「新米女神の勇者たち(6)」著:秋田みやび/グループSNE 出版社:富士見書房
★成長申告……そして+α
今回の能力値の成長は以下の通り。
ジーク:敏捷度19→20
ソラ:知力21→22
エア:精神力27→28
メッシュ:敏捷度15→16
ムーテス:敏捷度14→15
メッシュは腕輪込みでボーナスがブレイク。先制力が上がりましたが、回避力低下を恐れて割り惜しみするかも。
ソラは腕輪さえ入手できればボーナスがブレイクしますが、前回の終わり方を考えると買い物は難しいかもしれない。
技能の成長ではジークがファイター7→8、エアがプリースト7→8と順当に成長しましたが。
ソラ「22までいったから、腕輪がほしいー。切実にほしい。でもって、フェンサー5にアップ!」
ジーク「あの成長はいいのか、お姉さん」
エア「いいの、もう。いっそ5レベルまで上がれば、一撃では死ななくなってると思うし」
ソラ「でも、防護点6しかないのよ」
エア「……(硬直)」
メッシュ「何を言ってるのです、私の倍もあるじゃないですか!」
エア「あ、ちょっと落ち着いた。そうね、うちの妹よりもあのポンコツの記憶が一年飛ぶほうが早いわよね」
そのメッシュは久しぶりにマギテック2→3と上げました。これで"エフェクトウェポン"とか使えますね。
武器に属性を付与する魔動機術であり、弱点を見抜ければそれを的確に攻めることも可能となります。
ただし《魔法拡大/数》はないので全員にかけるのは難しい。かといって現在の彼にそれを取る余裕もない。
グラップラーは9レベルになると宣言形の戦闘特技が3つも覚えられるようになるし、どうせならそっちを取りたいところ。
成長申告は以上ですが、今回からサプリメントの「アルケミスト・ワークス」のデータが導入されるようになります。
これによりぞんざいズはそれぞれ一般技能を覚えていたことになり、種族特徴が強化されるようになりました。
ついでに装備のランク効果も導入されるのでムーテスが死神気分に浸っていた<デスサイズ>も使い難くなりますね。
まずは一般技能です。冒険者技能とは異なり様々な職業に対応した技能で、SWの頃から御馴染みですね。
ルールブック発売時には記載されていなかったのでどうなるかと思いきやちゃんと公開してくれました。
今回ぞんざいズは自分のこれまでの人生を振り返り、的確と思える一般技能を習得していたことにします。
ジークはマーチャント(商人)1のみです。実家は商人なのに途中でドロップアウトしましたからね。
メッシュはハウスキーパー(家政夫)4とバトラー(執事)1。家政夫の方が高いのがいかにもメッシュっぽい(笑)
エアは同じくハウスキーパー(家政婦)4とナース(看護士)1。前者は実家の、後者は神殿の用事で身についたのでしょう。
そしてムーテスもマーチャント(商人)は取っています、4レベルとそこそこ高く。
ムーテス「このパーティに入ってから学んだに違いないベガー(物乞い)1レベル」
一同(爆笑)
メッシュ「いや、失礼。マーチャントは今までの経歴からわかるとして……」
ジーク「何で物乞いを学んでるんだよ!」
ムーテス「いや、気が付いたら低姿勢で奢ってもらったり色々と経験を積んだから」
それが1レベルのまま終わってくれることを祈っています。今回は下手したら囚人(プリズナー)とかも取りかねない。
ソラは2レベルのリンギスト(通訳)を筆頭に、1レベルのバウンサー(用心棒)やペインター(絵師)に加えて……。
ソラ「ブルワー(醸造家)、ディスティラー(蒸留酒造家)……えーと、それから」
ジーク「多ッ!」
エア「ていうか、なんで密かにお酒造ってるの!」
ソラ「お水のきれいなところは、お酒が美味しいのよ、お姉ちゃん」
エア「理由になるかー!」
発酵に留まらず蒸留までやってるとは、実家でそこまでの作業ができるのか。秘密の工房でも借りてるのか。
続いては種族特徴の強化です。各種族は6レベルと11レベルに達した時点でその種族特徴が強化されます。
今までのぞんざいズはとっくに第一段階の強化に至っていたのですが、ルール的に採用していませんでした。
まず人間であるジークは〔剣の加護/運命変転〕後の出目を+1にすることができます。
よって変転後の彼の出目は最低8となり、期待値以下さえ出なければ大丈夫という局面を一度は確実に乗り切れるわけですね。
ただし威力表における出目は最大12なのは変わらないし、6ゾロを1ゾロにした時は自動的失敗となる。
ナイトメアであるソラは〔異貌〕時の近接攻撃、射撃攻撃、攻撃魔法のダメージ+1です。
エルフであるエアは手を繋いだ人に〔剣の加護/優しき水〕の効果を与えるというものです。
ルーンフォークであるメッシュは〔HP変換〕を補助動作で行えるようになりMP切れにも多少対応できます。
リルドラケンであるムーテスは〔剣の加護/風の翼〕の最大移動速度が全力移動と同じになります。
あとはアルケミスト技能なんかも習得しようと思えばできるのですが、今のところ誰も取りませんね。
アイテムを加工するルールなんかもあるし、戦利品をカードにできるし、色々面白い技能なんですけどね。
以上のように今回は大きな変化を迎えましたが、前巻で蛮族に投降した彼らには良い事ばかりではない。
例えば合計名誉点が535点に達して「都市レベルの有名人」となった彼らですが、悪目立ちしかねない。
ソラ「おい、あいつら蛮族に捕まりやがったぜ」「はっはっは、間抜けだなあ」
エア「う、うん、そうね。そっち方面での有名もあるのかしらね」
武装も解除されれば専用装備もなくなり、合計名誉点の減少を招くわけですね。
しかし彼らのお陰で謎の多い蛮族社会の様子も見ることができるし、ある意味オイシイ展開なのかもしれない。
★蛮族の街へ――ゼルブリス
前巻でフィルゲンの捕虜となったぞんざいズは手始めに武器を取り上げられてしまいました。
GM「鎧は……」
ムーテス「大丈夫!僕、長い間鎧着っぱなしだったから、すでに鱗が鎧に癒着してるし!」
GM「してない」
能力が使い難くなった<デスサイズ>はともかく、鎧は以前脱いだだけで一気に弱体化したことがありましたから。
もし鎧と盾、ついでに装飾品の<ブラックベルト>まで取られると防護点は18→1というストップ安ですもんね。
ムーテス「これは僕のアイデンティティーであり、パーティの財産なんだよー!」
ジーク「……トカゲ脱がしても、美味しくないし」
ムーテス「そうだよ、美味しくないよ!」
でも元々防具類までは取り上げるつもりはなかったようです。この場にはフィルゲンとラミアの2人しかいませんしね。
<デスサイズ>だけでも結構嵩張るし、武器の必要筋力を合計すると結構な重さになりそうですしね。
この上武器以上に重たい上に嵩張る鎧なんて取り上げても運べないし。まぁ捨てるという方法もありますが。
武器を取り上げるとぞんざいズは縄をかけられ、その端っこを生き残ったラミアが持って引っ張っていきます。
メッシュ「ああ?お前何様?」
ラミア「う、う。い、言っておくけど、変なことしたら、フィルゲン様に言いつけるんだからねっ」
前回目の前で上司のイエティや同僚のラミアを殺されましたからね。かなり怖がっているようです。
それを悟ったメッシュはその辺の木をがあんっと蹴ってビビらせたりと、チンピラっぽく嫌がらせをします。
本当ならフィルゲン並みに強くないとこの連中を抑止できないんだし、応援を呼んだ方がいいかもね。
こうして移動できるようになったフィルゲンはルーフェリアから見て北東の方角へと徒歩で向かいます。
本当なら1人で飛んでいった方が楽なんですが、ラミアだけにこいつらを任せたりしないできる上司でした。
やがて迷路のように入り組んだ峡谷へと入っていき、道案内役と思われる1人のワイルドな男性と合流します。
一見人間に見えても姿なんてアテになりませんが、《真偽判定》も《魔物知識判定》もやりませんでした。
そうして峡谷を進むと大きな観音開きの扉が見えてきます。蛮族の姿もチラホラあり、彼らの街の入り口らしい。
コボルド「あー人間だー」
ジーク「そうだ、人間だ。堂々としているぞ」
ソラ「あ?何見てんだよコラ」←汎用蛮族語
エア「……何を言ってるのかわからない。わからないけど……
今一瞬、妹から品がなくなったのはわかるので、さめざめ泣いています」
メッシュ「何言ってるんですか。貴方の妹に品のあったことなんてないでしょう」
姉妹「てい(ダブルチョップ)」
メッシュ「うおおおおっ、頭が割れるように痛い〜〜〜」
人間の姿を見た蛮族達の「ディナーディナー♪」という嬉しそうな声を聞きながら、一行は門を潜ります。
そして大階段を降りて地下へと潜り続けると、やがて地下に広がる街へと辿り着きました。
魔動機文明時代の蛮族は<守りの剣>の力によって地下に潜んでいたといいますが、その名残のようです。
この街は"遺跡都市"ゼルブリスといいます。「フェイダン博物誌」に詳しい歴史なども載っていますよ。
元々は何かの遺跡であり、それを改造して地上から逃れた様々な種族の蛮族達が住むようになったようです。
現在は人口が飽和状態のため、その解消のためにルーフェリアへと侵攻しているという事情があるらしい。
ちなみにアイヤールの東にある"紫闇の国"ディルフラムからは独立していますが、繋がりがないわけではないらしい。
勿論街のトップはフィルゲンであり、彼の姿が見えると蛮族達も一斉に道を開けてお迎えです。
「おかえりなさいませー」という声にも鷹揚に応えたりと、相変わらずできる上司っぽい。
逆に言えばそのフィルゲンの持ち物であるぞんざいズはその辺の蛮族では手が出せない状態でもある。
ソラ「キミたち、日陰の暮らししてたのねーと、同情してる」
これはフィルゲンも否定しませんでした。「大破局」の時にもここから外へと攻勢をかけたようです。
フィルゲン「まあ、あの頃はバロンだったな」
ジーク「で、「外だーひゃっほーい!」と出てきたら、その先にはドームがあったと」
湖に面した美しい国を征服してやろうと思ったら、いきなり女神が降臨したりと大変だったようです。
つまりフィルゲンと大司教はその頃からのライバルでもあると。色々あったのかもしれませんね。
ちなみにフィルゲンの年齢は470歳で大司教は321歳です。当時の大司教は本当に若者だったのです。
そんな思い出話をしつつ、フィルゲンは世話係のコボルドを呼んで首輪を持ってこさせます。
コボルド「かがめー」
ジーク「ほーらほらほら、ここまで登ってこーい」
コボルド「と、届かないッ!フィルゲンさまーこいつらいじわるですー」
手先が器用だから世話係には適任ですが、反抗的な捕虜の世話をさせるのはちょっと難しいかな(笑)
ムーテス「僕はそのコボルドを抱えあげて、首まで近づけてあげるよう」
エア「あんた蛮族の手先!?」
ムーテス「ちがうっす!ただ、お金がかかってるんっす!装備とか剥がれたら困るんで!」
エア「つまり、お金のためなら蛮族にも魂を売ると!……なんだか、倒さなくちゃいけない敵のような気がしてきた」
ソラ「まあ、お金がないと魂が死ぬらしいから」
ムーテス「売ったふりはいくらでもできるよ。そして、それを生涯続けることも僕は厭わない」
エア「……つまり、魂の空売り?」
この首輪は首の装飾品として扱われ、奴隷の身分を証明すると同時に奴隷の首を絞め殺す機能があります。
「ミストキャッスル」では<奴隷の首輪>として登場しましたね。首輪毎に模様が異なり主人を識別できるんだとか。
首輪には魔法がかけられており、主人の持つ鍵がないと外すことはできないようになっています。
首を絞める機能は主人のみが知る合言葉で発動し、一定の範囲から外に出ても発動する仕掛けになっていました。
もちろん今回登場した首輪もこの街から逃げようとすると絞まる仕様です。
メッシュ「なーに、いざとなればルーンフォークは首を外して回避すればいいのですよ」
ジーク「ああ、そういえば昔はよく首を外して遊んでたよなー」
GM「やめて。信じるからやめて」
ただし「ミストキャッスル」と完全に同じとは限らないと後に判明します。
ここまでやった時点でフィルゲンは席を外します。現在武器のみ取り上げられており、防具と装飾品は手元にある。
フィルゲン「あとは頼む」
一同(にたぁり)
メッシュ「……くくく、ということは我々の傍にいるのはラミアのみ(邪悪な笑み)」
ところがラミアだけではなく先程のワイルドな男性もいます。改めて判定をして正体はワーウルフと判明。
ワーウルフは8レベルの蛮族であり、普段は人間の姿で《獣化》することで獣人になるライカンスロープの一種です。
ライカンスロープには変身する獣に応じて様々な種類がいますが、上半身が狼になる者がワーウルフと呼ばれます。
《二回攻撃&双撃》や練技"ストロングブラッド"、"ビートルスキン"に加えて《通常武器無効》の能力を持ちます。
《獣化》していると爪による攻撃が可能となり、満月の夜は《獣人の力》により命中力・回避力+1です。
ただし太陽の下では逆に命中力・回避力−1のペナルティが課せられます。上下関係の厳しい氏族社会を営みます。
また独自に繁殖することができず、人間を攫って特殊な儀式で仲間を増やし、人族社会に紛れ込んでいることがあります。
ちなみにライカンスロープもPCにすることができまして、穢れは2点と<守りの剣>の影響も少ない。
弱点が銀の武器である点はナイトメアと同じですね。ただしナイトメアが+2点なのに対しライカンスロープは+3点。
あとPCの時には《通常武器無効》がなく、通常武器に対してはレベル分防護点が上昇するという仕様になっています。
ワーウルフでもワータイガーでもワーラットでも数値的な影響はありません。クリスタニアほど個性的ではないのです。
彼の名前はオスカーといいます。ぞんざいズの面倒を見ることになったそうです。
ソラ「あたし、銀の武器は、この世からなくなればいいと思うの」
オスカー「よう、お前話せるな。銀貨以外の銀は消えてもいいと俺も思う。
まあ、しばらくお前たちの面倒を、オレが見ることになったから」
ムーテス「あ、よろしく。ムーテスです」
ジーク「ジークです(お辞儀)」
ソラ「お腹空いたの」
オスカー「ああ、そうか。じゃあ休憩場所に行ったら、何でも好きなもの頼んでいいぞ」
ソラ「気安ッ!」
奴隷の体調管理も彼の仕事です。奴隷を飢えさせて働けなくさせるような愚は犯さないのです。
ジーク「俺たち、何の仕事をさせられるんだ?」
オスカー「うん、詳しくは知らないが……誰か、殺しに行かせるみたいだな」
ジーク「うわ。あっさり」
エア「『誰にでもできる簡単な仕事です』レベルにあっさりとしてる」
この辺は流石に蛮族ですね。何だかぞんざいズもすっかり馴染んでいる気がするけど。
オスカーが案内してくれたのは街の中心から少し外れた天幕で、奴隷用宿舎のようなものでした。
中には数組の人族のグループが寝泊りしていて首輪もつけられています。既にすっかり覇気もなく疲れきった様子。
彼らはその辺から掴まってきた兵士や冒険者のようです。ただしぞんざいズほどレベルは高くなさそうです。
オスカー「じゃあ、ここで好きに何でも食べてくれ」
エア「……何このメニュー。「牛」「豚」「鳥」「肉」」
ソラ「最後の一個、猛烈にいやー!」
メッシュ「そりゃあ、あれでしょう。我々でいう肉がイコール牛であるように。蛮族が言う肉といえば……」
あとは虫のスープとか雑草サラダとか。多少ゲテモノはあるけど人間が食べられるものを用意しているようです。
ここは肉体労働用の奴隷の宿舎なので健康を維持できる程度のものは出してくれるようですね。
ちなみに頭脳労働用の奴隷には文章を読ませたり計算をさせたりしているらしい。蛮族はデスクワークとか苦手そうですね。
この状況を見た例のラミアはざまーみろといった感じでした。
主従&ソラ「ギロッと睨む」
ムーテス「あ?一緒にどう?とか誘って、ラミアのおかずをもらう」
エア「ムーテスくん、逞しいわね」
ムーテス「もう、失くすモノは命くらいしかないからね。何しろ地位が暴落するのは二回目だ」
ソラ「成功者ムーテスから冒険者。で、奴隷」
ムーテス「また冒険者に戻れれば、大成功だね」
メンタルが強いんだか弱いんだかよく分からないトカゲですね。
先輩の奴隷に話を聞いてみると、掴まった後にはまず戦わされて強さを測られるそうです。
奴隷「きれいなねーちゃんとかは、また別の場所に連れて行かれたりしたよ」
ジーク「まあ、俺たちのパーティに綺麗なねーちゃんなんていないからな」
ムーテス「不幸中の幸いだったよね」
エア「……今、私たち車座で話してるわよね(にこやか)」
ソラ「乱戦エリアを形成、《マルチアクション》で"ブラスト"&素手パンチ(さわやか)」
ジーク「な、何言ってるんだよ、お前たち、俺よりずっと年上じゃないかー」
ソラ「もう一発"ブラスト"ー!」
外見ではなく腕を認めているとフォローするムーテスでしたが、乙女心にそんなのは通用しません(笑)
他に先輩奴隷から聞いた情報では、有力者に気に入られると個人所有の奴隷になれるというものもありました。
既にぞんざいズはフィルゲンの個人所有となっていますが、ここにいる奴隷達はそうではなかったのですね。
有力者の所有物になれば野良奴隷よりも身分は保証されそうですね。奴隷の鎖自慢になる気もしますが。
実際こうしていてもオーガとかが彼らを値踏みしてきますが、首輪のフィルゲンのタグに気付くと踵を返します。
「ミストキャッスル」では模様で主人を識別していましたが、この街ではタグで管理しているようですね。
メッシュ「偉そうにしていよう、私たちはこの街の支配者であるフィルゲンのものなのですよ!」
ジーク「あ?俺たちを誰のものだと思ってるんだ?とか言いながらオーガのむこうずねを蹴っとくか」
ムーテス「はっはっは、いや気にしなくていいよオーガくん。
知らなかったらしょうがないからね、次からは気をつけてくれれば」
いきなり順応してるし、流石はぞんざい。何だか人族の街にいた頃よりも偉そうです(笑)
あとはこの街にはフィルゲンをトップにして四組の幹部がいるという事も聞けました。
ぞんざいズによってフィルゲン四天王とか名付けられました。現在その内の一組がルーフェリアに侵攻しているとか。
オスカー「とりあえず、今日はゆっくり休むといい。明日あたり、多分力試しをさせられると思うからな」
そう言いつつちゃんと寝床を用意してくれたりとマメな人です。もちろん個室なんて上等なものはなく大部屋ですが。
オスカー「まあ、これくらい元気なほうが扱いやすい。すぐに病気になって、神官を呼んだりせずにすみそうだし」
エア「神官はわたしです!なめんな、病気ぐらい治せます!(キー)」
オスカー「まあ、何にせよ、元気な奴のほうがいいさ。前に連れてこられた奴も、かなり活きがよかったが……」
話を聞いてみると、それは男のグラスランナーで料理が上手だったとか。ピンポイントで思い当たる人物がいますね。
ジーク「まさか、イストか?……あいつ、何やってるんだよ」
エア「そりゃあ……好奇心、グラスランナーを殺す、を実践しちゃったんでしょ」
ソラ「「あ、こんなところに扉がある、何かな?入ってみよーっと」って感じ」
彼は色々役に立つのですぐに個人所有になってしまったそうです。
現在の主人は四天王の一人でもあるこの街の有力者、オーガバーサーカーのレオルズです。
オーガバーサーカーは11レベルの蛮族であり、オーガの上位種にあたります。
魔法も変身能力も使えない代わりに通常のオーガを二回り上回る体格を持ち、戦う事だけを生甲斐としています。
特殊能力は同じ対象に最大3回攻撃が可能な《連続攻撃U》と、追加ダメージ+12点の《全力攻撃U》です。
知能は低いのでドレイクやオーガに利用されることも多いという、脳筋にも程がある狂戦士ですね。
エア「へー。オーガの上位種。でも頭悪そうな名前よね。オーガバーカーサー」
ソラ「えーと……肉として売れたんじゃないのね?」
歌が上手かったり、料理ができたり、すばしっこかったりと、色々できるから気に入られたらしい。
レオルズ自身は自分の頭の悪さを自覚していて、それだけに頭のいい人には憧れているそうです。
もちろん純粋に強い者も好きという戦闘民族っぷりなので、ことによると腕試しを挑まれかねない。
エア「ふふ、では試されてあげようじゃないの。我ら五人の中で一番の小物、メシュオーンが!」
メッシュ「…………え?」
ムーテス「……うん、まあ、それはしかたないかな」
エア「あら、誰も否定がなかった。ジークは否定しないの?」
ジーク「え?俺?……えーと、そうだな(視線逸らし)うちのパーティで一番なのは、やっぱりメッシュかな」
メッシュ「がーん!ジークさままで!(ちらり)……ムーテスくん?」
