「三眼のサーペント(下)」著:清松みゆき/グループSNE 出版社:富士見書房

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第二話「ユーレリアへ」

今回のキャラクターシート

前回は25レベルで六部位の魔法王を倒し、更に20レベルで四部位のミスゴ2体も倒してまたも莫大な経験点を手に入れました。

前者で1500点、後者が両方有効なら1600点になり合計3100点。基本の経験点も加えると4100点にもなりますね。

ところがこの二話に加えて次の三話でも成長が収録されていません。どうやら計算ミスで5000点ほど過少な状態で遊んでいたようです。

これによって修正が間に合わずに収録は見送られたとのことです。個人的にはそれでも能力値や技能の成長を参考までに載せて欲しかったですが。


それでも巻頭に収録されているキャラクターシートからこの二話の成長ぐらいは推測できます。

バトエルデン:精神力49→50

フェルディナント:器用度54→55

ゆん:敏捷度67→68

マイザール:知力62→63

ジュエリィ:知力65→66

伯爵の器用度とか、ゆんの敏捷度とか、ジュエリィの知力とか、揃いも揃って元から得意なところが伸びていますね。ボーナスは増えないけど。

マイザールは念願の知力が伸びた模様です。キャラクターシートだと指輪で64まで上げているようですが、あと1点伸びれば腕輪でボーナスブレイク。


技能の成長では大司教はアルケミスト2→3として賦術【ヴォーパルウェポン】習得。これでゆん以外は全員この賦術を習得しましたよ。

更にウォーリーダー9→10として【強靭なる丈陣X:激生】を習得。ついに10レベル以上前提の5ランクの鼓咆を習得しましたね。

これは大声で気合を入れることで範囲内の任意の対象に【アウェイクン】の効果を与えられます。効果時間は一瞬なので使うと1ランクから使い直しですが。

大司教自身やろうと思えば【アウェイクン】できますが、主動作を使わずにかけられるので場合によっては便利。鼓咆の効果が切れても使いたい場面もあるかも。


伯爵はエンハンサー6→7で練技【スフィンクスノレッジ】習得。《魔力撃》と合わせると命中力もダメージも+2されますね。

ゆんはソーサラー9→10にしました。《魔力撃》のダメージが増えましたね。でもMPが増えるわけでないのがグラランの哀しさ。

マイザールはエンハンサー5→6で練技【オウルビジョン】を、ミスティック1→2で占瞳【幸運の星の導きを知る】を習得。

ジュエリィはウォーリーダー0→5と一気に伸ばして鼓咆【軍師の知略】と「防御系」の鼓咆を3ランクまで習得しました。

これで先制力は5レベルの知力ボーナス+11で16になりましたね。スカウト技能だと7レベルの敏捷度ボーナス+5で12だったのに。


★ユリスカロアの倒しかた

前回幻獣ククからの呼び出しを受けた一行でしたが、【テレポート】で全員移動するとMPの消耗が激しすぎるので向こうから来てもらいました。

場所は《白峰領》のルーフェリア神殿です。どうやらククは使い魔の視点を利用して【テレポート】してきたようですが、これも本来はできないことですね。

まぁそれが駄目でも両者の知っている場所で落ち合ってマイザールに連れてきて貰うこともできますし、特に問題にならないでしょう。

そういえばククは本当に前回いた場所から引っ越してしまったようですね。今はどこに住んでいるのやら、また変なものが近くにいるのかな。


クク「自分、シャイなんで、人目のない部屋がいいな」

バトエルデン「今なら高司祭の部屋が空いてますな。修学旅行を引率してますので」

フェルディナント「しかし、どいつもこいつも、どうして魔法使いって連中は引きこもるのが好きなんだ?」

マイザール「魔法使いはうろちょろするもんじゃないのです

エアは自宅に引き続き、神殿の私室まで他人に蹂躙されるのか。あとは地下の湖なら人が来ませんよ、カマウェト兄弟がいますけど。


さて、その引きこもりマイスターである師匠がこうも早く再会を求めた理由ですが、占いで非常に悪い卦が出たのです。

クク「古の邪神が蘇りつつある」

マイザール「ユリスカロアですか」

クク「あれは、「こすい」とか言われることはあるが、悪ではない」

それに古代神ではなく大神らしい。15レベルだと瞬殺されるという点では大差ありませんけどね。小神だってまともにやったら危ないのに。

状況としてはユリスカロアと同じです。世界からほぼ忘れ去られた神が、滅びる前に自ら世に出てこようとしているのです。


バトエルデン「悪い神様は悪事を働くことで思い出してもらえるから、楽でいいよな

マイザール「その台詞、立場的にどうなんです?」

バトエルデン「地道にがんばってるんだよ、俺は」

クク「目覚めの場所は、フェイダンだよ

一同「えっ!?」

ジュエリィ「フェイダン、神様多すぎない?」

つい最近もアーメス騒ぎで色々あったのにね。しかも大神が眠っていたなんて、ロードス島かなにかかこの地方は。

ちなみに占いの結果は「地下より地を割り、邪悪が蘇る」と出たらしい。魔法王と戦った所にあった地割れがそうでしょうね。

実際には地割れは魔法王と戦った場所より更に奥から伸びていました。もっと山深い場所にその大神は眠っているのでしょう。


あとはその大神の正体ですが、ジュエリィがいつものようにセージ技能であっさり見抜きました。大神ニディスニオというらしい。

ダルクレムに連なる神であり不信と不和を司る。しかもダルクレムとは神になる前から深い繋がりがあったようです。

近親なのか、友人後輩なのか、ダルクレムの神官だったのか、諸説あるけど正確なところは不明です。

同じようなパターンに腐敗神ブラグザバスの司祭が後に神の階梯を昇り、テメリオという毒薬を司る小神になったというものもある。


ちなみに教義は以下のようなものがある。

「人は裏切るものであるから、まず自分から先手を取って裏切るべし」

「目前の利益を積み重ねずして、大きな利益はない」

「先のリターンのために今を見送るのは、100%確実な計算ができている場合に限る。なお、人とはもっとも計算できないものである」

というわけで何とも畜生な教義ですね。とにかく他人は信用しない、自分さえ良ければそれでいい、いっそ清々しい程個人主義を極めてます。

教義が教義だから大きな教団にはなりそうにないけど、社会の地下に潜って根強く信者を獲得しそう。ある意味非常に厄介な神様ですね。

ちなみに「ルミエルレガシィ」の時点ですらニディスニオの特殊神聖魔法は不明です。清松先生もあまりデータ化する気はなさそうだし。


もちろん大神が相手では普通に戦ったら勝ち目がない。25レベル以下瞬殺なので魔法王とか"イグニスの輪環"ですら太刀打ちできない。

フェルディナント(こっそり剣を背中に隠す仕草)

クク「隠し事はよいことだが、わしからは何も隠せないよ?」

そこで勝利の鍵になりそうなのが伯爵の<絶竜神剣>です。実はこいつの魔力はククですら全ては見えないのです。

一地方でのみ伝承されているレベルの品物で、歴史の中で使われることすらなかったため、見えないんだとか。

更に魔剣自体の魔力も桁外れで占えないらしい。全てを見透かすと思われていたククでも日の目を見なかったものまでは見抜けないんですね。


そこでユーレリアに行って調べるか、魔剣と所縁のある者を頼るかするしかないのです。

マイザール「誰です?まさか、ユリスカロア?」

クク「あれでも賢神の娘だ。人が届き得ぬ知識を持っていても不思議はない」

バトエルデン「単純に助力を頼むという手もあるけどな。6ラウンドだけしか動けんけどな」

ここでいう6ラウンドというのは富士見書房のサポートページで公開されている戦勝神ユリスカロア(不完全)のデータによるものです。


ジュエリィ「それ、ルーフェリアには頼まないの?」

バトエルデン「大神相手に小神はリスクが大きい」

25レベル以下は瞬殺ですしね、小神のレベルがどうなっているかは不明ですが多分低くてそれぐらい。

仮に25レベル超でも相手は単純に強い大神です。普通に戦ったら普通に負けて消滅する気がしますね。


ところが不完全体のユリスカロアも25レベルなんですよね。本来35レベル以下瞬殺の古代神がどれだけ弱体化しているのかと。

マイザール「実のところ、あのデータだったら、ボクらなら6ラウンド踏ん張って勝つ道はあるように覚えてるんですよねえ。大司教一人で勝てちゃうかも?」

というわけでちょっとデータを確認してみましょうか。知名度25程度なのでジュエリィなら簡単に見抜けるので検証し放題。


戦勝神ユリスカロア(不完全)は25レベルの神族です。胴体(コア)、光の翼×2の三部位で、全身を覆う《魔法防護》は魔法ダメージを10点カットします。

胴体は《2回行動》で主動作を2回行い、《複数宣言=3回》を持ちます。神聖魔法15レベルを魔力29で使用する《魔法適性》持ちです。

またマナを凝縮した斧槍を投げつける《斧槍投射》《斧槍斉射》を主動作で使用し、純エネルギー属性の魔法ダメージを与えます。

前者は対象1体でダメージは2D+50点、抵抗に失敗すると次の手番の終了まで他者を攻撃できなくなります。

後者は任意の数を対象にできてダメージは2D+35点、抵抗に失敗した上で1/3の確率で対象のHPを0にします。

光の翼は《飛翔》持ちで、15レベル以下に対する回避や抵抗に自動成功する《古代神の威厳(不完全)》と、周囲の信者の行為判定を+4する《戦勝神の祝福》がある。


こうして見ると不完全とはいえ古代神はやはり強いですね。攻撃が当たらなくて<絶竜神剣>役立たずです。魔法は抵抗される上に−10だし。

ジュエリィ「回避力判定させなければいいのよ」

フェルディナント「これを必中で当てる方法。今から、<チャンピオンのロインクロス>を買ってくるのか」

これは派手な色をした男性用の腰巻で3万ガメルします。常に近接攻撃の命中力が−1されますが、1日に1回だけ《命中力判定》を自動成功させます。

これで<絶竜神剣>を当てて《古代神の威厳(不完全)》が一度でも消えれば、後は毎ラウンド普通に<絶竜神剣>で消し続けてゆんが《鎧貫き》していけばいい。

問題は回避力が32(39)とかあることですかね。伯爵はともかくゆんはフル強化で互角ぐらいかな。同じ25レベルでも魔法王より圧倒的に高い。


そもそも削りきる前に6ラウンド経っちゃいそうです。

マイザール「やはり、大司教を軸に6ラウンド耐える方針ですね。「HP0にされる→2回目の行動で何かされて即死」が怖いんですが」

GM「ピンポイントで【ライフサポート】が役に立つかな」

《斧槍斉射》でHPを0にされただけなら《不屈》で耐えられる。問題はその直後に《斧槍投射》でHPが−50越えたりすることですね。

そこでランク7の妖精魔法(光)【ライフサポート】です。これはHP0以下の状態で適用ダメージを半減するというもの。

これなら《斧槍投射》で6ゾロ振っても31点、魔法ダメージを色々カットする魔法をかけておけば20点台で楽勝で生き残る。

《マルチアクション》と併用できたりすると危ないけど、《斧槍投射》と《斧槍斉射》は近接攻撃ではなさそうなので大丈夫でしょう。


あとは【レストレーション】して完全回復、6ラウンド耐えて勝利。……ていうか別にユリスカロアを倒す必要はないんですよね。

フェルディナント「剣で斬って勝つ方法が見えないと、俺様、今イチ食指が動かない。何か、邪悪な行動な気もするし」

ジュエリィ「ユリスカロアを手に掛けたら、大司教の妹さんが黙ってないと思う」

バトエルデン「あ、それはいかん。なしなし」

何しろ彼女のユリスの溺愛っぷりはHENTAIの域に達していた気もしますしね。エアといい勝負です。


まぁ何にしてもユーレリア地方には行った方がいいでしょう。<絶竜神剣>の魔力を完全に解明しないと。

フェルディナント「貴公は、「何でも明らかにする」んではなかったのか、ぶうん」

クク「やめて。その剣抜かないでこっち向けないで、怖いから

フェルディナント「ええぇ?」

クク「いいから隠せ。見せるな、そんなもん」

ジュエリィ「師匠……?」

その時のククの怯えようはちょっと異常でした。ほぼ不死身と言っていいククがこんなに怯えるなんて。

そして剣を鞘に戻すと途端に落ち着きましたよ。これだと鞘の方にも何か秘密がありそうな、なさそうな。


クク「ああ、安心した。わしは、このフェイダンで亀裂を見張っていよう。できるだけ急いで帰ってきてね。うっかりわしの生命が9回尽きてしまう前に

何しろ相手は大神です。ククだって25レベル以下であることに変わりはないし、《叡智の守り》も無効かもしれない。


クク「事態は重大だ。ことこの件に関しては、目的は手段を正当化するかもしれん

マイザール「今さら、当たり前すぎて、何言ってんですか

バトエルデン「元から良心持ってないやつには意味の薄い助言だなあ」

それとククは自分の羽を1枚くれます。これは任意の幻視型占瞳を1回だけ使用できるというものです。基準値はククのものなので22ですね。


占瞳には主動作型と幻視型という2つの種類がありまして、後者は何か不都合が起きた時にそれをなかったことにできるのです。

凄いものになると「《生死判定》失敗→占瞳発動→という夢を見たのさ、再判定だ」といった感じでやり直しが利く。アルケナのタレントみたいですね。

他にも「あのアイテムがあったらな→占瞳発動→実は買っておいたのさ」とかもできるし、ミスティック技能の真価とはこういうものなのかもしれない。

低レベルの内はそもそも習得できないけど、10レベル以上を前提とする高位の占瞳になるとむしろ幻視型の方が多くなったりしますしね。

一応達成値が低いと上手く運命を回避できないで終わってしまいますが、基準値が22もあれば大抵のことはやり直しができてしまう。本当に便利なアイテムです。


クク「わしにできるのは、このくらいまでだ、あとはよろしく」

ジュエリィ「がんばってみるよ、師匠」

というわけでザルツ地方に続き今回はユーレリア地方に向かいます。見事に博物誌の舞台を渡り歩いていますね。


★うさんくさいNPCは縛られるの法則

ユーレリアに行く前に決めておくことがあります。それはズミーヤの扱いです。今まで同行させてきましたが、どうするか。

マイザール「やっぱり、拘束して置いておくほうが気楽ですよね」

バトエルデン「俺がザイア神官なら【オース】目的で連れていく手もあったが、そういうメリットいっさいないからな」

《影走り》がある以上その気になったら逃げられるし、見ていないところで活動し放題ですしね。まぁゆんなら追跡可能ですが。

ちなみに【オース】はザイアの2レベル特殊神聖魔法です。術者より2以上レベルの低いキャラを守る誓いを立てることであらゆる行為判定に+2。

13レベルという高レベルでも大司教からしたら守る対象になり得るわけです。守る相手が10m以内にいる必要があるので大分危険ですけどね。


でも彼女の情報が役に立つ場面もあるかもしれません。

ジュエリィ「何かに入れちゃおう。それで持ってって、必要な知識を問い合わせたくなったらぽんと出せばいい」

GM「うわあ」

ジュエリィ「師匠が「バレなきゃいい」って言ってくれたもん」

バトエルデン「なら、「肉の芽」でいいんじゃね?」

【デモンズシード】を埋め込んでお友達になっちゃうという禁断の手ですね。結局前回の事件では使わずに終わりましたね。

ただそれをやって連れ歩くと流石に誰かしらにバレるでしょうね。そしてマイザールは邪悪な魔法使いとしての認識が確定すると。


マイザール「疑惑のうちは言い訳利きますけど、確定はまずいですねえ」←否定しない

フェルディナント「さすがにマイザールに足引っ張られて、お家お取りつぶしは納得いかないな、俺様」

ところが既に穢れを持っているズミーヤは<魔神の苗床>にはならないのでした。穢れは2点なので【イレイス・ブランデッド】でも1点は残る。


バトエルデン「では、【アイスコフィン】で固めて、【アポート】の印書き込んでおこう」

ゆん「モノじゃないから無理だと思う」

マイザール「こうなるとコンジャラー技能を伸ばしとけばと思ってしまいますね。【スティール・メモリー】使いたい」

それで記憶を奪う期間をどうするかという問題もありますけどね。後で訊きたいことが出てきたとして、それに該当する記憶をどう事前に特定するか。


ジュエリィ「今から妖精との契約組み替えて、闇属性の【マインドリード】使おうか?」

妖精使いはこれがあるんですよね。都合に応じて契約を組み替えることで全く違う性能の魔法使いになることもできる。

ただし契約の組み換えには「レベル×2」時間を要する。ジュエリィの場合はなんと30時間、徹夜ペナルティとか入るぐらいの大変な作業です。

しかしそれでも引き出せる情報は断片的なものです。後で何か困ることがあった時に辞書のように役立てる情報ソースにするのは難しいでしょうね。


そもそも彼女自身話せることは全部話しているのかもしれない。それでも野放しにはできないけど。

ジュエリィ「生かしたまま持っていく手段、限られるよね。<収納ブレスレット>も生物は吸い込めないし」

そういう風にキャラクターを運搬できるようにすると色々悪さする人も出てくるでしょうし、アイデアは出てもアイテムとしてはボツになる傾向にあるとか。

例えばキャリッジとかに入った状態で<騎獣縮小の札>を使ったりするとどうなるんでしょうね。空にしないと効果はないという裁定にするGMも多そうだけど。


バトエルデン「やっぱ、インテリアにして置いておこう。いざとなったら、マイザールが【テレポート】で帰ってきて尋問すればいい」

というわけで【アイスコフィン】で封印することにしました。ジュエリィと2人で瞬間移動して、解除して尋問してまた固めて帰ってくればいい。

ちなみに【アイスコフィン】中は自動的に気絶状態になるらしいので冬眠みたいなものでしょう。寒い寒いと思っていたら意識真っ暗という感じだとか。

割と犯罪っぽいけど、これでも即犯罪になる【デモンズシード】と違って使うだけなら合法。【ギアス】で束縛するよりはまだ有情でしょうかね。


ただしジュエリィの契約の構成が足りないのでやっぱり30時間かけて組み替えです。決行はそれからです。

フェルディナント「マイザールの部屋に放り込んでおくということで

マイザール「なんでボクの部屋なんです?」

フェルディナント「だって、お前の部屋、誰も近づきたがらねえんだもん」

バトエルデン「エルリュート湖の湖底に沈めてもいいんだが」

GM「浮くだろ、氷」

あそこは魔神とか<滅びのサーペント>とかヤバいものがどんどん増えていきますね。危険物の廃棄場じゃないんだぞ。

でもマイザールの部屋なら何があっても不思議はない感じですよね。うっかり誰かが覗いても「マイザール様変わったインテリアだな」とスルーしそう(笑)


というわけで一行は《血風領》に向かいました。ジュエリィの契約が終わるまで宴会とかしつつ時間を潰します。

フェルディナント「ズミーヤには特別に客室を用意してやろう」

バトエルデン「特別な客室……吊り天井完備か

刻命館じゃないんだから。それに相手は13レベルスカウト、多分その手の仕掛けはあっさりと見破るでしょうね。

そこでこの中で唯一彼女を上回るスカウト技能の持ち主であるゆんが監視します。ついこの間まで同レベルだったけど今は1レベルだけ上だから。


ゆん「その辺のモヒカンさんに「その<俊足の指輪>、500Gで売って」と交渉持ちかけるよ」

モヒカン「ヒャハ?ヒャッハー!ヒャハヒャハ(いそいそと指輪を外す)」

ゆん「わーい、ありがとー」

ちゃんと定価で買い取るのだから良心的ですね。そういえば指輪ってサイズとかどうしてるんだろう、人間とグラランじゃ相当違いそうだけど。


そして夜になりました。ジュエリィの内職はまだ始まったばかりである。30時間だとここから次の夜まではかかりそう。

マイザール「遅くまで王子を課題で締め上げます

バトエルデン「ひどい」

マイザール「文法のミスをネチネチネチネチ」

GM「最悪だ、それ」

マイザール「ボクは3時間寝られたら十分ですからね。王子、夜は長いですよー

一方トパーズを頭に乗せたゆんが徹夜でズミーヤの部屋を見張っていると、案の定部屋を抜け出したので尾行します。

どうやら伯爵かマイザールのどちらかの部屋に向かおうとしていたようですが、意外なことに伯爵の部屋の方に向かいます。


ゆん「彼女が部屋に入るとき、そっと一緒に入れるだろうか?」

GM「さすがに、それは難しいんじゃないかな」

その場合は《危険感知判定》と《隠密判定》の振り合いです。ゆんは基準値で25あって、ズミーヤは多分多くて18ぐらいではないでしょうか。

ただしかなりのボーナス修正が入るそうです。いくらゆんでもほぼレベルの変わらない相手に気付かれないよう真後ろについていくのは無茶でしょうしね。


ゆん「<カメレオンマント>とかあるけど、どうかな?」

これは「フェイダン博物誌」収録の背中の装飾品で、その名の通りカメレオンのように背景に擬態する6400ガメルのアイテムです。

《隠密判定》に+4もの修正が入りますが使用は制限移動時に限る。ズミーヤは通常移動で部屋に入るとしたらついていくのは無理ですね。


そもそも彼女が伯爵の部屋にどんな目的があって来たのか。マイザールの方にいかないということはハニトラではない。

ゆん「ハニトラじゃないなら、様子見しててもつまんないなあ」

GM「しばらく部屋で悩んでたんだけどなあ。ネグリジェにするかソフトレザーにするか」

ゆん「あえてソフトレザーか。変わった趣味なんだ」

バトエルデン「ソフトでレザーですから、そういう趣味なのかもですよ。ガハハ」←おいおっさん

完全に忍び込む風体ですから、<絶竜神剣>を盗むつもりなのかもしれませんね。伯爵が協力してくれなさそうだから剣を使えそうな仲間に渡すとか。

これでも13レベルですもんね。戦闘を避けて逃げに徹すればもしかするかもしれないし、何らかのアイテムで瞬間移動しないとも限りません。


結局ゆんは様子見をやめて声を掛けます。

ゆん「どうしたのー?寝られないのー?」

ズミーヤ「そ、そうなのよ、ちょっと寝付けなくて」

ゆん「夜怖い人?伯爵と一緒に寝てもらうの?それなら、ゆんが一緒に寝てあげる

ズミーヤ「いえいえ、あのその」

というわけでズミーヤの企みはあえなく失敗。それどころか一晩ゆんの完全な監視下に入りました。


ゆん「ゆんもちっちゃい頃は、お母さんと一緒によく寝てもらったもん」

バトエルデン「嘘くさいなあ。グラスランナーの子育てって、「歩けるようになったら放り出す」イメージしかないぞ」

ゆん「ゆんは歩けるようになる前に放り出されたよ

ズミーヤ「そ、そうね。じゃあ、一緒の部屋で寝ましょうか、オホホ……」

グラランの生態についてはフォーセリアなんかでは各地に繁殖地があって、伴侶を見つけたらそこに戻ってくるそうです。

子供が乳幼児期を過ぎると両親はまた旅に出て、子供は成人になるまでは繁殖地の他のグラランが面倒を見ます。

同時に子供達はより年少の子供達の面倒も見る。なお子育てを終えた伴侶はその場で別れてしまうそうです。

そして子供が欲しくなったらまた前の伴侶を見つけるか、違う伴侶を探すかは状況次第。ラクシアでも同じであるかは不明ですが。


まぁグラランだからどんな破天荒な育ち方をしていても不思議はないんですけどね。

ゆん「じゃあ、昔聞いたお話をしてあげるね。えっとね、どこの国の話だったかな、えっとね。王様がね。あ、待って、王様じゃなかったかも

バトエルデン「わあ、うざい」

ゆん「それで、お花の咲いてる庭でね。春のことなんだけど。あれ?秋だったかも」

そうして明るくなるまで内容のない話を続け、居眠りしかけたら「聞いてる?ねえ、聞いてる?」と揺さぶり続けました。


この軽い拷問は朝まで続き、ズミーヤは寝不足で充血気味になりました。

ゆん「そろそろ、訓練の時間だね。じゃ、頑張ってね。お休み

マイザール「いやあ、いい朝ですねえ」

フェルディナント「おい、マイザール、ズミーヤがえらく体調悪そうだな」

マイザール「今日は訓練厳しめで、宴会まで休みなしで。このまま徹夜ペナルティをかけさせる方針で

24時間睡眠を取らないとあらゆる行為判定に−1の修正がつき、これは24時間が経過する毎に累積します。

ジュエリィの再契約に30時間かかるわけで、その前にも色々な探索で10時間以上は活動していたでしょうね。

加えてジュエリィ自身も6時間は睡眠を取らないと徹夜ペナルティが入るので、上手くすれば−2程度のペナルティは与えられそうです。


そうしてズミーヤは眠れないまま宴会に突入します。シャドウたるもの宴会に参加しないわけにはいきません。

フェルディナント「今日は、個人的な戦勝の祝いだ。だが、俺様が強いのではない。ともにお前たちが戦ってくれると思えばこその俺様の強さなのだ
          これからのディルフラムとの戦いも、お前たちの力を借りて勝つぞ。さあ、存分に英気を養ってくれ。好きに騒ぐがいい。ヒャッハー」

