「ロードス島伝説3 栄光の勇者」著:水野良 出版社:角川書店

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第T章 遠き平和

★1

一時は亡国の危機にまで晒されたハイランドでしたが、ナシェルの活躍ヴェノンの不審な行動などでようやく疑惑が晴れました。

それどころかリュッセンが滅亡したことで諸国は危機感を抱き、マイセンを公王とした竜の盟約の復活にまでなったのです。

戦闘こそ行っていなかったものの戦争状態であった事は事実なので、諸国はハイランドの王城で会議を開いて仲直りです。

ついにマイセンがモスの盟主である公王として認められたのです。ハイランドの立場は一気に好転、ナシェルもようやく肩の荷が一つ下ります。


リュッセンは滅亡とは言っても完全に滅びた訳じゃありません。あの時竜騎士に助けられたヘスラー王とその家族は無事ですからね。

亡命王ヘスラーから祖国奪還の嘆願が出されたので、今後モス公国の連合騎士団はリュッセン奪還を目的の一つとします。

騎士団をまとめる名誉将軍は当然亡命王ヘスラーです。しかし武人ではないのでバーランがそれを補佐します。

本当なら公王の皇太子であるジェスターが就くべきなんですが、政治的配慮でバーランが実質的な指揮官になったのです。


会議では不審な行動が目立ったヴェノンに対し、レントンの若い王様やバーランは怒りを顕にしますが、特に罰せられはしません。

ヴェノンの外交はいつも狡猾なもので、自分の立場が悪い時には愚直な使者を遣わします。バカの一つ覚えのように同じ事を言わせるのです。

今回は「ヴェノンは魔神とは同盟していない」「ハイランドの疑惑が晴れた以上はレントンへは侵攻しない」「会議の決定に従う」です。

ひたすらこれを繰り返して不利な約束は交わさないのです。うっかりバーランが宣戦布告などをしましたが、マイセンが仲裁して何とかなりました。


しかしまだ予断は許されません。魔神が次にハーケーンとヴェノンのどちらに来るか分かりません。両国は魔神の領域と国境を接しています

騎士団はレントンの街に駐留することになります。ここからなら1週間以内にどちらの国にも援軍を送れますからね。

もっとも、不意を撃たれたとはいえリュッセンは1日で落ちたのです。1週間も保つのかは非常に疑問ではありますけどね。

攻めてきたとして狙われるのは、ハーケーンの場合手前にあるミルスの街、ヴェノンの場合はマスケトの街でしょうかね。


続いて開かれた夜の宴では、ようやくナシェルがまともに社交に参加できました。今までは本当に酷かったですもんね(苦笑)

ナシェルが行くと一瞬場が静まったので、やはりいい印象は持たれてなかったようですね。でも笑顔で杯を重ねると直ぐに仲良しです。

すると今のナシェルは竜騎士です、若い騎士たちからは魔神や竜について色々と質問されます。凄く和やかで、ちょっと安心できました。


ナシェルは今まで運命に翻弄されるかのように色々な困難を自らの力で乗り越えてきたので、とても十代とは思えなかったんですけどね。

本当なら彼らのようにこうして宴でまったりしててもいい筈なのに、この短期間で母国を捨てたり野生の竜を捕らえたりと波乱万丈の人生です。

そんなナシェルだから、歳相応の面が無くなってしまったのかとちょっと心配でした。彼らとの和みっぷりを見てると杞憂だったようですが。


そんなナシェル達の前に現れたのがニースでした。例のレントンとヴェノンの戦闘が縁で、この場に呼ばれたようです。

ニースが現れるとまた別の意味で場が静まりますね。その佇まいだけで聖女という雰囲気を発しています。海のような包容力というか。

ニースの目的は鉄の王国へ真実を届ける事です。当然ナシェルにも色々尋ねる事がありますからね。一連の事件の中心にいたし。

聡明なニースは既にナシェルがフレーベと共に魔神と戦う誓いを立てていると知っています。だからニースとナシェルも盟友なのです。

ニースが味方になってくれているだけで、ベルドとは違った意味で心強いです。その慈愛の精神と信仰心はきっと助けになってくれます。


★2

この宴の席で、ナシェルには竜騎士の件とは違った意味でのターニング・ポイントがありました。彼の伴侶との出会いが

ナシェルはマイセンの上の娘であるラフィニア姫に連れられて、裏庭に呼び出されました。ラフィニアは今年で14だそうです。

ラフィニアは「ある御方がナシェルを呼んでいる」ということでナシェルを連れ出したのですが、それは口実でした。

呼んでいたのはラフィニアです。ナシェルってば、普段は恐ろしく鋭いくせに、こういうことには鈍いんだから(笑)


ハイランドは質実剛健の国柄です。宮廷の婦人達は宴の席では着飾ったりせず、給仕に専念します。王族の女性も同様です。

ジェスター達の母親であるウィラン王妃はレントンから嫁いできた訳ですが、子供を5人も生んでもまだ美しく、躾にも厳しい。

だからこうして男と一緒に姿を消すという事をすると、ウィラン王妃に後で怒られちゃうんですよ。嫁ぎ先に順応したお嫁さんですね。

別にそういうのは女性だけではありませんよ。男だって、マイセンですらこの裏庭で土いじりとかしてますからね。ガーデニングかもしれないけど。

王族だからといって怠けず、やるべき事はキチンとやる。この風潮はアラニアやカノンにも見習って欲しいものです。


ラフィニアは怒られるのを覚悟でナシェルを呼び出したのです。丁度ナシェルの母親のエリザがブルークを呼び出した時と同様に。

当然エリザもあとで怒られたそうですが、それでもスカードの王子だったブルークの相手をしたかったんです。そんな小さな恋のメロディー

そしてラフィニアもナシェルが好きなのです。実はナシェルにもラフィニアにも縁談が来てるのです。だから焦って強硬手段に出たのです。


ナシェルなんて今は竜騎士だし、王族の嫁ぎ先としては決して悪くはない。戦後を見据えた先行投資、というと語弊がありますが、それに近い。

バーランはナシェルにはあのエランダ王女を、と言ってきてるんですよ。「太陽の王子、月の姫」で猛威を振るった我侭娘ですね(笑)

同時にラフィニアには皇太子の長男を、という縁談があるそうです。何もなければ次の次のハーケーンの王様になる少年ですね。

バーランはマイセンを認めているんですよ。だから、こうしてハイランドとの縁を深めようとしてるんです。

実際この2国が強固な同盟関係を結べばモスの殆どは同盟の支配下になります。ヴェノン一国では対抗できないぐらいでしょうね。


戦いが終わるのを待っていたら、ナシェルはラフィニアの手が届かないところに行ってしまうかもしれない。それが怖かったんですよ。

思いを告げてラフィニアは耐え切れないらしく去っていきましたが、残されたナシェルだって大変です。それを聞いて自分はどうすればいいのか?

今までのナシェルはやんわりとそういう話を避けてきました。しかしこれは避けられません。無視したら流石に薄情ですよ。

かといって時間は解決してくれないし、それどころかもう暫くしたら正式に縁談が発表される。そうなったらもうアウトです。

仮にラフィニアと結ばれたら、ナシェルのハイランドでの立場は強くなるし、マイセンがそれを認めるかも分からない。王族って厄介ですね。


誰にも相談できないナシェルは、仕方なくワールウィンドに相談します。秘密の話が出来る相手が竜しかいないとは……(苦笑)

ワールウィンドには人間の男女の関係を説明する所から始めないといけないらしい。高い知性を持ってても人間社会の事なんて知らないし。

まぁ人間も動物とそう変わりません。男と女が結ばれて子供が出来る。そしてその子供もまた、異性との間に子を作る。永遠の連鎖です。

基本的に雌はより強い雄を選ぶという点でも一緒です。そうしていく内に、強い遺伝子(あるのか?)だけが残っていく。


しかし人間と動物が決定的に違う所もあります。それは力だけが強さではない、という点です。ここでいう力は生存する強さです。

他の雄と戦っても負けない。厳しい環境でも逞しく生きていける。そういった、生物としての甲斐性といったところですかね。

ところが人間の場合は財力だとか権力だとか血筋だとか容姿だとか心だとか、そういった様々な要素が男女の関係に作用します。

マイリー司祭は人生は戦いだと説きますが、男女の仲もまた戦いなのです。本当に色々な恋愛感があるでしょうしね、うんざりする位。


「竜の心」でナシェルはワールウィンドに名前と目的を与えて心を掴んだ訳ですが、まだ人間にあって竜にないものがあるそうです。

それは子を残す事だそうです。定命のものだけが持つ崇高な使命です。子を残すことで、種族としての不死性を得られるのです。

同時によりよい在り方に変化する。竜のように命に限りがないと、その必要性はないのかこれは出来ない。この世界にも進化論とかあるのかな?


でも竜は卵から生まれます、それは間違いない。ところがワールウィンドが言うには、竜は卵から孵るが卵を産まないのです。

では竜の卵は何処から来るのか?。これもまた、竜族の謎の一つなのです。どんな賢者も、ウォートですら知らないでしょうね。


竜語魔法には"エッグ・シェルター"と"リボーン・ドラゴン"という魔法があります。前者は卵に篭って自己回復、後者は竜へ転生する魔法です。

人間やリザードマンが後者を使えば竜として卵から孵りますし、竜が前者を使えばある意味生まれると言えなくもない。

また、死に際の竜が後者を使ってもやはり転生したと言えると思います。これらの方法で卵が発生する事はあるでしょうね。


ではそれ以外の方法で、自然に竜が生まれる事はないのか。勝手に卵が空中から発生するとか……そんな馬鹿な。

竜王は始原の巨人の躯から生まれましたが、自然発生がないとするとそれ以後の竜はどうやって発生したのか分かりませんよね。

竜王が転生した姿だとか……まぁそういうケースもなくはないでしょう。ナイトブレイカーズでは牛に転生した竜王がいたぐらいです(笑)

