変なことです。

そんな時に情報を知る人物の方から接触してくれたのは渡りに船であり、何としても保護して有利な証言を得たいのです。


その人物はアイヤールの下級貴族にしてライフォスの神官であるイアンという男です。

彼はルーが国元にいると不利益を被ると考えており、それ故に早く連れ戻して欲しいと考えています。

ただし彼のその行動をよしとしない追っ手がかかっているので一刻も早く保護しないといけません。


ジーク「つまり、ルーフェリアっていう国には、俺たちくらいしか手先がいないんだなあってコトが、よくわかった」

GM「まあ、冒険者の店ができたのも最近ですしね」

本来こんな重要な任務ならもっと高レベルの冒険者なり騎士なりが派遣されるでしょうしね。


ジーク「でも、やる気が出てきたな。俺たちパイオニアになれるかもだぞ」

ムーテス「何年か後に、教科書に載ってるかも」

エア「外交失敗?

ソラ「暗殺

主従「やめろー!」

ソラ「破産(ムーテスを指差して)」

ムーテス「いや、これから再び成り上がるんで!今、どん底の、これから盛り上がっていく局面だから!」

しかし先駆者とはそういうリスクの中で成功してこそ先駆者たり得るのです。実に冒険者らしいじゃないですか。


一行はイストから符丁の片割れを渡されます。これを持って「黒眼鏡の英知亭」で落ち合う予定です。

イアンは20代半ばの男性で2人の御付の戦士もいるので、それを目印にしていれば分かるでしょう。

ちなみに報酬は1万5000ガメルです。受け取りはルーフェリアの国まで彼を送り届けた時になります。

流石に"クエスト"つきとはいえグラランに持たせるのは躊躇われたのでしょうね。妥当な判断だと思います。

でも前払いで10点の<魔晶石>を各人にと渡されています。これだけで1つ2000、5つで1万ガメルですね。


ソラ「このイアンって人が大事なの?それとも、情報が大事なの?いざとなったら情報だけもらって……」

ジーク「ちょい待て、ソラ。みなまで言うな!エア、妹の教育に色々問題があるぞ

エア「ごめんなさい、ごめんなさい、この子、まだちょっとフェイダン地方語に問題があるだけなの!」

なにしろさっき習得したばかりですしね。エルフ生まれのナイトメアだから所期言語がエルフ語なんですよね(笑)

自分達が情報を得ればVIP待遇してもらえるだろうと予想してのことですが、それは流石に酷いかも。


イスト「ああ、ちょっと問題のある人物かもしれないけれど、気をつけてね」

ムーテス「え、何それ。もしかして一人称「余」な人だとか?」

ジーク「我かも」

ソラ「麿とか?」

メッシュ「いや、ここはでしょう」

エア「でも、そんなしゃべり方をしてれば、すぐわかる。便利。超OK」

ソラ「朕、身にいこ、朕」

下級貴族のくせにそんな喋り方してたら故郷ではさぞ疎まれていたでしょうね(笑)


★《黒眼鏡の英知亭》の通りすがり

「黒眼鏡の英知亭」を訪れた一行は早速貴族っぽい三人組を探します。

ソラ「朕、朕(いそいそ)」

ムーテス「「朕は一般市民であるぞよ」とか、言ってそうな感じの」

ソラ「バレバレー」

すると三人組はいませんでしたが、店の主人が渋い顔をしていたので話しかけてみました。


主人「少し前に、顔を隠したような三人組が店に押しかけてきてね。
    『おい、何か仕事を、ひっそりと身を隠せるような……いや、その、遺跡に潜るような仕事をくれ』
     って言って、勝手に一件依頼を持ってっちゃったんだよなあ」

ジーク「白昼堂々、覆面か?」

エア「目立ちまくり!」

その仕事とは最近発見された遺跡の調査です。遺跡内を隅々まで歩き回って地図を作るお仕事ですね。

遺跡自体は割りと浅い層にあり、今まで知られていなかったスペースが発見されたというものです。


まだ人が入っていない新しい遺跡に潜伏して追っ手を撒こうとしているんでしょうが、こう目立ってはね(苦笑)

ムーテス「イヤだなあ。何となく、遺跡の一番大きな部屋に「我の部屋」とか書いてそう」

ソラ「それはそれで……埋めて帰る

ただしその三人組を追いかけている連中もいたので、事件に発展しないかと主人は悩んでいたのです。

追っ手は四人組で、リルドラケンとドワーフ、そして人間が2人です。蛮族と思しき人はいませんでした。


ムーテス「……リルドラ……僕じゃないっすよ」

エア「わかってるわよ。ここにいるリルドラケンは、店の隅に色紙の飾られてるリルドラケンとは別人だから

実はこの店は魔動核発見前にムーテスが利用していた店でもあるので、主人とも面識があるはずです。

人間にはリルドラケンの違いは分かり難いかもしれませんが、紫の鱗という特徴はどうしても目立ちますね。


ムーテス「あ、僕、ムーテスさんに憧れる、紫のリルドラケンなんでっ!
      ムーテスさんじゃないですよ、ほらっ、僕の財布を見てよ、十七ガメルしかない
      ムーテスさんのわけがないじゃないか!」