モヒカン「ヒャッハー!両手に炙り肉ー」

モヒカン「ヒャッハー!酒樽にダイブー!」

ちょっといいこと言っていますけど、ここでいうヒャッハーには「乾杯」の意味があると思われます(笑)

慣れると「おはよう」「こんにちは」「こんばんは」「お休みなさい」「汚物は消毒だ」「種籾をよこせ」等も全部ヒャッハーで済ませられます。


フェルディナント「隠し芸の蝦蟇の油売りを疲労してやろう」

これが《マルチアクション》を宣言して自分を攻撃、直後に【レストレーション】で傷を完治させるというとんでもない技でした。

しかしこれすらもズミーヤに隙を作るためでした。盛り上がっているところでモヒカン達がズミーヤにどんどん酒を注いで飲ませていくのです。


モヒカン「ヒャッハー、姉さん、飲みましょう」

モヒカン「ご苦労様でした、大変だったでしょう、ヒャッハー」

ズミーヤ「ううん〜、私は見てただけなのよ〜」←本当にな

ここでジュエリィが動きます。事前に【ウェポン・マスター】で<マナスタッフ>を使えるようにして接触、【アイスコフィン】です。

ただしジュエリィ自身は素で《武器習熟A/スタッフ》を習得しているので、【ウェポン・マスターU】で<ソーサラースタッフ>のことじゃないでしょうか。

とはいえわざわざそう言っているということは勘違いして<マナスタッフ>のためにそうしたのかも。そうすると〔異貌〕込みで基準値30です。


ただしズミーヤは《危険感知判定》を、ジュエリィは《隠密判定》をします。

ジュエリィが勝てば不意打ち成功、自動的に先制でズミーヤに−2のペナルティです。ズミーヤが勝てば普通に全員で《先制判定》をしてから戦闘に突入。

ジュエリィは基準値12程度なのに対し、ズミーヤは多分18ぐらい。加えて諸々のペナルティで−4入りましたが、流石に不意打ちにはならず。


続いて《先制判定》です。ゆんはちょっと低めで達成値30を出しましたが、ズミーヤの先制力は19で徹夜ペナルティ−2で17なんですよね。

バトエルデン「6ゾロ振って届かない(笑)」

GM「一応、<俊足の指輪>とか装備してるから」

それなら11振って指輪を割ればギリギリ届きますね。まぁそう都合のいい目はでませんが。


次にジュエリィが【アイスコフィン】です。本当は対象のHPを20点以下にしないといけないんですが、うっかりしていた様子。

ちなみにズミーヤのHPは55点らしい。素の生命力が16で《頑強》等はない。35点程度ならゆんが殴り続ければ余裕で削れたでしょう。

魔法の達成値は36でした。ズミーヤは素の精神抵抗力が〔月の守り〕込みで25、徹夜ペナルティで−2なので23ですね。また絶望的です。

一応+3の魔符は持っているので出目10以上なら辛うじて抵抗できたのですが、やっぱりそう都合のいい目は出ずにズミーヤは氷漬けになりました


フェルディナント「ヒャッハー!俺様の蝦蟇の油売りに勝るとも劣らない、身体を張った大道芸だな。なあ、マイザール」

マイザール「そうですね、伯爵。ヒャッハー!」

フェルディナント「モヒカンどもも、ズミーヤに拍手だ。ヒャッハー!」

モヒカンズ「ヒャッハー!ヒャハヒッハー!」

こうしてズミーヤは退場しました。それにしてもまるで蛮族領のような荒々しい宴会でした。


宴会の後でズミーヤの部屋を調べてみると、日々の出来事を綴ったメモ帳が出てきました。

「剣は本物だが、あの人は期待はずれかもしれない」

「それより、あっちの魔法使いにハニトラのほうがいいかなあ。簡単に落とせそうだ」

「これならばと、伯爵に頼んだ。しかし、何か空気が良くない。いっそ、剣を盗んでしまうか……グラスランナーに邪魔された」

「日が昇ってしまって、もう寝付けない」

「今から宴会。もういい、憂さ晴らししてくる」

大体こちらが予想していた通りのことを考えていたようです。それにしてもゲームではよくこういうメモが出てきますよね。

徹夜でフラフラの状態でわざわざ心境をメモるとか、どうしてこう筆マメなんでしょうね。死んだら記憶が飛ぶルンフォなら分かるけど。


★徴発、飛空船!挑発、カードゲーム!

いよいよユーレリア行きですが、そもそもフェイダン地方とユーレリア地方は非常に離れています。陸路だとディルフラムやカルゾラルといった蛮族領があるし。

海路だとリオスから北のシエナクェラス地方に渡りそこから陸路になる。あと沿岸沿いにハインラト地方を掠める海路もあるけど、確立しているかは不明。

かといって空路だってザルツ地方のように飛空船で行き来している間柄ではないはず。ズミーヤはどうやってフェイダン地方まで来たんでしょうね。


フェルディナント「さて、例の飛空船がルーフェリアに来ているか、チェックしてもよろしいか?」

アメリアの船をチャーターする気ですね。ていうか前回の事件で大量に落ちた飛空船の核はどうしているんでしょうね、再利用できないものか。

ここでは1D6で1〜3だとロシレッタに、4〜6だとルーフェリアにいることにしましたが、出目は1で飛び立ったばかりということになりました。


それならばやっぱり海路かとも考えましたが、ロシレッタ自体は以前行ったことがあるんですよね。

ゆん「ロシレッタで待ってればいいんじゃないの?

ジュエリィ「あ、そうか。出たばかりっていっても、3日ぐらいで着きますよね」

というわけでロシレッタまで【テレポート】です。当日は発着場で5人して腕組して待ち伏せして掴まえました。


バトエルデン「おっと休暇は中止だ。ユーレリアまで飛んでくんねえ」

アメリア(目をまん丸)

フェルディナント「ズシャ、ズシャ(足音の擬音)、久しいな」

アメリア「あの……また、何か……ご用事?」

可哀想に、大司教に宣伝とか頼んだのが運の尽きか。「ムーテス?ああ、彼はいい人だったよ。実にね」とか言ってた頃が懐かしい。


まぁ新しい宣伝になるとか、ユーレリアとの航路を開拓できると考えたらメリットがないこともないか。

マイザール「ビジネスチャンスですよ、ビジネスチャンス」

ゆん「露払いはしてあげるよ」

アメリア「それって、危ないところを飛ぶって意味じゃないですか

バトエルデン「危ないとは限らない。今までいったことがないだけだ

アメリア「はあ……」

実際何か強い魔物が出ても安心ではある、ロックとか敵じゃないし。ただ敵は倒したけど船は落ちるという展開もありそうですが。

しかし金銭的報酬が何もないのもあれなので、前回の事件でルーフェリアに落ちた飛空船の内から1つのコアを優先的に購入する権利を与えます。

ちょっと「褒美としてオプ○ナを買う権利をやろう」みたいですね。実際のところそれでどの程度得をするものなのか。

優先的に購入できるというのは抽選でもやって購入する権利が貰えるんだろうか。どっちかというと競売の方が国庫は潤いそうですが。


でもコアが増えるのはいいことですよね。2隻目の船を作れば単純に倍の運搬が可能になる。

アメリア「ルーフェリア=ロシレッタ間を増強するか、三角に航路作って、順逆2回りするか、きっと商売になるよね、きっと……」

マイザール「ボクたちとのコネは役に立ちますよ」

アメリア「あなたがたは、自分の都合でこっちに押しかけるけど、私が自分の都合でそっちに押しかけるわけにはいかないじゃないですか。よよよ」

バトエルデン「心配しなくてもタクシー代わりに使ったりはしないから。我々だって遠慮という言葉は知っている」←なんだって?

こうして一行はユーレリア地方を目指して出発しました。具体的な目的地は魔法王ユレヒト所縁の地であるユレヒト王国です。

その名の通り魔法王ユレヒトが建国した国であり、魔法文明時代から続く由緒正しい国です。ユーレリア地方で最も大きな国でもある。


航路は2通りあって、ザルツ地方の西にあるリーンシェンク地方を回っていくか、何かと危険な"ティラの樹海"を突っ切るか。

"樹海"ルートの方が距離的には近いけど、目印がないので迷いやすく、また魔物と遭遇する可能性が高いというリスクはあるそうです。

バトエルデン「方角さえ見失わなければ、"樹海"突っ切りが最短なんだよなあ」

ゆん「あのね、リーンシェンク地方とユーレリアを結ぶ街道は、今死んでるの、ゆん知ってるよ」

マイザール「歩いたんですか?」

ゆん「ゆんなら歩けた、と思う。そして、すごく歩きにくかった」

魔動機文明時代のリーンシェンク地方は魔動機械の製造が盛んな土地で、ユーレリア地方にもその技術が持ち込まれました。

こうしてユーレリア地方には工業都市セシャという都市が造られたのですが、「大破局」のせいで壊滅しリーンシェンクとの街道も破壊されました。

それから時代は現代に移り、リーンシェンク地方のある魔動機師が古い文献からセシャの存在を知り、苦難の旅の末に旧街道を踏破したのです。

彼のお陰でセシャの遺跡が発見され、地元のアルデン王国で英雄扱いされるほどの偉業となりました。現在では街道の復興がアルデン王国の悲願です。


ところが現実は厳しいもので、リーンシェンクの南部はいまだ蛮族領。ユーレリアだって紛争は絶えず、街道の復興は夢のまた夢です。

ちなみに魔動機師が旧街道を踏破した時は7人の冒険者を雇い、半数を失ったそうです。蛮族領の縦断がいかに危険なことか分かりますね。

そんなところもゆんならすいすい進めてしまうんですよね。そういえばカルゾラル高原を突っ切ったりもしてたし、なんかずるいな(笑)


そんな状況にあるわけで、空路とはいえリーンシェンクからユーレリアに行く際に危険地帯を渡ることになります。

バトエルデン「だと、迂回ルートのメリットはほとんどないな。まっすぐ行こう」

アメリア「では、頑張って飛んでみます。飛んだことのないルートは怖いけどなあ」

フェルディナント「心配するな。俺様たちがついている」

むしろこの人達がいるからこそヤバい魔物と遭遇する運命になるような気もする。24レベルのスーパーロック鳥とか。


航行の判定はとても単純です。2D6を1回振って出目によって何か起こる。1ゾロ振ったら落ちる。

バトエルデン「落ちるんだ」

GM「落ちる可能性のない飛空船など、ソード・ワールド2.0には存在しない

ゆん「暴言だ」

ジュエリィ「でも、真理かも」

結果は出目9でした。途中で1回ルートを見失いかけるも立て直しに成功。3日かけてユレヒト王国の近くまでやってきました。

飛空船は街外れに降ろして、帰りに何かあるといけないので待っててもらいます。ここから安全に元の航路に戻る方法がありませんしね。

ルーフェリアに行ければ三角形の航路が完成しますが危険は未知数。ロシレッタに引き返そうにも"樹海"で何が出るか分かりませんから。

しかし一度通った"樹海"すらまともに飛べないとなると航路としては使えませんね。どこまで掃除すれば実用に耐える航路になるんだろう。


そうこうしているとユレヒト王国の兵士達がやってきます。思いっきり目立ってましたからね。

兵士「どちらさまですか?」

バトエルデン「通りすがりの冒険者です

兵士「ええー!?通りすがりかたが尋常じゃないんですが?」

新しい冒険の舞台に移ってきた冒険者を装ったつもりですが、明らかに普通の冒険者の纏う雰囲気ではない。《魔物知識判定》で実力を見抜いたら驚くでしょうね。

かといって正直に正体を明かしても「誰それ?」とか言われかねない。海外リーグのスター選手級でもその辺の一般兵士では知らなさそうだし。

まして交流のあったロシレッタならまだしもそれすらないユレヒトですしね。ズミーヤなんかはどの辺で伯爵の噂を聞いたんでしょうね。


でも兵士達には王都ユレヒトへ案内してもらえました。人口1万3000人で三重の城壁に囲まれた立派な都市です。

バトエルデン「カナリスの倍か。ユーレリアは大きな街はないんだが、ルーフェリアも小国だからなあ」

カナリスは6000で王都アエドンで3000ですしね。カイン・ガラもそう大きくはないし、大国のアイヤールも分割されている上に人口不明。

ちなみにリオスの首都ラスベートは戸籍人口だけで5万、実際にはその倍の人を抱えているとも言われる世界的大都市だったりします。

帝都ルキスラは8万ほどで、周辺の農業従事者を入れるとやはり10万超。驚くべきことに帝都の常備軍は5000、辺境等も含めると2万の大兵力

同じユーレリア地方だとオルブリュークも都市人口1万2000で他は1万未満。都市人口で1万人というのは大都市としての一つの指標なのかもしれません。


王都まで案内してもらった後は自由になります。もうちょっと疑われるかと思ったけど割りとすんなり信用してもらえましたね。

バトエルデン「とりあえず、宿を決めよう」

フェルディナント「宿を決める。懐かしくも楽しい言葉だ」

冒険者の基本なんですけどね。伯爵にもそういう時期はあったはず。放浪中のゆんなんかは今でもそうしているでしょう。

ここで目をつけたのが「星くずの毛布亭」といういかにもな冒険者の店です。店主はお腹の大きいおじさんでした。感動するぐらい普通の店構えですね。


入店すると店主が「え?」という顔をして驚いた様子でした。冒険者の店の店主なだけにセージ技能とか持っていたんでしょうか。

GM「目標値18クリアしたらレベルがわかるからなあ。クリアできなくても、それなりに凄腕なのはわかるし」

バトエルデン「達成値17でわからなければ、「14レベル以下ではない」。何だ15レベルか

そんな実力者はユーレリア地方でも珍しいでしょうね。「堕女神ユリス」シリーズに15レベルのユリスカロアの神官が出ましたが、彼も相当なものだったはず。


そんな人達が部屋を求めてくるのだから店主は最上の部屋でおもてなしです。

フェルディナント「なあ親父、この地方ならではというものを喰わせてくれ」

店主「では、アルデン直輸入の最高級赤ワインと、キノアから取り寄せた最高級羊肉のステーキを」

アルデンは今でこそセシャ遺跡の発掘が盛んですが、元々の主産業は農耕でして、特にワインはアルデンを代表する商品として知られています。

キノアというのはユーレリア地方の中央に位置し、山と森に囲まれた風光明媚な国です。何と幻獣達と共存している珍しい国でもある。

主な産業は羊の畜産。この羊肉にはあの魔法王ユレヒトが詩に詠んで絶賛するほどの高品質です。あとは羊皮紙とか毛織物なんかも有名。


フェルディナント「おう、これはうまいな。ところで店主、魔法王ユレヒトについて調べようと思ったら、どこへ行けばいいんだ?」

ここですすめられたのはまず王宮図書館です。魔法文明時代から続く国ですから、きっと蔵書も豊富でしょう。

もう1つ王立の魔法遺跡研究会というのも挙げられました。魔法王ユレヒトは配下にも迷宮を持つことを認めていたのでこの辺は遺跡が豊富なのです。

しかしこの研究会は組織腐敗が著しく、あまりおすすめはされませんでした。遺跡の管理権限を濫用し、子飼いの冒険者にのみ発掘許可を与えているのです。

しかも発掘品の横流しをやっているという噂もあります。更に学会員同士の交流という名目で日々公金で宴会しているという子悪党っぷりです。


ぶっちゃけると一つのシナリオソースですね。彼らの悪事を暴くのも一つの冒険の種です。

バトエルデン「水戸黄門展開もありかもしれんな

店主「悪い噂満載ですが、とはいえ、資料が豊富なのは間違いありませんな」

ジュエリィ「とりあえず、王宮図書館行きたい。全巻読破狙う。本読むの、本」

こういう時にはジュエリィは心強いですね。《文献判定》もセージ+知力なのでジュエリィなら基準値で26、まず見つからない情報はないでしょう。


というわけでまずは王宮に向かいます。身分を明かして閲覧許可を貰うのです。

バトエルデン「「ルーフェリアの最高司祭です」と名乗って「ルーフェリアって何?」と返される未来が見える。切ない」

フェルディナント「キルヒアの最高司祭なら、どうですかね?」

バトエルデン「うぉ?がーん」

小神と違って古代神であるキルヒアの最高司祭となれば世界中どこに行っても通じるステータスですね。どこの国の王でも無下にはできないでしょう。

せめてザイアの最高司祭だったらここでも通じたんでしょうけどね。他の人達も肩書きだけだと通じそうにないので伯爵の肩書きで名乗ります。


フェルディナント「アイヤール帝国の一領を預かる伯爵にして、キルヒアの最高司祭である。国王に面談を申し込みたいが、どうか?」

バトエルデン「何で?何で、こいつのほうが通りがいいの?ザイアに戻りたい」

伯爵は【ディテクト・フェイス】で調べることを許可したので、適当な司祭が呼ばれて調べましたとも。直後に「ぶはあっ!」となりました(笑)

抵抗さえしなければ信仰している神とレベルが分かりますからね。《魔物知識判定》で達成値18出す人を探すよりも簡単に身分を証明できる。


司祭「失礼しました。どうぞ、お通りください」

マイザール「あの、気にしてるんで、あちらの人にも【ディテクト・フェイス】してあげてください」

司祭「あ、はい。(ころころ)うぉ!この人もレベルは凄い!レベルは凄いが……誰?

バトエルデン「祠建てていいかな?」

小神の司祭にありがちな哀しい展開ですね。ルーフェリアはその内大神に昇格できそうなポテンシャルはあると思うんですが、何年かかるかな。


こうして一行は王様のところへ通されました。当代のユレヒト王国の国王はラグレット・ルード・アルバセヌスという34歳の若い人です。

"盤を見つめる国王"と呼ばれ、各学問や操霊魔法に堪能。そして何よりゲーム好きというどこぞの"指し手"を思い出させる人です。

ユーレリア地方統一の野心を持っていることでも知られています。コネに必要な名誉点は200/1000/3000と結構なものだったりする。


その隣には王妃様もいます。こちらは"絢爛の美妃"エレオーノ・アルバセヌスといいまして、夫に負けずゲーム好きです。

美人ゲーマーとして一世を風靡し、ラグレットともゲームを通じて仲良くなって結婚するという一国のお妃としては変わった馴れ初めを持ちます。

しかもこの手の王妃にありがちなゲームにかまけて国庫を浪費するということもなく、確かな実力で勝ち続けることから"国庫を圧迫しない妃"とも呼ばれます。


そんなゲーマー夫婦の前に通されたわけですが、エレオーノの方が妙にキラキラした目で伯爵を見ています。

マイザール「王妃モテとかいう属性あるんですかね、この人」

そりゃあ伯爵がキルヒアの最高司祭だというからゲーマーとして期待しているんでしょうね。「サッカークラブにブラジル人が来た」ぐらいの期待感です。


フェルディナント「アイヤール帝国の伯爵にして、キルヒアの最高司祭を務めるフェルディナント・シュナイダーだ。以後、お見知りおきを」

ラグレット「ほう。それはそれは。何とも驚くべき人たちだな。歓迎するよ」

ここで伯爵は自分達が世界の危機に関わることを調査していることを説明し、図書館の閲覧許可を求めます。セラフィナの勅命であることも含めて。


あと<絶竜神剣>がこの国の始祖が鍛えたものであることも。

フェルディナント「邪悪な竜神を屠るための剣。その名も、ぜ……ぜつりゅう……しんけん……どらごん……ごっど……すれいやあ」

ジュエリィ「もっと大きな声ではっきりと」

フェルディナント「どらごんごっどすれいやあ!」

しかしこちらはラグレット自身知らないことのようです。歴史の表舞台に出ていないから仕方ないか。

あとこの人自身は魔法王ユレヒトとの血縁はない。ユレヒト王国は昔から野心のある魔法使いが王位を簒奪することを繰り返しているのです。

ラグレット自身も宮廷魔術師だった祖父が王位を簒奪し、父は即位前に謎の死を遂げていたことで彼がアルバセヌス朝の2代目の王になりました。

噂ではユレヒトの玉座には魔法王ユレヒトの呪いがかけられていて、それが原因で「玉座に座りたい」という野心を駆り立てているとも言われる。


そうこうしているとエレオーノが何かを夫に耳打ちし、夫がそれに苦笑いというのが挟まります。対戦したいんですね。

ラグレット「他ならぬキルヒア最高司祭の言とあれば、疑う余地はあるまい。図書館は自由に使ってくれ」

ついでに研究会の調査の許可も得ます。その代わり歓迎のための宴で余興に参加して欲しいと誘われましたよ。そんなに対戦したいのか、この脳筋と。

どっちかというとジュエリィやマイザールの方がそういうことは強そうですけどね。知力ボーナスからして反則的ですもんね。


それからジュエリィとゆんは図書館に、マイザールは研究会に向かい、伯爵は別の部屋に案内されます。

そこがまた凄い部屋でした。棚にはあらゆるカードゲームやボードゲームが積み上がり、いかにもゲーマーの部屋といった様子。

ここにきて伯爵はようやく自分が危地に立たされていることを理解します。キルヒアの最高司祭のくせに自分が脳筋に過ぎないことも(笑)