またスチャラカ2では成竜が子供(卵)を抱えていたし、何がなにやら。ていうか両方とも昔の山本先生の設定ですもんね、公式じゃないかも。

もし竜王を除く竜が竜王の"リボーン・ドラゴン"によるものだとしたら、竜司祭からの転生を除いた竜の総数は竜王の総数を越える事はないですね。


ワールウィンドですら、答えを知りません。だから彼らは自問する。自分達は何処から来たのか、自分達のルーツやレゾン・テートルを求める。

だからこそ、ナシェルは名前と目的を与える事でワールウィンドの心を掴めたのです。ワールウィンドにとってはちょっとした幸せなのかな。

自分の事は分からないけど、ナシェルへは多少のアドバイスはしてくれました。ラフィニアの事で悩んでいる、だから心に答えがある、と。

後日、ハーケーンの皇太子の息子とハイランドの妹姫との縁談が公表されました。どうやら、2人でお願いしたらしい。


★3

ヴァリスではワーレン王が崩御した為に、街をあげて喪に服していました。問題はあったものの、31年もの間平和に国を治めてくれました。

すると次の国王が非常に重要な問題になるわけですが、これが10日過ぎても決まりやしない。選王会議はエラく荒れました。

国王になるには2/3以上の票が必要なんだそうですが、大きく二派に分かれた両候補者はその票を得られなかったのです。

仕方なく魔神との戦いで最も功績を挙げた者を王とすることになりましたが、騎士団の要である王なしに魔神と戦えるのかと民衆は不満です。

それに彼らは王に相応しい人物を知ってるから尚更不満です。その騎士とは当然"百年に一人の騎士"ファーンです。


ファーンが登城した時、宮廷ではヴェノンを討つという話が上がっていました。魔神との同盟があったから、というのがその理由です。

その案を強く主張するのが近衛騎士隊長ドルロスでした。どうやら彼がファーンと並ぶ候補者のようです。大司祭が強く推したとか。

ドルロスはヴェノンの不善っぷりを熱く語り、ヴェノン討つべし!と声高に主張します。多分国王になる事を念頭においてるんでしょう。


しかし冷静でモスの事情にも明るいファーンはそれを止めます。既にファーンはモスがまとまった事を知っています。

今動いても「竜の盟約」を発動されて、モス諸国を全て敵に回す事になるのは明白です。それは魔神を利するだけなのです。

実はファーンは以前の出張の時にモスにいる騎士、商人、司祭などと親交を得ているので、かなり正確な情報を手紙で知る事が出来るのです。

情報技術が発達していないロードスでは、情報は人の移動速度と同じ程度で広がりますからね。このようなマメな行いが情報戦を制するのです。

現にドルロスは最近のモス事情をしらないようですしね。国際的な視点も持たないで国王になれるのか。これだから保守的な聖騎士は。


ドルロスに対してファーンはモスと協調すべきだと提案しますが、賛否は半々といったところですか。否の人はドルロス派なんでしょうね。

その場では適当な行政問題に話を移してしまったので、遠征の件は棚上げになります。まぁ実行されないだけでも十分ですけどね。

来るし紛れに最も功績を挙げた者なんてことにしちゃうから、聖騎士の間での功名争いが起きるんですよ。絶対魔神との戦いでは不利になる。

ファーンが国王になれば、それを推すジェナートの教団内での発言力も強くなる。ドルロス派はそれを恐れる人々なのです。


屋敷に帰ったファーンを迎えてくれたのは、帰国したフラウスでした。ベルドとウォートも今はロイドにいますよ。

あれから3人はアラニア、カノンと魔神を倒して回ったそうです。ベルドの名声はもう半端じゃなくなっています。

フラウスは功名争いをする聖騎士や、ジェナートの改革を恐れる腐敗した教団に、いたく憤慨していました。どう考えても間違ってると。

ファーンが若いという理由だけでドルロスを推した大司祭まで批判する程です。この威厳です。この威厳がフラウスの聖女の資質の現れです。


フラウスはあくまでもファリスの神託に従っています。あの英雄の闇を払えというかいうやつです。その英雄こそがベルドだと信じています。

フラウスは強固な信仰心を持っています。でもベルドへの思いはただの信仰心ではないと思います。一人の女としての、愛もあるはず。

ではフラウスは愛と信仰を取り違えているのかといえば、私は違うと思います。フラウスは信仰と愛を両立させている、これが真実だと思う。

だからこそフラウスはあんなにも神々しく戦えるし、ベルドが関わっているとなったら更に綺麗な魂を感じさせるのです。


実はファーンは、彼なりにフラウスを気にしていました。ジェナートが嫁にとか言っていた時も、ちょっと本気でした。

フラウスとは魔神との戦いでは戦友でありたいと思っていたし、例の神託の手助けをしてもいいとすら思っていました。

そんなフラウスがファーンを置いてベルドと一緒に魔神討伐に行ってしまったのだから、置き去りにされたような気分だったそうです。

"百年に一人の騎士"とも称えられる男が、人知れずピエロを演じていたというのはなんだかな。妙なヘタレ感が漂っているのがまたいい(苦笑)


フラウスの選択に関しては、別に否定しちゃいません。ただ心配事はあります。ウォートに至っては何か企んでるのは確実だし。

フラウスはベルドの闇を払うとか言っていますが、ファーンに言わせればその闇こそがベルドの英雄性です。それは払えないのではないか。


今更フラウスを説得したりはしないけど、言っておく事はあります。それは百の勇者が各地の王国と衝突しつつあるという事です。

単純に民心が百の勇者に行くのが面白くないから、というのもあるでしょう。しかし百の勇者の方に全く非がないとも限らないのです。

ファーンは予想します、民衆はいつまでも百の勇者を支持しないと。ファーンは人の心の暗部が見えるからこそ、そう言えるのです。

それは後に明らかになりますが、百の勇者の騙りが出るのです。百の勇者を詐称して悪事を働く輩がボチボチ出てくるんですよ。

ファーンはいい目をしていますね、流石に政治が分かる男です。やはりファーンの方が国王に相応しいような気がします。


百の勇者がどうであれ、魔神の暗躍はこれから益々活発になっていきます。比較的被害の少ないこのヴァリスだって例外ではありません。

そうなってしまっては、聖騎士は自領を守るので精一杯です。他国になんて構っていられません。領民第一ですからね。


フラウスは国境があるからそうなるのだと考えています。そしてロードス全土が神聖王国になれば大丈夫と言いますが、それはやはり危険です。

ロードスの住人の全てがファリス信者ではないし、すべてが神権が王権より上にある政体を受け入れられる訳がない。

そういう画一主義は普通成功しません。極論は正論にはならないのと一緒です。仮にそれを実現させるとしたら、どれだけの血が流れるやら。


しかもその旗頭がベルドというのはどうかな。あのベルドがファリスの名の下に戦う姿なんて想像できませんよ(笑)

ファーンはベルドが統一国家を起こしたとしたら、その国はベルディア(ベルドの私領)になるのではないかと考えますが、ある意味正解。

その国はもう50年以上先に、南の"神々の住まう地"クリスタニアで実現します。そこには確かにベルディア帝国が出来るのです。


そんな訳でファーンはもっと現実的に、連合によってロードスがまとまればいいと考えています。例えばモスのような連合体ですね。

ファーンは頭の固い連中とは違います。自分の考えだけが正義ではないと知っています。だからフラウスの理想が叶うのもいいと許容できる。


ファーンはフラウスを見送る為に門まで出てきますが、そこへドルロスがやって来てファーンを連行すると言うのです。

何でもファーンにヴァリスの至宝である三聖具の窃盗の疑いがかかっているのです。ドルロスは別にファーンをハメようとはしてませんよ。

ドルロスは愚直ですが、不正を嫌う男でもあります。使命を完遂する為には命をかけるような面もあります。そういう邪悪な事はしません。


三聖具とは"法の剣(ローフルブレード)"、"正義の鎧(ジャスティスコート)"、"光の盾(ライトリフレクター)"という一揃いの魔法の武具です。王権の象徴で、全部魔力+3というとんでもないものです。

別に"コール・ゴッド"によって作られた祭器という訳ではありません。付与者は"聖王の父"ディレイス、多分カストゥールの魔術師。

そのくせ効果に「ファリスの正義」が出てくるのだから、祭器である可能性も否定し切れません。一体どんな出自の武具なんでしょうね。

余談ですが、三聖具を全て合わせた価値は銀貨136万7000枚にもなります。当然非売品なので買えませんがね。


しかしこれが盗まれたというのは、ヴァリスにとってはとんでもない事件です。しかもその犯人がファーンなんて信じられません。

ファーンは不吉な予兆を感じながら、ドルロスとその配下の騎士達に連れられて王城に向かいます。フラウスも付き添いますよ。


第U章 大湿原の古城で

★1

城に連行されたファーンでしたが、宮廷魔術師マイスの"センス・ライ"によってあっさりと疑惑は晴れました

マイスは賢者の学院出身の魔術師で、敬虔なファリス信者でもあります。若いながら5レベル以上の魔術師なんですね。

なお、後にヴァリスの宮廷魔術師になるエルムは、この時点でまだ6歳。多分マイスの後任とかに当たるんでしょう。


マイスは生き残った宝物庫の守衛から事件の概要を聞いています。当然"センス・ライ"を使っていたので嘘のない証言を聞いています。

犯人は当直の聖騎士1名と守衛2名を斬って三聖具を盗んだそうです。その顔は紛れもなくファーンだったと証言しているのです。

フラウスの指摘したとおり、それは鏡像魔神の仕業でしょうね。ロジェールという聖騎士の頭のない死体も発見されていますし。


脳を食べたということは、相手は下位魔神のダブラブルグではなく、相手の能力や記憶までも写し取る上位魔神のドッペルゲンガーでしょう。

以前述べたように、ドッペルゲンガーは脳を食べる以外に対象を1時間以上観察すると、能力や記憶を写し取れます。

もしそのドッペルゲンガーが1時間以上ファーンを観察していたとすると、奴さんはファーンの能力も写し取っていますね。

そうでないのなら、姿を写し取っただけですね。相手が高位の魔術を使える上に変身も出来るならば、1時間ぐらい観察出来そうですが。


マイスは"センス・ライ"によって色々な証言を聞いたわけですが、周りがそれを信用してくれないとその証言は役に立ちませんね。

何故ならば、"センス・ライ"で真偽を判断できるのは魔術師のみであり、誰にでも分かる客観的な証拠にはなりえないのです。

だから嘘をつくと手を挟まれる"真実の口"なんてマジックアイテムもあるんですよ。これなら傍目にも真偽はまるっとお見通しです。

この場では皆がマイスの証言を無条件で信用したからあっさりとファーンの容疑は晴れたんです。疑おうと思えば、いくらでも疑えた筈ですがね。


ドルロスは「魔神に姿を盗まれる事自体、聖騎士として不覚」と言います。それを真に受けたのか、ファーンは自ら不名誉印を刻みます

カノンの自由騎士と同じく、これでファーンは騎士ではなくなったんです。これはヴァリスにとって致命的とも言える損失でしょう。

ファーン派の人達は露骨に無念そうだし、そうでない人達もきっと罰が悪いでしょう。ファーンの存在はそれほど大きかったのです。

ドルロスだって驚いてたし、別にこうなることを予想しての発言じゃない。単純にムキになって口が滑っただけでしょうし。

誰もがファーンの実力は認めている筈なのに、王位とかにこだわって一つになれない。鏡像魔神の犯行よりも、そっちの方が深刻な気がする。


実際にはファーンのように前線に立って戦うからこそ、姿を盗まれうるんでしょう。姿を盗まれた事はほとんど不可抗力だと思いますけどね。

それでもファーンは自らの汚名は自分の手で雪ぐと誓いを立てたのです。何処まで真面目なんでしょう、もう少し無責任になってもいいのに(苦笑)

マイスの"ロケーション"で既に三聖具の場所は分かっています。沈黙の大湿原の古城です。そこはきっと魔神の巣窟でしょう。

フラウスは手伝おうとしますが、ファーンは断ります。あくまでも1人で三聖具を奪還しようというのです。案外無茶な所もあるんですね。

20日経っても戻らなければ騎士団を派遣するように言い残し、ファーンは威風堂々とした歩みで城を後にしたのでした。


★2

フラウスはベルドとウォートの所へ帰ってきました。時間はもう夜、ファラリスの刻なだけに、ロイドでは人通りはあまり多くないらしい。

それでも開いている酒場を見つけた3人は、食事などをして今回の事件について話したりもしてました。結構好きです、このパーティー。

ウォートはヴァリスの警備体制にダメ出ししてました。ウォートが指導した国ならこういう事はないそうです。

実はウォートは以前もカノン、ライデン、レントン、ハーケーンなどにいたそうですが、いずれも為政者と合わず解雇

"荒野の賢者"という異名はそんなところから来てるんです。最初は蔑称だった訳ですが、本人は気に入ってるんだとか。


フラウス「白き騎士、百年に一人と謳われる高潔な人物よ。この国にはなくてはならないし、あなた(ベルド)が見習うべきところも多いと思うわ」

ベルド「余計なお世話だな。一人で戦うと宣言したのだろう?それなら、オレたちの出る幕はない。それから、オレには他人を見習う趣味はない

ウォート「余計なお世話というのは二重の意味があったわけか。なかなか、言葉が巧みじゃないか」

そしてフラウスに怒られて首をすくめるウォート。きっとこんなやりとりが今まであったんでしょうね、何かのドラマにありそうな関係(笑)


結局ファーンについては放置という方向で決定します。ファーンが噂通りの人物ならきっと大丈夫だろうと。

いや、それでも1人というのは結構無茶だと思いますけどね。ベルドだって1人だったら魔神将戦で死んでたし。

いくら強くても人間である以上限界はあるし、数は脅威です。助けがあるに越した事はないんですが、ファーンはやっぱり1人で行くんでしょう。

漫画の方の「ファリスの聖女」だと、ファーンにこの3人を加えた4人パーティーで武具奪還に乗り出すんですけどね。


その時、酒場になにやら柄の悪い5人の男達が入ってきます。彼らこそは百の勇者の騙りです。腐った山羊の首を、魔神の首だと言っています。

ファーンの言った通りですね。こういう連中がいると、本当に百の勇者への支持が失われそうですよ。恐らくは、こういう輩の方が多数でしょう。

なお魔神の首は腐りません。以前言ったように魔神の身体は仮初のものなので、腐敗はしないんですよ。放って置くと消えちゃいますが。


で、その連中は散々飲み食いした挙句、勘定を踏み倒そうとするのです。百の勇者から金を取るのか!という用意していたセリフで(笑)

首を置いていくから換金しろ、とかね。そこまでは良かったんですが、魔神が首を取り返しに来るかもしれないとまで言ったのです。

この時は流石のウォートの顔も笑ってはいられなかったようです。これもまた、噂というものの厄介なところなんでしょうかね。


フラウスは法螺を吹きまくっているこの連中への怒りで真っ赤になってました。フラウスは怒った顔も可愛いと思う(何言ってんだ)。

頃合を見てウォートは男達にストップをかけました。男たちの持つ首が白竜山脈の山羊だと看破し、追い詰めていきます。

恐慌をきたした男達は魔神が化けてるんだろう!と苦し紛れに言いますが、試してみろと言わんばかりの逃げ場のないリアクションを返します。

更にはベルドが勢いよく卓袱台返しも決めます。ベルドの風貌を見た男達は、相手が本物の勇者であると知って我先に逃げようとします。

2人とも本当に容赦ないですね。ファーンやニースならもうちょっと別の、徳のあるやり方で場を収めるんでしょうけど。嫌な黄門様です(苦笑)


