「新米女神の勇者たち(1)」著:秋田みやび/グループSNE 出版社:富士見書房

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★はじめに

このリプレイは「ソードワールド2.0(以下SW2.0)」におけるリプレイ第一弾となります。

GMは初代「ソードワールドRPG(以下SW)」"ヘッポコーズ"で御馴染みの秋田みやび先生です。

"ヘッポコーズ"は10巻続いた人気シリーズでしたが、この「新米女神の勇者たち」はなんと全11巻の大長編です!

個性豊かなPCとあの手この手で魅せてくれるGMによるセッションの様子は、一緒に遊んでいるかのように面白い


そもそもSWといえば1989年に最初のルールブックが発売されて以来、20年以上もの間遊ばれているTRPGです。

それが20年目の2008年に大リニューアル。版数を2.0に繰り上げ、様々な変更が行われました。

大きな変化の一つとして背景世界を「フォーセリア」から「ラクシア」という新しい世界に移した事が挙げられます。

これによって大幅にルールが改定され、今までには無かった技能や魔法、戦闘特技や練技や賦術といった新要素が増えました。

「色々できるようになったSW」といったところでしょうか。その「ルールブックT」と同時発売したのが本作品です。


SW2.0の変更点として、SWよりPCの個性が大きく現れるようになった点が挙げられます。

多様な技能は勿論のこと、成長する毎に増えていく能力値、奇数レベルで習得できる戦闘特技「成長」が毎回楽しい

そして頭や耳等今までには無かった部位に装備できる装飾品の登場等例を挙げれば切りがなく、その面白さはリプレイにも現れています。


そこで本レビューではリプレイ本編では省略されがちな各PCのキャラクターシートもチェックしていくつもりです。

毎回どの能力値が成長しているのか、どんな技能が増えたのか。そういった成長の楽しさも味わっていきましょう。

それにこのSW2.0はSWより基準値の変動が激しいゲームなので、細かくチェックしないとゲーム的アプローチが難しい。

中堅所のPCなのに達成値にして20とかが平気で出てきた時は面食らったものですが、それもこのゲームの楽しさの一部です。


第一話 ご飯を美味しくする方法

★キャラメイクだ!

今回のキャラクターシート

細かい装備品はまだ不明な所が多くなっています。本編で特定できる記述を発見し次第更新していきます。

ジークの能力値に空欄が多いのは冒険者生まれは2Dで能力値を決定するので値が確定しない為です。

現時点ではシートの大半が空欄で寂しいですが、今後の成長を考えるとこれだけでは足りなくなる恐れがあります。


それではこれから付き合っていくPC達を紹介していきましょう。

なおSW2.0では「経歴表」によって簡単な生い立ちを設定できます。キャラメイクの糸口になりますね。

「経歴表」でサイコロを触れるのは最大3回ですが、任意に取捨選択可能です。今回は全て採用する人が多いですね。


ジーク(ジークハルト・デーニッツ)16歳

経歴:「裕福な家に生まれた」「予知夢を見たことがある」「犯罪歴がある」

"集いの国"リオスの名家デーニッツ家の長男として生まれるが、従者のメッシュに唆されて旅に出た人間の青年。

その性格は「ぞんざい」の一言。主役らしく女性キャラにフラグを立てまくるが、速攻で折る事が多い。

パーティでは前衛として活躍する妖精戦士。剣だけでなく妖精魔法や《魔力撃》を用いる事もできる。


ソラ(ソーラリィム)?歳

経歴:「溺れたことがある」「大失恋をしたことがある」

エルフの両親から生まれたナイトメアの少女(外見は)。魔術師である母親譲りの真語魔法の使い手。エアは実の姉である。

普段から忌み子の自分を気にかけてくれる姉に感謝しているが、それを態度に出さずニート生活を楽しむ自由人

装飾品や変わった品を集めるのが好きで、パーティ内でもイラストのマイナーチェンジが多い事で知られている。

魔術師にして賢者なのでパーティでは後衛として活躍し、強力な攻撃魔法や多彩な知識は随所で活躍する。


エア(エアリサーム)50歳

経歴:「家族に異種族がいる」「ガキ大将だった」「ガキ大将だった」

父親にエルフの神官を持つ女性。小神ルーフェリアを信仰している。その信心は強過ぎて変態の域に達している

神殿勤めの傍らナイトメアの妹に迷惑なほどの愛情を注いでいるが、言う事を聞かない妹にやきもきする事が多い苦労人。

このぞんざいなパーティにおいては比較的常識人である、それ故に他の連中に振り回される事も多い。

妹と同じくパーティでは後衛として活躍する回復の要である。エルフらしからぬ豊富な生命力と精神力を持つムチムチエルフ


ちなみに「ガキ大将だった」は本当に2回振ってしまった経歴のようです。

エア「くっ、あたしの上品なエルフのイメージが!」

ジーク「ダブルガキ大将。ということは、キング・オブ・ガキ大将だったんだろうなあ(笑)」

エア「せめて、そこは女王様とお呼び(コール・ミー・クイーン)

ソラ「きっと、苛められるあたしのことを、守ってくれてたの。きっとそう」

こんなしおらしいソラは本編では殆どお目にかかれません。初期だからこその貴重なお姉ちゃん孝行。


メッシュ(メシュオーン)7歳

経歴:「拾われた」「挫折した」「まだ、恋をしたことがない」

ジークの従者であり、彼を善悪問わずに覇王にするべく何かと焚きつける二十代の男性型ルーンフォーク。

起動した時からずっと主人に仕え続けている忠臣だが、出目の悪さが目立つポンコツ執事

スカウト兼グラップラーとしてジークと並ぶ前衛の要だが、その判定回数の多さが祟って1ゾロ回数はパーティ最多


ここでジークとメッシュの主従関係が誕生したのはその経歴を絡めた上でのアドリブでした。

メッシュ「……くくく。わたくしが挫折したのは、自分を起動させてくださりやがった、
      まだ十歳にもならぬご主人のしょうもなさによってでしょう、ジーク様

ジーク「へ?」

メッシュ「だから、旅に出て何とか立派な勇者か英雄にでも育てなければ、と」

ジーク「……俺?」

メッシュ(無言で頷いている)

ジーク「……ま、いっか。俺、裕福な家みたいだし。きっと、親父のプレゼントだったんだよ」

その時の彼は「異議あり!」とか言って速攻で箱に戻っていったとか。ルーンフォークにも人権はありますけどね(笑)


ジーク「では、お前の主人として、最初の命令をする、メッシュ」

メッシュ「何なりと」

ジーク「メイドになれ(きっぱり)」

一同「おいっ!」

ジーク「だって執事より、メイドのほうがいいじゃん!」←メイド・イン・ヘブン

メッシュ「……わかりました。様々な機能を、切り落としてまいります……(決死の表情)」

一同「おおいっ!!」

どうかそのままのあなたでいてください。


以上が今回から活躍するPC達です。いやはや、今回もにぎやかな旅になりそうですね。

"ヘッポコーズ"の時より更に人数は減って4人ですが、今後新メンバーが増えない訳ではないので大丈夫。


なおSW2.0の種族や技能等の詳細はこの場で御紹介できる量ではないのでルールブックを参照してください。

以降は必要な時には解説を挟みますが、基本的な設定は御存知のものである事を前提として進行していきます。

一応以前日記(こことかここ)で簡単な説明をした事がありますが、ルールブック発売前なので参考程度に留めてください。


★この国の名は……

今回のキャンペーンはテラスティア大陸の東に位置するフェイダン地方の国家"女神の涙"ルーフェリアから始まります。


かつてこの国はイズマル王国と呼ばれ、大きな湖の周辺に栄えた国でした。しかし「大破局」時に蛮族軍によって滅亡の危機を迎えます。

その時生贄に捧げられた少女ルーフェリアの身を挺して人々を守ろうとする心に大神である"騎士神"ザイアが応えました。

彼女はザイアによって神の階梯を昇り、湖を守護する小神として300年もの間この国を守り続けてきたのです。

それ以来この国は名前を「ルーフェリア」と改め、ルーフェリア信仰の総本山である宗教国家として存続してきたのです。


そういう経緯を持つ国なので、実は50年前まで周辺諸国にその存在を知られずにいた引き篭もり国家でもある。

何しろ蛮族の大群に囲まれていましたからね。滅亡したものと思っていたところに、奇跡的に存続していたわけです。

こうして開かれたルーフェリアは最近他国とも交流を持つようになり、ルーフェリア信仰も他国に広がりつつあります。

しかしそうして変化が訪れれば様々な軋轢を生むのも必然であり、そこに冒険者の需要も生まれるという訳ですね。


それ以外の特徴としては、湖を中心としているだけに、水に親しいエルフが国民の三割を占める点が挙げられます。

神殿もルーフェリアの本体も湖にありますし、水路も盛ん。水嫌いのソラとは相性が悪い国柄かもしれません。

ちなみにエアとその父親はその神殿に勤めていて、母親は"石塔の学舎"カイン・ガラという学研都市で別居中。

更に国民の九割が何らかの形でルーフェリアに祈っているらしく、あらゆる意味で彼女ありきの国家です。


その他詳しい事は「SW2.0ツアー ルーフェリア」を参照してください。


実はエアが信仰する神様を決めたのはこの時でした。もっと強力な大神や古代神もいるけど面白そうなので。

GM「えーと、2レベル用の特殊神聖呪文は、水を綺麗にする"ピュリフィケーション"です」

ジーク「湖の神様っぽい」

SWだと精霊魔法の一種でしたが、SW2.0ではこのようにルーフェリアの特殊神聖魔法になっています。

ただしSWだと対象が10リットルの水だったのに対し、こちらでは100リットルまで浄水可能で高性能。




さてこの設定だとエアとソラは実家があるので宿代に困りませんが、外国から旅してきた主従はそうはいきません。

ジーク「所持金がないから早く悪さをして、金を稼がないと日干しになる」

GM「悪党だ」

ジーク「「犯罪歴ある」し」

メッシュ「そのとおりですな、ジーク様」

GM「止めたりしないんだ」

メッシュ「悪なら悪を突っ走る。善なら善を突っ走る。極端であることが、大物への最短経路かと」

今までもそうして煽ってきたと。ちょっと某妄想戦士を思い出す電波ですね。壊れかけどころか壊れたルンフォ(笑)


ジーク「親父の形見だから、多少アホでも許してるんだ」

GM「お父さん死んじゃったんですね」

ジーク「いや、そう言うと、同情してもらえるから」

エア「こら!」

ジーク「……と、嘘に見せかけて、本当に死んでる

これでギャップ萌えを狙っているらしい。ならもっと可愛げのあるギャップにしないと駄目ですね。


一方ちゃんと家のある姉妹の方はというと、出勤するお姉ちゃんを見送ってから遊びに繰り出す妹の姿がありました。

エア「いい?ソラ、ちゃんといい子にお留守番してるのよ。
    誰かが来ても開けちゃダメよ。いいわね。宅急便の予定はないからね。がちゃ(施錠)」

ソラ「はーい、お姉ちゃん。……さ、どこに遊びにいこう(ケロリ)」

お姉ちゃんの方は忌み子であるナイトメアの妹を守っているつもりだけど、本人はあまり気にしてない訳ですね。

ナイトメアはSWのハーフエルフを過激にしたような種族です。人間より能力は優秀だけど、差別を受ける事も多いという点が。

その生い立ち故にグレて非行に走ったり、蛮族側についたりする人もいるらしいけど、彼女にその心配は無用ですね。


ソラ「あ、感謝してるのよ?……時々、鬱陶しいって思うだけ

エア「がーん!」

ジーク「ずばーっと切り込んできたな」

エア「心を袈裟懸けに切られてるわ(しくしく)」

ソラ「一応、賭博に勝ったときだけ、お姉ちゃんにケーキとかペンダントを買ってきたりする心遣いはしてるの」

エア「真面目に働いて買ってちょうだい、ソラ!」

実はこの国、神様を信仰する人にはナイトメアでも寛容な国柄です。ナイトメアだってプリースト技能取れるし。

あとここでナイトメアの持つ穢れを取り除ける神聖魔法があるとありますが、"イレイス・ブランデッド"の事なら無理です。

13レベルのこの神聖魔法でもナイトメアが生来持つ穢れまでは除去できません。しかも一生に一度しか効果が無いし。

もし15レベルの"コール・ゴッド"の事を言ってるなら可能かも。それにそれ以外の方法も世界の何処かにあるかもしれないし。


ソラ「うん。わたしも一応ルーフェリア様には、お祈りはしてる。
    「ルーフェリア様。ルーフェリア様。もうちょっと、カードの読みがあたりますように」」

エア「カードって何、ソラ!」

ソラ「あーあ。どうしようかな、このまま引きこもりの生活もいいんだけど、そろそろお姉ちゃんうるさいの」

かといって普通の就職には興味がないらしく、冒険者に憧れていたりします。

一般社会では忌み嫌われる事の多いナイトメアですが、その能力の優秀さから冒険者の世界では受け入れられ易いし。


そうして街を歩く彼女は見慣れないルーンフォークを発見し、興味本位でついていきます。もちろん我等がポンコツ執事です。

ソラ「てこてこ、ついてく」

ジーク「……もしかして、メッシュに触ってみたい?」

ソラ(こくこく頷く)

ジーク「いいよ。好きなだけ触っても」

ソラ「わーい。ぺたぺた。お兄さん、太っ腹!

メッシュ「……ジーク様。私、微妙に、屈辱なのですが」

本当は彼女の方が年上の筈だけど、以降もソラはジークを「お兄さん」と呼びます。見た目は年下だから違和感はない。


ジーク「さて、存分に触ったところで、お触り賃だけど……」

ソラ「え?お金?持ってない……」

ジーク「は?金ないってのに、ウチのモンに触ったっての?」

性別を覗けばぼったくり風俗みたいですね。


ここで重要なのはソラは外見ではナイトメアだと判別できないよう、帽子で角を隠している点です。

ソラ「わかった、腕相撲しよ?それで勝ったら、倍額払う」

ジーク「よし、覚悟しろよ!」←普通の女の子だと思ってる

ソラ「勝負!あたし、筋力20

ジーク「負けた(がく)」←筋力17

メッシュ「ジーク様!いきなり挫折なされてどうするのですか!」

ソラ「あいあむうぃなー(万歳)」

エア「(乱入)ああっ、この子ったら、また賭け腕相撲とかして!ごめんなさいごめんなさい、ご迷惑をー!

ソラ「お姉ちゃん、神殿、お勤めに行ったんじゃなかった?」

エア「お弁当を忘れたから取りにきたのよっ!

いや、先に吹っかけたのはジークの方だから自業自得と言いますか。

あとここでソラが筋力20とか言っていますが、彼女の筋力は魔術師生まれのナイトメア最高の19です。

後のデータや言動を見る限り"強力の指輪"で+1してるわけでもないようなので誤記と思われます。


メッシュ「とりあえず、腕立て伏せ千回ぐらいから始めましょう、ジーク様。まったく、嘆かわしい」

ジーク「む。それならお前がやってみろ」

メッシュ「承知いたしました。私の筋力は18です。
      腕相撲の勝負なら『冒険者技能レベル+筋力ボーナス』で判定でしょうか?
      ……って、私、冒険者レベル1でした!」

ソラ「あたし、2、あるよ?」

メッシュ「……負けました(がく)」

彼は主人の役に立とうと技能の摘み食いをしましたから、1人だけ1レベルなんですよね(笑)


そして気がついてみればなし崩しに全員知り合いましたね。

ソラ「お兄さん、冒険者?外国から来たの?」

ジーク「そうだよ」

メッシュ「ジーク様は、世界をお救いになられる方です。私が、そう、お育ていたしました」

ジーク「やめろ!単なる危ない人じゃないか!」

エア「あらあら、まあ、そうなんですか。それでは是非頑張ってくださいね。ほら、ソラ、帰るわよ(棒)」

比較的常識人のお姉ちゃんにはドン引きされました。ますます妄想戦士っぽいじゃないか。


ソラ「……折角、お友達、なれるかと思ったのに。変な人だった」

エア「あんな危なげな人たちと、お友達なんかになっちゃいけません!」

メッシュ「はっはっは、全否定されましたよ、ジーク様」

ジーク「親父……クーリングオフという制度は俺たちの国にはなかったのか」

ドラえ○んだって問題はあっても返品されなかったんです。このポンコツ執事だってその内役に立ちますよ。




導入が延々続きましたが、このままでは話が進まないのでGMは早速シナリオの導入に入ります。

街中の一行の前に1匹のコボルドが通りかかります。真っ白ふわふわな毛並みのスピッツっぽいコボルドです。


フォーセリアでは醜悪な妖魔に過ぎなかったコボルドですが、このラクシアではマスコット的な存在として愛されています。

第二の剣に連なる蛮族の出身ではあるものの、蛮族社会でも最下位の奴隷種族であり、人族社会に逃げてくる者も非常に多い。

その手先の器用さと真面目な性格から労働者として重宝されていて、料理人としての才能があることでも知られています。

具体的には種族特徴〔小さな匠〕により、非戦闘で用いる器用度判定に常に+2の修正が入ります。


彼の名はエンクといいます。路上漫才を繰り広げる一行が邪魔で通れずに困っていました。

エンク「え、あの、ボク……お使いで市場に行きたいので……通ってもいいかなーと」

ジーク「ビクビクしてないで、通るなら早く言えよな。そんなだから使い捨てにされるんだ」

エンク「あ、ご心配ありがとうございます。でも、ボク……一応、お店で雇ってもらって、よくしてもらってるんで」

ジーク「あ、働いてるんだ。がんばれよ」

エア「何、自分と違ってウチの妹がニートだっていうの!?その通りだけど、言っちゃだめ!

ソラ「言ってないし」

昔なら「遊び人」とか「放蕩娘」と言われたんでしょうが、今では「ニート」の一言で切り捨てられますからね(苦笑)


更に詳しく話を聞いてみると、どうやら彼はこの街の冒険者の店で働いているらしい。

ジーク「すいません。道教えてくれ」

ソラ「……低姿勢なのか、高圧的なのか、わかんない」

エア「わかりました、コボルドさん。あなたはわたしの妹には、
    もう冒険者になるしか人生の選択は残されていないとまで言うのですね」

エンク「言ってませんー!(涙目)」

これじゃあソラがウザがるのも仕方ないかもしれない。さっきからナチュラルに妹の心のHPを削り続けています。


ここで一行はエンク君から「水晶の欠片亭」という店の位置を教えてもらいます。彼はそこの料理人です。

エア「わかりました。エンク、あなたは「自分の飯を食いたいなら、せめて冒険者にでもなりやがれ」と言うのですね。
    そこまで言うのなら仕方がありません、ソラを冒険者にいたしましょう」

エンク「言ってませんー!(毛が逆立っている)」

この世界の冒険者の店もフォーセリアのそれと同じようなものです。冒険者への依頼の斡旋等のサポートをしています。

これは金欠の主従や冒険者志願の妹には有り難い話なので、地図を貰って「水晶の欠片亭」へ向かいました。


★はじめまして《水晶の欠片亭》

「水晶の欠片亭」は国が開かれてから創業したせいか比較的新しい冒険者の店です。

店の主人は"味覚の冒険者"リッタ・ハルモニア。326歳のエルフの女性で、陽気で気前のいい女将です。

エルフとしては中年ですが見た目は若々しく、キレ者と言われますが味覚が残念なところが玉に瑕です。

その為料理上手なエンク君は店にも客にも大変重宝されていて、彼がいなければ店は既に潰れているとまで言われる程です。


余談ですが、この世界のエルフの寿命は500年程です。1000年を生きるフォーセリアのエルフよりは短命です。

しかし人間からすれば長命なのは変わりません。現に彼女は「大破局」をその目で見ていて、生前のルーフェリアも知ってるらしい。


ではどれぐらい彼女の味覚が残念なのかというと、エンク君がいないと一般客も料理を注文できないぐらいでした。

ジーク達が店に来た時は店内にリッタの姿しかなく、お客さん達は店の外から様子を伺っていました。

ジーク「ちーす。遠慮なく入っていくぞ。ここで、飯が食えるって聞いたんだけど」

リッタ「あら、新顔だね、いらっしゃい。飯の種ももちろんあるよ」

ジーク「とりあえず、今は本物の飯で」←オーダー入りました

客「勇者だ……(ざわ)」「勇者が来た……(ざわざわ)」

ジーク「まいったな……こんなところにまで、メッシュの大言壮語が届いているぞ」

ここで店の評判を知っているソラは彼の服の裾を掴んで止めようとしますが、ポンコツ執事は聞きやしない。


メッシュ「勇者!キュピーン!ジーク様!試されております!!」

リッタ「アタシが作っていいなら、作るけどぉ(うずうず)」

ジーク「もちろん。俺はあなたの料理が食べたくてきました!