フェルディアンント「ほ、宝石殿は?」

ジュエリィ「ワタシは図書館だよ。篭るって言ったよ。展開見えたし」

フェルディナント「マイえもーん」

マイザール「ごめんなさい。ボクも別の場所です」

一緒にいるのはもう1人の脳筋こと大司教のみ。どうして頭脳明晰の筈のキルヒア司祭とエルフの司祭が揃っていてこうも暑苦しいのか。


フェルディナント「なあ、どう思う大司教、これって子供たちが遊ぶゲームだよな」

バトエルデン「そうだな。場所によっては金を賭けるらしいぞ」

フェルディナント「何!?」

バトエルデン「そして、俺自身は、アブド●ル顔になって「すまん、俺はこう見えてすぐに熱くなるタイプで賭け事は苦手なんだ。力になれそうにない」

丸投げしやがった。仕方ないので伯爵は一発勝負の運ゲーを選択します。それはそれで相手に失礼のような。


エレオーノ「……ひょっとして、私、過小評価されてます?知を競うゲームではあなたの敵ではないという挑発ですか?」

キルヒアの最高司祭が頭を使わなくてできるゲームを提示してきたらそう思うでしょうね。全てはこの肩書きのせい、キル・ヒアーだったら問題なかったんですが。


フェルディナント「自分に思うところがあれば、俺様に選ばせればよかったのだ、王妃殿」

エレオーノ「そうですね。これは、何でも受けて立つという、司祭様の宣言と受け取りました。せっかくの機会です、一番自信のあるもので挑戦させていただきます

そうして提示してきたのはコントラクトブリッジです。日本ではマイナーながら世界的には有名なカードゲームです。

ラクシアに同じゲームがあるかは不明ですが、似たようなものがあるのでしょう。このゲームの特徴は4人が卓を囲み、2対2のペアで戦うという点です。


よってエレオーノは夫と、伯爵は大司教と組まざるを得ない。

フェルディナント「一緒に地獄へ行こうぜ。あ、勝負は1回で頼む。時間に余裕のある身ではないのでな」

エレオーノ「わかりました。しかし、そうなると、それなりのレートでお願いしますね」

魔法王や輪環とも平気で戦うくせに、この時ばかりは冷や汗が止まらなかったようです。




一方研究会に行ったマイザールは博物館のような雰囲気の建物に入り、資料の閲覧を要請します。国王の許可も出てますしね。

受付の人は許可が出ていることを仏頂面ながら確認し、マイザールを奥へ通しますがそこがまぁ酷いものでした。

職員は仕事をしているフリをしてサボっているし、「魔法王ユレヒトの遺跡」と表示された展示物がどう見ても魔動機だったり。

そのくせ「魔法王ユレヒトの弟子某の遺跡」と表示された展示物はちゃんと魔法文明時代のものなので、ユレヒト関連だけわざとやってると思われます。

あと「魔動機文明時代の遺跡○号」という展示物はちゃんと魔動機になっています。決して時代考証のできていないアホの集団ではない。


マイザールは堪りかねて職員を捕まえて質問しました。

マイザール「これ、何ですか?」

職員「ユレヒトの遺跡からの発掘物ですよ。あ、遺跡は部外者立ち入り禁止ですからね

マイザール「どう見ても魔動機なのに、これが魔法文明時代?」

職員「魔法文明時代の遺品だなんて書いてません。我々もちゃんと研究してます。とにかく、あの遺跡は立ち入り禁止ですからね」

とにかく何と言っても「全権委任されている」「部外者立ち入り禁止」と繰り返すだけ。話になりませんね。

一応魔法王ユレヒトの遺跡の場所は遺跡マップで確認しましたが、作成年月日も古く更新されていない。下手したら隠蔽している疑いもある。


ジュエリィの方は《文献判定》で達成値32を出して一通り調べていました。これで魔法王ユレヒト関連の知識は大体得ました、流石ですね。

それに関連した遺跡がこの近くにもあるのですが、その遺跡の真上に魔動機文明時代に発掘研究のための施設が作られたそうです。

結果としてカイン・ガラのように遺跡が地層のようになっているらしい。マイザールが見つけた疑惑の展示品はそういう事情で発掘されたのでしょう。

それ以外にも魔法王ユレヒトはエピソードが非常に豊富な人物のようで、知識欲の権化であるジュエリィですら整理しきれないほどでした。


そうこうしていると晩餐会が始まり、余興として伯爵と大司教の地獄のコンビネーションが発揮されます。主に自分が地獄を見るという意味で(笑)

バトエルデン「いきなり「2NT(ツーノートランプ)」とか言いながら、破滅していこう」

一応サイコロも振りましたが伯爵のセージ技能1レベルが足を引っ張り惨敗。相手にも見切られた感じで何ら面白みのない勝負でした。


バトエルデン「バットを持ったこともない茶道部が、甲子園優勝チームに挑むようなものですよ

今回は挑戦しているほうが体育会系ですけどね。格闘技の世界ランカーがどういうわけだか将棋の名人に挑戦するような感じ。


伯爵は自分の不甲斐なさについて詫びつつ、真打として頭脳専門の2人を紹介します。

フェルディナント「我々の知識と知恵を担当するのは、実は、俺様ではない……こら、マイザール、逃げるな!」

マイザール「えー」

フェルディナント「頼む、"宝石"殿。負けた分は俺様が持つから」

ジュエリィ「じゃ、やろうか」

そうして始まったリベンジマッチはラグレットが足を引っ張ってPC側の勝利になりました。ジュエリィとエレオーノの対決は見栄えも良くていいですね。


これで一勝一敗、何とか格好はつきました。

フェルディナント「これで引き分けということでどうかな、王妃?」

ゆん「あと一戦といわれると、ゆんが出ちゃうよ。いつの間にかハートのクイーンが3枚になるゲームになっちゃうよ

高レベルスカウトのグラランとゲームなんてやるもんじゃない。差し引きではまだ相手が勝ってるらしいし、これでお終いということになります。

赤字ではありますが色々便宜を図ってもらった代償と考えればまだ安いものかな。所詮は余所者だし、手っ取り早く事が済んだと考えれば悪くなかったかも。


フェルディナント「……はあ、宿に帰って酒飲もう」

バトエルエン「付き合うわ、肉食おう、肉」

GM「晩餐会でも食べたと思うが」

フェルディナント「俺様、脳を使うとタンパク質とアミノ酸を消費する体質なんだ

バトエルデン「そうそう。タンパク質を補充しないと脳が細るんだよ。たっぷりタンパク質摂って、超回復させないといけないんだよ

本当に脳みそまで筋肉でできてるのかあんたら。脳を使うとエネルギーを大量に消費するとはいうけど、確かブドウ糖を使うような。


★張り子のドゥーム

翌日、マイザールが手に入れた地図を頼りに魔法王ユレヒトの遺跡を目指します。地図自体はかなり大雑把なものでした。

それでも《地図作成判定》で正しい位置を読み取ります。これはスカウト、レンジャー、セージのどれでもできる行為判定だったりします。

ジュエリィを筆頭に皆そこそこ技能レベルが高く、脳筋組も知力は決して低くないので基準値は余裕で二桁揃いです。当然全員成功しました。

遺跡を見つけたら次は《構造解析判定》です。こちらはセージのみですがジュエリィがいるので問題なく魔動機文明時代の遺跡であるとわかります。


本命の魔法文明時代の遺跡はこの地下にあるわけですが、入り口には見張りが2人いました。両方とも正騎士相当のデータです。

マイザール「面倒なので……距離を拡大して【スリープ】します。《ティルダンカル光魔再起》つきで。3でも寝るだろ。(ころころ)33」

GM「どうしろっていうんだよ(笑)」

精神抵抗力は10(17)しかないんですよね。〔剣の加護/運命変転〕込みでも6ゾロ狙いで1/18でしか抵抗できない、当然寝ました。

遺跡に入ったらドゥナエーを2回召喚して全員に《月の舞》の加護を与えておきます。もうここから何が出るか分かりませんしね。


遺跡内部の発掘はかなり進んでいるらしく、目ぼしいものもないまま進んでいくと、全員《隠密判定》を行うことになります。

バトエルデン「(ころころ)わはは、平目に金属鎧ペナルティで、何と達成値は「−1」

他の人は皆スカウト技能は持っているんですけどね、ほぼ嗜みで。これによって地下2階で5人組の冒険者の一団に気付かれてしまいます。

どうやら噂の研究会子飼いの冒険者のようですね。大体5レベルぐらいのパーティです。成長回数にして10回程度でしょうか、とんでもない実力差です。


実力で排除するのは簡単です。でも殺す必要もないのでお金で懐柔できないか交渉してみました。

フェルディナント「単刀直入に聞くが、お前たち、今回は研究会にいくらで雇われた?倍額出してもいいぞ

冒険者「いや、「いくらで」とか。我々は、ふつうに遺跡探索しているだけで」

フェルディナント「まーたまた」

マイザール「そういうの、いいですから」

冒険者「それよりどうやって入ってきたんだ、あんたたち。(ころころ)ぶふぉ!

セージ技能持ちが5レベルの知力ボーナス+3で、奇跡的に出目10を出して分かってしまったようですね、相手の実力を。

こうなってしまったらもう絶対逆らえません。この時のセージの心境はカーラに遭遇した時のスレインのそれに近いと思う。


フェルディナント「そういうわけで、俺様たちのことは見なかったことにしてもらえるかな?
          俺様たち、ちょっと調べ物したいだけなんだ。な?無駄な殺生はしたくないんだ

冒険者「ハイ、モチロンデス。ワタシタチ、ナニモミテマセン」

バトエルデン「うんうん。お互い、いい出会いだったということで。よく顔も覚えたから。
        知ってるか?世の中には顔さえ覚えておけば、射程無限って魔法もあるんだ」

冒険者「ナニモミテマセン、ナニモイイマセン」

確かに射程無限の魔法も幾つかありますけど、そうピンポイントで抹殺するような魔法はないはず(笑)


こうして冒険者達と友好的関係を築いたことでこの先の情報を教えてもらえました。

冒険者「この先、一番奥には魔動機文明時代の、無茶苦茶強い魔動兵器がいて、進めません。
     その先に魔法文明時代の遺跡があるんですが、完全に崩落してて、進む道とか残ってなさそうって話なんですよ」

フェルディナント「ふむ。そうか。今から最奥でものすごく大きな音が立つかもしれんが、きみたちは何も聞こえない。そうだな?」

冒険者「もちろんですとも」

フェルディナント「よしよし。物わかりのいいやつは好きだぞ、と言いながら1000Gほど、懐にねじ込んでやろう」

冒険者「ア、アリガトウゴザイマス」

何だか研究会とは別の意味で黒いことをしている気もする。向こうが既得権益を振りかざす組織としたら、こっちはヤ○ザっぽい(笑)


というわけで魔動機文明の遺跡の最奥まで来ると、そこには予想以上に強力な魔動機械が立ちはだかっていました。

その名もドゥームズデイドゥーム、なんと24レベルの巨大ドゥームです。"希望の鋼麟"に次ぐ高レベル魔動機械でドゥーム系最強の兵器でしょうね。


ドゥームズデイドゥームは24レベルの魔法生物です。戦艦に4本の脚を取り付けた姿をしていて陸上戦艦の異名を持ちます。

艦橋、艦首、甲板×2、脚部×4の八部位です。全身が刃物ではクリティカルしない《機械の身体》で、《鷹の目》を備えた<ガン>で武装しています。

またドゥーム系恒例の《防御膜展開》は《積層防御膜展開》に強化され、防御膜は属性毎に展開し、同じ属性の攻撃を無効化した上でようやく消滅します。

艦橋は自らを中心に金属片を撒き散らす《対人兵器》を持ちます。艦首には純エネルギー属性の魔法ダメージを与える《艦首砲》を持ちます。

これは艦橋が《艦首砲準備》を使用することで使用できるようになります。1ラウンドに1回使用し、3回使用すると発射可能になります。

脚部は甲板と艦首に対して、甲板は艦橋に対して《攻撃障害=不可・+4》を持ちます。全ての脚部を破壊すると《擱座》で甲板の回避力が下がります。


GM「言ってしまえば、脚の生えた宇宙戦艦ヤ●ト

フェルディナント「ほう」

そういえば"希望の鋼麟"には《波動砲》とかありましたね。2ラウンドに1回2D+25点で半径6m/20に攻撃可能でした。

こちらの《艦首砲》は3ラウンドに1回と頻度は落ちるものの、ダメージは2D+60点と強力。貫通なので巻き込める数は安定しないけど。


GM「力作だったんだけどねえ。時間押してるんでカット

どうやらスケジュールの都合でその日の内にセッションを終えねばならず、この先にまだ敵がいるのでカットされたらしい。

これは本当に惜しいですね。"希望の鋼麟"の時も殆ど<ガン>の脅威に晒されなかっただけに大司教の立ち回りを見たかった。

エキシビジョンマッチとかでその内実現しないかとも思う。取り合えずここにいたやつは張り子だったということで倒したことにします。


★同情するから、金をくれ

ドゥームを倒した一行は更に奥に進み、崩落してそれ以上進めない所まで来ました。ここで役に立つのが【トンネル】ですね。

ただ崩落の仕方にも癖があって一部に空間があるらしく、《探索判定》でその辺を見極めて穴を開けないといけません。

問題はジュエリィが契約の関係で【トンネル】が使えないということです。ランク10が使えないということは契約クラスは5未満。


契約の組み換えをやるとまた30時間とかかかるわけですが。

フェルディナント「なら、俺様の【コンプレーション】が火を噴くときだ

マイザール「うわあ。キルヒア強えー」

フェルディナント「重いけどな」

バトエルデン「そこは、俺が補佐していこう。<魔香水>振りかけてやるよ」

【コンプレーション】の条件は10レベルまでの魔法ですが、妖精魔法の場合はランク10まで使えます。

消費MP10点とは別に【トンネル】自体にもMPを使うけど、大司教の<魔香水>なら一振り15点も回復するので大分抑えられる。


《探索判定》自体は他の3人が揃って達成値25〜27を出して余裕でしたが、空間とは別に戦利品を見つけました。

そこですかさずマイザールが【幸運は富をもたらす】をジュエリィに使用。達成値15〜19でMP10点の代償を払いました。

その代わりジュエリィには戦利品の出目に+2もの修正を与えます。《鋭い目》《トレジャーハント》も合わせて+4ですよ。


ジュエリィ「うい。(コロコロ)えっと、これ16とかになるのかな」

どうやら6ゾロを振ったらしい。16なんてこれだけ条件が揃わないと出ない数値ですからね、いいものを見ました。

その結果<つややかな幻獣の皮>というものを入手します。お値段4400ガメル、かなり高等な幻獣が死んでいたんですね。

多分12レベルのエルダーマンティコアあたりでしょう。他にも同じものを落とす奴がいるのかもしれないけど。


【トンネル】で抜けた先はかび臭く、周囲には折れたり錆びたりした魔剣が無数に散らばっていました。

そして1本の両手剣が地面に突き立てられています。全長2mで黒い刀身を持ち、赤いもやに包まれた禍々しい魔剣です。

ここで知名度20を抜いてこれが第六世代魔剣<イル・ブラッド>であることが分かります。「ウィザーズトゥーム」収録の魔剣ですね。


<イル・ブラッド>は家族を殺された名匠が復讐のために鍛え上げた呪いの魔剣であり、仇の一族を死に絶えさせたとされています。

性能自体はBランクで威力29程度ですが、使用者は《凍る血液》で毒・病気・精神効果属性を無効化し、アンデッド関連の効果を複数持ちます。

1つはアンデッドに対して命中・ダメージを+2し、更にこの魔剣で死んだ相手を高確率でアンデッド化させる《死者の福音》です。

もう1つは地面に突き立てることで一定確率でアンデッドを召喚する《死霊の呼び声》。この2つの能力にあるアンデッドはGMが決めます。

最後は使用者のHPが0以下になったら《生死判定》すら行わずに死亡して、使用者をレブナントにしてしまう《亡者への導き》です。


以上のように死者を呼び、敵も持ち主すらも死者にしてしまう恐るべき魔剣なのです。家族を殺された恨みは計り知れませんね。

ただこの魔剣自体は自害した製作者の亡骸と共に封印されたとされています。また封印は破られているという伝説もある。

その伝説では製作者は魔剣を抱き、暗闇の中を家族を求めてさまよっているという、何とも後味の悪いものとなっています。

もしその伝説が本当だとしたらここにある魔剣は同じ性能を持つ別の魔剣である可能性が高い。こんなものが2本もあるなんて嫌ですけどね。


バトエルデン「とんでもない魔剣だな。使う使わないはともかく、回収はしていこう」

マイザール「大司教は使いませんか?」

バトエルデン「攻撃は捨てた。俺にとって両手剣に出番はない」

仮に使ったとしても《不屈》が効果を発揮する状態になったらレブナント化しちゃいますしね。危なくて使えない。

一応4万8000ガメルの非売品扱いですし、カイン・ガラあたりに売ってしまってもいいですね。適切に管理してくれるでしょう。


続いてまたも戦利品を入手します。マイザールが【幸運は富をもたらす】で6ゾロを振り、代償はMP3点で済みました。

占瞳の6ゾロは達成値とは別に効果が設定されていまして、この場合は+1の修正が入った上で同じ部位から2回も戦利品を剥げます。

これによって<つややかな幻獣の皮>をもう2枚も入手しました。これ自体赤か金のSカードになるので色々使い道があっていいですね。


そんな戦利品が入手できるだけあってここは幻獣達の死体が積み上げられた場所でした。怪獣墓場もとい幻獣墓場って感じです。

エルダーマンティコアをはじめ、スフィンクス、フレスベルク、ペルーダ、ジャバウォック、グリンブルスティなどの死体がありました。

いずれもレベル二桁の強力な幻獣ばかりですね。最高レベルのペルーダなんてグレータードラゴンとタメ張る18レベルですよ。

殆どが繋がれたまま朽ち果てた様子ですが、一箇所だけ大きなスペースがありました。逃げたか、運ばれたか、今でも徘徊しているかもしれない。


さらに本棚があったので《探索判定》をするとジュエリィが6ゾロを出しました。流石というか、気合を入れて探したようですね。

「竜を神にだと?オルブリュークの企みなど、叩きつぶしてくれよう。<絶竜神剣>完成の暁には、竜も神も我が敵ではない」

そう書かれた手記を見つけました。魔法王ユレヒトのものだとしたら、彼はここで幻獣達を実験台にして魔剣を鍛えていたわけです。

更に奥へ行くと魔物を発見します。知名度17程度なので当然のように正体を見抜きました、ウィザーズブレインが2体いました。


ウィザーズブレインは11レベルの魔法生物です。死亡した魔法使いの脳を材料とし、幾本もの触手を生やした姿をしています。

脳(コア)、吸盤触手×2、トゲ触手×2、電撃触手×2の七部位です。全身が《再生=5》点を、触手は《脳をかばう》能力を持ちます。

脳は赤紫色の《貫く魔光》を貫通で発射して呪い属性魔法ダメージをHPに、その半分をMPに与えます。

吸盤触手は《吸着安定》によって転倒を防止し、電撃触手に《全力攻撃》を与えます。トゲ触手は《麻痺毒の注入》で回避力を下げてきます。

電撃触手は攻撃が命中した相手に《電流》を流して雷属性魔法ダメージを与え、更に《絡め取り》を可能とします。


魔法王ユレヒトは敵対した魔法王を倒してはこの魔法生物にしていたという伝承があります。なおこいつらは「27号」「28号」というプレートがついています。

ゆん「どれだけ殺したんだ、ユレヒト」

というかこの辺にそんな数の魔法王がいたことが驚きですね。魔法文明時代にどれだけ領土が分割され、またユレヒトに併合されていったんだろう。

ウィザーズブレインは既に自我はなく魔法王への忠誠を埋め込まれ、その頭脳を様々な状況に対応できるよう利用されているわけで、何とも惨い話です。

オルブリュークの魔法王もそんな奴が近くにいたら気が気じゃないし、竜神なんてものに手を出したくもなる気持ちも分からなくもない。


本来ウィザーズブレインは過剰なまでの防衛意識を植え付けられていますが、「27号」と「28号」は侵入者に反応もせず声を掛け合っていました。

「ユレヒトは恐ろしい」

「然り。恐ろしい」

「彼は自分以外が魔法を使うのを嫌う」

「然り。嫌う」

「彼の魔力は強大」

「然り。強大」

「竜すら抗えず」

「否。竜は抗いし」

「竜は魔法で攻撃しえず」

「然り。竜は魔法で他者を傷つけられぬ」

「竜は魔法を使わず」

「否。使う」

以下無限ループです。彼らがどんな恐ろしい目にあったかは想像するに余りある。自我はない筈なのに、忠誠を植えつけられている筈なのに、このやり取りですよ。

ただこの会話を聞く限り会話に出てきた竜は限定的にユレヒトに抗ったようですね。魔法で他者を傷つけられないだけで、魔法自体は使えるようです。


一行は彼らを倒してあげました。魂が輪廻に戻れたことを祈りつつ、戦利品は剥ぎます。ただ14回も剥いでいたら時間がかかりすぎるので1回ずつ。

まずは自動で落とす<魔力の集結した宝石>を2個。1つ2000ガメルで金のSカードになる。魔光を発射する宝石が脳に取り付けられているらしいのでそれでしょう。

あとは<雷の結晶>を1個。1個600ガメルでやっぱり金のSカードになる。<毒の針>を4本。こちらは1本100ガメルで赤のAカードになります。

どうやら13以上で入手できる<悪意の結晶>は出なかったようですね。でもこれでも8000ガメルで金のSカードにしかならない。11レベルだとこんなものか。


★第1ラウンド ゆん、1打席2三振

更に奥へ進んだ一行はいよいよ今回のボスと遭遇します。その名もエルダーサブテレイニアンドラゴンです。

サブテレイニアンドラゴンというのは「ザルツ博物誌」に収録されている14レベルの幻獣で、地底に適応したドラゴンの一種です。

実力は大体レッサー相当ですが翼が退化して《飛行》できなくなっています。その代わりに翼の振動によって衝撃波を生み出す能力を得ています。


今回遭遇したのはそれがエルダードラゴン相当にまで成長したもので当然の如く25レベル。亜種とはいえついにエルダードラゴンと戦う日が来ましたね。

知名度は16と低めなのに対して弱点値は35と極めて高い。ちなみに通常のエルダーは10/33なので割と駆け出しでも実力は見抜けたりします。

ジュエリィですら出目9必要なのだから余程特化していないとまず抜けない弱点ですね。まぁここぞという時に36とか出すあたり流石なんですが。

これによって得られたボーナスは「物理ダメージ+2点」ですね。これは通常のエルダーと同じです。伯爵やゆんにとっては好都合といえます。


改めてデータを確認するとエルダーサブテレイニアンドラゴンは25レベルの幻獣です。地底に適応したドラゴンの中でも最も強大な種類です。

頭部(コア)、胴体、翼×2、尻尾の五部位で全身が《純エネルギー無効》。頭部は純エネルギー属性の魔法ダメージを与える《エネルギーブレス》を発射します。

更に真語・操霊・深智魔法15レベルを魔力28で使用する《魔法適性》持ちで、胴体もこの魔力によって《ワードブレイク》で魔法破りが可能です。

胴体には《攻撃障害=不可・不可》があって頭部を守り、更に頭部に対する《行使判定》にペナルティを与える《魔法障害=−4》があります。

尻尾は乱戦エリア内の任意の敵全てを《一掃》によって攻撃可能。翼は打撃点+8で回避力−3の《渾身攻撃》が可能です。

また両方の翼を使用した《超音波攻撃》によって1体に衝撃属性の魔法ダメージを与え、これを構造物に使用すると《瓦礫乱舞》で範囲に物理ダメージを与えられます。


さっきのドゥームとこいつで2連戦になる予定だったんですね。もし戦っていたらどうなっていたんだろう。

マイザール「友好的な接触は可能でしょうかね?」

ドラゴン「む、その剣は!そんなものを鍛えんがために我が同胞の生命がいくつ失われたことか

フェルディナント「そうだよね。そう言うと思ったよ」

やっぱりさっきの幻獣墓場から逃げ出した奴っぽいですね。他の幻獣達があの惨状なのに、一頭だけピンピンしているのは流石というか。

そうしていつもの《先制判定》ですがこいつの先制値はなんと35ですよ。これは通常のエルダーも同様。魔法王が実は34あったので歴代トップでしょうか。

あまりにも高過ぎてゆんでも成功が覚束ない。マイザールとジュエリィはSSカードで強引にもぎ取り、ゆんは何とか先制を取って戦闘に入ります。

ゆんの先制力は25ですからね、素の状態だと出目10必要。練技【ジィプロフェシー】を使えたとしたら出目8以上で大分マシになりますね。




今回の戦闘は準備時間がなく、大司教は《かばうV》を放棄してまで《魔法拡大/数》《ダブルキャスト》で支援をばら撒くことから始めます。

【フィールド・プロテクションU】【ウォーター・シェル】を全員にかけます。これで魔法ダメージは−7にはなりました。

鼓咆は【強靭なる丈陣U:精定】で生命抵抗力+1です。これはさっきの脳みその会話から攻撃魔法は使えないのだろうとブレス対策です。

自分には【バークメイル】Sと【ビートルスキン】をはじめとする練技で強化もする。これで防護点は魔法込みで実質+8の状態ですね。


次にマイザールは3m横にずれて射線を外しつつ【バークメイル】Sをゆんに。自分には【スフィンクスノレッジ】等の練技を入れる。

いつもの如く【ブリンク】【アンチマジックバリア】【デモンズタックス】を補助動作で使い、やはり《魔法拡大/数》《ダブルキャスト》を宣言。

【タフパワー】を全員に配り、アタッカー2人には【ファナティシズム】です。これで生命抵抗力は+3、精神抵抗力は+2になりました。

更に《ファストアクション》で自分に【スペルエンハンス】で魔力+1、【サモンフェアリーU】でエコーを召喚して通常移動で敵から33m地点に配置。


ジュエリィは後ろに3m下がって《ディフェンススタンス》で生命抵抗力+4。更に《魔法拡大/数》の【ファイアポート】で前衛3人を敵の前に瞬間移動。

《ファストアクション》では自分とマイザールに【ウェポン・マスターU】で《武器習熟S/スタッフ》を付与。またも<ソーサラースタッフ>を使うらしい。


次に伯爵は【バークメイル】Sを自分に入れつつ各種練技と補助動作の魔法各種を入れます。【ファイアポート】で移動したお陰で魔法も使えるわけです。

タゲサに【プレコグ】、更に【コンプレーション】で【ブリンク】まで入れて一発でも多く敵の攻撃を回避する所存。キルヒアの特殊神聖魔法大活躍です。

そうして《魔力撃》《薙ぎ払いU》を宣言して《攻撃障害》のある頭部以外の全てを狙います。命中の達成値は41もあって全部に当たりました。

素の命中力25に《魔力撃強化》で+4、タゲサとファナティで+3、練技で+2なので命中力34。【プレコグ】で1D+39ですよ、敵の回避力30程度なのに。


フェルディナント「では、ダメージ決めます。胴体から(コロコロ)回りました。(コロコロ)あ、また。(コロコロ)100発、ぴったり」

GM「防護点も30だから計算しやすいよ」

その辺はドラゴンだけあってそこそこあるんですよね。HPもそこそこありますが、輪環に比べればタフネスでは劣ります。


この攻撃の結果は以下の通り。

164、70−178、36−84、36−84、52−144(頭部/胴体/翼/翼/尻尾)

バトエルデン「ドラゴンゴッドスレイヤーのおまけは何かありましたか?」

GM「それは、ドラゴンの手番にわかる予定」

早くも翼は2桁に突入。片方でも折ることができれば《超音波攻撃》等は使えなくなりますね。


最後にゆんが動きます。まずはいつもの詠唱からスタート。

GM「1秒間に20回の呼吸ができそうだね、あんた

【クリティカルレイ】も入れてタゲサと【ブリンク】もかけて、《鎧貫き》《魔力撃》で胴体を殴るも31しかなくてはずれ。

素の命中力25に練技で+3、魔法で+3だとしたら命中力31です。31なんて数値が出るわけがないんですよね。

後に《命中強化U》を入れ忘れていたと判明しますがそれでも29なら31は出ない。まさか練技か魔法の修正も忘れていた?


