「ロードス島戦記 灰色の魔女」原案:安田均 著:水野良 出版社:角川書店
★はじめに
ロードスという名の島がある。
アレクラスト大陸の南に浮かぶ辺境の島だ。
大陸の人々はロードスのことを、呪われた島と呼んでいる。
人の侵入を許さぬ魔の領域が島の各地に存在し、島全体を震撼させる激しい戦が何年も続いているがゆえに……。
フォーセリア世界の創設者とも言える水野良先生のデビュー作にして、大ヒットシリーズである「ロードス島戦記」。
「灰色の魔女」はその第一作目であり、これそのものがなんとミリオン・セラーを記録しています。
「新ロードス島戦記5 終末の邪教(上)」の時点では1000万部を突破した大人気シリーズの記念すべき最初の作品でもあります。
上記の「ロードスという名の島がある」という文句は、シリーズを通して使われ続けている名文句です。
私が初めて触れたフォーセリア作品もこの「ロードス島戦記」です。
私がこのシリーズを知った頃には既に、実に様々な分野にメディアミックスしていた大人気作品でした。
実を言うと、一番最初に触れたロードスはOVAでした。丁度英雄戦争の辺り、つまりこの巻のクライマックスの辺りでした。
やがて興味から原作であるこの小説を読み、ソードワールド、クリスタニア、リウイとフォーセリア世界にどっぷりと浸かっていきました。
「ロードス島戦記」の歴史については、私自身はよく知りません。なにしろ、私が生まれた頃に始まった作品ですから。
調べればおおよその事が分かりますが、当時肌で味わった人の感覚とはどうしても隔たりが出ます。
そんなリアルタイマーとは言い難い私ですが、だからこそ、流行廃りでこの作品を、フォーセリア世界を好きになったのではありません。
私はフォーセリア作品の二面性が好きです。すなわち、ゲームとストーリーという二面性が。
本来空想世界というのは、その想像主(字に注目)のものです。その世界がどんな世界で、どんな人がいて、どんな事件があるか、自由自在です。
しかしそこにTRPGの仕様を加えると話は違ってきます。例え想像主であっても、ゲームのルールを破る事はできなくなります。
誰にだって勇者や英雄になる可能性がある反面、神様だってルールに逆らう事は出来なくなります。
もはやその世界は想像主の手を離れた、自律した世界となります。想像の限り駆け巡れますが、それでいて世界の約束事もあるのです。
その過程は、リアリティーのある世界への変質ですらあります。ここで言うリアリティーとは、現実世界の常識ではありません。
現実世界の常識は時に空想世界の非常識です。マッチやライターというものは、フォーセリア世界では魔法以上に不思議なものでしょう。
その逆に、空想世界の常識は時に現実世界の非常識です。魔法の明かりが当然のようにあるフォーセリアは、現実的には不思議世界でしょう。
TRPGのルールや設定を加える事で、フォーセリアはフォーセリア世界の常識を得たのです。それがこの場合のリアリティーです。
そして、フォーセリアにはオフィシャル・一般ユーザー共に、多くの人々が関わってきました。
フォーセリアはシェアード・ワールド、つまり共有世界でもあるのです。多くの人がこの世界に関わる事が出来るのです。
「ソードワールドRPG」は、このフォーセリアを最も広くカバーするシステムです。クリスタニアを除いて、ほぼ全てこのシステムで遊べます。
多くの人々がSWに関わってきたことで、SWはより完成度の高いゲームになっていき、同時に世界の完成度も高めていったのです。
「ロードス島戦記」も当初はSWのルールの直接の影響下にはなかったのですが、ワールドガイドが出た今は堂々とSWで遊ぶ事が出来ます。
それは特別な事ではありません。元々ロードスはRPGの汎用世界として、「D&D」や「ルーンクエスト」などでも遊ばれていたそうですから。
小説となったり、SWのルールの影響を受けたりすることは、ある意味必然です。フォーセリアのRPGといえばSWだと言っても過言ではないし。
だから、このレビューはかつての「ロードス島RPG」というシステムではなく、SWの観点から進めていきます。
各設定は「ロードス島コンパニオン1〜3」や「ロードス島ワールドガイド」を照らし合わせつつ解説していきたいと思います。
確認の意味を込めて、大抵の人には当然の事を多少クドく話す事もあるかもしれませんが、それは私の性分なので悪しからず。
レビューを書くにあたって色々理屈を並べてはみたものの、それは後から考えて沸いた事です。本当に大切な事は、もっと簡単な事なのです。
私はこの作品が大好きです。小説としての完成度云々ではなく、ロードスとそこに生きる人々が大好きです。
「好き」だということが、私がこのレビューを書く最大の理由なんでしょうね。
なお、このレビューは以前書いたものの改訂版のようなものです。以前書いたものはコチラへ。
★1
大陸の年号でいうところの新王国暦510年。ロードス北東部に位置する最も歴史ある王国アラニアから物語は始まります。
北部にはドワーフの大集落である鉄の王国や、氷雪に閉ざされた二柱の精霊王と氷竜の住まう白竜山脈があります。
その東には、大地母神マーファ教団の総本山とも言うべきターバの村があります。ロードス最北の村ですね。
冬季には完全に雪に閉ざされますが、それ以外では「祝福の街道」を通って多くの婚礼などの巡礼者で賑わう村です。
この村には37年前に勃発した魔神戦争の六英雄の一人、"マーファの愛娘"ニースがいます。
魔神戦争については「ロードス島伝説」を参照。「伝説」を読むと「戦記」の見方が変わります。
そのニースの下へ旅の挨拶に来たのはドワーフのギム、ある意味この物語のもう一人の主役です。
ニース 54歳
プリースト(マーファ)11、セージ5、ファイター3。現在のマーファの最高司祭である"大地母神の愛娘"、"竜を手懐ける者"。
魔神戦争において魔神王を倒して帰還した六英雄の1人であり、フォーセリア全体を見回しても抜きん出た能力を持つ司祭です。
彼女たち六英雄については、「ロードス島伝説」の方に回したいと思います。
ギム 54歳
ファイター5なドワーフ、クラフトマン技能も種族の規定通り5です。専門は装飾品?
ギムは7年前の鉱山の事故で瀕死の重傷を負い、その怪我を癒すためにニースがわざわざ出かけたのです。
しかし、その隙にニースの娘のレイリアが、神殿に侵入してきた何者かに敗れ、攫われてしまったのです。
ギムはそれをずっと気にしてきました。そして、今回レイリアの行方を捜して旅に出る決意をしたのです。
ニースもマーファに啓示を賜ったのですが、奇妙なリドルのような答えしか返って来ませんでした。
「生きてはいるが、存在しない」。実はこの答えは今のレイリアの状態を的確に表現しているのです。
レイリアは"灰色の魔女"カーラに体を乗っ取られている状態なのですから……。
カーラはカストゥール王国の時代に生を受けた魔術師で、今はサークレットに魂を封じ、次々に他人の体を乗っ取って行動しています。
詳細は話を進めていくうちに追々分かってきます。カーラこそは、このシリーズのラスボスのようなものなのですから。
ギムは、まぁ察しは着くでしょうが、「指輪物語」のギムリから名前がきているんでしょう。
性格的にもいかにもドワーフで、頑固だけど義理堅い。ドワーフの典型と言ってもいい感じですね。
レイリアが攫われたのはギムのせいかといえば、微妙です。ニースがいたとしても防げたかどうか……。
この時点でのカーラの肉体が誰なのかにもよりますが、魔神戦争の時のように魔法戦士になっていたら正直厳しい。
カーラ自身は10レベル(以上?)の魔術師で、その上高レベルの戦士でもあったら本当に強敵です。
どうやらカーラはマーファ神殿に奉納されていた太守の秘宝のひとつ"真実の鏡"を狙っていたようです。
実は魔神戦争の時にも、一度この鏡はカーラの手に渡ったのですが、色々あってまたマーファ神殿に戻ってきました。
鏡を守る為にレイリアは戦い、そして勝ってしまったのです。宿主の肉体が滅ぶと、カーラは滅ぼした相手の体を乗っ取ります。
ニースがいたとして、カーラを完全に退ける事は難しかったでしょうね。倒したら駄目だし、かといって手加減できる相手でもないし。
例えそういう事情が分かっていたとしても、ギムはレイリアを探しに旅立ったでしょうね。
私はギムのそういう所は好きなんですが、それがいつか命取りになりやしないかと心配にもなります。
★2〜3
ターバの村を南に2日行くと、ザクソンの村に着きます。この村こそは、将来"ロードスの騎士"と詠われるパーンの育った村なのです。
辺鄙な村ですが、パーンの他にも"北の賢者"スレインや"神官王"エトといった大物を輩出することになる村です。
当然ギムは「祝福の街道」を下ってこの村に着くわけです。この村には知人の魔術師であるスレインもいますからね。
将来的にはもっと大きくなるんですが、この時点では目立つものが酒場一軒だけという、いかにも小さな村です。
冒頭にこの時点でのロードス各国の様子と、簡単な歴史が挿入されています。いくつか時間設定で気になるところがありますね。
現存する王国は6つ。北東部のアラニア。南東部のカノン。中北部のフレイム。中南部のヴァリス。南西部のモス。
そして南の暗黒の島マーモにあるマーモ帝国です。ヴァリスを治めるファーンと、マーモを治めるベルドは共に魔神戦争の六英雄ですね。
まず魔神戦争が3年続いたことになっていますが、これはまぁその通りです。
魔神戦争勃発は37年前の473年です。翌年には魔神王は倒したのですが、以後2年間地道な魔神掃討戦が行われたようです。
そして476年、ハイランド王国の国王にして、モス公国の公王であるマイセンが魔神戦争終結を宣言したのです。
厳密に言えば、魔神戦争はまだ続いているといってもいい。魔神王を倒す事は、新たな魔神王を生むようなものなのだから……。
フレイム王国は最近建国されたとありますが、具体的には4年前です。同時にヴァリスと同盟も締結しています。
ベルドがマーモを支配したのが20年ほど前になってますが、実際建国は10年前です。皇帝を名乗りだしたのがその3年前。
ザクソンはアラニアから10日と離れていないというのはワールドガイドでも取り上げています。
10日と離れていないだけに、ワールドガイドでは9日ということになっています。流石によく調べてガイドしてありますね(笑)
そのザクソンの村の酒場「良き再会亭」で、一人ゴブリン退治を主張するのが、我等が主人公パーンでした。
パーン 18歳
ファイター5、ヴァリスの聖騎士を父親に持つ正義感の強い青年です。強いのはいいけど、無謀と慢心の精霊に憑かれている感あり(笑)
とある事情で父のテシウスは騎士位を剥奪され、母親と共にこのザクソンにまで移住してきました。実はフレイムで傭兵経験あり。
この時点では本当に駆け出しの無鉄砲な若者ですが、後に"自由騎士"、"ロードスの騎士"とも詠われる大英雄となります。
今も未来も、自分の心が決めた事を貫くというスタンスは変わりません。そういう所が実にカッコイイ。
なお、ワールドガイドではファイター技能が5→8となっていたので、5を適応しました。以後のキャラも同じく。
パーンは村の近くに住み着いたゴブリンの集落に危機感を抱き、その討伐を主張します。
ところが力一杯パンピーな村人からはよい返事を得られずキレ気味。ゴブといえばザコですが、一般人には十分脅威ですよ。
出身がファリスが国教のヴァリスということもあるせいか、ゴブの存在そのものを毛嫌いしているんじゃないですかね?