ソラ「言い切った、かっこいい。あたし、巻き込まれないように、少し離れて、拍手」

そうして出てきたのは「鮎の照り焼き、ホイップクリーム添え、いちご風味」みたいな料理。素材の風味台無しです。

料理自体は決して下手な訳ではないのですが、とにかく味覚が残念なので一般受けはまずしそうにない。雄山だったら憤死もの

ちなみに普通の料理は10ガメルですが、これは賄い扱いなので2ガメルとお得。差額が得なのかは考え方次第。


ジーク「あ、それなら安くお腹が張ったからいいや」

ソラ「わ。すごく前向き」

エア「もしかして、味覚的に可哀想な人?」

メッシュ「いいえ。かっこいい人です

リッタ「気に入ったよ、あんたたち(にこにこ)」

こうしてジークは最初の冒険を成功させたのです、味覚的に。まぁ生命抵抗に失敗してぶっ倒れましたが

しかも気づいてみればパーティ扱い。彼だけが冒険したのに複数形で気に入られてるのは何か理不尽ですが気にしない。


リッタ「いい依頼があったら斡旋してあげるよ。たっぷり冒険していきな」

エア「斡旋!?では、この子に仕事を!(ソラを指差して)」

ソラ「へ?」

エア「世間の役に立つ、ゴミ拾いとかでもいいですから!」

すっかり脱ニートに燃える家族の様相ですが、冒険者の店の仕事はそういう一般的なお仕事ではありません。

怪物との戦いや遺跡の探索も想定される危険なものです。特にこの世界には蛮族という明確な敵対種族がいますしね。


まぁ内容はどうであれ困っている人を救うという点では社会的にはとても素晴らしい仕事ではありますが。

それ故にSW2.0の冒険者には「名誉点」という概念もあり、その功績を数値的に計る指標があるぐらいです。

ソラ「そういうの請け負うのは、いい人たちだよ、お姉ちゃん」

ジーク「本当にいいやつは、頼まれなくてもやるけどな

エア「……あ。何か、ちょっとショックを受けた。神官的に」

ジーク「もっとも、それで俺たちが飯を食えるんだから、もっと困れ皆の集

いくら冒険者とはいえ慈善事業ではありません。仕事である以上対価はちゃんと貰うべきです。


さて、そうして女将と仲良くなった一行はそのまま店に留まり、エンク君の帰りを待ちます。

しかしエンク君は帰らない。夜になって夕食時になっても帰らず、他のお客さん達も困惑しています。

中には果敢にも味覚的冒険に挑む者もいますが、先程のジークのように生命抵抗に失敗してぶっ倒れたり。

リッタさんによれば彼の帰りがこんなに遅い事は今までなかったとの事。このままでは店が回りません。


ジーク「わかったよ。俺、ひとっ走りエンクを探しに行ってくるわ」

リッタ「本当?それはありがたいよ。何か、厄介なことになってないか心配になってきてたんだ」

報酬はエンク君の料理でいいと言うのだから、何だかんだで人がいい。


まずは彼が毎回仕入れに行くという市場に向かうといいでしょう。

ソラ「彼女、出来たんじゃない?」

リッタ「万が一そうだったら、働き手が増えていいじゃない」

ソラ「独立するって、言うかも」

リッタ「………う(涙目)」

実際の所コボルドが独立して店を持てる程人族社会に受け入れられているものなのか。


リッタ「ま、まあ……街のチンピラに、絡まれてたりしたら助けてやってよ」

ソラ「昼下がりから、夜中まで絡まれ続けるって、一体どんな状況……」

カツアゲ程度なら多少ボコられてもすぐに解放されますしね。何らかの事件に巻き込まれたと考えるのが普通かな。


★最初は犬探し?

時刻は既に夜なので、市場の店は殆ど閉まっていました。それでも閉店準備をしている店に聞き込みを行います。

メッシュ「何か、いつもと違う、変わった様子などは、ありませんでしたかな?」

魚屋「いやあ……あんまり気づかなかったけどなあ。いつもよりも仕入れが若干多めかなあとも思ったけど」

ソラ「……それ、きっと捨て猫とか捨て犬、拾ってる」←本人も犬だけどね

エア「そうね。ソラ、よく捨て蝙蝠とか捨て蛙を拾って飼ってたわね」←それは普通の野生動物では?

ソラ「どっかに捨てドラゴン、いないかなあ……」

メッシュ「確かに、ジーク様も捨てカブトムシや、捨てカタツムリを拾ってましたな」

ジーク「それは、単なる昆虫採集だ」

後はコッソリ同棲相手がいるとか、実は子供が生まれているとか、捨てドラゴンに食べられているとか、可能性は無限大(笑)


それから一行はエンクが向かったという方向へ追跡を続けます。それは普段彼が行かない通りだとか。

市場を出てからはスカウトであるメッシュが《足跡追跡判定》を行います。基準値はスカウト+知力なので3ですね。

それに対して目標値は12とかなり高めでしたが、奇跡の達成値13を叩き出して成功。この瞬間の彼は有能執事。

ちなみにルーンフォークである彼には〔暗視〕があるので夜道でも難なく追跡可能。修正も入らないでしょう。


ソラ「わくわく。デート現場拝見?」

エア「こら、ソラ。はしたない」

ジーク「足跡の向かっている方向には、何があるのかわかる?」

ソラ「うん、畜産場が

主従「えええっ!(驚愕)」←ないから

辺りは既に下町。ここの住人から蛮族の目撃情報なども聞けて嫌な方向に想像が広がります。


ちなみにその蛮族とは人間よりも一回り大きく、武器を持っていたとか。

ジーク「……駄目だろ、メッシュ」

メッシュ「何を仰るのですか、ジーク様!私が手にしているのはセスタスです!」

ジーク「ちょっとしょっぴかれてこいよ。近隣住民が安心するから」

メッシュ「くくく。その安心は束の間のこと。すぐに恐怖のどん底に突き落としてくれましょう!

また漫才を開始した主従を無視してソラは先に進み、再びスカウト+知力の判定を行います。

彼女には技能がないので平目ですが、目標値は8と低かったので難なく成功。謎の箱を発見します。


ここでソラは仲間達を呼び、検分に入ります。

ジーク「丁度エンクが入りそうだったりするんじゃないか?」

GM「ああ、そうですね。そんなくらいかも」

メッシュ「……では、魚のあらあらぬ、エンクのあらが入ってる可能性が少なからずあるわけですな……」←赤い箱みたいな

想像すると非常にグロいですね。


しかしそれでもジークは意を決して箱を開けました。すると中からは生臭いどころか、美味しそうな匂いが

一同「美味しそう!」

ジーク「……エ、エンク……こんなに、美味しそうに……煮られて

エア「あああっ、美味しいのは赤い犬なのに、エンクさんは白い犬なのに!!(泣き伏す)」

実際は普通の鍋です。辺りには野営の後もあり、ついさっきまで料理をしていたようです。

そこでソラは持っていた槍(以後登場せず)で箱を突きます。すると「あ、イタ」という声が。


何事かと箱を持ち上げてみると、箱の下には穴が掘られ、そこには1匹の子コボルドの姿がありました。

クリーム色の毛並みのコボルドの子供ですね。「きゅーんきゅーん」泣いてて可愛いです。

ソラ「撫でてあげよう。もう、大丈夫」

エア「触っちゃダメよ、ソラ!病気が移る!」

ソラ「えー。だって可愛いのに……」

エア「ダメったらダメ。まったく、こんなに汚いコボルド……(ぎゅーと抱きしめる)
    さっさと連れて帰って、お風呂に入れてブラッシングしてからでないとだめでしょ!

ソラ「お姉ちゃんばっかりずるいー!わたしもー!(じたばた)」

エア「だめっ、あなたは大事に扱えないでしょう、ソラ!すぐに世話をしなくなるんだから」

ソラ「今度こそ、今度こそちゃんと世話するからー(ダダッコ)」

すっかり捨て犬を拾った気になっていますが、いくら可愛くてもそれは未成年略取ですから(苦笑)


この子の名前はキュンといい、どうやらエンクの甥っ子のようです。

ジーク「お前の親父は?」

キュン「……ぱぱ、いない……つれてかれた」

ジーク「連れてかれた?お前の親父の名前は?」

メッシュ「銀牙です

ジーク「それは、全然心配の必要がないだろう!熊すら倒すぞ!」

キュン「ぱぱの名前、クーンです。親方に、つれてかれました。さっき」


話を聞いてみると、彼ら親子はエンクの親戚であり、元は北の方で暮らしていたそうです。

しかし彼らは蛮族のボガードに働き手として狩られ、奴隷のように働かされていたのです。

そのボガードがある日このルーフェリアに侵攻するというものですから脱走を試みたわけです。

親戚であるエンクを頼り、神殿や自警団に保護してもらおうとしました。その見返りに情報をタレ込むと。

ところが脱走に気づかれて追いかけられ、咄嗟にこの子を匿ってエンクとクーンが攫われてしまったのです。


ジーク「二匹逃げたよなあ、頭数揃ったからこれでよし……って感じ?」

明らかにサイズが違いますが、細かい事は気にしないのが蛮族スタイル(笑)


しかし敵の戦力は精々2人。それに大して国境の神殿等はかなり高レベルの人が詰めているのでまず大丈夫でしょう。

エア「ほほほ!そうでしょうとも、我がルーフェリアの神官戦士団は世界一ィィィイイ!!

メッシュ「水泳が

エア「……うん(こくり)。水軍は強いの!

エルフの集団ですからね。〔剣の加護/優しき水〕があれば1時間は水中活動可能、それは強いです。


ちなみにボガードは3レベルの蛮族であり、好戦的で残忍。略奪で生計を立てているどうしようもないやつです。

自分達よりも弱い人間やゴブリンを従えたり、狼等を飼い慣らしたりと、弱い者にはやたら強気ですね。

しかし所詮は3レベルです。それがたった2人でルーフェリアに攻め込むなんて自殺行為もいいところです。

ただし神官戦士団に任せた場合、エンク君とクーンも諸共に滅ぼされる可能性が高い。だって蛮族だし。


ジーク「キュン、親方のいるところを、なるべく詳しく教えろ」

やっぱりいい人ですね。これでボガードのいる位置は分かりました。カチコミをかけられます。


ジーク「で、こいつは冒険者の店に置いていこう」

エア「え、何故!こんなに可愛いのに」

ソラ「だって、巻き込んじゃうかも」

エア「え、でもでも……もしかしたら、大丈夫、いける!

ソラ「何が」

ジーク「ヒョイ(取り上げた)、ポイ(捨てた)」

そしてキュン君はドッグ・空中三回転を決めて着地。冒険者の店に走っていきました。


エア「ふ。ふふふ……わかりました、あんな可愛いモノを悲しませるなんて、許せません
    神の鉄槌を下すべきでしょう!参りましょう、皆さん!生憎とわたしはまだ修行不足で、
    自分の力では為し得ることができませんが、ほらここに三人も鉄槌の代わりが!

ジーク「え、俺たち神の代行者?

メッシュ「ジーク様、いいほうに考えすぎです!」

ソラ「そう。いいように使われてるだけ

メッシュ「それは、悪い方に考えすぎです」

こうして彼らの初陣はボガード退治となりました。最初の敵としては妥当かと。


★コボルド保護者を助け出せ!

キュン君と別れた一行は早速ボガードのいる場所へ向かいます。詳しい場所を割り出すにはレンジャー+知力で判定です。

メッシュ「(ころころ)……きたぁ!1ゾロ経験点50!(嬉しそう)」

ジーク「お前、スカウトなんだろう活躍しろよ!」

今回も1ゾロで経験点は50点貰えます。失敗から学ぶ事もあるという訳です。

しかしこれがメッシュの1ゾロ伝説の始まりでもある。これが将来の彼にどう影響するか今から楽しみです。


場所についてはエアが6ゾロ振って割り出していたので大丈夫です。では現場でどう振舞うのか?

あくまでもエンク君たちを救出する事だけを考えるのか。それともボガード退治までしてしまうのか?

ジーク「わかった。じゃあ、俺がボガードと戦う。お前たちはエンクたちを連れて逃げろ!」

ソラ「ん、わかった(きっぱり)」

エア「あなたの犠牲は無駄にはしないわ(きっぱり)」

メッシュ「あああ……ジーク様……御立派になられて。
      次の御主人様にも、ジーク様の自己犠牲精神は、必ず伝えることにいたします、
      ジーク様語録に付け加えねば(涙ぐむ)」

ジーク「ごめん、置いていくな。昔読んだ本の真似をしただけなんだあぁあ!」

大抵の場合両者はイコールになるのがお約束ですが、敵をスルーして救出のみを行えるシチュエーションもありえます。


ちなみに既に時間は夜です。ボガードの知覚は五感(暗視)なので問題なく活動できます。

種族特徴が〔暗視〕であるメッシュとエアはともかく、ジークとソラには何か光源が欲しいところ。

メッシュ「ご安心くださいジーク様。マギテック魔法で"フラッシュライト"を点けます!」

ジーク「無・駄・づ・か・い!」

メッシュ「全てはジーク様のために」

これでメッシュはMPを2点消費、残り8点。既に1桁か、某法螺吹き魔術師を思い出す貧弱っぷりですね。


ソラ「大丈夫!わたしも"ライト"の呪文、唱えられるから」

エア「あんたもMPの無駄遣いしないのっ!もう、魔法はここぞというときに、
    相手を殺す気でっていつも言ってるでしょう、"ライト"もよ!」

ソラ「え、ライトも殺す気で唱えるの?」

エア「そう、相手の視界を殺す気で

SWから御馴染みの魔法"ライト"は消費MP1点と"フラッシュライト"より若干安く済みます。

その代わり持続時間は3時間で"フラッシュライト"の6時間に及びませんが、単位時間あたりのMPは変わりません。


あとの違いは"フラッシュライト"は<マギスフィア>を起点とするのに対し、"ライト"は射程30mで起点を指定できる点ですか。

勿論空間だけでなく物にかけて光源を持ち運べるので汎用性は高い。効果範囲は半径5mと同じですね。

ただし"フラッシュライト"は懐中電灯よろしく前方しか照らせません。<マギスフィア>を投光機に変える魔法なので。


メッシュ「しかし、私は過去の冒険者の格言を耳にしたことがあります。
      「灯りはふたつ持て」と。出来ればひとつはたいまつがよいと」

魔法の光源とそれ以外の光源の二つがあれば、それらを同時に失う危険性は少ないからですね。某法螺吹き魔術師曰く。

これに対してジークは「石橋を叩いて渡るような真似だ」と難色を示しますが、一つの手法ではありますね。

あとは明りを点けてるとこちらの位置が知られる危険がありますが、そのジークが既に金属鎧を着ているので音で気づかれる。


そして一行はエアの発見した痕跡を辿ってこちらから相手を呼び出します。

エア「エンクくーん!クーンくーん!近くにいますかー!」←クーン君だと尚更犬っぽい

ソラ「息子さん、預かってますよー!」

ジーク「返して欲しければ、俺たちに三千ガメル用意しろー!」←それじゃあ営利誘拐だ

メッシュ「ローンでも構いませんぞー!」

ジーク「何しろ、俺はじつは宿代にも困ってるんだー!現在の所持金を聞いて驚くなー!」

どうやら金属鎧も着ているようだし、初期の所持金を惜しむ事無く使って素寒貧なのでしょう。

SW2.0に限らず戦士系は最初から装備にお金がかかり、装備が安く済む魔法使い系より余裕がないという状態はままある。


そうして呼びかけると国境近くの茂みからボガードが2体姿を見せます。彼らはを握っています。

その鎖の先はエンク君とクーン君に繋がれている。そして2人は無理やり武器を持たされているようです。

ちなみにクーン君は黒い犬型のコボルドです。しかしキュン君はクリーム色の犬でしたね、お母さん似かな?


ここでGMは再度《魔物知識判定》を行わせます。既に知名度は抜いていますが、弱点が分かる可能性があるので。

SW2.0では従来の知名度の他に弱点値が設けられています。基本的に後者は前者よりも高い値になります。

達成値が知名度を抜くと相手のデータを参照でき、弱点値まで抜くと更に何かの特典が得られるという訳ですね。

そしてそれは仲間全員に適用されるという訳ですね。判定は1セッション中1回だけになりますが。

もしセッションを跨いで以前知名度を抜いたモンスターと遭遇したら、その時は弱点を抜けるかどうかだけの判定になる。

相手の弱点は以前見抜けても今回見抜けるとは限らない訳です。セージ技能の重要性がますます増していますね。


ではボガードの場合はどうなのか。データを見ると彼らの知名度は7で弱点値は13と高くなっていますね。

基準値(魔物知識)4のソラなら前者は軽く抜けますが、後者は9が必要で厳しい。実際この時彼女は弱点までは抜けませんでした。

もし成功していたらこのセッションの間「物理ダメージ+2点」となって前衛には嬉しいボーナスでしたが。

ちなみにコボルドの弱点は「魔法ダメージ+2点」と魔法使いには嬉しいものですが、今回は行わなかったらしい。


今回の戦闘では二匹のコボルドはボガードに逆らえません。「ごめんなさい、ごめんなさい」と謝りながら武器を持たされています。

エア「む。可哀想なので、何か言ってやりたい。ボガードに、誰か罵詈雑言を投げつけてやって!」

ボガードの言語は汎用蛮族語というものです。多種多様な多くの蛮族が理解できるシンプルな言語ですね。

メッシュ「私が喋れます。では、僭越ながら……(ゴホン)「へそ噛んで死ね!」」←汎用蛮族語

一同「…………」

ジーク「……えーと、今のが、汎用蛮族語の罵詈雑言か?」

メッシュ「はい、聞くに耐えない、罵詈雑言でございます」

ボガード「いやぷー」←汎用蛮族語

メッシュ「む。なかなかやりますな。ジーク様、今のは聞くに耐えない放送禁止用語の返礼で御座います」

別の意味で聞くに耐えない応酬でした。他の人が分からないからって好き勝手を(苦笑)




さて今回の戦闘で戦う相手はボガード×2と鎖で繋がれたコボルド×2です。

ボガードの内片方は妖精魔法が使えるらしく、後衛から攻撃してきます。

コボルド達は戦闘中に戦場を走り回って鎖を張り巡らせ、冒険者+敏捷度の判定に失敗した者を転倒させます。

判定は相手の手番で2匹のコボルドによって任意の2人を指定して行います。こちらの手番でも移動時に行います。


戦闘はまず《先制判定》によって始まります。これはスカウト+敏捷度なのでメッシュの出番ですね。

この基準値は先制力とも言われ、魔物知識と同様にキャラクターシートに記される重要な基準値です。

何しろSW2.0の戦闘はSWのSE同様にパーティー単位で先攻・後攻に分かれて行われます。

《先制判定》はその先攻を取る為の重要な判定であり、場合によっては勝敗すらも変わる可能性がある。


ところがメッシュがこれに早速失敗。相手の先制を許してしまいます。

ボガード「おまえ、しね!」←汎用蛮族語

メッシュ「私は語彙が豊富ですから、言い返しますよ「お前も死ね」」←汎用蛮族語

ジーク「いや待て、メッシュ。「も」はダメだ。こっちも死ぬ

汎用蛮族語は簡単な分表現に乏しい言語のようですが、そういう細かいニュアンスも伝わるなら捨てたものではない。


1ラウンド目、敵先攻

コボルドは前衛であるジークとメッシュを狙って鎖で絡めてきます。

メッシュ「エンクくんは、料理が得意なので、武器は出刃包丁です」

エンク(エア)「わああん、三枚におろすけどごめんなさい!(ざくーっ)」

武器としては大した事無い筈なのに凶悪さだけはSランク武器ですね(笑)


実際の鎖攻撃は主従共に回避し、ボガードはメッシュを狙いますがやはり軽く回避。

後にいる妖精使いのボガードは"ファイアボルト"をエアに撃ちこみ、抵抗されてダメージ半減3点ダメージ。

この魔法が使えるということはこいつは最低でも2レベル。レベルだけならジークよりも高いですね。


ちなみにSWの魔法は抵抗すると打撃力を−10して判定しましたが、こちらでは算出ダメージ半減です。

どちらも抵抗すればクリティカルが起こらないという点が共通しています。これが大切ですから。

あとSWだと冒険者レベルを魔法ダメージから減算できましたが、SW2.0ではこのルールは無くなっています。


余談ですが、後に発売されたサプリメント「ウィザーズトゥーム」でダメージの定義が細かくなっています。

普通に威力+魔力等で求めたダメージは算出ダメージといい、抵抗したらこの段階で半減します。

弱点によるボーナス等の付随効果はこの算出ダメージに加えられ、合算ダメージとなります。

この合算ダメージから相手の防御効果を差し引いた適用ダメージが実際にHPから差し引かれます。

SW風に言うなら冒険者レベルによる適用ダメージの軽減が行えなくなった、という事になりますね。


さて、1ラウンド目の裏でジークは魔法を使うボガードを先に倒そうと通常移動しますが、判定に失敗してまさかの転倒。

ジーク「待った!ここで使うしかない!〔運命変転〕を使う!」

これがラクシアの人間に与えられた種族特徴です。1日に1回だけ、運命をひっくり返す事ができます。

具体的には出目をひっくり返す事ができますね。SWの"ダイス・オブ・ミニマムフォー"の要領で。

不運と幸運は表裏一体。この能力で1ゾロを6ゾロにする事すらも可能となります。


この時彼は基準値4で出目4だったので達成値8で、目標値9には1つだけ値が足りませんでした。

しかし出目をひっくり返せば4を10に変える事ができ、達成値は一気に14。楽勝でクリアです。

ソラ「ああっ、お兄さんがひっくり返った幻が見えた

エア「かと思ったら、残像を残して鎖をすり抜けた!