その後の《追加攻撃》《ファストアクション》による攻撃3回も練技による2回も全部空振りに終わりました。

ゆん「6回空振りって凹む〜」

バトエルデン「巨体でひょいひょいかわしやがって

GM「これ、元のエルダードラゴンの数値からいじってないんだよ?」

流石は元祖25レベルの魔物といいますか。数値的には回避力30(37)もあるので歴代の敵と比べても高めなんですよね。

その上計算は間違ってるしパラミスもない。何だか昔の扇風機になっていたゆんが帰ってきたような感じになってしまいました。


次はドラゴンの番です。頭部は何故か《エネルギーブレス》を使えない。仕方なく《マルチアクション》で【マナ・インテグレイション】をかけます。

これは14レベル深智魔法で術者にマナを集積する力場を纏わせるものです。これにより術者は物理・魔法ダメージを10点軽減します。

その代わりに術者は至近にしか魔法を使えなくなる。術者自身や装備品、精々接触できるものまで。魔法を遠くに飛ばさないなら有効な魔法です。


そして頭部は牙でゆんに噛み付きますが【ブリンク】で自動回避。胴体は鉤爪で引き続きゆんに攻撃して命中、33(40)とかゆんでも厳しい。

ダメージは2D+27点と大きいけど出目が悪く30点で済みました。ここでは14点程止めて適用ダメージは16点で済んでいますね。

素の防護点4に魔法で+2、練技で+2、賦術で+4で12点なんですよね。もしかして<真・ブラックベルト>でも装備していたんでしょうか。


翼は2枚とも《瓦礫乱舞》を後衛2人に使います。これにより落石が発生し、回避に失敗すると物理ダメージを受けることになります。

マイザールは【ブリンク】で回避するもジュエリィに避けられるはずもなく命中。41点の物理ダメージで推定13点止めで28点ほど食らった筈。

尻尾は何故か《一掃》を使えないのでゆんを普通に攻撃。命中して18点ほど抜けました。これでゆんの負傷は34点ほど、魔法王戦とは一転して重傷?です。


以上の行動からこいつは《エネルギーブレス》や《一掃》といった特殊能力が何故か使えなかったわけですね。

魔法王の時は本人すら理由が分からないまま《再生》できずにいましたが、それもまた特殊能力を使えなかったといえます。


★第2ラウンド 世の中は不公平

余裕のできた大司教は《銀鱗の魂》でアタッカー2人をかばいつつ、パラミスSを胴体に入れて<魔香水>シュッシュッでMP回復。

鼓咆は【強靭なる丈陣V・整身】で生命・精神抵抗+1。これで【タフパワー】と合わせて大司教以外は生命・精神抵抗+3ですね。

主動作では《魔法拡大/数》を宣言して【キュア・モータリー】で負傷している2人を回復。これでジュエリィを全回復、ゆんは30点でほぼ完治。


マイザールは更に3m横にずれて【ブリンク】をかけ直し、《魔法拡大/数》《ティルダンカル光魔再起》でアタッカー2人に【ヘイスト】。

マイザール「(ころころ)《光魔再起》しといてよかったー

バトエルデン「やりおる」

マイザール「あ、危ねー。ホンマ怖いわ、自分が」

また1ゾロ振ったのか、光魔の秘伝を宣言しといて本当に良かったですね。

その直後にエコーが【ヘイスト】を大司教とジュエリィに《こだま》します。消費MP18点×2を節約するファインプレイ。


伯爵は【デーモンフィンガー】とタゲサをかけ直し、【ヴォーパルウェポン】Sも入れて【プレコグ】の《魔力撃》《薙ぎ払いU》を前と同じ対象に。

164、30−148、33−51、27−57、45−99(頭部/胴体/翼/翼/尻尾)

尻尾にはクリティカルして翼に続いて二桁になりました。【マナ・インテグレイション】で実質40点ぐらい止めてるんですよね。

【リカバリィ】で<ガイスター>で消耗したHPを回復。ヘイストチェックは失敗しました。命拾いしましたね、竜の方が。


ゆんは《命中強化U》を足していなかったことに気付きました。

ゆん「てへぺろ」

バトエルデン「おい」

ゆん「痛いとか痛くないとかじゃないよね、これ。泣きたい。前のラウンド、絶対どれか当たってた」

やはり命中力は大事。今回もタゲサは入れて【ブリンク】かけ直し。【リカバリィ】で怪我を完治させ、【フェンリルバイト】重ねがけで命中力+1。

【クリティカルレイ】Aも入れて《魔力撃》《鎧貫き》で胴体を狙います。今度こそ命中力は31にはなっているものと思われます。


ゆん「(ころころ)40」

GM「なあ、さっき「1ゾロ以外」で回避したのに、なんでいきなり「6ゾロ必要」になんの?」

今胴体の回避力はパラミスSで−3されて27(34)になっているんですよね。前のラウンドは計算間違いもそうですが出目の問題もあった。

当然命中して、ここぞとばかりに2回ほど回って52点素通しですよ。【マナ・インテグレイション】の−10も有効なので42点。

これで胴体の残りHPは106点ほど。元のHPが248点だったので半分は切りましたね。【マナ・インテグレイション】のせいでなかなかしぶとい。


更に《追加攻撃》は命中の達成値35で攻撃します。

GM「(ころころ)なあ、【パラミス】Aにまからん?」

バトエルデン「まかりませんなあ」

多分出目7で34で1足りなかったんでしょうね。またも妖怪の仕業か。このレベル帯になってもパラミスは本当に心強いデバフです。


ゆん「(ころころ)回ったよー。(ころころ)お、まだ回った。(ころころ)あ、止まらない……」

GM「幻視、これは幻視なんだ

マイザール「現実です

ゆん「……68点!」

バトエルデン「10点減らしてもよくってよ」

適用ダメージ58点なので残りHP48点でしょうか。いくら【マナ・インテグレイション】があってもそろそろ危ないか。


続いて練技の牙ははずれ、投擲はパラミスのお陰で命中。

GM「だから、【パラミス】をAにまけろやー」

バトエルデン「2万Gいただけたら、考えてあげましょう」

でも《鎧貫き》も《魔力撃》も乗らないのでたったの32点。実質40点止めるので無傷でした。

更にヘイストチェックにも成功してもう2回殴り、両方命中したものの44点ダメージでは適用ダメージ4点。2発で8点抜けて残りHP40点です。


ジュエリィは全員に【バーチャルタフネスU】でHP43点増やします。魔力31扱いで計算が分かりません。

ジュエリィ「【ヘイスト】(コロ)来たよ。何しよう」

マイザール「世の中不公平だと思う

バトエルデン「そうだな、不公平だな」

マイザール「わかってるから、自分じゃなくてジュエリィさんを【ヘイスト】したんですけどね」

折角の追加行動なので【ファイアストーム】にします。ただし《魔法障害=−4》のある頭部は《魔法制御》でわざと外します。


《クリティカルキャスト》も宣言して焼くと以下のようになりました。

164、11−29、30−21、38−19、38−61(頭部/胴体/翼/翼/尻尾)

38点出している2ヶ所クリティカルです。まったくこの魔女ときたら(笑)


それでは敵の手番です。まず頭部は全部位に【ヘイスト】です。これだけでMPを90点も使っているんですよね。肝心のチェックは失敗でしたが。

胴体は伯爵を狙って自動的に大司教に命中。32点ダメージを出すものの、素の防護点21に《かばうV》込みで10点上昇して31点止めて1点だけチクリ。

ヘイストチェックは失敗し、翼は《渾身攻撃》でやっぱり大司教が全部止めます。両翼ともヘイストチェックに成功して計4回も攻撃しましたよ。

ところがダメージはというと40点で9点、42点で11点、31点でコーン、35点で4点通し。エルダードラゴンですらこんなものか。


バトエルデン「やっべー、25点もHP減っちゃった」←最大HPが116+43=159点の人

GM「5回かばわせたぞ。さあ、伯爵、尻尾を自力で躱してくれ」

フェルディナント「俺様、【ブリンク】すよ

GM「あ……。ゆんのほうを狙うべきだった?」

ゆん「ゆんも【ブリンク】だよ?

GM「何なのお前ら」

そしてヘイストチェックは失敗。《一掃》があっても結果は同じで大司教がちょっと怪我をする程度でしたね。【ヘイスト】がはげるのは地味な嫌がらせ。


★第3ラウンド すごいよマイザールさん

マイザールはパラミスSを胴体に入れ、鬱陶しい【マナ・インテグレイション】を【ディスペル・マジック】で解除しようとしました。

素の魔力27に練技で+2、<ソーサラースタッフ>で+2できるなら基準値31。相手の達成値は35だったので出目5以上で36出せばいい。

このままだと不安なので《ルシェロイネ魔導優越》で3倍掛けをします。これなら+2されて基準値33、1ゾロ以外で解除できます。


マイザール「(ころころ)あっ!?」←1ゾロ

GM「お前、本当に面白いやつだな

止むを得ず《月の舞》の効果で振り直し。今度こそ解除しました。これで頭部以外の部位がますます絶対に絶命ですね。

更にエコーにジュエリィの【ファイアストーム】を《こだま》させます。これでいくらか部位が落ちるだろうと思われましたが。


マイザール「(ころころ)ええっ!?ねえよー。おかしいだろ、これ」←1ゾロ

バトエルデン「まあ、あれだ。エコーごときが、ジュエリィをコピーしようなんて、おこがましかったということだ」

GM「ほら、ジュエリィ異貌してたから、実は発声せずに魔法唱えてたんだよ。な」

マイザール「ねえよー。絶対おかしいよ

これだけ幾重にも知恵を巡らせて安全策を取っているのに、どういうわけだかそういう人に限って出目が悪かったりするんですよね。

私も1ゾロ以外で成功するという程度にバフを積んでいる時に限って1ゾロを振ることがよくあるので他人の気がしない(笑)


大司教は【ブレスU】を全員に入れて、パラミスAを弱っている方の翼に入れ、《銀鱗の魂》を前衛2人に宣言。ヘイストはこなかった。

そしてジュエリィが【ファイアストーム】を前のラウンドと同様に頭部以外にかけました。達成値40で胴体と片翼の抵抗を抜きます。

164、52−X、?−21?、?−X、?−61?(頭部/胴体/翼/翼/尻尾)