基本的にはゴブとは不干渉が賢い。ただ存在するというだけで殺してしまうのは、流石に横暴です。
この場合は村の危機かもしれないので、一考の価値はあります。放っておくとほぼ確実に拡張してくるでしょうから。
試しに一般人とゴブのデータを比べてみましょうか。
一般人はモンスターレベルにして0!。一応2レベルはあるゴブが相手だと、1対1では厳しいですね。
一般人のゴブへの攻撃が命中する確率はおよそ23.9%。打撃点が3しかないので、防御点が5あるゴブ相手だとなかなか。
一応命中すれば1点は抜けることになっていますが、それだと倒すまではゴブの生命点回かかりますね。つまり12回。
ゴブの攻撃が一般人に命中する確率は66.4%。一発につき5点抜けるので、生命点10の一般人は2発で倒れます。
やはりまともに戦えばゴブの方が強いですね。雑魚だ雑魚だと言われても、やはりモンスターなんですね(しみじみ)。
村人の中にハンター技能の持ち主がいれば少しは変わるかもしれません。それを攻撃に使えますから。
ただし白兵戦は出来ないので、その点ではやはり不利。本編では猟師のザムジーという人がレベルが高そうでしたね。
結局は誰も賛成してはくれず、説得を諦めます。それどころか父テシウスの事をナジられたので、パーンとしては本当にやるせない。
仕方ないので幼馴染のエトと二人っきりのゴブ退治に赴きます。ちなみに相手はおよそ20匹。……やっぱり無謀(笑)
エト 19歳
プリースト(ファリス)5、ファイター3、セージ1な経験なファリス信者。パーンの幼馴染。
将来にはヴァリスの王様になったりする。現在の王である英雄王ファーンの娘フィアンナと結婚します。
人は彼をロードス一の逆玉男と呼びますが、ヴァリスの王位は世襲制ではないのでその表現は微妙です。
ファリス信者としての信仰心は極めて強いのですが、他のファリス信者によく見られる頭の固さはない。ファリス信者のお手本ですね。
2人の実行した作戦は、見張りを飛び道具で倒し、他のゴブは若木を燃やして燻り出して倒すというものでした。
結論から言うと、失敗ですかね。半分以上は倒したのですが、毒やらなんやらですっかりピヨって殺されかけました。
パーンが5レベルだとすると、攻撃力7で回避力7(金属鎧−1、スモールシールドとして)。ゴブへの命中確率は89%、回避は93%。
必要筋力16のプレートメイルを装備しているとして、7振って11点止めて無傷です。3以下(8.3%)振ると通りますね。
バスタードも必要筋力16としたら、片手で11点、両手で13点です。2発で倒せますね。あくまでも確率で、ですが。
これだと20匹とはいえ、なんとかなるんじゃないですかね。エト(癒し手)もいるし。乱戦になったのは痛かったかな。
しかし見張りを一撃でスナイプしようというのは無謀ですよね。例え《狙撃》をしたとしても、一撃はどうかな。
見張りは2匹、パーンとエトで一匹ずつ倒す事にしたんですが、パーンなんて外してますからね(苦笑)
エトのスリングだって、当たったところでパーンよりも威力は出ないし、本当に無謀。
白兵戦に移行してからも、当分の間はパーンも奮戦してたのですが、長くは保たないなという感じでしたね(苦笑)
このままいくと、パーンは父親と似たような感じで死ぬ事になりますね。
テシウスは王の命令を破り、単身山賊に襲われる村を助けに行って、戦死したのです。一対多というシチュエーションは似てる。
でも、何か違いますね。テシウスは王命に背いてまで命がけで戦ったわけですが、パーンは無謀に突っ込んでいっただけですし。
テシウスは法では罰せられましたが、ヴァリスでは未だに一つの誉れとして語り継がれています。ではパーンはどうか?
そこを救ったのが、知らせを聞いて助けに来たギムとスレインでした。
スレイン・スターシーカー 28歳
5レベルのソーサラー/セージ、既にないアラニア賢者の学院で魔術を学びました。
元は自由都市ライデンの豪商の家に生まれましたが、兄二人と違って魔術師の道を歩みました。
2年ほど前にザクソンに移住してきて、村の相談役?に落ち着きます。多少奇行が目立ちますが、魔術師としては普通(笑)
性格的にはかなり穏やか。そして冷静。スターシーカーの名の通り、哲学的な理由で星を探しています。
ドワーフはゴブの天敵です。鉱山を荒らすゴブはドワーフにとっては不倶戴天の敵。それはもう情け容赦なくぶっ殺しましたとも。
スレインの"スリープ・クラウド"もよく効く。ちゃっかり5レベルの"ビジョン"なんかも使って洞窟内を調べてました。
スレインの魔力は8、対するゴブの精神抵抗はたったの9(2)。およそ95.3%でお寝んねしちゃいますね。
もっとも、ここで寝なくてもギムの戦斧にかかれば永遠にお寝んねなんですが(苦笑)
2人の救援もあって、なんとかパーンとエトは一命をとり止め、ゴブ達をまとめて逝かせる事に成功しました。
パーンはゴブの毒でしばらく動けず、10日ほどしてスレインの家を訪ねました。結構重体じゃないですか。
毒が結構効いてたようですが、エトは"キュアー・ポイズン"しなかったんだろうか。しても失敗したとか?
パーンは自分の不甲斐なさを痛感し、武者修行の旅に出る事を思い立ったのです。当然エトも同行します。
そこで、スレインにもついてきて欲しいと頼むんですね。スレインとしては、同行するにやぶさかではありませんでした。
というのも、スレインはかつて、パーンと同じように血気盛んで正義感が強い友人を亡くしたのです。
彼はある時アラン(アラニア首都)の盗賊ギルドを倒そうと(これも無謀)もちかけてきたのです。
しかしスレインは結局彼を止める事が出来ませんでした。そして彼は帰らぬ人となったのです。
そんな友人とパーンがダブったんでしょうね。同じような決断を迫られていますし。でももう後悔したくはないと、そう決めたのです。
パーンは戦う相手を考えもせず、戦う事だけを考えて旅に出ようとしてます。それはそれで危ないけど、スレインがいれば何かが変わるかも。
スレイン「ですが、危険なことはなしにしましょう。私は気が小さいのです」
いかにもスレインらしい(笑)。でもそこがいい所なのかも。ギムも同行しますよ、レイリアの事は流石に話しませんがね。
これで戦士二人に魔術師、司祭ですか。彼らの旅立ちが、今後のロードスの歴史を大きく動かす事になろうとは、誰も予想だにしていません。
★1
ついにマーモ帝国がロードス本島への侵攻を開始しました。最初は海を挟んで真向かいのカノン王国攻略です。
ベルド自らが出陣し、カノンと同名の首都と王城シャイニング・ヒルも呆気なく陥落してしまいます。
王族と貴族は悉く殺され、カノン王国は以後15年間もの間、マーモの支配下に置かれることになります。
この突然の大事件は、ロードスの新たなる戦乱、英雄戦争の始まりでもありました……。
ベルド 64歳
ファイター11、レンジャー5。六英雄の1人でもあるマーモの"暗黒皇帝"。昔は"赤髪の傭兵"でした。
11レベルのファイターというのは、フォーセリア全体を見回してもベルドだけ。それに超英雄ポイントも20点あります。
魔神王が所持していた魔剣"魂砕き"を持ち、ほとんど手がつけられない。恐らくはフォーセリア最強の戦士。
マーモ帝国は暗黒の島マーモにベルドが興した帝国です。そう名乗るからには、複数の国や種族・民族を支配化に置く事を念頭に置いてるのです。
マーモは暗黒の島の名の通り、実にデンジャラスな島です。破壊の女神カーディスの骸が眠り、多くのモンスターが住んでいます。
それだけでなく、ファラリス教団やダークエルフの集落もあります。古くからアラニア・カノンの流刑地でもあったりします。
マーモの歴史は「新ロードス島戦記 序章 炎を継ぐ者」に収録されている「暗黒の島の領主」を見てください。
そんな混沌としたこの島を統一できたのは、ベルド自身の圧倒的なまでのカリスマ性あればこそです。
ダークエルフの族長ルゼーブや、ファラリス教団最高司祭"闇の大僧正"ショーデルといった面子ですら、心底忠誠を誓ったのです。
ベルドに次ぐマーモの実力者といえば、他にも"黒の導師"バグナードに、"黒衣の騎士"アシュラムといった顔もあります。
アシュラムを除く3人はいずれもなんと10レベル、アシュラムだって9レベルファイターです。実はマーモには人材が揃っているのです。
マーモ軍の戦力は、他国のような騎士団だけではありません。なお、マーモの騎士団は暗黒騎士団です。
暗黒騎士団は英雄戦争時にはベルドが直々に率いていたのですが、後にアシュラムが団長となります。
騎士団の他に注目すべきは、ダークエルフ・ゴブリン・オーガーなどで構成される妖魔兵団と、ファラリスの神官戦士団です。
ゴブリンは決して強くはありませんが、10万とも言われるその数はやはり脅威です。
そして、今マーモにはあのカーラが加担しています。シャイニング・ヒル攻略にも一役買いました。
カーラはシャイニング・ヒルに"メテオ・ストライク"を撃ち込み、城壁を粉砕したのです。
ロードス一美しいとも言われたこの城も、あっという間に妖魔の徘徊する暗黒の城ですね。
カーラもかつては六英雄としてベルドと共に戦ったわけですが、ベルド自身はその事に気づいてはいません。
なにしろ、今のカーラは肉体がレイリアのソレなのですから。カーラは自分の目的の為に、ベルドを駒としているだけですよ。
それはそうと、OVA版のレイリア=カーラって恐ろしく顔色悪かったですよね(懐)。
★2〜4
カノン陥落のニュースが伝わる前、パーン達4人はアラニアの首都アランに到着していました。
アラニアは現在のロードス諸王国の中で最も歴史の古い王国です。建国は101年なので、実に409年経つのです。
アランの街はドワーフの手による石畳・上下水道完備の街で、王城ストーン・ウェブを中心に広がっています。
アラニアは、どちらかというと学問を重んじる国柄です。かつてはこの街にも大陸の魔術師ギルドのような賢者の学院が存在していました。
スレインの母校ですね。学院の歴史もなかなか古く、設立は313年です。200年弱もの歴史がある学校だったのですね。
元はアラニア国王によって創られた国家の為の魔法の研究機関だったらしいんですが、魔術師の育成も行うようになっていきました。
大陸の魔術師ギルドの創設者はマナ・ライです。その歴史は精々100年ほどなのですが、ラムリアースのギルドだけはもっと古いらしい。
長い研究の甲斐あって、数多くの魔法の品や知識が蓄えられてもいたのですが、去年学院はその歴史を閉じてしまったのです。
かつてはあのバグナードもこの学院に所属していたのですが、私欲の為に魔術を使おうとした事で追放されています。
その時に学長ラルカスにより魔術が使えなくなる"ギアス"をかけられたのです。普通なら、この状態で魔術を唱える事はできません。
しかしバグナードはその超人的な精神力(多分超英雄ポイント)で、激痛に耐えながらも魔術を使用できたのです!