主人「あー。よく似ているけど確かになあ。ムーテスさんの財布にそれだけしか入ってないわけないよなあ」

ジーク「……身を切ってるな、ムーテス」

ムーテス「ここで名前を呼ぶなっ!」

いっそ塗料で鱗の色を変えた方がマシかもしれない。ラッピングバスよろしく結構費用はかかりそうですが。

ここではその三人組のフォローをすると店の主人に申し出て、彼らの向かった遺跡の場所を教えてもらいました。


★新しい遺跡へ

こうして一行は真語魔法学部が管理する遺跡へとやってきました。クロノアさんとは無関係の依頼です。

比較的安全な区画は観光地として開発されていて、案内ロープや順路版があったりと簡単に進めます。

しかしその新しく発見された入り口から先は立ち入り禁止の危険区画。観光の順路にも含まれていません。

よく鍾乳洞なんかで順路とは異なる謎のルートがあったりしますが、そんな感じなのかもしれませんね。


エア「ジーク、遺跡に入る前に"フェアリーウィッシュ"を唱えておいたら?」

"フェアリーウィッシュ"は1レベルの妖精魔法で、自分が契約している妖精に手助けしてもらえます。

持続時間は1時間、その間に任意の行為判定の達成値を+1することができます。ただし戦闘では使えません。

一回使うか持続時間が過ぎれば妖精は帰ってしまいます。それまでは術者の周りを飛んでついてきてくれます。


ジーク「えー。俺が戦闘以外で、どこで達成値上げるんだよ」

ソラ「川渡るときとか

エア「馬乗るときとか

ジーク「……出しとくか。本邦初公開、妖精魔法」

ムーテス「いやっ、噂で聞くところによると、どっちも失敗したの、こっちの人だから!」

メッシュ「はっはっは、そんな昔のことは、覚えていませんな」

ちなみに消費MPは1点と非常に軽い。保険のつもりでかけておいて損はありません。


現在彼が契約している妖精は火、水、土、風の四大ですが。

ジーク「折角遺跡の中にいるんだし、土の妖精かな。ドワーフみたいな」

エア「羽生えたドワーフ……女の子?」

ジーク「うんにゃ、

姉妹「かわいくないっ!」

この世界の女ドワーフは何故か幼女の姿をしていますからね。一方男は伝統の酒樽スタイルです。


ソラ「それって、絶対効果音、ぴよぴよじゃなくて、ぷ〜〜〜んだと思うの」

ジーク「いいんだ、髭面の、ちっちゃくて気まぐれなガルガドさんが飛んでるんだ

GM「やめい」

もしかして"ヘッポコーズ"の関係者でしょうか。しかしそれは絵的には最早嫌がらせですね(笑)


それではここから《足跡追跡判定》です。メッシュは普通に成功しましたが、ムーテスが6ゾロ振って台無しです。

メッシュ「ここはリルドラの顔を立てておきましょうか」

ムーテス「あ、僕ほら、地面見ながら俯き加減に歩いてたから、気がついたんっすよ。小銭落ちてないか

メッシュ「……そっと、チップの振りをして、二ガメル地面に置きましょう

ムーテス「あ!二ガメル発見!やった、これであと一ガメルで大台だ!」←所持金19ガメル

メッシュ「二十ガメルが大台などとは、誰も言っていませんがね!余りに哀れなので恵んでしまいましたよ!(泣笑)」

ムーテスが発見した足跡は遺跡に入ったままで出た形跡はありません。あとリルドラの尻尾を引きずった跡もありました。


そしてここからは暗いので照明が必要ですが。

ソラ「メッシュさん、MP何点ある?」

メッシュ「私のMPですか?高いですよ。14です」

ソラ「……半分以下。あたしが"ライト"使ったほうがいいかな」

現時点のMPはソラが33点、エアが36点ですから。本当に半分以下しかないんですよね。


ムーテス「でも、ルーンフォークは、HPをMPに変換できるから、28点と思っていいよ

メッシュ「……こ、この。うっかり友情が芽生えそうじゃないですか
      こんなに温かな言葉をもらったのは、初めてのような気がしますよ」

エア「それでも、わたしよりも8点低いのね」

ソラ「あたしよりも、5点……」

メッシュ「ふ、そんなMPの大小で貴賎を語るなど、器の小さいことですね」

ジーク「メッシュ……余りに哀れで言いたくないが。お前のMPの器のほうが小さいぞ

メッシュ「しくしく……ご主人に哀れまれる、執事……(めそめそ)」

戦士生まれのルーンフォークの精神力の期待値は8.5点しかありませんから、仕方ないんですけどね。


それで結局は彼が自分の<マギスフィア(小)>で"フラッシュライト"を使ってしまいました。

前衛の両手が開くという方便ですが、それは"ライト"でも同じことです。

メッシュ「では、私が一度先攻して、様子を見てきましょうか」

ジーク「いや、それはスカウト技能が高いヤツに行ってもらわないと……あ」

メッシュ「高いですよ!パーティ最高値ですよ!