地味な使わせ方をされましたが、今ボガードに接近する事が後に有利になると判断してのことです。

この時ジークは12点の合算ダメージを出し、防護点3点のボガードは9点の適用ダメージを受けます。


次はメッシュの攻撃です。彼は補助動作で魔動機術の"ターゲット・サイト"を使用して命中+1します。

更に戦闘特技《牽制攻撃》で命中+1し、基準値7の状態で出目11出して18で攻撃してダメージを与えます。

1レベルの時とは思えない値ですが、補助動作の魔法と戦闘特技で強化するという戦法なら可能な事ですね。

ただし《牽制攻撃》は命中しやすくなる反面、クリティカル値が+1されて回り難くなるコストも存在します。


ちなみにSW2.0では自分の手番を使う主動作と、手番を消費しない補助動作が存在します。

後者に数えられる魔法も複数あり、1手番に魔法は1つ、というSWの頃のセオリーも無くなりました。

練技や賦術のように補助動作で使える技能も増えましたし、もうファイター一本伸ばしは勿体無いですね。

特に魔動機術にはこの補助動作で行使できる魔法が多い。魔法の弾丸を作る"○○バレット"も補助動作ですし。


更にメッシュはグラップラー専用の戦闘特技《追加攻撃》によってもう1回攻撃してダメージを与えます。

重い武器を持つ戦士と違って1撃の威力に劣ろうとも、手数の多さや行動の多様さはそれを補う。


この時エアは射撃武器による誤射を無くす《精密射撃》も持たずに矢を射たばかりにメッシュを掠めました(笑)

メッシュ「な、なんですか?今、殺気の篭った矢が私を掠めて飛んでいきましたぞ!

エア「気のせい。ちゃんと敵に向けたでしょ」

彼女はシューター技能こそ持っていますが、あまり射撃武器で活躍するタイプではありません。


そしてソラが姉の失点を補おうと"エネルギー・ボルト"でダメージを与えます。

彼女は《魔法誘導》を持っているので射撃属性の魔法を使っても誤射しません。

射撃属性の攻撃魔法が多い魔術師には必須の特技ですね。


2ラウンド目

ジークが鎖を避けられず転倒。その上ボガードの"ファイアボルト"で焼かれます。

ジーク「いいんだ、この痛みに耐えよう。全部俺が悪いんだよ」

メッシュ「いいえ、そんなことはありません!」

ジーク「あ、そう?」

メッシュ「単に運が悪いのです」

実際出目が悪いのが原因ですしね。幸いなのは近接攻撃が得意な敵ではなかった点ですかね。

転倒していたら回避にもペナルティが入り、より攻撃が当たりやすくなるのですから。

ここでエアは"キュア・ウーンズ"でジークを回復。SW2.0になっても相変わらず現役の魔法ですね。


その間にメッシュは再びタゲサ("ターゲット・サイト"の略)で攻撃。

メッシュ「ちなみに魔法はこれでラスト」

実はタゲサの消費MPは3点と重めです。既にMP8点のメッシュは2回使うとガス欠です。

せめて"フラッシュ・ライト"を使っていなかったらもう1回使えたんですがね。


メッシュ「しかし、これで仕留めれば問題なし!」

その達成値はまたも18と見事なものでしたが、ダメージ1ゾロで無駄に終わる。順調に稼いでますね。


3ラウンド目

今度はメッシュが回避1ゾロで転倒。凄い、この短期間で既に150点も稼いでいますよ(笑)

ここで前衛のボガードがメッシュを攻撃して15点の合算ダメージを与えます。転倒のペナルティさえ無ければね。

メッシュ「ぐはぁ!さようならジークさま……また来世でも、いえ、来世こそ、素敵な主に巡り会いたい……

ジーク「お前の引導、今直接、俺が渡したくなった」

更にボガードには特殊能力に《連続攻撃》があります。1度攻撃が命中したらもう1度攻撃できるというものです。

これで「メッシュさらば!」と一瞬思ったりもしましたが、運良く回避できたので命拾いしました。


ジーク&GM(ち)←舌打ち

メッシュ「何ですか、そのダブルで残念そうな表情は!」

MPが潤沢なエアがいるお陰でこの傷も治せます。ちなみにこの世界のキュアは2レベル魔法となっています。

消費MP3点なのでMPが29点もあるエアなら9回も唱えることができて継戦力もあって安心。


その後も攻防が続き、ソラがエネボルをクリティカルさせて魔法ボガードを葬ります。

ソラ「やったー!」

ジーク「俺も目の前の一匹くらいは手柄を立てるぞ!」

メッシュ「む、わかりました。あ、いえ、ちょっとお待ちくださいジーク様。
      先に私がボガードを《投げ》てしまいます!」

《追加攻撃》と同じくグラップラーが初期に獲得する戦闘特技がこの《投げ攻撃》です。

文字通り相手を投げてダメージを与え、転倒状態に持ち込む事ができます。敵にすればウザイですね。

これにより相手のお株を奪う転倒状態への攻撃をジークに譲る事ができ、トドメを刺せる可能性も上がる訳です。


主を思う気持ちが届いたのか、メッシュの《投げ攻撃》は見事にボガードをぶん投げる事に成功します。

メッシュ「今です、ジーク様!」

ジーク「む、お前の働き無駄にしないぞ。《魔力撃》!」

メッシュ「ふふふ、これこそ、我々が七年間で培った、必殺のコンビネーション!

エア&ソラ「おおー(パチパチ)」

《魔力撃》は近接攻撃のダメージに魔力を上乗せするという、魔法戦士にとっての決め技のような特技ですね。

現在のジークの妖精魔法の魔力は3なので3点上乗せして攻撃できます。まだレベルが低いのでこんなものです。

ただしその反動で回避、生命抵抗、精神抵抗に−1の修正が入るというデメリットもありますが。


転倒状態のボガードはこの一撃を避ける事ができず、あえなく絶命しました。

ソラ「美しいコンビネーションだ」

一同「ばんざーい!(ハイタッチ)」

これでエンク君とクーン君も解放され、ボガードの侵攻も未然に防げました。


ボガードの住みかを調べると、後で仲間を呼ぶつもりだったのか狼煙の色を変える薬品が発見されました。

メッシュ「ははは、我々の勝利を祝って、祝砲代わりに火にくべてみますか

エア「やめい!大挙して蛮族が押し寄せてくるでしょうが!」

ソラ「えー、何色に煙が染まるか、見たい……」

どうやら先遣だったようです。流石に2人でルーフェリアに攻め込むほど馬鹿ではなかったようですね。


無事に保護された料理長エンクの帰還で「水晶の欠片亭」は大賑わいで宴が開かれたとか。

クーン親子については「水晶の欠片亭」に居候させてもらえるようにエンク君がリッタさんに頼むそうです。

こうして若き冒険者達の初冒険は見事に成功しました。しかし彼らの冒険はまだまだ始まったばかりなのです。


第二話 静かにゆっくり寝る方法

★成長、成長

今回のキャラクターシート

初の成長ですが、SW2.0では技能だけでなく毎回ランダムで能力値も1点ずつ増加します。

具体的には2Dを振り、出目のどちらかに対応する能力値を選択して1点上昇させる事ができます。

出目と能力値の対応は、1なら器用度、2なら敏捷度、3なら筋力、4なら生命力、5なら知力、6なら精神力です。

ある程度ランダムではあるのですが、ある程度自分の意思も反映させる事ができるという訳ですね。


では今回の成長で彼らはどう能力値が上がったのか。

メッシュ:敏捷度12→13

ジーク:精神力17→18

ソラ:器用度16→17

エア:生命力17→18

この成長でジークとエアはボーナスも増えましたね。ジークはMPも増え、エアはHPも増えました。

この2つのボーナスはそれぞれ精神抵抗力と生命抵抗力にも直結しますし、1点単位で意味のある能力値ですね。

一方メッシュは器用度と敏捷度が出たので、1点単位で移動力に影響する敏捷度を選択しました。

ソラは魔術師にはあまり嬉しくない器用度ですが、あと1回成長するか指輪を買えばボーナスが増える選択です。


エア「でも、生命力18のエルフって、なんかこう……自分的に許せないものがあるの」

確かにエルフにしては生命力旺盛過ぎます。きっとピロテースみたいにムチムチしてる。

エア「ちょっと体のサイズを気にして、<コルセット>をつけてみたりする乙女心」

ソラ「でも、そのコルセット、電動ならぬ魔力で振動するから、気がつけばどんどん腹筋が割れて……

エア「違う!それ、どこの通販で買ったっての!」

実はコルセットというのも腰の装飾品として存在するので、多分購入したのでしょう。

スタイルがよく見えるというだけで数値的な効果は無いけど、その分安価にPCにお洒落させる事ができます。


技能の成長はエアがレンジャー1→2、メッシュがマギテック1→2、ソラがソーサラー2→3です。


これでメッシュは回復の弾丸を作る"ヒーリング・バレット"が唱えられるので銃も購入しました。

彼にはシューター技能がないので命中力は0ですが、味方に撃つだけなら必要ないので。

ビジュアル的には魔弾丸を発射するマァムよろしくちょっと怖いけど、回復役が増えるのは好ましい。

ただし威力0なので威力10はある"キュア・ウーンズ"に比べたら回復量に劣りますけどね。出目も悪いし


ソラについては、ソーサラーがいきなり飛びぬける事に違和感を覚えますがルール的には問題なし。

もうあの経験点が重過ぎて兼業できないソーサラーというイメージは払拭しなければなりませんね。

あと3レベルになったので戦闘特技《魔法拡大/数》を習得。SWと同じく対個人用の魔法を複数に拡大可能。


メッシュ「何しろ、冒険者レベルが倍になったのです!(冒険者レベル1→2)」

ソラ「いいな、あたしなんか、50パーセントしか上がらなかった(冒険者レベル2→3)」

メッシュ「そして!さらに!なんとMPが三十パーセントアップしたのです!三割増しですよ!(MP10→13)」

ソラ「あら、あたしの半分(MP30)」

メッシュ「ジーク様、この腐れナイトメアを暗殺してもよろしいですか?
      この新しく補充した銃サーペインタインガンで」←サーペンタインガン

ジーク「やめとけ。彼女は正直だ

エア「ごめんなさい。この子、空気読めない子だから!(あせあせ)」←似たもの姉妹

<サーペンタインガン>は<ガン>Bランクの武器。全長10cm程度の片手用の銃で、装填数3の射程10mです。

<ガン>はどの種類も固有の装填数と射程が決められていますが、<サーペンタインガン>はスタンダードなモデルですかね。

メッシュはあくまでもグラップラーであり、以後も使用する武器は<ガン>ではなく<格闘>がメインな事に変わりありません。


★《水晶の欠片亭》からのご褒美と……

前回の事件から数日が経過していました。

エア「ちょっと待った!わたしたちそういえば、前回お布施もらってない!

ソラ「お姉ちゃん、報酬って言うのよ、冒険者のお給料って」

エア「だってわたし冒険者じゃないし……実家あるし」

あくまでも本業は神殿勤めのつもりですかね。妹は完全に冒険者ですけど。


すると前回所持金ギリギリだった主従は非常に厳しい事になる。

メッシュ「一日一食にして、野宿をすれば一週間は持ちます。幸いこの国は水だけは豊かな湖の国」

ソラ「無理しないで、うちきたら?」

エア「こら、ソラ!あんたはどうしてそう慎みの無い……くどくど」

ソラ「知ってる?ナイトメアの耳って、都合よくないこと、バタッと塞いで聞き流すこと出来るのよ?(耳をギョーザ)」

メッシュ「おお、うちのジーク様もよくやっていますぞ、それ(真似)」

耳をギョーザとはまた懐かしいネタですね。あとは口がシューマイもでれば完璧(笑)


でも前回の活躍はリッタさんを通して神殿にも伝わっていたので、彼らには報酬として1人500ガメルが支給されます。

ジーク「え!犬探しで五百ガメル!(驚愕)」

ソラ「お姉ちゃん!冒険者ってギャンブルよりボロいよ!(驚喜)」

エア「定職について、ソラ!(懇願)」

この中にはリッタさんのお礼も含まれていますし、当分はエンク君が食事を奢ってくれるのでかなり余裕がありますね。

あとクーン君とキュン君もここで働かせて貰える事になりました、コボルドだけにお料理上手なので。

ただしまだ小さいキュン君は火を使わせるのはまだ早いので、給仕役としてお店のマスコット的存在となっています。


ジーク「よし、しばらく生活費が格安になった。ので。五百ガメルもらったのを、
     即金でカイトシールド買いに行った。さあ、今日はどうやって暮らそうかな

メッシュ「ジーク様、宵越しの金は持ちましょう!金がゼロになっては生活費が格安になっても意味がありません!」

エア「悔しいわ。あのルーンフォークに微妙なシンパシーを感じる」

ソラ「あたし、かつらと付け髭と仮面とヴェール、買ってきた」

<かつら>と<ヴェール>は頭の、<付け髭>と<仮面>は顔の装飾品です。後のデータを見る限り特に装備する訳ではないらしい。

ソラはこういうお買物が多くて可愛い。遊び心というか、洒落っ気というか、何でも楽しもうとする姿勢が素晴らしい。

あとエアも<銀のアンクレット>をお洒落で購入。足に装備するもので、ある地方では「運命」という意味があるとか。


更にソラは<調理道具セット>まで購入。フライパンやお鍋などがセットの冒険者の必須品ですね。

ソラ「生活費足りなくなるけど、家はあるし、ご飯はわたしも「水晶の欠片亭」で食べにくればいいし」

お姉ちゃんは未だに冒険者の店に出入りする事にはいい顔をしませんが、それでも結局は一緒に来てしまうようです。

エア「竜を倒したり、国を救うなんてあなたには無理に決まってるでしょう、単なるニートなんだから!

ソラ「ちがうの。ソラは生活に必要なこと、何もできないだけ」

メッシュ「もしかして、姉妹仲悪いんですか?」

エア「失礼な、わたしはいつもソラのことを考えてますよ

ソラ「あたしもお姉ちゃん、大好き。飾らない口調が好き。たまに、飾れと思う

何だかんだ言っても仲がいいと信じたい。


さて、そんな彼らを見かねてリッタさんは冒険の依頼を一つ斡旋してくれます。

ルーフェリアの南にあるリビ村で墓荒らしが出たというので、それを解決するという依頼です。

エア「墓荒らし?」

ジーク「墓荒らしとは何ぞや」

ソラ「えとね。トゲトゲしたげっ歯類の一種で、山に棲んでるのはヤマアラシ、墓場に棲んでるのがハカアラシ……」

メッシュ「ほほう。では、室内に飼われているのはザシキアラシ?」

それが本当にげっ歯類ならともかく、人間だったらそれこそニートです。


ところが詳しく話を聞いてみると、どうやら単純な墓荒らしではないようです。

先月埋葬した筈の老人の遺体が村の中を徘徊するというもので、どちらかといえばアンデッド退治。

報酬は1人1000ガメルと更に増え、前払い分は1週間分の食料。依頼人は御遺族です。

しかし普通墓荒らしは遺体を辱めたり、埋葬品を盗む不届き者であって、この場合も墓荒らしと言うのだろうか?


余談ですが、この世界の神官はアンデッドの専門家ではありません。フォーセリアではそうだったんですけどね。

第一の剣と第二の剣の対決がこの世界の創世神話であり、神殿のお仕事は第二の剣に連なる蛮族と戦う事です。

穢れを持つ者と戦うと考えると、蛮族は勿論アンデッドと戦う事も仕事の範疇ではありますけどね。

穢れによって肉体を強化された種族が蛮族なら、アンデッドは穢れが溜まり過ぎてしまった存在なのですから。

しかし蛮族にとってもアンデッドは敵なので、人族VS蛮族VSアンデッドという三つ巴の構図になる訳ですね。


ソラ「ゾンビって、魂が汚れきっちゃった死体がそうなるんだっけ」

エア「そう。大丈夫、ソラは絶対にそんな風にならない、大切に誠心誠意、全身全霊を込めて丁重に葬ってあげる

ソラ「……ありがたいけど、素直に喜べないの、なぜかな」

別に殺意がある訳でもないのに不思議ですね(笑)


★初めての遠出……?

