「失われた狂気を求めて」著:安田均/高井信 出版社:富士見書房

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第1章 ドワーフ連続殺人事件

★プロローグ

デュダ長編2冊目は、「ドワーフ村殺人事件」で登場した名もなき狂気の神の一派《真実の目》との直接対決となります。

実際戦うのは最後の最後で、それまでデュダは無謀にも巨人像の謎解きに挑むんですがね。それと平行して《真実の目》が悪さをするのです。


マッディ・マティス 31歳

ダークプリースト(名もなき狂気の神)4、ソーサラー3。知力21で精神力20で魔法使いとしてはかなり優秀。《真実の目》の教祖

《真実の目》とは、狂気による世界秩序の確立を目的とする闇の宗教団体です。強力な説得力によって、他人を狂気に染める事ができる。


彼らの信仰する名もなき狂気の神は特殊な神です。何が特殊かって、神格が特定されていないんですよ。敢えて言うなら狂気ですがね。

神話の中の名もなき狂気の神はやはり訳の分からない存在です。何の脈絡もなく登場し、場を混乱させて去っていく、出自不明の神です。

それ故に他の神の同一神ではないかという説もあります。中立神の長にして月の神であるフェネスや、芸術神にして運命神のヴェーナー説がある。


その信者は例外なく狂気に冒されている。傍から見たら異常としか思えない思想や行動に固執する、正に狂人なのです。

ただしその狂気は見方を変えればインスピレーションの発揮とも取れ、芸術家の中には密かに信者がいる。故にヴェーナーと同一視される。

こんな狂人だから教団や神殿は作り難い。作られたとしても小規模です。ただし容易に狂気が伝播するという恐ろしい面もある。


《真実の目》は正にそういう集団なのです。マッディ・マティスの強烈な説得力は大抵の人間を自分の教団に転ばせる事ができます。

マティスは布教活動に熱心で、半年で信者を1000人に、1年で5000人に、数年後には大陸最大の宗教団体にすると予定していました。

ところが狂気の教えは狭く深く受け入れられる傾向にあるのか、現在の信者数は数百人。それでも結構集めた方だと思いますがね。


前回ラルフ・ワイザーを誘拐して改宗を迫ったのも、彼に布教させて信者を増やそうとしたからですが、結局失敗でした。

あの後指名手配されてしまい、信者の1人を身代わりに自首させた苦い失敗です。悩むマティスは自らの側近の2人を呼び出し、案を出させます。


ガイル 29歳

ソーサラー6、セージ5。学問に取り憑かれた狂人で、人は彼を博覧強記あらぬ錯乱狂気の男と呼ぶ。また"懐刀"という二つ名を持つ。

知力20で精神力23でやたらと能力値は優秀です。ワイザー誘拐も彼の策ですが、結局失敗したのだから存在価値が疑われる。


サング 26歳

ファイター4、シーフ3。殺しの美学に取り憑かれた狂人で、人をいかに芸術的に殺すかに価値を求める。また"おっとり刀"の二つ名を持つ。

敏捷度19で生命力18は立派ですが、知力11で精神力10というのが彼の人間性をよく表している。暗殺はともかく教団運営には役に立たない。


呼び出したのはいいけど、ガイルの案は二番煎じのファリスの高僧誘拐計画だし、サングに至っては邪魔者は皆殺し作戦です。

狂人だけに肝心な所で役に立たない。マティスは2人を下げ、自分だけで信者の数を増やす方法を考えに考えました。

その時彼はふと、本棚にあった「ロック・ワームズ卿の冒険」という本に目を留めます。ご存知ワームズ卿シリーズの一作ですね。

今オランで最も人気のある作品であり、マティスも気になって買ったのですが、狂気の理論を掲げる彼には退屈そのもので放置していました。


しかし人気がある事はマティスも認めてるし、中には熱狂的なファンもいる。ファンクラブを作るような狂信的信者(笑)もいる。

そこでワームズを信者にすればどうだろうか?と考えたのです。その人気に便乗し、ファンを丸ごと信者にできるのではないかと。

作家を洗脳して本を書かせて、ファンの人達を丸ごと洗脳か……なんか戦隊モノの悪の幹部が考えそうな作戦ですね(古いかな?)。

マティスはこの作戦を実行に移すべく、サングを呼び出してある事件を起こさせます。その事件は計画に必要なプロセスです。その事件とは……。


★1〜2

その日ギリアムは自らの趣味を満喫して帰宅しました。彼の趣味とはなんと覗きなのです。ピーピング・トム、出歯亀なのです。

近所の公園で恋人達の甘い一時を除き見るのがささやかな楽しみだったのです。オランの法でどうだか分かりませんが、かなり犯罪臭い

仮にも巡察官のギリアムに覗き癖があったなんて、人に知られたら面白い大変な騒ぎになるでしょうね。下手したら懲戒免職かな?