これにより抵抗に失敗した胴体と片翼が落ちる。もう片方の翼と尻尾のダメージは不明ですが、伯爵を控えてこのHPではもう……。

マイザールと大司教が入れたパラミスは無駄になりましたね。でもこれでようやく頭部が狙えるようになりました。ヘイストはやっぱりこない。


そこで満を持して伯爵です。《魔力撃》《薙ぎ払いU》で残った頭部、翼、尻尾を狙います。

フェルディナント「(コロ)命中の達成値は48」

マイザール「達成値で50が見えるってどういう世界ですかね。2dゲームですよね、これ」

フェルディナント「何言ってんだマイザール。俺様は、達成値勝負は1dしか振らない男なんだぜ

現在は【ブレスU】で器用度と知力が上がって命中力は1D+41程度になっていると思われます。これだと48はいかない。

やっぱり知力は指輪でボーナスブレイクしているんでしょうか。それなら出目6でギリギリ48は出ますが。


肝心のダメージですが、【クリティカルレイ】を入れていたのが幸いして頭部にはクリティカルしました。

フェルディナント「頭にはクリティカルして、119発

GM「91点通しとか」

頭部のHPは<剣のかけら>の強化込みで189点。残り98点でいきなり半減しましたよ。当然残りHPの少なかった片翼と尻尾は落ちた

これで残るはブレスもロクに使えない頭部のみ。MPは既に半減している筈。ヘイストは来なかったけどもう時間の問題です。


最後にゆんが動きます。タゲサと【クリティカルレイ】Sを入れて《魔力撃》《鎧貫き》で頭部をひたすら狙います。

クリティカルは起こらなかったものの<パワーリスト>と<牙>が1回ずつ当たっていずれも20点ほど抜け、投擲は10点ほど抜けます。

ヘイストチェックに成功してもう2回殴り、片方が命中してやはり20点ほど抜け。合計70点ほどの適用ダメージで残りHP20点


そうして巡ってきたドラゴンの手番ですが、この期に及んでブレスは吐けない、他者に魔法は使えないと絶望的状況。

GM「あれもダメ、これもダメって。ユレヒトまじ死ねって気分

バトエルデン「もう死んでるでしょ」

GM「死んだという確実な記録もないんだけど」

この状況で自分を何十点か回復しても高が知れてるし、【マナ・インテグレイション】かけ直ししても焼け石に水。

【テレポート】で逃亡なんてことをユレヒトが許しているわけもない。バグナードより多少はマシ程度に雁字搦めですね。


バトエルデン「イモータルで粘るのは?」

マイザール「即効で【パーフェクト・キャンセレーション】してあげましょう」

【イモータル】は呪い属性なのでパフェキャンが必要なんですよね。でも達成値的な意味で今のマイザールが相手では勝ち目が薄い。

素の魔力ではドラゴンの方が上なんですが色々積むと逆転しちゃうんですよね。自分への支援もすぐに剥がされるとはどうあがいても絶望


仕方なく《マルチアクション》で自分に【ソニック・ウェポン】でダメージを増やし、大司教を直接攻撃。

ちなみに固定値のキャラの場合はクリティカル値が存在しないため、ダメージへの修正が+2から+4に増えます。

他の人を狙えば《銀鱗の魂》で大司教に自動命中ですがそれでは分厚い防護点に阻まれて大したダメージにはならない。

でも《回避力判定》させれば防御ファンブルが発生する可能性があるという、何だか可哀想になるほど細い突破口です。


結局大司教にはちょっと通っただけで第4ラウンドが回ってきました。

フェルディナント「もう軛から放たれ、眠るときだ、猛き幻獣の王よ

最期の手向けとばかりに《魔力撃》《爆破・神鳴り》で96点の防護点−24という一撃が頭部に叩き込まれました。

防護点28なので4点にまで減らされ、適用ダメージ92点。残りHP20点かそこらの相手には十分過ぎるほどのトドメでした。

こうしてユレヒトに命を弄ばれた幻獣達の最後の1体は倒されたのでした。呪いから解放されるにはこれしかなかったとはいえ、哀れなものです。


★そして、英雄たちは帰るべき地へ

ドラゴンを倒した一行はここぞとばかりに【幸運は富をもたらす】を使って戦利品の獲得に勤しみました。

エルダーだけに自動獲得でも1200ガメルの<竜の牙>を2D個、5000ガメルの<竜の鱗>1個が手に入ります。

加えて出目2〜13で1万ガメルの<竜玉>4個、出目14以上で5万ガメルの<亢竜玉>1個を入手。10万ガメルぐらいは儲けたかな。


余談ですが魔物の中には《繊細な戦利品》という特徴を持つ奴がいて、特定の条件を満たすことで特別な戦利品を落とすことがあります。

エルダーサブテレイニアンドラゴンもその一種であり、《エネルギーブレス》を3回以上使わせると戦利品が豪華なものになります。

その場合は<竜玉>は1万8000ガメルの<深淵の竜玉>に、<亢竜玉>は7万2000ガメルの<深淵の亢竜玉>になります。

価値が上がるだけでなく通常は金のSSカードにしかならないものが、赤と金のどちらにするかを選べるようになったりもします。

今回戦った個体は《エネルギーブレス》を使えない個体だったのでどうしようもありませんが、余裕があったら狙ってみてもいいでしょう。


戦利品を剥いだ後は部屋を探索し、ユレヒトが記した<絶竜神剣>に関係するいくつかの文献を発見します。

エルダーサブテレイニアンドラゴンは最後に使う予定だった実験材料で、他者を傷つける魔法も逃げ出す手段も【ギアス】で封じられていたらしい。

それだけなら自分にパフェキャンをかけまくればいつかは6ゾロが出て解除できそうなものですが、多分それも逃走手段として封じられていたのでしょう。

ちなみに途中で見かけた<イル・ブラッド>も母体になりえる魔剣として検討されていたものらしい。幻獣がアンデッド化しなかったのが不思議。


そういった貴重な情報が含まれたこれらの文献を調べれば<絶竜神剣>の本当の性能を知ることができるでしょう。

ただしジュエリィですらかなり文献を読み込む必要があるため、詳しいことは次回の最終回に持ち越されます。


第三話「人、神に挑む」

前回倒したエルダーサブテレイニアンドラゴンは25レベルの五部位だったので1250点です。六部位の魔法王の方が多いんですよね。

ウィザーズブレインは11レベルの七部位なので2体倒すと1540点。これも有効なら経験点は3790点程度は入っているはず。

ドゥームズデイドゥームは倒したけど戦闘にはならなかったので経験点は入っていません。戦っていたら24レベルの八部位で1920点でしたが。


これだけあれば何かしら最後に成長させていそうですが成長報告がないので不明ですね。どんな成長をしたんだろう。

一話の経験点が4340点、一・五話が4100点とすると、この時点で合計1万2230点ほど経験点が増えているんですよね。

最初の時点で21万2530点だったので合計22万4760点、この第三話も入れれば多分23万点近くまで増えるでしょう。

追加経験点22万点の「15超B」のレベル帯に突入しているんですよね。ちなみに「15超C」は追加経験点25万点です。

彼らがこのような事件が起きる度に立ち上がっていたらその内25万点すら越える世界に突入するでしょう。


さて、前回魔法王ユレヒトの遺跡で<絶竜神剣>の研究資料を入手したので目的は果たしました。一行は地上へと帰還します。

アメリアを送る必要がなければ【エスケープ】で一気にフェイダン地方まで戻っても良かったんですが、最後まで面倒を見る約束でしたから。

国王夫妻にも挨拶はしておくとして、この遺跡に無断で侵入したことはいずれバレるでしょうね。何しろあの番人を倒せる人はそういないし。


フェルディナント「張りぼて工作でもしておくか。壊した部品を並べ直して」

マイザール「個人的にはここの魔法遺跡研究会は許しがたい存在なんですけどね

彼らならこの不正を暴いて潰すことも可能でしょうね。でも当時は博物誌発売から僅か3ヶ月、そのシナリオソースを公式で潰すことに抵抗がありました。

かつてケイオスランドへのゲートをぶっ壊したことを肯定した清松先生ですが、それはまだ世に出る前の段階でしたしね。個人的に解決できる問題でした。

しかしこれは既に各GMに提示された問題です。もちろん無限に平行世界が成立するTRPGですからユーザーの数だけ世界があってもいいでしょう。

このシリーズで研究会を潰しても研究会が存続している別の世界で遊べばいい。それでもやはりユーザーが手をつける前にやってしまうことになりかねない。


それならばとマイザールは思い止まりましたが、潰さないだけで手を出さないとは言っていない。

マイザール「いっそ、強請るか。「不正は見逃してこそ金になる」。至言ですよ」

フェルディナント「一応、神官だよな、お前。俺様が言うのも何だが」

マイザール「ル=ロウドなんて二剣ですよ、二剣」

「アルケミスト・ワークス」に収録されているル=ロウドの解説によると、この信仰自体に「禁忌はない」とされています。

自由を信条とし、第一の陣営と第二の陣営のどちらにも信者がいるトリックスター的な神様ですから、制限もないんですよね。

しかしそれは自分の気の向くまま好きに生きるためであって、ラーリス信者ほど個人の欲望を肯定するものではないはず。

実際は自分の好ましく思う人物のために命をかけることだってするし、そういうモラルを別口で持つことを否定するものでもない。


というわけでマイザールは自分の思う通りに研究会を強請ります。本当にやるのかこの男。

マイザール「いろいろ見聞し、きみらのやっていることは、大変よく理解しましたよ」

研究会員「我々は国王に委任された正当な組織なんだ」

マイザール「わかってますとも。別に邪魔するつもりもありませんけど」

研究会員「と、特定秘密は保護されるべきなんだぞ」

マイザール「ええ、そうですね。国王夫妻にチクったりはしませんよ。改善を求めたりもしないことにしましょう」

そもそも国王夫妻は研究会の腐敗を知らないんでしょうか。黙認しているということはないんでしょうかね。

市井では評判になっているようだし、あの賢い王がそういう噂を拾っていないというのも考え難いような。


ここでマイザールはそれまでの温和な口調をがらりと変えます。完全に筋者です。

マイザール「ただし……ここの資料、全部閲覧させろやこら

研究会員「は、はい?」

マイザール「これ以降も未来永劫、フリーパスな。ボクやジュエリィさんが、見せろと現れたら、四の五の言わずに資料室に通すこと」

研究会員「あの、その」

マイザール「お互い、幸せになろうよ」

研究会員「……わかりました。では、特別許可証を発行させていただきます」

こいつに逆らっちゃいけない、彼の本能がそう囁いたんでしょうか。実に正しい判断ですね。


こうして研究会の極秘資料まで入手した一行は一室を貸しきって《文献判定》です。またもジュエリィの独壇場ですね。

これでジュエリィが達成値32を出して余裕で突き止めました。いつもの人が50点とか言ってましたがジュエリィが分かればそれでいい。

それによると<絶竜神剣>の特殊効果は分類が幻獣・神族にのみ有効なのだそうです。ククやツヴァイベフが過剰に恐れていたのもそういう事情です。


具体的には命中した部位が持つ任意の特殊能力1つを1ラウンド封印するそうです。ただし封印できるものとそうでないものがあります。

封印できるかどうかはGMが事前に決めておきます。それらは知名度を抜いてデータを開示した時に同時に分かります。

傾向としては《骨の身体》のような体質が影響する常動型のものや、条件で発生する《連続攻撃》といった条件型は封印できないようです。

宣言型の《魔法適性》そのものを封印することは可能でも、魔法を行使する能力そのものを封印することはできないらしい。

ただ同じ主動作型の能力でも《エネルギーブレス》や《一掃》は封印できましたね。それと《全力攻撃》や《牽制攻撃》といった宣言型の能力も封印できる。


万が一にも知名度を抜けなかった場合は封印できる特殊能力の中からGMが無作為に選択して封印します。

実は魔法王の《再生》や、エルダーの《エネルギーブレス》や《一掃》はそうして偶然封印されていたそうです。

そうなると幻獣だった輪環も何か封印していたのかもしれませんね。当時はそんな設定はなかったけど、それで助かっていたと考えることもできる。


ただしこの能力を使うのにも代償が要る。1つ封印するためにHPを5点消費する。<ガイスター>の効果で5点は消費するから1つは封印しとけばいい。

《薙ぎ払いU》や《ファストアクション》、【ヘイスト】などで複数部位に当てた場合にはどの部位を封印の対象にするか任意に選べます。

5箇所に当てたからと言って25点消費する必要はなく、封印したい能力を持つ部位を2つだけ選んで10点消費なんていうことも可能。

あと1ラウンドに1つの部位で封印できる能力は1つだけ。【ヘイスト】で2回当てたからと言って1つの部位の2つの能力を封印することはできない。


その上どこの何を封印するかという宣言は手番終了時にできるというのだから強いのなんの。

フェルディナント「これなら、神に挑む、いや、神を殺すこともできるやもしれん

マイザール「その辺の小神なら射程圏内な気がしますよ

バトエルデン「こっち見るな、こら」

ジュエリィ「一人なら、まだ代わりがいるから」

バトエルデン「やめろっての。二人動かせるようにするのも大変だったんだから」

例の15レベル以下を判定不要で死亡させる能力を封印できれば可能でしょうね。毎ラウンド命中させないといけないけど。

そこは伯爵ですから高い命中力で確実に当てていけばいい。【プレコグ】も使って1D+5で最低の出目6でも当たるようにすればいい。

これなら伯爵が1ゾロを振る心配はないので大分安心ですね。相手が6ゾロ振っちゃうとあれだけど。




調査を終えた一行は旅立つ前に国王夫妻に挨拶しておきます。

フェルディナント「今度、《血風領》から俺様の得意な「ヒャッハー将棋」を持ってこよう。あれなら勝てる」

マイザール「楽勝ですね」

それは全ての宣言を「ヒャッハー!」でやらないといけない過酷なゲームです。その「ヒャッハー!」が通じなかったら負け。

故に「ヒャッハー!」を使いこなせる者だけが戦えるのです。割と言ったもんがちの、遊○王のようなところがありますね。


フェルディナント「それはともかく、いろいろ世話になった」

ラグレット「また、何かあったらよろしく」

フェルディナント「次に来るときはマルコ連れだな。あいつ、8時間かかるウォーシミュレーションとか得意だから。
          「大好きなのに、最近できなくて辛い」ってぼやいてた。卓上ゲーム、あるある話」

ラグレット「あるある、わかるよ」

わかるわかる。アナログゲームが好きな人なら多くが味わう苦しみでしょう。


ゆん「なら、ユリウス君も呼ぶといいよ。クラウゼ君。ゆんが声掛けてあげるよ」

ラグレット「それは是非。というか、何でこのグラスランナー、ルキスラ皇帝の名前ぼろっと出してくるの?」

ゆん「トモダチだよ」

ラグレット「そうだったのか。しかし、ユリウスを招待するには、この国にも格が必要。これは、いよいよ頑張らねば」

そんな理由で他国を侵略されたら堪ったもんじゃない。それにしても今更ながらに凄いコネを持つグラランだ。


★師匠死す

ユレヒトの王都を後にした一行はアメリアの飛空船へ戻りました。帰りは来た道の逆を飛んでロシレッタへ向かいます。

本当はこのままシェナクェラス地方を飛び越えてルーフェリアへ向かい、三角形に航路を確立したかったけど、リスク軽減のためです。

ロシレッタに着いたらアメリアと別れて戦利品を売りアイテムの補給です。準備ができたら魔法王と戦った場所へ【テレポート】で戻りました。


戻ってみると例の亀裂は更に広がっていました。その上妙に気味悪い空気を感じ、実害が出ない程度に気分がささくれ立ってきます。

なんだか「秘境伝説クリスタニア」で魔神獣のいた谷のようですね。大神ニディスニオは確実に蘇りつつあるのでしょうか。

その亀裂を遡って終点近くまでやってくると、そこは陥没して四方に亀裂が広がっている場所でした。辿ってきた亀裂が一際大きいものです。


その場所にうつぶせに倒れるククの姿がありました

ジュエリィ「師匠ー!!」

フェルディナント「クク師匠、大丈夫か。何で、俺達まで師匠言い出してんだ」

バトエルデン「大事な羽もらったからな」

GM「むっくり」

ゆん「あ、起きた」

クク「あー、よく死んだ

ジュエリィ「師匠、脅かさないでよ」

ところが本当に死んでいたのです。《九つの生命》の内一つをもっていかれたそうです。

下手に抵抗すると全部持っていかれそうなので死んだふりをして難を逃れたらしい。


マイザール「バカな、固定値ではククは殺されないはず」

クク「うん、わしも自分の生存能力には自信を持っていたんだが、「25レベル以下だからお前死ね」って言われたら、どうしようもなかった」

ジュエリィ「うわ、マジ大神なんだ」

《叡智の守り》は「HPの最大値を変更する効果」や「ダメージ以外でHPの現在値を変更する効果」を無効化します。

逆に言えばダメージとかHPといったものとは無関係に「レベルを要因として死亡させる効果」までは無効化できないのかもしれません。


最初に受けたのは「15レベル以下死ね光線」だったそうです。小神の使う能力ですが、17レベルのククには効きませんでした。

次に【メテオ・ストライク】を使ってきたけど「クリティカルしてから来いや間抜け!」とやっぱり効きませんでした。

そこでククも負けじと【カオスイクスプロージョン】をぶち込んでやったそうです。ところが敵も大したもので必中なのに半減されたらしい。

しかも即座に【レストレーション】されて完全回復ですよ。今までの敵は自粛してきた手段も当たり前のように使ってくる、流石は大神といいますか。


これは千日手かと思ったとことでニディスニオは恐るべき能力を使ってきたのです。

クク「最初は「レベル25以下のキャラクターは、最大HP10%減らせ」とか、そんなんだったんだ」

マイザール「最大HP?10%?」

クク「うん。でも、わし、「最大HPを増減する効果」は、受けないわけよ。「おととい来やがれ間抜け」と答えてやった」

それから「25%減らせ」「50%減らせ」と効果はエスカレートしていったそうです。ククには効きませんけどね。

ククだから笑い話で済んでますけどPCにとったら堪ったものじゃない。弱ったところでメテオとかやられたら大司教でも危ないって。


クク「「だから、データよく読んでからにしてね。スパァ(煙草を吹かす)」と、余裕こいてたら、最後が「死ね」。パタリ」

本来大神ならそんな悠長なことをしなくても即座に「25レベル以下は死ね」ができたんでしょうが、多分これでも弱体化しているのでしょう。


そうしてタヌキング・スリーピングに入ったククを嘲笑うように、ニディスニオはフェイダン地方中に100の分体を飛ばしたそうです。

そいつらはニディスニオの能力の一部を共有しているそうです。大半は「HP10点分」とかのショボいものですが。

あくまでも共有しているだけで譲渡しているわけではないので、分体を無視して本体に向かうとフルスペックのニディスニオと戦うことになる。


なんでそんなことをするかというと、分体はニディスニオの教えがつけ入る隙のある者に憑依することができるのです。

そうして取り憑いた者の言葉と身体を操り、ニディスニオの教義を布教することができるのです。ダイナミックな辻説法ですね。

同じ分体でもルーちゃんのような可愛らしいものじゃありません。大体が魔物の姿を取っているのが特徴です。

100の分体はその殆どが大した力を持ってはいませんが3体だけ強力な個体がいたそうです。中ボス的な存在でしょう。


もっともこれはチャンスでもある。分体を倒せば本体からもその能力は失われる、上手く見つけて倒せば本体の力を削ぐことができる。

クク「フルスペックだと、少なくとも4つ、絶望をお前たちに感じさせる能力がある」

それこそがさっきククとの戦いで見せた能力です。強力な3つの分体はそのいずれかを持っているパターンですね。

その能力が<絶竜神剣>で封印できればいいけど、どうなるかは不明なのであんまり頼りにするのも危険ですね。

1つの部位に複数の能力があったら完封はできないし、そもそも封印できない能力だったらどうしようもないし。


では肝心の4つの能力を整理してみましょう。1つ目は【レストレーション】です。

GM「でもって、魔法行使は<絶神剣>では封じられないだろうことは言った」

フェルディナント「オーノー!」

この能力を持つ分体がいるようなら何としても探し出して、このパーティの火力で1ラウンドキルすべきです。

もし手番を回したら分体も【レストレーション】で全回復しますしね。本体を相手に1ラウンドキルするよりはまだ可能性がある。


2つ目は「15レベル以下問答無用で死ねビーム」です。光線一発だけど必中。当たれば死ぬ。

マイザール「あっはっはっ。5ラウンドで我々、さわやかに終われるわけですね。畜生、師匠がうらやましい。ボクも限界突破してえ」

【ジハド】を使っても技能レベルが上がるだけで冒険者レベル自体が変わるわけじゃないんですよね。

これなら封印できそうな気もしますが他に25レベル以下は徐々に弱らせる効果もあるし、分体が持っていますように。


3つ目は「被ダメージ半減。抵抗したら消滅」です。グラランの《マナ不干渉》どころの話じゃありませんね。

マイザール「ダメージ0じゃないんですか?消滅?」

GM「よく気がついた。「抵抗:短縮」も無効だ

そして例の如く抵抗力が高いと。致命的ではないにしても非常に鬱陶しい能力ですね。


4つ目は「25レベル以下のHPとMPの最大値を削りつつ、最後には死亡させるオーラ」です。

マイザール「え?MPも?」

バトエルデン「「オーラ」と言った?」

GM「はい。MPも影響を受けますし、範囲型です」

これも封印できそうですね。エグいけど時間的に猶予があることを考えるとビームよりはまだマシか。

以上の能力を見た限りでは3体の分体を倒して3つの能力を封じ、最後の1つは本番で封じるのが良さそうですね。

その時は最後に残るのはビームかオーラであって欲しい。魔法は封印できないし、被ダメージ半減は常動型っぽくて封印できないかも。


なお人に取り憑いている分体は心の隙に付け込んでいるので、宿主を説得して改心させることで分離させることができるらしい。

バトエルデン「説得か……ふう。伯爵流ではダメなんだろうな」

GM「それ説得言わない、脅迫や

最悪宿主を殺しても分離しますが、できればそれは避けたいですね。もし殺すに殺せない人だったりしたら最悪詰みますね。


取り憑かれている人は性格が一変していると予想されるので、見つけることは可能でしょう。

クク「不信と不和の神、人を絶対に信じるなって教義だから、必ず騒ぎを起こし始めるとは思うが」

分体は人口の多い場所に多く向かったらしく、例の3体の分体はアイヤール、ルーフェリア、カイン・ガラに向かったようです。

何で一番人口の多いリオスに行かないのか疑問ですが、多分強い奴が行かない代わりに雑魚が多めに投入されているんでしょう。


バトエルデン「曲がりなりにも宗教国家で、神が現出している国だぞ」

ジュエリィ「行ってみたらリアたんが取り憑かれてたりして

バトエルデン「アホかぁ。神が取り憑かれてどうする、神がぁ!」

ジュエリィ「相手、大神だし」

バトエルデン「そんなことになったらザイアに戻るわ

それは行ってみれば分かるでしょう。彼女も分体だけどルーちゃんとスペックが変わらないならそこまで万能ではないし。

アレンとかもそうでしたけどいくら分体でも神ほど超越していない。できないこともあるし、心に隙ができることもある。


★アイヤール 男の決断

一行がまず向かうのはアイヤールの《血風領》です。ズミーヤが分体に憑かれて復活している可能性があったので最優先です。

ククを残して【テレポート】で向かうとマイザールの迷宮の前で騒ぎが起きていました。現在ズミーヤはこの迷宮に安置されています。

迷宮の前にはマルコとその部下のモヒカン達が陣取っていて、それを別のモヒカンの集団が半円形に囲んで睨み合いをしています。


GM「囲むほうの代表っぽいのは、火炎放射器構えてますよ」

ゆん「本当にあったんだ」

フェルディナント「おい、あれ、最近国費で買った最新鋭魔動機だろ、マイザール」

マイザール「そうですね。何あいつ勝手に持ち出してんだ。お仕置きですね」←何する気っすか

最新鋭ということは現代に造られたのか、それとも最近になって発掘された当時の火炎放射器なのか、いずれにせよ物騒なものです。

データはもちろんないけれど造るとしたら【グレネード】のデータを流用するか、炎属性の貫通型魔法ダメージって感じでしょうか。

実はランク14の妖精魔法(炎)にそういう魔法があります。【ファイアモーラー】といって威力60で炎を噴射します。


マルコと相手の話を聞くと、どうやら火炎放射器を持ち出した一団はこれでズミーヤを救出しようとしているらしい。

マルコ「そんなことをしてタダで済むと思っているのか、ここはマイザール様の迷宮だぞ」

火炎モヒカン「それがどうした」

マルコ「どうしたもこうしたも、マイザール様に殺されるぞ、お前

速やかに殺されるならまだ有情。マイザールを本当に怒らせると死ぬに死ねない生き地獄を味わうことになりそう。ウィザーズブレインの刑とか。


火炎モヒカン「マイザール様が何だよ。いざとなったら、この火炎魔動機でやってやるよ」

マルコ「そんなもので何とかなるお人か!100%殺されるぞ」

火炎モヒカン「100%?はん、人のやることに100%があるものか

ゆん「わかっちゃったー」

人を信じないってそういうこととは違うような気もしますが、早速分体に憑かれていると思われる人を見つけましたね。

マイザールへの恐怖心も忘れて動かされるとはなかなか侮れませんね。この分だと余程のタブーでも平気で実行させられそう。


そこですかさずマイザールが姿を見せます。

マイザール「くくく、口の過ぎる人だ。「殺す」なんてしませんよ。でも「お友達」にはなってもらいましょうか

ゆん「怖ぁ」

ちなみに最終段階に達した苗床は完全に<魔神の種>に肉体と精神を支配され、主に忠実な人形と化します。

この段階の苗床を封入具として魔神を封じた場合、苗床は魔神の意思で動くようになる。もはや死んだ方がマシという状態。


火炎モヒカン「いやだ、どいてくれマイザール様。これでズミーヤたんを融かして助けてあげたいんだ」

バトエルデン「でも、そのズミーヤが裏切るかも知れんぞ

ジュエリィ「ズミーヤたんがあなたを「好き」とでも言ったの?言ったにしても、それ信じられるの?

バトエルデン「人を信じられないなら、もっとも信じて欲しい人も裏切りうるということだぞ。いいのか?」

人をすぐ疑う教義の欠点を突いて揺さぶる見事な口プロです。そう、狂信者との戦いにおいて精神攻撃は基本


バトエルデン「そんなことより、どんな辛いことがあっても水に流すルーフェリアを信仰しよう、な」←勧誘すんな

そうするともやっとしたものがモヒカンの身体から抜け出し、近くでワイバーンの形になりました。

見た目もデータもワイバーンと全く同じですが、こいつはあくまでも神の分体。分類上は神族と思われます。

幸い危険な能力をニディスニオと共有していたわけではなかったらしくアッサリ倒せました。完全に雑魚でしたね。

それでも一応7レベルなんですよね。こんなのが100体もその辺に潜伏しているんですね。街中で暴れられると十分脅威でしょう。


火炎モヒカン「あれ?俺は何を考えてたんだ?マイザール様に逆らってタダで済むわけがない。100%がないなんて何を言ってたんだ」

マイザール「よく理解できたようですね」

一応取り憑かれていた時の記憶は残っているんですね。分体を剥がしても後になって顔が真っ青になる人も多そう。

次は色々不安なトラヴィスの様子を見に行きます。既に先生を信じる心は持っていない気もしますが、だからこそ憑かれそう。


ノックもなしに扉をドーンと開けるとトラヴィスは大慌てで今まで遊んでいたポ●モンを隠します。学生にはよくある光景です。

マイザール「おやおや、勉強、大変そうですね」

トラヴィス「は、はい、先生。勉強してます。信じてください」←お前は謹慎だ!

完全にサボっていた子供の言い訳ですが、信じて欲しいと訴える点だけでも分体には憑かれていないようです。


マイザール「ふうん。まあ、いいでしょう。「サボってやってない」も「できなくてやってない」も、
       結果は同じなんですから。「やればできる」はクズの台詞です

トラヴィス「わ、わかってます(涙目)」

よし、普段通りだから大丈夫ですね。将来的に主に教育面で大丈夫じゃない気もするけど大丈夫。

ところが母親のトレーシーの方は何やら様子がおかしいらしく、何か手紙を受け取ってから部屋に篭っているらしい。

「伯爵様はまだ帰ってこられないのかしら」と一層伯爵に依存している様子。母親がその状況でポケ●ンってどういうことなの。


これは父親が原因だろうと考えた伯爵は急いでトレーシーの部屋へ向かいました。

フェルディナント「トレーシー!」

トレーシー「ああ、フェルディナント様。父から最後通牒と称して」

彼女が差し出した手紙には「てめえ、何考えてるのかわからんから、叩きつぶすことにした。戦争だ」とありました。ついに挙兵したか。


マルコも情報を収集していたらしく、《鎮森領》のモートン卿が挙兵したのは確かなことらしい。分体に憑かれているっぽいですね。

タイミング的にニディスニオが分体をばら撒く前からおかしかったし、それだけに誰よりもあっさりと取り憑かれたのでしょうね。

ただし《鎮森領》はアイヤールの西の果てであり、東の果てである《血風領》まではいくつもの城壁と領が挟まっています。

今の時点で隣接する領は城壁を閉ざして様子見をしていて進軍できない始末。このままでは孤立し、ただのクーデターとして鎮圧されるだけでしょう。


モートン卿の疑心暗鬼の原因は伯爵とトレーシーの中途半端な関係です。ならばそれを整理すればいい。

ジュエリィ「結婚式だ」

フェルディナント「そうそう。「怒らせてメンゴメンゴ、俺達結婚するわ」と書いて、この手紙を出せばいいよな」

ゆん「え?いいの、こんな結婚で」

バトエルデン「ここまで引っ張ってこんなあっさり」

フェルディナント「こんなもんだよ」

きっかけって大事ですね。雨降って地固まるとはよく言うけれど、分体がいなければこうもアッサリまとまらなかったかもしれない。

説得力を増すために正式に婚姻届を書いて2人のサインも記入します。更にセラフィナに報告してお墨付きを貰うという周到っぷりです。


GM「女帝がおかしくなってないとも限らないしな」

バトエルデン「きさまら、そこへ直れ。直ったか。では、25レベル以下、死ね」

あの人も色々溜め込んでますしね。一応確認しておく意味も込めて、《皇城領》に【テレポート】して面談を申し込みます。

実際会ってみるといつものセラフィナのようでした。彼女には一連の事件の報告と、モートン卿の件の解決を一任してもらえるよう頼みました。


フェルディナント「我が養父となる者に対して性急な処断を下されないよう、伏して頼む。
          この乱、いや、乱というようなものではない。それは、この"闘神"が、鎮めよう、女帝」