男達はウォートの"スティッキング・ストリング"で絡め取られます。所謂蜘蛛の糸の呪文ですね。別名"スパイダーウェブ"。

本当は「ロードス島RPG」の呪文でしたが、ワールドガイドで導入されました。神聖魔法の"ブレス"や精霊魔法の"シャドウボディ"と一緒。

"ルーンロープ"、"ブレード・ネット"、"ライトニング・バインド"と同系統なんでしょうが、2レベルなだけにそんなに強力じゃない。

持続時間内でも脱出可能ですしね。一度抵抗に失敗したら自力では逃げられない他の呪文とは大違い、"スリープ・クラウド"程度の効果ですね。

それでもウォートの魔力でかけられると、脱出の目標値は最低21です。これでは10レベルあっても確実には脱出できませんね。


ウォートは命乞いをする男達を逃がしてやりました。彼らはなけなしの装備を置いて逃げていきます。まぁ勘定ぐらいにはなるでしょう。

店主はフラウス達に感謝して勘定を貰うのを遠慮しますが、そこは強引に渡します。フラウスの事を知っているのか、かなり畏まってましたね。

片づけを手伝おうとしても仕事を怠るのはファリスが望まない、と断りますしね。この辺がやっぱりヴァリスの住人なんですね。


ウォート「フラウス侍祭に感化されたのかな。正義に目覚めたのかもしれない

嘘つけ、どんな正義だ(笑)。でも本当に楽しそうでした。微妙に意地の悪い所がちょっとスイフリーっぽい。

それにしてもウォートは気楽そうです。当事者だというのにほとんど他人顔です。騙りが出る事すら、想定の範囲内なんでしょう。

百の勇者がどういう行動を取ろうとも、後に御す策をウォートなら出せるでしょうしね。まぁ任せといて大丈夫でしょう。


この頃になるとフラウスは、腐敗したヴァリスとファリス教団は一度解体すべきだと思うようになってきていました。

もしファーンが百の勇者になるのなら、心強い仲間になってくれるとも。闇が払拭されたベルドがロードスを統一してからもね。

聖王国ロードスか……本当に実現できると思ってるのかな?。魔神を倒し、ベルドを啓蒙する。それが出来たら、ロードスの未来は広がっている。

しかし当のベルドは、何処か冷めた様子をしていました。自分の限界を求めて魔神将と戦った結果、思う所があるんでしょうか。


★3〜4

ファーンは三聖具があるらしい古城を目指して、沈黙の大湿原を小船で渡っていました。妙に静かで風のない、鏡のよう湖面です。

湿原はゆっくりと広がり、幾つかの村が飲まれています。こんな所まで来る酔狂な人はそういませんよね。ここにはモンスターだって出るし。

湿原にあるルノアナ湖にはカストゥールの魔法都市、湖上都市クードが沈んでいるから、冒険者はそこそこ訪れるでしょうけど。


今回のファーンの装備はいつもの甲冑ではなく、チェインメイルです。正確にはそれを板金で補強していますね。

武器は魔法のブロードソードとラウンドシールド。ラウンドシールドは恐らくはスモールシールド扱いでしょう。

そしてライトクロスボウです。このクロスボウ自体は魔法の品ではありませんが、持参した短矢(クォレル)は魔法の矢です。

"追撃の太矢(リピーティング・クォレル)"というもので、1本が刺さると残りの矢も標的に刺さるそうです。ファーンの家に伝わる品(銀貨32万枚)だとか。

あとは格闘用のダガーですね。最早騎士とは思えない姿になってます、どちらかというの冒険者か傭兵ですね。


古城に就いたファーンはまず2匹のザルバードらしき魔神の襲撃を受けます。ここで早速"追撃の太矢"を使いましたよ。

ファーンの攻撃力は13でザルバードの回避点は12(5)だから、96.5%ほどで命中ですね。何処のスイーパーだって命中率です(笑)

ライト・クロスボウの必要筋力は最大でも15しかないので、それを導入したら打撃力は25にもなりますね。7振って6点です。

そしてファーンの追加ダメージは13ですが、選択ルールを導入すると12になります。あくまでも飛び道具の必要筋力を採用すると。

すると計18点です。この18点の矢が5発も刺さったんです。するとザルバードは生命点−20で即死ですね(笑)


もう1匹のザルバードはファーンの3回攻撃であっさり墜落。簡単にトドメを刺されてしまいましたトサ。ファーン強すぎ。

しかし3回攻撃というのは尋常ではありません。何となくツバメ返しチックでした。流石は業師ファーン、技巧派ですね。

一応戦闘オプション《2回攻撃》というのはあるんですが、流石に3回というのはないですね、今のところ。

あったとしても修正が凄そうだから格上に使うのは無茶でしょうがね。ちなみにファーンの魔剣が+1だとしても命中率97.2%


ザルバード程度が相手なら、ファーンはダメージすら受けないと思いますよ。防御ロールで4点以上出せればノーダメージですし。

ファーンの防御力が24(通常のチェインメイルの最高値)だとしたら5以上、83.3%でノーダメージですね。

実際ファーンは大した怪我もなく、クロスボウを船に残して古城に侵入します。侵入とはいっても正門から普通に入るだけですがね。


扉を開けたファーンはラグナカングの奇襲を受けますが、これも普通にブッコロです。下位魔神じゃお話になりませんね。

現在のファーンの回避力はスモールシールド+1だとしても13です。相手がラグナカング(牙)なら96.5%で回避しますね。

しかしその奥に待っていたのは8体の下位魔神でした。これは流石に多過ぎですよね、いくらファーンが強くてもこれじゃあその内ミスる。

しかしファーンはこの1対8の戦いに勝利します。敵は通常攻撃以外にも、炎、酸、古代語魔法、暗黒魔法などを使ってきたんですがね。

消して無理をせず、正確に確実に対応していったのです。ベルドとはまた違う戦闘スタイルですね。恐るべき体力と精神力です。地味に強いです。


それからファーンは古城の探索を進めて、三聖具を盗んだドッペルゲンガーを見つけるのです。ロジェール卿の姿をしていました。

身の回りの世話をさせていたらしい人間の女性もいましたが、緊張の糸が切れたのか失神します。むしろ正気でいるだけ立派です。

さっきの戦いで盾は使えなくなってるので、ベルドが魔神将を相手にした時のように紙一重でかわす戦いをするそうです。ファーンなら出来る。

慎重なファーンは相手が"ワードパクト"を使っていた時の為にメイスも持ってきてるんですよ。本当は魔神将対策なんですがね。


さて、このドッペルゲンガーはロジェール卿の記憶を盗んだだけに、ロジェール卿の自我の影響を受けています。だから会話を求めてきます。

魔神と会話をしたケースは、実はあまりない。出会ったら戦闘になるのが普通ですからね、まったり会話を試みる人はそういないでしょう。

しかしここで情報を聞きだすことが出来れば、ブルークが本物かどうかが分かるかもしれない。それだけでも、翻意する人間を減らせるかも。

更には目的が全く読めない魔神達の行動の謎が解けるかもしれない。その最終目的がロードス滅亡なのか征服なのか、それ以外なのか。


話を聞いてみると、どうやら"彼"が三聖具を盗んだのは、卿の影響もあるからなんだそうです。もしかして計画性のない犯行だったんでしょうかね?

ロジェール卿は三聖具をつけたいと思っていた、だから"彼"はその欲求にしたがって三聖具を盗んでみた?。魔神は普通ファラリス信者だし。

そして"彼"はファーンをとても尊敬していた。ファーンのように強く、美しい、最高の騎士になりたいとも思っていた。


今の"彼"はロジェールとして魔神と戦ってもいいと思っています。変身能力を封じて、ロードスの為に戦ってもいいと。

今の"彼"はドッペルゲンガーであると同時にロジェールでもある。どちらでもあって、片一方ではない。だからこういう思考が出来るのです。

聖なる武具を身に纏い、ファーンという最高の騎士を臣下にし、魔神を滅ぼし、ヴァリスの王となる。それが"彼"の望む事です。

奇妙な事です。実に不可解な心理状態です。しかし"彼"はそういう存在なのです。ロジェールの自我がドッペルゲンガーにも無視できないのです。


しかしファーンは断ります。それはもうキッパリと断りました。ファリスは魔神を許さない、三聖具を魔神には委ねない。

"彼"は言っていました、ファーンは信仰心が篤いので自分の可能性を殺していると。正直、私もそう思います。

神様なんていなくても人は生きていける。何故に判断を神に委ねるのか。ファーンならもっと色んな事が出来るはずです。

それでもファーンは信仰は必要だと言います。生きる為の規範、邪悪な誘惑に屈しない為の心の支え。良くも悪くも、ファーンは聖騎士です。

"彼"はファーンに憧れていたと同時に嫉妬してもいました。今ファーンを食えば"彼"はファーンになれる。それもまた、"彼"の望みです。


そしてファーンVSドッペルゲンガー(三聖具)の戦いが始まりますが、普通に省略。ファーンの勝利です!

今の"彼"は三聖具の魔力で攻撃点・防御点・打撃点が+3で、回避点は+7になっているかと思います。殆ど魔神将並みです。

"法の剣"は攻撃力と追加ダメージ+3ですし、"正義の鎧"はダメージ減少と回避力+3、"光の盾"は回避力+5です。金属鎧なので回避−1。

ドッペルゲンガーの鉤爪の攻撃と"法の剣"では厳密に計算すると、打撃点は単純に+3にはならないかも。今はロジェールの身体だし。


★5〜6

ファーンは勝利した後、殆ど動けなくなっていました。そこにカーラが現れて手当てをしてくれます。ここで死んでもらっては困りますから。

例の女性はカーラが"テレポート"で送ってくれます。本当はファーンも送りたかったんですが、武功に傷をつけないようにあえて送りません。

しかし三聖具を奪還したという知らせだけは城へしてくれました。ファーンへは魔法の飲み薬をあげて、カーラは姿を消してしまいます。

この薬は"ポーション・オブ・タフネス"6時間負傷の痛みを無くすという、ちょっと危ない薬です。何やらとってもヤクっぽい(笑)