ところが覗きに興じるギリアムの周りで不思議な事件が起き始めます。それはドワーフ連続殺人事件です。

何故だか死因は必ず首筋の裂傷で、必ず髭を剃られているのです。しかもギリアムが覗きをしているすぐ側で起こるのです。


最初の事件はギリアムが覗きをしていた公園で、ギリアムと同じく覗きをしているドワーフでした。同好の士は雰囲気で分かるらしい。

それから1週間後には2人目が、更に1週間後には3人目が同じ手口で殺されたのです。その全てをギリアムが担当し、捜査に奔走します。

ギリアムはドワーフが大嫌いです。覗きの対象にもならないから、心の底から蔑視しているのです。ていうかそんな理由かい(苦笑)

ぶっちゃけた話、ドワーフが殺されても怒りは湧かない。むしろ犯人を表彰したいぐらいなので、捜査をするのは業腹でした。何て奴だギリアム。


やがてギリアムはこの殺人事件が小説と瓜二つだと気づきます。例の「ロックワームズ卿の冒険」に収録されている「赤髭連盟」という作品です。

ドワーフの髭は大体茶褐色か暗褐色ですが、中には漆黒の髭もある。赤髭連盟とは、漆黒の髭を不浄なものとし、その撲滅を掲げる秘密結社です。


さて、この「ロックワームズ卿の冒険」には12作の短編が収録されていますが、元ネタは「シャーロック・ホームズの冒険」ですよね(笑)

同じように「赤髭連盟」という作品も収録されているし。そもそもワームズ自体がホームズのパロディですもんね。

ホームズには矛盾点が数多く指摘され、御手洗にキチガイ呼ばわりされたりしますが、まさかワームズにもそういう面があるんだろうか。


この事実に気づいたギリアムは早速作者であるロック・ワームズに会いにいきました。実は同名の作家の作品だったんですね。


ロック・ワームズ 35歳

セージ5、ファイター4、ソーサラー2で一般技能:ライター(作家)6でもある多才で紳士的な人物です。

実はイーグル街(デュダ達の住む街)の一角に豪邸を構えている。知力は流石のもので21もある。他の能力値も平均を超える。


ワームズはルイードという若者と2人暮らしをしているのですが、それだとむしろ小林少年と同居する明智小五郎ですね。

そう言えば明智も初期は服装に無頓着な書生スタイルでしたね。その後そのスタイルは金田一耕介に受け継がれ、当人は紳士になりますが。

ワームズ卿の活躍を断片的に聞いていると、同じ名探偵でも変人系のホームズというか、完璧超人系の明智の方がイメージに合ってるんですよね。


あくまでも探偵は小説のワームズであって、作家のワームズではありませんけどね。作家のワームズは同名の探偵を書いてるだけだし。

もしかしたら小説のワームズ卿は、魔術師ギルドの賢者とかと同居しているのかも。そしてワームズ卿の活躍をその賢者が本にする設定(笑)

ある時を境にワームズはその賢者を置いて大陸を脱出し、海の向こうの異郷で研究を始める、とかだったら笑えますね(それじゃあ御手洗)。


ワームズ邸にやってきたギリアムはアポも紹介状もないので、ルイード君はなかなか通してくれませんでした。

しかしそこで引き下がるギリアムではない。「ゴチャゴチャぬかすと逮捕するぞ!」と迫力で圧倒し、ワームズと面会します。

なんかやってる事がデュダと大差ない気もしますね。案外2人とも似ている所があるのかもしれない。似ているからこそ仲が悪い。


こうして登場したワームズは横暴なギリアムが相手でも紳士でした。温厚な人格者で、ギリアムの矛先も簡単にかわすような人です。

ギリアムはワームズが怪しいと考えていたので、隙あらば逮捕してやろうと思っていました。……本当に懲戒免職にならないかな、この人(苦笑)

しかしワームズの落ち着いた対応には適わず、何かあった時には協力する事をワームズが約束すると、そのまま帰らざるを得ませんでした。

だって「読者の中に犯人がいるらしいから心当たりはないか?」とか聞いても、ワームズが読者全てを把握してる訳ではないですからね。


ワームズの方は自分の書いた作品と同じ事件が起きている事を知ると、当然ながらいたく興味をそそられたようです。

実は小説でもワームズ卿は巡察官に捜査の協力を求められるんですよ。これでワームズが乗り出せば、更に小説を踏襲する。

そして最大のネックは、「赤髭連盟」の黒幕は事件を捜査していた巡察官だったという点にある。これだとギリアムが犯人になる。

当然ギリアムは犯人ではないのですが、そんな事はワームズには分からない。それこそが《真実の目》の狙いだったのです。


第2章 巨人像への旅立ち

★1〜2

ラルフ・ワイザーの救出から1週間が経ちました。デュダとリュークは成長しています。施療院で暴れただけなのにね(笑)

でも実際成長したのはイストン到着時(あるいはファーズ到着時)で、この時点ではまだ前巻のレベルのままかと思います。

デュダはセージ5→6になしました。戦闘力はないくせにレベルで魔法を弾くドワーフか、何か嫌らしい。

リュークはシャーマン4→5になりました。ついに"バルキリー・ジャベリン"が使えますね。無謀と慢心はデュダの方ですが(苦笑)


2人は例によって「ひとつ目ドクロ亭」を訪れますが、その日は月一の《ロック・ワームズ探偵局》例会の日でした。

実はメリンダもデュダに負けず劣らずのワームズファンだったのです。だからこの店をその例会の場として開放しているんですよ。

《ロック・ワームズ探偵局》はオランに数あるワームズ卿愛好会の中でも最大規模を誇り、会員数は100人を越える。

例会に集まるのは特に熱心なマニア20〜30人ぐらい。別に議題がある訳でもなく、適当に駄弁ってるだけの会です。


デュダは嬉々としてこの例会に出席し、同好の士達ととことんワームズ卿談義に花を咲かせました。それはもう部外者が引くぐらい(笑)