セラフィナ「わかった。そなたを信じよう

つまり彼女も大丈夫と。ほっとしたのでセラフィナから正式にサインを貰って結婚のお墨付きとします。婚姻届と併せれば疑う余地もない。

全ての事件が解決したら国事として、国を挙げて結婚を祝ってくれるそうです。主催はセラフィナがやってくれるという物凄いイベントです。


それと国に入り込んでいると思われる分体について警戒を発令してもらいます。

バトエルデン「冒険者の店の出番じゃないか?危険をすみやかに突き止め、排除するには」

セラフィナ「ならば、国庫から報奨金を出すか。ふう、入り用だな」

マイザール「さあ、これを読んでいる皆さんも、これをシナリオにして、分体を倒してくれていいですよ

クリスタニアで解放された混沌や妖魔を新たなシナリオソースにするよう推奨したのを思い出しますね。

何だか懐かしい感覚です。今回の分体は個体によって姿も強さもマチマチなので全レベル帯に使えます。


準備は終わったので持続時間の長い魔法を一通りかけてから《鎮森領》へ【テレポート】しました。

表敬訪問で来たことがあったので直接領主の城に跳んでみると、そこは森と泉に囲まれた静かな土地でした。

ところが今は召集された兵士達が気勢をあげていました。それは結構ですが相変わらず隣の領も突破できていませんがね。

書簡でやり取りしても「通せ」「できるかバカ」の繰り返しです。武力で進もうにも戦力的にそれもできない。

ちなみに兵隊はその辺の木こりも動員してようやく三桁。精鋭揃いの《血風領》はもちろん、ちょっと強い領にも勝てない兵力です。


今のところ互いに気合を入れまくって士気だけは高いけど。

ジュエリィ「それ、いざ戦いになると、あっという間にしぼみますよ」

バトエルデン「モヒカン軍団に挑む、村人義勇兵の様相だな

GM「しかも、ケンシロウはモヒカンの側にいるというね」

多分冒険者技能を持っていない人もまざっているレベルなんでしょうね。持っていても低レベル過ぎてお話にならない。

モヒカン達を動員するまでもなく伯爵一人で殲滅できそうですね。10ラウンドぐらい《薙ぎ払いU》し続ければ半壊しそう。


そこで伯爵は堂々と兵隊のど真ん中を歩いていきます。

フェルディナント「《血風領》領主フェルディナント・シュナイダーである。フログ・モートン卿に用があって参った」

そうして来られると兵隊達は一応剣は向けますがある範囲よりも踏み込めず、遠巻きに取り囲むのが精一杯の様子でした。


あと大司教はこの時点でレンタルのスカイバイクに乗っています。いつ分体が現れてもいいように。

バトエルデン「景気づけと威嚇で、アクセル吹かしておこう。ばうんばうん」

柄が悪すぎて族っぽい。モヒカン達がいたら完全に世紀末です。


そうしているとモートン卿が出てきます。禿げ頭のおっさんで、怒りと恐怖を領主の矜持でギリギリ抑えている状態。情緒不安定にも程がある。

モートン「よく、顔を出せたものだな」

フェルディナント「モートン卿、いや、これからは義父上と呼ばねばなるまい」

モートン「え?」

フェルディナント「先ほど、女帝には許可を得た。あとは、義父上に認めてもらうのみ」

モートン「どういうこと?」

フェルディナント「トレーシーを嫁にいただきたい

するとモートン卿は涙ながらに自らの心境を語っていきます。伯爵の真意が分からず、老いを自覚し始めたこの10年。

彼は安定を求める年代にありながら先の見えない不安に苛まれ続け、心をすり減らしていたんでしょうね。

メルドリーネが滅びてもトレーシーが助かったことを知った時はきっと伯爵に感謝したでしょうが、今はそれに勝る喜びを感じているでしょう。


フェルディナント「決断が遅くなり、申し訳ない。だが、今こそ、絆を得た。この絆は、我らが生命だ、親父殿」

モートン「ありがとう。きみを信じていてよかったよ

彼だって完全に伯爵を信じていなかったら10年も待たなかったでしょう。疑心が芽生えても、信心もあればこそ耐えてこれた。

さっきまでは分体のせいで疑心を増幅させられていたのでしょうが、今やそれが吹き飛ぶほどに伯爵を信じる心が輝いていることでしょう。


ところがこの感動のシーンに水を差す者がいました。空気読めや。

分体「嘘つくな、てめーっ!何ふざけたこと言ってんだ。ついさっきまで、『信じられない』つってたじゃねえか」

ていうか喋るんだ分体って。魔物の姿と聞いていたから変な思い込みがあったけど、ルーちゃんと同じと考えると当然か。


もっともモートン卿にはもうそんな声は届きません。この人も何だか極端な人なのかもしれない。

モートン「実は、うちの息子たちが今イチ頼りなくてさあ、本当、不安だったんだよ。
      でも、フェルディナント君がバックアップしてくれるなら、もう安心だね

既に義理の息子としか見ていません。まぁこんな英雄を娘の婿に迎えられるならこうもなるか。


あと姿を見せた分体の《魔物知識判定》をやっておきます。姿とデータ上は幻獣ペルーダと同じです。

ただし分類は「神族かつ幻獣」という特殊な扱いです。どちらに対する効果も有効になります。

神族にも幻獣にも有効な<絶竜神剣>は有効だし、元の分類が幻獣でない分体も神族が追加されるならやはり有効ですね。


ペルーダは18レベルの幻獣です。頭部と尻尾は蛇で四本の脚を持ち、ライオンの鬣のような長い毛を生やしていて、全長は40m。

頭部(コア)、胴体、足×4、尻尾の七部位です。全身が練技を使用し、頭部は《火炎のブレス》で範囲に炎属性魔法ダメージを与えます。

胴体は体当たりによって《毒》のある体毛を棘のように突き刺し、15点もの毒属性魔法ダメージを与えます。

全ての足を使って《踏み荒らす》ことで足の部位数に応じて必中の物理ダメージを与えます。尻尾は《テイルスイープ》あり。

足は胴体に《攻撃障害=+4・なし》を持ち、胴体は頭部に《攻撃障害=不可・+4》を持つことで二重にコア部位を守ります。


以上のように本来はグレータードラゴンと同レベルの強力な幻獣ですが、この連中にとってはそれだけでは脅威ではない。

真の脅威はこいつがニディスニオと共有する特殊能力《断罪の光》です。例の15レベル以下を殺すビームですね。

形状は射撃、射程は50mにも及び、もちろん必中。狙われたら最後HPを0にされて即死させられます。

ただし<絶竜神剣>で封印可能だし、他の能力も《毒》と《攻撃障害》を除いて全部封印可能です。


問題は《断罪の光》を使用できるのが頭部ということ。伯爵に手番を回す前に最低でも胴体は潰さないといけない。

足は無理に潰さなくても直接胴体を狙うと回避力は20(27)に《攻撃障害=+4・なし》が入って24(31)です。

これならゆんでも十分に当たりますね。HPは素で127点、《鎧貫き》と魔法で集中攻撃すれば十分削れる。


マイザール「《鷹の目》ないから、妖精呼んで射線妨害はできるが」

彼らがそれで良くても周囲には兵士達が輪を作っています。弓の届く範囲で大体30m程度です。

ペルーダ自身が40mあるのに半径30mだと普通に食われそうだけど、ゲーム的には座標は一点です。

そこにモートン卿とペルーダがいて、1m離れた位置に伯爵が、10m離れた位置に大司教達がいる感じです。

先制値は24程度なのでゆんは自力で、伯爵は【イニシアティブブースト】Sで取りました。魔法使い組はカードを温存。


1ラウンド目

大司教は【堅陣の構え】を使いつつゆんに【ヴォーパルウェポン】Aを入れ、【バランス】を活かして突っ込む。

伯爵を《かばう》しつつ、【エスケープ】でモートン卿を《白峰領》まで飛ばします。まずは安全確保ですね。

ジュエリィは《クリティカルキャスト》を宣言して発披露の【ファイアモーラー】を頭部に発射。

《魔法制御》でペルーダ以外を外し、ペルーダの他の部位は貫通に巻き込まれたかのチェックです。


GM「……どういうことだ」

バトエルデン「何で、そんな1ばっかり振れるんです?」

マイザール「全弾命中とか、おかしいでしょ」←お前が言うな

まさかの全部位命中ですよ。結果的に威力40の【ファイアストーム】より強力な威力60の全体攻撃になりました。


精神抵抗力23(30)とそこそこあるけど、固定値なのでジュエリィなら余裕で抜けます。出目が悪くて33でも楽勝。

44−66、44−83、45−52、46−51、59−38、44−53、0−109(頭部/胴体/足/足/足/足/尻尾)

尻尾だけ1ゾロ振りましたが上々でしょう。ペルーダも相当強力な幻獣の筈なのに、今までの敵が規格外すぎて雑魚にしか見えない。


続いて足の持つ《攻撃障害》を無視してゆんが胴体を狙います。練技は一通り入れて《魔力撃》《鎧貫き》です。

ゆん「(コロコロ)命中して、(コロコロ)ズボ。(コロコロ)56点素通しだよ

GM「ちょうど100点消えたわけだが」

つまり残りHP27点と。マイザールの手番を残してこれなら余裕でしょう。もっともゆんにはまだ手があるけど。

続いて《追加攻撃》も当てて今度は回らずに46点。防護点16なので適用ダメージ30点、胴体は落ちた


ゆん「じゃあ、《ファストアクション》分で頭を攻撃していい?」

GM「いいよ」

これがまたも命中して回って57点素通し。残りHP9点ですね。《追加攻撃》と牙、投擲を残してこれなら伯爵の出番はない。

案の定《追加攻撃》が命中して難なくペルーダ型分体撃破。折角の<絶竜神剣>の見せ場だったのに出番がなかった。

【フェンリルバイト】と【バルーンシードショット】に使った魔晶石が無駄になり、ついでに伯爵の賦術も無駄でしたね。


マイザール「どうですか?我々の力は?」

兵士「すごい。さすが、アイヤールの英雄だ」

兵士「何で俺たち、あれに喧嘩を売ろうなんて思ってたの?」

当の伯爵とマイザールは何もしてないんですけどね。あとモートン卿も手番に何もやっていないようなものです。

つまりマイザールが【ディメンション・ゲート】で《白峰領》と繋ぎ、伯爵が卿を呼び、卿は通常移動で帰ってくることができます。


バトエルデン「何と、一連の出来事は10秒間で完結してしまうのだ

モートン「本当、娘をよろしく頼む、フェルディナント伯爵」

フェルディナント「お任せあれ」

こうして長年伯爵とトレーシーの回りを騒がしていた問題は解決したのです。ついでに厄介な能力持ちの分体も倒せました。


戦いが終われば戦利品を剥ぎます。実はペルーダから取れる戦利品は全部赤のカードにすることができるのです。イニブー使い放題。

自動で手に入る<ペルーダの牙>で赤のSカード。同じく赤のSになる<ペルーダの毒液>は出目2〜6で1つ、7〜12で1D個手に入る。

13以上の<大量の毒液>に至っては赤のSSカードになるのです。伯爵が無駄遣いしたカードを補って余りある収入です。


フェルディナント「よし、マイザール、ひたすら占え」

マイザール「【幸運は富をもたらす】で修正をつけて、せっせとトスしていきますよ〜」

結果として赤のSSカードは1枚だけ入手。赤のSカードは23枚も入手しました。普通に買ったら6万6000ガメル分のカードですよ。

でもスカウト組は自前のSSカードを持っていたので、ゆんに【ヴォーパルウェポン】を使うであろう大司教がこのSSカードを持つことになりました。

赤のカードは他には【クラッシュファング】なんかにも使えますね。【ヴォーパルウェポン】は伯爵にも使えるし、何かと成果の多い戦いでした。


★ルーフェリア 保護者の悔恨

一行が次に向かったのはルーフェリアでした。ここからマイザールは【ディメンション・ゲート】を使うようになりました。

ところが大司教が帰ってきてリアと顔を合わせると開口一番「信じらんなーい!」と、日頃貯まっていたであろう鬱憤をぶつけられたのです。

リア「いつもいつも神殿留守にしてふらふら歩き回って、あんた、本当にあたしの神官なの!?」

バトエルデン「……あんた、本当に俺の神?」

フェルディナント「おやおや、これはどうしたことだ。組み立て椅子を取り出して、どす」←観戦モード

分体の向かった先から大体察しはついていたでしょうが、どうも各国で彼らが抱えていた問題を順番に片付けていくパターンのようですね。

伯爵とトレーシーの関係を整理し、次は大司教の放浪癖ですか。輪環の時は酷かった、更迭されかねない失態でした。そのツケが回ってきたのです。


リア「やっぱりザイアのほうがいいんでしょ。いつも言ってるものね」

バトエルデン「そら、わざわざ戦闘特技枠使って《鉄壁》は重いなー、【カバーリング】あればなあ、とか思ってるけど……黙っておこう」

リア「【オース】使えるなら蛇娘連れてってもいいかなとかも言ってたでしょ」

【カバーリング】はザイアの4レベル特殊神聖魔法で、防御系の戦闘特技を任意に付与することができます。【ウェポン・マスター】のように。

習得できるのは「イグニスブレイズ」環境下だと《かばうT》《鉄壁》《ブロッキング》《防具習熟A/任意》《防具習熟S/任意》です。

行使に主動作を使うし、置き換えや他の特技を習得する前提もありますから、《かばう》や《防具習熟》は自前で持つのは仕方ない。

でも《鉄壁》はこっちに任せて、空いた枠にそれこそ《マルチアクション》とか《魔法拡大》とか色々入れられますね。


バトエルデン「ま、まあ、温泉にでも入って落ち着こうじゃないか。かぽーん、あーやっぱりルーフェリアの特殊神聖魔法【ファンテイン】は、最高だなあ」

そんな温泉しか価値がないと取られかねない言い訳は逆効果っぽいです。どっちかというと【ウォーター・シェル】の方を押しますね。

魔法ダメージ−5なんていう高性能の魔法はなかなか見られないし、これだけでもルーフェリアを選ぶ価値がある。非常に打算的ですけどね(笑)


バトエルデン「えっとね、この国があるのはあなたのおかげですよ。皆も幸せそうに過ごしてるし、私だって今の地位があるのはあなたのおかげじゃないですか

一同「地位?」

バトエルデン「いや、だからそういう意味ではなくて」

マイザール「これ、「新米女神」シリーズの既刊を引っ張り出してきて、それっぽい、きちんとした大司教を探したほうがよくないですか?」

フェルディナント「いや、それ、いきなり後頭部はたいてなかったか?

バトエルデン「……何で、俺、こんなダメ夫みたいになってんの?」

その「きちんとした大司教」というのもあんまり記憶にないような。割とマジメな人っぽい印象はあったけど。


バトエルデン「どう見えていたか知らないが、俺、お前のこと、忘れたことなんてないんだよ
        毎度行ってたのはもう一人のお前の神殿、だからね?《白峰領》だよ。俺に、どーしろと言うんだ」

それじゃあ完全にダメ夫じゃないですか。こんな光景をぞんざいズとかルーちゃんに見せたら何て言うか。

実際は自分の信じていたザイアを捨ててまで新米女神になったルーフェリアを支えてきたんだし、それで十分だと思いますけどね。

そのせいで大切な妹とも不仲になってしまったわけで。それでも投げ出さずにずっと頑張ってきたのは並大抵のことではないはず。


しかしそうして考えている内に一週回って最初の問題に戻ってきました。

バトエルデン「そもそもだ。何で、他の神様に捕まってんねん!」←逆ギレだ

リア「だって、いつも「ザイアに戻りたい」って言ってるんだもん」

バトエルデン「言ってねえ!思ったことはあっても言ってねえ。いいか、俺、ザイアのプリースト技能、半分捨ててんだぞ。
        そっから、もっぺん経験点積んで、お前の大司教やってんだぞ」

そういえばフォーセリアの時は改宗しても以前のレベルまでは経験点が半分で済むという処理がありました。ラクシアではどうだろう。


ゆん「リア様。少なくとも、今の状態じゃ、ルーフェリアの信仰広められないよ?」

バトエルデン「そうだ、自分を取り戻せ。ぐりぐり」

そうやっていると背中に黒い影のような分体が張り付いていることに気付きます。完全に取り憑くのは無理だったらしい。

大司教に睨まれると慌てて飛び降りて実体化しました。今度の分体はバジリスクでした。ジェイドとかではなく、普通のバジリスク。


バトエルデン「え!?無印バジリスク!?9レベルの?それって雑魚ってこと!?」

リアが少ししか疑っていなかったので雑魚がへばりついていただけらしいけど、それにしてはなかなかの修羅場でした。昼ドラか。


バジリスク「てめえ、楽に死ねると思うなよ」

普通のバジリスクでは大司教のファイター技能でも普通に倒せるでしょうね。結局こいつも戦闘するまでもなく倒したことになりました。

しかしこいつの残した爪痕は深かった。リアも「神様なのに……」と酷く落ち込み、大司教と2人で反省室に引きこもったとか。


そうしていると神殿勤めの下級司祭がやってきて緊急報告をしてきました。

司祭「この国の第二王子、"誇り高き若獅子"レオンヴィーユ・セラ・アエル様が、軍隊率いてこの神殿に」

バトエルデン「こっちが本命か」

今まで影が薄かったけどこの国の王族ですが、ちゃんと王子様もいました。ただ彼は王子様とは思えないほどの武闘派です。

幼い頃から前線に顔を出し、大人しい兄を補うかのように戦場でこそ活躍する脳筋です。《血風領》にスカウトしたくなる逸材ですね。

そういえば輪環との戦いの時にはアエドンにも被害が出ましたもんね。大司教が不在でギクシャクしたりもしていました。


レオン「ゼルブリスをいつまでも放っておき、一度王宮を危機に晒しながら反省なく、今もまた国を留守にしていた。
     これは、ひょっとしたら、故意の不在ではないのか。貴様、蛮族に通じているのではないか」

バトエルデン「飛躍しすぎだろ、お前」

レオン「ルーフェリア神殿、信頼するに値せず!」

蛮族に通じているということ以外は概ねその通りですね。こうして見ると血気盛んな彼が不信感を覚えるのも無理はないか。

それにしてもそこから蛮族に通じているだの、神殿そのものに不信感を覚えるだのは流石に思考が飛び過ぎです。

ただし大司教が知っているレオンは直情径行はあるものの、正義感の強い「いいヤツ」です。また自分が脳筋なのも自覚していた。


こうして人を疑って詰め寄るタイプではなく、いちいち疑惑を口にしている点が彼らしくない。

バトエルデン「では、神殿代表として出て行きますか」

レオン「さあ、弁明あるなら聞くぞ。ゼルブリスと通じ、アエル王朝に弓引くつもりなのだろう?」

バトエルデン「それだけは、ありえんな。さて、どう証明するか」

伯爵の時はトレーシーとの結婚という解決策がありました。やはり行動で示すのが一番分かりやすい方法でしょう。


ゼルブリスとの関与が疑われるなら、一番手っ取り早い方法は……。

秋田みやび「今から、アイツ潰してきたら?」

バトエルデン「どいつ?」

秋田みやび「ゼルブリスの奥にいる大将

フィルゲンは最近カウントになったから【コール・ゴッド】で消せないんですよね。かといって今はタイマンでは微妙です。

前は普通に殴り合いで勝てたけど、あれからフィルゲンは強くなって大司教のファイター技能は弱体化しました。

多分高い防護点と回復魔法で粘りつつ、【ゴッド・フィスト】なんかで殴り続ければ粘り勝ちするのでしょうが、時間がかかりそう。


秋田みやび「でも、しょせん、カウントでしょ?今から五人で行こ

バトエルデン「よし、余について参れ。さあ、「新米女神」シリーズ、まったく予想外の展開。知らないうちにボス死亡

秋田みやび「あらら、どうしよう」

どうしようって自分で炊きつけておいて(笑)。ガチでやったらいくらフィルゲンでも一方的にボコられるでしょうね。

今まで戦ってきた連中と比べれば多少特殊能力があってもカウントではね。フィルゲンにはもっと貫禄を見せて散ってほしいんですが。


もっとも今のゼルブリスはフォルミカと手を組んで"深奥都市"となり、下手したらアイヤールやカイン・ガラまで繋がっています。

まともに攻め込んでも大隧道に攻め込んだ百の勇者よろしく大いに迷わされ、余計な犠牲が出た挙句にフィルゲンを取り逃がす恐れもある。

そこで今回の遠征はフィルゲン自体を叩くことはせず、十分な数の蛮族を叩くことでレオンを説得する材料にするのが目的になります。


秋田みやび「ゼルブリスも大変やなあ」←他人事か

バトエルデン「では、出発だ。伯爵、サポートを頼む。今回は、俺を主役にしてくれ

フェルディナント「そうだな、いつもの連携でやると、大司教、働いてないように見えちゃうからな」

大司教はスカイバイクに騎乗し、指パッチンしながら《魔法拡大/数》で【フォース】を蛮族達に乱射するという戦い方をします。

ジュエリィの<マナスタッフ>を借り、ゆんが【ウェポン・マスター】で《武器習熟A/スタッフ》を付与。

その上マイザールが【スペル・エンハンス】を、伯爵が【ブレスU】をかけて魔力+3に強化。魔力が24にまで上がりました。


フィルゲンの精神抵抗力が24(31)なので数値的には互角。まして他の蛮族達ではまず抵抗できないでしょうね。

ちなみに四天王のレオルズですら13(20)でしかない。彼がオーガエリミネーターとやらに進化していても多分無理。

抵抗できないと【フォース】とはいえ出目7で3点、27点ほどですね。大抵の蛮族は数発で死ぬでしょう。

消費MP4点なので30発ぐらいしか撃てないけど、そこは《ポーションマスター》で回復し続ければ相当いける。


バトエルデン「ようし、張り切っていっちゃうぞー。それ♪(パッチン)それ♪(パッチン)
        この大司教の勇姿をちゃんと軍勢率いて、見ててくださいよ、王子」

レオン「うむ。やはり、大司教は我がルーフェリアの心強き守護者であった。なぜ、俺は、この人を疑ったりしたのだ」

そうするとレオンからまたも分体が剥がれて実体化します。今度はサファイアバジリスクの人間形態でした。


サファイアバジリスクは18/19レベルの蛮族です。バジリスクの上位種で全体的にバジリスクを強化した存在です。

真語魔法は15レベルに、《毒の血液》によるダメージは2D+12点に強化されています。

特徴は三つの邪眼を持っているということ。《蒼玉の視線》によって対象を石ではなくサファイアに変えてしまいます。

《蒼冷の光線》は貫通型の水・氷属性の魔法ダメージを与えます。最後の《新生の視線》対象を若返らせる効果があります。

《魔物化》すると上邪眼、右邪眼、左邪眼、頭部(コア)、胴体の五部位になります。


このようにやはり蛮族の中ではかなり強力なやつですが、ペルーダと同じように実力そのものはさして脅威でもない。

ニディスニオと共有しているのは神聖魔法15レベルを魔力22で使用する能力です。つまり【レストレーション】に相当する能力です。

さっきのビームに比べたらまだ可愛げがありますね。MPが136点もあるのであんまり舐めてかかると結構面倒臭いことになりますが。


しかしここで欲が出たのか伯爵はとんでもないことを言い出します。

フェルディナント「おい、バジリスク、変身するまで待ってやろう

マイザール「何を言ってるんだ、ベ●ータ!」

フェルディナント「ちょうど5部位だしな」

バトエルデン「こいつも、赤SS落とすし、部位増やしたくはあるな」

魔物化すると自動で赤のSになる<バジリスクの純血>が取れますね。2〜7で金赤Sの<蒼玉の瞳>が取れる。

8〜12だと赤SSの<新生の瞳>になって、13以上だと金赤SSの<蒼玉の邪眼>を落とします。

赤はもちろん金のカードも美味しいですね、【クリティカルレイ】にも使える。ゆんが出目+6にすれば1ゾロ振らない限り回る。


ジュエリィ「本当だ。いいもの持ってるじゃないの」←カツアゲか

ゆん「おいおい、早く変身しなよ」

マイザール「今なら、オラもベジ●タの言ってることが、ちょっとわかるようになった。変身しろよ」

しかしバジリスクは設定上醜い自分が嫌いです。分体がどの程度オリジナルに影響されるのかは不明ですが多分嫌なんでしょう。

そこで死なない程度に痛めつけるか、酷いデバフを食らわせることで追い詰めて、強制的に変身させることにします。

今回の先制はさっき入手したカードのお陰で伯爵とジュエリィが成功。ゆんは1ゾロ振って《月の舞》効果で成功。マイザールはいつもどおり。


1ラウンド目

まずは「わたしにいい考えがある」とばかりに何か思いついたマイザールから動きます。

マイザール「今のお前には用はない。さっさと変身してもらうぞ」

GM「本気でサ●ヤ人の集団か、お前ら」

ここでマイザールは《ルシェロイネ魔導優越》で達成値+4、《ティルダンカル光魔二条》で+1した状態で【ペトロ・クラウド】を使用。

これは10レベルの操霊魔法で対象を1分後に石化させるというものです。石化するまでに【リムーブ・カース】するか術者を倒せば阻止できる。

練技や<ソーサラースタッフ>を使っていないなら基準値は素の魔力24に+5して29。《ルシェロイネ魔導収束》ならもう+1できましたね。

達成値は珍しく期待値通りの36でした。これには24(31)しかないバジリスクが抵抗できずに1分後に石化することになりました。何という皮肉。


マイザール「おやおや、どうしました。気分が優れないようですが?6ラウンド以内に解除しないと石になります

フェルディナント「これは、屈辱だ」

神聖魔法があるから【リムーブ・カース】は使えるし、それが駄目でも真語魔法15レベルのパフェキャンもある。

ただしどちらも魔力が22しかないんですよね。これでは6ゾロでも振らない限り達成値36は解除できませんよ。


マイザール「手段は一つしかないんじゃないですかぁ?ま・も・の・か、すれば、ご自分が受けている魔法効果は消滅ですよ。素晴らしい」

ジュエリィ「さ、HPでもプレッシャーかけよう」

フェルディナント「俺様が殴るとうっかり殺しちゃうかも。別の人やって」

ジュエリィ「うん。自分がやるよ。うっかり殺さないように弱い魔法を選ぶ

サファイアバジリスク相手にここまでの舐めプができるのは流石ですね。ちなみに人間形態のHPは147点、流石に即死する程ではない。

でもジュエリィが【ファイアボルト】を《ファストアクション》込みで2連発すると、35点の37点で72点減少。残り75点で半減しました。


最早即死圏内ですが、このタイミングでマイザールは大変なことに気付きました。

マイザール「あっ!しまった!初手は【マナ・シール】だった。まずった。【テレポート】される

バトエルデン「そうか、こいつ布教が役目だものな。この戦闘に無理に付き合う理由がない」

ゆん「教えなくても……」

マイザール「GMの手番になってから思いつかれたら最悪です。ミスったな〜」

バトエルデン「やはり、サイ●人の舐めプレイは、よくないか。だいたいロクな結果になってないよな、あれって」

11点以上消費できなくなるだけなら消費MP3点の【エスケープ】は防げないんですよね。やっぱり舐めプは良くないか。


フェルディナント「魔物化するまで待つと約束したな。あれは嘘だ

手番を回すまいと伯爵は【プレコグ】だけ入れて《魔力撃》《爆破・神鳴り》でぶん殴ります。防護点21なのでちょっと不満。

かといって《全力攻撃V》よりは1点多くなるのでこっちです。その結果59点素通しで16点残りました。《ファストアクション》でトドメです。

戦利品は1つだけでしたが<新生の瞳>だったので赤のSSカードになりますね。2万ガメルの儲けです。これは色々不安なマイザールが持ちます。


これでレオンの疑惑が完全に払拭され、王宮の神殿に対する不信感は解消することができました。

レオン「これは、非は圧倒的に自分にある。謝るしかない。ごめんなさい」←素直なやつだ

バトエルデン「ハグして許します。「気にする必要はないよ、王子」。歴史的和解の瞬間。バックに夕日を入れて、1枚撮ってくれ」

マイザール「目線ください。パシャ。次のルーフェリア新報の一面、決定です」

そういえばこのパーティって【マナカメラ】を使える程度にマギテック技能の高い人がいないんですよね。昔はいた気もするけど消えちゃったし。


バトエルデン「そなたに非はない。すべては邪神の仕業。ルーフェリア神の名において懲罰を与えよう」

レオン「寛大な言葉をありがとう、大司教」

バトエルデン「君が国を憂える気持ち、しかと受け取った。今回のことは、それが確かめられた、よき事件だったのだ。
        すべては不問にして、水に流そう。ルーフェリア万歳」

レオン「ルーフェリアのために!