ムーテス「な、なんですか。メッシュさん!」
ソラ「うちのパーティの序列がよくわかるの」
その後体調を崩さないか目標値12の生命抵抗を行いましたが、この連中がそんな繊細な筈がなく全員成功。
何やら翌日の作戦会議などもしつつ、奴隷生活の第一日目の夜は更けていきました。危機感なし、緊張感なし。
★力試し、腕試し
翌朝、オスカー同様に監視役兼世話役をしている例のラミアがやってきました。
ソラ「ラミアラミア、なんで蛮族のあんたたちって、ルーフェリアが欲しいの?」
ラミア「えー。そりゃあ、いい土地じゃない。明るいし、水はいっぱいだし。奴隷にできそうな人間はたくさんいるし」
メッシュ「エルフなんていう珍味もいるし」
ラミア「そうそう」
エア「いい国なのは認めます!が!珍味って何!」
だから国を落とす為には女神を排除した方がいいと、ルーちゃんの誘拐にも加担していたわけでしたね。
あとは大司教がいるのが厄介ですが、例の暗殺ミッションで大司教をターゲットにしろとか言われても無理です。
とはいえルーフェリアに潜入するには適任ではあります。それなりの信頼も実力もありますしね、投降がバレていなければ。
ラミア「よく知らないけど、フィルゲン様の言うこと聞いて、しっかりお役に立ってくるのよっ」
メッシュ「ふ……なんでしたら、私たちが出世をした暁には取り立てて差し上げてもいいですよ。ラミアさん」
ラミア「そんな……そんなこと言っても、絆されたりなんてしないんだからねっ(ぷい)」
ジーク「おおっ、典型的ツンデレだ!」
メッシュ「ふふふ、可愛いやつよのう」
昨日まではビビっていたラミアさんなのに、いつの間にやらちょっと馴染んでいるのは微笑ましい限り。
蛮族は個人主義だから仲間の仇とかいう概念はあまりなさそうですが、それにしてもいい感じのデレっぷりです。
ジーク「そうかー。メッシュの好みはツンデレなんだー」
ソラ「違うと思うのよ、お兄さん。メッシュさんの好みは足の少ない人。だって多いと投げられないから」
ジーク「え、投げてどうするんだよ」
エア「……そりゃあ転ばせて」
一同「……………………(沈黙)」←想像中
あとは部位の少ない人ですね。足の数は八本以下、部位数二以下ならストライクゾーンです(笑)
そうしているとオスカーもやってきて朝食を運んできてくれます。
オスカー「よう、起きていたか。しっかりと腹ごしらえしておけよ」
ジーク「……なあ、お前、ちょこーっとでもフィルゲンがいないといいなーと思ったこととかあるか?」
メッシュ「直球キタ!」
ところがこれが結構いい所にスパーン!と入りまして、オスカーは黙り込んだかと思うと複雑そうな表情を浮かべます。
オスカー「……まあ、俺には俺の集落があるからな。そっちを平和でいさせてくれる総領なら、誰でもいいってのが本音」
元々彼らの一族はあの峡谷に住んでいましたが、圧力をかけられる前に進んでゼルブリスに協力しているのです。
そちらの方が自由が認められるという打算ですね。そして今は女子供は山間の集落に移住しているといいます。
ここでぞんざいズはピーンと来ました。前話で山の中で見つけた集落、あれこそがワーウルフの隠里だったのです。
ムーテス「僕たち、オスカーの仲間入りフラグをへし折った?」
メッシュ「いえ、わかりませんよ。もしかしたら、そのとき立ち寄っていれば何らかの拍子に敵対し、
「貴様らあの時の!」とばかりにずっとここで虐待される運命だったかもしれません」
どうなったかは今となっては分かりません。選択しなかった道に何があるのかは神(GM)のみぞ知る。
人間がすべきことは選ばなかった道を想像することではなく、選んだ道を歩き続けることなのですから。
エア「あれ?でも、あなたワーウルフなんでしょ?《大破局》前から、この遺跡にいたんじゃないの?」
オスカー「生憎と、自分たちは人族とあまり変わらない姿をとれるんでね」
穢れが2点の彼らはその気になれば<守りの剣>の結界内に入る事もできますからね。
蛮族である彼らですが、蛮族に味方することもあれば、人族に味方していた時もあったのでしょう。
魔動機文明時代には同じ蛮族でも穢れの有無で種族毎に最も適した生き方があったのでしょうね。
出発前にオスカーの持ってきた朝食を食べておきます。メニューはサンドウィッチ的な何かです。
ムーテス「ねえ、オスカーくん。別に君を疑ってるわけじゃないんだけど、このサンドウィッチ一口食べてくれないかい?」
ソラ「どこが!」
エア「超うたがってるし!」
オスカー「かけらも信用されてねーなあ」
するとオスカーはムーテスの分のサンドウィッチを鷲づかみにして丸ごと口に押し込む。
ハムスターの頬袋のように口の中をパンパンにしつつ、「喰った」とVサイン。普通に美味しかったらしい。
ムーテス「あぁあああああ……(超へこみ)」
一口は一口ですから。リルドラケンの体格を考えると人間より食べる量は多そうなだけにショックも大きいか。
朝食を終えるとオスカーはぞんざいズを街の中央に作られた闘技場のような場所に案内します。
専用の建物があるわけではないようですが、蛮族なだけにこういう場所が必要なんでしょう。
これからぞんざいズはここで仕事の前の腕試しとして飛び入りの蛮族と戦わされることになっています。
誰と戦うかは「ミストキャッスル」に収録されている「上位蛮族遭遇表」によって決められます。
ソラ「うわ。ジェイド・バジリスク出た!……ってことになったら、どうするの」
GM「出ないことを祈ります」
大丈夫、一回目からは出ません。この表には1〜7の出目が割り振られていて、ジェイドバジリスクは7です。
これは1〜6までの全てを倒した場合に登場するという意味です。そもそもフィルゲンより高レベルですしね。
ちなみにどんな奴が出るかというと以下の通り。
1:トロール(6レベル)
2:ケンタウロスインペイラー(6レベル)
3:バジリスク(8レベルの人間形態のみ)
4:フェイスレス(8レベル)
5:シザースコーピオン(7レベル)
6:ヘルスキュラ(11レベル)
これに加えて手下を引き連れている場合もありますが、ヘルスキュラ以外は十分倒せる相手です。
ヘルスキュラは死闘になるかもしれませんが、そんな高レベルの奴がいたら四天王になってそうなものです。
そうして出たのはフェイスレスです。ペットにあのアルケミートゥースも連れています。
表ではガストナイト×4が手下となっているので色々アレンジしているようですね。
ペットのレベルの方が高いのも面白いのですが、実はぞんざいズは<黄金の血清>を持っているので怖い相手じゃない。
フェイスレスは8レベルの蛮族であり、白い仮面のような顔に細身で2mほどの長身で一冊の本を持っています。
魔法文明時代の人間が穢れて生まれたとも言われており、実験するように敵味方問わず魔法を使うこともある。
蛮族の世界においては軍師となっていたり、邪悪な魔法の研究をしていたりするという道化師のような魔術師です。
能力的には真語魔法/操霊魔法6レベル(魔力9)に、《魔法適性》として《魔法制御》や《鷹の目》に各種《魔法拡大》。
《ひらめき》によって真語魔法or操霊魔法or基本神聖魔法8レベル(魔力11)のどれかをランダムで使えるようになります。
「バルバロステイルズ」以降は《複数宣言=2回》が追加され、通常1つまでの宣言型の能力を2つまで宣言可能です。
これに伴い補助動作で行われた《ひらめき》も宣言型となり、《ひらめき》+《魔法拡大》とかも従来通り可能になります。
ラミア「まあ、せいぜい死なないように頑張んなさいよっ」
オスカー「これで生き残れば、この街をある程度自由に動けるようになるからな、鎖なしで」
エア「それは大きい」
ソラ「目指せ、自由への第一歩」
メッシュ「ふ。生き残ったら、貴方の名を教えてもらいますよ……と、ちょっと死にフラグっぽくしてみる」
オスカー「え、俺、オスカー」
メッシュ「お前と違うわァあアッ!(錯乱)」
戦う際には取り上げられていた武器も返してもらえます。フィルゲンも一番高い建物の窓から観戦中です。
ジーク「そこで見ていろ、フィルゲン!まずは……薬を飲むぞ!」
エア「台無しすぎる」
先制は先制力の上がったメッシュが取り、ぞんざいズのゼルブリス・デビュー戦の開始です。
1ラウンド目
前衛は血清を飲んで行動終了。ソラは客席まで"ライトニング"ぶちこみたいとうずうず。
エア「えー……いらない敵は増やすべきじゃないと思うけど」
ソラ「けれど、闘技場にこうして上がった以上、あたしたちはエンターティナー。
「異貌」完了。そして"ライトニング"!」
30m届く稲妻は観客席を直撃し、怒りに燃えるバジリスクさんが乱入してきました。
このトンデモっぷりにフィルゲンはひっそりと笑いを堪えていたといいます。
ソラ「帰ってたのね。フィギュア職人!」←別人です
ムーテス「大丈夫、バジリスクは大物だよ。"ライトニング"一発食らっただけで殴りかかってきたりしないよ」
メッシュ「ムーテス、貴方は"ライトニング"がいきなり自分に飛んできても、平静でいられますか?」
ムーテス「そんなのいきなり<デスサイズ>解放して、殴りかかるに決まってるじゃないか。
なんで平静でいなくちゃいけないんだい?」
そしてエアは今回覚えた"フィールド・プロテクションU"です。
今やすっかりお馴染みとなった"フィールド・プロテクション"の強化版で物理・魔法ダメージ−2です。
あとメッシュのみ《ファストアクション》で血清を飲んだ後にアルケミートゥースに殴りかかりました。
フェイスレスは前衛に"アシッド・クラウド"です。毒なので"フィールド・プロテクションU"は無効です。
こちらは8レベルの操霊魔法で空気を威力20の酸に変えます。ちゃんと《ひらめき》も使っていますね。
アルケミートゥースはメッシュに反撃するも《カウンター》を食らい、バジリスクは乱入して終了。
2ラウンド目
バジリスクは今度こそ変身前に倒そうと、恒例の《投げ攻撃》&《踏みつけ》&《魔力撃》の主従コンボが炸裂。
ソラ「じゃあ、あたし。全員に"リープ・スラッシュ"」
一同「えええー!」
ジーク「全員っ俺たちもか?」
エア「ソラ、そんなにお姉ちゃんが憎いの!?」
ソラ「何、あたしそこまで信用ない!そのつもりなら闘技場に"ファイアボール"撃ち込むんだから」
結局ソラはエネボを撃ち、ムーテスの一撃も入ってバジリスクは一回も行動することなく撃破。
ソラ「じゃあ、次は別の方向に、間違えたふりをして"ファイアボール"を……」
エア「やめなさい!」
フェイスレスは前衛に"エネルギー・ジャベリン"を撃ちこみますが、揃って抵抗して耐えました。
8レベルの真語魔法で威力40のマナの槍を発射するというもの。SWでいう"バルキリー・ジャベリン"的存在。
威力40+11だと出目7でも20点、抵抗して10点ぐらいですね。回ると死が見えてくきます。
アルケミートゥースはジークに攻撃するも大したダメージにはならず。
ジーク「……ふ、ちょっとくらい血を見せておいたほうが、観客は喜ぶな」
エア「もう、なんでこの人たち蛮族よりの考えがナチュラルにできるわけ!」
更にジークの腕にぶら下がって毒を入れようと一生懸命でした、ちょっと可愛い。
3ラウンド目
エアは前衛にキュアしますが、人族の神様への祈りだったので観客席からは大ブーイング。
エア「んですって!布教するわよ!」
最早蛮族にとっては悪役レスラーのようになりつつあるぞんざいズでした。
結局それからも大した脅威はなく、順調にダメージを与えられたフェイスレスが倒されてしまいます。
残されたアルケミートゥースも必死に反撃しますが袋叩きの様相を呈するようになり、レフェリーストップー。
ぞんざいズの実力は証明されたし、これ以上やらせても観客のストレスになるだけですから賢明な判断です。
勝者の権利としてぞんざいズには戦利品を剥ぐ権利と、今日一日の自由が与えられます。
紅いリボンを渡されるので、これをつけていれば人族でも咎められることはありません。
戦利品は3体から剥ぐので合計30分必要なのでマイクパフォーマンスで繋いだとか(笑)
そしてカイン・ガラを思い出させる蘇生無料券を2枚貰いましたが、この街でそれは危険すぎますね。
「ミストキャッスル」でも蘇生そのものにお金はかかりませんが、その代わりに魔改造が施されます。
これは腕・足・胸・頭等に魔物の器官を移植されるというもので、本来ない能力が備わります。
例えば今回倒したフェイスレスの仮面を顔の半分に移植すると《ひらめき》の能力が備わったりします。
しかしそんな事をすれば人族の社会に戻っても変な目で見られるでしょうし、関わらない方がいいでしょうね。
★蛮族の街観光
一日の自由を得たぞんざいズは3時間休憩でMPを半分回復させ、街へと繰り出しました。
この街の経済は物々交換が主流ですが、人族を扱う都合上ガメルも通用するので買い物もしました。
商品として扱われるのは倒されたり行き倒れたりしていた人族の所持品なので品揃えにバラつきがありそうです。
ジーク「……うーん……保存食なんかも買っておきたいんだよなあ。この街のメニューのことを考えると」
エア「え、この街で買うの?」
ジーク「そうなんだよなあ。それがネックなんだ」
ムーテス「冒険者の持っていた<保存食>ってある?」
GM「ん。<冒険者の保存食>はありますよ?」
エア「それは、一番避けないとダメなものでしょう!」
この街だと本当にありそうだから困る。肉屋とか間違っても覗いてはいけません。
次にぞんざいズはレオルズの屋敷を訪ねてみます。彼に貰われていったのがイストなのかを確かめるためにも。
彼なら<通話のピアス>で大司教と連絡をつけられる。それなら向こうの状況が分かるし、こちらの状況を伝えられる。
ちなみにレオルズは強い者に惹かれる性格上、闘技場で勝ち残った人族を名誉蛮族に格上げしてあげる事があるそうです。
これは「ミストキャッスル」にもあった概念でして、蛮族に貢献した人族や蛮族への協力を誓った人族に与えられる称号です。
階級上普通の蛮族より上ですが、実質的な地位は下となります。名誉蛮族は首輪の代わりに<名誉蛮族の腕輪>を与えられます。
ゼルブリスではどこまで同じかは謎ですが、既にフィルゲンの個人所有であるぞんざいズがレオルズに抜擢される事はありません。
レオルズの屋敷は石造りの大きなものであり、市外でも居心地の良さそうな所に建っていました。
ジーク「いきなり行って失礼じゃないかな。手土産とかいるか?」
メッシュ「一応我々は闘技場で勝ち、そして尚且つ上司であるフィルゲンの持ち物扱いです。
それが挨拶に来たということになれば、先方もそう悪い気はしないと思います」
ジーク「特に、大雑把な性格らしいし。たのもー!(ドンドン)」
レオルズ「誰だー?」
使用人ではなくレオルズ本人が扉を開けました。その手にはちっこいものがぶら下がっています。
もちろんイストであり、彼はぞんざいズの顔を見ると表情を輝かせて半泣きでもがき始めます。
ぶら下げられてる立場上「助けて」とか言えないけど、ぞんざいズの顔を見てちょっと希望が持てたようですね。
ソラ「………………本物だったの」
ムーテス「あー、すいません。色々とそのちっこいのが、怒りを買うようなことしたんでしょうが、どうぞお手柔らかに」
レオルズ「ん?なんだ、このちまいのを知ってるのか?
殴ろうとしても避けるし、役に立つしで面白い。いい買い物だった」
避けてるんだ。オーガバーサーカーの命中力は15(22)とかあるんですが手加減してくれてるのかな。
当たったら2D+14点なので期待値にして21点。即死はないにしても最大三回ヒットが怖いですね。
ここでイストはソラと魔神語でペラペ〜ラと密談を行います。レオルズの言語は汎用蛮族語、ドレイク語、オーガ語なので。
イストはルーちゃんをエルヴィーンから救出した時に"クエスト"が解除され、報酬を受け取りにルーフェリアへ戻りました。
ところが家族の所へ戻ろうと国を出たところで侵攻中の蛮族軍に包囲されている事に気付き、逃げ出そうとしたそうです。
ソラ「何で逃げなかったの?」
イスト「だってさー。羽根の音がして何かが近付いてきたんだよ。なんだろうと思ったら、つい……」
ジーク「フィルゲンか」
イスト「最悪ー。あいつ、ボクの顔、覚えてやがんの」
なにしろイストはルーちゃんを誘拐した時にフィルゲンに協力していましたからね。面識はあったのです。
そしてあっさり掴まり、「どれくらい生き残れるか見てやろう」とか言われて奴隷にされたというわけです。
現在は緩慢な死刑執行中であり、このまま放っておくといつか1ゾロを振ってレオルズに殺されるかもしれない。
イスト「戯れに殴りかかられて、毎日必死に避けてるよー。ねえ、助けてよー」
ルーちゃんを誘拐した時にも事情があったし、決して悪い奴ではない。できれば助けてあげたいですよね。
最初は「なんだこいつ」とか思いましたが、リャンとかミラと比べるとずっとマトモな部類に入りますしね(笑)
もちろん"通話のピアス"も持っているので彼を助けたら大司教と連絡が取れるという特典つき。
イスト「あるよあるよ!超あるよ!」
ジーク「それは絶対に必要だ。任せろ、助けてやる」
ムーテス「そうだね。とりあえず、そのアイテムはこっちに渡してくれないか、イスト」
イスト「やだよ!それ、絶対にボクの命綱じゃないか!」
そうして話しているとレオルズは下っ端にお茶などを運ばせてきます。挨拶に来たことで機嫌が良さそうですね。
ただしそのお茶というのが呪われた沼の色に濁り、シューシューと音を立てる謎物質。これを常飲していると?
エア「というわけで、そこの蛮族。そのちっこいのを解放しなさい!(びしっ)」
レオルズ「なんで。折角手に入れたタフな玩具なのに」←言葉が分からなかった
本当にお気に入りだったのでちょっと不満そうです。確かに一方的に寄越せでは人族でも気を悪くするでしょう。
ちなみに「蛮族」というのは彼らにとっては蔑称。黄色人にイエローモンキーとか言うのと同じです。
蛮族の社会に潜りこんだ時には彼らに合わせて「バルバロス」と呼んであげると余計な不興を買わすに済む。
ジーク「何となら引き換えてくれる?この街ってたしか、物々交換が基本だっけ?」
エア「なんでしたら、こっちのルーンフォークを差し上げます」
ジーク「あんまり丈夫じゃないけどな」
メッシュ「ジークさまぁああっ!」
レベルも上がってきたのでイストより回避力は上のはずですが、何故かメッシュの方が危険な匂いがする。
グラスランナー伝統の隠しパラメータ「生存力」のお陰ですかね。これがあると平気な顔で大陸を渡ったりします(笑)
するとレオルズは一つ欲しいものがあると打ち明けます。
ジーク「なんだ?渡せるものならがんばるぞ」
メッシュ「うはははは!お前たちの命だぁああ!」
ジーク「こいつの命でよければ、どうぞ。記憶一年分つき」
ソラ「その空になった一年分の記憶に、どんな与太を詰め込もうか楽しみなの」
ムーテス「まずはヒエラルキーの再構築からかなあ」
メッシュ「すいません、やめてくださいジーク様!(土下座)」
本当の願いはある魔法の壷の入手です。それはレオルズの友人であった一人の蛮族が持っていたものです。
その魔法の壷とは人が入れるほど大きなもので、赤と青に綺麗に塗り分けられています。
ところがその蛮族は先日死亡し、彼の屋敷にアンデッドが湧きました。蛮族にとってもアンデッドは敵です。
しかしレオルズが自ら出張ればがっついてるようで体裁が悪い。頭が良くないと言っておきながら結構考えていますね。
そこでぞんざいズが自主的に入手して献上した事にするのです。
レオルズ「まあ、出向く理屈を考えていたところだったから、丁度いい。俺は頭がよくないからなあ」
ムーテス「一応契約として、半分そのグラスランナーはこっちのもの
という気がしてきてるから、あんまり壊さないで欲しいっす」
レオルズ「ああ、分かった。気をつけよう」
この会話の最中にも小突いたり踏んづけたりしています。HPが減らないまでもぐったりしてきています。
ソラ「まあ、最悪首から上が残っていれば、本国とは連絡がつくし……」
エア「こらぁああっ!」
ソラ「え、だめ?」←むしろ何がいいんですか?
エア「妹がどんどん蛮族に見えてくる!、穢れがあるって、こういうこと!?」
レオルズ「お前、俺らよりも、蛮族っぽいな」
どんどんこの街に馴染んでいっていますね。このまま長く滞在すると〔異貌〕前提でダークナイトになるかも。
ダークナイトとは蛮族社会で生きることを選んだナイトメアのことです。コボルドの逆パターンですね。
名前の由来は"悪夢"が転じて"闇夜"になったからだとも、自らの尊厳を守るために戦う"暗黒の騎士"だからだとも言われる。
★多勢と無勢?