この薬を飲んでも怪我は治りません。でも痛みは退くので、ファーンは薬を飲みつつヴァリスへ帰ってきたのです。

しかし自分の領地の辺りで力尽き、そのまま伏せってしまいます。そこへマイスや宮廷付司祭や聖騎士達がやって来たのです。

彼らは三聖具を受領する為に来た訳ですが、司祭がいる事からも分かるように、ファーンの怪我を癒す為にも来ました。

ファーンはどうやら毒や病気や呪いにもかかっていて、マイス達が来た時はもう動けませんでしたよ。多分下位魔神にやられたんでしょう。

精神が高揚していたから感じなかっただけで、実は最悪のコンディションでドッペルゲンガーと戦ってたんですね。


しかしドッペルゲンガーは、いや三聖具は手強かったようですね。攻撃が当たらないわ、当たっても効かないわ。

特に"法の剣"の威力は凄かったそうですが、恐らくはその真の魔力は発揮していなかったでしょう。それはファーンがファリス信者だから。

"法の剣"は邪悪なものにはダメージロール2回という魔力があるんです。相手がファーンだったから、その魔力は発揮されなかった。

2回という事は、どちらかあるいは両方がクリティカルする確率は30.6%になりますね。通常は16.7%程度なんですが。

その邪悪とはファリスの定める邪悪です。アンデッドとか妖魔とかね。当然その邪悪の中には魔神も入りますよ。


そんなファーンの武功と痛ましい姿に、マイス達は胸を打たれたようです。やはり王に相応しいのはファーンだと確信したそうです。

まず宮廷会議の方でファーンを国王にするように意思を統制する。そうすれば、ファリス神殿の方もその意向を無視できないそうです。

実はドルロスが積極的に王になろうと、ヴェノン討伐を画策してるそうです。自分が王になる為に必死なんですね。

別に彼はやましい気持ちで動いている訳ではありません。純粋真っ直ぐなファリス信者らしく、自分が王にならないといけない!と信じてるだけ。


しかしファーンはまだ宮廷には戻りません。今すべき事はヴァリスを守る事ではなくロードスを守る事だと確信したからです。

そしてその為に、モスへ行って魔神を討つ。そう誓ったのです。ファーンは誓った以上、それを絶対に果たしますよ。

それが結果的にヴァリスを救う事にもなるでしょう。例えこれでヴァリスが解体しようとも、ファリスへの信仰心があれば再建可能です。

このまま魔神を放置すれば、それすらも危うくなる。国に捉われていては本当に大切なことを行えない、そんな時代なのかもしれません。

それにその功績を持って働きかければ、確実に王になれるでしょう。今度こそは反対派も納得せざるを得ません。


そんな訳でファーンは単身モスへ向かったのですが、それと同時にドルロスが無断で軍を率いてヴェノンへ出兵したのです

宮廷会議の許可は下りてませんよ。下りてないけど……なんと1000人もの騎士が同調したのです。ああ………(頭を抱える)。

本当に何を考えてるんでしょう、彼らは。ヴァリスは迷走してると思っていましたが、知らず知らずの内に暴走してたようです。


その知らせがモスの連合騎士団に届いた頃には、既にファーンは国境を渡っていて、慌てて退き返したら捕まってしまいました(合掌)。

今のファーンはヴァリスの聖騎士ではありません。でもそれをすぐに納得してくれるほど、ファーンは無名ではないのです。

前に来た時は国王候補でしたもんね。不名誉印を刻んだと力説しても、はいそうですか、とはなりません。ナシェルだって昔の身分を引きずってるし。


連合騎士団と聖騎士団は国境の砦でにらみ合い。ジェスター、アロンド、バーランの三将軍とファーンもその場にいます。

バーランは怒りを顕にしていました。一体何を考えてるんだ!と。ファーンも全くの同感なので、何も言い返せません。

ドルロスの要求はヴェノン王の退位だそうです。それを繰り返すだけで、交渉には応じやしません。馬鹿な男ですね。

彼は善人ですよ。しかし善意が必ずしも善行に繋がるとは限りません。むしろ自らを省みないからこそ、その辺の悪人よりもタチが悪い。


ジェスターの意見も、アロンドの意見も、攻撃すべきだ、です。さっさと倒して魔神との戦いに備えようというのです。

ファーンは承知するしかありませんでした。いやそもそも選択権すらありません。今のファーンは捕虜なのです。

数に勝る連合騎士団(のヴェノン騎士団)は、竜騎士の援護もあって聖騎士団を徹底的に打ちのめしました

ドルロスをはじめ600名もの騎士が戦死したそうです。まったく、人間同士で何をやってるんだか。

しかもレントンへ凱旋した彼らには、ハーケーンのミルスの街が魔神に占領されたという報告が入ったのです。


第V章 魔王の領域

★1〜2

双子の王子フロイとリーゼンはライデンでの一件の後、ロードス中をグルリと回りつつ魔神退治に勤しんでいました。

ファーンについて行ってブレード→ロイドと移動し、そこからはファーンとも分かれてカノン→アラニアと移動しています。

ブレードといえばフレイムの王都ですが、今の時代にはそんな国ありません。多分この時代でも風の部族の都だったのかと思います。


ハイランドの汚名を雪ごうと頑張って魔神を倒しているのですが、どうもナシェルの活躍もあって母国の威信は回復してるんですよね。

かといって双子はもう国に戻るつもりはありません。正当な王位は兄であるジェスターが継ぐべきであると決めているからです。

モスは昔から戦国時代を続けていますからね。正当な王位継承者が決まれば、それ以外の候補者はさっさと身を引くに限るのです。

双子なのにどちらかが王位に就いて、どちらかが就けないのは不公平だからと、双子は相談して決めているのですよ。

もしジェスターに何かがあればナシェルに託すつもりです。今のナシェルがラフィニアとくっつけば問題ありませんせんしね。


百の勇者としての双子の活躍は目覚しい限りです。流石にハイランド王族の血は確かですね、2人ともかなりの魔神を倒しています。

もし母国に帰ったら、そんな双子を王位にと望む人もいるでしょう。双子はそれを恐れているのです。武勇と王の資質は別問題です。

民衆は残酷なまでに正直です。魔神殺しの勇者を祭り上げたがる。もしそんなことになったら、生真面目なジェスターはさっさと出奔しかねない。

双子の立場は実に微妙です。百の勇者として魔神退治を頼まれる一方、活躍しすぎないようにと王族としての義務も考えねばなりません。


そんな双子にはカノンの辺りから1人の吟遊詩人が同行しています。彼の名はユーリー、どうやらモスの何処かの国の王族らしい。

多分スカードのように、他の竜の名を冠する国に従属してるような小国でしょう。それが何処かというのは、聞かないのが人情というもの。

彼はバードにしてシャーマンです。双子の武勲詩を謳って人々に聞かせる一方、精霊魔法を駆使して双子を支援してくれます。

呪歌を使ってもくれるそうです。気分が高揚するという効用から察するに、生命・精神抵抗+1の"レジスタンス"か攻撃力+1の"モラル"かな?

彼の歌う詩はほとんど創作らしい。双子が魔神を3体倒したら、その倍になっているらしい。創作というか誇張ですね(苦笑)


近頃は百の勇者への風当たりも変わってきています。ファーンの予想したように、騙りが大分増えているようですしね。

そうでなくても、鏡像魔神の疑惑をかけられて殺される人もいます。彼らの殆どは、いや全ては普通の人間だったと言います。

鏡像魔神の恐怖に怯える人々は、このような行動に出てしまうのです。このような行動の事を魔神狩りというそうです。

あらぬ疑いをかけられて迫害される本物の百の勇者もいるそうですが、双子の知名度はベルド並みに高いので大丈夫らしい。


さて、3人はとある村に立ち寄りました。帰らずの森に近い辺境の村です。彼らはここで畑仕事をする魔神に遭遇しました。

8レベル下位魔神フォルゴーンです。赤い肌、山羊の足、一本角。7レベル暗黒魔法を使用する、下位魔神の中では最高レベルの魔神。

しかし畑仕事をしているというのはとってもおかしいですね。畑を荒らしているのではなく、明らかに小石や雑草を除去しています。

周りに人影はないし、さっさと片付けてしまおうと戦闘準備を整えていたところに、村人Aがやって来ました。魔神を全く恐れる様子はない。


双子は慌てて村人を庇って魔神に剣を向けますが、なんとフォルゴーンは逃げていきます。これには双子も拍子抜けです。

フロイとリーゼンに気づいた村人は訝しげな視線を向けてきます。敵対心剥き出しとは言わないまでも、友好的ではありえませんね。

双子「僕たちは、百の勇者にその人ありと謳われているハイランドの双子の王子」「自分で言うと、恥ずかしいけどね

いつもはこれで掴みはOKらしい。百の勇者とはいえ所詮余所者ですし、こうやって緊張を解すのは大切かもしれませんね。


しかし村人は言います、「帰れ!」と。あの魔神は良い魔神だから、百の勇者は必要ないと村人はフロイ達を邪険にします。

事情を聞いてみると、どうもこの村は以前百の勇者の騙りのせいで酷い目に遭ったらしい。ゴロツキ同然の連中にですね。

何でも近隣の村が魔神の襲撃を受けたのでその連中を迎え入れたところ、盗みを働くは娘に乱暴をするはと、やりたい放題だったそうです。

それを領主に報告しに行った村長を嬲り殺しにするはと、この村はニセ百の勇者に支配されていたそうです。全く酷いことをします。


そこに現れたのがこの魔神でした。魔神はゴロツキどもを皆殺しにし、荒れ果てた村の再建を始めたそうです。

最初は警戒していた村人達も、魔神と意思の疎通を図って害意がないと知ると、すっかり魔神のいる生活に慣れ親しんでいるらしい。

どうやらこの魔神は人間との共存を望んでいるらしい。その為には、どんな仕事もするつもりらしい。……本当か?


そんな訳で、この村人が百の勇者である双子に冷たく当たるのも無理ないのです。何と魔神の方に信用があるのですね。

この場は3人は大人しく引き下がって近場で野営しますが、どうも納得できません。良い魔神なんているのか?と。

それは私にも分からない。間違いない事は、彼らは異界の存在であり、人間とはあまりにも違うということ。あまりにも強いということ。


魔神の価値観と人間の価値観は一線を画します。ファラリスの信奉者である魔神達の価値観は、普通は人間と相容れるものではありません。

そう、普通は、です。何事にも例外というものが存在します。ひょっとしたら、この魔神は本当に共存を望んでいるのかもしれません。

そもそも、善悪なんてものをどうして人間に決め付けられるでしょうか。魔神には魔神の正義があって然るべきなのです。ただ人間とは違うだけ。

魔神が分からない。しかし人間だって分からないのだから、考えるだけ無謀なのかもしれませんね。やるべき事をする、ただそれだけなのかも。


ユーリー「いかなる答えを出したもうたか?」

フロイ「決まっている。魔神を倒すんだ」

ユーリー「それが、優しい魔神でも?

リーゼン「僕たちは百の勇者だからね

結局双子は魔神を倒す事に決めました。例え一時共存できたとしても、最後にはきっと争いになると双子は判断したのです。

魔神と人間はあまりに違う。両者が交わる時は友好ではなく、支配・被支配というマスター・スレイブ的な関係になるのかも。


そして双子はフォルゴーンを倒しました。双子ならではの連携攻撃は7レベル暗黒魔法をも退けたらしい。

村人達は双子に罵声を浴びせます。石も投げます。「あの魔神は優しい魔神だったんだぞ!」という言葉が双子に突き刺さります。

フロイ「それ以上、言うなら、おまえたちも斬るぞ!

リーゼン「感謝しろなんて言わない。僕たちのことを憎んでくれたっていい。だけどね……僕たちは、モスの住人は、絶対に魔神を許さないんだ


村を去った双子は、どうも凹んでいます。魔神と戦う者は、自らも魔神に近づいていく……もしそうだとしたら、ベルドなんてどうなる?

そう言えば六英雄の詩のベルドの部分にありましたっけ。「魔神を討ち心奪わる」と。小説のベルドはちょっと違うと思うけど。


魔神に対する人の反応は実に様々です。人は多様であり、その考えもまた多様である。それは当然の事ですがね。

主体の数だけ正義があって、善悪がある。魔神という脅威に晒されたロードスの人々は、これからどうそれと付き合っていくのやら。

この村のように魔神と共存するか?アラニアやカノンのように民衆そっちのけで支配者階級だけを守るか?ライデンのように金の力で解決するか?

はたまた風と炎の部族やマーニー・ロ−ランのように魔神を無視して仇敵を倒すか?それともヴァリスのように暴走するか?