ワームズ卿が好きなデュダもここまで突っ込んだ話をするのは初めてだったようですね。同じファンと話す機会というのは貴重なものですよ。

ただし特にファンでもないリュークは暇そうですがね。特に興味がないのに、ファンの集いに顔を出すのは拷問に等しい。


やがて彼らはとんでもない計画を実行に移そうとします。巨人像の謎を解いて、ワームズに小説化して貰おうという計画です。

巨人像については「牧歌の国の魔法戦士」を参照。長い間謎だった巨人像の秘密が明らかになる話です。つまりデュダ達は解けないのです。

巨人像に近いイストンまでは片道でも1月半。そこから巨人像まで1週間です。つまり順調に行っても片道2ヶ月弱かかる。

往復だとおよそ4ヶ月の長旅です。単純に小説の為にそんな旅に出るのだから、彼らの冒険心とファン根性は凄いですね。

勿論リュークはそんな無謀な旅に出るのは反対でした。しかしデュダを説得できる筈もなく、逆に説得されてしまいました(合掌)。


オラン⇔ソーミー間は「雲の上の街道」で28日。ソーミー⇔ファーズ間は不詳。ファーズ⇔イストン間は「真鍮の街道」は9日です。

つまりブラード⇔ファーズ間は約8日になりますね。ワールドガイドでは謎とされている区間です。多分そんなもんなんでしょう。

なお「真鍮の街道」はファーズ⇔ヴァンカーを結ぶ「白い霧の街道」の一部です。ワールドガイドでは交日という訳の分からない誤植もある。


旅の仲間はデュダとリューク以外に3人です。お馴染みのメリンダと、今回初登場の戦士のボリス、グラスランナーのルッカー


メリンダ 20歳

バード3、セージ1。「ひとつ目ドクロ亭」の看板娘。さり気なく知力18で精神力19もある。その代わり敏捷度はドワーフ並の9。

武器らしい武器を持っていなくて、直接戦力にならない点ではデュダと同じ。取得呪歌は"ピース"、"ララバイ"、"チャーム"。


ボリス 26歳

ファイター3。なんと筋力24でイリーナ並。人に筋肉を見せるのが好き。今見るとなかやまきんに君に見えて仕方がない(笑)


ルッカー 22歳

シーフ3、レンジャー1なグララン。日頃からクネクネとした動きをするオカマである。何故かグラスランナー語を習得している(笑)


これにセージ/プリーストなデュダと、シャーマン/ソーサラーなリュークが加わると、一応全技能をコンプリートしますね。

ただしプリーストとソーサラーがサブ技能でしかないので1しかないのが不安ではある。ただ旅をするだけならいいかもしれませんが。


★3〜5

そして翌日、5人は「ひとつ目ドクロ亭」に早朝から集合し、長い長い旅に出たのです。彼らがオランに帰るのは、4ヶ月以上先です。

ブラードに着くまではかなり気軽な旅でした。話の中心はワームズ卿ですけどね。それだとリュークがかなり不憫ですが、馴染めてはいるらしい。

しかもメリンダ達は分担してワームズ卿シリーズを全巻持ってるんですよ。しかもサイン本。気持ちは分かるけど、旅を舐めてるのか(笑)


一行はブラードに着くと「ラスタン亭」という店に部屋を取って、下の酒場で久しぶりに酒を楽しみました。

そこで1人の旅人と相席になります。彼の名はウェルバーといって、なんと巨人像の近くまで行ってきたというのです。


ウェルバー 25歳

シーフ5、レンジャー2、一般技能:ギャンブラー4。実は《真実の目》の信者であり、賭け事への執着心は狂気です。


彼はマティスの命令でアノスで布教活動を行っていました。しかしファリスが国教の国で受け入れる訳もありませんでした。

ていうか官憲に知れたら邪教徒という名目で捕まってたかもしれませんね。シーフ5あるから優秀ではあるのですが。

そうして流れ流れてイストンや巨人像へ行った彼は、そこで名もなき狂気の神にまつわる書物が眠る洞窟の噂を聞いたのです。

しかし1人で入る訳にも行かず、現地までの詳細な地図を書いてオランへ帰還する途中だったのです。それでデュダと相席になるとは凄い偶然。


さてここで気になるのは、「マティスの掲げる教義が名もなき狂気の神の教えに似ている」と書いてある点です。

似ているも何も、マティスは正真正銘名もなき狂気の神の闇司祭ですよ。でもこれじゃあ本人はそれを知らないみたいじゃないですか。

自分の神聖/暗黒魔法の出所の神が分からないなんて事がありえるのか。面白いネタではあるから、あってもいいんですけどね。

そういえば「混沌の大地」のバリントンは、ケイオスランドでマイリーに祈ったつもりで別の神の意思?を感じて驚いてましたっけ。

普通は意識的に修行したりするのかもしれませんが、無自覚に力を授かり尚且つ回りに教えてくれる人がいなければあり得るのかも。


ウェルバーはデュダ達が巨人像の遺跡の謎を解こうとしていると知ると嘲笑します。お前達のような未熟者に解ける訳がないと。

その通り未熟者ですが、そう言われると頭にくるものです。そこで賭け事の狂人ウェルバーは、それができるかどうかで賭けをしようとします。

ウェルバーが賭けるものは例の地図ですが、現地までいけたのなら無用の長物だから、賭けは成立しませんね。


でも現地までの地図があると聞くと、デュダ達としても喉から手が出るほど欲しい。そりゃあそうです、地図の有無は時に命運を左右します。

そこでルッカーは同じ盗賊として記憶術勝負を挑みます。自分が負けたらサイン本を、ウェルバーが負けたら地図を渡す賭けです。

本当ならそんな賭けに乗るべきではない。しかしウェルバーは賭け事の狂人です。折角の賭け事を不意にする事はできませんでした。


方法は2人で同じ絵を見て、その後で互いに絵について質問をし合う。先に失敗した方が負けです。文字通り《記憶術》の勝負ですね。

ちなみに基準値はルッカーは5、ウェルバーは7です。その差が勝負を分けたのか、ルッカーは敗北してしまいます。

質問は絵に書かれている武器は何かというものでした。ルッカーは細かい所は覚えてはいるけど、そういう目立つものはおざなりでした。


1回で勝負がついてしまって興醒めですね。それでも賭けは賭けだからと、ウェルバーはサイン本を渡せとルッカーに迫ります。

「賭けの勝利は何物にも優先する」という信念を持ってるのです。しかしルッカーは往生際が悪く渡そうとしません。

それどころかボリスが密かに後ろに回りこみ、ウェルバーをぶん殴って気絶させ地図を奪取してしまいます。とても主役側とは思えません(苦笑)