507年にはラルカル学長も他界したことで、バグナードは学院の魔術師を次々に襲い、復讐を始めたのです。
やがて学院は完全にその機能を止め、魔術師達は私塾を開いたりして、方々にちらばっていったのです。
今では私塾同士の横の繋がりとかもあって、学院とは別の、文字通り組合としての魔術師ギルドがあるらしい。
こういったアラニアの学院とギルドの事は「ロードス島コンパニオン3」に結構詳しく載っています。
スレインはアランに来るまでこの話を知らなかったんですね。どうやらザクソンにはこの話は伝わってこなかったらしい。
今のアランは国王カドモス七世に世継ぎが生まれた事でお祭りをしていたりします。
祭りを楽しむパーン達(特にギムの食欲は半端じゃない)は、ここで新たな仲間に出会います。
ディードリット 約160歳
シャーマン5、ファイター/レンジャー3なハイエルフの娘。なんとエルフの上位種であるハイエルフなのです。
アラニアの南にある帰らずの森にはそのハイエルフの集落があり、彼女は外の世界に憧れて森を飛び出してきたのです。
普通エルフといえば多種族との交わりにはあまりいい顔をしません。人間を軽蔑してたりもします。詳しくは「ハイエルフの森」で。
しかしディードにはそういうところが殆どない、結構革新的な若木のようなエルフです。ロードスシリーズきってのヒロインと言えます。
フォーセリア世界の種族は時代が下るにつれ、魔法の力から遠ざかり、種族的により下位の種族へと姿を変えてきました。
ハイエルフは下位種である現在のエルフの上位種、より強く古代の力を残した珍しい種族なのです。
大陸のターシャスの森にはハイエルフの長老がいるそうです。そういった具合にハイエルフは、帰らずの森の他にもいるにはいます。
しかし大勢のハイエルフが集落を作っているというのは極めて珍しい、物質界には今のところ帰らずの森だけです。
なお、一般にエルフの耳は長いものですが、その出典はこのディードリットだと言われています。
元々エルフというのは北欧の妖精で、悪戯好きだったり人を誘惑したりしたそうです。
華奢な体の美しい種族だという点は一緒ですが、牛の尻尾が生えていたり、背中から見ると中ががらんどうだったりもしたらしい。
そんなエルフに「指輪物語」で高貴な種族というイメージがつき、出渕先生のディード以来は耳が長くなったと思われます。
ハリウッドで作られた指輪の実写映画でも、レゴラスをはじめとするエルフ達は耳が長かった。それもロードスからきているのです!
ディードとパーン達の出会いは結構偶然っぽい。決してドラマチックでもないし、運命的でもない。後から考えると運命的だとは思えますが。
往来でチンピラに囲まれていたところをパーンが助けたのが2人の出会いです。手を出すまでもなくディードの方が優勢だったけど(苦笑)
ドワーフとエルフが仲が良くないのは「指輪物語」の頃からのお約束のようなもので、最初はディードもギムに嫌悪感を抱いてました。
でもギムの方が大人でしたね、パーンが止めるまで、露骨に敵対行動は起こさなかったし。むしろディードの方がとんがってました。
それからパーンとディードは二人っきりで祭りを楽しむわけですが、以外にパーンって酒癖悪いんですね(苦笑)
すっかり酔っ払いでしたよ。こんなに乱れるパーンというのは、後の事を考えると珍しいかも。
パーン「オレも王に――。いや、王は無理かな。せめて、勇者とか英雄とか呼ばれる身分になりたいんだ」
こんな事言ってる(笑)。でも、将来的にほとんど叶っちゃうんですよね。一部、辞退した夢もありましたが……。
で、ディードはパーンを連れて、パーン達が宿をとっている「水晶の森亭」に行きます。放っておくと道端で寝ちゃいそうだし。
そしてディードは、不思議と立ち去るのが惜しく思えて、そのままズルズルと一行の仲間入りを果たすのです。
パーンとディードといえばロードス屈指のカップルですが、出会いはこんなんでした(笑)
ウッド・チャック(ジェイ・ランカード) 39歳
5レベルシーフ、人相は悪いけど実はイイヤツ?な盗賊です。22年前、17歳の時に仕事で失敗し以来今日まで獄中暮らし。
この度の世継ぎ生誕で恩赦が出て釈放されたらしい。そうでなければあと8年はホテル・牢獄に宿泊するところでした(笑)
シャバに出たはいいものの、金はないしギルドからの援助金も少ないしで、ブルーな気分です。既に40前、色々辛いですね。
僅かな儲け話を持って、腹ごしらえに「水晶の森亭」に入った事が、彼の運命を大きく変える事になりました。
アランの盗賊ギルドがどういうシステムなのかは結構謎ですが、幹部(役員や支部の長)になるには金貨1万枚が要るらしい。
ロードスに普及している貨幣は、大陸と同じく金貨と銀貨です。銀貨1枚は大陸で言う1ガメルに相当します。
とはいえ為替レート(あるんか?)まで一緒かどうかは分かりませんけどね。レートの分物価もスライドして同価値なだけかもしれないし。
しかし金貨と銀貨の価値比率は違います。大陸では金貨1枚=銀貨50枚(ガメル)でした。
ところがロードスには金貨は二種類存在します。大金貨と小金貨です。前者は儀礼や褒賞、後者は一般的交換手段として使われています。
銀貨1枚=小金貨10枚であり、銀貨1枚=大金貨1000枚です。普通金貨といえば小金貨のほうを指すらしい。
ウッドが提示された金貨1万枚というのは、小金貨だとすれば銀貨10万枚、大陸では10万ガメルにもなるんですね。
普通に泥棒しててもそうそう貯まりませんよね。何年かかるやら。いっそ冒険者になって一発当てる方がいいかも。
大陸の盗賊ギルドは、「トライアル・トラブル」を見ても分かるとおり、上納金だけでなく働きそのものも評価の対象らしいんですが。
ウッドは結構腕もいいし、普通に盗賊してたら、どこぞの支部を任されていても不思議ではないんですけどね……。
★5〜8
こうして「灰色の魔女」の主役である6人の仲間たちが揃いました!
戦士2人に盗賊1人、各種魔法使いが1人ずつ。実にバランスのとれたパーティーです。
ウッドがギルドから(金を払わずに)仕入れた情報は、とある館にマーモのダークエルフとオーガーがいたというものでした。
学院から盗まれたものもあるかもとか言ってましたが、残念ながらそんなものはありません。今はバグナードが私有しています。
この話を聴くにあたって、スレインはわざわざ"センス・ライ"を使いました。嘘はあるにはありましたが、ちょっとした誇張という程度です。
しかしウッドの目の前で魔法を使ったら、流石にウッドも警戒しそうですけどね(笑)
"センス・ライ"は単純に嘘をついている事が分かるだけで、嘘そのものを感知できるわけじゃないし、真実を知る事もできません。
それどころか、例え真実でなくとも、相手が信じ込んでいたら感知できませんからね。"センス・ライ"とて万能ではないのです。
上手く言葉を操れば、真実を伝えながらなお偽ることも可能です。嘘がない≠裏がないだという事はくれぐれも忘れないようにしないと。
このマーモ兵は何をしているかというと、アラニア王カドモス七世の暗殺計画の為に駐屯してたんですね。
学院の宝こそなかったものの、名誉と報酬を得るには十分な情報だったわけです。
いくら同情したとはいえ、こんないい情報をタダで教えてくれるなんて、ギルドも甘いですね(苦笑)
大陸の盗賊ギルドならこういうキナ臭いネタは放っておかないもんですけどね。
あと見過ごせない記述も多々ありました。
ディード「黒エルフは魔神に魂を売った忌まわしい連中よ」
いや、ダークなエルフさん達はファラリスに組しただけで、別に魔神の支配下にいるわけじゃないですよ。
同じファラリスの信者なので、種族的には同列にあると思った方がいいです。
普通のエルフは森の光の面を、ダークエルフは森の闇の面を司っています。両方存在してはじめて全き森の妖精なのです。
しかもルビが「まじん」じゃなくて「ましん」になってる……。これはアレですね、マッスルの神様、略してマ神(マサルさん―笑)
「先の魔神との戦いの時にも、黒エルフも食人鬼も、魔神に与し、破壊と死の尖兵となったのだ」
ダークエルフもオーガーも与してませんよね。魔神戦争の敵は魔神と魔神の生み出した魔法生物や不死生物、及び魔神に与した人間です。
私の記憶が確かならば、妖魔の類は魔神に与していないはず。むしろ与したのは人間なんて……笑えませんよね。
いや、責めてるんじゃないですよ。当時は魔神戦争の事なんてほとんど決まってなかったんだし、仕方ないですよ。矛盾して当然。
マンガ版「ファリスの聖女」の連載が始まって、小説の「ロードス島伝説」が始まって、ようやく骨組みと肉付けが出来たのですから。
あとパーンが「黒エルフや食人鬼など、オレはその存在自体も許しちゃいないんだ」なんて言ってます。
ただ単純に正義感が強いからそう言ってるのか、はたまた本当にヴァリスの流儀が染み付いているのか……。
まぁ最初はこんなもんですよね、誰でも。この無謀と慢心の精霊に憑かれたパーンも、次第に本物の英雄になっていきますから。
いよいよ6人の初冒険となるわけですが、道中の描写で幾つか気になった事があります。
まず賢者のローブはもうアランに売っていないとか言ってましたが、魔術師はいるんだし売ってると思いますよ。
学院そのものはなくなったけど、まだ私塾やギルドに属する魔術師が沢山いるし。需要があるのだからまだ売ってると思います。
次にギムの「わしの鎖かたびらは真の銀を編んで作っているからな。音を立てんのじゃよ」というセリフ。
真の銀とはミスリルのことです。実は、ミスリル製ならば鎖かたびらは体の動きを阻害しないのです。
つまり盗賊がつけることも可能だし、水中で装備しても無問題。盗賊が装備できる以上、ガチャガチャ言わないんでしょうね。
しかもミスリルである以上+1以上の魔法のものでしょうね。防御力はギムの筋力ピッタリだとして27にもなりますね。高品質ならもっと。
さて、ミスリルは今では加工方法が失われた物質なんですが、実は一部のドワーフ達の間では加工技術が残っているらしい。
古代語魔法によるミスリル銀の加工も可能ではあるのですが、ドワーフ達の「技術」による加工法もあるらしい。
一般的にも両方とも失われているんですが、Q&Aによればドワーフの技術に関しては基本的には失われているだけらしい。
実際ロードスには最近まで加工技術が残っていたようですよ。南のドワーフ族の大集落である「石の王国」には存在していました。
それは「永久の炉」という玉座兼用の炉で、この炉によってのみミスリルは鍛えられたんだそうです。
しかし石の王国は魔神戦争によって滅亡し、今では地竜とかも住むロードス有数の大迷宮になっています。
「永久の炉」も、百の勇者たちによる石の王国攻略戦で、国王であった六英雄の1人"鉄の王"フレーベによって破壊されています。
でも、北のドワーフ族の大集落である「鉄の王国」は健在ですから、残っているかもしれませんよ。ギムも鉄の王国出身だし。
屋敷についてみると、案の定ダークエルフとオーガーが見張りに立っています。
そんなもの立ってたら逆に目立つと思うんですけどね。エルフのみ"インビジビリティ"で隠れて見張っていた方がいいと思う。
もし侵入者が屋敷に入ろうとするのなら力づくでとめればいいし、素通りしてくれたら問題なし。
ダークエルフといえば精神抵抗に+4ものボーナスがあります。暗黒魔法だって使用可能だし、SWの完全版では暗視まで出来るんですよ。
完全にエルフはダークエルフの下位種ですよね。レッサーエルフですよ。エルフに出来てダークに出来ない事ないし(笑)
敢えて言えば社会的な信用ですかね。エルフは大っぴらに街を歩けるけど、ダークには無理な相談ですから。
実はこのパーティー、飛び道具が貧弱なんですよね。ボウやクロスボウは持ってないのか?