今ジークは素で忘れてましたよね。まぁ分からないでもありませんが、むしろスカウトなんていたっけ?

ここで彼は自分に〔暗視〕があるので<マギスフィア(小)>を置いていきます。1個しかないので魔動機術は使えなくなるけど。


メッシュ「では」

ソラ「あ、落ちた

エア「……落とし穴ね」

メッシュ「落ちてません!不吉なこと言わないでください、そこの異種族姉妹!」

ジーク「そうだよな。落ちるだけじゃなくて、吊り上げられることもあるんだから」

エア「あ、浮いた

ソラ「……あ。二つになった」←AパーツとBパーツに

メッシュ「やめー!」

そこで慎重になった彼は《探索判定》で見事に鳴子の罠を発見。続けて《解除判定》で解除です。


目標値11なら基準値5の彼なら出目6以上で成功ですね。

メッシュ「(ころころ)……(沈黙)……
     「ジークさまぁあっ!ここに鳴子がありますので、お気をつけくださぁあい!」
      ……と、叫ぼうかと思いましたが」

どうやら解除できなかったらしい。ちなみに2連続で失敗すると罠を発動させてしまいます。

出目6なら出そうなものですが、それを恐れたのかメッシュは鳴子を解除せずにスルーして先に進みます。


すると足を踏み出した瞬間今度は《罠感知判定》が発動。

メッシュ「(ころころ)っしゃー!!(万歳、1ゾロ)」

わざと発見しやすい鳴子を設置して油断させ、その先にもう1つ罠を仕掛けるとは巧妙ですね。

しかも今度は受動的な感知なので罠が発動してしまいます。それはダストシュートのような落とし穴です。


ムーテス「大丈夫!操霊魔法学部に、コネを作ってきてるよ!(親指ぐっ)」

メッシュ「そういえばそうでした!はっはっは、皆のことは忘れてしまいますがね

ジーク「大丈夫だ、俺たちは忘れない……」

人造人間であるルーンフォークは蘇生しても穢れはたまりません。そのかわりに直前1年分の記憶が消える

そうなるとジークのこと以外は忘れてしまいますね。本人にしたら気がつけばレベルが上がってて得した気分かも。


落とし穴に落ちたメッシュは勢いよく滑り落ち、最終的には様々なダストシュートが集合した部屋に放り出されます。

そこにはスパイクが沢山ついた柱が設置してありましたが、《回避判定》では脅威の出目11を出し、達成値17で回避に成功

メッシュ「ふふ、この程度の罠など……」

ジーク「そもそも、落ちるなよ」

メッシュ「華麗にすちゃっと降りました

エア「そこで華麗でも、誰も見てないし」

《探索判定》の結果この柱は元から遺跡にあったものではなく、既に誰かがかかった痕跡もありました。

朕が設置して追っ手が引っ掛かったのでしょうか。ぼんぼんのくせにエゲつない罠を仕掛ますね、御付かもしれないけど。

また前の犠牲者はメッシュと同じダストシュートに仲間からロープを垂らしてもらって、この部屋から脱出したようです。


しかしメッシュはロープを垂らしてもらえるとは思ってないので、《冒険者判定(登攀)》で自力での脱出を試みます。

メッシュ「(ころころ)……あ」

一同「メッシュ死ぬなー!

期待にそぐわずダストシュートを昇りきれずに滑り落ちるメッシュ。しかも今度は柱に直撃して17点食らう

これだけでHP27点の彼は10点にまで弱りましたね。また失敗して同じのをくらったら《生死判定》です。

かといって<マギスフィア(小)>のない今"ヒーリング・バレット"も使えないので、<ヒーリング・ポーション>で微妙に回復。


その頃ジーク達はというと、心配になってきたのでメッシュを探しにきていました。

鳴子の罠は奇跡の6ゾロで発見して難なく回避。落とし穴は既に口を開けているのでかかりようもない。

ジーク「お。穴が空いてるぞ、もしかしたらメッシュはここから落ちたのか?」

メッシュ「(ころころ)……っし!今度こそは登り切りましたよ!
      やあ、皆さんこんなところで勢ぞろいして、お出迎えですか?
      光栄ですねえ。だばだばだば〜〜〜(流血)