ぞんざいズが向かったのは遺跡都市の一番端、壁面に洞窟のようにくり貫かれた屋敷でした。
「危険入るな」と刻まれ斜向かいに打ち付けられた木の板を無視し、階段を降りて地下へ降っていきます。
階段の両脇には作りつけの本棚があり、今でもびっしりと本が残されていたので《文献判定》で調べて日誌を発見。
それによるとここは元々魔改造の研究施設であり、死体が運ばれては改造して生き返らせていたようです。
職員は一人の研究者と助手の二名。ところが生き返らされ方に不満を持った蛮族の襲撃を受けて助手が死亡。
日誌はそこで途切れていました。研究者の方が日誌を書いていたのでしょうが、その後どうなったかは不明です。
更に先に進み、メッシュが木の板から飛び出していた釘を踏んで怪我をしたりもしました。
エア「うちのスカウトはドジッ子だから」
ジーク「可愛いみたいに言ってるな」
エア「可愛いと思ったことは断じてないけれどね」
メッシュ「……あなたとは、一生相容れぬようですね」
エア「そうね、あと四百五十年分くらい相容れないわね、ほほ」←寿命500年
メッシュ「……くぅ、私の十倍の面の皮と寿命を持つ種族め」←寿命50年
50女から見た7歳児というと人間なら微笑ましい気もしますが、エルフとルンフォだとそうもいきません。
ちなみにこの中だとエアの次に長寿なのは寿命200年のリルドラケンであるムーテスです。
そしてエア以上に長寿なのはナイトメアであるソラ。ナイトメアは老化しないので、明確な寿命は不明です。
階段を降りると壊れた扉が見えてきます。先行して調べるのはいつものようにメッシュです。
ジーク「あんまり、無理するなよメッシュ」
メッシュ「大丈夫です、危なくなったら逃げます(きっぱり)」
扉の影からそっと中を覗いてみると、そこは大きな部屋になっていました。
人の姿はありませんがメスや薬ビンや本が浮遊しており、《魔物知識判定》でポルターガイストが三体いると判明。
ポルターガイストは8レベルのアンデッドであり、人が死ぬ時に抱いていた強い執着心が物に宿り誕生します。
その形状は執着していた物により千差万別ですが、核(コア)と物×4の五部位から成ります。
核は操霊魔法8レベルに加え、相手の持つ《武器を操る》ことで回避も抵抗も不可能な必中のダメージを与えてきます。
物は乱戦エリア内の1体に《殺到》することで2D×物の部位数の物理ダメージをやはり必中で与えてきます。
また核と物は戦闘開始時には《判別困難》であり、魔法の行使や各特殊能力の使用によって判別できるようになります。
つまりこの場には五部位×三体の十五部位ものアンデッドが浮遊しているわけです。
ムーテス「メッシュ無双が見れるかと思ったけど……さすがにけしかけられないよ」
エア「全部位が残っていたら最大ダメージ60点」
メッシュ「やめてください、一撃で生死判定ですよ!」
ところが《殺到》で計算されるのは「物」の部位数ですから、最大でも12点×四部位で48点になるはず。
それでもメッシュが食らうと生死判定に変わりはなく、それが三体もいるなら突っ込ませるわけにはいきません。
この強敵相手にまともにやると、前衛3人だけではブロックしきれません。
そこで姉妹が予め7ラウンドもかけて支援魔法を充実させて廊下に待機し、前衛が突っ込むことにします。
かけるのはカンタマにセイクリッド系に"ブレス"に"プロテクション"と"フィールド・プロテクションU"。
ソラは"ウェポン・マスター"をムーテスにかけて《武器習熟/斧》を覚えさせ、<デスサイズ>の効果も使わせます。
更にジークは最後の支援と同時に主動作で<デクスタリティポーション>を飲んでおきます。
3ラウンドの間命中力+2になるポーションですね。2000ガメルとかしますが何処かで入手していたのでしょう。
1ラウンド目
先攻を取ったぞんざいズは、まずソラが"ファイアボール"を撃ち込み、前衛3人は各ポルターガイストに乱戦を宣言。
次のラウンドには乱戦エリアが結合されますが、少なくとも1ラウンド目に集中攻撃を受けるのは避けられます。
その1ラウンド目にコア部位を見抜いて集中攻撃をし、少しでも早く落とせればそれだけ生き残る確率も上がります。
ジークは自分の相手となるポルターガイストに"カオスショット"を拡大してかけます。
ジーク「……魔法撃ってから気付いたけど、俺なんでポーション飲んだんだ……」←3ラウンドしかもたないのにね
続いてエアの"ホーリー・ライト"が決まって物が一つ落ちました。HPが48点しかないので脆いのです。
こう部位が多いと<剣のかけら>で強化しようにも部位一つあたりに割り振れるのは少なくなりますしね。
"ホーリー・ライト"は5レベルの神聖魔法。聖なる光でアンデッドに威力20でダメージを与えるSW以来の魔法です。
その効果範囲は半径5m/15なので、ジークの乱戦エリアの中心と他二体のポルターを同時に巻き込めば全部に当たってた?
メッシュは《ファストアクション》による怒涛の連続攻撃により他のポルターの部位を一つ落とします。
ムーテスは《テイルスイング》で五部位にペチペチ。結局三体全てにいい感じでダメージを与えられました。
ようやくポルターの番です。まずムーテスの前の奴は《魔法制御》で前衛に"アシッド・クラウド"。
そしてムーテスに《殺到》です。残り四部位になっていて出目8なので32点の物理ダメージですが。
ムーテス「うん、結構痛いな。8点来た」
ソラ「24点止めてる!」
防護点18に"セイクリッド・シールド"で3点、"フィールド・プロテクションU"で2点、"プロテクション"で1点ですね。
ジークの前の奴はまず"クリメイション"です。威力20の灼熱の炎を放つ射撃型の魔法ですね。
8レベルの操霊魔法なので実は"アシッド・クラウド"と同時に覚える。アンデッドや魔法生物には+5点ダメージです。
それならムーテスの前の奴と同じように前衛全員に"アシッド・クラウド"の方が良かったような気もします。
更にジークにも《殺到》しますが、残り三部位になっていた上に1ゾロを振ったので僅かに6点、無傷です(笑)
メッシュの前の奴も前衛全員に"アシッド・クラウド"。ジークだけ魔法三連発とハードです。
《殺到》で30点とか食らいましたが、今の彼の防護点は本来の3点+6点で9点なので21点抜け。
結局全てのコア部位が晒されてしまいましたね。1ラウンド目にしてかなりいい感じの展開です。
2ラウンド目
ソラは判明したコア部位に"リープ・スラッシュ"。ジークは通常攻撃で目の前のポルターのコアを落としました。
更に《マルチアクション》で"カオスショット"をメッシュの前のポルターのコア部位に当てます。
メッシュはそれに続いてクリティカルを叩き出してコアを落とし、ムーテスの尻尾もクリティカルで大ダメージ。
残るポルターは1体ですが、用心をしてエアが前衛を癒して手番を譲ります。
ムーテスの前のポルターは《殺到》でメッシュを傷つけたものの、次のジークの《魔力撃》で落ちました。
終わってみれば僅か2ラウンド半の短い戦いでしたね。ちゃんと立てた作戦が功を奏したいい戦いでした。
戦闘後に室内を《探索判定》し、<魔晶石>や<消魔の守護石>などを見つけつつ壷を調べます。
壷は《宝物鑑定判定》の結果"プリザーベイション"と同じ効果を持つものだと判明します。
9レベルの神聖魔法で対象が腐敗しなくなる。蘇生前にかけておけば日数の経過によるペナルティを防げます。
となると当然壷の中には死体があるわけでして、剣で切られたと思われるタビットの死体が眠っていました。
<魔法の発動体>である指輪を嵌め、首からはお守り袋のようなものを下げ、中には契約書が入っていました。
我が友、レオルズ
お前は、おれに恩があるんだから。一回、何でも言うことを聞くこと
署名はサティとあります。レオルズが壷を欲したのはこのタビットを蘇らせるためでしょうね。
メッシュ「中身を埋葬して、壷だけ渡すと、もしかして私たちのほうが埋葬されていたかも知れませんよ」
ソラ「「中身はどうした」「気を利かせて埋めてきました」」
ムーテス「「お前らも埋まれ」以上」
ここは余計なことはせず、素直にこの壷とイストを交換してもらった方がいいでしょう。
ソラ「……友達の物々交換。何だか蛮族っぽい」
エア「いや、それは、お金で交換するのも嫌だし」
ムーテス「つまり、イストには金を払う価値がないと」
エア「イストのことだとは言ってないからね!」
メッシュ「もし、あのレオルズがこのタビットと友情を結んでいたから生き返らせたくて、
壷を欲していたんだとしたら、実は私たちのほうが友情に薄いんじゃないかとどきどきしますね、私としては」
ソラ「いい言葉を教えてあげる。「個人差」」
メッシュ「うわー、勉強になりすぎて涙が出そうですよー」
こうしてゼルブリスを舞台にした最初の冒険は成功に終わり、イストを取り戻すだけの成果は上がりました。
囚われの身となっても相変わらずのぞんざいっぷりに安心しましたが、同時に馴染み過ぎて別の心配が浮上してきましたね。
★いつものように成長申告だ
今回の能力値の成長は以下の通り。
ジーク:敏捷度20→21
ソラ:筋力23→24
エア:生命力23→24
メッシュ:敏捷度16→17
ムーテス:器用度14→15
姉妹が揃ってボーナスがブレイクしました。お互い後衛なのにやたらと肉体的に成長しています。
あとはメッシュが指輪でもボーナスを上げられるようになりましたね。もう少しで構わず割れるようになります。
技能の成長ではソラがソーサラー6→7としました。これで自ら"アナライズ・エンチャントメント"できますね。
あとはムーテスがファイター7→8と順当に成長し、メッシュはマギテック3→4としてちょっと便利になりました。
どう便利かというと"オートモビル"で魔動バイクが作れるようになったんですね。コストはかかるけど移動が楽になる。
★とりあえず壷の顛末
ぞんざいズは前回入手したタビットの遺体が入った壷を持ってオーガバーサーカーのレオルズの屋敷へ帰ってきました。
レオルズ「おお。これだこれだ。ありがとう。この中には友が入っている」
ソラ「オーガバーサーカーの友!」
このタビットの名前はサティ・ウォールといい、かつてはぞんざいズと同様に奴隷としてこの街に連れてこられました。
その優秀な頭脳を活かして魔改造に携わるようになったのですが、暴動に巻き込まれて殺されてしまったのです。
レオルズは彼の主人でしたが、不思議と馬が合って親友になったとのことです。
レオルズ「うさぎ狩りだーと追い掛け回そうとしたら、魔法で超反撃されてさらに気に入った。頭がいいのは好きだ」
メッシュ「……珍しい。河原で殴り合った後に夕陽の中で友情を確かめ合うかのようなタビットとオーガ」
色々借りもあったのでこうして生き返らせようとしているそうですが、そうでなくても助けてそうな気がします。
きっと戸愚呂(兄)の如くサティがレオルズの肩にちょこんと乗ったりするんでしょうね。蘇生したらいいコンビになるかも。
ただしデーニッツ(兄)ことジークは邪悪なタビットかもしれないと危惧していますが、それは後のお楽しみです。
サティの入った壷を受け取るとレオルズは約束を守ってイストを解放してくれました。
レオルズ「ほら、約束だ」←投げた
イスト「皆ー、信じてたよー」
一同「避ける」
これで大司教のメアド、もとい<通話のピアス>もゲット。連絡がつけられるようになったのは大きいです。
彼を宿舎に連れて帰るとオスカーには呆れられましたけどね。
ムーテス「あ、気にしないでいいから。悪いけど、食事だけは一人前追加ね」
オスカー「お前らいい性格だなあ。奴隷の癖に奴隷を飼うなんて」
彼からは翌日にフィルゲンの呼び出しを受けているという報告を貰い、その日は休みました。
相変わらずのタコ部屋ではありますが、闘技場での大活躍が噂になっているのかいい寝床を譲ってもらえます。
どんどんこの街に馴染んでいるぞんざいズ。その内牢名主どころかもっと出世できそうな気もするから恐ろしい。
ムーテス「そういえば、僕たちに誰かを殺させるって言ってたよね」
ジーク「俺たちの実力を試すような真似しやがって。……その分経験値がたっぷり稼げたからいいけどな」
GM「確かに、思いがけなくたくさん稼がれてしまいました」
ムーテス「ううん、もう一匹倒しておけば、レンジャーが伸びたんだけど」
ソラ「言ってくれれば呼んだのに。もう一発ライトニングで」
エア「こらぁ!」
前回の経験点は2740点なので、基本が1000点とすればモンスターだけで1740点稼いでますしね。
ポルターガイストだけでも8レベル×五部位×三体×10点=1200点と結構な点数になりますしね。
アルケミートゥースが10レベル、フェイスレスが8レベルなので彼らだけでも180点です。
すると残り360点ですが、バジリスクだけでそんなにいきますかね。魔物化すれば9レベル×三部位ではありますが。
しかも変身する前に倒した場合は変身後の経験点をどうするかは不明ですし、まさかソラの"ライトニング"の犠牲者含む?
★竜人子爵のご命令
翌朝、フィルゲンの使いであるドレイクがぞんざいズを迎えに来ます。
エア「バのつくドレイク?」
ソラ「ドレイク・バカ?」
ジーク「それは倒せそうだ。ついて行こう」
そうしてぞんざいズはフィルゲンの屋敷まで案内されます。扱いは意外にも丁寧。
その間迎えに来たドレイクにフィルゲンの評判を聞いてみました。
ドレイク「あの人は、なんやかんや言って自分で動きたがる、腰の軽い人だから」
メっシュ「「ああっ、あそこに美人のドレイクが!」「なにぃ!どこだどこだ!」……と、そんな感じ」
GM「それは、腰が軽いんじゃなくて、尻が軽いんじゃないですか」
ソラ「「おい、コボルド。そこを掃除しておけよ……あーッ、もう、下手だな。貸してみろ、こうするんだ!」とか?」
そこまで所帯染みてはいませんが、某砂漠の"傭兵王"の如く自ら動こうとするタイプなのかもしれない。
ホッブ司祭のように「自分は必要ないのでは?」なんて考え出す部下も出るかもしれませんが、カリスマはありそうですね。
ただ自分で何でもやりたがるくせに、敵国のトップである大司教とタイマン張ったら殺されちゃいますけどね。
メッシュ「武装しているところは見たことがありませんから……おそらくは、グラップラー18レベル」
ジーク「うわ、そっちがメインだった!」
ムーテス「あ、エンハンサーメインとかどう?戦いになるといきなり狼の牙を生やし始めて、ブレスを吐き始める」
エア「ちょっと待て!うちの大司教は、水の神の神官なので、ブレスは吐かない!」
残念ながらファイター13になりました。それでもやっぱり強いんですがね。
ちなみに練技で使える"ファイアブレス"は文字通り炎属性の範囲攻撃ですが、そういう制限はないはずです(笑)
ただしブレスだからって炎属性とは限りません。騎獣のドラゴネットが吐くブレスの属性は個体によって異なるし。
狼の牙の方は練技"フェンリルバイト"ですね。カテゴリ<格闘>のBランク武器<牙>を生やして攻撃可能です。
補助動作で攻撃でき、その際はエンハンサー技能を基準値に使え、"ドラゴンテイル"のように重ねがけして強化可能ですね。
ただし最低でもエンハンサー技能が10レベル以上必要ですけどね。大司教ではなく某"百変化"のグラランが使ってましたね。
そうして与太話をしていると戦装束に身を包んだフィルゲンが現れます。
フィルゲン「元気そうで何よりだ。此方での生活も水が合っているようじゃあないか。
昨日の活躍はなかなかに楽しめた。……お前たちに、やらせたい仕事が一件ある」
メッシュ「はっはっは、余興はお楽しみいただけたようで何よりですよ」
エア「大司教暗殺なら絶対に受けないからっ!」
フィルゲン「それは可能なら頼みたいが、無理だろう」
もしドームを越えられたとしても大司教相手では今のぞんざいズでもまだ無理でしょう。
暗殺はできない、ガチでやっても神を呼べば一掃される。かなり無理ゲーという気がしますね。
ちなみにそれを乗り越えてもしルーフェリアを攻略できても現在の体制を変えるつもりはないそうです。
ソラ「ふむふむ、他所からちょっかいかけられて、ライフスタイル変えようという気、ないわけね。
……独り暮らし長いやもめみたいなの」
ムーテス「さっきの掃除の件といい、料理上手っぽいよね、こいつ。まずい、実は萌えキャラだったんだ」
GM「ちがう!」
せめてカウントにまで成長できればまだ可能性はありますが、まだそこには届かないようです。
「大破局」当時はバロンぐらいで、そこから約300年経った現在バイカウント。実は結構努力家なのかもしれない。
しかしその300年の間にこの街も手狭になり、なんとしても新しい土地が欲しいというのが本音のようですが。
GM「正直、ルーフェリアとは相性が悪すぎです」
メッシュ「昔、ちみっこ女神に振られたことがあるのですね。バロン風情に興味はないと」
ムーテス「なるほど、それを知ってるだろう大司教とは顔をあわせたくないよねえ」
ジーク「ざまあみろ。そう簡単にはルーフェリアはやらないからな」
エア「貴方がドレイクカウントになってる頃には、ルーフェリア様は大神になってるわ!ざまあみなさい!」
GM「ちがう!だから、どうして萌え方向に発展させようとするんですか!」
それなら25レベルまで、老竜ですら抵抗の余地なく即死です。カウントどころかマーキスとかでもキツイかも。
もちろんそうなれば以前話題になったように、術者は即死するので気軽に女神を呼べなくなりますけどね。
エア「呼べるわよ。……大司祭がほぼ確実に死ぬだけで」
ムーテス「一回きりの切り札だね。神殿も後進を育てておきなよー」
メッシュ「いえ"リザレクション"で蘇らせれば最大四回"コール・ゴッド"できますよ!」
ソラ「そのたびに穢れが溜まる大司祭。残機×4」
途中で溜まった穢れを無くしてもらえばもっといけますね。目指せ無限1UP、亀の甲羅を踏むが如く(笑)
とまぁ色々なパワーバランスのもとにこの地方は成り立っているわけですが、役者はルーフェリアとゼルブリスだけではない。
今の内にゼルブリスに恩を売りつけようと、アイヤールの東にある"紫闇の国"ディルフラムが介入してきているのです。
ディルフラムはゼルブリスにあれこれ援助を行い、優秀な間者なども貸してくれたので今までは助かっていました。
フィルゲン「そろそろその間者が勝手に動き始めて面倒なことになってきた。なので、そろそろ……消えて欲しい」
今回フィルゲンがぞんざいズに依頼する仕事はそのディルフラムの間者の暗殺ということです。
フィルゲン達ゼルブリスの蛮族が殺してしまうとディルフラムを敵に回すことになってしまいます。
しかし通りがかった冒険者に成敗されたとなったら仕方のないこと。これはお互いにメリットのある仕事なのです。
その間者は現在第四話に登場したエルビーさんの愛人としてルーフェリア国内に侵入しています。
しかも最近はフロリダスにまでちょっかいを出しているのです。その間者の正体とはリャナンシーです。
リャナンシーは11レベルの蛮族であり、青白い肌と華奢な身体を持つ美女の姿をしています。
高位のノスフェラトゥ(吸血鬼)によって生み出されたため、普段は蛮族の領域で主の召使をしています。
しかし用命があれば人族の領域にも姿を現し、人族を魅了することで社会に深く入り込んで間者として働きます。
その能力の一つは《密偵の心得》といい、<守りの剣>の効果を受けなくなるという恐るべきものです。
更に《誘惑の吸血》の犠牲者となった者はリャナンシーを恋人のように愛するようになってしまうのです。
しかもその効力は吸血を受ける毎に強くなっていき、最終的にはリャナンシーの言葉なら死すら厭わなくなります。
つまりエルビーさんも既に血を吸われている可能性がありますが、熱愛中であることを除けば正常に見えるわけです。
更にこいつの上位種としてリャナンシーアサシンなんてのもいまして、こちらは15レベルでフィルゲンより高レベル。
しかも相手の特徴、記憶、技能などを吸い取る《変化の吸血》なんて特殊能力もあるので非常に恐ろしいですね。
幸い今回はアサシンまでは出てきませんし、ゼルブリスにはノスフェラトゥがいないのでリャナンシーも擁していない。
残念ながらぞんざいズは《魔物知識判定》に失敗してしまいましたが、フィルゲンが全部教えてくれました。
ついでに餞別として<デクスタリティポーション>を6本もくれます。これだけで1万2000ガメルにもなりますね。
ジーク「で、その後は?ここにのこのこと戻ってくると思うか?」
フィルゲン「ああ、素直に戻ってくれるとありがたいが……外出時は、首輪を時限式のものに取り替えるだけだ」