デュダ達は急いで宿を引き払い、怒りに燃えるウェルバーは不本意ながら追跡を諦めて、オランのマティスへ報告に向かったのでした。

よりにもよって《真実の目》の最大の敵?であるデュダに地図を奪われるとは、とことん皮肉な巡り合わせでした。


第3章 マティスの陰謀

★1〜2

デュダ達が巨人像に向かっている頃、オランではマティスの恐るべき計画が実を結ぼうとしていました。

ロック・ワームズは真犯人の期待通りにドワーフ連続殺人事件に着手していました。ギリアムに疑惑を抱きつつ、です。


自分の書いた小説「赤髭連盟」と同じように起こる事件。そして同じように探偵に協力を求める巡察官という構図は無視できません。

しかもギリアムの身辺を探ったら、3件の殺人事件ではギリアムに悉くアリバイがない。加えて能力的にも動機的にも不可能ではない

ギリアムは仮にも4レベル戦士ですから、殺傷自体は容易です。そして日頃から見せるドワーフ嫌い。それが殺害欲求に繋がってない保障はない。


しかし巡察官が犯人なんて、小説ではともかく現実ではあってはならないとワームズは思っています。突飛な小説家に限って良識派なのです。

ワームズに相談する事で自分を容疑者から外そうとしているという可能性もありますが、ぶっちゃけギリアムはそんなに頭は良くない

助手のルイード君などは思いっきり疑っているのですが、慎重なワームズは断定せず、取り合えずマークしてみる事にします。


そうしてルイードはギリアムを監視しますが、暫くの間は全く怪しい素振りを見せず、ルイードも自身を喪失しかけていました。

ところがある日、ついに事件は急展開します。ルイードがギリアムを見失った時、新たな殺人事件が起きるのです。これで4人目の犠牲者です。

しかも事件現場はギリアムを見失った場所、死亡推定時刻もギリアムを見失った時間なのです。怪しい、流石にこれは偶然とは思えない。


更にはワームズに会いに来たギリアムは事件当時家にいたと嘘をついたのです。これでワームズもギリアムが犯人だと確信しました。

ギリアムがアリバイの話から素早く話を摩り替えた事で、ギリアムが実は物凄くキレる男なのだともワームズは思いました(買い被り―笑)

実はギリアムはドワーフを立場を利用してドワーフを殺害する事に快楽を覚えているのだと、ワームズは推理したのです。


デュダだったらここでそれを構わず指摘したんでしょうが、慎重なワームズは無理に問い質さず、穏便に帰らせます。

ギリアムが二重人格だという可能性もあるし(それこそ小説)、本気で戦闘になったら無事では済まないとも思ったからです。

実際ワームズとギリアムは同レベルの戦士ですからね。装備も大差ないけど、ソーサラー技能がある分ワームズのが強いかな。


それからギリアムは巡察官本部に詳細を話し、ギリアムの取調べが始まります。自分が調べられるなんて、多分初めての経験でしょうね。

当時の居場所についてギリアムが嘘をついている事は本部にも分かっています。では本当は何処にいたかと言われても、答えられない

だってアベックを覗いていました、なんて言えませんからね。それで殺人罪に問われようとも、ギリアムのプライドはそれを許しません。

殺人罪も十分不名誉ですが、覗き魔として世間に認知されるなんてギリアムには耐えられなかったんですね。

これはアレですね、小さな事を大きな事で揉み消すという手法です。花瓶を割ったのを隠そうと自分が窓ガラスに突っ込んでみたり(笑)


結局ギリアムは4件の殺人事件の全てにアリバイがなく、「散歩で」なんてふざけた弁解が通る訳もありませんでした。

更にはギリアムの自宅から殺されたドワーフ達の髭が発見されます。覗き魔も十分不名誉ですが、殺人狂髭マニアというのもどうだかな(苦笑)