ジーク「どうしたんだ、メッシュ!」

メッシュ「ははは、いや、ちょっとこの下には強敵がいましてね。ま、私一人で簡単にいなしてまいりましたが(涼しい顔)」

でもセスタスには曇り一つない、皆そんな事は分かっていました。でも深くは追求しないのはどんな回復魔法より有り難い。


エア「はいはい。(ころころ)ん、治した。8点でいい?」

メッシュ「……あ、あの…もう一声、お願いできませんか?」

エア「え?まだ全快じゃないの?(ころころ)しょうがないわねぇ」

ジーク「メッシュ、エアに「ありがとう」は?」

メッシュ「……うう、ありがとうございます

まだ遺跡の入り口なのに、思いがけず消耗してしまいました。


★迷宮の住人

回復されたメッシュは改めて《足跡追跡判定》を行いますが、達成値は8と残念なことに。

メッシュ「……って、なぜ全員、サイコロを握るんですか!」

ジーク「メッシュ、お前が再び"キュア・ウーンズ"二回分の世話にならないためだ

メッシュ「くぅ……ジーク様のお心遣い、痛み入ります」

そしてあっさりと6ゾロを振るソラ。お陰で足跡を完璧に追跡できました。


メッシュ「……うう……私のスカウトに費やした経験値、返上してもよろしいですか?」

エア「もしかしたら、誰かが改めて習得したほうが安全かもね(しみじみ)」

メッシュ「噛み締めるように言わんでください!せめて、蔑んでくだされば、反発もできるものを」

足跡は調査をしているのか潜伏場所を探しているのか、あちこちの扉や行き止まりを隈なく往復しています。

そこで一番新しそうな足跡に照準を絞って追跡します。明かりはつけずにこっそりと行動するよう心がけて。


やがてメッシュは《聞き耳判定》で女の子の囁き声を聞き取ります。

メッシュ「では、ジーク様たちに注意をして、また少し、偵察をば」

イーク「やめとけ、メッシュ。また、帰ってこなくなる」

メッシュ「そんな、私が帰ってこなかったことがあるみたいな言い方をなさらないでください!」

エア「帰らなくなる直前だったじゃないの」

メッシュが階段を降りるとそこにはバリケードが積み上がり、何者かが身を隠して銃口を覗かせています。

彼我の距離は10mと通常移動で接近できる距離なので、メッシュは単身突っ込んで投げようとします。


ここでまさかの《先制判定》6ゾロを叩き出しましたが、誰も見ていない(笑)

メッシュ「私、投げるのは得意ですから。匙とか」

エア「責任とか」

ジーク「槍とか」

メッシュ「畳み掛けてきましたね」

自分で言い始めたくせに傷ついている。なかなか繊細な7歳児ですね。

本当は防護点のあるムーテスかジークが行くべきなのでしょうが、メッシュ曰くポジティブ回路の影響です。


ところがそこにいたのはメッシュの同族であるルーンフォークの女の子が2人。しかも可愛い系。

片方は二丁拳銃を装備していて、もう片方は両手持ちの銃を装備しています。2レベル程度で大して強くなさそうです。

ムーテス「さすがに、足六本型昆虫風ルーンフォークとはいわないでしょう」←投げられない

ルンフォA「あ、あ、どうしよう、きちゃった」

ルンフォB「きちゃったね。きちゃったね。撃っちゃう?」

メッシュ「……こ、こんにちは、お嬢さんがた(お辞儀)」

ここでメッシュは主動作で挨拶をして友好的に接しようとしましたが、相手は怯えているので一発銃を撃たれました。

これが15となかなか高くて驚きましたが、メッシュは16を出して余裕で回避。本当に誰も見ていないと出目がいい。


メッシュ「いけませんよ、おてんばさん。そのようなものは貴女方には似つかわしくありません」

ルンフォA「だって、だって、侵入者がくるっていうからっ

ルンフォB「ねっ、ねっ、侵入者は退治しなくっちゃっ」

メッシュ「侵入者?それはいけません、私どもも退治してさしあげましょう」

エア「いや、どう考えてもあたしたちのことでしょう」

ルンフォA「あ、耳が長い。耳が長いわ」

ルンフォB「初めて見た、初めてみた

どうやらこの遺跡にはルーンフォークのジェネレーターがあり、彼女達はそこで仲間と一緒に暮らしているようです。

長年引き篭もっていたので外の世界には疎く、最近やってきた朕たちをご主人様と認識して守ろうとしていたのです。


ちなみにジェネレーターとはルーンフォークを生み出す魔動機文明時代の機械です。

人間の大人が入れる大きさのカプセルであり、複数の個体の体の一部(爪や髪等)を培養液に入れて生成されます。

この際機能が正常なら子供の外見や性別は任意に選べますが、そうでなければ人間同様親の特徴が現れます。

現在は培養液の量産技術が失われているため、1つのカプセルで製造できるルーンフォークは1年に1体程度です。

生成そのものはジェネレーターの機能にも依存しますが3ヶ月程度といいますから、人間よりは遥に早く生まれてきます。

ルーンフォーク達はこのジェネレーターを中心にして集落を作る習慣があり、遺跡からも発見されることがあるといいます。


ムーテス「なるほど。で、君たちのご主人様はどこなんだい?」

メッシュ「心配なさらずとも、平気です。私たちは、貴女方のご主人様の味方なのです」

ルンフォA「う、うそなのです!そう言って、さっきみたいに斬りつけたりしてくるのです!