フロイ「今度の戦いも歌にするかい?善良な魔神を倒した、悪逆非道な王子の物語として」

ユーリー「吟遊詩人は、見えたことを歌うのみ


★3

カノンの港町ルード。ここには鏡像魔神を見破る聖者という人物がいました。彼は魔法を使わずに人間に化けた鏡像魔神を見破るのです。

一瞬「嘘だ〜」と思いましたが、本当なんです。聖者と呼ばれる人物は、既に何人もの入れ替わりを見抜いているのです。百発百中です。

魔神狩りという狂気の矛先にされないように恐れてきた人々にとっては、聖者という人物は実に時代のニーズに応えた存在なのです。


しかもこの聖者という人物、以前出てきています。ほら、とある村で鏡像魔神疑惑で惨殺された娘がいたでしょう。

あの時村人を扇動していた若者です。その娘に愛の告白をしてフられて、狂気とも思える指摘をして娘に鏡像魔神疑惑を被せた。

しかし彼の中ではあの時の出来事は、既に事実と異なる真実に変換されています。あの娘は自分を愛したが、ある日を境に淫らになったのだと。

そして野蛮な狩人を誘惑しようとした、と。実に都合のいい頭ですね、あの娘の存在を都合のいいように上書き保存していますよ。

以前の彼は脱皮する前の芋虫であり、現在の彼こそは真の姿なのだと悦に入っています。聖者と言いつつ結構俗っぽいです。


それ以来、彼はほんの少しの雰囲気や動作の違いで、何となく鏡像魔神を見破れるようになったそうです。こっちは妄想ではなく本当に。

そんな彼を頼って既に50人もの戦士が集まっています。ある者は彼を崇拝し、またある者は打算で、聖者の周りに集まってきています。

取り合えず聖者と一緒にいれば不当に迫害される事はありませんからね。ちょっとした傭兵団程度の戦力が集まるのも無理ないかと。


そんな中でも一番強い戦士が、マーモ出身の傭兵ハサンです。見たところかなり強い、恐らくはカノンの自由騎士ぐらいに。

彼は聖者を崇拝しています。魔術でも神でも精霊でもない力で魔神を見破る聖者に、心底心酔しているのです。ちょっと子供っぽい所もある。

鏡像魔神を討つと聖者の所へ首を持ってきてお礼を言い、賞金を受け取ってくださいと言うのですね。実に忠実な近衛兵です。


聖者はそれに聖者っぽく対応して受け取りを断りますが、最後には受け取ることを了承します。ちょっと尊大な気もします。

ちなみに、ダブラブルグの賞金は銀貨2万8500枚ドッペルゲンガーの賞金は74万4000枚ということになっています。

両方とも首だけで判別出来るんでしょうかね?。真っ黒なのっぺらぼうに真一文字の口という唯一の特徴が共通してますし。

まぁ上位魔神の方は3mはあろうかという巨人ですから、サイズで分かるかな。賞金を払う方もその辺は心得てると思いますし。


聖者はハサンに自分が魔神を見破れるようになった経緯を、例の娘との一件を語ります。あの娘だけは死んでも正体を見せなかったと

どうやら聖者の中ではあの娘は本物の鏡像魔神だったという事になってるようですね。あの娘は本当に人間だったんですよ。

それに対してハサンは思いつきで「その娘はロードスの意思だったんですよ」と言います。聖者に力を授ける為に犠牲になったのだと。

それを聞くと聖者はすんなりそれを信じます。こうして聖者の中ではまた新たな真実が生まれました。そしてそれは彼にとって無二の物なのです。

そして聖者は自分こそはロードスの意思を現す選ばれた人間なのだと確信します。聖者は今後も魔神戦争の重要人物になっていきます。


今度はアラニアです。頭と自由騎士のパーティーは、ノービスへ向かう街道を歩いている所でアラニア騎士に呼び止められました。

あれからマイリーの神官戦士とエルフの精霊使いを加えて6人パーティーとなった一行は、行く先々で魔神を倒しています

名前こそ知られていないものの、その功績はフロイとリーゼンにも劣らないほどです。既に彼らは本物の百の勇者なのです。


しかし今回アラニアでは百の勇者の捕縛令が出されました。だから彼らはアラニア騎士に絡まれて、連行されそうになってるのです。

百の勇者の騙りの暴れっぷりがあまりにも酷いので、百の勇者を名乗る輩は全て捕まえるようにしたのです。アラニア苦肉の策でした。

しかし中にはこのパーティーのような本物の百の勇者もいます。彼らのようなパーティーがいなければ、民衆は魔神の恐怖に怯えるだけです。

相変わらずアラニアでは何の対策も出来ていないようです。騎士を王都に集めるだけで、民衆を守る事なんて出来てやいません。

だから民衆を守っているのはマーファの神官戦士や本物の百の勇者だけなんでしょうね。本物の百の勇者は残念ながら少数派ですが。


2人の騎士は頭たちに精一杯の威厳で連行すると言い張りますが、そんなものに怯んだりはしません。彼らは本物の"魔神殺し"です。

自由騎士は話し合いで解決しようとちょっと迫力で押してもみますが、頭の「おまえたちに勝ち目はねぇぞ」という一言でぶち壊しです。

騎士にとっては自分の誇りを守る事が大切なのです。そういう風に言われると、侮辱されたと考えて決闘を挑んでくるのです。

いや実際には頭の言うとおり彼らに勝ち目はないんですけど、何もこういう時にそれを口にしなくても(苦笑)


頭に血が上った騎士2人はランスを構えて突撃してきますが、エルフの精霊使いの"ホールド"で馬の足が押さえられ、地面に叩きつけられます

頭と自由騎士と若い戦士2人が駆け寄りますが、既に助からなそうです。1人は即死、もう1人も放っておけば死ぬでしょう。

マイリーの神官戦士は治す気はないようですし、死にますね。こういう下らない戦いに奇跡は願わない主義なんでしょう。


頭「だがよ、腐った野郎でも騎士は騎士だぜ」

自由騎士「我々はアラニアのために戦ってるんじゃない。ロードスのために戦っているのだろう」

そう言うと頭は「そ、そうだよな」とちょっと声が上ずっていました。なんかこの2人の関係がこのやり取りに込められてるような(笑)

普段は頭が皆をグイグイ引っ張っていくけど、こういう時は冷静な自由騎士がまとめるんですね。いいコンビです、結構好きだな。


領民を守らない騎士は生きている資格がないと金髪の方の戦士が言いますが、分かる気がする。領民を守るからこその騎士だろうに。

しかし騎士殺しは死罪、彼らはもうアラニアにはいられません。カノンでもアラニアと同じようなもんです。彼らは何処へ行けばいいのか?

これは彼らだけの問題ではありません、他の百の勇者全てに言える事です。その答えを知っているのは、恐らくはウォートです。


★4

ナシェルはフレーベとニースと共に敵地スカードに侵入していました。現在のスカードを探れば、何かが分かるのではないかとね。

ナシェルにとっては2人はかけがえのない盟友です。魔神と戦う上で、こんな英雄・聖女の力を借りられる事にナシェルは深く感謝してます。

近くの山にはワールウィンドも待機しています。魔神の1体や2体が出てきたとところで、恐るるに足りませんね。皆強いし。

ニースが同行する事にラフィニアが複雑そうな顔をしていたそうです。可愛いねぇ、このカップルも。何か過ぎて微笑ましい。


ナシェルにとってはここは本来故郷なんですよね。それが今は魔王の領域です。生まれ育った王城に至っては巣窟ですよ。

見たところ畑の手入れもしてあるし、領民も無事です。酷い目にあってるという事はなさそうですね。生贄にされたり、虐殺されたりとか。

一見平和な魔の領域、それが今のスカードです。ハイランドお抱えの密偵も、流石にここには忍び込みたくないそうです。

魔神の優れた知覚力を考えると、確実に見つかりますしね。そして見つかったら命はない、尻込みするのも無理はないです。


ナシェルは取り合えず領民と接触してみました。そんな事をすると確実に噂になりますが、その噂が城に届くには時間がかかる筈です。

とある農夫に話しかけてみると、彼はナシェルの無事を涙して喜んでくれました。やっぱり領民に慕われる王子様だったんですね。

彼に色々尋ねてみますが、やはり変わった事はないそうです。エール用の麦を粉に変えるぐらいですが、戦時なら当然だし、輸出先もないし。

通常通りブルークへの謁見も行ってるし、魔神がいることを除けば昔通りです。いやそれが重要なんですけどね(苦笑)


しかしやはり魔神の存在は見えない巌となって彼らを脅かしているそうです。すれ違った時ニヤリと笑ったような気がする、そんな恐怖。

常に王城に詰めている騎士なんて、そのストレスは尋常ではないでしょう。精神を病む騎士もいるそうですし、正気を保ってるだけ立派です。

正気といえばブルークとリィーナです。ブルークはともかく、リィーナも普通なんだそうです。あの怖がりな彼女が平静なだけでも十分異常です。


農夫も見えない明日に怯えていますが、ナシェルは身の危険を感じたら逃げろと言います。結局どう判断するかは、彼次第ですけどね。

農夫「わたしたちは王子様が、王様になると信じていました。それを、楽しみにしていました
   だから、いつか帰ってきてください。スカードが勝っても、負けても……」

そういう願いを聞くと切なくなります。本当ならあった筈の平和な王国、あるかどうかも分からない未来……切ない。

しかもスカードが勝った時にはナシェルは生きていないでしょう。ナシェルが倒れたからこそ、スカードが、魔神が勝ったのだから。


★5

例の農夫から死体を石の王国に運び込んでいるという目撃情報を聞いた一行は、フレーベの案内で石の王国を探ってみる事にしました。

石の王国の複雑さは有名ですが、今はフレーベがいますし大丈夫ですよ。ナシェルだけだったら確実に迷ってるでしょうが。

ニースはいつもの神官服ではなく猟師の格好をしてますが、それでもやっぱり彼女の美しさは滲み出てくるらしい。可愛いなぁもう(笑)

フレーベも流石にいつものフル装備ではありません。チェインメイルにバトルアックス。それでもやっぱりフレーベは強いでしょうけど。


探索を進めるにあたっては松明は灯けます。魔神はドワーフ同様暗視が利きますが、ナシェルとニースは何も見えませんからね。

結局明るくても暗くても魔神には支障がないのなら、灯けないのはこちらに不利なだけ。構わず灯けるのは実は正解です。


ニースは帰還の呪文を用意しているので、ヤバイ時はさっさとハイランドのマーファ神殿まで逃げられます。勿論全員で。

ここでいう帰還の呪文はマーファの特殊神聖魔法で、手を繋いでさえいれば複数を同時に安全な所へ移動させる事ができるそうです。

それって"リターンホーム"ですかね?。しかし"リターンホーム"は術者のみにしか効果がありません、仲間まで連れてはいけません。

もしかして10レベル神聖魔法の"レスキュー"でしょうかね。これなら複数を同時に運べますし。しかしこっちはマーファ特殊神聖魔法ではない。

多分これは「ロードス島RPG」の名残ですね。あっちの"リターンホーム"は同時に6人まで運べますし。


3人は暗闇の中探索を進めます。白骨化したドワーフの死体とかを見かけると、ナシェルは父親の愚行を考えて胸を痛めます。

やがて一行は腐敗臭を嗅ぐようになります。そっちの方へ行ってみると、そこはドワーフ達がかつて働いていたであろう工房でした。

工房の中にいたのは上位魔神1体と下位魔神3体と人間の騎士が2人でした。ナシェルは当然、騎士のことは2人とも知っています。

下位魔神は2体がザルバードですが、もう1体は正体不明だそうです。子鬼を大きくした魔神ということは、例のフォルゴーンかな?


最後の上位魔神は初登場ですね。ナシェルも知らないらしい。知名度15だから、基準値9のナシェルなら分からない可能性はある。

9レベル上位魔神ギグリブーツ。4枚羽の魔神で、9レベル古代語魔法を使います。牙や爪を持たない分、魔法の能力に優れています。

挿絵にギグリブーツの姿がありますが、片手にワンドを持ち片手にスクロールを持ったその姿はマッチョな兄貴のコスプレといった風情(笑)


どうやらギグリブーツは死体を使ってアンデッドを作成していたようです。魔神兵同様に雑兵として使うつもりなんでしょう。

何しろ9レベルですし、こいつは魔神です。きっとアンデッド作成の死霊魔術を知ってるんでしょう。遺失のものも知っているでしょう。

例えば6レベル遺失魔法の"クリエイト・アンデッド"や"クリエイト・プアウゾンビ"です。こいつなら前者は3点、後者は4点で使えます。


騎士は一人は若く、もう一人は壮年です。その若い方が魔神に嫌気がさしたのか、ナシェルに味方しようとします。

若い騎士「ナシェル様とは戦えない。それに、魔神にはもううんざりだ

では壮年の方はどうかというと、戦う気満々です。ブルークに忠誠を誓ってると言っていますが、彼自身の野心も見え隠れ。

若い騎士にはその壮年の騎士が戦いを挑み、下位魔神はナシェルとニースが、ギグリブーツはフレーベが相手にします。

ザルバード如きなら今のナシェルは負けはしません。それぐらいにナシェルは強いのです。ニースがいれば死んでも大丈夫だしね(笑)


ナシェルはベルド仕込みのサブミッション(関節技)などを駆使してザルバードを2体とも倒します。魔神にも効くんですね(感心)。

フォルゴーンはというと、ニースが倒しました。全く戦闘している様子がないのに、返り血を浴びてるんですよ。流石はニース、無敵属性(苦笑)

続いてギグリブーツが作成していた5体のゾンビもニースがまとめて浄化します。ゾンビ如きなら抵抗すら出来ないでしょう。

フレベーも勝っていましたが、9レベル魔法で結構傷ついていました(平気そう)。でもニースの魔法でサラッピンになって目を丸くする(笑)

