「ロードス島戦記2 炎の魔神」著:水野良 出版社:角川書店

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第T章 砂漠の王国で

★1

英雄戦争から2年。未だに大戦の傷跡は残り、ロードスの各地では争いと混乱が引き続き起こっています。

スレインやエトと分かれたパーンとディードは、カーラに体を乗っ取られた(確定)ウッドを探して旅を続けていました。

主にロードス西部(モスやライデン?)を捜し歩いた二人は一向にウッド=カーラを見つけられず、フレイムにまでやって来ていました。


ウッド=カーラを見つける事は難しい、高レベルのソーサラー/シーフなんて足で情報を集めてたら普通見つけられませんよ(苦笑)

姿なんて"シェイプ・チェンジ"を使えばいくらでも変えられるし、ウッドのシーフ技能を使えば情報操作や潜伏だってできるはず。

カーラは人をゲームの駒のように操る魔女です、そうそう目立つ事もしないでしょう。部下を使ったり、他人を利用したり。

ただ騒乱の影にはカーラがいる可能性が高い。だから、そういう所に自ら飛び込んでみる方がまだ可能性がありそうです。

力の天秤が揺れている状況では活動しないのだから、騒乱を鎮めて燻り出すというのもアリでしょうかね。


今のフレイムは水不足で、酒よりも水の方が高いんじゃないかという状態です。水に金を取るということで、パーンがお冠でした。

一応地下水を汲み上げる事は出来るのでそう深刻ではないんですが、上流に岩塩の地帯があるらしく塩気があってあまり美味くはないらしい。

例年は多少雨が降っていたんですが、今年はそれすらもありません。ただでさえ水量の少ない砂の河なんて、本当に枯れちゃってるし(苦笑)


フレイムという国を知るためには、まずこの風と炎の砂漠の二つの部族について知る必要があります。

風と炎の砂漠には現在2つの部族が存在しています。風の部族炎の部族です、そのまんまな名前で分かりやすいですね。

両部族は元は一つの部族だったのですが、ある理由で二つに分裂。以来互いを憎しみ合い、戦ってきたのです。


その部族はカストゥールの侵攻にも勇敢に立ち向かったそうです。最前線でいの一番に戦ったとか。

カストゥールの魔術師に対抗するために、部族の偉大な精霊使いアサートが二柱の精霊王と『盟約』を結んだのです。

風の精霊王ジンは守りを、炎の精霊王エフリートは攻めを司り、魔術師たちの侵攻を阻んだのです。

ですが、そのある理由で部族は二柱の精霊王は封印され、風の部族と炎の部族に分かれて仲違いをするようになったのです。

風の部族の伝説では炎の部族が裏切ってジンを封印したとなっていますが、炎の部族の伝説はその逆です。


それから幾年も経ちますが、相変わらず両部族は争っています。怨恨もありますが、数少ない水や作物を生み出す土地もかけての争いです。

新王国暦503年、炎の部族はマーモのファラリスの神官戦士団を味方につけました。「新ロードス島戦記序章 炎を継ぐ者」参照。

風の部族はそれに対抗して外部から傭兵を雇いました。その傭兵の中に、後にフレイム国王となるカシューがいたのです。504年のことでした。


それからのカシューの活躍は目覚ましい限りでした。井戸の掘り方を教え、私財をつぎ込み、大陸から木を買って植えたりもしました。

炎の部族を相手の戦にも大活躍、更には長い事封印されていたジンを解放したりもしました。

そして新王国暦506年、風の部族を母体にフレイム建国。カシューを王としたのです。更に南の都市国家マーニーとローランも併合します。

508年にはヴァリスの援助を受けて炎の部族からオアシスの街ヘヴンを奪います。その際、炎の部族の族長ダレスが戦死しています。


とまぁ、順風満帆だったんですが、ここ最近の炎の部族の変革でフレイムは攻勢に出っぱなしという訳でもありません。

ダレスの娘ナルディアが族長に就き、ファラリス教徒を追放しました。この辺の話は「新ロードス島戦記序章 炎を継ぐ者」です。

最も重要なのは、炎の部族の神官(ていうか精霊使い)のアズモがエフリートの力を手に入れたということです。

ジンと同じように封印されていたエフリートは解放され、盟約に従ってアサートの子孫であるアズモの命令を聞いているのです。


そのシーンは冒頭に挿入されています。アズモが炎の神殿に赴いて、エフリートを解放する様子が詳しく書かれています。

炎の神殿とはエフリートを祭る為に炎の部族が作ったピラミッドです。長い間エフリートの封印場所でもありました。

それと対になるのが砂塵の塔です。こちらはジンを祭る為に風の部族が作った塔です。最近カシューが直々に赴いて、ジンを解放しました。

ジンは解放したのだから盟約によって使役する事も理論上可能なんですが、風の部族にはアズモの代わりとなる人物はいません。


やがて炎の部族は守護神であるエフリートの力で、ヘヴンを取り戻します。つい最近の話です。

精霊王を敵に回すことは自然を敵に回すも同然。エフリートの極めて攻撃的な性質を考えると、勝てるわけがない

精霊王は一律18レベル!です。最上位の古竜や魔神王に次ぐ化け物ですよ、超英雄キャラでもないと普通勝てません。

エフリートは下位精霊のサラマンダーに命じて炎を自由自在に操れます。精霊王を神のように「柱」と数えるのは伊達ではないのです。


パーンとディードがフレイムを訪れた時には、フレイムはそんな危機的状況に陥ってたのですね。


★2〜4

割高の水の料金に悪態をつきつつ、王都ブレードで一夜を明かしたパーンとディードは王城アークロードを訪ねました。

アークロードはロードスで最も新しい王城です。河の中洲に建てられているだけでなく、高所にもなっているので実に攻めにくい城です。

カシューが大陸出身ということもあって、様々な技術が導入され、橋は大陸風という最もトレンディー(死語)な城でもあります。


カシューと会うのはおよそ2年ぶりになります。ぶっちゃけ、こっちの顔を忘れてても文句は言えない(「ようこそ」みたいに―笑)。

しかしパーンとディードの事はしっかり覚えていてくれたようです。「オレには礼は不要との言葉を忘れたか」という調子でした。

なんてリベラルな王様なんだろう。普通だったら何の前触れもない客に会うために城門まで出向いてきたりしませんよ。

その辺王様としてはどうかな、とも思いますが、そういう所がこの人のいい所でもあるんですよね。豪快な人です(苦笑)


パーンとディードを向かえ、談笑などにふけりつつ、さり気なくパーンにこの国に仕えないかと誘ってきたりもしました。

カシュー「オレの選んだ道にもいつかカーラが現れるはずだ。それまで待つことはできないか?

確かに、ファーンのようにロードスの平安を考えている以上は、確実に現れるでしょう。フレイムほどの大国の動向は無視できないでしょう。

でもパーンは迷いなく断ります。騎士隊長だけでなく、騎士団長だって狙える男が……アンタには欲がないのか(笑)

やっぱりウッドとカーラの件に決着をつけないと駄目ですかね。そもそもパーン自身がそういう生き方が合うか疑問だし。


歓迎の宴の後には真面目な戦の話しとなります。やはり炎の部族への対抗策が問題ですからね。

風の部族の長であるムハルド老や、その息子である傭兵隊隊長のシャダムもいますよ。

当然この砂漠の一連の事情や、最近のヘヴン陥落の話などが話題に上がります。そんな事客に話すなよという気もしますが、リベラルなので(笑)

いや、カシューがそれだけパーン(とディード)の事を信頼しているという事なんでしょうけどね。きっと力になってくれるだろうと。

それにしても、カシューと話したのってほんの数日ですよね。それなのに、まるで数年来の親友のように……(感心)。


ヘヴンの白兵戦では、フレイム軍は多くのサラマンダーによって手痛い損害を被ったそうです。

エフリートは炎の上位精霊(精霊王)、同じ炎の下位精霊であるサラマンダーは眷族です。そういう使い方もアリです。

精霊使いが支配している精霊には、他の精霊使いは手を出せません。精霊王を支配されている場合は、その系統の精霊は使えないんですね。

つまりこの土地では火の精霊魔法は使えません。"ファイア・ボルト"だって、サラマンダーにスト食らって不発に終わるだけです。


もっとも、上位精霊の支配なんて普通は出来ません。クリスタニアの神獣は普通に操ってましたが、一応神獣は神様なんで。

遺失精霊魔法に"コントロール・スピリットロード"というのがありますから、多分それでしょう。

自由自在に使役するとなったら"フルコントロール・スピリットロード"とかが要るんでしょうね。多分

ディードの故郷、帰らずの森のハイエルフと、その上に立つ最上位種のルマースなら出来るかもしれませんね。まさにシャーマンキング(笑)


そんな精霊王の力を使う方法に、『盟約』というものがあります。これには超英雄ポイントが必要です。

アサートがジンとエフリートと結んだのもこの盟約です。彼は超英雄キャラだったんですね、物凄い大物だったということです。

もしかしたら、帰らずの森のエルフが上位精霊を操る時に使うのは、遺失精霊魔法に加えてこの盟約なのかもしれませんね。

超英雄ポイントと盟約の細かいルールは後に回しますが、ディードはもう超英雄ポイントを持ってるはずです(パーンも)。


しかし相手はその精霊王を味方にしているのです。そんな化け物にどうやって対抗すればいいのか?