彼女達は既に追っ手と交戦済みのようですね。世間知らずが祟って不意打ちを受けたのが影響しているのか疑心暗鬼。


ムーテス「大丈夫、僕たちは絶対にそんなことはしないから」

ルンフォB「うそです!貴女にそっくりな形のトカゲもいました!」

ムーテス「あー。そういう連中もいるっすよねえ、嘆かわしい。でも、それはそれとして、僕たちは大丈夫!

ソラ「……ムーテスくん、骨の髄まで商人」

ちなみに朕たちは遺跡の奥の方へ匿っています。


ただし戦った追っ手の居場所は把握していないようです。

ルンフォA「わたしたち気絶しましたから、わかりません」

ルンフォB「さっき、意識が回復して、お互いに"ヒーリング・バレット"の打ち合いをしてました

ジーク「想像すると、怖ぇ光景だなあ」

女の子がお互いに銃弾を撃ち合ってるとは、現場に遭遇したら驚きますよね。


ここで一行は彼女達と交渉して道案内を頼みました。もし不審なことをしたら背後から撃っていいと許可して。

メッシュ「で、ご主人をかくまうためには、何処へと案内したのですか?」

ルンフォA「はぁい、奥の方に案内しました。ママの間方面です」←ジェネレーターの部屋

ジーク「よかったな、メッシュ。よかったらここで一人、息子を作っていったらどうだ?

メッシュ「ジーク様、デリカシーがなさすぎますぞ!」

ここで彼女達の情報を得て遺跡の構造を大体把握しますが、かなり抜けもありました。

道中MPを回復する泉を発見しました。ルーンフォークなら1D点、それ以外はその半分回復するようです。


やがてジェネレーターの部屋に到着すると、そこには幼女型のルンフォ軍団がいました。

ルンフォC「あー!新しい人間だー!」

ルンフォD「ご主人?ご主人?」

ムーテス「ここのジェネレーターの製作者は、ロリか!

ジーク「やあ、ご主人様だぞー!」

ルンフォ達「わーい!(ドドドッ!)」

メッシュ「ジーク様の信望者が増えた!」

それにしてもこの子達はどうなるんでしょうね。こんな世間知らずでは悪い人に騙されて出荷されるのがオチです。

やはり遺跡の管理者である真語魔法学部が保護するんでしょうか。あるいはジェネレーターだから魔動機術学部の管轄か。


朕たちは彼女達がウザったかったのか更に奥へ向かっています。

メッシュ「で、その出ていったご主人は、どこに?」

ルンフォ達「強いののとこ!

彼女達はその「強いの」の名前は知りませんが、どうやら朕達はそれに守ってもらおうとしているらしい。

特徴を聞くかぎりは多脚の魔動機械と思われるので嫌な予感しかしませんが、一行はその場所へ向かいます。


★遺跡の主との決戦!