騎士同士の戦いは若い方の辛勝。怪我はニースが治します。壮年の方は慈悲は受けぬというので放置。このまま死ぬでしょう。


若い方の騎士ベイルはナシェルに許しを乞いました。ナシェルは彼に道案内を頼んで、他の工房を潰して回ります

こういう風にアンデッドを作成している所がまだまだあるでしょう。それを潰しておくのは後々有利になるはずです。

どうやら騎士には必ず魔神の護衛がつくようです。しかしそれは護衛ではなく見張りなのです。裏切ったら命はないでしょう。

彼のように魔神に嫌気がさしている騎士が大多数です。しかし魔神の恐怖で裏切る事ができないのです。何とかしてやりたいものです。


第W章 英雄集結

★1〜2

ウォートはライデン評議会のアイシグ議長と会談していました。百の勇者を結集させる為の下準備のようなものです。

現在のライデンはまさに好景気です。魔神との戦いでロードス各地で物価が高騰しているので、ライデンの上げる利益は上がっています。

まぁそういう所に付け込む商売のやり口に、各国から非難の目を向けられてたりするんですけど、彼らの商人の血はそれぐらいでは萎えません。

魔神の首も3日に1つの割合で街中に晒されるようになっていますし、恐らくは現在のロードスで最も賑わっている街でしょう。


アイシグ議長はウォートの功績で今のライデンがあるということで、ウォートにいっそ気持ち良いぐらいのおべっかを使ってます。

ラルカス学長とウォートの会談についてもウォートを褒めちぎる様な言い回しですしね。商人なだけに口が達者です。

アイシグ「ロードスが誇る偉大な魔術師二人の会談ですか、それはぜひ傍聴したかったもの。
     もっとも、わたしのような無学な者に内容の分かる会談とは思えませんが」

そうそう、こんな感じ。自虐的なまでに謙遜し、相手をとことん持ち上げる。さり気なく気分の良いヨイショです。


しかし昨今の百の勇者の様子は気にしてるようです。百の勇者を騙る無法者、王国と勇者の軋轢。自分の演説が悪い方に働いてる気分です。

そこでウォートは知恵を働かせます。議長にはもう一度演説してもらうそうですが、議長は演説が気に入ってるようなので大丈夫。

ライデン評議会の議長なだけに、ウォートの優れた策を素直に受け入れる老獪さがあるようですね。そしてパフォーマンスの重要さも知ってます。


演説の内容は至極簡単です。「真の百の勇者ならば、魔神に支配されたるモスの地へ赴け」。前後は適当に盛り上がりそうに仕上げれば良い。

百の勇者はアイシグ議長の演説がきっかけで立ち上がった人達です。その議長の演説を無視すれば、自ら偽者である事を明言するようなもの。

モスへ向かった者だけが本物、他の土地に留まっていればやはり偽者です。そういう輩は容赦なく迫害されるでしょう。

そしてライデンでは宿や食事を無料で提供します。但し期限はつけて。餌に釣られてやって来た勇者は、但しの部分にここで気づくのです。

すると残った行き先はモスのみ。モスにはロードス中から勇者達が集まってくるのです。しかも宿で記帳させれば百の勇者の名簿までできる。


ウォートの策にはアイシグ議長も感服したようで、賛辞を惜しみません。流石はウォート、最早詐欺師っぽい(笑)

戦いが終わった後には、ウォートにはベルドと同じ名誉市民の称号と評議会最高顧問の席を用意してるそうです。多分実現しないでしょうが。

ウォートはアイシグ議長と握手を交わし、お暇しようとします。これからハイランドに向かって、仲間達と合流しないといけません。

ウォート「その前に、会わねばならない人物が一人おります。そうですね、ルノアナ湖に浮かぶ小島へでも参りましょうか

今決めたような口調に議長は疑問顔ですが、正に今決めたのです。会うべき人物は、"遠見の水晶球"でウォートの動向を見張ってますから。


ウォートはライデンの街から"テレポート"を2回唱えてルノアナ湖上にある館の前に来ていました。仮面の魔法戦士と会う為です。

1回目の"テレポート"はルノアナ湖まででしょう。2回目はそこから初めて訪れる館を視認して跳んだのでしょう。

「戦記」を読んだ人ならもう察しはついているでしょう。ここでパーン達は英雄戦争の後にカーラと戦ったのです


ウォートは学院で資料をあさり、仮面の魔法戦士の事を調べています。魔法戦士の正体がカストゥールの女性付与魔術師カーラである事も。

カーラがどういう事をしてきたのか、その秘密とは何か、全て知っています。まったく……恐ろしい男ですね。自力で秘密に辿り着くとは。

ウォートはカーラのお招きで屋敷に上がります。すると壁一面には歴代カーラの肖像画などが飾ってあります。割とマメな性格ですね。

多分将来的にはこの「カーラがいっぱいコレクション」にレイリアさんやウッドも加わるんでしょう。一体何代目まであるのやら。

あと内装はカストゥール様式で統一。やはり思い出を大事にするか。この屋敷は後に燃やされますが、その頃には引越ししてたので大丈夫。


カーラはゆったりとした格好と仮面舞踏会っぽいマスクをつけています。だから顔を隠す理由は何なのか?(純粋に疑問)

舞踏会ということは、オペラ座の怪人みたいなやつでしょうかね。それって山田先生のイラストのアレとは違いますよね。

山田先生のイラストでは、カーラはバケツっぽいマスクを被ってますよね。目の部分がくり貫かれている革でできてるようなマスク。

この辺の違いは気になりますが、後にカーラが参戦する時はやはり例のバケツマスクっぽいのでいいかな。いっそ肉の人みたいなマスクを(笑)


ウォートはカーラが"遠見の水晶球"でウォートを見ていた事に気づいていました。それって"カウンター・センス"でしょうかね?

確かにそれなら探知系の魔法には気づけますけど、気づかれた事は相手にも分かるんですよね。しかも魔法は解除される

2人の口ぶりだとウォートが一方的にカーラに気づいていたようなんで気になります。いっそ攻性防壁っぽい魔法はないものか(笑)


カーラはさっさと話を始めます。当然ウォートにロードス統一の意思があるかを探ってきます。ある意味ウォートは魔神より厄介な相手です。

本当はあるのですが、それを露骨に示したらカーラはウォートを殺しにかかるかもしれません。何とかウォートはとぼけようとします。


カーラはウォートが自分の事を調べ尽くしている事を知ると、浅く座り直します。つまりいつでも戦える体勢ですね。同時に話も逸れた。

それはウォートも一緒です。ポケットの中で魔晶石を握り、最大の魔力で魔法をかけられます。ピリピリとした雰囲気が実にデンジャラスです。

カーラに勝つ為には決して殺さない事。ウォートの魔術なら十分可能でしょう。カーラの魔術の強大さはそれとドッコイですが。

しばらく緊張の時を過ごしますが、この場は止めにします。ここで二人が戦っても魔神を喜ばせるだけです。


カーラはベルドではウォートの望む王にはなれないと指摘しますが、ウォートは別にベルドを王にするつもりはありません。

カーラはベルドを器に選びましたが、その強さ故にその場は退きました。そして魔神将を殺す強さ。正に奇跡的強さです。

だからカーラはそのベルドと渡り合える唯一人の戦士であるファーンを助けたのです。対消滅……カーラにとっては都合の良い駒です。


ベルドが覇王になろうとすれば、ファーンとの激突は避けられませんからね。まったく何時の時代でも天秤維持に熱心な人です。

そのカーラがウォートの知恵は奇跡に近いとまで褒めるのだから、やっぱりウォートって凄いんですね。何しろ知力26ですもんね。

人間の知力の限界は24、なのに26ってことは経験点6000点払って伸ばしたんでしょうね。恐らくはノーライフキングに先制できる。

カストゥールですらウォートほどの人物がいたかどうかですからねぇ。この二人の会談は見ていて緊張する程に高レベルです。

会談はそれまでにして、ウォートはハイランドへ"テレポート"で跳びます。そこにはウォートが望むものが全てあるのです。


★3〜4

スカードから帰還したナシェルは詳細をマイセンへ報告し、お褒めの言葉を預かっていました。マイセンはナシェル絡みだと機嫌いいね。

現在魔神達は雑兵として魔神兵、不死生物、魔法生物の主に3種類を大量生産しています。ナシェル達はその工房を出来る限り潰してきました。

しかしこれらを創造する創成魔術や死霊魔術を使える魔神はきっとまだいます。魔神の軍勢はまだ千単位の数を持ってる筈ですし。

時間が経つごとに魔神の軍勢は強化されると思っていい。これは出来る限り早く決戦の準備を整えないと面白くありませんね。

なお魔法生物はストーン・サーバントやオークのようなパペット・ゴレームだけでなく、竜牙兵やゴーレムのような強敵もいます。


ナシェルは彼がいなかった間のヴァリスとの交戦やミルスの街占領の知らせを聞くと、やはり驚きを隠せないようでした。

しかしファーンが捕虜になっていると知った時の驚きようはそれ以上です。何故にあの高潔な騎士が捕虜になっているのか?

ファーンは完全にトバッチリを食らった訳です。騎士位を捨ててるとはいえ、人々は簡単にそれを受け入れないという事です。


バーランなんて怒りのあまりファーンを斬るとか言ってたそうです。だからそれは完全に八つ当たりだってば(苦笑)

もしドルロスが生きていれば、怒りの矛先になったかもしれないのにね。彼はもうその戦いで戦死してるし。死んでなお害を成すか。

ナシェルですらドルロスに対しては「魔神がロードスを征服したあかつきには、その男の銅像が建てられるでしょうね」と辛らつな皮肉を吐きます。

いつも礼儀正しくて優しいナシェルですらこれですよ、血圧が高そうなバーランが怒るのも無理はないかな(笑)


ナシェルはファーンを釈放する為にその保証人となります。何か間違いがあった時は責任を負うわけですが、そんな事起こるものか。

マイセンはナシェルの言葉が終わらない内にペンを走らせてましたよ。なんだ、マイセンだって最初からそのつもりだったんじゃないか(苦笑)

こうして偶然ファーンはナシェルと再会できた訳です。ファーンにとっては災難だけど、ナシェルにとっては又とない幸運ですね。

ファーンがいるだけでこれからの戦いが数段楽になります。ベルドとはまた違った意味で頼りになる男ですし、おめでとう百の勇者入り。


あとナシェルには城下に建てた離宮が与えられます。有事にはオーバークリフの外の守りになるという、実戦本位の館です。

本来は双子の為に建てられたそうですが、どうせ帰ってこないし。それに、ラフィニアとのこともありますしね

マイセン「おまえのおかげで、せっかくの縁談が破談になったのだ。その責任は取ってもらうぞ

お義父さんからの許可が出ましたよ。これで2人は同棲時代突入ですね。なんか神田川みたいです(古!)。


しかも館だけではありません。マイセンは騎士見習いや従者までつけてくれたのです。完全にハイランドの人間にするつもりですね。

好意的に見れば、戦後も生きろというメッセージとも取れます。魔神との戦いが終わっても人生は続くんだぞ、と。

しかし見方を変えれば最悪の場合スカードへ寝返る伏線とも取れます。国を挙げてではなく、ラフィニアだけでもね。

ナシェルがスカードへ戻る事になっても、王族であるラフィニアとの間に子供が出来れば、国を復興させる事も可能ですし。例えばですよ。


ファーンと一緒に館へ行ってみると、そこには英雄達が集っていました。平時では考えられないメンバーがズラリとね。

ベルド、ウォート、フラウス、フレーベ、ニースが来ていたのです。そしてナシェルとファーン……これにカーラを加えれば勢揃いですね。

基本的にその8人がこの「伝説」における最重要メインキャラですから。六英雄+2です。その+2の方が六英雄より主役っぽかったりする。

あとタトゥスも来ていました。そんな人もいましたね。非常に悪いけど素で忘れてた(笑)。確かロイドに情報収集で留まってたんでしたよね。

タトゥスはナシェルと再会のハグなどをします。今となっては、唯一人残った幼少時代からの知り合いですしね。殆ど祖父と孫ですよ。


7人の勇者達は共に卓を囲み、酒宴を行います。今まで本当に辛い戦いが続いてきたけど、これは一種のご褒美イベントだと思っていい。

ベルドなんて本当に楽しそうです。魔神将戦以後はちょっと変だったけど、よっぽどナシェルと再会できたのが嬉しかったんですね。

この男がこうも分かりやすく「喜び」の心を見せるのはそうないですよ。ベルドはナシェルを出来のいい弟のように思ってるようですもんね。


ナシェル「魔神との戦いで命を落とした者たちに、これから死んでいく者たちに、
     そして、戦の後に生きつづけるすべての者たちに……ロードスよ、永遠なれ

そして英雄達の普段では見られない顔とかを見れる宴が始まります。特にファーン。この人にもこういう所があったんだな〜と(笑)