バトエルデン「ルーフェリアのために!

こうしてガッチリ握手して全部解決。こっちの分体が取り憑かれていたとか絶対に口には出せませんね。

そして皮肉にもこの瞬間の大司教は過去のどの大司教よりも聖職者っぽく見えるのでした。それはそれでどうなのよ。


★カイン・ガラ 責任者の自覚

最後の分体を求めて【ディメンション・ゲート】でカイン・ガラに移動すると、またもルメットとムンドゥが口論をしていました。

ジュエリィ「何だいつものことだった。ごゆるりと、どうぞ」

ところがいつもと様子が違いました。今まではムンドゥが一方的にルメットに対抗しているだけでしたね。


ところが今回はルメットの方がムンドゥに食って掛かっているのです。

ムンドゥ「【ギアス】で近づけない私に、これ以上、何を要求すると言うのかね?」

ルメット「お前がいると、それだけでとても危ないのだ。
      実験と称して怪しいことに手を出して、まったく信用がならん。これ以上はカイン・ガラの迷惑、追放だ

このように前回の温厚さが信じられないほどに攻撃的になっていました。ついにキレたにしては極端ですね。


ここでまずはムンドゥの方から分体チェックをしておきます。

マイザール「やあ、【ギアス】解いてあげましょうか?」

ムンドゥ「あ、きみは。ひどいじゃないか、事が終わったら解いてくれてもいいだろう。すっかり、人間不信に陥るところだったよ」

マイザール「今、解いてあげますよ。人の心には、いつも優しさがあるのです。はい、これで大丈夫ですよ」

ムンドゥ「う、うん。ありがとう」

何だか素直に感謝しているし、分体も出てこない。研究が絡んでいないと割りとまともな人に見えますね。


するとやはりおかしいのはルメットですね。そもそも彼の要求通りにムンドゥを追放したとしても、そっちの方が危ない気もする。

ルメット「だって、その男を信じられるのか?」

バトエルデン「それでも、まずは、信じることから始めるのです

ゆん「わあ、聖者っぽい」

バトエルデン「そして、信じることによって、お互いの協力によって一人ではできないこともできるようになるのですよ」

ルメット「いや、私にはこいつの協力とか不要だけど?

これは意外と難しい問題かもしれない。ルメットはムンドゥとの関係に何のメリットもないんですよね。前2つの案件とはそこが違う。

人を信じるよう促すことで分体を剥がそうにも、合理的にルメットにムンドゥを信じさせるのは難しそうですね。


ジュエリィ「お互い意見をぶつけ合わせることで、新たな発見に繋がることもあるよ(つい)」

マイザール「なぜそこで目を逸らすんです?」

ルメット「目を逸らしながらおっしゃられても、説得力はありませんな。大体ですな、あなたも……
      ああ、よく考えてみれば、そもそも、カイン・ガラで一番信用できないと言えば、あなたです!

矛先が変わりましたね。ムンドゥを信じさせるよりは難易度は低そうだけど、日頃の信用がないからこれはこれで難しそう。

今までジュエリィは実力者のくせに責任者としては振る舞わず、自由奔放に授業荒らしをするなどして周囲を振り回してきました。

それはそれでキャラが立っていたけど、何を考えているか分からなくて不安を煽る。研究のことしか考えてないムンドゥの方が実は単純ですし。


ルメット「何で、あなた私のかわいい魔動機術学科を荒らして回るんですか」

ジュエリィ「荒らしてないよ。真剣にやってるよ。1レベルだよ」

ルメット「うざいんだよ、めっちゃうざいんだよ。何のつもりであんなことやってんだ。
      どうせよからぬことを企んでいるか、影で私のこと笑ってるんだろ」

動機としてはきっと好奇心、探究心、ただそれだけなんでしょう。別に悪気はないし、人を見下したりするタイプでもない。

それでも彼女のそういう性格はなかなか理解され難いものではある。そういうのは理屈でやってるわけじゃありませんしね。


ジュエリィ「ワタシ1レベルしかないし。センセイのこと尊敬してるよ(棒)」

ルメット「10レベルで魔力15なんだ、ワタシと一緒だねとか、思ってるだろ」

マイザール「説得は難しそうですねえ。人間性の問題で」

ルメットは10レベルの知力ボーナス+5なんですね。ジュエリィが規格外なだけでこのレベル帯の人間としては優秀ですね。


仕方ないので矛先をムンドゥに戻します。彼の困ったちゃんだけど研究熱心なところを上手く利用します。

ルメット「こいつなんて、無茶な魔動実験やら強引な発掘しかやっとらんぞ」

ゆん「それで本当に何の成果もないの?そんな人、教授にしちゃったの?

マイザール「今でもゼミ生ぐらいいるでしょ。講義の一つも受け持ってるでしょ」

ルメット「それは一応、これでもここの教授だからな」

そもそもここの教授はどういう条件でなるものなんでしょうね。流石にある程度の実力や功績は必要だと思いますが。

懲戒解雇の話なんかも出ていましたけど、初めからそういうタイプの人だったらそもそも教授にはなれないと思いますが。

ルメットへの対抗意識がエスカレートして今のようになってしまったのなら、まだ改心する余地はあると思います。


マイザール「そういう学生たちを、あなたの気分で勉学から遠ざけてよいのですか?」

ルメット「気分?私が気分で動いているというのかね?」

バトエルデン「あなたの今感じている「信じられない」は、どこまで論理的に証明できますかな?
        俺から見ると、この人シンプルだから、「信じる」ほうが簡単なんだが

ジュエリィ「学問の基本は好奇心なのよ。それは一般の学生も、ムンドゥ教授も同じよ。「知りたい」がなくて、何の学問よ。ぷんぷん」

ルメット「それはそうだが、学問の先端は危険と隣り合わせだ。いやしくもカイン・ガラで人の上に立つなら、慎重さを欠いてはならんのだ

マイザール「いやあ、今のあなたこそ、かなり性急ですよ。慎重とはほど遠い」

普段の慎重なルメットなら、ムンドゥを野に放って好き放題させるのは危険なことだと判断したでしょう。

そんなことも分からなくなるほど自分を見失っていると指摘されたルメットは頭が冷えたのか、自省する顔になります。


ルメット「はて、何で私はここまでいきり立っていたのだ?」

バトエルデン「あなたは、心の隙を突かれたのです。渇ーっ!」

そうして一喝されると分体が飛び出してきます。今回出てきたのはスケルトンガーディアンでした。


スケルトンガーディアンは7レベルのアンデッドです。頑強な骨格を持つスケルトンの重装歩兵です。

ダメージを受ける毎に《骨舞い》によって敵の視界を遮り、自らの命中力を向上させて最後には必中にまで上げられます。


ただそれだけで強い特殊能力を共有していない雑魚分体でした。

バトエルデン「ただの金属バットであるところの、<ディフェンダー>でぶん殴ってやりましょう」

たかだか7レベルだと今の大司教でも余裕でボコれます。当然戦闘も省いて倒したことになります。

こうしてルメットは正気に戻り、ムンドゥの追放処分もなくなった。でも2人はもともと不仲なので仲直りしたわけではない。


もちろんこれで終わったわけではない。そこに1人の教授が駆け寄ってきます。

教授「あ、"宝石"さん、何とかしてください。評議長が引きこもってしまいました

そんな気はしてたんですよね。ジュエリィの後始末は殆どこの人がしていたし、当然ストレスも一番溜まる。

「もう誰も信じられない」「何で自分ばっかり」「尻ぬぐい押しつけられるの飽きた」とか言い出して塔の最上階に引き篭ったとか。

挙句には膝を抱えて虚空を見上げて「"宝石"呼んでこい、殴らせろ」とか言い出す始末。今までの誰よりも病んでる感じがします。


バトエルデン「……気の済むまで殴らせてあげたらどうです?」

ジュエリィ「ワタシ、HPたくさんないのに」

バトエルデン「<マナコート>で全部止まりそうですけど?」

それでも77点もありますけどね。そもそもハル・クードに戦士系技能がないなら例え武器で殴られてもダメージが抜けない気がする。

何しろ防護点11ですしね。例え威力45の<オーガモール>で殴られようとも出目9までは11点以下なので止めますし。


それはともかくジュエリィは菓子折りを持って謝りに行きました。ちなみに中身はさっき買った「カナリス饅頭」です。

ジュエリィ「ハル・クードくん?ごめんね」

ハル・クード「もう誰も信じられないんだよ。何で私ばかり雑用を押しつけられねばならないんだ。もう疲れたよ」

いつものパリッとした紳士服姿は影も形もなく、寄れた背広で無精髭。路地裏に転がってそうな風情です。


ジュエリィ「だって一番上手にできるんだもん。だから、つい」

ハル・クード「なあ、私もそろそろ後進に道を譲っても許されるんじゃないかな」

ジェエリィ「そうだね。いい人を育てよう

マイザール「はずしに行くのやめましょうよ」

ジュエリィ「でも、ワタシ、この人の後進じゃないもの」

バトエルデン「昔話とか、ちょっと興味湧くな。「もう付き合いもそろそろ65年だし」とか」

彼が65歳だからこう言ってますけど、ジュエリィの年齢が不明なのであり得る話なのが凄い。

下手したらハル・クード自体がジュエリィの後進である可能性もあるわけで、それはそれで若い頃に何かあったのかも。


ジュエリィ「ハル・クードくん、大丈夫だよ。ワタシも手伝うから」

ハル・クード「本当に?手伝う?何を?」

ジュエリィ「世界を救う手伝い」

ハル・クード「あ……それ……」

ジュエリィ「これはこれで、やらないといけないことだから。とりあえず、妖精学部がんばるから

ハル・クード「見てくれる?任せていい?信じていい?」

ジュエリィ「もちろん。ワタシ、嘘はつかないよ。嘘になることはあっても

何でそこで落とすんだ。こうやって不安を煽るのは良くない癖ですよね、本当に。


ジュエリィ「だ、大丈夫だよ。ついでに賢人学部もがんばるから

ハル・クード「やってくれるの?」

ジュエリィ「できる限りの努力をします。真っ直ぐな瞳で」

ハル・クード「じゃあ、ちょっと信じてみようかな」

技能の構成からいってその2つは文句なしに学部長が務まりますね。感覚頼みで規模も小さい妖精学部はまだいい。

でも籍を置く人が圧倒的に多いである賢人学部は相当大変でしょうね。だからこそハル・クードの負担も減るでしょう。

ここの学部は他学部にも籍を置いている人が多く、学部間の交流の場といった側面もあるのでなかなか重要なんですよね。

あとレベル的に真語魔法学部もいけますね。何しろこれでも12レベルあってカイン・ガラでもかなりの実力者でしょう。


そうしてハル・クードがジュエリィを信じる心を取り戻すと分体が現れます。今回はアンデッドジェネラルでした。


アンデッドジェネラルは14レベルのアンデッドです。太古の魔法王が己の護衛や宝物庫の番人として生み出したアンデッドです。

《2回行動》《2回攻撃&双撃》《連続攻撃U》で最大で3回命中×2回攻撃×2回行動=12回命中を可能とします。

更に《複数宣言=2回》で《牽制攻撃》《全力攻撃》《かばう》を組み合わて宣言することもできます。

ただし近接攻撃の対象は《当たるを幸い》とばかりに乱戦エリア内から無作為に決めるため、集中攻撃が起こるとは限らない。


このようになかなか強力なアンデッドですがやはりレベルは低くそう脅威でもない。前の2体に比べると低すぎですね。

20レベル弱のアンデッドとしてデスロードという魔法使いのアンデッドも候補に上がっていました。

でもこいつも深智魔法15レベルでして、魔法王にエルダードラゴンと2体も出ているので今回は省いたらしい。

それならいっそ20レベルのドラゾンでも良かったような気もしますが、それこそ散々出てきているからやっぱり駄目かな。


肝心のこいつが共有する特殊能力は《大いなる守り》です。例の抵抗に成功すると効果消滅の常動型能力です。

合算ダメージ半減ともあってダメージのタイプや属性に条件はないため、近接攻撃も半減すると思われます。

そして予想通りに封印はできない。レベルの低い分体だから良かったけど、もしそれなりに頑丈な奴が持ってたら大変でした。


ちなみにHPは108点です。このパーティ相手だと心許ない数値です。

マイザール「面倒だけど、元が元だけに敵じゃないですね。1ラウンドキルできないと恥

大司教以外の4人で平均27点削ればいいと考えると、いくら合算ダメージ半減といっても余裕で削れるでしょう。

折角の特殊能力も精神抵抗力17(24)程度では抵抗できないし、先制値19はSSカード使うまでもなく取れそう。


HP「うん、やっぱりサイコロはいいや、これ」

予定していた戦闘も勝ち目はなさそうなので省略される始末。そもそも守るだけでは勝てませんしね。

2D+18点のダメージは《全力攻撃》が乗っていても最高で34点程度ですし、それなら大司教が殆ど止めるし。

《連続攻撃U》の2〜3回目に《かばう》の回数を使わないという処理だとしたら、4回分《かばう》すればいいので完封です。

もし「イグニスブレイズ」導入で《全力攻撃U》あたりに強化されていたら大分削られるでしょうが、死ぬほどではないし。


ジュエリィ「ハル・クードくん、お髭剃って顔洗っておいで。いつものように、パリッとしてきなさい」

ハル・クード「うん、そうしよう。私は、ちょっと疲れていたようだ」

これで将来的に妖精学部と賢人学部は任されるとして、分体のことは説明して警戒を促しておきます。


ジュエリィ「あちこちに警戒出すとか、そういう細々した面倒ごとを、ハル・クードくん、お願い。あれー?」

マイザール「That's 元の木阿弥」

バトエルデン「とはいえ、ジュエリィがここで雑用に回って、代わりに彼を連れていくわけにもいかんだろう」

一応真語魔法学部の学長だけど、流石にマイザールより強いということもないようだし。


ハル・クード「ジュエリィには行ってもらうしかない。世界を頼む」

ジュエリィ「任せて。世界を助けてくるよ」

ハル・クード「その後は、学部二つよろしくね」

ジュエリィ「うんうん、できる限り、でね」

こうして3つの分体と厄介な特殊能力は潰しました。いよいよ神への挑戦が始まる。


★史上最恐の温泉饅頭

主要な分体は倒したところでいよいよニディスニオとの直接対決に挑みます。その前にカイン・ガラで準備をしてから行きます。

フェルディナント「では、【ジハド】分のMPを融通してもらおうか」

GM「そりゃあ、ここはカイン・ガラですから。キルヒアの最高司祭の頼みとあらば、何人でも自分のMPを使ってくれと参じますよ」

マイザール「大神官と信者の交流。宗教談義に花が咲く」

フェルディナント「ときどき、耳が痛い。ここのキルヒア信者たちは本物……

あとは効果時間が1時間とかの長い魔法をかけます。ゆんはまたもゆん・ゆん・すぽーんになって、マイザールはダルグブーリーに変身。

更にHPとMPを完全回復してから【ディメンション・ゲート】です。少し離れた場所に穴を開けてすぐに閉じて逆に攻め込まれないようにします。


現地ではククと再会しました。少し心配だったけどあれから特に死んだりはしていないようです。

クク「おお、いろいろとやったような感じだね」

ジュエリィ「奥で悲鳴でも聞こえた?」

クク「すごい揺れたよ、この辺。恐ろしいほどの神の怒りを感じざるをえなかった

既に主要な分体が倒されたことも特殊能力が消えたことで悟っているでしょう。今にもこの場から飛び出していきそうです。

そうこうしていると周囲の空気が一変。激しい怒りが彼らにプレッシャーを与え、ククが目を白黒させ始めます。


ジュエリィ「師匠!どうしたの師匠!?」

クク「ま、まさか、わしがこんな目に……」

すると彼の声は普段とは違う重々しく、怒りに満ちたものに変わりました。ニディスニオに支配されたようです。


ニディスニオ「定命の者ごときが……」

ジュエリィ「え?」←寿命が不明の人

バトエルデン「定命じゃない者が、若干1名おりますので、訂正してください

大神を相手にこの舐めた態度。流石というか、これぐらいでないと神に挑むのは不足という気もします。


ニディスニオ「むぐ……。人族ごときが。人族ごときが、神を正そうとし、神に要求するか。慢心も甚だしい。
        神に逆らう愚かさを、その身の程知らずがいかに罪深いかを、思い知るがよいぞ

フェルディナント「ほう、そうか、お前はそれを知らせたいのか。だが、俺様が知りたいのは、それじゃないんだ。
          俺様、わからぬことが一つだけあってな。それは……」

ここで一度台詞を切って、不敵な笑みを浮かべた挿絵と合わせて神への挑戦状を叩きつけます。


フェルディナント「定命の者(モータル)に滅ぼされる不死者(イモータル)の気持ちってやつよ。そいつをじっくり聞かせてもらいたくて、ここまで来たぜ」

それはこれから滅ぼしてやるというこの上ない挑発でした。今まで散々「神を斬りたい」と言ってきた伯爵がついにその機会を得たのです。


ニディスニオ「よかろう。選ぶがいい。お前たちが余のもとに来るか、余がお前たちのもとに赴くか

ジュエリィ「ゆっくり歩いて、3ラウンド後ぐらいに来てくれるとありがたいな」

ニディスニオ「そんなに待ってはおれん。余は、お前たちを今すぐにでも潰したくてしかたがないのだ。
        さあ、すみやかに選べ。空が見えるほうがいいか、見えないほうがいいか

前者なら【メテオ・ストライク】が使える環境であり、後者ではそうでないというわけですね。

もちろんマイザールがメテオを使える方が火力は上だけど、その代わり相手も使ってくることを覚悟しないといけません。

そしてHPが段違いに多いであろう敵の方が消耗戦は有利です。こっちは2連発で食らうと死に体なのに、敵はピンピンしてたりするし。

そこで空が見えないようこちらから出向くことにします。魔法王のように指パッチンで引き寄せられるので準備時間とかもありません。


次の瞬間一行は地割れの底かと思いきや、謎の灰色空間に引きずりこまれました。いわゆるKBF(決戦のバトルフィールド)というやつです。

そこには複数の魔物が半透明で重なり合っているという、なんとも名状しがたきものが待ち構えていました。

まずニディスニオの本体がありまして、これはセッション時には巨大な温泉饅頭のマグネットで表現されたようです。

その本体に重なるように色々な魔物の姿をした分体が重なっていて、こいつらは全部ゲーム上同じ座標にいることになります。

その中でも3つが特に存在を主張していて、それぞれペルーダ型、サファイアバジリスク型、アンデッドジェネラル型とさっき見た姿をしています


フェルディナント「戻ってきておったか」

GM「というより、ここで再生された」

実はこれらの分体たちはニディスニオの今までの経験に基づいて形作られていまして、彼自身は元々バジリスクだったらしい。

「三眼のサーペント」というタイトルはズミーヤもそうでしたが、こいつにもかけてあったのです。サーペントというかリザードやん。

ペルーダやアンデッドジェネラルは彼がバジリスクだった時に戦ったものらしい。他の分体達もきっとそういう繋がりがあったのでしょう。


注意すべきなのは本体だけでなく、3体の分体が24レベルの<剣のかけら>入りに強化されているということです。

流石に一蹴された時のデータのままでは役に立ちませんからね。その辺を含めて《魔物知識判定》で4体全てのデータを見抜きます。

基本的には純粋にデータが強化されていますね。アンデッドジェネラルは《全力攻撃U》《かばうV》になっているけど。

もしかしたらこれは「イグニスブレイズ」環境下で普通のアンデッドジェネラルを出す時にも同じかもしれませんね。

なお今回戦うニディスニオの本体が単部位で、バジリスクは最初から魔物形態なので全部合わせて十四部位にもなります。


★試合開始のゴングまでがとても遠い

《魔物知識判定》の結果、分体達もなかなか侮れないと一行を戦々恐々とさせました。

フェルディナント「ペルーダ型分体の「〆踏み荒らす/必中」とか、割と絶望的なんだが」

バトエルデン「最大12回攻撃のアンデッドジェネラルからも庇いきれないぞ」

《踏み荒らす》は「(2D+7)×残る足の部位数」なので、期待値で56点、最大で76点ほど。即死はないけど他の攻撃があるから怖い。

ジェネラルなんて《全力攻撃U》を乗せると2D+40点だからフル強化の大司教でも2Dは抜けるとして、12回攻撃だと100点近く行きかねない。

まぁ《連続攻撃U》と《かばう》の解釈がはっきりしないので何とも言えませんが、仮に前述通りに全部かばえるとしても大司教ですら危ない。


しかしそれ以上に鬼畜なのはニディスニオのデータです。


邪神ニディスニオ(不完全本体)は25レベルの神族です。HP1000点、MP500点で回避力29(36)の防護点25。

《精神効果無効》《毒無効》《病気無効》《呪い無効》《限定2回行動》で1手番に2回主動作を行えますが、同じ行動はできない。

主動作でMP50点を消費することで1体の分体が受けている効果を全て消し去り、HPを完全回復させる《分体再生》が可能です。

なお分体のコア部位のHPが0以下になっていてもHP50点を消費することでやはり《分体再生》は可能になります。

また半径100m内の任意の対象に《終末のオーラ》を放つことでHPとMPを徐々に減少させ、最後には死に至らしめることができます。

更に《限定魔法行使》で6種類の魔法を無作為に使用します。一度使用した魔法は他の全ての魔法が使われるまで使えなくなります。


この中では《分体再生》と《終末のオーラ》が封印可能ですが、どちらかしか封印できないとなると悩ましいですね。

マイザール「要は、分体潰しても、1ラウンドに1個、丸々再生してくるってことですよね?」

潰した場合にはHPとMPの両方を50点消費するので全部で10回しか使えませんけどね。それだけ使えれば十分とも言える。


あと《終末のオーラ》は初期段階を0とし、それに+1した段階に対応する抵抗力判定を行い、失敗すると効果を受けて次の段階に進む仕様です。

段階 抵抗 効果
生命 最大HP−10%
精神 最大MP−10%
生命 最大HP−25%
精神 最大MP−25%
生命 最大HP−50%
精神 最大MP−50%
生命 死亡