朕が向かった部屋に近付くと次第に「ドーン!ドーン!」という大砲のような音が聞こえてきます。

メッシュ「……もう、ダメかもしれません(十字を切ってる)」

ジーク「不吉なこと言うな!」

ソラがそっと覗いて《魔物知識判定》をすると、そこにいたのは7レベルの魔法生物クィンドゥームでした。


クィンドゥームは魔動機文明時代に製造された八本足の戦闘用兵器です。砲塔×2、胴体×2の計四部位でコア部位はなし。

各部位は1つずつ<ガン>による攻撃(魔法ダメージ)を行うため、1ラウンドに主砲×2と副砲×2の四回攻撃が可能です。

主砲の装填数は1、副砲の装填数は6であり、使い切ると主動作による《装填》で装填数を全回復してきます。

また《機械の身体》をもつので刃物によるクリティカルは起こらない。これらは魔動機械系の多くに共通する能力です。

他にも一部の属性攻撃を受ける度にその属性の《防御膜展開》を行い、その属性によるダメージを完全に防ぎます。

胴体に限り《攻撃障害=不可・なし》で砲塔への攻撃を防ぎますが、胴体のどちらかを破壊すると失われます。

更に両方の胴体のHPが0になると《擱座》が発生し、砲塔は回避に−4ものペナルティを受けることになります。


こういう多脚戦車みたいなモンスターはフォーセリアにはいなかったのでちょっと新鮮ですね。

この世界には魔動機文明時代があり、機械的なアイテムやモンスターも多くて近代ファンタジーっぽくていいですよね。

ちなみに魔動機械は分類上魔法生物になります。魔法生物といえば伝統的に生物系とゴーレム系が多かった印象がありますね。

フォーセリア風に言うなら前者は創成魔術、後者は付与魔術の産物であり、今回でそれに機械が追加された形ですかね。

今後もこういう機械っぽいモンスターも沢山出てくるので伝統的ファンタジーとは一味違う楽しみがあります。


このクィンドゥームは「ルールブックT」でも最強クラスのモンスターであり、一行も戦々恐々。

ソラ「……つ、強いの。すごく」

メッシュ「……か、勝てるんですか、私たち」

何しろ魔法ダメージ4連発はムーテスの装甲すら役に立ちません。クリティカルも起こらないし不安ですよね。

ただしこのクィンドゥームは長年放置されていたのでガタが来ており、レベルは1低いも同然です。

余談ですが作中は胴体の武装を機銃と呼んでいますがそれは「ルールブックT」の呼称です。「バルバロステイルズ」では副砲。


そしてこいつに襲われていたのが朕ことイアン一行でした。

イアン「私を助けてくれなさい!くそぅ、こんなのがいるなんて、聞いてないぞ!強いヤツがいると聞いていただけなのに」

ソラ「強いね。その強いのが、自分を守ってくれると、かぎらなかっただけ」

彼自身は5レベルの神官なので御付の戦士を回復しながら戦っていますが、正直ジリ貧ですね。

MPも1/3程度しか残っていませんが、威力30で回復できる"キュア・ハート"が使えるのが強み。

SW2.0ではレベルが上がるにつれHPも被ダメージ量も上がるようになったからこういう魔法も必要です。


ただし貴族のぼんぼんなので態度はLLです。その横暴っぷりは某"法螺吹き魔術師"を彷彿とさせます。

エア「助けられる者には、助けられるなりの態度というものがあります!」

ソラ「お姉ちゃん、気持ち、わかるけど、今はお説教タイムじゃない。どうどう」

ムーテス「そうだよ、お金持ちなんだよ、貴族は!」

エア「お金なんてなくても死にはしません!」

ムーテス「お金が無いと、命があっても、魂が死ぬんだよ!