結局最後の最後までギリアムは覗き癖をカミング・アウトできず、逮捕状が発行され、オランの人々は騒然となったのでした。


★3

机上の推理だけでなく、現実の怪事件まで解いてしまったので、ワームズ人気もうなぎ上りでした。デュダが留守なのが惜しい。

当然「ワームズ卿」シリーズの本も飛ぶように売れました。これでワームズには更に大量の印税が入りますね(あるの?)。

しかしワームズはあくまでも執筆に従事し、公演等の依頼は断りました。単に人前で話すのが苦手なだけかもしれませんが(石岡君か)。


ところがある日ワームズ邸に「ギリアムは犯人ではない」と主張する男がやってきます。もう明らかですね、マッディ・マティスです。

マティスはワームズにこの事件をどのように推理したのかを尋ね、それを「犯罪者心理の裏」を読んだのだと感心する素振りを見せます。

「裏を読む」、あるいは「裏の裏を読む」(表じゃん)というのはワームズの好きな話で、デュダにも歪んで引き継がれています。


しかしマティスは突然「あんた、間違ってるよ」と言って、その狂気の論理を披露します。狂気なので理論はあるようでない話です。

犯罪者心理には「表と裏」だけでなく「正と逆」もある。裏を読めばギリアムが犯人だが、逆を読めばそうではない。逆を読むのは狂気を知る事。

また被害者達は皆鋭い凶器によって殺されていたが、実は狂気によって殺されていた。すなわちギリアムが犯人ではない、そんな理論。

分かるようで分からない理論ですが、それでいいのです。狂気ですから。それはそうと凶(狂)・器(気)と書くと岡田芽武のマンガみたい。


そしてマティスは後ろに控えているあの殺人狂のサングを前に出し、自分がドワーフ達を殺したのだと自白させます。

サングはその美意識からか、被害者達のデスマスクを取ってありました。これを提示すれば、立派な証拠になる。では動機は何なのか?。

それはサングが殺人狂デスマスク収拾が趣味だから。微妙に理由になってませんが、ただそれだけなのです。狂気に理由は要らない

こいつの部屋には犠牲者達のデスマスクがびっしり飾ってあったりするんでしょうね。お前は蟹座の黄金聖闘士か(笑)

という事は事件当日は、恋人を覗くギリアムを覗くルイードを覗くサングという、メタ視のような状態だったのかもしれない。


何にせよワームズは推理を誤ったのです。それで無実の(いや覗き魔だけど)巡察官を罪人にしてしまったのです。

自信家のワームズはその自信を砕かれ、茫然自失とします。そこでマティスはすかさずワームズに掴みかかり、暗黒魔法を使います。

「狂気は力なり」と使った魔法は"ルナティック・シード"です。ラルフ・ワイザーにも使った、マティスの奥の手ですね。

マティスの魔力は7、ワームズの精神抵抗は8です。抵抗できる確率は66%程はあるのですが、不意を突かれた(出目が低い?)ので失敗


一度この魔法にかかってしまうと術者には絶対服従です。効果は永続であり、術者が権利を放棄するまで続きます。

なおこの魔法は完全版では呪いに属する魔法になったので、ワイザーの時のように"サニティ"では解除できなくなりました。

解除するには"リムーブ・カース"がセオリーです。アンマントでもこの魔法を使うキチガイのマンティコアが出てきましたね。


こうしてマティスは「誤った推理をさせて隙を作り信者にする」という計画を成功させてしまったのです。


第4章 スフィンクスの謎

★1〜2

デュダ達はグロザルム山脈を越え、アノスに入り、ついにはイストンまで辿り着きました。この時点で約2ヶ月経過で、巨人像まではあと1週間。

一応イストン到着時に前述の通りに全員成長しているのですが、流石に遭遇するモンスターの全てが勝てるモンスターではない。

ボリスの怪力とリュークの魔法が頼りになりますけど、強敵に対する一番有効な手段は逃亡だと悟ったようです。ある意味真理(笑)


やがて一行はウェルバーの地図に描かれている×印の地点に到達します。そこは宝でも罠でもモンスターでもなく、洞窟でした(中にあるけど)。

地図を見ると洞窟を抜けるのが巨人像までの近道になっています。そうでないと断崖絶壁に阻まれていて、遠回りするしかない。

勿論そんな面倒なのは真っ平御免という連中なので、手っ取り早く洞窟に挑戦します。しかしそこは素通りできないような難所でした。


一本道の狭い通路を抜けると大広間に出ますが、そこにはなんと7レベル巨人のヘカトンケイレスがいたりします。

身長およそ4m、「百手巨人」の名とは裏腹に手が12本しかない。いや12本は「しか」じゃなくて「も」だと思うけど(苦笑)

「愛を信じたい」にも出てきたように、巨人というか魔獣/幻獣の一種なんですけどね。ちなみに稀に神聖魔法4レベルを使用。

余談ですが、ヨカトンケイレスは複数形であって、単数形はヘカトンケイルなんですよね。あと神話の方では五十面百臂


ぶっちゃけ今のパーティーに勝てる相手ではない。まともに戦えるのがボリスとリュークしかいませんしね。

デュダの賢者は端くれですから《怪物判定》には成功しましたよ。知名度15で基準値7だから、出目8以上を出したんでしょうね。

それならこいつが勝てる相手ではないと分かるのですが、「自分より腕が太い奴が許せない」ボリスが突貫し、なし崩しに戦闘になります。

が、こいつはその稀に神聖魔法を使える個体でもあって、彼らはその強さを身を持って悟り、得意の戦闘オプション《逃亡》を発動します(笑)


命からがら逃げ切ったデュダ達は流石にリベンジを挑む根性はなく、何とかしてやり過ごせないかと知恵を絞ります。

するとリュークが、そうデュダでなくリュークが"トンネル"でショートカットするという便利技を考案します。

今のリュークは"トンネル"を4点消費で使えるので、最大4回(40m)まで掘れる。デュダがトランスファーすればもっといける。

こうしてデュダ達はヘカトンケイレスに待ち惚けを食らわせる事に成功したのです。ちなみに奴さんは通路を四つん這いで通るらしい(笑)


★3

ヘカトンケイレスは上手くやり過ごせましたが、次に彼らの前に立ちはだかったのはスフィンクスでした。

スフィンクスは7レベルの幻獣で、"正しき知識の守護者"です。獅子の体に鷲の翼、人の顔を持つ頭脳派のモンスターです。

こう見えてもヘカトンケイレスとタメを張る7レベルであり、奴ほど肉弾戦は強くないけど、その代わり古代語魔法5レベルを使う。

貴重な知識やアイテムを守護している事が多く、伝説にあるテーバイのスフィンクスさながらにリドル(謎かけ)を仕掛けてきます。


そのリドルに答えられれば秘密を明かしてくれる、妙に潔いモンスター。そういえばテーバイのスフィンクスも回答されると投身自殺しましたね。

ただしその謎は抽象的な事が多い。伝説にある「朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足。これは何か」みたいな曖昧な問いが普通です。