ナシェル、ウォート、フラウス、ニースは真面目に戦の事を考えます。一番の問題は食料です。戦にはこれが必要不可欠。

これはヴァリスから貰うことで解決します。一戦あったので貰うのは正当です。ただし賠償ではなく、援助という形でですね。

ウォートは宰相のようにナシェルと相談し、答えを導かせます。ウォートにとってはナシェルは最も優秀な教え子で希望なのです。

いや宰相とか言うとあの人が殺しに来ちゃうので、軽はずみな事はいえませんけどね。多分今も覗いてるだろうし。


鉄の王国からの援軍は一軍を動かすとアラニア軍が動くだろうから、少人数が分かれて移動する事で解決。これはニースとフレーベに任せる。

本当ならマーファの神官戦士団も動員したいけど、今のアラニアやカノンを思うと動かせませんよね。百の勇者が抜けたら彼らが最後の守りです。

ヴァリスの神官戦士団や聖騎士団だって本当は動くべきですが、あんな事があった後ではちょっとね。個人的に参加してくれるならともかく

鏡の森のエルフも協力してくれます。本当は帰らずの森のハイエルフ達にも協力して欲しいけど、「馬鹿め」とか言われてお終いでしょう。

彼らは殆どが盟約を結ぶような高レベル精霊使いですよ。ルマースとかいてくれたら魔神将だって軽く潰せるだろうに。惜しいですね。


何はともあれ、ウォートの夢は次第に適いつつあります。ベルドでもファーンでもない、真の王の資質を持つ若き英雄が目覚めつつあるのです。

フラウスは今もベルドが「聖王国ロードス」の王に相応しいと思っています。愛と信仰の両方を極めて強く感じています。

「聖王国ロードス」、その名は問題ない。しかし玉座に座るのはベルドでもファーンでもない。彼らは王気が強過ぎます。両立する事はない。

ではどうするか、その答えをウォートは既に見つけています。そしてそのその夢が実現しつつある。皮肉な事に、魔神が現れたことで。

時代の流れは確実にウォートの望む方向へ動いています。しかし魔神やカーラといった障害がまだあります。ここがフンバリ所です。


その頃ベルド、ファーン、フレーベの3人はタトゥスも一緒にしこたま飲んでました。約1名似合わない人がいますが、彼も一緒です。

ここではファーンの酔いっぷりが最高に面白いです。この時だけで、それまでに飲んできた酒の量を倍にした程ですよ。

あまりの酔いっぷりに、騎士を捨てて酒造りを始めようとするぐらいです。半ばマジで。折角男前なんだから酒場の方が面白いですよ(笑)


ベルド「スカードのエールは確かに最高だった。アラニアの娼婦に匹敵する」

ファーン「貴公の話をさっきから聞いていると、酒、酒、女、女だ。それ以外、貴公には生きる目的はないのか?」←絡み酒

ベルド「酒と女と戦。男には、それだけあれば十分だろう」

ファーン「わたしは、そうは思わない」←素面に戻れない本気の反論

こんな感じですね。"百年に一人の騎士"がヘベレケでベロンベロンですよ。これはこれでまた違う層のファンが出来そうです。


そして2人は売り言葉に買い言葉、P.222は全体的に好きなシーンです。これは是非原作を読んで欲しい。引用したい所が多すぎて出来ない。

酔いが深すぎて痛みを感じないファーンが、デュラハンは酔って首がないのに気づかない騎士だ、という新説を打ち立てたりしてるし(笑)

普段真面目な人ほど、こういう時の振幅が激しいのかもね。ファーンは生まれて始めて素の自分をぶつけられる友に出会ったのかな。

ベルド曰く「人生の楽しみを半分しか知らない」、それがファーン。今ファーンはもう半分を楽しんでいるのかもしれない。

ついに2人は明日手合わせする事になります。負けた方が坊主!………いや、それはいや!。坊主のベルドやファーンなんて見たくない(笑)


まぁそんな訳で2人がギネスに挑戦するかのように飲んでいる横で、フレーベは久しぶりに爽快な気分に浸っている訳です。

滅びた故国の様子を見て、魔神と戦うには仲間が要る事を知って、ようやく気持ちの整理がついたんでしょうかね。

そしてナシェルがさっきエールで乾杯したことも、「エールの誓い」を皆とも交わすという意図があったと悟っています。

その気持ちが、フレーベにはとても嬉しかったでしょう。ただ才能があるだけじゃない。この細かい気遣いもナシェルの長所です。

使命を果たすのは難しく、そこから逃げるのは容易です。無駄死には後者です。そしてナシェルは使命を果たす為に邁進しています。

ナシェルがいてよかった。そうでなければフレーベはとっくに死んでたでしょう。復讐を果たすことなく、未練だけを残して。


「血の絆」を見て分かる通り、ブルークの願いはナシェルによるロードスの統一です。魔神王解放の失敗で、それは潰えたかに見えました。

しかしナシェルは自力でそれを達成しつつある。ウォートの夢もそれとリンクしてる。多少の手違いはあったけど、ブルークの願いは叶いつつある。

そんなナシェルの器にフレーベも気づいています。ブルークがナシェルを愛す余りに愚行に及んだ気持ちも分からないでもないし。

もしそれが実現したとしたら、ドワーフにとっては素晴らしい国になるでしょう。ナシェルは誰よりもドワーフの事を理解していますから。

しかし本当にそれでいいのだろうか。ナシェルにその資質はある、ではナシェル自身の望みはどうなのか。それを皆考えているのか?


★5

ここでは各カップリングのノロケっぷりが描かれます。ナシェルとラフィニア、ウォートとニース、ベルドとフラウスですね。


まずナシェルとラフィニア、初々しくて可愛らしいカップルです。まだ若いのにお互いに相手を慈しむようで、堪らなく応援したくなります。

2人は結婚式の相談をする若夫婦のように、ニースに婚姻について相談したりしていました。マーファはそういうのも司っていますから。

多分ターバ神殿での儀礼の詳細を教えてもらったんでしょう。あそこでは例年多くの夫婦が訪れて、祝福を授かりますからね。

それ故に、ザクソンからターバへ向かう街道を「祝福の街道」と呼ぶのです。実にめでたい街道ですね。


やっと2人きりになれたラフィニアは、甘えるようにナシェルの膝へ上体を預けたりもします。ああもう、可愛いなこの2人(笑)

元はといえばラフィニアの片思いだったわけですが、色々あってナシェルも彼女に惹かれています。愛の経緯は人それぞれですね。

ナシェル「わたしにとって、ニア(ラフィニアの愛称)は護符のようなものだと思う。
     ニアが待っていると思うと、簡単に死ぬわけにはゆかないからね。魔神と戦うときにも、力が湧いてくるよ

ラフィニア「わたしは信じています。あなたに勝てる魔神なんていないって………」

戦に出る男の帰りを待つ女は、きっと不安で堪らない。それでもラフィニアはナシェルの勝利を信じているのです。そういう愛もある。


次はウォートとニースです。物凄い意外ですが、これが結構脈ありなんですよね。水野先生は魔術師とマーファの聖女というのが好きらしいし。

ウォートは賢者と呼ばれていますが、決して全てにおいて賢者ではない。なにより彼の心は大きな混沌を抱えていますしね。

ニースはそんなウォートの心に触れる事が出来ます。そして普通なら誰にも理解できないそれに、優しい両手を添える事が出来ます。

何故ニースが聖女と呼ばれるのか、それは神聖魔法の能力の高さだけでは決してないのです。その心は、まさに大地母神の慈愛の心です。


ニースは暖炉の前でカーラから貰った「魔神の書」を読みふけるウォートに話しかけてきました。どうやら寝れないらしい。

ウォート「薬草師のタトゥスに、薬を作ってもらうといい。わたしが調合してもいいんだが(中略)下手をすると、三日ぐらい眠りっぱなしだ

そう言えば聞いた事がある、昔の睡眠薬は致死量と作用量が狭いから簡単に死ねたと。でもそれを作り手の方でやると医療ミスですよ(笑)

多分ウォートなりの冗談なんでしょう。素直に答えるのが苦手、自分の心を直で晒したりはしない。結構複雑な性格です。


ニースがウォートに話しかけたのは、魔神を解放したブルークとウォートの繋がりを確認する為でもありました。

とはいっても別にウォートの責任があるのかを問いただすのではなく、責任がない事を確認するという感じでしたが。

実際ウォートはブルークに魔神解放を進言したわけじゃない。その存在と解放の手段を与えてしまっただけ。無関係ではないけど責任はあるかな?

そしてウォートは、魔術師は恐れられ蔑まれているから、いずれ自分を糾弾する者が出てくるかもしれないとこぼしていました。


するとニースはじっとウォートを見つめます。ニースには人の心が見える。思考が読めるという訳でなく、触れる事が出来るといった所です。

ニース「魔術は敬われ、知識は尊ばれます。使いようさえ正しければ

ウォート「正しくはないかね?わたしの魔術と知識の使い方は?」

ニース「その答えは、あなたの心の中にあります

するとウォートは「聖女様らしい答えだ」と皮肉を言います。他者に答えを委ねれば間違う事はない。聖職者の常套手段だと。


ニース「それでは、聖女らしくなく答えましょう。あなたは素晴らしい知識と知恵、そして恵まれた魔法の才能をお持ちです。
    健康な肉体と、明瞭な声をお持ちです。容貌には均整があり、表情には翳りがない」

ウォート「な、何が言いたいのだね?」

ニース「あなたを評価してさしあげているのです

考えようによっては失礼な話ですが、ニースはウォートがそれを望んでいる事を察しているようです。


ニース「あなたをそれを望んでおられますもの。同時に、それを恐れてもおられる。あなたは自分のなかに邪心のみを見てらっしゃいます。
    それゆえ、他人の邪心にも敏感になってしまうのです。そして、心を閉ざし、孤高たらんとする

それだけを聞くと、ウォートは驚きのあまり呆然としていました。それはウォートが抱いている事を的確に言い当てていたのです。

ウォートには強い劣等感がある。カストゥールの忌まわしい記憶からか、人々は魔術を恐れる。ウォートはそれを変えたかった。

魔術をこの世に役立てたい、そういう理想を抱いていた若き日のウォートは、自分が受け入れられないのは未熟だからと必死に頑張ったのです。

賢者の学院に篭らずに、各国でその手腕を振るいましたが何も変わらず。次第に孤高を装うになっていったのです。


ニースはそんなウォートの震える心に触れた。そしてウォートを恐れるのではなく、純粋に凄いと評価出来たのです。だからああいう事を言った。

ウォートにはロードスを救う力がある。でもその素晴らしい人物が自分の事を嫌っている、人の邪心を恐れている。それを何とかしたかった。

それがニースの素直な気持ちでした。上っ面の慰めなんかじゃない、心から出た心を動かす言葉。それはウォートにとってこの上ない救いでした。


ニース「ご自分の偉業を、どうか誇りとしてくださいますよう。賢者様が心に描かれている夢の実現を、わたしは祈っております
    そのために壊れてゆく夢があったとすれば、私が弔いましょう。
    泥に塗れなければ、作物は育たぬもの。水に濡れなければ、魚は得られぬもの。森に入らねば、獲物は捕れぬもの……」