"サプレス・エレメンタル""ニュートラライズ・エレメンタル"でエフリートの動きを封じる事は出来ないのかな?

前者の場合は上位精霊には効果はないようなのでボツでしょうが、後者は結構微妙です。

この魔法は上位精霊に訴えて精霊力を中和する魔法です。やはり盟約の強制力と、呪文の達成値を比べるんだろうか?

まぁ"ニュートラライズ・エレメンタル"なんて10レベルの精霊魔法だし、どうせ使えないならどうでもいいんでしょうけど(笑)


パーンはディードがサラマンダーと接触してみることを提案しましたが、当のディードは激しく拒絶します。

ディードが言うには、炎の精霊は破壊しかしないので、エルフにとっては接触する事すら恥ずかしいんだそうです。

でも、全ての物事には二面性があって………炎の精霊力が司るのは破壊だけじゃ……いや、今は言うまい(言えや)。


結局はカシューとパーンの説得に折れて、呼び出してはみる事にしました。

これで最低でも、エフリートが支配されているかどうかは分かるはずです(いや、されてるんですけど)。

エフリートが支配されていたらサラマンダーの力も使えないはず。多分、支配は出来ても利用は出来ないような事になると思います。


これまで一度も炎の精霊を使った事はないというのだから、ディードの攻撃は専らウィスプとかだったんでしょうね。

クリスタニアには"ファイア・ボルト"のシルフ版とも言うべき"ウインドスラッシュ"なんて魔法がありますが、どうでしょうね。


呼び出してみると、サラマンダーはまるっきり言う事を聞きやしません。別にディードが失敗したわけじゃないですよ。

普通下位精霊は精霊使いからの命令には逆らえやしません、水の精霊界に送り込むなんて言われたらゴメンなさいしちゃいます。

しかしこのサラマンダーは執拗な脅しにも屈せず、実に堂々としたものでした。うっかり男前火トカゲとか呼んでしまいたくなるほどです。

それだけでなく、このサラマンダーは言葉を発したりもしました。普通の下位精霊は流暢に共通語なんて喋れません。

それもそのはず、なんとこのサラマンダーが実はエフリートだったのです。わざわざ出てきたんですね、結構暇なのか?


幸い本気で殺しにこなかったから命だけは助かったものの、ディードはすっかり衰弱してるし、パーンも火傷を負いました。

相手は18レベルの精霊王ですからね、カシューが一緒でも勝てないと思いますよ。倒す前に燃やされるし、本当によく助かったものです。


第U章 ヒルトの戦い

★1〜3

悪い事は続くもので、エフリートの不意打ちを受けた直後、炎の部族がヒルトを攻めている報告が入ります。

風と炎の砂漠には、主に3つの街があります。フレイムの王都ブレード、城塞都市ヒルト、オアシスの町ヘヴンです。

この時点では、まともに人が暮らせるのはこの3つぐらいですよ。現在ヘヴンは炎の部族が所持しています。


今回炎の部族はヒルトを手に入れようとしてるんですね。フレイムの食料庫とも呼ばれる耕作地です。

ちなみにヒルトはブレードから3日ほどの位置にあります。ここを取られるのは色々と痛いですね。

ところが、カシュー率いる正規軍が駆けつけた頃にはもう落ちてるんですよね。破れた守備隊と逃げ出した市民とも遭遇しました。

どうやらエフリートを使って街中の火元から火災を起こして、混乱の極みにあるところを一気に攻め落としたようです。

相手にエフリートがいる以上、火は使えないってことですね。普通に生活する事すら困難かもしれない。


この戦には当然パーンも参加します。理由はカシューへの恩もあるし、それ以上にディードの仇でもあるからです。

あとサラマンダーを嫌々ながらディードに召喚してもらって、結果として彼女を傷つけてしまった事への償いもありそうです。


またこの件で一つの謎が浮かびました。それはエフリートが支配されてはいないのに自分の意思で力を使ったという事です。

元来精霊というものは物質界の住人に召喚されなければ力を使えないし、そうして召喚された以上その精霊は精霊使いに支配されます。

支配された以上は他の精霊使いはその精霊と接触する事はできないのですが、ディードは接触できた。つまり彼は支配されていないのです。

この時点でのディードにはその理由が分かりません。しかしそれを解き明かす事が今回の事件を解決する鍵にもなると彼女は予想しています。

それでも怪我をした彼女はパーンには同行できません。火傷なら"ヒーリング"で治せるんじゃないかというツッコミは、この際考えない(笑)


結局パーンが1人で出陣する訳です。しかし精霊には通常武器は無効。そこでカシューから魔法のグレートソードなどを貸してもらいました。

フレイムには魔法使いは少ないようですね。魔術師と精霊使いはいないようだし、司祭だってあまりいないような気がします。

相手がサラマンダーを召喚してきたらどうにもならないんじゃないですかね。傭兵の中には魔法の武器を持ってる者もいるでしょうけど、きっと少数。

ブレードにも五大神の神殿がちゃんとあって、マイリーが最も優遇されてるようです。勇猛な風の部族だけに信者はそこそこいるらしい。

でも風の部族って精霊(ジン)も信仰してそうですね。何か恩恵があるって訳でなくても信仰してそう。


ワールドガイドの魔神戦争ルールによると、フレイム(当時存在しない)出身のキャラは基本的に蛮族です。稀に司祭や傭兵、悪党もいます。

蛮族の初期技能はファイター&レンジャーです。既に魔神戦争から結構経ってますが、こういうことはあまり変わってないと思う。

英雄戦争のルールでは、風の部族は基本的にファイターです。というのも、「生まれ」「育ち」によって培われるのがファイター技能のみなんです。

全ての経験点15000点をファイターにのみつぎ込むと、18歳の時点で5レベルにはなるはずです。6レベルには1500点足りない。

ワールドガイドにはこういったルールブックには載っていないキャラクター作成方法も載っています。見てるだけでも飽きないぐらいに(笑)


この時点ではフレイム王国の軍隊は、主に三つに分かれます。砂漠の鷹騎士団、民兵軍、傭兵隊という風に。

フレイムは傭兵隊に力を注いでいる事でも有名ですね。カシューの右腕であるシャダムは傭兵隊の隊長です。パーンが参加するのもここです。

民兵とはいっても、ほとんどが風の部族の戦士のようなので結構戦力になるはずです。相手が宿敵炎の部族なだけに士気も高いし。

しかしヒルトが落ちたと聞くと流石に動揺が走ります。そしてこの動揺が実力を軽減させる事をカシューやパーンは知っていました。


軍議ではこのまま攻め込まねば面目が立たないという意見が出れば、撤退すべきだという意見も出て、相当に煮詰まった状態です。

しかしカシューのしきりで多少は動揺を抑えられたようです。このカシューのセリフが私は好きですね。

カシュー「オレがここで軍議を開いたのは、死ぬための方法を論じるためでもなければ、ブレードへの戻り方を聞きたいためでもない。
     自分の剣で喉を突けば簡単に死ねるし、逃げる時は真っすぐ後ろを向いて逃げればいい。
     そんなことを尋ねるために、オレは軍議など開かない。いかに戦いそして勝つか、その意見だけをオレには言ってくれ。」


