「新米女神の勇者たち(9)」著:秋田みやび/グループSNE 出版社:富士見書房

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第二十五話 囚われの仲間を連れ出す方法

★それでは恒例、成長申告

今回のキャラクターシート


今回の能力値の成長は以下の通り。

ジーク:筋力20→21

エア:生命力26→27

メッシュ:生命力21→22

ニゲラ:筋力16→17

イスミー:知力24→25

今回の成長でニゲラは<剛力の指輪>を装備してボーナスがブレイクです。


技能の成長ではメッシュがスカウト7→9とし、戦闘特技《影走り》を自動習得しました。

それはめでたいのですが、計算すると何故か彼は他の人より経験点が2000点も多く入っているのです。

メッシュ「おかしい、何故だ……ちゃんと成長の記録は付けているのに!」

エア「何をとぼけてるのよ、ポンコツ」

メッシュ「何をのっけから失礼な」

エア「あなたはスカウトの上に、攻撃回数が多い。なおかつ、運が悪い
    一セッションに人より二回多く1ゾロを振るだけで
    二十五回目になれば軽く2000点くらいの差が出てくるのよ!」

塵も積もれば山となる。失敗は財産なのです。そのお陰で思ったより早く《影走り》が習得できましたしね。

これで今後の彼は乱戦エリアに束縛されない。戦場から逃げるも自由、いきなり後衛に殴りかかるも自由です。


あとはイスミーがスカウト0→1、ライダー8→9として戦闘特技《命中強化》を習得しました。マギシューにも役に立つ。

騎芸"空中騎乗"を覚えたのでワイバーンには乗れるようになりましたね。あと1レベルでドラゴネットですよ。

それとカテゴリ<ガン>のAランク武器<テンペスト>を購入。最大装填数6で長期戦に向いたライフルタイプの銃ですね。


他の人達も装備が色々変わっていますね。エアは<祈りのアミュレット>や<不撓のバックル>を装備するようにしました。

こっそりと<浄化の聖印>まで入手していますね。これでフェイダン地方を離れることがあっても大丈夫。

ニゲラは<剛力の指輪>だけでなく<信念のリング>まで購入しています。ジークとお揃いですね。

そしてジークは<カトレアの花冠>を装備しています。これは妖精魔法の射程が10m伸びる2万ガメルの品です。

御馴染みの"カオスショット"や"ブレイブハート"などは実は射程が10mしかないのでちょっと便利になりました。


★ちみっ子皇女と極彩色エルフ

前巻はエイデルからリオスに行って、そこから浮島へ潜入したりと大変でした。

ニゲラ「お父さんを見つけましたぁ!……余計なことしくさりやがって、あのド外道がぁあ

メッシュ「とてもいい笑顔で、後半ものすごいドスを効かせるのはやめていただきたい」

そしてアーメス教団が占拠する島にカチコミをかけたぞんざいズは、見事にこれを解放することに成功しました。


ところが幽霊船と奮戦したオクタンが半壊。イスミーは涙に暮れていました。

イスミー「うわーん、うわーん(泣)」

ソラ「あたし《カイン・ガラ》にコネがあるから、何とか修理してもらえるようにするの」

イスミー「本当でやすか!」

ソラ「ほんのちょっと、だけど責任も感じるし。それくらいのことはするの。……乗ってみたいし

エア「こらぁあ!また目を離すと怪しいことをしようとするでしょ、ソラは!」

ソラ「信用して欲しいの」

他に当てもないので結局彼女に任せることにしました。修理が終わったら合流すると約束して。

オクタンは大型の馬車に載せられ、カメラにイスミーの姿を映しながら運ばれていったのです。ドナドナみたいに。


しかし帰ってきたのも束の間、アイヤールからやってきたホーリィが衝撃的な事件を伝えます。

ホーリィ「大変なのだ、我の優しいミスティン姉上が、誘拐されてしまったのだー!

アイヤールの皇位継承権第一位の"夢見の予知姫"が誘拐されてしまったのです。

最近実はジークの父親が違うお姉さんだと判明したので、流石のジークも動揺が隠せません。


そしていきなりちびっ子に抱きつかれたメッシュも動揺が隠せません。

メッシュ「このしがみついて離れないちみっ子は一体何者ですか、光源氏計画ですか!
      ジークさまが過去に色々なさった女性ですか!」

ジーク「これは俺の娘だ」←自分すらネタとする

イスミー「ええーっ!兄貴結婚してたんでやすか!」

メッシュ「なんと!そうでしたか。お久しぶりでございます、お嬢様

某プレイヤー「そこは記憶喪失でも、普通は忘れないことじゃないっすか」

失われた記憶は一年分ですからね。こんな大きい娘がいたら隠し子でない限り知らないわけがない。

あとどこかで聞いた事のある口調の人が混じっていますね。これはあれですよ、ヘッポコでいうガルガド的存在(笑)


収拾がつかないので真面目に説明します。ついでにメッシュの頓珍漢っぷりの事情も。

ホーリィ「まっとうだったところを見たことがないのだ。
      しかし、ルーンフォークでよかったな、穢れなかったではないか」

メッシュ「むしろライフォスはルーンフォークをもう少し大事に扱ってくれてもいいと思うのですよ。
      穢れには程遠いピュアな存在なのですから」

ライフォスにとって穢れは厳禁ですからね。逆に言えば穢れさえしなければ蘇生もそれほど反対されないのかな。

しかし穢れがないからといってピュアとは限らない。それでは魂が穢れない魔神もピュアソウルになる(笑)

結局はこの世界の自然な生命でないというだけなのかもしれませんね。善悪はまた別の問題であって。


ホーリィ「だから、たくさん使うのではないのか?無茶しても穢れないから」←怖いこと言うちびっ子です

ニゲラ「汚いこと全部やらせて「秘書がやりました」って言うのに丁度いいですー(にこやか)」

メッシュ「いきなり怖いことを言うようになりましたね、ニゲラ!
      確かに「記憶にございません」がこれほどしっくりとくる種族もありませんが!」

むしろ周りに利用される被害者になりかねないし。穢れとはあってもなくても面倒なものです。


ちなみにニゲラはホーリィは可愛がっていますが、極彩色のリャンには関わらないようにしています。

ニゲラ「なんだか、方向性が、すごーくよく知ってる人と似ている気がして、ちょっと距離を開けますー」

エア「そんなこと言いつつ、最終的にニゲラが、あの派手男とくっついていたら結構笑えるんだけど

イスミー「あのタイプは放っておけないと」

ニゲラ「うわ、やめてくださいよぅ、縁起悪いじゃないですか!
     何が悪いって……自分でも一瞬ありそうだと思ったところが、一番わるいー!」

だめんず・うぉーかーってやつですか。確かにそんな感じがしますね(笑)


それはともかくミスティン姫の件ですが、実はこれにはムーテスとリャンが関わっています。

アイヤールでビジネスを始めた2人は服飾関係でそこそこいいものを作って上手くいっていたのです。

そんな2人に声をかけてきた流通業の商人がいました。「自分たちと組んで商売をしないか」とね。

そうなると更なるビッグビジネスのためにコネが欲しい。そこで目をつけたのが以前名刺交換したミスティン姫でした。


ミスティン「お世話になったことですし、出来次第では身に着けて社交の場に出てもかまいませんよ」

ジーク「優しいなあ、姉ちゃん」

そんな返事を貰った2人はこれがチャンスだと頑張りました。上手く行けば皇室御用達のブランドですもんね。

ところが完成したドレスを彼女に見せようとした時に異変が起きたのです。例の商人が誘拐犯だったのです。


ちなみにその時リャンは失礼なことを言わないよう馬車で待たされていたので現場は知りません。

メッシュ「ムーテス、なかなか学習したようですねえ」

某プレイヤー「言っておくけど、学習はしてるっすよ!ずっと前からしてるんだよ!
        あいつは「お姉ちゃん、顔色悪いからこっちのほうが映えるよ」とか言い出しかねないからね!」

その時リャンはいつまで経ってもムーテスが戻ってこないことで異常を察していました。

そして彼女が誘拐されたと騒ぎになる頃には身を隠し、ムーテスから話を聞いていたホーリィの所に駆け込んだと。


事態を知ったホーリィが皇城へ行ってみると、犯人からの脅迫状が届いて大騒ぎになっていたのです。

要求は<パジャリガー・スラッシュ>の引渡しです。以前ホーリィにあげたパジャリガーの持っていた魔剣ですね。

これに対してアイヤール首脳陣はテロに屈しない。"影姫"を攫ったと思われるディルフラムと戦う国柄ですしね。


ジーク「皇位の継承権は持ってるけど、身体が弱くて公務や社交も疎かになりがちな
     ミスティン姫のことは、見捨てようとしてるってことか?

ホーリィ「ひどいのだひどいのだー!」

実際そういう方向に話が進んでいるらしく、それを聞いたホーリィは泣きながらぞんざいズを頼ってきたと。


イスミー「アイヤールでは、弱いものはたとえ皇族でも見捨てられるってことですかい?」

メッシュ「というか、要人の代わりに核弾頭を寄越せといわれてるようなものでしょう」

推定<神殺しの剣>ですしね。それが本当だとしたら個人の感情はともかく、国としては屈するわけにはいかない。

しかし冒険者であるぞんざいズにはそんなもの関係ない。助ける方向でアイヤールに向かうことにします。


ベル「どこにでも行けばいいじゃないですか。別に、兄さんがいなくても平気ですよ、子供じゃないんですから」

ジーク「……がし(腕を取った)……お前のためでもあるからなっ
     ていうか、お前の姉ちゃんでもあるんだよミステインさまは。言えないけど」

ベル「……いってらっしゃい」

アイヤールにはホーリィの飛行船で向かいます。二度ある事は三度ある、また落ちないか心配です。


★アイヤール空の旅

今回の飛行船の旅は特に墜落などが起きることもなく平穏でした。毎回毎回落ちてたら誰も利用しなくなりますしね。

ジーク「ホーリィも、お姫様として、こんな飛行船を動かせるようになったんだからすごいよな」

ホーリィ「ちがう。これは、ミスティ姉様が皇城から迎えとして手配していたものを、そのままお借りしたのだ」

実はミスティン姫は誘拐される直前に急ぎでこの船を手配していたのです。《青嵐領》から《皇城領》へすぐ戻る予定でした。

ところが彼女が誘拐されたことでそれを報告する形になり、その後ホーリィに乗っ取られてリオスまで運ばされたと。

彼女が何をしようとしていたのかは謎です。何か夢を見ていて、それを報告する予定だったのかもしれませんね。


ぞんざいズはまず《青嵐領》で現場を確認し、それから《皇城領》へ行って情報を集めるつもりです。

しかし今回はあちこちの騎士や密偵も動いているだろう大事件ですし、いくら冒険者でも邪魔が入るかもしれません。

ニゲラ「確かに、面子を重んじる人とかに目を付けられると動きにくくなりますー」

ホーリィ「それならば、騎士団に顔の利くジャスティ姉様に口を利いてもらうといいのだ

皇位継承権第二位ですからね。ミスティン姫が不在のいま、女帝の次にやんごとなき立場にあるはず。

ここでぞんざいズはようやく彼女が姫なのだと確信が持てました。本人は否定し続けていましたけど(笑)


ちなみにホーリィは最初ジャスティを頼ろうとしたのですが、何処にいるのか分からなかったらしい。

ホーリィ「だから、ジーク、おぬしはミスティン姉様の弟なのだろう、姉様を助けて欲しいのだ」

ジーク「ちょ、ちょっと待て!何で知ってるんだ!弟にも話してないのに!」

ホーリィ「小さな頃に、聞いたことがあるのだ。両親や兄弟たちと離れるのはいやじゃいやじゃと
      駄々っ子になっていた折、姉上に、遠くにいる弟と母上のことを聞いていたのだ。
      逢えなくても、遠くても、大事な弟たちなのだと。だからジークの名前には聞き覚えがあったのだ」

ジーク「……ねえちゃん(じーん)」

ジークとベルのことを彼女もずっと気にかけていたんですね。直接会ったことはなさそうなのに。

ジークとメッシュが《青嵐領》に来た時、彼女が内心どれだけ喜んでいたか。ようやくあの時の彼女の態度が分かりました。


メッシュ「で、ジーク様なら、情に流されてきっと力になってくれると打算的にきたわけですな?」

ホーリィ「うむ、概ねその通りだ

ジーク「おおい!」

エア「ホーリィも十二歳。これくらの政治駆け引きができなくて、なにが皇女かと」

ニゲラ「汚れた世界ですー」

先代の皇帝には愛妾も多く、現在の姉妹のほとんどは母親の違う姉妹なのです。

セラフィナ女帝は正妻の娘で、ミスティン姫とは半分しか血が繋がっていない。個人的には妹達を大切にしているでしょう。

しかし立場上それが許されないのなら、もう半分の血が繋がったジークを頼ろうというのがホーリィの希望なのです。


★《青嵐領》での報告

ぞんざいズ《青嵐領》でいったん飛行船を降りてミスティン姫の離宮を訪れました。

普段は閑静なところですが、今回ばかりは衛兵達が詰めてピリピリした様子で厳戒態勢。近付くと呼び止められます。

衛兵「キミたち!ここは関係者以外立ち入り禁止だ!」

ジーク「関係者だ」

衛兵「……どんな風に」

ジーク「……ホーリィをぐいぐいと前に出す

ニゲラ「ちょっと待ったぁあ!確かにそれは関係者ですけどっ」

ジーク「これが目に入らぬか(ぐいぐい)」

エア「印籠か!不謹慎極まりない感じがするんだけど」

関係者であることは間違いない。ところが衛兵はぞんざいズは被害者ではなく、加害者側の関係者だと考えているようです。

何故ならムーテスが誘拐犯として逮捕されているから、その仲間であるジーク達も犯人の一味だと考えているようなのです。

ホーリィを連れているのだってかどわかしていると見られるし、隙あらば逮捕できないかという思惑が見え見えです。

帰ってこないと思ったらしっかりパクられていたんですね。ガルガドかと思ったらノリスだったというわけですか。


イスミー「彼がやったって自供したんですかい?」

衛兵「そう簡単に白状するわけがない。現在取調べ中だ」

ジーク「じゃあ、やってないだろ」

衛兵「往生際が悪いだけだ。アイヤールにとって宝といえる
    ミスティン皇女殿下を誘拐したなどという大罪、発覚すれば関係者は極刑を免れないだろう

ミスティン姫は領民や家臣には慕われていそうですしね。衛兵が多少感情的になっているのは仕方ないのかも。

しかしこれでムーテスが無実だったらどうするんだろう。冤罪事件の恐ろしさが分かりますね。


いっそ本人から直接事情を聞ければ手っ取り早いんですけどね。事件当時の現場を知る生き証人なんですから。

初めから犯人だと思っているアイヤール側の人間は信じなくても、ジーク達なら彼の証言を信じて捜査に役立てることができる。

エア「ムーテスの言うことなら、同族よりは信じるわよ、わたしは」

メッシュ「確かに、あの極彩色エルフと同族というだけで、生きる希望をなくしますな(うんうん)」

エア「お前に言われたくないわ、廉価版パジャリガー!

しかし今はジーク達も容疑者です。そう簡単にムーテスに会わせてもらえる筈もない。それどころかこっちが捕まりかねない。

もちろんただの衛兵ごときがぞんざいズに勝てるはずもないのですが、だからといって力ずくでは本当に犯罪者です。


このままでは事態が膠着するかに見えた時、エアが"クエスト"をかけることを提案します。

衛兵「わかった。それなら中央の信用できる司祭に宣誓の場を設けて、そこでかけてもらうのがいいだろうな」

これは7レベルの神聖魔法で、対象に神の使命を与えます。フォーセリアの頃から御馴染みの魔法ですね。

ただしそれを遅延・放棄しようとした時のペナルティが変わっていて、毎ラウンド1点の呪い属性のダメージを受ける。

以前は全身を耐え難い苦痛が襲って最後は発狂するという効果でしたけど、こちらは明確に命が削られます。


これで「ミスティン姫を救出する」という使命を与えてもらうのです。少なくともかける側にはデメリットはない。

容疑が晴れなくてもある程度自由に捜査できる権利が与えられればいい。今はとにかく前進しないといけません。

本当はエアがかけてもいいんですけど、容疑者の一人では本当にかけたのかという信用を得られないので。


ジーク「その前にムーテスに会わせてくれよ」

衛兵「ここにはいない」

某プレイヤー「……ええっ!?レベルアップ作業と買い物終わって、ダイスまで握ってたっすよ!」

現在ムーテスは《皇城領》で捕まっています。こんなのどかな所では推定凶悪犯を扱えないから仕方ない。

ちなみにここからムーテスは登場確定となったので、彼は晴れてムーテスとして茶々入れに参加します。

ソラがNPC化してムーテスもPCとしての参加はないかもと思っていたから素直に嬉しいですね。


ムーテスの投獄場所については、はじめから《皇城領》には行くつもりだったので特に問題はありませんけどね。

ニゲラ「そして、正々堂々と潔白を証明するのですぅ。ルーフェリアの名に懸けて!」

エア「そう、それが主目的です。紫はついでです

衛兵「まあ、この国の第一皇位継承者を狙った重罪人だからな、多分死刑だろうな」

ジーク「……生き返らせてやるよ、ムーテス」

ムーテス「即効、脳内で強制執行しないでほしいっす!」

そういえばニゲラは本当にルーフェリアに入信したんですね。まだプリースト技能のない平信者ですが。

しかし平であっても祈りを捧げれば立派な信者です。お父さんを預かってもらっているお礼ですよ。


ムーテスが捕まった経緯ですけど、どうやら地面で寝ていたのを発見・捕縛されたらしい。

一同「"スリープ"だ!」

ジーク「いや、あいつを捕まえるならそれしかないとは思ったけどな」

ムーテス「悪いやつは、逃げてる途中に寝たりしないっすよ!
      もっとこう……もっと、何というか、同じ捕まるにしても、ヒーロー的な……!