ウォート「……ニース司祭。ありがとう

ウォートは素直にそう言えました。それを聞くとニースは嬉しそうな顔をしていましたよ。正に"大地母神の愛娘"です。

誰が認めなくてもニースが認めてくれればいい。そう思えるようになっていました。ウォートは夢の実現に尽くす覚悟を決めたのです。


最後はベルドとフラウスです。この夜ついに、フラウスはベルドに抱かれました。温もりがくれた物は、普通では手に入らないものでした。

フラウスは幼い頃に両親を亡くし、ある事件をきっかけにファリスの声を聞き、今日までその敬虔な信者として努力してきました。

だからこういう風に人の温もりに触れた事はなかったのかもしれません。失った物より満たされた物の方が遥かに多い、そんな温もり。


フラウス「わたしは、この身を神に捧げていたのよ……」

ベルド「捧げるのは心だけにしろ。身体は、オレのものだ

か……かっこいい……。ベルドの言葉って聞きようによっては酷いけど、やたらとカッコイイものが多い。

フラウスによれば、ベルドの心はそんなに猛々しくはないそうです。優しさ、思いやり、哀しみ、喜び、怒り、静けさ、色々とあります。


何で急にフラウスを求めたのかというと、今日は楽しかったからだそうです。相変わらず言葉足らずですが、何となく納得できるのがベルド節。

魔神将と戦ってからは自分の力に思う所があるのか無口になったし、ルシーダのこともあったし……思っていたよりもベルドの心は純粋です

ルシーダについても「かわいそうなことをした」と一言だけ言っていました。簡略、それでいて的確に心を表現する。それがベルド節。


ベルド「別れた女のことは、すぐに忘れることにしている。それがたとえ、生き別れでも、死に別れでもな

来ましたベルド節、なんで一言一言がこうも腹にズシンと来るんでしょう。最早格言の域にまで達しています。

ベルド「忘れられたくなければ、死ぬな

フラウスに対する想い、ルシーダに対する想いが、その一言に乗せられています。本当にどうしてこの男は、こんなに凄いんだろう。

言葉には限りがあるけど、心はそう決まりきったものではない。自分の心を的確に表現する事は、どんなに言葉を重ねても困難です。

でもベルドは不思議と簡単な言葉でそれが出来る気がする。肝心の本人の心は全く掴めない様な代物なのに、何でだろう……。


★6〜8

いよいよ人間達が魔神に対して攻勢に出る時が来ました。モス公国連合騎士団は、ミルスの街奪還に乗り出したのです。

出来ればリュッセンもそのまま解放してしまうつもりです。期待できる援軍もないし魔神の軍勢は次第に増強されるから、一気に攻めるのです。

今回の戦にはナシェルやベルドは参加していません。連合騎士団の名誉に傷がつくという理由で、従軍拒否です。そんな場合じゃないと思うけど。

モスの住人であるフレーベと、ヴェノン・レントンの戦いで多くの信望者を得ているニースは許可されましたけどね。


彼らはよく戦いました。駐屯している魔神の数が少なかったこともあり、ミルスの街奪還には成功したのです。人々は歓喜しました。

しかし魔神がミルスの街に放火。街は炎上し、騎士団は一般人を避難させるだけで一杯一杯でした。ミルスの街は放棄されたのです。

しかもハーケーンの街に帰還する彼らには空からの魔神の奇襲がありました。結局は敗北感が残る結果となってしまったのです。

勿論フレーベもニースも大活躍でしたよ。でもたった2人が奮戦したところで、千単位の戦の趨勢が変わったりはしません。


騎士と騎士との戦いには不文律というものがあります。それを破る事は騎士として恥ずべき事であり、通常それは行われません。

しかし魔神にはそんな制約はない。街一つ灰燼に帰す事なんてなんら躊躇するようなことではないのです。騎士の常識は通用しないのです。

通常は戦で得た土地や街や民は大切な財産ですが、きっと魔神はそれを捨て駒にすることも厭いません。

実質的な指揮官であったバーランは、騎士と騎士との戦いでは歴戦の名将です。しかし相手が魔神では、その手を読み切れないのです。


それに追い討ちをかけるようになんとマスケトが離反してしまいます。温厚な事で知られるマスケト公デュオンがスカードに寝返ったのです。

それはきっとヴェノン王ヤーベイの同意のもとでしょう。どっちが勝っても王家は存続する。その為の非常手段です。

かといってそれを指摘すれば、ヴェノンが一国を挙げてモスから離反しかねない。これでモスの1/3が魔神領となったのです。

これによってハーケーンとヴェノンの両王都が魔神の領域と隣接。モス諸国には非常に暗い雰囲気が漂っていました。


非常に苦しい状況なので、マイセンはウォートの知恵を借ります。それ程に逼迫しているのです。実際このままでは負けでしょうしね。

戦に勝つには兵・食・金が不可欠。この内「食」はナシェルがヴァリスと交わした和平条約によって供給された食料で解決しました。

モス側の条文には「賠償」、ヴァリス側の条文には「援助」と書かれていたそうです。言葉というものは使ってみるものですね(苦笑)

「兵」に関しては、ウォートが下準備を整えている百の勇者が到着すれば解決します。あとは「金」ですね、ある意味一番厄介です。


ウォートはアルボラ山脈に住む金鱗の竜王の財宝を手に入れる事を提案しました。ブラムドと同じ五色の魔竜の一匹ですね。

マイセンは思わず「無理だ!」と叫びます。金鱗の竜王は真の古竜、その実力は見方によってはあのシューティングスターをも上回ります

しかしこれしかないのです。手っ取り早く軍資金を獲得し、兵の士気を高揚させ、離反者を牽制し、傭兵や食料や武器を購入する。


そしてこれを行うのは公王であるマイセンの仕事です。マイセンがこれを果たしてこそ、これらの効果が得られるのです。

しかも金鱗の竜王の心を掴めれば、ワイバーンやワームといった金鱗の竜王に従属する竜族を全て味方に出来ます

これは賭けです。得られる時は全てが得られるし、失敗した時はロードスの運命はそれまでです。正にデッド・オア・アライブ。

マイセンは悩みましたが、一度決意すればその意思は確固たるものでした。それでこそ勇者の家系、ハイランドの王です。


そして世間に噂が流れるのを待って、マイセン、ウォート、そしてニースは金鱗の竜王が住んでいるらしい巨大洞窟を訪れました。

本来なら道なき道を行くから恐ろしく時間がかかるのですが、魔法と竜の力でひとっ飛びです。ここに金鱗の竜王がいるのです。

ウォートは考えられるだけのマジックアイテムをマイセンに勧めますが、マイセンは一時断りました。武人としてのプライドでしょう。

しかしここで死んだら何にもならないのでつけさせます。ここでいう炎を吸収する水晶というのは、"ファイア・アブソーバー"でしょうね。


作戦は簡単です。マイセンが金鱗の竜王の注意を惹き付け、ウォートはニースを瞬間移動させ、ニースはブラムドのように呪いを解除する。

金鱗の竜王もブラムドと同じく、宝を狙う輩は殺すよう呪いをかけられています。本人の意思には当然沿いませんがね。

恐らくは五色の魔竜に呪いをかけた人物は一緒です。既に一度成功しているニースならば、きっと解呪出来ます。

今回は神官の助けがないので魔晶石で代用します。魔晶石と自らの精神力を同時に使える点を見ると、どうやら旧版ルールらしい。

別にそんな事しなくても、超英雄ポイントを使えば自動的に成功ですけどね。いや当時はそんなルールなかったから仕方ないんだけど。


ウォートは一応"パラライズ"で金鱗の竜王の動きを封じるつもりですが、成功するとも限らないので命の保障は出来ません。

やっぱりそれも超英雄ポイントを使えば抵抗を許さないのですが、一々そんな事言っていたら切りがありませんね(苦笑)

最悪の場合は3人一緒に"テレポート"だそうですが、この魔法って接触する必要があるんですよね。ちょっと無理じゃないですかね。

あるいはウォートが先に安全な所へ跳んで、そこからグローダーのように"リマンド"で2人を引き寄せるとか。1ラウンドの遅れは辛いけど。

しかも"リマンド"って対象の拡大は出来ないんですよね。つまり一度に呼べるのは1人だけ、もう1人に関しては2ラウンドの遅れです。


ニース「賢者様は、怖くないのですが?」

ウォート「怖くてたまらないよ。ただ、わたしは臆病者だからね。十分な勝算がなければ、ここには来なかったわけだよ。
     だから、信じてくれていい。わたしをではなく、わたしの臆病さをね

こんな時にも皮肉っぽい冗談が言えるんですね。結構余裕あるんじゃないかな、このダイケンジャーは(笑)

しかしニースはこれが2回目なんですよね。震えてるじゃないですか。まったく誰のせいなんだか(ウォートです)。


きっと金鱗の竜王は、領域を侵す者には本気で攻撃してきますが、それは呪いの強制力が働いているからです。

どうやら金鱗の竜王は善良な性格を持ち人間にも好意的なんだそうです。恐らくはブラムドよりも協力的です。

呪いさえ解ければ、きっと話し合いで解決できる。その点がナースやシューティングスターとは決定的に違います。


金鱗の竜王は16レベルの古竜で光竜です。五色の魔竜の中では、本物の古竜は彼とシューティングスターだけです。

その能力はシューティングスターと比べても何ら遜色はありません。獰猛な火竜のような攻撃力はありませんけどね。

具体的には、シューティングスターの打撃点は金鱗の竜王に比べて2点高い。あとの能力や数値は基本的に一緒です。

あとブレスの能力もシューティングスターの方が高いですよ。金鱗の竜王に比べて、範囲は半円形で打撃力も10高い


その分、金鱗の竜王は神聖魔法10レベルという能力を持っているらしい。回復が出来る分、恐らくはシューティングスターよりも強い。

光竜というのは光の神を信仰しているのです。闇の神を信仰するナースのような闇竜とは正反対の存在なのです。

しかし金鱗の竜王が神聖魔法を使用している所を目撃した人はいません。一説には信仰を失っているとも言われています。

また使えるとして信仰している神は謎です。彼の性格を考えても、特定するのはちょっと難しい。聡明な所はファリスっぽいけど。


やがて一行は金鱗の竜王の姿を目の当たりにします。その鱗は金色に輝き、洞窟の表面をツルツルにする恐ろしい硬度を誇ります。

やはりブラムドのように哀しそうに警告してきました。それ以上近づいたら殺さないといけないから来ないでくれと言ってるようです。

こういう善良な竜は解放してやりたくなってきますね。シューティングスターのような外道ならともかく、あまりにも哀れです。


戦いそのものは一瞬でした。マイセンが勇壮に金鱗の竜王と戦い、ウォートに送り込まれたニースが呪いを解除します!

金鱗の竜王は呪いに耐えると苦痛を味わうのだから、誰かに攻撃すれば痛い思いをしないで済む筈です。

だからマイセンは金鱗の竜王と戦うことで、その痛みを引き受けたのです。その戦いっぷりは正に勇者そのものでした。

呪いを解除した瞬間は、まるでサーガの一節を見ているかのような荘厳な雰囲気でした。伝説を目の当たりにした感じです。


金鱗の竜王はやはり穏やかな性格だったらしく、呪いから解放してくれたことに心からの感謝の意を示してきました。

ニースは気を失ってしまいますが、それをウォートが受け止めます。似合わないと本人は言っていますが、お似合いの2人です。

マイセンは金鱗の竜王に自らの名を与えて心を掴みました。以後彼は金鱗の竜王マイセンと呼ばれるようになります。


後日、マイセンは竜王を連れてハイランドへ帰還します。その荘厳の極みに人々はひたすらにマイセンの名を称えました

自分の国の王様が金色の巨大な竜に乗って帰還したわけですからね、これは大衆効果も抜群です。きっとウォートの提案です。

宝は竜騎士達が何往復もして運んでいるのですが、何時まで経っても終わりやしない。恐ろしい量の財宝です。

これだけの金銀が流出すると価値は暴落するでしょうね。供給過多の場合価値が下がるのはファンタジーでも同様でしょう。


更にはハイランドには続々と百の勇者が集まってきたのです。人もエルフもドワーフも。魔神と戦うロードスの住人の象徴とも言えます。

冒険者、傭兵、騎士、神官戦士、魔術師、精霊使い、司祭……万にも達しようかという勇者達です。ウォートの試みは成功したらしい。

中には無法者も同然の連中もいますが、そんなのは本物の勇者達の中にあっては大人しくしているしかありませんね。

この状況の変化には、ナシェルも興奮を隠せません。「これなら魔神に勝てる」。いよいよ反撃開始ですね。


そしてウォートは勝負に出ました。夢の実現の為に、ナシェルをもってロードスを統一する為に、マイセンに頼み事をしたのです。

百の勇者は雑軍に過ぎない。彼らをまとめて組織化する、勇者隊の将軍にナシェルを就けてくれるように頼みます。正に"栄光の勇者"です。


ウォート「わたしは、モスという国を高く評価しております。小国とはいえ、それぞれが立派な王国
     それでいて、竜の盟約によって結ばれ、対外的にはかたく団結する

マイセン「何が言いたいのだ?」

ウォート「わたしはロードス全土がモスのようになればと思っております。ロードス全土を、竜の身体に例えたいと……

それはつまり、マイセンをロードス統一の覇道に誘っているのです。ナシェルを統一王にする、ブルークも望んだ覇道に。

戦後には必ずやロードスは荒れる。魔神を滅ぼすその軍勢があれば、ロードス諸国を訳もなく屈服させることが出来るのです。


ナシェルを王にし、ベルドとファーンがその両脇を固めウォートは万色にして無色の存在としてその手腕を振るう

ベルドとファーンは絶対に両立しない。しかしその上にナシェルがくれば、2人は互いに補い合う最高のコンビになるのです。

これが夢を叶える為に出したウォートの答えでした。やはりカーラの抱いていた危惧は的中していたのですね。


マイセン「わしの余命は、もはや幾許もない。夢のひとつぐらい、持っていてもよかろう
     わしとて一国の主、人並みの野心はある。我が娘がロードス公妃となり、我が孫がロードス公王になるのであれば……」

この時ウォートの夢は大きく躍進したのです。ウォートは最大の協力者を得ました。ロードス統一の夢を叶える為の盟友を。

魔神を倒し、乱世に支配されるロードスを統一し、玉座にナシェルが座る。そしてその傍らで、ウォートは宮廷魔術師のローブを着るのです。

カストゥール滅亡以来誰もが望みながら、誰も叶えられなかった夢に王手がかかったのです。残る障害は魔神と"灰色の魔女"です







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