ウッドとディードは短剣を持ってますが、それでスナイプするのはギャンブルですよね、勝率の低い。
あとディードの短剣には麻痺毒が塗られています。冒険者は普通毒は使わないんですが、どうやらハイエルフは狩猟に限りOKらしい。
でも「帰らずの森の妖精」によると、彼らは狩猟をしないんですよね。こういうのを解決する「後付優先則」というのがSWにはあります。
ちなみにディードの短剣は投げ専用らしい。普通の短剣(ダガー)は(投)なので、投げも白兵戦も可能です。
ディードのダガーは狩猟用のものなんでしょうね、敢えて言うならダーツのような(投専)武器。
スレインは"リプレイス・サウンド"でダークエルフのみ引き離す事に成功します。これで2点消費、残り16点(あまり意味のないカウント)。
音を違う場所で発生させるこの魔法ですが、拡大しなければ距離は30m、すぐに帰ってきますよ。
でもその前にディードの速攻で、なんとオーガーを倒します。"チャーム"も併用してね。
"チャーム"の魅了状態は一週間継続なんですが、攻撃を受けたオーガーの食欲はあっさりとお友達状態を解除してしまいました。
なお、ディードの魔力は8でオーガーの精神抵抗は12(5)なので、およそ83%で抵抗を破れます。
とはいえ、貧弱な3レベル戦士のエルフでは、オーガーを一発でもっていくのはかなり厳しいんですけどね。
ディードとスレインとウッドを残し、他のメンバーは館の中の鎮圧に成功します。
自分がハメられた事を知ったダークエルフは"インビジビリティ"で透明になって帰ってきますが、あっさりと見破られてしまいました。
ここでディードはウンディーネにサーチをさせてました。そんな便利な使い方があったのか(笑)
まぁスレインが"センス・マジック"をすれば簡単に居場所は分かっちゃいますから、時間の問題ですがね。
そして"ディスペル・マジック"によってインビジも解除され、ディードとウッドの攻撃でアッサリと逝きます。黒いエルフは体力不足〜♪
この場合は魔法そのものを解除するので、ダークエルフ名物の精神抵抗ボーナスは入りません。スレインの魔力なら解除できても不思議はない。
なお、これで更に精神力を1点消費して残り15点。流石は5レベル、1レベル魔法は全部1点消費ですね。
ウッドはダガーを3本も投げてましたが、複数投擲だと本数分攻撃力に−修正が入ります。この場合は−3。
ウッドの攻撃力は7なので4にまで下がりますね。でも相手は背中を向けていたので回避に−4もの修正が入るんですよね。
結果、ウッドはボーナスを得たも同然の状態で複数投擲が出来たのです。
館を漁って調べてみると王様の暗殺計画などが明らかになるわけです。なお、ギムは酒を失敬していました(笑)
そして「こちらはすべて順調です。そちらはいかがでしょうか。連絡は定期的にいつもの手段で行うように。」という、
これ単体では訳の分からないカーラの手紙などもあったりします。もうちょっと世間話に花を咲かせろ、上司?として(そうか?)
そしてどういう訳だかレイリア=カーラの肖像画などもあるんですよね。何故こんなところに?
もしかして、ここはカーラ自身の隠れ家の一つだったとか。暗殺計画の為の一時的なヤサに、わざわざ肖像画なんて飾らないと思うし。
ダークエルフはマーモ兵でしょうが、他の連中はカーラの心酔者(にして協力者)とかだったんだろうか?
それなら「カーラ様のお姿を〜!」とかいう感じでわざわざ設置したのかも。ファンクラブですか?(笑)
この活躍により、一行はアラニア王国から金貨1千枚のご褒美を貰えたトサ。
小金貨なら1万ガメル相当、褒賞なので大金貨だと考えると100万ガメル相当になりますね。
そして分け前はウッドとその他で折半。もし大金貨だとしたら、ウッドがギルドの役人になるには十分ですね。
しかし幸せは長くは続きません、ここでマーモによるカノン滅亡のニュースが入ってくるのです。
ところがアラニア王カドモス七世は、街道を封鎖するだけで、マーモ討伐には立ち上がりませんでした。
ヴァリスのファーンを中心とした諸王国会議での、侵略には立ち上がるべしとの取り決めも無視ですね。
カノン王国とアラニア王国は結構血のやり取りも行われているし、本来なら他のどの国よりも早く立ち上がるべきなんですけどね。
この対応に、パーンは苛立ちを隠せません。ファーンなら立ち上がるだろうとヴァリスに行こうとしますが、街道は封鎖されています。
アラニアからヴァリスへ行くには、カノンを経由する南ルートと、西の風と炎の砂漠を通るルートがあります。
南は封鎖されているし、砂漠の方は現在酷い砂嵐で通るに通れません。そこで一行は(ていうかパーンは)帰らずの森を突破する事にしました。
この辺の地理関係はワールドガイドを見ればまるっと分かります。ロードスのPCゲームでもこのシチュエーションがありましたね。
ノービスの街(アラニア領)からアダン(ヴァリス領)まで行く街道は、一見砂漠を避けているように見えますが、実はちゃんと通ってるんです。
アラン⇔ノービス⇔ロイド(ヴァリス首都)は、おおよそ29日もかかります。カノン回りだともっとかかりますよ。
風と炎の砂漠の砂嵐は、最近風の精霊王ジンが解放された事に原因があるらしい。詳細は次の「炎の魔神」です。
帰らずの森を通れば、確かに手っ取り早くヴァリスに入れますが、無事突破するのは普通無理です。
帰らずの森はハイエルフ達の守る森です。森にはハイエルフがかけた植物の精霊王エントによる呪いがかかっているのです。
"メイズ・ウッズ"よりも遥かに強力なこの呪いは、エルフや動物といった森の住人以外を永遠の眠りと異界に引きずり込むのです。
軽く500年以上もの間、この森に入って帰ってきた者はいません。だから、帰らずの森なんです。詳しくは「開かれた森」参照。
しかしこちらには、そのハイエルフであるディードがいます。その力により、一行は植物の妖精界を通って無事に森を抜けたのです。
その入り口は2本の高い針葉樹でした。そこを潜るともう妖精界、黄金色に輝く森だったのです。
妖精界は物質界よりも時間がゆっくり流れるので、まごまごしていると、物質界では何年も経ってしまうらしい。
ちょっとおたついただけで3日も経ってしまいましたからね、昼寝でもしようものならどうなっていたことか………(笑)
こんなに興奮するスレインも珍しい、まぁ珍しい体験ではありますからね。普通なら気味悪い体験なんでしょうが。
余談ですが、双子の木というと、沙羅双樹を連想する人も多いかと思います。沙羅双樹、すなわちサーラです。
平家物語の「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり、沙羅双樹の花の色……」というやつですね。釈迦入滅の逸話にも出てきます。
しかし日本で言う沙羅双樹とは夏椿の事なんですよね。インドの沙羅双樹とは別。平家物語に出てくる方は……多分本場の方。
インドの沙羅双樹は、成長すると幹が二つに分かれ易いので双樹と言うらしい。竹のように地下茎で繋がってるわけではない(笑)
★1〜2
パーン達がヴァリスを目指して旅をしていた頃、カーラは新たな行動に移っていました。
それはズバリ、ヴァリスのフィアンナ姫誘拐です。商人に扮して掻っ攫ってきたんですね、流石はカーラ。
フィアンナ姫はファーンの一人娘ですが、ワールドガイドには載っていなかったりするので年齢不詳です。
多分エトやパーンとそう変わらないと思うんですけどね。見たところ十代後半って感じでしたが。
実は既にヴァリスは挙兵しているのです。フィアンナ姫は、前線へ赴いて騎士達を激励しようとしたのです。
それに手を貸すフリをして、カーラは姫を攫ったんですね。もしかしたら、姫が出かけようとしたのもカーラの誘導だったりして。
心がけは立派なんですが、戦時だからこそ大人しくしているべきでしたね。誘拐が成功していたら、ファーンだってどうしていたか。
カーラは姫を馬車に乗せて、周りを傭兵で固めて街道をヴァリスからカノンへ進んでいました。
そんなまどろっこしい事せずに、さっさと"テレポート"でフィアンナごとカノンへ跳べばいいのに(苦笑)
そんな事してるから、街道を遡ってヴァリスへ向かうパーン達とすれ違っちゃうんですよ。
もしカーラが瞬間移動で移動していたら、ロードスの歴史は変わっていたかもしれない……(笑)
王国貴族のように馬車で移動しつつも、周りを固めているのは装備もバラバラな傭兵。
少しおかしな一団ではありますが、この場ではパーン達もスルーします。自分たちだってそれに負けないぐらい変わってるし。
しかし続けてすれ違ったヴァリスの聖騎士達との遭遇もあって、馬車を追って引き返す事にしました。
聖騎士といえば、パーンのお父さんテシウスの元同僚達なわけです。パーンが今来ている鎧も、お父さんのお下がりです。
絵を見てみると、色々あってすっかり変色してますけどね。黄土色というか、黄ばんでいるというか……(苦笑)
元は聖騎士に相応しい白銀の鎧でした。磨いても多分、元の輝きは戻らないんでしょうね。ドワーフの鍛冶屋でも無理そう。
聖騎士の内1人はファリスの神聖魔法"センス・イービル"などを使おうとしました。1レベルのファリス特殊神聖魔法。
しかしこれはエトが珍しく厳しい態度で諫めます。「聖なる力を懐疑のゆえに使うとは何という非常識な」とね。
でも"センス・イービル"ってそういう魔法ですよね。「ファリスの善悪」判断魔法なわけだし、懐疑なしには使われないでしょう。
とはいえ、「邪悪かどうか調べてやる」な魔法だから、往々にして失礼なことになる魔法です。
ヘッポコーズのイリーナも出会い頭に邪悪判定をして叱られてましたっけ。味方になりうる人に不快感を抱かせかねないし。
ファリス神官としての人格を問われる魔法なのかもしれません。相手が望んだり、モンスターだったりすればスパっとかけてもいいでしょう。
聖騎士の疑惑はあっさりと晴れました。ファリス神官であるエトは、いるだけでヴァリスの人達への身分証明になりますね。
聖騎士達は引き続き馬車の追跡を続け、パーン達も遅れるように後を追います。徒歩なんで引き離される一方ですけどね。
やがて聖騎士達がカーラに追いつき戦闘を始めてしまいます。パーン達は鋭敏なディードの耳が剣戟の音などを捉えました。
前々から思ってたんですが、ゲームではエルフにはそういう聴覚はありませんよね。知力が高いのでボーナスも人間よりは高くなりがちですが。
こういう時の判定って、シーフかレンジャーの《聞き耳》じゃないですかね。明文化されていない以上、エルフには超聴覚はないと思わないと。
それだと、3レベルレンジャーのディードよりも、5レベルシーフなウッドの方が耳が早そうですね。
聖騎士と傭兵を比べれば、やはり聖騎士の方が腕が立つと思いたいですね。傭兵以下じゃ聖騎士としてどうかと思うし。
しかし相手にはカーラがいます。かつての六英雄の一人にして、カストゥールの女性付与魔術師である"灰色の魔女"が。
現在のカーラは、自身の技能だけでなく、レイリアの技能も使えます。それはもう、出鱈目に強いですよ。
具体的には、ソーサラー10以上、セージ10、プリースト(マーファ)8、ファイター5です。しかも超英雄ポイントも5点。
10以上というのだから、10ではないと思いたい。知力も24?なんですが、やっぱりそれ以上あるのかな?