GM「だって、さっきキャラクターシート確認したら<赤の眼鏡>嵌めてなかったから……」

ムーテス「うわぁあああ、買うかどうか迷って、結局買わなかったのが悔やまれるっす!」

<赤の眼鏡>はその名の通りの赤眼鏡で、かけていると眠らなくなる2000ガメルの品です。


犯人を率いてきたのは確かだから、状況証拠だけで犯人扱いされるのは仕方ないのかもしれない。

しかし愛のある見方をすれば、姫を守ろうとして奮戦するも眠らされて捕縛という解釈だってできます。

何しろ現場を知っているのは彼だけですからね。その彼の証言が信じられなければどんな解釈も可能です。


《皇城領》に行く前に現場を見せてもらえます。そこはぞんざいズも知っている来客用の居間でした。

現場にはドレスが散乱していて、窓が内側から破られていました。窓の穴は人間サイズより大きいのが特徴。

ここでメッシュが《探索判定》で奇跡の6ゾロを振り、衛兵達が見つけられなかった遺留品を発見します。

それは一見"酒幸神"サカロスの聖印ですが、二つに割ると中からアーメスの聖印が出てくるというものでした。


やはりアーメス教団が関わっているんですね。ムーテスはそいつらに騙されたと。

実はシフェナと思われるルーンフォークの姿も目撃されていて、色々下準備が念入りのようです。

ちなみにこの領ではルーンフォークは珍しくない。メッシュやパジャリガー・セカンドの生まれ故郷でもあるし。

それにしても彼女の耳の形状は珍しかったので目立っていたのです。お陰で行く先々で足取りを追えてますけどね。


窓の外の足跡は途中で途切れていて、<騎獣縮小の札>の破片や轍の跡がありました。

轍はスカイバイクとしても、それ以外にも空を飛べる騎獣がいて、それに乗れるライダーがいるということですね。


★《皇城領フェーゴ》の再会

《皇城領》フェーゴはその名の通り皇族が住む領です。政治の中枢であり、玉ねぎの芯にあたる位置にある領です。

巨大な岩山の中腹から領全体が巨大な城砦として削り出された形になっていて、市外は内部を掘り進めて形成されます。

魔動機文明時代のシステムが現存していて、屋上には大アイヤール時代からの名家や飛空船団の発着場があります。

この領に入るには城砦中腹に穿たれた門を通るか、飛行船で直接乗り付けるかしかなく、密入国は極めて困難です。


飛行船で乗りつけたぞんざいズには、屋上の街並みが巨大な城砦の中庭に築かれているように見えました。

発着場にはお迎えの騎士達が揃っていますが、容疑者であるぞんざいズへ警戒心を持っていることを隠そうとしません。

エア「ホーリエル様なるぞー(ぐい、と押し出す)」

ニゲラ「エアさん、ここはお国の中枢ですよぅ!そんなぞんざいな態度、首が飛んでもおかしくないんですからねっ!」

エア「あ、そっか」

ジーク「しーらない。今回はエアがやったんだし」

エア「うわ。見捨てられた」

ホーリィが「違うのだ、違うのだ」と庇ってくれますが、まだ皇女未満の彼女には実質的な抑止力はない。

「お手柄でございました、姫様」とばかりに恭しく、それでいて意見を無視してぞんざいズを捕らえようとします。

ただしぞんざいズも既にレベル二桁の猛者揃い。正騎士ですら7レベルしかないのでは迂闊に手が出せません。


そこに現れてぞんざいズを温厚に扱ってくれたのが、"竜将"ドラクロア・サーバインというリルドラケンの将軍でした。

ドラクロア「そのくらいにしておくがいい。ホーリエル殿下の御前なるぞ」

ホーリィ「ドラ!」

ドラクロア「騎士たちの非礼を詫びさせていただく。
       貴殿たちは、身の潔白を証明しにこの《皇城領》へおいでになったと聞いている」

セージ/バード+知力で判定した結果、何人かは彼の勇名を知っていました。先代皇帝の代から仕える名将です。

現在の女帝に対しても物怖じせず発言することから重用されていて、部下達からの信頼も得ているという人です。

挿絵でも凛々しくて精悍で実に格好いい紺色のリルドラケンですね。どこぞのリルトカゲンと同族とは思えないレベル。

まぁ彼の年齢は122歳らしいし。まだ17歳に過ぎないムーテスとは顔立ちが違っても仕方ないのかも(成人は30歳)。


イスミー「ひれ伏しときやす」

ニゲラ「イスミーくん、ぞんざい勇者団のメンバーと思えないほど卑屈ですぅ」

ムーテス「でも、ここで騒ぎを起こすと、きっと僕のいる場所に直行できると思うよー

ジーク「あ、手っ取り早くてよさそうだ」

ニゲラ「後のことを考えてください、ジークさん!」

流石に命までぞんざいにしたりはせず、ちゃんとドラクロアの話を聞きました。

曰く、やはりミスティン姫は誘拐される前に何か大きな災厄の予知をしていたとのことです。

かといって推定<神殺しの剣>をテロリストに渡すわけにもいかず、実に難しい状態にあるのです。


ドラクロア「一介の冒険者にも、正直なところ任せたくはないところなのだが……貴殿たちは特別ではある

エア「ん?なんで特別なんですか?」

ドラクロア「彼がだ(ジークを指す)

メッシュ「もしかして……ジ、ジーク様、うまく惚けてください!」

ジーク「(リアルにお菓子頬張りつつ)んあ?何のことぉ?

一同(大爆笑)

メッシュ「ジークさま!今の反応全然余裕で素だったでしょう!演技でもなんでもなく!」

笑いの神が一瞬降りた。折角の美味しいシチュエーションまで見事に台無しにするとは、流石はフラグクラッシャー。

まぁアイヤールの偉い人もジークが皇帝の愛妾と駆け落ちした男の息子であることは把握しているってことですね。

皇族の血は引いていないとはいえ、ミスティン姫との血縁はあるのだから救出に乗り出す義理はありますもんね。


だからといって本当に特別扱いすることはできません。国の面子はとても大切なことですから。

そこでぞんざいズの希望通りに"クエスト"をかけ、あくまでも依頼を受けて動く冒険者という扱いになります。

報酬もちゃんと貰う。それは報酬以上の見返りは求めていない、政治的意図はないというアピールにもなる。


政治に限らず、報酬を受け取るということは依頼を果たすという誓いだし、雇用主を安心させる証でもあるわけですね。

色々釈然としないところはありますけど、ミスティン姫との関係がバレると色々面倒なことにもなりかねません。

それこそベル君や実家の人達に危害が加わる可能性もある。ここはビジネスライクな関係に留めておくのがいいでしょう。


そして儀式を行うわけですが、その前にドラクロアからもう一つ助言があります。

ドラクロア「……内通者とは言わないが、もしかすると貴殿たちの行動を阻害しようとするものがいるかもしれぬ」

ミスティン姫は皇位継承権第一位であり、予知の能力の都合上他国に嫁ぐこともできない微妙に位置にあります。

すると国内にも彼女をこのまま見殺しにして、自分が擁立する姫の継承権を繰り上げさせる陰謀があるかもしれない。

もちろんジャスティやホーリィがそんな事をする筈はないけど、彼女達の養家や取り巻きまで考えるとね。


それでもぞんざいズは政治的駆け引きは全て無視。あくまでも依頼でミスティン姫を救出するスタンスでいきます。

例えそれがホーリィやジャスティの立場に関係することであっても、そこまで責任は取れませんしね。

ニゲラ「ニゲラたちがやるべきことには、彼女の背中にあるものを見すぎると邪魔になると思うー。
     目の端に入れてないと、足許掬われると思うけどぉ

ここで意外としっかりとした主張をしていたのはニゲラでした。毎度思うけど、惚けたフリしてちゃっかりしていますよね。

ホーリィがぞんざいズに合流できたのも、これが成功すれば彼女の発言力が上がることを見越した神殿の意図かもしれない。

そういった面倒くさい駆け引きがきっと色々あるんでしょうけど、冒険者であるからには線引きはちゃんとしないといけないと。


それではいよいよ"クエスト"の儀式です。行使するのはホーリィの育ての親である高司祭様です。

GM「どんな風にかけましょうか?」

ジーク「え、じゃあ、優しく」

メッシュ「あるいは、激しく」

GM「……じゃなくて、命令の内容を聞いてるんです!」

具体的な内容は「ミスティン姫を元通り、平穏な暮らしへと戻させる」でした。

達成値は22なので魔力14のエアと大差ない実力と思われます。10レベルぐらいですかね。

いざという時は6レベル神聖魔法の"リムーブ・カース"で解除することも十分可能な数値ではあります。

フォーセリアの頃から気になってましたが、例え神の使命であっても魔法の分類上は「呪い」属性なんですよね。


これでぞんざいズの嫌疑はほぼ晴れていよいよムーテスと面会ですが、彼の釈放はまだ難しいようです。

重要参考人であることに違いはないし、即刻死刑と主張する人もいて、形式的にも会議が必要とこれまた面倒なものです。

ドラクロア「しかし、かならず、貴殿らの仲間として連れ出すことを許可する方向で話をまとめ上げることを約束する」

イスミー「もしかすると……事後承諾にしちまえということでやしょうか?」

ジーク「脱獄させていいと?

GM「将軍は無言になった」

メッシュ「それは教唆でしょう、将軍」

超法規的手段も時には必要だということを分かっていながらも、立場上主張できないだけなんでしょう、多分。

飛行船が落ちたり、蛮族の奴隷になったり、皇女誘拐の犯人にされたりした挙句、プリズンブレイクとは波乱万丈ですね(笑)


★ようやく再会

ドラクロアの口利きでぞんざいズは城の牢獄へ案内されました。そこは地上一階、地下四階の施設でした。

地上は身分の高い人が謹慎を食らったりした時に使用され、地下の方は罪が重いほど深い所に繋がれます。


今回ムーテスがぶち込まれたのは地下三階でした。

ムーテス「一番下の個室で鎖につながれてるほうがインパクトあるじゃない!
      暗闇の中で目だけ光ってるとかいう登場シーンがいい」

これが今回のカラー挿絵ですね。暗闇の中に輝く金色の眼光が格好いいですね。

ジーク「よー!ムーテス元気かー?」

ムーテス「ああっ!ジークさんだ、たすけてー!(半泣)」

GM「うわ、台無し!」

ああ、でもこの情けなさがいいんです。ムーテスが帰ってきたんだ。


そこにはコボルドのメル&ルルが面会に来ていたりもしました。

メル&ルル「ムーテスさぁん、早く出てきてくださいよー」
       「お小遣い使っていいですかぁ?子供のミルク代がもうないんですー

ムーテス「ミルク代ならしょうがないよ。箪笥の引き出しの底に入ってるから、大事に使うんだよー」

ジーク「……コボルド、増えてるのか」

メッシュ「妖魔の増殖速度はハンパないですからね」

エア「しかも、つがいだったとは……(はあはあ)」

ニゲラ「やりとりがいい人過ぎて、和みますー」

どっちがオスでどっちがメスかは分かりませんが、赤ちゃんコボルド可愛いでしょうね。

ムーテスと別れてからそんなに歳月は経っていないけど、やっぱりコボルドは繁殖力旺盛だし。


さて、現在ムーテスが囚われているのはコの時型になった牢獄の一室です。

くぼみ部分には昇降機があり、それ以外に階段もあって、各階には小さな看守室があります。

地上の出入り口に面した一番大きな看守室には囚人の私物が預けられていて、面会人の装備もここで預けます。


脱出ルートを検討しつつ、看守が離れた隙にムーテスに事情を聞いておきます。

エア「ムーテス、あなた、何したのよ」

ムーテス「基本何もしてないっすよ!商売をしようとしてただけっす!」

イスミー「あ、はじめやして、イスミーシャっつぅ、ケチなライダーでやす」

ニゲラ「ニゲラですぅ、はじめまして。……もう、貴方がお父さんでいいですぅ

ムーテス「のっけから何っすか、この子!」

メッシュ「メシュオーンです、はじめまして、どうぞよろしく

ムーテス「ああ、メッシュさんは時々こういう冗談を言う人だったな」

時々というか、頻繁にというか。今回は本気で初対面のつもりだったんですけどね(笑)

しかしこの様子だとやっぱりムーテスと会う直前で記憶が途切れているんでしょうね。


ここで変則的ですがムーテスの成長申告です。能力値については色々整合性が取れないのですが。

後に出版された「新米女神の勇者たちリターンズ」から逆算すると以下のようになるはず。

敏捷度14→19

筋力26→28

知力12→13

実はムーテスって17話の申告以来成長が不明だったんですよね。17〜24話の成長で8回成長のはず。

これだと筋力は腕輪込みでボーナスがブレイクしますね。あと敏捷度が驚異的に伸びています。


技能的にはファイター8→9とレンジャー6→9といった形で成長しました。

レンジャーは7レベルで《不屈》を自動習得し、9レベルだと《ポーションマスター》を自動習得です。

これは戦闘中に補助動作でポーションが使えるというもので、自分で回復しながら主動作が可能ですね。

あと《ガーディアン》を取りました。これは冒険者レベル9以上かつ《かばう》を前提とした戦闘特技です。

《かばう》回数を1〜5回で任意に決めることができるため、今まで以上に心強いディフェンダーになりました。


そんな強い彼でもミスティン姫を守りきることはできなかったんですけどね。

事件当時は3人の敵を相手にしながら《ガーディアン》でたくさん《かばう》を宣言したらしい。

彼女を抱えて窓から脱出したところを使用人に見られ、〔風の翼〕が切れたところを"スリープ"されてこの様です。

折角ドレス自体は気に入られてビジネスが上手くいきかけていたのにね。どこまで浮き沈みが激しいのこの人の人生。


敵の構成は人間の魔術師、人間の戦士、ドワーフの神官戦士。全員ライダー技能も持っていたようです。

ムーテスとリャンがエアの家を事務所代わりにテーラー的なことをしていたら、むこうから接触してきたとか。

エア「……怒らない、怒らないわよ。実家みたいに、跡形もなくなるよりはずっとマシだし(ぴくぴく)」

事件当時までは善人にしか見えなかったそうです。今思えば詐欺師の常套手段ですよね。

現場に残されていた聖印はそのドワーフが持っていたものと一致するので、やはりアーメス教団の仕業かな。


ジーク「ムーテス、俺たちはお前の無実を信じている。だから、ここから出て、一緒にその無実を証明しにいこう」

ムーテス「ジークさん……今度こそ、一生ついていくっすよ!

ジーク「もう、軽く二生目にはいってもついてこようとしてるヤツがいるから、お前は好きにしていいよ」

メッシュ「はっはっは、何ですか、ジークさま、そのうんざりとなさったお顔は」

あとはどうやって彼をこっそりここから逃がすかですね。ルートは2つ、昇降機と階段ですね。

しかし出入り口は看守室の前にしかないし、そこにある装備も取り戻さないといけない。これは計画を立てないとね。


★こっそり大作戦

今のぞんざいズならゴリ押しでプリズンブレイクできそうですが、流石に今回はこっそり脱出する作戦を練ります。

メッシュ「一度シャバに出て、<着ぐるみリルドラケン>と<ラミアの首飾り>を駆使して、脱走いたしますか」

ニゲラ「ニゲラたちがここを立ち去った後は、
     ものすごーくしょんぼりとした様子のリルドラケンが、扉から垣間見えるわけですねー」

イスミー「<姿隠しのマント>と<サイレントシューズ>ならありやすぜ」

ムーテス「問題なしっすよ。それでいけたことにしようよ。わーい、シャバだー」

GM「待てや」

エア「この一足飛び、ムーテスが帰ってきたって感じだわー」

<サイレントシューズ>は足音が小さくなる5000ガメルの品です。《隠密判定》に+2のボーナスが入ります。

<姿隠しのマント>と合わせると+6にもなりますね。イスミーってこういう便利アイテムを色々持ってるんですね。

現在のムーテスはレンジャー技能が9レベルで敏捷度+3なので、基準値12で《隠密判定》が可能です。

アイテムを入れると基準値18、メッシュより上です。重たい鎧もないので−4の修正も入らないのです。


イスミー「おいらが"ディスガイズセット"を使って、あの将軍に成りすまして、
      取調べの振りをして大将を連れ出しちまうってのはどうですかい?」

エア「あの将軍に下手な嫌疑が掛かったら、わたしたちの動きが取りにくくなるわよ」

ニゲラ「完全に、恩を仇で返してますぅ」

メッシュ「それよりも、お前は前科持ちなので嫌です!

そんなルパンとか怪人二十面相みたいな真似をイスミーに期待するのは非常に怖いものがある。

将軍の後ろ盾があって動いているわけですしね。そういうしがらみが無ければ試してみてもいいかもしれないけど。


その代わり現在のぞんざいズには看守も協力的だし何度もここに来ることができる。

ジーク「そうなると色々準備できそうだな」

ムーテス「<騎獣縮小の札>をお願いするっすよ!ドラゴネットが小さくなるならボクだって大丈夫、いける!」

ジーク「お前、騎獣じゃないだろ」

ムーテス「ボクなんて、どうせ家畜なんだ……的な気分になるから。
      <騎獣縮小の札>貼ってみようよ!もしかしたら小さくなれるかもしれない!

メッシュ「なれるかぁ!」

ジーク「てことは、俺、ムーテスに乗っていいのか?」

ムーテス「いいよいいよ、足蹴にしてよ」

イスミー「どこまで卑屈でやすか」

このプライドより実利を取る姿勢は本当に変わらないですね。いっそ清々しいレベル。


看守の目は食事の配膳が一日一回ある以外は殆どないので発見を遅らせることは簡単そうです。

ただし階段には見張りがいるのでこっそり上に行くのは難しい。それを踏まえて見回りは少ないのかも。

昇降機は最下層の罪人を使った人力式で、鈴を鳴らして動かすのでこっそり使うのは難しいかな。


あとは脱獄を手伝ってくれそうな人を探してみます。

ジーク「俺たちまだ一応面会扱いだから、看守のところにいって話ができるよな」

メッシュ「すいませーん。いやー昔の仲間がやんちゃして、すいません。反省させますので……ところで、
      この房には他にも色々と入ってらっしゃるようですが、やっぱり、あいつと同じ凶悪犯なんですかねぇ?」

看守「やあ。この階層の連中はちょっとタチの悪い、扱いに困るのが多いね。
    向こうの隅のタビットは、魔改造に手を染めたヤツだし。そっちの、ちょっと広い部屋には、元皇族だよ」

メッシュ「はぁ!?そんな人が!」

先代皇帝の弟で蛮族と繋がりを持ったとか。殺すわけにもいかないのでコボルドの世話役を付けて監禁してるとか。

この国には日の目を見ない皇族が他にもいそうですね。「フェイダン博物誌」にも似たような人が載ってましたし。

その人は先代皇帝の末弟で、皇帝の選定にも養家の跡取りにも漏れてうだつの上がらない日々を送っているとか(笑)


看守「じつは、上の階層にも最近姫様が……おっと、これは言っちゃまずかったかな」

ジーク「……は?姫?」

エア「おねしょしたホーリィとか」

イスミー「その罰きびしーでやすよ!」

実際はジャスティです。姿を見ないと思ったらこんな所にぶち込まれていたんですね。

ただし地上は牢獄というより反省室みたいなもので、すぐに出られる程度の扱いですけどね。


それを知ったぞんざいズは早速一階に戻って彼女を捜してみました。

ジーク「一階の廊下を歩きながら、大きな声で俺たちだってわかるように世間話でもするか」

メッシュ「語尾にジーク、と付けるのは如何でございますかメッシュ」

ジーク「そんな面倒くさいことが出来るかジーク」←やってるし

ニゲラ「ジークさんって、本当はバカなんじゃないかって疑い始めますからぁ、やめて欲しいですニゲラぁ」

エア「悪口でも話しながら行けば、扉を蹴ってくれるんじゃないかしらエアー」

これを採用したぞんざいズはルーフェリアで会った時のネタを使ってジャスティを燻り出します。


ジーク「そういえばこの国出身でドラゴンに熱上げてたバカな女騎士がいたよなジーク」

イスミー「大体仲間が殺されやしたからなーイスミー。そんなのを操ろうとする無神経さはおかしいでやすよイスミー」

するとある一室から扉を蹴る音が聞こえてきます。助走をつけて蹴っ飛ばす様子も(笑)

ジャスティ「ちょっと看守!逃げないから、そこのろくでもない冒険者と話を付けさせろ!」

メッシュ「おやおや、こんなところで何をなさっているのですかな(声を低めて悪役チック)」←覗き窓を開けて

ジャスティ「えい」←目潰し

メッシュ「ふごおおおおっ!目が!目があぁああっ!