ちょっと名言っぽいですね。実感が篭っているから説得力はある。


1ラウンド目

クィンドゥームの副砲はジークとムーテスを、主砲は御付の戦士を攻撃。エアはそのダメージをすぐにキュア。

ムーテスは朕に《かばう》を宣言。前衛4人とソラのエネボルはまず胴体の1つに集中攻撃で壊れかけに追い込みます。

なにしろコア部位がありませんからね。面倒ですが四つの部位を順繰りに潰していかないといけません。


イアン「私も手伝ってやってもよいぞ、新たな護衛たち」

ジーク「じゃあ、御付に攻撃をさせておいてくれ」

ソラ「そして、一番大事な命令があるの。……「黙れ」

ムーテス「うん、それは大事な気がする」

イアン「私の高貴な声が聞きたくないと!」

一同「ねぇよ!」

下級貴族なのになんでこんなに偉そうなのか。下級だからこそ偉そうなのかな。


2ラウンド目

今度はメッシュも巻き込まれて大ダメージ。一気に18点素通しとか洒落にならない威力ですよね。

メッシュ「すいません、このラウンドは"シャドウボディ"を掛けます」

エア「今回そこの朕!このルンフォに"キュア・ハート"撃って!」

イアン「朕言うな!」←15点回復

メッシュ「おお、朕の電波具合も、エルフ以上のようですな

主砲の装填数は「ルールブックT」では2発ですが、強すぎたのか「バルバロステイルズ」では1発になりました。

"シャドウボディ"をかけたメッシュの回避力は7、対して主砲の命中力も7なので結構危ないんですけどね。


ジークの攻撃で1つめの胴体が崩壊し、砲塔にも手が届くようになりました。

そこでムーテスが"キャッツアイ"を使って攻撃し、続いてソラはエネボルで攻撃して一気にHPを減らします。

するとここが攻め時とエアは初披露の"フォース"で砲塔のHPを8点まで追い込みます。

砲塔の威力は凄いけどその分胴体より防護点もHPも低めですから。しかも装填数2なので次は《装填》でお休み。


3ラウンド目

今回は全員回避。本来副砲の一発しか来ない筈ですが。

メッシュ「よけた!よけましたよ、このラウンド、何とか生きていられます!(万歳)」

このラウンドでソラのエネボルと御付の戦士の攻撃で砲塔の片方も崩壊。敵の攻撃回数も半減しましたね。


4ラウンド目

ここで主砲は《装填》でお休み。でもメッシュはお約束通りに副砲を食らって血達磨に。

ソラ「朕、"キュア・ハート"を所望する」

イアン「お前は、全然ダメージを受けていないように見えるが!」

ソラ「ちがう。あそこでふらふらしている、ルーンフォーク治して欲しいの」

イアン「まあ、しかたがあるまい。従者を守るのは主の務めだ」

メッシュ「くっ、おありがとうございますです(屈辱)」

でも朕のMPもこれで尽きました。勝利の気配は濃厚ですが油断はなりません。


それからも攻防は続き、ついにもう片方の胴体も崩壊。残るは砲塔が1つだけです。

これで砲塔の回避に−4入りました。劣化しているとはいえかなりいいペースで攻略していますね。

ところがここで別の通路から4人の追っ手が登場。ずっと出ていくタイミングを見計らっていたのです。

ドワーフとリルドラは前衛系、人間の片方はオークを連れた操霊術師で、もう1人の人間は神官です。


ソラ「何の神官かわかる?」

GM「わかります。聖印見たことある。ルーフェリアの神官ですね」

ジーク「……へ?」

エア「なんで?」

ルーフェリアの分体を攫ったと思しき一団にルーフェリアの神官がいるというこの矛盾に一行も疑問を覚えます。


同じ神の信者といっても色々な派閥はあるのかもしれませんが、それでも不可解ですよね。

メッシュ「説教臭いのとか、妹溺愛してるのとか」

ソラ「あと、娘の心の機微がわかってないのとか」

それ全部あなたの家族ですから(笑)


当然クィンドゥームはこの闖入者達も敵対者として認識しているのか主砲のターゲットになり得ます。

ただしこのラウンドの主砲は《装填》です。本来6ラウンド目の筈ですが、これまでの流れでいくなら8ラウンド目。

主砲の《装填》のタイミングに疑問が残るため、以降の正確なラウンドは不明ですね。

メッシュはタゲサ用のMPが尽きたので〔HP変換〕でMPを補給。主動作を費やした上にHPも減るけど仕方ない。


エアは特殊神聖魔法を封じる"フェイス・インジケイト"を使おうとしましたが、同じルーフェリア神官相手には無効でした。

しかもルーフェリアの特殊神聖魔法は浄水やら水上歩行やらなので、戦闘中に封印されてもあまり怖くありません。

ちなみにこのゲームの特殊神聖魔法は各神様毎に2、4、7、10、13レベルの計5種類用意されています。

もっとレベルが上がると水場を作ったり氷のドームを作ったりと派手になりますが、やはり攻撃的なものではありませんね。

7レベルの"ウォーター・シェル"なら魔法ダメージを5点減らすので封じられるのは痛いけど、相手もまだ使えないだろうし。


エア「ルーフェリア以外の神様だったら、結構効くのよ、痛いのよ!」

イアン「あ。ライフォス(挙手)」

エア「そう、ライフォスなら効くの……って、朕は今味方だから!」

イアン「封じないでくれたまえ!」

ライフォスの特殊神聖魔法は2レベルだと蛮族を感知する"サーチ・バルバロス"なので封じられてもあまり。

戦闘になっている時には大抵蛮族は姿を現していますしね。伏兵が予想されても場所や数までは分からないし。

4レベルは対象の心に術者の言葉や意思を伝える"マインド・センティング"ですがこれもそんなに。


現れた追っ手も乱戦エリアに突入。操霊術師は前衛2人に"エンチャント・ウェポン"でダメージ+1。

そしてドワーフとリルドラの戦士はメッシュに集中攻撃です。ちゃんと脆い所から攻めてきていますね。


7/9ラウンド目

ソラはドワーフとリルドラに"パラライズ"で回避力−2、そこでメッシュがドワーフを投げました。

ここでタゲサと《牽制攻撃》で避け難くしてましたが、本来宣言の必要な戦闘特技は同時に2つは使えない

そこで転んだドワーフにジークの《魔力撃》とムーテスの追い討ちが決まり、エアの"フォース"が突き刺さります。


これでドワーフは1ラウンドで倒されてしまいました。

エア「見ましたか、ルーフェリア様の加護を!」

神官「うむ、そのとおり。やはりルーフェリア様は偉大なり!」

そう、このまま神官を放っておくとドワーフを"アウェイクン"で起こされます。

SW2.0では気絶状態になると例え回復魔法でHPを1以上にしても1時間は自然に目覚めません。

そこで"アウェイクン"を使うことで即座に覚醒させる事ができるようになりました。


イアン「あの異教徒をやってしまえー」

エア「異教徒言わない!」

神官「そうだ言うな!」

メッシュ「じゃあ、弱小教徒?」

神官「何を言う。ルーフェリア様は、これからどんどんと広く普及され、大きくなっていくんだ!