猶予は十日間です。リャナンシーを倒したという報告を入れれば連絡員が派遣され、もう三日の猶予を与えられます。
それまでに戻って来れなかったらキュッと締まるというわけです。死に物狂いで頑張ることですね。
ジーク「……えーと、俺たち捕まる可能性もあるんだけど」
フィルゲン「それは、お気の毒なことだ。十日の命か」
その場合役人が特に手を下さなくても十日経つとセルフ絞首刑状態になりますね。
ムーテス「この首輪を外してもらえるって事は無理なのかい」
フィルゲン「ん?従順な仲間になれば、外してやっているが。そういった人族も、何人かいるしな」
ムーテス「いやー、もうなってるっすよ、結構」
フィルゲン「うそつけ」
ソラ「いやいやほんと。ちゃりーん(小銭を投げる仕草)」
そして条件反射で床に這い蹲ると。いっそベガー技能は5レベルぐらいにあげてもよかったかもしれませんね。
目的地は神殿のあるカナリスの街ではなく、王宮のあるアエドンというルーフェリア第二の都市です。
ドームこそないものの、アエドンは強力な騎士団を擁しますし、<守りの剣>だってあります。
しかしそれでは正体を隠したリャナンシーを防ぐことはできません。戦が起こる前なら侵入は簡単だったでしょう。
★ルーフェリアの向こうとこちら
フィルゲンの仕事を受けたぞんざいズは準備と称して一度宿舎に戻り、イストから<通話のピアス>を借ります。
連絡をするのはエルフ語が喋れて大司教とは上司と部下の関係にあるエアです。制限時間は10分間。
エア「……しまった。時候の挨拶だけで過ぎてしまう。むしろ足りない」
一同「はぶけ!」
話す内容としては現在の彼らの状況と、リャナンシーを倒しにいくということ。便宜を図ってもらえるかもしれない。
ソラ「あともっと重要なことも訊いておかないと……フィルゲンと昔何かあったのか」
ムーテス「いや、そこはもう広がらないと思うよ!」
メッシュ「そうですよ、いくら振った側とはいえ、気まずいでしょう!」
ジーク「え、バトちゃんが振ったのか?ルーフェリアVSフィルゲン?」
GM「やめい」
エア「そうよ、やめなさいよ。第一声が「この色男がー」になるじゃない!」
いざ連絡を入れてみると、大司教は驚きながらもこちらの状況を理解してくれていました。
ドームの向こうからこっそり見ていた人もいたらしく、ちゃんと事情は分かってくれているようです。
あとはリャナンシーを倒しに行くことを伝えておきます。
バトエルデン(メッシュ)「悪いが、セージ持ってないんで」
GM「……確かに、なさそうだ!」
ソラ「頑張っても2レベルぐらい?」
実際はちゃんと持っています、3レベルだけど。ライダー11レベル以上なのでそっちで可能ですがね。
11レベルだとしたら《魔物知識判定》の基準値は16。知名度15を軽く抜きますね。
あとさり気なく"コール・ゴッド"で首輪を何とかしてもらおうとしましたが、緊急時なので断られました。
それをやると生死判定になる上にMPも減るし、この状態で大司教が倒れたらドームだって維持できないし。
バトエルデン「ああ、そうそう。フロリダスのことについて、文書で問い合わせてきただろう」
ジーク「ああ、そうそう!そのフロリダスって何者なんだ?」
バトエルデン「……あいつは、昔からこの神殿に遣えている家系の者だ。それなりに信頼して重用していたが、
確かに……そう言われれば、敵対される謂れが全くないとは言えない」
メッシュ「……もしかして、昔手をつけた女の子孫ですか?」
ジーク「あー、それは仕方ないな。刺されとけバトちゃん」
GM「ちがうわ!」
実は彼はルーフェリアの国の前身となるイズマル王国の王家の子孫なのです。およそ八代ほど前ですがね。
当時イズマル王国の王家は押し寄せる蛮族軍に対抗する為に魔神の召喚に手を染めました。
召喚された魔神は一時蛮族軍を薙ぎ払うものの制御を外れ、カナリスの街が灰燼に帰すという大失敗に終わります。
その際生贄にされた少女の中にルーフェリアがいて、結局は彼女が神の階梯を昇ったことで国は救われました。
しかし少女達を生贄に捧げたことで権威が失墜した王家は民衆の蜂起で王位を剥奪され、秘密裏に神殿の庇護下に入りました。
ちなみに王家が魔神を召喚したという事実は一般的には隠蔽されており、生贄は蛮族を対象にしたものとされています。
もしフロリダスにその歴史を吹き込んだとしたら、政治から離れている現在の王家に不甲斐なさを覚えたのかもしれない。
そして自らが王権を奪還しようとしたとしても不思議はない。結局は蛮族の間者の駒なんでしょうがね。
大司教自身彼の出自を全く知らなかったわけではありませんが、八代前となると把握しきれていなかったようです。
八代前ともなると子孫だってあちこちにいそうだし、全てをケアするのは流石に難しいことでしょう。
禍根を残さないように根絶やしにする方法もあったでしょうが、蛮族が包囲する国外に追放することすら躊躇うのでは酷なこと。
バトエルデン「そして、そのフロリダスだが……この神殿に戻ってきていない」
一同「はぁ?」
ジーク「居場所に心当たりは?」
メッシュ「ドームの向こうで「悪かった、入れてくれ」ってプラカードとか持って立ってたら可愛いんですけどね」
バトエルデン「とりあえず、一蹴りしたくなるな」
大司教が動けない今の状態は王権を奪還するなら好都合ですし、リャナンシーと一緒にアエドンにいそうですね。
アエドンだって蛮族の侵攻で騎士や冒険者達が大忙しで混乱しているでしょうし、何か企んでいるなら狙い目ですね。
ジーク「バトちゃん、俺たちは最悪王宮の兵士にぼろかすにやられる可能性が出てきた。その時には……葬ってやってくれ」
ソラ「あ、あたしは"リザレクション"希望ー」
ジーク「……あ。そうか、俺も多少穢れたっていいか」
ムーテス「もし、僕たちの死体が見つかった時には、首のものを外してから"リザレクション"して欲しいんだけど」
バトエルデン「む。まあ、正直神官の立場としては、"リザレクション"は否定しておきたいところだが……まあ、考慮しておこう」
そう言う大司教でしたが、実は彼の生まれは操霊術師。そこからザイアの神官になり、ルーフェリアに改宗。波乱万丈ですね。
あと近々ドームを張り直す作戦があると教えてくれます。ドームを解いて攻勢に出て蛮族を押し返してまた張るわけです。
上手く行けば保護してもらえますが、その場合首輪をどうやって外すか考えないといけないし、リャナンシーの問題もある。
ジーク「じゃ、無理すんなよ。おっさんと言って通話を切ろう。絶対十分以上喋ってたけどな」
GM「まあ、そのあたりはフレキシブルに」
リアルタイムで10分間話して打ち切っちゃう手もありますが、まぁ多少は融通を利かせてもいいでしょう。
あとはイストをどうするかです。現在の彼の技能はバード/レンジャー6、フェンサーとスカウトを少々。
ジーク「……いらねえ」
GM「失敬な」
ちなみに習得呪歌に"ラブソング"があるらしい。恋愛感情を芽生えさせる呪歌ですね。
演奏を止めても効果は一時間持続します。リャナンシー相手に恋愛対決を挑んでも面白いか。
まぁ正直直接的な戦闘力は高くありませんね。スカウトだってメッシュほど高くは無さそうだし。
そうしているとオスカーが近付いてきます。
オスカー「よう、悪企みか?」
ソラ「銀の武器は滅びればいいと思う」←シュタッと手を挙げて
オスカー「世界の銀山など崩れ去ればいいと思う」←手を差し伸べる
ソラ&オスカー(がっしり握手)
エア「訳のわからん同胞意識を芽生えさせない!」
あとはワイトも加えれば人族・蛮族・アンデッドで種族を超えた同盟が組めますね(笑)
オスカー「しかしお前たち、フィルゲン様の命令を受けたらしいってのに、全然奴隷っぽくなっていないな」
エア「いえいえ、そんなことはないのよ?」
メッシュ「私はジーク様の奴隷ですから」
ムーテス「僕は金の奴隷だから」
エア「わたしはルーフェリア様の信徒ですから」
ジーク「……じゃあ、俺は愛の奴隷……」
姉妹「てい(ダブルチョップ)」
しかしこれで彼は何かの決心がついたかのように独り言を、彼なりの考えを明かしてきます。
メッシュ「何、好きな女の子でも出来ましたか?」
オスカー「いや、そういうわけじゃない」
メッシュ「……は、寂しい人生ですな(吐き捨てるように)」
オスカー「お前には言われたくないよ」
ジーク「全くだよなー」
一同(爆笑)
メッシュ「ジークさまぁあッ!」
彼の考え、それは自らの部族を存続させるための立ち回り方についてでした。
現在彼の部族はゼルブリスに協力していますが、それは厄介毎に巻き込まれないための自衛手段に過ぎません。
もしゼルブリスが勝てば人族に遺恨を残して今後生き難くなるし、ルーフェリアが勝てば人族に狩られる。
その気になれば人族の社会にも紛れ込める種族ですし、それだけに人族もまた敵に回すと恐ろしいと理解しています。
峡谷の地理を知る事が強みであると同時に弱みになっているのですが、本音を言えば何処にも与したくはない。
そこで彼は取引を持ちかけてきたのです。ぞんざいズに提示できる交渉材料は首輪を外す方法。
その代わりぞんざいズには上手く立ち回ってもらい、ゼルブリスを混乱させてもらいたいのです。
そうなれば明確なNO.2のいないこの街ではフィルゲンが直接指揮を取る事になり、侵略する余裕はなくなる。
その隙にワーウルフ達はこっそり手を引き、例の隠里に引っ込んで平穏な生活を手に入れるというわけです。
メッシュ「最初に考えられるのは、フィルゲンの部下たちに互いに不信感を募らせて、
味方同士を混乱に陥れるということですね」
ジーク「メッシュ、得意そうだな」
メッシュ「正直、うずうずします」
もし本当にそんな事ができるならドームの中に転がり込むよりも遥かに攻撃的に本国を援護できますね。
その為には今一度自由を得るために今回の仕事は完遂しなければなりませんが、やる気は出てきますね。
ソラ「でも、「あのワーウルフこんなこと言ってたよー」ってチクったら、
キミの首飛ぶと思うのに、よくそんなこと持ちかける気になったと思うの」
オスカー「ああ、お前たちに何か命令が下されたとか言うし本当に奴隷になりきってないか、賭けだった」
ムーテス「僕たちは、お前の隠れ里を知ってる。裏切ったら、チクるからね」
オスカー「オレはお前たちの食事を握ってる。忘れるな」
ムーテス「……ごめんなさい(土下座)」
姉妹「弱ッ!」
ぞんざいズの留守中にオスカーには街の情報を集めてもらうことにし、アエドンへと旅立ちます。
★水上王宮の街・アエドン
神殿のあるカナリスの街を首都と呼ばれる一方、王城のあるアエドンの街は王都と呼ばれます。
通常国王のいる王都こそが国内で第一の都市になるものですが、そこは宗教国家ルーフェリアです。
あくまでも実権は神殿が握っているためアエドンは王都でありながら国内で第二の都市になっています。
エルリュート湖の北側、カナリスとは湖を挟んだ反対側に位置し、軍馬を走らせるため水路は少ない石畳の街並みです。
カナリスとアエドンは定期船で結ばれているし、地元民である姉妹は来たことぐらいあるようですね。
メッシュ「首輪は何か布でも巻いて隠すとして……注意しながら近付いていきましょう」
ジーク「どうせなら五色のマフラーかな」
ムーテス「ムーテス・イエロー」
エア「エア・ブルー。ばっちり」
ソラ「ソラ・ブラック」
メッシュ「ジーク様はこちらの……ジークハルト・ピンク」
ジーク「ええ!俺ピンク!?」
ちなみにメッシュはメッシュ・グリーンです。ジークは素直にジークハルト・レッドにしてあげればいいのに(笑)
するとその内6人目の追加戦士としてパジャリガー・ホワイトとかが出てくるかもしれません。
アエドンに近付くとこちらも蛮族の襲撃を受けているらしく、退治された蛮族の死体が転がっています。
《探索判定》をしてみると周囲に蹄の跡や白い羽根が落ちていたりするので、ジャスティ達も来ているようですね。
やがて<守りの剣>の範囲に入るとぞんざいズは騎士に呼び止められたので、普通の冒険者として対応しました。
最初は蛮族が化けているんじゃないかと警戒していましたが、<剣のかけら>を提示すると食いついてきます。
騎士「君たち一体、どんなルートを通ってきたのかね。この国は今、蛮族の攻撃を受けているんだよ!」
ジーク「ええー。何だってー(棒)」
メッシュ「ジーク様、それは明らかに嘘でしょう!」
ムーテス「あ、でもほら、これ、いらない?ここに来るまでに山ほど狩れたから」←<剣のかけら>を提示
騎士「超欲しい!」
現在<守りの剣>の結界をフル稼働中ですから、結界を維持する<剣のかけら>はいくらでも欲しい状態です。
騎士達は3人がかりでぞんざいズに《真偽判定》を行い、人族だと確信すると街まで案内してくれました。
<剣のかけら>も結構たまっていたので名誉点に変えてしまいます。これは86点になりました。
騎士「手練の冒険者たちは歓迎する。何しろ、今ルーフェリアはこのとおりだ」
現在のぞんざいズの実力はこの街でもかなり上位になるので、有事という事もあって扱いは丁寧です。
早くエルビーさんと接触したいところですが、まずは信用を得ようと仕事を引き受けました。
ただし何日かかるか分からない仕事は避け、推定日雇いの<守りの剣>の境目の見張りを引き受けました。
対価は食事と寝床の提供です。
ジーク「やる!」
ムーテス「人間用の食事だ!何も考えなくてもいい食事だ!」
メッシュ「とにかく肉を食べさせてください!」
エア「素敵に野獣のような食欲を晒す一行でした。まる」
仕事では街にロックゴーレムをけしかけるオーガと戦ったりしましたが、楽勝だったのでカット。
魔法生物も魔神と同様に穢れを持たないため、<守りの剣>を越えて攻め込んでこれるので危なかったですね。
ロックゴーレムは8レベルの魔法生物であり、体長3m前後の岩でできたゴーレムです。
右半身と左半身の二部位であり、《岩の身体》を持つため刃のついた武器ではクリティカルしません。
また《狙い打つ》ことで打撃点−4の代わりに命中力+2で拳による攻撃をすることもできます。
「ルールブックV」だと13レベルの"クリエイト・ゴーレムV"と<魔化された岩>があれば製作可能ですね。
「ウィザーズ・トゥーム」だとその辺のルールは整備され、通常の"クリエイト・ゴーレム"で製作可能。
ただし製作するゴーレム毎に必要なレベルが設定され、ロック・ゴーレムは10レベル以上が必要です。
オーガは操霊魔法が使えないので高レベルの操霊術師が作ったものを利用しているのでしょう。
ただし「ルールブックV」に準じるなら13レベルもの高レベル操霊術師になってしまいますけどね。
フィルゲンですら12レベルとかだし、持続時間が1日しかないので備蓄することもできません。
もし誰かがゴーレムを永続的に動かせる遺失魔法などを知っていたら事前に大量生産も可能になる。
メッシュ「ふぅ、恐ろしい敵だった」
ジャスティ「うそつけ」
するとペガサスに跨ったジャスティが空中から声をかけてきます。部下はいなくて彼女一人でした。
ジャスティ「元気そうじゃないの。蛮族に操られたりしてない?」
ムーテス「今見てたよね、蛮族をやっつけたっすよ」
ジャスティ「うん、でも仲間割れを演じてみせるってこともあると思うしね」
メッシュ「ま……広い意味では蛮族に操られていますけどね、私たち」
ジーク「そ、そうだよな、よく考えれば」
そこでジャスティは《真偽判定》をしたのですが、出目が悪かったらしく確信が持てない様子。
それでもそれ以上は疑わず、あれからルーフェリアの状況を調べる為に一人残ったと話してくれます。
ぞんざいズが掴まる様子、カナリスにドームが張られている様子を確認し、アエドンまで来たようです。
どうやら王宮があるのを見て挨拶をするつもりだったようです。
ジャスティ「友好とはいえなくとも敵対するつもりはないから、
挨拶をさせてもらおうかと考えていたところだったんだ」
ソラ「いいけど、こっちの国の王族ってあなたの国の王族と違って権威ないよ?」
ジャスティ「あ、そうなの?それならいいかなあ」
未だに正体は隠していますが彼女も皇族の一員。国交を考えたりもしているようです。
逆に彼女をダシにすればアエドンの有力者と接触する口実になるということでもあります。
メッシュ「げっへっへ、お嬢さんお嬢さん。我々と一緒に来れば、
お偉い人にお目通りできますぜ。よろしければ、街をご案内しますが?」
ジャスティ「ああ、そうなの?じゃあ……外国の生活は見たいし、ご一緒させてもらおうかな」←かかった!
こうしてジャスティを仲間に加えたぞんざいズは騎士団にオーガの首を差し出し、偉い人へのお目通りを願います。
すると外国の偉い人の扱いに慣れていないのか、騎士達は困惑して相談しだします。
騎士A「挨拶って誰だろう?」
騎士B「誰が適当だろう」
この街の有力者は国王を筆頭にして、騎士団長や船を仕切っているエルフのファイエル氏などが挙げられます。
そして外国との貿易をしているエルビーさんなども有力者の一人であり、ぞんざいズはすかさず彼を指名します。
ムーテス「このジャスティさんは外国の人だしね!
やっぱり外国に詳しい人のほうが、習慣の違いとかを勉強しやすいと思うし!」
騎士「えー……しかし、エルビーさんはなあ。最近若い愛人とラブラブで、微妙に頼りにならないんですよねえ」
愛人の名前はエメラルダ。かなりの美人で何処にでも連れて歩いているほど自慢の愛人らしい。
そもそもエルビーさんなら面識もありますし、ジャスティをダシにしなくても普通に会えたようですが。
ぞんざいズは騎士が教えてくれた屋敷に向かい、およそ12話ぶりにエルビーさんと再会します。
エルビー「おお。ぞんざい勇者団とは、君たちのことだったのか。
馬車の護衛をしてくれた時は、まだまだひよっ子という感じだったのに、若者とは成長するものだねえ。
あの時、誘拐された少女は、戻ってきたのかね?」
ムーテス「ええ、まあ、そのあたりは、まあ何とか……もごもご」
エア「愛想笑いするしかない。何一つ本当のことを言えないこの状況!」
あの時は冒険者レベル3〜4ぐらいだったのに、今では7〜8ですしね。既に一人前の冒険者です。
割と短期間に実力をつけられるのはPCの特権ですね。PCは英雄候補生、この考えはSWの頃から変わらない。
義理としてジャスティをエルビーさんに紹介し、ぞんざいズは早速エメラルダへの探りを入れます。
ジーク「ようよう、おっさん。そういえば、可愛い彼女がいるんだって?この街に来て初めて知ったけど(肘でつんつん)」
エルビー「えっ、嫌だなあ。そんなことが噂になっているのかい?
年甲斐もなく、春が来たようでね。ちょっと恥ずかしいなあ」
そう言うと彼の顔は少し赤くなりますが、通常の状態では少し蒼褪めたように見えます。
現在どの程度吸われているかは不明ですが、1〜3回程度なら自分の生命や財産に影響しない程度にリャナンシーを助けます。
4〜5回になるとリャナンシーの願いは生活の全てに優先するようになり、6回で自分の生命以外は全て差し出すようになる。
そして7回となると「死ね」と言われれば躊躇わず死ぬようになる。見たところエルビーさんはそこまでは行ってなさそうですが。
ジーク「なあなあ、紹介してくれよ。綺麗なお姉さんなんだって……
って、俺、昔はこんなこと言えなかったよなあ、絶対に」
エルビー「いやー君も、お年頃だねえ。馬車の護衛をしていた時は、
女の子の足を見て、どきどきしていたみたいだったのに」←観察してるし
ジーク「俺も、色々場数を踏んできたからさ!」
ソラ「何の場数」
メッシュ「……修羅場?」
女慣れしたというか、単にぞんざいっぷりに拍車がかかっただけという気もしますがね。
そうこうしていると噂のエメラルダが現れます。金髪にブロンズの肌のアンニュイな感じの美人らしい。
エルビー「遅いではないかエメラルダ。お客様方にご挨拶しなさい」
エメラルダ「ごめんなさいね、あなた。ちょっと別のお客様のお世話があったものだから」
彼女が推定リャナンシーですが、流石に会って早々に《真偽判定》は失礼ですよね。
かといって調べもせずに殺したとしたら、万が一彼女が普通の人間でフィルゲンに騙されていた時に大変な事になる。
これはフォーセリアの鏡像魔神の時からそうですが、人間に化けている魔物の正体をいかに暴くかが一つの課題ですよね。
ぞんざいズを観察するエメラルダはムーテスが気になったようです。
エメラルダ「……そう、貴方がムーテスなの」
メッシュ「ははは、有名ですね、ムーテス」
ムーテス「ぐ、そうです、僕が破産したムーテスです!