リビの村については《見識判定》で6ゾロを振ったソラがやたらと詳しかったので道には困りませんでした。

ソラ「あの店が美味しくて、この店が女の子だとおまけしてくれて、カードやるときはあの酒場が……はっ」

エア「もう!この子ったらこんなところまで遊びに来てるなんて」

ソラ「……っていう、話、聞いたの(視線そらし)」

エア「なーんだそうだったの(胸撫で下ろし)」

あと山添にある村であり、タビットの住人が多いようですね。

フワフワモコモコでコボルドと双璧をなすマスコット種族です。GMも推奨する種族ですが、このパーティにはいない。


メッシュ「ジーク様、本日の夕食が歩いておりますよ」

ジーク「動きはとろそうだ。ふふ、仕留めよう(にたり)」

ソラ「……言っとくけど、殺されるよ。タビットは1レベルでも、平気で魔力5とか言うし」

エア「取り囲まれて一斉放射。"エネルギー・ボルト"ちゅどーん」

ソラ「……カイン・ガラでよく見た風景なの」

タビットの初期能力値を生まれ毎に場合訳すると、敏捷度こそ平均9.79と低いけど、知力は22.5とかありますしね。

知力+4あって当たり前とは言いませんが、指輪等で強化したり成長していたりすると+4でも不思議ではありません。


しかし相手は小柄で鈍足なウサギさん。人間に絡まれたらやはり怖いものでしょう。

ジーク「そこのうさぎ君、うさぎ君」

タビットA「はい?」

ジーク「墓はどっちだい?(にやり)」

エア「開口一番ゴー・トゥー・ヘル宣言しない!いきなりあの世行き決定って感じでしょうが!」

メッシュ「完全に水先案内人でした」

タビットA「……おいしくないです(プルプル)」

それは(悪質な)冗談として、彼に話を聞いてみると徘徊する遺体については村でも話題になっているらしい。

依頼人である遺族はミリアといい、そこのジジ爺さんというお爺さんの遺体が徘徊しているようですね。

……ていうか依頼人の名前ぐらいはリッタさんが持たせてくれた紹介状にちゃんと書いてあるんですけどね。


ジーク「じゃあそのミリアさんのとこまで案内してくれ。背中から弓撃ったりしないから。……シューター技能ないし」

メッシュ「銃ならあります。ジーク様」←当たらないけどね

タビットA「ひぎゃああっ(だばだば)」

でも鈍足なのでエアが抱っこして案内させました。着実にかぁいいものを抱っこするよう立ち回っていますね。

ちなみに今のメッシュは命中力こそ0ですが、攻撃用の"ソリッド・バレット"等を発射する事は可能です。


依頼人の家はそこそこ裕福で商売もしているようでした。ミリアさんはジジさんの息子の嫁にあたるおばちゃんでした。

ミリア「おやまあ、やっと来てくれたのかね!もう、色々大変なんだよ、入って入って」

メッシュ「GM、中年女性とケモノのNPC率が高すぎるのはどうかと思われますが」

GM「うるさい」

リッタさんも中年女性にカウントしてますよね、実際中年だけど。


ジジさんについては死因は自然死だったようです。老衰に近い病死ってところですか。

埋葬は神官にも立ち会ってもらって、祈りも捧げてもらったので特に不審な点はありません。

徘徊するようになってからの第一発見者は息子さん、ミリアさんの旦那さんにあたるので見間違えの可能性は低い。

またジジさんは生前道化師であり、近所の子供とも遊んであげる優しい名物爺さんだったそうです。

それにあやかって埋葬する時も道化服を着せて土葬にしたのですが、その道化服を着た状態で徘徊していたらしい。


ミリア「一番、お爺ちゃんが活き活きとしていた頃の姿でって思ってねぇ(溜息)」

ソラ「活き活きにもほどがあるの

エア「墓場から出てくるほどぴちぴちとはねぇ」

ミリア「元気に帰ってきてくれるならいいんだけど、半分崩れてたりすると、正直体裁悪いし……世間体もねえ

ソラ「正直な人って、すき」

しかし想像するとかなり怖い。夜道で遭遇しようものならSANチェックものですね。

しかも他にも徘徊する死体があるらしい。今の所実害はありませんが、早く解決しないと不気味で仕方ありません。


時刻は既に夕方。一行は日が暮れない内に墓場を調べに行く事にしました。

ジーク「じゃあ、おばさん、俺たち一時間くらいで戻ってくるから、夕食のしたくを頼む

エア「めっちゃナチュラルに夕飯たかってる!

ミリア「わかったよ、おかずは煮付けでいいかい?」

ソラ「そしてナチュラルに応じてる!

メッシュ「ふふふ、それこそジーク様の御人徳というもの!(嬉しそう)」

元々この村には宿も少ないので泊めるつもりだったそうですが。


ただし墓場に行くのは主従と妹のみ。お姉ちゃんは神殿に話を聞きにいきます。

ソラ「わかった。ここの神殿にはいきたくないの」

ジーク「え?なんで?」

エア「ナイトメアだから魂が穢れてるって、差別的に見る神官がいるからに決まってるじゃない」

ソラ「……あの神殿から馬を盗んで走り出したりした、十五の夜
    うっかり知られると、きっとお姉ちゃんにしばかれる……」

その足で神殿の窓を割って回っていたりしたら補導ものですしね。ていうかそれでこの村に詳しかったのか。




場面は変わって村の墓場です。

主従&妹「おっはっかー、おっはっかー、わたしはーぞんびー♪」←歩くの大好き、ドロドロいこうー♪

ジジさんのお墓の場所はすぐに分かりました。墓を調べると墓土に穴が空いている事が分かります。

穴の底には生前使っていたボールや操り人形、そして子供と遊ぶ時に使ったと思われる道具があります。

土が外から掘られたのか、内から盛り上げられたのかは、例によってメッシュが判定に失敗して分かりませんでした。


他の墓を見回すと2つほど同様に遺体の消えた墓があります。

ジーク「墓碑銘を見ておこう。なんて書いてある?」

ソラ「……ジークとメッシュ、此処に眠る

主従「ぎゃー!」

実際にはラインとマットです。この名前も覚えておきます。


次にメッシュは《足跡追跡判定》を行い、今度は成功しました。

メッシュ「見てくださいジーク様、ここに、この様に足跡がくっきりと!」

ジーク「本当だ!俺たちの足跡が、くっきりと見える!」

メッシュ「このまま追いかけて行くと、なぜかジーク様の背中に到着。……あれ?」

ちゃんと墓穴から出て行く足跡がありました。ただし帰ってきた足跡はありません。

足跡は村の大通りの方に続いていて、他の人達の足跡に紛れて追跡不可能となっていました。

つまり遺体は村の中にある事になる。何処かに隠れているのか、あるいは誰かが匿っているのか。


ソラ「この村、もうダメかも」

ジーク「噛まれたら伝染するとかあるか?」

GM「バイ○・ハザードじゃないんですから」

メッシュ「帰ったら村全滅

ソラ「……さよなら、お姉ちゃん。あれが、姉を見た最後の姿でした……姉の遺言は「拾ったモノを食べないで」

エア「やめてー!そのマイナス思考やめてー!」

しかし何処かにいるというのはやはり気味が悪いですね。ゾンビは知能こそ低いけど、一般人には脅威だし。


ここでソラが戯れにジジさんの墓穴をいじっていると、奇妙な事に気づきます。

埋葬品のいくつかが持ち去られているのです。やはりアンデッドの自然発生ではなく主犯がいるのでしょうか。

しかもそのピンナップは適当なもので、駒を大半残しておいて盤だけ持ち去っていたりする。


ソラ「魂が穢れきっちゃうと、思考能力、低下するのかな」

メッシュ「穢れつながりで、何かわかりませんか」

ソラ(無言ぱんち

メッシュ「がふ。……申し訳ありません、ジーク様……来世では、きっと、よい主人を迎えます……(がく)」

ジーク「メッシュ!機能停止するな、メッシュ!」

これはメッシュが悪い。しかし犯人は駒が足りないボードゲームをどう遊んでいるんでしょうね?

ちなみにラインとマットは村人の証言から遺族はおらず、死亡時期もジジさんとはズレている事が分かりました。

生前の職業、年齢、性格もバラバラで、いなくなった遺体から共通点を洗い出すのは難しそうです。


あと神殿に行ったエアは特に目ぼしい情報は入手できませんでした。

強いて言えばこの事件の全権を委任されているという言質を神官さんから貰えたという程度ですか。探偵権限です。

メッシュ「やりたい放題やっていいと

エア「言質とりました!(こぶしギュ)」

あんたら本当に何をする気だ(苦笑)


こうして最初の情報収集を終えた一行はミリアさんの家に戻り、最後に旦那さんから目撃情報を聞きました。

ジーク「おっさんおっさん、親父さん帰ってきたってマジ?」

旦那「マジマジ」

その目撃情報というのも恐ろしいもので、墓参りに向かう途中で鈴の音が聞こえてきたというのです。

それは道化服についていたもので、生前ジジさんの持っていた衣装の中でも一番いいやつだったそうです。


旦那「で、ぎょっとしてそちらへ目を凝らしたら……」

メッシュ「凝らしたら?」

旦那「お手玉でジャグリングしつつ、親父の姿が墓場から……

一同「それ、怖ーッ!(がくがく)」

旦那「うぎゃー!親父ー!と、思った瞬間、わたしはその場で気絶しました」

しかしジジさんは彼には危害を加えずに立ち去ったそうです。加えなかったのか、加えられなかったのか。

もし本当にゾンビだとしたら、息子だから見逃すという情が湧くかは疑問ですね。生前の人格は残っていなさそうだし。


★街角見張る四人組

それからジジさんは街中でも目撃されるようになり、彼を慕っていた子供達もそれを知るようになりました。

ミリア「今でも『ジジじーちゃん帰ってきた?』って目をきらきらさせながら、うちに来る子供たちがいて」

エア「それはよくない。死んだ人が帰ってくるなんて、教育に悪いったら」

ジーク「あれ?神官なのに生き返り否定?」

エア「神官だから、生き返り否定なの

死者蘇生の魔法"リザレクション"はフォーセリアでこそ神聖魔法でしたが、このラクシアでは違います。


この世界では魂は神様の元に召され、いずれ地上に帰ってくるという輪廻転生こそが自然なものだと考えられています。

それに抗って蘇生を行うと魂に穢れが生じ、最悪アンデッドになってしまう。だから蘇生を忌避する文化がある。

フォーセリアでは「何故蘇生しないのか?」という疑問が必ず出ましたが文化的にそれを解消している訳です。

ちなみにこの世界における"リザレクション"は7レベルの操霊魔法であり、割と早い段階でPCにも使用できます。

かといって安易にそれを行っても当事者が蘇生を拒否する可能性があるし、蘇生しても様々なリスクを背負う事になるでしょう。


ソラ「なかまなかま」

エア「ちがうから!」

実際は似たようなものです。ナイトメアは穢れが生じたまま生まれてしまった魂なのだから。

前世で穢れが溜まり、それを解消する転生の旅の最中なのか。はたまた誕生時に不幸な事故でもあったのか。


それはともかく、既に時刻は夜。街中でゾンビを探索するなら光源が欲しいところ。

メッシュ「ランタンが必要ですかな」

ジーク「おおっ、すげえ、四十ガメルもするぞ!

主従「うっひょー!(高額さに踊る)」

メッシュ「それだけではありません、油が二十ガメルもしますぞ、ジーク様!」

主従「うっひょーい!(くるくる踊る)」

ジーク「さらに、火口箱が五ガメル!

つまり既に所持金は底をついていると。ていうか光源ぐらい初期装備で誰か買っておくべきでしたね。


ジーク「昔から言うじゃないか。備えあれば嬉しくないって」

メッシュ「さすがジーク様、無駄に冒険心にだだ溢れておりますな」

エア「ああ、もう、この主従は!備えあれば、嬉しいの!

ソラ「……あたし、ここでつっこんだら負けのような気がする」

その横でソラはこっそり"ライト"です。今回レベルも上がってMPも上がったからまだまだ余裕がある。

仕方ないので主従の方は<たいまつ>を用意します。お値段は5ガメルで6本セット。1本2時間もちます。

一方ランタン用の<油>は1本20ガメルで12時間もつ。つまり時間あたりのコストは<たいまつ>の方が安い。

その分<ランタン>はシャッターもあるから明りを絞れます、落とすと壊れるけど。<たいまつ>は落とすだけでは消えない。


これで光源の準備もできました。一行は目撃情報のあった場所で張り込みを開始します。

ジーク「元道化師だよな、ジジじーちゃん。火の輪作っといたら、潜りにこねー?

メッシュ「残念。それをやって潜りに来るとしたら、猛獣のほうですな」

すると期待通りに道化服を着たゾンビが現れます。顔を見ると皮膚が捲れていて、明らかにゾンビです。


試しにソラが色々な言語で話しかけますが応えない。ゾンビは言語を持ちませんからね。

メッシュ「……万が一、魔動機文明語で話かけて、返事されたらちょっと自分的にへこむので、黙っておきます」

GM「どんなプライドですか」

メッシュ「「やあ兄弟」などと言われた日には、口を封じるしかない

ジーク「……どっちの?」

メッシュ(にやぁり)

ジーク「俺、荒事用の装備で来たよな」

その装備はゾンビと戦うのに使うんですよね?


ここで一行はこのゾンビと戦いました。メッシュの《投げ攻撃》が決まり、ゾンビはぷちゅと地面に叩きつけられます。

メッシュ「いやですー!その擬音はイヤでございますー!」

ところがそこでトドメを刺そうとしたジークがまさかの1ゾロ。〔剣の加護〕は既に使用済みなのでひっくり返せません。

実はミリアさんの家で近所のおばさま方の反応を良くするために使っていたりする。もう今日の分はおしまい。

しかし所詮は弱小モンスター。ソラの"エネルギー・ボルト"やジークの《魔力撃》を受けて動かなくなりました。


ここで一行は戦利品としてゾンビの眼球(30G/赤B)をゲット。アルケミスト技能を持たない今換金アイテムですね。

SW2.0では戦闘後に2Dを振り、出目に対応した戦利品を入手できます。剥ぎ取りには10分を要するのがネックですね。

急いでいる時には剥いでいる余裕がない時間設定です。それで入手できるものは換金加工粗製のマテリアルカード等に使えます。

加工や粗製カードについてはサプリメント「アルケミスト・ワークス」に詳細な説明があります。色々あって面白いですよ。

中には価値のあるマジックアイテムを落とす場合もありますし、剥げるものなら剥いでおくのが戦闘後の楽しみですね。


こうして倒したゾンビですが、年齢を見るにジジさんではなさそうです。ラインさんかマットさんでしょう。

しかし彼らの顔は分からないので、夜が明けるまで待って村の人に首実検してもらう事とします。

ジーク「朝まで、見つからないように立てかけておこう

GM「どこに!」

これで翌朝大騒ぎになり、神官さんに怒られました(笑)


メッシュ「しかし、道化服を着ているのが気になります……私、考えたんですが」

ソラ「なに?」

メッシュ「……ジジさんは、ゾンビサーカス団を組んで興行を打つつもりなのではと」

ジーク「(無視)さて、遺体は一体出てきたわけだが」

メッシュ「何故、聞かなかった振りをするんですか、ジーク様!遺体は一体なんて、ナチュラルな駄洒落ですか!
      一度死んでるので、どんな危ない芸でも、チャレンジし放題のウルトラサーカス団ですよ!すごいじゃないですか!」

相変わらず思考回路がショート寸前の壊れかけのルンフォです。




しかしこれがジジさんでないとしたら徘徊する死体はまだ存在します。ジジさんと、あともう1人で2体はいそうです。

そこで街中の探索を続行した一行はGM謹製の「探索表」を振り(相変わらず好きですね)、新たなイベントを起こします。

それは子うさぎとの遭遇。この真夜中に小さなタビットの子供がちょろちょろと歩いていたのです。不審ですね。


ジーク「おい、そこのガキ!こんな夜中に出歩くんじゃないぞ!」

ソラ「……と、見せかけて実は五十歳でした」

ジーク「すんませんっした!(土下座)

ちゃんと見た目通りの子供です。人間年齢にして3つぐらいの幼児です。後に判明する名前はムーブといいます。


ムーブ「なぁに?」←舌足らず

ジーク「何してるんだ、こんな夜中に」

ムーブ「……おしゃんぽ」

ジーク「名前は?」

ムーブ「ちらないひとと、おくち、きいちゃいけませんって、いわれまちた」

ジーク「それと同じくらいの重要度で、こんな真夜中に出歩いちゃいけないってのがあるだろが」

ムーブ「おにーたんが、とめなかったから……つい」

どうやらこの子の保護者である兄タビットがあまり構ってあげていないらしく、1人で出歩いていたようです。

事件が起きている最中に幼児を放置するなんて危険です。一行はこの子を家に送るついでに一言いってやるつもりです。


エア「最近変な噂もあるんだから、危ないでしょう」

ムーブ「へんなうわさ……しってるしってる!」

メッシュ「くくく、貴方も、聞いているのですね。
     ……四人組の冒険者が身包み剥ぐという、恐ろしい事件をををを――ッ!

ジーク「うはははは、俺たちのことなんだよー!!」

ムーブ「ぎゃーっ、ちらないーっ(ジタバタ)」

悪ふざけの時だけはやたらと息の合う主従ですね。


それからムーブ君を家に送ると、家には彼の兄であるモーブというタビットがいました。

茶色に白ブチの長毛のタビットで、片眼鏡(モノクル)をかけています。杖を持った学者風のタビットですね。

ムーブ「ただいまー!」

モーブ「おや、出かけてたのかい」

ソラ「……気づいてないし」

ジーク「くどくどくどくど、説教するぞ。こんな小さな子を真夜中に外に出すなんて非常識だろう」

エア「がみがみがみがみ。それに唱和するように、小言を言います。
    気が付いてもいないっていうのが、さらに危ないでしょう!」

モーブ「え、え、え……いきなりそんなことを言われても……外出てたんですか。この子」

ジーク「もう、よっぽどとって食おうかと思ったよ!」

モーブ「え、あ、あ、それは困ります、親に叱られます……(おどおど)」

彼はカイン・ガラで操霊魔法を学んだ操霊術師であり、研究に夢中で弟を放ったらかしにしていたようです。

一日中本ばかり読んでいてネグレクト寸前ですね。オタクなタビット、略してオタビットです。

以前まではジジさんがムーブ君の面倒を見てくれていたようですが、彼が亡くなってからはそれもできなくなりました。


しかしここで操霊術師が出てくるとどうしてもゾンビとの関連を疑いますね。

アンデッドやゴーレムの作成に死者蘇生、操霊術師はそういった一般人がドン引きするような魔法の専門家ですから。

ジーク「お前か!お前がゾンビを作ったのか!しめあげっぞ、コラ!」

メッシュ「さあ、我々が付いていってあげますから自首しましょう」

モーブ「自分、悪いことは研究以外はしてないですー!

エア「ってことは、悪い研究してる!」←操霊術師なら仕方ない

ただし彼はまだ3レベル。ゾンビを作るには5レベルの"クリエイト・アンデッド"が必要なのでまだできない。

もっともレベルをより低く申告する事は可能ですけどね。高く申告して実際やらされたらすぐにボロが出ますけど。

赤い鎧シリーズでは高レベルの魔法を使わざるをえない状況を作り出して証明する手法がありましたが。


彼自身死者蘇生とか、そういう高レベルの操霊術師になる事を夢見てはいるようです。

モーブ「その境地まで、達せるといいですね!(瞳キラキラ)……でも、まだ遠いなぁ(肩を落とす)」

メッシュ「……墓場で、研究とかしていませんか?」

モーブ「まだしてませんよ」

ある意味正直なタビットですね。操霊術師ならある程度は仕方ないかなとも思いますが。


一方ソラはムーブ君と遊んでいました。

ソラ「ねえ、ねえ、ジジさん、亡くなって寂しい?」

ムーブ「どーして?あってるよ?」←なん……だと……

どうやら彼らは重要参考人を引き当てていたようです。この子はジジさんのゾンビと何度も遊んでいたというのです。

モーブの方はそれを聞いてオロオロしています。自分の知らない所で弟が巻き込まれている事に驚いたのか、それとも……。




ムーブ君の証言から一行は彼と(故)ジジさんが遊んでいたという山を調べにいきました。

ところがメッシュが毎度御馴染みのポンコツ執事っぷりを発揮して1ゾロを振って何も分かりませんでした。

レンジャーを上げたエアの出目も悪く、子供達が遊んでいたと思われる痕跡しか分かりませんでした。


エア「ごめん、足跡わかんない(てへ)」

メッシュ「は?足跡なんてありませんでしたよ(まじ)」

ソラ「……いきなり途切れる、手掛かり」

ここは子供の遊び場なので、岩とか切り株などはありますが、ゾンビが隠れられそうな場所もありません。


ソラ「……一人で、遊んでたら、出てくるかな、ゾンビ」

ジーク「お子様のようにか?よし。えーん、えーん、さみしーよーぉおう(棒)」

ソラ「……きも

エア「あ、こら、ソラ!もう……大変お上手だったでしょう、何言ってるの、この子は!
    大丈夫!どんなに恥ずかしくても、人間生きていけるわジーク!(親指ビシッ!)」

ジーク「くっ!そんなこと言うなら貴様らがやりやがれー!(半泣き)」

メッシュ「何を言ってるのです、素晴らしい演技力でしたぞ、ジーク様!
      私には決して!絶対!全く、さっぱり!死んでも、真似できません!

ジーク「うわぁああっ!一人で駆け出してえぐえぐ泣いてやる!」

エア「大丈夫、今度は、それっぽいわ、ジーク!合格!」

珍しく始まったジークいじめ。しかしこれはただいじめている訳ではありません。


ジーク「(べそべそ)……出てきたか?ジジじーちゃん」

GM「ううん、さっぱり」

一同(ちっ

GM(……え、この流れ計算?