もし六英雄の1人"荒野の大賢者"ウォートと同じ11レベルで、知力ボーナスも+4あるとしたら、魔力15です。
魔力を上昇させる発動体を持っているとしたら、それ以上かもしれませんね。ウォートなんて装備込みで魔力18だし(規格外)。
そのカーラの"ファイア・ボール"は、なんと一撃で聖騎士を全滅させます。1人を除いて全員死亡です。
魔力15だし、抵抗出来ないとしたら、7振って20点!。生死判定にいっちゃうのも無理はないですね。
聖騎士達が何レベルかは分かりませんが、5レベルとまともな生命力があれば、クリティカらない限りそうそう死なないと思います。
でも実際に見るも無惨な焼死体がゴロゴロしてるし、ダメージ一回振りで高い目が出たのかもしれませんね。
まぁこういうのって、自動的に倒れるとしちゃうイベントなのかもしれませんけどね。
パーン達は遠くからこの惨事を知るわけです。ディードの聴覚とスレインの"ビジョン"ですね。
聴覚はともかく、"ウィンド・ボイス"と"ビジョン"を併用すれば遠くからの覗き見もバッチリですね。
まぁあまり見たくない地獄絵図ですけど。S・O・Fで燃やされてるみたいだし、「ちっちぇぇなぁ、燃えちゃえ……」って(笑)
ギムは館の肖像画を見て、レイリアの存在を気に掛けています。だって、今のカーラはレイリアの姿そのまんまですから。
そのレイリアに似た女性(本物、カーラ付)が遠くで聖騎士を燃やしていると知ったら、ギムは走り出していってしまいました。
まさかこんなにも早く手がかりが掴めるとは思わなかったでしょうね。でもこうして尻尾を掴んだとあれば、やはり齧りつきます。
当然他のメンバーも後を追いますが、敏捷度を考えると途中で抜いちゃいそうですね。
敏捷度順に並べてみると、ディード(21)、スレイン(18)、エト(17)、ウッド(16)、パーン(15)、ギム(9)。
やはり抜かれますね、これじゃあ。そして置いていかれるでしょう。ドワーフの敏捷度は最高でも13だし、仕方ないですよ。
仮に"フィジカル・エンチャント・クイックネス"を使ったとしても、パーンと同じ15が精々だし。足並みを揃えて急行は難しそう。
★3〜7
幸い現場に着いた頃にはカーラ達は移動してました。亡くなった騎士を弔い、生き残った騎士から事情を聞き、一行は姫救出に赴きます。
上手く助け出せれば、ヴァリスから多額の褒賞が出るので、ウッドも渋々この危険な仕事に協力する事にしました。
エトは「報酬は自分の心から来る」と言いました。全ての人がそう考えているなら、世の中はどんなによくなるでしょうかね(苦笑)
相手は大魔術師、まともに喧嘩しても勝ち目は無さ気ですが、それでも一行はカーラと姫の後を追います。
スレインの"ライト"とディードのウィスプの明かりを頼りに、連中が止まっているであろう家を見つけます。
ここで優秀な盗賊が1人侵入して救出するという、「カリオストロの城」のようなことが出来れば言う事なしなんですけどね(苦笑)
「どなたですか?」「泥棒です」というロマンスの為に、行けウッド!(無茶言うな―笑)
まぁこの非常事態にもかかわらず、聖騎士の立てた作戦は「ガンガン行こうぜ!」でしたけどね。つまり正面から突入!
やはり配下の傭兵たちは大した脅威ではないんですが、カーラは強かった。それはもうヤケクソ気味に強かった。
まず聖騎士を"ディスインテグレート"で消滅させ、続いて"スタン・クラウド"であっさりと鎮圧。勝てるかぁ!(逆ギレ)
なんとエトのみが"スタン・クラウド"に抵抗しますが、ザ・狸寝入りによってその場をやり過ごします。6ゾロでも振ったか?
仮にカーラの魔力が15だとしたら、最大抵抗力を持つギムとディードですら抵抗出来る確率は7%弱。
"ディスインテグレート"の場合、相手を魂も残さずに消滅させます。最早"リザレクション"でも蘇生不可能。
まぁ"コール・ゴッド"でもすれば魂の復元も可能かもしれませんけど、それじゃあ超英雄ポイントでもない限り術者の魂が消滅する。
"スタン・クラウド"は文字通り麻痺の雲を発生させ、半径5m内の生物を麻痺させます。1時間は気絶しっぱなしです。ちなみに遺失魔法。
一応魔法による麻痺なので、"ディスペル・マジック"で解除出来るんですが、カーラの達成値を上回るのは至難の業です。
パーン達はまとめて"ハード・ロック"で部屋に閉じ込めて、"スケルトン・ウォリアー"で竜牙兵を創って見張りに立てます。
仮にカーラが11レベルだとしたら、ここまでで12点使ってますね。更に"テレポート"で部下を呼びに行ったので16点。
流石に精神力がキツそうですが、付与魔術師であるカーラなら魔晶石なんていくらでも自給自足できそうです。
別に部下を呼びに行かなくても、さっさと姫と自分だけで"テレポート"しちゃえばいいのに。魔晶石だってあるだろうし(苦笑)
いっそ"ディメンション・ゲート"で大移動という手もあります。カーラなら使えても驚きませんよ。
見張りに残ったのは竜牙兵1体に傭兵2人、武器を取り上げられてはいるけど、脱出は出来なくもない。
エトがしっかりと"ハード・ロック"の合言葉を聞いてたので、扉を開けるのは問題ありませんね。ちなみに合言葉はラスタ。
あとは扉前の竜牙兵を倒し、傭兵をいてこましてから武器と姫を取り戻せばいいのです。
5レベルファイターが2人もいるし、竜牙兵1体なら机の脚で十分。クラブ扱いでいいでしょうね。
竜牙兵は5レベルモンスター、雑魚ではないけどパーンとギムならそうてこずらないと思いますよ。
鎧を考慮しないのならパーンは攻撃力・回避力7。ギムは攻撃力8で回避力6です。机の脚をクラブとするのなら、攻撃力に+1です。
対する竜牙兵は攻撃点12(5)、回避点14(7)です。防御点は10点と割と高めですが、5レベルファイターなら抜けるはず。
パーンの命中確率は66.2%、回避は75.6%。ギムの命中確率は75.6%、回避は66.2%です。
武器は取り上げられていたようですが、鎧はどうだったんでしょうね。面倒くさそうだから着せたままのようなんですが。
竜牙兵はギムの体当たりで吹き抜けから1回に落下し粉々になりました。
勢いがついてたから、落下ダメージを単純にm×3点とするよりも大きくなりそうですね。
傭兵達はウィル・オー・ウィスプを見慣れていないらしく、混乱を起こしてアッサリと倒されてしまいました。
フィアンナ姫も無事でしたがやはり怯えますね。ファリスの司祭であるエトがいなかったら面倒だったかも。
将来この二人は結婚するわけですね。パーンとディードよりもドラマチックな出会いでしたね。
ちなみにゲームだと、姫は一番PB(フィジカルビューティー、容姿)が高い男性に惚れます。面食いだったんですね(笑)
この数値はロードス島コンパニオンのそれです。SWではその手の能力値はないんですよね。あったらあったでまた一悶着起きそうですが。
ちなみに、6人の中では一番PBが高いのはエト(17)です。そりゃあ姫も惚れますね(笑)
一行は姫を連れてさっさとヴァリスを目指すのですが、ロック鳥に化けたカーラがその行く手を塞ぎます。
ロック鳥とはモンスターレベル12、翼長20mもある巨大な鳥です。出典は「千夜一夜物語」だとか。
ロックは幻獣・魔獣に属するので、ルール上"シェイプ・チェンジ"では変身できないんですよね。
でもカーラは変身していました。ぶっちゃけた話、当時は設定が甘かったし、SWのルールなんてあまり関係なかったんですよね。
まぁカーラですから、幻獣・魔獣に化けられる遺失魔法でも知っていたんでしょう。そう考えておいた方が得ですよ(笑)
もちろんまともに戦って勝てる相手ではありません。"デス・クラウド"とかやられたら全滅もありえるし。
精神系の魔術でパーンを魅了しようとしたし、軽々と遺失魔法の"リパルジブ・フォースフィールド"とかも使ってきます。
魅了の魔術の正体はよく分かりません、多分精神魔術の系統に属する魔法かと思われます。遺失でも不思議ではないし。
"リパルジブ・フォースフィールド"は他者を排斥する力場を発生させる7レベル魔法です。自分を中心に球状の壁を作り出すんですね。
しかもこの壁は毎ラウンド大きくしていく事も出来ます。こんなの作られたら戦士は無力ですね。
そんなカーラに対し、姫を逃がそうと"ダークネス"、"サイレンス"、"ホーリー・ライト"と魔法を使っていきます。
幸運にも"サイレンス"が効いたようなんですが、よく抵抗やぶれましたね。6ゾロか(笑)?
ここでカーラは指輪を振るだけで"リパルジブ・フォースフィールド"を出してます。この指輪がそういう魔力を持つ指輪だってことですかね?
本当に便利ですね、魔力を特に決めない精神力不要アイテムだとすると「1万4700×使用回数」ガメルとかになるんですが。
サークレット状態のカーラは発動体や装備の制限なしに魔法を使えます。でもこんなことする以上は発音の必要はあるんでしょうね。
ちなみに憑依状態のキャラに対する"サイレンス"や"ミュート"は、宿主の方にかかります。
発音の必要があるのなら、やはり宿主の口を借りて魔法を使うのだろうから、宿主が黙っちゃうと魔法は使えないってことかな?
ファントムやスペクターなら、宿主が黙っても魔法は使えるんですけどね。カーラとこれらのアンデットの憑依は基本的に違うものです。
いよいよ「ロードス島戦記 完」かと思ったその時、ヴァリスの聖騎士団がコチラへ向かってきました。
カーラは退いてくれましたが、本気になれば"メテオ・ストライク"を駆使して全滅させる事も可能だったと思います(苦笑)
人数はおよそ20人、中には宮廷魔術師のエルムもいます。スレインの先輩に当たる魔術師ですね。
とりあえず姫は無事に国に返せそうです。ウッドあたり心中ウハウハ(死語)でしょう。
ここでパーンは自分がテシウスの息子である事を名乗り、真実を知る事が出来ました。
既に述べたとおり、テシウスは王命を破って罰せられる事を覚悟で、山賊に襲われた村を守ったのです。
掟があるから騎士位を剥奪しなければならなかったけど、誰もがその勇気を讃えているのです。
パーン「神よ。オレの体の中に、テシウスの血が流れている事を感謝します」
心の底から出た言葉です。長い間の胸の支えが取れましたね。これだけでも、旅に出た価値はあったというものです。
★1
ヴァリスの騎士団と合流したパーンたちは、ついに神聖王国ヴァリスの首都ロイドに辿り着きました!