しかし、後には世界のムーテスと呼ばれるっすよ!」
ソラ「……「後の世界のムーテス」。高いよ、20点もする」
ムーテス「速攻、名誉点の計算せんといてください!しかも、微妙に屈辱的な方向に!」
「後」が5点、「世・界」が15点ですね。ただこの場合「世界」で15点なのか、「世」「界」で15点ずつなのか。
何故彼女がムーテスを気にかけるかというと、彼女が応対していたというお客様に関係します。
それはピンク色の鱗をした女性のリルドラケン。すごく座った目でムーテスを見て挨拶してきます。
ミラ「はじめまして、ミラと申します」
ムーテス「えええー!なんでこんなところに!」
てっきり《白峰領》にいるかと思いきや、フロリダス関連でこっちに来ていたんですね。今頃クロノアさん待ち惚け。
ムーテス「い、いやー……どこかで会ったことなかったっすか?」
メッシュ「お、いきなりナンパですか」
ミラ「あら偶然ねえ。アタシにもムーテスって名前のリルドラケンの知り合いがいたのよ。
アタシに一銭も寄越さずに逃げた、ものすごくケチ臭いオトコがっ!(拳わなわな)」
どうやら操られていたりするわけではなく、100%純粋に嫌味を言っているようです。余計タチが悪いけど。
ムーテス「でもね、でもね、信じて欲しいんだけどミラ。僕の所持金がゼロだってこと」
ソラ「全身<ミスリルプレート>に包んで、<デスサイズ>背負ってなんか言ってる」
ジーク「あれだよな。一番高いベンツに乗って、横付けしてきて……「ごめん、今金ないんだ」って感じ」
ムーテス「うわ、それはむかつくなあ」
<ミスリルプレート>が2万3000ガメル、<デスサイズ>が1万6000ガメル。売ると1万9500ガメルにもなる。
現在フロリダスもこの屋敷に滞在しており、ぞんざいズにとっては完全に敵の巣窟と化していますね。
エルビー「よろしければ、皆さんも滞在なさってください。エメラルダの料理は絶品なのですよ」
一同「いえ、失礼します!」
ムーテス「きょ、今日のところは、失礼させていただきます、また改めてお伺いしますんでっ」
エメラルダ「じゃあ、また遊びにいらしてね。約束ですわよ……お一人ずつでも」
まぁ考えようによっては一網打尽にできる状況でもありますし、作戦を立ててからリトライですね。
★ピンク色を攫え!
エルビーさんの家を出たぞんざいズはまず相手の事情を知るために大胆な作戦に出ます。
ムーテス「こうなったら、事情を聞くためにもミラを誘拐するってのはどう?(真顔)」
ジーク「いいな。手伝うぞ(真顔)」
メッシュ「できるのですか?」
ソラ「「二人きりで会いたい」とかって、ムーテスくんが手紙書けば、おびき出せる気、する」
メッシュ「挙句だまし討ち。最悪ですな、私たち」
彼女は昔から名誉欲が強かったので何かしらの地位を約束されて従ってるというのが元仲間の推測です。
リルドラケンだからそんなでもないけど、年頃の女の子を誘き出して拉致すると考えると危なすぎますね。
手紙を書く前にエルビーさんの家の前で張り込み、偶然を装って彼と接触したりもしました。
エルビー「やあやあ、私のエメラルダは可愛いだろう?」
ジーク「ちょー可愛い。それよりも、ちょっと色々聞きたいことがあるんだけど、あのミラって子のこと」
エルビー「はいはい、何でしょう」
ジーク「いやー。あのミラって子、うちの仲間の元カノみたいでさ。見ただろ、あのツンツンの態度」
ムーテス「違う!断じて違う!」
かといって決してデレることはありません。二人の仲を取り持つ名目で探りを入れます。
すると恋愛関係に敏感になっているエルビーさんは見事に食いついてきます。自分がリア充だからってね(笑)
彼女は現在エメラルダの紹介で身分の高い人(フロリダス)の従者として屋敷に泊まっています。
そのよしみでムーテスが書いた手紙を彼女に渡してくれないかとエルビーさんに頼むとこれを快諾。
メッシュ「あのトカゲが仲直りの手紙を書いたら、橋渡しをしてもらえますかねえ」
エルビー「ほほう。そういうことかね。まあ、男と女の間に流れる深い河を少しでも埋め立てる
手伝いをするのはやぶさかではないよ。何しろ私とエメラルダも……(以下のろけ話略)」
これでミラに手紙を渡す算段はできました。あとは素敵なラブレターを認めればバッチリですね、犯行が。
ムーテス「……じゃあ、手紙を書くか。「しね」」
一同「ちがぁあう!」
ムーテス「うそうそ。さすがに昔の仲間だからね。前パーティの中では僕は一番の良識派だったんだ」←なんだって?
エア「……うん、あのメンバーの中だとそうなる、かな……うん」
かといってこのパーティにどれだけ良識的な人物がいるかというとねぇ。一番マトモそうな神官が変態だし。
ここでムーテスは「君に渡したいものがある」と金目のもので釣る方向で手紙を書きます。
ジーク「愛を込めて「ごめんなさい」を入れるのを忘れるなよ」
ジャスティ「そうね、仲直りしたいなら、理不尽な女へと折れるのも男の度量よ」←いたのか
エア「あわわわ、ジャスティさん。すいません、お構いもしませんで」
ジャスティ「あ、気にしないで」
発言しないと存在が消える、NPCなら尚更ですね。今のところ特に用もないので仕方ありませんけど。
ここで彼女はふと余計なことを思い出して尋ねてきます
ジャスティ「……どうやって蛮族のところから逃げ出してきたの?」
あの時彼女は隙さえあればぞんざいズを攫って逃がしてあげるつもりでした。
ところが彼らは逃げるどころか投降、そこからどうやって生還したかは気になって当然ですね。
かと言って現在進行形で奴隷になっていることなんて言える筈もない。目立たないくせに余計なことに気付いたものです。
そこでぞんざいズは彼女に《白峰領》への伝令を依頼し、厄介払いにしてしまいます。
何しろ彼女はペガサスライダー、行きの様子を見ても分かるように非常にフットワークが軽く《白峰領》も苦ではない。
ジャスティ「あ、うん、いいよ。また戻ってくると思うけど、そういうことなら伝令は引き受けてあげる」
エア「じゃあ、我が家の執事であるガアラへの報告は、わたしが認めておくね」
金庫番ではありますが執事ではありません。神官にして金庫番というだけでもダブルワークで胃に穴が空きそうなのにね。
彼女が戻ってくる頃にはぞんざいズはゼルブリスに戻っているかもしれないので、それが気に掛かりますが厄介払いには成功。
一方ムーテスの執筆も佳境に入ります。金銭に加え名誉欲まで刺激しつつね。
ジーク「ミラには、俺たちの側につけば、名誉点500点を越えているパーティの
仲間になれるぞって書いておいたら……名誉欲を擽れないか?」
ムーテス「あ、それだ。書いておこう」
ソラ「あのねえ。ムーテスくんもお兄さんも、女心をわかってない、モノで釣ろうなんて」
ムーテス「がーん。でも彼女は物以外じゃ連れなかったっすよ」
ソラ「……うん、まあ、それも真理かな」
メッシュ「モノで心は買えませんが歓心は買えますからね」
ジーク「何だか思い台詞だな」
そしてちゃんと「ごめんなさい」「ごめんなさい」と繰り返し、「渡したいモノがある」と湖岸へ誘い出して締めます。
エア「渡したいモノ……引導?」
ムーテス「渡したい時もあるけど、まだそこまでじゃない」
メッシュ「まだ一片の愛は残っていますか」
ムーテス「一度たりとも愛したことはないけど、腐れ縁だからほっとけないだけだよ!」
それはどこぞの極彩色エルフにも言ってましたよね。腐れ縁だからってあんまり背負い込んでると自分が潰されかねない。
そして約束の時間の一時間前、ミラは一体の人形を抱えてエルビーさんの屋敷を出て湖岸へと向かいました。
メッシュはそれを《尾行判定》で追跡し、彼女が湖岸にその人形を置いて茂みに身を潜める様子を監視しました。
ちなみに人形はムーテスを象ったもので、胸には「ムーテス、DEATH」という刺繍が入っています(笑)
これは6レベルの操霊魔法"リモート・ドール"をかけられているようです。持続時間は1時間ですしね。
この魔法は人形を自らの代わりに行動させるものであり、視覚・聴覚の接続はもちろん発声や運動まで可能になります。
リモート義体を操ってるかのような便利さですが、この魔法で人形を動かしている間は術者は無防備。視覚・聴覚も働かない。
メッシュ「……ということは捕まえるの、簡単では?」
その通り、何しろ無防備なので。でも念を入れて約束通りにムーテスは会いに行かせます。
<デスサイズ>にはリボンをつけてプレゼントっぽく見せておいて一人で人形に歩み寄ります。
ムーテス「うわ、何だこれ、ボロボロだ怖ッ!」
人形(ミラ)「きたわね!金の亡者!」←いいえ、奴隷です
ムーテス「は!その声はミラ!驚いた、そんなことができるようになっていたんだ!
成長したなあ、リャンは全然成長していなかったのに!」
人形(ミラ)「あんな奴と一緒にしないでー!」
そうこうする内にジークとメッシュがこっそり本体に忍び寄り、背後から捕まえて拉致します。
ミラ「ぎゃー!ちかーん!」
ジーク「へっへっへ、大きな声を上げるな……って、これじゃ明らかに悪役だろ、俺!」
メッシュ「ジーク様、蛮族の生活に馴染みすぎておいでです!」
蛮族といいますが、ある意味もっと危ない人っぽいですね。刑事と民事の両方にひっかかりそうな意味で(笑)
ジーク「静かにしねえと、もうムーテスには会えなくなるぜーっ!」
ミラ「いや、それは全然OKなんだけどー!」
ムーテス「ですよねー。一応人形を確保して、ジークたちに合流しよう。ミラー!大丈夫かミラ、すぐに助けるから」
ジーク「あ、こら、一人で正義に回るな!」
ミラ「い、いくらで助けるっての!お金払うんならいらないからねっ!」
ムーテス「大丈夫、今日はただでいい!」
ソラ「今日は、なんだ」
拉致ったミラはほっかむりをした主従が近くの漁師小屋に連れ込み、猿轡を噛ませることも検討。
リルドラケンの口は犬のように張り出していますから、抑えようと思えば張り出し部分をぐるぐる巻きにするのかな?
ソラ「はい、ムーテスくん、お届けものだよ?」
ミラ「なんだって!やっぱりアンタ、アタシの身体が目当てだったんだ!」
ムーテス「安心していい、それは大きな勘違いだ」
ミラ「じゃあ、一体なんでアタシを一人で呼び出したの!」
エア「……これ、リルドラケン同士だから微笑ましいけど、人間だったらウザイ女よねー」
人間じゃなくても面倒くさい女ではありますけどね。本当によくこの3人組でパーティを一時期でも組んでましたよね。
ファイター/レンジャー、フェンサー/スカウト、ファイター/コンジャラー。全員前線に立てますよね、色んな意味で。
もっとも奴隷商人をシバいたり、年頃の女の子を拉致したりと、こちらの前衛も大概な気はしますが。
ソラ「で、これからどうするの、お兄さん。と、微妙に蔑んだ目で見るソラであった」
ジーク「え?いや、俺は少しでもゆっくりとムーテスと腹を割って話をしてもらおうと思って……
そりゃ、少し手段は強引だったかも知れないけど」
メッシュ「大丈夫です、ジーク様。私がついております!ジーク様一人の罪ではありません!」
ジーク「あ、そうだな。全部メッシュが悪いんだ」
メッシュ「えええっ!」
エア「全部って言った」
良心の呵責を少しでも軽くしようとしたのに、従者に全部なすりつける事自体に良心の呵責がないというオチ(笑)
エア「ミラ、あなたに危害を加えるつもりはありません」
ミラ「加えてるじゃないの!こんな痴漢まで差し向けてきて!」
エア「それは仲間として訂正します!彼らは痴漢などではありません。あれはただのくずです!」
ミラ「…………なるほど」
痴漢はダメでもクズはOKとは、仲間の扱いがそんなんでいいのか(苦笑)
ムーテス「まあ、色々と納得してもらえたところで、話を進めよう。ミラ、君ぶっちゃけ蛮族と手を組んでるね?」
ミラ「うん。あ、でもちょっと訂正。蛮族と手を組んでるんじゃないよ。蛮族を使ってるだけ」
ソラ「え、なんで使ってるの?」
ミラ「なんでって……向こうから申し出てくれたから」
こっちもリャンと同じですね、自分が悪いことをしているという自覚がない。正しい意味での確信犯です。
そんな自分を棚にあげてミラはムーテスに魔動核の分け前を要求してきます。
ミラ「全く、仲間だと思ってるなら、お金払いなさいよムーテスッ。
ただでさえ飛空石を独り占めにして、お大尽生活を楽しんだんだからっ」
ムーテス「うん、ちなみに、どれくらい?」
ミラ「……その<デスサイズ>、いいなー」
エア「具体的な要求来た」
ミラ「その<ミスリルプレート>もいいなー」
お大尽生活を楽しんでいたのはもう昔のこと。今やベガー技能とか習得しちゃう身分の彼に無茶な相談です。
装備は結構いいもの持っていますけど、鎧はパーティ財産からの融資を受けているので彼だけの財産ではないし。
それでも話を聞きだすために<デスサイズ>を渡しておきます。《武器習熟/アックス》持ちなので扱えるみたいだし。
ミラ「あれから色々と修行してみたんだけどー。どうもアタシ、コンジャラー向いてないみたいなのよねー」
ムーテス「うん、それは昔から思ってたよ」
ミラ「それなら忠告しなさいよー」
ムーテス「何度も何度も言ったはずだ!キミが知的なキャラで行きたいと言ったからだよ!」
ミラ「リャンがファッショナブルなキャラでいきたいって言ったから、張り合いたかったのよ!」
素直に重い装備を着て戦士として頑張ろうとするとムーテスとキャラが被ってきますしね。
それでもこれはSW2.0、技能に装備に戦闘特技と個性を出そうと思えば色々あるので工夫し甲斐はある。
ムーテスが《かばう》持ちの防御特化型なので、ダメージを出せる攻撃特化型を目指せば大分印象は違う。
「蒼穹のヴァルキリー」のアジュールみたいに《全力攻撃U》と威力の高い<メイス><ウォーハンマー>等で固めるとか。
エア「うーん……ムーテスくんの元パーティは、どう考えても組んだ三人が三人ともだめだった気がする」
ムーテス「ちがう!僕はまともだった!」
ソラ「うん。40点、40点、45点、くらいのラインでまともだったかもしれないけど」
ジーク「ムーテス、お前三人組を解散して正解だったと思うぞ」
メッシュ「かといって、このパーティに入ったのが正解かはわかりませんが」
冒険者としての成果は着実に上げているし、そう悪いことではなかったと思いますけどね。
パッとしない三人組時代、アッサリと夢が費えた飛行船時代に比べると未来がありますし。まぁ今は奴隷なんですが(笑)
さて肝心の尋問ですが、まずフロリダスのことを聞き出します。
ムーテス「で、ミラ。キミはフロリダスって人と組んでるよね」
ミラ「そうよ。あの人は王になるかたなの!」
少女達を生贄に捧げた事も当時としては仕方ないし、そうして生まれた女神が国を守ったから結果オーライ。
現在の王族は国政には殆ど関わっていないし、それなら意欲のある人物が王になった方がいいとか考えてるわけですね。
ついでに彼が王になれたらミラは近衛に取り立てて貰える約束です。冒険者よりずっと名誉なこと、これに釣られたのです。
エア「それで何で、蛮族と組もうとするの」
ミラ「仲良くしていれば、攻め込まれないかもって言ってたよ」
メッシュ「何なんですか、その不思議な思考は!」
つまりフロリダスも以前《白峰領》にいた蛮族宥和派ということです。むしろ彼が筆頭っぽい。
ミラ自身はエメラルダが蛮族だという事は知っていますが、種族は分からず特に気にしていない様子。
現在蛮族が国を攻めている状況もフロリダスが王になるために必要な事だと割り切っているらしい。
エア「……つまりは、今神殿側は街を守ることに必死になっている。
そして「うわー。もうだめだー」ってことになった時、颯爽と現れる元王族と精鋭近衛騎士団。
とか考えてるんじゃない?」
ソラ「リャナンシーがいれば、少しずつでも内部から味方増やせるし」
メッシュ「王宮を乗っ取ることも簡単かもしれませんな」
フロリダスの計画の大筋は彼らの推測する通りだったりします。なんというダメな「王の帰還」。
しかしそれが実現したらルーフェリア攻略の功績はフィルゲンではなくエメラルダのものになる。
そうなれば戦後の統治においてもディルフラムの影響が強くなり、フィルゲンとしては面白くありません。
ぞんざいズはフロリダスとエメラルダの両方をシバき倒すのが最も手っ取り早い解決策だと判断します。
そこまで聞き出したぞんざいズはミラを神殿に引き渡すことにします。味方につけようにも簡単に寝返りそうなので。
ムーテス「あ。<デスサイズ>はあげるけど、キミは武装解除するから、<デスサイズ>は僕が預かっておくよ」
ソラ「どこの詐欺師!」
ついでに持ち合わせていた<エンジェルリング>を嵌めて黙らせます。ルーちゃんがつけられていたやつですかね。
引き渡すのは事件が解決してから。それまでは漁師小屋の床下に犯行履歴が書かれたメモと一緒に放り込みます。
万が一にも誰かに発見された時の保険ですね。<エンジェルリング>が外れない限り自力での脱出は不可能なので。
★朝一番に押し込んで
翌朝ぞんざいズがエルビーさんの家にカチコミに向かおうとすると、ジャスティが話しかけてきます。
ジャスティ「何?何か荒事でも起こるの?なんだったら、手伝おうか?」
実は彼女の出立もこれからなので、望めば今回の戦いに参加させることができます。
しかし彼女を巻き込むことに抵抗のあるぞんざいズはこれを断り、当初の予定通りにアイヤールに向かわせます。
そして朝っぱらからエルビーさんの家を訪れたぞんざいズは、まず応対したメイドさんから攻略します。
メイド「少々お待ちください、主人に確認を取ってから、お客人の方へと取り次ぎいたしますので」
ソラ「お姉ちゃん、いい?」
エア「やってしまいなさい、妹。向こうが大規模テロを企んでいるとすれば、此方は小規模テロです」
ここでは〔異貌〕したソラが"スリープ"を使って平和的に眠らせます。使用人には罪がないし。
これが達成値23と異様に高くて抵抗できる筈もなくお休み。何しろ彼女の魔力は最低10です。
もし<叡智の腕輪>を購入していたら知力+4になり魔力+1。<マナスタッフ>があれば更に魔力+1です。
ジーク「これで抵抗したら……かなり怖いよな、エルビーん家」
メッシュ「精鋭の集まる屋敷ですよ」
リャナンシーでも精神抵抗力は16(23)なので期待値でギリギリ抵抗できるレベルですしね。
続いてメッシュが"マナサーチ"を行い、屋敷内のマジックアイテムの在り処から敵の所在を割り出します。
すると地下と二階の左の棟にある程度固まった反応があります。地下は推定宝物庫、客人がいる可能性は低い。
それなら二階の方にフロリダスがいる可能性は高い。ぞんざいズは遭遇する使用人を眠らせつつずんずん進みます。
反応があったのは推定エルビーさんの部屋。突入前に屋敷内の構造から室内の間取りを《見識判定》で推測します。
それによると室内はまず私室があり、その奥に寝室があるかなり広いものになる事が分かりました。
具体的には複数部位でも戦える広さですね。リャナンシーは部位モンスターではありませんが、騎獣の使用が可能ですね。
やはりペガサスナイトのジャスティを連れてくれば騎乗して戦えたんでしょうが、帰してしまったので今回は仕方ありません。
この時メッシュはが4レベルの魔動機術"スモーク・ボム"を使用した作戦を考えていました。
これは半径5mを覆う煙幕の爆弾を発射する魔動機術であり、知覚が「五感」のキャラクターは視覚を失います。
これにより向こうの視線を遮りつつ一方的に"ファイアボール"を撃ちこむという作戦ですね。
公式サイトの補足によれば基本的には視認できないものを対象に魔法をかけることはできません。
しかし"ファイアボール"は空間にかける魔法ですし、巻き込まれたかランダムで判定するならいいとは思います。
ソラ「それいい!」←お気に入りらしい
ジーク「うん、いい作戦だな。エルビーを巻き込むだろうってことさえなければ」
メッシュ「……あ」
ムーテス「まあ、それはしょうがなかったってことで」
エア「待て!彼はただ、何も知らずに利用されてる人間である可能性が高いんだからね!
芯まで悪党になりきるのは却下!踏み越えてはいけないラインはあります!」
敵だけなら放火とかの凶悪な手段もありますが、延焼の可能性を考えればやはりマズイですよね。
いくらぞんざいでも命までぞんざいに扱っていいはずがない。まぁ冗談ではあるんでしょうか(苦笑)
仕方ないので普通に扉を開いて突入します。室内は遊技場などもある豪華で広々としていました。
在室していたのはエルビーさん、エメラルダ、そして品の良いハンサムな青年(フロリダス)の3人です。
エルビー「おやおやキミたち。こんな朝っぱらから、アポイントもとらずに失礼じゃないかね?