この傭兵隊でパーンは3人の傭兵達に出会います。彼らは今回の重要キャラなのです。


シュード 23歳

シーフ5、ファイター5。ライデンの盗賊ギルドの長に育てられました。本名フォース

"優男"とも呼ばれる色男ですが、とある事情で女嫌いでもあります。実に勿体無い(笑)

彼には3人の義兄がいたのですが、長の座を狙うギルド員に上の二人と義父が暗殺されてしまいました。

一つ上の兄サーディー(偽名デニ)と共に逃れ、復讐の機会を狙っています。現在は傭兵としてフレイム軍に参加。


デニ 29歳

シーフ?。シュードことフォースの血の繋がっていない義理の兄、本名サーディー

醜い容姿でフォースとも言い争いが多いのですが、兄弟としての絆は間違いはない。目立たないけどイイヤツ

両手のショートソードで敵の両腕を落としたという事で、"両腕落とし"とも呼ばれています。多分フォースと同じか、それ以上の実力者。


マーシュ 33歳

ファイター?。巨漢の戦士、凄まじい怪力でバトルアックスを振り回すので"斧使い"と呼ばれています。

パーンに因縁をつけて呆気なくすっ転ばされるナイスガイ(笑)。でもあっさりと仲良くなる気のいい男でもあります。

マッチョな体と髪型からネプチューンマンを連想するのは、きっと私だけだと思う。実は3人の中では一番好きなキャラ。


以上の愉快な仲間達と一緒にヒルトを占拠した炎の部族と白兵戦を繰り広げる事になりました。

人間と人間の戦いは普通にフレイム軍が優勢でした。騎士団が敵の突進を受け止め、民兵と傭兵がグルリと包囲します。

しかしその後がマズかった。目の前の敵を倒す事に気を取られて、ヒルトへ撤退を始めた炎の部族を追撃したのが傭兵だけだったのです。

結果としてエフリートの攻撃を許してしまいました。炎の部族と乱戦をしていればそう簡単には魔法は使えなかった筈なのに。


結局はフレイム軍はヒルトを取り戻す事が出来ずに撤退しました。傭兵達とパーンを置いて

味方が大勢として押してるか退いてるかという判断をすることが出来なかったパーンにも反省点はありますけどね。

パーンは傭兵達を逃がすために、わざわざ敵の層が厚いところへ突っ込みます。損な性格ですね。


この際パーンは「ファリスの加護を信じよ!」と言った事で、炎の部族の族長ナルディアの注意を引いてしまいます。

パーン自身が強いだけでなく、魔剣にファリスの名、仲間を庇うような邪念のない戦いとくればヴァリスの聖騎士と考えるのは当然ですからね。

炎の部族は以前ファラリスの神官戦士を味方にしていたことで、ヴァリスを敵に回したことがあったのです。

ファラリス神官こそ既に追放したとはいえ、ヴァリス参戦の可能性がある以上パーンを無視するわけにもいきません。


ナルディア 18歳

ファイター?。炎の部族の先代族長ダレスの娘、未来の主人公スパークの従兄弟でもあります。

残念ながらワールドガイドにはデータが載ってませんが、コンパニオンによれば戦士っぽい

父亡き後、必死に部族を率いています。無理をしても顔には出さないタイプだと思う。ちなみに族長就任はおよそ4年前。

褐色の肌と強い瞳が黒豹を連想させます。強い意志に知性、野性的な美しさを感じます。

「不思議の島のナルディア」と連想する人はきっといると思う(ちょっと似てるし−笑)


ナルディアはパーンの行く手を阻み、一騎打ちを挑みました。この時点でもうパーンは逃げられないでしょう。

負けたらそれまでだし、勝ったら勝ったで炎の部族が放っては置かないでしょうからね。

一騎打ちはパーンの勝利でしたが、しぶとく反抗します。その直後、アズモが召喚したサラマンダーの炎がパーンに炸裂しました。

ダメージは打撃力10+5点、つまり"ファイア・ボルト"ですね。これでパーンは気絶し、囚われの身となってしまいました。

普通の傭兵ならこの場で殺されていたんでしょうが、パーンはヴァリスの聖騎士と思われていたので捕まるだけで済んだのです。


第V章 救出!

★1

敗走するフレイム軍はブレードの街にまで無事逃げ帰りましたが、やはり民の動揺はかなりのものです。

手痛い敗北に、カシューも今までにないほど荒れていました。「えーい、腹立たしい!」と鎧を床に投げ捨てるほどです。

いや負けたことよりも、パーンとか、パーンとか、パーンとか、あとついでに傭兵とかを犠牲にしたのが大分堪えてるようですね。


カシュー「もっと、組織的な戦い方ができるよう訓練しておけば、みすみすパーン、いや傭兵達を見殺しにせずにすんだのだ」

本音が漏れてますよカシュー陛下(笑)。そんなに気になるのか、パーンが。傭兵達はかなりついでっぽい

カシューは大陸ではレイドの傭兵や、ロマールの剣闘士、あと冒険者などを経験しています。

多分兵法は傭兵時代に覚えたんでしょうね。その(上官の)兵法ミスで彼はロマールの剣闘士奴隷になったわけですが(苦笑)

項羽は「剣は一人の敵なり。学ぶにたらず」と言いました。戦に勝つためには、兵の強さも当然ながら、その兵を動かす兵法も重要です。


カシューの本音は「パーンを配下として、いや仲間として欲しいと思っている」らしいです。

そんなに気に入ったんですね。部下というか親友、いやむしろ心に友と書いて心友(笑)

そんなバーニング野望も永遠に途絶えたかに見えましたが、実はパーンが生きているかもしれないという情報が入ったら大喜び。

ちょっと子供みたいなところがあるカシュー陛下………なんて面白いキャラなんだろう。


早速ディードにも教えてやろうとします。ディードはパーン戦死の知らせを聞いて抜け殻のようになってますからね、元気になりますよ。

シャダムの「元気になるのはエルフの娘ばかりではないようですな」というナイスツッコミが冴えます。

パーンが生きているかもしれないという情報を持ってきたのはマーシュであり、それをカシューに伝えたのはシャダムです。

しかしパーンが生きているかもしれない事が分かったら、もうシャダムの事はアウト・オブ・眼中。そんなに気に入ってたのか、パーンが(笑)


ディードは勿論の事、マーシュ達のような傭兵も、何人もがパーンの救出隊に志願しました

あの戦場で、パーンは傭兵達を逃がそうと動いてましたからね。それがなかったら死んでた傭兵だって少なくはない。

荒くれ者揃いの傭兵達や傭兵王にこうも心配されるパーン、これも人徳ですかね。

別に自己犠牲精神をモットーとしてるわけではないと思いますけどね。そういう性分なのです、素で人の為に命を張る男なのです


結局は救出隊はディードに加えて、マーシュ、シュード、デニという事になりました。精霊使い、戦士、戦士/盗賊、盗賊って感じですか。

フレイムには魔法使いは少ないようですからね、あと神官戦士がいてくれたら助かるんですが、贅沢は言ってられません。

この4人で炎の部族の占領下にある城塞都市ヒルトに侵入し、パーンを助けないといけません。まぁなんとかなるさ。


★2

炎の部族に捕まったパーンは、聖騎士と思われているのでそこそこの扱いを受けています。傷の手当ても受けています。

しかし商人の屋敷のとある部屋に軟禁状態です。窓には鉄格子、扉の前には見張り。本職の盗賊だって抜け出すのは骨が折れそうです。


目覚める間際には先の英雄戦争の後の、ファーンの葬儀の夢などを見ました。多分実際あったことのリプレイでしょう。

主だった武官が皆死んで、ファーンの棺を守るのはパーンだったりします。なにしろ騎士の数は1/10にまで減っています。

ヴァリスは深刻なまでに弱体化してるんですね。神殿と王宮の摩擦もあります。エトの苦労が偲ばれますよ、本当に。


ここでパーンは2人の人物と話します。ナルディアとアズモです。


ナルディアは聖騎士としてのパーンに、ヴァリスには参戦しない事を頼みます。族長として外交面にも気を使ってるんですね。立派です。

が、パーンは既に聖騎士ではないので無意味でした。ナルディアが勝手に誤解しただけで、パーンは騙したりはしてませんよ。

このまま聖騎士のフリをしておけば生きて帰れたものを、バカ正直なパーンは聖騎士ではないと話してしまいます。

炎の部族裏切り説の上に、パーンが聖騎士ではないと知って、ナルディアは一気に機嫌を損ねました。ナルルン短気(笑)