こうして運良く?ジャスティと会えたぞんざいズは看守に頼んで彼女とも面会させてもらいまいた。

ちなみにこの階層の看守は高レベルのスカウト技能の持ち主らしく、下手なことをするとすぐバレます。


ジーク「ホーリィが心配してたぞ。何でこんなところにいるんだ」

ジャスティ「あー……上の姉上と喧嘩をしてね。頭を冷やせっていわれて、ここに叩き込まれたのよ

やはりジャスティはミスティン姫を見捨てることに納得せず、単独でも救出に向かおうとしたようです。

ところが女帝に「第二継承者であるお前が、今ここで軽挙妄動に走るな!」と謹慎処分を受けたと。


ジャスティにムーテス救出の相談をすると、彼女も協力的な姿勢を見せてくれますが問題もあります。

ジャスティの権限でムーテスを解放することは可能です。しかし彼女の派閥はミスティン姫救出に反対しています。

するとその連中に刺客を差し向けられる可能性がある。やはりこっそり脱獄するのがベストです。


エア「あとで、ばれたときに実は姫の命令だったってことにしてもらえない?それで、時間を稼ぎたいのよ」

ジャスティ「わかった。あたしの命令となると、あたしの家もそれを表沙汰にして騒ぎにくいと思う。それくらうは請け負うわよ」

ジーク「すまないな。その代わり、ミスティン姫は絶対に助け出す

事件を表沙汰にしたくないというのはディルフラムとの戦線にも影響してくるという理由もあります。

独身であるミスティン姫を救出したとなれば名声を得て逆玉の輿というボーナスが入ってくるでしょう。

それに釣られた前線の連中に戻ってこられるとディルフラムに隙を見せることになってしまいます。


ジャスティ「まあ、戦場のほうは、非常時だから"闘神"フェルディナント伯
       "魔神学者"マイザールっていう超手練がまとめあげてくれているはずだけど」

2人とも15レベルの英雄ですね。大司教と組んで25レベルの魔物を打ち破っています。

ディルフラム側の十三魔将が出張ってきても大抵何とかなるでしょうし、確かに安心ですね。


最後にジャスティからペンダントを貰って面会を終えます。

このペンダントは彼女の配下である「蒼穹騎士団」に見せれば便宜をはかってもらえます。

「蒼穹騎士団」は他の息がかからないよう編成したので、彼女の養家の意向にも左右されないはず。




メッシュ「看守ー看守ー、面会終わりました、ありがとうございます」

GM「はい。じゃあ、さっきの看守が特別室に鍵をかけにきますよ。がちゃ」

メッシュ「……と。背中を向けたところで、殴っていいですか?

GM「は!?」

彼は高レベルスカウトですが、前衛系の技能は高くないのでアッサリ気絶してしまいました。

実はこの時点でGMの計画は大きく崩れています。実は彼がジャスティの派閥のスパイでした。

ぞんざいズの動きを監視し、ムーテスが脱走したら報告をして強力な騎士を刺客として差し向ける筈でした。


ぞんざいズはそれを未然に防いでしまったのですね。更に看守室の武器と防具も回収しておきます。

ジーク「これがないとムーテスはメッシュ並みだもんな

ムーテス「がーん!そんな、でも今はこのままでも防護点3点あるよ!」

メッシュ「ふふ。私の今の防護点は4点ですよ!」

ムーテス「……メッシュに負けた……超ショックだ」

種族特徴と<ブラックベルト>で2点として、残り1点は多分囚人服かなにかでしょう。


イスミー「いや、大丈夫でやすよ大将、おいらが武器を作って渡しやす!」

メッシュ「ちょっと待て!うさぎ、何でそんなに私たちを闘わせたがるのですか。身内で!」

獣種族が増えたことでヒエラルキーの再構築が行われようとしているのかもしれない。


メッシュ「……ふ、動物の社会は所詮縦社会のみですね……(哀れみの視線)」

ジーク「言っておくけど、メッシュ、お前あの二人側だぞ?

ニゲラ「三つ巴で最下位争いしているとしか思えないのー」

以前はメッシュだかムーテスだか微妙だった最下位ですが、今は正直イスミーが勝てる気がしない。

ソラが帰ってきてもそれは変わらない。仮にパジャリガー・セカンドが加入したら分からないけど。


それではいよいよ脱出です。地下三階にメッシュだけ残り、ムーテスと一緒に《隠密判定》です。

ちなみに気絶したスカウトはムーテスの身代わりに牢屋に入れて、毛布を巻いてサイズを誤魔化しておきます。

看守室をすり抜ける目標値は18でしたが、達成値にして20を軽く超えるこの2人には軽い。

GMが想定していたラスボスが出てくることもなく、アッサリとムーテスは脱獄に成功しました


なんとまともな戦闘なしで今回のシナリオは終わってしまいましたよ。一体どんな騎士だったんでしょうね。

もし単独でぞんざいズと戦うことができるのなら、相当高レベルな人になるんですけどね。

フェルディナント程ではないにしても、13レベルぐらいあって《バトルマスター》持ちとかですかね。

これは宣言型の戦闘特技を2つ宣言できるというもので、13レベルのファイターかグラップラーが自動習得します。

《魔力撃》を乗せながら《薙ぎ払い》で複数攻撃とか、近接攻撃をしながら《マルチアクション》で《魔法拡大》とか。

前衛の夢のような組み合わせが可能になりますね。「滅びのサーペント」ではそんな爽快な戦闘を楽しめます。


これでぞんざいズは本格的に6人パーティとなり、ミスティン姫救出に向かいます。


第二十六話 女帝の怒りを静める方法

★それではおなじみ成長申告

今回のキャラクターシート


ついに6人パーティになったぞんざいズの最初の成長申告です。

ジーク:精神力24→25

エア:精神力29→30

メッシュ:精神力11→12

ムーテス:敏捷度19→20

ニゲラ:筋力17→18

イスミー:敏捷度15→16

今回はジーク、エア、メッシュが揃って6ゾロを振って精神力が伸びました。内2人はボーナスもブレイク。

これでメッシュもようやく精神力+2でちょっとだけ精神抵抗力が強くなりました。あとは出目さえあればね。


技能ではエアがプリースト9→10でレベル二桁に突入。威力50の回復魔法"キュア・インジャリー"が使えます!

あとは達成値の比較すら必要なく毒や病気を治す"リフレッシュ"です。SWと違ってケアルガ(HP完全回復)ではない。


あとルーフェリアの特殊神聖魔法の"ファンテイン"が使えますね。深さ1m、半径3m以内の泉を作り出します。

持続時間は1時間しかありませんが、その間汲んだ水は消えることは無い。場合によっては命綱にもなる魔法ですね。

実は〔優しき水〕は11レベルになると1時間の水浴で6時間分の休息と同じ効果を得られるようになります。

よって将来的にはこの"ファンテイン"と組み合わせるといざという時の回復手段として使えるようになるんですね。


ニゲラはアルケミスト6→7として、賦術"ディスペルニードル"が使えるようになりました。

これは練技、賦術、呪歌、魔物の能力といった特殊効果を解除する賦術です。ただし魔法や毒・病気には無効。

Bランクでは通常の効果、Aランクで達成値+2、Sランクで同じく+4。SSに至っては自動的成功となります。

これさえあれば魔物の変身能力なども解除することができるようだし、場合によってはとっても便利ですね。


賦術も増えてきたので使用するカードの色毎に整理してみましょう。

赤:イニシアティブブースト、クラッシュファング、ヴォーパルウェポン
緑:パラライズミスト
金:クリティカルレイ、マナダウン
黒:ディスペルニードル

こうして見ると今回習得した"ディスペルニードル"は今まで使ってこなかった黒のカードなんですね。

現在のニゲラは流石に黒のカードは持っていないらしいのでどこかで調達しないといけません。

緑のパラミスも1種類しかないけど、比較的多用するので他の色よりも沢山使っているイメージがあります。


★情報整理してみよう

前回のぞんざいズはミスティン姫の誘拐犯として処刑寸前だったムーテスを救出しました。

ムーテス「イエーイ、復活っすよー!救出されたよ、みんなの無償の愛だよ

メッシュ「まったくこんな見ず知らずのリルドラケンを……」

ニゲラ「思ったよりも障害がなかったですねー」

ええ、機転を利かせたというか、運が良かったというか。相変わらず驚異的なショートカットでした。


お陰で無事脱獄できたムーテスは仲間達と一緒にドラクロア将軍に匿ってもらっています。

ムーテス「あ。あの人、僕のお父さんだったってことにしょう。だって、今までみんな家族が絡んできてるし」

将軍は独身なのでそのような事実はありません。ていうかムーテスとリャンの故郷ってどの辺なんだろう。

やっぱりカイン・ガラの方ですかね。ムーテスって昔の仲間はともかく家族関係が全くの謎なんですよね。


ニゲラ「メルとルルは、家族じゃないんですかぁ?」

ムーテス「あ。あの二人は家族だね……うん」

子供も生まれたっぽいですしね。この若さで「おじさん」と呼ばれる日も近いか(笑)

それこそあの二人ともどういう成行きで出会ったのか謎ですね。初登場時から使用人をやってましたっけ。


エア「一応言っておくけど、絡んで楽しかった家族などいない!」←母、妹に振り回される

ニゲラ「うん、大変かもー(しみじみ)」←父に振り回される

ジーク「え?俺弟可愛いぞ。姉ちゃんも可愛いし

イスミー「おいらもシフェナは可愛いハニーでやすー。それをいうと、旦那なんて家族はいないわけで」

ニゲラ「パジャリガーさんは?」

メッシュ「か、家族など要らぬ!ジーク様さえいればいいのです!」

こうして見るとジークは両親が他界していながら幸せそうですね。両親・妹が健在のエアはこんなに苦労しているのに(笑)

そういえばイスミーの家族関係も謎ですね。どこかにタビット庄とかあって、<タビットにんじん>でも齧ってそうだけど。

ちなみにこれはにんじんに似た赤い根菜で、一口齧ると3時間の間発動体なしで魔法が使える。ただし判定に−2ですが。

その名の通りタビットにしか効果がなかったりしますけどね。お値段1600ガメルで食用と考えると高級食品にも程がある。


落ち着いて話せる状況になったので、ジークは自分とミスティン姫の関係を説明しておきます。

ジーク「誘拐されたの、俺の姉ちゃんだったんだ」

ニゲラ「うわー。一気に話がご家庭の問題になった気がしますー」

ムーテス「え、それがミスティン姫に繋がるとしたら……アンタ、誰なんっすか!
      てことになるけど……そのまま行くとジーク、皇子様じゃないか!」

メッシュ「ふ。このように専属の従者がついているだけでも十分想像できるだろう」

いや、そこに誤解があるんですよね。血縁はあるけど皇族の血は流れていないというややこしい状態。


まぁジークのお姉さんのためということでムーテスはやる気が出ました。

ムーテス「ジークには媚を売っておくと、将来の看板になるんじゃないかという予感がひしひしとするし」

エア「そっちが本音か!」

ムーテス「商売人としてそれは当然だろ!」

ニゲラ「ピュアすぎて金銭感覚が狂ったお父さんと、
     薄汚れた金銭感覚を持つお父さんと、どっちがいいか本気で悩みますぅ……」

イスミー「いや、そこは普通悩まなくてもいいんじゃ?親父さんはひとり……」

ニゲラ「うらぁっ!ニゲラだって肉親選択の自由の夢が見たいんですよぅ!(肘打ち)

もういっそのこと父親は諦めて、良さそうな旦那さんを探した方がいいかもしれませんよ(笑)


ここでムーテスから改めて犯人の情報を聞かされます。犯人は3人で隊商に扮したライダー技能の持ち主でした。

リーダーらしき男は人間で、名前はイゴールといったそうです。技能的にはファイター技能もあって結構高レベル。

もう1人はムーテスを魔法で眠らせた人間の魔術師でしたね。そして"宥和神"アーメスの神官と思われるドワーフ。

今思い返せばイゴールは潮焼けした印象でした。内陸国のアイヤールというより海に面した土地の出身と思われます。


そして彼らが出したと思われる犯行声明は以下の内容でした。

「<パジャリガー・スラッシュ>とアイヤールの至宝たる夢見の姫の交換を願う。
  用意されたし。さもなくば、至宝は砕け散るであろう」

今のところ詳細な受け渡し方法などは不明です。あくまでも犯行声明であり、剣を用意させるためですね。

肝心の<パジャリガー・スラッシュ>、略してジャガスラは現在城に保管されて研究されています。


相手が本物の造形を知らないのならダミーを用意するという方法もありますが。

ニゲラ「でもぉ、神殺しの剣を、本物かどうか調べるのって、どうするのかな」

メッシュ「それは、手近な神様を斬りに行くんじゃないですか?

イスミー「手近な神様……そんなん、いやすか?」

ムーテス「いるね、手ごろなのが」

ニゲラ「しかも、今超手薄だと思いますよー?」

エア「いやー!やめてよ、ちょっと!最初のミスティン姫様の不吉な予言とか思い出したじゃ……あれ?」

ジーク「やめろー!まだアレ終わってないとかやめろー!」

そういえばあの予言ってこっちが勝手に防いだと思い込んでいるだけで、特に根拠はないんですよね。

それこそまだ予知の危険な状態が続いている可能性だってあるわけですし。今まさに狙われている可能性も……。


あとはムーテスの記憶を頼りに犯人の似顔絵を描きますが、ここでムーテスはもう一つ思い出します。

イゴールの瞳が金色だったというのです。これは穢れ表の出目14の効果で、黒目に金の輪郭が出るらしい。

つまり彼は蘇生経験者かもしれないのです。シフェナと同様に穢れを理由にして動いている可能性がありますね。


そんな話をしているとドラクロア将軍からのメッセージカードが届きます。

「貴殿らの役に立つかと、乗ってきた飛空船をそのまま使えるように手配しておいた。
  ただし、あらかじめ言っておいたように一人、連絡役を兼ねた監視役をつけることを了承してもらいたい」

これで行動できる範囲が一気に広がったぞんざいズは再び《青嵐領》へと向かうことにします。


★名探偵は多すぎる?

飛行船の発着場に行ってみるとそこには監視役の女性近衛兵のローリエが待っていました。

ローリエ「はじめまして、貴方がたの連絡役を務めます、ローリエと申します」

きりっとした印象のショートカットの女性で、直立不動で直角のお辞儀をしてきます。まさにエリートって感じ。

技能的にはファイター8のソーサラー9という実力者です。同じ近衛兵でもジェロやローランドとはえらい違いです。

ちなみに耳には<通話のピアス>を複数束ねておける<通話のピアスホルダー>というものを装備しています。


ローリエ「お体の弱い姫殿下のことです。劣悪な環境によって、
      お体を壊されている可能性も考えれば、一刻も早い救出が望まれます。
      セラフィナ陛下もお気になされております、皆さん、どうかよろしくお願いします」

ニゲラ「でも、それでも剣は渡せないとー」

ジーク「……女帝に会ったら、一発殴りたい。いや、さすがに俺でも、殴ったらどうなるかは想像つくからしないけど」

エア「政治的立場と、姉妹的立場はまた別のものだから」

こうしてぞんざいズは《青嵐領》へと向かいました。ムーテスは花柄の上に黄色を塗ってモーテスという偽名を使っています。


《青嵐領》に着いたらまずは犯行声明を届けた村の子供に話を聞きます。

メッシュ「でもその子供、実はむちゃくちゃ頭がいいとかってことはないですか?」

エア「蝶ネクタイをして」

ニゲラ「<ひらめき眼鏡>をかけていてー」

ジーク「周囲の大人がばたっと倒れて寝るたびに事件解決と!」

メッシュ「「うん。手紙を届けてっていったオジサンの特徴、全部いえるよー」事件解決」

ムーテス「名前はコメンくんあたりで」

それはあんまりなのでエドガーくんとしました。彼はパジャリガー広場で手紙を受け取ったそうです。

潮焼けした印象と瞳の金色は覚えていたのでイゴールだったようですね。それだけでも大したものです。


イスミー「で、後をつけたりはしなかったんですかい?」

GM「しませんでしたよ」

メッシュ「……ち、偽者か、バーロー

GM「何のですか!」

そういえば前回は離宮の中ばかり調べていて村人に聞き込みはしていませんでしたね。

この分だと他にも目撃者がいるかもしれないので村の中を歩き回って情報収拾です。


ムーテス「身体は子供、頭脳も子供の次は、家政婦的なおばちゃんを探そうか。絶対になんか見てるっすよ」

GM「じゃあ、市原○子的なおばちゃんが……「それがねぇ〜なんだかおかしいのよ〜」と」

一同「ホントにいた!」

イスミー「そして、微妙に似てるっす!」

彼女の話では食料を買出しにくる他所者は時折見かけたそうです。パジャリガーの像を調べたりね。

ローカルヒーローとはいえパジャリガー生誕の地ですから余所者がいるのは珍しくはないけど。


メッシュ「あ、エツコさん、エツコさん!ハウスキーパーは見たエツコさん!