申し訳ないが、少々時間を改めて……」
ジーク「エルビーの旦那は下がっておいてくれ!」
エルビー「へ?」
この間の抜けた反応を見るに彼は本当に利用されているだけっぽいですね。ただ軽く吸われているだけ。
ぞんざいズは彼を保護しつつ《先制判定》です。メッシュは久しぶりに指輪(腕輪?)を割りましたが先制を取りました。
1ラウンド目
ソラはまずフロリダスの能力を《魔物知識判定》で見抜こうとします。目標値は冒険者レベル+3です。
これにより彼の冒険者レベルは8。所持技能はファイター、プリースト、ライダーだと判明します。
ソラ「一番高い技能は……ライダー?」←冗談の口調
GM「あたり」
ソラ「えええっ!ほんとに?もしかして、周囲にドラゴンの置物とか置いてない」
どうやらフロリダスはこちらの顔を知っているらしく、慌てた様子で自分の荷物に手を伸ばしています。
その荷物というのがワイバーンの置物でした。騎獣としてのワイバーンを<騎獣縮小の札>で小さくしているのです。
つまり彼はワイバーンライダーが本業というわけです。室内が広かったのは彼を戦わせる為でもあったわけですね。
騎獣としてのワイバーンの適性レベルは7〜10。乗りこなすには騎芸"空中騎乗"と"大型制御"が前提となります。
前者は空を飛ぶ騎獣の制御に、後者は複数部位の騎獣の制御に必要であり、竜を騎獣とする時にも必要となります。
胴体、翼×2、尻尾の四部位であり、《ブレス》を吹いたり翼で《2回攻撃&双撃》をしたりする所はモンスターと同様。
ただしブレスの基準値にはライダー技能レベルが使われ、その属性も個体により異なる点が特徴ですね。
ちなみにお値段は4万ガメルとかする高級品でもあります。10万のドラゴネットや6万のスカイバイクに次ぐ。
ムーテス「あの置物、蹴飛ばすとかして彼から引き離せない?」
メッシュ「無理でしょう。普通に飾ってある置物ならともかく、装備品扱いでしょうし」
「荷物を引き寄せる」とか言われると出来そうな気もしますけど、流石に無理ですよね(笑)
移動しないと取れない位置にあったりしたら話は違ってきそうですが。
続いてメッシュはフロリダスに接近して乱戦を宣言しようとします。
ジーク「そして「客人に何をする!狼藉は許さん!」とまさかのエルビーの《ブロッキング》」
メッシュ「そ、それはエルビーしか殴れなくなってしまうじゃないですか!」←やらないから
ソラ「そうされると困るし、エルビーに"スリープ"するね?」
メッシュ「すごい理由での"スリープ"ですね。よろしくお願いします」
この時駄目元でソラはフロリダスとエメラルダにも拡大してかけたのですが、これがまさかの6ゾロ!
エルビーはもちろんフロリダスまで眠ってしまいますが、エメラルダは奇跡の6ゾロで抵抗しました。
流石は"ダイス母神の愛娘"こと秋田GM。世界が変わっても相変わらずの"奇跡の魔女"っぷりです。
エアは前衛に"セイクリッド・ウェポン"をかけ、メッシュが《ファストアクション》&《牽制攻撃》の4回攻撃です。
今のメッシュは達成値22とか平気で出しますが、エメラルダはそれを平気で回避するあたりやはりリャナンシーですね。
ジーク「一抹の不安があったんだ、もしフィルゲンの情報はガセネタで、
エメラルダさんが本当にただの人間の愛人だったらどうしようって」
メッシュ「ふふふ……正体見破ったり、リャナンシー!」
リャナンシーの回避は14(21)とかあるので前衛3人の攻撃をいくらか回避します。
防護点は11とそう高くはないものの、<剣のかけら>でフル強化したらHP72+5×11=127点にもなって頑丈。
一方エメラルダの方は早速《誘惑の吸血》を使います。標的はもちろん精神抵抗力が低いルンフォです。
さっき指輪を割って回避力の下がっているメッシュは《カウンター》を狙いますが失敗して命中。
この場合ダメージを算出せず、目標値14(21)で精神抵抗を行い失敗したら恋人になってしまいます。
精神抵抗力8しかない彼ではこの時の目標値22は<月光の指輪>を割っても6ゾロのみ。そんな目が都合よく出る筈もなく。
メッシュ「ジーク様、ジーク様!恋人ができたんです。もう寂しい人生じゃないですよ!」
ジーク「俺に報告なんかすな!よかったなとでも言うと思ったか!」
メッシュ「た、大変失礼をいたしました」
1回吸われた程度でリャナンシーと敵味方に分かれた場合、できる限りサボタージュすることになります。
前の記憶を無くした訳ではありませんしね。しかし恋人相手にどう振舞うかは自分で考えてもいいと思います。
この時のメッシュは恋人であるエメラルダをできる限り守ろうと戦闘に参加。でもジーク達を倒さないように配慮します。
具体的には《投げ攻撃》で戦闘力を削ぎにかかります。致命傷になり難いとはいえ、非常にウザったい相手になりました。
2ラウンド目
この戦闘中にメッシュを元に戻すのは無理だと判断したぞんざいズは攻めに出ます。
まずエアが全員にカンタマ。ソラは"リープ・スラッシュ"。ジークは《マルチアクション》で"カオスショット"&剣。
ムーテスは"ドラゴンテイル"で尻尾を強化しつつ攻撃。この時点で既にエメラルダのHPは半減していたりします。
そして問題のメッシュですが。
エメラルダ「戦いなさいよ、ハニー!」
メッシュ「まかせろ!(きらーん)でも、ジーク様は殴れない……愛しい人を傷つけるのを止めたいのに!
というわけで、あっちのトカゲをとりあえず投げますんで」
ソラ「日和った」
これが6ゾロと見事に決まります。でも防護点を貫けない、仲間も恋人も傷つけないという意味では好都合か。
ところが次の《踏みつけ》がまさかのクリテイカルで24点とか叩き出します。どんだけムーテスのこと嫌いなんだ(笑)
メッシュ「私のエメラルダちゃんに手を出すのは許さないぞー!
しかし、ムーテス、お前もエメラちゃんファンクラブに入れ!」
ジーク「意外といい勝負をするなあ、ムーテスとメッシュ」
会員番号0001番がエルビーさん、次がメッシュとかいう感じのファンクラブでしょう。
次にエメラルダはムーテスを狙って《誘惑の吸血》を行い、命中するもカンタマ効果で抵抗。0003番誕生ならず。
ジーク「よ、よかった……これでムーテスまであっちに寝返ったら、俺どうしていいのかわからなかったよ」
メッシュ「素直にファンクラブに入ればいいのです、ジーク様」
ソラ「男どもが、全員寝返ったら、容赦なく範囲呪文を撃ち込むから」
ちなみに誘惑状態は呪い属性なので解除されるまで続きます。持続時間とかありません。
"リムーブ・カース"でも解除できますが、リャナンシーの血を飲むことでも解除可能です。
余談ですが「バルバロステイルズ」の《誘惑の吸血》には以下のような記述があります。
「この能力は、1日に1回しか使えません」
しかし「ルールブックV」の《誘惑の吸血》は以下のようになっています。
「この能力は、同じ対象に対しては、1日に1回しか使えません」
「バルバロステイルズ」の方が誤記とするならムーテスを狙う事自体は問題ではありません。
むしろ1日1回という制限に対象の抵抗の成否を問うかが問題です。
もし抵抗に失敗しない限り再挑戦可能ならひたすら狙い続けますが、そうでないならムーテスはもう安全。
3ラウンド目
ソラは魔法で、ジークは《マルチアクション》でひたすらエメラルダのHPを削ります。
エアも今回は回復も援護もせずに"ゴッゴ・フィスト"でエメラルダに攻撃です。
8レベルの神聖魔法である"ゴッド・フィスト"は神の拳を具現化して対象を殴りつける攻撃魔法です。
"コール・ゴッド"のように神格によって詳細は異なり、この場合は消費MP、威力、クリティカル値が異なります。
小神の場合は威力こそ大神や古代神のそれに劣りますが、消費MPは少なくクリティカル値は低くなります。
具体的には威力20のクリティカル値9なので"フォース"より強力です。ゴッド・ハンド・クラッシャーって感じですかね。
そして問題のこの男ですが。
メッシュ「また投げるか……いや、ここは愛しいハニーの血に塗れた姿を見たくない、"ヒーリング・バレット"!」
ジーク&ムーテス「うざー!!」
エア「い、いやでも、転ばされるよりはいい気がする」
今のメッシュは魔力7ですから、期待値通りなら9点、いつものメッシュなら7点ほど回復されますね。
先程の"ゴッド・フィスト"が抵抗されて8点とかですから微妙にウザったい回復量ですね。
そしてエメラルダの《誘惑の吸血》がついにムーテスをとらえます。
ムーテス「……僕の財産はキミのために費やすことを今決めたよ!」
メッシュ「彼女の素晴らしさがわかったか、ムーテス!」
ちなみに1回吸われた程度なら「自身の生命や財産、地位に影響しない」範囲でリャナンシーを援護します。
4回以上でこれすら厭わなくなりますが、やはり恋人相手にどう振舞うかは自分で決めちゃってもいいと思う。
一発で財産すら厭わなくなるほど恋をする、と考えるとえらく情熱的な人に見えてきますけどね(笑)
4ラウンド目
これで3対3と数の上では互角ですが、前衛2人を敵に回したぞんざいズは非常にマズい状態です。
ソラはメッシュの回復分を剥ごうと魔法で攻撃し、エアは《魔法拡大/確実化》まで使うも抵抗を破れず。
ジークに至っては1ゾロを振ってしまいますし。エメラルダを倒せずに手番を譲ってしまいました。
メッシュは更にエメラルダを回復。ムーテスは彼女を《かばう》で守りながらジークに攻撃。
エメラルダはジークに対する《誘惑の吸血》を失敗したものの、最早ジーク1人では近接攻撃をムーテスにカットされます。
本当はフロリダスを起こして逃亡を図ろうとしたようですが、そうなったらミッション失敗で誘惑されたままですかね。
5ラウンド目
ここでソラが乱戦エリアに突入。《マルチアクション》を宣言し、近接攻撃をデコイとして《かばう》を消費させます。
そしてエメラルダには"ブラスト"です。抵抗されようとも威力30はなかなかのもので、半減しても11点とか削ります。
ジークも同様に《マルチアクション》で"カオスショット"&近接攻撃をしますが削りきれませんでした。
ジーク「エア、頼む!回復のことは考えなくていい!」
エア「うん。じゃあ魔晶石も使って、また四倍確実化"ゴッド・フィスト"!」
4回《行使判定》をしたところ最大の達成値は23。リャナンシーの精神抵抗力は16(23)ですがこれに失敗します。
折角抵抗を破ってもダメージの出目は低く14点とかですが、それでもエメラルダのHPを削り切り勝利を収めました。
一同「っしゃー!!(ガッツポーズ)」
ジーク「やった、今回はマジで覚悟したぞ色んなことを」
メッシュとムーテスも正気に戻り、外から人が駆けつけてくるようなのですぐに脱出します。
この状況で事情聴取とか受けたら首輪がバレるし、時間をかけると時間切れでキュッといっちゃいますからね。
リャナンシーの戦利品には<血族の命令書>がありますが、エメラルダはそれとは別に<蛮族の命令書>を持っていました。
これにはエルビーさんやフロリダスを利用する計画が書かれていたので、これを残して証拠とします。
命令書にはディルフラムのとある領地の紋章が刻まれていましたが、結局黒幕が何者かは今後も不明です。
ノスフェラトゥであることは確かでしょうが、ディルフラムにはディルフラム王を筆頭に沢山いますしね。
フロリダスは起こしません。色々セリフがあったようですが、ロクに会話もせず退場という情けなさ(笑)
エルビーさんだけは起こして事情を話しますが、ちゃんと立ち直ってくれるか見届けられないのが残念ですね。
ソラ「ずらかろう!あ、騎獣のワイバーンもらっていってもいい?」
エア「ダメよ置いていきなさい」
ソラ「いやー、ほしいーほしいのー。ちゃんと世話するからー」
エア「どうせ、すぐに散歩とか怠けるでしょう!」
ワイバーンにも散歩とか必要なのかはともかく、技能すら持たないようでは扱いきれないでしょうね。
下手に元に戻すと暴れるか逃げるかしそうだし、<騎獣縮小の札>の効果は1日で切れちゃいますしね。
効果が切れても狭い空間に入れておけば戻りませんが、出した瞬間に元に戻るので扱いには注意しないとね。
★
今回と次回は連続で能力値の成長申告がないため、今回の成長は不明です。次回に2回分確認します。
技能の成長ではエアがプリースト8→9とし、戦闘特技《魔法収束》を習得しました。
★戻ってきたぞ蛮族の街
フロリダスとリャナンシーを倒したぞんざいズは当初の予定通りゼルブリスに戻ることにしました。
大司教に保護してもらう案もありましたが、首輪を外せる保証はないし敵の懐にいればこそできる事もありますから。
ゼルブリスへの道中には最初に通った時と同様に峡谷を通り、今回はオスカーの仲間と思われる蛮族?が案内役を務めます。
どうやら首輪をつけていたら通すことになっているようですね。彼の話ではドームは健在で包囲戦は続いているとか。
ちなみに陣頭指揮を執っているのはフィルゲンではなく、街のナンバー2にあたる四天王の一組だとか。
ソラ「それがどんな奴かは多分、オスカーくんに聞けばわかるかな。とりあえず帰るの」
ジーク「帰るんじゃない、行くんだろ」
ソラ「あ、そうだった。ナチュラルに馴染み始めてた」
エア「馴染むなー!」
ソラ「住めば都っていう言葉はあるのよね。あたしは、念願の捨てドラゴンを拾えてご機嫌だし」
本当にあのワイバーンをパクってきちゃったんですね。既に1日以上経過しているので札の効果も切れてるでしょうに。
ゼルブリスに戻る、もとい行くとフィルゲンから直接お褒めの言葉が貰えます。予想以上の仕事の早さに感心していました。
ムーテス「で、どうすれば僕たちの首輪って取ってもらえるんでしょうね?」
ソラ「フィルゲンポイントとか集めないとダメ?」
フィルゲン「完全な恭順を示せれば、もちろん煩わしいものは取ってやってもいいが……」
エア「無理」
ジーク「うん、期待してないから大丈夫だ」
「ミストキャッスル」にはあるNPCへの貢献度を現すザパールポイントという概念があります。
これにより金では買えない様々な特典を得られる仕様でした。同じ蛮族の街ならガメル以外の指標があってもいいかもね。
それから首輪を範囲式にして宿舎に戻ってイストと再会します。死んでたらどうしようと思いましたが杞憂でしたね。
イスト「外はどうだった?」
ソラ「あ、うん、それがね。これこれこんなことがあって、二人ほど操られて、超ウザかったー」
イスト「うわー。それはウザいやー、あははー」
メッシュ「とりあえず投げていいですか?」
ムーテス「その後、しっぽで殴っていい?」
ぞんざいズが留守の間イストは元気にオスカーの手伝いをしていたらしい。彼も馴染みつつありますね。
そのオスカーですが首輪について色々調べたことを報告してくれます。
オスカー「今まで余り気にしたことなかったけど、首輪について詳しく調べてきたよ」
メッシュ「いいですね。嵌められる気遣いのない種族は!」
オスカー「はっはっは。崇めたまえ。……というのは冗談としても、いや、
ここで反乱的なことを起こして失敗したら、俺たちの種族も嵌められる可能性があるから、必死なんだよ」
それによると、時限式の首輪については猶予期間の間なら何をしても締まらないらしい。つまり主人を殺して鍵を奪えばいい。
範囲式の方は決められた敷地内にいる限り締まらないが、主人のタグがついている場合はやはり任意に締める機能がある場合もある。
ただしフィルゲンは下克上上等な人なのでそういう調整はされていない可能性はある。
オスカー「まあ、それは、試してみないとわからないが……試す?」
メッシュ「試せるかあ!」
それこそ首輪に"アナライズ・エンチャントメント"で分かったりしませんかね。多分魔法の効果でしょうし。
この魔法自体に抵抗はないようだし、多分SWの頃と違って"シール・エンチャントメント"でも隠せないし。
ムーテス「じゃあ、万が一フィルゲンがいなくなっても、僕たちはこの都市から動きさえしなければ、生きていける?」
オスカー「街のルールに則って生きれば、半永久的に。魔改造施設もまたできたし」←まさかサティが?
ジーク「……水の供給はできるな」←エアを見て
ムーテス「ここで商売していくのもいいかな」
ソラ「あたし、ちょっぴりこっちに近いところもある気がしてきたし……」
エア「諦めちゃダメよ!諦めたらそこで試合終了でしょ!」
ちなみにその範囲ですが、この街のどこかに魔法的な輝石が4つあってその内側が安全な範囲になるらしい。
よってその輝石を世界の果てにでも持っていけば行動し放題になるかもしれませんね。
ただしこのラクシアは平面世界フォーセリアと違って惑星なので、何処かで範囲がひっくり返るかもしれない。
メッシュ「一辺だけ引っ張りすぎて、最後にはセンチ単位の有効範囲に!」
ムーテス「ということは、どんどん隊列がドラクエ的に」
それにもし一つ壊そうものなら範囲が三角形になり、消失した範囲にいた人達が全滅してしまいますね。
輝石そのものをどうするかはともかく、その位置を知っておくのは今後を考えれば悪くないですね。
続いてフィルゲン四天王の面子です。ただし彼らはフィルゲンの副官というほどの立場にはありません。
ナンバー2からナンバー5まで団栗の背比べ状態であり、ナンバー2ですらフィルゲンの片腕とは言えない。
そのナンバー2はドレイクバロンの双子の姉妹であるキャロンとミカファといいます。
フィルゲンを慕うセクシーな姉妹であり、双子ならではの連携がそれなりに重用されているらしい。
ちなみにドレイクは卵生なのですが、双子というのはどういう風に生まれるんでしょうね?
母親が同時に卵を二つ生んで一人一つの卵に入っているのか、それとも一つの卵に二人入っているのか。
出産時は竜化するらしいけど、前者の場合人間形態の時に卵二つ分をお腹に宿すのはどうなんでしょうね。
ナンバー3は前回も登場したオーガバーサーカーのレオルズです。最近ではサティが彼につきましたね。
ナンバー4は5レベルの蛮族であるゴブリンシャーマンのオルガといいます。
そういえはこのシリーズではゴブリンそのものとは結局戦わずにきてしまいましたね。
シャーマンは通常のゴブリンが飾り立てた姿をしていて、妖精魔法5レベルと神聖魔法2レベルを使います。
彼自身のスペックは通常のゴブシャーですが、その配下が恐ろしく強いためこの地位にあります。
本人は自分が脆弱なゴブシャーでしかない事は分かっているのであまり人前に姿を見せないようにしています。
その配下とはウォードゥーム。9レベルの魔法生物であり、以前戦ったクィンドゥームより更に強い魔動機械です。
砲塔と胴体×2の三部位であり、コア部位が存在しないので全て壊さないと倒せない点はクィンドームと同じ。
それ以外にも《機械の身体》を持ち、属性攻撃には《防御膜展開》を行い、胴体は《攻撃障害》《擱座》を持つ点も同じ。
ただし<ガン>による攻撃(魔法ダメージ)は更に強力になり、防護点やHPもかなり向上しています。
ちなみに「バルバロステイルズ」では「ルールブックV」にあった《対人兵器》が書かれていない(少なくとも初版では)。
これはウォードゥームを中心に細かい金属片を撒き散らし、固定値で20点の物理ダメージを与えるというものです。
ナンバー5はジィです。このゼルブリスにおける幻獣達の元締めのような存在です。
遺跡都市が閉じていた時には幻獣と蛮族の間で争いが起きることがあったのでその調停役でした。
また高い知性を生かしてこの街でも筆頭の物知りとして知られています。戦闘力は低いので四天王では窓際気味です。
ジィは7レベルの幻獣であり、牛の身体に人の顔を持ち、二足歩行も可能です。
温厚な性格と高い知性を持ちますが、敵対する相手には悪意を籠めて策略を巡らせるのが特徴。
能力的には神聖魔法/妖精魔法7レベル。そして回避力+2の命中力−2になる《先読み》です。
四天王はそれぞれあまり仲が良くないので、上手いこと同士討ちにさせる方向でぞんざいズは策を考えます。
メッシュ「策その一。バロンの片割れを倒しておき、大きな斧でやられたように見せかける、
そしてオーガバーサーカーのレオルズが、バロンツインズに腹に据えかねているような噂を流しておく」
ソラ「レオルズの武器は、巨大な棍棒でした」
メッシュ「試合終了ー。いや、ともかく、どこか一組に強い恨みを一組に抱かせるのです」
エア「悪党……」
それ以外にも色々策は出ますが、まずは物知りであるジィを訪ねてみます。輝石の在り処も知っているかもしれないし。
★こんにちは、ジィさん
ぞんざいズはオスカーからジィの居場所を聞いて早速会いにいきます。それは遺跡内の森のような一角でした。
森には薄汚れたユニコーンや羽の重そうなワイバーンなどがいて、ねじれた古木の根元に蹲っています。
メッシュ「歴戦の勇者と見るべきなのか。それとも単にうらぶれているというべきなのか」
どうやら彼ら幻獣も人族に追われた成行き上この遺跡都市に住み着いたようだし、色々あったのでしょう。
ぞんざいズを出迎えたのは以前も遭遇したハルピュイアでした。
ハルピュイア「何しにきたの、人間」
メッシュ「新参の奴隷です。フィルゲン様からの仕事を果たして
自由時間を頂いたので、有力者の方々にご挨拶に伺っています」
ハルピュイア「……ふん、いい心がけね。ジィ様はこの中よ、武器は入り口に置いて行きなさい」
<デスサイズ>とか置いていくことに抵抗はありますが、そもそも武器を使える手を持つ種族が少なそうですね。
ジィは大きなウロの中に設えられた部屋にいました。
ジィ「おや、新参者の人族の奴隷かね。何の用だい?」
ソラ「深くお辞儀するの」
メッシュ「新参者ゆえに、ご挨拶に参りました」
ジィ「そうかい。しかしわしのことを知っているということは、
わしらがこの都市で決して力がある位置ではない、ということも知っているだろうに」
ジーク「いや、ぶっちゃけ蛮族好きじゃないから。あんた蛮族じゃないし」
こういう時のメッシュの恭しさは流石のものですね。ソラだってちゃんとお辞儀してるし。
それに比べるとジークはいつも通りブレませんね。相手をヨイショする気配は微塵もありません。
ジーク「蛮族、鬱陶しくないか?」
ジィ「住処を追われた我々からすれば、人族も蛮族も似たようなものだよ」
メッシュ「…………ジーク様、ストレートすぎる」
エア「策とか全然なしで、ストレートど真ん中、遊び球なしって感じよね」
ジーク「え?そうか?俺としては一生懸命遠まわしに訊いてたつもりだったんだけど」
メッシュ「それ以上の直球は無理でございます!