まぁここで炎の部族と風の部族の伝承が大きく矛盾していることが分かったわけです。


アズモ 28歳

シャーマン?。炎の部族の神官(とはいっても精霊使い)。アサートの家系なので結構いい家柄だと思う。

子供の頃から貧弱で、勇猛な炎の部族においては無用者のように思われてました。それが彼の、狂気と怒り、そして恨みを生む事になります。

家系を誇って尊大に振舞ったのも原因でしょう。馬にも乗れず、剣も扱えずと書くとスレインみたいですが、人格面で大違いです。

そんなアズモを哀れに思ったナルディアの優しさを好意と勘違いし、夜這いをかけて返り討ちにあいました。頬の火傷はその時のもの

やがてアズモはカーラの手引きでエフリートの力を手に入れます。今では誰も自分の意向には逆らわないので自尊心がやや満たされています。


そんなアズモがパーンに接触してきたのは、パーンにナルディアを告発して欲しいからです。

アズモは全てを呪っています、ナルディアもです。だから、さっきナルディアに言い寄られたと証言させ、失脚させようとしてるんですね。

神託という名目で気に入らない人間を生贄にしているだけに、大分根性がひん曲がっていますね。天井知らずの傲慢さです。

エフリートではなく、自分自身が守護神になったかのような振る舞いです。断ったら殺すぞと言いたいんですね。

もちろんパーンは拒否します。こういう風に人をハメることを、パーンは嫌っていますからね。


パーン「おまえなどエフリートの力を利用しているだけの小物にすぎないくせに」

こう言われたら怒るようですね、弱みをつかれて自尊心が傷つけられたんでしょう。

そしてパーンは、アズモがカーラに利用されていると推測し、珍しくカマなどをかけます。やはりアズモは過剰に反応しますね。

結果としてアズモはパーンを三日後に処刑するという神託を下す事にしました。自主的に下す時点で神託じゃないし(笑)


★3〜4

パーンがそんな感じで危機にある一方、ディード達はパーン救出の為に頑張っていました。一番頑張ってたのは多分ディード。

まず"ウォーター・ブリージング"を4人にかけて水路から侵入します。泳げないらしいマーシュはかなり不安そうでしたが、なんとかなります。

昔ヒルトの守備隊にいたらしいシュードがこの水路の格子が一本外れることを知っていました。ていうか、細工したのも多分この人(笑)

マーシュは通れないので格子を力でひん曲げます。オーガーというか、005かお前は(ジェロニモね)!


"ウォーター・ブリージング"の持続時間は1時間、もう一度かけなおすのは無理っぽいので1時間以内にミッションを終えて逃げたいところ。

ヒルトに侵入してからも、ディードは精霊魔法をふんだんに使ってパーンを助けようと頑張ります。いい娘だ……。

2人の見回りを黙らせるために"サイレンス"、その見張りの死体を沈めるために"シンク"をかけます。

生き残りの見回りから情報を聞き出すために"チャーム"。この時点でパーンにも"ウォーター・ブリージング"をかけられる精神力は残ってます。

前後して見回りはマーシュの怪力で3度ほど気絶しています。凄い勢いで生死の境をさまよっています、生きてるかな?(笑)


総計で"ウォーター・ブリージング"5回、"サイレンス"・"シンク"・"チャーム"を1回ずつかけたわけです。

ディードの精神力は22点。レベルは多分上がっていると思いますけど、具体的に何レベルなのかは分かりません。

5レベルの場合は計22点消費になるので、5レベルではないはずです。パーンにかけた時点で倒れるし。

6レベルなら21点、いけますね。7レベルなら20点。8レベルなら18点消費となります。いずれにしろかなりの消耗です。


頑張ったのはディードだけではありません、他のメンバーもそれぞれ戦いましたよ。見回りを含めて、計8名も倒しました。

まずパーンが捕まっている商館の入り口で、シュードは扉の裏側にいる兵の心臓を一撃で貫きます。これで3人

エストックを扉の表面で動かして気配と音で狙いを定め、一気に貫きます。どこの仕事人だ(笑)

必要筋力は11〜16、シュードの筋力は15なので、シーフ技能では使えませんね。使う時はファイター技能でしょう。

エストクックというのは、刃のない硬い針のような刀身を持つ剣です。両手持ちで、恐るべき貫通力を持っています。


商館の中では1階の3人の兵はマーシュとデニが一瞬で掃討、これで6人。

地下にあるパーンの部屋の前にいる2人の見張りは、シュードとディードと解放されたパーンによって倒されます。

ちょっと怪我したシュードをディードが手当てしようとしますが、女嫌いのシュードは激しく嫌がります(苦笑)

いっそ"ヒーリング"でもかければいいんですが、6〜7レベルだと3点使うので無理、8レベルなら2点なので使えますね。

あまりにも見事な手並みです。騒ぎになっている頃には、5人は水路からヒルトを脱出していました。


第W章 アラニアの賢者

★1〜2

無事救出されたパーンはブレードに帰り、関係者各位に大いに怒られました(笑)

出会う人が誰も彼も「死んでしまえ」と申し合わせたように……まぁそれだけ心配されてたという事ですけどね。

カシューなんて「そんなに命を粗末にしたいのなら、もう一度ヒルトに行って首を切られてこい」だし。

最初は喜んでおきながら、徐々に徐々に腹が立ってきたんですね。意外と可愛い所があります(待て)。


約束通りマーシュとも酒を飲みますが、火の使用が禁じられているのでどうも辛気臭い。

とはいえ火があるとそこからエフリートやサラマンダーが入ってきますからね、仕方ないです。

ウィスプでは明かりは得られるけど、熱までは得られません。いや、光そのものにも多少の熱はありますが。

火を炊かずに暖を取る方法はあるかな……魔法でも難しそう。カイロみたいに熱を発するものがあるだろうか?

神聖魔法の"コールド・プロテクティブサークル"は防寒が精々、暖を取るとのは違いますからね。


これからのビジョンとしては、アラニアに行ってレイリアさんに会う、です。あとスレインにも。

よくよく考えてみれば、それが最も確実な方法ですよね。だってカーラに憑かれていた時の記憶もあるんだし。

ブレードからターバに行くとなると、陸路で一番速いのは砂漠越えになりますね。なかなかに無謀です。

砂漠を越えるとなると、途中で炎の部族や砂走りに遭遇しても不思議ではないし。そもそも環境からして過酷、生き倒れかねません。


しかしカシューからの申し出で、手っ取り早くで行く事にしました。しかも大陸でもそう滅多にない帆船です。

フォーセリア世界には、人力で櫂を動かすガレー船と、風を帆で受けて進む帆船があります。文化的には後者の方が上らしい。

大陸出身のカシューはこの帆船を使って大陸との貿易を盛んに行いたいらしい。そんな事も考えてるんですね(感心)。

ちなみに船の名前は「海の鷹号」。それなりに武装してます。乗組員は商船とはいえフレイムに仕える人達です。船長に至っては貴族だし。


海の人となった一行ですが、マーシュは船酔いで苦しんでます。波は穏やかなのに、意外とデリケート(苦笑)