GM「そんな名前じゃないですけど……もういいや、話すことは同じですし」

エア「見慣れない人たちの買い込んでいった食料は、生鮮食品?保存食?」

両方とも買い込んでいたそうです。生鮮食品まで買っていたとなると拠点があるのかもしれない。


エツコ「あとはぁ。アタシの気のせいかもしれないんだけどね?(声を潜めて)」

ジーク「身を乗り出して聞くぞ。なになに?」

イスミー「それは絶対に真実っすからね」

エツコ「すごく軽装で、街に溶け込んでいるように見えたけど……
     時々、足許がすごく汚れてたのよ。土とか草の汁がついていてね?」

メッシュ「本当によく見てますね!」

エツコ「肩に落ちてる葉っぱは、果樹園のものじゃなかったから、
     このへんで働いてるってわけじゃないみたいだけどねぇ」

ニゲラ「いよいよ名探偵じみてきましたぁ」

つまり森に潜伏していた可能性が高いと。そういえば森には一つ危ない所がありましたね。

バンシーとの戦いの後に封印してそれっきりでしたが、パジャリガーが封印した何かがあそこにはあった。


★森の遺跡再び

パジャリガーが封印した洞窟を調べるために、ぞんざいズはかつてバンシーと戦った森へとやってきました。

一度来た場所なので道に迷うことはありません。メッシュはスカウトのくせに覚えていませんけどね。

ところが森の中には以前はなかった罠が仕掛けられていました。人を近づけないように最近設置されたものでしょう。


最初の罠は<破裂種>でした。本来は投擲に使用する<矢弾>の一種で、6520ガメルもする品です。

着弾すると破裂し、半径6mに渡って威力20+10点の魔法ダメージを与えるという強力なものです。

もし事前に気付けていれば回収できたんですけどね。メッシュが《罠感知判定》に失敗してしまいました。

幸い抵抗すればダメージ半減なので全員軽傷で済みましたが、一般人が掛かっていたら10点以上来て死んでたかも。


ニゲラ「メッシュさん!気合を入れて罠を見つけてくださいねぇっ!
     Sランクカード三枚分にAランクカード一枚買っておつりがくるんですよっ!」

6520ガメルは基本取引価格なので売却すると半額ですけどね。それでもSランクは買えますけど。

その後メッシュは毒矢の罠を発見して毒矢を入手。しびれ薬ですが数日中に使わないと乾いてしまいます。

ところが毒矢を回収しようと近付いた所に更に落とし穴がありまして、こちらには1ゾロで嵌ってしまいました。


慎重というか陰険というか、何としても森の奥へ進ませまいとする強い意思を感じる罠ばかりですね。

ジーク「こういう罠は無差別に人を狙うからな、住人を傷つけることにためらいがないのは許せない」

これで気を引き締めたメッシュは《足跡追跡判定》で達成値19という素晴らしい結果を叩き出しました。

相手は茂みに入ったり、小川に入ったりと小細工をしていましたが、メッシュはそれを見抜いて追跡します。


そうして辿り着いたのはやはり例の洞窟でした。バンシーとの戦いのあと埋めておきましたよね。

ところが今はその土砂を掘り起こされていて、遺跡へ通じる扉も半開きになっていました。

ジーク「俺すげー気になってるんだ」

メッシュ「何がでしょうか、ジークさま」

ジーク「アンデッド系の遺跡なんだよな…………それで、アイヤールから来たくさいんだよな」

エア「あ、幽霊船!

ジーク「あいつ、ここにあったのかぁあ……?」

もしそうだとしたら、あの時遺跡に入っていたら全滅していましたね。敵は幽霊船だけとも限らないし。

まぁそれだけならパジャリガーがわざわざ封印するまでも無く倒せるはずですけどね、15レベルの戦士だし。


しかし今のぞんざいズの実力なら何とかなるかもしれない。意を決して遺跡の中へと入ります。

中に入るとまず降りの階段があって、それを降りた先には天然の地下水路が流れていました。かなりの急流です。

メッシュ「エアさん出番ですよ、ひゃっほいと飛び込んで調べてください」

エア「何がいるのかわからんのに飛び込めますか!」

流れが速い上に暗いのではっきりとは分かりませんが、魚の影らしきものは見えています。

地下水路の下流は大きな裂け目に消えています。これがどこに通じているのかは分かりませんね。

地下水路の向こう側はかなり広い空間になっていて、なにやら祭壇のようなものがポツンとあります


差し当たった危険はなさそうなので、エアの"ウォーター・ウォーキング"で渡ってみます。

エア「水のことならルーフェリア様にお任せよ」

メッシュ&イスミー「へへー(平伏)」

エア「うわ。この二人に崇められても、全然嬉しくない」

そうして地下水路の向こう側に渡ると、ずず……、ずず……という鈍い音が祭壇の方から響いてきます。

何事かと祭壇に注目すると巨大な手が祭壇を一掴み。腐敗臭を漂わせてジャイアントゾンビが現れます。


ジャイアントゾンビは15レベルのアンデッドです。その名の通り巨人がアンデッド化したものです。

上半身(コア)と下半身のニ部位です。全身が《再生=10点》で毎ラウンド回復していきます。

上半身は半径10mを対象に《怒号》をあげて、精神抵抗に失敗した相手の行動判定に−2の修正を入れます。

また自身の存在する乱戦エリアの任意の敵全てに命中力−2で《乱打》による攻撃をしてきます。

下半身は御馴染みの《攻撃障害=+4・なし》を持っていて、コア部位である上半身への攻撃を妨げます。


エア「……15レベル。本気すぎる

ムーテス「ちょっと……15レベルってすご過ぎない?みんな今までこんなのと戦ってきたんすか?」

メッシュ「……ふふふ、私よりも6レベル上ですよ」

ジーク「いや!今まではもうちょっと下だった、最高13だった!」

ニゲラ「これ、遠まわしに、まだ早いよここ……って言われてませんかぁ?」

ちなみに《怒号》の精神抵抗目標値は16(23)です。最大精神抵抗力を誇るジークで15ですね。

カンタマ込みなら抵抗できる確率の方が高いけど、前衛全員が抵抗し続けるのは微妙かも。

ジークが"ブレイブハート"をかけ続ければ防げるでしょうけど、強敵である事に変わりはない。


ここでジャイアントゾンビを観察したぞんざいズは《見識判定》であることに気付きます。

ムーテス「もしかして、この巨大ゾンビ、お姫様にそっくりだとか……」

ジーク「おおい!(平手つっこみ)」

判定自体はアルケミスト技能でもできるので、ニゲラが気付きました。

巨人の額に石が埋め込まれているのです。もちろん普通のジャイアントゾンビにそんなものはない。


具体的な鑑定は《宝物鑑定判定》ですが、今回はコンジャラー技能でも可能です。

エア「……なるほど、アンデッドだけどゴーレム系と見た」

GM「予想すんな」

結局詳細は不明でしたが、市場に出回っているようなものではなさそうです。

アンデッドだけど何者かに操られているのではないかという推測ができる程度ですね。


ではこいつをどうするか。相手の動きは鈍重なので逃げるのは可能でしょうけど。

エア「プリーストとしては、こんな邪悪なアンデッド、滅ぼすべし。背中を見せるなど許さん!」

ジーク「エアはどんどん過激になるよな」

ムーテス「こいつ自体を倒すより、操ってるやつのほうを倒すのが楽じゃない?15レベルとか嫌じゃないか戦うの!

エア「じゃあ、貴方はそこで見ていなさいムーテス!新生ぞんざい勇者団、我々五人のチームワークを見せてくれるわ!」

メッシュ「何者ですか貴方は!」

実はGM的には今ここに来ること自体が大誤算だったりするので、撤退もありえると考えているんですけどね。


エア「戦って倒せば経験点300点!」

ムーテス「あ。いきなりモチベーションあがった。いや、僕だって君たちの仲間だよ!

ジーク「じゃあやるか?」

15レベルだと150点で、ニ部位なので300点。このレベルになるとモンスターの経験点も大きいですね。

ここでニゲラが"イニシアティブブースト"をSランクで入れます。先手を取られると全滅コースもありえるので。

相手の先制値は19でメッシュはブースト込みで22を出します。なかったら指輪を割ってましたね。


1ラウンド目

最初のラウンドはまだ相手の上半身が低い位置にあるとし、《攻撃障害》が入らない扱いです。

イスミーがクリポンをメッシュに与えて、ジークは前衛に"ブレイブハート"、エアは"セイクリッド・ウェポン"。

続けてニゲラがパラミスをSランクで入れて、上半身に<チェイン&シックル>で絡み攻撃で見事に絡めます。


ムーテス「ローリエさん、ソーサラーだったよね。"ウェポン・マスター"で
      戦闘特技《挑発攻撃》を付与してくれると嬉しいんだけど。僕ができるだけ攻撃を受け止める」

ダメージ−2の攻撃で相手を挑発し、攻撃を自分に向けさせるつもりですね。《かばう》だけが守る方法ではない。

相手のダメージは2D+20とか2D+16なので、防護点が素で18のムーテスならかなりカットできます。


その前にメッシュが《ファストアクション》&《追加攻撃》で計4回攻撃を始めます。しかも全部魔法ダメージ。

最初は《牙折り》を入れて命中させ、クリティカルまでして26点素通しです。珍しく高打点を叩き出しました。

ところが次の攻撃も命中した上にクリティカル25点。この時点で51点も削っていますよ、凄いぞメッシュ。

さてここでジャイアントゾンビの上半身のHPを確認すると、<剣のかけら>なしだと90点になっています。

するとこの時点で残り39点。さっきのニゲラの攻撃で5点ほど抜けているので残り34点程度になります。


3回目の攻撃も命中しますが流石に回らず16点でした。残り18点ですね。そして4回目の攻撃は……。

メッシュ「(ころころ)ダメージは18点!」

GM「……落ちた」

一同「は?」

GM「今のでジャイアントゾンビは落ちました。崩れ落ちていきます!(やけくそ)」

一同(大爆笑)

メッシュ「褒め称えてください!MVPを名乗ってもよろしいですか!?(万歳)」

ムーテス「僕まったく何もしてない!硬いところを見せて、新人に尊敬の眼差しで見てもらおうと思ったのに!」

まさかの1ターン・キル。《牙折り》どころかもっと大切なところをモッキリ折ってしまいました。

GMとしてもムーテスの復帰戦ということで力押しの敵を出して活躍させようと思ってたでしょうにね(笑)


しかも戦利品では1万ガメル相当の<巨人の秘宝>をゲット。金のSSランクカードになります。

ジーク「これが最後の戦闘じゃないことははっきりしてるんだ。カードにしちゃえよニゲラ」

ニゲラ「いいんですかぁ?わぁい、ありがとうございますー」

"クリティカルレイ"だと出目+6、"マナダウン"だと魔法ダメージ−8点ですか。強力ですよね。


それと例の頭についていた石ですが、調べてみると<呼応石>に似ています。ただしバスケットボールサイズ

本来はゴーレムに命令を出すために使うものですが、アンデッドを操る特殊なものかもしれない。

ゴーストシップだってこれで操っている可能性もあるし、あとで専門家に研究してもらうために回収します。

そのゴーストシップなんですが、祭壇には丁度それぐらいの大きさの船底を安定させるくぼみがありました。

やはりゴーストシップはここにあって、アーメス教団に利用されている可能性が高くなりましたね。


エア「そんな風にどんどんと命令を聞くアンデッドを増やしているんだとしたら、
    すごくまずい事態なわけよ、皆さんおわかり!?(びし)」

ジーク「とりあえず姉ちゃん探そう」

ムーテス「うん、僕も将来のことを見据えて姫様優先かなあ」

エア「……くっ(握りこぶし)」

将来的には対処しないといけないんでしょうけど、今はミスティン姫でいいかな。


さて巨人が出てきた場所を調べてみると、更に奥へ繋がる通路がありました。

中に入るとそこにはかなり古い時代の死体がいくつか転がっていて、非常に広い空間が広がっています。

居住空間があったり、共同墓地があったりと、かなりの数の人が生活していたと思われます。

《構造物解析判定》と《探索判定》の結果、ここは「大破局」時の避難所だと判明します。

蛮族の侵攻から逃れた人々が隠れ住んでいて、そこに攻め込まれて壊滅したという血生臭い歴史の遺物です。


壁には当時の人々が刻んだメッセージが残されています。

「ここで何とかやつらを食い止めて、助けを待つ」

「もう○○日過ぎた」

「外はどうなっているのか」

そんな正気を失いそうな状況で、地下水路から脱出しようと例の船を建造したようです。

どうやらあの地下水路はコラーロ河に繋がっているらしいので、希望の象徴だったんでしょうね。

それが蛮族の襲撃で果たせず穢れて幽霊船となった。攻め込んできた巨人の蛮族もアンデッド化したと。


★眠り姫の結晶

地下の滅びた町を目の当たりにしたぞんざいズでしたが、敵の待ち伏せを警戒して慎重に行動します。

まずはいつものようにメッシュが斥候として単独で侵入します。イスミーから<姿隠しのマント>を借りて準備万端。

街中にあった住居は殆ど崩れていましたが、足跡を追跡していると石のバリケードを巡らせた建物を発見します。

明かりはついておらず、人の声なども聞こえませんが、敵には〔暗視〕持ちのドワーフがいるので油断はできません。


それでも意を決して建物への侵入を試みます。

メッシュ「足跡に沿って歩けば、落とし穴にも落ちまい。もう少し踏み込みましょう!」

ニゲラ「そうすると、足跡をプリントした板が、穴をカバーしていてー……」

メッシュ「そこまでやられたら落ちますよ!「お見事ー!」って叫びながら」

メッシュはここに来るまでに《隠密判定》で達成値20を叩き出しています。巨人との戦い以来絶好調ですね。


そんなメッシュに色々な期待が集まる中、建物に潜入する《隠密判定》はというと……。

メッシュ「(ころころ)ってやっちまったー!」

ジーク「期待に背かず1ゾロ!

メッシュ「ああああ、よりによって一番大事なところで!」

ムーテス「全てがここまでの前振りだったんすね!」

エア「どこまでもエンターテイナーねー(感心)」

ところが予想された敵の待ち伏せなどはなく、罠が発動したりすることもなく、静寂が守られていました。


これはまさか留守なのではないかという想像もできますが、取り合えず仲間達をここまで呼びます。

そして改めて建物へ侵入します。仮に誰かいても手遅れな気はしますが《隠密判定》はやっておきます。

メッシュ「(ころころ)……おおっと、うっかり入り口のドアを蹴破ってしまいましたー!(やけくそ)」←1ゾロ

ニゲラ「冗談みたいな確率ですー」

ジーク「順調に俺たちより平均二回、経験点を稼いでるよなあ」

もうこっそりなんて不可能なので堂々と入っていきます。建物の中は300年間放置されただけあって荒れ放題です。

ところが一ヶ所にだけ綺麗なレースをかけられた大きなものが置いてあります。見るからに新しいものです。


思い切ってレースを取ってみると、そこには水晶の棺で眠るミスティン姫の姿が!

ジーク「それは俺は反射的に駆け寄るぞ。姉ちゃん!姉ちゃん!」

棺をガンガン叩いても反応はありません。毒リンゴを食べた白雪姫よろしく瞼を閉じています。

一瞬"アイスコフィン"ではないかとも思いましたが、棺の材質は氷ではないので別の何かです。


ちなみにこれは10レベルの妖精魔法で、HP20点以下の対象を氷の棺で眠らせる魔法です。

SWの頃は抵抗さえ破れれば氷付けにできたのですが、ある程度弱らせないと通用しなくなりましたね。

それに複数部位の相手にもやはり通用しないし、決して瞬殺魔法というわけではありませんね。

一般人か低レベルの相手ならHPの上限が20以下ということもあるでしょうけどね。

ちなみにこの氷はちゃんと構造物として破壊可能ですが、炎属性以外の衝撃を与えると中の人が傷つく。

また持続時間が瞬間ではなく永続になったため、ディスペルで解除することも可能になっていたりします。


現在の彼女は生死は定かではありませんが、本物であることを主張するようにリャンが作ったドレスは着ています。

ムーテス「これは店のポスターにしたい!

ジーク「何を考えてるんだ!」

ムーテス「店のことに決まってるじゃないか!」

結局この建物で発見したのはこの棺のみでした。敵の姿はやはりない。


棺の中の彼女については下手に手を出さずに《皇城領》へ連れ帰ることにしました。

ローリエ「ここに置いておくのはあまりにもおいたわしいです」

仮に彼女が本物であってもこれで"クエスト"を達成したことにはなりません。「元の生活に戻す」という条件でしたから。


★すれ違った報せ

棺を持ってまずは《青嵐領》の離宮へ戻ってきましたが、帰ってくるなり衛兵さんが駆け寄ってきます。

衛兵「皆さんどこへ行ってらしたんですか!」

メッシュ「こっちも大変だったのですよ」

衛兵「何かあったらすぐに報せろって言われてたのに、街のどこにもおいでにならなかったじゃないですか」

随分探させてしまったようですね。彼が慌てるのも無理はない、何しろ犯人からの新たな手紙が届いたのです。


「我々がミスティン皇女をお連れしたことは確かである。
  件の剣の用意はできただろうか疑うようであれば、まずは半分だけ返してやろう

そこにはさっきまでお邪魔していた遺跡の地図か描かれ、そこへ行くよう指示されていました。

「門番の護りは『姫の心と身体は乖離せん。せめてその身に抱擁を』と告げれば解除されるように命じておいた」

ジーク「……もしかして。俺たち、順序逆?」

ムーテス「うわー。僕たち仕事速いなー」

GMもまさかいきなり遺跡に乗り込むとは思わなかったらしく、本当はこれから向かう予定だったんですね。

その場合はジャイアントゾンビと戦闘する必要はなくなりますね。もちろん放置できないなら倒しても良かったけど。


手紙の文面からして棺のミスティン姫は魂が抜けた肉体ってパターンですね。

「今の姫に、無理にその状態の解除を試みないほうがいい。高貴な身に穢れが生じることになるぞ。
  もう半分は、剣が《青嵐領》の離宮へと運ばれてのち返却しよう。よい商談になることを祈っている」

これを見たローリエさんは隅っこに走っていって、誰かと連絡を取っているようでした。


ニゲラ「ニゲラが気になるのは、この脅迫状の書き方だと、彼らの欲しい<ジャガスラ>が
     どこにあるのかよく知っていて、なおかつ、見張っているような書き方に思えることですー」

エア「そうなるとやっぱり……」

イスミー「内部犯?」

メッシュ「あるいはスパイ?」

ニゲラ「何気なく外を見るとパタパタと鳥さんが飛んでいてー、街角を歩くと人懐っこい猫さんがー……」

ムーテス「そして辻々にカエルが!」

エア「気付け!(裏手つっこみ)」

実際そういう風に使い魔を使われていても不思議はない。注意していないと意外と気付かなかったりするし。


しかしこんな脅迫がきてもアイヤール帝国としては剣を渡したりはしないんでしょうね。

ジーク「くそ、俺たちが盗んだことにしてもいいから、持って来いよ!