せめて「何かご不自由はされていませんか」とかご機嫌伺いから入ろうとしたのに」
ムーテス「真っ正直に蛮族ウザイかどうかから訊いたし、吹いたよ内心」
彼は今回の侵攻についてはやや肯定的で、自分達の活動範囲が広がるなら悪くない程度に考えています。
また侵攻中の軍勢についても尋ねたところ、全体で100人程度で人員もあまり強力ではなさそうです。
何しろゴブリンやボガードにレッサーオーガが殆どで、首輪をつけた人族の奴隷や捕虜も連れているそうですし。
メッシュ「……もしかして、ですね。これは……本当に
上の指揮官さえ倒してしまえば、あとは烏合の衆なんじゃないでしょうか」
アイヤールで戦ったバロンやルーフェリアで戦ったイエティも本来この街ではかなり強い部類だったんでしょうね。
そして四天王さえいなくなれば下級の蛮族をフィルゲン自身がまとめねばならず、遠征どころではなくなると。
メッシュ「で、フィルゲンが大司祭と顔をあわせる。
または大司祭がフィルゲンのところに辿り着く。そうなれば、ジ・エンドです。
ま、もっとも、我々がフィルゲンの前に立っても、ジ・エンドなんですけどね」
せめてもうちょっとレベルが上がればいい感じで勝負になるんですけどね。
既に11レベルのリャナンシーを倒していますし、同レベルのレオルズや、やや低レベルで二人組みの双子なら何とか。
ジーク「なあ、俺たちがクーデターを起こしたら、協力する?」
エア「うわ、やっぱり直球」
ジィ「成功したら、尻馬に乗せてもらおうかね」
彼自身は積極的に干渉しないが、強い方には従うと。正直すぎて信頼できますね。
続いて輝石について質問すると、4つの輝石は四天王が1つずつ管理していて、それは地上にあると教えてくれます。
ソラ「ちゃんと、地下まで有効範囲は届くのね」
ジィ「そりゃもう、色々確認したのでな。若い頃は無茶したものだよ」
見れば彼の首にも首輪の痕があります。以前は彼も首輪を嵌められていて、自分の身体で有効範囲を調べたそうです。
首輪は締まったと思ったら引き返せばすぐに緩むので、有効範囲を越えたからといって即死するわけではないようです。
また首輪を外す鍵(マスターキー?)はフィルゲンが持っていますが、奴隷を連れ歩く都合上前線の指揮官も持っている。
よって現在遠征軍を率いている双子もこれを所持しています。仲良く二つに分けて耳飾りにしているそうです。
個人所有の奴隷の首輪の鍵は主人が持っていますが、ぞんざいズの場合はそれもフィルゲンなので関係ありませんね。
この時点でぞんざいズは触ると怖いので輝石ルートは没にし、仕事を受けて前線に赴き双子と接触する方法を検討します。
ジィによれば双子は基本的には仲がいいが、戦果やフィルゲンへのラブアタックを抜け駆けしないよう互いに見張ってるらしい。
メッシュ「これは……片方にだけ、フィルゲン様への贈り物を渡して、仲違いを狙う作戦は如何でしょう」
ソラ「或いは、片方への贈り物の振りをして、もう一方へと、間違えて配達してみる」
ムーテス「それは、嫉妬勃発するかもだねえ」
レオルズを煽る方法もありますが、鍵のことを考えるとそっちを攻めた方がいいかもしれませんね。
あとはゴブシャーのオルガの居場所をジィに聞き、その人となりを確認しておきます。
★ぞんざいズとゴブリンシャーマン・オルガ
オルガは街の西の外れにある岸壁をくり貫いた洞窟に住んでいます。首輪の有効範囲ギリギリの場所と思われます。
岸壁には巨大な観音開きの扉が設えていました。ウォードゥームを出し入れする倉庫の役割も兼ねているのでしょう。
ジーク「しかし、こんな風に策を巡らせるなんて、俺たちらしくないよなあ」
メッシュ「正面突破いたしますか?」
ジーク「いや、それは今回は無理ってわかってる。いくら俺でも」
メッシュ「ジーク様は、でんと神輿の上に担がれてくださればよいのです。汚れ仕事は配下の我々がいたしますよ」
エア「ちょっと待て、その複数形には異議を申し立てる」
扉をノックすると奥からクーガが出てきます。ウォードゥームを扱うのだからある意味当然か、魔動機術も使えるのかな?
このクーガはクレヨンで「いらっしゃいませ」と書かれた画用紙を持っており、ぞんざいズを洞窟の奥へ案内します。
すると今度はお世話係と思われる2匹のコボルドが応対してくれます。
コボルド「いらっちゃいませー」
エア「毛並みは手入れされてる?」
GM「それなりに」
エア(無言で撫で始める)
コボルド「やーん」
相変わらずのかぁいいものハンター。そういえば最近コボルドと触れ合っていませんでしたね。
コボルド「ご主人たまは、お会いになりませんー。ご挨拶は、覚えておく、だそうですー」
ジーク「へ?それは、超残念」
コボルド「(奥へダッシュ)超、残念そうですーっ」←ご主人に報告
ジーク「聞こえる位置にいるのかよ!」
すぐ近くにいるのにクーガやコボルドに応対を任せる横着っぷり。これも警戒心の表れでしょうか。
ジーク「んー、そうだな。俺たち、超頑張るっす!って伝えてくれ」
コボルド「(奥へダッシュ)すっごくがんばるそうですー。
(戻ってくる)何をがんばるんだ。だそうですー」
もう面倒だから直接話せばいいのに。もしくは糸電話なり伝声管なり用意しとけ、あるかどうかは知りませんが。
メッシュ「あなたもそろそろのびのびと生きてみませんか、ということですよ」
ジーク「がーん。メッシュは、もっとのびのび生きたかったのか?」
メッシュ「いいえ!私は超フリーダムに生きておりますよ!」
エア「それは否定しない」
するとコボルドは戻ってはこず、奥のカーテンの手前で立ち止まってぞんざいズを手招きします。
警戒心の強いオルガも興味を持ってくれたようですね。そして対面してしまえば口の上手いメッシュ無双の始まりです。
今回の彼の交渉は本当に凄いものがあります。どこぞの白粉エルフを髣髴とさせる"言葉の魔術師"っぷりを御堪能ください。
カーテンが引き上げられると、そこには2体のウォードゥームに挟まれて座るオルガの姿がありました。
神秘性を出そうとしているのか、頭から布を被って体形を分かりにくくしています。所詮はゴブリンなんですが。
メッシュ「ご尊顔を拝し奉り、光栄にございます」←恭しく跪く
オルガ「新たなしもべのようなものが、こうしてワタシに挨拶しにきたならば、
労いの言葉をかけてやるのも、ワタシの役目だろう」
メッシュの恭しい態度を見た彼は胸を張り、どことなく嬉しそうでした。どうやら自尊心の強いタイプのようです。
そしてメッシュはあらん限りの美辞麗句を並べ立て、彼をヨイショし始めます。彼もそれが満更ではないようでした。
ちなみにゴブシャーの言語は汎用蛮族語、妖魔語、妖精語ですが、彼は勉強しているので交易共通語も話せます。
またその足元には石灰でラインが引いてあり、そこが首輪の有効範囲の境界です。まぁいい場所を見つけたものですね。
オルガ「いやいや、なかなか礼儀を弁えた人間たちじゃないか。
フィルゲンのものだというが、それには少々惜しいぐらいだ。ははは」←鼻息荒く
メッシュ「いえいえ、そう言っていただけて、ありがたい限りにございます。
何しろご存知のとおり、フィルゲン様は大変お強い方ですが、少々、狭量な方でして、
我々が真の主として仕えるに値する方なのかと、些か愚考する次第でして」
ジーク「すげーな、メッシュ」
ムーテス「まさしく立て板に水」
そしてただヨイショするだけでなく、自分達はオルガの味方をしようとしている、というアピールも忘れない。
オルガ「な、何を言っておるのか。フィルゲン様はこの街の司なるぞ、そのような言葉、言ってはならぬ」
メッシュ「おおっと、失礼いたしました。貴方ほどの素晴らしい方の前では、本音が零れ落ちてしまいました」
オルガ「な、何を言うか。全く……」
と言いつつ、布越しでもニヤニヤが止まらず、鼻もピクピク。とっても嬉しそうでした。
人前に姿を見せない臆病で僻み根性の強い小物のくせに、なまじ力を得たものだから虚栄心や自尊心を捨てきれない。
つまりこういうヨイショにとっても弱いタイプなんですね。上手く煽てれば簡単に掌の上で転がせる都合のいいタイプ。
操縦法が分かると他の仲間達もヨイショに参加します。
ソラ「だってさーフィルゲンの奴ケチなんだもんー。あ、フィルゲン様、ね」
オルガ「そうとも、呼び捨てはダメだぞ、ふぃるげん様、だ」
ムーテス「それにしても、どうした貴方のような才のある方を、
フィルゲン様はこんな扱いにほったらかしておいでなんっすかねえ」
ソラ「席次が三番目だもんねえ。しかも、脳みそのないっぽいオーガの下なんて」
オルガ「ま、まあ、深いお考えがあるということだろう。確かに、オーガバーサーカーは戦う以外に脳みそがないがな。
それに、如何にフィルゲン様とて、ドレイクなのだ、同族の身内を可愛がってしまうのも、致し方ないだろう」
これって彼が普段から抱いている不満なんでしょうね。こいつらより自分の方が高い地位にあるべきなのに、という。
それを見抜いたメッシュは今回の遠征では双子が功を上げてしまうことによる危機感を煽ります。
メッシュ「おそらくこのまま行けば、論功行賞の常として、その統治はバロンのお二方になるでしょうが。
その後、この《遺跡都市ゼルブリス》の統治は、オーガバーサーカーに……ごほごほ。いいえ、噂ですが」
オルガ「ま、まあレオルズの奴は、何のかんの言っても人族を微妙に贔屓している悪趣味な奴だ。
それに、考える頭もないだろう。人族の考え方に引き摺られるのではないかと、常々心配しているのだが……」
ソラ「そうだよね。こないだもグラスランナーと遊んでたっけ」
ムーテス「ちっちゃいのが好きって言ってる変態ですしね」
そして自らレオルズ相手にも危機感を抱いていると暴露。もはや他の幹部に出し抜かれないよう功を焦る小物の幹部でしかない。
まぁ人族が増えることに危機感を抱くのは分からないでもない。安易な移民はコミュニティのバランスをあっさり崩しますからね。
オルガ「た、確かに、そのとおりだが……ルーフェリアの人間は、長年引き篭もるしか能のなかった連中ではないか」
ムーテス「しかし、今の環境が大きく変化してしまうことは確かかと」
ソラ「ええっ!今のような生活を続けることが、できないの?」←教育番組のお姉さん風に
メッシュ「そうだよ。力をつけてしまうと、人間たちはどんなことをしでかすか、わからないからね」←同じくお兄さん風に
ソラ「そういう時は、頼りになるリーダーと、考える頭が必要だと思うの!ちら」
そしてそれこそは自分だとばかりに胸をそらすオルガ。うわぁ、このロールプレイ面白そう(笑)
メッシュ「武力のあるものに、戦場など任せておけばいいのです。
真に知性のあるものが、裏から手を回し、全てを握ってさえいれば……それが最善かと」
ジーク「完全に、表情が悪役チックだよな。メッシュ」
オルガ「最善というよりも、それが、適材適所というものだろうな」
メッシュ「さすが、素晴らしい見識をお持ちでございます」
そして一同耐え切れずに爆笑と。いやぁ、なんてヨイショし甲斐のあるゴブなんでしょう。
続けて双子ではなくオルガが功を上げるべきだと吹き込みます。
オルガ「ちょっと待て。それでは……ルーフェリアは落としてはダメなのか?
いや、しかしアレは長年にわたる夢であって……」
メッシュ「いいえ。もちろん、落とすことは夢でございましょう。しかし、それを誰が落とすかが問題になるかと。
(ぐっと声を低めて)ドレイク姉妹どもにさせておいてよろしいのですか……?」
オルガ「し、しかし……!」
メッシュ「きゃつらは、生まれながらに能力があるというだけで、いつもいつも上から目線でございます。
一兵卒から鍛え上げられ、知識と見識を蓄えたものこそが……あ、いいえ。これ以上は申しません」
ちなみにドレイクだって一兵卒から鍛え上げられて爵位を授かっていくシステムですよ。例え親が爵位持ちでも世襲しない。
ドレイクの子供はどんな名家の生まれでも他のドレイクと同じ立場から始まり、強い者は出世していくシステムです。
完全実力主義、マーモ帝国みたいな感じですか。フィルゲンだって並ドレイクから子爵にまで出世した努力家のはず。
オルガ「お前、なかなかに見所があるではないか。名乗るがよい、覚えておいてやろう」
メッシュ「は。ありがたきシアワセ。私、普段は別の名を名乗っておりますが……
かつては、パジャリガーと、名乗っておりました」
一同(爆笑)
ソラ「やっぱりー!」
ジーク「言うと思ったけど、恭しく名乗られるとちょっと面白い」
メッシュ「そう、呼ばれていた頃もあるのです。……嘘じゃないもん!」
パジャリガーはアイヤールの英雄ですがオルガも名前だけは知ってるらしい。ただし詳しい事は知らないので特に問題はない。
数十年前まで蛮族退治や小神殺しでブイブイ言わせてた人族の英雄ですから、ディルフラムあたりの悪名は高そうですね。
あとは双子やレオルズを排除し、オルガこそがナンバー2になるべきなのだと煽って仕上げます。
フィルゲン相手に下克上しろとまでは言いません。あくまでも裏で糸を引く頭脳派として祭り上げます。
ムーテス「ドレイク姉妹は仲良しなのかな。オルガ様から見て」
オルガ「う、うむ。まあ、仲良くしようとしている……というところかな。こっそりと、足の踏みあいもしているようだが」
ジーク「ははは、ここにもそんな姉妹がいるぞ」
姉妹「……ああ?」
ジーク「……すいません、嘘です。ムーテス、庇ってくれ」
双子がフィルゲン相手に恋の鞘当状態にあるならばそれを利用し、同士討ちに持ち込むのが理想です。
フィルゲン自身にはその気はなく、上手に両者を煽って働かせていて、それが上手く動いている状態のようです。
逆にその均衡が崩れれば軍の指揮も崩れることになる。
オルガ「前線で苦労をしている者たちの不幸を願うなど、あってはならないことだぞ……!……ああ、思い出した」
すると彼は上等なドレスを出してきます。既に双子を仲違いさせるネタを用意していたんですね。
オルガ「ワタシは、奥床しい性質でな。自分から仰々しく贈り物など、押し付けがましく思っているのだよ」
つまりフィルゲンからの贈り物を装ってぞんざいズがこれを届ける。すると一着しかないドレスを双子は取り合うと。
ちなみにこれはカテゴリ<非金属鎧>Bランクの<コンバットメイドスーツ>の一種のようです。
銃撃戦を予想して作られたメイド服であり、毒・病気・呪い・精神効果属性を除く魔法ダメージを3点減らす。
お値段は3万8000ガメルとかする高価な魔法の服です。本来ならこれだけでもちょっとしたプレゼントです。
ところがオルガが用意したのは所々に宝石を縫い付けてあったりする豪華なもの。データ的には変わらないようですが。
お値段は通常の倍、7万6000ガメルという超高級品です。これは作戦が成功したら着服して売り捌くべき。
そうしてぞんざいズが街を留守にしている間、レオルズは謎の魔動機械の暴走で事故死してもらいます。
両方の策が成功すれ四天王の半分が倒れ、1人が謀反を起こすという結構な大事件になりますね。
例えオルガの謀反が成功しようとも人族にとっては好都合。小物が高い地位についた方が有利ですからね。
失敗したら失敗したで、それでも混乱を起こすことは確かです。あとはどれだけ大きな火事にできるか。
もっともその煽りを受けてぞんざいズにも火の粉が降りかかる可能性もありますが、それは出たとこ勝負。
とりあえず噂として、フィルゲンが戦闘馬鹿のレオルズを疎んじており、オルガとレオルズも不仲だと広めます。
オスカーのコネで前線に物資を届ける仕事を受け、イストも連れ出してルーフェリアへ向かいます。
フィルゲン「ほほう、勤勉なことだ。では向こうで会おうか」
一同「げ。前線に行く予定があった!?」
移動にはメッシュの"オートモビル"で作った3台の魔動バイクを使います。それぞれタンデムですかね。
MP10点で持続時間は1時間、1台につき<マギスフィア(大)>を1つ使いますが上手くやりくりしたのでしょう。
★剣の避難所
ぞんざいズは前線に向かう前に<パジャリガースラッシュ・ぷち>を預けたおじさんの様子を見に寄りました。
無事に隠れているのか気になっていましたが、いざ見てみると木々に隠れるように毛布のテントが複数並んでいました。
一同「テント村になってるー!」
おじさん「よかった、君たち。無事だったのか。何だか蛮族に捕まったって聞いていたから……すごく心配したんだよ!」
メッシュ「はい。何ということはありません」
ソラ「爽やかに首輪つけられただけ」
お風呂に入れるということもあり、逃げ遅れた人達が集まり肩を寄せ合って暮らしているようです。
地下の居住スペースには怪我人や病人を匿い、元気な人が炊き出しを作ったりとなかなか逞しく生き延びています。
そしてここではもう一つの再会がありました。あの極彩色エルフがまさかの再々登場です。
リャン「やあ、みんな、無事だったんだね!」
メッシュ「なんでここにいるんですか!」
リャン「だって、馬を返しに来ないといけなかったから。預けられたし」
変なところで律儀な人ですね。でもミラと遭遇した後だと不思議とほっとできるのは不思議(笑)
ムーテス「あ、<黒い皮膜>を抱えたままだった。全てが終わったときには、これをあげるからね」
リャン「やった、ありがとう!いいやつだなあ。ムーテス」
そういえば前回の再会の時も渡そう渡そうとしてて、結局ジャスティの登場で忘れ去られていましたね。
いい加減この黒い皮膜でどんな服を作るのか気になりますが、この状況だと次に再会するのはいつになるやら。
ソラ「なんでかな、この人がここにいると、何故かこのテント村、
もう大丈夫、悲惨なことは起きないような気がしてきたの」
ムーテス「うん。それは言える」
彼もジェロと同様に隠しパラメータ生存力が高そうですからね。グララン並みの安心感があります。
その夜はそのまま魔剣が作った居住スペースでぐっすり休み、翌日にはドームの近くにある蛮族の陣へと向かいました。
テント村での情報があったので蛮族の陣は簡単に見つかりました。蛮族だけでなく人族の奴隷の姿もあります。
ぞんざいズには首輪があるので入ることは簡単ですが、その前にできる限りの手は打っておきます。
イストの<通話のピアス>でアエドンからゼルブリスに攻めいるフリをし、フィルゲンの注意を引き付けて貰います。
ドレイクバロンの双子だけならまだしも、彼に出てこられると今度こそジ・エンドになりかねませんしね。
この短時間での連絡手段として"オラクル"がありますが、以前も確認したように半径10kmでは厳しいと思います。
まぁあれだけ規格外の"アイス・ドーム"を自力で張れたとしたら分かりませんがね。やっぱり"コール・ゴッド"だろうか?