だとしたら随分長い寸劇でした。アドリブでこれだけできれば大したものです。


時刻は既に朝です。一行は初日の捜査を終え、ミリアさんの家に帰って昼間で睡眠を取りました。

この時には村で例のたてかけておいた死体で大騒ぎになっていました。これであの遺体はラインさんのものだと判明。


★も一度お邪魔、うさぎんち

睡眠を取った一行はもう一度モーブの家に行きました。今の所は一番怪しいので。

ジーク「よう、モーブ。研究の邪魔しに来たぞー!

GM「そんなこと言ったら、モーブさん、顔見た瞬間扉を閉めようとしますけど」

メッシュ「おおっと。ルーンフォークの硬い足をがすっと扉の間に挟みますよ」←マルサかお前は

モーブ「んっ、んっ、閉まらない!」←反応が遅い

ソラ「ムーブちゃん、遊びにきたの」

ムーブ「わーい、いらっちゃいー」

弟が喜んでいるのでモーブもそれ以上邪険にする訳にはいかず、渋々一行を家の中に入れました。


ジーク「率直に聞く。意思を持つアンデッドは作れるか

メッシュ「ジーク様、直球勝負過ぎます」

モーブ「無理です」

ソラ「モーブも直球返してきたの」

操霊魔法にある"クリエイト・アンデッド"は術者のレベルが上がる毎に様々なアンデッドを作れるようになります。

しかしそれは各種のゾンビ、スケルトン、ワイト、マミーであり、彼らの知能は「低い」。そして言語は「なし」です。

これは「簡単な損得勘定や打算はできる」レベルであり、多くは「固有の言語による会話も可能」になるそうです。

しかしこれらのアンデッドはその言語を持ちませんし、自律した意思を持っているかというと怪しいところ。

多少の判断はできるけど自律した意思は持たないといった所ではないかと思われます。魔法生物にもそういう種族が多いですね。


モーブは現在この魔法を使えず、また村には彼以上の操霊術師もいないようです。

モーブ「自分の知っている限りでは誰もいませんね(自慢げ)」

ジーク「……ちょい待ち。何で、そこで自慢げだ

エア「自分も唱えられないくせに」

モーブ「え、あ、その。じ、自分は唱えられないですよ?(杖持ってもじもじ)」

ジーク「本当か、耳持って揺さぶるぞコラ

モーブ「本当に、唱えられませんー!」

すると彼は杖でペチペチとジークを払おうとします。さっきからやたらと杖に拘っていますね。


やはり操霊術師の仕業ではないのか。しかしその弟のムーブ君は唯一の複数回目撃者です。

それもジジさんゾンビはムーブ君が探していると何処かから出てきて、遊ぼうと言うと遊んでくれます。

エア「……この子の命令を聞いてるんじゃない?ジジじーさん」

メッシュ「確かに、その気配濃厚ですな」

ソラ「この子連れ歩いたら、出てくるかも」

ジーク「メッシュ変装できるよな。この子になれるか?

メッシュ「超・無茶でございます(きっぱり)」

ジーク「そこを何とか、着ぐるみ系で」

メッシュ「そんな可愛くないことはしたくありません」

この場合《変装判定》ですね。スカウト+器用度で判定します。−4の修正を入れれば他人を変装させる事もできます。

しかし長身のルーンフォークが小さなタビットに変装するというのは流石に無茶ではないかと思います。

多少の融通は利いてもいいとは思いますが、幾らルールブックに書いてなくても限度はありますしね。


ここで彼らは再度ゾンビ探しに出かけますが、既にかなりモーブを怪しんでいるので多少発破をかけておきます。

ジーク「そうだなー。ともかく、ソンビが狩れないと、俺たちの仕事は終わらないわけだから。何か出てくんないかなーッ

エア「そうねーッ、わたしも早く家に帰りたいシー。
    ともかく成果を上げないと、いつまでもリビの村に足止めされちゃうのよねーッ」

ソラ「……大根(ぼそ)」

メッシュ「ははは、何を仰いますか、素晴らしい演技ではないですか。真似したくともできません、絶対に

ジーク&エア「お前がやれ、スカウト!」

この誘いに乗ってくれるようなら犯人の特定は一気に進みますが、どう出るか。


★証拠を掴もう!

一行はゾンビの目撃証言のある路地に張り込み、ゾンビが出てくるのを待つ事にします。

この際ジークとソラはミリアさんの家から借りてきた道化師道具を使って遊びながら待ちます。他2人は普通に隠れています。

ソラ「玉乗り玉乗り。あ、落ちた」

ジーク「じじじー。じじじー」←死に掛けのセミか

メッシュ「私なら、あんな可愛げのない子供と遊びたいと思いませんけどね

ジーク「借りてきたお手玉、投げる。メッシュの脳天向けて」

するとまたも道化服を着たゾンビが現れます。推定マットさんのゾンビですね。


ところがこのゾンビ、襲ってくるでもなくただ彼らに纏わり付いてきます。成果を上げてくれといわんばかりに。

試しにソラが"センス・マジック"をすると魔力を検出します。これで自然発生したゾンビではないと判断しました。

ただしゾンビは元々死体にマナが宿って動き出すアンデッドです。自然発生した場合でも魔力は検出できるかもしれない。


エア「わたしたちに「倒されにきた」と考えていいかも。……じゃあ"バニッシュ"

"バニッシュ"は1レベルの神聖魔法で、蛮族とアンデッドに様々な悪影響を与える。SWでいう"ターン・アンデッド"ですね。

具体的な効果はサイコロを振って表に照らし合わせて判定しますが、この場合は10〜12で得られる効果を期待しています。

それは「対象が逃げさる」というもので、上手くすればこのゾンビの創造主の所まで案内させられるかもしれません。

余談ですが、SWにも同名の魔法はありました。こちらは自然ならざる存在を物質界から消滅させるファリスの特殊神聖魔法でした。


この時のエアの出目はすこぶる良く、期待通りの効果を上げる事ができました。

GM「あ、ゾンビが脱兎の勢いで逃げた

一同「追跡ー!」

ちなみにゾンビの移動速度はわずかに10。全力移動であっても楽勝で追跡可能ですね。

本来知能が低いゾンビが創造主の所に帰れるかは疑問ですが、工夫は活かしてあげたいというGMの心遣いです。


そうして追跡していると、ゾンビはある曲がり角で突然姿を消します。

しかしメッシュがスカウト+知力の判定に成功し、その瞬間に扉の開閉音がした事に気づきました。

ソラ「……すぐそこに、とあるお家がある?」

エア「具体的に言うと、わたしたちがさっきまでお邪魔していた家

GM「ある」

一同「モーブゥ〜〜〜〜〜〜〜〜」

これでもう確定しましたね。やはりモーブが何らかの方法でゾンビを操っていたのです。今それを回収した訳ですね。




それではいよいよ犯人をとっちめる段階に入ります。

ジーク「おーい、帰ったぞー!(扉ドンドン)」

エア「見たわよ、モーブ!大人しく出てきなさい!」

メッシュ「中から鍵を掛けていたとしても、私が壊しますよ

そこは《解除判定》をしようよスカウト。完全に思考回路がグラップラーのそれになっています(笑)

ちなみにメッシュの場合《解除判定》に失敗しても魔動機術の"ノッカー・ボム"鍵を爆砕可能です。

ただし大きな音がするので隠密行動中には使えないし、壊してしまうので施錠し直す事も不可能になります。


するとおどおどしながらモーブが顔を出しますが、ムーブ君は寝ているので彼の証言が得られません。

弟には絶対に気づかれないように、彼が寝ている時か外出している時にしかゾンビを出し入れしないようです。

モーブ「し、しりませんじょ?何か見ましたか?」

ジーク「ええい、往生際が悪いわ!耳を結んでハンドバッグみたいにしてやるぞ

そこでメッシュがスカウト+知力で判定し、絨毯を捲ると地下に通じる扉がある事を発見します。


モーブ「え、え、え、そ、そこは、自分の研究室で……は、入らないでくださいっ!色々な資料が置いてあるんですよー」

ソラ「……死体がいっぱい?」

モーブ「いっぱいなんてありません!」

メッシュ「タビットに不利なように、灯りをつけずに降りていきましょう。
      もちろん、ハンドバッグ状にしたままで。サンドバッグにしないだけ、幸運と思っていただきましょう」

扉を開けると階段が続いていて、下には道化服のハギレが落ちています。もう言い逃れもできませんね。


エア「そろそろゲロりません?モーブさん。これ以上黙っていても、どんどん不利になるだけですよ?」

モーブ「だ、だって……ムーブが泣くから」

彼は末っ子であるムーブ君の相手に慣れていなくて、ジジさんが亡くなった後にはそれが誤魔化せなくなりました。

しかもムーブ君は死を理解していないらしく、ジジさんに会いたい、また遊びたいと泣き続けたのです。

そこで彼は師匠から貰った<死体使役の杖>によってジジさんの遺体を操り、ムーブ君と遊ばせていたのです。


この世界の魔術師や操霊術師も魔法を使う時に<魔法の発動体>が必要になりますが、それは杖の形状である必要はありません

指輪や腕輪等、様々な形状を選択できます。だから片手の塞がる杖よりも、これらを発動体とする場合が多くなります。

にも関わらずやたらとモーブは杖を持っている事をアピールしていました。それは推理の為の手がかりだった訳です。

ちなみにSWだと基本が杖で指輪などを発動体とするのは選択ルールでしたから、杖以外の発動体はちょっと珍しい。


彼が"クリエイト・アンデッド"を使えないのは本当ですが、ちょっと自慢したかったんですね。

ジーク「はっきり言っておくぞ。モーブ、お前の考え方は、とても間違っている!

モーブ「ええええっ!(がびーん)」

ジーク「弟が遊んで欲しいと泣くなら、お前が遊べ!

ソラ「正論」

モーブ「だ、だ、だって、どうやって遊んでやればいいのか、わからなかったんですー!(ぴるぴる涙目)」

ジーク「放棄するな!考えろ!

モーブ「ああああっ、すいませんー!」

彼なりに必死だったんでしょうが、それは弟に本気で向き合ってはいなかったのです。


そしてジークは彼の心に深く切り込む指摘をします。

ジーク「お前、ただ単に、自分の研究時間を、弟に邪魔されるのが嫌で、
     適当に遊び相手を作ろうとしてただけだったんじゃないか?」

モーブ「……そうかもしれません」

魔法の研究に打ち込んでいたんでしょうが、魔法以前に学ぶべきものがありましたね。


ソラ「近所のおじちゃんやおばちゃん、いてくれればそれに越したことはないけど、
    でも、そばに、兄弟がいてくれたら、結構平気……なもの、だと思う。うん」

エア「ソラ……それを聞いてぶわっと涙ぐんでいます。うるさがられてると思ったのに……」

ソラ「まあ、うるさいのもあるけど。無視とか放っておかれるより、うるさいのがいいの。多分」

小言ばかりなのはウザイかもしれないけど、それだけ関心を持ってくれるのは愛があればこそだとも解釈できます。

逆に無関心を貫かれると愛の存在さえ疑うようになります。例え内心は違っても相手はそう思えなくなるのかもしれない。


こうして犯人も、トリックも、動機も明らかになりました。ついでにちょっといい話になって事件も解決しそうです。

ところがその騒ぎを聞いて目を覚ましたムーブ君が見に来て、お兄ちゃんがハンドバッグ状になっていて立ち竦みます。

ムーブ「おにーたんをたすけてーっ」

メッシュ「みんなで囲んで責めてたように見えましたかな?」

ソラ「実際、責めてたけど」

ムーブ「おにーたんを、助けて!にーたんはわるくないー!」

ジーク「あーあ。俺たちが苛めたと思われたぞ」

エア「実際、苛めてるけど

ジーク「ちがう、これは尋問だ」

どんなに問題があっても、小さな子供にとっては大切なお兄ちゃんです。庇おうとしても無理は無い。


メッシュ「いや、しかしこれで「あいも変わらず、役立たずの兄貴めが」とか言いながら、
      渋く弟くんが動き始めたら、私としてはちょっと楽しかったんですが」

一同(爆笑)

ソラ「弟、才能ありすぎ」

ところがある意味彼がボス的存在である事は確かでして、彼の悲鳴でジジさんのゾンビが駆けつけます。

杖を持っているのはモーブだけど、ムーブ君に命令権があるのでしょう。そういう効果の杖なんじゃないですかね。

そしてムーブ君の命令は「お兄ちゃんを助けて」です。以後ジジさんのゾンビはその命令に従って動きます。


しかも彼が召喚したのはゾンビだけではありません。もう1つふにふにした人型の怪物が出てきます。

ジーク「ちょっと待て!ゾンビだけじゃなかったのか、作ってたのは!(胸倉を掴む)」

モーブ「ちがいます!あれは、師匠の餞別で……」

エア「餞別?」

モーブ「このレベルのモノが作れるようになりなさいって、送り出してくれたんです。
     見事でしょう、師匠のフラービィゴーレムは!」

一同「えばるな!」

フラービィゴーレムは肉を素材にした4レベルの魔法生物です。特に目立った特殊能力はない。

外見の特徴としては、サイズは2〜3mとなかなか大きく、人間の造形を単純にした姿をしているとか。

SWだと肉で作られたゴーレムはフレッシュゴーレムでしたが、こいつはflabby(締まりのない)なゴーレムですね。


ちなみにゴーレムは3レベルの操霊魔法"クリエイト・ゴーレム"で作成可能です。

アンデッド同様にレベルが上がるにつれ様々な種類を作成でき、フラービィゴーレムは6レベルが必要となります。

モーブは3レベルなのでこの魔法を使えますが、今の時点で作れるのは木でできたオーク(2レベル)のみです。


メッシュ「「ふははは、わたしのフラービィゴーレムが動き出したからには、お前たちなど一捻りよ!」と弟君が言い出すわけですな」

GM「言わない!」

エア「えばってないで、さっさと止めなさいよモーブ、ゴーレムなんでしょ?餞別なんでしょ?」

モーブ「……すいません。止められません」

エア「は?」

モーブ「コマンドワードの決定権、遊び相手として弟にあげちゃいまして。てへ(照れ笑い)」

ゾンビ同様にゴーレムまで子供のおもちゃにしていたと。魔法と子育てを何だと思っているのか。

彼はカイン・ガラで操霊魔法の授業ではなく、「子育てセミナー」とかに参加するべきです(あるのか?)。


ジーク「そんなに何でもかんでも与えるな、子供はモノじゃ満足しない!」

ソラ「与えられた玩具は、一週間で飽きるけど……肉親の愛情は多分、一生大切にする

エア「ぶわわわっ(号泣)」

ジーク「そのとおり!俺も覚えがある、ルーンフォークも、一週間で飽きた!

メッシュ「ジーク様!(がびーん)」

ジーク「……というのは、さすがに嘘だが」

流石に玩具とか家具扱いではないでしょう。ごく普通に家族の一員だと思っていたと信じたい。


★地下室大決戦

それではいよいよ決戦です。敵はゾンビとフラービィゴーレムが1体ずつです。

今回の《先制判定》ではメッシュが先攻を勝ち取りました。ようやく先に動けますね。


エア「とりあえず、最初にする行動は決まってるし」

メッシュ「……もしや、兄を射抜く?

エア「なんでよ!それひどいことになるでしょうが!」

ジーク「……じゃあ、弟を……」

エア「それ、惨劇でしょうが、単なる!」

未だに《精密射撃》を取っていない以上、下手に射るとそういう事にもなりかねませんけどね。


ソラ「そう、単なるうさぎ狩り……」

エア「あ、そう考えるといきなり罪悪感がなくなって気が楽ー……って、ソラまで変なこと言わないのっ!」

メッシュ「おやおや、意外とノリつっこみ派ですな」

ソラ「お姉ちゃん、神殿ではリアクション・クイーンの名を欲しいままにしてたから」

かといって放っておくと自分で壮大なボケも展開するという、魂のエンターティナーですけどね。


1ラウンド目

エアは階段の上でムーブ君を保護します。メッシュは自分に魔動機術"シャドウボディ"をかけて回避力+1です。

SWだと同名の魔法が精霊魔法だったので妖精魔法にありそうなイメージがしますが、立派な魔動機術です。

ジークはゴーレムに切りかかって8点の合算ダメージ。防護点が2点というぷよぷよボディなので6点の適用ダメージです。

HPはゴーレムなだけに45点と潤沢ですがね。<剣のかけら>がレベル個入っていたら更に20点加算されますし。


ラクシアの生物の中にはこの<剣のかけら>という謎の金属片を持つものがいます。

これを持つ者は1つにつきHP+5点、MP+1点だけデータが強化されます。四魂の欠片みたいなものですか。

目安としてはレベルと同じ個数持たせるものですが、場合によっては増減させる事もできます。

また<剣のかけら>は持ち主が死ぬと体表に浮かび上がり、これを名誉点かガメルに交換できるというシステムです。


ソラ「お兄さんどいて、そいつ殺せない。とか言いながら"リープ・スラッシュ"。
    どいてもらわなくても、撃てるんだけど、あたし」

ジーク「じゃあ、言うなよ」

ソラ「言いたかったの、一回」

"リープ・スラッシュ"はSW2.0で初登場の魔法ですね。威力20の攻撃魔法です。

射程10mで魔法の刃を発生させて敵を切り裂く魔法です。射撃ではなく起点指定の魔法なので誤射の心配も無い。


そして傷つけられるゴーレムを見てオロオロするオタビット。

モーブ「壊すんですか?壊すんですか?

エア「ごめん、あとで、師匠に謝っといて」

ジーク「そんな、分不相応なものを与える師匠に、謝らんでいい」

多少の損傷なら操霊魔法にある幾つかの回復魔法で回復できるでしょうが、完全に壊れたらどうでしょうね。

そうなったら修理しようとするよりも、新しく素材を用意して作った方が楽かもしれません。


そして相手の行動ですが、ジジさんゾンビについては攻撃せずにモーブに歩み寄ろうとします。

エア「あ、命令が「お兄ちゃんを助けて」だったから!」

ソラ「なら、それは無視していい、ね」

そしてゴーレムはそうできるように邪魔者を排除しようとしています。

という事は素直に道を明けて彼らが撤退すればゴーレムも活動を停止するのでは?