エア「え、わたしたちが更に泥をかぶるわけ?」

それをやるとアイヤール帝国としてはテロに屈したことにならないけど、ぞんざいズは大変なことになる。

仮に黙認という形を取ってもらうにしても、女帝からそんな信頼を受けられるとも限りませんしね。

いっそ本当に盗んでしまうというハイリスクな方法がありますけど、その場合実行犯はメッシュだから不安(笑)


ジーク「とりあえず近衛のねーちゃん」

ローリエ「はい?」

ジーク「とりあえず女帝に「ごちゃごちゃ言わずに剣を出せや」って言っておいてくれ」

ローリエ「わ、わかりました。意訳して『責任は取るから、何が何でも寄越せ』と言っていたと伝えてよろしいでしょうか」

それは意訳にも程があるけど、何かしらの条件を提示するのはいいかもしれない。その上で借りられればいいんですけどね。


ローリエ「あなたたちが『何でもするので、剣を貸してください』と言っていたと報告してよろしいですか!(身を乗り出す)」

メッシュ「必死ですね。貴方!」

ムーテス「「信用できないからやだ」でお話終了ってことになりかねないんだよねえ」

イスミー「一度顔を見て訴えはしたいでやす、でないと本心は見えねえでやすからな」

彼女は皇帝だけど、妹達は大切に思っています。それなら本心ではどうしたいかは大体推測できますね。

しかし皇帝だからこそ被らなければならない鉄仮面がある。その辺を上手く見抜けるといいんですけどね。


ジーク「……言うこと聞いてくれないと、中央に乗り込んで皇帝陛下を殴るぞ

一同(爆笑)

ニゲラ「ひどい脅しですぅ」

エア「駄々っ子か!しかも不敬罪な!」

ローリエ「わかりました。それも伝えておきます」

ジーク「おう、面ァかせ女帝って伝えとけ」

身内が絡んでいるせいか普段以上にぞんざいですね。本当に不敬罪で捕まらないか心配になるレベル。

そして本当にそれを女帝に伝えてしまうローリエさんでした。携帯、もという通信用のアイテムを握り締めて。

彼女は<通話のピアスホルダー>とか装備していましたが、どうやらもっと長時間通信できるアイテムもあるらしい。


そしておよそ1時間後、ガクガク震えながらローリエさんは帰ってきます。

ローリエ「『上等だ。首を洗うのを忘れんな』との仰せです」

エア「あああああああ……もおおおお……(突っ伏した)」

ジーク「おお、言ってみるもんだなー」

エア「ち……ちがぁあああう!襟首掴んで振り回すわよこの男!そうじゃないでしょうがーっ!」

ムーテス「落ちつくっすよエアさん、これはこれでアリなパターンっすよ」

ニゲラ「うん、全然ありですぅ」

イスミー「少なくともお目通りが叶うんでやすよ?」

エア「言い方の話をしてるのよー!」

大司教の執務室のドアを正拳突で開けようとしてたのに、まだ常識が残っていたか(笑)


ジーク「いや、向こうも向こうで受けて立ってるぞ、同レベルで」

エア「売り言葉に買い言葉ってヤツでしょう!」

ムーテス「買ってくれたなら、どんな形で売ったかなんて問題ないよ
      これで話が一歩前に進む可能性が出てきたんだから」

状況は動いているのでこれはこれでアリだとは思いますが、エアの気持ちも分からないでもない。

ていうか彼女の考え方が常識的なんでしょうけどね。ニゲラですらぞんざいに染まってるせいでマイノリティですが。

何しろアイヤールは大国ですからね。礼儀正しく振舞っておいて、敵に回す可能性を減らす努力はするべきでしょうけど。


ジーク「もっとがんばれよ、ルーフェリア」

エア「無理ー!(絶叫)」

軍事力も経済力も負けていますからね。大司教の実力は大したものだけど、国力が劣っているのは仕方ない。

有能な冒険者を国が抱えて非常時の戦力にするという方法もありますが、その筆頭であろうぞんざいズがこれだし(笑)


エア「……あのね、わたし絶対に間違ってないと思うのよ、この件に関しては倫理的に!
    アイヤールの人間百人連れてきたら、百人ほぼ全員わたしが正しいって賛同してくれるはずなのに!」

メッシュ「まあ、貴方の仕事は説教をすることですから

お望み通り《皇城領》へ戻る際に飛行船の中で説教をしてあげたようです。


★アイヤール女帝謁見

《皇城領》へ戻ったぞんざいズには迎えが来ていて、謁見の間へと案内されます。

ムーテス「あ、僕は「花柄のモーテス」なんで」

エア「……あー……早く誘拐もアーメスも片付けて、国に帰りたいー」

ジーク「そうだな、ルーフェリアに帰ろうな。ルーが待って……あ。ルーフェリアにいるのはリアか」

ニゲラ「今、どっちでもいいみたいな雰囲気でしたよぉ?」

ジーク「みんな俺のだから

エア「それは、思っていても言っちゃだめー!」

ジーク「あ、うそうそ。一回言ってみたかっただけだ。《白峰領》戻ろうな」

ルーちゃんはともかくリアまでか。それはどっちかというと大司教の管轄のような気もしますが。

で、これだけフラグを立てておいても片っ端から折ると。恋愛ロールプレイとかはするつもりがないのかな。


ミスティン姫の入った棺は研究者たちが輿に乗せて運んでいきました。

それを確認していたある老学者はこれが魔動機械によるものではないかと推測していました。

心と身体を別々にパッケージすることで肉体の時間を止め、長期保存する魔動機械があったんだとか。

詳しいことはこれから調査するようです。アイヤールって無骨なイメージがあったけど研究機関もあったんですね。


ぞんざいズは謁見の間へと案内されました。重厚で豪華な造りの広間で、貴賓を迎えるために洗練されている。

本来なら近臣が並ぶスペースなどもあるようですが、内密の話になるので誰もいない。人払いもされています。

やがて「アイヤール皇帝、セラフィナ・カエラ・アイヤール一世陛下のお成りに」という声が張り上げられます。


ジーク「よう、女帝」

エア「うるぁあああっ!女帝が姿を見せる前にジークの後頭部を掴んで、床に額を擦り付けるほど下げさせるわぁあっ!

ジーク「いた、いたたた。多少雰囲気に気圧されたから、大人しくこすり付けられておこう」

ニゲラ「じゃあそれを見て、真似をしておきますぅ。……メッシュさんに」

メッシュ「私ですか!」

エア「ナイス判断よ、ニゲラ(親指ぐっ)」

ムーテスはTPOをわきまえるのでちゃんと頭を下げます。権力の犬が失礼なことをするわけがない。

ましてイスミーに変なことをする度胸があるはずもなく大人しく頭を下げ、一応の格好はつきました。


そうしていると二十代半ばの女性が姿を見せます。長身のゴージャス系美人で無骨な鎧姿。

セラフィナ「お前たちが、件の冒険者どもか」

エア「ここは、わたしたちがとんだ無礼を働きまして……的なことを、延々と謝り続けようとします」

メッシュ「謝罪から始まる外交は良くないですよ」

エア「外交じゃない!そして、謝らなければならないようなことは、した!

ファーストコンタクトからして無礼千万でしたしね。でもちゃんと会ってくれるということは無視されたわけでもない。

本来冒険者ごとき無視できるものに会ってくれるということは、厳格な顔をしていますけど思うところはある筈です。


ジーク「会ってくれてありがとうなー」

エア「ジーク……基本的にわたしに話しかけてもらえる?そして、それをわたしが角が立たないように伝えるから」

ジーク「え、女帝共通語話せるだろ?」

エア「そういう意味ではない!通訳的意味合いではないの!

セラフィナ「……芸人かとも思ったが、そういうわけでもないようだな」

メッシュ「お褒めに預かり、教悦至極に存じまず」

エア「……もう、この際芸人と思われていたほうが、身は安全かもしれない」

会わないと殴るとかとんでもないことを言ってたのも、いっそ毒舌の芸風だと思ってもらった方がいいか(笑)


セラフィナ「何やら、妾を殴りたいそうであるな?」

エア「……ローリエ……どこまで忠実に伝えたぁあっ!」

ジーク「会わないつもりなら殴りたかった」

メッシュ「もう会っていただけたので、殴らないそうですよー」

セラフィナ「仕方のないことであろう。力のない支配者は、それだけで民に迷惑をかけるものである

ジーク「……殴ってもいい?」

エア「だめっ!」

ここからは「剣を貸して」「貸せぬ」という問答で謁見自体はすぐに終わってしまいます。

しかしそれだけならわざわざ謁見する必要はない。公人として見せることのできない彼女の真意を推し量らないと。


例えば剣の持ち出しについて尋ねると。

セラフィナ「もし万が一、情に流され屈した弱きものの手によって持ち出されることがあれば、
       我々は秘密裏に、速やかに処断せねばならぬ」

ムーテス「……秘密裏だって」

メッシュ「公的にとは言いませんでしたね」

つもりこっそり秘密で持ち出して、秘密の内に戻してくれれば公にしないで済むと。


それだけ言って彼女は謁見の間から去ろうとしますが、ここでアーメスの話題を出します。

イスミー「そいつが復活してなんやかんやしたら、神殺しの<ジャガスラ>を貸してもらえるんでやしょうか?」

ニゲラ「イスミーくん、それを理由にして剣を拝借しようとしてる?」

セラフィナ「無理であろうよ」

ジーク「うわ。一刀両断だ」

メッシュ「斜め袈裟斬り迷いなしって感じでしたな」

セラフィナ「だが、それは、そなたたちの力量からのことではない。あの剣で神は倒せまいということである」

ここで女帝はぞんざいズに向き直り、現在研究されている範囲で剣に秘められた魔力について説明します。

散々神殺しだの何だのと言われてきて、実は全然違う性能だったとしたら色々思惑も狂いますしね。

ルーちゃんが狙われることもなくなるけど、いざという時にアーメスを倒すのに使うという方法も取れなくなる。


セラフィナ「あれは、どうやら打撃武器であると判明したのだ」

エア「打撃って……殴るの?どう見ても剣だったわよね?」

メッシュ「実は<パジャリガー・クラッシュ>が正しかったと!」

そのデータは「ウィザーズ・トゥーム」で公開されています。


ランクとしてはBランクと高くはない。1H両で威力15、2Hで威力25で、魔力+1相当のよくある魔剣です。

しかし使用する際に剣の平の部分で殴ると打撃武器として扱われ、《パジャリガー・クラッシュ》が発動します。

この際白い面で殴打すると《穢れの吸収》が発動し、相手から穢れを1点抜き取る。10点まで蓄積可能です。

逆に黒い面で殴打すると《穢れの譲渡》が発動し、その時蓄積している全ての穢れを対象に与えるのです。


元は魔法文明時代にナイトメアとして生まれたヴァン・ザックという魔術師が開発したものとされています。

自分が忌み嫌われる原因である穢れを取り除く方法として作ったとか。彼の研究室が竜の浮遊山にあったのです。

ただしこの魔剣を製作してすぐに彼は行方不明になっています。彼とこの魔剣に何があったかは謎です。


確かに神殺しとは直接結びつかないけど、これはこれで凄い効果ですよね。

研究中にドワーフ出身のナイトメアが自分の穢れを取り除いたところ、見事に穢れを抜き取れたそうです。

その際は姿はそのままでナイトメアの〔弱点〕を失い、かといってドワーフの〔剣の加護〕もない状態になったとか。

シフェナが欲しがっていたのも納得できますね。これがあればアンデッド化して蘇生しても何とかなるかもしれない。


国中の穢れ持ちを救うような使い方ができればいいんですけど、穢れの絶対数は変わらないんですよね。

いずれはたまった穢れを何かに押し付けないといけないし、5点以上押し付けられたら即アンデッド化です。

もしこの魔剣の噂が広まると、大陸中の穢れ持ちが大挙して押し寄せて大混乱になるかもしれませんね。


ジーク「そんな極秘事項を教えてくれて、ありがとな、ねえちゃん

エア「こらぁああっ!」

ジーク「へ?あ、今すげえナチュラルに呼んだ。マジで意識してなかった。ごめん、礼を言いたかっただけなんだ」

一瞬顔を引きつらせた女帝でしたが、すぐに平静を取り戻します。流石は国のトップですね。


ジーク「不躾ついでに言っておく。もしかすると、俺たちも女帝も見張られてるかもしれない」

セラフィナ「妾は常に、他者の目に晒されている立場と心得ている

ジーク「まあ、国のトップだもんな。プライベートなんてないよなあ」

そういう意味じゃなくて、内通者がいるってことですね。ミスティン姫がいなくなって得をする人は沢山いますしね。

ジャスティやホーリィ自身が望んでいなくても、その周りの誰かはミスティン姫を見捨てる方向で動いているし。


セラフィナ「……ミスティンは他にはない能力の持ち主、
       その予知姫の力と見識をもって、妾の右腕として手助けをしてくれればと願っている

ジーク「つまりそれが本音と。大丈夫、俺らなんでもやるから」

セラフィナ「しかし、弱き為政者は必要ない」

そうキッパリ言い切ると、今度こそ謁見は打ち切って退室し、研究室のミスティン姫の様子を見に行くそうです。


しかし言外に剣を持っていけという意図が見え隠れ。

セラフィナ「……久しい妹との時間ゆえ、二人きりになりたい」

エア「……つまり、人払いするってことよ」

ムーテス「わかりました、付いてなんかいかないっす!」

イスミー「行きやせん、おいらたちは絶対に行きやせんから!」

メッシュ「ええ、絶対絶対でございますとも」

セラフィナ「ダ○ョウ倶楽部か、貴様ら

エア「本当にご迷惑をおかけしましたーッ!(土下座)」

こうして長いようで短い謁見は終わりましたが、本題はここから。果たして剣を持ち出せるのか。


★扉の向こうの真実

セラフィナの向かった先については、城内の構造に詳しいローリエさんが知っていました。

本人はさっきまでのぞんざいズのあまりにもぞんざいな態度に緊張しっ放しで半泣きですけど。

ローリエ「い、いつ陛下の雷が落ちて処刑宣告が来るかと……びくびくしておりました」

ジーク「あーそっか。ごめんな、俺あんたのことかなり疑ってたわ

エア「うわ、軽い告白!」

内通者として一番怪しいポジションにいますしね。


ジーク「でも、このびくびくした涙は本物かなあと思えてさ」

ローリエ「本物ですよ!あの陛下は、妹を取り戻すために隣の国に喧嘩を吹っかけるお方ですよ!
      あんなぞんざいな口を利き続けて、処罰されなくてよかった……っ」

妹のことに関してはそうだけど、不敬罪をばんばん出すような人かというとちょっと違う気もします。

良くも悪くも威風堂々としていますしね。多少のぞんざいさも彼女を怒らせる程ではないんじゃないかと。


それではいよいよ剣を取りに向かいます。向かうのはスカウト技能の高いメッシュのみです。

とはいえちゃんと人払いされているので大した障害もなく研究室に辿り着けました。

研究室の扉の先には禁断のアイテムが保管されている部屋があったようですが、女帝の信頼に応えて自重します。

研究室の扉は二つあって、《聞き耳判定》の結果片方には人が残っていたので、もう片方に侵入します。

そちらの研究室は予想通り無人でした。奥には更に扉があり、机の上には鞘に入った剣が置きっぱなしです。


剣を確認したメッシュはこっそり買っていた<粘着靴>に履き替えて天井から侵入します。

これはその名の通りの粘着力で壁や天井に張り付く靴です。ただし移動は制限移動に限る5720ガメルの品。

その際は敏捷度に関係する判定に−2のペナルティですが、どうせ無人なので《隠密判定》の必要もなし。


机の上の剣は予想通りの<パジャリガー・スラッシュ>でしたが、ここでメッシュは奥の扉に注意を払います。

《聞き耳判定》の結果女性の啜り泣きが聞こえてきます。「……すまない、ミスティン」という細い声も聞こえます。

メッシュ「ふぉお、ここにはジーク様を連れてくるべきでした!女帝フラグが立つかもしれなかったのに!」

ニゲラ「……女帝様。やっぱり妹さんのことは大事なんですよぅ」

メッシュ「……く。このまま放置も寝覚めが悪いです。ここは、<ジャガスラ>を置いてあった場所に、
      引き替えに懐に入れていたハンカチを置いておきます。ジーク様の」

イスミー「これで涙をお拭きよと」

こうしてちょっと粋な計らいをしつつ剣を入手できました。あとは《青嵐領》へ向かえばいいのです。


ここでローリエさんの扱いですが、本人の希望からついてくることになりました。

ニゲラ「ここで倒れたふりをすれば、ニゲラたちにやられたふりおしておけますよー?」

ローリエ「いえ、私は私の役目を全うします……でも、近衛の服は脱いで、自分じゃない自分になりたいと思います!

ムーテス「いや、あなたは本当に職務に忠実な人っすね。なんか愛着出てきたっすよ」

ローリエ「いえ、全てをきっちりと片付ければいいんです、ええ!今こそ忠義の心を見せるときだーッ!」

最初はお堅いエリート様かと思いきや、ちょっと可愛い所もありますね。ちなみに今の彼女は私服です。

でも挿絵が一切ないのでどういう人なのかさっぱりなんですよね。個人的には"バブリーズ"のクレアっぽいかなと。


★空からの……

飛行船で《青嵐領》へ向かう際には周囲を<望遠鏡>で警戒しつつ、万全の体勢で臨みます。

イスミー「姐さん姐さん」

エア「ん、なに?」

イスミー「あのローリエさんってお人に"ディテクト・フェイス"をこっそりかけたりはできやすかい?」

エア「ローリエさんが、アーメス信者かどうかってこと?」

やっぱり内通者である線は捨て切れないようで、できる限りの手は打っておきたいんですね。


これは2レベルの神聖魔法で対象が信仰する神の名を質すことができます。

具体的にはプリースト技能のレベルと信仰している神様の名前が分かります。

ただしプリースト技能を持たない場合はその事実しか分かりません。どの神様を信仰しているかは謎です。

よって彼女が本当にアーメス信者であってもプリースト技能を持たない平信者とか協力者だと判別できない。

それにこの呪文をかけられた相手はそれをはっきり認識するので、ここでは結局かけずにおきました。


そうして《青嵐領》へ向かっているとですね……やっぱり事件は起きちゃうんですよね(笑)

飛行船は今まで発着場にしていた離宮には向かわず、進路を外れて森へと向かっていきます。

イスミー「……あれ?」

ムーテス「これはもしかして……」

ジーク「運転してる人が違う?」

ニゲラ「あは……あはは……ニゲラ、注意してたのに……」

運転室に飛び込もうとすると、扉の前には木箱が置かれてがっちり固められていました。


更に外を見るとスカイバイクに乗ったイゴールと、騎手のいないワイバーンが飛んできます。

ムーテス「うさぎくん、撃っていいよ」

イスミー「え?何でやすか、あれってシューティングゲーム的な標的?