ここでパーンはディードに「貸しを作った」と言いますが、ディードとしてはそういう言われ方は不本意らしい。

逆の立場だったらパーンは貸しを作ったなんて思わない。性別とかも関係ない。仲間同士なら貸し借りなしで助けて当然だからです。

シュード達もその仲間と認めて欲しいと言ってきました。シュードとデニは訳ありの身の上なのに、パーンが気に入ったんですね。

パーンは誰であれ行動を共にするのなら仲間と考えてしまいますからね。だから立場を超えて絆を作る事が出来る。妙な求心力を持ってる。

まぁディードの場合仲間というか、もっと違う感情もあるんでしょうが……。


アラニアについてからは徒歩です。西の海岸から山越えでザクソンに行き、そこから北のターバに行く予定です。

今のアラニアはラスター公爵率いる王弟派と、アモスン伯爵率いる前王派に分かれた内乱の真っ最中です。

2年経っても一向に決着は着きません。幸いザクソンの方はまだ巻き込まれていませんが、国内は荒れ放題です。


道中何処から来たのかホブゴブリンの一団にも出くわしました。山賊も野放しだし、なかなかにデンジャラスな状態ですね。

こんなところにホブゴブリン……白竜山脈から降りてきたのか、はたまたマーモの残党か。人里近くに現れるのだから危険ですね。

あまりにも危険で落ち着かないせいか、野営をしていてもちょっとした物音で全員身構える始末、デリケートさん(笑)


ザクソンに着く頃、狩人らしい人達に出会い頭に逃げられました。180°ターンでふんばりダッシュです。

パーンは「マーシュがオーガーと間違えられたから」と軽い冗談を飛ばしてましたが、冗談ではないかもしれない(笑)

ここでスレインの弟子?セシル率いるザクソン自警団とちょっとした衝突があります。矢をビシビシ射られました。

とはいってもまともに戦えるのはセシルだけ。他の人達は狩人(一般技能:ハンター技能持ち)らしく、パーンが軽く蹴散らします


セシル 19歳

ソーサラー/ファイター3でセージ1、所謂魔法戦士。賢者の学院にいたのでスレインの後輩に当たります、13歳下の。

学院崩壊後は導師の1人が開いた私塾にいたのですが、喧嘩別れしてかねてから噂に上っていたスレインを頼ってきたようです。

スレインは別に弟子をとっているつもりはないんですが、セシルの方は一方的に尊敬してるらしい。押しかけ女房あらぬ、押しかけ弟子(笑)

ちょっと短気で直情型で体力溢れる武闘派魔術師(生命力18)ですが、根は真面目なイイヤツ。シュードとややキャラがかぶる美形キャラ。

ちなみに元はアラニアの名門貴族の出身でしたが、王侯貴族の腐敗っぷりには嫌気が差してる。一歩間違えればスレインの敵でしたね。


セシル渾身の"スリープ・クラウド"も、パーンはあっさり抵抗します。そしてパーンは強力なボディーブローを見舞って気絶させます。

その後スレインが出てきたので事なきを得ましたが、直情型同士では交渉にならないことが分かりました(笑)


★3

久しぶりに帰ってきたザクソンですが、難民受け入れの為かかなり拡張してました。木を切って新しい家が沢山建ってますし。

食料も不足しているので焼畑農業?なども行っていました。なんでも、マーファ教団に伝わる農法なんだとか。

焼畑農業というのは、主に熱帯で行われている農法です。要は植物を燃やして、その灰を肥料とする農法です。

今回のケースの場合、雑草を燃やしています。延焼しないように水をかけながら焼いているそうです。

当然ディードは厳しい顔をしますが、これは炎の破壊とは異なる性質を示してもいるのです。


スレインの家も2年前よりも大分立派になっていました。レイリアさんと結婚してたりするし。スレインは意外とお誘い上手(笑)

2年前、カーラとの戦いの後にターバへ帰る途中で二人で決めた事らしい。何度も断られたらしいけど、最後はゴールイン。

7年間行方不明だった娘が、婿つきで帰省したわけです。ニースには笑われたらしい(苦笑)

レイリアさんはカーラだった時の事を覚えています。だからこそ、それを償おうとしているのです。死ぬよりも辛い事を覚悟の上で。

スレインはそんなレイリアさんを一生かけてでも支えていこうとしてるんです、何てイイヤツなんだスレイン


レイリアさんの口から今回の事件の真相が語られるわけです。要は風と炎の両部族はカストゥールの魔術師に騙されていたのです。

ジンとエフリートを"封印の壷"で封印し、その事実を捏造し、両者に相手が裏切ったかのように見せかけたのです。

そして因縁500年、カストゥールの魔術師の奸智によって両部族は争っているのです。昔は仲間だったのに。

他と信じあえない事は悲劇を生みます。仲間を信じる事を止めた事が、両部族の過ちなのかもしれませんね。


カーラはその事を知っていたので、エフリートの解放の仕方と盟約の存在をアズモに教えて、フレイムへの対抗力としたのです。

盟約を執行することができるのは、アサートの血を引く精霊使いだけだったので、アズモだけが利用できる駒だったわけです。

しかも詳しい情報は与えず、ただエフリートを攻撃にのみ使わせているのです。その内身を滅ぼす事もお構いなし。

実はナルディアの父親のダレスにファラリスの神官戦士団を紹介したのもカーラだったのです。

フレイムという国を押さえ込む為に、炎の部族を利用して力の天秤を保とうとしたんですね。色々やってますね。


それだけでなく、風と炎の砂漠がかつては肥沃な草原だったことも分かりました。実は砂漠の民ではなかったんですね。

自然界は様々な精霊力のバランスによって成り立っています。そのバランス次第で環境も変わってしまうのです。

砂漠の場合は風と炎の精霊力が強い事が特徴として挙げられます。加えて大地と水の精霊力が弱い事もです。

アサードはジンとエフリートの力を得た代償に、故郷の地を砂漠へと変えてしまったんですね。それでもカストゥールに従属したくなかったのです。


風の部族に伝わる伝承に、『いつしか、盟約の者が現れ、二つを解きはなち、二つを蘇らせる』というのがあります。

長のムハルド老は、盟約の者はカシュー、解放されるものは風の王と風の民、蘇るのは森や畑だと考えていましたが、実は違ったのです。

いやムハルド老だってそれが事実ではない事は分かっていたと思いますよ。伝説をアテにしていても何も始まりません。

でもそこに希望があるのなら、いくらでも膨らましてやる事が出来ます。そういう意味ではカシューの登場は彼らの救いだったのですね。

結局は伝承の答えは『解放されるものは風と炎、蘇るものは水と大地』だったのです。分かってみれば簡単な事ですね。


炎の部族やエフリートを倒す事は解決にはならない。本当の意味でこの争いを解決するには、盟約を無効にすることです。

そうすれば砂漠はかつての姿を取り戻す、これ以上争う理由はなくなる。両部族の争いは誤解から生まれたものだから。

その為に一肌脱がねばならないのがディードです。ハイエルフである彼女なら、精霊王を盟約から解放する事も可能かもしれません。


ちなみにブレードでエフリートが支配されていない状態で力を振るったのも、この盟約によるものなのでしょう。

盟約を結べば精霊王の力を盟約に反しない範囲で自由に使える。もしかしたら精霊王も盟約に反しない範囲で力を使えるのかもしれない。

また現在のエフリートは盟約に支配されているだけで、アズモには義理で従っているだけなので、ディードは接触を取る事ができたのです。

結果としてエフリートは精霊使いに支配されていないにも関わらず、盟約のお陰で物質界に留まり力を振るえる状態にある訳です。


もっとも盟約を無効にしたところで戦いが終わるとも限りません。例え真相を明らかにし、砂漠が草原に戻っても、です。

風と炎の部族はずっと戦ってきましたからね、その間殺し殺されしています。根本の理由がなくなっても、仲間を殺された恨みまでは消えません。

まぁそれは当事者たちの問題です。パーン達が彼らにしてやれることは、二つを解きはなち、二つを蘇らせることです。


第X章 砂塵の塔

★1

旅の仲間にスレインとレイリアさんを加え、パーン達はジンが封印されていた砂塵の塔を目指します。


レイリア 26歳

プリースト(マーファ)7、ファイター5。プリーストは後に8レベルになるのですが、この時点でもそうでないと断言できない。

9年前にカーラに体を乗っ取られた時にはまだ17歳でした。女子高生ぐらいの年齢だったんですね……、カーラってば若い体をわざわざ(苦笑)

ちなみに旦那(スレイン)は今年三十路。たった4つしか離れてないけど、その旦那が老け顔なだけにもっと年齢差があるように見える。

義母のニースは今年56歳なので、レイリアさんはニースが30歳の時に生まれたのですね。

彼女にはカーラ以外にも"亡者の女王"ナニールへの因縁もあるのですが、それはまたの機会に。


砂塵の塔は風と炎の砂漠のど真ん中にあるので、否応なく砂漠の行軍をしなければなりません。

アラニア行きの時は船に乗れてラッキーと思っていましたが、結局は砂漠を渡らないといけないんですね(苦笑)