そうなると回答が複数存在するのもザラです。それら全てを正答とするか、あるいは模範解答のみ正答とするかで趣味が分かれる。

あとルールブックには特に書かれていないけど、間違えると食われる可能性がある。テーバイのスフィンクスがそうだったからでしょうね。


多くの冒険者が頭を悩ませる幻獣なのですが、デュダにかかれば知的どころか愛すべき三枚目に成り下がってしまうのです(笑)

スフィンクスは3つの謎を出しました。それらに悉くも珍妙な答えを返しつつ、何故か正答になってしまいます。


問1.『初めは黒く、次は赤く、最後には白くなるもの、それは何か?』

模範回答.

デュダ達の回答.


これはこれでちょっと分かる気がする。髭か……確かにそれでいい……のかな?。実際当て嵌まってるのは確かだし(苦笑)

違うと断言するスフィンクスに対し、仲間達は「デュダさんは正しい」「そうだ髭が正解だぁ」「髭だあ、髭だあ」とはしゃぎ回ります。

こういう軽薄な行動に出られると、百戦錬磨のクイズ王スフィンクスも呆気に取られ、思わず正解にしてしまいます(いいのか?)

模範解答を聞かされた後、デュダに「その答えでもいいな」と言われるとスフィンクスもムッとしていましたが、理性を総動員して堪えます。


問2.『誰もが持ちながら、ときに美しきもの、ときに恐ろしきもの、ときに用をなさぬもの、それは何か?』

模範解答.

デュダ達の回答.筋肉


この答えはむしろボリスの答えですが、「用をなさぬ」という条件が当て嵌まるのかと聞かれると、筋肉至上主義の彼は困ります。

そこは口先三寸で生きる男デュダがフォローします。もし自分がこんなマッチョになったら服は着れないし扉も通れない、無用の長物だと。

ボリスは内心「新しい服を買えばいいし、扉なんて通れなくてもいい」と真面目に考えていました。前者はともかく、後者はどうよ(苦笑)

結局はルッカーのお色気?攻撃生理的な恐怖に晒されたスフィンクスが折れて、これも正解となります(おいおい……)。

模範解答を聞かされた後、デュダに「なーんだ。つまんない答え」と言われた時はキレそうでしたが、耐えます。怒ってもいいと思うけど。


問3.『誰もが望みながら、ひとたび手に入れるとそれに飽き、失うことでふたたび欲しくなるもの、それはなにか?』

模範解答.平和

デュダ達の回答.地位、女、お金……


最後の最後だから、スフィンクスも相手のペースに乗せられず、模範解答以外は誤答とする事にしました。3問用意しといて良かったですね。

しかしその殺伐とした雰囲気に耐えられなくなったメリンダが"ピース"を歌います。平和の歌、つまり偶然歌で答えてしまったのです。

デュダ達がすっかり呪歌にかかっている一方、流石にスフィンクスは抵抗に成功していましたが、偶然とはいえ答えられてしまったので愕然。


スフィンクスは負けを認め、彼らは一冊の書物を入手します。それこそは遺失魔法の書かれた古代の呪文書だったのです!

ウェルバーが求めていた本と同じと思っていいでしょう。つくづく彼らは《真実の目》と因縁があるんですね。


第5章 ギリアムの脱獄

★1

デュダ達の大発見からいくらか時間は遡り(多分)、オランではギリアムがついに投獄。怒りに震えて悶々とした日々を過ごしていました。

一体どういう刑罰が待っているのか。禁固や懲役といった自由刑なのか、それとも殺人には殺人で生命刑(所謂死刑)なのか。

オランの法律がどうなってるかは分かりませんけど、本格的に自由刑を課すなら巡察官本部の牢屋に入れっぱなしではないと思う。

というのも巡察官本部の牢のスペースはたかが知れてるんですね。リプレイに収録されている巡察官本部の見取り図を見れば明らか。

巡察官本部といえば警察署のようなものです。罪人を本格的に収容するなら、やはりそれ相応の施設が別にあると思うんですよ(城?)。


しかしギリアムは冤罪を被ったまま大人しく刑に服する男ではありません。脱獄をし、真犯人を捕まえないと気が済みません。

勿論自分に冤罪を被せたワームズには怒りを感じていますが、それはただの推理ミス。自分を嵌めた真犯人にその怒りは向けられています。

ギリアムも一応シーフ技能は持っていますが、所詮は1レベル。牢屋の鍵は当然厳重なものだし、道具なし(推定)で開けられる筈もない。


ところがチャンスは思ったよりも早く訪れます。隣の牢に収容されていた麻薬中毒患者禁断症状で暴れ出したのです。

その場にいるのは若い看守1人、とてもそれを収める事ができず、ほとほと困り果てていました。これは絶好のチャンスです。

ギリアムはこう見えても腕利きの麻薬捜査官でした。薬中の相手なんてお手の物の筈です。それを利用して看守に協力を申し出たのです。


いくら緊急事態でも囚人を牢から出すなんて上司に知れたら叱責モノですが、騒動を治めて株を上げるという欲には勝てませんでした。

それにギリアムも滅多に見せない笑顔まで振りまいて真摯な態度を取っていました。その笑顔がデュダに向けられる事は未来永劫なさそう(苦笑)