ムーテス「……今更ながら、偉い人だね」
ソラ「一歩間違えると、ロリっ子女神のお守に思えるのにね」
エア「こらぁ、そこは間違えない!」
確かにロリっ子と戯れる姿が印象深いけど、女神としてのルーフェリアとルーちゃんやリアちゃんは別人格らしい。
ムーテス「さあ、災いの種を届けに行こうか」
首輪を見せつつフィルゲンからのお届け物だと口にするぞんざいズは簡単に双子と会うことができました。
ちなみにここからはイストはいません。お留守番として万が一の時にはテント村を守ってもらいます。
ドレイクバロンの双子の姉妹であるキャロンとミカファの姿は派手なのですぐに目に付きました。
露出度が高くセクシーな巨乳の美女ですね。ロリっ子や熟女や獣が多いこのシリーズでは珍しいかもしれない。
何しろヒロイン枠の姉妹ですら40代や50代ですからね。年頃の美女なんてロイヤルシスターズの年長組ぐらいです。
ミカファ「あらあら」
キャロン「まあまあ、フィルゲン様からですって、お姉さま」
ミカファ「あらどうしましょうキャロンさん」
フィルゲンからの使者ということでぞんざいズは好意的に受け入れられました。狙い通りに掴みはオッケー。
そして彼女達の耳にはお揃いのピアスがつけられていました。これが例のマスターキー的なものですね。
ソラ「狙うはアレなの」
ムーテス「はい。この陣で一番美しい女性にということで言付かっています」
メッシュ「いえいえ、この陣で、一番愛しい人と言われていましたよ」
ソラ「え?将来の妻じゃないの?」
エア「……生暖かい表情で、後ろに控えています」
この手の腹芸の時にはジークとエアは大人しいですね。それに比べて執事の活きがいいこと(笑)
すると予想通りに双子はぴきっと血管を浮かべて互いに牽制を始めます。
双子「あらあら、一番美しい人といえばあたくしのことかしら」
「あらそんな。愛しい人と仰るならわたくしのことに違いありませんわ」
ソラ「ドンピシャすぎる!」
エア「これだけプロファイリング的中だと、何だか怖くなってくるんだけど」
あとはこのまま退却するだけなんですが、愛しのフィルゲン様の使者を簡単に帰してくれたりしません。
誰宛なのか確認したい、お礼状も書かないと、といった具合にしっかり肩を掴まれて逃げられません。
首輪のタイムリミットを口実にしても彼女達にはそれを伸ばす鍵があるので問題ないし、さぁどうする(笑)
双子「で、フィルゲン様はどちらに届けろと仰っていたの?髪の色の薄いほう?濃いほう?」
エア「……化粧の濃いほう(ぼそ)」
ソラ「それは、次に会ったときは、双方おかめみたいに真っ白に塗りたくってるかもなの」
中身のドレスを確認して牽制はにらみ合いから奪い合いに発展。お互いに一歩も譲りません。
それを見て取り巻きの並ドレイク達も距離を取ろうとしています。
メッシュ「こんなこと、結構あるんですか?」
ドレイク「……時折、姉妹喧嘩は勃発する。具体的に言うと……そろそろ、乱戦エリアが形成されるかも知れない」
竜形態は三部位で、それが2人だと六部位ですか。半径4mという怪獣大決戦ですね。
そしてそろそろ顔が長くなろうとしていた時でした。
ムーテス「お姉さんたち!変身すると、ドレス着れないっすよ!」
これで収まりました。本当ならそのまま同士討ちにさせて、さっさと逃げられたら良かったんですけどね。
そうして喧嘩で決着がつけられなくなると、今度は裁定をこちらに委ねてくるから厄介です。
ジーク「ともあれ、俺たちはどちらに渡せばいいかはっきりするまで、
陣の外れにでもいますんで……決まったら取りにきてください」
双子「あら。ここの天幕に泊まればいいじゃない」
「そうよ、フィルゲン様からの使いを、そう粗末な扱いをして返すわけにはいかなくてよ」
ジーク「げ」
双子「歓待してあげてよ、ぼうや」
ジーク「うわーいやだー!俺はでかい乳はきらいなんだー!」
一同(大爆笑)
どこまで本気か分かりませんが、ルーちゃんはツルーンステーンだったので問題なし。
実際は普通にお酒や御馳走で歓待しようとしているので貞操の危機でもなんでもありません。
とはいえ下手な答え方をしたら命の危機ではあるかもしれませんけどね。どっちを選んでも角が立つし。
ジーク「よし、腹を決めた」
双子「どっち?」
ジーク「……一晩ゆっくりと考えさせてください!」
一同(爆笑)
ムーテス「素晴らしい逃げ!」
メッシュ「さすがです、ジーク様」
こうしてぞんざいズは上等な天幕に通されて歓待を受けるのですが、さてどう答えるべきか?
ソラ「このままお兄さんだけ、この天幕に置いておいたら……面白いことがおきそう」
ジーク「やめてくれー!それは許してくれー!」
エア「そこまでいやなの」
かつてない拒否っぷりです。ルーちゃんやホーリィ、幼女相手の時とはまるで態度が違う(笑)
天幕で御馳走を食べる時も様々な情報を流し、双子のどちらが本命なのか分からないようにします。
このまま答えを返すこともなく姉妹喧嘩が勃発し、共倒れになってくれたらどんなにいいか。
しかしそう上手く行く筈もなく、深夜にミカファが天幕にやってきます。
ミカファ「皆さんの中の責任者はどなた?」
一同(無言でジークへ視線一直線)
ジーク「うわ、こんな時に呼吸を合わせるなよ!」
ミカファ「そうやっぱり貴方なのね。……少しお話をしたいの、わたくしの天幕にいらっしゃらない?」
流石にジーク1人で行かせるわけにもいかず、5人全員で行きます。審査員は奇数の方がいいし。
彼女はドレスがどちらのものかをぞんざいズに裁定してもらうのが目的であり、その懐柔に出たのでしょう。
ところが天幕に残してきたフェイが天幕に侵入してくるキャロンの姿を確認して急展開。
天幕が無人になっていることでミカファに先を越された事を悟ってしまいました。
顔が長くなりかけつつ、ジョイナー走りでミカファの天幕へダッシュしてきます。いよいよ女の争い勃発か?
ところがその時急な伝令が入り、何事か知ったキャロンは先程とは違う様子でこちらの天幕にやってきます。
キャロン「お姉さま。わたし、たった今重要なことを伝令のほうから伺いましたの」
ミカファ「あら、何かしら?」
ジーク「びく。何だ?俺たち関係のことか?」
ムーテス「問題は、何がバレてもヤバイってことだよね」
エア「わたしたち神秘のベールに包まれた集団ね」
一体どんな知らせが入ったのか。心当たりがありすぎて嫌な予感しかしません。
ところが更に急なことに《危険感知判定》が発生し、成功した人は上空から何かが飛来する風切音が聞こえます。
一同「天幕飛び出す!」
メッシュ「でも姉妹の話には耳を立てておきます!」
キャロン「お姉さま。ここの奴隷たち、フィルゲン様を大切にしているように見えて、
じつはオルガのほうにもしっぽを振ったあげく、
主不在のゼルブリスでレオルズの決起を促したというじゃないの!」
ムーテス「はあぁあ?」
メッシュ「決起したんですか!」
どうやらオルガがレオルズの暗殺に失敗したようです。オルガは迎え撃たれて敗走した模様。
更にレオルズに目をかけられていた奴隷達が彼の立場を守るために反旗を翻し、勢いで決起してしまったとか。
よってレオルズの決起自体はぞんざいズにも予想外のことですが、裏で糸を引いていた点では真犯人ですね。
当然先程の風切音の正体はウォードゥームの砲弾です。ゼルブリスを追われたオルガが報復に来たのです。
オルガ「貴様ら!ワタシに都合のいいことを吹き込んで、まさかレオルズにも肩入れしていたとは!
聞いていなかったぞ、戦いバカのあいつに脳みそが付いていたなんて!」
ジーク「は?」
オルガ「ちゃんと魔法を使ってくる、戦いの指揮を取れるウサギ野郎がいるじゃないか!
あのコンビのせいで、エライ目にあったぞ!ゼルブリスをこうして追い出されてしまうほどにな!」
どうやらサティがレオルズの軍師になったようです。「フェイダン博物誌」では"剛拳の頭脳"なんて呼ばれています。
レオルズ自身も彼の影響を受けてただの戦いバカから変わりつつあり、街に新しい一派を作ろうとしていたようです。
今回は彼の様子を見に行かなかったので仕方ありませんが、彼の屋敷には彼の新派である人族の奴隷達が集まりつつあったとか。
ところでこの本だとレオルズの種族名がオーガエリミネーターになってるんですが、彼も名前を持つ魔物に進化するのかな?
テラードレイクバイカウントのように、オーガバーサーカーから1レベル高いものとするなら12レベルぐらいはありそうですね。
オーガの上位種には13レベルのオーガウォーロードというのもいますが、それと同格か少し低いぐらいでしょうか。
では何故彼がそんな事になるかというと、それは現在のぞんざいズの物語より未来にある事件がゼルブリスにあるからかと。
オルガ「せめて、原因であるお前たちの首をとって、フィルゲン様への申し開きとする!」
メッシュ「違うのです!キャロンさん、ミカファさん!私たちはあのゴブリンシャーマンに頼まれて、
フィルゲン様の贈り物だということにして、あのドレスを届けにきただけなのです!」
オルガ「そ、それは置くとして!」
双子「なんですって!」「私たちの仲を裂こうとしたのね!」
かくしてキャロン&ミカファ、オルガ&ウォードゥーム、そしてぞんざいズの三つ巴の戦いが始まります。
蛮族の両方ともぞんざいズを敵視しているので単に敵が多いだけともいえる。蛮族同士で争ってはくれない。
もしぞんざいズがやられたりしたらそんな展開になるかもしれないけど、そうなる前にこちらから潰さねば。
★大混乱の湖岸の戦い
先制はぞんざいズが取りましたが、いかんせん相手が多いので苦戦しそうです。
ジーク「……いま一瞬、結構本気でフィルゲン来てくれって思った」
エア「ちょっと!誰が味方なの!」
ジーク「いや、しかし、少なくともこの状況は収めてくれるだろうし」
メッシュ「それは、私たちまで収容されるということだと思いますがね」
前衛の内ジークとメッシュはウォードゥームを、ムーテスはミカファを相手にすることにします。
ウォードゥームは《鷹の目》を持ちますから、後衛が<ガン>で狙い撃ちにされる前に倒したいわけです。
ムーテスはそれが終わるまで双子を本気にさせない(竜形態にさせない)程度に引きつけます。
ちなみに《鷹の目》はPCも習得できる戦闘特技であり、遮蔽越しに射撃攻撃や魔法攻撃が可能になります。
これは乱戦エリア越しの攻撃が可能ということでもあるので、一方的に後衛を狙う事も可能になります。
1ラウンド目
ソラはウォードゥームの全部位に"ライトニング"。オルガも狙いましたがこの場合当たるかは半々でした。
結局オルガに当たったかは不明ですが、ウォードゥームの方は抵抗されつつ11点とか14点削りました。
エアは"フィールド・プロテクションU"を使うも1ゾロで不発。ただでさえ援護魔法の手が足りないだけに痛い。
メッシュはウォードゥームの片側の胴体に蹴りを放ち、1回目は外すものの2回目が3回転クリティカル!
メッシュ「うおー!39点ダメージです!」
ジーク「メッシュ……メッシュのこと、忘れないぞ……?」
メッシュ「やめてください、ジーク様。わたしのクリティカルを死亡フラグ扱いするのは!」
そして《ファストアクション》で更に2回攻撃し、またもクリティカルですが胴体は倒しきれない。
ジークも攻撃しますがやはり倒れない。防護点9のHP60ですし、<剣のかけら>も入ってなかなかタフですね。
ムーテスは練技2つを使いつつキャロンの方に接近。
ムーテス「違うんす、違うんっすよ、誤解なんです!と唱えながら接近。一パーティ二枚舌三正面作戦」
ウォードゥームは胴体の機銃でメッシュを狙うも回避され、もう片方の機銃はジークに6ゾロで命中。
砲塔の機関砲はエアを狙って27点も削る。機銃は2D+10点、機関砲は2D+20点の魔法ダメージだから堪らない。
オルガは前衛に"スネア"、実にゴブシャーっぽいですね。これでメッシュとムーテスは転倒します。
そんなムーテスにミカファは《マルチアクション》で"スタン・クラウド"&近接攻撃、魔法は抵抗するも攻撃は命中。
ムーテス「ああっ、痛い、痛いですー」
ミカファ「ほほほ、痛いでしょう!」
メッシュ「どんなプレイですか!」
キャロンの方は突然のことだったのでこのラウンドはまごまごして終了。
そしてラウンドの終了と同時にドームが消滅して神官戦士団が参戦!
ぞんざいズの戦闘を見て攻勢に出るチャンスと判断したのでしょう。蛮族軍の雑魚は彼らが相手をします。
ムーテス「よく考えたらバロン姉妹は逃がすわけにはいかないんだよ、
僕たちの首輪を外すスペアキーを持っているんだから!」
主従「そうだった!」
メッシュ「今、ミカファさん超フリーですよ!逃げそうになったら、嘘でもいいので、誰か乱戦宣言をしてください」
エア「そんなのしたら、弄り殺されるだけでしょう」
ミカファは一応指揮官なので、ドームが解けたこのタイミングをチャンスと見て戦う意思を見せています。
それぞれ退くわけにはいかないので派手な乱戦になりつつあります。ちなみに1つの乱戦エリアの最大参加部位数は20です。
ここからはラウンドの進行がよく分からなくなりますが、できる限り推測します。
2ラウンド目?
エアは全員に9レベル神聖魔法の"ホーリー・ブレッシング"で防護点の効かないHPを30点上乗せです。
SWでいう"バルキリー・ブレッシング"のように一時的にダメージを肩代わりする障壁を作ってる感じですかね。
メッシュは更に胴体を削り、ジークの攻撃でついに崩壊。そのまま《マルチアクション》で砲塔に魔法攻撃です。
ソラは魔法で砲塔とオルガに攻撃し、ムーテスは「すいませんすいません」とか言いながら尻尾を更に強化。
ミカファに代わってキャロンが"スタン・クラウド"を使いますがムーテスは必死に抵抗。
《マルチアクション》で殴っても"ホーリー・ブレッシング"が剥げただけ。自慢の防護点が効かないので素通しですが。
3ラウンド目?
ソラは"ウェポンマスター"でムーテスに《武器習熟/斧》を付与。攻勢に出る準備をしておきます。
ウォードゥームの砲塔はエアの"ホーリー・ブレッシング"を剥ぎ、そこでオルガの"シュートアロー"が命中。
6レベル妖精魔法で威力20で矢を命中させる魔法ですね。SWから御馴染みの必中の物理攻撃、防護点が低い相手に有効。
4ラウンド目?
ジークの近接攻撃が更に砲塔を削り、《マルチアクション》による"カオスショット"が抵抗1ゾロで砲塔を破壊!
ソラはMPがキツイので双子とゴブに"スティール・マインド"をしてMPを奪います。
これは対象のMPに威力10でダメージを与え、その適用ダメージだけ術者のMPを回復させるというものです。
ただしMPの回復は対象のMPの最大値の10分の1が限界となるため、一気に何十点も回復できるわけではない。
これを機についにムーテスが攻勢に出ます。ただし<デスサイズ>ではなく"ドラゴンテイル"で強化した<尻尾>で。
メッシュ「不思議ですよね。持っている武器より、練技で最大まで強化したしっぽのほうが強いというのは」
キャロンはムーテスに《魔力撃》。オルガは追加のウォードゥームを呼び出す、この状況でお代わりとは鬼ですね(笑)
ウォードゥームについてはまだ攻撃命令は与えられていない様子。そして姉妹に危害を加えられたのでミカファが戻ってきます。
5ラウンド目?
ムーテスは更にキャロンを<尻尾>で殴り、エアは自分と妹と執事に"ウォーター・シェル"。
それを見たオルガは魔法ダメージを避けて物理ダメージの"シュートアロー"を使いますが、MPが心許ない様子。
6ラウンド目?
ムーテスは変身の兆候があるキャロンには触れずにポーションで自己回復。
主従の必死の攻撃でついにウォードゥーム撃破なるも、オルガが2体目に攻撃命令を与えました。
その上キャロンとミカファがついに竜形態に変身!部位モンスターの脅威はまだまだこれからです。
7ラウンド目?
ジーク「うわぁあ、きつい。連戦キツイ!」
ここでぞんざいズの戦いを見た人族の奴隷達は反乱を起こします。勝てば自由の身ですからね。
追加ウォードゥームの機関銃と機銃、双子のツイン《魔力撃》が容赦なくぞんざいズを襲います。
8ラウンド目?
ついにメッシュの《投げ攻撃》がオルガを捉え、《踏みつけ》によってオルガの野望と命は潰えました。
これにより主を無くしたウォードゥームは沈黙。命令が撤回されるまで戦うタイプじゃなくて良かったですね。
ところがそれを見たミカファは離脱を宣言。ムーテス1人では三部位のキャロンを突破できません。
鍵を持っていかれるのがぞんざいズにとっては一番キツイ。最悪の結末が頭を過ぎります。
ジーク「……ペガサス隊、こいー!そいつ、止めてくれー!!」
GM「あ。覚えてましたか」
ジーク「へ?」
なんと本当にペガサス隊が来ていました。一度彼女をアイヤールに帰したことがここに来て功を奏します。
ジャスティ達はミカファの離脱を阻止するように空中に展開。そして彼女の後ろには懐かしい顔がありました。
ジャスティ「手紙を渡した、神殿で一番えらいらしい子が、心配してどうしてもついてくるって」
エア「……ということは、まさか」
ジーク「ルー!?」
蛮族に捕まったと聞いて心配したのでしょう。涙目でぞんざいズを睨みつつ、援護の準備をします。
ぞんざいズの疲弊具合の酷さに"コール・ゴッド"で一気に片をつけるつもりのようです。ただし本物程の力はないらしい。
準備に6ラウンドかかりますが、発動したらHPが0になって生死判定も行います。最悪死ぬ可能性もあるのですが……。
ジーク「そんな呪文いらん!とっとと6ラウンド以内で俺たちが片付ける!」
一同「おー!」
そして猛然と反撃に出たぞんざいズはわずか4ラウンドで竜形態の双子を倒してしまいます。
誰かを守る時のぞんざいズの底力がこの土壇場で発揮されました。ダイスの神様は変な所でドラマチックですね。
★湖の国に朝陽が昇る
倒れた双子から耳飾りを奪い、それを首輪に当てると首輪は外れました。
それを見た奴隷達は自分の首輪も外して貰おうと列を作り、ぞんざいズは彼らを全員救う事に成功します。
一時はどうなるかと思いましたが、これで彼らは自由を得てルーフェリアの国も一時とはいえ守れたんですね。
パニックを起こして敗走する蛮族軍ですが、彼らの侵攻がこれで終わった訳ではありません。
戦場の上空を飛ぶ皮膜の翼を持つ男が落とす影がそれを主張するかのようです。
ジーク「……フィルゲン」
フィルゲン「なかなか、やるじゃないか。指を噛まれたのは、少々痛かったぞ」
エア「負けずに睨み返します。片手では、ルー様をグリグリしつつ」
ルー「うーっ」
ジーク「あああ、ごめんなルー」
苦笑いしつつフィルゲンは飛び去っていきましたが、いずれまたルーフェリアに攻めてくる日が来るでしょう。
しかし今は勝利を喜び、喜びに湧き立つ住民達に向かって凱旋する権利があります。
リッタさんをはじめとするカナリスの住人達がぞんざいズにわっと押し寄せてきます。
メッシュ「長い戦いでしたから、感慨もひとしおですねえ。ささ、観衆の歓迎に応えるのです!」
エア「ただいま、みんな!無事だった!」
ジーク「帰ってきたぞー!自由だー!」
こうしてぞんざいズはルーフェリアの国の英雄となりました。しかし彼らの冒険はまだまだ終わらない。
次回からは新たな仲間を加え、色々気になるアイツやアイツのその後も明らかになりつつ新たな冒険が待ち受けています。
……さて、本編はこれで終わったわけですが、ゼルブリスのその後について少しだけ触れておきましょう。
「フェイダン博物誌」ではフィルゲンやゼルブリスのその後がちゃんと明かされているのです。
それによれば侵略に失敗したゼルブリスは地下へ拡張し、そこでフォルミカの地下帝国を発見しました。
フォルミカは直立した蟻の姿をした蛮族であり、その生態も蟻に似ています。
戦士である6レベルのフォルミカソルジャーや、それを束ねる隊長である8レベルのフォルミカチーフ。
女王蟻の役割を果たす9レベルのフォルミカマザー、そして王である11レベルのフォルミカロードなどがいます。
ゼルブリスはフォルミカの地下帝国と戦い勝利し、これを併呑。"深奥都市"ゼルブリスに生まれ変わったのです。
地下帝国の王であったフォルミカロードを新たな四天王に加え、魔動機文明の様々な遺産をゼルブリスにもたらしました。
四天王の残りの枠は空席とし、そこに収まるだけの実力者が育つ励みとして残してあります(つまり新たな四天王を設定可能)。
しかもこの戦いの中でフィルゲンはテラードレイクカウントへと進化。通常の伯爵を上回る18/19レベルに成長しました、
これによりルーフェリアの"コール・ゴッド"にも耐えられるようになり、今は新たな侵略の準備を進めています。
いつの日か更に強力になったゼルブリスの軍勢がルーフェリアに攻め込んでくる日がくるでしょう。
その時にルーフェリアの国がどう立ち向うのか。ディルフラムとアイヤールの戦いに並び興味深いことです。