つまり最短で7ラウンドで死亡。実際は抵抗の目標値は25(32)なのでそこそこ抵抗できればもう少し猶予はある。

でもこの効果って呪い属性なんですよね。それだと《呪い無効》のククには効かなかったはずですが。


あと《限定魔法行使》で使える魔法は以下の通り。

【メテオ・ストライク】or【ディメンション・ソード】
【デス・クラウド】
【オーバーブロウ】
【インスタント・ブランデッド】
【レストレーション】
【カオスイクスプロージョン】

この中では【デス・クラウド】は初出でしょうか。15レベル操霊魔法で威力60の呪い属性魔法ダメージを与えます。

フォーセリアの頃と違って抵抗に失敗しても即死はしないけど、《生死判定》に−20ものペナルティを与える殺意の強い魔法です。

あと【インスタント・ブランデッド】もそうですね。こちらは13レベルの神聖魔法、ただし【イレイス・ブランデッド】と対を成す二剣側の魔法です。

一時的に穢れを与え、人族がかけられると半々の確率で移動と主動作を封じられ、蛮族がかけられると半々の確率で主動作が1回増えます。


ただし【インスタント・ブランデッド】と【レストレーション】はこの戦いでは使用できないので選択されたら主動作終了。

すると【ディメンション・ソード】【デス・クラウド】【オーバーブロウ】【カオスイクスプロージョン】のどれかですね。

真語魔法・操霊魔法・深智魔法・神聖魔法・妖精魔法のそれぞれ最も強力なものを使えるわけですか。魔動機術?召異魔法?知らんなという潔さ。


以上のようなかつてない強敵ですね。さらっと流したけどHP四桁とかもう何のゲームだこれ。

フェルディナント「『GMが鬼畜過ぎて勝てる気がしないんだが』、今度、新しいライトノベルを出そうと思う」

ゆん「『HP1000がソード・ワールドであるはずがない』

ジュエリィ「『鬼で悪魔な温泉饅頭』

冗談抜きで彼らも困惑。《分体再生》がとにかく恐ろしく、今までのように先手取って焼き尽くして部位を減らす手が通じない。

あえて焼き尽くさずに残してもMP50点だけ使ってサラッピンになるし。分体限定の【レストレーション】も同然の能力ですよね。

かといって1ラウンドに2体焼き尽くそうにもコア部位はジェネラルがHP318点、バジリスクが195点、ペルーダが167点もある。

1ラウンド目は《ファストアクション》で強引にいけたとしても2ラウンド目以降が不安。火力で《分体再生》を押し切る戦略は難しそうですね。


ゆん「なら、伯爵が10回ぐらいクリティカルしたらいいんだよ」

フェルディナント「ゆん、残念だが、10回じゃ足りない。50回だ

マイザール「量子力学的にはありえるってやつですね」

1回回って20点ぐらいだから50回で1000点という計算でしょうか。実際は追加ダメージがあるからもうちょっと少なくていい。

仮に【ソニックウェポン】入れてクリティカル値9にしても0.278の50乗なんて天文学的過ぎて全く期待できません(笑)


伯爵を守るために大司教が【セイクリッド・シールド】を使おうにも《終末のオーラ》対策に【タフパワー】は必須。

それだけで《かばうV》《魔法拡大/数》が必要なのに、その上《ダブルキャスト》とか使っている余裕はない。

1ラウンド目だけ伯爵が《ファストアクション》で10ヶ所の能力を封印しようにも、それをやるとHP−50で【レストレーション】必須。

いずれにせよ《分体再生》に裏付けされた分体の圧倒的な火力と頑丈さが勝利への道しるべを曇らせます。いっそこれを封印するべきか。


ああでもない、こうでもないと、戦略が立てられないまま戦闘に突入します。最終決戦は波乱の幕開けとなりました。


★第1ラウンド表 英雄たちの全力は……?

《先制判定》の前に今回の戦闘の特別ルールが発表されます。輪環の時のスカイシップチェックと違ってPC側に有利なルールです。

実はニディスニオの雑魚分体を倒すとそのレベル分本体のHPとMPが減少するというのです。

ただしペルーダ型、サファイアバジリスク型、アンデッドジェネラル型は強力な特殊能力の喪失で相殺されるので適用外です。


今までに倒した雑魚分体は7レベルのワイバーン型、9レベルのバジリスク型、7レベルのスケルトンガーディアン型でしたね。

よってその合計の23点だけ減少しています。この時点でHP977点、MP477点に減っていることになります。

更に戦闘中は毎ラウンド2D6を振り、7以上を出すと各地の冒険者達の活躍で雑魚分体が倒されたことになります。

この時は出目の分のレベルを持つ分体が倒されたとされます。7〜12レベルなのでそれだけHPとMPが減少するわけですね。


それでは《先制判定》です。敵の最高先制値はバジリスクの31です。

フェルディナント「赤いSSカードを破ります」

マイザール「Me,too!」

ジュエリィ「Me,too!」

3人は賦術で強引に取って《ファストアクション》発動。これが最終決戦、出し惜しみする必要はありません。


ゆんはまさかの出目3で失敗かと思いきや。

ゆん「今日のラッキーカラーは黒っ!黒い眉毛

マイザールから【幸運の星の導きを知る】を貰っていたので出目+1にする効果を発動して辛うじて取りました。

ゆんの先制力は25、そこに【ジィプロフェシー】を使っていて27だったんでしょう。これだと出目3だと30で+1すれば足りる。

更に分体チェックで出目8、冒険者がどこかで8レベルの分体を倒しました。HP969点、MP469点で戦闘開始です。


1ラウンド目

まずはマイザールです。敵の数が多いので【ブリザード】です。威力100のメテオの次が威力30というのが真語魔法の残念な所。

ただしペルーダ型分体の弱点は「魔法ダメージ+2点」、サファイアバジリスク型が「水・氷属性ダメージ+3点」なので好都合ではある。

《弱点看破》も入れれば+4とか+6されるし、こいつらに関しては威力の低さを大分補ってくれそうです。


いつもの練技を使い、伯爵に【バークメイルS】を入れ、【ブリザード】で達成値35。敵の抵抗力も軒並み基準値で30越えているので抜けない。

でも何故かペルーダ型のみ抵抗失敗です。精神抵抗力33(40)で失敗するということは1ゾロかな。部位が多いだけにこれは幸運。

21−297(アンデッドジェネラル)

42−125、40−205、42−102、61−83、0−144、39−105、41−165(ペルーダ:頭部/胴体/足/足/足/足/尻尾)

25−114、25−114、25−114、25−170、24−204(サファイアバジリスク:上邪眼/右邪眼/左邪眼/頭部/胴体)

21−948(本体)

ペルーダの足一本に1ゾロがありましたがまずまずの成果。


続いて《ファストアクション》による2発目。今度はアンデッドジェネラル型とペルーダ型が失敗。

40−257(アンデッドジェネラル)

42−83、42−163、43−59、40−43、40−104、38−67、52−113(ペルーダ:頭部/胴体/足/足/足/足/尻尾)

25−89、25−89、26−88、25−145、25−179(サファイアバジリスク:上邪眼/右邪眼/左邪眼/頭部/胴体)

24−924(本体)

ペルーダ型は二桁の部位が出てきました。単部位のジェネラルは流石に頑丈。バジリスクは眼が霜焼けになる勢いです。


お次はジュエリィです。《クリティカルキャスト》を宣言して【ファイアストーム】。またもペルーダ型の抵抗を抜きました。

43−214(アンデッドジェネラル)

52−31、45−118、41−18、51−X、42−62、47−20、41−72(ペルーダ:頭部/胴体/足/足/足/足/尻尾)

22−67、24−65、23−65、23−122、22−157(サファイアバジリスク:上邪眼/右邪眼/左邪眼/頭部/胴体)

24−900(本体)

ペルーダ型の足が一本消し炭になりました。頭部も程良くウェルダン、あと一焼きで兜焼きですよ。あと本体が100点減少。


《ファストアクション》による2発目ですが、またもアンデッドジェネラル型とペルーダ型が失敗。

72−142(アンデッドジェネラル)

44−X(ペルーダ)

22−45、24−41、22−43、23−99、21−136(サファイアバジリスク:上邪眼/右邪眼/左邪眼/頭部/胴体)

21−879(本体)

なんと早くもペルーダ型分体撃破。あとアンデッドジェネラルは回ったらしく一気に150点切りましたよ。


マイザール「あれ?これ行けるんじゃないですか?」

フェルディナント「これ、ゆんで行けるんじゃないですか?」

ジュエリィ「ゆん先生、お願いします

今までのゆんの火力を考えると99点のバジリスクは勿論、142点のジェネラルですら1手番で落とせそうですね。

でもまずは大司教が【ヴォーパルウェポン】SSでダメージ+8にします。【ビートルスキン】等を使い、【怒涛の攻陣U:旋風】で命中力+1。

ゆんと伯爵に【ブレスU】で能力値を底上げして《銀鱗の魂》を宣言。《ポーションマスター》で【アンチマジックポーション】を飲んで魔法ダメージに備えます。


バトエルデン「あ、せっかく20m距離からバイクで駆けつけたんだ。【チャージ】しとこ。本体を狙います。防御ファンブル来ないかなー」

【チャージ】は「移動距離/5」点だけダメージを上げて近接攻撃する主動作型の騎芸です。この場合+4点、普通に攻撃するのなんて久しぶり。

でも主動作で【ブレスU】を使っているので本来はできないんですよね。ただし騎芸【縦横無尽】を習得していたとしたら話は別です。

これは【チャージ】後の主動作を可能とする常動型の騎芸です。本来の主動作で【チャージ】し、【縦横無尽】の効果で【ブレスU】を使ったとするなら可能ですね。

なおこの攻撃はジェネラルが思わず《かばうV》を使ってかばってしまいました。《ガーディアン》はないのでこれはこれで敵の防御を剥ぐ支援ではあります。


それではゆんです。いつもの呪文を詠唱して【クリティカルレイ】Sも入れて《魔力撃》《鎧貫き》でアンデッドジェネラルを狙います。

1発目は見事に命中、素で回って62点素通し、残り80点。2発目も回って回って68点素通し、残り12点。残り攻撃回数は練技入れて6回……。

GM「うそん。あと12点」

バトエルデン「ワンツーパンチで130点持っていったぞ、今」

マイザール「まっくのうち!まっくのうち!」

フェルディナント「まっくのうち!まっくのうち!」

そして3発目の攻撃もやっぱり命中。アンデッドジェネラル型分体撃破。しかもまだ《ファストアクション》と練技がある。


ゆん「返す拳で、サファイアバジリスク!もうコア部位ぼっこぼこでいいよね?」

2回目の主動作1発目は命中して回って59点素通し、残り40点。2発目と3発目は惜しくも外れでした。

しかし【フェンリルバイト】が命中して36点抜けて残り4点。本編だと5点になっているのでどこかで計算を間違えているかも。

最後に【バルーンシードショット】がすどんと命中し、サファイアバジリスク型分体撃破。なんと一瞬にして本体は丸裸じゃないですか。


マイザール「これ、ボクら「勝ち」じゃないですか?

バトエルデン「分体再生してくるんだろ?」

マイザール「いや、そっちを封じるんですよ

《終末のオーラ》は死ぬといっても7ラウンドの猶予があるし、抵抗すればもっと猶予は延びることに気付いたようです。

今までの火力を見ても分かるように1ラウンド150点程度のダメージは余裕で出るので、そのペースでも7ラウンドで勝利です。

そもそも25(32)なら魔符や【タフパワー】込みなら結構抵抗できるんですよね。魔法王の呪いなんて27(34)でしたし。


バトエルデン「後はその間に食らう魔法攻撃だが」

マイザール「うっかりクリティカルもらわなければ致命傷じゃないと思います」

敵の魔力は30、抵抗は難しいけど所詮は単部位。【カオスイクスプロージョン】ですら1発だと出目7で50点ですしね。

もちろんそれを甘く見るとまた魔法王の悪夢再来ですが、HPを高く保っていれば即死の可能性は低くなる。

【オーバーブロウ】は魔法王戦で嫌というほど食らったので、【テレポート】で対処しつつ隙を見て解除する方針でいきます。

ニディスニオには近接攻撃能力もないので《かばうV》はいらない。よって大司教は遠くから【レストレーション】で回復可能です。


思い返すとククすら倒した《終末のオーラ》のインパクトは凄く、ずっと封印するのはこの能力にすべきだと思っていました。

そこで土壇場になって《分体再生》なんてものが出てきたものだから慌ててしまいましたが、冷静に考えるとどっちを優先するかは明白です。

《終末のオーラ》はちょっとした誘導で、真に恐ろしい《分体再生》から目を背けさせるためにGMが用意した罠だったのかもしれませんね。


そうと分かった伯爵は色々入れて《魔力撃》《爆破・神鳴り》で本体を攻撃します。封印するのは《分体再生》です。

防護点25なので秘伝を活かせる丁度いい硬さなんですよね、饅頭のくせに。そこからの戦いは実に一方的なものでした。

1ラウンド裏にニディスニオは《限定魔法行使》で使えない【レストレーション】を引いてしまい、ノーダメージで手番を譲りました。


これで2ラウンド目以降に【ヘイスト】や【ソニック・ウェポン】までかける余裕を与えてしまったのだから、伯爵とゆんの火力は更に高くなりました。

「まっくのうち!」が60点、「大回転打法」が90点だのという防護点を無視する攻撃がニディスニオを襲いました。

これで150点なのにマイザールとジュエリィの魔法火力も手が空けば投入できるのだから、1ラウンドに200点出すことだって可能でしょう。


GM「なあ、この饅頭から手足生やしたらあかん〜?分体とは言わん、手足だけええんや」

マイザール「ダメです」

結局この神をも恐れぬ袋叩きは4ラウンド目まで続きました。1ラウンド平均250点のペースでHPを削られ大神ニディスニオ撃破!

予想よりも遥かに早い決着でしたね。仮に《終末のオーラ》の抵抗に全部失敗してもHP−25%程度。伯爵は念願の"神殺し"になれたのですね。


★神の後に切られるもの

フェルディナント「大神倒したりー!

ニディスニオ「ばかな、大神である余が、この程度の輩に〜。3000年後には覚えておけよ〜

復活する可能性はあるらしい。HPダメージだけで神が滅びるかは微妙なので予防線は張っておいたようです。

でも肝心の神様が全く活動できない状態が続いたら信者不足で自然消滅しそうだし、ユリスカロアより危機的状態に立たされそうです。

いずれにせよ現代のフェイダン地方からニディスニオの脅威は取り除かれました。分体はシナリオソースにしてもいいし、この瞬間消えたでもいいとか。


あとは冷凍状態だったズミーヤを解凍してあげます。誰かさんみたいに忘れられたNPCにはなりませんでした。

フェルディナント「お前が寝ている間に、我々は別の神を倒した。だが、その戦いでこの剣は疲弊した。再び力を取り戻すまで、神を殺すことはできん」

もちろん嘘ですが、そんな言い訳でズミーヤには《血風領》に滞在するよう誘い、彼女はそれを承諾しました。


打倒ユリスカロアを忘れたわけではないけど、13レベルの逸材をゲットです。

マイザール「生け贄としては完璧ですからね

フェルディナント「そっちの意味じゃねえ。ずるずる過ごしているうちに、こっちに馴染んでくれりゃあベストだが、どうかな?」

マイザール「ボクは、そんなことには期待しませんけどね。ただ、工夫もなく13レベルを野に放つよりはマシだと思います」

そんなこと言ってその内くっついてたら笑えますね。何か事件を起こしそうという意味ではマイザールの方がよっぽど危険だし(笑)

でも先制力的な意味でも重要な人材ですね、毎回SSカードを使うわけにもいかないし。先制力19あれば高位の蛮族相手にも素で先制が取れる。

不安ならSカードあたりを使えば23、ノワールでもなければ安定しますね。《ファストアクション》は自力で取らないと発動しないけど。




こうしてニディスニオの事件は終わり、英雄達は伯爵の結婚式まで思い思いの時間を過ごすのでした。

ゆん「式まで時間があるなら、ゆんはスピンブロッサム狩りして、戦利品の<回る花びら>を大量に集めておく」

こいつは3レベルの植物で、花弁を回転させて空を飛んで襲い掛かってきます。肝心の戦利品は9以上で入手できる意外と貴重なものです。

ゆんの場合は《トレジャーハント》と《トレジャーマスター》で+2できるから出目7必要。12体倒して7個手に入る感じです。

もちろんこんなのはゆんにとっては敵ではないので、群生地に突撃して生態系が変わる勢いで乱獲して大量に集めていそう。


ジュエリィはハル・クードとの約束があるので一度カイン・ガラに戻ります。

ジュエリィ「1週間、妖精学部と賢人学部の面倒を見よう。その後は、ぐーたら」

一応約束は守ったのか、ジュエリィにしては長持ちした方です。何だかんだで以前よりは気を使うようになってくれたらいいな。


大司教もルーフェリアに一度戻って内政に専念します。これが通常業務でしょう。

バトエルデン「「神ってこんなにかわいいもんだっけ」とか思いながら凄そう」

ゆん「デレた?」

バトエルデン「じかに大神の迫力に触れた後だとどうしてもなー。お前も早く大きくなれよ」

確かにあれは可愛くはないけど、そもそも神って可愛いものじゃないから(笑)


フェルディナント「俺様は、文字通り禊を済ませておこうか」

この時に【イレイス・ブランデッド】で穢れを除去しました。あの時は本当に衝撃的でしたけど、終わってみればあれが一番の山場でしたね。

エルダードラゴンもニディスニオも緊張感はあったけど苦戦はしなかった。再生したかつての強敵が一番厄介だったというのも乙なものですが。


しばらくするとルーフェリアやカイン・ガラに招待状が届きます。約束通りにセラフィナ自ら主催してくれたようです。

ジュエリィ「ハル・クードくん、一緒に行こう。いつも真面目に学校の用事ばかりやてったら疲れるでしょ」

バトエルデン「誰のせいだと思わず突っこみたくなるが、俺も出かけるか」

国事として執り行われるのでアイヤール各領の領主や重鎮、そして外国からも賓客を招く盛大なものになりました。

ゆんは高いところから<回る花びら>をばら撒き、マイザールは深智魔法の幻覚系の魔法を使って結婚式を盛り上げます。


通常の幻覚は8レベルの操霊魔法【イリュージョン】で作り出せますが、この厳格は触覚・嗅覚・聴覚までは欺けません。

ところが8レベルの深智魔法【サーマル・イリュージョン】で温度感覚を、9レベルの【タクタイル・イリュージョン】で触覚を欺けます。

これらはいずれも持続時間が1日と長く、また重ねがけが可能なのでフルに使えばかなりのものが再現可能です。音や匂いはないけど。


バトエルデン「これは、俺も奥義【コール・ゴッド】するべきだろうか?そして、丘一面の花畑で祝福すべきだろうか?」

そのために《生死判定》するのも怖いけど、大司教なら1ゾロ以外大丈夫。<奇跡の首飾り>もつけていれば連続1ゾロ以外大丈夫。

大神や古代神の術者の命をかけるものと違って小神は比較的気軽にできるのがいいですね。流石に祝福のために命を捨ててたら縁起が悪すぎる。


そうして式はつつがなく進み、セラフィナの挨拶が入ります。

セラフィナ「神を切った男にも、まだ切っていないものがあった。それは、決して一人だけでは切れぬものであるがゆえだ。それを、今から切ってもらおう」

そうケーキカットです。一人でも切れないことはないけど虚しすぎますから。ちなみに「10年待たせた男」と書いてあるケーキです。


フェルディナント「まさか、こんなところに神より強敵がいたとはな。だが、挑まれたら、この"闘神"退くことはできぬ。
          トレーシー、手を携えていくぞ。《魔力撃》《全力攻撃V》!

ゆん「ケーキ吹っ飛んじゃう」

バトエルデン「やめろ、花嫁が脱臼するぞ」

フェルディナント「ふう、勝った」

マイザール「ケーキカットにまで勝たなくていいでしょうに」

フェルディナント「常々言ってるだろう、勝つことは王の義務なのだと

これにはセラフィナもこめかみを押さえて頭痛に耐える。結婚しても伯爵のこういう所は変わりませんね。

"闘神"という称号は最初彼自身を指すと思っていたけど、今になってみると「神と闘う者」という意味でもあったのかもしれない。


そうして式は終わり、最後はブーケトスです。

ジュエリィ「ワタシはパス」

ゆん「ゆんはそういうのよくわからない」

GM「女帝が取るわけにもいかんしなあ。では、ズミーヤが取るか」

ジュエリィ「そして、あざとく目線を送る」

マイザール「【デモンズシード】が入るなら考えましょう

フェルディナント「やれやれ、マイザールは相変わらずだ」

こうして英雄達の三度目の事件も無事に終了し、"神殺し"の称号を手に入れたのです。この偉業は末永く語り継がれることでしょう。

伯爵とトレーシーの問題も解決。最初の事件からずっと引っ張ってきたことだけに無事にめでたい形に収まって良かったですね。

大司教やジュエリィの人間関係は少し進展して、マイザールは本人同様波乱を予感させる人が身近に増えました。ゆんはいつもどおり。




以上でこのシリーズも一応の完結になるそうです。シリーズそのものに幕を降ろすために必要なことをシナリオに組み込むあたりは流石でした。

第三話でそれぞれが抱えている問題に向き合い、答えを出すことでラスボスとの戦いを有利にしていくのは上手い展開でしたしね。

色々しがらみのある大司教、伯爵、ジュエリィと違ってゆんは本当の意味で自由人なので直接絡んでこなかったけど。

マイザールはズミーヤを早々に封印していなかったら何かあったのかな。それはそれで見てみたかったような。


シリーズを思い返すと「滅びのサーペント」を最初に雑誌で読んだ時の衝撃は忘れ難い。ここまで続く程に人気が出たのも頷けます。

"バブリーズ"のようにインフレを楽しむシリーズなんですよね。それを更に過激に極端にしたようなものです。

リプレイはプレイの例示という意味もあるというのが昔から言われていますが、特殊な遊び方だってそれに含まれるはずです。

お金を湯水のように使ってやりたい放題、超高レベルでやりたい放題、こんなに極端な環境でも遊ぶことはできる。

常識の壁を打ち破り、マンネリを打破し、新しい世界へ飛び出すことの面白さをこれほど身を以って教えてくれるリプレイはそうそうない。

「次は何をするんだろう?」「こんなのどうやって解決するんだろう?」「お前は何を言っているんだ」そんな驚きに満ちていました。


もちろんこれが彼らの最後の物語とは思えません。今後何かの事件があればまた世界の危機に挑むこともあるでしょう。

再開を望む声は完結後も多いようだし、清松先生から「四足のサーペント(蛇足)」なんていう冗談が飛び出したりもするし。

改訂騎乗ルールが出た時なんてサイドカーに乗った伯爵が大暴れする構想とか出てくるし、本当に見てみたいものです。

ライダー技能が超強化されたので大司教とクラウンの活躍も見られそうだし、プロセルシア地方の流派も使えればどうなるんだろう。

毎年増えていくサプリの内容を高レベルでもフォローできる貴重なシリーズだけにいずれ実現したらいいなと切に願います。


そんな彼らとの再会を期待しつつ、このレビューも一応の幕とさせていただきます。






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