とにかくこれでジークとメッシュは2人がかりでゴーレムと戦えますね。

ゴーレムは現在乱戦状態のジークとメッシュのどちらかをランダムで攻撃するようです。

今回はジークを選んで多少のダメージを与えます。攻撃回数は1回なので一度に2人倒される心配は無い。


2ラウンド目

メッシュは2回攻撃を当てるも、両方とも合算ダメージ4点というショボさで計4点だけ抜けました。

ジークは空振りに終わり、エアはムーブ君に"サニティ"をかけて落ち着かせます。子供をあやすのにも最適の魔法ですね。


でもお兄ちゃんを苛める人達をジト目で睨んだり。

エア「ああん、こんな表情も可愛い……なんて言ってる場合じゃなくて、あのゴーレムとジジじーちゃん、止められる?」

ムーブ「いじめない?」←シマリス君か

これでジジさんは止まりましたが、ゴーレムの方は一度動き出すと止められないらしい。

エア「ちょっとお兄さーん!誤解といてよ!」

モーブ「え、え、え。わかりました、自分も一応コンジャラーの端くれ、皆さんに協力すれば、ムーブもわかるかもしれません」

ゴーレムの命令については「ウィザーズトゥーム」で細かく制定されていますが、この時点ではあまり制限はありません。


これでモーブはジークとメッシュに"ファイア・ウェポン"でダメージ+2点。SWの打撃力を上げる仕様ではなくなりました。

ソラは前と同じく"リープ・スラッシュ"。ただし消費MP7点と重いので彼女でも最大4発しか使えません。

ゴーレムはまたもジークを殴りますがダメージは低いので大丈夫。7〜17点出る筈なのに1桁ダメージが続きます。


それからも攻防は続き、既にゴーレムのHPは<剣のかけら>分に突入しています。

ソラは抵抗前提で"エネルギー・ボルト"に切り替え、援護を受けている主従もなかなかダメージが振るいません。

ソラ「モーブ、"スパーク"撃てるでしょ。撃って」

モーブ「え、撃っていいんですか?自分《魔法収束》ないんですけど……」

ソラ「いい、撃って。一発なら死なない。回らなければ」

主従「撃つな!巻き込まれる!」

"スパーク"は1レベルの操霊魔法で、空間に微量な稲妻を発生させる範囲攻撃魔法。威力は0と低いですが。

しかし初期から使える範囲魔法なのでなかなか有り難い。半径3m/5で3〜5人参加の乱戦エリアを覆えるし。

ただし味方を巻き込みたくない場合なら《魔法収束》を使用し、対象を1体にまで狭める方法があります。


仕方ないので主従に"プロテクション"で防護点+1に切り替えます。


6ラウンド目

そしてソラのエネボルが撃ち止めになった所でついにゴーレムの攻撃がメッシュにいきます。

メッシュ「はははは!大丈夫、このラウンドまでは、あらかじめかけておいた"シャドウボディ"が効いているのですよ!
      (ころころ)……はぐぁあっ!1ゾロ!」←またか

しかもダメージが16点と一気に跳ね上がり、残りHP8点。彼岸が見えてきました。


GM「一矢報いた?(えへ)」

ジーク「報いすぎだ!うちのに何しやがる、この肉だるま」

これでジークの繰り出した《魔力撃》によってついにゴーレムは破壊されたのです。


メッシュ「お見事でございますジークさま。ぼたぼたぼた〜(流血)」

エア「美しい美しい(拍手)」

ソラ「お兄さんを奮起させるには、メッシュを人質に取るといい

GM「いや、それは人として、ちょっと……」

ソラ「ナイトメアだから、平気」

メッシュ「この穢(ヨゴ)れめ


★戦い終わって

こうして今度こそこの事件は終わりました。しかしタビット兄弟の認識を変えないと本当に解決したとは言えません。

ソラ「ちっこいくん、ちっこいくん……」

ムーブ「おにーたん、わるくない……」

ソラ「人が死ぬっていうのはね。二度と会えないことなんだよ。無理矢理、戻しちゃったら、こんな風になるの」

ムーブ「……いけないの?」

そこでジジさんとマットさんの葬儀をもう一度行い、ムーブ君にも参列させる事にしました。

葬式は死者の為だけにあるのではなく、残された者の心を整理させる為にもある。例え幼くてもそれを受ける権利がある。

にも関わらずその権利を履行させなかったからこんな歪な事件が起きたのかもしれない。あと兄貴の怠慢も大きな原因ですが。


エア「大丈夫、これからは、お兄ちゃんが遊んでくれるから。ね?(脅すようにニコリ)」

モーブ「遊びます、遊びます……でも」

しかしこれで事件が発覚し、彼が官憲に捕まれば弟がグレてしまうかもしれない。

そこで事件の犯人に蛮族をでっちあげ、モーブが逮捕されないように取り計らいます。

今回の事件で兄弟共に心を入れ替えれば再犯の可能性も低いし、わざわざ刑に服させる必要もないという判断。


モーブ「え、あの、その……自分、官憲に突き出されると思ってたんですが、法の裁きを受けるつもりで……」

ジーク「いいよ。その分、弟としっかり遊んでやれ」←黄門様!

メッシュ「そう、そして我々がこの村に立ち寄ったときには……わかっておるな?(にやり)」

モーブ「はいいいい、最大限のお持て成しをさせていただきます!(平伏)」

ジーク「メッシュ、それは恐喝だ」

これで彼らが兄弟として仲良く生活してくれれば本当の意味で事件は解決ですね。

しかしこのパーティ、口は悪いしぞんざいだけど、結構根は善良なので見ていて安心できますね。


第三話 空から国を見る方法

★成長、成長

今回のキャラクターシート


今回の能力値の成長は以下の通り。特にブレイクする人はいませんでした。

ジーク:生命力15→16

ソラ:筋力19→20

エア:生命力18→19

メッシュ:器用度19→20


ただし<能力増強の指輪><能力増強の腕輪>を購入する人が出てきました。

これらを装備している人は各能力値(生命力と精神力を除く)を増強する事ができます。指輪で+1腕輪で+2です。

これによりジークは筋力、ソラは器用度をそれぞれブレイクさせて能力値の成長を待たずにボーナスを増やしています。


またこれらは壊すと瞬間的に能力値をブーストする事もできます。指輪で+13腕輪で+14です。

つまり瞬間的にボーナスが最低+2されますね。もし指輪か腕輪を装備していてボーナスが増えていれば+3もされます。

メッシュは<疾風の腕輪>を装備しても敏捷度ボーナスは増えませんが、《先制判定》や《回避力判定》の時に壊せば達成値が+2されます。

万が一の時の保険として壊す事前提で使う事もできる訳ですね。あとジークに貸すと敏捷度ボーナスがブレイクしますしね。


技能の成長ではジークがファイター2→3と成長し、《魔法拡大/数》を習得。妖精使いとしても活躍する予定。

妖精魔法は対象が個人となる魔法が多く、この戦闘特技を取っておけば後で何かと役に立つでしょう。

それに合わせて<宝石ケース>も購入です。妖精魔法に必要な<妖精使いの宝石>を4つまで収納でき、装備する部位を節約できます。


メッシュはグラップラー1→2で少し強くなりました。彼は技能の掛け持ちが多くて遅れ気味ですね。

あと<ロープ>を30m分購入しました。基本は10mで10ガメル、追加分は1mにつき1ガメルと割と安い。


ソラはフェンサー0→1で前衛技能を身につけました。元々能力値が優秀なのでそこそこ戦えます。

エア「あああっ、危ないことしちゃだめだって、あんなに言って育てたっていうのに!(身悶え)」

とはいえナイトメアは魔法戦士に非常に適した種族なんですよね。〔異貌〕を使えば鎧の制限がなくなる訳ですし。

金属鎧を着ながら発声も動作も必要なく真語魔法を使う事だって可能です。人間には羨ましい限りですね。


ただしフェンサーだと装備は筋力の半分までしか使えず、前衛の主力にはなり難い。その分安く技能を成長できますが。

ソラ「メッシュさんとお兄さんの戦い方を見ていて、その間を行ってみた

ジーク「む、俺たちは頼りないと思われてるようだぞ、メッシュ」

メッシュ「ちがいますよ、ジーク様。我々のコンビネーションが羨ましくて混ざりたいのですよ」

ジーク「じゃあ、今日から三連星の一角を担ってもらおうか」

エア「三馬鹿にならないように気をつけるのよ、ソラ」

この場合踏み台にされるのはメッシュになる気がしてならない。


エアはシューター1→2と成長させましたが、やはり《精密射撃》を取る気配はありません。

装備として<薔薇のチョーカー>を購入しました。これは1回だけ算出ダメージを2点軽減してくれるというものです。

使い捨てではありますがやはり保険として使える。SW2.0にはこういう安価で使い捨てのアイテムも多くて面白いですね。


★新しい依頼

今回も「水晶の欠片亭」から物語は始まります。今日も一行は店でうだうだしていました。

前々回保護されたクーン君ですが、どうやらパティシエの才能があったらしく女性客で賑わっているようです。

姉妹「……それは、うっかりわたしたちも入り浸る(ぼそ)」

エア「冒険者になるつもりはなかったけど、このデザートセットがあるなら……」

ソラ「お姉ちゃん、まだ冒険者のつもり、なかったんだ(はぐはぐ)」

エア「ソラはすっかり違和感なくなってるみたいだけどね(もくもく)」

元々エンク君の料理目当ての一般客も多かったし、なんだか普通の飲食店になりつつありますね。


女性客が多いとジークも興味津々。うっかり口が軽くなっています。

ジーク「いやー、こないだリビの村ってトコに行ったら、ゾンビ作ってるやつがいてさー」

ソラ「口軽ッ!」

エア「見つけたら、スリッパではたいておきます

ジーク「……く。委員長がどんどん俺に手を出してくるようになった」

エア「誰が委員長だ」

確かに委員長気質かもしれません。どちらかというと風紀委員って気もしますが。


あとジークは相変わらずの江戸っ子気質で現金が手元にある事に落ち着かない様子。

エア「残ってちゃだめなわけ?」

ジーク「だめだな。それは男の生き方じゃない。どっかに賭博場とかないの?」

ソラ「……つれてってあげようか?」

エア「こらぁ!」

メッシュ「ジーク様、我々は、情熱の炎を燃やす冒険に命を賭けるべきではないのですか?
      己の命がチップですよ、燃えるでしょう」

ソラ「現金のほうがいい」

メッシュ「あなたには言ってません。うちのボンを堕落させんでいただきたい」

この街はカナリスといいますが、ルーフェリア信仰の総本山なので賭博や風俗といったものは公には存在しません。

ただしそういう繁華街も街から出れば存在しているらしい。宗教国家とはいえ人間が大勢住んでいればそういう需要もある。


ジーク「とりあえず冒険の刺激よりは、身近な刺激でも求めるか。俺も若いから」

ソラ「じゃあ、おなじみのお店への紹介状書いてあげる。現金オンリーよ?」←常連

エア「妹が悪い影響を受けるから、リッタさん、よさげな仕事ないっ!?」

メッシュ「いや、どう考えても悪い道にターボダッシュで引きこんでるのは、あなたの妹のように思えるのは気のせいですか?」

今までのニート生活の裏でどんな遊びをしていたか伺えますね。


さて今回のお仕事はその繁華街で待つ依頼人に荷物を届けるというものです。お使いミッションですね。

依頼人の名前はムーテス。彼はルーフェリア原産の名物を外国に輸出するという商いを計画している商人です。

リッタ「その商人は元冒険者でね。かなり成功したらしくて、相当大規模に商売を始めようとしてるんだよ」

ジーク「成功した冒険者?あやかりたい……」

ソラ「いいなー(指咥え)」

報酬は前金だけで1000ガメルと破格。これには必要経費も含まれていて、商品の調達費も含まれています。

ちなみにムーテスはリルドラケンです。ラクシアになってから加わった新種族、空を飛べる竜人ですね。


ジーク「調達?」

メッシュ「この国の名物って言ってましたっけ?それって、何ですか?」

リッタ「

この国の湖の中央はルーフェリアの本体が存在する聖域であり、その湖の水はある種の縁起物としての価値があります。

ルーフェリア信仰は現在外国にも拡張しつつあるので、そういう信者が祈る偶像としてこの水が売れる訳です。


ジーク達は大きな樽に湖の水を入れ、それを輸送する事になります。

ジーク「頭いいなあ、その商売人」

エア「まさしく女神の起源水」

ジーク「元手、俺たち雇うだけだもんな」

メッシュ「外国で大ブレイク、「超神水」とか言われていたら……我々も商売しましょう」

それじゃあ潜在能力を引き出す毒物になります(笑)


この依頼に先立ちまして、リッタさんは彼らに店のエンブレムを渡します。青い水晶の欠片のようなエンブレムです。

この世界の冒険者の店には各店で固有のエンブレムがあり、信頼できる冒険者に渡す習慣があります。

それを持つ冒険者が活躍すれば店の評判が上がるし、冒険者にとっては身分証明にも使える訳ですね。


ソラ「あたしは、いそいそしてる。もう胸に着けてる」

エア「ソラが、嬉しそうだからいっか。一人でこの悪人ズのなかに放り出すのも心配だし」

メッシュ「誰が悪人ですか」

ソラ「つっこまないであげて。このまま、上手にこっそりさりげなく、冒険者の道に引きこんであげるの……(にや)」

メッシュ「……一番の悪人は、身内のようですぞー」

もう手遅れです。




では早速水を汲みに行きます。

メッシュ「しかし、売れるほどに綺麗な水なのですか、あの湖の水は」

エア「当然。万が一汚れても、月に一度神官一斉「"ピュリフィケーション"の日」を設定し
    お勤めとして唱え捲るという行事があるんだから!」

ソラ「文字通り、ルーフェリアの加護によって、美しさの保たれてる湖」

それじゃあその辺の水にエアが"ピュリフィケーション"しても御利益は同じという事になる。


現在の彼女のMPは29点。消費MPは2点だから14回唱えられる。1400リットルまで浄水可能

2リットルのペットボトルにして700本分ですか。樽の大きさが分かりませんが結構埋まるかもしれない。

ていうかそれならエアに同行してもらって旅先でどんどん浄水してもらった方が効率がいいですね。


でも彼らは素直に樽を荷車に載せ、地道に水を汲みました。ぞんざいに見えて真面目な人達です。

この際水が苦手なソラは参加できませんでしたが、荷車を牽く時には手伝う事にしています。

メッシュ「しかし、そんなに水が嫌いで、風呂は大丈夫なんですか?」

ソラ「嫌い。だから、いつもお姉ちゃんに押さえつけられて、猫の子みたいに洗われてる

エア「……困ったわ、妹が物理的に反抗する能力を身につけてしまった……」

ソラ「お姉ちゃんの急所をついて脱出(ニヤ)」

ジーク「なんだよー、水着になれよー(駄々っ子)」

ソラ「絶対嫌」

水だけじゃなくてお湯とかも駄目なんでしょうか。最早悪魔の身の能力者です。


ジーク「しょげながら、エアに水泳教えてもらおう……」

エア「わかった。まずは、素潜り十分からはじめましょう、話はそれからよ」

ジーク「死ねってか」

〔剣の加護/優しき水〕の効果で1時間は平気で素潜りできますしね。教えを請う相手が間違っている。


エア「はいはい!十メートルも潜れなくて、泳げると思ってるの!」

ジーク「くぅううっ、そう言われるとつい、張り合ってしまう己が憎い!十メートルなら潜れる!いける!(がぼごぼがぼ)」

メッシュ「そして、浮かんで戻ってくるジーク様

ソラ「あ。お空にお兄さんの顔、浮かんでる」

こんな所で溺死とかされても困ります。ちなみに水中で無呼吸で活動できるのは「生命力ラウンド」までです。

現在のジークだと16ラウンド、160秒程で浮きますね。10分耐えようと思ったら生命力60とか必要です。


★依頼人の下へ

水を汲み終わった一行は待ち合わせの場所に向かいます。場所は街頭沿いから少し離れた場所です。

この際彼らは馬などは借りず、人力で荷車を牽いて移動します。馬は250ガメルでレンタルできますけどね。

ジーク「ふふふ。ここで力を鍛えまくって、次の成長は筋力という遠大な伏線を張るのだ」

メッシュ「がんばってがんばって、車を引きました。そしてその結果上がったのは、精神力でしたー!という落ちはどうですか?」

ソラ「がんばる。あたし、どっちでも可」

道中一ヶ所だけ難所があって冒険者+筋力の判定を行い、ソラの失敗をジークが、メッシュの失敗をエアがカバーしました。


ジーク「大丈夫か、無理すんなよ、ソラ」

ソラ「……ちょっと、きゅんとするかも」

実は<剛力の指輪>によるボーナスのお陰で成功してたようですが。


エア「大丈夫?無理なさらないでね、メッシュ」

メッシュ「エルフに言われると……ちょっと、イラッとするのは、何故でしょう」

エア「ほほほ、種族最高値の筋力ですから」←それでも11

GM「エア、出目がよかったですもんね」

エア「今がダメでも、次こそ頑張ればいいのです。そうすれば人生は±0。
    湖面のように穏やかな人生を送ることができるでしょう。にっこり」

メッシュ「……イラ。イライラ……。ジーク様、天下を取った暁には、エルフなど滅ぼしてしまいましょう

ジーク「俺がきっちり水泳覚えてないからだめ」

ちなみにナイトメアは殺すリストトップ。エルフはその次です。


そうして街道を行く一行はやがて目的地の上空に飛空船が浮かんでいる事に気づきます。

一同「飛空船!?(驚愕)」←ルールブックでは飛行船

一行は飛行船の存在に驚きながらも近づくと、その船体には「ムーテス商会」と描かれていました。


魔動機文明時代はこの飛行船によって各国が結ばれ、一般人でもちょっと贅沢をすれば利用できる交通機関でした。

現代においても遺跡から発掘された魔動核推進装置のついた船に取り付ける事で再現が可能となっています。

ただし魔動核は大変貴重な品物であり、自然と飛行船も豪商や国家などでないと所有できないものです。

それだけに魔動核を掘り当てる事は冒険者のサクセスストーリーの一つであり、ムーテスはその成功者の一人なのです。


ちなみにルーフェリアには一隻もありません。カイン・ガラで魔動核を掘り当てられる事はあるそうです。

ムーテスもそうして掘り当てたようですね。またそうして掘り当てられた魔動核はより裕福な国に売られる事もある。

この地方では"年輪国家"アイヤールという軍事国家がそれにあたり、飛行船も複数所有しているようです。


エア「……ルーフェリアにも一隻欲しいなあ」

ジーク「神様の護りはどうした」

エア「だ、だって、神様だけに、ガードをお任せするのも心苦しくない?」

ジーク「信者と思えん遠慮だ」

本当は乗りたいだけじゃないかとも思います。


船体はかなり新しく、魔動核の発見を機に借金をして造られたものと思われます。

ジーク「アレ落とすの?」

エア「落とすな」

ムーテス「落とさないでくださいよー!」

彼らの存在に気づいたムーテスは飛行船から顔を出し、地上に向かって飛び降りてきました。

これがリルドラケンの種族特徴〔剣の加護/風の翼〕です。1日に合計6ラウンド分飛行が可能になります。

飛行速度は通常移動と同じ。飛行中は近接攻撃の命中力と回避力に+1のボーナスが入るという嬉しい能力です。


メッシュ「お届けモノにあがりました。サインをください」

ムーテス「やあやあ、どうもありがとう!ご苦労様ー!あ、ペン忘れたっす」←陽気

エア「ペンとインク誰か持ってる?」

ムーテス「ああ、船には置いてるんだけどなあ。ちょっと、取ってくるよ。メルルル、船を下ろしてくれ!」

地面に碇を刺して高度を調節する仕組みのようです。魔動核の操作で浮力を調整できないんでしょうかね。


ムーテスはリルドラケンらしくなかなか陽気な人でした。これから儲けてやろうという気概に溢れています。

魔動核があれば最悪商売に失敗しても売って借金を帳消しにできますしね。冒険者ドリームの体現者ですね。

ムーテス「これからこれから、バンバン儲けるよー!

ソラ「おじさん、いい気になってると、足許掬われるよ(ぼそ)」

ムーテス「大丈夫大丈夫!」

勿論根拠なんてありませんが、商売を立ち上げようというのならある程度根拠なき自信も必要なのかもしれない。


ちなみにメルとルルというのは使用人のコボルドです。

ソラ「……そう。この船、乗組員見たところ、三人?」

GM「そうですね。見たところ……」

ソラ「そっか、三人……そういえば、コボルドって、1レベル、ね(にや)」

GM「あっ、この船、浮かんでますから!簡単に乗り込めませんから!(汗)」

なにハイジャックしようとしてるんですか(笑)


しかし飛行船に乗ってみたいという欲求は当然のものであり、ジークなんて早く荷物を積み込めと急かしています。

ジーク「一応言っておくが、これは単に、くそ重い荷物を手渡して楽になりたいだけだ。
     決して、飛空船に乗ってみたいわけじゃないぞ!(人差し指びし)」

ムーテス「遠慮しなくていいよ。乗ってくれないか、僕の新車に!(親指びし)」

メッシュ「新車を見せたくてたまらないらしいですな」

エア「気持ちは分かる」

ソラ「わくわく。わくわく」

飛行船なんて乗ろうと思ってもなかなか乗れるものじゃありませんしね。

ちなみに運賃の相場は最低500ガメル、乗客扱いしてくれるのは5000ガメル以上というもの。

500ガメルというのは貨物扱いでしょうかね。異なる地方を移動するのに使えない事もない。


★受難のリルドラケン

飛行船には様々なサイズがあり、それによって乗員にも目安があります。

小型で10人まで、中型で50人程度、大型で100人を超える人数を乗せる事も可能になります。

ムーテスの持つ飛行船は小型〜中型にあたると思われます。彼と2人の使用人の居住部だけ確保し、後は貨物スペースです。


ソラ「……ぴとり(窓に張り付く)」

エア「うわー。湖が一望できる」

ジーク「空から風景を見るなんて初めてだ」

メッシュ「はあはあ、私のメモリーには、これくらいの風景、いくらでも刻んでありますので、平気ですよはあはあ(真っ青)」

ジーク「怖いんか」

メッシュ「何を仰ってます。私は魔動機文明の申し子ですぞ……すいません、高いの怖いです(めそめそ)」

まさかの高所恐怖症。まぁ高い所は怖いのがある意味普通の感覚なのかもしれませんけど。


彼らのはしゃぎっぷりを見てムーテスは気を良くしました。

ムーテス「気に入ったよ、君たち!今日は宿と酒を奢ろうじゃないか!