こうして牢から出る事に成功したギリアムは看守を一撃で気絶させ、脱獄に成功します。これだと脱獄犯として追求を受けるでしょう。

それでも真犯人を捜し出して、身の潔白(いや覗き魔だけど)を証明しなければいけません。なんか「逃亡者」みたいな事になってます。


★2

ワームズを支配下に置いたマティスは、早速その人気を利用して信者獲得に乗り出します。しかし全く効果が無い

ワームズを講演会や愛好会の集いにバンバン出させて、《真実の目》の教義を説かせるのですが、ファンですら見向きもしません。

彼らはあくまでもワームズの作品に心酔してるだけで、ワームズに盲目的に従う訳じゃない。狂人の論理を受け入れる人なんていやしない。


これが酷いもんですよ。講演会では話の途中で席を立つ人が続出。熱狂的ファンが集まる愛好会ですら、その場で解散する事もある。

これじゃあワームズの信用を地に落とすだけで、《真実の目》には何のメリットにもなりませんね。狂気の信徒だけに目算も狂ってたのです(笑)

この分だとラルフ・ワイザーが仮に改宗していたとしても無駄だったんでしょうね。信者も教団も見放すだけだったでしょう。


そこであのウェルバーが帰還します。その報告を聞き、デュダに地図を奪われたと聞くとビックリ。よもやそんな所でも邪魔をされるとは。

「やつのことだから、今ごろは魔法書を見つけているに違いない」と、リュークに続く買い被り第2号のマティスは言っていました(苦笑)

それってデュダは実力者であると信じているから出るセリフですよね。まさか数少ない理解者が敵だとは、そういう意味ではデュダにも不幸。

でも実際見つけているのだから始末が悪い。「実力で」というか、「運で」ですが。まぁ結果が同じなら対応も同じですけどね。


マティスはウェルバーに案内させて、その魔法書のある洞窟まで向かう事にします。デュダから魔法書を奪還するのです。

旅のお供はサングとガイルとワームズです。マティスとウェルバーを含めて5人パーティー。ついに直接対決の時迫る!


とはいえデュダ達は約1ヶ月先行しているんですよね。そこでマティス達は街道を使わず、オランから東へ一直線で向かいます。

道なき道を通ると下手すれば余計時間がかかりますが、上手くすれば短縮できる。安全度では街道とは雲泥の差でしょうがね。

このような冒険者の旅に関する事柄に詳しいのは「SWサポート2」ですね。結構細かい設定まで考えてあって参考になる。


第6章 宿命の対決

★1

デュダはとうとう目的の巨人像に到着しました。しかしその謎はサッパリ解けませんでした。そんな気はしていたんですけどね(苦笑)

この巨人像の謎が公式に解かれるのは、この作品が出た10年以上後の「牧歌の国の魔法戦士」です。巨人像の正体は、巨大ゴーレムでした。

その製作にはカストゥール王国滅亡の引き金となった"魔精霊"アトンが絡んでいるのですが……デュダ達には関係ない話ですね。


デュダ達の興味は巨人像ではなく呪文書に移っていました。この呪文書はただ魔法を記しただけの在り来たりの書物ではないのです。

なんと魔法を使えない者でも魔法を使える呪文書なのです。呪文書を持って呪文を唱えるだけで、グラスランナーのルッカーでも使える。

これはとんでもない物を見つけてしまいましたね。もしこれを魔術師ギルドに持っていったとしたら、どれだけの値がつくやら。


当然呪文書に書かれた呪文しか使えませんが、"スタン・クラウド"や"レイス・フォーム"のような遺失魔法も載ってるんですよね。

それどころか"インサニティ"、"バーサーク"、"ルナティック・ダンス"といった、名もなき狂気の神の暗黒魔法も使えるんですよ。

古代語魔法はともかく、信仰心で使う暗黒魔法まで使えるのはどうかと思いますが、「デュダ」だから。深く考えず、ざっくばらんに楽しもう(笑)


これなら夢中になるのも無理はない。しかし動物を実験体にするのは可哀そうです。動物愛護団体が知ったらお叱りの言葉を受けそう(ない)。

デュダなんて"ルナティック・ダンス"で動物共々踊り狂うという、非常にコメントし辛い状態になっていました。

この魔法は呪文を唱える必要はなく、踊る事でかけられます。術者が踊りを止めても12時間持続するという、筋肉痛を誘いそうな魔法ですね。

これで踊る動物の姿というのはどんなもんなんだろうか。猿とかはともかく、まさか四足動物が直立二足歩行で踊ったりはしませんよね。


またボリスのその筋肉の限界に挑戦すべく、自らの装備に"インクリース・ウェイト"をかけて耐えるという汗臭い遊びをしていました。

そしてデュダは正体不明の魔法を自らにかけてみました。最初はリュークにさせようとしたんですが、本人が凄い嫌がるので(当たり前だ)。

これだけ好き放題できるなら、この魔法書って精神力不要で使えるんでしょうね。拡大も可能だとすると恐るべきアイテムですね。


★2〜3

そんなバカな一時もマティス一味の到着で終わりを告げます。デュダとマティスは一度会っていますが、あの時はマティスが変装してましたね。

マティスはワームズを人質にして呪文書を渡せと脅迫します。ワームズファンにとっては悪夢のような脅迫です。

今のデュダ達にはワームズが《真実の目》の信者になってるとは分かりません。でも支配されていようがいまいが、十分人質になるのです。


ボリス「ワームズさんを放さないと、この筋肉が黙っちゃいないぞ」←やっぱりきんにくん(笑)

マティス「ほほう。なかなか見どころががあるな。どうだ、《真実の目》にはいらぬか?歓迎するぞ」

ルッカー「ワームズさんを釈放してくれたら、あたいを自由にしてもいいのよン」←要らん

マティス「おまえも見どころがあるな

つまりボリスもルッカーも狂人の素質は十分あるという事ですね。そしてマティスはデュダにも一目置いてるんですよね。

それじゃあマトモなのはリュークとメリンダのみ。いやリュークだってある意味おかしい。何だってこんなおかしい人ばっかり揃ってるんだろう(苦笑)