ロイドの街はアラン、ライデンに次ぐロードス第三の都市と呼ばれ、聖なる河ファーゴの河口にあります。
ヴァリスの国教はファリス、アレクラストで言うところのアノスのような感じですね。細部は違いますが。
建国は251年、建国王はアスナーム王で、王宮は聖王宮です。聖・王・宮と区切るとそれっぽい(笑)
なお、聖王宮は正義の丘に、ファリス神殿は太陽の丘に建っています。全体的に建物の背は低い。
ヴァリスは特殊な国家です。形式上、神権が王権より上にあるのです。この点はアノスとも違います。
昔、この地にはエルベクという巨大な国家がありました。その領土はカノンやモスにまで及んだとか。
ところが、民を奴隷のように扱う強欲な貴族たちにファリス教団が異を唱え、反乱を起こしたのです。
指導者アスナームは5年にも及ぶ戦いを経てエルベクを打倒し、ファリスを国教とする国を興したのです。
アスナームは王位を世襲制にせず、ファリス教団が聖騎士の中から最もファリスの正義の為に働いた人物を指名するようにしました。
ファーンは元から王位を継承する事を期待されていた上に、魔神王殺しの六英雄の誉れもあったので、王位を継承したのです。
そういう制度なのにも関わらず、やはり俗世への影響を考えると、王の教団に対する発言力も侮れないものがありますけどね。
余談ですが、実はこの近辺にユニコーンもいたりします。大陸ではラムリアースが保護する天然記念物な馬です。
ロイドの北にある天馬の森という所に生息しているらしい。名前通りペガサスもいたりしますね。
しかしヴァリスによる保護を受けています。ラムリアースの保護を受けるユニコーンの森のように、警備隊もいますよ。
結構忘れられた設定なので、これを機に確認しておこうかと……。
姫を助けたパーン達は国賓のような待遇を受けました。国家の一大事を救ったわけですしね。
スレインの家が入るぐらいの客間に通されました。急に変わり始めた環境に、一行は熊のように落ち着きがありませんでした。
基本的には国風もあって質素なようですが、豪勢なその部屋に、ウッドの本能がくすぐられやしないかと心配です(笑)
謁見の間ではファーンをはじめとする大物達とも会えました。ロードス屈指の高レベルな人物たちです。
フレイム王国の国王カシュー、ファリス教団最高司祭ジェナート。あと既に出てきた宮廷魔術師のエルムも。
ファーン 62歳
ファイター10、セージ4。"白き騎士"にして"英雄王"です。以前は神聖魔法を使えるという設定もありました(過去形)。
言わずと知れた六英雄の1人。細かい設定は「ロードス島伝説」の方に譲りたいです。
カシュー・アルナーグT世 28歳
ファイター10、レンジャー5、グラディエイター10。"剣匠"にして"傭兵王"。
大陸では無敵の剣闘士ルーファスとして活躍していました。経歴は「ロマールの罠」に書きました。
2年前、フレイム建国から2年後のファーンの60歳の誕生日には自ら聖王宮に馳せ参じたりもしました。
それ以来ヴァリスとフレイム、及び両国王の関係は良好です。今回も、フレイムはヴァリスと共にマーモと戦います。
ジェナート 73歳。
プリースト?。ファリス教団の最高司祭、腐敗著しい教団を立て直すためにその手腕を振るい続けています。
ファーン、将来的にはエトもヴァリスの王に推します。恐らくはフォーセリア有数のファリス信者でしょう。
プリーストレベルは不明です。"リザレクション"や"ジハド"を使えるのですが、超英雄ポイントを使っていた可能性もあります。
"リザレクション"は9レベル、"ジハド"は10レベルですが、超英雄ポイントを使えば8レベル以下でも使用可能です。持っていそう。
エルム 43歳
ソーサラー?、セージ?。スレインと同じく賢者の学院の出身です。ラルカスの高弟なので、結構レベルは高いと思う。
カーラの名前を知っていたのもこの人です。かつて、カーラが湖上都市クードで蛮族達と戦った記録を読んでいたらしい。
戦った記録はともかく、生き延びたことまで知っているのは驚きましたけどね。蛮族の体を乗っ取って脱出した筈なので、そういう記録はあるかな?
でも流石にカーラがサークレットに魂を封じている事までは知らない。これを知っているのは現在ウォート(とナシェル)だけ。
やはりカーラの正体を知る事に一同の興味が湧きますが、ソレを知るであろうウォートに会いに行くのは何かと危険が伴います。
兵を一兵も避けないこの非常事態に、パーンは自らウォートの館を訪ねる事を進言しました。
ファーンにとっても渡りに船。このクエストを達成すれば、気兼ねなくパーンを聖騎士として臣下にできますからね。
ファーンもテシウスの事はずっと気になっていたようなので、パーンが姿を現したことは本当に有難かったでしょう。
そして王宮では一行とカシューを歓迎する宴が開かれることになりました。この辺のシーンはOVAを見ると雰囲気バッチリです。
やはりエト辺りがご婦人方から人気があるらしい。でもいかにも盗賊っぽいウッドには誰も寄ってこない。ギムですら誰かしら来るのに。
ウッド可哀想に。命がけで頑張った点ではパーン達と変わらないのに。こういった経験が、後に彼をあの悲しい事件に引き寄せることになる。
パーンはというと、カシューと話ができて結構楽しそう。カシューの方も馬が合うのかいつまでも話してましたよ。
カシューはこういう気さくな所がいいんですよね、元は冒険者だったり剣闘士だったりしたし。これが、長い付き合いになる両雄の出会いでした。
ディードは「この男の一生を見送るぐらいの時間をかけてもかまうまい」とまで、パーンが気になるようです。
永遠の寿命を持つハイエルフにとって、人間の一生なんて一瞬でしょう。それでも、心が通じ合えば同じ時を生きる喜びを分かち合えるのです。
★2〜4
パーン達6人はヴァリスから西へ、ウォートの館を目指します。長距離の危険な旅になるでしょう。
ウォートの館は魔神戦争の最終決戦の地『最も深き迷宮』の入り口に建っています。ウォートはその防人なのです。
何でこんな辺鄙な所に1人で住んでいるかというと、彼なりの贖罪のようなものです。詳細は「ロードス島伝説」で。
まぁ多少辺鄙でも、ウォートなら"テレポート"とかで人里まで行く事も軽いですよ。食料とかどうしてるのか気になりますね。
ウォートの館まで行くには、魔神戦争の時のモス連合軍と百の勇者と同じようなルートが考えられます。
つまり、モスに入ってからはヴェノン領マスケトを通過し、そこから南下してスカードを通って、石の王国を抜けるのです。
当時はこの道を行くためにどれほどの犠牲が出たことか……。現在は、多分スカードまでは楽でしょうけどね。
しかしそこからが大変です。かつては繁栄した石の王国も、今では地竜や多くの化け物が住む危険なダンジョンですから。
が、その辺の描写は全部カット。一行はウォートの館(ていうか塔)まで辿り着きました。
OVAではまず石の王国を抜ける所から物語が始まるので、そっちで補完した方がいいですね(苦笑)
それにしてもOVAのシリーズ構成は面白かった。まず主要メンバーの揃っているこのシーンから始めるんですもの。
そして、2話目からザクソンの村のエピソードに入るんですよ。実に芸が細かい。
道中スレインが足を滑らして谷底へ落ちたりしたらしい。それで死んだらほとんど自滅ですよ。
ウォートの塔は、流石に大賢者の住まいらしく、様々な魔法がそこら中にかけられています。
勝手に扉が開き、覗き込むと自動で明かりがつく。他にも動く階段(エスカレーター)まであるんですよ。ビックリどっきりです。
"トリガー"で説明できない事もないんですが、それだと一回作動したらまたかけないといけないんですよね。
それよりももっと高等な、付与した魔法が半永久的に持続するような付与魔術とかあるでしょう、マジックアイテムを作るときのように。
エスカレーターについては、スレイン辺り、うっかり滑って後頭部を強打しそうで心配です(笑)
長い旅を乗り越え、ついに辿り着いたウォートの塔。そこにはウォートとカーラがいたりします。当然ながら警戒しますね。
ウォート 68歳
11レベルのソーサラー/セージにして、2レベルのファイター/レンジャー。六英雄の1人、"荒野の大賢者"です。
知力26!と人間の限界を超えていて、超英雄ポイントもベルドの20点に次ぐ10点。他のキャラは大抵5点です。
魔力+3の"ウィザーズ・スタッフ"があるので、その魔力はなんと18!。名実共にダイケンジャーです。
カーラは魔神戦争の時には仮面の魔法戦士としてベルドやウォート達と共に戦い、六英雄の1人になりました。
しかし決して仲は良くない、最もカーラを憎んでいるのはひょっとしたらウォートかもしれないし。
でも話ぐらいはします。この場では、ウォートがファーンに加担しない代わりに、カーラもベルドに加担しないよう約束をしてました。
カーラは既に目的を達成しているし、私怨なんかでパーン達を亡き者にしようとも思ってません。
それどころか、出来れば仲間にしたいぐらいでしょうね。パーン達がYESという訳はありませんけどね。
この場にいるのは単純にパーン達と話したかったから、戦う気は更々ありません。カーラにとっては無意味だし。
さて、ここにきてようやくカーラの目的が判明します。一言で言えば、ロードスを永遠のものにすることです。
それだけなら結構な事なんですが、カーラはある信念を持っていることが問題になります。
カーラは故郷であるカストゥール王国が魔力の塔にのみ頼って崩壊したことで、世界は一つの力を頼りにしてはいけないと考えました。
力がひとつ所に集まると、それが崩壊した時には取り返しのつかない惨事が起きると考えているのですね。ある意味正論ですが。
だからカーラは、力のバランスを常に取り続けるように、ある方法を考えました。
天秤を常に水平に保つのは不可能な事。それならば、いっそ天秤を揺らしてしまおうと考えました。
例え一時片方に傾いても、やはりもう片方に傾くのなら、長い目で見れば釣り合っているも同然となります。
だからカーラはロードスの各地のパワーバランスを気にします。今はファーンとベルドの力を等しくし、出来れば相打ちに持ち込もうとしています。
別に今回に限ったことではありません。カーラはこの500年、常にロードスの戦乱と混乱を裏で操ってきました。
「ロードス島ワールドガイド」の23ページを見てください、カーラのこれまでの動向が詳しく書かれていますよ。
諸王国の興亡、様々な宗教・思想・権力、そして戦争。色々な面にカーラは関わり続けてきたのです。言わば"灰色の道しるべ"です。
カーラが"灰色の魔女"なのもそういうことです。ロードスを覆うのは白でも黒でもどちらでもない、灰色だからです。
ロードスは呪われた島、すなわち呪縛の島です。その呪縛が何者によるものなのか、一つ答えが出ましたね。
もう一つの呪縛はカーディスですが、これは「新ロードス島戦記」の方を見てください。「終末の邪教」の序文なんかがいいかと。
カーラの行動を許すか許さないかは、一概に言えるものではありません。理屈で言えば、フォーセリアの世界律に沿うものだし。
フォーセリアも定常の力が強すぎると終末が早まりますからね、混沌は必要なのです。詳細はやはり「終末の邪教」で。
でも感情的に納得出来はしないでしょう。1人の人間が人の生き死にを、ゲームの駒のように操るなんて、普通の人はゾッとします。
それでも私には物事を善悪で決め付けることなんて出来ない、どうしても主観が混じりますしね。
ただ、私はカーラのそういう愚かしいまでに一途な所は嫌いではないし、パーンのように自分の信念を貫くことも好きですよ。
一つだけ指摘する事が出来るのは、カーラの天秤は狂っていないのか?という点です。
いかに卓越した魔法と知識があっても、所詮は人間。間違いを犯さないとどうして断言できるか。
多くの人間の行動と意思によって決められる、混沌とした歴史の流れにロードスを託す事は出来ないのか?
パーンははっきりとカーラと敵対することを決めました。潔い、あまりにも潔すぎる。もうちょっと考えてもいいような(苦笑)
カーラが帰った後、今度はウォートと話すわけです。ようやくパーン達はカーラの本体を知るわけですね。
意外な事に、カーラの秘密に気づいたのはギムでした。レイリアがかかっているから必死で考えたんでしょうね。
既に述べたように、カーラはサークレットに魂を封じ、次々に体を乗り換えて500年以上生きて?きました。
そして、カーラの宿主の体を殺してしまうと、殺した人が新たなカーラとなります。ちなみに抵抗の目標値は25です。
これはべらぼうな数値です、カンタマつきのフレーベ(精神抵抗15!)ですら精神抵抗は17なので、出目は8ですね。
まぁ超英雄ポイントを使って自動的に成功としちゃえばいいんでしょうが、そういう風に言うと味気ないでしょう。
カーラを倒すには、殺す前にサークレットを引き剥がすしかありませんね。接着剤でくっついてたら絶望的ですが(笑)
ウッドの《スリ》でかっ払っちゃえばいいんですよ、目指せレジェンド・オブ・シーフ!