その間飛行船は浮かしておいて、朝になったら〔剣の加護/風の翼〕で飛び乗れば夜盗の類いも大丈夫。

問題は相手も空を飛べた場合です。同じリルドラケンや高位の魔法使い、羽を持つ蛮族や魔獣等もいますし。


ジーク「何があっても、俺たちの責任じゃないからな」

ソラ「こんな景色見られるなら、この人の下で、働くのもいいな……(ぼそ)」

エア「何ですって!ついに……ついに、妹が労働意識を!」

ソラ「今までだって、持ってなかったわけじゃ、ないのよ?」

エア「し、知らなかった……(よろりら)」

微妙に分かり合えていない姉妹。姉妹でも大人になると多少離れるものですが。


ソラ「わかってないわけじゃないの。お姉ちゃんがいつも、あたしを子供扱いするだけなの」

エア「子供扱いなんてしたことないじゃない……あなたは、いつでも、わたしの妹よ

ソラ「……まあ、それは、確かに覆らないけど」

エア「そう、子供扱いをしているのじゃなくて、わたしの妹扱いをしているの」

ソラ「……この、ウザい愛、なんとかならないかなー」

むしろ大人になってもここまで妹を意識してくれる姉は貴重かもしれません。

ムーブ君の時にも言ってましたが、無視されるよりはずっといい。ウザいけど。


それから彼らはムーテスの奢りで結構グレードの高い店で飲みました。実に気前のいい人です。

そうして話していると彼はそれほどレベルは高くなく、ジーク達と同レベル帯である事が分かります。

ジーク「ということは、もしや、冒険に出てすぐに、一山当てた?

メッシュ「う、羨ましい。で、どこで掘り当てたんですか、あの飛空船の核は?」

ムーテス「はっはっは。それは、ちょっと言えないなあ。あ、みなさんも頑張ってよ」

それでも場所は教えてくれますけど、一度見つかったからと言ってまだ存在するとは限りません。

勿論前例があれば2つ目や3つ目がないとも限らないので、それに賭けて調べてみるのも一興です。

同じ事を考える人は他にもいるでしょうから、既に現場はゴールドラッシュさながらに採掘が進んでいるでしょう。


ジーク「悔しくなんて、ないんだからなっ!とか言いつつ、奢られるままに高い酒を飲むぞ」

ソラ「あたしも」

この際アルコールに対する生命抵抗を行います。飲み方によって目標値も少し変わってきます。

10で嗜み程度、12でそこそこ、14で浴びるように。失敗すると朝まで全判定に−2、1ゾロなら昼までです。


ここではエアは嗜み程度に、ジークはそこそこ飲んで抵抗には成功しました。

ソラ&メッシュ「(ころころ)……あ」

メッシュ「嗜むつもりでしたが、アルコール分解機能が誤作動を起こしているようです……ばた」←1ゾロ

ソラ「折角の機会だから、浴びるよーに飲んでみた。のに……高いお酒って、酔わないのね」←6ゾロ

何となく納得できない事もない結果ですけどね。ソラは完全なザル、メッシュは意外と下戸。


メッシュ「うひょひょひょひょ〜〜〜ワタクシの、アルコール分解機能は世界一イイイィィ!(踊ってる)」

ジーク「人格崩壊してるぞ、お前!誰か止めてくれ!」

姉妹(他人の振り)

ジーク「こんなときだけ息のあった仲良し姉妹め!」

メッシュ「ひょひょひょひょ〜〜〜楽しそうに、夜の街に繰り出しますよ〜〜〜裸踊り寸前の姿で〜〜〜」

ジーク「うひー!やめろー!」

そして慌てて従者を追いかける主人でした。そしてそのまま潰れたメッシュを引きずって野営。


ソラ「……お姉ちゃん」

エア「うん?」

ソラ「節度って大切、ね(しみじみ)」

エア「そうね。ところで、今手酌でついでるお酒は何本目?

ソラ「17本目

エア「……さっきの台詞、お姉ちゃんの目を見て、言って頂戴」

ソラ(目、逸らし)

こちらは素直にムーテスの奢りで宿に止まりました。ただし妹は一升瓶を抱えて(笑)


そして一夜を過ごしますが、夜中に彼らはレンジャー/スカウト+知力の判定を行いました。

目標値は8と低いものでしたが全員失敗し、結局誰も気づけないまま朝を迎えたのでした。




そして朝、野原で大の字で寝ていたメッシュは空を見上げて判定の必要もなく異変に気づきます。

GM「空に浮かんでいたはずの、ムーテスさんの飛空船が見当たりません

一同「……(しょっぱい顔)」

ジーク「さ、いい旅をな!ムーテス!」

メッシュ「これから先、何かいいことありますよ!(敬礼)」

エア「こらこらこら!」

ムーテス「ちょ、ちょっと見てくるよ!」

するとムーテスは大慌てで現場に走りました。無理もない、魔動核自体がなくなれば借金の返済すらできなくなる


現場に着いてみるとそこは荒れ果て、飛行船の姿はなく、飛行船から落下したルルが横たわっていました。

メッシュ「息はありますか?」

GM「あります」

メッシュ「(銃を取り出す)だんだんっ!(こめかみに発砲)」

一同「ぎゃあああっ!」

ジーク「トドメさすな、ばか!」

メッシュ「あ。これ、"ヒーリング・バレット"ですので」

ソラ「……ビジュアルが怖い……」

現在の彼だと威力0+4点だけ回復しますね。クリティカルは起こらず、期待値にして6点程です。

消費MPは1点ととても優しい。MPが13点しかないメッシュでも13発も撃てるし。

〔HP変換〕でHPをMPに変換すればもう13発は自力で撃てる。そう考えるとなかなかの回復量です。


するとルルは目を覚まします。

ルル「うーん、うーん」

メッシュ「まだ、目が覚めませんか。では、もう一発……

エア「怖いって言ってるでしょうがー!」

落ち着いたルルに話を聞いてみると、夜明けに何者かに船を引きずられたというのです。

メルとルルは振り落とされないように必死でしがみ付きましたが、ルルは運悪く落下してしまったのです。


何らかの巨大生物の仕業である事が予測できますね。それを踏まえて周囲を見回すと色々発見もあります。

周囲の木々は大きな力でへし折られ、地面には巨大な足跡が見受けられます。

メッシュ「靴を履いておりますか、裸足ですか?」

GM「えっとね」

ジーク「女物のヒールです」

ソラ「これはもしや……ルーフェリア様、降臨!!

エア「いやいやいや、ないから!絶対にないから!」

ルーフェリア(ソラ)「わらわの領域を侵すとは、いい度胸よの……我が聖域の飾りにしてくれるわ」

エア「いやーっ!そんなルーフェリア様いやーっ!……でも、ルーフェリア様に召抱えられたのなら、仕方ないわ、うん(納得)」

実際は四足獣のものと思われます。ソラが《魔物知識判定》で正体がキプロクスであるとつきとめます。


キプロクスは4レベルの動物で、長い首と巨大な体を持つ全長10mの爬虫類です。ブロントサウルスみたいな感じですね。

SWには存在しなかった部位モンスターであり、複数の部位に個別にHP等のデータが設定されています。

あと以後のモンスターデータは特に断りがない限り「バルバロステイルズ」を参照していきます。

ルールブックの記述と比較したら違いが見つかる事もあると思いますが、気になるようならそれも合わせて記します。


キプロクスの場合、頭部(コア)胴体尻尾の三部位に分かれます。コアに当たる頭部を倒せば勝利です。

ところが胴体には《攻撃障害=不可・+4》の能力があって頭部への攻撃を妨げます。胴体そのものに攻撃能力はありません。

「不可・+4」というのは胴体が存在する限り頭部は近接攻撃の対象にならず射撃攻撃は回避に+4されるという意味です。

よってまず胴体を倒して頭部を下げさせて倒す事になります。もちろん相手も無抵抗ではない、他の部位が攻撃してきます。

頭部は《炎の吐息》によって1人にブレス攻撃をしてきますし、尻尾は《テイルスイング》で5体までの範囲攻撃が可能です。

ルールブックと数値的な差は見当たりませんが、これら特殊能力の名称は他のデータに合わせて変更されています。


何故飛行船を引きずっていったかはまだ分かりませんが、その巨体なら飛行船を持っていく事も十分可能でしょう。

幸い相手は巨体で足跡も鮮明であり、追跡は決して難しくない。移動速度は12しかないし。でも徒歩では……。

ムーテス「君たち、馬を借りてこなかったのかい?

ソラ「荷物、運べたから、いらなかったの」

ムーテス「あの前金には、必要経費も含まれているって、女将は言わなかったかい?」

ソラ「……そういう意味だったんだ」

ジーク「……か、考えもしなかった」

メッシュ「全員、素直に懐に入れました」

エア「全員ランニングー!

一同「おー!」

馬がないなら「ダッシュ」っていう移動方法がありますね。幸い彼らの移動速度は14以上あるし。


メッシュ「おっと待ってください、私は二日酔い中でして……ちょっと草むらに養分を与えてきます」

ソラ「汚い」

ジーク「正直、ムーテスにはあまり同情しないが、可哀想という気もないわけじゃ、ない。お前も冒険者なら一緒にこい

ムーテス「ありがとう!僕、戦士なんで、役に立つよ!」

しかしムーテスは好意に甘えるつもりはない。これは依頼として彼らに頼むつもりです。


ムーテス「このままじゃ水樽を運んでもらった後金も払えない。自分にも残るのは借金だけ。破滅だ

ソラ「それ、間違いない

メッシュ「追い討ちを掛けてますな」

ムーテス「ちょっと、ぐさっときた」

そこで魔動核だけでも奪還するのが依頼の最低条件です。それだけあればやり直せるから。


メッシュ「ただし、正直な話、絶対成功するとは言い切れません
      それは、元冒険者のあなたにもわかるでしょう。なので、報酬の話はしません」

ムーテス「わかってる。ただ、全力を尽くして欲しい

エア「ね。報酬、コボルドどっちか欲しい……」

ソラ「お姉ちゃんの口塞ぐ」

ムーテス「あ。メルも助けてやってほしい

ジーク「使用人を忘れてたな、お前!(びしっ!)」

成功するとは限らないのは当たり前。それでもどんな依頼でも全力を尽くすのは冒険者の矜持です。


★ぷかぷかって……?

キプロクスの追跡を開始した一行は川に出ます。水はかなり濁っていて、キプロクスが渡ったものと思われます。

川の向こう岸には農場が広がり、農夫の姿も見えます。情報収集と馬の調達地点といったところでしょう。

川の上流には橋がかかっているので渡るのは簡単ですが、何故か一行は素直に川に入って渡ろうとします。


すると水が苦手なソラには難所となります。

ソラ「……うー。水怖い……」

ジーク「しょうがない、ソラ、メッシュに乗れ(きっぱり)」

メッシュ「ジーク様!そこは「俺が抱いていってやる」と言うべきでしょう!
      男として、ダンディとして、ナイスガイとして!」

ジーク「いや、俺も流される可能性あるしな」

メッシュ「……くっ、しかたがありません。では、お二人でわたしの肩にお乗りください。
      そして、存分に乳繰り合ってください!
      今、この瞬間私の耳の機能はオフにしておりますので!」

そして何故かメッシュがジークを、ジークがソラを肩車してトーテムポール風に渡ることになります。

この際二人も乗せているメッシュは冒険者+敏捷度で目標値11の判定をすることになりました。


メッシュの本来の基準値は4なので期待値で渡れますが、実は彼はまだ二日酔い中でして……。

メッシュ「(ころころ)……見ないでください

ジーク&ソラ「ぎゃ〜〜〜〜〜!(流された)」

メッシュ「ああージーク様が流されていくー私と共にー

エア「あんたらねー!素直に、橋渡りなさいよー!」←安全に渡った

流されたジークはソラを助けようとエアに教わった泳法を試すもうっかり1ゾロ。

仕方なく〔運命変転〕で6ゾロにして事無きを得ました。ムーテスはそれに付き合って〔風の翼〕でメッシュを救出。


こうして彼らは追跡開始直後にも関わら命がけの冒険を乗り越えたのでした(笑)

ジーク「普通に、橋を渡ればよかった……」

ソラ「すんすん、水怖い、水怖い」

ソラの〔弱点:銀&水属性〕は銀の武器や水・氷属性の攻撃でダメージ+2点なので、水そのものが脅威ではない。

しかしこういう風に苦手意識という形で種族特徴を生かすのも面白いですね。例え実害がなくても。


その一部始終を見ていた農場の人に聞き込みをすると、どうやらキプロクスの存在自体は珍しくないらしい。

農場の人「ああ、出るよ。困ったもんだよねぇ」

ソラ「……あっさり認めた」

現在この国は国土を拡張中であり、北側の神殿の移動もあって警戒が緩くなっているらしい。

そのせいでキプロクスもこの辺に現れるようになっているそうですが、蛮族避けにもなっているとか。

安全な土地が増えるのはいいことですが、その過渡期にはどうしてもこういう混乱が生まれるものですね。


その巣はここから北の方だと農夫は指差しますが、農場の子供は南西の方角を指差して訴えます。

子供「あっちだもん、さっき、飛んでったもん!

彼は小さいキプロクスが空を飛んで行ったと訴えます。四肢をバタつかせて風に流されるようだったらしい。


ここで気になるのは例の魔動核です。魔動核には飛行石よろしく浮遊力がありましたね。

エア「……もしかして、その核とか食べたら……キプロクスも、浮く?

ムーテス「試したことがないけど、強力な魔法の品だからねえ。浮くかも」

ソラ「食べてみたい」

エア「やめい」

何しろ人や物を載せた船を浮かせるぐらいです。子キプロ1匹浮かせても不思議はありません。


ジーク「仮説1。船をひきずっていきました。そして、ぱくっと食べました。浮きました。……ばいばい

メッシュ「うむ、これで事件は迷宮入りですな(うむうむ)」

エア「入れない、まだ早い!」

その推理は正解です。謝って魔動核を飲み込み、飛んでいってしまった訳ですね。


すると船の残骸は北の巣にある可能性が高いので、ムーテスは単身そちらに行って船の備品等を回収します。

ムーテス「くれぐれも、無事に、『核』を取り戻してくれ。あれがなくなったら、僕は三回くらい破産できる

ソラ「大丈夫。一回の命で、三回破産できるなら……二回得したようなものだから

一同(爆笑)

メッシュ「どんなマイナスの相対性ですか」

ムーテス「そんな、ちょっといいことみたいに言わないでください!(涙目)」

ポジティブシンキング、ここに極まれり。


ジーク「頑張って「核」を手に入れて……ひっそり、売り払う

メッシュ「人生二回分の破産分を、我々がゲットするわけですな、すばらしい計画ですジーク様」

エア「あの二人には、もう"キュア・ウーンズ"唱えない」

主従「すいませんっした!出来心っす!

実際には魔動核にはそういう計画を立てられても不思議ではないぐらいの価値がある。

でも彼らは何だかんだで善人だから、そういう火事場泥棒のような真似はしないでしょう。


あとは移動方法を確保しておきます。

ジーク「牧場のおっちゃん、馬あるか」

農夫「牛なら

ジーク「役立たねぇよ!

農夫「嘘です。ありますよ馬」

ここで馬を三頭借ります。一頭はムーテスが乗って北に向かい、4人は他二頭にタンデムして南西へ向かいます。


★宿屋を一蹴り

南西には昨晩休んだ繁華街があります。その大通りを行くと昨晩泊まった高級店「静かなカエル亭」に人込みができていました。

エア「ソラ、何か、アメニティくすねた?」

ソラ(ぶんぶん首を横に振る)

メッシュ「すいません。何があったんですか」

野次馬「いやーすごいよ!宿屋が踏まれたんだ!

彼は興奮気味に店の屋根を指差します。そこにはキプロクスのものと思われる足跡がありました。

飛行船の現場に残っていたものよりは小さいので子供と思われます。それでも象ぐらいあるらしいけど。


どうやらぷかぷか浮いていた子キプロが店の屋根に着陸を試みたようです。

ところが勢い余って「俺を踏み台にした!?」とばかりに屋根を踏みつける形になり、バウンド。

そのままぷかぷかと流されていったそうです。手がないから捕まるという方法は取れない訳ですね。


メッシュ「ああ、それは、ムーテスさんの宣伝用アドバルーンですので、気にしないでください」

店主「ええっ、何だって!それじゃ弁償してもらわなくちゃ!

メッシュ「……あ」

ソラ「もしかして、口からでまかせ言ったら、えらいことになって、うろたえてる……?」

メッシュ「……私は、貝になりたい(さめざめ)」

口は災いの元ですね。うっかり彼の負債を更に増やしましたが、魔動核を売れば誤差の範囲かもしれない。


さてここまで状況を理解した上でもう1つ推理すべき事があります。親キプロはどうしたのか?

ソラ「もしかして、依頼人単独でそっちに行かせた?」

ジーク「いやそうじゃなくてさ、追いかけてくるんじゃないか?親だぞ?」

メッシュ「下手したら、子供の気配を追ってきた親によって、この繁華街が蹂躙されるのでは?」

つまり獲物と間違えて捕獲した飛行船を親が子に与えたところ、子は間違えて魔動核を飲んでしまったと。


親キプロ(メッシュ)「ほーら、変わった鳥を捕まえたのよ、お食べ?」

子キプロ(ソラ)「わーい、ありがとう。ぱく。……あ〜れ〜(ぷかぷか)」

ジーク「いいのか!そんなメルヘンな話でいいのか!」

エア「気付いたらきっと、追いかけてくるって、目を警戒色で真っ赤にしたキプロが!

そう、キプロの怒りは大地の怒りです。もう誰にも止められません。


まぁそうだとしたらムーテスの危険は下がりますけどね。もし違ってたら逆に跳ね上がるけど。

ジーク「あいつが間違って死んでたら、あの腹の核は俺たちのものだ!

エア「ちがーう!(怒)」

ソラ「…………ちがう?」

エア「いや、その、それもありかしら(もじもじ)」←欲が出た

メッシュ「まあ、それは全て、ムーテスさんが亡くなっていた時の場合です。いや、むしろ、積極的に祈る、死ね

エア「いや、ない!ごめんなさい女神様!わたしうっかりと邪悪な考えに陥りかけました!帰ったら懺悔します!」

……善人でも欲のない人はいないという事でしょうか。黄金の魔法は精神抵抗とは無縁にかかりますしね。


それから追跡を続行した一行は子キプロを追っていた別の冒険者と遭遇します。

彼は上を向いて乗馬していたら不注意が祟って落馬してしまい、落下ダメージを受けていました。

彼を助けるとお礼に<ヒーリング・ポーション>2本と、子キプロにしがみ付いていたメルの情報をもらえました。


<ヒーリング・ポーション>は威力20でHPを回復できます。100ガメルしますが戦闘中も使えて便利ですね。

威力10でHPを回復できる<救命草>もあります。30ガメルと安価ですが使用に10分を要するので戦闘中は使用不可。

ちなみにポーション類による回復にはレンジャー+知力を、薬草類による回復の場合はレンジャー+器用度を加算できます。

他にもMPを回復させる薬もありますし、回復魔法に頼らない回復役というのがSW2.0になってからのレンジャー技能の強みですね。


ソラ「メル、無事だったんだ」

メッシュ「むしろ、もうじき無事じゃなくなりそうな雰囲気ですが」

ソラ「……早くしないと、茶色い毛玉が落ちてるかも。ぺちゃんこで」

エア「馬鹿なこと言わないの!その場合……赤い塊よ、ソラ」

飛行船ごとキプロクスの巣に連れて行かれて、隙を見て子キプロにしがみ付いて脱出したのでしょう。

しかしまた降りられなくなったのでしょうね。しかしメルの握力は異常ですね、ワンダかお前は。


やがて一行は上空に浮かぶ子キプロとメルの姿を確認します。森の上に突き出した岩山へ向かっているようです。

すると彼らも森を抜ける事になり、上を見ながら障害物を避ける難しさから冒険者+敏捷度による判定を行います。

タンデムだと目標値は11です。3以上の失敗で遅れ、1ゾロを振ると落馬するという設定です。


ジーク「(ころころ)16。全然問題なし」

メッシュ「……(ころころ)……あ1ゾロ!?」

エア「えええっ、もう、ここで50点稼ぐ!?