ゲームの「灰色の魔女」では、何故かファラオの眠るピラミッドとかありましたっけ………。

ファラオって………この砂漠にそんな文明があったのか(笑)。ちなみに宝を返さないと呪いをかけられます。


行軍は基本的には夜、昼間の炎天下だとぶっ倒れかねません。誰とは言いませんが、特に貧弱な魔術師が(笑)

だったら長い棒の先を起点に"ダークネス"とかかければ。気温はともかく、日差しだけは防げるはずです。

休憩ではスレインに保存食を差し出すレイリアさんとか、ほのぼのなシーンもありました。ディードも負けるな(何を)。

やっぱり夜の砂漠は寒いらしく、暖を取りたいけど火を炊くと見つかりそうなので自粛します。

これはブレードの時と一緒ですね。明かりはともかく熱だけを生み出すのは難しいらしい。


横断中は幸い炎の部族には見つかりませんでしたが、風と炎の砂漠名物「砂走り」との戦闘にはなりました。

砂走りとは俗称?、正式にはデザートダイバーといいます。5mを超える長い胴は幾つもの節に分かれ、ハサミのような大顎を持ちます。

元は羽虫の幼虫でしたが、砂漠へ変わった事で成虫になれず、そのまま巨大化してしまいました。ちなみにモンスターレベル6。

砂の中を移動し、獲物へ向かってまっしぐらです。砂が盛り上がるので傍目にバレバレ。どこのジェットモグラだって感じ(笑)

移動速度はたったの10なので、逃げられない事もないと思う。その大顎に挟まれると18点ものダメージがきます。


精神点はたったの6点、魔力が9以上あるディードなら"シェイド"を2発も撃てばまず倒れるはず。

武器戦闘でも、このパーティーならそう負けはしないはずです。まぁ生命点が30もあるんで時間はかかるでしょうが。


この砂走りと一戦交えるわけですが、この戦いでデニ(サーディー)死亡!。シュード……いやフォースを庇って死んでしまいました。

こんな形で死ぬなんてあまりにも悲惨です。でもやっぱり兄弟だったんですね。荒ぶる砂走りの前に立ち塞がるなんて、無茶な事を。

ここでようやくフォースは自分たちの身の上を話してくれました。本名がフォースであることや、盗賊ギルドとの因縁とかを。

デニことサーディーの本名もここで明らかになったわけですが、当の本人はもう亡くなってしまったのです。切ない……。


スレイン「あなたの力で何とかなりませんか」

レイリア「蘇生の魔法は、まだわたしの力の及ぶところではありません。去っていった魂を戻すことはできないのです」

"リザレクション"は9レベル、7〜8レベルのレイリアさんでは無理です。普通は無理ですね、普通は

レイリアさんは既に超英雄ポイントを5点も持ってるようなので、それを使用して一時的にレベルを上げることは可能です。


では何故そうしなかったかと言うと、建前上は色々な条件でおいそれとは使えないから。本音を言うとそんなルールなかったから(笑)

仮にここでサーディーが生き返ったとしても、1週間安静だから大変ですよね。スレインが"テレポート"使えるならどうにでもなるけど。

ちなみにSWでは「後づけ優先則」が存在しますから、その内レベルとかの数値が変わるかもしれません。


一行はサーディーの遺体をそのままに、砂塵の塔を目指す事にします。

フォースは「死ねばただの肉の塊だ!」とヤケクソ気味に言ってましたが、一番辛いのはどう考えても彼です。

例え血は繋がってなかったとしても、ただ1人残った家族を目の前で失い、弔う事も出来ず、先に進まねばならないのは本当に辛いでしょう。

しかも盗賊ギルドとの決着をつけないといけない。マーシュが手伝うと言ってこなかったら更に鬱になっていたでしょう。

でもマーシュがそういう言葉をかけてくれたのは嬉しかった。サーディーを殺した砂走りを切り刻んだのもマーシュでした。


★2〜3

砂塵の塔には既にカシューが出向いてジンを封印していた壷を破壊しています

塔の周囲には凄まじく風が逆巻いていましたが、ディードがシルフを説得してなんとか治まりました。

シルフ達だって、この不自然なバランスを快く思っているわけではないんですね。もちろんジンも。

塔の入り口にはカーラがかけた魔法の鍵がかかっていましたが、じゃあどうやってカシューは中に入ったんだろう?

カシューが入った後にカーラがやってきて鍵をかけたって事ですかね?


守護者であったゴーレムも破壊してあるので、一見危険はないように見えます。が、モンスターはいるにはいたのです。

フォースのシーフとしての目で発見した隠し部屋にレイスなどがいました。それも複数

レイスといえば魔術師が8レベル古代語魔法"レイス・フォーム"によってなれるアンデットです。

持続時間内に体に帰らないとそのまま固定されてしまいますが、そのレイスが一箇所に密集してるのはちょっと不自然ですよね。


ちなみにコンパニオンや「ロードス島RPG」では怨念によって生まれるアンデットです。こっちならなんとか。

しかもこっちのレイスはレベルドレインまでするんですよ。攻撃が当たると一定確率でレベルが下がるという嫌なアンデットです。

「クリスタニアRPG」ではSWと同じく"レイスフォーム"によって生まれますね。


このレイスをレイリアさんは"ターン・アンデット"で全部消し去ります

多分"ターン・アンデット"でしょう。ファリスなら特殊神聖魔法の"バニッシュ"の可能性もありましたが、マーファでは。

でも"ターン・アンデット"の場合6ゾロでも振らないと一撃では消滅しませんよね。6ゾロなんて確率では1/36ですよ、あまり期待できない。

それ以外の効果はペナルティーがつくか、凍りつくか、逃げるか。しかも精神抵抗16(9)だから抵抗を破れるかどうかも微妙だし。


あるいはその上位魔法"デストロイ・アンデッド"。これなら達成値が精神抵抗を上回った分だけ、効果に下駄を履かせる事ができます。

レイリアさんの魔力は11です。出目7として達成値18。レイスの方は固定値とするならば、"ターン・アンデッド"表の出目を+2できる。

すると出目が10以上ならば6ゾロも同然となり、一撃で消滅させられる。それでも結構厳しいですね。まぁ当時はSWルールじゃなかったし。


しかしレイスのいた部屋は魔法の武器の倉庫でした。思ったより収穫は少ないですけどね。

剣・盾・鎧の一揃いの武具はパーンが、ショートソードはフォースが、グレートソードはマーシュがそれぞれ使う事にしました。

パーンの装備は具体的に言うとブロードソード、ヒーターシールド(スモールシールド扱い)、プレートメイルです。多分筋力ピッタリ。

しかもこれらってどれも魔力+2のミスリル製なんですよね。剣はミスリルですが、盾と鎧はよく分かりません。


後にこの剣が"魔法王の鍛冶師"ヴァンの十聖剣のひとつ"鎮めるもの(サプレッサー)"であることが判明します、「呪縛の島の魔法戦士」で。

マーシュやフォースの武器もそうなんですかね。ヴァンの作った魔剣なら通常よりも高くなりそうですけど。

パーンの剣はただの魔力+2の剣ではないと思います。きっと隠された、強力な魔力があることでしょう。

しかしパーン自身と水野先生がそれを明らかにする気がない限り、永遠に謎ですね。対精霊の魔力だそうですが。


思いがけないパワーアップを経て、ついにジンと対面する時が着ました。

ディードだけで会うので、パーン達は待ちです。ただ待つだけというのは結構辛いもんです。待つ側もある意味試されている

ジンに会うにはディードの方から風の精霊界にいかないといけないので、この砂塵の塔の屋上から精霊界への扉を開くのです。

この塔は丁度風の精霊力が強まる所に建っているので、容易にアッチ側にいけるのです。ハイエルフだからでしょうかね?