ムーテス「うん、そんなところ」

ワイバーンの背中が開いていることについては、運転手が脱出の為に使うと推測できますね。

そうすれば飛行船ごとぞんざいズを墜落死させ、あとでゆっくり残骸の中から剣を拾えばいい。

それにしてもまた飛行船が落ちるのか。もう3回目でしたっけ、カプ○ンのヘリか(笑)


1ラウンド目

ここでぞんざいズは木箱を破壊して運転室を制圧することにします。

木箱は2つあってHPは15点、防護点は6点と微妙な強度を誇っています。


そこでここはムーテスの《テイルスイング》で一気に破壊する作戦に出ます。

"ドラゴンテイル"でダメージ+2、あとエアの"ファイア・ウェポン"も入れば更に+2。

合計で威力11+18点にもなるので出目6以上で21点以上になって一撃で破壊できますね。


ところが片方は出目が低くて20点で1点残し。もう1つは1ゾロで無傷で残りました。

メッシュ「……トカゲ、パーティ内ヒエラルキー最下位に転落するの図」

ムーテス「ごめんなさーい!(土下座)」

ジーク「しょうがない、俺がマルチアクションすればいいんだろうけど……
     木箱はひとつは無傷なんだよなあ、俺も一撃では落とせないかも」

エア「木箱に苦戦する10レベルパーティって何!」

結局メッシュが蹴りますがまたも20点で1点残し、《追加攻撃》でようやく破壊できました。

残った1つはニゲラが破壊しましたが、たかが木箱に前衛3人の手番を使ってしまいましたね。


運転室に飛び込むと、そこにはドワーフのアーメス神官がいました。名前はワルフというらしい。

《魔物知識判定》で実力を見抜くとファイター9のプリースト8とそこそこ強いことが判明します。

実際ジークが《魔力撃》で殴りかかっても避けるし、倒せない相手ではないけど時間は掛かりそう。


すぐそばに縛られた本来の運転手が転がっているので彼さえ助け出せれば墜落は免れます。

しかし高度はどんどん下がっているのであと3ラウンドで森に墜落するでしょう。

幸いぞんざいズの突入でワルフが脱出の機会を逸したので操縦桿は少し上げられています。

よって森には墜落というか軟着陸っぽくなるので即死するほどの衝撃ではないでしょう。


できればイスミーを操縦桿まで辿り着かせたいところですが、ワルフが邪魔ですね。

ローリエ「何なら"スリープ"をかけてみましょうか?」

抵抗力の高そうなドワーフに効くかは分かりませんが駄目元でやってもらいます。


ジーク「……誰にかかった?」

GM「はい。予想通り六倍掛けです

イスミー「……やっぱりでやすか!」

ジーク「うん、予感はしてたんだけどな。何となく愛着出てきたから、信じたかったんだけど」

ローリエ「ごめんなさいね」

これでムーテスとイスミーが眠ってしまいました。やっぱりムーテスは<赤の眼鏡>を買った方がいい(笑)


やはりローリエは内通者でした。会話中はラウンドが経過しないのをいいことにベラベラ喋ってくれます。

ローリエ「できれば、その剣を渡していただきたいんですけど。ジークさん」

ジーク「バカかお前。少しでも俺たちと旅をしたんなら、素直にここで渡すと思うか?」

ローリエ「まあ、形式上確認しておくべきかと思いまして」

彼女自身はアーメス信者でも何でもありません。ただの協力者、というか政敵の協力者ですね。


では何に釣られて彼女がこんなことをしているかというと。

ローリエ「静かで豊かな生活よ

メッシュ「お金ですか?それなら、その倍出しますよ

エア「こらぁああ!」

ムーテス「うわぁあ、機会があれば一回言ってみたいけど、言っちゃだめな台詞っすよそれ!」

どうやらセラフィナの不興を買ったとしても、次期女帝の代での待遇を約束されているようです。

ミスティン姫を葬ろうとしている以上はジャスティの派閥がアーメスと通じていて、その協力者ですか。


ローリエ「あんな妹可愛さのあまりの戦争馬鹿に付き合わされて、戦場にいくなんて真っ平なの
      大体、そんな生活を続けていれば、今の女帝もそんなに長くはないでしょうよ」

本来は宮廷で要人の相手だけしていればいいエリート様ですから、そういうのが苦痛だったのでしょう。

近衛というとオーファンやマーモ公国の近衛騎士団のように、戦場に出ることを厭わないイメージがありました。

しかしそれは戦うことが仕事である王直属の騎士だからであって、こっちの近衛は軍人じゃなくてSPみたいな感じなのかな。


メッシュ「言いたいことはわかりました。しかし、私はついうっかりと現女帝に萌えてしまったので、お前の好きにはさせん!」

ジーク「そうだ!俺だって結構ジャスティに萌えている!

国家的陰謀を個人の嗜好で阻止する。それもまた冒険者だからできることです(笑)


ジーク「とりあえず説得は試みた。けれど埒は明かない平行線だ。戦おう」

ローリエ「そうですね。貴方がたの強さは目の当たりにしています。しかし、今なら戦闘力は五分の一は減っているはず」

ムーテス&イスミー「ちょっと待った!それ計算おかしい!」

そういえば彼女の前ではムーテスは大して活躍してないし、イスミーもマスコット的存在に過ぎませんね(笑)


それでは戦闘再開です。ワルフは自分とローリエに"ホーリー・ブレッシング"で衝撃に備えます。

イゴールはスカイバイクの《レーザーガン》でメッシュを狙いますが指輪を割って回避。

ローリエさんはこのラウンドはぞんざい側で動きましたが、次からは敵の側で動きます。


2〜3ラウンド目

エアは全員にカンタマ。ニゲラは練技三点セットを使い、パラミスSランクつきでローリエさんに絡み攻撃。

GM「うわ、容赦なし。(ころころ)……うーん。ぱりーん。避けた

ニゲラ「なんか割ったぁ!」

指輪を割るのはPCの特権ではありませんからね。しかもメッシュの《投げ攻撃》は〔運命変転〕で避けます。

ジークはムーテスを、ムーテスはイスミーを起こします。イスミーはいつものクリポン武器を作ります。


それからもローリエは魔法やアイテムで攻撃をかわしながら攻撃魔法で反撃してきます。

ワルフは彼女を回復しつつ、隙を見て《マルチアクション》で攻めてきます。

イゴールの《レーザーガン》は何故かジークが避けられずに当たり続けたりと微妙に苦戦。

決して勝てない相手ではないんですけどね。かといってすぐに倒せるほど甘い相手でもないのです。


特にローリエは"ブリンク"を使いつつ"エネルギー・ジャベリン"で攻めてきたりと非常に鬱陶しい。

これは8レベルの真語魔法で自分の分身を作り出し、1回だけ《回避力判定》に自動的に成功するというもの。

補助動作で使える上に1回は敵の攻撃を無力化できるので、敵に使われると非常に鬱陶しい魔法ですね。

まぁ攻撃を受けると自動的に消費されるので《かばう》と同様にデコイの攻撃を用意できればいいんですが。


4ラウンド目

それでもムーテスの攻撃でダメージを受ける場面もあり、ムーテスにとっては面目躍如といったところです。

エア「ムーテスもさっき魔法撃たれてHP減ってたっけ?」

ムーテス「多少ね。でも、次には<ヒーリングポーション>を補助動作で飲むから僕には回復は必要ないよ

エア「あ、そうか。《ポーションマスター》!かっこいい!」

ムーテス「ふ、ここまで成長した僕は滅多に落ちないっすよ。でも"スリープ"は勘弁な!

10点以上は自力で治せますしね。エアの回復ほどではないけど多少の怪我はどうとでもなる。


操縦桿に辿り着いたイスミーはライダー/マギテック+器用度で目標値17の判定をします。

イスミーの場合は基準値11にもなるので出目6で成功し、墜落を免れますが。

イスミー「(ころころ)……ありぃ?(出目3)」

一同「あほかー!」

イスミー「大丈夫、指輪を割り……って、これじゃ足りねえ!(大パニック)」

はい、墜落は確定しました。エアは怪我をしている人を回復して墜落に備えます。


メッシュはワルフに《投げ攻撃》をするも惜しい所で避けられます。

メッシュ「ぱりーん!<巧みの指輪>を割って、達成値をブーストです!捕らえましたよ!」

GM「何と!それならドワーフも自分の手にはめた<俊足の指輪>を割ります!」

ワルフ「指輪を割るのは己だけの得意技ではないぞ!

メッシュ「く……指輪の数が、すなわち勝利への鍵か!」

レベルが高いのか低いのかよく分からない攻防でした。指輪のブーストを敵が使うとこうも鬱陶しいとは。


その後ローリエの"ブラスト"がニゲラに大ダメージを与えたりしつつラウンド終了、ついに墜落です。

墜落のダメージは威力50+20でクリティカル値12、船内がシェイクされる物凄い衝撃でした。

冒険者+筋力で目標値19を出せば半減できるので、成功したジークなんて6点ぐらいしか抜けませんでしたが。

一方失敗したイスミーは26点とか食らってました。ローリエさんも浅からぬ傷を負いました。

そんな中既に飛んでいるムーテスだけ無傷でした。流石にこういう衝撃からは仲間をかばえないか。




墜落後、よろよろと立ち上がったローリエさんはというと。

ローリエ「……降参しませんか?

一同「それはこっちの台詞だ!

ジーク「むしろお前が降参しろよ、命は惜しいだろ」

そういうからには交渉材料もあって、イゴールは礼の<呼応石>もどきを出します。

それこそがミスティン姫のパッケージされた魂です。ということはあの巨人についていたのも……。

ここで剣と魂を交換することもできましたが、交渉になんて応じません。戦闘を継続します。


戦場が変わっているので《先制判定》もやって仕切り直しです。

メッシュ「ニゲラ"ブースト"お願いします!今回は指輪の保険がありません」

ニゲラ「自分でいったー」

これでSランクを入れつつ23とか叩き出して余裕で先制を取れました。


1ラウンド目

エアはほぼ無傷のジークとムーテス以外に"キュア・ハート"。既に<魔晶石>に手をつける消耗っぷりです。

ニゲラはイゴールにパラミスSランクを入れます。そして自分はワルフに絡み攻撃をして武器を使えなくします。

メッシュ「では、ライダーよ。私に接敵されたのが運の尽き。
      どんな位置取りをしようとも、私の行動範囲内であれば《影走り》で捕らえますよ。
      そして《投げ》!《踏みつけ》《蹴り》×2のコンボを食らうがよいのです!」

その通りに投げられて踏まれたイゴールでした。《ファストアクション》分の蹴りは回避できましたが。

その後のジークの《マルチアクション》による"カオスブラスト"&近接攻撃やムーテスの攻撃を受けて瀕死です。


トドメはイスミーの"バーストショット"でした。

ムーテス「こいつ、上から踏んでおくっすよ。よくも騙したな」

次のラウンドにはニゲラに絡め取られたワルフもフルボッコになって落ちました。

そうなってしまうと敗北を悟ったローリエさんは投降します。命懸けで戦う人ではないのは承知の通り。


ニゲラ「ローリエさん。これから色々と辛いことがあると思いますけど、自業自得ですからねー?」

イスミー「イゴールたちの証言で、ムーテスの大将の容疑は晴れやすでしょう」

ムーテス「やったー!今度こそ自由だー!」

ミスティン姫の魂も確保したし、取りあえずの脅迫は乗り切れましたね。


問題はここからどうやって彼女を元に戻すかです。そこまでやらないと"クエスト"は解けません。

それにイゴールの仲間はまだ1人残っています。ムーテスを眠らせた魔術師は今どうしているのか。


第二十七話 眠れる竜と戦う方法

★ここまできたぞ成長申告

今回のキャラクターシート


今回の能力値の成長は以下の通り。

ジーク:生命力20→21

エア:器用度16→17

メッシュ:知力20→21

ムーテス:生命力25→26

ニゲラ:敏捷度20→21

イスミー:器用度19→20

本文ではイスミーの器用度が18になったと言っていますが多分間違いです。


技能の成長ではジークがファイター10→11とし、戦闘特技《武器習熟/ソード》を習得しました。

さらに武器をAランクの<フランベルジュ>に変更。<バスタードソード>より威力が10程度高いものです。

戦闘特技もそうだし、武器も純粋に強力になったし、ダメージがぐんと増える成長をしましたね。

魔法の品かどうかは不明ですが「リターンズ」では魔法なので魔法の武器として見ておきます。


更に11レベルになったので〔剣の加護/運命変転〕がパワーアップします。

今回はひっくり返した出目を+2できるようになります。つまり最低9は保証されるわけですね。

ぼちぼち他の人達も11レベルになるでしょうから、その時にも確認していきましょう。


あとイスミーがエンハンサー0→1として練技"キャッツアイ"を習得。命中力向上ですね。


★森からの帰還

前回ぞんざいズは飛行船が墜落する中イゴールら誘拐犯を捕まえてミスティン姫の魂を取り戻しました。

ジーク「万が一にも割らないように、四六時中抱えてるぞ。……このまま温めてたら、ぱりーんとかいって孵化しないかな」

ニゲラ「孵化したらどうするんですかぁ」

ジーク「え……そこをつっこまれるとは思ってなかったけど、ある意味本当のプリンセス・メーカー?」

ニゲラ「ニゲラ、お気遣いの淑女なので聞かなかったことにして、不時着状態の飛空船を見上げてますー」

墜落場所は離宮からもそう離れていない場所です。飛行船はその内回収してくれるでしょう。


では早速イゴールを尋問します。まだ仲間の魔術師が1人捕まっていないし、ミスティン姫を戻す方法も不明ですからね。

イスミー「ああ、大将のお友達」

ムーテス「ちがう!あんなヤツを友達なんて思ったことは、一度もないっすよ!」

イゴール「我々もキミを友達だと思ったことは一度もないよ、大丈夫」

ムーテス「とりあえず、顔のあたりを踏んでおく」

捕虜になっているのに結構強気ですね。殆ど会話せずに倒しちゃったから性格がよく分からないんですよね。


ジーク「これ、本当に姉ちゃん……じゃないや、ミスティン姫なんだろうな」

イゴール「ああ、本物だとも!見てください、この色艶!滑らかな形!まさしく王侯貴族の輝きとも言うべき……」

ジーク「そ、そうだよな。綺麗だもんな」

エア「ジーク……逃避しないように」

剣を要求したのはシフェナの指示です。これがあればアーメスは元の姿に戻れると言われたらしい。

しかしその魔力は穢れを取ったり付けたりするもの。一体何故そんなことが可能なのかは彼らも知りません。

奪った剣は《白峯領》に持ってくるように言われていたそうです。海賊の島でもそんな情報がありましたっけ。

ちなみに現在のアーメスの姿ですが、イゴール曰く「ちょっと綺麗な兄ちゃん」だそうで、イケメンキャラっぽいですね。


ミスティン姫をこんな姿にした方法ですが、それは例のパジャリガーが封印した遺跡にあった魔動機械を使ったそうです。

元々その機械は果てのない蛮族との戦いで疲弊していた人々を死と穢れから救うために開発されたものでした。

肉体を保存して穢れないようにし、魂はパッケージしてゴーレムや死体に繋ぐ事で戦力として使っていたようです。

ところが肉体から切り離された魂は記憶は溜まらず判断力もない。そして長い時間を経るにつれ自我も薄れていくのです。

そのため当時の人々の魂はちょっと特殊な<呼応石>みたいになっていますが、ミスティン姫がそうなるにはまだ時間の猶予はある。


その機械は現在彼らのアジトにあって、残った魔術師もそこにいるらしい。

ミスティン姫を元に戻すにはその魔動機械をもう一度使えばいいらしいので、アジトの位置を聞き出します。

メッシュ「そのアジトには、人はたくさんいるのでしょうか?」

イゴール「いいや、人はほとんどいないね」

メッシュ「魔法生物ですか?蛮族ですか?」

イゴール「そのようなくくりををいつまでもしているようでは、宥和の路は遠いな」

つまりその辺のやつがいると。蛮族どころか魔法生物とも宥和しようとしているんだ。

具体的には魔術師以外にトロールが2体いるそうですが、他にもまだいるかもね。


続いてローリエの尋問です。彼女の<通話のピアス>の連絡先はライルバート卿という伯爵だそうです。

ジャスティの養父であり、《無法領》に隣接する《紫壁領》フォストリスの領主でもあります。

《無法領》というのはアイヤールが拡張する中で統治が及ばず、蛮族の領土として残されている部分です。

いわば玉ねぎの虫食いのようなもので、そこと隣接する領は前線でなくても蛮族の脅威に晒されます。


《無法領》はアイヤール国内に複数あり、アイヤールにとっては悩みの種でもあります。

ムーテス「ほほう。そういう場所を制圧すると、いきなり領主になれそうっすね

エア「……権力への欲求の追及には余念がないわね、ムーテス」

ムーテス「うん、欲しいよ権力!なんとかジークを上手に祭り上げて甘い汁をすすりたい!

ニゲラ「ここまで堂々としていると、いっそすがすがしいですー」

「フェイダン博物誌」にはそういった《無法領》の例も載っていますが、まぁ酷いものです。

ライカンスロープの一大居住区になっていたり、変身したラミアによって占領されていたりとね。

《無法領》が《無法領》として放置されているにはそれなりの理由があるということですね。


ライルバート卿はそういった脅威からも領民を護っていることから評判のいい領主ではあるようです。

しかし裏を返せば蛮族との接触もありえるということでもあるし、権力や武力、財力を欲する理由にもなる。

当然養女であるジャスティを皇帝にしてしまえば彼の発言力は大きくなって万々歳というわけです。

ローリエさんも任務が成功したら彼のところに取り立ててもらえる約束で現女帝の責任になるよう誘導していました。


★ちっちゃくなって、おかえり?

尋問は大体終わったところで離宮へ戻って《皇城領》に現状を報告し、迎えを寄越してくれるよう要請しました。

近衛に裏切り者がいたので不安はありますが、「信頼できる手勢を向かわせる」という回答を取り合えず信じます。

迎えが来るまでの間にカードや指輪を補充して休憩です。イゴール達は厳重に閉じ込めておきました。


しばらくすると巨大な飛行船がやってきます。今までの飛行船とはグレードが違う立派なものでした。

タラップがかけられ、ぞんざいズは一応迎えに出ます。一体誰が降りてくるのかと身構えながら。

ホーリィ「みんなー。無事であったかーっ」

一同「……(奇妙に沈黙)」

ジーク「……あれ?」

ニゲラ「おやぁ?」

エア「……って、何なのこのガッカリ感!