相変わらずのポンコツ執事っぷりです。他の人より平均2回ぐらい多く振ってる気がする(笑)


これで2人には落下ダメージが入って怪我をしましたが、2人とも回復手段はある。

メッシュ「そのとおりです、私はエルフの手など借りずとも……(こめかみに銃口を当てる)。
      ズキューン(ころころ)おあ!魔力分しか回復しない!

エア「わたし、自分の怪我は自分で治すわ」

メッシュ「なに、もう一度……(ころころ、1ゾロ)うそぉおおっ!」←早くも100点

エア「……わたし、逃げた馬捕まえてくるね」←手際がいい

メッシュ「すいません、エルフさん!どうか私めを回復してからいってくださいませー!

出たー!メッシュのジャンピング土下座!


そのころ主と妹は構わず追跡を続け、ふと2人がいない事に気付いていました。

ソラ「どうしよう……回復役、二人とも、置いてきちゃった」

メッシュ「いえ、置いていかれたというよりは」

エア「わたしたちが勝手に落ちていったというか」

メッシュ「正しく落伍人生!はっはっは!(やけくそ)」

エア「誰のせい!無駄に泳いで妹を主ごと川に流す。馬に二人乗りすれば、落っことす。これ何?新手のいじめ!?

メッシュ「私のせいではありません、全てはダイスの思し召し」

既にこの短時間で2回も1ゾロを振ってますしね。カオスの神様に気に入られている御様子。


★ちびキプロクスを捕まえろ!

一方順調に子キプロの追跡を続けるジークとソラはメルと会話できる所まで近づいていました。

既に暴れ疲れた子キプロは眠って脱力。馬の方が若干速く、ジークは馬を子キプロの腹の下に潜りこませます。

ソラ「……あの子、お腹裂くの?」

ジーク「とりあえず、捕獲してから考えよう」

そして岩山を登ると子キプロまで5m程度にまで接近できました。


ジーク「おい、メル!」

メル「な〜〜ん〜〜で〜〜す〜〜か〜〜」

ジーク「飛び降りろ、俺が受け止めてやる!

メッシュ「さすが!漢でございます、ジーク様!」

既に〔運命変転〕は使っていますが、それでも自分にはできると言い聞かせてチャレンジです。

判定は2段階あって、まずは冒険者+知力で目標値11の判定でメルに飛び降りるタイミングを合図します。

続いて冒険者+敏捷度で目標値12の判定で受け止めます。この際1回目の判定の失敗分がペナルティとなる。


ジークは1回目の判定では成功しましたが、2回目で失敗。2低かったので指輪を割れていたら何とかできましたね。

これでメルは落下し、5m分の落下ダメージ15点を食らう事になりました。即死しないまでも結構痛いでしょう。

ジーク「ちょいまち、何とかその下に、潜れない?ダメージ俺が受ける

そして見事にダイビングキャッチ。ジークはメルに代わって15点の合算ダメージを食らいました。


目を回していたメルの証言で事件の経緯が大体推理したとおりだと判明しました。勿論親キプロの件も。

メル「きっと、親が追いかけてきます!気をつけてください!」

するとずん、ずん、と田中○衛を思い出す地響きが聞こえてきます。来てる、やっぱり親が来てる。

その頃にはメッシュとエアも追いつき、メッシュの<ロープ>を使って子キプロを岩山に括り付けます。


そして親の足音がどんどん近づいてきます。

GM「ちなみに」

エア「ちなみに?」

GM「二匹います

エア&メッシュ「はぁあ?」

ジーク「……もしかして、夫婦でやってきてるってこと?」

子供がいなくなったら両親共に探し回ってもなんら不思議はない。ないけど流石に予想外ですね。


ちなみに接近してくるのは普通サイズのキプロのみ。もう1匹の大きなサイズは遠くから見守っている。

ソラ「もしかして、おとうさん?近づいてくるの、おあかさん?」

メッシュ「その背後にお兄さんお姉さん、おじさん従兄、孫、お爺さんお婆さんがぞろぞろと」

GM「嫌ですよ、そんなキプロクス愛の大家族状態

流石にキプロクス2匹を倒すのは無茶だし、何より可哀想なので魔動核のみ取り戻して子供を返してあげたいところ。

しかしどうやって魔動核を取り戻すかがまだ分かりません。目の前で腹を割こうものなら夫婦揃って殺しにくるだろうし。


メッシュ「とりあえず、誰か、金色の野に青き衣を纏いて降り立ってください!

それをやると一回跳ね飛ばされるんですが(笑)


★母キプロクスを迎え撃て!

いよいよ母キプロとの戦闘です。今回はできる限り気絶させ、殺さないように戦うつもりです。

ただしSW2.0にはSWにあった《手加減》というオプションがなくなっているので、うっかり殺してしまう可能性があります。

そこで特別にコア部位である頭部のHPが−5から0の間なら気絶扱いという事にします。

その上クリティカルはいつでも止めていいという親切設定。やり過ぎたら回復して調節すればいいし、かなりやりやすくなりました。


また母キプロは一行の背後に子キプロがいるので《炎の吐息》は自粛します。

メッシュ「くくく。人質が効いておるわ

エア「やめい!あのルーンフォークは絶対機能不全を起こしてる!メンテナンスするべきだと思う、ジーク」

ジーク「え。作戦成功なんじゃないのか?」

エア「ああもう、この主従は!」

《炎の吐息》が使えなくても頭部は牙による通常攻撃が可能となります。

よって前衛は《テイルスイング》でまとめて攻撃され、それに加えて1人が更に牙で攻撃される事になります。

今回もメッシュは先攻を取る事に成功。母キプロを傷つけすぎないようにしつつ、魔動核を取り戻すまで持久戦です。


1ラウンド目

まずエアが"フィールド・プロテクション"を仲間に使用して被物理・魔法ダメージ−1点にします。

これもSW2.0になってから追加された神聖魔法です。半径3m内の最大5体までの対象にかけられます。

防護点の効かない魔法ダメージまでカットしてくれる嬉しい魔法です。ただし「毒」「病気」「呪い」属性には無効。

操霊魔法にも防護点を+1する"プロテクション"はありますが、SWの時と同様に対象は拡大しないと1体です。

以降も開戦直後に"フィールド・プロテクション"をかけるというのは基本戦略として定着していきます。


続いてメッシュがまず胴体を落とそうと攻撃しますがハズレ。

エア「……うわ、あんな大きな胴体部分に避けられるなんて、恥ずかしくない?」

メッシュ「うるそうございます。そんなことを仰るなら、手前が攻撃してみやがれでございますよ(ぴくぴく)」

ジーク「メッシュ、壊れるな。俺も殴る」

とはいえ胴体の回避力は尻尾と同じ5(12)なのでそこそこ避けますけどね。頭部は3(10)しかないけど。

ましてこのGMは出目が良い事で定評がある。実際は固定値の12点どころではない値をコンスタントに出してそうですが。


ジークの攻撃は当たったようですがダメージはあまり出ません。

胴体の防護点3とあまり硬くはないけど、HPは素で33点あるので長期戦になりそうな予感。


次にソラは頭部に"パラライズ"をかけて命中力−2点にする事に成功。今後の被弾率を下げる事に貢献します。

SWだと抵抗を破ると相手は硬直して一気に勝負がつく恐ろしい魔法でしたが、SW2.0では違います。

回避力か命中力を選択し、それを−2点にするという形となっています。前衛の活躍を奪わない奥ゆかしい魔法ですね(笑)


そして母キプロの反撃です。《テイルスイング》で主従をまとめて薙ぎ払おうとしますが、主従は共に回避。

続けて頭部はジークに噛み付こうとしますが、"パラライズ"が効いてジークは紙一重で回避する事に成功します。

エア「"パラライズ"サマサマでしょう!(偉そう)」

ソラ「なんで、お姉ちゃんがいばるかな」

それを見かねて父キプロは遠吠えで参戦しようかと呼びかけているようです。優勢とはいえ油断のできない状況です。


2ラウンド目

ジークが初のクリティカルを叩き出して18点の合算ダメージ。15点抜けて残り18点(+<剣のかけら>?)。


キプロは前回と同様に前衛を攻撃。ジークは尻尾を華麗に回避しますが、メッシュはお約束でモロに食らいます

GM「当たったらダメージは13点です」

メッシュ「ぐはぁ。残り10点!」←レントゲン風

GM「あとは頭の攻撃は……あ。もっかいメッシュ」

メッシュ「ぎゃーっ!死ねと言うのですか!」

GM「だって、ランダムに決めたんだもん。当たったら、ダメージは9点」

メッシュ「ぐ、ぐふ……残り、HP2点

彼はプロテク分で1点止めていますが、素の防護点は0点な訳ですか。ペラペラにも程がありますね。

戦闘開始時のHPは推定22点で1発目で合算で13点食らうも、1点減らして適用ダメージ12点でしょうか。

彼の最大HPは23点なので、多分落馬した時に1点だけ治しきれていなかったのでしょう。早くも崖っぷちですね。


ジーク「ち、しぶといな(ぼそ)」

メッシュ「ジーク様!今のはなんですか、今のは!」

ジーク「え、キプロクスの胴体のこと」

一発クリティカル出しても半分以上残ってるから当然の感想です。……本当に胴体のことだよね?


その時父キプロの「オーッ、オーッ」という声に反応したのか、子キプロが目を覚まします。

ソラ「あ、目、覚めた。かわいい」

エア「……っていうか、まずくない?わたしたち、どう見ても母を苛めてるんだし

未だにぷかぷかしてるので牙や尻尾による直接攻撃は無理でしょうけど、彼?にもまだ武器はありますからね。


3ラウンド目

エアは主従を回復します。ジークはメルをダイビングキャッチした時の怪我が残っていたので。

メッシュ「悔しいですが、今は神官などという電波の技を受け入れましょう」

エア「誰が電波だ!

ソラは頭部と尻尾に"ブラント・ウェポン"を《魔法拡大/数》で同時にかけ、見事に抵抗を破りました。

これもSW2.0になってからの魔法ですね。対象の近接攻撃か射撃攻撃による物理ダメージ−4点という効果です。

18ラウンド持続するので地味だけど非常にありがたい魔法です。これで牙のダメージは2D+1、尻尾は2D点となります。


しかしいくらダメージが減ってもメッシュにはやはり痛い訳でして、またも食らってフラフラです。

メッシュ「す、すんません。そこなエルフ、もう一度電波系のワザを……」

グラップラーは元々防具が著しく制限される技能です。防護点が低いのは仕方ない。避けられないのは別問題だけど。


そして前ラウンドに目を覚ました子キプロは動けないまでも《炎の吐息》でママを援護

子キプロ「ままをいじめるなーっ、ぼっ」

ジーク「苛めてねぇ!」

これが後衛の姉妹に直接飛んでくるものだから堪りません。

しかしここで光明が見えました。火を吹いた時子キプロは「けほけほ」と咳き込む様子を見せたのです。


何かが引っ掛かってるようですね。

姉妹「ああっ!」

エア「この子、火と一緒に、なんか吐くかも!」

ソラ「核、吐いてくれれば、親元に帰せる

GM「うん、でも火もちゃんと出るのよ。耐えてね?」

以後毎ラウンド子キプロは火を吐きますが、その都度魔動核を吐き出す判定をします。

魔動核を吐き出す確率は火を吐く毎に上がっていき、いつかはケロンと吐き出すわけです。

よってこの子が魔動核を吐き出すまでの持久戦となる訳ですね。相手を倒す必要はなくなりました。


ソラ「あたし前というか、後ろに立つ!火、吐け!もっと吐け!」

エア「こら、ソラ危ないことしないの!」

ソラ「お姉ちゃん、冒険って……本当に燃えるものなのね。ぶすぶす」

エア「普通はね、魂の問題であって物理的には燃えないのよ」

問題はその持久戦に本当に耐えられるかです。特にメッシュ。


4ラウンド目

ジークはまたも胴体を攻撃しますがまだ倒れない。既に<剣のかけら>の修正分に入っているのでもう少しです。

そこでソラが一気に落とそうと"エネルギー・ボルト"を頭部と胴体に《魔法拡大/数》でかけました。

この一撃がよく効いてついに胴体が陥落。魔法は手加減できないけどコア部位のHPが豊富な今はまだ大丈夫。


もっとも相手の心配をする前にこっちの執事の心配が絶えません。

ジーク「まあ、俺のほうが防護点はあるから、できれば受けてやりたい」

メッシュ「うう、お気持ちがとてもありがたいです。……キプロクス、ジーク様が是非ともと、攻撃を所望です。
      強い相手と戦いたくないですか?戦いたいでしょう?ですから噛みつきはジーク様にお願いします

ソラ「何語で言ってるのかわからないけれど、多分、通じない

エア「しかも、微妙に不忠な言動」

命の危険があると切実ですね。まぁ彼の生存確率を上げる方法はない事もありませんけどね。

それは戦闘特技《かばう》の存在。1ラウンドに1回だけ、対象の攻撃を肩代わりしてあげられる特技です。

これを某"至高神の猛女"のように頑丈な戦士が習得し、メッシュに宣言してやれば随分と楽になりますね。

もっともジークはメッシュよりかは頑丈でも特別防護点が高い訳じゃない。誰かディフェンダーが欲しいですね……。


その後のメッシュの攻撃でちょっと頭部のHPを減らし、運命のキプロの攻撃です。

ジーク「メッシュ、ちゃんと避けろよ。ここで死なれたら、それ以上仕えてくれなくなるから困る」

メッシュ「ありがとうございます、ジーク様!
     (ころころ)おお、その言葉に勇気を得たようで6ゾロ回避です!(狂喜乱舞)

GM「頭。メッシュにかぷん。11」

メッシュ「来るなと言ってるのに!くくく、しかし、それぐらいなら……(ころころ)よぉし!よけたぁあっ!(万歳!)

タイトロープを渡るメッシュ。これはその内事故でどうにかなりそうで見てる方も冷や冷やしますね。

SWだと冒険者レベルでダメージを減らせたし、防御力0でも期待値で2点は止められたんですけどね。

その分防護点を上昇させる方法は沢山ありますが、まだ駆け出しの彼らにそれを期待するのは酷というもの。


子キプロはソラをちょっと焦がしますが、まだ魔動核は吐きません。


5ラウンド目

またもジークの攻撃がクリティカルし、頭部のHPは丁度0になって気絶

ジーク「っし!後は……おい、子供!お前のママは、俺がやったぞ!

子キプロ「よくも、ままをーっ」←というニュアンスで怒っている

メッシュ「ジーク様、素晴らしい!子キプロ、私もママを殴りましたよ!」

こうして3人が標的となったので、ランダムで選んだところメッシュに火を吐きます。


メッシュ「……しまった、つい」

ジーク「お前なあ!まだHP回復してなかっただろう、なんでこっちに来るんだ!」

メッシュ「申し訳ありません、つい、その場の勢いで!

しかもこの場合は生命抵抗が必要になる。成功したらダメージ半減ですが、彼の生命抵抗力は回避力より低いらしい。

彼の生命力と敏捷度のボーナスは同じ値ですが、それでも回避の方が高いという事は装備に秘密がある筈です。

彼の鎧が<非金属>Bランクのグラップラー専用防具<ポイントガード>だとしたら、回避力+1の防護点0となります。


他にもBランクでグラップラーが装備できるのは<クロースアーマー>ですが、これだと防護点2にはなりますからね。

それ以外だとAランクの<アラミドコート>がありますが、これだと回避力+1の防護点2でやはり違う。

そもそも防護点0なんていうペラペラな鎧で、かつグラップラー装備可能なんて<ポイントガード>ぐらいです。


メッシュ「くぅ。「調子に乗りすぎたルーンフォーク、此処に眠る」と墓碑銘にお願いいたします」

でも抵抗には成功したので7点だけ食らって下がりました。ていうか半減して7点では大人のそれと大差なさそうですね。

半減して7だと最低13点ですが、本来のダメージは2D+4点ですもんね。もし抵抗に失敗してたら危なかったかも。


これでもまだ子キプロは魔動核を吐きません。吐く条件は前ラウンドは1Dで1、今回は1Dで1〜2と上がっていますが。

この調子だとあと4回も火を吐けば確実に吐き出しそうですが、父キプロが出てきたら耐えられないかも。


6ラウンド目

エアはメッシュを回復しようとしますが痛恨の1ゾロ。

メッシュ「えええっ!」

エア「ごめん、わざとじゃないのよ。でね、これで"キュア・ウーンズ"はう・ち・ど・め(はーと)」

メッシュ「年増がかわい子ぶっても、愛らしくありませんぞ!

エア「……でも、弓は撃てるのよ。これが」

あとはレンジャー持ちのエアが<ヒーリング・ポーション>を使えば威力20+4点は回復します。期待値で9点。


もうこちらからの攻撃はありません。ソラは自分とジークに"バイタリティ"で生命抵抗力+2です。

ちなみにSWから御馴染みの"カウンター・マジック"は精神抵抗力+2ですが、操霊魔法なので彼女には使えません。


ところが折角の援護の甲斐もなくジークは生命抵抗に失敗して10点食らいます。結構効いてきますね。

ジーク「うぎゃ。こ、この……お前の炎は、それっぽっちかぁああ!」

エア「挑発しない!回復手段がもうメッシュの銃しかないんだから!」

ソラ「しかも、絶対魔力分しか回復しない

メッシュ「失礼なことを言わないでください!……概ね、事実ですが

威力0だと出目5以下で0点になります。本来27.8%程度の筈なのに、彼の場合それは限りなく100%に近い気がする(笑)


そして吐き出しチェックはついに成功。魔動核を吐き出します。その瞬間子キプロは落下しましたがね。

ソラ「フェンサー取っててよかった……」

これはジークもソラも回避成功。もし失敗してたらどれぐらい食らってたんでしょうね、象ぐらいの大きさらしいけど。

そしてもしこの場にまだメッシュが留まっていたら、これで生死判定に追い込まれていたような気がしてなりません(笑)


魔動核さえ取り戻せばもう用はありません。子キプロのロープを切ってすぐに逃げます。流石にロープは回収不能。

これでキプロクスの親子も無事に再会を遂げてハッピーエンドです。母キプロが大怪我したけど良かったですね。

ここでメッシュは傷ついた母キプロを放ってはおけず、残ったMPを使って"ヒーリング・バレット"を撃ちこんでおきます。


今回は相手が気絶しているのでシューター技能がなくても1ゾロを振らない限り当たります。優しさも汲み取ってね。

メッシュ「(ころころ)……えええっ?」

姉妹「1ゾロ!

メッシュ「すいません、全然治りません。あまつさえ、去り際に止めを刺したかのような状態に!

そして怒り狂う父キプロと子キプロに追いかけられ、神官戦士団に保護されるまで逃げ惑いました。

その後キプロクス親子は蛮族避けに新しい国境の外に誘導され、元の平穏な?生活に戻ったのでした。


ムーテスは巣ががら空きになっていたので生きていました。ちょっと残ね……いや、良かったですね。

起業した直後に船は大破し、多額の負債を抱えて呆然となったものの、魔動核のお陰で借金だけは返せそうです。

流石にこの状態で船を作り直す余裕はないようで、裸一貫からやり直す事になるでしょう。


その時突如新たなプレイヤーが乱入して宣言しました。

ムーテス「というわけで、これからよろしくお願いするっすよ。商人から一転、また冒険者に戻ったんだー!

一同「えええっ!」

ムーテス「どっかにいいパーティいないかなー(ちらちら)」

これも何かの縁ですね。冒険者に復帰したムーテスを加え、一行は5人パーティで新たな冒険に出ます。

防護点が高くHPが豊富な重戦士です。もちろん《かばう》持ち。図ったように欲しい人材が入ってきましたね。







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