パーン達は以前森の妖精界に行きましたが、今回は風の精霊界です。

フォーセリアには地・水・火・風など精霊力の種類だけ精霊界が存在し、物質界との仲立ちをする妖精界が存在します

精霊界には精霊力が満ちていて、神は住人として精霊を創りました。また妖精界の住人には妖精を創りました。

精霊は、属する精霊力の力と法則を司る存在です。一方妖精は、精霊界から正しく力を汲み出して物質界に反映させる存在です。

万物の根源が魔力(マナ)ならば、物質も力(精霊力)もやはり基本は魔力(マナ)でしょう。妖精界と妖精は両者の橋渡しでもあるのです。


精霊界に赴いたディードは、物質界とは違うその世界の構造にしばらく翻弄されます。

混沌界でもそうでしたが、肉体というものが意味を持たないスピリチュアルな世界なんでしょうね。

この世界に存在しようと思うのなら、自分自身の存在を意識する事。そうでないと精霊界に同化して、精霊になってしまうらしい。

もしも何かがあって、自分が死んだと認識してしまったら本当に死んで(消えて)しまうのかもしれない。


物質界の肉体にある五感による知覚は出来ないと思います。魂だけ?だから。それと似たような形で周りを感じ取る事は出来るでしょうね。

肉体があれば何もせずとも見る事が出来る。でもこの世界では自分自身の存在と同じく、意識しないといけないようです。

だからディードは当初聴覚(のような知覚)だけで周りを感じ取っていましたが、見ようと思う事で視覚(のような知覚)でも感じ取れました。


つまり精霊界は感覚と認識の関係が物質界とは違うのです。

物質界や妖精界では、自分の肉体の持つ感覚によって、間接的に知覚する事で自分や周りのものを認識しています。

しかし精霊界ではその肉体が意味を持たないから魂が直接的に知覚しなければ物事を認識できないのです


物質界や精霊界、妖精界の周りには混沌界なんてのもあります。これはまた一味違う。

混沌界では人間の感覚と混沌界の存在は接点が無いから直接知覚する事は出来ない。その二次的なものを感じられるだけ。

水野先生の言葉を借りるなら、紫外線を見ることは出来ないけど、それによる日焼けを見ることは出来る。

混沌界は神々が世界創造の際に残したものによって構成されています。精霊界そのものとは少し違う(と思う)。


ジンに会って盟約を解除する言葉が失われた事を告げますが、だからといってすぐに精霊力を元に戻す事は出来ません。

精霊であるジンは盟約という約束事を不要だからといって破る事は出来ないのです。本人だってこの状態は不本意なのです。

そこでジンはディードと、新しい盟約を交わして以前の盟約を上書きすることを持ちかけます。多分唯一の方法でしょうね。


精霊王と盟約を交わす場合、やはり超英雄ポイントが必要となります。一柱目の精霊王には1点、二柱目には2点……という具合に。

この際、盟約の強制力を決めねばなりません。別に特別な事ではなく、魔力+2Dです。普通に魔法をかける時と一緒。

既に盟約を受けている精霊王に盟約を与える場合、これを上回る必要があります。要は達成値の比べあいというやつです。


なお、盟約者死亡後は、盟約を執行する毎にこの強制力は下がり、0になると盟約は解除されたりします。

アサートの盟約の強制力がどの程度だったのかは分かりませんが、もう結構消耗してると思います。

アズモにしても、放っておけばその内強制力が0になって、エフリートは解放されるんじゃないですかね?

まぁそんなのを待ってる余裕はありませんけどね。あと10回は余裕ですとかだったらフレイムが滅びる(笑)


ディードはこの試練に見事打ち勝ち、新しい盟約をジンと交わしました

圧倒的な力に一度は消えかかった魂ですが、パーンへの想いに縋り付く事で強靭な存在力を発揮し、耐えられたようです。

今度はパーンがディードを助けたわけです。パーンがいなかったらディードの魂は精霊界で消滅していたかも。


新しい盟約の内容は簡単、「精霊力を元に戻して大地と水の精霊力を解放する」こと。つまり何もするな

この内容に背かない限りディードはこのジンの力を借りる事が出来ます。精霊使いとして、これは物凄いことです。

なおこのジンの名前はイルクです。ジンは種族としての名称で、イルクは彼の個人名ですよ。精霊王は皆自分の名前を持ってるようです。

風の試練を果たしたディードは、この力でエフリートをも盟約から解放する事が出来るのです。


第Y章 そして、解放されるもの

★1〜4

パーン達がアラニアに旅立ってから、フレイム軍はブレードに篭り、炎の部族との膠着状態を続けていました。

フレイムは決して打って出ず、火の使用も禁じてお篭りさんになっています。その分かなりのストレスが堪ってるようですがね。

炎の部族だってあまり余裕があるわけではありません。背後にはマーニー、ローラン、ヴァリスなどがいますからね。

ヒルトには僅かな数の兵を残してあるだけ、後ろからこられたらかなり厄介な事になります。


立場上ヴァリスはフレイムに援軍を送ってもいいのですが、それは出来ません。ヴァリスは今外征出来る状態じゃありませんからね。

マーニーとローランというのは、元は独立した都市国家でした。ヴァリスとフレイムを結ぶ街道上にあります。

両者は以前は激しく勢力争いをしていたですが、炎の部族がファラリス神官と手を結んだ事に危機感を感じ、フレイムに併合を願い出ています

それが5年前の507年。フレイムの傘下にあるのだから、両都市の太守はブレードに援軍を送って当然なのです。

それをしないということで、両都市の太守は近々解任されるでしょうね。


ジンが盟約から解放された事で、既に風と炎の砂漠の風の精霊力は弱まってきています。アズモもそれを感じ取っています。

それに不審を覚え、アズモはエフリートに聞いてみようとしますが自重します。実際正解だと思う。

盟約によれば、エフリートは攻撃をする事を約しているだけです。そういう風に質問に答える義務はない。

では盟約とは違う事を命じた場合はどうなるのか。よく分かりませんが、いい事にはならないと思う(苦笑)


いよいよ民の我慢も限界かという頃、ついに土産を持ってパーン達がようやく到着しました。何故か海水まみれで(笑)

海沿いに来たんですね、砂漠方面はヤバいから。マーシュあたりワカメがカツラっぽく付着してたら笑えますね。

あまりにも怪しいという事で、普通にパクられました。パーン達の顔が全ての民に知れているわけではないですからね。

カシューが駆けつけた頃には、全員縛り上げられてました。笑えない状態です。でもカシュー陛下、大喜び&大爆笑。

ディードやマーシュは機嫌を損ねるし、レイリアさんはカシューを諌めるし。いっそパーン達の人相書きでも張っとけ(笑)


まぁこれで風の部族にも真相が伝わるわけです。なかなかショッキングな情報ですが、今更戦を止める事もできません。

人には感情がある。理屈で分かっていても、心はそう決まりきったものではない。既に拭い切れない様々な遺恨があります。

やられたらやり返す、悲しい事にそれが現実。そのしがらみを断ち切るには、誰かが何処かで受け止めてやらないといけません。

今が恐らく、和睦する最初で最後の好機でしょう。盟約を解除し、戦で勝つ。その上で和睦を申し出て、炎の部族をフレイムに迎える。

スレインは「誤った過去を正す勇気なくば、正しき未来もまた得られぬ」と言いました。多分そういうことなんでしょう。


翌日には街から打って出て、炎の部族を相手に白兵戦を行う事になりました。

パーンやスレイン達は、サラマンダーに対抗できる魔法や魔剣の使い手ということで、突撃隊(ていうか決死隊)に入りました。

数はほんの十人程度ですが、彼らを除いてサラマンダーを倒せる人材がいないから仕方ない。もちろんマーシュやフォースも一緒。

フォースの武器は、一本は砂塵の塔で見つけた魔剣、もう一本は兄サーディーの形見の小剣です。知らない内に持ってきたんですね。


戦が始まると、レイリアさんは"ファイア・プロテクション"らしい魔法をパーンとスレインにかけていました。

"ヒート・プロテクティブサークル"とも思えますが、あっちは空間にかけるもので、こういう風に個人にかけることは出来ません。

"ファイア・プロテクション"は7レベルの神聖魔法、炎に対する抵抗に自動的に成功するようになります。しかもダメージも2点減。

パーンとスレインのレベルなら、サラマンダーの炎もノーダメージになるかもしれませんね。ダメージロールで6ゾロでも9点という程度だし。


今回のフレイム軍は前回の失敗を反省し、捨て身の覚悟で敵陣深くに切り込み、乱戦に持ち込もうとしていました。

そのフレイムの兵士たちがサラマンダーの大群の炎を浴びている一方、ディート&イルクVSエフリートが行われました。

炎の部族にエフリートが、風の部族にジン(イルク)が現れたことで、傍目にはカッコイイ構図になりましたね。

風の部族にとっては500年以上待ちかねた守護神様の登場です、そりゃあ士気も上がりますね。


ディードは既にこのエフリートと会っているのですが、当のエフリートはそんなことはもう忘れていたりする

精霊王である彼が記憶するに値しないほど些細な出来事だったからか、あるいはただ単に物覚えが悪いだけなのか(笑)