カーラ対策にウォートはマジックアイテム"アンチマジック・ワンド"を託してくれました。
文字通り"アンチマジック"を使えるワンドです。効果範囲内では一切の魔法が働かなくなるという10レベル遺失魔法。
これを使ってしまえば、相手はただの5レベルファイター。パーンとギムの二人がかりなら何とかなります。
★1〜3
パーン達がヴァリスに帰ってきた頃には、もう戦はかなり進展していました。
ヴァリス・フレイムの連合軍に一度はアラニアとモスも参戦し、シャイニング・ヒルの近くにまで軍を進める事が出来たようです。
モスのハイランド王国の竜騎士の参戦は、一瞬マーモの惨敗で戦が終わるのではないかと思わせるほどでした。
しかし、ヴァリス以外の国本では相次いで大事件が発生し、軍をマーモ討伐にまで割く余裕がなくなってしまったのです。
アラニアでは国王カドモス七世が暗殺されたのです。王の一族は、世継ぎのあの幼い王子までも悉く皆殺し。
犯人は王弟のラスター公爵でした。王弟派に対抗して、ノービス伯アモスンが先王派として立ち上がりました。
それでラスターを倒せれば良かったのですが、この内乱はズルズルとおよそ15年も続く事になります。
モス公国では、公王位の簒奪が行われました。"竜の鱗"ヴェノンが、"竜の炎"ハーケーンを落としたのです。
ハーケーンの太守(にしてモスの公王)の一族はやはり皆殺し。ヴェノンの太守であるヴェーナー公爵が公王を名乗りだしたのです。
これによってモスの諸国は再び争いを始めたのです。モスは特殊な国なのですが、詳細は後の巻に任せます。
そしてフレイムでも、炎の部族が手薄になっていた王都ブレードを襲撃しました。
しかしカシューはこの非常時でも国に帰らず、ヴァリスに留まってマーモと戦いました。
本国の方は、留守役のシャダムがなんとか防いだそうです。これがなければ、この英雄戦争の結果はかなり違っていた事でしょう。
全てはカーラの仕業でしょうね。連合軍とマーモ軍の戦力を等しくして、歴史の天秤を保とうとしているのです。白でも黒でもない灰色に。
これでカシューが帰っていたらどうなってたでしょうね。多分ヴァリスは終わってたと思うんですが(苦笑)
そうなっちゃったら天秤が傾くと思うんですよね。別の国をマーモにぶつけるのなら、また調整が要るでしょうし。
帰還したパーン、スレイン、エトはそれぞれ国に取り上げられました。妖精と盗賊は褒美が出ただけで、登用はなし。
パーンはもちろん聖騎士です。綺麗な白銀の甲冑も貰いましたよ。かつての父テシウスのような、立派な姿です。
スレインはカシューの誘いで、フレイムの宮廷魔術師への道が開けました。将来的にそうなるんですが、もう少し先の事です。
エトはヴァリスの宮廷つき司祭としてジェナートに任命されました。今のファリス教団は奇跡を起こせない者が多いんだとか……。
ウッドは人間なのにやはり何処からもお声がかかりませんね。惜しい、ウッドなら密偵(スカウト)とかイケると思うんですが。
マーモ軍は東の平野からロイドを目指して進軍中です。連合軍は軍を三路に分け、それぞれ迎撃することになります。
正面はファーン、左翼はカシュー、右翼はエルムがそれぞれ率います。闇エルフが多いと予想される左翼に、魔法使い達が多く加わります。
パーン、スレイン、エトは勿論左翼のカシュー隊です。ディードも参加しますよ、パーンがいるから。
ウッドとギムはお留守番、戦に参加する義務はないし。いや、ギムと義務をかけてるんじゃないですよ(笑)
OVAではウッドが戦に参加したんですけどね。まぁ軽装の盗賊が騎士のように戦うのは無理がありますけど。
決戦時の天候はどんよりと曇っていました。明らかにバグナードが呼び寄せた雲ですね。
9レベルの古代語魔法"コントロール・ウェザー"によるものでしょうね。こういう曇り空にする事も可能です。
術者から半径10キロもの広範囲をカバーする魔法です。明るい所を嫌うゴブを戦わせるには適した天候といえます。
ヴァリス、マーモ、フレイムの戦力は、ワールドガイドで結構詳しく書かれています。マーモの妖魔兵団とか特殊なものもカバー。
数とか構成とかはそっちの方を見てもらうとして、一つ確認しておきたい事があります。神官戦士団についてです。
ヴァリスにはファリスの神官戦士団が、マーモにはファラリスの神官戦士団がそれぞれ数百参加しているらしい。
教団というのは法に従う義務はない代わりに、国の保護を受けられません。だから、神官戦士という戦力が必要なのです。
そういう事情があるから、本来なら神官戦士や教団というのは、国と国との戦争には参加しないものです。
でもヴァリスの主人はファリス教団だし、ファラリス教団の最高司祭ショーデルはベルドに従っています。
そんな理由で、この英雄戦争にはそれなりの数の神官戦士(=癒し手)が参加してるんですよね。
彼らがいるといないでは大違い。傷の治療は勿論の事、スレインのような魔術師も精神力を回復できますからね。
今回の戦ではスレインなんてぶっ倒れるんじゃないかというほど魔法を使ってましたが、神官からトランスファーを受けて頑張ってました。。
魔晶石とかないんですかね、ヴァリスには。それぐらい支給してもよさそうなものですが。
左翼のカシュー隊は大勝でした。多くの魔法使いと強力な戦士たちがいるし、敵も大して戦力を割いてなかったからでしょうかね。
しかし右翼のエルム隊は大敗でした。エルムも死亡しました。じつは闇エルフはこっちにいたんですね、マーモにとっての左翼に。
闇エルフがいるのは左翼だ、と予め分かっていました。だから強力なカシュー隊を左翼に配置したのです。
でも闇エルフの左というのは、もしかしてヴァリスではなくマーモの視点で、だったりして…………。
いや、私の勘違いだと思いますけどね。だって、もしそうならエルムさん可哀想すぎ……。
しかしカシューは強かった。某「三○無双」とかに出ててもいいぐらいに強かった(笑)
10レベルファイターですからね、しかも武器は鎧を無効化する"ソリッドスラッシュ"。魔力+2のミスリル製の魔剣です。
この剣は、相手の鎧による防御を無効とします。つまり、相手はレベルのみで減点しなければならないのですね。
これだけのレアアイテムです、その値段もべらぼうに高い。なんと銀貨86万枚の非売の魔剣です。付与者は不明だったりする。
カシューがこの魔剣を使った場合、追加ダメージは15点。両手持ちの場合打撃力27なので、7振って21点!
これは大抵の敵が一撃ですね。2発も当たるともう駄目でしょう。パーンだって5レベルじゃ1撃で倒れますよ。
まぁかわせばノーダメージな分、攻撃魔法よりは幾分マシかも知れませんけどね。攻撃力16をかわせれば(笑)
しかもこんな攻撃を魔法と違って、体力の続く限り繰り出せるんですよね。清松先生曰く、カシューともども封印したい魔剣(苦笑)
パーン組もかなり奮戦していました。敵ダークエルフの召喚したサラマンダーも、パーンは一蹴しましたよ。
下位精霊をこういう風に使役するというのは、恐らく7レベルの"フルコントロール・スピリット"でしょう。
下位精霊一体を手足のように使役できる高位の精霊魔法、敵方のダークエルフにも結構な使い手がいたんですね。
あとダークエルフは恒例の"インビジビリティ"による奇襲も行おうとしていたようです。でもスレインが片っ端から排除。
多分"センス・マジック"によって視覚的に位置を把握、すぐさま"ディスペル・マジック"でしょうね。
なお、インビジはセンスオーラでは視覚的には感知できません。標準装備の能力で感知できたら、インビジが死に体になるし(笑)
センスオーラはどちらかと言うと嗅覚に近い、多分小宇宙や気やチャクラを感じるようなもんでしょう。
嗅覚に近いだけで、嗅覚そのものでもありません。とにかくなんとなく感知するだけ、特殊な精霊力は目立つけど出所までは分からない。
カシュー隊と、エルム隊を破ったマーモ軍は、ファーンとベルドのいる中央の戦場へ移ります。
その頃にはもう、泥沼。どちらが勝者でどちらが敗者かなんてない、修羅場です。新手の地獄絵図です。
あまりにも壮絶すぎる戦いに、足元に転がるゴブリンですら哀れに思えてくる。動いて欲しいと思えるようになる。
戦場では殺す者と殺される者に分かれます。そして、殺す者もいつ殺される側に回るか分からない。
それが嫌というほど分かるような、悪夢のような戦場でした。
その場には後の宿敵である"黒衣の騎士"アシュラムもいましたが、名前が出ただけって感じでした。
「覚えておけ!」とかいう捨て台詞を吐くだけの近衛騎士。それがあんなにも凄いキャラになるとは、この時点では思いもよらず。
やがて両軍とも僅かな生き残りが、ベルド対ファーンという両雄の一騎打ちを眺めるようになります。
この戦いは、魔神戦争の延長線上にあります。魔神王を真に葬る戦いでもあったのかもしれません。
それでいて、剣を交える二人は、何処か楽しそうですらありました。親しい友との語らい、そんな感じです。
この戦いは37年前に起きた魔神戦争の事を知ってから見て欲しいですね。だからパーンの物語に付け加える形で書きたくありません。
詳細は魔神戦争を語った「ロードス島伝説」を読んで、考えて下さい。この2人については、いくら言葉を尽くしても語り尽くせない。
両雄の戦いは、ファーンの剣がベルドの肩を切り裂き、ベルドの剣がファーンの胸板をぶち抜いたことで終わりました。
片腕をやられたベルドは、続いてカシューを相手にし、右腕一本でカシューを押しまくります。重量のある両手剣を片手で……超人です。
カシューすら危なかったその時、何処からともなく飛んできた矢がベルドの肩を射抜きました。
カシューはその隙を逃さず、ベルドの首を刎ねたのです。かくして、2人の英雄は帰らぬ人となりました。
この矢は誰が射たのかは、十数年の歳月を経て「新ロードス島戦記5 終末の邪教(上)」で明らかになります。
全てが終わって、パーン達はファーンの遺体をロイドにまで運びました。
王が死に、多くの騎士も帰らぬ人となったヴァリスの混乱はかなり深刻なものでした。
この緊急事態にジェナートが自ら指揮を取らなかったら、国は分解していたかもしれません。
ヴァリスの国の主はファリス教団ですから、そういうのもアリです。これが他の国だったらどうなってたことか……。
ところで、戦場に残された遺体はどうするんでしょうかね。まさか野晒しのまま放置ですか?