デュダはここで珍しくも主人公らしく苦悩します。尊敬するワームズや自分達の命と、《真実の目》に呪文書を渡す危険性を比較します。

逆らえば戦闘になって勝ち目は薄い。従えば命は助けるとか言ってるし、多分生き残る公算は高い。ただし入信させられそうですが。

デュダ「ワームズさんには悪いけど、やつの要求には従えない

今まで散々やりたい放題やってきたとは思えない潔さです。例え身の安全が保障されなくても、呪文書を渡さず戦うと決断したのです。


ワームズも相手側に入りますが、6対5と数では有利ですね。ただしこっちで役に立つのはボリスとリュークのみです。

バード/セージのメリンダじゃ呪歌しか役に立たないし、それだって決定打にはなり得ない。ルッカーは意気地がないし、デュダは戦闘力0です。

一方相手にはサングとワームズという強力な前衛がいるし、6レベル魔術師のガイルの魔力も恐ろしいも。ウェルバーの弓だって凄い。

当然この戦闘でデュダ達は敗北します。ただし立ってる敵はマティスとワームズのみ。敵を3人も気絶させただけ大したものです。


縛られたデュダは、呪文書を手にしたマティスに対抗するする術はない。このままワームズと同じく"ルナティック・シード"を受けるしかない。

ここではワームズですら抵抗できなかったからデュダにもできないとなっていますが、実は精神抵抗はデュダの方が高いんですよ。

これでもワームズを上回る6レベルで、しかもドワーフです。精神抵抗は9もあって、8しかないワームズよりは抵抗し易い。

魔法を使われるのが分かってるのだから《抵抗専念》すれば13にもなる。魔力7のマティスが相手なら、93%で抵抗できる。


ところがそこでさっきかけた謎魔法が炸裂します。あれは"リフレクション"という5レベル古代語魔法で、魔法を跳ね返す遺失魔法でした。

完全版でいう"マジック・リフレクション"ですね。ただし3分間しか持たないので、眠るまで持続する"マジック・リフレクション"程便利じゃない。

今回は運のいい事に魔法をかけて3分以内にマティスが現れ、しかも決着が着いてしまったから、この魔法は効果を発揮します。


"ルナティック・シード"はマティスに反射し、マティスはデュダの僕になりました。「デュダ様」なんて呼んで、すっかり従順な犬です。

デュダはマティスに縄を解かせ、本を渡させ、立たせてもらった上に肩まで揉ませます。こういう時だけ順応が早いんだから(苦笑)

"ルナティック・シード"は相手に狂気を植え付け、狂気じみた命令に従わせる魔法です。しかしマティスにとっては狂気=正気です。

だからマティスはすっかり真人間になってしまった上に、デュダの普通の命令にも従順に従うのです。本当に運のいいドワーフです。


そしてラスボスが滅びれば呪いも解けるというお約束に従い、ワームズも復活。気が遠くなって気づいたら巨人像じゃ驚きますよね。

どうやら魔法にかかっていた間の記憶はないようですが、彼には一つやらなければいけない事がある。ギリアムの冤罪を解くのです。

丁度そこに真犯人もいるし、こいつを連れて帰ればギリアムの無実も証明できる。そう言ってワームズは心底ホッとした様子でした。

そんな事をすれば自分の推理ミスを白日の元に晒す事になるし、自分の失態を明かす事にもなる。それでもワームズは正義の人なのです。


こうしてデュダの幸運のお陰で全てが解決しようとしていました。しかしデュダ以上に幸運な男がここにいたのです。それはギリアム!

なんとギリアムはずっとマティス一味を尾行していたんですよ。恐るべき執念、そして恐るべき幸運。このタイミングと現場に出くわすとは。

ていうかギリアムってずっと物陰から様子を見ていたんですね。助太刀してくれても良かったのに、変な所で冷静な男です。


そしてギリアムはマティス一味を纏めて逮捕。もうこの大手柄でこれまでの不運も帳消しですよ。ワームズは真摯に謝っていますがね。

こんな所だから礼状なんてないけど、どうせ調べればいくらでも埃は出る。それにしても、よく手錠を4つも持ってましたね。

挿絵ではえらく長い紐のついた手錠を持ってるし、準備がいい。もしかしてギリアムは手錠を使った捕縛術が得意だったりして(銭形警部か)。

これだと今回も手柄はギリアムのものですね。オランで起きた連続殺人事件にも関われず、犯人だってギリアムが捕まえた事になるし(苦笑)


また呪文書はスフィンクスが回収します。やっぱりあれは正解だとは認められないとかで、わざわざこんな所まで追いかけてきたのです。

もしかしたらこのスフィンクスもちょっと頭がおかしいのかもしれない。狂気の神の魔法が載ってる本を守ってるぐらいだし。

今もこの本は巨人像の近くの洞窟に眠ってるんですね。ヘカトンケイレスとスフィンクスを恐れない冒険者なら、行ってみる価値はある。


散々のデュダですが、帰り道は尊敬するワームズと一緒でした。更にワームズは今回の事件を小説化し、デュダ達も登場するそうです。

一応当初の目的であった小説のネタ作りにはなったんですね。しかも自分が出演するという嬉しい誤算もついて。それが何よりの報酬。

それに《真実の目》壊滅に一役買った事実は変わらない。それは小説になって残るのです。色々迷走しつつも成果は大きい事件でした。






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