絶対に嫌なやつが来ると思ったら予想が外れて拍子抜けですね。例の出番を逃した強力な騎士あたりかと思ったのに。


ニゲラ「噂に聞いたソラさんのようなことはできないですけどぉ、ホーリィちゃん抱っこしてスイングしますぅ

ホーリィ「わ、我は、もうそのようなことで喜ぶ子供ではないのだー」

と言いつつ嬉しそうなのは初めて会った時から変わりませんね。皇女相手に一切遠慮がないのはもうデフォルトです。


ホーリィ「ミスティン姉上が、ご無事だったと聞いて、セラフィナ姉上におねだりしてきてしまったのだ。
      おお、ムーテス、牢はどうであった?後ほど感想を聞かせよ」

ジーク「うん、二つに分かれてるけど、一応無事だぞ」

イスミー「それ、聞き様によってはすげぇ、グロい表現でやすよ」

メッシュ「とりあえず、上半身に会っていきますか?

ホーリィ「うわーんうわーん」←泣かすな(笑)

彼女がここにきたのはミスティに会うためだけではありません。ソラからの届け物を持ってきたのです。

それは犬程度の大きさの小型の魔動機械で、イスミーの足許に子犬のようにじゃれついてきました。


「現在破損箇所を修理中なの。でも、なんかすごく嫌がって暴れるから、
  先生たちが回路の一部を研究中の魔動機械に載せてみたそうです。役立てて」

イスミー「……オクタン?」

ジーク「コ、コンパクトになっちまって」

そう、これこそが新生ミニオクタンです。オクタンの一部を小型の魔動機械に搭載した魔法生物の一種ですね。

付属のゴーグルを使えば視覚を共有することもできる。暗視アリ。言わば簡易版の使い魔のような能力を持ちます。

ただし3分に1点ずつMPを消費しますし、耐久性能は以前登場したレンガード程度ととっても脆いので注意が必要。


そうしてホーリィやオクタンと戯れるぞんざいズを、搭乗口から顔半分出して見つめる鋭い視線がありました。

メッシュ「もしかして……女帝?」

GM「はい。セラフィナ女帝です」

ジーク「うわぁあっ、本当に本人が来た!」

ニゲラ「ある意味、確かに信頼できる人ですけどっ!」

メッシュ「厳しい顔をしていても、泣き虫女帝と知れていますからね(にやり)」

どうやら妹に堂々無礼を働いているところをなるべく見ないようにしていたらしい。無礼討ちにしないように(笑)

皇族還りをするまでは市井で育つから、皇族とはいっても割りとその辺の融通は利く人なんでしょうね。


彼女は警備の人を引き連れてタラップを降り、すれ違いざまに洗濯したハンカチをメッシュに叩きつけます。

メッシュ「ふぉ!……手袋なら決闘ですが、ハンカチですと何なのでしょうね。ていうか、何故私個人」

それは状況から言って高レベルスカウトの仕業ですからね。女帝の意外な一面も見れたし美味しいイベントでした。


今回連れてきたのは彼女の養家に連なる人達なので本当に信頼できます。まさか本人が来るとは思わなかったけど。

エア「だからって、女帝が直でとは、普通ありえないでしょう!」

メッシュ「普通ありえないなんて、本人に言うなんて、ありえないでしょう。なんて無礼な!」

ムーテス「そうっすよ、もう少し口を慎んだほうがいいっすよ!」

イスミー「女帝様の御前でやすぞー!」

エア「……。おかしい、正しいのにマイノリティ……
    誰も味方してくれないって、どういうコトなのかしらね、本当にっ!」

ここぞとばかりに前回の礼儀作法云々をお返ししてますね。こと礼儀作法に関しては彼女はいつも割りを食ってます。


そんな彼女にセラフィナは哀れみを含んだ視線で肩に手を置くと。

エア「ちがああああうっ!こいつらに正しさと礼儀作法を叩き込んでくれと言ってるのよっ!(きーっ)」

ニゲラ「と、女帝様に怒鳴るんですかぁ?」

エア「さらにちがうっ!傍のおつきによっ!」←とばっちり

ジーク「よー女帝、話ししようぜー

エア「話をきけぇええっ!」

こういうのを見ると、ぞんざいに染まってきたように見えて、やっぱり辛うじて常識人?なんだなと。

まぁエアの場合暴走するポイントが他の人とちょっとズレてるだけという気もしますが。ルーフェリア的な意味で。


ジーク「はい。これミスティ(玉を出した)」

セラフィナ「弱いからこういうことになるのだ」

これで魂はセラフィナに預けられました。ぞんざいズ以外で玉を預かる人としては最も適切かつ安全かと。


セラフィナ「要求された<パジャリガー・スラッシュ>を表に出すことなく、
       第一継承者たるが妹を救い出した働き見事である」

ジーク「あ。剣も返すな。はい」

セラフィナ「オ・モ・テに出すこと、なく!

持ち出していないことになってるんだから返すならこっそりと返さないとね。


セラフィナ「賊を討伐し、一件の落着に大きく寄与した功績を認めよう
       我らはミスティン・デラルザ・アイヤールの回復に全力を尽くすものとする」

そう口にすると研究者たちもタラップを降りてきます。どうやらミスティン姫の肉体も持ってきたらしい。

あとは魔動機械を入手するだけですが、実は女帝にはその魔動機械に心当たりがあったりします。

既に国の方で抑えた遺跡にあるらしいので、そこを踏破しても手に入ります。ちょっと離れてますけどね。


よってぞんざいズとしてはイゴール達のアジトか、その遺跡のどちらかに挑戦することになるわけです。

GM「その遺跡は《無法領》のひとつにあります」

ニゲラ「あれ……それって、ライルバートさんの領のご近所……?」

今回はどちらを選択するかによって展開が変わりますが、ぞんざいズはアジトの方を選びます。

近いし、シフェナの手がかりがあるかもしれないし。ムーテスとしても決着はつけておきたいので。


ムーテス「あ。一応聞いておきたいんっすけ、今皇族の上位って女性ばっかりっすよね?
      当然ながら、後継者のことも考えて、結婚話は出てると思うんだけど」

もちろん沢山きているそうですが、女帝は次々に蹴っているそうです。

もし女帝に子供ができなかったら妹達にも継承権が回ってくるので、そちらにも縁談は色々あります。


特にミスティン姫の子供は有力候補ですが、内々に決定しそうなのがメルドリーネの王子です。

これは10年前の「滅びのサーペント」の事件で滅びたメルドリーネ王国の唯一の後継者ですね。

現在はその事件で活躍したフェルデイナント伯爵に保護されていまして、現在11歳です。

ちなみに名前はトラヴィス・リーネです。「フェイダン博物誌」に挿絵つきで彼の現状が説明されています。


ジーク「女帝!お前本当に妹大事なんだろうな!」

GM「妹は大事、でも国のこととは別」

うまく縁組できればその英雄とも縁続きになるし、旧メルドリーネ王国の領地にも手を出す大義名分ができる。

ジークからすればもし結婚したら年下の義兄になってしまうわけで、色々複雑な縁談かもしれませんが。


★古びた館に

イゴール達のアジトは飛行船が不時着した森にある使われなくなった別荘でした。見たところ3階建てのようです。

イスミー「裏側に勝手口があるやも知れやせん。ここは、新生オクタ……」

エア「とりあえず、ジークの使い魔でも飛ばしてみたら?」

ジーク「それもそうだな。メッシュ、GO」

イスミー「……(オクタンを抱きしめてしくしく泣いている)」

耐久性能がレンガード並みということは、攻撃に晒されたら容赦なく壊れるということでしょう。

本物の使い魔ならダメージが主人にフィードバックするだけですが、オクタンは洒落になりませんからね。

そう考えると危険な偵察を任せるのは躊躇われるわけで、使い魔としては使いどころが難しいですね。


メッシュは《隠密判定》で19という見事な偵察で屋敷を一周し、裏側に降りの階段を発見します。

ジーク「人はいたか?」

メッシュ「いませんでした!」

ジーク「よしいくか!

一同「まてい!」

エア「人はいないけど、猫がいましたとか、カラスがいましたとか、
    うっかりとすれ違ってきましたとかあるかもしれないじゃない!」

敵に魔術師がいるということは分かってますからね。外の見張りに使い魔を配置していても不思議はない。

幸いそういうのは見当たらなかったし、人の気配もなかったようです。どうやら中の人にも気付かれてないようだし。


下に降りる階段というのも気になりますが、高レベル冒険者なので屋敷の上階からの侵入を試みます。

3階の居住部分は2階よりも凹んでいて、どうやらテラスになっているらしいのでそこから入れそうですし。

そこでメッシュがこっそり買っていた<ジャンプブーツ>でテラスまで跳躍して偵察してくることにしました。

これは《冒険者判定》幅跳びや高跳びに+4のボーナスが入るという5000ガメルの品です。

ここでメッシュは18ラウンド靴の効果はもつと言っていますが、そういう時間制限はないはずです。


《冒険者判定》は冒険者なら誰でも試みることのできる判定全般ですね。水泳とか登攀とか。

その中でも高跳びは冒険者+敏捷度を基準値に目標値10で、状況によって色々な修正が入ります。

ただ目標値10は1mまでで、以後10cm毎に達成値に−1のペナルティが入るんですよね。


3階まで跳ぶとなるとペナルティがべらぼうになるような気がしますね。

まぁ3階のテラスに懸垂で掴まるとすれば多少緩和できますし、何とかなるものなのかな。

メッシュの基準値は13で、ブーツで+4、助走で+2、軽装で+2とすると基準値は21程度。

3mぐらい跳ぶとペナルティが−20で基準値1で出目9必要。この辺でも結構厳しいですね。


それでも目標値はそんなに高くないと裁定したらしく、メッシュは気軽にジャンプします。

メッシュ「お任せください!(ころころ)……よし!50点追加!

ニゲラ「えええっ!」

イスミー「さすが2000点の男は、稼ぐところがちがいやすなあ」

これでメッシュは屋敷の壁に激突。流石に中の人に気付かれた気もしますね。

落下ダメージは5m分として15点ですが、メッシュは《受身判定》で軽減できます。

達成値の分だけダメージが減らせるので基準値13のメッシュならノーダメージでしょうね。


諦めずに再度挑戦して今度こそ成功したメッシュはテラスに上がれました。

窓には新しいカーテンが掛かっていて、中からは人工的な駆動音、推定魔動機械の音が聞こえます。


ここでメッシュは下にロープを垂らし、仲間達は《冒険者判定》の登攀によって登ってきます。

こちらも冒険者+敏捷度を基準値に目標値10で、状況によって色々な修正が入ります。

目標値10は5mまでで、以後5m毎に達成値に−1のペナルティなので難しい判定ではない。

ロープがあれば+1、金属鎧で−1ですけど、今のぞんざいズなら1ゾロ振らない限り成功でしょう。

ちなみに基本は8mなのでジークでも−1程度です。ていうかこれならメッシュも登攀すればよかったのに(笑)


全員がテラスに上がるとロープは脱出用に残しておき、屋内の様子を窺います。

ジーク「窓に鍵ってかかってるのか?そっと開けてみようとするけど」

GM「あ、手ごたえなく開きました

一同「開いた!?」

ジーク「……ごめん。つい、てっきりカーテンがあるなら、鍵もかかってるかと無警戒に」

開いてしまったものは仕方ない。カーテンを開けて中を見ると何かが光ります。


ここで中にいる何かと《先制判定》です。目標値は22ととっても高い。

メッシュ「(ころころ)……まったく無理です。6ほど足りません」

先手を取られましたね。続いて《魔物知識判定》で中にいたのはドラゴンフォートレスだと見抜きます。


ドラゴンフォートレスは15レベルの魔法生物です。竜を模した形状の全長50m、全高15mという大型兵器です。

内部には100人程度の人員を収容でき、拠点防衛に用いられた飛行要塞ではないかと言われています。

頭部(コア)、胴体×2、翼×2、足×2の七部位です。胴体と翼は<ガン>を装備し、全身が《鷹の目》持ちです。

胴体と翼は3発の弾丸を一度に消費して《斉射》を行い、命中判定の達成値を30として攻撃してきます。

頭部は火炎、吹雪、電撃のいずれかを《応変噴射》して半径6m/20に渡って魔法ダメージを与えてきます。

胴体は御馴染みの《攻撃障害=不可・不可》で頭部を守り、翼は《飛翔U》で命中と回避に+2を持っています。


もちろんこんな大型兵器が丸ごと3階に収まっているわけではなく、上半身のみが3階を占拠しています。

具体的には頭部、胴体×2、翼の四部位のみ。他の部分が何処にあるかはここからでは分かりません。

もちろん屋内では飛ぶこともできません。流石に丸ごと屋外でぶつけたら酷いことになりますからね(笑)


1ラウンド目

先手を取ったフォートレスは容赦なく《応変噴射》で火炎を吐きます。

GM「ブレスの抵抗は25です」

メッシュ「まかせてください、14を振ればいいのですね!」←精神抵抗11

エア「先手取れなかったから"カンタマ"撃てなかった、ごめんね!」

GM「みんなテラスに集まってくれたので、全員にダメージです。2D+13点」

これは「ルールブックV」の数値です。「バルバロステイルズ」だと2D+20点とより鬼畜仕様。

ちなみに「バルバロステイルズ」だと抵抗の目標値が抜けていますがエラッタが出ています。

それによると「18(25)/精神抵抗力/半減」、高いかと思ったらしっかり期待値。恐ろしい兵器です。


胴体はニゲラに《斉射》です。19(26)なら普通に撃っても当たるでしょうが、やってみたかったとか(笑)

残った部位もジークとイスミーを攻撃して20点以上素通しにしてきますが、<消魔の守護石>で打ち消します。

10点分打ち消すだけでも1万ガメル分ですけどね。蘇生費用と同じ……とはいえやはり命は大事です。

いくら蘇生できるといっても死んだことによる穢れはお金とは引き替えにできないペナルティですしね。


それではぞんざいズの番です。

エア「"キュア・インジャリー"×6!10点の魔晶石をつぶします」

消費MP8点が《MP軽減》で7点で、6倍拡大で42点。<魔晶石>で10点使っても32点消費と重たいです。

それでも効果は抜群です。威力50+14なら出目7で24点も治る。<女神のヴェール>で回ると凄いことに。


イスミーはメッシュにクリポン武器を渡し、ニゲラは練技三点セットとパラミスSランクで胴体に攻撃。

でも絡めたりはしません。相手は上半身のみとはいえ四部位の生命抵抗力21(28)では力負けする。

ジークはニゲラに"プライマリィヒーリング"して全快しつつ、《マルチアクション》で胴体を殴ります。

ここでは14点治っていますけど12点のはずなんですよね。前にもこんなことがありましたっけ。


メッシュはタゲサ&《牽制攻撃》で殴って一発外しますが、それでも17点とか抜いてきます。

ムーテスは《ポーションマスター》で<ヒーリングポーション>を飲みつつ、"キャッツアイ"を入れます。

そして久々の<デスサイズ>で攻撃しますが、《武器習熟》がないのにランク効果を使ってますね。

あと《ガーディアン》つき《かばう》をイスミーに宣言。銃から庇うと防護点は役に立たないけどHPはうさぎよりあるので。


2ラウンド目

胴体の主砲はどちらも《装填》。頭部は吹雪のブレスを吐きます。翼の副砲はメッシュを攻撃。

しかしエアの"キュア・インジャリー"でやっぱり回復。回って40点とか治ってますよ。


メッシュの攻撃が2回とも外れて非難轟々ですが、イスミーの"バーストショット"で胴体残り3点。

更にジークの"カオスショット"で胴体にトドメを刺して、《攻撃障害》のなくなった頭部に近接攻撃です。

ちなみに胴体は二つとも壊すと《擱座》で頭部の回避は−4ですが、てっとり早く頭を狙ってもいい。

このジークの攻撃が6ゾロで命中し、ムーテスの<デスサイズ>も命中。イスミーを《かばう》のも忘れない。


3ラウンド目

フォートレスの頭部は電撃を放ちますが出目が悪くてダメージは大したことない。

残った胴体と翼はエアとイスミーを狙い、エアは《消魔の守護石》で軽減し、イスミーはムーテスにかばわれます。

その後はニゲラが頭部にパラミスを入れながら攻撃し、メッシュの攻撃とイスミーの銃の前についにフォートレスは倒れます。


3ラウンドで決着はついたけど、こちらの消耗も激しかったですね。全部位揃っていたら誰か死んでたかも。

その後はムーテスのお薬やジークの範囲回復などで体勢を立て直し、戦利品を剥いだりもしておきます。

フォートレスは強敵だけどそれなりに見入りも大きい。自動で入手できる<希少な魔動部品>でも900ガメルです。

2〜6の<未知の魔動部品>で2400ガメル、7〜12の<掘り出し物の魔動部品>で7600ガメルですよ。

13以上で出る<新発見の魔動部品>に至っては2万5000ガメル、SSランクカード相当になります。宝の塊ですね。




回復やら戦利品の剥ぎ取りやらと色々時間をくいましたが新手が現れる気配はありません。

ムーテス「やばいって、絶対になんかしてるって」

あれだけ派手な戦闘をしておいて気付かれない筈がありませんしね。にも関わらず何も起きないのはどういうわけか。


そこで《聞き耳判定》をしてみます。目標値は19でしたが。

メッシュ「(ころころ)23でございます」

GM「じゃあね。メッシュの耳には、ピンッと何かが外れるような音が聞こえました。ちなみに、足許からです」

メッシュ「げ、もしかしてパイナップル状のものがころころと……」

幸い手榴弾の類いが転がってくる様子はありません。それならばとメッシュは"マナサーチ"を使ってみます。

すると地下に2つ、1階に複数、2階にはごちゃっといっぱい固まった反応が2つほど感知できました。

2階の2つの反応はマジックアイテムを複数装備した敵だと推測できますが、すると例の魔動機械は1階か地下か……。


そうして3階に留まっていたぞんざいズは突然《危険感知判定》を行うよう宣言されます。

部屋の罠が発動して床がパカっと2つに割れたのです。そういえば部屋の《探索判定》はしていませんでしたね。

これを避けるには《危険感知判定》で達成値16を出さねばならない。何かをしていた人はペナルティが−2です。

この判定にはジーク、エア、ムーテスが失敗しましたが、ムーテスは飛んでエアをキャッチしました。流石は《かばう》の達人。

1人だけ2階に落下したジークはフォートレスの残骸を華麗に回避し、落下ダメージは《リトルウィング》で0で済みました。


1人だけ分断されてしまったジークは危険を感じつつも奥の扉が開いているのに気付きます。

そこでは2人の男性が言い争いをしていました。ぞんざいズには気付いているけどそれどころではない様子。

1人は魔術師風の男性、イゴールの最後の仲間ですね。もう1人は鍛え上げた体格をした立派な中年男性です。

こちらは初めて見る人で向こうも訝しげでしたがジークには察しがつきました。ライルバート卿でしょう。


ようやく見つけた重要参考人の魔術師を逃がすまいとジークは全力移動87mで一気に接近しました。

ジークの敏捷度は22ですけど今は腕輪を嵌めてるんでしょう。それなら敏捷度24で72mに<韋駄天ブーツ>で+15m。

さらにメッシュは主を追って2階に降り立ち、《影走り》を駆使して魔術師に接近。ライルバート卿でも止められない。


そうなれば魔術師には簡単に追いつけます。

ジーク「お前だろう!ムーテスを騙したのは!」

魔術師「はい!」

一同「素直だ!」

魔術師「しかし、少し違う!あれは騙していたのではない、我々は本当のことを言っていた!
     ただ、言わなかったことがあるだけだ!