帰ってこない事で死亡した事だけは分かるんでしょうが、遺体すら戻らないのは遺族も故人も哀れではないでしょうか。
遺体の回収は国でやるのか、はたまた希望する遺族のみがやるのか。ファリスの国なだけに、その対応が気になります。
そういえばウッドがOVAで言ってましたっけ。「名もなき者は塵にも等しく、花を手向ける者もなし。名のある者だけ、奉られん」と(うろ覚え)。
これが英雄戦争、後に「勝者なき戦い」と呼ばれる戦です。
英雄戦争を経験し、パーンやスレインですら、この戦を仕組んだカーラに激しい怒りを覚えていました。
マーモの残党狩りなどをして、ヴァリスがようやく落ち着いた頃、パーン達6人はルノアナ湖へと旅立ちました。
かつては、この湖の上にカストゥールの湖上都市クードがありました。そこにはカーラの屋敷があります。ウォートに教わった場所です。
カーラは今までにもこのように歴史に介入してきて、少なからず敵を作ってきました。魔神戦争の時にも……。
ウォートもその1人です。そして今度こそ、カーラは致命的な敵を作ってしまったのです。
★1〜2
いよいよ歴史の影に潜む"灰色の魔女"カーラとの対決の時が来ました。
カーラのアジトは"静寂の湖"ルノアナの畔にあります。魔神戦争の時にウォートが訪れた館かと思います。
あの時はカストゥールの家具や、歴代のカーラの肖像画がズラリと飾られていましたっけ。カーラがいっぱいコレクションです。
スレインが"ビジョン"で見たところ、中はがらんどうだったそうです。ちゃっかり引越し作業は終えるんですね。
カーラはパーンたちと決着をつけるために、わざわざこの館で待ってるんですね。策謀家のくせに男前なことしますね、逃げてもいいのに(笑)
ルノアナ湖はヴァリスの北西にある巨大な湖で、その周りには沈黙の大湿原という文字通りの大湿原地帯も広がっています。
かつては、この湖の上には湖上都市クードがありました。カストゥール王国のロードス島太守のいた、巨大な魔法都市です。
魔力の塔が倒壊した後、蛮族達の襲撃を受け、当時の太守であった死霊魔術師サルバーンの手で都市は蛮族諸共に湖に沈んでいます。
その為に大陸でいう所のレックスのように遺跡の密集地になっていますが、ウォートがほとんど探索したらしい。何か残ってそうですが。
湿原は水を浄化するらしいので、水は澄んでいます。沈んだ遺跡も見えるんでしょうね。カーラがそういう意味でここにいるのかは謎。
場所が場所なので、モンスターも結構いますよ。ヒュドラとかスキュラとか、カストゥールの亡霊だっているでしょう。
まぁ、これから一戦交えるのはある意味カストゥールの亡霊なんですけどね(苦笑)
ゲームでは何故かここにある「最も深き迷宮」を通ってカーラのアジトに行きました。
その辺が気になったのか「世界で最も広いダンジョン」とか呼ばれました。別のもの……なわけないか。
魔神がゾロゾロ出てきて、魔界に繋がる次元の扉なんてのもありましたね。つくづく当時は魔神戦争のことは曖昧だったんですね。
スレインは"ビジョン"で館の中を探ります。その時カーラが見えない面ん玉に気づいてるかのように微笑んでいました。
やっぱり"カウンター・センス"でしょうかね。「探知」系の魔法を感知するセキュリティー魔法。
"遠見の水晶宮"はもちろんのこと、"センス・マジック"、"センス・エネミィ"、"センス・オーラ"、"ロケーション"などにも効果アリ。
更には"センス・ライ"や"シースルー"といった厄介な魔法にも対応しています。持続時間は探知されるまでなので、常時かけといて損はない。
もちろん"ビジョン"にも対応しています。作動してから1ラウンドの間はジロジロ見られますが、1ラウンド後には解除してしまいます。
スレインからの"ビジョン"を感知したら、唯一開いている正面の扉の方に微笑めばいいのですね。カーラも結構こだわりますね(苦笑)
ギムはこの時の為に、金の髪飾りなどをロイドの王宮で作ったようです。材料となった金貨はウッドから貰ったらしい。
もちろんレイリアの為に、です。レイリアがつけて初めて分かる、調和の美しさを秘めた傑作です。
さて作戦は簡単。スレインがワンドを使い、パーン・ギム・ディードは接近戦を挑む。その隙に忍び寄ったウッドがサークレットをかっ払う。
エトが何もしてないように思えますが、まぁいいでしょう。ワンドが働いてるから"キュアー・ウーンズ"も使えないし、ファイター3じゃね。
全てはウッドの指先にかかっています。なんとウッドが主役!。頑張れウッド、目指せキング・オブ・バンデット(王ドロボウ―笑)!
肝心の秘密道具"アンチマジック・ワンド"ですが、魔力10で使用者を中心に"アンチマジック"がかかります。
"アンチマジック"は半径10mの範囲にかかりますから、多分カーラのいる部屋はスッポリ入っちゃうでしょうね。
値段はマジックアイテムの価格計算式に当てはめた通りの銀貨3万枚。思ったよりは安いですね。
精神力不要で1回使い捨てなので「10(レベル)×50(基本消費精神力)×40(定数)×1.5(遺失)=30000」です。
これを解除できるのは、同じ遺失魔法である"パーフェクト・キャンセレーション"のみです。
いざ戦ってみると、ワンドの効果は抜群。カーラの"ファイア・ボール"を打ち消しました。
アンチマジックは"パーフェクト・キャンセレーション"以外の全ての魔法を行使不能にしますからね。
今のカーラの敏捷度はレイリアの数値である15です。つまり、パーンが同時、ギムが遅い、他は皆カーラより早く動けるんですね。
良かったですね、スレイン(敏捷度18)がカーラより速くて。カーラの知力は24はあるらしいんで、こっちの行動はバレてるはずですが。
しかし流石はカーラ、その"パーフェクト・キャンセレーション"を使って"アンチマジック"を解除してしまいます。
なにしろ魔力10扱いですからね、対するカーラは魔力が最低14です。以前のように15と考えると、ワンドを打ち破る確率約91.4%!
そりゃあ破られますね。それでも最初のラウンドを含めて2ラウンドの間カーラの魔法を封じられたんだし、あってよかった。
"パーフェクト・キャンセレーション"は"アンチマジック"と同じ10レベルの遺失魔法。例えるなら"無無明亦無"。
通常の"ディスペル・マジック"では解除できない「呪い」「非解除」の魔法まで解除する究極の解呪魔法です。
そんな"パーフェクト・キャンセレーション"も竜語魔法の"リボーン・ドラゴン"だけは解除できないらしい。
カーラはカストゥール王国のロードス島太守の娘(ル・フロイ?)、遺失魔法なんて関係ないと思ってもいいでしょう。
ル・フロイとは、ロードス島の初代太守です。ロードス島コンパニオンに名前が出てくる付与魔術師です。
彼は平和的にロードスを治めようとしたようですが、それを良しとしない蛮族たちに殺されてしまいます。
その後、太守の位には死霊魔術師のアガナーが就きました。それ以後も、彼の家系の者が太守を勤めたとか。
アガナー以後の太守たちがみな死霊魔術師なのだとしたら、カーラと同じ付与魔術師であるル・フロイが父親のように思えます。
もっとも、ル・フロイがロードスに来たのはおよそ新王国暦前1000年、カーラがサークレットに魂を封じたのはその1000年後です。
当時寿命を延ばす魔術は確かにありましたが、ちょっと無理があるような気がしないでもない。
まぁ"シェイプ・チェンジ"を延々と繰り返すなんてのは、つまらないけど可能でしょうけどね。
また、子が親と同じ系統を専攻すると断言できませんよね。カストゥール王国末期には、各門派は基本的に解散してたらしいし。
自分の家系とは違う系統の魔術を学ぶこともあったかもしれません。もしそうなら、サルバーンあたりがカーラの父親でも不思議ではない。
カーラとの戦いで最もカーラを苦しめたのは、他でもないギムの訴えでした。
ギム「思い出せ、レイリア!お前の信じる大地の法を。すべての生き物をいとおしみ、自然であれと教える慈愛のマーファの法を!」
本来なら、カーラに支配されている者の意識は深い深い眠りについています。ちょっとやそっと呼びかけられたぐらいでは起きません。
でも、ギムの言葉はレイリアとカーラの心に波紋を起こしたのです。この辺りでは完全にギムが主役です。
心に生まれた異質な感情に苛立ったカーラは、謎魔法でギムの命を奪います!
ギムの体をカーラの手から伸びた輝きが覆うと絶命したのです。逃げる事もせずに、「思い出せ!レイリア!」と呼びかけました。
この魔法は一体何なんでしょうね?。"デス・クラウド"とはエフェクトが違うようですが。やはり遺失魔法なんでしょうね。
本当を言うと、「D&D」の名残なんですけどね。まぁそれっぽい魔法をSWでも自作すればいいんですよ。
ギムを殺した事で益々カーラの困惑は大きくなります。ウッドがその隙を逃すはずもありませんでした。
呆気なくカーラはサークレットをレイリアの体から引き剥がされ、活動を停止したのです。
でもギムが死んでしまいました。勝ったというのにちっとも喜べません。ギムの唯一つの願い、レイリアの救出だけは成功したのが救いです。
出会った頃には散々喧嘩してたディードも、レイリアにギムの仇だ!とレイピアをつき立てようとしました。
でもそんな事をしたら、ギムが命を失ってまで遂げた思いまで失われてしまいます。それにレイリアは直接の仇ではないし。
エルフがドワーフの為に涙を流しているのです。種族的には仲が良くなくても、仲間にはなれるし、友情も芽生えるという証拠です。
あとはカーラのサークレットを壊してしまえればいいんですが、壊せますかね?
マジックアイテムには「形状保持」「品質保持」の遺失魔法がかかっていることがあります。例えば魔剣ですね。
これらがかかっていると壊すのは困難です。ただ壊そうと思えば壊せる場合もあるそうなので、可能性はなくはないです。
"パーフェクト・キャンセレーション"をかければ解除出来るかもしれませんが、恐ろしく目標値が高そうです。
このサークレットはカーラの本体、壊したくても壊せないレベルでそれぐらいかけていそうですね。だって自分自身だし。
ところが、サークレットを持ったウッドは、壊す気なんて更々なかったりします。
ウッドは力を欲しています。しがない盗賊でしかない自分が、何かデカイ事をするにはカーラの力は都合がいいと。
盗賊として生きてきて、牢屋で青春を浪費して、ウッドは内心かなり焦っていたでしょう。自分の人生はこんなんでいいのかと。
その想いはあまりにも重過ぎたようです。原因から結果を想像できる筈のウッドを、こんなバカな事に駆り立てたのだから。
そんなウッドもパーンやディード・スレイン・ギム・エト……この仲間たちは心底大好きだったようです。
神様だって信用できないウッドにとって、パーン達は本当にかけがえのない仲間なんでしょう。
ウッドはその仲間たちに別れを告げ、カーラの力を自分で使うために窓から逃げ出してしまいました。
ウッドはサークレットの魔力に抗しきれず、新しいカーラとなってロードスの裏側で暗躍します。
これでパーン達はパーティーを解散する事になります。
パーンとディードはウッドを助けに行きます。スレインはレイリアをニースに届けにターバへ。エトはヴァリスで頑張ります。
ギムを除く5人が再び揃うのは、優に15年も後のことになります。その時こそ、"灰色の魔女"カーラの本当の最後です。
ただ1人館に残ったスレインは、レイリアが起きるのを待ってこの地を後にします。
レイリアはカーラとして活動していた時の事を覚えているようです。ある意味、死ぬよりも辛い境遇です。
それでもレイリアは償うために生きます。そして、スレインもそんな彼女を支えていこうと思いました。
ギムの遺作となってしまった例の髪飾りは、レイリアに良く似合っていたようです。
スレイン「僕は、星を探し出したのかもしれない」
すっかり忘れていましたが、スレインは星を探していました。その星こそが、レイリアだったのかもしれません。
近い将来二人は結婚します。以後スレインは重いものを背負ったレイリアを支えて必死に働きます。本当に色々な功績を残すことになります。
何故か一人称が僕になってますが、これは普通に間違ったんでしょうかね?
レイリアと一緒に館を去る前に、スレインは"ティンダー"で館に火をつけます。
藁とか油とかの可燃物がないとそこまでは燃えないと思いますが、これで館は全焼します。
ギムの遺体も館の中に残してあります。その死に顔は満足そうだったといいます。
単に命を捨てたのではなく、命そのものを手段としてレイリアを助けたギム………決して忘れません。
戦乱に彩られてきたロードス島ですが、これからも様々な戦乱や災いが襲います。しかし、ロードスは新たな勇者を得ました。
英雄戦争でかつての英雄は死にましたが、新しい世代の勇者たちが確かに息づいています。
パーン、ディード、スレイン、カシュー……彼らは今後のロードスの歴史にも大きく関わっていきます。