それはそうと、上位精霊同士の力は互角。エフリートは動くに動けない状態に追い込まれました。当然炎の援護も出来ません。

そうなると消耗戦になり、数の多いフレイム軍が有利ですね。守護神の力がなくなったら、こうも脆く崩れるのか。


アズモがもうエフリートを操れない事を悟ったナルディアは、側近を引き連れて戦場に飛び込みました。

アズモは「信心が足らないから守護神が怒っている」と出鱈目をぬかしていましたが、ナルディアには心当たりがあったりします。

ナルディアは守護神を心の底から信じていたわけではありません。アズモへの嫌悪や、ファラリスに似た破壊の力を感じ取ったからです。

ファラリスは暗黒神にして自由神。別に破壊する事を奨励しているわけではない。それに、炎の精霊力は破壊だけの力ではない


風の部族と炎の部族の違いは、変革したか否かです。炎の部族は昔ながらの砂漠の生活を送るだけでした。

しかし風の部族は、カシューを得て井戸を掘り、緑を植え、国を作り、外部のものを取り入れて強大になっていきました

だからといって炎の部族の指導者であるナルディアが、風の部族の軍門に下る訳にもいきませんでした。


結果としてエフリートを頼って今こうなってる。他の道があったかというと、あるにはあったけど炎の部族には歩めなかったのです。

「炎を継ぐ者」を読んで分かる通り、カシューは何度も炎の部族を受け入れようとしていました。

しかし両部族の確執の為に、それを選ぶ事は出来ませんでした。両者の戦力差は広がるばかり、守護神を失ってそれが明らかになりました。

もしかしたら、風の部族が変わろうとした時点で、炎の部族の敗北は決まっていたのかも。


ナルディアは炎の部族を勝利に導く事は出来ませんでした。でも他の誰がやってもこれ以上は望めなかったとも思います。

やがてカシューがナルディアの元に赴き、降伏を勧めました。実はフレイム軍には降伏した相手を手にかけないよう厳命してます。

ナルディアは敗北感というよりも開放感すら感じ取っていました。やっぱり、無理してたんですね……。

ナルディアの側近の笛の音によって炎の部族は全面降伏、500年以上もの抗争は終わりを告げたのです………。


パーン達の方はというと、イルクを召喚していて身動き出来ないディードを守る為に必死です。

何しろジンとエフリートの真下ですからね、目立つ目立つ。敵も味方もワラワラ寄ってきて乱戦です

一緒に戦う仲間に、マイリーの神官戦士などがいました。多分次の巻に出るホッブでしょうね。

"バトル・ソング"とスレインの魔法で、パーンはかなりの数の炎の部族を相手に、ディードを守る事が出来ていました。

マーシュとフォースは背中を庇いあって戦ってたりします、このコンビも結構好き。


アズモはというと、レイリアさんと対峙してたりしました。アズモにとってはレイリアさんは魔女カーラに見えるんでしょう。

レイリアさんは"ファイア・プロテクション"をかけているのか、サラマンダーの炎も平気な様子でアズモに近づいていきます。

目の前の女(実際はカーラに)騙された事を悟り、アズモは半狂乱になってレイリアさんに襲い掛かりました。

アズモがその時見ていた夢想は、地平線まで続く自分を蔑んだ全ての者たちの生首でした。何処までも哀れな男です。


レイリアさんは忘れがちだけど5レベルファイター。大きな悲しみを感じながらも、アズモに引導を渡してやりました

レイリア「おまえの言うとおりよ、アズモ。わたしは魔女なのだから……

どうやらまだ許せないようですね。でも、スレインがいればいつかは彼女も笑顔を取り戻せるはずです……。


アサートの血筋が途絶えた事で、エフリートは明らかに不利な状態に追い込まれていました。

上位精霊同士の力は互角、本来なら優劣は存在しません。データを見ると僅かな違いはありますけどね。

現在エフリートを物質界にとどめているのは色あせた盟約なのに対し、イルクの方は新しい精霊使いと盟約を得ています。

このままだとエフリートの方だけが消えかねないらしいです。物質界に精霊王を止める力(盟約の強制力)はイルクの方が上なのかも。


エフリートもイルクも、盟約によって物質界に止まっているという点では一緒です。一つ違うのは、盟約者がいるかいないか

盟約者が死ぬと、盟約を執行するごとに強制力は減少していき、0になると盟約解除(精霊界送還?)でしたよね。

今の状態だと、エフリートの方だけが一方的に強制力を消耗していきますからね、エフリートだけ消えるというのも、ルールで再現可能かも。

以前独断でディードを襲っていましたが、盟約を執行する事を命令する精霊使いがいない状態では、完全に力を振るえるかどうかも怪しい


とうとうエフリートは、ディードとイルクの存在感に屈し、新しい盟約に従う事を了解しました

新しい盟約はイルクへ与えたソレと同じ。炎の精霊力を通常に戻し、水と大地の精霊力を元に戻す事。

ジンとエフリートは、それぞれの精霊界に帰ることにしました。……ディードってエフリートの力は借りられないのかな?

やっぱり超英雄ポイントを消費して盟約を交わす必要があるんですかね、ただ単に新しい盟約を告げただけではダメなのかな。

ディードは性格的に炎の精霊は合わないから、可能だとしても実行はしないでしょうけどね。超英雄ポイントも足りないかもしれないし。


これで完全に両部族の戦いには決着がついたのです。カシューはこのどさくさに紛れて、ナルディアに結婚を申し込みます

こうすることで両部族を和解させようとしてるんですね。子供が生まれたら炎の部族の人間だから、その子も風の部族と婚姻をしつつ。

しかしナルディアは断りました傷ついた女性にプロポーズしたという点ではスレインと一緒ですが、結果は大違いですね。

両部族の因縁は、もっと根が深い。自分がカシューと結婚したら、やはり摩擦が生じると考えたんでしょうかね。

でも違う立場だったら、勇敢な王に憧れる娘だったと本人が言ってますし、別にフられた訳ではないと思います。


そしてナルディアは、自らエフリートの残り火に飛び込みました。これが彼女の出した答えでした。自分の命で部族の未来を守ろうと。

重い空気の中、フレイム軍は炎の部族と共にブレードに帰ることになりました。パーンは最後までその火を凝視していました。

このままエンディングかと思いきや、奇跡が起きました。消えかけていた残り火が球体状に膨らみ始めたのです。


そしてその中から、500年に一度現れるという、もう一柱の炎の精霊王フェニックスが誕生したのです!

炎の精霊王には二種類あるのです。エフリートとフェニックス。データは一緒ですが、それは炎の精霊力の二面性を示しています。

『エフリートが誤った力を浄化し、そしてフェニックスが正しい力を再生させる』という伝承があります。

つまり炎が司るものは破壊と再生なのです。焼畑農業もそうですね。炎上して灰になっても、それが新しい命を育む肥料となる。

奇しくもこのフォーセリアの世界律に似ています。破壊と創造は等価だという法則に。詳しくは「新ロードス島戦記5 終末の邪教(上)」


このフェニックスがナルディアの生まれ変わりだと誰もがいいますが、私もそう思います。というか、そう思いたい(希望)

死んだ人間が精霊王となるなんて、本当にありえるのかどうか分かりませんけど、奇跡ってそういう不可解なものですし。

500年以上も続いた風と炎の部族の争いは、こうして一応の決着をみました


しかしパーンの戦いは終わりません。次はアラニアの内乱を鎮める為に、スレインと共にザクソンに戻ります。





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