エア「そのとおりです!あなた、なかなかいいことを言うわね

微妙に通じ合っていますが、多分彼がルーを攫った派閥にいる以上、最終的には意見を違えそうです。

例え99個気の合う所が合っても、たった1つ合わないだけでどうしても許せなくなる事がある。

趣味や信仰といった精神的な世界ではそれが顕著なのではないかと思います。分かり合うのは難しいですよね。


ムーテスはイアンへ魔晶石を渡して回復して貰います。

イアン「やあ、私の金袋と、君の魔晶石を交換しないかね?」

ムーテス「喜んでー!」

クィンドゥームの主砲はジークに行きました。空気を呼んでリルドラを撃ってくれればいいのにね。


それからもドカドカ主砲を食らいながら敵のリルドラも落としました。

敵の神官は"アウェイクン"で前衛を起こすのですが、即座にこちらの前衛にボコられて再気絶。

"アウェイクン"で普通に起こすとHPは即座に1点になりますが、転倒しているのでいいカモです。

結局はセルフ回復と同じように防戦一方のジリ貧となり、逃亡という選択を取らざるをえません。


9/12ラウンド目

ここで主砲は《装填》です。ルーフェリア神官は逃げを選びます。

敵の操霊術師は自分とオークでソラに乱戦を宣言して追撃をブロック。合計4部位まで防げます。

姉妹とイアンだけでは追いかけようとしてもブロックされますね。もう2人いると1人は通過できますが。

そこでソラはフェイを飛ばして追跡させます。どこまで逃げても空を飛んで追いかけていきます。


クィンドゥームも一部位健在なので乱戦エリアも健在。こちらの前衛5人は迂闊には離脱できません。

ただし以前のレッサーオーガの時のように、こちらの人数が相手の人数の倍以上ならペナルティ無しで離脱可能の筈。

乱戦エリアのルールは本当に分かり難いのですが、「ルールブックU」のP.34「有利な状況での乱戦エリアからの離脱」にあります。


仕方ないのでソラは剣を抜いて操霊術師を攻撃。前衛系の技能はなさそうなので避けられないけどそれなりにしぶとい。

ジーク達はなかなか残る砲塔を壊せずに御付1が気絶。残り一部位な上に回避も殆どできないくせに粘りますね。

痺れを切らしたジークは〔運命変転〕で強引に命中させて《魔力撃》を使用。この一撃でついにクィンドゥーム撃破


乱戦エリアが解除されたのでメッシュとムーテスが追跡しようとするも、操霊術師とオークがそれをブロック。

前衛「うざー!!」

GM「健気属性ついてるコンジャラーなので、リーダーを守るために一生懸命です」

ジーク「え、女の子?その健気属性は……ちょっと心ときめくものが」

それでも所詮は回避できない純後衛。オークがメッシュとムーテスにボコられてはそれ以上の妨害もできない。


GM「まあ、嫌がらせにオークでソラを殴ってから、「降伏」」

ソラ「……ほほう。今の、ちょっと痛かったんだけど」

操霊術師「主動作で降伏したから、オークの命令解除出来なかったの」

ソラ「<呼応石>使用は、補助動作で十分出来るはずだもんっ」

<呼応石>とはゴーレムの命令を変更するアイテムですが、本当に主動作で使用するようになりました(笑)


これで敵は掃討しました。ムーテスのみを護衛にして主従と姉妹は逃げたルーフェリア神官を追跡します。

フェイが何処までも追跡してくれているお陰で見失う事は無いけど、ここでジークがうっかりダストシュートに落ちる。

メッシュ「ジーク様ー!と叫んで、シューターに飛び込みます。我々の受けた依頼は、朕の確保。
      それ以外のことはサービスに過ぎません。そうなれば、ジーク様のお命が最優先

ソラ「ある意味、従者の鏡(小さく拍手)」

ところがその先は例のメッシュが落ちた部屋でして、ジークだけでなく先客がいました。


GM「トラップに掛かって血みどろの神官が、床に体育座りしてます」

主従「ばかだー!!」

まぁスカウト技能のない彼が落ちたのは仕方ないんですが、こっちは本職がいて落ちてますから。

しかも以前と同じように自力での脱出は大変危険です。HPがないから失敗したら《生死判定》は必至。


仕方ないので血みどろの男三人が床に座り、救助が来るまでの間尋問を行いました。

ジーク「ルー誘拐について一部始終を、白状しろ」

神官「うるさい!女神ルーフェリア様を、我が国にお招きして、国土を守っていただくためだ!

その国とはもちろん"年輪国家"アイヤールです。詳しく話を聞くと後戻りできそうにありませんが、聞くしかありません。

何故ルーを攫ったのか、ルーは何処に捕らわれているのか。それを聞きだしてアイヤールに救出に向かいます。





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