ムーテス「それが何の救いになるって言うんだ!」

嘘がないのと裏がないのはイコールではないし、真実を伝えつつ相手を偽ることは可能です。フォーセリアの頃からの教訓ですね。


ジーク「じゃあ言い方を変える。お前、ムーテスを利用したな!

魔術師「はい!」←いい子のお返事

ムーテス「やめてーやめてー、ジーク。僕の心の傷をにじらないでー」

ジーク「ムーテスに謝れ!」

魔術師「断る!」

ジーク「ミスティン様にも謝れ!」

魔術師「それはちょっと謝ってもいい

ジーク「……あれ?ちょっといいヤツ?(首かしげ)」←そんな訳ないない

とにかくこいつもイゴールと共犯です。ジークに組み伏せられて魔法を封じられては足掻く術もない。

他の仲間達も次々と2階に降りてきて、推定ライルバート卿に事情を聞こうとします。


メッシュ「やあやあ、立派な紳士。こんなところで何をなさっておいでで?」

ライルバート「わしは、ミスティン皇女誘拐事件の犯人を、追いかけてきたのだ(棒読み)」

ジーク「へーえ。よくここまで辿り着けたなあ。
     俺たちはこいつらの仲間を締め上げて、ようやくここまでこれたっていうのに」

ライルバート「わしには、様々なツテや情報網がある!(棒読み)」

ここでイスミーは彼の実力を見抜いておきます。するとファイター/ライダー10でアルケミストも持ってるらしい。

これはなかなかの実力者ですね。技能構成も微妙に娘であるジャスティに受け継がれている気がします。

彼はあくまでも偶然を装い、尋問を受ける魔術師は黙秘を貫いてライルバートに助けを求めるような様子を見せます。

何しろ捕まったら死刑確定なので下手なことは言えません。ライルバートに与してあとで取り引きしようという腹積もりですね。


一応相手は伯爵です。しかしこっちのバックには女帝がいるんですよね。<通話のピアス>で指示を仰いでみます。

ムーテス「陛下、陛下、ライルバート見つけたんすけど、どうしましょう。何か、ごねるんすけど」

セラフィナ「しばいて連れて来い

お許しが出ました。ライルバートを武装解除して《皇城領》まで連行するだけの権限を得たと考えていいでしょう。


しかし彼はあくまでも強気です。

ライルバート「ふん、あのシスコン女帝のことだ。妹可愛さにわしのことを処断などできんよ。
        わしの育てた可愛いジャスティの身を政治的に護る後ろ盾を失うことになるのだからな!

彼が失脚するとジャスティが政治的に丸裸になると。なかなか上手に女帝の弱みを握っていますね。

そしてそんな自分の立場をいいことに実に女帝を舐めきっています。今回のような計画に踏み切るだけのことはある。

アイヤールは確かに帝国で皇帝が治める国だけど、決して独裁というわけでもないんですよね。

各領の自治性は強くて皇帝とはいえ簡単には口出しできないし、まして皇族の後ろ盾につく勢力は無視できませんしね。


しかしそんな彼の政治的思惑もこの男のぞんざいさの前には霞む。

ジーク「安心しろライルバート。お前がいなくなったら、ジャスティの面倒は俺が見てやる

一同「……っ!」

ジーク「いやだって、何かジャスティをお父さん的に思ってるんだとしたら、
     どれくらい怒るかなって思ってさ。……ジャスティ、もらっていいか?

ジークとしては冗談のつもり。初めての冗談ですよ。ということは今までの嫁発言は全部本気だったのかと。


するとどうでしょう。彼は政治家である前に父親だったらしく、激昂します。

ライルバート「馬鹿なことを言うなー!貴様のようなどこの馬の骨かもわからん男に、
        うちの愛らしいじゃじゃ馬が乗りこなせるはずがないわーっ!」

イスミー「自分で娘をじゃじゃ馬って言いやしたよ」

メッシュ「……だめな大人のようですな」

ライルバート「箸でパンツをつまんで除去されようが、可愛いものは可愛いわ!

親馬鹿ですね、ていうか馬鹿親ですね。養女とはいえここまで愛しているのは養父としては立派というか(苦笑)


ジーク「あ、預かったペンダント。ほれ」

ライルバート「ばかなー!あれほど変な男に引っかかるなと!
        あれは気が強すぎて弱い駄目なのを見ると放っておけない、
        ダメンズウォーカー的素質があるから、わしはずっと心配しておったんじゃ!
        こんなことなら騎士働きなどさせるのではなかった!」

ジーク「そうだな。そうだな。おっさんはジャスティが可愛くて可愛くて、何とかして女帝にしたいんだよな
     もちろん自分の野望もあるけど、でもジャスティが玉座につけたら嬉しいよな。
     そのためならミスティン姫を誘拐させても、セラフィナ女帝を引き摺り下ろしても、全然問題ないよな」

本人の真意を代弁するかのような誘導尋問ですね。いつの間にこんな腹芸を見に付けたのやら。執事の影響か。


すると駄目親父は期待通りに吐いてくれます。

ライルバート「その通りだ!

メッシュ「吐きましたな」

ジーク「自白終了」

ライルバート「……あれ?」

ニゲラ「あはははは、駄目ですぅ、無駄にこの人の事が好きになりそうですー」

エア「ニゲラ、あんたもダメンズの素質ありすぎるから気をつけたほうがいいわ」

ということで彼は縛らせてもらいます。女帝の前でどう弁解するのやら。


イスミーが"ディスガイズセット"でわざわざ娘の姿に変身するサービスつきです。

ジャスティ(イスミー)「お父様、観念してください」

ライルバート「バカな!あの子がお父様などと静々しく呼ぶはずがない!

一体普段はどんな親子関係を送っているのやら。何となく男所帯で育てられた印象がありますね。

姉妹の仲でも武闘派だし、セラフィナと傾向は似ている筈ですがお転婆なところは本人の資質なのか。


まぁこれで2人とも捕まえました。まずライルバートに魔動機械のありかを聞きますが彼も詳しくはない。

実は彼は誘拐こそ持ちかけられたものの、イゴール達が蛮族と組んでいることまでは知らなかったのです。

国内の権力闘争と蛮族との関係は全くの別問題であり、既に1階にいたトロールは切り捨てていたりします。

さっき魔術師と言い争いをしていたのはそれが理由です。現在その遺跡は息子に任せて彼は単身装置を壊しにきました。

そうすればミスティン姫を元に戻せる魔動機械は自分の領にあるものだけ。有利に事が運べると考えていたのですが。


それならば魔術師が知っているだろうと聞き出してみると、どうやら地下にあるらしい。

魔術師「……あれは、もうじき運び出される。もう間に合うまいよ」

何か細工があるのだろうとぞんざいズはダッシュで1階まで降りて、そこから地下へ向かおうとしました。

ところが1階のバルコニーでまたも床がパカっと2つに割れたのです。丁度さっきと同じ位置に穴が空きました。

今度の目標値は18と難しかったのでジーク、エア、ニゲラが落下。他3名の人外組だけが踏み止まれました。

今度の落下距離は10mなので30点ですね。ジークは受身をとって無傷。ニゲラはちょっと怪我をしました。


落ちたところは広い空間になっていて、そこには気になっていたドラゴンフォートレスの下半身がありました。

翼、足×2の三部位ですね。本来ならこれでは動きませんが、例の<呼応石>もどきで動くようになっています。

位置的には上半身とはフロアを2つ挟んで上下に配置されていたので、場合によっては見事な合体が見れましたね。

上半身が地下まで落下してパイルダーオン!ちょっと見てみたかったけど、その時はもっと危なかったですね。


これに魔動機械を積んでどこかに飛ばすつもりなのです。どうやら《飛翔U》の効果はあるらしい。

今回はこのようにパーティが上下に別れた状態で戦闘開始です。フォートレスの離陸を阻止するのです。

《先制判定》はメッシュが指輪を割ってもぎ取りましたが、敵はフォートレスだけではありませんでした。

地下にはよく見るときらきらとしたガス状のものが充満していて、プリズムストーカーだと見抜きます。


プリズムストーカーは13レベルの魔法生物です。虹色にきらめくガス状の身体を持ち、両手は触手です。

普段はガス状の《姿なき暗殺者》であり、《危険感知判定》で達成値21を出さないと不意打ちされます。

《ガスの身体》は炎属性と風属性以外からはクリティカルを受けず、《2回行動》で主動作を2回行えます。

特殊能力の《虹色の閃光》を自らを中心に半径30mに放ち、2D点の魔法ダメージを与えてきます。

この光線の属性は炎、水・氷、風、土、雷、毒のいずれかになり、これは受けたキャラ毎にランダムに決められます。

しかもその属性が以降そのキャラに《弱点付与》され、その属性からは3点余分にダメージを受けます(しかも累積)。

それとは別に同様の効果範囲とダメージの《単色の閃光》を放つこともできて、こちらは属性を任意に決められます。


つまり《虹色の閃光》を放ち続けてどんどん弱点を付与していき、最も効果がありそうな属性を《単色の閃光》で放つわけですね。

弱点は1回受けると3点、2回で6点、3回で9点とどんどん酷くなっていくという、実に嫌らしい敵です。

もしフォートレスの上半身と一緒に戦うことになっていたら《応変噴射》の追い討ちもあって恐ろしいことになっていました。


今回の戦闘ではフォートレスの臨時コア部位は<呼応石>もどきがついている翼とし、1階にいる人達には《飛翔U》が入らない。

その代わりに1階の人達はストーカーに近接攻撃ができないので、上手く役割を分担することができますね。


1ラウンド目

イスミーはメッシュにクリポン武器を渡し、「シフェナ」の《グレネードランチャー》をフォートレスに発射して10点素通し。

ニゲラはいつもの練技3点セットを使い、パラミスをフォートレスの翼にかけて《飛翔U》をものともせず命中させ11点程抜ける。

メッシュは高い達成値で《ファストアクション》こみで4回殴りますが、半分避けられ30点ほどの素通しに終わります。

とはいえフォートレスの翼のHPは74点。<剣のかけら>が入っていたとしてもなかなかいいペースで削れていますね。


ジークはまだストーカーが姿を見せていないので《マルチアクション》でフォートレスの翼に攻撃します。

《マルチアクション》は<イスカイアの魔動鎧>の効果で命中力を上げるためだけに使ったのですが避けられます。

エアは全員に"ウォーターシェル"です。魔法ダメージを5点防ぐのはストーカーの閃光対策ですね。

実は《弱点付与》は《虹色の閃光》によって1点以上の適用ダメージを受けた時のみつけられるものなのです。

《虹色の閃光》のダメージは2D点ですから出目5以下は無効。抵抗すれば半減だし、必ずしも《弱点付与》は起きないのです。


ムーテスの攻撃は空振りに終わり、いよいよストーカーが姿を現し、《虹色の閃光》2連発です。

上手くノーダメージで済んだ場合もあったのですが概ねダメージを受け、以下のように弱点を受けました。

ジーク:風、毒

エア:水・氷

メッシュ:水・氷、土

ムーテス:炎、風

ニゲラ:土

イスミー:炎、風

ニゲラとエアは2回目は上手く逃れたのですが、それでも結構色々付けられちゃいましたね。


ムーテス「僕は炎属性に弱いのかあ……色々まずいっすね」

イスミー「おいらも炎属性に弱くなりやした、おそろいっす」

ムーテス「おそろいはまずいんだよ!「単色の閃光」で狙われるから!」

それどころか風属性も被ってるし。それはジークも同じ。今のところは風属性が一番おいしいかな。


フォートレスは足がムーテスとニゲラに爪で攻撃し、翼の副砲はイスミーを撃ちます。

実は足って普通に近接攻撃することしかできないんですよね。副砲が一門しかないから上半身程の脅威はない。


2ラウンド目

先にフォートレスを落としてしまおうと、ニゲラはパラミスSランクを入れて翼を攻撃します。

エアは"ファナティシズム"を5人にかけます。2レベルの操霊魔法で命中力+2、回避力−2です。

フォートレスには回避が必要ですが、閃光ばかり撃ってくるストーカー対策に当てやすくしています。

それからムーテスとメッシュとイスミーの攻撃が重なり、翼はあと少しで落ちそうになりました。


ジークはイスミーに"アドバンストヒーリング"をしつつ、《マルチアクション》でフォートレスの翼に攻撃。

ジーク「(ころころ)くそ、7か……22点ダメージ!」

GM「……あ。1点、残った」

ジーク「運命変転!俺は11レベルだから7でも+2される。ダメージ25点まで伸びるぜ!」

これでフォートレス下半身は活動を停止。魔動機械の運び出しは阻止できましたね。


しかし戦闘は続きます。ストーカーの《虹色の閃光》で以下のように弱点が更新。

ジーク:風、毒

エア:水・氷×2

メッシュ:水・氷、土、毒

ムーテス:炎、風、毒

ニゲラ:土

イスミー:炎、風×2

なんだかエアがエルフなのに水・氷に弱くなっていきますね。あと風属性がやっぱり多い。

そこでストーカーは2回目の行動では《単色の閃光》を風属性で発射、イスミーが特にキツイようです。


3ラウンド目

エアは短期決戦を望んで"バトルソング"で命中力とダメージ+2です。かなり当てやすくなっていますね。

メッシュは地下に降りて魔法ダメージ2連発を叩き込み、ニゲラはストーカーの胴体を絡めます。

胴体に絡んだ場合は生命抵抗と精神抵抗を除き、あらゆる行為判定に−1のペナルティが入ります。

ストーカーの閃光は24(17)でしたが23(16)になって抵抗しやすくなりましたね。


イスミーは"エフェクト・バレット"で炎属性の弾丸を撃ち込みます。クリティカルするし、弱点でもある。

これは3レベルの魔動機術で威力は20と"ソリッド・バレット"と変わりませんが、様々な属性を付与できます。

ムーテス「<デクスタリティ・ポーション>飲むよ、ああ、これそういえばフィルゲンにもらったんだっけ。彼元気かな」

エア「つまらない回想に浸らない!」

この攻撃でストーカーのHPは<剣のかけら>のドーピング分に突入しました。

もし13個入っているなら65点とか増えてますね。単部位だとかけらが集中して分厚くなりますね。


お待ちかね《虹色の閃光》2連発です。今回の弱点更新はこんな感じ。

ジーク:風、毒

エア:水・氷×2

メッシュ:水・氷、風、土、毒

ムーテス:炎、風、土×2、毒

ニゲラ:土×2、毒

イスミー:炎×2、水・氷、風×2

風もいいけど土もキツくなってきましたね。風ほどバラけてないけどムーテスとニゲラは重複してるし。


4ラウンド目

ニゲラはパラミスをAランクで入れて攻撃です。

ニゲラ「実をいうと、さっきSランクのカードを使い果たしましたぁ

メッシュ「ついに!こないだ、買いだめてませんでしたか?」

ニゲラ「はい七枚。でも、命の値段です。女帝様に報酬をおねだりしますー!」

ジーク「一万四千ガメルか。赤字だなー。俺も、それは補填する、やっちまえ!」

それから怒涛のフルボッコを食らい、トドメはタゲサと"キャッツアイ"まで使ったイスミーの"バーストショット"でした。


フォートレスの内部には大き目の魔動機械がつまれていました。<フローティングスフィア>に乗せられています。

これは本来<マギスフィア(中)/(大)>を浮遊させたもので、お値段は2210/3210ガメルです。

通常のお値段が500/1000なので1710/2210ガメルをかけて浮遊するよう加工している感じですね。

馬か何かで牽引できるようになっていて、火葬場のように棺と筒が合わさったような形をしています。




無事に魔動機械を確保し、魔術師とライルバート卿を捕縛したぞんざいズは女帝に応援を要請しました。

すぐに飛行船がやってきて彼らを回収し、ミスティン姫を元に戻す作業に入りました。

その間に魔術師を尋問したところ、魔動機械や<呼応石>もどきの第一発見者はアレンとシフェナだと証言します。

発見場所は当然例のパジャリガーが封印した遺跡。最初は<パジャリガー・スラッシュ>が目当てでした。

ところが思わぬ発見にアンデッドの軍団を作る手段を得て、幽霊船まで入手してしまったというわけです。


そして翌日、ミスティン姫は無事に目を覚ましました。ジークはダッシュで彼女の許へ向かいます。

ジーク「扉の前でちょっともじもじして身なりを整えたりしてから入る」

ミスティン「……ジークハルト、迷惑をかけてしまったようですね。メシュオーンも……わたくしの不注意で。ごめんなさい」

ジーク「……う。ミスティン姫は、えらいんだから友達は選べよな(そっぽ)」

ニゲラ「もしかして、ジークさんの血筋って年上兄弟にはツンデレという複雑な性癖があるんでしょうかー」

そういえばベル君にちょっと似ていますね。素直に姉さんと呼べないあたりはもっと酷いかも。

今までずっと長男でしたからね。年上の兄弟に慣れていないというのもあるのかもしれません。


しかし家族の時間は長くは続きません。ミスティン姫はセラフィナと他のぞんざいズを呼び、予知夢の話をします。

エア「ちょっと聞くのが怖いような……」

ムーテス「でもそれで災難を避けられないのは嫌だ。僕は聞くっす」

イスミー「おいらもー」

ミスティン「――…滅びを、見ました

これが後に起きる大きな事件へと繋がっていくのです。





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